(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093040
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】端子付き扁平電線、ワイヤハーネス、および端子付き扁平電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20240702BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20240702BHJP
H01B 7/08 20060101ALI20240702BHJP
H02G 15/02 20060101ALI20240702BHJP
H01R 43/048 20060101ALI20240702BHJP
H01R 4/2407 20180101ALI20240702BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01B7/00 306
H01B7/08
H02G15/02
H01R43/048 Z
H01R4/2407
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209137
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 由香
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩信
(72)【発明者】
【氏名】児島 直之
【テーマコード(参考)】
5E012
5E063
5E085
5G309
5G311
5G375
【Fターム(参考)】
5E012AA25
5E063CA07
5E063CB09
5E063CC05
5E063CC07
5E063CD15
5E063XA01
5E085BB05
5E085CC03
5E085DD15
5E085FF01
5E085FF18
5E085FF19
5E085GG02
5E085HH06
5G309FA04
5G309FA06
5G311CA01
5G311CB02
5G311CC01
5G311CF04
5G375CA13
5G375DA36
(57)【要約】
【課題】例えば、端子が扁平電線に装着された状態をより確実に維持することが可能となるような、改善された新規な端子付き扁平電線、ワイヤハーネス、および端子付き扁平電線の製造方法を得る。
【解決手段】端子付き扁平電線は、例えば、複数の導体と、当該複数の導体と接して略平坦となる帯状面を含む内面を有した絶縁被覆と、を有した扁平電線と、複数の導体と電気的に接続された接続部と、絶縁被覆を略取り囲むように扁平電線を加締めて当該扁平電線に固定された固定部と、を有した端子と、を備えた、端子付き扁平電線であって、固定部は、絶縁被覆を貫通するかあるいは絶縁被覆の外周面を押圧する突起を有し、扁平電線の、固定部が設けられた位置における第一方向と交差した断面における、内面によって囲まれる領域の第一断面積に対する複数の導体の第二断面積の比である充填率が、90[%]以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ第一方向に延びるとともに前記第一方向と交差した第二方向に並べられた複数の導体と、当該複数の導体を取り囲むとともに前記第一方向に延びた絶縁被覆と、を有し、当該絶縁被覆は、前記複数の導体が前記第一方向に直線状に延びるとともに前記第二方向に略平坦に並んだ状態で当該複数の導体と接して略平坦となる帯状面を含む内面を有した、扁平電線と、
前記複数の導体と電気的に接続された接続部と、前記絶縁被覆を略取り囲むかあるいは挟むように前記扁平電線を加締めて当該扁平電線に固定された固定部と、を有した端子と、
を備えた、端子付き扁平電線であって、
前記固定部は、前記絶縁被覆を貫通するかあるいは前記絶縁被覆の外周面を押圧する突起を有し、
前記扁平電線の、前記固定部が設けられた位置における前記第一方向と交差した断面における、前記内面によって囲まれる領域の第一断面積に対する前記複数の導体の第二断面積の比である充填率が、90[%]以下である、端子付き扁平電線。
【請求項2】
前記導体は撚線である、請求項1に記載の端子付き扁平電線。
【請求項3】
前記固定部は、前記突起として、複数の突起を有した、請求項1または2に記載の端子付き扁平電線。
【請求項4】
前記固定部は、前記突起として、前記絶縁被覆を貫通し、前記第二方向に隣り合った二つの前記導体の間に進入する第一突起を有した、請求項1または2に記載の端子付き扁平電線。
【請求項5】
前記固定部は、前記突起として、前記第二方向に隣り合った二つの前記導体の間に前記絶縁被覆を押し込む第二突起を有した、請求項1または2に記載の端子付き扁平電線。
【請求項6】
前記固定部は、前記突起として、前記絶縁被覆を貫通し、前記導体に食い込み前記接続部の少なくとも一部を構成する第三突起を有した、請求項1または2に記載の端子付き扁平電線。
【請求項7】
前記固定部は、前記突起として、前記絶縁被覆を貫通した突起と、前記絶縁被覆の外周面を押圧する突起と、を有した、請求項1または2に記載の端子付き扁平電線。
【請求項8】
前記固定部は、前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に前記扁平電線を挟む第一部位および第二部位を有し、
前記突起は、前記第一部位および前記第二部位のうち一方に設けられた、請求項1または2に記載の端子付き扁平電線。
【請求項9】
前記固定部は、前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に前記扁平電線を挟む第一部位および第二部位を有するとともに、前記突起として、前記第一部位に設けられた突起と前記第二部位に設けられた突起とを有した、請求項1または2に記載の端子付き扁平電線。
