(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093023
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】精度管理用スライド及びそれを用いた自動免疫染色装置の検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/31 20060101AFI20240702BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G01N1/31
G01N33/53 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209117
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 泰
(72)【発明者】
【氏名】丸山 優史
(72)【発明者】
【氏名】信木 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】松原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】桜井 智也
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052FA09
2G052JA09
(57)【要約】
【課題】
自動免疫染色装置の異常の有無、及び異常が生じた場合は、その原因を推定可能な精度管理用スライドを提供する。
【解決手段】
抗原を含有していないスポット(抗原(-))と、組織学的固定化を適用しておらず、抗原を含有しているスポット(固定(-)/抗原(+))と、組織学的固定化を適用していて、抗原を含有しているスポット(固定(+)/抗原(+))と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原を含有していないスポット(抗原(-))と、
組織学的固定化を適用しておらず、抗原を含有しているスポット(固定(-)/抗原(+))と、
組織学的固定化を適用していて、抗原を含有しているスポット(固定(+)/抗原(+))と、
を有することを特徴とする精度管理用スライド。
【請求項2】
請求項1に記載の精度管理用スライドであって、
複数の水準の強度で組織学的固定化を適用している複数のスポットおよび複数の水準の濃度で抗原を含有している複数のスポットの少なくともいずれかを有することを特徴とする精度管理用スライド。
【請求項3】
請求項2に記載の精度管理用スライドであって、
過剰な組織学的固定化を適用していて、抗原を含有しているスポット(固定(+++)/抗原(+))と、
検査に使用する抗体試薬の二次抗体と結合する一次抗体を含有したスポット(一次抗体(+))と、
検査に使用する発色試薬と反応する酵素を含有したスポット(HRP(+))と、
を有することを特徴とする精度管理用スライド。
【請求項4】
請求項3に記載の精度管理用スライドであって、
前記過剰な組織学的固定化は、前記抗原のアミノ基の50%以上を固定していることを特徴とする精度管理用スライド。
【請求項5】
請求項1に記載の精度管理用スライドであって、
前記各スポットとの発色強度を比較する色見本スポットを有することを特徴とする精度管理用スライド。
【請求項6】
請求項1に記載の精度管理用スライドであって、
前記各スポットは、ホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒドによる組織学的固定化が適用されていることを特徴とする精度管理用スライド。
【請求項7】
請求項1に記載の精度管理用スライドであって、
前記各スポットは、アミン含有高分子化合物を主組成とすることを特徴とする精度管理用スライド。
【請求項8】
請求項7に記載の精度管理用スライドであって、
前記アミン含有高分子化合物は、タンパク質、ペプチド、多糖類、ビニル系合成高分子、アリル系合成高分子の少なくともいずれかを含んで構成されることを特徴とする精度管理用スライド。
【請求項9】
請求項7に記載の精度管理用スライドであって、
前記アミン含有高分子化合物は、タンパク質を含み、
前記タンパク質は、血清アルブミン、オボアルブミン、ゼラチン、コラーゲン、カゼインのいずれかであることを特徴とする精度管理用スライド。
【請求項10】
請求項7に記載の精度管理用スライドであって、
前記アミン含有高分子化合物は、ペプチドを含み、
前記ペプチドは、ポリリジン、ポリオルニチンのいずれかであることを特徴とする精度管理用スライド。
【請求項11】
請求項7に記載の精度管理用スライドであって、
前記アミン含有高分子化合物は、多糖類を含み、
前記多糖類は、キトサン、キチンのいずれかであることを特徴とする精度管理用スライド。
【請求項12】
請求項7に記載の精度管理用スライドであって、
前記アミン含有高分子化合物は、ビニル系合成高分子を含み、
前記ビニル系合成高分子は、ポリビニルアミンであることを特徴とする精度管理用スライド。
【請求項13】
請求項7に記載の精度管理用スライドであって、
