(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024092938
(43)【公開日】2024-07-08
(54)【発明の名称】電気脱イオン装置及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/469 20230101AFI20240701BHJP
B01D 61/48 20060101ALI20240701BHJP
【FI】
C02F1/469
B01D61/48
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023140124
(22)【出願日】2023-08-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-02
(31)【優先権主張番号】P 2022208258
(32)【優先日】2022-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】田部井 麗奈
(72)【発明者】
【氏名】阿部 幸也
【テーマコード(参考)】
4D006
4D061
【Fターム(参考)】
4D006GA17
4D006HA44
4D006JA30Z
4D006JA57Z
4D006KE03R
4D006KE12R
4D006KE13R
4D006KE19R
4D006MA03
4D006MA13
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4D006PB02
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4D061DB13
4D061DB18
4D061DC13
4D061EA09
4D061EB16
4D061EB37
4D061EB39
4D061FA08
4D061GA02
4D061GA05
4D061GA06
4D061GC02
4D061GC05
4D061GC19
(57)【要約】
【課題】 高水質の処理水を効率よく製造することの可能な電気脱イオン装置を提供する。
【解決手段】 電気脱イオン装置1は、フレーム2,2間には脱塩室と濃縮室のペアが複数個形成されたサブブロック3A~3Fを並設してなる。これらサブブロック3A~3Fのセルの上側の両端部には、被処理水W1を通水する給水ライン4を配設する給水ポート4A,4Bが形成されている。セルの下側の両端部には、濃縮室に濃縮水W3を通水する濃縮水供給ライン6を配設する濃縮水給水ポート6A,6Bが形成されている。被処理水W1を給水ポート4A,4Bから給水ライン4を経て各脱塩室の上側から供給し、各脱塩室の下側から処理水流出ライン5を経て処理水流出ポート5A,5Bから排出可能となっている。また、濃縮水W3を濃縮水給水ポート6A,6Bから濃縮水供給ライン6を経て各濃縮室の下側から供給し、各濃縮室の上側から濃縮排水W4を濃縮排水流出ライン7を経て濃縮排水流出ポート7A,7Bから排出可能となっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極及び陽極と、該陰極及び陽極の間に配置された複数のカチオン交換膜及びアニオン交換膜と、これらカチオン交換膜及びアニオン交換膜により区画形成された複数の脱塩室及び濃縮室とを備え、前記脱塩室及び前記濃縮室にイオン交換樹脂が充填されていて、前記複数の脱塩室に被処理水を通水して脱イオン水を取り出す手段と前記濃縮室に濃縮水を通水する濃縮水通水手段とを有する電気脱イオン装置であって、
前記各脱塩室の一側には、被処理水の供給ラインから順次分岐した被処理水流入分岐管がそれぞれ連通しているとともに、前記各脱塩室の他側には処理水の流出管がそれぞれ連通していて、これら各処理水の流出管が処理水の流出ラインに合流しており、前記被処理水の供給ラインの両側が開放していて、この被処理水の供給ラインの両側から前記被処理水が供給可能となっており、
前記各濃縮室の他側には、濃縮水の供給ラインから順次分岐した濃縮水流入分岐管がそれぞれ連通しているとともに、前記各濃縮室の一側には濃縮排水の流出管がそれぞれ連通していて、これら各濃縮排水の流出管が濃縮排水の流出ラインに合流しており、前記濃縮水の供給ラインの両側が開放していて、この供給ラインの両側から前記濃縮水が供給可能となっており、
前記濃縮水として、前記被処理水と同じ水を供給可能となっている、電気脱イオン装置。
【請求項2】
前記電気脱イオン装置の処理水流量が5~15m3/hである、請求項1に記載の電気脱イオン装置。
【請求項3】
陰極及び陽極と、該陰極及び陽極の間に配置された複数のカチオン交換膜及びアニオン交換膜と、これらカチオン交換膜及びアニオン交換膜により区画形成された複数の脱塩室及び濃縮室とを備え、前記脱塩室及び前記濃縮室にイオン交換樹脂が充填されていて、前記複数の脱塩室に被処理水を通水して脱イオン水を取り出す手段と前記濃縮室に濃縮水を通水する濃縮水通水手段とを有し、前記各脱塩室の一側には、被処理水の供給ラインから順次分岐した被処理水流入分岐管がそれぞれ連通しているとともに、前記各脱塩室の他側には処理水の流出管がそれぞれ連通していて、これら各処理水の流出管が処理水の流出ラインに合流しており、前記被処理水の供給ラインの両側が開放していて、前記各濃縮室の他側には、濃縮水の供給ラインから順次分岐した濃縮水流入分岐管がそれぞれ連通しているとともに、前記各濃縮室の一側には濃縮排水の流出管がそれぞれ連通していて、これら各濃縮排水の流出管が濃縮排水の流出ラインに合流しており、前記濃縮水の供給ラインの両側が開放している電気脱イオン装置の運転方法であって、