【請求項10】
請求項1または2に記載の端子付き扁平電線を少なくとも一つ備えたワイヤハーネス。
【請求項11】
それぞれ第一方向に延びるとともに前記第一方向と交差した第二方向に並べられた複数の導体と、当該複数の導体を取り囲むとともに前記第一方向に延びた絶縁被覆と、を有し、当該絶縁被覆は、前記複数の導体が前記第一方向に直線状に延びるとともに前記第二方向に略平坦に並んだ状態で当該複数の導体と接して略平坦となる帯状面を含む内面を有した、扁平電線と、
前記複数の導体と電気的に接続された接続部と、前記絶縁被覆を略取り囲むかあるいは挟むように前記扁平電線を加締めて当該扁平電線に固定された固定部と、を有した端子と、
を備え、前記固定部は、前記絶縁被覆を貫通するかあるいは前記絶縁被覆の外周面を押圧する突起を有した、端子付き扁平電線の製造方法であって、
それぞれ前記第一方向に延びるとともに前記第二方向に並べられた前記複数の導体をノズルの第一開口から前記第一方向に送り出しながら、絶縁性を有した合成樹脂材料を流動性を有した状態で前記ノズルの前記第一開口を取り囲む周状の第二開口から吐出させて、前記第一開口から前記第一方向に離れた位置で吐出された前記合成樹脂材料の内面が略平坦な状態で前記複数の導体を取り囲むとともに、前記合成樹脂材料の内面と前記複数の導体間との間に隙間が形成されるようにして前記第一方向に延びるよう前記絶縁被覆を形成する第一工程と、
前記絶縁被覆を固化する第二工程と、
前記固定部を前記絶縁被覆を略取り囲むかあるいは挟む状態で加締めて前記扁平電線に固定する第三工程と、
前記複数の導体と前記接続部とを電気的に接続する第四工程と、
を備え、
前記第三工程では、前記扁平電線の、前記固定部が設けられた位置における前記第一方向と交差した断面における、前記内面によって囲まれる領域の第一断面積に対する前記複数の導体の第二断面積の比である充填率が、90[%]以下となるよう、前記固定部を加締める、端子付き扁平電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き扁平電線、ワイヤハーネス、および端子付き扁平電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、幅方向に並んだ複数の導体が絶縁被覆で取り囲まれた扁平電線が知られている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の扁平電線にあっては、例えば、より柔軟性が高かったり、より耐振動性が高かったり、あるいは熱収縮チューブで被覆された部位における水に対するシール性がより高かったりするような、改善された新規な構成を有した扁平電線が得られれば、有益である。
【0005】
また、そのような扁平電線の導体と電気的に接続された端子が当該扁平電線に取り付けられた端子付き扁平電線にあっては、端子が扁平電線に装着された状態をより確実に維持できることが肝要である。
【0006】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、端子が扁平電線に装着された状態をより確実に維持することが可能となるような、改善された新規な端子付き扁平電線、ワイヤハーネス、および端子付き扁平電線の製造方法を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の端子付き扁平電線は、例えば、それぞれ第一方向に延びるとともに前記第一方向と交差した第二方向に並べられた複数の導体と、当該複数の導体を取り囲むとともに前記第一方向に延びた絶縁被覆と、を有し、当該絶縁被覆は、前記複数の導体が前記第一方向に直線状に延びるとともに前記第二方向に略平坦に並んだ状態で当該複数の導体と接して略平坦となる帯状面を含む内面を有した、扁平電線と、前記複数の導体と電気的に接続された接続部と、前記絶縁被覆を略取り囲むかあるいは挟むように前記扁平電線を加締めて当該扁平電線に固定された固定部と、を有した端子と、を備えた、端子付き扁平電線であって、前記固定部は、前記絶縁被覆を貫通するかあるいは前記絶縁被覆の外周面を押圧する突起を有し、前記扁平電線の、前記固定部が設けられた位置における前記第一方向と交差した断面における、前記内面によって囲まれる領域の第一断面積に対する前記複数の導体の第二断面積の比である充填率が、90[%]以下である。
【0008】
前記端子付き扁平電線では、前記導体は撚線であってもよい。
【0009】
前記端子付き扁平電線では、前記固定部は、前記突起として、複数の突起を有してもよい。
【0010】
前記端子付き扁平電線では、前記固定部は、前記突起として、前記絶縁被覆を貫通し、前記第二方向に隣り合った二つの前記導体の間に進入する第一突起を有してもよい。
【0011】
前記端子付き扁平電線では、前記固定部は、前記突起として、前記第二方向に隣り合った二つの前記導体の間に前記絶縁被覆を押し込む第二突起を有してもよい。
【0012】
前記端子付き扁平電線では、前記固定部は、前記突起として、前記絶縁被覆を貫通し、前記導体に食い込み前記接続部の少なくとも一部を構成する第三突起を有してもよい。
【0013】
前記端子付き扁平電線では、前記固定部は、前記突起として、前記絶縁被覆を貫通した突起と、前記絶縁被覆の外周面を押圧する突起と、を有してもよい。
【0014】
前記端子付き扁平電線では、前記固定部は、前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に前記扁平電線を挟む第一部位および第二部位を有し、前記突起は、前記第一部位および前記第二部位のうち一方に設けられてもよい。
【0015】
前記端子付き扁平電線では、前記固定部は、前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に前記扁平電線を挟む第一部位および第二部位を有するとともに、前記突起として、前記第一部位に設けられた突起と前記第二部位に設けられた突起とを有してもよい。