前記アミン含有高分子化合物は、アリル系合成高分子を含み、
前記アリル系合成高分子は、ポリアリルアミンまたはポリアリルアミンを部分構造として有する化合物であることを特徴とする精度管理用スライド。
【請求項14】
請求項1に記載の精度管理用スライドであって、
前記抗原は、Ki-67、p53、CK、D2-40、CD20、CD3、ER、PGR、HER2、CD34、CD79、CD10、αSMA、S100、CD68、CK7、BCL2、CD56、p63、CD5、CK20、Synaptophysin、Vimentin、Chromogranin A、TTF-1、Desmin、CK-HMW、CD31、EMA、CD117、Cyclin D1、CD30、Myeloperoxidase、CD4、CEAのいずれかであることを特徴とする精度管理用スライド。
【請求項15】
請求項1に記載の精度管理用スライドであって、
前記各スポットの面積が、1mm2以上1000mm2以下であることを特徴とする精度管理用スライド。
【請求項16】
請求項1に記載の精度管理用スライドであって、
前記各スポットの厚みが、0.5μm以上500μm以下であることを特徴とする精度管理用スライド。
【請求項17】
請求項1に記載の精度管理用スライドであって、
前記抗原は、蛍光分子で標識されていることを特徴とする精度管理用スライド。
【請求項18】
請求項1に記載の精度管理用スライドを用いた自動免疫染色装置の検査方法であって、
前記各スポットの発色パターンに基づいて、前記自動免疫染色装置の異常の有無、および異常が生じた場合はその原因を推定することを特徴とする自動免疫染色装置の検査方法。
【請求項19】
請求項18に記載の自動免疫染色装置の検査方法であって、
前記各スポットの発色パターンの経日的変化に基づいて、前記自動免疫染色装置の異常の予兆を検知することを特徴とする自動免疫染色装置の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置の精度を管理する精度管理用スライドの構成とそれを用いた検査方法に係り、特に、病理検査向け自動免疫染色装置の精度管理に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
病理検査とは、患者から採取した細胞・組織等の検体をスライドガラスに貼付けた検体標本を作成し、顕微鏡レベルで観察することで病変の有無や種類を診断する手法である。病理検査では、無色の検体から病変を識別するために、細胞・組織の構成要素に対する染色手法が不可欠である。病理検査に用いられる主な染色手法の1つとして、免疫染色がある。この染色手法は、抗体試薬により、検体に発現している特定の抗原を検出する。検査対象となる抗原の局在を可視化することから病理検査において極めて重要な手法である。
【0003】
免疫染色件数は年々増加しており、免疫染色の自動化を実現する自動免疫染色装置の需要が高まっている。現行の自動免疫染色装置は、賦活化、洗浄、染色の自動化を実現する。しかし、多工程を自動化する反面、異常が生じた場合にいずれの工程で異常が生じたかを判断することが困難となる。異常の防止として使用者の毎日の点検、装置メーカー技術者の定期的な点検が必要となっており、使用者や技術者の作業負荷を要する。
【0004】
これに関連して、自動免疫染色装置の全工程が正常に進行したか、またはいずれかの工程で異常が生じたかを確認することが可能な精度管理用スライドは既に知られている。例えば、特許文献1では、結合性物質と非結合性物質をそれぞれ含む2スポットを備えるスライドガラスが開示されている。結合性物質を含むスポットが発色し、結合性物質を含まないスポットが発色しなければ、自動免疫染色装置が正常に作動していると判断することができ、それ以外の発色パターンが確認された場合は、自動免疫染色装置に異常が生じていると判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、異常が生じた場合に、その異常の種類まで判別することは困難である。
【0007】
そこで、本発明の目的は、自動免疫染色装置の異常の有無、及び異常が生じた場合は、その原因を推定可能な精度管理用スライド及びそれを用いた検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、抗原を含有していないスポット(抗原(-))と、組織学的固定化を適用しておらず、抗原を含有しているスポット(固定(-)/抗原(+))と、組織学的固定化を適用していて、抗原を含有しているスポット(固定(+)/抗原(+))と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記の特徴を有する精度管理用スライドを用いた自動免疫染色装置の検査方法であって、前記各スポットの発色パターンに基づいて、前記自動免疫染色装置の異常の有無、および異常が生じた場合はその原因を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、自動免疫染色装置の異常の有無、及び異常が生じた場合は、その原因を推定可能な精度管理用スライド及びそれを用いた検査方法を実現することができる。
