(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092935
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】光学積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240701BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240701BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20240701BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240701BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/023
B32B7/12
B32B7/022
B32B27/30 102
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023131841
(22)【出願日】2023-08-14
(31)【優先権主張番号】P 2022208404
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 彰二
(72)【発明者】
【氏名】松野 健次
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AA18
2H149AB13
2H149BA02
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2H149FD05
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2H149FD35
4F100AJ06E
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4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】ヒートショック試験を行った場合にも、液晶位相差層に発生するクラックを抑制することができる光学積層体を提供する。
【解決手段】光学積層体は、偏光素子を含む偏光板、粘接着剤層、及び第1液晶位相差層をこの順に備える。第1液晶位相差層は、重合性液晶化合物の重合体を含む第1重合体層、又は、第1重合体層と第1配向層との多層体である。第1液晶位相差層の第1表面の表面硬度(H1)と、第1液晶位相差層の第1表面とは反対側の第2表面の表面硬度(H2)との比(H1/H2)は、0.90以上1.10以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光素子を含む偏光板、粘接着剤層、及び第1液晶位相差層をこの順に備えた光学積層体であって、
前記第1液晶位相差層は、重合性液晶化合物の重合体を含む第1重合体層、又は、前記第1重合体層と第1配向層との多層体であり、
前記第1液晶位相差層の第1表面の表面硬度(H1)と、前記第1液晶位相差層の前記第1表面とは反対側の第2表面の表面硬度(H2)との比(H1/H2)は、0.90以上1.10以下である、光学積層体。
【請求項2】
前記粘接着剤層の温度23℃における押込み弾性率と、前記粘接着剤層の厚みとの積は、300MPa・μm以上である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記第1液晶位相差層は、前記第1重合体層である、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記偏光素子は、ポリビニルアルコール系樹脂及びホウ素を含有する偏光子である、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記第1液晶位相差層は、1/2液晶位相差層又は1/4液晶位相差層である、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記光学積層体は、さらに、前記粘接着剤層と前記第1液晶位相差層との間に第2液晶位相差層を備え、
前記第2液晶位相差層は、重合性液晶化合物の重合体を含む第2重合体層、又は、前記第2重合体層と第2配向層との多層体である、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記第1液晶位相差層と前記第2液晶位相差層との積層体は、下記式(1)’及び(2)’の関係を満たす、請求項6に記載の光学積層体。
100≦Re(550)≦180 (1)’
Re(450)/Re(550)≦1.00 (2)’
[式(1)’及び式(2)’中、
Re(450)は波長450nmの光に対する面内位相差値を表し、
Re(550)は波長550nmの光に対する面内位相差値を表す。]
【請求項8】
前記偏光板は、前記偏光素子の片面又は両面に偏光素子保護フィルムを有する、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項9】
さらに、前記第1液晶位相差層の前記粘接着剤層側とは反対側に、基材層を備え、
前記基材層は、前記第1液晶位相差層に直接接している、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項10】
偏光素子を含む偏光板、粘接着剤層、及び第1液晶位相差層をこの順に備えた光学積層体の製造方法であって、
前記第1液晶位相差層は、重合性液晶化合物の重合体を含む第1重合体層、又は、前記第1重合体層と第1配向層との多層体であり、
前記製造方法は、
基材層上又は前記基材層上に形成した前記第1配向層上に、重合性液晶化合物を含む液晶位相差層形成用組成物を塗布することにより、前記基材層及び塗布層を有する基材付き塗布層を得る工程(S1)と、
前記基材付き塗布層の両面それぞれに活性エネルギー線を照射することにより、前記塗布層中の前記重合性液晶化合物を重合して前記第1重合体層を形成する工程(S2)と、を含む、光学積層体の製造方法。
【請求項11】
前記活性エネルギー線は、紫外線であり、
前記工程(S2)において前記基材付き塗布層の両面に照射される前記活性エネルギー線の合計の積算光量は、10mJ/cm2以上3000mJ/cm2以下である、請求項10に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項12】
さらに、前記偏光板、前記粘接着剤層、前記第1液晶位相差層、及び前記基材層をこの順に備えた基材付き光学積層体を得る工程と、
前記基材付き光学積層体から、前記基材層を剥離する工程を含む、請求項10又は11に記載の光学積層体の製造方法。
【請求項13】
前記基材付き光学積層体は、さらに、前記粘接着剤層と前記第1液晶位相差層との間に、第2液晶位相差層を含み、
前記第2液晶位相差層は、重合性液晶化合物の重合体を含む第2重合体層、又は、前記第2重合体層と第2配向層との多層体である、請求項12に記載の光学積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止性能を有する光学積層体として、偏光素子及び位相差素子を含む円偏光板が知られている。円偏光板が有する位相差素子としては、λ/4層及びλ/2層が挙げられる(例えば、特許文献1)。円偏光板は、例えば、偏光素子を含む偏光板と、λ/4層及びλ/2層が積層された位相差体とを、粘接着剤を介して積層することにより得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機EL表示装置等の表示装置に適用される円偏光板の薄型化への要求に対応するために、位相差素子として、重合性液晶化合物の重合体の層である重合体層を有する液晶位相差層を用いることがある。液晶位相差層の重合体層は、基材層上又は基材層に形成した配向層上に重合性液晶化合物を含む組成物を塗布して塗布層を形成し、当該塗布層に活性エネルギー線を照射して重合性液晶化合物を重合することによって得ることができる。重合体層を有する液晶位相差層を備えた円偏光板のヒートショック試験を行うと、液晶位相差層にクラック(割れ)が発生することがあった。
【0005】
本発明は、ヒートショック試験を行った場合にも、液晶位相差層に発生するクラックを抑制することができる光学積層体及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の光学積層体及びその製造方法を提供する。
〔1〕 偏光素子を含む偏光板、粘接着剤層、及び第1液晶位相差層をこの順に備えた光学積層体であって、
前記第1液晶位相差層は、重合性液晶化合物の重合体を含む第1重合体層、又は、前記第1重合体層と第1配向層との多層体であり、
前記第1液晶位相差層の第1表面の表面硬度(H1)と、前記第1液晶位相差層の前記第1表面とは反対側の第2表面の表面硬度(H2)との比(H1/H2)は、0.90以上1.10以下である、光学積層体。
〔2〕 前記粘接着剤層の温度23℃における押込み弾性率と、前記粘接着剤層の厚みとの積は、300MPa・μm以上である、〔1〕に記載の光学積層体。
〔3〕 前記第1液晶位相差層は、前記第1重合体層である、〔1〕又は〔2〕に記載の光学積層体。
〔4〕 前記偏光素子は、ポリビニルアルコール系樹脂及びホウ素を含有する偏光子である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔5〕 前記第1液晶位相差層は、1/2液晶位相差層又は1/4液晶位相差層である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔6〕 前記光学積層体は、さらに、前記粘接着剤層と前記第1液晶位相差層との間に第2液晶位相差層を備え、
前記第2液晶位相差層は、重合性液晶化合物の重合体を含む第2重合体層、又は、前記第2重合体層と第2配向層との多層体である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔7〕 前記第1液晶位相差層と前記第2液晶位相差層との積層体は、下記式(1)’及び(2)’の関係を満たす、〔6〕に記載の光学積層体。
100≦Re(550)≦180 (1)’
Re(450)/Re(550)≦1.00 (2)’
[式(1)’及び式(2)’中、
Re(450)は波長450nmの光に対する面内位相差値を表し、
Re(550)は波長550nmの光に対する面内位相差値を表す。]
〔8〕 前記偏光板は、前記偏光素子の片面又は両面に偏光素子保護フィルムを有する、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔9〕 さらに、前記第1液晶位相差層の前記粘接着剤層側とは反対側に、基材層を備え、
前記基材層は、前記第1液晶位相差層に直接接している、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔10〕 偏光素子を含む偏光板、粘接着剤層、及び第1液晶位相差層をこの順に備えた光学積層体の製造方法であって、
前記第1液晶位相差層は、重合性液晶化合物の重合体を含む第1重合体層、又は、前記第1重合体層と第1配向層との多層体であり、
前記製造方法は、
基材層上又は前記基材層上に形成した前記第1配向層上に、重合性液晶化合物を含む液晶位相差層形成用組成物を塗布することにより、前記基材層及び塗布層を有する基材付き塗布層を得る工程(S1)と、
前記基材付き塗布層の両面それぞれに活性エネルギー線を照射することにより、前記塗布層中の前記重合性液晶化合物を重合して前記第1重合体層を形成する工程(S2)と、を含む、光学積層体の製造方法。
〔11〕 前記活性エネルギー線は、紫外線であり、
前記工程(S2)において前記基材付き塗布層の両面に照射される前記紫外線の合計の積算光量は、10mJ/cm2以上3000mJ/cm2以下である、〔10〕に記載の光学積層体の製造方法。
〔12〕 さらに、前記偏光板、前記粘接着剤層、前記第1液晶位相差層、及び前記基材層をこの順に備えた基材付き光学積層体を得る工程と、
前記基材付き光学積層体から、前記基材層を剥離する工程を含む、〔10〕又は〔11〕に記載の光学積層体の製造方法。
〔13〕 前記基材付き光学積層体は、さらに、前記粘接着剤層と前記第1液晶位相差層との間に、第2液晶位相差層を含み、
前記第2液晶位相差層は、重合性液晶化合物の重合体を含む第2重合体層、又は、前記第2重合体層と第2配向層との多層体である、〔12〕に記載の光学積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ヒートショック試験を行った場合にも、液晶位相差層に発生するクラックを抑制することができる光学積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の他の一実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る光学積層体の製造工程を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の他の一実施形態に係る光学積層体の製造工程を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して光学積層体及び光学積層体の製造方法の好ましい実施形態について説明する。
【0010】
<光学積層体>
図1及び
図2は、本発明の一実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。
図1及び
図2に示すように、光学積層体1,2は、偏光素子を含む偏光板50、第1粘接着剤層31(粘接着剤層)、及び第1液晶位相差層11をこの順に備える。光学積層体1,2において、偏光板50と第1粘接着剤層31とは直接接していることが好ましい。光学積層体1,2は、通常、偏光板50側が視認側となる。
【0011】
光学積層体2は、
図2に示すように、第1粘接着剤層31と第1液晶位相差層11との間に第2液晶位相差層21を備える。第1液晶位相差層11と第2液晶位相差層21とは、直接接して積層されていてもよく、これら2つの層の間に配置される第2粘接着剤層32を介して積層されていてもよい(
図2)。光学積層体2が第2粘接着剤層32を有する場合、第1液晶位相差層11と第2粘接着剤層32とは直接接していることが好ましく、第2粘接着剤層32と第2液晶位相差層21とは直接接していることが好ましい。
【0012】
光学積層体1,2は、後述するように、第1液晶位相差層11の偏光板50側とは反対側に、第1基材層16を有していてもよい(
図3の(c)、
図4の(d))。第1基材層16は、第1液晶位相差層11を支持し、第1液晶位相差層11に直接接していることが好ましい。第1基材層16は、第1液晶位相差層11に対して剥離可能であることが好ましい。
【0013】
光学積層体1,2は、後述する表示装置等に用いることができる。
【0014】
(第1液晶位相差層)
第1液晶位相差層11は、重合性液晶化合物の重合体を含む第1重合体層、又は、第1重合体層と第1配向層との多層体である。第1重合体層に含まれる重合体は通常、重合性液晶化合物が配向した状態で重合した重合体である。第1液晶位相差層11は、第1重合体層であることが好ましい。第1重合体層は、後述するように重合性液晶化合物を含む第1液晶位相差層形成用組成物(液晶位相差層形成用組成物)から形成される。第1重合体層は位相差を発現する層であることができる。第1液晶位相差層11が第1配向層を含む場合、第1重合体層と第1配向層とは通常、直接接している。第1配向層は、第1重合体層の第1粘接着剤層31側に配置されてもよく、第1粘接着剤層31側とは反対側に配置されてもよい。
【0015】
第1液晶位相差層11の第1表面の表面硬度(H1)と、第1液晶位相差層11の第1表面とは反対側の第2表面の表面硬度(H2)との比(H1/H2)は、0.90以上1.10以下である。比(H1/H2)は、好ましくは0.92以上1.08以下であり、より好ましくは0.94以上1.06以下であり、0.95以上1.05以下であってもよい。第1表面は、第1液晶位相差層11の第1粘接着剤層31側の表面であってもよく、第1粘接着剤層31側とは反対側の表面であってもよい。第1表面及び第2表面の表面硬度は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0016】
第1液晶位相差層11において、表面硬度の比(H1/H2)が上記の範囲であることにより、光学積層体1,2のヒートショック試験を行った場合にも、第1液晶位相差層11に発生するクラックを抑制することができる。表面硬度の比(H1/H2)が上記範囲から離れた値となる場合、第1液晶位相差層11内での硬さのばらつきが大きくなる。第1液晶位相差層11内での硬さのばらつきが大きくなると、ヒートショック試験等の外力を受けたときに、第1液晶位相差層11内の相対的に硬い部分が起点となってクラックが生じやすくなる。表面硬度の比(H1/H2)を上記範囲に近づけることにより、第1液晶位相差層11内での硬さのばらつきを抑制することができる。これにより、ヒートショック試験等の外力を受けた第1液晶位相差層11に、クラックが発生することを抑制することができる。
【0017】
第1液晶位相差層11の表面硬度の比(H1/H2)は、第1液晶位相差層11の製造条件、第1液晶位相差層11の層構造等によって調整することができる。第1液晶位相差層11の製造条件を調整する方法としては、第1液晶位相差層11を形成するために用いる第1液晶位相差層形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物として、柔軟性の高いモノマーを使用する方法、液晶位相差層形成用組成物に含まれる添加剤やモノマー成分を相分離させる方法、第1重合体層を形成する際の活性エネルギー線の照射位置を調整する方法(後述)、活性エネルギー線の照射強度を調整する方法(後述)等が挙げられる。
【0018】
第1液晶位相差層11は、λ/4板機能を有するλ/4液晶位相差層であってもよく、λ/2板機能を有するλ/2液晶位相差層であってもよい。第1液晶位相差層11は、逆波長分散性λ/4液晶位相差層であってもよい。第1液晶位相差層11のより詳細な説明については後述する。
【0019】
(第2液晶位相差層)
第2液晶位相差層21は、重合性液晶化合物の重合体を含む第2重合体層、又は、第2重合体層と第2配向層との多層体である。第2重合体層に含まれる重合体は通常、重合性液晶化合物が配向した状態で重合した重合体である。第2重合体層は、後述するように重合性液晶化合物を含む第2液晶位相差層形成用組成物から形成される。第2重合体層は、位相差を発現する層であることができる。第2液晶位相差層21が第2配向層を含む場合、第2重合体層と第2配向層とは通常、直接接している。第2配向層は、第2重合体層の第1粘接着剤層31側に配置されてもよく、第1液晶位相差層11側に配置されてもよい。
【0020】
第2液晶位相差層21の第1表面の表面硬度(H21)と、第2液晶位相差層21の第1表面とは反対側の第2表面の表面硬度(H22)との比(H21/H22)は、特に限定されない。比(H21/H22)は、上記した第1液晶位相差層11の表面硬度の比(H1/H2)で説明した範囲にあってもよい。これにより、ヒートショック試験等の外力を受けた第2液晶位相差層21に、クラックが発生することを抑制することができる。第2液晶位相差層21の表面硬度の比(H21/H22)は、第2液晶位相差層21の製造条件、第2液晶位相差層21の層構造等によって調整することができる。第2液晶位相差層21のより詳細な説明については後述する。
【0021】
(第1粘接着剤層)
第1粘接着剤層31は、粘着剤層又は接着剤層である。第1粘接着剤層31は、粘着剤層であることが好ましい。
【0022】
第1粘接着剤層31の温度23℃における押込み弾性率と、第1粘接着剤層31の厚みとの積は、300MPa・μm以上であることが好ましく、500MPa・μm以上であってもよく、650MPa・μm以上であってもよく、800MPa・μm以上であってもよく、1000MPa・μm以上であってもよく、通常5000MPa・μm以下である。第1粘接着剤層31における上記押込み弾性率と厚みとの積が上記の範囲内であることにより、第1粘接着剤層31は硬く厚くなる。このような第1粘接着剤層31を備える光学積層体1,2では、ヒートショック試験により、第1液晶位相差層11に発生するクラックをより一層抑制することができる。
【0023】
第1粘接着剤層31の温度23℃における押込み弾性率は、1MPa以上であってもよく、5MPa以上であってもよく、50MPa以上であってもよく、100MPa以上であってもよく、130MPa以上であってもよく、通常1000MPa以下である。第1粘接着剤層31の厚みは、0.1μm以上30μm以下であってもよく、3μm以上30μm以下であってもよく、5μm以上25μm以下であってもよい。第1粘接着剤層31の上記押込み弾性率及び厚みは、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。第1粘接着剤層31のより詳細な説明については後述する。
【0024】
(第2粘接着剤層)
第2粘接着剤層32の温度23℃における押込み弾性率と、第2粘接着剤層32の厚みとの積は、第1粘接着剤層31における上記押込み弾性率と厚みとの積で説明した範囲にあってもよい。第2粘接着剤層の上記押込み弾性率及び厚みも、第1粘接着剤層31の押込み弾性率及び厚みと同様の方法で測定することができる。第2粘接着剤層32のより詳細な説明については後述する。
【0025】
(偏光板)
偏光板50は、偏光素子を含んでいればよく、偏光素子と、偏光素子の片面又は両面に設けられた偏光素子保護フィルムとを有するものであってもよい。
【0026】
偏光素子は、ポリビニルアルコール系樹脂及びホウ素を含有する偏光子であることが好ましい。偏光子のホウ素含有量は、好ましくは0.5質量%以上5.5質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以上5.0質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以上4.5質量%以下である。光学積層体1,2が備える偏光子のホウ素含有量が上記の範囲内であることにより、光学積層体1,2のヒートショック試験での偏光子の収縮を抑制することができるため、第1液晶位相差層11に発生するクラックをより一層抑制することができる。
【0027】
偏光子のホウ素含有量は、偏光子の全質量に対する、偏光子が含有するホウ素の質量の割合であり、後述する実施例に記載の方法によって決定することができる。偏光子中のホウ素は、ホウ酸(H3BO3)として遊離の状態で存在するか、又はホウ素がポリビニルアルコール系樹脂のユニットと架橋構造を形成した状態で存在すると考えられる。本明細書において、ホウ素含有量は、上記のように化合物の状態で存在するものを含めたホウ素原子自体の量である。偏光子のホウ素含有量は、後述する偏光子の製造方法で用いるホウ酸量又はホウ酸による処理条件等によって調整することができる。
【0028】
温度80℃で4時間保持したときの偏光子の吸収軸方向の幅2mmあたりの収縮力は、3.5N/2mm以下であってもよく、3.0N/2mm以下であってもよく、好ましくは2.8N/2mm以下であり、より好ましくは2.5N/2mm以下であり、さらに好ましくは2.3N/2mm以下であり、通常0.5N/2mm以上である。偏光板、偏光素子、及び偏光子のより詳細な説明については後述する。