前記供給ラインの両側から前記被処理水と同じ水を供給して前記流出ラインから処理水を取り出し、
前記濃縮水の供給ラインの両側から前記被処理水を供給して、前記濃縮排水の流出ラインから濃縮排水を排出する、電気脱イオン装置の運転方法。
【請求項4】
前記電気脱イオン装置の処理水流量が5~15m3/hである、請求項3に記載の電気脱イオン装置の運転方法。
【請求項5】
前記被処理水の給水のホウ素濃度が0.1μg/L以上である、請求項4に記載の電気脱イオン装置の運転方法。
【請求項6】
前記被処理水の導電率が0.1~1mS/mである、請求項4に記載の電気脱イオン装置の運転方法。
【請求項7】
前記被処理水の無機炭酸濃度が50~1000μg/LasCである、請求項3~6のいずれか1項に記載の電気脱イオン装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気脱イオン装置及びその運転方法に関し、特に高水質の処理水を効率よく製造することの可能な電気脱イオン装置及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気脱イオン装置は、一般に陰極(カソード)及び陽極(アノード)間にカチオン交換膜とアニオン交換膜とを交互に配置し、これらカチオン交換膜及びアニオン交換膜により区画を構成することで脱塩室及び濃縮室を形成し、この脱塩室及び前記濃縮室にイオン交換樹脂を充填したものである。カチオン交換膜やアニオン交換膜などのイオン交換膜としては、粉末状のイオン交換樹脂にポリスチレンなどの結合剤を加えて製膜した不均質膜や、スチレン-ジビニルベンゼン等の重合によって製膜した均質膜などのほか、各種アニオン交換機能あるいはカチオン交換機能を有する単量体をグラフト重合により製膜したものなどが用いられている。
【0003】
この電気脱イオン装置としては、
図3及び
図4に示すような構成を有するものが特許文献1に開示されている。
【0004】
図3において、電気脱イオン装置21は、電極(陽極31、陰極32)の間に複数のアニオン交換膜33及びカチオン交換膜34を交互に配列して濃縮室35と脱塩室36とを交互に形成したものであり、脱塩室36には、イオン交換樹脂、イオン交換繊維もしくはグラフト交換体等からなるイオン交換体(アニオン交換体及びカチオン交換体)が混合もしくは複層状に充填されている。また、濃縮室35と、陽極室37及び陰極室38にも、イオン交換体が充填されている。
【0005】
この電気脱イオン装置21には、脱塩室36に被処理水W1を通水して処理水W2を取り出す通水手段(図示せず)と、濃縮室35に濃縮水W3を通水する濃縮水通水手段(図示せず)とが設けられていて、本実施形態においては濃縮水W3を脱塩室36の処理水W2の取り出し口に近い側から濃縮室35内に導入すると共に、脱塩室36の入口に近い側から流出する、すなわち脱塩室36における被処理水W1の流通方向と反対方向から濃縮水W3を濃縮室35に導入して濃縮排水W4を吐出する構成となっている。そして、この濃縮水W3としては、給水(被処理水W1)よりシリカ又はホウ素濃度の低い水を、該濃縮室のうち脱塩室の脱イオン水取り出し口に近い側から該濃縮室内に導入すると共に、該濃縮室のうち脱塩室の原水入口に近い側から流出させることが記載されている。
【0006】
特に
図4に示すように脱塩室36から得られる処理水W2の一部を濃縮水W3として用いることで、イオン濃度が低減された濃縮排水W4を流通することが好ましい態様として記載されている。
【0007】
このような電気脱イオン装置は、種々の産業、例えば半導体チップの製造工程、火力又は原子力発電所、石油化学工場、医薬品製造工程などにおいて純水製造装置として利用されている。
【0008】
特に半導体市場で要求される生産水水質は高く、処理水比抵抗値15MΩ・cm以上や、高いホウ素・シリカ除去率が必要な場合も多い。また、近年は、処理水水質の高純度化に加え、節電や節水も考慮した運転条件設定が求められている。
【0009】
また、半導体製造工程向けの汎用的な電気脱イオン装置として、Evoqua Water Technologies,LLC社(558 Clark Road Tewksbury,Massachusetts 01876,USA)製のIP-VNX-55EX-2が市販されている。
図5に示すようにこの電気脱イオン装置40は、フレーム50内にサブブロック41~46を備えている。各サブブロック41~46は、交互に配置されたカチオン交換膜CEMとアニオン交換膜AEMとによって、脱塩室と濃縮室のペアが複数個形成されたものである。
【0010】
この電気脱イオン装置40のサブブロック41,43は、脱塩室と濃縮室のペアを17個備え、サブブロック42は該ペアを16個備えている。サブブロック44,46は該ペアを17個備え、サブブロック45は該ペアを16個備えている。なお、
図5中の「-」は負極室47を示し、「+」は陽極室48を示す。符号49は電源ボックスを示す。
