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  • 特開-ドーナツの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093082
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ドーナツの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 13/60 20170101AFI20240702BHJP
   A21D 8/02 20060101ALI20240702BHJP
   A21D 10/00 20060101ALI20240702BHJP
   A21D 13/11 20170101ALI20240702BHJP
【FI】
A21D13/60
A21D8/02
A21D10/00
A21D13/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209225
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100183379
【弁理士】
【氏名又は名称】藤代 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】張 正熙
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB24
4B032DE05
4B032DG02
4B032DK03
4B032DK12
4B032DK15
4B032DK18
4B032DK22
4B032DK54
4B032DK70
4B032DL06
4B032DP01
4B032DP08
4B032DP23
4B032DP47
4B032DP54
4B032DP80
(57)【要約】
【課題】本発明は、湯種を使用しても火膨れが起こり難く、湯種製法特有のもち感を有するイーストドーナツの製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】湯種を使用して得たドウ生地を、特定の粘度を有するバッター生地で被覆し、さらに特定の粒度を有するブレッダーを付着させることにより上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(1)~(6)を含み、下記条件(i)及び(ii)を満たす、イーストドーナツの製造方法。
工程(1):ドウ生地の製造に使用する澱粉質原料の一部を用いて湯種を得る工程
工程(2):前記湯種とドウ生地のための残余の原料とを混捏してドウ生地を得る工程
工程(3):前記ドウ生地を成形する工程
工程(4):前記成形したドウ生地をバッター生地で被覆する工程
工程(5):前記バッター生地で被覆されたドウ生地にブレッダーを付着させる工程
工程(6):前記ブレッダーを付着させたドウ生地をフライする工程
条件(i):工程(4)におけるバッター生地の粘度が、15℃で測定したときに0.3~30Pa・sである
条件(ii):工程(5)におけるブレッダーの粒度が0.5~8.0mmである
【請求項2】
前記澱粉質原料が、小麦粉を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(1)において使用する澱粉質原料の量が、ドウ生地の製造に用いる澱粉質原料の全量の5~30質量%である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ブレッダーが、乾燥又は未乾燥ベーカリー食品粉砕物である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯種を用いたイーストドーナツの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イーストドーナツは、一般的には、小麦粉を主体とする穀粉、イースト、食塩、各種の副原料を含む原料粉に穀粉100質量部に対して55~70質量部の水を加えて混捏し、任意にショートニング等の油脂を加えて更に混捏してドウ生地を得、一次発酵、パンチ、分割、成形、ベンチタイム、ホイロ等の工程を経た後にフライして製造される。典型的にはリング状であるが、多種多様な形状のイーストドーナツが知られている。
【0003】
イーストドーナツの製造において、湯種を用いることによりイーストドーナツに強いもっちりとした食感を付与することができる。その反面、湯種を使用したイーストドーナツ生地は伸展性が悪くなり、フライにより火膨れが発生し易くなるという欠点がある。そのような火膨れは、イーストドーナツの外観の美しさを損なうだけでなく、フィリング注入の障害となるといった2次加工性にも悪影響をもたらすなど、商品価値を損なうと共に製造ロスの原因にもなり得る。イーストドーナツ原料の配合を調節して生地に伸展性を持たせるようにして火膨れを改善することができるが、湯種の特徴であるもっちりとした食感が弱くなってしまうことになる。イーストドーナツにおいて、湯種を使用した際のこのような問題を解決しようとする試みはこれまでなされてこなかったのが現状である。
【0004】