【0029】
<光学積層体の製造方法>
図3及び
図4は、本発明の一実施形態に係る光学積層体の製造工程を模式的に示す断面図である。光学積層体1,2の製造方法は、
第1基材層16上又は第1基材層16上に形成した第1配向層17上に、重合性液晶化合物を含む第1液晶位相差層形成用組成物を塗布することにより、第1基材層16及び第1塗布層18を有する基材付き第1塗布層(基材付き塗布層)12を得る工程(S1)と(
図3の(a))、
基材付き第1塗布層12の両面それぞれに活性エネルギー線を照射することにより、第1塗布層18中の重合性液晶化合物を重合して第1重合体層を形成する工程(S2)と、を含む。
【0030】
基材付き第1塗布層12の両面それぞれに活性エネルギー線を照射することにより(すなわち、基材付き第1塗布層12の両面の表面それぞれに向かって活性エネルギー線を照射することにより)、第1液晶位相差層11の表面硬度の比(H1/H2)を上記した範囲に調整しやすくなる。基材付き第1塗布層12の第1塗布層12側のみから活性エネルギー線を照射する場合に第1液晶位相差層11の表面硬度の比(H1/H2)を上記した範囲に調整する方法として、第1塗布層12側に照射する活性エネルギー線の照射強度を小さくする方法が考えられる。この場合、第1塗布層12の第1基材層16側における架橋度が低下するため、第1重合体層の第1基材層16側の表面硬度が低下してしまう。そこで、本実施形態の製造方法では、第1塗布層12の第1基材層16側における架橋度を高めて、第1重合体層の第1基材層16側の表面側の表面硬度を大きくするために、第1基材層16側からも活性エネルギー線を照射している。これにより、第1重合体層の両面の表面硬度を同じ値に近付けることができ、第1液晶位相差層11の表面硬度の比(H1/H2)を上記した範囲に調整しやすくなる。これにより、光学積層体1,2のヒートショック試験を行った場合にも、第1液晶位相差層11に発生するクラックを抑制することができる。
【0031】
基材付き第1塗布層12の両面それぞれに照射する活性エネルギー線の積算光量は、両面において同じであってもよく異なっていてもよいが、基材付き第1塗布層12の第1基材層16側から照射する活性エネルギー線の積算光量が、第1塗布層18側から照射する活性エネルギー線の積算光量よりも大きくなるように照射することが好ましい。基材付き第1塗布層12の第1基材層16側から照射する活性エネルギー線の積算光量は、例えば、第1塗布層18側から照射する活性エネルギー線の積算光量の1.1倍以上であってもよく、1.3倍以上であってもよく、1.5倍以上であってもよく、通常2.0倍以下である。基材付き第1塗布層12の両面それぞれに活性エネルギー線を照射することにより、基材付き第1塗布層12の例えば第1塗布層12側のみから活性エネルギー線を照射する場合と比較して、第1塗布層12側に照射する活性エネルギー線の照射量を小さくすることもできる。第1基材層16側から照射する活性エネルギー線の積算光量を大きくすることにより、熱シワの発生等の影響を抑制し、両面照射を行うことにより第1重合体層の第1基材層16側の表面硬度を大きくして、第1液晶位相差層11の表面硬度の比(H1/H2)を上記した範囲に調整しやすくなる。
【0032】
基材付き第1塗布層12の両面それぞれに活性エネルギー線を照射する方法としては、基材付き第1塗布層12に両面それぞれに同時に照射する方法、片面ずつ交互に照射する方法、両面それぞれに同時に照射することを繰り返し行う方法、片面ずつ交互に繰り返し照射する方法、又は、これらを任意に組み合わせた方法等が挙げられる。
【0033】
基材付き第1塗布層12に照射する活性エネルギー線としては、第1塗布層18に含まれる重合性液晶化合物の種類(特に、重合性液晶化合物が有する重合性官能基の種類)、光重合開始剤を含む場合には光重合開始剤の種類、及びそれらの量に応じて適宜選択される。具体的には、可視光線、紫外線、赤外光線、X線、α線、β線、及びγ線からなる群より選択される1種以上の活性エネルギー線が挙げられる。活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。
【0034】
工程(S2)で照射する活性エネルギー線が紫外線である場合、基材付き第1塗布層18の両面に照射される紫外線の合計の積算光量が、通常10mJ/cm2以上3,000mJ/cm2以下であり、好ましくは50mJ/cm2以上2,000mJ/cm2以下であり、より好ましくは100mJ/cm2以上1,000mJ/cm2以下である。
【0035】
工程(S2)で照射する活性エネルギー線が紫外線である場合、基材付き第1塗布層18の第1基材層16側から照射する紫外線が第1塗布層18に効率よく到達するように、第1基材層16は、後述するように紫外線透過率に優れていることが好ましい。
【0036】
光学積層体1,2の製造方法は、
さらに、偏光板50、第1粘接着剤層31、第1液晶位相差層11、及び第1基材層16をこの順に備えた基材付き光学積層体3,4を得る工程(S3)と(
図3の(c)、
図4の(d))、
基材付き光学積層体3,4から、第1基材層16を剥離する工程(S4)と、を含んでいてもよい。
【0037】
工程(S3)では、例えば
図3の(b)及び(c)に示すように、工程(S2)によって得られた、第1基材層16上に第1液晶位相差層11を有する基材付き第1液晶位相差層13と、偏光板50とを、第1粘接着剤層31を介して積層することにより、基材付き光学積層体3を得ることができる。第1液晶位相差層11が多層体である場合、基材付き光学積層体3では通常、第1重合体層が第1粘接着剤層31側に配置され、第1基材層16側に第1配向層が配置される。
【0038】
図4の(d)に示すように、基材付き光学積層体4は、さらに、第1粘接着剤層31と第1液晶位相差層11との間に、第2液晶位相差層21を含んでいてもよい。
【0039】
基材層付き光学積層体4は、偏光板50と、第2液晶位相差層21及び第1液晶位相差層11を含む位相差体とを、第1粘接着剤層31を介して積層することによって得てもよい。
【0040】
位相差体は、例えば、基材付き第1液晶位相差層13と、第2基材層26上に第2液晶位相差層21を有する基材付き第2液晶位相差層23(
図4の(b))とを、第2粘接着剤層32を介して積層して得ることができる(
図4の(c))。このとき、基材付き第1液晶位相差層13の第1液晶位相差層11側と、基材付き第2液晶位相差層23の第2液晶位相差層21側とを、第2粘接着剤層32を介して積層することが好ましい。偏光板50と位相差体とを積層するときは、位相差体から第2基材層26を剥離して露出した第2液晶位相差層21が偏光板50側となるように積層することが好ましい。位相差体から第2基材層26を剥離する場合、第2基材層26のみを剥離してもよく、第2基材層26とともに第2配向層27も剥離してもよい。
図4の(c)に示す位相差体が第2配向層27を含む場合、第2重合体層が第2粘接着剤層32側に配置され、第2配向層27が第2粘接着剤層32側とは反対側(第2基材層26側)に配置される。
【0041】
あるいは、第2液晶位相差層21を含む基材層付き光学積層体4は、次の手順で得てもよい。まず、偏光板50と基材付き第2液晶位相差層23の第2液晶位相差層21側とを、第1粘接着剤層31を介して積層する。続いて、第2基材層26を剥離し、露出した第2液晶位相差層21と、基材付き第1液晶位相差層13の第1液晶位相差層11側とを、第2粘接着剤層32を介して積層する。このとき、第2基材層26のみを剥離してもよく、第2基材層26とともに第2配向層27も剥離してもよい。上記のように、偏光板50に基材付き第2液晶位相差層23及び基材付き第1液晶位相差層13を順次積層して得られた基材層付き光学積層体4が第2配向層27を含む場合、第2重合体層が第1粘接着剤層31側に配置され、第2配向層が第1液晶位相差層13側に配置される。
【0042】
工程(S4)では、基材付き光学積層体3,4から、第1基材層16を剥離する。このとき、第1基材層16のみを剥離してもよく、第1基材層16及び第1配向層17を剥離してもよい。
【0043】
第2液晶位相差層21は、第2基材層26上又は第2基材層26上に形成した第2配向層27上に、重合性液晶化合物を含む第2液晶位相差層形成用組成物を塗布することにより、第2基材層26及び第2塗布層28を有する基材付き第2塗布層22を得る工程と(
図4の(a))、
基材付き第2塗布層22に活性エネルギー線を照射することにより、第2塗布層28中の重合性液晶化合物を重合して第2重合体層を形成する工程と、を含んでいてもよい。
【0044】
基材付き第2塗布層22に活性エネルギー線を照射する方法は特に限定されず、基材付き第2塗布層22の片面に活性エネルギー線を照射してもよく、両面それぞれに活性エネルギー線を照射してもよい。基材付き第2塗布層22の両面それぞれに活性エネルギー線を照射した場合には、第2液晶位相差層21の表面硬度の比(H21/H22)を上記した範囲に調整しやすくなる。基材付き第2塗布層22の両面に活性エネルギー線を照射する場合の照射方法及び照射条件は、基材付き第1塗布層12に照射する活性エネルギー線の照射方法及び照射条件で説明したものであってもよい。
【0045】
上記の光学積層体2の製造方法では、基材付き第1液晶位相差層13と基材付き第2液晶位相差層23とを積層して位相差体を得る場合について説明したが、位相差体を得る方法は、これに限定されない。例えば、基材付き第1液晶位相差層13の第1液晶位相差層11上に、第2配向層27を介在して、又は、第2配向層27を介在させることなく、第2液晶位相差層形成用組成物を塗布して第2塗布層を形成してもよい。この場合、第1液晶位相差層11上に形成した第2塗布層に、活性エネルギー線を照射することにより、第2塗布層中の重合性液晶化合物を重合して第2重合体層を形成すればよい。これにより、第1液晶位相差層13と第2液晶位相差層23とが直接接している位相差体を得ることができる。
【0046】
上記の光学積層体2の製造方法では、基材層付き光学積層体4が第1粘接着剤層31と第1液晶位相差層11との間に第2液晶位相差層21を有する場合について説明したが、第1粘接着剤層31と第2液晶位相差層21との間に第1液晶位相差層11を有していてもよい。この場合、例えば、上記した光学積層体2の製造方法において、基材付き第1液晶位相差層と基材付き第2液晶位相差層とを入れ替えることによって、光学積層体2を製造することができる。
【0047】
第1液晶位相差層形成用組成物及び第2液晶位相差層形成用組成物の詳細、第1液晶位相差層及び第2液晶位相差層の製造方法のより詳細な説明については後述する。
【0048】
<表示装置>
表示装置は、光学積層体と、画像表示素子(有機EL表示素子等)とを含む。光学積層体は、画像表示素子の視認側に配置される。粘着剤層を用いて、光学積層体を画像表示素子に貼合することができる。
【0049】
表示装置は特に限定されず、例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)表示装置、液晶表示装置、電界発光表示装置等の表示装置が挙げられる。
【0050】
表示装置は、スマートフォン、タブレット等のモバイル機器、テレビ、デジタルフォトフレーム、電子看板、測定器、計器類、事務用機器、医療機器、電算機器等として用いることができる。
【0051】
以下、光学積層体を構成する各層の詳細、及び、各層の製造方法等について説明する。
<位相差体>
光学積層体は、位相差体を含むことができる。位相差体は、位相差を発現する層である液晶位相差層を少なくとも1層含む。液晶位相差層は、重合性液晶化合物の配向した重合体からなる重合体層(第1重合体層又は第2重合体層)を含む。
【0052】
位相差体は、少なくとも第1液晶位相差層を含むことが好ましい。位相差体は、第1液晶位相差層と第2液晶位相差層との積層体であってもよく、これら以外の液晶位相差層を含むものであってもよい。位相差体は、液晶位相差層を形成するために用いる基材層(第1基材層又は第2基材層)を含んでいてもよい。
【0053】
(第1液晶位相差層、第2液晶位相差層)
第1液晶位相差層及び第2液晶位相差層は、それぞれ、重合性液晶化合物の重合体を含む第1重合体層及び第2重合体層(以下、単に「重合体層」ともいう。)を含む。第1液晶位相差層は、第1重合体層と第1配向層との多層体であってもよく、第2液晶位相差層は、第2重合体層と第2配向層との多層体であってもよい。
【0054】
第1液晶位相差層は、重合性液晶化合物を含む第1液晶位相差層形成用組成物第1基材層又は第1配向層上に塗布形成し、重合性液晶化合物の配向した重合体を形成することによって得られる。第2液晶位相差層は、重合性液晶化合物を含む第2液晶位相差層形成用組成物を第2基材層又は第2配向層上に塗布形成し、重合性液晶化合物の配向した重合体を形成することによって得られる。このように液晶位相差層を形成することは、薄型化並びに波長分散特性を任意に設計できる点で好ましい。第1液晶位相差層形成用組成物及び第2液晶位相差層形成用組成物は、それぞれ独立して、溶剤、光重合開始剤、光増感剤、酸化防止剤、レベリング剤及び密着剤等をさらに含み得る。
【0055】
液晶位相差層は、通常、重合性液晶化合物が配向した状態で硬化した膜であり、視認面内で位相差を生じるためには通常、重合性液晶化合物が基材層(第1基材層又は第2基材層)面に対して水平方向に配向した状態で重合性基が重合した硬化膜からなる重合体層(第1重合体層又は第2重合体層)を含む。この際、重合性液晶化合物が棒状の液晶である場合にはポジティブAプレートであればよく、重合性液晶化合物が円盤状の液晶であればネガティブAプレートであればよい。
【0056】
光学積層体が反射防止機能を高度に達成するためには、位相差体が可視光全域でのλ/4板機能(すなわちπ/2の位相差機能)を有すればよい。具体的には逆波長分散性λ/4層を有することが好ましく、あるいは、配向の異なる2種類以上の液晶位相差層を組み合わせることが好ましい。例えば、λ/2板機能を有する液晶位相差層(すなわちπの位相差機能)とλ/4板機能を有する液晶位相差層(すなわちπ/2の位相差機能)とを組み合わせたものであってもよい。さらに、斜め方向での反射防止機能を補償し得る観点から、厚み方向に異方性を有する層(ポジティブCプレート)をさらに含んでいることが好ましい。また、それぞれの液晶位相差層はチルト配向をしていてもよいし、コレステリック配向状態を形成していてもよい。
【0057】
図1に示す光学積層体が反射防止機能を有し、円偏光板として機能する場合、第1液晶位相差層は、λ/4の位相差を与えるλ/4液晶位相差層であることが好ましい。
図2に示す光学積層体が反射防止機能を有し、円偏光板として機能する場合、[i]第1液晶位相差層がλ/4液晶位相差層であり、第2液晶位相差層がλ/2の位相差を与えるλ/2液晶位相差層である、又は、[ii]第1液晶位相差層がポジティブCプレートであり、第2液晶位相差層がλ/4液晶位相差層であってもよい。
【0058】
可視光全域でのλ/4機能は、波長λnmの光に対する面内位相差をR(λ)とすると、下記式(1)に示される光学特性を満たすことが好ましく、下記式(1)、下記式(2)及び下記式(3)で示される光学特性を満たすことが好ましい。
100nm<Re(550)<160nm (1)
Re(450)/Re(550)≦1.0 (2)
1.00≦Re(650)/Re(550) (3)
[式(1)~(3)中、
Re(450)は波長450nmの光に対する面内位相差値(面内リタデーション)を表し、
Re(550)は波長550nmの光に対する面内位相差値を表し、
Re(650)は波長650nmの光に対する面内位相差値を表す。]
【0059】
位相差体の「Re(450)/Re(550)」が1.0を超えると、当該位相差体を備える楕円偏光板での短波長側での光抜けが大きくなる。「Re(450)/Re(550)」の値は、好ましくは、0.7以上1.0以下、より好ましくは0.80以上0.95以下、さらに好ましくは0.80以上0.92以下、特に好ましくは0.82以上0.88以下である。「Re(450)/Re(550)」の値は重合性液晶化合物の混合比率や複数の液晶位相差層の積層角度や位相差値を調整することで任意に調整することが可能である。
【0060】
液晶位相差層の面内位相差値は、液晶位相差層の厚みによって調整することができる。面内位相差値は下記式(4)によって決定されることから、所望の面内位相差値(Re(λ))を得るには、Δn(λ)と膜厚dとを調整すればよい。液晶位相差層の厚みは、通常10μm以下であり、0.3μm以上5μm以下であることが好ましく、0.5μm以上5μm以下であることがより好ましく、1μm以上3μm以下であることがさらに好ましい。液晶位相差層の厚みは、干渉膜厚計、レーザー顕微鏡又は触針式膜厚計により測定することができる。式(4)中のΔn(λ)は、後述する重合性液晶化合物の分子構造に依存する。
Re(λ)=d×Δn(λ) (4)
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける面内位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長λnmにおける複屈折率を表す。]
【0061】
反射防止性能を達成する方法の一つとして、正波長分散性λ/2層と正波長分散性λ/4層とを組み合わせた構成が知られている。例えば式(5)、式(7)及び式(8)で表される光学特性を有する層と、式(6)、式(7)及び式(8)で表される光学特性を有する層とを特定の遅相軸関係で組み合わせることで得られる。
100nm<Re(550)<160nm (5)
200nm<Re(550)<320nm (6)
Re(450)/Re(550)≧1.00 (7)
1.00≧Re(650)/Re(550) (8)
[式(5)~(8)中、
Re(450)は波長450nmの光に対する面内位相差値を表し、
Re(550)は波長550nmの光に対する面内位相差値を表し、
Re(650)は波長650nmの光に対する面内位相差値を表す。]
【0062】
上記の層を組み合わせる方法としては、特開2015-163935号公報や、WO2013/137464号等の周知の方法が挙げられる。視野角補償の観点から好ましくは円盤状の重合性液晶化合物の重合体を含むλ/2液晶位相差層と棒状の重合性液晶化合物の重合体を含むλ/4液晶位相差層とを用いることが好ましい。面内位相差値は、王子計測機器株式会社製のKOBRA-WRを用いて測定することができる。
【0063】
第1液晶位相差層11と第2液晶位相差層21との積層体(位相差体)は、下記式(1)’及び(2)’の関係を満たすことが好ましい。
100≦Re(550)≦180 (1)’
Re(450)/Re(550)≦1.00 (2)’
[式(1)’及び式(2)’中、
Re(450)は波長450nmの光に対する面内位相差値を表し、
Re(550)は波長550nmの光に対する面内位相差値を表す。]
第1液晶位相差層11と第2液晶位相差層21との上記積層体(位相差体)の面内位相差値は、偏光板50と積層した状態で、王子計測機器株式会社製のKOBRA-WRを用いて測定した値である。
【0064】
円盤状の重合性液晶化合物としては、例えば、式(W)で表される基を含む化合物(以下、重合性液晶化合物ということがある)が挙げられる。
【0065】
【化1】
[式(W)中、R
40は、下記式(W-1)~(W-5)を表す。
【化2】
[式(W-1)~(W-5)中、
X
40及びZ
40は、炭素数1~12のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、炭素数1~5のアルコキシ基で置換されていてもよく、該アルコキシ基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。また、該アルカンジイル基を構成する-CH
2-は、-O-又は-CO-に置き換わっていてもよい。
m2は、整数を表す。]]
【0066】
棒状の重合性液晶化合物としては、例えば式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)、又は式(VI)で表される化合物が挙げられる。
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-A14-B16-E12-B17-P12 (I)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-A14-F11 (II)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-E12-B17-P12 (III)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-F11 (IV)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-E12-B17-P12 (V)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-F11 (VI)
[式(I)~(VI)中、
A11~A14は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよく、該炭素数1~6のアルキル基及び該炭素数1~6のアルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
B11及びB17は、それぞれ独立に、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CO-NR16-、-NR16-CO-、-CO-、-CS-、又は単結合を表す。R16は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。
B12~B16は、それぞれ独立に、-C≡C-、-CH=CH-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-C(=O)-NR16-、-NR16-C(=O)-、-OCH2-、-OCF2-、-CH2O-、-CF2O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-又は単結合を表す。
E11及びE12は、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、炭素数1~5のアルコキシ基で置換されていてもよく、該アルコキシ基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。また、該アルカンジイル基を構成する-CH2-は、-O-又は-CO-に置き換わっていてもよい。
F11は、水素原子、炭素数1~13のアルキル基、炭素数1~13のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基、メチロール基、ホルミル基、スルホ基(-SO3H)、カルボキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表し、該アルキル基及びアルコキシ基を構成する-CH2-は、-O-に置き換っていてもよい。
P11及びP12は、それぞれ独立に、重合性基を表す。]
【0067】