【0011】
図5に示す電気脱イオン装置40の運転方法では、サブブロック41~43に給水(被処理水)W1と、濃縮水W3がそれぞれのポートから供給される。給水W1の一部は、サブブロック41~43の給水路(上側ヘッド部)を通過してサブブロック44~46の給水路(上側ヘッド部)に供給される。この給水は、各サブブロック41~46の各脱塩室を通り、脱塩水集水路(下側ヘッド部)を経て処理水取出ポートから処理水W2として取り出される。
【0012】
濃縮水はサブブロック41~43のヘッド部(上側ヘッド部)に供給され、サブブロック41~43の各濃縮室を通過し、サブブロック41~43の濃縮水集水路(下側ヘッド部)からサブブロック44~46の濃縮水ヘッド部(下側ヘッド部)に導入され、サブブロック44~46の各濃縮室に通水され、サブブロック44~46の濃縮室の上側ヘッド部を経て濃縮排水取出ポートから濃縮排水W4として取り出される。すなわち、
図5に示す電気脱イオン装置40では、すべての脱塩室に給水W1を下降流にて通水している。一方、濃縮水W3通水向きは、前半(サブブロック41,42,43)は下降流とし、後半(サブブロック44,45,46)は上向流としている。このようにサブブロック41~43とサブブロック44~46とで濃縮水W3の通水方向を逆にすることで濃縮排水W4の使用水量を半分にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載された電気脱イオン装置21では、脱塩室36の出口側における処理水W2と濃縮排水W4のイオン成分の濃度差による、濃縮室35から脱塩室36への拡散(逆拡散)を防ぐことができ、それにより処理水W2のシリカやホウ素濃度を低減させることが可能となるが、濃縮室35へ通水する分だけ脱塩室36の通水流量を増加するため、処理すべきイオン量は通常の通水方式に比較し増加し、これにより電気脱イオン装置21への負荷は増大する。このため、給水(被処理水)W1のホウ素濃度が低く、電気脱イオン装置21で十分に処理できる場合は問題ないが、給水W1のホウ素濃度が増加した場合は、十分に処理することができず、処理水W2のホウ素濃度の増加につながる懸念がある、という問題点がある。
【0015】
また、
図5に示す電気脱イオン装置の通水方法によると、サブブロック41~43では、脱塩室下部と濃縮室下部とでイオン濃度差が大きくなるため、濃度拡散により濃縮室から脱塩室へイオンが移動し、処理水水質が低下してしまう、という問題点がある。
【0016】
そこで、
図5に示す電気脱イオン装置に特許文献1に記載の通水方法を採用することが考えられるが、
図5に示す電気脱イオン装置は、図中左側のセルにおいては、脱塩室と濃縮室が並流、右側のセルにおいては脱塩室と濃縮室が向流通水になっているので、これを適用することは困難である。
【0017】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高水質の処理水を効率よく製造することの可能な電気脱イオン装置及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明は第一に、陰極及び陽極と、該陰極及び陽極の間に配置された複数のカチオン交換膜及びアニオン交換膜と、これらカチオン交換膜及びアニオン交換膜により区画形成された複数の脱塩室及び濃縮室とを備え、前記脱塩室及び前記濃縮室にイオン交換樹脂が充填されていて、前記複数の脱塩室に被処理水を通水して脱イオン水を取り出す手段と前記濃縮室に濃縮水を通水する濃縮水通水手段とを有する電気脱イオン装置であって、前記各脱塩室の一側には、被処理水の供給ラインから順次分岐した被処理水流入分岐管がそれぞれ連通しているとともに、前記各脱塩室の他側には処理水の流出管がそれぞれ連通していて、これら各処理水の流出管が処理水の流出ラインに合流しており、前記被処理水の供給ラインの両側が開放していて、この被処理水の供給ラインの両側から前記被処理水が供給可能となっており、前記各濃縮室の他側には、濃縮水の供給ラインから順次分岐した濃縮水流入分岐管がそれぞれ連通しているとともに、前記各濃縮室の一側には濃縮水の流出管がそれぞれ連通していて、これら各濃縮水の流出管が濃縮水の流出ラインに合流しており、前記濃縮水の供給ラインの両側が開放していて、この供給ラインの両側から前記濃縮水が供給可能となっており、前記濃縮水として、前記被処理水と同じ水を供給可能となっている、電気脱イオン装置を提供する(発明1)。
【0019】
かかる発明(発明1)によれば、電気脱イオン装置の濃縮水として、脱塩室の給水である被処理水を通水するため、処理水(脱塩水)を濃縮水として用いる場合に比較して脱塩室の通水流量が低減することができるので、処理水の水量の増大に伴う水質の低下がない。さらに、濃縮水をセルの左右両側に形成した供給ラインの両側から供給可能となっているので、全ての濃縮室に対し脱塩室の被処理水の通水方向と反対方向に通水することで脱塩室出口付近における脱塩水と濃縮水の濃度差による拡散を防ぐことができるので、処理水の水質を向上させることができる。これらの効果の複合作用により電気脱イオン装置の水質を最適化することができる。
【0020】
上記発明(発明1)においては、前記電気脱イオン装置の処理水流量が5~15m3/hであることが好ましい(発明2)。