イーストドーナツ生地を他の生地で被覆する検討が為されている。特許文献1では、生地に、(1)異なる生地を重ね合わせること、(2)シート状食品を重ね合わせること、(3)ペースト状食品を塗布すること、のいずれか一つ以上の工程を経た後にフライすることを特徴とするフライしたパン類の製造方法が開示されており、見た目の美しさや特徴ある風味等を幅広く有するドーナツ類を製造できることが記載されている。特許文献2では、成形したドーナツ生地を湿り蒸気で加熱した後、バッターで被覆し、フライすることを特徴とするドーナツの製造方法が開示されており、高温の加熱什器で保存しても、しっとりソフトな食感を長時間持続できるドーナツを製造できることが記載されている。特許文献3では、ドーナツ生地を分割・成型に付する工程と、次いでホイロに付する工程と、次いで焼成または蒸しに付する工程と、次いでインジェクションに付する工程と、次いでバッター付けおよびパン粉付けに付する工程、および、フライに付する工程を含むことを特徴とするイーストドーナツの製造方法が開示されており、電子レンジで温めた後でも、さっくりとした食感を有するドーナツを製造できることが記載されている。
【0005】
イーストドーナツの火膨れを抑制する試みについて検討がなされている。例えば、特許文献4では、イーストドーナツ生地を成型する際に、生地をロール状にした後、捻りを入れて両端を結びつけ、輪型に成型することを特徴とする、イーストドーナツの製造方法が開示されており、フライ処理中の火膨れの程度を抑え、形の均整が取れたイーストドーナツ、及び、フライ処理後の収縮を抑え、ふっくらとした外観のイーストドーナツを製造できることが記載されている。
【0006】
しかしながら、何れの発明においても、湯種を用いてイーストドーナツを製造した際に生じる火膨れについては記載も示唆もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003―250432
【特許文献2】特開2020―43821
【特許文献3】特開2003―325098
【特許文献4】特開2011―004644
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、湯種を使用しても火膨れが起こり難く、湯種製法特有のもち感を有するイーストドーナツの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、湯種を使用して得たドウ生地を、特定の粘度を有するバッター生地で被覆し、さらに特定の粒度を有するブレッダーを付着させることで、湯種を使用しても火膨れが起こり難く、湯種製法特有のもち感を有するイーストドーナツを製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
〔1〕下記工程(1)~(6)を含み、下記条件(i)及び(ii)を満たす、イーストドーナツの製造方法。
工程(1):ドウ生地の製造に使用する澱粉質原料の一部を用いて湯種を得る工程
工程(2):前記湯種とドウ生地のための残余の原料とを混捏してドウ生地を得る工程
工程(3):前記ドウ生地を成形する工程
工程(4):前記成形したドウ生地をバッター生地で被覆する工程
工程(5):前記バッター生地で被覆されたドウ生地にブレッダーを付着させる工程
工程(6):前記ブレッダーを付着させたドウ生地をフライする工程
条件(i):工程(4)におけるバッター生地の粘度が、15℃で測定したときに0.3~30Pa・sである
条件(ii):工程(5)におけるブレッダーの粒度が0.5~8.0mmである
〔2〕前記澱粉質原料が、小麦粉を含む、〔1〕に記載の方法。
〔3〕工程(1)において使用する澱粉質原料の量が、ドウ生地の製造に用いる澱粉質原料の全量の5~30質量%である、〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕前記ブレッダーが、乾燥又は未乾燥ベーカリー食品粉砕物である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、湯種を使用していながら、火膨れが起こり難く良好な外観を有し、歯切れが良く、もち感のある食感を有するイーストドーナツを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】粘度5.8Pa・sのバッター生地を使用して製造した実施例3のイーストドーナツ(左側)及び粘度58Pa・sのバッター生地を使用して製造した比較例1のイーストドーナツ(右側)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、下記工程(1)~(6)を含み、下記条件(i)及び(ii)を満たす、イーストドーナツの製造方法に関する。
工程(1):ドウ生地の製造に使用する澱粉質原料の一部を用いて湯種を得る工程
工程(2):前記湯種とドウ生地のための残余の原料とを混捏してドウ生地を得る工程
工程(3):前記ドウ生地を成形する工程
工程(4):前記成形したドウ生地をバッター生地で被覆する工程
工程(5):前記バッター生地で被覆されたドウ生地にブレッダーを付着させる工程
工程(6):前記ブレッダーを付着させたドウ生地をフライする工程
条件(i):工程(4)におけるバッター生地の粘度が、15℃で測定したときに0.3~30Pa・sである