上記正波長分散性λ/2層と正波長分散性λ/4層とを組み合わせた構成以外にも、チルト配向やコレステリック配向している構成についても反射防止機能を達成する構成であれば特に制限なく用いることができる。このような構成としては、例えばWO2021/060378号、WO2021/132616号、WO2021/132624号等に記載された構成が挙げられる。
【0068】
ポジティブCプレートは厚み方向に異方性を有するものであれば特に限定はないが、チルト配向やコレステリック配向をしていない場合は、下記式(9)で表される光学特性を有する。
nx≒ny<nz (9)
[式(9)中、
nxは、ポジティブCプレートの面内における波長λ[nm]での主屈折率を表す。
nyは、nxと同一面内で、nxに対して直交する方向の波長λ[nm]でのポジティブCプレートの屈折率を表す。
nz(λ)は、ポジティブCプレートの厚み方向における波長λ[nm]での屈折率を表す。
nx≒nyである場合、nxは、ポジティブCプレートの面内での任意の方向の屈折率とすることができる。]
【0069】
ポジティブCプレートの波長550nmにおける面内位相差値Re(550)は通常0nm以上10nm以下の範囲であり、好ましくは0nm以上5nm以下の範囲である。また、波長550nmにおける厚み方向の位相差値Rth(550)が、通常-170nm以上-10nm以下の範囲であり、好ましくは-150nm以上-20nm以下、より好ましくは-100nm以上-40nm以下の範囲である。厚み方向の位相差値がこの範囲であれば、斜め方向からの反射防止特性を一段向上させることができる。
【0070】
ポジティブCプレートが液晶位相差層である場合、その厚みは、通常10μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.3μm以上3μm以下である。
【0071】
ポジティブCプレートは、好ましくは液晶位相差層である。より好ましくは棒状の重合性液晶化合物である。棒状の重合性液晶化合物としては、例えば上記した式(I)~(VI)で表される化合物が挙げられる。
【0072】
(液晶位相差層を構成する重合性液晶化合物)
第1液晶位相差層形成用組成物及び第2液晶位相差層形成用組成物(以下、「液晶位相差層形成用組成物」ともいう。)に含まれる重合性液晶化合物は、重合性基、特に光重合性基を有する液晶化合物を意味し、該重合性液晶化合物としては、従来公知の重合性液晶化合物を用いることができる。光重合性基とは、光重合開始剤から発生した反応活性種、例えば活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基のことをいう。光重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。重合性液晶化合物はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック性液晶でもよいが、緻密な膜厚制御が可能な点でサーモトロピック性液晶が好ましい。また、サーモトロピック性液晶における相秩序構造としてはネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。また、棒状液晶であってもよく、円盤状液晶であってもよい。重合性液晶化合物は単独又は二種以上を組み合わせて使用できる。
【0073】
重合性液晶化合物としては、逆波長分散性発現の観点から分子長軸方向に対して垂直方向にさらに複屈折性を有するT字型あるいはH型にメソゲン構造を有する液晶が好ましく、より強い分散が得られる観点からT字型液晶がより好ましく、T字型液晶の構造としては、具体的には、例えば、下記式(VII)で表される化合物が挙げられる。
【0074】
【化3】
[式(VII)中、
Arは置換基を有していてもよい二価の芳香族基を表す。該二価の芳香族基中には窒素原子、酸素原子、硫黄原子のうち少なくとも1つ以上が含まれることが好ましい。二価の基Arに含まれる芳香族基が2つ以上である場合、2つ以上の芳香族基は互いに単結合、-CO-O-、-O-等の二価の結合基で結合していてもよい。
G
1及びG
2はそれぞれ独立に、二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基を表す。ここで、該二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよく、該二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子が、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子に置換されていてもよい。
L
1、L
2、B
1及びB
2はそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基である。
k、lは、それぞれ独立に0~3の整数を表し、1≦k+lの関係を満たす。ここで、2≦k+lである場合、B
1及びB
2、G
1及びG
2は、それぞれ互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
E
1及びE
2はそれぞれ独立に、炭素数1~17のアルカンジイル基を表し、ここで、アルカンジイル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-で置換されていてもよく、-O-、-S-、-COO-を複数有する場合は互いに隣接しない。
P
1及びP
2は互いに独立に、重合性基又は水素原子を表し、少なくとも1つは重合性基である。]
【0075】
G1及びG2は、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子及び炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-フェニレンジイル基、ハロゲン原子及び炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-シクロヘキサンジイル基であり、より好ましくはメチル基で置換された1,4-フェニレンジイル基、無置換の1,4-フェニレンジイル基、又は無置換の1,4-trans-シクロヘキサンジイル基であり、特に好ましくは無置換の1,4-フェニレンジイル基、又は無置換の1,4-trans-シクロへキサンジイル基である。
また、複数存在するG1及びG2のうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であることが好ましく、また、L1又はL2に結合するG1及びG2のうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であることがより好ましい。
【0076】
L1及びL2はそれぞれ独立に、好ましくは、単結合、炭素数1~4のアルキレン基、-O-、-S-、-Ra1ORa2-、-Ra3COORa4-、-Ra5OCORa6-、Ra7OC=OORa8-、-N=N-、-CRc=CRd-、又は-C≡C-である。ここで、Ra1~Ra8はそれぞれ独立に単結合、又は炭素数1~4のアルキレン基を表し、Rc及びRdは炭素数1~4のアルキル基又は水素原子を表す。L1及びL2はそれぞれ独立に、より好ましくは単結合、-ORa2-1-、-CH2-、-CH2CH2-、-COORa4-1-、又はOCORa6-1-である。ここで、Ra2-1、Ra4-1、Ra6-1はそれぞれ独立に単結合、-CH2-、-CH2CH2-のいずれかを表す。L1及びL2はそれぞれ独立に、さらに好ましくは単結合、-O-、-CH2CH2-、-COO-、-COOCH2CH2-、又は-OCO-である。
【0077】
B1及びB2はそれぞれ独立に、好ましくは、単結合、炭素数1~4のアルキレン基、-O-、-S-、-Ra9ORa10-、-Ra11COORa12-、-Ra13OCORa14-、又は-Ra15OC=OORa16-である。ここで、Ra9~Ra16はそれぞれ独立に単結合、又は炭素数1~4のアルキレン基を表す。B1及びB2はそれぞれ独立に、より好ましくは単結合、-ORa10-1-、-CH2-、-CH2CH2-、-COORa12-1-、又は-OCORa14-1-である。ここで、Ra10-1、Ra12-1、Ra14-1はそれぞれ独立に単結合、-CH2-、-CH2CH2-のいずれかを表す。B1及びB2はそれぞれ独立に、さらに好ましくは単結合、-O-、-CH2CH2-、-COO-、-COOCH2CH2-、-OCO-、又は-OCOCH2CH2-である。
【0078】
k及びlは、逆波長分散性発現の観点から2≦k+l≦6の範囲が好ましく、k+l=4であることが好ましく、k=2かつl=2であることがより好ましい。k=2かつl=2であると対称構造となるため好ましい。
【0079】
E1及びE2はそれぞれ独立に、炭素数1~17のアルカンジイル基が好ましく、炭素数4~12のアルカンジイル基がより好ましい。
【0080】
P1又はP2で表される重合性基としては、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、及びオキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0081】
Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族複素環、及び電子吸引性基から選ばれる少なくとも一つを有することが好ましい。当該芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられ、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましい。当該芳香族複素環としては、フラン環、ベンゾフラン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアゾール環、トリアジン環、ピロリン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チエノチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、及びフェナンスロリン環等が挙げられる。なかでも、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、又はベンゾフラン環を有することが好ましく、ベンゾチアゾール基を有することがさらに好ましい。また、Arに窒素原子が含まれる場合、当該窒素原子はπ電子を有することが好ましい。
【0082】
式(VII)中、Arで表される2価の芳香族基に含まれるπ電子の合計数Nπは8以上が好ましく、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは14以上であり、特に好ましくは16以上である。また、好ましくは30以下であり、より好ましくは26以下であり、さらに好ましくは24以下である。
【0083】
Arで表される芳香族基としては、例えば以下の基が好適に挙げられる。
【化4】
【0084】
式(Ar-1)~式(Ar-23)中、
*印は連結部を表す。
Z0、Z1及びZ2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルキルスルフィニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1~12のフルオロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~12のアルキルチオ基、炭素数1~12のN-アルキルアミノ基、炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基、炭素数1~12のN-アルキルスルファモイル基又は炭素数2~12のN,N-ジアルキルスルファモイル基を表す。
Q1及びQ2は、それぞれ独立に、-CR2’R3’-、-S-、-NH-、-NR2’-、-CO-又はO-を表し、R2’及びR3’は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
J1、及びJ2は、それぞれ独立に、炭素原子、又は窒素原子を表す。
Y1、Y2及びY3は、それぞれ独立に、置換されていてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。
W1及びW2は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、メチル基又はハロゲン原子を表す。
mは0~6の整数を表す。
【0085】
Y1、Y2及びY3における芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等の炭素数6~20の芳香族炭化水素基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。芳香族複素環基としては、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む炭素数4~20の芳香族複素環基が挙げられ、フリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基が好ましい。
【0086】
Y1、Y2及びY3は、それぞれ独立に、置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基又は多環系芳香族複素環基であってもよい。多環系芳香族炭化水素基は、縮合多環系芳香族炭化水素基、又は芳香環集合に由来する基をいう。多環系芳香族複素環基は、縮合多環系芳香族複素環基、又は芳香環集合に由来する基をいう。
【0087】
Z0、Z1及びZ2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルコキシ基であることが好ましく、Z0は、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基がさらに好ましく、Z1及びZ2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、シアノ基がさらに好ましい。
【0088】
Q1及びQ2は、それぞれ独立に、-NH-、-S-、-NR2’-、-O-が好ましく、R2’は水素原子が好ましい。中でも-S-、-O-、-NH-が特に好ましい。
【0089】
式(Ar-1)~(Ar-23)の中でも、式(Ar-6)及び式(Ar-7)が分子の安定性の観点から好ましい。
【0090】
式(Ar-16)~(Ar-23)において、Y1は、これが結合する窒素原子及びZ0と共に、芳香族複素環基を形成していてもよい。芳香族複素環基としては、Arが有していてもよい芳香族複素環として前記したものが挙げられるが、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピロリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、インドール環、キノリン環、イソキノリン環、プリン環、ピロリジン環等が挙げられる。この芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。また、Y1は、これが結合する窒素原子及びZ0と共に、前述した置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基又は多環系芳香族複素環基であってもよい。例えば、ベンゾフラン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環等が挙げられる。
【0091】
重合性液晶化合物の中でも、極大吸収波長が300~400nmである化合物が好ましい。液晶位相差層形成用組成物に光重合開始剤が含まれる場合、長期保管時に重合性液晶化合物の重合反応及びゲル化が進行するおそれがある。しかし、重合性液晶化合物の極大吸収波長が300~400nmであれば保管中に紫外光に曝露されても、光重合開始剤からの反応活性種の発生及び該反応活性種による重合性液晶化合物の重合反応及びゲル化の進行を有効に抑制できる。したがって、重合性液晶組成物の長期安定性の点で有利となり、得られる重合体層(液晶硬化膜)の配向性及び膜厚の均一性を向上できる。なお、重合性液晶化合物の極大吸収波長は、溶媒中で紫外可視分光光度計を用いて測定できる。該溶媒は重合性液晶化合物を溶解し得る溶媒であり、例えばクロロホルム等が挙げられる。
【0092】
液晶位相差層形成用組成物中の重合性液晶化合物の含有量は、液晶位相差層形成用組成物の固形分100質量部に対して、例えば70~99.5質量部であり、好ましくは80~99質量部であり、より好ましくは85~98質量部であり、さらに好ましくは90~95質量部である。重合性液晶化合物の含有量が上記範囲内であれば、得られる重合体層(液晶硬化膜)の配向性の観点から有利である。なお、本明細書において、液晶位相差層形成用組成物の固形分とは、液晶位相差層形成用組成物から有機溶剤等の揮発性成分を除いた全ての成分を意味する。
【0093】
液晶位相差層形成用組成物はさらに、溶剤やレベリング剤、重合開始剤、光増感剤、酸化防止剤、架橋剤、密着剤等の反応性添加剤を含んでいてもよく、溶剤やレベリング剤を含むことが加工性の観点から好ましい。
【0094】
液晶位相差層形成用組成物は溶剤を含有してよい。一般に重合性液晶化合物は粘度が高いため、溶剤に溶解させた液晶位相差層形成用組成物とすることで塗布が容易になり、結果として液晶位相差層を形成しやすくなる場合が多い。溶剤としては、重合性液晶化合物を完全に溶解し得るものが好ましく、また、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤であることが好ましい。
【0095】
溶剤としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン又はプロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル溶剤;クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素含有溶剤;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルミアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
溶剤の含有量は、液晶位相差層形成用組成物の総量に対して50~98質量%が好ましい。換言すると、液晶位相差層形成用組成物における固形分の含有量は、2~50質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。該固形分の含有量が50質量%以下であると、液晶位相差層形成用組成物の粘度が低くなることから、液晶位相差層の厚みが略均一になることで、当該液晶位相差層にムラが生じにくくなる傾向がある。また、かかる固形分の含有量は、製造しようとする液晶位相差層の厚みを考慮して定めることができる。
【0097】
液晶位相差層形成用組成物には、レベリング剤を含有させてもよい。レベリング剤とは、液晶位相差層形成用組成物の流動性を調整し、液晶位相差層形成用組成物を塗布して得られる膜をより平坦にする機能を有する添加剤であり、例えば、有機変性シリコーン系、ポリアクリレート系及びパーフルオロアルキル系のレベリング剤が挙げられる。中でも、水平配向させる場合には、ポリアクリレート系レベリング剤及びパーフルオロアルキル系レベリング剤が好ましく、垂直配向させる場合には、有機変性シリコーン系レベリング剤及びパーフルオロアルキル系レベリング剤が好ましい。
【0098】
液晶位相差層形成用組成物がレベリング剤を含有する場合、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.05~3質量部である。レベリング剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物を水平配向させることが容易であり、かつ得られる液晶位相差層がより平滑となる傾向がある。重合性液晶化合物に対するレベリング剤の含有量が上記範囲を超えると、得られる液晶位相差層にムラが生じやすい傾向がある。なお、液晶位相差層形成用組成物は、レベリング剤を2種以上を含有していてもよい。
【0099】
液晶位相差層形成用組成物は重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤は、重合性液晶化合物等の重合反応を開始し得る化合物である。重合開始剤としては、サーモトロピック液晶の相状態に依存しないという観点から、光の作用により活性ラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
【0100】
光重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物であれば、公知の光重合開始剤を用いることができる。具体的には、光の作用により活性ラジカル又は酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤は単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0101】
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を用いることができ、例えば、活性ラジカルを発生する光重合開始剤としては、自己開裂型のベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、アゾ系化合物等を使用でき、水素引き抜き型のベンゾフェノン系化合物、アルキルフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジルケタール系化合物、ジベンゾスベロン系化合物、アントラキノン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、ハロゲノアセトフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、ハロゲノビスイミダゾール系化合物、ハロゲノトリアジン系化合物、トリアジン系化合物等を使用できる。酸を発生する光重合開始剤としては、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩等を使用することができる。低温での反応効率に優れるという観点から自己開裂型の光重合開始剤が好ましく、特にアセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物が好ましい。
【0102】
液晶位相差層形成用組成物中の重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物の種類及びその量に応じて適宜調節できるが、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、通常0.1~30質量部、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは0.5~8質量部である。重合開始剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合を行うことができる。
【0103】
