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特開2024-92856銅を担持した酸化チタン粒子のスラリーの製造方法、銅を担持した酸化チタン粒子のスラリー、銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子のスラリーならびに塗料組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092856
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】銅を担持した酸化チタン粒子のスラリーの製造方法、銅を担持した酸化チタン粒子のスラリー、銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子のスラリーならびに塗料組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/62 20060101AFI20240701BHJP
   C09C 1/36 20060101ALI20240701BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20240701BHJP
   C09C 3/06 20060101ALI20240701BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240701BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240701BHJP
【FI】
C09C1/62
C09C1/36
C09D17/00
C09C3/06
C09D201/00
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209060
(22)【出願日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】522184121
【氏名又は名称】日本ペイントコーポレートソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】立間 徹
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 善徳
(72)【発明者】
【氏名】劉 暢
(72)【発明者】
【氏名】前田 知樹
(72)【発明者】
【氏名】富岡 健吾
【テーマコード(参考)】
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4J037AA11
4J037AA22
4J037AA30
4J037CA14
4J037CB16
4J037DD20
4J037EE03
4J037EE19
4J037EE25
4J037FF26
4J038CD101
4J038CG001
4J038DB001
4J038DD001
4J038DG002
4J038DL031
4J038EA011
4J038HA216
4J038HA336
4J038HA376
4J038JA18
4J038JA33
4J038JA55
4J038JB11
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA15
4J038MA08
4J038MA09
4J038NA02
4J038PB01
4J038PB02
4J038PB06
4J038PB09
(57)【要約】
【課題】50℃でスラリーを貯蔵した場合でも耐変色性を有し、塗料組成物に適用しても良好な光触媒機能を発現し、透明性の高い塗膜を形成可能な銅担持酸化チタン粒子スラリーの製造方法を提供すること。
【解決手段】ルチル型酸化チタン粒子を含むスラリーS1と銅化合物を混合して、混合物のスラリーS2を得る工程(1)、スラリーS2にアンモニウム化合物を添加して、pHを9~13に調整したスラリーS3を得る工程(2)、スラリーS3を加熱して、銅化合物担持酸化チタン粒子のスラリーS4を得る工程(3)、およびスラリーS4に有機還元剤を添加して、銅担持酸化チタン粒子を含むスラリーS5を得る工程(4)を含み、銅化合物が、硫酸銅および硝酸銅からなる群から選択される少なくとも1種を含み、銅を担持した酸化チタン粒子の一次平均粒子径が、1~25nmである、銅担持酸化チタン粒子のスラリーの製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン粒子のスラリーS1と銅化合物を混合して、酸化チタン粒子と銅化合物との混合物のスラリーS2を得る工程(1)、
前記スラリーS2にアンモニウム化合物を添加して、スラリーS2のpHを9~13に調整し、pHを調整したスラリーS3を得る工程(2)、
前記スラリーS3を加熱して、銅化合物を担持した前記酸化チタン粒子のスラリーS4を得る工程(3)、および
スラリーS4に有機還元剤を添加して、銅を担持した酸化チタン粒子を含むスラリーS5を得る工程(4)、
を含み、
前記酸化チタン粒子が、ルチル型酸化チタン粒子を含み、
前記スラリーS1が、水性媒体を含み、
前記銅化合物が、硫酸銅および硝酸銅からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記銅を担持した酸化チタン粒子の一次平均粒子径が、1~25nmである、
銅を担持した酸化チタン粒子のスラリーの製造方法。
【請求項2】
前記工程(4)で添加する有機還元剤の量が、前記銅化合物100質量部に対して0.01~12質量部である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程(2)で添加するアンモニウム化合物が、第四級アンモニウム水酸化物を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程(3)の前に、または工程(3)と同時に、前記スラリーS3に亜鉛化合物を加える工程(5)をさらに含み、
前記スラリーS4の前記銅化合物を担持した酸化チタン粒子が、銅化合物と亜鉛化合物とを担持した酸化チタン粒子である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程(4)で前記スラリーS4に亜鉛化合物をさらに添加する;または
前記工程(4)の後に、前記スラリーS5に亜鉛化合物を添加する工程(6)をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記亜鉛化合物がカルボン酸亜鉛である、請求項4または5に記載の製造方法。
【請求項7】
銅を担持した酸化チタン粒子と、
アンモニウム化合物と、
水性媒体と、
を含む、銅を担持した酸化チタン粒子のスラリーであって、
前記銅を担持した酸化チタン粒子の一次平均粒子径が、1~25nmであり、
前記銅を担持した酸化チタン粒子中の酸化チタンが、ルチル型酸化チタンを含み、
前記スラリーのpHが、9~13の範囲内であり、
前記スラリーを50℃で60日間貯蔵する前後のL表色系に基づく色相の色差ΔEab値が5以下である、銅を担持した酸化チタン粒子のスラリー。
【請求項8】
銅イオンと前記アンモニウム化合物との錯体をさらに含む、請求項7に記載のスラリー。
【請求項9】
銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子と、
アンモニウム化合物と、
水性媒体とを含む、銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子のスラリーであって、
前記銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子の一次平均粒子径が、1~25nmであり、
前記銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子中の酸化チタンが、ルチル型酸化チタンを含み、
前記スラリーのpHが、9~13の範囲内である、銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子のスラリー。
【請求項10】
前記アンモニウム化合物が、第四級アンモニウム水酸化物を含む、請求項7~9のいずれか一項に記載のスラリー。
【請求項11】
クリヤー塗料組成物用である、請求項7~9のいずれか一項に記載のスラリー。
【請求項12】
塗料組成物の製造方法であって、
請求項1に記載の製造方法により得られた銅を担持した酸化チタン粒子のスラリーと、
バインダー樹脂と、
溶媒と、を混合する工程、
を含む、塗料組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅を担持した酸化チタン粒子のスラリーの製造方法、銅を担持した酸化チタン粒子のスラリー、銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子のスラリーならびに塗料組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンなどの光触媒は、光照射による光触媒反応によって、様々な物質を分解し得ることが知られている。そして、光触媒は、抗ウイルス、抗菌、空気浄化、防汚およびセルフクリーニングなどに応用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、液剤の安定性に優れた光触媒コーティング組成物の提供を目的として、酸化チタン粒子、無機酸化物粒子、銅元素、銀元素、水酸化第四アンモニウム、および溶媒を含んでなる光触媒コーティング組成物が開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1の酸化チタン粒子は、銅を担持した酸化チタン粒子ではない。