【0021】
かかる発明(発明2)によれば、電気脱イオン装置において、脱塩室の処理水(脱塩水)を濃縮水に用いる場合と比べて処理水の水量が増大しないので、これに伴う水質の低下がないが、脱塩室での処理水量が15m3/h以下の小型の電気脱イオン装置であれば、被処理水に占める濃縮水の影響が大きくなるので、特に好的に適用することができる。
【0022】
また、本発明は第二に、陰極及び陽極と、該陰極及び陽極の間に配置された複数のカチオン交換膜及びアニオン交換膜と、これらカチオン交換膜及びアニオン交換膜により区画形成された複数の脱塩室及び濃縮室とを備え、前記脱塩室及び前記濃縮室にイオン交換樹脂が充填されていて、前記複数の脱塩室に被処理水を通水して脱イオン水を取り出す手段と前記濃縮室に濃縮水を通水する濃縮水通水手段とを有し、前記各脱塩室の一側には、被処理水の供給ラインから順次分岐した被処理水流入分岐管がそれぞれ連通しているとともに、前記各脱塩室の他側には処理水の流出管がそれぞれ連通していて、これら各処理水の流出管が処理水の流出ラインに合流しており、前記被処理水の供給ラインの両側が開放していて、前記各濃縮室の他側には、濃縮水の供給ラインから順次分岐した濃縮水流入分岐管がそれぞれ連通しているとともに、前記各濃縮室の一側には濃縮排水の流出管がそれぞれ連通していて、これら各濃縮排水の流出管が濃縮排水の流出ラインに合流しており、前記濃縮水の供給ラインの両側が開放している電気脱イオン装置の運転方法であって、前記供給ラインの両側から前記被処理水を供給して前記流出ラインから処理水を取り出し、前記濃縮水の供給ラインの両側から前記被処理水と同じ水を供給して、前記濃縮排水の流出ラインから濃縮排水を排出する、電気脱イオン装置の運転方法を提供する(発明3)。
【0023】
かかる発明(発明3)によれば、電気脱イオン装置の濃縮水として、脱塩室の給水である被処理水を通水するため、処理水(脱塩水)を濃縮水として用いる場合に比較して脱塩室の通水流量を低減することができるので、処理水の水量が増大に伴う水質の低下がない。さらに、濃縮水をセルの左右両側に形成した供給ラインの両側から前記濃縮水を供給することにより、全ての濃縮室に対し脱塩室の被処理水の通水方向と反対方向に通水することで脱塩室出口付近における脱塩水と濃縮水の濃度差による拡散を防ぐことができるので、処理水の水質を向上させることができる。これらの効果の複合作用により電気脱イオン装置の水質を最適化することができる。
【0024】
上記発明(発明3)においては、前記電気脱イオン装置の処理水流量が5~15m3/hであることが好ましい(発明4)。
【0025】
かかる発明(発明4)によれば、電気脱イオン装置において、脱塩室の処理水(脱塩水)を濃縮水に用いる場合と比べて処理水の水量が増大しないので、これに伴う水質の低下がないが、脱塩室での処理水量が15m3/h以下の小型の電気脱イオン装置であれば、被処理水に占める濃縮水の影響が大きくなるので、特に好的に適用することができる。
【0026】
上記発明(発明4)においては、前記被処理水の給水のホウ素濃度が0.1μg/L以上であることが好ましい(発明5)。
【0027】
かかる発明(発明5)によれば、このような水質の被処理水は、脱塩室の処理水量が増加すると水質の低下を招きやすいが、被処理水と同じ水を濃縮水として、セルの左右両側に形成した供給ラインの両側から前記濃縮水を供給することにより、脱塩室の処理水を濃縮水とする場合と比較して脱塩室の処理水量を増加させる必要がないので、処理水の水質を向上させることができる。
【0028】
上記発明(発明4)においては、前記被処理水の導電率が0.1~1mS/mであることが好ましい(発明6)。
【0029】
かかる発明(発明6)によれば、このような被処理水と同じ水を濃縮水として、セルの左右両側に形成した供給ラインの両側から前記濃縮水を供給することにより、全ての濃縮室に対し脱塩室の被処理水の通水方向と反対方向に通水することで、脱塩室出口付近で発生する脱塩室と濃縮室の濃度差による拡散を防ぐことができるので、処理水の水質を向上させることができる。
【0030】
上記発明(発明3~5)においては、前記被処理水の無機炭酸濃度が50~1000μg/LasCであることが好ましい(発明7)。
【0031】
かかる発明(発明7)によれば、このような被処理水と同じ水を濃縮水として、セルの左右両側に形成した供給ラインの両側から前記濃縮水を供給することにより、全ての濃縮室に対し脱塩室の被処理水の通水方向と反対方向に通水することで、脱塩室出口付近で発生する脱塩室と濃縮室の濃度差による拡散を防ぐことができるので、処理水の水質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の電気脱イオン装置は、脱塩室の被処理水の流通方向と、濃縮室への濃縮水の流通方向とを逆方向とし、さらに濃縮水の供給ラインの両側が開放していて、この供給ラインの両側から濃縮水が供給可能となっていて、濃縮水として前記被処理水を供給可能となっているので、脱塩室の給水である被処理水と同じ水を濃縮水として通水することにより、処理水(脱塩水)を濃縮水に用いる場合に比較して脱塩室の通水流量を低減することができるので、処理水の水量が増大に伴う水質の低下がない。しかも、濃縮水をセルの左右両側に形成した供給ラインの両側から前記濃縮水が供給可能となっているので、全ての濃縮室に対し脱塩室の被処理水の通水方向と反対方向に通水することで脱塩室出口付近における脱塩水と濃縮水の濃度差による拡散を防ぐことができるので、処理水の水質を向上させることができる。これらの効果の複合作用により電気脱イオン装置の水質を最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の第一の実施形態による電気脱イオン装置の構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の第二の実施形態による電気脱イオン装置の構成を示す概略図である。