液晶位相差層形成用組成物は増感剤を含有してもよい。増感剤としては、光増感剤が好ましい。該増感剤としては、例えば、キサントン及びチオキサントン等のキサントン化合物(例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン等);アントラセン及びアルコキシ基含有アントラセン(例えば、ジブトキシアントラセン等)等のアントラセン化合物;フェノチアジン及びルブレン等が挙げられる。
【0104】
液晶位相差層形成用組成物が増感剤を含有する場合、液晶位相差層形成用組成物に含有される重合性液晶化合物の重合反応をより促進することができる。かかる増感剤の使用量は、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。
【0105】
重合反応を安定的に進行させる観点から、液晶位相差層は酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤により、重合性液晶化合物の重合反応の進行度合いをコントロールすることができる。
【0106】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、キノン系酸化防止剤、ニトロソ系酸化防止剤から選ばれる一次酸化防止剤であってもよいし、リン系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤から選ばれる二次酸化防止剤であってもよい。
【0107】
液晶位相差層形成用組成物が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤の含有量は、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは0.5~10質量部、さらに好ましくは0.5~8質量部である。酸化防止剤は単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸化防止剤の含有量が、上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合を行うことができる。
【0108】
液晶位相差層形成用組成物は、反応性添加剤を含んでもよい。反応性添加剤としては、その分子内に炭素-炭素不飽和結合や活性水素反応性基やチオール基を有するものが好ましい。なお、ここでいう「活性水素反応性基」とは、カルボキシル基(-COOH)、水酸基(-OH)、アミノ基(-NH2)等の活性水素を有する基に対して反応性を有する基を意味し、グリシジル基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、アジリジン基、イミド基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、無水マレイン酸基等がその代表例である。反応性添加剤が有する反応性基の個数は、通常、それぞれ1~20個であり、好ましくはそれぞれ1~10個である。
【0109】
(液晶位相差層の製造方法)
液晶位相差層は、基材層(第1基材層又は第2基材層)上、又は、基材層上に形成された配向層(第1配向層又は第2配向層)上に液晶位相差層形成用組成物(第1液晶位相差層形成用組成物又は第2液晶位相差層形成用組成物)を塗布することで製造することができる。
【0110】
液晶位相差層形成用組成物を基材層又は配向層上に塗布する方法としては、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAPコーティング法、スリットコーティング法、マイクログラビア法、ダイコーティング法、インクジェット法等が挙げられる。また、ディップコーター、バーコーター、スピンコーター等のコーターを用いて塗布する方法等も挙げられる。中でも、Roll to Roll形式で連続的に塗布する場合には、マイクログラビア法、インクジェット法、スリットコーティング法、ダイコーティング法による塗布方法が好ましく、ガラス等の枚葉基材に塗布する場合には、均一性の高いスピンコーティング法が好ましい。Roll to Roll形式で塗布する場合、基材層に配向層形成用組成物を塗布等により配向層を形成し、さらに得られた配向層上に液晶位相差層形成用組成物を連続的に塗布することもできる。
【0111】
液晶位相差層形成用組成物に含まれる溶剤を除去する乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、通風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、及びこれらを組み合わせた方法が挙げられる。中でも、自然乾燥又は加熱乾燥が好ましい。乾燥温度は、0~200℃の範囲が好ましく、20~150℃の範囲がより好ましく、50~130℃の範囲がさらに好ましい。乾燥時間は、10秒間~10分間が好ましく、より好ましくは30秒間~5分間である。配向層形成用組成物も同様に乾燥することができる。
【0112】
液晶位相差層形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物を重合させる方法としては、光重合が好ましい。光重合は、基材層上又は配向層上に重合性液晶化合物を含む液晶位相差層形成用組成物が塗布された積層体に活性エネルギー線を照射することにより実施される。照射する活性エネルギー線としては、乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物の種類(特に、重合性液晶化合物が有する光重合性官能基の種類)、光重合開始剤を含む場合には光重合開始剤の種類、及びそれらの量に応じて適宜選択される。具体的には、可視光線、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、及びγ線からなる群より選択される1種以上の活性エネルギー線が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点、及び光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外線が好ましく、紫外線によって光重合可能なように、重合性液晶化合物の種類を選択することが好ましい。
【0113】
活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0114】
紫外線照射強度は、通常10mW/cm2以上3,000mW/cm2以下である。紫外線照射強度は、好ましくはカチオン重合開始剤又はラジカル重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。紫外線を照射する時間は、通常0.1秒間以上10分間以下であり、好ましくは1秒間~5分間であり、より好ましくは5秒間~3分間であり、さらに好ましくは10秒間以上1分間以下である。このような紫外線照射強度で1回又は複数回照射すると、その積算光量は、通常10mJ/cm2以上3,000mJ/cm2以下であり、好ましくは50mJ/cm2以上2,000mJ/cm2以下であり、より好ましくは100mJ/cm2以上1,000mJ/cm2以下である。積算光量がこの範囲以下である場合には、重合性液晶化合物の硬化が不十分となり、良好な転写性が得られない場合がある。逆に、積算光量がこの範囲以上である場合には、液晶位相差層を含む光学フィルムが着色する場合がある。
【0115】
(基材層(第1基材層、第2基材層))
基材層(第1基材層又は第2基材層)は、液晶位相差層(第1液晶位相差層又は第2液晶位相差層)を支持する。基材層は、液晶位相差層から剥離可能であることが好ましい。基材層としては、ガラス基材及びフィルム基材が挙げられ、フィルム基材が好ましく、連続的に製造できる点で長尺のロール状フィルムがより好ましい。基材層は、透明基材層であることが好ましい。フィルム基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド及びポリフェニレンオキシド;等のプラスチックが挙げられる。中でも光学フィルム用途で使用する際の透明性等の観点からトリアセチルセルロース、環状オレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸エステル、及びポリエチレンテレフタレートからなる群より選ばれる樹脂で構成されたフィルム基材がより好ましい。
【0116】
市販のセルロースエステル基材としては、“フジタックフィルム”(富士写真フイルム株式会社製);“KC8UX2M”、“KC8UY”及び“KC4UY”(以上、コニカミノルタオプト株式会社製)等が挙げられる。
市販の環状オレフィン系樹脂としては、“Topas”(登録商標)(Ticona社(独)製)、“アートン”(登録商標)(JSR株式会社製)、“ゼオノア(ZEONOR)”(登録商標)、“ゼオネックス(ZEONEX)”(登録商標)(以上、日本ゼオン株式会社製)及び“アペル”(登録商標)(三井化学株式会社製)が挙げられる。このような環状オレフィン系樹脂を、溶剤キャスト法、溶融押出法等の公知の手段により製膜して、基材とすることができる。
市販されている環状オレフィン系樹脂基材を用いることもできる。市販の環状オレフィン系樹脂基材としては、“エスシーナ”(登録商標)、“SCA40”(登録商標)(以上、積水化学工業株式会社製)、“ゼオノアフィルム”(登録商標)(オプテス株式会社製)及び“アートンフィルム”(登録商標)(JSR株式会社製)が挙げられる。
【0117】
基材層の厚みは、実用的な取り扱いができる程度で薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。基材層の厚みは、通常、5μm以上300μm以下であり、好ましくは10μm以上200μm以下、より好ましくは10μm以上50μm以下である。また、基材層を剥離して液晶位相差層を転写することによって、さらなる薄膜化効果が得られる。
【0118】
光学積層体の製造にあたり、液晶位相差層形成用組成物の塗布層に、基材層を介して紫外線等の活性エネルギー線を照射することがある。活性エネルギー線が紫外線である場合、紫外線が塗布層に効率よく到達するように、基材層は良好な紫外線透過性を有することが好ましい。具体的には、基材層の波長340nmの光線透過率は、好ましくは10%以上であり、より好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは30%以上である。基材層の光線透過率は、紫外可視分光光度計を用いて測定することができる。
【0119】
(配向層(第1配向層、第2配向層))
配向層は、重合性液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。
【0120】
配向層は、重合性液晶化合物の液晶配向を容易にする。水平配向、垂直配向、ハイブリッド配向、傾斜配向等の液晶配向の状態は、配向層及び重合性液晶化合物の性質によって変化し、その組み合わせは任意に選択することができる。例えば、配向膜が配向規制力として水平配向を発現させる材料であれば、重合性液晶化合物は水平配向又はハイブリッド配向を形成することができ、垂直配向を発現させる材料であれば、重合性液晶化合物は垂直配向又は傾斜配向を形成することができる。水平、垂直等の表現は、液晶位相差層平面を基準とした場合の、配向した重合性液晶化合物の光軸の方向を表す。例えば、垂直配向とは液晶位相差層平面に対して垂直な方向に、配向した重合性液晶化合物の光軸を有することである。ここでいう垂直とは、液晶位相差層平面に対して90°±20°のことを意味する。
【0121】
配向規制力は、配向層が配向性ポリマーから形成されている場合は、表面状態やラビング条件によって任意に調整することが可能であり、光配向性ポリマーから形成されている場合は、偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。また、重合性液晶化合物の、表面張力や液晶性等の物性を選択することにより、液晶配向を制御することもできる。
【0122】
基材層と液晶位相差層との間に形成される配向層としては、配向層上に液晶位相差層を形成する際に使用される溶剤に不溶であり、また、溶剤の除去や液晶の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。配向層としては、配向性ポリマーからなる配向層、光配向層及びグルブ(groove)配向膜、配向方向に延伸してある延伸フィルム等が挙げられ、長尺のロール状フィルムに適用する場合には、配向方向を容易に制御できる点で、光配向層が好ましい。
【0123】
配向層の厚みは、通常10nm~5000nmの範囲であり、好ましくは10nm~1000nmの範囲であり、より好ましくは30~300nmである。
【0124】
ラビング配向層に用いられる配向性ポリマーとしては、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸エステル類等が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。これらの配向性ポリマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0125】
ラビングする方法としては、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに、配向性ポリマー組成物を基材に塗布しアニールすることで基材層表面に形成された配向性ポリマーの膜を、接触させる方法が挙げられる。
【0126】
光配向層は、光反応性基を有するポリマーやオリゴマー又はモノマーからなる。光配向層は、偏光を照射することで配向規制力が得られる。照射する偏光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御できる点で光配向層がより好ましい。
【0127】
光反応性基とは、光を照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光を照射することで生じる分子の配向誘起又は異性化反応、二量化反応、光架橋反応、又は光分解反応のような、液晶配向能の起源となる光反応を生じるものである。当該光反応性基の中でも、二量化反応又は光架橋反応を起こすものが、配向性に優れる点で好ましい。以上のような反応を生じうる光反応性基としては、不飽和結合、特に二重結合を有するものが好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)、及び炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基がより好ましい。
【0128】
C=C結合を有する光反応性基としては例えば、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基及びシンナモイル基等が挙げられる。反応性の制御が容易であるという点や光配向時の配向規制力発現の観点から、カルコン基及びシンナモイル基が好ましい。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基及び芳香族ヒドラゾン等の構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基及びホルマザン基等や、アゾキシベンゼンを基本構造とするものが挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基及びマレイミド基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基及びハロゲン化アルキル基等の置換基を有していてもよい。
【0129】
偏光を照射するには、膜面から直接偏光を照射する形式でも、基材層側から偏光を照射し、偏光を透過させて照射する形式でもよい。また、当該偏光は、実質的に平行光であることが特に好ましい。照射する偏光は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲のUV(紫外光)が特に好ましい。当該偏光照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArF等の紫外光レーザー等が挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプがより好ましい。これらのランプは、波長313nmの紫外光の発光強度が大きいため好ましい。光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光を照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテーラー等の偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
<偏光板>
偏光板は、光吸収異方性の機能を有するフィルムであり、一般的には二色性色素を一軸配向した偏光素子を含むフィルムである。二色性色素を一軸配向させるためには、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂等のポリマー中にヨウ素や有機二色性染料を含浸させた状態で一軸延伸したフィルムである偏光子や、二色性色素と重合性液晶化合物とを配向させることによって形成される光学異方性層である液晶偏光子から作製することができる。すなわち、延伸ポリマーや重合性液晶化合物の重合体中に包摂された二色性色素によって光が異方性吸収されることによって偏光機能を発現する。
【0130】
偏光板は、偏光素子を含み、偏光素子の片面又は両面に、偏光素子保護フィルム又は保護層を有することができる。
【0131】
偏光板の偏光性能は、分光光度計を用いて測定することができる。例えば、可視光である波長380nm~780nmの範囲で透過軸方向(配向垂直方向)の透過率(T1)及び吸収軸方向(配向方向)の透過率(T2)を、分光光度計にプリズム偏光子をセットした装置を用いてダブルビーム法で測定することができる。可視光範囲での偏光性能は、下記式(式1)及び(式2)を用いて、各波長における単体透過率、偏光度を算出し、さらにJIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行うことで、視感度補正単体透過率(Ty)及び視感度補正偏光度(Py)で算出することができる。また、同様に測定した透過率からC光源の等色関数を用いて、L*a*b*(CIE)表色系における色度a*及びb*を算出することで、偏光板単体の色相(単体色相)、偏光板を平行配置した色相(平行色相)、偏光板を直交配置した色相(直交色相)が得られる。a*及びb*は値が0に近いほど、ニュートラルな色相であると判断できる。
単体透過率(%)=(T1+T2)/2 (式1)
偏光度(%)=(T1-T2)/(T1+T2)×100 (式2)
【0132】
偏光板の視感度補正偏光度Pyは、通常80%以上であり、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上であり、99.9%以上であれば液晶ディスプレイに好適に用いることができる。偏光板の視感度補正偏光度Pyを大きくすることは、光学積層体の反射防止機能を高めるうえで有利である。視感度補正偏光度Pyが80%未満であると、光学積層体を反射防止フィルムとして使用した際の反射防止機能を果たせないことがある。
【0133】
偏光板の視感度補正単体透過率Tyは、大きくなるほど白表示時の明瞭性が増すが、(式1)及び(式2)の関係からわかるように、単体透過率を大きくなりすぎると偏光度が低下するという問題がある。よって、30%以上60%以下が好ましく、より好ましくは35%以上55%以下、さらに好ましくは38%以上50%以下であり、さらに好ましくは40%以上45%以下である。視感度補正単体透過率Tyが過度に大きくなると視感度補正偏光度Pyが小さくなりすぎて、光学積層体を反射防止フィルムとして使用した際の反射防止機能が不十分となることがある。
【0134】
(偏光素子)
偏光素子としては、上記したように、偏光子及び液晶偏光子が挙げられる。偏光素子は、偏光子であることが好ましい。
【0135】
(偏光子)
偏光子すなわちポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルム等のポリマー中にヨウ素や有機二色性染料を含浸させた状態で一軸延伸したフィルムは、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをヨウ素等の二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液等の架橋剤で処理する工程、及び、ホウ酸含有水溶液等の架橋剤による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。偏光子は架橋剤を含んでいてよい。
【0136】
偏光子の厚みは、通常30μm以下であり、好ましくは18μm以下であり、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。該厚みは、通常1μm以上であり、例えば5μm以上であればよい。
【0137】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。もちろん、ここに示した複数の段階で一軸延伸を行うこともできる。一軸延伸には、周速の異なるロール間でフィルム運搬方向に一軸に延伸する方法や、熱ロールを用いてフィルム運搬方向に一軸に延伸する方法、テンターを使用して幅方向に延伸する方法等が採用できる。一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸により行ってもよいし、水等の溶媒を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸により行ってもよい。延伸倍率は、通常3~8倍である。また、熱可塑性樹脂フィルム上にポリビニルアルコールを含む水溶液を塗布した後に乾燥処理を施し、熱可塑性樹脂フィルムと共に上記方法にて延伸してもよい。
【0138】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法により行うことができる。二色性色素として、具体的にはヨウ素や二色性有機染料が用いられる。
【0139】
(偏光子の製造方法)
偏光子は、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム(以下、「PVA系フィルム」ともいう。)を一軸延伸する工程、PVA系フィルムを二色性色素で染色することにより二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたPVA系フィルムをホウ酸含有水溶液で処理して架橋させる工程、及びホウ酸含有水溶液による架橋処理後に水洗する工程(以下、「ホウ酸処理」ともいう。)を経て、製造される。
【0140】
PVA系フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。もちろん、ここに示した複数の段階で一軸延伸を行うこともできる。一軸延伸には、周速の異なるロール間でフィルム運搬方向に一軸に延伸する方法や、熱ロールを用いてフィルム運搬方向に一軸に延伸する方法、テンターを使用して幅方向に延伸する方法などが採用できる。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸により行ってもよいし、水等の溶媒を用い、PVA系フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸により行ってもよい。延伸倍率は、通常3~8倍である。