【0011】
これにより、自動免疫染色装置の使用時に、全工程が正常に進行したか、または異常が生じたかを確認し、異常が生じた場合は、その原因を推定することができる。
【0012】
また、経時的な変化を追跡することで自動免疫染色装置の異常の予兆を検知することができる。
【0013】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る精度管理用スライドの最小構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図1の精度管理用スライドを免疫染色した結果を模式的に示す図である。
【
図3】
図1の精度管理用スライドに更にスポットを加えたものを模式的に示す図である。
【
図4】
図3の精度管理用スライドを免疫染色した結果を模式的に示す図である。
【
図5】スポットの抗原濃度と固定強度にそれぞれ4水準を与えた精度管理用スライドを模式的に示す図である。
【
図6】
図5の精度管理用スライドを免疫染色した結果を模式的に示す図である。
【
図7】
図1の精度管理用スライドを経日的に免疫染色した結果を模式的に示す図である。
【
図8】
図5の精度管理用スライドを経日的に免疫染色した結果を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【0016】
本発明の精度管理用スライドは、免疫染色の精度管理に使用することができる。最も好適な用途としては自動免疫染色装置を用いる際に自動免疫染色装置内に設置して使用することである。本発明の精度管理用スライドは、検体の免疫染色を行う際に使用する。
【0017】
免疫染色は、抗体を用いて特定の抗原を検出する手法である。本発明でいう免疫染色は、検体を賦活化し、抗体試薬を添加して反応系を調製し、抗原抗体反応をし、未反応の抗体試薬を洗浄し、発色反応をし、未反応の発色試薬を洗浄するまでの工程とする。
【0018】
本発明の精度管理用スライドは、検体担持部に検体を搭載することで、同一スライド上で検体とスポットとを免疫染色し、検体とスポットとを同条件下で処理することができる。この時、スポットの発色パターンを確認することで、検体の染色状態の信頼性を評価することができる。また、本発明の精度管理用スライドは、免疫染色の全工程が正常に進行していること、また異常が生じていることを確認し、異常が生じた場合は、その原因を推定することができる。
【0019】
図1に、本発明の精度管理用スライドの最小構成を模式的に示す。
【0020】
本発明の精度管理用スライド9は、
図1に示すように、抗原を含有していないスポット(抗原(-))1と、組織学的固定化を適用しておらず、抗原を含有しているスポット(固定(-)/抗原(+))2と、組織学的固定化を適用していて、抗原を含有しているスポット(固定(+)/抗原(+))3と、検体担持部8から構成される。本発明の精度管理用スライド9は、スポット1~3の少なくとも3種類以上のスポットを有することを特徴とする。
【0021】
本発明でいう組織学的固定化とは、生体由来の検体を自己分解や腐敗による劣化から保護するための化学処理のことをいう。一般に、免疫染色における検体は、組織学的固定化が施されている。代表的な組織学的固定化方法の1つとして、アルデヒド化合物を用いるものが挙げられる。検体中の抗原とその近傍の組織成分とをアルデヒドにより架橋することで、抗原を生体時と近い状態で長期にわたって保持することが可能となる。一方で、組織学的固定化は、抗原の反応部位を遮蔽するため、免疫染色する直前に加熱処理等することで賦活化しなければ免疫染色が正常に進行しない。
【0022】
スポット(抗原(-))1が発色しない場合は、免疫染色の正常な進行、染色試薬の濃度不足か活性不足、反応系調製の失敗、不完全な賦活化が推定される。スポット(抗原(-))1が強く発色する場合は、染色試薬の残留が推定される。
【0023】
スポット(固定(-)/抗原(+))2が発色しない場合は、反応系調製の失敗が推定される。スポット(固定(-)/抗原(+))2が弱く発色する場合は、染色試薬の濃度不足か活性不足が推定される。スポット(固定(-)/抗原(+))2が発色する場合は、免疫染色の正常な進行、不完全な賦活化が推定される。スポット(固定(-)/抗原(+))2が強く発色する場合は、染色試薬の残留が推定される。
【0024】
スポット(固定(+)/抗原(+))3が発色しない場合は、反応系調製の失敗が推定される。スポット(固定(+)/抗原(+))3が弱く発色する場合は、染色試薬の濃度不足か活性不足、不完全な賦活化が推定される。スポット(固定(+)/抗原(+))3が発色する場合は免疫染色の正常な進行が推定される。スポット(固定(+)/抗原(+))3が強く発色する場合は、染色試薬の残留が推定される。
【0025】
これらのスポットを組み合わせて使用することで、発色パターンと免疫染色における異常の種類を対応させて、自動免疫染色装置上での異常を推定することができる。
【0026】
図2に、
図1の精度管理用スライド9を免疫染色した結果を模式的に示す。
【0027】
例えば、