【0005】
銅または銅化合物を担持した酸化チタン粒子(以下、「銅化合物担持酸化チタン粒子」ということがある。)は、担持した銅(II)によってエネルギーの低い可視光でも光触媒機能を発現する。さらに、銅を担持した酸化チタン粒子は、担持した銅(I)によって暗所でも抗ウイルス性と抗菌性を発現する(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-263651号公報
【特許文献2】国際公開第2013/002151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2では、銅化合物担持酸化チタン粒子を含むスラリーの貯蔵安定性とそのスラリーを用いた塗膜の透明性については着目がない。
【0008】
本発明者らが検討したところ、特許文献2に開示されるようなスラリーでは、銅化合物担持酸化チタン粒子が沈降してスラリーの貯蔵安定性に劣ること、そのスラリーを用いた塗膜では塗膜の透明性を確保できないことが分かった。
【0009】
このようなスラリーの貯蔵安定性とスラリーを用いた塗膜の透明性の課題について、本発明者らは、銅担持酸化チタン粒子の一次平均粒子径を所定範囲とし、かつ、スラリーのpHを所定範囲とした改良スラリーによって解決できることを見出した。
【0010】
しかし、本発明者らがさらに検討したところ、このような改良スラリーでは銅担持酸化チタン粒子の沈降を抑制することはできるが、50℃で改良スラリーを貯蔵した場合(例えば、10日間貯蔵した場合)に改良スラリーが変色する場合があることが分かった。スラリーが変色するとそのスラリーを塗料組成物に適用した場合にその塗料組成物を用いた塗膜において所望の色を得られない、または所望の色を得るためにさらに調色を行う必要が生じる。
【0011】
また、改良スラリーでは、塗料組成物に適用した場合の抗ウイルス性などの光触媒機能に改良の余地があることも分かった。
【0012】
そこで、本発明は、50℃でスラリーを貯蔵した場合でも耐変色性を有し、塗料組成物に適用しても良好な光触媒機能を発現し、透明性の高い塗膜を形成可能な銅担持酸化チタン粒子スラリーの製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
本発明の別の目的は、50℃でスラリーを貯蔵した場合でも耐変色性を有し、塗料組成物に適用しても良好な光触媒機能を発現し、透明性の高い塗膜を形成可能な銅担持酸化チタン粒子スラリーを提供することを目的とする。
【0014】
本発明の別の目的は、50℃でスラリーを貯蔵した場合でも耐変色性を有し、塗料組成物に適用しても良好な光触媒機能を発現し、透明性の高い塗膜を形成可能な銅および亜鉛担持酸化チタン粒子スラリーを提供することを目的とする。
【0015】
本発明の別の目的は、良好な光触媒機能を発現し、透明性の高い塗膜を形成可能な塗料組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る銅を担持した酸化チタン粒子のスラリーの製造方法は、
酸化チタン粒子のスラリーS1と銅化合物を混合して、酸化チタン粒子と銅化合物との混合物のスラリーS2を得る工程(1)、
前記スラリーS2にアンモニウム化合物を添加して、スラリーS2のpHを9~13に調整し、pHを調整したスラリーS3を得る工程(2)、
前記スラリーS3を加熱して、銅化合物を担持した前記酸化チタン粒子のスラリーS4を得る工程(3)、および
スラリーS4に有機還元剤を添加して、銅を担持した酸化チタン粒子を含むスラリーS5を得る工程(4)、
を含み、
前記酸化チタン粒子が、ルチル型酸化チタン粒子を含み、
前記スラリーS1が、水性媒体を含み、
前記銅化合物が、硫酸銅および硝酸銅からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記銅を担持した酸化チタン粒子の一次平均粒子径が、1~25nmである、
銅を担持した酸化チタン粒子のスラリーの製造方法である。これによって、50℃でスラリーを貯蔵した場合でも耐変色性を有し、塗料組成物に適用しても良好な光触媒機能を発現し、透明性の高い塗膜を形成可能な銅を担持した酸化チタン粒子のスラリーを製造することができる。
【0017】
本発明に係るスラリーの製造方法の一実施形態では、前記工程(4)で添加する有機還元剤の量が、前記銅化合物100質量部に対して0.01~12質量部である。
【0018】
本発明に係るスラリーの製造方法の一実施形態では、前記工程(2)で添加するアンモニウム化合物が、第四級アンモニウム水酸化物を含む。
【0019】
本発明に係るスラリーの製造方法の一実施形態では、前記工程(3)の前に、または工程(3)と同時に、前記スラリーS3に亜鉛化合物を加える工程(5)をさらに含み、
前記スラリーS4の前記銅化合物を担持した酸化チタン粒子が、銅化合物と亜鉛化合物とを担持した酸化チタン粒子である。本発明に係る製造方法の別の一実施形態では、前記亜鉛化合物がカルボン酸亜鉛である。
【0020】
本発明に係るスラリーの製造方法の一実施形態では、前記工程(4)で前記スラリーS4に亜鉛化合物をさらに添加する;または前記工程(4)の後に、前記スラリーS5に亜鉛化合物を添加する工程(6)をさらに含む。
【0021】
本発明に係る銅を担持した酸化チタン粒子のスラリーは、
銅を担持した酸化チタン粒子と、
アンモニウム化合物と、
水性媒体と、
を含む、銅を担持した酸化チタン粒子のスラリーであって、
前記銅を担持した酸化チタン粒子の一次平均粒子径が、1~25nmであり、
前記銅を担持した酸化チタン粒子中の酸化チタンが、ルチル型酸化チタンを含み、
前記スラリーのpHが、9~13の範囲内であり、
前記スラリーを50℃で60日間貯蔵する前後のL表色系に基づく色相の色差ΔEab値が5以下である、銅を担持した酸化チタン粒子のスラリーである。これによって、50℃でスラリーを貯蔵した場合でも耐変色性を有し、塗料組成物に適用しても良好な光触媒機能を発現し、透明性の高い塗膜を形成することができる。
【0022】
本発明に係る銅を担持した酸化チタン粒子のスラリーの一実施形態では、銅イオンと前記アンモニウム化合物との錯体をさらに含む。
【0023】
本発明に係る銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子のスラリーは、
銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子と、
アンモニウム化合物と、
水性媒体とを含む、銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子のスラリーであって、
前記銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子の一次平均粒子径が、1~25nmであり、
前記銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子中の酸化チタンが、ルチル型酸化チタンを含み、
前記スラリーのpHが、9~13の範囲内である、銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子のスラリーである。これによって、50℃でスラリーを貯蔵した場合でも耐変色性を有し、塗料組成物に適用しても良好な光触媒機能を発現し、透明性の高い塗膜を形成することができる。
【0024】
本発明に係る銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子のスラリーの一実施形態では、前記アンモニウム化合物が、第四級アンモニウム水酸化物を含む。
【0025】
本発明に係るスラリーの一実施形態では、スラリーは、クリヤー塗料組成物用である。
【0026】
本発明に係る塗料組成物の製造方法は、
上記いずれかに記載の製造方法により得られた銅を担持した酸化チタン粒子のスラリーと、
バインダー樹脂と、
溶媒と、を混合する工程、
を含む、
塗料組成物の製造方法である。これによって、良好な光触媒機能を発現し、透明性の高い塗膜を形成可能な塗料組成物を製造することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、50℃でスラリーを貯蔵した場合でも耐変色性を有し、塗料組成物に適用しても良好な光触媒機能を発現し、透明性の高い塗膜を形成可能な銅担持酸化チタン粒子スラリーの製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、50℃でスラリーを貯蔵した場合でも耐変色性を有し、塗料組成物に適用しても良好な光触媒機能を発現し、透明性の高い塗膜を形成可能な銅担持酸化チタン粒子スラリーを提供することができる。また、本発明によれば、50℃でスラリーを貯蔵した場合でも耐変色性を有し、塗料組成物に適用しても良好な光触媒機能を発現し、透明性の高い塗膜を形成可能な銅および亜鉛担持酸化チタン粒子スラリーを提供することができる。また、本発明によれば、良好な光触媒機能を発現し、透明性の高い塗膜を形成可能な塗料組成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明のスラリーの製造方法の一例の各工程を模式的に示したフローチャートである。