【0141】
PVA系フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液にPVA系フィルムを浸漬する方法により行うことができる。二色性色素として、具体的にはヨウ素や二色性有機染料が用いられる。なお、PVA系フィルムは、染色処理の前に水に浸漬して膨潤させる処理を施しておくことが好ましい。
【0142】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、PVA系フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100質量部あたり、通常0.01~1質量部であり、ヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常0.5~20質量部である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20~40℃である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20~1800秒間である。
【0143】
一方、二色性色素として二色性有機染料を用いる場合は、通常、水溶性の二色性有機染料を含む水溶液に、PVA系フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100質量部あたり、通常0.0001~10質量部であり、好ましくは0.001~1質量部である。この染料水溶液は、硫酸ナトリウムのような無機塩を染色助剤として含有していてもよい。染色に用いる二色性有機染料水溶液の温度は、通常20~80℃である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10~1800秒間である。
【0144】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたPVA系フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬する方法により、行うことができる。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100質量部あたり、通常2~15質量部であり、好ましくは5~12質量部である。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸含有水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常0.1~15質量部であり、好ましくは5~12質量部である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常60~1200秒間であり、好ましくは150~600秒間、さらに好ましくは200~400秒間である。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50~85℃、さらに好ましくは60~80℃である。
【0145】
ホウ酸処理後のPVA系フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたPVA系フィルムを水に浸漬する方法により、行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常5~40℃である。また浸漬時間は、通常1~120秒間である。
【0146】
水洗後は乾燥処理が施されて、偏光子が得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30~100℃であり、好ましくは50~80℃である。乾燥処理の時間は、通常60~600秒間であり、好ましくは120~600秒間である。乾燥処理により、偏光子中の水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、偏光子の総質量に対して通常5~20質量%であり、好ましくは8~15質量%である。水分率が5質量%以上であると、偏光子は十分な可撓性を有するため、乾燥後に損傷したり、破断したりすることを抑制することができる。また、水分率が20質量%以下であると、偏光子は十分な熱安定性を有する。
【0147】
以上のようにして、PVA系フィルムに二色性色素が吸着配向した偏光子を製造することができる。
【0148】
上記で得られた偏光子は、さらにその片面又は両面に偏光素子保護フィルム又は保護層を積層することにより、偏光板を製造することができる。
【0149】
(液晶偏光子)
液晶偏光子すなわち二色性色素を含む重合性液晶化合物の重合体からなる光学異方性層は、色相を任意に制御可能である点、及び大幅に薄型化できる点、さらに熱による延伸緩和が無いため非収縮性を有する点から、例えばフレキシブルディスプレイ用途に好適に用いることができる。
【0150】
液晶偏光子は、第3基材層上、又は第3基材層上に形成された第3配向層上に、液晶偏光子形成用組成物を塗布し、液晶偏光子形成用組成物に含まれる二色性色素が配向することによって形成される。液晶偏光子の厚みは、好ましくは0.1μm以上5μm以下であり、より好ましくは0.3μm以上4μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以上3μm以下である。厚みが上記の範囲よりも小さくなると、必要な光吸収が得られない場合があり、かつ、厚みが上記の範囲よりも大きくなると、第3配向層による配向規制力が低下し、配向欠陥を生じやすい傾向にある。また、液晶偏光子形成用組成物は、溶剤、光重合開始剤、光増感剤、重合禁止剤、レベリング剤及び密着性向上剤等をさらに含み得る。
【0151】
二色性色素と重合性液晶化合物とが第3基材層面に対して水平配向した液晶偏光子は、波長λnmの光に対する配向方向の吸光度A1(λ)と配向面内垂直方向の吸光度A2(λ)の比(二色比)が好ましくは7以上であり、より好ましくは20以上であり、さらに好ましくは40以上である。この比の値が大きい程、吸収選択性の優れる液晶偏光子といえる。二色性色素の種類にもよるが、液晶偏光子を構成する重合性液晶化合物がネマチック液晶相の状態で硬化している場合、上記比は5~10程度である。
【0152】
吸収波長の異なる2種以上の二色性色素を混合することにより、様々な色相の液晶偏光子を作製することができ、可視光全域に吸収を有する液晶偏光子とすることができる。このような吸収特性を有する液晶偏光子とすることにより、様々な用途に展開しうる。
【0153】
(液晶偏光子を構成する重合性液晶化合物)
重合性液晶化合物とは、重合性基を有し、かつ、液晶性を有する化合物である。重合性基は、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、メタクリロイルオキシ基又はアクリロイルオキシ基がより好ましい。液晶性はサーモトロピック液晶でもリオトロピック液晶でもよいが、後述する二色性色素と混合する場合には、サーモトロピック液晶が好ましい。重合性液晶化合物はモノマーであってもよいし、二量体以上重合したポリマーであってもよい。
【0154】
重合性液晶化合物がサーモトロピック液晶である場合は、ネマチック液晶相を示すサーモトロピック性液晶化合物であってもよいし、スメクチック液晶相を示すサーモトロピック性液晶化合物であってもよい。高い二色性を発現し得るという観点で、重合性液晶化合物が示す液晶状態は、スメクチック相であることが好ましく、高次スメクチック相であれば高性能化の観点からより好ましい。中でも、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相、又はスメクチックL相を形成する高次スメクチック重合性液晶化合物がより好ましく、スメクチックB相、スメクチックF相又はスメクチックI相を形成する高次スメクチック重合性液晶化合物がさらに好ましい。重合性液晶化合物が形成する液晶相がこれらの高次スメクチック相であると、偏光性能のより高い液晶偏光子を製造することができる。また、このように偏光性能の高い液晶偏光子はX線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られるものである。当該ブラッグピークは分子配向の周期構造に由来するピークであり、その周期間隔が3~6Åである膜を得ることができる。液晶偏光子は、この重合性液晶化合物がスメクチック相の状態で配向した重合性液晶化合物の重合体を含むことが、より高い偏光特性が得られるという観点から好ましい。
【0155】
重合性液晶化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。後述する他の化合物を含む液晶偏光子形成用組成物は、本発明の効果を損なわない限り、重合性液晶化合物以外の他の重合性液晶化合物を含んでいてもよいが、配向秩序度の高い液晶偏光子を得る観点から、液晶偏光子形成用組成物に含まれる全重合性液晶化合物の総質量に対する重合性液晶化合物(他の重合性液晶化合物以外の重合性液晶化合物)の割合は、好ましくは51質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。
【0156】
液晶偏光子形成用組成物における重合性液晶化合物の含有量は、重合性液晶組成物の固形分に対して、好ましくは40~99.9質量%であり、より好ましくは60~99質量%であり、さらに好ましくは70~99質量%である。重合性液晶化合物の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向性が高くなる傾向がある。なお、本明細書において、固形分とは、液晶偏光子形成用組成物から溶剤を除いた成分の合計量をいう。
【0157】
(液晶偏光子を構成する二色性色素)
二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素をいう。二色性色素としては、可視光を吸収する特性を有する特性を有するものが好ましく、波長380~680nmの範囲に吸収極大波長(λMAX)を有するものがより好ましい。このような二色性色素としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素、及びアントラキノン色素等が挙げられるが、中でもアゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、及びスチルベンアゾ色素等が挙げられ、好ましくはビスアゾ色素及びトリスアゾ色素である。二色性色素は単独でも、組み合わせてもよいが、可視光全域で吸収を得るためには、2種類以上の二色性色素を組み合わせることが好ましく、3種類以上の二色性色素を組み合わせることがより好ましい。
【0158】
アゾ色素としては、例えば、式(VIII)で表される化合物(以下、「化合物(VIII)」ということもある)が挙げられる。
T1-A1(-N=N-A2)p-N=N-A3-T2 (VIII)
[式(VIII)中、
A1、A2、及びA3は、互いに独立に、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン-1,4-ジイル基、置換基を有していてもよい安息香酸フェニルエステル基、置換基を有していてもよい4,4’-スチルベニレン基、又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を表す。
T1及びT2は、互いに独立に、電子吸引基あるいは電子放出基であり、アゾ結合面内に対して実質的に180°の位置に有する。
pは0~4の整数を表す。pが2以上である場合、各々のA2は互いに同一でも異なっていてもよい。可視域に吸収を示す範囲で-N=N-結合が-C=C-、-COO-、-NHCO-、-N=CH-結合に置き換わっていてもよい。]
【0159】
二色性色素の含有量(複数種含む場合にはその合計量)は、良好な光吸収特性を得る観点から、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常1~60質量部であり、好ましくは1~40質量部であり、より好ましくは1~20質量部である。二色性色素の含有量がこの範囲より少ないと光吸収が不十分となり、十分な偏光性能が得られず、この範囲よりも多いと液晶分子の配向を阻害する場合がある。
【0160】
液晶偏光子は、第3基材層上、又は、第3基材層上に形成された第3配向層上に液晶偏光子形成用組成物を塗布することで製造することができる。液晶偏光子形成用組成物は、さらに、溶剤やレベリング剤、重合開始剤、光増感剤、酸化防止剤、架橋剤、密着剤等の反応性添加剤等の添加剤を含んでいてもよく、溶剤やレベリング剤を含むことが加工性の観点から好ましい。これらの添加剤は、液晶位相差層形成用組成物で説明したものを用いることができる。
【0161】
液晶偏光子形成用組成物の塗布方法、液晶偏光子形成用組成物に含まれる溶剤を除去する乾燥方法、液晶偏光子形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物を重合させる方法としては、液晶位相差層の製造方法で説明した方法が挙げられる。第3基材層及び第3配向層としては、液晶位相差層の製造方法で説明した第1基材層及び第2基材層、並びに、第1配向層及び第2配向層で説明したものが挙げられる。
【0162】
液晶偏光子の片面又は両面に、偏光素子保護フィルム又は保護層を積層することにより、偏光板を製造することができる。
【0163】
(偏光素子保護フィルム)
偏光素子保護フィルムは偏光素子の表面を保護する機能を有する。偏光素子と偏光素子保護フィルムとは互いに直接積層されていてもよい。ここで「直接積層されている」とは、偏光素子保護フィルムの自己粘着性によって偏光素子に積層されている態様、及び、粘接着剤層(接着剤層又は粘着剤層)を介して積層されている態様を含む。偏光素子保護フィルムは、偏光素子との密着性を向上するため、表面処理(例えば、コロナ処理等)が施されていてもよく、プライマー層(「易接着層」ともいう)等の薄層が形成されていてもよい。
【0164】
偏光素子保護フィルムとしては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性、延伸性等に優れる樹脂フィルムを用いることができる。樹脂フィルムは熱可塑性樹脂フィルムであってもよい。このような樹脂フィルムを構成する樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;シクロ系及びノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン系樹脂(「ノルボルネン系樹脂」ともいう);ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂、並びにこれらの混合物を挙げることができる。かかる材質の偏光素子保護フィルムは市場から容易に入手できる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂又は紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルのうちのいずれか一方を意味する。(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイル等の表記についても同様である。
【0165】
鎖状ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂(エチレンの単独重合体であるポリエチレン樹脂や、エチレンを主体とする共重合体)、ポリプロピレン樹脂(プロピレンの単独重合体であるポリプロピレン樹脂や、プロピレンを主体とする共重合体)のような鎖状オレフィンの単独重合体の他、2種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体を挙げることができる。
【0166】
環状ポリオレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1-240517号公報、特開平3-14882号公報、特開平3-122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンのような鎖状オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、及びこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びにそれらの水素化物である。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーのようなノルボルネン系モノマーを用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
【0167】
ポリエステル系樹脂は、主鎖にエステル結合を有する樹脂であり、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体が一般的である。多価カルボン酸又はその誘導体としては2価のジカルボン酸又はその誘導体を用いることができ、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ナフタレンジカルボン酸ジメチル等が挙げられる。多価アルコールとしては2価のジオールを用いることができ、例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。ポリエステル系樹脂の代表例として、テレフタル酸とエチレングリコールの重縮合体であるポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0168】
セルロースエステル系樹脂は、セルロースと脂肪酸とのエステルである。セルロースエステル系樹脂の具体例は、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリプロピオネート、セルロースジプロピオネートを含む。また、これらのセルロースエステル系樹脂を構成する重合単位を複数種有する共重合物や、水酸基の一部が他の置換基で修飾されたものも挙げられる。これらの中でも、セルローストリアセテート(トリアセチルセルロース)が特に好ましい。
【0169】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を主な構成モノマーとする樹脂である。(メタ)アクリル系樹脂の具体例は、例えば、ポリメタクリル酸メチルのようなポリ(メタ)アクリル酸エステル;メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸共重合体;メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体;メタクリル酸メチル-アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体;(メタ)アクリル酸メチル-スチレン共重合体(MS樹脂等);メタクリル酸メチルと脂環族炭化水素基を有する化合物との共重合体(例えば、メタクリル酸メチル-メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体等)を含む。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルのようなポリ(メタ)アクリル酸C1-6アルキルエステルを主成分とする重合体が用いられ、より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50~100重量%、好ましくは70~100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が用いられる。
【0170】
ポリカーボネート系樹脂は、カルボナート基を介してモノマー単位が結合された重合体からなる。ポリカーボネート系樹脂は、ポリマー骨格を修飾したような変性ポリカーボネートと呼ばれる樹脂や、共重合ポリカーボネート等であってもよい。ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、特開2012-31370号公報に記載されているものが挙げられる。
【0171】
偏光素子保護フィルムの厚みは、好ましくは0.1μm~60μm、より好ましくは0.5μm~40μm、更に好ましくは1μm~30μmである。
【0172】
偏光素子保護フィルムは偏光素子より視認側となるように配置して用いることができる。したがって、偏光素子保護フィルムには、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。さらに/あるいは、偏光素子保護フィルムには、必要に応じて、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善する処理(代表的には、(楕)円偏光機能を付与すること、超高位相差を付与すること)が施されていてもよい。このような処理を施すことにより、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、優れた視認性を実現することができる。したがって、位相差を有する偏光素子保護フィルムを備えた偏光板は、屋外で用いられ得る画像表示装置にも好適に適用され得る。
【0173】
上記熱可塑性樹脂を含むフィルムを延伸することにより、偏光素子保護フィルムを作製することができる。延伸処理としては、一軸延伸処理や二軸延伸処理等が挙げられる。延伸方向としては、未延伸フィルムの機械流れ方向(MD)、これに直交する方向(TD)、機械流れ方向(MD)に斜交する方向等が挙げられる。二軸延伸は、2つの延伸方向に同時に延伸する同時二軸延伸でもよく、所定方向に延伸した後で他の方向に延伸する逐次二軸延伸であってもよい。延伸処理は、例えば出口側の周速を大きくした2対以上のニップロールを用いて、長手方向(機械流れ方向:MD)に延伸したり、未延伸フィルムの両側端をチャックで把持して機械流れ方向に直交する方向(TD)に広げたりすることで行うことができる。この際、フィルムの厚みを調整したり、延伸倍率を調整したりすることによって、位相差値及び波長分散を制御することが可能である。また、樹脂に波長分散調整剤を添加したりすることによって、波長分散値を制御することが可能である。
【0174】
偏光素子保護フィルムは、目的に応じて任意の適切な添加剤を含有し得る。添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系などの酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;可塑剤;滑剤;位相差低減剤等が挙げられる。含有される添加剤の種類、組み合わせ、含有量等は、目的や所望の特性に応じて適切に設定され得る。
【0175】
所望の表面光学特性又はその他の特徴を付与するために、偏光素子保護フィルムの外面にコーティング層(表面処理層)を設けることができる。表面処理層の具体例は、ハードコート層、防眩層、反射防止層、帯電防止層、防汚層を含む。表面処理層を形成する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。表面処理層は、偏光素子保護フィルムの一方の面に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。