図2aに示すように、スポット(抗原(-))1が発色せず、スポット(固定(-)/抗原(+))2とスポット(固定(+)/抗原(+))3が発色する場合は、免疫染色の正常な進行が推定される。異常はなく全工程正常が推定される。
【0028】
図2bに示すように、スポット(抗原(-))1、スポット(固定(-)/抗原(+))2、スポット(固定(+)/抗原(+))3がいずれも発色しない場合は、反応系調製の失敗が推定される。すなわち、異常としては試薬吐出失敗が推定される。
【0029】
図2cに示すように、スポット(抗原(-))1、スポット(固定(-)/抗原(+))2、スポット(固定(+)/抗原(+))3がいずれもが強く発色する場合は、染色試薬の残留が推定される。すなわち、異常としては洗浄不足が推定される。
【0030】
図2dに示すように、スポット(抗原(-))1が発色せず、スポット(固定(-)/抗原(+))2が発色し、スポット(固定(+)/抗原(+))3が弱く発色する場合は、不完全な賦活化が推定される。すなわち、異常としては賦活化不足が推定される。
【0031】
図2eに示すように、スポット(抗原(-))1が発色せず、スポット(固定(-)/抗原(+))2及びスポット(固定(+)/抗原(+))3が弱く発色する場合は、染色試薬の濃度不足か活性不足が推定される。すなわち、異常としては染色試薬劣化等を含む染色試薬異常が推定される。
【0032】
このように、少なくとも3種類のスポットの発色パターンを確認することで、免疫染色の全工程正常であること、また異常が生じていることを確認し、異常が生じた場合は、その原因を推定することができる。
【0033】
図3に、
図1の精度管理用スライド9に更にスポットを加えたものを模式的に示す。
【0034】
本発明の精度管理用スライド9は、上記の3種類のスポットに更にスポットを追加することで異常の種類をより詳細に推定することもできる。
【0035】
過剰な組織学的固定化を適用していて、抗原を含有しているスポット(固定(+++)/抗原(+))4を加えると、賦活化過剰を推定できる。
【0036】
本発明における過剰な組織学的固定化とは、通常の賦活化を実施しても抗原の免疫染色性が復活しないような固定化のことを指す。具体的には、過剰な組織学的固定化は、抗原のアミノ基の50%以上を固定しているのが好ましい。また、過剰な賦活化をしても抗原の免疫反応性は失われないようにするものとする。
【0037】
検査に使用する抗体試薬の二次抗体と結合する一次抗体を含有したスポット(一次抗体(+))5、及び検査に使用する発色試薬と反応する酵素を含有したスポット(HRP(+))6を加えると、染色試薬劣化等の染色試薬異常の詳細を推定できる、また、一次抗体の選択ミスを推定できる。
【0038】
スポット(固定化(+++)/抗原(+))4が発色しない場合は、免疫染色の正常な進行、反応系調製の失敗、不完全な賦活化、一次抗体の濃度不足か活性不足、二次抗体の濃度不足か活性不足、発色試薬の濃度不足か活性不足、一次抗体の不適合が推定される。スポット(固定化(+++)/抗原(+))4が発色する場合は、過剰な賦活化が推定される。スポット(固定化(+++)/抗原(+))4が強く発色する場合は、染色試薬の残留が推定される。
【0039】
スポット(一次抗体(+))5が発色しない場合は、反応系調製の失敗が推定される。スポット(一次抗体(+))5が弱く発色する場合は、二次抗体の濃度不足か活性不足、発色試薬の濃度不足か活性不足が推定される。スポット(一次抗体(+))5が発色する場合は、免疫染色の正常な進行、不完全な賦活化、一次抗体の濃度不足か活性不足、一次抗体の不適合、過剰な賦活化が推定される。スポット(一次抗体(+))5が強く発色する場合は、染色試薬の残留が推定される。
【0040】
スポット(HRP(+))6が発色しない場合は、反応系調製の失敗が推定される。スポット(HRP(+))6が弱く発色する場合は、不完全な賦活化、発色試薬の濃度不足か活性不足が推定される。スポット(HRP(+))6が発色する場合は、免疫染色の正常な進行、一次抗体の濃度不足か活性不足、二次抗体の濃度不足か活性不足、一次抗体の不適合、過剰な賦活化が推定される。スポット(HRP(+))6が強く発色する場合は、染色試薬の残留が推定される。
【0041】
図4に、
図3の精度管理用スライド9を免疫染色した結果を模式的に示す。
【0042】
例えば、
図4aに示すように、スポット(抗原(-))1、スポット(固定(+++)/抗原(+))4が発色せず、スポット(固定(-)/抗原(+))2、スポット(固定(+)/抗原(+))3、スポット(一次抗体(+))5、スポット(HRP(+))6が発色する場合は、免疫染色の正常な進行が推定される。すなわち、異常はなく、全工程正常が推定される。
【0043】
図4bに示すように、スポット(抗原(-))1、スポット(固定(-)/抗原(+))2、スポット(固定(+)/抗原(+))3、スポット(固定(+++)/抗原(+))4、スポット(一次抗体(+))5、スポット(HRP(+))6がいずれも発色しない場合は、反応系調製の失敗が推定される。すなわち、異常としては試薬吐出失敗が推定される。
【0044】