【0016】
本発明のワイヤハーネスは、例えば、前記端子付き扁平電線を少なくとも一つ備える。
【0017】
また、本発明の端子付き扁平電線の製造方法は、例えば、それぞれ第一方向に延びるとともに前記第一方向と交差した第二方向に並べられた複数の導体と、当該複数の導体を取り囲むとともに前記第一方向に延びた絶縁被覆と、を有し、当該絶縁被覆は、前記複数の導体が前記第一方向に直線状に延びるとともに前記第二方向に略平坦に並んだ状態で当該複数の導体と接して略平坦となる帯状面を含む内面を有した、扁平電線と、前記複数の導体と電気的に接続された接続部と、前記絶縁被覆を略取り囲むかあるいは挟むように前記扁平電線を加締めて当該扁平電線に固定された固定部と、を有した端子と、を備え、前記固定部は、前記絶縁被覆を貫通するかあるいは前記絶縁被覆の外周面を押圧する突起を有した、端子付き扁平電線の製造方法であって、それぞれ前記第一方向に延びるとともに前記第二方向に並べられた前記複数の導体をノズルの第一開口から前記第一方向に送り出しながら、絶縁性を有した合成樹脂材料を流動性を有した状態で前記ノズルの前記第一開口を取り囲む周状の第二開口から吐出させて、前記第一開口から前記第一方向に離れた位置で吐出された前記合成樹脂材料の内面が略平坦な状態で前記複数の導体を取り囲むとともに、前記合成樹脂材料の内面と前記複数の導体間との間に隙間が形成されるようにして前記第一方向に延びるよう前記絶縁被覆を形成する第一工程と、前記絶縁被覆を固化する第二工程と、前記固定部を前記絶縁被覆を略取り囲むかあるいは挟む状態で加締めて前記扁平電線に固定する第三工程と、前記複数の導体と前記接続部とを電気的に接続する第四工程と、を備え、前記第三工程では、前記扁平電線の、前記固定部が設けられた位置における前記第一方向と交差した断面における、前記内面によって囲まれる領域の第一断面積に対する前記複数の導体の第二断面積の比である充填率が、90[%]以下となるよう、前記固定部を加締める。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、例えば、端子が扁平電線に装着された状態をより確実に維持することが可能となるような、改善された新規な端子付き扁平電線、ワイヤハーネス、および端子付き扁平電線の製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態の端子付き扁平電線の例示的かつ模式的な斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態の端子付き扁平電線の製造方法の手順を示す例示的なフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態の端子付き扁平電線の端子付き扁平電線の製造方法においてパイプ押出による絶縁被覆の形成で用いられるノズルの例示的かつ模式的な断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態の変形例の端子付き扁平電線の
図2と同等位置における例示的かつ模式的な断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態の変形例1の端子付き扁平電線の
図3と同等位置における例示的かつ模式的な断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態の変形例2の端子付き扁平電線の
図3と同等位置における例示的かつ模式的な断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態の変形例3の端子付き扁平電線の
図3と同等位置における例示的かつ模式的な断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態の変形例3の端子付き扁平電線の例示的かつ模式的な斜視図である。
【
図11】
図11は、実施形態の変形例4の端子付き扁平電線の
図3と同等位置における例示的かつ模式的な断面図である。
【
図12】
図12は、実施形態の変形例5の端子付き扁平電線に含まれる端子の一部の例示的かつ模式的な平面図である。
【
図13】
図13は、実施形態の変形例6の端子付き扁平電線に含まれる端子の一部の例示的かつ模式的な平面図である。
【
図14】
図14は、実施形態の変形例7の端子付き扁平電線に含まれる端子の一部の例示的かつ模式的な平面図である。
【
図15】
図15は、実施形態の変形例8の端子付き扁平電線に含まれる端子の一部の例示的かつ模式的な平面図である。
【
図16】
図16は、実施形態の端子付き扁平電線が車両に取り付けられた状態を示す例示的かつ模式的な斜視図(透視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の例示的な実施形態および変形例が開示される。以下に示される実施形態および変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態および変形例に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0021】
以下に示される実施形態および変形例は、同様の構成を備えている。よって、それら実施形態および変形例によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0022】
本明細書において、序数は、方向や、部品、部位、スペック、部分的な構造等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではない。
【0023】