【0176】
ハードコート層は、偏光素子保護フィルムの表面硬度を高める機能を有し、表面の擦り傷防止等の目的で設けられる。ハードコート層は、JIS K 5600-5-4:1999「塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」に規定される鉛筆硬度試験(ハードコート層を有する光学フィルムをガラス板の上に置いて測定する)で測定される鉛筆硬度がH又はそれより硬い値であることが好ましい。
【0177】
ハードコート層を形成する材料は、一般に、熱や光によって硬化するものである。例えば、有機シリコーン系、メラミン系、エポキシ系、(メタ)アクリル系、ウレタン(メタ)アクリレート系のような有機ハードコート材料、二酸化ケイ素のような無機ハードコート材料を挙げることができる。これらの中でも、偏光素子保護フィルムに対する密着性が良好であり、生産性に優れることから、ウレタン(メタ)アクリレート系又は多官能(メタ)アクリレート系ハードコート材料が好ましく用いられる。
【0178】
ハードコート層は、所望により、屈折率の調整、曲げ弾性率の向上、体積収縮率の安定化、さらには耐熱性、帯電防止性、防眩性等の向上を図る目的で、各種フィラーを含有することができる。ハードコート層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤のような添加剤を含有することもできる。
【0179】
ハードコート層は、強度をより向上させるために、添加剤を含んでいてもよい。添加剤は限定されることはなく、無機系微粒子、有機系微粒子、又はこれらの混合物が挙げられる。ハードコート層の厚みは、硬さを持たせるためには厚い方がよいが、厚すぎるとカット時に割れやすくなるため、例えば1μm~20μmであり、2μm~10μmであってもよい。ハードコート層の厚みは、3μm~7μmとすることが好ましい。
【0180】
防眩層は、表面に微細な凹凸形状を有する層であり、好ましくは、上述したハードコート層を形成する材料を用いて形成される。
【0181】
表面に微細な凹凸形状を有する防眩層は、1)延伸フィルム上に微粒子を含有する塗膜を形成し、その微粒子に基づく凹凸を設ける方法、2)微粒子を含有するか、又は含有しない塗膜を延伸フィルム上に形成した後、表面に凹凸形状が付与された金型(ロール等)に押し当てて凹凸形状を転写する方法(エンボス法とも呼ばれる)等、によって形成することができる。
【0182】
反射防止層は、偏光素子保護フィルムを観察する者にとって、偏光素子保護フィルム表面の外光反射を弱めるための層であり、通常は、可視光に対する反射率が1.5%以下となる。このような反射率の反射防止層は典型的には、高い屈折率を有する高屈折率層と、低い屈折率を有する低屈折率層とを積層することや、特開2021-6929号公報に記載の方法や材料を用いることによって得ることができる。これらの屈折率と各層の厚みを調整することで各層からの反射光が互いに弱め合うようにすることができ、優れた反射防止機能が奏される。
【0183】
高屈折率層と低屈折率層とからなる反射防止層は、高屈折率層及び低屈折率層のそれぞれを形成し得る塗布型組成物を用いて反射防止層を製造すると、操作が極めて簡便であるため好ましい。ここで、高屈折率層及び低屈折率層のそれぞれを形成し得る塗布型組成物の一例を挙げておく。かかる塗布型組成物は液状のものであり、適切な硬化性樹脂と、必要に応じて添加剤とを含む。高屈折率層を形成し得る塗布型組成物(高屈折率層形成用組成物)は、例えば、ウレタンアクリレートのような硬化性樹脂と、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ベンジルジメチルケタール系、α-ヒドロキシアルキルフェノン系、α-アミノアルキルフェノン系やチオキサントン系といった光重合のための開始剤(光重合開始剤)とを、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンといった溶剤に溶解してなる。塗布性をより良好とするために、レベリング剤、好ましくはフッ素系レベリング剤を含んでいてもよい。また、低屈折率層を形成し得る塗布型組成物(低屈折率層形成用組成物)としては、硬化性樹脂として、ポリエチレングリコールジアクリレートやペンタエリストール(トリ/テトラ)アクリレートのようなバインダー樹脂に、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ベンジルジメチルケタール系、α-ヒドロキシアルキルフェノン系、α-アミノアルキルフェノン系やチオキサントン系といった光重合のための開始剤(光重合開始剤)を、1-メトキシ-2-プロピルアセテートやメチルイソブチルといった溶剤に溶解してなる溶液にシリカ粒子を分散させてなる。塗布性をより良好とするために、フッ素系レベリング剤を含んでいてもよい。なお、ここで挙げた高屈折率層及び低屈折率層のそれぞれを形成し得る塗布型組成物はあくまで一例であり、形成しようとする反射防止層の特性に応じて、高屈折率層形成用組成物及び低屈折率層形成用組成物をそれぞれ最適化することが好ましい。
【0184】
反射防止層は、例えば低屈折率層を備えるものであることができる。また、偏光素子保護フィルムと低屈折率層との間に、高屈折率層及び/又は中屈折率層をさらに備える多層構造であってもよい。
【0185】
低屈折率層は、上述の硬化性樹脂の硬化物や金属アルコキシド系ポリマー等の透光性樹脂及び無機粒子を含有する塗工液を塗工した後、塗工層を必要に応じて硬化させる方法によって形成することができる。無機粒子としては、例えば、LiF(屈折率1.4)、MgF(屈折率1.4)、3NaF・AlF(屈折率1.4)、AlF(屈折率1.4)、Na3AlF6(屈折率1.33)等の低屈折粒子や、中空シリカ粒子等が挙げられる。
【0186】
帯電防止層は、偏光素子保護フィルムの表面に導電性を付与し、静電気による影響を抑制する等の目的で設けられる。帯電防止層の形成には、例えば、導電性物質(帯電防止剤)を含有する樹脂組成物を偏光素子保護フィルム上に塗布する方法が採用できる。例えば、上述したハードコート層を形成する材料に帯電防止剤を共存させておくことにより、帯電防止性のハードコート層を形成することができる。
【0187】
防汚層は、撥水性、撥油性、耐汗性、防汚性等を付与するために設けられる。防汚層を形成するための好適な材料は、フッ素含有有機化合物である。フッ素含有有機化合物としては、フルオロカーボン、パーフルオロシラン、これらの高分子化合物等を挙げることができる。防汚層の形成方法は、形成する材料に応じて、蒸着やスパッタリングを代表例とする物理的気相成長法、化学的気相成長法、湿式コーティング法等を用いることができる。防汚層の平均厚みは、通常1~50nm程度、好ましくは3~35nmである。
【0188】
(保護層)
偏光板は、偏光素子の片面又は両面に保護層を有していてもよい。偏光素子として液晶偏光子を用い、粘接着剤等によって液晶偏光子と別のフィルムとを接着積層させるような場合に、液晶偏光子の表面に保護層を有することにより、液晶偏光子中の未反応の重合性液晶化合物や二色性色素等の低分子成分が別の層へ拡散することを防止することができる。
【0189】
保護層は、液晶偏光子中の未反応の重合性液晶化合物や二色性色素等の低分子成分が別の層へ拡散することを抑制することができるのであれば、厚みは小さいことが好ましい。保護層の厚みは、好ましくは0.1μm以上10μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上5μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上3μm以下である。
【0190】
保護層は、架橋密度の大きいポリマーである、又は、親水性相互作用の高い水溶性ポリマーであることが好ましい。例えば、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ウレタン樹脂、及びメラミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含んでなる。これらの中でも、硬化性に優れ、形成しやすい観点から、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ウレタン樹脂、及びメラミン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含んでなることが好ましく、(メタ)アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含んでなることがより好ましい。また、親水性の観点からポリビニルアルコール樹脂が好ましい。
【0191】
<粘接着剤層(第1粘接着剤層、第2粘接着剤層)>
粘接着剤層(第1粘接着剤層又は第2粘接着剤層)は、偏光板、第1液晶位相差層、及び第2液晶位相差層等を貼り合わせる際に好適に用いられる。粘接着剤層は、粘着剤層又は接着剤層である。
【0192】
(粘着剤層)
粘着剤層は、それ自体を被着体に貼り付けることで接着性を発現するものであり、いわゆる感圧型接着剤と称されるものである。粘着剤層を形成する粘着剤組成物としては、従来公知の光学的な透明性に優れる粘着剤組成物を特に制限なく用いることができ、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等のベースポリマーを有する粘着剤組成物を用いることができる。また、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、熱硬化型粘着剤組成物等であってもよい。これらの中でも、透明性、粘着力、再剥離性、耐候性、耐熱性等に優れるアクリル系樹脂をベースポリマーとした粘着剤組成物が好適である。
粘着剤組成物は、さらに、架橋剤、シラン化合物、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
【0193】
粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系樹脂は、下記式(IX)で示される(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位(以下、「構造単位(IX)」ともいう。)を主成分(例えば、(メタ)アクリル系樹脂の構造単位100質量部に対して50質量部以上含む。)とする重合体(以下、「(メタ)アクリル酸エステル重合体」ともいう。)であることが好ましい。
【0194】
【化5】
[式(IX)中、
R
10は、水素原子又はメチル基を表し、R
20は、炭素数1~20のアルキル基を表し、アルキル基は直鎖状、分岐状及び環状のうちのいずれの構造を有していてもよく、アルキル基の水素原子は、炭素数1~10のアルコキシ基で置き換わっていてもよい。]
【0195】
式(IX)で表される(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-へキシル(メタ)アクリレート、i-へキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、n-及びi-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、i-デシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルコキシ基含有アルキルアクリレートの具体例としては、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でもn-ブチル(メタ)アクリレート又は2-エチルへキシル(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、特にn-ブチル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0196】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、構造単位(IX)以外の他の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。他の単量体に由来する構造単位は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。(メタ)アクリル酸エステル重合体が含み得る他の単量体としては、極性官能基を有する単量体、芳香族基を有する単量体、アクリルアミド系単量体が挙げられる。
【0197】
極性官能基を有する単量体としては、極性官能基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。極性官能基としては、ヒドロキシ基;カルボキシ基;炭素数1~6のアルキル基で置換された置換アミノ基又は無置換アミノ基;エポキシ基等の複素環基等が挙げられる。
【0198】
(メタ)アクリル酸エステル重合体中の極性官能基を有する単量体に由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の全構造単位100質量部に対して、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下であり、さらに好ましくは0.5質量部以上5質量部以下であり、特に好ましくは1質量部以上5質量部以下である。
【0199】
芳香族基を有する単量体としては、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基と1個以上の芳香環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等)とを有し、フェニル基、フェノキシエチル基、又はベンジル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0200】
(メタ)アクリル酸エステル重合体中の芳香族基を有する単量体に由来する構造単位の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の全構造単位100質量部に対して、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは4質量部以上20質量部以下であり、さらに好ましくは4質量部以上15質量部以下である。
【0201】
アクリルアミド系単量体としては、N-(メトキシメチル)アクリルアミド、N-(エトキシメチル)アクリルアミド、N-(プロポキシメチル)アクリルアミド、N-(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-(2-メチルプロポキシメチル)アクリルアミド等が挙げられる。これらの構造単位を含むことで、後述する帯電防止剤等の添加物のブリードアウトを抑制することができる。
【0202】
さらに、構造単位(IX)以外の他の単量体に由来する構造単位として、スチレン系単量体に由来する構造単位、ビニル系単量体に由来する構造単位、分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構造単位等が含まれていてもよい。
【0203】
(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量(以下、単に「Mw」ともいう。)は、50万~250万であることが好ましい。重量平均分子量が50万以上であると、高温、高湿の環境下における粘着剤層の耐久性を向上させることができる。重量平均分子量が250万以下であると、粘着剤組成物を含有する塗工液を塗工する際の操作性が良好となる。重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(以下、単に「Mn」ともいう。)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、通常2~10である。本明細書において「重量平均分子量」及び「数平均分子量」とは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0204】
(メタ)アクリル系樹脂は、酢酸エチルに溶解させて濃度20質量%の溶液としたとき、25℃における粘度が、20Pa・s以下であることが好ましく、0.1~15Pa・sであることがより好ましい。(メタ)アクリル樹脂の温度25℃における粘度が上記範囲内であると、上記樹脂により形成された粘着剤層を含む光学積層体の耐久性の向上や、リワーク性に寄与する。上記粘度は、ブルックフィールド粘度計によって測定できる。
【0205】
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば-60~20℃であり、好ましくは-50~15℃であり、より好ましくは-45~10℃であり、さらに好ましくは-40~0℃である。ガラス転移温度は示差走査熱量計(DSC)により測定できる。
【0206】
(メタ)アクリル系樹脂は、2種以上の(メタ)アクリル酸エステル重合体を含んでもよい。そのような(メタ)アクリル酸エステル重合体としては、例えば、上記(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位(IX)を主成分とするものであって、重量平均分子量が5万~30万の範囲にあるような比較的低分子量の(メタ)アクリル酸エステル重合体が挙げられる。
【0207】
(メタ)アクリル系樹脂は、通常、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合方法によって製造することができる。(メタ)アクリル系樹脂の製造においては、通常、重合開始剤の存在下に重合が行われる。重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル系樹脂を構成する全ての単量体の合計100質量部に対して、通常0.001~5質量部である。(メタ)アクリル系樹脂は、紫外線等の活性エネルギー線によって重合する方法により製造することもできる。
【0208】
粘着剤組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤としては、慣用の架橋剤(例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、過酸化物等)が挙げられ、特に粘着剤組成物のポットライフ、架橋速度、及び光学積層体の耐久性等の観点から、イソシアネート系化合物であることが好ましい。
【0209】
イソシアネート化合物は、分子内に少なくとも2個のイソシアナト基(-NCO)を有する化合物である。具体的には、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。また、これらのイソシアネート化合物と、グリセロールやトリメチロールプロン等のポリオールを反応させて得られるアダクト体や、これらイソシアネート化合物の二量体や三量体も挙げられる。2種以上のイソシアネート化合物を組み合わせてもよい。
【0210】
粘着剤組成物における架橋剤の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、例えば、0.01~10質量部であり、好ましくは0.05~5質量部であり、さらに好ましくは0.1~1質量部である。
【0211】
粘着剤組成物は、さらにシラン化合物を含有していてもよい。シラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエトキシジメチルシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。シラン化合物は、上記シラン化合物に由来するオリゴマーを含むことができる。
【0212】
粘着剤組成物におけるシラン化合物の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、通常0.01~10質量部であり、好ましくは0.05~5質量部である。シラン化合物の含有量が0.01質量部以上であると、粘着剤層と被着体との密着性が向上する傾向にあり、含有量が10質量部以下であると、粘着剤層からのシラン化合物がブリードアウトすることが抑制される傾向にある。
【0213】
粘着剤組成物は、帯電防止剤をさらに含んでもよい。帯電防止剤としては、公知のものが挙げられ、イオン性帯電防止剤が好適である。イオン性帯電防止剤を構成するカチオン成分としては、有機カチオン及び無機カチオンが挙げられる。有機カチオンとしては、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン等が挙げられる。無機カチオンとしては、リチウムカチオン、カリウムカチオン、ナトリウムカチオン、セシウムカチオン等のアルカリ金属カチオン、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオン等のアルカリ土類金属カチオン等が挙げられる。イオン性帯電防止剤を構成するアニオン成分としては、無機アニオン及び有機アニオンのいずれでもよいが、帯電防止性能に優れるという点で、フッ素原子を含むアニオン成分が好ましい。フッ素原子を含むアニオン成分としては、ヘキサフルオロホスフェートアニオン(PF6
-)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン[(CF3SO2)2N-]、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン[(FSO2)2N-]アニオン等が挙げられる。
【0214】
粘着剤組成物の帯電防止性能の経時安定性に優れるという点で、室温で固体であるイオン性帯電防止剤が好ましい。
【0215】
粘着剤組成物における帯電防止剤の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部に対して、例えば、0.01~20質量部、好ましくは0.1~10質量部、さらに好ましくは1~7質量部である。
【0216】
粘着剤組成物は、紫外線吸収剤、溶媒、架橋触媒、粘着付与樹脂(タッキファイヤー)、可塑剤等の添加剤を単独又は2種以上含むことができる。粘着剤組成物に紫外線硬化性化合物を配合し、粘着剤層を形成した後に紫外線を照射して硬化させ、より硬い粘着剤層とすることも有用である。
【0217】
粘着剤層は、例えば、粘着剤組成物を、溶剤に溶解又は分散して溶剤含有の粘着剤組成物とし、次いで、これを、粘着剤層を設ける層の表面に塗布し、乾燥させることで形成できる。
【0218】
粘着剤層の厚みは、通常0.1μm以上30μm以下であり、好ましくは3μm以上30μm以下であり、さらに好ましくは5μm以上25μm以下である。
【0219】
(接着剤層)
接着剤層は、偏光子と偏光素子保護フィルムとを接合する機能や、偏光板、第1液晶位相差層、及び第2液晶位相差層等を貼り合わせる機能等を有することができる。接着剤層は接着剤組成物から形成することができる。
【0220】