図4cに示すように、スポット(抗原(-))1、スポット(固定(-)/抗原(+))2、スポット(固定(+)/抗原(+))3、スポット(固定(+++)/抗原(+))4、スポット(一次抗体(+))5、スポット(HRP(+))6がいずれも強く発色する場合は、染色試薬の残留が推定される。すなわち、異常としては洗浄不足が推定される。
【0045】
図4dに示すように、スポット(抗原(-))1、スポット(固定(+++)/抗原(+))4が発色せず、スポット(固定(+)/抗原(+))3が弱く発色し、スポット(固定(-)/抗原(+))2、スポット(一次抗体(+))5、スポット(HRP(+))6が発色する場合は、不完全な賦活化が推定される。すなわち、異常としては賦活化の不足が推定される。
【0046】
図4eに示すように、スポット(抗原(-))1、スポット(固定(+++)/抗原(+))4が発色せず、スポット(固定(-)/抗原(+))2、スポット(固定(+)/抗原(+))3が弱く発色し、スポット(一次抗体(+))5、スポット(HRP(+))6が発色する場合は、一次抗体の濃度不足か活性不足と推定される。すなわち、異常としては一次抗体の劣化が推定される。
【0047】
図4fに示すように、スポット(抗原(-))1、スポット(固定(+++)/抗原(+))4が発色せず、スポット(固定(-)/抗原(+))2、スポット(固定(+)/抗原(+))3、スポット(一次抗体(+))5が弱く発色し、スポット(HRP(+))6が発色する場合は、二次抗体の濃度不足か活性不足が推定される。すなわち、異常としては二次抗体の劣化が推定される。
【0048】
図4gに示すように、スポット(抗原(-))1、スポット(固定(+++)/抗原(+))4が発色せず、スポット(固定(-)/抗原(+))2、スポット(固定(+)/抗原(+))3、スポット(一次抗体(+))5、スポット(HRP(+))6が弱く発色する場合は、発色試薬の濃度不足か活性不足が推定される。すなわち、異常としては発色試薬劣化が推定される。
【0049】
図4hに示すように、スポット(抗原(-))1、スポット(固定(-)/抗原(+))2、スポット(固定(+)/抗原(+))3、スポット(固定(+++)/抗原(+))4が発色せず、スポット(一次抗体(+))5、スポット(HRP(+))6が発色する場合は、一次抗体の不適合が推定される。すなわち、異常としては一次抗体の選択ミスが推定される。
【0050】
図4iに示すように、スポット(抗原(-))1が発色せず、スポット(固定(-)/抗原(+))2、スポット(固定(+)/抗原(+))3、スポット(固定(+++)/抗原(+))4、スポット(一次抗体(+))5、スポット(HRP(+))6が発色する場合は固定(+++)が賦活化されていることが推定される。すなわち、異常としては賦活化過剰が推定される。
【0051】
また、本発明の精度管理用スライド9は、スポットの組織学的固定化の強度とスポットに含まれる抗原の濃度に複数の水準を設けることでより正確な精度管理が可能となる。
【0052】
水準の種類と数は特に限定されないが、スライド上のスポットの占有面積を考慮すると3種類以上6種類以下であることが好ましい。
【0053】
図5に、スポットの抗原濃度と固定強度にそれぞれ4水準を与えた精度管理用スライド9を模式的に示す。また、
図6に、
図5の精度管理用スライド9を免疫染色した結果を模式的に示す。
【0054】
例えば、
図5に示すように組織学的固定化の強度を(-)、(+)、(++)、(+++)、抗原の濃度を(-)、(+)、(++)、(+++)とそれぞれ4種類の水準を設けて16スポットを有する精度管理用スライド9では、
図6に示すように段階的な発色パターンを示すことでより正確な精度管理をすることもできる。
【0055】
なお、本発明の精度管理用スライド9では、スポットは抗原の種類毎に複数組設置しても良い。または、1つのスポットに含まれる抗原の種類を複数としても良い。免疫染色に対する汎用性を高める他、一次抗体の選択ミスを推定することができるようになる。
【0056】
本発明の精度管理用スライド9は、抗原に蛍光標識抗原を用いることで、スライド自体の品質保証検査を実施することができる。蛍光標識抗原は、抗原に蛍光標識試薬を作用して得ることができる。蛍光標識抗原は、抗原と同様の手法でスポットに導入することができる。
【0057】
スポットの蛍光強度は、蛍光顕微鏡や、蛍光光度計、蛍光イメージング装置等で定量することで、使用前にスポットに導入されている抗原を可視化することができる。この時、免疫染色強度に品質保証域を設定しておき、検量線を用いて蛍光強度から推定される免疫染色強度に過不足がある場合は、精度管理用スライド9としての使用に適さないと判断することができる。品質保証域については蛍光強度と免疫染色強度の相関性から検量線を作成し、適宜設定する。
【0058】
本発明の精度管理用スライド9は、自動免疫染色装置の異常の予兆の検知にも使用することができる。
【0059】
少なくとも3種類のスポットの発色パターンの経日的変化を確認することで自動免疫染色装置の異常の予兆を検知することができる。
【0060】
以下、
図7及び