図2図2は、本発明のスラリーの製造方法の別の一例の各工程を模式的に示したフローチャートである。
図3図3は、本発明のスラリーの製造方法の別の一例の各工程を模式的に示したフローチャートである。
図4図4は、本発明のスラリーの製造方法の別の一例の各工程を模式的に示したフローチャートである。
図5図5は、本発明のスラリーの製造方法の別の一例の各工程を模式的に示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0030】
本発明において、2以上の実施形態を任意に組み合わせることができる。
【0031】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートからなる群より選択される1種以上を表す。
【0032】
本明細書に記載の材料および化合物は、別段の記載がない限り、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本明細書において、第1、第2、工程(1)、工程(2)、工程(3)などの符号は、ある要素、材料、工程などを他の要素、材料、工程などと区別するために使用しており、その要素または材料の多少および工程の順序を限定することを意図するものではない。
【0034】
本明細書において、数値範囲は、別段の記載がない限り、その範囲の上限値および下限値を含むことを意図している。例えば、1~25nmは、1nm以上25nm以下の範囲を意味する。
【0035】
本発明において、「銅を担持した酸化チタン粒子」、「銅化合物を担持した酸化チタン粒子」、「銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子」、「銅を担持した酸化チタン粒子のスラリー」、「銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子のスラリー」をそれぞれ、単に「銅担持酸化チタン粒子」、「銅化合物担持酸化チタン粒子」、「銅および亜鉛担持酸化チタン粒子」、「銅担持酸化チタン粒子スラリー」、「銅および亜鉛担持酸化チタン粒子スラリー」ということがある。
【0036】
本発明において、「銅を担持した酸化チタン粒子」および「銅担持酸化チタン粒子」は、少なくとも銅を担持した酸化チタン粒子を指す。少なくとも銅を担持した酸化チタン粒子は、銅のみを担持した酸化チタン粒子と、銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子とを包含する。一実施形態では、「銅を担持した酸化チタン粒子」および「銅担持酸化チタン粒子」は、銅のみを担持した酸化チタン粒子である。
【0037】
本発明において、「銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子」および「銅および亜鉛担持酸化チタン粒子」は、少なくとも銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子を指す。少なくとも銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子は、銅および亜鉛のみを担持した酸化チタン粒子と、銅および亜鉛に加えて、他の金属を担持した酸化チタン粒子とを包含する。一実施形態では、「銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子」および「銅および亜鉛担持酸化チタン粒子」は、銅および亜鉛のみを担持した酸化チタン粒子である。
【0038】
本明細書において「50℃でスラリーを貯蔵した場合でも」は、スラリーを貯蔵する温度を50℃に限定する意図ではなく、貯蔵温度の一例である。
【0039】
本発明において、スラリーのL表色系に基づく色相Eab値は、実施例に記載の方法により測定する。
【0040】
銅を担持した酸化チタン粒子のスラリーの製造方法
本発明に係る銅を担持した酸化チタン粒子のスラリーの製造方法は、
酸化チタン粒子のスラリーS1と銅化合物を混合して、酸化チタン粒子と銅化合物との混合物のスラリーS2を得る工程(1)、
前記スラリーS2にアンモニウム化合物を添加して、スラリーS2のpHを9~13に調整し、pHを調整したスラリーS3を得る工程(2)、
前記スラリーS3を加熱して、銅化合物を担持した前記酸化チタン粒子のスラリーS4を得る工程(3)、および
スラリーS4に有機還元剤を添加して、銅を担持した酸化チタン粒子を含むスラリーS5を得る工程(4)、
を含み、
前記酸化チタン粒子が、ルチル型酸化チタン粒子を含み、
前記スラリーS1が、水性媒体を含み、
前記銅化合物が、硫酸銅および硝酸銅からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記銅を担持した酸化チタン粒子の一次平均粒子径が、1~25nmである、
銅を担持した酸化チタン粒子のスラリーの製造方法である。
【0041】
以下、本発明の銅担持酸化チタン粒子スラリーの製造方法の各工程について説明する。
【0042】
・工程(1)
工程(1)では、酸化チタン粒子のスラリーS1と銅化合物を混合して、酸化チタン粒子と銅化合物との混合物のスラリーS2を得る。
【0043】
酸化チタン粒子は、ルチル型酸化チタン粒子を含む。酸化チタン粒子は、ルチル型酸化チタン粒子に加えて、アナターゼ型酸化チタン粒子またはブルッカイト型酸化チタン粒子を含んでいてもよい。
【0044】
ルチル型酸化チタン粒子、アナターゼ型酸化チタン粒子およびブルッカイト型酸化チタン粒子は、光触媒機能を有する公知の酸化チタン粒子を用いることができる。
【0045】
一実施形態では、酸化チタン粒子の総質量に対するルチル型酸化チタン粒子の割合は、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上または100質量%である。別の実施形態では、酸化チタン粒子の総質量に対するルチル型酸化チタン粒子の割合は、100質量%以下、99質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下または60質量%以下である。
【0046】
酸化チタン粒子の一次平均粒子径は、銅担持酸化チタン粒子の一次平均粒子径が1~25nmであれば、特に限定されない。酸化チタン粒子の一次平均粒子径は、例えば、1~25nmである。
【0047】
酸化チタン粒子のスラリーS1は、水性媒体を含む。水性媒体としては、公知の水性媒体を用いることができる。スラリーS1の水性媒体としては、例えば、脱イオン水、蒸留水、水道水などの水;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールなどのアルコール;エチレングリコール;アセトン;テトラヒドロフラン;アセトニトリルなどが挙げられる。
【0048】
一実施形態では、水性媒体は、水、メタノール、エタノールおよび2-プロパノールからなる群より選択される1種以上である。
【0049】
水性媒体が水と水以外の混合物の場合、その混合物の総質量に対する水の割合は、例えば、50~99質量%である。一実施形態では、水性媒体が水と水以外の混合物の場合、その混合物の総質量に対する水の割合は、80質量%以上または90質量%以上である。別の実施形態では、水性媒体が水と水以外の混合物の場合、その混合物の総質量に対する水の割合は、99質量%以下または95質量%以下である。
【0050】
スラリーS1における酸化チタン粒子の固形分濃度は、特に限定されず、適宜調節すればよい。スラリーS1における酸化チタン粒子の固形分濃度は、例えば、3~25%である。一実施形態では、スラリーS1における酸化チタン粒子の固形分濃度は、3%以上、5%以上、10%以上、15%以上または20%以上である。別の実施形態では、スラリーS1における酸化チタン粒子の固形分濃度は、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下または5%以下である。
【0051】
銅化合物は、酸化チタン粒子に担持される銅の源である。銅化合物は、硫酸銅および硝酸銅からなる群から選択される少なくとも1種を含む。この銅化合物は、水和物であってもよい。一実施形態では、銅化合物は、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、硫酸銅(I)および硝酸銅(I)からなる群より選択される1種以上を含む。別の実施形態では、銅化合物は、硫酸銅(II)および硝酸銅(II)からなる群より選択される1種以上を含む。
【0052】
銅化合物は、硫酸銅および硝酸銅以外の一価銅化合物、二価銅化合物およびこれらの水和物などを含んでいてもよい。
【0053】
一価銅化合物としては、例えば、CuO、CuS、CuF、CuCl、CuBr、CuI、Cu(OH)、Cu(CHCOO)および銅(I)と酸との化合物などが挙げられる。