条件(ii):工程(5)におけるブレッダーの粒度が0.5~8.0mmである
【0014】
(1)湯種を得る工程
本発明のイーストドーナツの製造方法は、ドウ生地の製造に使用する澱粉質原料の一部を用いて湯種を得る工程を含む。
【0015】
湯種とは、ドウ生地の製造に用いる澱粉質原料の一部に熱水を添加して混捏することにより、ないしは、澱粉質原料の一部に水を添加して加熱しながら混捏することにより得られるものである。この際、熱水又は加熱により澱粉質原料に含まれる澱粉が糊化される。
【0016】
湯種の製造に用いる澱粉質原料の量は特に制限されるものではなく、一般的な製パンにおける湯種製法に準じればよく、例えば、ドウ生地の製造に用いる澱粉質原料の全量の5~30質量%であり、好ましくは7~25質量%、より好ましくは9~20質量%である。湯種の製造に用いる熱水や水の量は、求めるイーストドーナツの食感等を考慮して適宜調節することができ、例えば、湯種に用いる澱粉質原料の全量に対して概ね1.0~2.5倍量(取り分けた澱粉質原料が10質量部であれば熱水又は水を10~25質量部)であり、熱水の温度ないしは捏ね上げ温度は80~100℃であればよい。なお、湯種の製造に用いる熱水又は水の量は、イーストドーナツの製造に用いる水の一部として含まれるものとする。
【0017】
前記澱粉質原料は穀粉類及び/又は澱粉類からなる。「穀粉類」とは、普通小麦、デュラム小麦、米、ライ麦、大麦、とうもろこし、そば、大豆、ひえ、あわ、アマランサス等の穀物由来の穀粉;馬鈴薯、里芋、キャッサバあるいは甘藷、山芋等の穀物に準ずる主食となる農作物である塊茎粉あるいは塊根粉などをいう。「澱粉類」とは、穀物、塊茎、塊根、樹幹等及びそれらのワキシー種又はハイアミロース種から分離精製された澱粉(小麦澱粉、米澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉等、及びそれらのワキシー澱粉並びにハイアミロース澱粉)、及び、前記澱粉をエーテル化、エステル化、アセチル化、架橋、酸化処理、熱処理、酵素処理等並びにそれらを組合せて処理を行った変性澱粉などをいう。前記澱粉質原料は、好ましくは小麦粉からなるが、所望する食味や食感あるいは製造における作業性を考慮して小麦粉以外の穀粉類及び/又は澱粉類を使用することができる。そのような場合、澱粉質原料における小麦粉の含有率は50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
【0018】
澱粉質原料と共に湯種に使用してもよい副原料としては、求めるイーストドーナツの種別に応じ、小麦ふすま、米ぬか等の糠類;イーストフード;セルロース、難消化性澱粉等の水不溶性食物繊維;ポリデキストロース、大麦βグルカン、難消化性デキストリン等の水溶性食物繊維;デキストリン、サイクロデキストリン等の澱粉分解物及びその誘導体;ペクチン、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、イヌリン等の増粘多糖類;メチルセルロース類等のセルロース誘導体;ブドウ糖、果糖、乳糖、砂糖、イソマルトースなどの糖類;卵黄、卵白、全卵及びそれらを粉末化したものやその他の卵に由来する成分である卵成分;粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等の乳成分;小麦蛋白、大豆蛋白、緑豆蛋白、えんどう豆蛋白、乳清蛋白、グルテン等のタンパク質類;パーム油、菜種油、綿実油、サフラワー油、大豆油、ヒマワリ油、胡麻油、コーン油、米油、シソ油、オリーブ油、アマニ油、エゴマ油、牛脂、豚脂、鶏脂、魚油、ラード等の固形状あるいは液状の油脂;それら油脂に水素添加、分別処理、粉末処理等を施した加工油脂;ショートニング、マーガリン、バター等の油脂加工食品;グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、カゼインナトリウム等の乳化剤;グラニュー糖、砂糖、麦芽糖、ブドウ糖、果糖等の糖類;糖類又は澱粉分解物を還元した糖アルコール;アスパルテーム等のペプチド;食塩、カルシウム製剤等の無機塩類;ベーキングパウダー、イスパダ、イースト等の膨張剤;グルタミン酸ナトリウム、カツオパウダー、ソース、エキス、醤油、みりん、ケチャップ、食酢、だし汁、ハチミツなどの粉末状ないしは液体状調味料;ビタミンC等のビタミン;酢酸等の有機酸;保存料;香料;色素;香辛料等、通常イーストドーナツの製造に用いられる副原料であれば何れも使用することができる。
【0019】
湯種を得るにあたり、ドウ生地の製造に用いる澱粉質原料の一部を使用するが、ドウ生地の製造に複数種の澱粉質原料を使用する場合には、それぞれの澱粉質原料の一部をドウ生地全体に含まれるのと同じ割合で湯種の製造に用いてもよく、ドウ生地全体と湯種におけるそれぞれの澱粉質原料の割合が異なっていてもよく、複数の澱粉質原料のうちの1種(例えば、小麦粉)のみの一部を湯種の製造に用いてもよい。
【0020】
(2)ドウ生地を得る工程
本発明のイーストドーナツの製造方法は、前記工程で得られた湯種とドウ生地のための残余の原料とを混捏してドウ生地を得る工程を含む。工程(2)において、上記のような通常イーストドーナツの製造に用いられる副原料を、湯種と残余の原料と共に混捏してもよい。イーストは、湯種の副原料に含めてもよいが、湯種を得る工程(1)の過程で熱により発酵力が低下または失活するため、湯種の副原料として含まれているか否かに関わらず、残余の原料に含めるのが好ましい。