図8を用いて、その詳細を説明する。
図7は、
図1の精度管理用スライド9を経日的に免疫染色した結果を模式的に示す。
図8は、
図5の精度管理用スライド9を経日的に免疫染色した結果を模式的に示す。
【0061】
例えば、スポットの発色パターンの経日的変化を確認し、
図7aの全工程正常の発色パターンが、
図7b、
図7c、
図7d、
図7eのように、いずれかの発色パターンに近づく傾向が確認される場合は、その発色パターンと対応する異常が生じつつあることを確認することができる。
【0062】
図7aの全工程正常の発色パターンが経日的に変化して
図7bのような発色パターンとなる場合は、試薬吐出の異常を予兆することができる。
図7cのような発色パターンとなる場合は、洗浄機構の異常を予兆することができる。
図7dのような発色パターンとなる場合は、賦活化機構の異常を予兆することができる。
図7eのような発色パターンとなる場合は、染色試薬の異常を予兆することができる。このように、発色パターンの経日的変化の傾向を確認することで、自動免疫染色装置の異常を予兆することができる。
【0063】
本発明の精度管理用スライド9を異常の予兆に使用する場合でも、スポットの組織学的固定化の強度とスポットに含まれる抗原の濃度に複数の水準を設けることでより正確な異常の予兆が可能となる。
【0064】
例えば、スポットの発色パターンの経日的変化を確認し、
図8aの全工程正常の発色パターンが、
図8b、
図8c、
図8d、
図8e、
図8fのように、いずれかの発色パターンに近づく傾向が確認される場合は、その発色パターンと対応する異常が生じつつあることを確認することができる。
【0065】
本発明の精度管理用スライド9を構成するスポットの発色パターンを読み取る方法は、特に限定されない。スポットの発色パターンの発色強度は、目視で定性的に読み取り推定しても良いが、定量的に読み取ることが好ましい。
【0066】
発色強度を定量的に読み取る場合は、スライド一面をカメラで撮影して撮影像を画像解析する方法、もしくは各スポットを顕微鏡観察して撮影像を画像解析する方法、もしくは各スポットを色度測定する方法、もしくは特定の波長の吸光度を測定する方法等がある。
【0067】
例えば、スライド一面をカメラで撮影して撮影像を画像解析する方法では、撮影像上の座標ごとの色情報を出力する装置に取り込むことで、スライド上の発色パターンを数値化することができる。この場合、精度管理用スライド9に発色強度を比較するために既に着色した色見本スポットを設置してあることが好ましい。
【0068】
なお、撮影環境の影響を受けないように、スライドガラスの位置は固定し、暗箱内で一定の光源を与えた状態で撮影することが好ましい。
【0069】
また、例えば、各スポットを顕微鏡観察して撮影像を画像解析する方法、もしくは各スポットを色度測定する方法では、スポットのRGB値を免疫染色前後でRGB空間座標系に配置し、その2点間の距離を発色強度とすることができる。
【0070】
また、例えば、特定の波長の吸光度を測定する方法では、免疫染色の発色試薬として使用した色素の吸光度を発色強度とすることができる。また、色素の吸光度を2つの波長に対して測定し、2つの吸光度の差や比率を発色強度としても良い。また、特定の波長の吸光度を測定する際は、照射する光源は単色光源であっても、複数の単色光源であっても良いし、白色光を分光した光源であっても良い。
【0071】
本発明の精度管理用スライド9で異常の予兆を検知する場合は、スポットの発色パターンを定量的に読み取ることが好ましい。
【0072】
異常の予兆の検知は、定量値の経日的な変化量もしくは変化の傾きを記録し、事前に用意した教育データと比較することで実施できる。
【0073】
異常の種類の推定については、教育データ上のどの発色パターンに近づきつつあるかを見ることで実施できる。教育データは、予め様々な種類の異常を意図的に与えたもので発色強度を定量しておくことで用意しておくことができる。
【0074】
また、異常の予兆が検知された場合は、例えば、試薬に関連する異常であれば使用者に対しアラートを発し、装置に関連する異常の予兆であれば装置メーカー技術者に対しアラートを発することで、異常の予兆に対して迅速に対応することが可能となる。
【0075】
以上で説明した撮影機能、撮影像を画像解析することで発色強度を定量化する機能、定量値を教育データと比較して異常を予兆する機能、予兆した異常の種類に応じてアラートを発する機能が自動免疫染色装置内に組み込めること、もしくは付帯設備として設置されていることが好ましい。
【0076】
本発明の精度管理用スライド9は、以下に説明する設計指針に基づいて実現することができる。
【0077】
本発明の精度管理用スライド9は、
図1を用いて説明したように、抗原を含有していないスポット(抗原(-))1と、組織学的固定化を適用しておらず、抗原を含有しているスポット(固定(-)/抗原(+))2と、組織学的固定化を適用していて、抗原を含有しているスポット(固定(+)/抗原(+))3の少なくとも3種類以上のスポットから構成される。
【0078】
本発明の精度管理用スライド9を構成するスポットに含まれる抗原は、特に限定されない。