【0054】
二価銅化合物としては、例えば、CuO、CuS、CuF、CuCl、CuBr、CuI、Cu(OH)、Cu(CHCOO)および銅(II)と後述する酸との化合物などが挙げられる。
【0055】
銅(I)または銅(II)との銅化合物を形成する酸としては、例えば、ヒドロキシカルボン酸、酢酸、ギ酸、コハク酸、クエン酸などのカルボン酸;塩酸などが挙げられる。
【0056】
ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、乳酸、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシプロピオン酸などのモノヒドロキシカルボン酸;リンゴ酸、ジヒドロキシ酢酸、ゲンチジン酸などのジヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。
【0057】
銅化合物は、銅化合物単体で用いてもよいし、銅化合物の水溶液または分散液として用いてもよい。
【0058】
スラリーS1と混合する銅化合物の量は、例えば、酸化チタンのモル数に対して、Cuのモル数が0.001~0.1倍のモル数である。一実施形態では、スラリーS1と混合する銅化合物の量は、酸化チタンのモル数に対してCuのモル数が0.001倍以上、0.005倍以上、0.01倍以上または0.05倍以上である。別の実施形態では、スラリーS1と混合する銅化合物の量は、酸化チタンのモル数に対してCuのモル数が、0.1倍以下、0.05倍以下、0.01倍以下または0.005倍以下である。
【0059】
スラリーS1と銅化合物を混合する場合、混合する予定の銅化合物の全量を一度に混合してもよいし、2回以上に分けて、一定間隔または異なる間隔で、同一の量または異なる量で銅化合物を添加して混合してもよい。
【0060】
スラリーS1と銅化合物を混合する場合、スラリーS1を撹拌しながら銅化合物を添加してもよい。スラリーS1を撹拌する場合、撹拌速度は、例えば、周速0.2~3.0m/sである。
【0061】
・工程(2)
工程(2)では、スラリーS2にアンモニウム化合物を添加して、スラリーS2のpHを9~13に調整し、pHを調整したスラリーS3を得る。
【0062】
アンモニウム化合物は、本発明のスラリーにおいて、銅担持酸化チタン粒子の分散安定化と、50℃でスラリーを貯蔵した場合における耐変色性に寄与する。理論に拘束されることを望むものではないが、これは、(1)銅イオンにアンモニウム化合物(例えば、第四級アンモニウム水酸化物)が配位して錯体を形成することにより工程(4)の還元によって過剰な銅単体が生ずることが抑制されるため、耐変色性が向上し、銅担持酸化チタン粒子が分散安定化し、(2)生成した銅担持酸化チタン粒子にアンモニウム化合物(例えば、第四級アンモニウム水酸化物)が吸着することで銅担持酸化チタン粒子の凝集が抑制されるため、銅担持酸化チタン粒子が分散安定化すると推測される。
【0063】
アンモニウム化合物としては、公知のアンモニウム化合物を用いることができる。アンモニウム化合物としては、例えば、第四級アンモニウム水酸化物などが挙げられる。第四級アンモニウム水酸化物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウム水酸化物、テトラブチルアンモニウム水酸化物、トリメチルエチルアンモニウム水酸化物、トリメチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム水酸化物、トリエチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム水酸化物などが挙げられる。
【0064】
本発明に係るスラリーの製造方法の一実施形態では、工程(2)で添加するアンモニウム化合物が、第四級アンモニウム水酸化物を含む。
【0065】
アンモニウム化合物は、アンモニウム化合物単体で用いてもよいし、アンモニウム化合物の水溶液として用いてもよい。
【0066】
スラリーS2に添加するアンモニウム化合物の量は、スラリーS2のpH、すなわち、得られるスラリーS3のpHを9~13の範囲とすることができる量であればよく、特に限定されない。
【0067】
工程(2)では、添加する予定のアンモニウム化合物の全量を一度に添加してもよいし、2回以上に分けて、一定間隔または異なる間隔で、同一の量または異なる量でアンモニウム化合物を添加してもよい。
【0068】
スラリーS3のpHは、9~13の範囲であればよい。スラリーS3のpHを9以上とすることで、分散安定性が向上する。一方、スラリーS3のpHを13以下とすることで、過剰な還元による変色を抑制することができる。一実施形態では、スラリーS3のpHは、9.0以上、9.5以上、10.0以上、10.5以上、11.0以上、11.5以上、12.0以上または12.5以上である。別の実施形態では、スラリーS3のpHは、13.0以下、12.5以下、12.0以下、11.5以下、11.0以下、10.5以下、10.0以下または9.5以下である。
【0069】
工程(2)でのスラリーS2およびスラリーS3の温度は、例えば、50~100℃である。好ましくは、65~80℃である。一実施形態では、工程(2)でのスラリーS2およびスラリーS3の温度は、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上、80℃以上、85℃以上、90℃以上または95℃以上である。別の実施形態では、工程(2)でのスラリーS2およびスラリーS3の温度は、100℃以下、95℃以下、90℃以下、85℃以下、80℃以下、75℃以下、70℃以下、65℃以下、60℃以下または55℃以下である。
【0070】
・工程(3)
工程(3)では、スラリーS3を加熱して、銅化合物担持酸化チタン粒子のスラリーS4を得る。スラリーS3を加熱することで、酸化チタン粒子に銅化合物が担持される。
【0071】
スラリーS3を加熱する温度は、例えば、50~100℃であり、好ましくは、65~80℃である。一実施形態では、スラリーS3を加熱する温度は、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、75℃以上、80℃以上、85℃以上、90℃以上または95℃以上である。別の実施形態では、スラリーS3を加熱する温度は、100℃以下、95℃以下、90℃以下、85℃以下、80℃以下、75℃以下、70℃以下、65℃以下、60℃以下または55℃以下である。
【0072】
スラリーS3を加熱する時間は、例えば、30~180分であり、好ましくは、60~120分である。
【0073】
・工程(4)
工程(4)では、スラリーS4に有機還元剤を添加して、銅を担持した酸化チタン粒子を含むスラリーS5を得る。有機還元剤によって銅化合物が還元されて銅が生じる。
【0074】
有機還元剤は、スラリーS3に含まれる銅化合物担持酸化チタン粒子の銅化合物を還元し、銅担持酸化チタン粒子とする働きを有する。
【0075】
有機還元剤としては、公知の有機還元剤を用いることができる。有機還元剤としては、例えば、アルデヒド結合を有する物質、エチレングリコール、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、メタノール、クエン酸、クエン酸塩、シュウ酸、シュウ酸塩、ギ酸などが挙げられる。アルデヒド結合を有する物質としては、例えば、グルコースが挙げられる。クエン酸塩としては、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸マグネシウムなどが挙げられる。シュウ酸塩としては、例えば、シュウ酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0076】
一実施形態では、有機還元剤は、グルコース、エチレングリコールおよびヒドラジンからなる群より選択される1種以上を含む。別の実施形態では、有機還元剤は、グルコースである。
【0077】
有機還元剤は、有機還元剤単体で用いてもよいし、有機還元剤の水溶液または分散液として用いてもよい。
【0078】
工程(4)で添加する有機還元剤の量は、適宜調節すればよい。添加する有機還元剤の量は、例えば、工程(1)で用いた銅化合物100質量部に対して12質量部以下である。一実施形態では、工程(4)で添加する有機還元剤の量が、工程(1)で用いた銅化合物100質量部に対して0.01~12質量部である。別の実施形態では、工程(4)で添加する有機還元剤の量は、工程(1)で用いた銅化合物100質量部に対して0.01質量部以上、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1.0質量部以上、1.5質量部以上、2.0質量部以上、2.5質量部以上、3.0質量部以上、3.5質量部以上、4.0質量部以上、4.5質量部以上、5.0質量部以上、5.5質量部以上、6.0質量部以上、6.5質量部以上、7.0質量部以上、7.5質量部以上、8.0質量部以上、8.5質量部以上、9.0質量部以上、9.5質量部以上、10.0質量部以上、10.5質量部以上、11.0質量部以上または11.5質量部以上である。さらに別の実施形態では、工程(4)で添加する有機還元剤の量は、工程(1)で用いた銅化合物100質量部に対して12.0質量部以下、11.5質量部以下、11.0質量部以下、10.5質量部以下、10.0質量部以下、9.5質量部以下、9.0質量部以下、8.5質量部以下、8.0質量部以下、7.5質量部以下、7.0質量部以下、6.5質量部以下、6.0質量部以下、5.5質量部以下、5.0質量部以下、4.5質量部以下、4.0質量部以下、3.5質量部以下、3.0質量部以下、2.5質量部以下、2.0質量部以下、1.5質量部以下、1.0質量部以下、0.5質量部以下または0.1質量部以下である。