各図において、X方向を矢印Xで表し、Y方向を矢印Yで表し、Z方向を矢印Zで表す。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに交差するとともに互いに直交している。なお、X方向は、延び方向あるいは長手方向、Y方向は、幅方向あるいは短手方向、Z方向は、厚さ方向や高さ方向とも称されうる。
【0024】
また、各図は説明を目的とした模式図であって、各図と実物とでスケールや比率等は、必ずしも一致しない。
【0025】
[実施形態]
[端子付き扁平電線]
図1は、端子付き扁平電線100の斜視図である。端子付き扁平電線100は、扁平電線10と、端子20と、を備えている。
【0026】
扁平電線10は、複数の導体12と、絶縁被覆13と、を有している。
【0027】
導体12は、それぞれX方向に延びている。複数の導体12は、略接した状態で、Y方向に並んでいる。X方向は、第一方向の一例であり、Y方向は、第二方向の一例である。
【0028】
導体12は、例えば、アルミニウム系金属や、銅系金属のような、導電性を有した金属材料で作られている。この場合、アルミニウム系金属は、例えば、JIS規格のA1000番台アルミニウム(純アルミニウム)や、アルミニウム合金であり、銅系金属は、例えば、純銅や、銅合金である。なお、導体12は、撚られた複数の素線を含む撚線であってもよい。
【0029】
絶縁被覆13は、扁平なチューブ状の形状を有している。すなわち、絶縁被覆13は、複数の導体12の周囲を取り囲むとともに、X方向に延びている。扁平電線10の端部において、絶縁被覆13は部分的に除去され、当該端部では、複数の導体12が露出している。なお、導体12の露出部は、扁平電線10の端部には限定されず、長手方向の中間部分であってもよい。
【0030】
絶縁被覆13は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・四フッ化エチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの合成樹脂材料や、天然ゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム材料、ゴム弾性を有した合成樹脂材料(エラストマ)など、柔軟性(可撓性)および絶縁性を有した材料で作られる。なお、絶縁被覆13は、複数の層が積層された構成を有してもよい。一例として、内層がポリイミドやポリエチレンテレフタレートのような耐熱性の高い合成樹脂材料で作られ、当該内層を取り囲む外層が上述した合成樹脂材料で作られてもよい。この場合、導体12の発熱による絶縁被覆13(外層)の損傷を抑制することができる。
【0031】
扁平電線10は、薄く、かつ可撓性を有している。したがって、扁平電線10は、種々の場所に配置しやすく、ひいては車両のような扁平電線10が配索される対象物における扁平電線10を含む部品のレイアウトの自由度が向上したり、対象物に対する扁平電線10の配索作業をより容易にあるいはより迅速に行うことができたり、といった利点が得られる。なお、本実施形態では、Y方向に並ぶ1段の複数の導体12を有した扁平電線10が例示されているが、扁平電線10では、Y方向に並ぶ複数の導体12がZ方向に複数段積み重ねられてもよい。
【0032】
端子20は、端子付き扁平電線100の構成部品であって、扁平電線10に固定され、当該扁平電線10の複数の導体12と他の導電部材(不図示)とを電気的に接続するための部品である。端子20は、その全体が、例えば、銅系金属や、アルミニウム系金属のような、導電性を有した金属材料で作られている。
【0033】
端子20は、所謂平形端子のような形状を有しているが、これには限定されず、丸型端子や、ギボシ端子、クワ型端子のような形状を有してもよい。
【0034】
端子20は、例えば、略一定の厚さを有した板状の金属材料に対して、プレスや、折り曲げ等を行うことにより、形成することができる。この場合、端子20の各部は、例えば、略同じ厚さを有しているが、部分的に厚さが異なっていてもよい。
【0035】
また、端子20は、扁平電線10の複数の導体12と電気的に接続される接続部21と、扁平電線10と固定される固定部22と、を有している。
【0036】
このうち、接続部21は、他の導体部材と電気的に接続される第一部位21aと、複数の導体12と電気的に接続された第二部位21bと、を有している。
【0037】
第一部位21aには、他の導体部材と接続するための構造が設けられている。本実施形態では、当該構造の一例として、第一部位21aには貫通孔21a1が設けられているが、第一部位21aは、当該構造には限定されず、種々の形態に構成されうる。
【0038】
第二部位21bと、複数の導体12とは、超音波接合や溶接等による接合部30を介して電気的に接続されるとともに、互いに固定されている。
【0039】
また、固定部22は、絶縁被覆13を略取り囲むかあるいは挟むように扁平電線10を加締めて、当該扁平電線10に固定されており、これにより、端子20が、扁平電線10に固定されている。
【0040】
固定部22は、Z方向に開放された略U字状の形状を有したベース22aと、X方向にずれて設けられそれぞれ幅方向に略沿って延びた二つのアーム22bと、を有している。ベース22aは、底壁22a1と、当該底壁22a1の幅方向の両端部からZ方向に延びた二つの側壁22a2と、を有している。本実施形態では、二つのアーム22bは、ベース22aのY方向およびY方向の反対方向の端部にそれぞれ固定され、絶縁被覆13の外周に沿うとともにY方向に略沿って互いに反対方向に延びている。なお、アーム22bは、扁平電線10への装着前は、例えば、ベース22aからZ方向に延びている。扁平電線10への装着時に、アーム22bが幅広壁13aの外面13cに沿うように、当該アーム22bの基部が折り曲げられる。当該折り曲げ工程により、当該基部は、塑性変形する。このような構成において、ベース22aと二つのアーム22bとが、扁平電線10の絶縁被覆13を挟むかあるいは絶縁被覆13の周囲を略取り囲んだ状態で押圧し(加締め)、固定部22が扁平電線10から脱落するのを防止している、言い換えると、端子20を扁平電線10に固定している。ただし、固定部22は、このような構造には限定されず、種々の形態に構成されうる。ベース22aは、第一部位の一例であり、アーム22bは、第二部位の一例である。