【0079】
抗原の種類については特に限定されないが、病理検査で検査対象とされる抗原タンパク質または抗原タンパク質と部分的相同配列を有するペプチドもしくはアミノ酸のオリゴマーを例として挙げることができる。
【0080】
抗原タンパク質としては、Ki-67、p53、CK、D2-40、CD20、CD3、ER、PGR、HER2、CD34、CD79、CD10、αSMA、S100、CD68、CK7、BCL2、CD56、p63、CD5、CK20、Synaptophysin、Vimentin、Chromogranin A、TTF-1、Desmin、CK-HMW、CD31、EMA、CD117、Cyclin D1、CD30、Myeloperoxidase、CD4、CEA等が挙げられる。抗原タンパク質は、天然型であっても組換えであっても構わない。
【0081】
本発明の精度管理用スライド9を構成するスポットを組織学的固定化する方法は、ホルムアルデヒド、もしくはグルタルアルデヒドを使用することが好ましい。なお、これらを組み合わせて使用しても良いし、他のアルデヒド化合物を用いても良い。ホルムアルデヒド、もしくはグルタルアルデヒドによって組織学的固定化することでスポットを実際の検体と近い様態とすることができる。
【0082】
本発明の精度管理用スライド9を構成するスポットの組織学的固定化に関する水準の決定方法は、特に限定されない。
【0083】
例えば、(固定(-))はホルムアルデヒド溶液による固定化操作を行わないもの、(固定(+))は4%ホルムアルデヒド溶液(pH7.4)で8時間浸漬したもの、(固定(++))は4%ホルムアルデヒド溶液(pH7.4)で3日間浸漬したもの、(固定(+++))は4%ホルムアルデヒド溶液(pH7.4)で1か月浸漬したものを使用することができる。
【0084】
本発明の精度管理用スライド9を構成するスポットの抗原濃度に関する水準の決定方法は、特に限定されない。
【0085】
例えば、(抗原(-))はホルムアルデヒド溶液による固定化操作を行わないもの、(抗原(+))は25μg/mLの抗原タンパク溶液を使用して固相化反応をしたもの、(抗原(++))は50μg/mLの抗原タンパク溶液を使用して固相化反応をしたもの、(抗原(+++))は100μg/mLの抗原タンパク溶液を使用して固相化反応をしたものを使用することができる。
【0086】
本発明の精度管理用スライド9を構成するスポットの主組成は、アミン含有高分子化合物であることが好ましい。アミン含有高分子化合物には、抗原の近傍にアミノ基を分布させる機能がある。抗原とその近傍のアミノ基を組織学的固定化することで、スポットを実際の検体に近い様態とすることができる。アミン含有高分子化合物は、タンパク質、ペプチド、多糖類、ビニル系合成高分子、アリル系合成高分子の少なくともいずれかを含んで構成する。アミン含有高分子化合物は、抗原に対する充分な組織学的固定化を実現するための複数のアミノ基を有し、抗原を化学的にまたは物理的に固相化することが可能である。
【0087】
これらの条件を満たす例として、各種動物の血清アルブミン、オボアルブミン、ゼラチン、コラーゲン、カゼインのようなタンパク質からなる材料や、ポリリジン、ポリオルニチンのようなペプチドからなる材料や、キトサンやキチンのような多糖からなる材料や、ポリビニルアミン等のビニル系合成高分子や、ポリアリルアミンまたはポリアリルアミンを部分構造として有する化合物等のアリル系合成高分子や、これらの構造の一部を有する共重合体からなる材料を挙げることができる。
【0088】
これらの中でも、スポットの成型や、染色試薬等の非特異吸着性抑制や、入手性の観点から血清アルブミンが特に好ましいが、これに限定されない。タンパク質のような生体由来材料を用いる場合は、天然型であっても組換えであっても構わない。
【0089】
本発明の精度管理用スライド9を構成するスポットの1つ当たりの占有面積は、1mm2以上1000mm2以下、より好適には1mm2以上500mm2以下であることが好ましい。複数のスポットをスライドに載せる必要があること、病理検査時の観察の容易性と生産性とを両立することを考慮すると、5mm2以上100mm2以下であることがより好ましい。
【0090】
本発明の精度管理用スライド9を構成するスポットの厚みは、0.5μm以上500μm以下であることが好ましい。病理検査に使用される検体の厚みが一般的に5μm程度であること、免疫染色の際に試薬の液面の高さが一般的に100μm程度になることがあること、及び生産性を考慮すると、1μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0091】
本発明の精度管理用スライド9を構成するスポットの形状は、特に限定されない。円形、楕円形、多角形、矩形、線状等、製造方法や検査目的に応じて適宜設定することができるが、均一に免疫染色を行うことを考慮すると、円形または楕円形であることがより好ましい。
【0092】
本発明の精度管理用スライド9の製造方法は、特に限定されない。
【0093】