【
図3】従来(特許文献1)の電気脱イオン装置の構成を示す概略図である。
【
図4】従来(特許文献1)の電気脱イオン装置の脱塩室及び濃縮室の水の流れを示す概略図である。
【
図5】従来(市販品)の電気脱イオン装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の電気脱イオン装置及びこれを用いたその運転方法について添付図面を参照して説明する。
【0035】
第一の実施形態
[電気脱イオン装置]
図1は、本発明の第一の実施形態による電気脱イオン装置を示している。
図1において、電気脱イオン装置1は、フレーム2,2間にサブブロック3A~3Fを並設してなる。各サブブロック3A~3Fは、交互に配置されたカチオン交換膜CEMとアニオン交換膜AEMとによって、脱塩室(図示せず)と濃縮室(図示せず)のペアが複数個形成されたものである。これら脱塩室及び濃縮室にはイオン交換樹脂(例えば、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合樹脂)が充填されている。
【0036】
これらサブブロック3A~3Fが連設したセルの一側(図示上側)の両端部には、脱塩室に被処理水W1を通水するための給水ライン4を配設する給水ポート4A,4Bが形成されている一方、セルの他側(図示下側)の両端部には、脱塩室で処理した脱イオン水としての処理水W2を排出するための処理水流出ライン5を配設する処理水流出ポート5A,5Bが形成されている。給水ライン4は、それぞれサブブロック3A~3Fにおいて分岐していて、被処理水流入分岐管として各脱塩室の上側に接続しているとともに、各脱塩室の下側には、処理水流出管が連通していて、これら各処理水流出管が処理水流出ライン5に合流している。これにより、被処理水W1を給水ポート4A,4Bから給水ライン4を経て各脱塩室の上側から供給し、さらに各脱塩室の下側から処理水流出ライン5を経て処理水流出ポート5A,5Bから排出可能となっている。
【0037】
また、サブブロック3A~3Fが連設したセルの図示下側の両端部には、濃縮室に濃縮水としての濃縮水W3を通水するための濃縮水供給ライン6を配設する濃縮水給水ポート6A,6Bが形成されている一方、セルの図示上側の両端部には、濃縮排水W4を排出するための濃縮排水流出ライン7を配設する濃縮排水流出ポート7A,7Bが形成されている。濃縮水供給ライン6は、それぞれサブブロック3A~3Fにおいて分岐して濃縮水流入分岐管として各濃縮室の下側に接続しているとともに、各濃縮室の上側には濃縮排水流出管が連通していて、これら各濃縮排水流出管が濃縮排水流出ライン7に合流している。これにより、濃縮水W3を濃縮水給水ポート6A,6Bから濃縮水供給ライン6を経て各濃縮室の下側から供給し、さらに各濃縮室の上側から濃縮排水W4を濃縮排水流出ライン7を経て濃縮排水流出ポート7A,7Bから排出可能となっている。
【0038】
図1に示す電気脱イオン装置1は、サブブロック3A,3C,3D及び3Fは脱塩室と濃縮室のペアを複数(例えば17個)え、サブブロック3B及び3Eは脱塩室と濃縮室のペアを1個少なく(例えば16個)備えている。
図1中のフレーム2,2間の左右両端には負極室(負極)8が配置されており、中央には一対の陽極室(陽極)9が配置されていて、サブブロック3A,3B,3Cと、サブブロック3D,3E,3Fとの2ブロック構成となっている。なお、符号10は電源ボックスである。
【0039】
上述したような本実施形態の電気脱イオン装置1においては、濃縮水W3として被処理水W1と同じものを用いる。また、サブブロック3A~3Fによる処理水W2の流量(脱塩室流量)は5~15m3/hであることが好ましい。処理水W2の流量(脱塩室流量)が5m3/h未満では、処理水量が少なすぎ実用的でない一方、15m3/hを超えると、処理水W2の流量が多いので、処理水W2を濃縮水W3として利用する場合と比べてのメリットが十分に得られない。さらに、給水流量(処理水W2の流量+濃縮排水W4の流量)に対する濃縮排水W4の流量は2.5~10容積%、特に5容積%程度が望ましい。濃縮排水W4の流量は2.5容積%未満では、濃縮排水W4が少なすぎるため、脱塩室から流入するイオン濃度が高くなり、逆拡散が無視できず処理水W2の水質の低下をきたしやすくなる一方、10容積%を超えると濃縮水W3が多くなり、被処理水W1を濃縮水W3とすることにより給水の量が多くなりすぎるため好ましくない。
【0040】
[電気脱イオン装置の運転方法]
次に上述したような構成を有する電気脱イオン装置1を用いた電気脱イオン装置の運転方法について説明する。