【0041】
[扁平電線]
図2は、
図1のII-II断面図である。
図2に示されるように、絶縁被覆13のY方向と交差した断面は、長円状の扁平な形状を有している。ただし、断面形状は、長円状には限定されず、例えば、長方形状のような、他の形状であってもよい。
【0042】
絶縁被覆13は、二つの幅広壁13aと、二つの端壁13bと、を有している。幅広壁13aおよび端壁13bの厚さは、略同じであり、かつ場所によらず略一定である。
【0043】
幅広壁13aは、それぞれ、複数の導体12に沿ってX方向に延びるとともにY方向にも延びている。幅広壁13aは、Y方向における略一定の幅で、X方向に延びている。二つの幅広壁13aは、Z方向において複数の導体12を挟んでいる。
【0044】
幅広壁13aは、略一定の厚さでX方向およびY方向に延びている。幅広壁13aは、外面13cと、内面13d1と、を有している。内面13d1は、それぞれ、複数の導体12のZ方向の端部またはZ方向の反対方向の端部と、接している。また、幅広壁13aは、互いに隣接した二つの導体12のZ方向の端部の間、またはZ方向の反対方向の端部の間で、略真っ直ぐに掛け渡されている。すなわち、互いに隣り合った二つの導体12と、絶縁被覆13との間には、隙間gが形成される。
【0045】
複数の導体12がX方向に直線状に延びるとともに、Y方向に略平坦に並び、重力以外の外力が作用しない自由状態(以下、これを平置状態と称する)において、幅広壁13aは、略一定の厚さでX方向およびY方向に延び、略平板のようになる。また、当該平置状態において、幅広壁13aの外面13cおよび内面13d1は、いずれも、X方向およびY方向に延び、略平坦になる。すなわち、幅広壁13aおよび内面13d1は、複数の導体12の間の凹部には略食い込んでいない。幅広壁13aの内面13d1は、帯状面の一例である。
【0046】
二つの端壁13bのうちの一つは、Y方向の端部に位置する導体12に沿ってX方向に延び、二つの幅広壁13aを繋いでいる。二つの端壁13bのうちのもう一つは、Y方向の反対方向の端部に位置する導体12に沿ってX方向に延び、二つの幅広壁13aを繋いでいる。二つの端壁13bは、複数の導体12とY方向に並ぶとともに、当該Y方向において複数の導体12を挟んでいる。
【0047】
端壁13bは、導体12に略沿って湾曲した略一定の断面形状で、かつ略一定の厚さで、X方向に延びている。すなわち、端壁13bは、略半筒状の形状を有している。端壁13bの内面13d2は、凹面状かつ半円筒状の形状を有している。なお、
図2の例では、内面13d2は、導体12と接しているが、導体12との間に隙間が形成されてもよい。
【0048】
[端子の固定部]
図3は、
図1のIII-III断面図である。
図3に示されるように、固定部22が設けられた位置において、扁平電線10には、固定部22のベース22aとアーム22bとによって押圧力Fcが印加され、扁平電線10は、Z方向に押し潰される。これにより、アーム22bおよびベース22aが絶縁被覆13に食い込むとともに、絶縁被覆13と導体12との間の接触面積が増大するとともに面圧が高まり、ひいては、端子20が扁平電線10に強固に固定された状態が得られる。
【0049】
また、アーム22bには、絶縁被覆13を貫通する複数の突起22cが設けられている。固定部22の加締めにより、突起22cは、絶縁被覆13を貫通し、当該突起22cの先端部分は、隣り合う二つの導体12の間に進入する。扁平電線10とアーム22bとは、隣り合う二つの導体12の間に突起22cが進入するよう、Y方向に位置合わせされている。突起22cは、第一突起の一例である。
【0050】
このような構成において、幅広壁13aを貫通した当該突起22cが、導体12と接した場合、当該突起22cと導体12との間に摩擦が生じ、その分、端子20は扁平電線10から抜けにくくなる。また、突起22cが導体12と接しなくても、幅広壁13aが部分的に突起22cに沿って隣り合う二つの導体12の間に進出した場合、当該幅広壁13aと導体12との接触面積が増大し、その分、絶縁被覆13と導体12とが互いにずれ難くなる。
【0051】
他方、ベース22aと接した幅広壁13aは、隣り合う二つの導体12の間に進出するため、当該幅広壁13aの内面13dは湾曲し、絶縁被覆13と導体12との間の接触面積が増大するとともに面圧が高まるため、絶縁被覆13と導体12とが互いにずれ難くなる。
【0052】
このような構成においては、押圧力Fcが大きいほど、隙間gの体積(
図3の断面における隙間gの断面積)が減少する。また、隙間gの体積が小さいほど、絶縁被覆13と導体12とがずれ難くなるとともに、固定部22と導体12とがずれ難くなる。したがって、隙間gが小さいことは、固定部22による端子20の扁平電線10に対する固定状態が解除され難いことの指標となりうる。
【0053】
なお、複数の突起22cは、アーム22bに設けられたが、ベース22aに設けられてもよい。ただし、本実施形態のようにアーム22bに設けられた場合には、アーム22bの基部を折り曲げる際に、当該アーム22bのY方向における位置を調整することで、突起22cを隣り合う二つの導体12の間に位置決めしやすくなるという利点が得られる。また、絶縁被覆13を貫通する突起22cがアーム22bに設けられた場合には、突起22cがベース22aに設けられた場合に比べて、作業者あるいはロボットがアーム22bに力を与えることにより突起22cに絶縁被覆13を貫通する力をより容易にあるいはより効率良く与えることができるという利点がある。また、複数の突起22cは、ベース22aおよびアーム22bの双方に設けられてもよい。