【0079】
好適な実施形態では、工程(4)で添加する有機還元剤の量は、工程(1)で用いた銅化合物100質量部に対して1.0~10.0質量部である。これにより、スラリーの耐変色性をより向上することができる。
【0080】
工程(4)では、添加する予定の有機還元剤の全量を一度に添加してもよいし、2回以上に分けて、一定間隔または異なる間隔で、同一の量または異なる量で有機還元剤を添加してもよい。
【0081】
工程(4)では、スラリーS4に有機還元剤を添加して、例えば、65~80℃で60~120分撹拌することで銅化合物担持酸化チタン粒子の銅化合物が還元されて、銅担持酸化チタン粒子が生成する。
【0082】
工程(4)で得られる銅担持酸化チタン粒子の一次平均粒子径は、1~25nmである。一実施形態では、銅担持酸化チタン粒子の一次平均粒子径は、1nm以上、5nm以上、10nm以上、15nm以上または20nm以上である。別の実施形態では、銅担持酸化チタン粒子の一次平均粒子径は、25nm以下、20nm以下、15nm以下、10nm以下または5nm以下である。
【0083】
図1は、本発明のスラリーの製造方法の一例の各工程を模式的に示したフローチャートである。図1の例では、工程(1)、工程(2)、工程(3)および工程(4)が順次行われる。
【0084】
図2は、本発明のスラリーの製造方法の別の一例の各工程を模式的に示したフローチャートである。図2の例では、工程(3)の前に、スラリーS3に亜鉛化合物を添加する工程(5)をさらに含む。
【0085】
図3は、本発明のスラリーの製造方法の別の一例の各工程を模式的に示したフローチャートである。図3の例では、工程(3)と同時にスラリーS3に亜鉛化合物を添加する工程(5)を行う。
【0086】
図4は、本発明のスラリーの製造方法の別の一例の各工程を模式的に示したフローチャートである。図4の例では、工程(4)でスラリーS4に亜鉛化合物をさらに添加する。
【0087】
図5は、本発明のスラリーの製造方法の別の一例の各工程を模式的に示したフローチャートである。図5の例では、工程(4)の後に、スラリーS5に亜鉛化合物を添加する工程(6)をさらに含む。
【0088】
以下、任意の工程および処理を説明する。
【0089】
・工程(5)
工程(5)では、工程(3)の前に、または工程(3)と同時に、スラリーS3に亜鉛化合物を加える。この工程(5)によって、工程(4)で銅担持酸化チタン粒子に加えて、または銅担持酸化チタン粒子に代えて、銅および亜鉛担持酸化チタン粒子が得られる。銅および亜鉛担持酸化チタン粒子では、銅のみを担持する酸化チタン粒子に比べて、より高い光触媒機能(例えば、抗ウイルス性)が得られる。
【0090】
亜鉛化合物としては、公知の亜鉛化合物を適宜選択して用いることができる。亜鉛化合物としては、例えば、カルボン酸亜鉛が挙げられる。カルボン酸亜鉛としては、ヒドロキシカルボン酸亜鉛がより好ましい。ヒドロキシカルボン酸亜鉛としては、例えば、リンゴ酸亜鉛、酒石酸亜鉛、クエン酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グリセリン酸亜鉛などが挙げられる。
【0091】
本発明のスラリーの製造方法の一実施形態では、亜鉛化合物は、カルボン酸亜鉛である。別の実施形態では、亜鉛化合物は、ヒドロキシカルボン酸亜鉛である。さらに別の実施形態では、亜鉛化合物は、リンゴ酸亜鉛およびグルコン酸亜鉛からなる群より選択される1種以上である。
【0092】
添加する亜鉛化合物の量は、例えば、銅のモル数に対して、亜鉛のモル数が0.01~1倍である。一実施形態では、添加する亜鉛化合物の量は、銅のモル数に対して、亜鉛のモル数が0.01倍以上、0.05倍以上、0.1倍以上、0.2倍以上、0.3倍以上、0.4倍以上、0.5倍以上、0.6倍以上、0.7倍以上、0.8倍以上または0.9倍以上である。別の実施形態では、添加する亜鉛化合物の量は、銅のモル数に対して、亜鉛のモル数が1.0倍以下、0.9倍以下、0.8倍以下、0.7倍以下、0.6倍以下、0.5倍以下、0.4倍以下、0.3倍以下、0.2倍以下、0.1倍以下または0.05倍以下である。好適な実施形態では、添加する亜鉛化合物の量は、銅のモル数に対して、亜鉛のモル数が0.05~0.3倍である。
【0093】
工程(5)と後述する工程(6)の両方で亜鉛化合物を添加する場合、亜鉛化合物の量は、2つの工程で添加する亜鉛化合物の亜鉛の合計モル数が、例えば、銅のモル数に対して、0.01~1倍である。
【0094】
図3の例では、スラリーS33に亜鉛化合物を添加し、スラリーS3を加熱して、スラリーS4を得ているが、工程(3)と工程(5)を同時に行う場合は、図3の例に限定されず、スラリーS3を加熱し始めることと同時にスラリーS3に亜鉛化合物を添加して、スラリーS4を得てもよいし;またはスラリーS3を加熱し始め、その後、スラリーS3に亜鉛化合物を添加して、スラリーS4を得てもよい。
【0095】
銅および亜鉛担持酸化チタン粒子に担持されている銅と亜鉛の割合は、適宜調節すればよい。例えば、銅および亜鉛担持酸化チタン粒子に担持されている銅と亜鉛の質量の割合は、銅と亜鉛の合計100質量%に対して、銅が50~99質量%、または70~95質量%である。銅と亜鉛の合計100質量%に対して、銅の割合が高くなるほど、抗ウイルス性などの光触媒機能が高まる。一方、銅と亜鉛の合計100質量%に対して、亜鉛の割合が高くなるほど、耐変色性が高まる。
【0096】
銅および亜鉛担持酸化チタン粒子に担持されている銅と亜鉛の割合は、銅および亜鉛担持酸化チタン粒子を含むスラリーを十分低い濃度にまで希釈して、次いで乾燥した後、透過型電子顕微鏡を用いた元素分析(TEM-EDX)によって測定することができる。
【0097】
・工程(6)
工程(6)では、工程(4)の後に、スラリーS5に亜鉛化合物を添加する。この工程(6)によっても、銅担持酸化チタン粒子に加えて、または銅担持酸化チタン粒子に代えて、銅および亜鉛担持酸化チタン粒子が得られる。
【0098】
工程(6)で添加する亜鉛化合物としては、上述した亜鉛化合物と同様である。
【0099】
工程(6)で添加する亜鉛化合物の量は、例えば、銅のモル数に対して、亜鉛のモル数が0.01~1倍である。一実施形態では、添加する亜鉛化合物の量は、銅のモル数に対して、亜鉛のモル数が0.01倍以上、0.05倍以上、0.1倍以上、0.2倍以上、0.3倍以上、0.4倍以上、0.5倍以上、0.6倍以上、0.7倍以上、0.8倍以上または0.9倍以上である。別の実施形態では、添加する亜鉛化合物の量は、銅のモル数に対して、亜鉛のモル数が1.0倍以下、0.9倍以下、0.8倍以下、0.7倍以下、0.6倍以下、0.5倍以下、0.4倍以下、0.3倍以下、0.2倍以下、0.1倍以下または0.05倍以下である。好適な実施形態では、添加する亜鉛化合物の量は、銅のモル数に対して、亜鉛のモル数が0.05~0.3倍である。
【0100】
また、亜鉛化合物は、工程(4)の後のスラリーS5に添加してもよいし、図4に例示したように工程(4)で添加してもよい。工程(4)で亜鉛化合物を添加する場合は、亜鉛化合物を添加するタイミングは特に限定されず、有機還元剤と一緒に添加してもよいし、亜鉛化合物を添加した後に有機還元剤を添加してもよいし、有機還元剤を添加した後に亜鉛化合物を添加してもよい。
【0101】
図示しないが、本発明のスラリーの製造方法は、工程(5)と工程(6)の両方を含んでいてもよい。工程(5)と工程(6)の両方を含む場合、それぞれの工程で添加する亜鉛化合物の量と種類は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0102】
図示しないが、本発明のスラリーの製造方法は、工程(5)と、亜鉛化合物を添加する工程(4)(例えば、図4の工程(4))の両方を含んでいてもよい。このような工程(5)と工程(4)の両方を含む場合、それぞれの工程で添加する亜鉛化合物の量と種類は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0103】
本発明のスラリーの製造方法によって生成する銅および亜鉛担持酸化チタン粒子の一次平均粒子径は、1~25nmである。一実施形態では、銅および亜鉛担持酸化チタン粒子の一次平均粒子径は、1nm以上、5nm以上、10nm以上、15nm以上または20nm以上である。別の実施形態では、銅および亜鉛担持酸化チタン粒子の一次平均粒子径は、25nm以下、20nm以下、15nm以下、10nm以下または5nm以下である。
【0104】
スラリーが銅担持酸化チタン粒子と、銅および亜鉛担持酸化チタン粒子とを含む場合、それぞれの一次平均粒子径は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0105】