【0041】
まず、給水ポート4A,4Bから給水ライン4を経てサブブロック3A~3Fの脱塩室に上側から被処理水W1を供給するとともに、濃縮水W3を濃縮水給水ポート6A,6Bから濃縮水供給ライン6を経て各濃縮室に下側から濃縮水W3を供給する。被処理水W1は、各サブブロック3A~3Fの脱塩室を図示上側から下側に通過して、各処理水流出管から処理水流出ライン5を経て処理水流出ポート5A,5Bから排出される。また、濃縮水W3は、各サブブロック3A~3Fの濃縮室を図示下側から上側に通過して、各濃縮排水流出管から濃縮排水流出ライン7を経て濃縮排水流出ポート7A,7Bから排出される。このように被処理水W1と濃縮水W3をセルの両側から供給することにより、サブブロック3A~3Fの給水の水量及び水圧を均質化することができて、処理水W2の水質を安定化することができる。
【0042】
脱塩室の通水SVは70~150/h特に100~120/hが好ましい。濃縮室の通水SVは5~50/h特に10~25/hが好ましい。回収率は80~99%特に90~95%が好ましい。通電する電流は0.15~2.30A/(m3/h)特に0.7A/(m3/h)~1.2A/(m3/h)が好ましい。
【0043】
本実施形態においては、すべての脱塩室に被処理水W1を下降流にて通水する一方、すべての濃縮室に濃縮水W3を上向流にて通水する。そして、濃縮水W3としては、被処理水W1と同じ水を供給する。
【0044】
この被処理水W1(給水)の導電率は、0.1~1mS/m特に0.1~0,5mS/mが好ましい。被処理水W1(給水)の導電率が1mS/mを超えると、濃縮室から脱塩室への逆拡散が生じやすくなり、処理水W2の水質の低下をきたしやすいため好ましくない。
【0045】
また、本実施形態は、ホウ素濃度が0.1μg/L以上の被処理水W1(給水)の場合に好適に適用することができる。ホウ素濃度が0.1μg/L以上の被処理水W1を脱塩室に供給すると処理水量が増加すると水質の低下を招きやすいが、本実施形態のように被処理水W1と同じ水を濃縮水W3として供給することにより、脱塩室の処理水W2を濃縮水W3とする場合と比較して脱塩室の処理水量を増加させる必要がないので、処理水の水質を向上させることができる。なお、被処理水W1(給水)のホウ素濃度を0.1μg/L未満に維持するためには、ある位程度の水処理設備で処理する必要があるため現実的でない。
【0046】
さらに、被処理水W1(給水)の無機炭酸濃度が50~1000μg/L as Cであることが好ましい。被処理水W1(給水)の無機炭酸濃度が1000μg/L as Cを超えると、炭酸濃度が高すぎて、濃縮室から脱塩室への逆拡散が生じやすくなり、処理水W2の水質の低下をきたしやすいだけでなく、炭酸カルシウムなどの炭酸塩が電極などに析出しやすくなる。
【0047】
上述したような被処理水W1(給水)としては、工水、市水、井水などに必要に応じて前処理を施した後、逆浸透膜装置を含む水処理装置で処理したものを好適に用いることができる。この逆浸透膜装置の処理水の導電率、ホウ素濃度及び無機炭酸濃度を適宜センシングして上述した範囲内にあることを確認して用いることが好ましい。
【0048】
第二の実施形態
[電気脱イオン装置]
図2は、本発明の第二の実施形態による電気脱イオン装置を示している。本実施形態の電気脱イオン装置は、基本的には前述した第一の実施形態と同じ構成を有するので、同一の構成には同一の符号を付し、詳細な説明を省略す。
図2において、電気脱イオン装置1は、フレーム2,2間にサブブロック3A~3Gを並設してなる。各サブブロック3A~3Gは、交互に配置されたカチオン交換膜CEMとアニオン交換膜AEMとによって、脱塩室(図示せず)と濃縮室(図示せず)のペアが複数個形成されたものである。これら脱塩室及び濃縮室にはイオン交換樹脂(例えば、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合樹脂)が充填されている。
【0049】
これらサブブロック3A~3Gが連設したセルの一側(図示上側)の両端部には、脱塩室に被処理水W1を通水するための給水ライン4を配設する給水ポート4A,4Bが形成されている一方、セルの他側(図示下側)の両端部には、脱塩室で処理した脱イオン水としての処理水W2を排出するための処理水流出ライン5を配設する処理水流出ポート5A,5Bが形成されている。給水ライン4は、それぞれサブブロック3A~3Gにおいて分岐していて、被処理水流入分岐管として各脱塩室の上側に接続しているとともに、各脱塩室の下側には、処理水流出管が連通していて、これら各処理水流出管が処理水流出ライン5に合流している。これにより、被処理水W1を給水ポート4A,4Bから給水ライン4を経て各脱塩室の上側から供給し、さらに各脱塩室の下側から処理水流出ライン5を経て処理水流出ポート5A,5Bから排出可能となっている。
【0050】