【0054】
[端子付き扁平電線の製造手順]
図4は、端子付き扁平電線100の製造の手順を示すフローチャートである。
図4に示されるように、まずは、複数の導体12の周囲にパイプ押出により絶縁被覆13を形成する(S1)。S1は、第一工程の一例である。
【0055】
図5は、パイプ押出を実行するノズル200の断面図である。
図5に示されるように、ノズル200には、X方向に寄せられた平坦な複数の導体12を送り出す送出開口200aが設けられている。また、ノズル200には、送出開口200aを取り囲む周状の吐出開口200bが設けられている。吐出開口200bは、通路200cを介して導入開口200dと連通している。
【0056】
このような構成のノズル200において、送出開口200aは、X方向に延びており、複数の導体12は、送出開口200aから略一定の速度でX方向に送出される。送出開口200aは、第一開口の一例である。
【0057】
他方、絶縁被覆13を構成する合成樹脂材料は、流動性を有した状態で、導入開口200dから通路200c内に導入され、吐出開口200bから吐出される。吐出開口200bは、第二開口の一例である。
【0058】
流動性を有した状態の合成樹脂材料は、送出開口200aおよび吐出開口200bからX方向に離れた位置で複数の導体12の周囲に付着し、不図示の送出機構によって送出開口200aからY方向に移動する複数の導体12と一体となり、当該移動する複数の導体12に引っ張られることにより細くなりながら、当該複数の導体12を取り囲む。これにより、上述した
図1,2に示されるような絶縁被覆13が形成される。
【0059】
ここで、仮に、ノズル200内で、吐出開口200bから吐出される前の流動性を有した状態の合成樹脂材料が、送出開口200aから送出される前の複数の導体12を取り囲む場合、合成樹脂材料は、流路内の圧力により、互いに隣接した二つの導体12間の隙間g(
図2参照)内に進入してしまう。この場合には、幅広壁13aは、複数の導体12の外周に沿った凹凸形状を有し、
図1,2に示されるような、略一定の厚さで略平板状に延びて互いに隣接した導体12間に隙間gを形成するような幅広壁13aや、略平面状に延びた内面13d2は、形成されない。
【0060】
この点、本実施形態では、上述したように、流動性を有した状態の合成樹脂材料は、送出開口200aおよび吐出開口200bからY方向に離れた位置で複数の導体12の周囲に接するため、複数の導体12に接する位置において、合成樹脂材料はある程度の硬さを有するとともに、絶縁被覆13を複数の導体12に押しつける力がそれほど大きくならない。このため、吐出された合成樹脂材料の内面が略平坦な状態で複数の導体12の周囲に配置され、略一定の厚さの幅広壁13aや、略平面状の内面13d2が得られる。そして、このとき、合成樹脂材料の内面と複数の導体12間との間に、隙間gが形成される。このような絶縁被覆13の押出成形は、パイプ押出と称されうる。
【0061】
次に、複数の導体12を取り囲むとともにY方向に延びた絶縁被覆13を、冷却し、固化する(S2、
図4参照)。S2における冷却は、自然冷却であってもよいし、強制冷却であってもよい。なお、絶縁被覆13は、固化された状態にあっても、可撓性および柔軟性を有している。S2は、第二工程の一例である。
【0062】
S2の後、絶縁被覆13が部分的に除去され、複数の導体12が部分的に露出する(S3)。
【0063】
S3の後、固定部22が、絶縁被覆13を略取り囲むかあるいは挟む状態で加締められ、これにより、端子20が扁平電線10に固定される(S4)。S4は、第三工程の一例である。
【0064】
次に、
図1の接合部30(
図1参照)が設けられ、S3において露出した複数の導体12と端子20とが電気的に接続される(S5)。S5は、第四工程の一例である。
【0065】
[端子が扁平電線から脱落しない条件]
上述したパイプ押出によって作成した扁平電線10にあっては、平置状態では、幅広壁13aの内面13d1は略平坦であり、複数の導体12内には殆ど食い込んでいない。これにより、導体12が絶縁被覆13内でより円滑に動くことが可能となり、例えば、扁平電線10をより軽い力で曲げることができるようになって配索の作業性が向上するという利点が得られる。さらに、導体12が、例えば、
図6に示されるような、複数の素線11が撚られた撚線である場合、素線11のそれぞれが絶縁被覆13内でよりフレキシブルに動くことが可能となる。これに伴って、扁平電線10が、固定部22や、熱収縮チューブ(不図示)によって囲まれる部分において、素線11の撚られた状態がほぐれて導体12の断面形状が変形しやすくなり、ひいては導体12と絶縁被覆13との密着性や熱収縮チューブと導体12との間の密着性が向上し、これに伴い、複数の導体12と絶縁被覆13との間、および複数の導体12と熱収縮チューブとの間における水のシール性が向上するという利点が得られる。
【0066】
発明者らは、このような利点が得られるパイプ押出によって作製した扁平電線10に対する実験的な研究により、端子20が扁平電線10からの抜け難さを示す指標、および当該指標において端子20が扁平電線10から脱落しないための条件1を見出した。なお、下記の条件1は、導体12が
図2に示されるような単線の場合および
図6に示されるような撚線の場合の双方に適用可能である。
【0067】
(条件1):固定部22が装着された位置の扁平電線10のZ方向と断面(
図3の断面)における、内面13dによって囲まれる断面積(第一断面積)に対する、複数の導体12の断面積(第二断面積)の比(充填率Rf)の範囲