本発明のスラリーの製造方法によって得られるスラリー中の銅担持酸化チタン粒子の量は、特に限定されない。本発明のスラリーの製造方法によって得られるスラリー中の銅担持酸化チタン粒子の量は、例えば、スラリー100質量部に対して、3~25質量部である。一実施形態では、スラリー中の銅担持酸化チタン粒子の量は、スラリー100質量部に対して、3質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上または20質量部以上である。別の実施形態では、スラリー中の銅担持酸化チタン粒子の量は、スラリー100質量部に対して、25質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下または5質量部以下である。
【0106】
銅担持酸化チタン粒子または銅および亜鉛担持酸化チタン粒子を含むスラリーは、そのまま使用してもよいし、銅担持酸化チタン粒子または銅および亜鉛担持酸化チタン粒子に対して乾燥、分級、分別、精製、表面処理または塗料用成分の添加など追加の処理を行ってもよい。
【0107】
銅を担持した酸化チタン粒子のスラリー
本発明の銅担持酸化チタン粒子スラリーの第1の態様では、銅担持酸化チタン粒子スラリーは、
銅を担持した酸化チタン粒子と、
アンモニウム化合物と、
水性媒体と、
を含む、銅を担持した酸化チタン粒子のスラリーであって、
前記銅を担持した酸化チタン粒子の一次平均粒子径が、1~25nmであり、
前記銅を担持した酸化チタン粒子中の酸化チタンが、ルチル型酸化チタンを含み、
前記スラリーのpHが、9~13の範囲内であり、
前記スラリーを50℃で60日間貯蔵する前後のL表色系に基づく色相の色差ΔEab値が5以下である。
【0108】
第1の態様におけるスラリーの銅担持酸化チタン粒子、アンモニウム化合物および水性媒体については、上述した製造方法で説明したものと同様である。
【0109】
一実施形態では、第1の態様におけるスラリーのアンモニウム化合物は、第四級アンモニウム水酸化物を含む。別の実施形態では、第1の態様におけるスラリーのアンモニウム化合物は、第四級アンモニウム水酸化物である。
【0110】
第1の態様の一実施形態では、銅担持酸化チタン粒子スラリーは、銅担持酸化チタン粒子に加えて、銅および亜鉛担持酸化チタン粒子を含む。銅担持酸化チタン粒子と、銅および亜鉛担持酸化チタン粒子との合計質量に対する、銅担持酸化チタン粒子の割合は、例えば、0.1~99.9質量%である。
【0111】
第1の態様のスラリーのpHは、9~13の範囲内である。一実施形態では、第1の態様のスラリーのpHは、9.0以上、9.5以上、10.0以上、10.5以上、11.0以上、11.5以上、12.0以上または12.5以上である。別の実施形態では、第1の態様のスラリーのpHは、13.0以下、12.5以下、12.0以下、11.5以下、11.0以下、10.5以下、10.0以下または9.5以下である。
【0112】
第1の態様のスラリーを50℃で60日間貯蔵する前後のL表色系に基づく色相の色差ΔEab値は、5以下である。すなわち、スラリーを50℃で60日間貯蔵する前のL表色系に基づく色相と、スラリーを50℃で60日間貯蔵した後のL表色系に基づく色相との差である色差ΔEab値が、5以下である。この色差は、例えば、0~5の範囲である。色差ΔEabの算出式は、ΔEab=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2である。
【0113】
一実施形態では、第1の態様のスラリーは、銅イオンと前記アンモニウム化合物(例えば、第四級アンモニウム水酸化物)との錯体をさらに含む。これにより、50℃でスラリーを貯蔵した場合の耐変色性が高まる。理論に拘束されることを望むものではないが、これは、スラリー中の余剰の銅イオンにアンモニウム化合物(例えば、第四級アンモニウム水酸化物)が配位して錯体を形成することにより過剰な銅単体が生ずることが抑制されるためと推測される。別の実施形態では、第1の態様のスラリーは、銅イオンと第四級アンモニウム水酸化物との錯体をさらに含む。
【0114】
第1の態様のスラリー中の銅担持酸化チタン粒子の量は、特に限定されない。第1の態様のスラリー中の銅担持酸化チタン粒子の量は、例えば、スラリー100質量部に対して、3~25質量部である。一実施形態では、スラリー中の銅担持酸化チタン粒子の量は、スラリー100質量部に対して、3質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上または20質量部以上である。別の実施形態では、スラリー中の銅担持酸化チタン粒子の量は、スラリー100質量部に対して、25質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下または5質量部以下である。
【0115】
第1の態様のスラリー中のアンモニウム化合物の量は、特に限定されない。第1の態様のスラリー中のアンモニウム化合物の量は、例えば、スラリー100質量部に対して、0.1~5質量部である。一実施形態では、スラリー中のアンモニウム化合物の量は、スラリー100質量部に対して、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1.0質量部以上、1.5質量部以上、2.0質量部以上、2.5質量部以上、3.0質量部以上、3.5質量部以上、4.0質量部以上または4.5質量部以上である。別の実施形態では、スラリー中のアンモニウム化合物の量は、スラリー100質量部に対して、5質量部以下、4.5質量部以下、4.0質量部以下、3.5質量部以下、3.0質量部以下、2.5質量部以下、2.0質量部以下、1.5質量部以下、1.0質量部以下または0.5質量部以下である。
【0116】
銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子のスラリー
本発明の銅担持酸化チタン粒子スラリーの第2の態様では、銅担持酸化チタン粒子スラリーは、
銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子と、
アンモニウム化合物と、
水性媒体とを含む、銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子のスラリーであって、
前記銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子の一次平均粒子径が、1~25nmであり、
前記銅および亜鉛を担持した酸化チタン粒子中の酸化チタンが、ルチル型酸化チタンを含み、
前記スラリーのpHが、9~13の範囲内である。
【0117】
第2の態様におけるスラリーの銅担持酸化チタン粒子、アンモニウム化合物および水性媒体については、上述した製造方法で説明したものと同様である。
【0118】
一実施形態では、第2の態様におけるスラリーのアンモニウム化合物は、第四級アンモニウム水酸化物を含む。別の実施形態では、第2の態様におけるスラリーのアンモニウム化合物は、第四級アンモニウム水酸化物である。
【0119】
一実施形態では、第2の態様のスラリーは、銅イオンと前記アンモニウム化合物との錯体および亜鉛イオンとアンモニウム化合物との錯体からなる群より選択される1種以上をさらに含む。これにより、50℃でスラリーを貯蔵した場合の耐変色性が高まる。理論に拘束されることを望むものではないが、これは、スラリー中の余剰の銅イオンにアンモニウム化合物(例えば、第四級アンモニウム水酸化物)が配位して錯体を形成することにより過剰な銅単体が生ずることが抑制されるためと推測される。別の実施形態では、第2の態様のスラリーは、銅イオンと第四級アンモニウム水酸化物との錯体および亜鉛イオンと第四級アンモニウム水酸化物との錯体からなる群より選択される1種以上をさらに含む。
【0120】
第2の態様の一実施形態では、銅および亜鉛担持酸化チタン粒子スラリーは、銅および亜鉛担持酸化チタン粒子に加えて、銅担持酸化チタン粒子(例えば、銅のみを担持する酸化チタン粒子)を含む。銅担持酸化チタン粒子と、銅および亜鉛担持酸化チタン粒子との合計質量に対する、銅および亜鉛担持酸化チタン粒子の割合は、例えば、0.1~99.9質量%である。
【0121】
第2の態様のスラリーのpHは、9~13の範囲内である。一実施形態では、第2の態様のスラリーのpHは、9.0以上、9.5以上、10.0以上、10.5以上、11.0以上、11.5以上、12.0以上または12.5以上である。別の実施形態では、第2の態様のスラリーのpHは、13.0以下、12.5以下、12.0以下、11.5以下、11.0以下、10.5以下、10.0以下または9.5以下である。
【0122】
第2の態様のスラリー中の銅および亜鉛担持酸化チタン粒子の量は、特に限定されない。第2の態様のスラリー中の銅および亜鉛担持酸化チタン粒子の量は、例えば、スラリー100質量部に対して、3~25質量部である。一実施形態では、スラリー中の銅および亜鉛担持酸化チタン粒子の量は、スラリー100質量部に対して、3質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上または20質量部以上である。別の実施形態では、スラリー中の銅および亜鉛担持酸化チタン粒子の量は、スラリー100質量部に対して、25質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下または5質量部以下である。