また、サブブロック3A~3Gが連設したセルの図示下側の両端部には、濃縮室に濃縮水としての濃縮水W3を通水するための濃縮水供給ライン6を配設する濃縮水給水ポート6A,6Bが形成されている一方、セルの図示上側の両端部には、濃縮排水W4を排出するための濃縮排水流出ライン7を配設する濃縮排水流出ポート7A,7Bが形成されている。濃縮水供給ライン6は、それぞれサブブロック3A~3Gにおいて分岐して濃縮水流入分岐管として各濃縮室の下側に接続しているとともに、各濃縮室の上側には濃縮排水流出管が連通していて、これら各濃縮排水流出管が濃縮排水流出ライン7に合流している。これにより、濃縮水W3を濃縮水給水ポート6A,6Bから濃縮水供給ライン6を経て各濃縮室の下側から供給し、さらに各濃縮室の上側からcを濃縮排水流出ライン7を経て濃縮排水流出ポート7A,7Bから排出可能となっている。
【0051】
そして、本実施形態においては、フレーム2,2間の図示左端側には負極室(負極)8が配置されているとともに、右端側には陽極室(陽極)9が設けられていて、サブブロック3A~3Gの1ブロック構成となっていて、濃縮排水流出ライン7は、その中間部に閉止板11が設けられることで、濃縮排水流出ライン7の流れが濃縮排水流出ポート7Aと,7Bに分流するように構成されている。なお、符号10は電源ボックスである。
【0052】
上述したような本実施形態の電気脱イオン装置1においては、濃縮水W3として被処理水W1と同じものを用いる。また、サブブロック3A~3Gによる処理水W2の流量(脱塩室流量)は5~20m3/hであることが好ましい。処理水W2の流量(脱塩室流量)が5m3/h未満では、処理水量が少なすぎ実用的でない一方、20m3/hを超えると、処理水W2の流量が多いので、処理水W2を濃縮水W3として利用する場合と比べてのメリットが十分に得られない。さらに、給水流量(処理水W2の流量+濃縮排水W4の流量)に対する濃縮排水W4の流量は2.5~10容積%、特に5容積%程度が望ましい。濃縮排水W4の流量は2.5容積%未満では、濃縮排水W4が少なすぎるため、脱塩室から流入するイオン濃度が高くなり、逆拡散が無視できず処理水W2の水質の低下をきたしやすくなる一方、10容積%を超えると濃縮水W3が多くなり、被処理水W1を濃縮水W3とすることにより給水の量が多くなりすぎるため好ましくない。
【0053】
本実施形態のように左端側に負極8、右端側に陽極9を設けた1ブロック構成とすることにより、第一の実施形態のように中央に一対の陽極室(陽極)9を配置した場合よりも、フレーム2,2間の陽極室および陰極室の数か少なくてすむので、サブブロック3A・・・の数を多くすることができるので、処理水W2の流量(脱塩室流量)を第一の実施形態よりも多くすることができる。その一方で、負極室(負極)8と陽極室(陽極)9の距離が長くなるので、第一の実施形態よりも高い電圧、特に約2倍以上の電圧を印加する必要があり、電流量も多くなるなど、電力の供給条件が異なるが、それ以外の運転方法は、前述した第一の実施形態とほぼ同じでよい。
【0054】
以上、本発明の電気脱イオン装置及びその運転方法について添付図面を参照して説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更実施が可能である。例えば、
図1ではサブブロックは6個、
図2では7個設置されているが、これに限定されず、1~12個程度であればよい。また、1つのサブブロックにおける脱塩室と濃縮室とのペアの数は1~100個程度であればよい。さらに、本実施形態においては、処理水W2又は濃縮排水W4はセルの両側から取り出しているが、いずれか一方の側から取り出すように構成してもよい。
【実施例0055】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0056】
[実施例1]
電気脱イオン装置としてEvoqua Water Technologies,LLC社製のIP-VNX55EX-2を使用し、給水及び濃縮排水の通水方法を、
図1の通りとして処理水を得た。この処理水の抵抗率とホウ素濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
なお、実施例1において、その他の条件は以下の通りとした。
膜面積:0.06m2
脱塩室厚み:9mm
濃縮室厚み:4mm
脱塩室流量:10.3m3/h
濃縮水:脱塩室の給水と同じものを通水
濃縮室流量:0.50m3/h
回収率:95.4%
運転電流値:10A
電流密度:0.86A/(m3/h)
給水ホウ素濃度:1~3μg/L
給水導電率:0.1~0.2mS/m
給水無機炭素濃度:濃度:130~160μg/L as C
【0058】
[比較例1]
実施例1において、濃縮水として脱塩室の処理水を通過させ、処理水を得た。この処理水の抵抗率とホウ素濃度を測定した。結果を表1にあわせて示す。
【0059】
なお、比較例1において、その他の条件は以下の通りとした。
膜面積:0.06m2
脱塩室厚み:9mm
濃縮室厚み:4mm
脱塩室流量:11.6m3/h
濃縮水:脱塩室の処理水を通水
濃縮室流量:0.56m3/h
回収率:95.1%
運転電流値:10A
電流密度:0.86A/(m3/h)
給水ホウ素濃度:1~3μg/L
給水導電率:0.1~0.2mS/m
給水無機炭素濃度:濃度:130~160μg/L as C
【0060】
【0061】