例えば、スポットの前駆体溶液を物理的な方法もしくは化学的な方法でシリンダー状に固化させて、それを薄切してスライドに貼り付ける方法や、スポットの前駆体溶液をフッ素製の板状鋳型へ塗布して物理的な方法もしくは化学的な方法で固化させて、それをスポットとして切り出してスライドに貼り付ける方法や、インクジェット印刷のようにスポットの前駆体溶液をスライドに吹き付けてから物理的な方法もしくは化学的な方法で固化させる方法等が挙げられる。
【0094】
スポットの前駆体溶液を固化する物理的な方法もしくは化学的な方法は、特に限定されない。使用する化合物の特性に応じた固化方法を用いることができる。
【0095】
例えば、スポットの前駆体溶液として血清アルブミンを用いる場合、血清アルブミンの水溶液に55℃~100℃程度の強熱を与えたり、エタノールを添加したりすることで物理的な方法で固化されたゲル状固形物を得ることができる。
【0096】
他にも、スポットの前駆体溶液としてゼラチンやコラーゲンを用いる場合、ゼラチンやコラーゲンに化学的架橋剤を添加することで、化学的な方法で固化されたゲル状固形物を得ることができる。
【0097】
本発明の精度管理用スライド9を構成するスポットへの抗原の導入方法は、特に限定されない。
【0098】
例えば、スポットの前駆体溶液をシリンダー状に固化させた後に抗原の溶液を物理的な方法もしくは化学的な方法で導入する方法や、予めスポットの前駆体溶液と抗原溶液を混ぜ込み、物理的な方法もしくは化学的な方法で導入する方法等が挙げられる。
【0099】
抗原をスポットに導入する物理的な方法もしくは化学的な方法は、特に限定されない。使用するスポットの前駆体溶液の特性に応じた導入方法を用いることができる。
【0100】
例えば、スポットの前駆体溶液として血清アルブミンを用いる場合、予め抗原溶液と血清アルブミン溶液を混ぜ込み、55℃~100℃程度の強熱を与えたり、エタノールを添加したりすることで物理的な方法で抗原が固化されたゲル状固形物を得ることができる。
【0101】
あるいは、血清アルブミン溶液をシリンダー状に固化したゲル状固形物を化学的架橋剤および抗原の溶液に浸漬することで化学的な方法で抗原が固化されたゲル状固形物を得ることができる。
【0102】
化学的架橋剤は、使用する化合物に応じて選択することができる。例えば、血清アルブミンやゼラチンやコラーゲンを用いる場合、DMT―MM、グルタルアルデヒド、スベルイミノ酸ジメチル、ゲニピン、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリス-(ジメチルアミノ)ホスホニウム、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロフォスフェイト、多官能性エチレングリコール系ポリマー、カルボジイミド化合物等を適用することができる。
【0103】
以下、本発明の実施形態をより具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0104】
実施例1では、以下の方法で、本発明の精度管理用スライド9を作製した。
【0105】
10wt%のウシ血清アルブミンを調製し、直径5mmのシリンダー状の鋳型に注入した。鋳型を90℃で加熱し、ウシ血清アルブミンのゲル状固形物を作製した。
【0106】
ゲルを0.1wt%グルタルアルデヒド溶液に浸漬し、室温で3時間静置した。
【0107】
ゲルを100μg/mLのRecombinant Human Vimentin(Alexa Fluor 680標識付)溶液(pH7.4)に浸漬し、室温で1晩静置した。
【0108】
ゲルを4%ホルムアルデヒド溶液(pH7.4)に浸漬し、室温で8時間静置した。ゲルをエタノール/水=70v/30v%に浸漬し、1晩静置した後、エタノール/水=95v/5v%に浸漬し、1時間静置した後、エタノールに浸漬し、3時間静置した。
【0109】
ゲルをキシレン/エタノール=70v/30v%に浸漬し、1時間静置した後、キシレン/エタノール=95v/5v%に浸漬し、1時間静置した後、キシレンに浸漬し、3時間静置した。
【0110】
ゲルを50wt%パラフィンのキシレン溶液に浸漬し、60℃で1時間静置した。パラフィンに浸漬し、60℃で3時間浸漬した後、4℃で冷却してパラフィン包埋ゲルを作成した。パラフィン包埋ゲルをミクロトームで薄切することでパラフィン包埋ゲル薄膜のスポット(固定(+)/抗原(+))(
図1のスポット3に相当)を作製した。
【0111】
同様の手法で、4wt%ホルムアルデヒド溶液(pH7.4)と、Recombinant Human Vimentin(Alexa Fluor 680標識付)溶液(pH7.4)の代わりに、それぞれPBS溶液(pH7.4)を使用することで、(抗原(-))(
図1のスポット1に相当)、(固定(-)/抗原(+))(
図1のスポット2に相当)を作製した。
【0112】
3種類のスポットを1枚のスライド上に貼り付けることで精度管理用スライド9を作製した。各スポットの面積は20mm2、厚みは4μmであった。
100μg/mLのRecombinant Human Vimentin(Alexa Fluor 680標識付)溶液(pH7.4)を鋳型に滴下し、室温で1晩静置した。