接着剤組成物としては、例えば、水系接着剤組成物、加熱又は紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性接着剤組成物等が挙げられる。水系接着剤組成物としては、例えば、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂又はウレタン樹脂を水に溶解したもの、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂又はウレタン樹脂を水に分散させたものが挙げられる。水系接着剤組成物は、さらに、多価アルデヒド、メラミン系化合物、ジルコニア化合物、亜鉛化合物、グリオキサール化合物、水溶性エポキシ樹脂等の硬化性成分や架橋剤を含有していてもよい。水系接着剤組成物としては、例えば、特開2010-191389号公報に記載の接着剤組成物、特開2011-107686号公報に記載の接着剤組成物、特開2020-172088号公報に記載の組成物、特開2005-208456号公報に記載の組成物等が挙げられる。
【0221】
硬化性接着剤組成物は、主成分として硬化性(重合性)化合物を含み、活性エネルギー線照射により硬化する活性エネルギー線硬化型接着剤組成物であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型接着剤組成物としては、硬化性化合物としてカチオン重合性化合物を含むカチオン重合型接着剤組成物、硬化性化合物としてラジカル重合性化合物を含むラジカル重合型接着剤組成物、硬化性化合物としてカチオン重合性化合物とラジカル重合性化合物との両方を含むハイブリッド型接着剤組成物等が挙げられる。
【0222】
カチオン重合性化合物は、紫外線、可視光線、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射や加熱によりカチオン重合反応が進行して硬化する化合物又はオリゴマーであり、具体的にはエポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニル化合物等が挙げられる。
【0223】
エポキシ化合物としては、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環式エポキシ化合物(脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1個以上有する化合物);ビスフェノールAのジグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物(分子内に芳香族環とエポキシ基とを有する化合物);2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物(脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を分子内に少なくとも1個有する化合物)等が挙げられる。
【0224】
オキセタン化合物としては、3-エチル-3-{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン等の分子内に1個以上のオキセタン環を有する化合物が挙げられる。
【0225】
カチオン重合型接着剤組成物は、カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。カチオン重合開始剤は熱カチオン重合開始剤であってもよいし、光カチオン重合開始剤であってもよい。カチオン重合開始剤としては、ベンゼンジアゾニウム ヘキサフルオロアンチモネート等の芳香族ジアゾニウム塩;ジフェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等の芳香族ヨードニウム塩;トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート等の芳香族スルホニウム塩;キシレン-シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロアンチモネート等の鉄-アレーン錯体等が挙げられる。接着剤組成物におけるカチオン重合開始剤の含有量は、カチオン重合性化合物100質量部に対して通常0.1~10質量部である。カチオン重合開始剤は2種以上含まれていてもよい。
【0226】
カチオン重合型接着剤組成物としては、例えば、特開2021-113969号公報に記載のカチオン重合性組成物等が挙げられる。
【0227】
ラジカル重合性化合物は、紫外線、可視光線、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射や加熱によりラジカル重合反応が進行して硬化する化合物又はオリゴマーであり、具体的にはエチレン性不飽和結合を有する化合物が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系化合物、分子内に1個以上のビニル基を有するビニル化合物等が挙げられる。
【0228】
(メタ)アクリル系化合物としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、及び、官能基含有化合物を2種以上反応させて得られ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルオリゴマー等の(メタ)アクリロイル基含有化合物を挙げることができる。
【0229】
ラジカル重合型接着剤組成物は、ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。ラジカル重合開始剤は熱ラジカル重合開始剤であってもよいし、光ラジカル重合開始剤であってもよい。ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン等のアセトフェノン系開始剤;ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系開始剤;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインエーテル系開始剤;4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系開始剤;キサントン、フルオレノン等が挙げられる。接着剤組成物におけるラジカル重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して通常0.1~10質量部である。ラジカル重合開始剤は2種以上含んでいてもよい。
【0230】
ラジカル重合型接着剤組成物としては、例えば、特開2016-126345号公報、特開2016-153474号公報、国際公開第2017/183335号に記載のラジカル重合性組成物等が挙げられる。
【0231】
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、必要に応じて、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、帯電防止剤、レベリング剤、溶媒等の添加剤を含有することができる。
【0232】
接着剤層による二層の貼合は、二層それぞれの貼合面から選ばれる少なくとも一方の貼合面に接着剤組成物を塗工し、接着剤組成物の塗工層を介して両者を重ね、貼合ロール等を用いて上下から押圧して貼合後、塗工層を乾燥させる、活性エネルギー線を照射して硬化させる、又は加熱して硬化させることにより行うことができる。
【0233】
接着剤組成物の塗工層を形成する前に、二層それぞれの貼合面から選ばれる少なくとも一方の貼合面に、ケン化処理、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理、アンカーコーティング処理等の易接着処理を施してもよい。
【0234】
接着剤組成物の塗工層の形成には、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター、ワイヤーバーコーター、ドクターブレードコーター等の種々の塗工方式を使用することができる。
【0235】
活性エネルギー線を照射する場合の活性エネルギー線の照射強度は、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物の組成ごとに決定されるものであって特に限定されないが、10mW/cm2以上1000mW/cm2以下であることが好ましい。なお、照射強度は、好ましくは光カチオン重合開始剤又は光ラジカル重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。このような光照射強度で1回あるいは複数回照射して、その積算光量を、10mJ/cm2以上とすることが好ましく、100mJ/cm2以上1,000mJ/cm2以下とすることがより好ましい。
【0236】
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物の重合硬化を行うために使用する光源は、特に限定されないが、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプが挙げられる。
【0237】
水系接着剤組成物から形成される接着剤層の厚みは、例えば5μm以下であってよく、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.01μm以上であってよく、0.05μm以上であることが好ましい。
【0238】
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物から形成される接着剤層の厚みは、例えば、10μm以下であってよく、5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上であってもよく、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。
【実施例0239】
以下、実施例及び比較例等を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。実施例及び比較例等中の「%」及び「部」は、特記しない限り、それぞれ「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0240】
<偏光子の作製>
(偏光子aの作製)
厚み30μmの長尺のポリビニルアルコール(PVA)原反フィルム〔(株)クラレ製の商品名「クラレポバールフィルムVF-PE#3000」、平均重合度2400、ケン化度99.9モル%以上〕をロールから巻き出しながら連続的に搬送し、20℃の純水からなる膨潤浴に滞留時間31秒で浸漬させた(膨潤工程)。その後、膨潤浴から引き出したフィルムを、ヨウ化カリウム/水が2/100(重量比)であるヨウ素を含む30℃の染色浴に滞留時間122秒で浸漬させた(染色工程)。次いで、染色浴から引き出したフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が12/4.1/100(重量比)である56℃の架橋浴に滞留時間70秒で浸漬させ、続いて、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が9/2.9/100(重量比)である40℃の架橋浴に滞留時間13秒で浸漬させた(架橋工程)。染色工程及び架橋工程において、浴中でのロール間延伸により縦一軸延伸を行った。原反フィルムを基準とする総延伸倍率は5.4倍とした。
【0241】
次に、架橋浴から引き出したフィルムを5℃の純水からなる洗浄浴に滞留時間3秒で浸漬させた後(洗浄工程)、引き続き、湿度調節が可能な第1加熱炉に導入することにより滞留時間190秒で高温高湿処理を行った(高温高湿処理工程)。さらに第2加熱炉に導入することにより滞留時間161秒で高温高湿処理を行って、厚み12.9μm、幅208mmの偏光子aを得た。第1加熱炉内の温度、絶対湿度はそれぞれ59℃、10g/m3とし、高温高湿処理時のフィルム張力は775N/mとした。第2加熱炉内の温度、絶対湿度はそれぞれ73℃、89g/m3とし、高温高湿処理時のフィルム張力は1N/mとした。
【0242】
(偏光子bの作製)
厚み20μm、重合度2400、ケン化度99%以上のポリビニルアルコールフィルムを、熱ロール上で延伸倍率4.1倍に一軸延伸し、緊張状態を保ったまま、水100質量部あたりヨウ素0.05質量部及びヨウ化カリウム5質量部を含有する染色浴に28℃で60秒間浸漬した。次いで、水100質量部あたりホウ酸5.5質量部及びヨウ化カリウム15質量部を含有するホウ酸水溶液に、64℃で110秒間浸漬した。次いで、水100質量部あたりホウ酸5.5質量部及びヨウ化カリウム15質量部を含有するホウ酸水溶液に、67℃で30秒間浸漬した。その後、10℃の純水を用いて水洗し、乾燥して、偏光子bを得た。偏光子bの厚みは8μmであった。
【0243】
[偏光子の収縮力の測定]
偏光子の吸収軸が長辺と一致するように、偏光子を短辺2mm、長辺50mmの矩形にスーパーカッター(株式会社荻野精機製作所製)により切り出し、試験片とした。試験片の収縮力を熱機械分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、型式TMA/6100)を用いて測定した。この測定は、寸法一定モードにおいて、チャック間距離を10mmとし、静荷重を0mNとし、治具にはSUS製のプローブを使用して、次の手順で実施した。まず、試験片を温度20℃の室内に十分な時間放置した。その後、試験片を置いた室内の温度設定を20℃から80℃まで10分間で昇温させた。昇温後は室内の温度を80℃で維持するように設定し、さらに4時間放置した後、温度80℃の環境下で試験片の長辺方向(吸収軸方向)の収縮力を測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0244】
<偏光板の作製>
(偏光板aの作製)
偏光子aの片面に、水系接着剤を介して、偏光素子保護フィルムとしての環状ポリオレフィン樹脂(COP)フィルム(日本ゼオン製、ゼオノアZF14、厚み13μm)を貼り合わせ、偏光子aのもう一方の面に、水系接着剤を介して、偏光素子保護フィルムとしてのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フィルム製、フジタックTJ25、厚み25μm)を貼り合わせた。得られた貼合物の張力を430N/mに保ちながら、60℃で2分間乾燥して偏光板aを得た。水系接着剤は、水100部に、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(クラレポバールKL318、クラレ製)3部と、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(スミレーズレジン650、住化ケムテックス製、固形分濃度30%の水溶液)1.5部を添加して調製した。
【0245】
(偏光板bの作製)
偏光子aに代えて偏光子bを用いたこと以外は、偏光板aの作製の手順と同様にして、COPフィルム/接着剤層/偏光子b/接着剤層/TACフィルムの積層構造を有する偏光板bを得た。
【0246】
<第1液晶位相差層(1)、第2液晶位相差層(1)、及び位相差体(1)の作製>
(配向性ポリマー組成物(1)(配向層形成用組成物)の調製)
市販のポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)に水を加えて100℃で1時間加熱し、配向性ポリマー組成物(1)を得た。
【0247】
(第2液晶位相差層形成用組成物(1)の調製)
下記に示す構造を有する重合性液晶化合物(A1)及び重合性液晶化合物(A2)を、それぞれ調製した。重合性液晶化合物(A1)及び重合性液晶化合物(A2)は、特開2010-244038号公報に記載の方法にしたがって準備した。
【0248】
重合性液晶化合物(A1):
【化6】
重合性液晶化合物(A2):
【化7】
【0249】
重合性液晶化合物(A1)及び重合性液晶化合物(A2)を質量比80:20で混合し、混合物を得た。得られた混合物100部に対して、レベリング剤「メガファックF-556」(DIC社製)0.1部と、光重合開始剤として「Omnirad907」(IGM Resin B.V.社製)2.5部と、下記に示すイオン性化合物(B)0.1部とを添加した。さらに、混合物100部に対して、シクロペンタノンを650部添加し、温度80℃で1時間撹拌することにより、第2液晶位相差層形成用組成物(1)を調製した。
【0250】
【0251】
(基材付き第2液晶位相差層(1)の作製)
第2基材層(1)としての、長方形に切り出したシクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(日本ゼオン株式会社製、ZF14)にコロナ処理装置(AGF-B10;春日電機株式会社製)を用いてコロナ処理を施した後に配向性ポリマー組成物(1)を塗布し、加熱乾燥後、厚さ100nmの配向性ポリマーの第2配向層(1)を形成した。第2配向層(1)の表面にCOPフィルムの長手方向から75°となる角度でラビング処理を施し、その上に、第2液晶位相差層形成用組成物(1)を、バーコーターにより塗布した。得られた第2塗布層(1)を120℃で2分間乾燥して乾燥被膜を得た。高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製「ユニキュアVB-15201BY-A」)を用いて、窒素雰囲気下、温度80℃にて露光量1000mJ/cm2(365nm基準)の紫外光を乾燥被膜に照射することにより、重合性液晶化合物の光軸が第2基材層(1)の面内に対して水平方向に配向した状態で硬化した第2重合体層(1)を形成し、第2基材層(1)/第2液晶位相差層(1)(第2配向層(1)/第2重合体層(1))からなる基材付き第2液晶位相差層(1)を得た。
【0252】
得られた第2重合体層(1)の厚みをレーザー顕微鏡で測定したところ1.8μmであった。基材付き第2液晶位相差層(1)の面内位相差値は、王子計測機器株式会社製のKOBRA-WRを用いて測定した。その結果、波長550nmにおける面内位相差値は、Re(550)=270nmであった。なお、第2基材層(1)であるCOPフィルムの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、基材付き第2液晶位相差層(1)の光学特性には影響しない。配向角は第2基材層(1)の長手方向に対して75°であった。
【0253】
(第1液晶位相差層形成用組成物(1)の調製)
下記に示す重合性液晶化合物Paliocolor LC242(BASFジャパン社製)100部に対し、レベリング剤「BYK-361N」(BYK-Chemie社製)0.1部と、光重合開始剤として「Omnirad907」(IGM Resin B.V.社製)2.5部とを添加した。さらに、上記重合性液晶化合物100部に対し、シクロペンタノンを400部添加し、温度80℃で1時間撹拌することにより、第1液晶位相差層形成用組成物(1)を調製した。
【0254】
重合性液晶化合物Paliocolor LC242:
【化9】
【0255】
(基材付き第1液晶位相差層(1)の作製)
第1基材層(1)としての、長方形に切り出したシクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(日本ゼオン株式会社製、ZF14)に、コロナ処理装置(AGF-B10;春日電機株式会社製)を用いてコロナ処理を施した。COPフィルムのコロナ処理面に配向性ポリマー組成物(1)を塗布し、加熱乾燥後、厚さ100nmの配向性ポリマーの第1配向層(1)を形成した。得られた第1配向層の表面にCOPフィルムの長手方向から15°となる角度でラビング処理を施し、その上に、第1液晶位相差層形成用組成物(1)を、バーコーターにより塗布した。得られた第1塗布層(1)を100℃で1分間乾燥した後、室温まで冷却して第1塗布層(1)を乾燥し、基材付き第1塗布層(1)を得た。次いで、高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製「ユニキュアVB-15201BY-A」)を用いて、窒素雰囲気下にて、基材付き第1塗布層(1)の両面それぞれに紫外線を照射することにより(両面に照射される紫外線の合計の積算光量は1000mJ/cm2(365nm基準)とした。)、重合性液晶化合物が第1基材層(1)の面内に対して水平方向に配向した状態で硬化した第1重合体層(1)(水平配向液晶硬化膜)を形成し、第1基材層(1)/第1液晶位相差層(1)(第1配向層(1)/第1重合体層(1))からなる基材付き第1液晶位相差層(1)を得た。紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所社製の「UV-2450」)用いて、第1基材層(1)の波長340nmの光線透過率を測定したところ90%であった。
【0256】
得られた第1重合体層(1)の厚みをレーザー顕微鏡で測定したところ1.0μmであった。基材付き第1液晶位相差層(1)の面内位相差値は、王子計測機器株式会社製のKOBRA-WRを用いて測定した。その結果、波長550nmにおける面内位相差値は、Re(550)=140nmであった。なお、第1基材層(1)であるCOPフィルムの波長550nmにおける位相差値は略0であるため、当該光学特性には影響しない。配向角は第1基材層(1)の長手方向に対して15°であった。
【0257】
[第1液晶位相差層の表面硬度の測定]
基材付き第1液晶位相差層(1)から第1基材層(1)及び第1配向層(1)を剥離して第1液晶位相差層(1)を取り出し、これをガラスの上に置いた。超微小硬さ試験機(FISCHERSCOPE HM2000:(株)フィッシャーインストルメンツ製)を用い、ビッカース圧子を使用して、ガラス上の第1液晶位相差層(1)に、0.1mN/10秒の加圧速度にて荷重を加えた後、荷重を維持したまま5秒間保持して、インデーションモジュラスEIT[MPa]を読み取り、押込み弾性率[MPa]を測定し、これを表面硬度とした。第1液晶位相差層(1)の反対側の表面についても、同様の手順で押込み弾性率を測定し、これを表面硬度とした。測定は温度23℃で行った。第1液晶位相差層(1)の第1基材層(1)とは反対側の表面を第1表面とし、第1液晶位相差層(1)の第1基材層(1)側の表面を第2表面とし、第1表面の表面硬度(H1)と第2表面の表面硬度(H2)との比(H1/H2)を算出した。結果を表1及び表2に示す。
【0258】
(活性エネルギー線硬化型接着剤組成物(1)の調製)
下記成分を配合して混合した後、脱泡して、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物(1)を調製した。
・3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名:CEL2021P、株式会社ダイセル製):70部
・ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(商品名:EX-211、ナガセケムテックス株式会社製):20部
・2-エチルヘキシルグリシジルエーテル(商品名:EX-121、ナガセケムテックス株式会社製):10部
・カチオン重合開始剤(商品名:CPI-100 50%溶液、サンアプロ株式会社製):4.5部(実質固形分2.25部)
・1,4-ジエトキシナフタレン:2部
【0259】
(位相差体(1)の作製)