表1から明らかなとおり、実施例1と比較例1の処理水の抵抗率は同一の値であったが、処理水のホウ素濃度は実施例1の方が低い値となった。この結果から、給水水質が特定の範囲内にある場合には、濃縮室に当該給水と同じ水を通水して脱塩室の被処理水と向流通水する実施例1の方式の方が、濃縮室に脱塩水(処理水)を向流通水する比較例1の方式よりもホウ素除去に有効であることがわかる。ここで、給水を向流通水する方式が有効となる条件として、ホウ素濃度が一定以上であること(処理水を向流通水する方式では十分に処理ができない濃度)、給水のイオン濃度が一定範囲であること(給水のイオン濃度が高くなると、脱塩室下部における濃度拡散の影響が大きくなる)が考えられる。特に脱塩室流量が15m3/h以下の小型の電気脱イオン装置において有効であると推測される。
【0062】
[実施例2]
電気脱イオン装置としてEvoqua Water Technologies,LLC社製のIP-LXM4X-4を使用し、給水及び濃縮排水の通水方法を、
図1の通りとして処理水を得た。この処理水の抵抗率とホウ素濃度を測定した。結果を表2に示す。
【0063】
なお、実施例比較例2において、その他の条件は以下の通りとした。
脱塩室流量:4.7L/分
濃縮水:脱塩室の給水と同じものを通水
濃縮室流量:1.0L/分
回収率:82%
給水ホウ素濃度:1μg/L
給水導電率:1.2~1.4mS/m
給水無機炭素濃度:濃度:6mg/L as C
【0064】
[実施例3]
実施例2において、脱塩室流量を増加させた以外は同様にして処理水を得た。この処理水の抵抗率とホウ素濃度を測定した。結果を表2にあわせて示す。
【0065】
なお、比較例3おいて、その他の条件は以下の通りとした。
脱塩室流量:5.7L/分
濃縮水:脱塩室の給水と同じものを通水
濃縮室流量:1.0L/分
回収率:82%
給水ホウ素濃度:1μg/L
給水導電率:1.2~1.4mS/m
給水無機炭素濃度:濃度:6mg/L as C
【0066】
【0067】
表2から明らかなとおり、この実験例の給水条件においては、実施例2の方がホウ素濃度は低く、抵抗率が低いことがわかる。このことから、ホウ素の除去性能の向上には脱塩室流量の低減が効果的であると推測される。また、脱塩室と向流通水する濃縮水にイオン濃度(特に無機炭素)が高い水を用いると、脱塩室下部における濃度差による拡散が起こり、処理水の抵抗率が低下することが示された。
陰極及び陽極と、該陰極及び陽極の間に配置された複数のカチオン交換膜及びアニオン交換膜と、これらカチオン交換膜及びアニオン交換膜により区画形成された複数の脱塩室及び濃縮室とを備え、前記脱塩室及び前記濃縮室にイオン交換樹脂が充填されていて、前記複数の脱塩室に被処理水を通水して脱イオン水を取り出す手段と前記濃縮室に濃縮水を通水する濃縮水通水手段とを有する電気脱イオン装置であって、
前記各脱塩室の一側には、被処理水の供給ラインから順次分岐した被処理水流入分岐管がそれぞれ連通しているとともに、前記各脱塩室の他側には処理水の流出管がそれぞれ連通していて、これら各処理水の流出管が処理水の流出ラインに合流しており、前記被処理水の供給ラインの両側が開放していて、この被処理水の供給ラインの両側から前記被処理水が供給可能となっており、かつ、前記処理水の流出ラインの両側が開放していて、この処理水の流出ラインの両側から前記処理水が排出可能となっており、
前記各濃縮室の他側には、濃縮水の供給ラインから順次分岐した濃縮水流入分岐管がそれぞれ連通しているとともに、前記各濃縮室の一側には濃縮排水の流出管がそれぞれ連通していて、これら各濃縮排水の流出管が濃縮排水の流出ラインに合流しており、前記濃縮水の供給ラインの両側が開放していて、この供給ラインの両側から前記濃縮水が供給可能となっており、かつ、前記濃縮排水の流出ラインの両側が開放していて、この濃縮排水の流出ラインの両側から前記濃縮排水が排出可能となっており、
前記濃縮排水の流出ラインの中間部に閉止板が設けられており、
前記濃縮水として、前記被処理水と同じ水を供給可能となっている、電気脱イオン装置。
陰極及び陽極と、該陰極及び陽極の間に配置された複数のカチオン交換膜及びアニオン交換膜と、これらカチオン交換膜及びアニオン交換膜により区画形成された複数の脱塩室及び濃縮室とを備え、前記脱塩室及び前記濃縮室にイオン交換樹脂が充填されていて、前記複数の脱塩室に被処理水を通水して脱イオン水を取り出す手段と前記濃縮室に濃縮水を通水する濃縮水通水手段とを有し、前記各脱塩室の一側には、被処理水の供給ラインから順次分岐した被処理水流入分岐管がそれぞれ連通しているとともに、前記各脱塩室の他側には処理水の流出管がそれぞれ連通していて、これら各処理水の流出管が処理水の流出ラインに合流しており、前記被処理水の供給ラインの両側が開放し、かつ、前記処理水の流出ラインの両側が開放していて、前記各濃縮室の他側には、濃縮水の供給ラインから順次分岐した濃縮水流入分岐管がそれぞれ連通しているとともに、前記各濃縮室の一側には濃縮排水の流出管がそれぞれ連通していて、これら各濃縮排水の流出管が濃縮排水の流出ラインに合流しており、前記濃縮水の供給ラインの両側が開放し、かつ、前記濃縮排水の流出ラインの両側が開放しており、前記濃縮排水の流出ラインの中間部に閉止板が設けられている、電気脱イオン装置の運転方法であって、
前記被処理水の供給ラインの両側から前記被処理水と同じ水を供給して、前記処理水の流出ラインの両側から前記処理水を取り出し、
前記濃縮水の供給ラインの両側から前記被処理水を供給して、前記濃縮排水の流出ラインの両側から前記濃縮排水を排出する、電気脱イオン装置の運転方法。