【0123】
第2の態様のスラリー中のアンモニウム化合物の量は、特に限定されない。第2の態様のスラリー中のアンモニウム化合物の量は、例えば、スラリー100質量部に対して、0.1~5質量部である。一実施形態では、スラリー中のアンモニウム化合物の量は、スラリー100質量部に対して、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1.0質量部以上、1.5質量部以上、2.0質量部以上、2.5質量部以上、3.0質量部以上、3.5質量部以上、4.0質量部以上または4.5質量部以上である。別の実施形態では、スラリー中のアンモニウム化合物の量は、スラリー100質量部に対して、5質量部以下、4.5質量部以下、4.0質量部以下、3.5質量部以下、3.0質量部以下、2.5質量部以下、2.0質量部以下、1.5質量部以下、1.0質量部以下または0.5質量部以下である。
【0124】
上述したように、本発明のスラリーは透明性の高い塗膜を形成可能であるため、塗料組成物は、透明なクリヤー塗膜を形成するためのクリヤー塗料および不透明な有色または不透明な無色の塗膜を形成するためのエナメル塗料に好適に用いることができる。
【0125】
第1の態様および第2の態様のスラリーを塗布する対象、すなわち、被塗物は、特に限定されず、抗ウイルス性、抗菌性または光触媒機能が要求される対象とすることができる。第1の態様および第2の態様のスラリーを塗布する対象としては、例えば、自動車、電車などの車両の内装および外装;航空機の内装および外装;建築物の内装および外装;便器、ドアノブ、ボタン、手すり、買い物かご、蛇口のハンドルないしレバー、テーブル、机、いす、キーボード、タッチパネル、スマートフォン、タブレットコンピューター、リモコン、マイク、玩具;冷蔵庫、エアコン、空気清浄機などの家電製品、エアコンまたは空気清浄機などのフィルター;医療機器、アクリル板などの飛沫感染防止用パーティションなどが挙げられる。この他、特許文献2に記載の用途に用いてもよい。
【0126】
塗料組成物の製造方法
本発明に係る塗料組成物の製造方法は、
本発明の製造方法により得られた銅担持酸化チタン粒子スラリー、銅および亜鉛担持酸化チタン粒子スラリー、第1の態様のスラリーならびに第2の態様のスラリーからなる群より選択される1種以上と、
バインダー樹脂と、
溶媒と、を混合する工程、
を含む、塗料組成物の製造方法である。
【0127】
塗料組成物中の銅担持酸化チタン粒子の量は、例えば、塗料組成物100質量部に対して0.1~10質量部である。一実施形態では、塗料組成物中の銅担持酸化チタン粒子の量は、塗料組成物100質量部に対して、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1.0質量部以上、2.0質量部以上、3.0質量部以上、4.0質量部以上、5.0質量部以上、6.0質量部以上、7.0質量部以上、8.0質量部以上または9.0質量部以上である。別の実施形態では、塗料組成物中の銅担持酸化チタン粒子の量は、塗料組成物100質量部に対して、10.0質量部以下、9.0質量部以下、8.0質量部以下、7.0質量部以下、6.0質量部以下、5.0質量部以下、4.0質量部以下、3.0質量部以下、2.0質量部以下、1.0質量部以下または0.5質量部以下である。
【0128】
バインダー樹脂は、特に限定されず、公知の塗料組成物のバインダー樹脂を用いることができる。バインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0129】
塗料組成物中のバインダー樹脂の量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。例えば、塗料組成物100質量部に対して0.1~70質量部である。
【0130】
溶媒としては、特に限定されず、公知の塗料組成物の溶媒を用いることができる。溶媒としては、例えば、脱イオン水、イオン交換水、純水、蒸留水、精製水、水道水などの水;メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノールなどのアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類;ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1、3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、1、3-オクチレングリコールなどのグリコール類;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン(NMP)などのアミド類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、メシチレン、ドデシルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメチレンなどのハロゲン系溶媒などが挙げられる。
【0131】
塗料組成物の製造方法では、銅担持酸化チタンスラリーまたは銅および亜鉛担持酸化チタン粒子スラリー、バインダー樹脂および溶媒に加えて、その他の成分を添加する工程を含んでいてもよい。その他の成分としては、顔料、顔料分散剤、造膜助剤、凍結防止剤、タレ防止剤、沈降防止剤、架橋促進剤、硬化剤、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤、防カビ剤、紫外線安定剤、粘性調整剤などが挙げられる。
【0132】
一実施形態では、塗料組成物は、クリヤー塗料組成物またはエナメル塗料組成物である。別の実施形態では、塗料組成物は、クリヤー塗料組成物である。さらに別の実施形態では、塗料組成物は、内装用塗料組成物である。さらに別の実施形態では、塗料組成物は、外装用塗料組成物である。
【実施例0133】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0134】
実施例で用いた材料は以下のとおりである。
・酸化チタン粒子
酸化チタン粒子:テイカ社製の商品名「TS-310」、ルチル型、平均一次粒子径8nm
比較酸化チタン粒子スラリー:石原産業社製の商品名「TTO-55(A)」、ルチル型、平均一次粒子径30~50nm、水酸化アルミニウムで表面を修飾、固形分濃度95%
・銅化合物
硫酸銅(II)水溶液:富士フイルム和光純薬社製の商品名「硫酸銅(II)溶液」、濃度10%
硝酸銅(II)水溶液:富士フイルム和光純薬社製の商品名「硝酸銅(II)三水和物」、濃度99%
比較銅化合物:CuCl:関東化学社製の塩化銅(II)二水和物、濃度99.9%
・アンモニウム化合物
テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液:SACHEM社製の商品名「Tetraethylammonium Hydroxide, 35% Aqueous」、濃度35%、表1では「TEAH」と表記
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液:SACHEM社製の商品名「Tetramethylammonium Hydroxide,98%,Pentahydrate Crystals」、濃度98%、表1では「TMAH」と表記
・有機還元剤
グルコース:富士フイルム和光純薬社製の商品名「D(+)-グルコース」、濃度98%
エチレングリコール:富士フイルム和光純薬社製の商品名「エチレングリコール」、濃度99.5%
・亜鉛化合物
グルコン酸亜鉛:富士フイルムワコーケミカル社製の商品名「グルコン酸亜鉛n水和物」、濃度88%
リンゴ酸亜鉛:善ケミカル社製の商品名「リンゴ酸亜鉛」、濃度99%
・その他
リンゴ酸:富士フイルム和光純薬社製の商品名「DL-リンゴ酸」、濃度99%
アンモニア水:富士フイルム和光純薬社製の商品名「アンモニア水」、濃度25~30%
【0135】
クリヤー塗料組成物用材料
・ヒドロキシ基含有アクリル樹脂エマルション:DIC社製の商品名「バーノックWE-306」、樹脂固形分45%
・消泡剤:エボニック社製の商品名「TEGO(登録商標)Formex800」
・表面調整剤:ビックケミー社製の商品名「BYK-307」
・酸化高密度ポリエチレンワックス:ビックケミー社製の商品名「AQUACER 515」
・イソシアヌレート化合物:住化コベストロウレタン社製の商品名「バイヒジュール(登録商標)3100」
【0136】
実施例で用いた装置は、以下のとおりである。
色彩色差計:コニカミノルタ社製、商品名「CR-400」
ヘーズメーター:日本電色工業社製、商品名「NDH 2000」
光源:東芝ライテック社製の商品名「ネオラインFL20S・W」、20W、白色蛍光灯
紫外線カットフィルター:日東樹脂工業社製の商品名「N-169」
照度計:トプコン社製の商品名「IM-5」
【0137】
実施例で使用した以下の化合物は、以下の濃度に調整した。
酸化チタン粒子スラリーおよび比較酸化チタン粒子スラリー:固形分濃度6.0%、水媒体