上述したように、押圧力Fcが大きいほど、隙間gが小さくなり、これに伴い、充填率Rfが高くなる。発明者らの実験的な研究により、充填率Rfが過度に高いと、絶縁被覆13、導体12、あるいは素線11が損傷する場合があることが判明した。また、逆に、充填率Rfが過度に低いと、品質保証すべき使用状態において、固定部22の絶縁被覆13に対する固定状態が解除される場合があることが判明した。このような観点から、充填率Rfは、90[%]以下であるのが好ましく、75[%]以上であるのがより好ましいことが判明した。
ここに、固定部22の絶縁被覆13に対する固定が解除された状態は、接合部30による複数の導体12と端子20との接合がなされていない状態、あるいは複数の導体12と端子20との接合が解除された状態において、品質保証の温度の下限値(例えば、-30[℃])となった場合あるいは品質保証の引抜力Ft(
図1参照)の上限値が印加された場合に、絶縁被覆13の端部13eの固定部22からのX方向に沿った突出長L(
図1参照)が0となった状態と定義する。なお、固定部22の絶縁被覆13に対する固定が解除された状態は、以下では、固定解除状態と称する。また、接合部30による複数の導体12と端子20との接合がなされていない状態、あるいは複数の導体12と端子20との接合が解除された状態は、以下では、非接合状態と称する。非接合状態は、例えば、接合部30と端部13eとの間で全ての導体12を切断することによって得られる。また、引抜力Ftは、非接合状態で扁平電線10と端子20との間に印加した引張力である。なお、扁平電線10に対する引抜力Ftは、絶縁被覆13とともに複数の導体12を把持した状態で印加される。
【0068】
[変形例1]
図7は、実施形態の変形例1の
図3と同等位置における断面図である。
図7に示されるように、本変形例では、ベース22aに、絶縁被覆13の外面13cを押圧する複数の突起22dが設けられている。突起22dは、隣り合った二つの導体12の間の位置とZ方向に重なるように設けられ、固定部22の加締めによって、二つの導体12の間に絶縁被覆13の幅広壁13aを押し込むよう、設けられている。このような構成によれば、絶縁被覆13と導体12との間の接触面積をより大きくしたり面圧をより高くしたりすることができ、絶縁被覆13と導体12とが互いにずれ難くなる。突起22dは、第二突起の一例である。なお、本変形例では、ベース22aおよびアーム22bに、それぞれ異なる種類の突起が設けられている。ベース22aおよびアーム22bに設けられる突起(例えば、突起22c,22d,22e(
図9参照))の組み合わせは、本変形例には限定されず、他の組み合わせであってもよい。また、ベース22aおよびアーム22bのうち少なくとも一方に、異なる種類の突起が混在してもよい。
【0069】
[変形例2]
図8は、実施形態の変形例2の
図3と同等位置における断面図である。
図8に示されるように、本変形例では、ベース22aおよびアーム22bの双方に、複数の突起22dが設けられている。本変形例によっても、変形例1と同様の効果が得られる。なお、本変形例では、ベース22aおよびアーム22bに、同じ種類の突起が設けられている。
【0070】
[変形例3]
図9は、実施形態の変形例3の
図3と同等位置における断面図である。
図9に示されるように、本変形例では、アーム22bに、絶縁被覆13を貫通する複数の突起22eが設けられている。突起22eは、それぞれ導体12に食い込んでいる。本変形例によっても、突起22eによって、端子20が扁平電線10から抜け難くなるという効果が得られる。なお、固定部22と導体12との導通が許容されない場合には当該固定部22は絶縁体によって作られ、固定部22と導体12との導通が許容される場合には当該固定部22は絶縁体で作られなくてもよい。
【0071】
また、本変形例では、固定部22は導体で作られており、当該構成により、導体12と突起22eひいては端子20とは、電気的に接続されている。すなわち、突起22eは、端子20における導体12と電気的に接続する接続部として機能している。突起22dは、第三突起の一例である。
【0072】
図10は、本変形例の端子付き扁平電線100の斜視図である。
図10に示されるように、本変形例では、端子20を導体12と電気的に接続する突起22eが設けられたことにより、接合部30を省略することができ、これに伴い、
図1に示されるような、導体12の露出部や、第二部位21bを省略することができる。この場合、端子20をより小さくより簡素な構成として実現できるとともに、接合部30を構成する工程(
図4のS4)を省略することができる分、端子付き扁平電線100の製造の手間やコストを軽減できるという利点が得られる。ただし、突起22eが設けられた構成にあっても、
図1と同様に、導体12の露出部、接合部30、および第二部位21bが設けられてもよい。この場合、突起22eは、接続部の一部を構成していることになる。
【0073】
[変形例4]
図11は、実施形態の変形例4の
図3と同等位置における断面図である。
図11に示されるように、本変形例では、ベース22aには突起22cが設けられ、アーム22bには突起22eが設けられている。本変形例によっても、上記実施形態や変形例と同様の効果が得られる。また、本変形例では、加締め工程(
図4のS4)において、アーム22bに設けられた突起22eが導体12に食い込む際に、ベース22aに設けられた突起22cが、導体12のY方向またはY方向の反対方向へのずれ(逃げ)を抑制する。これにより、突起22eがより確実に導体12に食い込むことができるという利点が得られる。
【0074】
[変形例5]
図12は、実施形態の変形例5の端子20の固定部22を示す平面図である。
図12を
図1と比較すれば明らかとなるように、本変形例では、アーム22bの形状が上記実施形態とは相違している。すなわち、本変形例では、X方向における幅がより広いアーム22bが、Y方向における両端部からY方向の中央に向けて延びている。そして、アーム22bのそれぞれには、Y方向に並ぶ突起22cの列が、X方向に間隔をあけて2つ設けられている。本変形例によっても、上記実施形態や変形例と同様の効果が得られる。
【0075】