基材付き第2液晶位相差層(1)の第2液晶位相差層(1)側、及び、基材付き第1液晶位相差層(1)の第1液晶位相差層(1)側に、それぞれコロナ処理を施した。一方のコロナ処理面に、上記で調製した活性エネルギー線硬化型接着剤組成物(1)を塗布して、基材付き第2液晶位相差層(1)の第2液晶位相差層(1)と基材付き第1液晶位相差層(1)の第1液晶位相差層(1)とを貼り合わせた。基材付き第2液晶位相差層(1)側から紫外線を照射して活性エネルギー線硬化型接着剤組成物(1)を硬化させて、第2粘接着剤層としての接着剤層(1)を形成した。紫外線は、波長320nm~390nmのUVAが420mJ/cm2となるように照射した。第2基材層(1)/第2液晶位相差層(1)/接着剤層(1)/第1液晶位相差層(1)/第1基材層(1)の層構造を有する位相差体(1)を得た。
【0260】
<第1液晶位相差層(2)の作製>
(光配向膜形成用組成物(2)(配向層形成用組成物)の調製)
下記構造の光配向性材料(重量平均分子量:50000、m:n=50:50)を、特開2021-196514に記載の方法に準じて製造した。光配向性材料2部とシクロペンタノン(溶剤)98部とを成分として混合し、得られた混合物を80℃で1時間撹拌することにより、光配向膜形成用組成物(2)を調製した。
光配向性材料:
【化10】
【0261】
(第1液晶位相差層形成用組成物(2)の調製)
下記に示す構造を有する重合性液晶化合物(A3)及び重合性液晶化合物(A4)を、それぞれ調製した。重合性液晶化合物(A3)は、特開2019-003177に記載の方法と同様に準備した。重合性液晶化合物(A4)は、特開2009-173893号公報に記載の方法と同様に準備した。
【0262】
重合性液晶化合物(A3):
【化11】
重合性液晶化合物(A4):
【化12】
【0263】
クロロホルム10mLに重合性液晶化合物(A3)1mgを溶解させて溶液を得た。得られた溶液を光路長1cmの測定用セルに測定用試料を入れ、測定用試料を紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製「UV-2450」)にセットして吸収スペクトルを測定した。得られた吸収スペクトルから極大吸収度となる波長を読み取ったところ、波長300~400nmの範囲における極大吸収波長λmaxは356nmであった。
【0264】
重合性液晶化合物(A3)及び重合性液晶化合物(A4)を質量比90:10で混合し、混合物を得た。得られた混合物100部に対して、レベリング剤「BYK-361N」(BM Chemie社製)0.1部と、光重合開始剤として「イルガキュアOXE-03」(BASFジャパン株式会社製)3部を添加した。さらに、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加した。これを温度80℃で1時間撹拌することにより、第1液晶位相差層形成用組成物(2)を調製した。
【0265】
(基材付き第1液晶位相差層(2)の作製)
第1基材層(2)としての二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ダイアホイル、三菱樹脂(株)製)に、光配向膜形成用組成物(2)をバーコーターにより塗布した。得られた塗布層を120℃で2分間乾燥させた後、室温まで冷却して乾燥被膜を形成した。その後、UV照射装置(SPOT CURE SP-9;ウシオ電機株式会社製)を用いて、偏光紫外光100mJ(313nm基準)を照射し、第1配向層(2)としての光配向膜を得た。日本分光株式会社製のエリプソメータM-220を用いて測定した第1配向層(2)の厚みは100nmであった。
【0266】
第1配向層(2)上に、第1液晶位相差層形成用組成物(2)をバーコーターにより塗布し、第1塗布層(2)を形成した。この第1塗布層(2)を120℃で2分間加熱乾燥後、室温まで冷却して、基材付き第1塗布層(2)を得た。次いで、高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製「ユニキュアVB-15201BY-A」)を用いて、窒素雰囲気下にて、積算光量500mJ/cm2(365nm基準)の紫外光を基材付き第1塗布層(2)の第1基材層(2)側に照射し、積算光量300J/cm2(365nm基準)の紫外光を基材付き第1塗布層(2)の第1塗布層(2)側に照射することにより、重合性液晶化合物が第1基材層(2)の面内に対して水平方向に配向した状態で硬化した第1重合体層(2)(水平配向液晶硬化膜)を形成し、第1基材層(2)/第1液晶位相差層(2)(第1配向層(2)/第1重合体層(2))からなる基材付き第1液晶位相差層(2)を得た。オリンパス株式会社製のレーザー顕微鏡LEXT OLS4100を用いて測定した第1重合体層(2)の厚みは2.0μmであった。
【0267】
基材付き第1液晶位相差層(2)の第1液晶位相差層(2)側にコロナ処理を実施し、リンテック社製25μm感圧式粘着剤を介してガラスに貼合し、第1基材層(2)を剥離、除去した。面内位相差値は、王子計測機器株式会社製のKOBRA-WRを用いて測定した。なお、波長450nm、550nm、及び650nmの光に対する面内位相差値は波長448.2nm、498.6nm、548.4nm、587.3nm、628.7nm、748.6nmの光に対する面内位相差値の測定結果から得られたコーシーの分散公式より求めた。
【0268】
その結果、第1液晶位相差層(2)の面内位相差値は、Re(450)=122nm、Re(550)=140nm、Re(650)=144nmであり、各波長での面内位相差値の関係は以下のとおりとなった。
Re(450)/Re(550)=0.87
Re(650)/Re(550)=1.03
[式中、Re(450)は波長450nmの光に対する面内位相差値を表し、Re(550)は波長550nmの光に対する面内位相差値を表し、Re(650)は波長650nmの光に対する面内位相差値を表す。]
【0269】
上記した第1液晶位相差層の表面硬度の測定手順にしたがって、第1液晶位相差層(2)の第1表面の表面硬度(H1)及び第2表面の表面硬度(H2)を測定した。測定にあたり、第1液晶位相差層(2)の第1基材層(2)とは反対側の表面を第1表面とし、第1液晶位相差層(2)の第1基材層(2)側の表面を第2表面とした。結果を表1及び表2に示す。
【0270】
<第1液晶位相差層(c1)及び位相差体(c1)の作製>
(基材付き第1液晶位相差層(c1)の作製)
基材付き第1塗布層(1)の両面それぞれに紫外線を照射することに代えて、基材付き第1塗布層(1)の第1塗布層(1)側からのみ、積算光量1000mJ/cm2(365nm基準)の紫外線を照射したこと以外は、基材付き第1液晶位相差層(1)の作製の手順で基材付き第1液晶位相差層(c1)を得た。基材付き第1液晶位相差層(c1)は、第1基材層(1)/第1液晶位相差層(c1)(第1配向層(1)/第1重合体層(c1))の層構造を有する。上記した第1液晶位相差層の表面硬度の測定手順にしたがって、第1液晶位相差層(c1)の表面硬度を測定し、第1表面の表面硬度(H1)と第2表面の表面硬度(H2)との比(H1/H2)を算出した。結果を表2に示す。
【0271】
(位相差体(c1)の作製)
基材付き第1液晶位相差層(1)に代えて基材付き第1液晶位相差層(c1)を用いたこと以外は、位相差体(1)の作製の手順で位相差体(c1)を得た。位相差体(c1)は、第2基材層(1)/第2液晶位相差層(1)/接着剤層(1)/第1液晶位相差層(c1)/第1基材層(1)の層構造を有する。
【0272】
<第1液晶位相差層(c2)の作製>
基材付き第1塗布層(2)の両面に紫外線を照射することに代えて、基材付き第1塗布層(2)の第1塗布層(2)側からのみ、積算光量500mJ/cm2(365nm基準)の紫外線を照射したこと以外は、基材付き第1液晶位相差層(2)の作製手順で基材付き第1液晶位相差層(c2)を得た。基材付き第1液晶位相差層(c2)は、第1基材層(2)/第1液晶位相差層(c2)(第1配向層(2)/第1重合体層(c2))の層構造を有する。上記した第1液晶位相差層の表面硬度の測定手順にしたがって、第1液晶位相差層(c2)の表面硬度を測定し、第1表面の表面硬度(H1)と第2表面の表面硬度(H2)との比(H1/H2)を算出した。結果を表1及び表2に示す。
【0273】
<粘着剤層の作製>
(アクリル樹脂溶液(1)の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計、及び撹拌機を備えた反応容器に、酢酸エチル81.8部、アクリル酸ブチル90.0部、アクリル酸メチル5.0部、及びアクリル酸5.0部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換して酸素不含としながら内温を55℃に上げた。その後、アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)0.15部を酢酸エチル10部に溶かした溶液を全量添加した。重合開始剤を添加した後、1時間この温度で保持し、次いで内温を54~56℃に保ちながら酢酸エチルを添加速度17.3部/hrで反応容器内へ連続的に加え、(メタ)アクリル系樹脂の濃度が35質量%となった時点で酢酸エチルの添加を止め、さらに酢酸エチルの添加開始から6時間経過するまでこの温度で保温した。最後に酢酸エチルを加えて(メタ)アクリル系樹脂の濃度が20質量%となるように調節し、アクリル樹脂溶液(1)を調製した。得られた(メタ)アクリル樹脂は、重量平均分子量Mwが160万、分子量分布Mw/Mnが4.5であった。なお、Mw及びMnは、GPC装置にカラムとして、東ソー(株)製の「TSKgel GMHHR-H(S)」を2本直列につないで配置し、溶出液としてテトラヒドロフランを用い、試料濃度2mg/mL、試料導入量100μL、温度40℃、流速1mL/分の条件で、標準ポリスチレン換算により測定した。
【0274】
(粘着剤組成物(1)の調製)
アクリル樹脂溶液(1)の固形分100部に対して、架橋剤(東ソー株式会社製:商品名「コロネートL」(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75質量%))を有効成分ベースで0.15部、シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製:商品名「KBM-403」)を0.2部添加し、更に固形分濃度が13%となるように酢酸エチルを添加して粘着剤組成物(1)を得た。
【0275】
(粘着剤層(1)及び粘着シート(1)の作製)
粘着剤組成物(1)を、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレーター(リンテック(株)から入手した「PLR-382190」)の離型処理面に、アプリケーターを用いて乾燥後の厚みが17μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥して粘着剤層を作製した。次いで得られた粘着剤層のセパレーフィルムと反対側の表面を離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレーター(リンテック(株)から入手した「PET-251130」)の離型処理面と貼合し、粘着剤層(1)を形成し、セパレーター/粘着剤層(1)/セパレーターの層構造を有する粘着シート(1)を作製した。
【0276】
後述する手順で粘着剤層(1)の温度23℃でのずり貯蔵弾性率を測定したところ、0.026MPaであった。
【0277】
(アクリル樹脂溶液(2)の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計、及び撹拌機を備えた反応容器に、酢酸エチル100部、アクリル酸ブチル99.0部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル0.5部、及びアクリル酸0.5部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換して酸素不含としながら内温を55℃に上げた。その後、アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)0.12部を酢酸エチル10部に溶かした溶液を全量添加した。重合開始剤を添加した後、1時間この温度で保持し、次いで内温を54~56℃に保ちながら酢酸エチルを添加速度17.3部/hrで反応容器内へ連続的に加え、(メタ)アクリル系樹脂の濃度が35質量%となった時点で酢酸エチルの添加を止め、さらに酢酸エチルの添加開始から6時間経過するまでこの温度で保温した。最後に酢酸エチルを加えて(メタ)アクリル系樹脂の濃度が20質量%となるように調節し、アクリル樹脂溶液(2)を調製した。得られた(メタ)アクリル樹脂は、重量平均分子量Mwが170万、分子量分布Mw/Mnが3.9であった。なお、Mw及びMnは、GPC装置にカラムとして、東ソー(株)製の「TSKgel GMHHR-H(S)」を2本直列につないで配置し、溶出液としてテトラヒドロフランを用い、試料濃度2mg/mL、試料導入量100μL、温度40℃、流速1mL/分の条件で、標準ポリスチレン換算により測定した。
【0278】
(粘着剤組成物(2)の調製)
アクリル樹脂溶液(2)の固形分80部に対して、下記に示す構造を有する二官能アクリレート(新中村化学工業株式会社より入手;品番「A-DOG」)を20部(固形分)、架橋剤(東ソー株式会社製:商品名「コロネートL」(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75質量%))を有効成分ベースで2.5部、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:商品名「イルガキュア500」)を1.5部、シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製:商品名「KBM-403」)を0.3部添加し、更に固形分濃度が13%となるように酢酸エチルを添加して粘着剤組成物(2)を得た。
【0279】
【0280】
(粘着剤層(2)及び粘着シート(2)の作製)
粘着剤組成物(2)を、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレーター(リンテック(株)から入手した「PLZ-383030」)の離型処理面に、アプリケーターを用いて乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥して粘着剤層を作製した。次いで得られた粘着剤層のセパレーターと反対側の表面を離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなるセパレーター(リンテック(株)から入手した「PLR-381031」)の離型処理面と貼合した。続けて紫外線を下記の条件で照射して、粘着剤層(2)を形成し、セパレーター/粘着剤層(2)/セパレーターの層構造を有する粘着シート(2)を作製した。
[紫外線の照射条件]
・Fusion UVランプシステム(フュージョンUVシステムズ社製)Hバルブ使用・UV波長領域UVAの積算光量250mJ/cm2(測定器:FusionUV社製UV Power PuckIIによる測定値)
【0281】
後述する手順で粘着剤層(2)の温度23℃でのずり貯蔵弾性率を測定したところ、0.13MPaであった。
【0282】
(粘着剤層(3)及び粘着シート(3)の作製)
粘着剤層の厚みを10μmとしたこと以外は、粘着シート(2)の作製と同様にして、セパレーター/粘着剤層(3)/セパレーターの層構造を有する粘着シート(3)を作製した。
【0283】
後述する手順で粘着剤層(3)の温度23℃でのずり貯蔵弾性率を測定したところ、0.13MPaであった。
【0284】
[厚みの測定]
粘着剤層の厚みは、接触式膜厚計(ニコン製:デジマイクロMH-15M)を用いて測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0285】
[ずり貯蔵弾性率の測定]
粘着剤層のずり貯蔵弾性率は、粘弾性測定装置(MCR-301、Anton Paar社)を用いて測定した。実施例及び比較例で用いたものと同じ粘着剤層を幅30mm×長さ30mmにして、セパレーターを剥がし、厚みが200μmとなるように複数枚積層して測定ステージに接合後、測定チップ(PP25,Anton Paar社)と接着した状態で-20℃~100℃の温度領域で周波数1.0Hz、変形量1%、ノーマルフォース1N、昇温速度5℃/分の条件下にて測定を行った。
【0286】
[押込み弾性率の測定]
粘着剤層をガラスに貼合して測定用サンプルを準備した。超微小硬さ試験機(FISCHERSCOPE HM2000:(株)フィッシャーインストルメンツ製)を用い、ビッカース圧子を使用して、測定用サンプルの粘着剤層側に、0.1mN/10秒の加圧速度にて荷重を加えた後、荷重を維持したまま5秒間保持して、インデーションモジュラスEIT[MPa]を読み取り、これを押込み弾性率[MPa]とした。測定は、温度23℃で行った。結果を表1及び表2に示す。
【0287】
〔実施例1〕
偏光板aのTACフィルム側にコロナ処理を施し、粘着シート(1)の一方のセパレーターを剥離した面を貼合した後、他方のセパレーターを剥離し、粘着剤層(1)を露出させた。位相差体(1)の第2基材層(1)を剥離して露出した第2液晶位相差層(1)にコロナ処理を施し、上記で露出した粘着剤層(1)に貼合した後、第1基材層(1)を剥離して、光学積層体(1)を得た。第2基材層(1)とともに第2配向層(1)も剥離し、第1基材層(1)とともに第1配向層(1)も剥離した。光学積層体(1)の層構造は、偏光板a/粘着剤層(1)/第2液晶位相差層(1)/接着剤層(1)/第1液晶位相差層(1)であった。
【0288】
〔実施例2〕
偏光板aに代えて偏光板bを用いたこと以外は実施例1の手順で、光学積層体(2)を作製した。光学積層体(2)の層構造は、偏光板b/粘着剤層(1)/第2液晶位相差層(1)/接着剤層(1)/第1液晶位相差層(1)であった。
【0289】
〔実施例3〕
偏光板aのTACフィルム側にコロナ処理を施し、粘着シート(2)の一方のセパレーターを剥離した面を貼合した後、他方のセパレーターを剥離し、粘着剤層(2)を露出させた。基材付き第1液晶位相差層(2)の第1液晶位相差層(2)側にコロナ処理を施し、上記で露出した粘着剤層(2)に貼合した後、第1基材層(2)を剥離して、光学積層体(3)を得た。第1基材層(2)とともに第1配向層(2)も剥離した。光学積層体(3)の層構造は、偏光板a/粘着剤層(2)/第1液晶位相差層(2)であった。
【0290】
〔実施例4〕
偏光板aに代えて偏光板bを用いたこと以外は実施例3の手順で、光学積層体(4)を作製した。光学積層体(4)の層構造は、偏光板b/粘着剤層(2)/第1液晶位相差層(2)であった。
【0291】
〔実施例5〕
粘着シート(1)に代えて粘着シート(2)を用いたこと以外は、実施例1の手順で、光学積層体(5)を作製した。光学積層体(5)の層構造は、偏光板a/粘着剤層(2)/第2液晶位相差層(1)/接着剤層(1)/第1液晶位相差層(1)であった。
【0292】
〔実施例6〕
偏光板aに代えて偏光板bを用いたこと以外は実施例5の手順で、光学積層体(6)を作製した。光学積層体(6)の層構造は、偏光板b/粘着剤層(2)/第2液晶位相差層(1)/接着剤層(1)/第1液晶位相差層(1)であった。
【0293】
〔実施例7〕
粘着シート(2)に代えて粘着シート(3)を用いたこと以外は、実施例3の手順で、光学積層体(7)を作製した。光学積層体(7)の層構造は、偏光板a/粘着剤層(3)/第1液晶位相差層(2)であった。
【0294】
〔実施例8〕
偏光板aに代えて偏光板bを用いたこと以外は実施例7の手順で、光学積層体(8)を作製した。光学積層体(8)の層構造は、偏光板b/粘着剤層(3)/第1液晶位相差層(2)であった。
【0295】
〔実施例9〕
粘着シート(1)に代えて粘着シート(3)を用いたこと以外は、実施例1の手順で、光学積層体(9)を作製した。光学積層体(9)の層構造は、偏光板a/粘着剤層(3)/第2液晶位相差層(1)/接着剤層(1)/第1液晶位相差層(1)であった。
【0296】
〔実施例10〕
偏光板aに代えて偏光板bを用いたこと以外は実施例9の手順で、光学積層体(10)を作製した。光学積層体(10)の層構造は、偏光板b/粘着剤層(3)/第2液晶位相差層(1)/接着剤層(1)/第1液晶位相差層(1)であった。
【0297】
〔比較例1〕
偏光板aのTACフィルム側にコロナ処理を施し、粘着シート(1)の一方のセパレーターを剥離した面を貼合した後、他方のセパレーターを剥離し、粘着剤層(1)を露出させた。位相差体(c1)の第2基材層(1)及び第2配向層(1)を剥離して露出した第2液晶位相差層(1)にコロナ処理を施し、上記で露出した粘着剤層(1)に貼合した後、第1基材層(1)及び第1配向層(1)を剥離して、光学積層体(c1)を得た。光学積層体(c1)の層構造は、偏光板a/粘着剤層(1)/第2液晶位相差層(1)/接着剤層(1)/第1液晶位相差層(c1)であった。
【0298】
〔比較例2〕
偏光板aのTACフィルム側にコロナ処理を施し、粘着シート(1)の一方のセパレーターを剥離した面を貼合した後、他方のセパレーターを剥離し、粘着剤層(1)を露出させた。露出した粘着剤層(1)と、基材付き第1液晶位相差層(c2)の第1液晶位相差層(c2)とを貼合した後、第1基材層(2)を剥離して、光学積層体(c2)を得た。第1基材層(2)とともに第1配向層(2)も剥離した。光学積層体(c2)の層構造は、偏光板a/粘着剤層(1)/第1液晶位相差層(c2)であった。
【0299】
[ヒートショック試験]
実施例及び比較例で得た光学積層体の偏光板側を、粘着剤層を介してガラス板に貼合し、評価用サンプルとした。この評価用サンプルに、荷重10Nに設定したエリクセンペン(エリクセン社製、型番318)のペン先を、光学積層体の第1液晶位相差層側の面に押し当て起点とした。当該起点から等間隔にさらに4箇所の起点設けた(合計5箇所の起点を設けた)。5箇所の起点を設けた評価用サンプルを恒温槽に投入し、温度-40℃で30分間保持した後、温度85℃で30分間保持するヒートサイクルを1サイクルとし、このヒートサイクルを200回繰り返すヒートショック試験を行った。ヒートショック試験後の評価用サンプルについて、ヒートショック試験前に設けた5箇所の起点から生じたクラック(割れ)の長さを測定した。5箇所の起点から生じたクラックの長さの平均値を、各光学積層体のクラック長さとし、下記の基準で評価した。結果を表1及び表2に示す。
A:クラックの長さが1mm以下である。
B:クラックの長さが1mm超3mm以下である。
C:クラックの長さが3mm超5mm以下である。
D:クラックの長さが5mm超10mm以下である。
E:クラックの長さが10mm超である。
【0300】
【0301】
1,2 光学積層体、3,4 基材付き光学積層体、11 第1液晶位相差層、12 基材付き第1塗布層(基材付き塗布層)、13 基材付き第1液晶位相差層、16 第1基材層、17 第1配向層、18 第1塗布層(塗布層)、21 第2液晶位相差層、22 基材付き第2塗布層、23 基材付き第2液晶位相差層、26 第2基材層、27 第2配向層、28 第2塗布層、31 第1粘接着剤層(粘接着剤層)、32 第2粘接着剤層、50 偏光板。
前記第2液晶位相差層は、重合性液晶化合物の重合体を含む第2重合体層、又は、前記第2重合体層と第2配向層との多層体である、請求項1又は2に記載の光学積層体。