銅化合物および比較銅化合物:濃度10%の水溶液
アンモニウム化合物:濃度35%の水溶液
亜鉛化合物:濃度8%の水溶液
有機還元剤:濃度2.5%の水溶液
リンゴ酸:濃度35%の水溶液
アンモニア水:濃度25%の水溶液
【0138】
実施例1
図1に示した順序で銅担持酸化チタン粒子スラリーを製造した。具体的には、以下の工程を行った。各原料の量を表1に示す。表1中、配合量はスラリーまたは水溶液の質量部である。
【0139】
・工程(1)
室温で500mLの丸底フラスコに、濃度6%に調整した酸化チタン粒子のスラリーS1を入れた。次いで、スラリーS1と硝酸銅(II)水溶液を混合してスラリーS2を得た。
【0140】
・工程(2)
室温でスラリーS2にテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を添加して、pHを10に調整し、スラリーS3を得た。
【0141】
・工程(3)
スラリーS3を温度65℃に昇温し、温度65℃を維持しながら1時間加熱して、銅化合物担持酸化チタン粒子のスラリーS4を得た。
【0142】
・工程(4)
次いで、スラリーS4にグルコース水溶液を添加して、温度65℃を維持しながら1時間撹拌した。次いで、そのスラリーS4を25℃まで冷却した。次いで、メッシュフィルターでスラリーS4をろ過し、ろ液としてスラリーS5を得た。スラリーS5は一次平均粒子径8nmの銅担持酸化チタン粒子を含んでいた。
【0143】
実施例2~6
実施例1において、原料の種類および量を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様に工程(1)~(4)を行い、銅担持酸化チタン粒子スラリーS5を得た。
【0144】
実施例7
図2に示した順序で銅担持酸化チタン粒子スラリーを製造した。すなわち、実施例1の工程(2)の後かつ工程(3)の前に、工程(5)として、スラリーS3にグルコン酸亜鉛を添加し、撹拌して、銅化合物および亜鉛化合物担持酸化チタン粒子を含むスラリーS4を得た。その後、実施例1と同様に工程(4)を行った。各原料の量を表1に示す。スラリーS5は一次平均粒子径8nmの銅担持酸化チタン粒子(銅および亜鉛担持酸化チタン粒子)を含んでいた。
【0145】
実施例8
実施例7において、原料の種類および量を表1に示すように変更したこと以外は、実施例7と同様に各工程を行い、スラリーS5を得た。
【0146】
実施例9
図4に示した順序で銅担持酸化チタン粒子スラリーを製造した。すなわち、実施例1の工程(4)として、スラリーS4にグルコース水溶液を添加し、次いで、グルコン酸亜鉛を添加し、温度65℃を維持しながら1時間撹拌した。次いで、そのスラリーS4を25℃まで冷却した。次いで、メッシュフィルターでスラリーS4をろ過し、ろ液としてスラリーS5を得た。スラリーS5は一次平均粒子径8nmの銅担持酸化チタン粒子(銅および亜鉛担持酸化チタン粒子)を含んでいた。各原料の量を表1に示す。
【0147】
実施例10
実施例9において、原料の種類および量を表1に示すように変更したこと以外は、実施例9と同様に各工程を行い、スラリーS5を得た。
【0148】
実施例11
実施例7と同様に、工程(5)までを行い、その後、実施例9と同様に工程(4)を行い、スラリーS5得た。スラリーS5は一次平均粒子径8nmの銅担持酸化チタン粒子(銅および亜鉛担持酸化チタン粒子)を含んでいた。各原料の量を表1に示す。
【0149】
実施例12
実施例7において、各原料の量を表1にように変更し、酸化チタン粒子に担持されている銅と亜鉛の質量の合計に対する銅の質量割合を50質量%としたこと以外は、実施例7と同様に各工程を行い、銅化合物および亜鉛化合物担持酸化チタン粒子を含むスラリーS4を得た。
【0150】
比較例1
実施例1において、原料の種類および量を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様に各工程を行い、比較スラリーを得た。
【0151】
比較例2
実施例1において、原料の種類および量を表1に示すように変更し、工程(2)でアンモニウム化合物に代えてリンゴ酸を添加したこと以外は、実施例1と同様に各工程を行い、比較スラリーを得た。
【0152】
比較例3
実施例1において、原料の種類および量を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様に各工程を行い、比較スラリーを得た。
【0153】
比較例4
実施例1において、原料の種類および量を表1に示すように変更し、工程(4)で有機還元剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様に各工程を行い、比較スラリーを得た。
【0154】
比較例5
6.42質量部のアンモニア水と7.86質量部の硝酸銅(II)水溶液を混合して、硝酸銅のアンモニア錯体を得た。次に、84.2質量部の実施例1のスラリーS1にこのアンモニア錯体の溶液を添加して撹拌した。次に、このスラリーに1.52質量部のグルコース水溶液を添加し、温度65℃を維持しながら1時間撹拌した。次いで、そのスラリーを25℃まで冷却した。次いで、メッシュフィルターでスラリーをろ過し、ろ液として比較スラリーを得た。各原料の量を表1に示す。
【0155】
・耐変色性の評価
各実施例および比較例から得られたスラリーまたは比較スラリーをガラスセルに入れ、色彩色差計を用いて色相(L色空間)を測定した。次いで、そのスラリーまたは比較スラリーを50℃で60日間静置して貯蔵した。貯蔵後のスラリーまたは比較スラリーについても同様に色相を測定した。そして、貯蔵前後の色相の色差ΔEabを基に以下の評価基準でスラリーの耐変色性を評価した。色差ΔEabの値と結果を表1に合わせて示す。
合格:色差ΔEabが5以下である
不合格:色差ΔEabが5を超える
【0156】
クリヤー塗料組成物の調製
1Lの金属製容器に、ヒドロキシ基含有アクリル樹脂エマルション60.0質量部、水道水25.5質量部を添加して、ディスパーで撹拌した。次いで消泡剤0.1質量部、表面調整剤0.3質量部、酸化高密度ポリエチレンワックス2.2質量部、各実施例および比較例から得られたスラリーまたは比較スラリーを、銅担持酸化チタン粒子の固形分として8質量部ならびにイソシアヌレート化合物4.5質量部を順次添加してディスパーで撹拌して、クリヤー塗料組成物を得た。
【0157】
試験板の作成
得られたクリヤー塗料組成物を、ガラス板上にはけを用いて乾燥塗布量0.005gとなるように塗装し、室温で7日乾燥してクリヤー塗膜を形成し、クリヤー塗膜を有する試験板を作成した。
【0158】
・透明性の評価
得られたクリヤー塗膜を有する試験板について、ヘーズメーターを用いてヘーズ値を測定した。そして、以下の基準で透明性を評価した。結果を表1に合わせて示す。
合格:ヘーズ値が5以下である
不合格:ヘーズ値が5を超える
【0159】
・抗ウイルス性の評価
作成した試験板を用いて、JIS R 1756(2020)に準拠して、バクテリオファージQβを用いて、抗ウイルス試験を実施した。より具体的には、試験板の表面および裏面にそれぞれ、クリンベンチ内で殺菌灯からの光を15分間照射して、滅菌処理した。15Wの殺菌灯(波長254nm)を、クリンベンチの側面に各1本、計2本設置した。次いで、白色蛍光灯の光源から380nm以上の可視光を紫外線カットフィルターを通して、照度500ルクスで4時間照射した。照度は、照度計を用いて測定した。明所の抗ウイルス活性値Vを以下の式から算出した。基準板は、抗ウイルス加工が成されていないソーダガラス板を用いた。
V=Log10(UV/TV)
TV:光照射後の試験板あたりのバクテリオファージ感染価(pfu)
UV:光照射後の基準板あたりのバクテリオファージ感染価(pfu)
そして、以下の基準で抗ウイルス性を評価した。結果を表1に合わせて示す。
AA:Vが3以上
A:Vが2以上3未満
B:Vが1以上2未満
C:Vが1未満
【0160】
【表1】
【0161】
本発明によれば、50℃でスラリーを貯蔵した場合でも耐変色性を有し、塗料組成物に適用しても良好な光触媒機能を発現し、透明性の高い塗膜を形成可能な銅担持酸化チタン粒子スラリーの製造方法を提供することができた。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明によれば、50℃でスラリーを貯蔵した場合でも耐変色性を有し、塗料組成物に適用しても良好な光触媒機能を発現し、透明性の高い塗膜を形成可能な銅担持酸化チタン粒子スラリーの製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、50℃でスラリーを貯蔵した場合でも耐変色性を有し、塗料組成物に適用しても良好な光触媒機能を発現し、透明性の高い塗膜を形成可能な銅担持酸化チタン粒子スラリーを提供することができる。また、本発明によれば、50℃でスラリーを貯蔵した場合でも耐変色性を有し、塗料組成物に適用しても良好な光触媒機能を発現し、透明性の高い塗膜を形成可能な銅および亜鉛担持酸化チタン粒子スラリーを提供することができる。また、本発明によれば、良好な光触媒機能を発現し、透明性の高い塗膜を形成可能な塗料組成物の製造方法を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5