[変形例6]
図13は、実施形態の変形例6の端子20の固定部22を示す平面図である。
図13に示されるように、本変形例の端子20は、変形例5(
図12参照)と同様のアーム22bを有しており、本変形例によっても、上記実施形態や変形例と同様の効果が得られる。ただし、本変形例では、二つのアーム22bの境界、すなわち各アーム22bの先端の形状が、平面視で鉤型の形状を有している。これにより、二つのアーム22bがX方向に互いにずれるのが抑制されている。
【0076】
[変形例7]
図14は、実施形態の変形例7の端子20の固定部22を示す平面図である。
図14に示されるように、本変形例の端子20は、変形例6(
図13参照)と同様のアーム22bを有しており、本変形例によっても、上記実施形態や変形例と同様の効果が得られる。ただし、本変形例では、二つのアーム22bには、それぞれ複数の突起22eが設けられている。アーム22bは、種々の突起22c,22d,22eを設けることができる。また、本変形例では、アーム22bのX方向における幅がより広く、各アーム22bには、Y方向に並ぶ突起22eの列が、X方向に間隔をあけて3つ設けられている。本変形例によれば、突起22eの数がより多い分、端子20が扁平電線10からより一層抜け難くなるという効果が得られる。また、接続部の少なくとも一部を構成する突起22eの数がより多くなる分、当該接続部における電気抵抗をより小さくすることができるという利点が得られる。なお、アーム22bに設けられる突起22eがY方向に並ぶ列の数は、2および3には限定されず、4以上であってもよい。
【0077】
[変形例8]
図15は、実施形態の変形例8の端子20の固定部22を示す平面図である。
図15を
図1と比較すれば明らかとなるように、本変形例の端子20は、上記実施形態と同様に、X方向にずれた二つのアーム22bを有している。ただし、本変形例では、各アーム22bには、それぞれ異なる種類の突起22c,22eが設けられている。本変形例に限らず、アーム22bには、種々の突起22c,22d,22eを、種々のレイアウトで設けることができる。また、各アーム22bには、複数の種類の突起22c,22d,22eが混在してもよい。
【0078】
なお、変形例4~8の端子20のベース22aには、種々の突起22c,22d,22eが種々のレイアウトで設けられうるし、設けられなくてもよい。また、アーム22bの数や、形状、配置等のスペックは、種々に変更して実施することができる。
【0079】
[対象物への配索]
図16は、端子付き扁平電線100が車両300に取り付けられた状態を例示する模式図である。
図16に示されるように、端子付き扁平電線100は、単独あるいは他の電線と組み合わせたワイヤハーネスとして、車両300に組み付けることができる。ワイヤハーネスとしての端子付き扁平電線100または、当該端子付き扁平電線100を含むワイヤハーネスは、例えば、当該ワイヤハーネスに取り付けられたハーネスクリップのような固定具(不図示)あるいは後付けの固定具(不図示)を用いて、車両300に組み付け可能に構成されている。
【0080】
上述したように、端子付き扁平電線100に含まれる扁平電線10は、柔軟性が比較的高いため、例えば、車両300における配索経路の自由度が高まりひいては端子付き扁平電線100や他の部品のレイアウトの自由度が高まったり、あるいは端子付き扁平電線100(ワイヤハーネス)の取付作業をより容易にあるいはより迅速に実行できたり、といった利点が得られる。なお、端子付き扁平電線100が組み付けられる対象物は、車両300には限定されない。
【0081】
以上、説明したように、上記実施形態および変形例によれば、端子20が突起22c,22d,22eを有するとともに、上述した条件1を満たすことにより、端子20が扁平電線10に装着された状態をより確実に維持することが可能となるような、改善された新規な端子付き扁平電線100を得ることができる。
【0082】
その他、加締め時の圧縮による断線が生じないこと(非圧壊)、振動試験時に加締めた部位と加締めていない部位との間で断線が生じないこと(耐振動性)、を採用条件とした。非圧壊については、厚さ方向に90[%]を超える圧縮を行うと、素線断線が発生した。耐振動性については、振動板に端子を取り付けた状態で加速度を重力加速度の約4.5倍(約44[m/s])の振動を加える試験を行い、その結果、素線の直径が0.58[mm]より大きい場合には、300時間未満で素線断線が生じ、素線の直径が0.42[mm]以上0.58[mm]以下の場合には、300時間経過時に素線断線が生じず、素線の直径が0.19[mm]より大きく0.42[mm]未満の場合には、600時間経過時に素線断線が生じず、素線の直径が0.19[mm]以下の場合には、素線断線が認められなかった。
【0083】
以上、本発明の実施形態および変形例が例示されたが、上記実施形態および変形例は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0084】
10…扁平電線
11…素線
12…導体
13…絶縁被覆
13a…幅広壁
13b…端壁
13c…外面
13d…内面
13d1…内面(帯状面)
13d2…内面
13e…端部
20…端子
21…接続部
21a…第一部位
21a1…貫通孔
21b…第二部位
22…固定部
22a…ベース
22a1…底壁
22a2…側壁
22b…アーム
22c…突起(第一突起)
22d…突起(第二突起)
22e…突起(第三突起)
30…接合部
100…端子付き扁平電線
200…ノズル
200a…送出開口(第一開口)
200b…吐出開口(第二開口)
200c…通路
200d…導入開口
300…車両
Fc…押圧力
Ft…引抜力
g…隙間
L…突出長
S1…工程(第一工程)
S2…工程(第二工程)
S3…工程
S4…工程(第三工程)
S5…工程(第四工程)
X…方向(第一方向)
Y…方向(第二方向)
Z…方向