【0021】
湯種と残余の原料とを混捏する手段は特に限定されるものではなく、一般にドウ生地を得るために用いられるミキサーを用いて混捏することができる。湯種と残余の原料とが満遍なく分散するように混捏するために、湯種をあらかじめ適当な大きさに分割してもよい。
【0022】
(3)ドウ生地を成形する工程
本発明のイーストドーナツの製造方法は、ドウ生地を成形する工程を含む。
【0023】
ドウ生地を成形する方法は特に限定されるものではなく、例えば、シート状に延展したドウ生地を型抜きする方法、押出機でドウ生地を押出しながら切り出す方法、棒状に伸ばしたドウ生地を長手方向の両端で接着する方法、筒状器具に巻き付ける方法などが挙げられる。
【0024】
(4)ドウ生地をバッター生地で被覆する工程
本発明のイーストドーナツの製造方法は、成形したドウ生地をバッター生地で被覆する工程を含む。
【0025】
バッター生地とは、澱粉質原料と水とを混合して得られる流動性のある生地のことであり、通常製パン原料に使用される各種の副原料や添加物が含まれていてもよい。バッター生地の製造に用いる澱粉質原料は、ドウ生地の製造に用いる澱粉質原料と同様に穀粉類及び/又は澱粉類からなり、ドウ生地の製造に用いる澱粉質原料と同じ種類であっても異なる種類であってもよい。使用できる副原料についてもドウ生地と同様である。使用する水の量は、得られるバッター生地の粘度が下記の範囲となるように適宜調整すればよく、例えば、バッター生地に用いる澱粉質原料の全量に対して概ね1.0~2.5倍量であってもよい。
【0026】
バッター生地の粘度は、No.1、3号ローターを装着したB型粘度計を用い、バッター生地温度15℃で、ローター回転開始から2秒後に測定したピーク値を粘度として、0.3Pa・s以上であり、好ましくは0.4Pa・s以上であり、より好ましくは0.5Pa・s以上であり、更に好ましくは1.0Pa・s以上であり、より更に好ましくは2.0Pa・s以上であり、なお好ましくは3.0Pa・s以上であり、また、30Pa・s以下であり、好ましくは25Pa・s以下であり、より好ましくは20Pa・s以下であり、更に好ましくは13Pa・s以下であり、より更に好ましくは10Pa・s以下であり、なお好ましくは8Pa・s以下である。この範囲の粘度であれば、油ちょうした際の湯種製法によるイーストドーナツの火膨れを効果的に抑制することができる。
【0027】
(5)ブレッダーを付着させる工程
本発明のイーストドーナツの製造方法は、バッター生地で被覆されたドウ生地にブレッダーを付着させる工程を含む。
【0028】
ブレッダーとは、例えば、焼成した食パンを乾燥して粉砕したドライパン粉、水で練ったコーンミールを加熱して圧偏成形した後に熱風乾燥させたコーンフレーク、密閉容器に入れて米を加熱して急速に圧力を抜いて膨化させたポン菓子のような可食性の粒状物のことである。そのようなブレッダーとしては、ドライパン粉、生パン粉、クラッカー粉、クッキー粉、クルトン等の乾燥又は未乾燥ベーカリー食品粉砕物;コーンフレーク、玄米フレーク、オーツ麦フレーク、大麦フレーク、ライ麦フレーク等の穀粉生地又は種子圧偏物;膨化米、膨化大麦、膨化大豆、膨化アマランサス等の膨化種子などが挙げられる。このような穀粉生地又は種子圧偏物、膨化種子等は、適宜粉砕して用いることができる。イーストドーナツの食感との調和を考慮すると、好ましくは乾燥又は未乾燥ベーカリー食品粉砕物であり、より好ましくはドライパン粉、生パン粉、クラッカー粉である。
【0029】
本発明において、ブレッダーの粒度は0.5~8.0mmであり、好ましくは0.55~5.0mmであり、より好ましくは0.6~3.0mmである。ブレッダーの粒度は、篩を通す際の篩の目開きの大きさにより測定することができる。このような範囲であれば、油ちょうした際の湯種製法によるイーストドーナツの火膨れを効果的に抑制することができる。
【0030】
(6)フライする工程
本発明のイーストドーナツの製造方法は、ブレッダーを付着させたドウ生地をフライする工程を含む。
【0031】
フライする方法は、一般的なイーストドーナツをフライする方法であればよく、例えば、フライ油を満たした油浴を150~220℃に予熱し、ブレッダーを付着させたドウ生地を投入し、片面0.5~3分間、反転して0.5~3分間フライする。あるいは0.5~5分間の潜行フライであってもよい。
【実施例0032】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0033】
参考例1 標準的なイーストドーナツ(湯種不使用)
表1に記載の油脂以外の原料をミキサー(エスケーミキサー社製SK-20型ミキサー)に投入し、表2記載の条件で、低速2分、高速5分で混合した後、油脂を加えてさらに低速2分、高速8分混合し、生地を得た。得られた生地をリバースシーターにより厚み10mmになるように圧延し、直径38mmの円形の抜き型を用いて15g/個になるように分割してイーストドーナツ生地を得た。庫内温度-30℃のショックフリーザーに投入し、25分間急速冷凍し、庫内温度-20℃の冷凍庫で1週間保存した。冷凍イーストドーナツ生地をドウコンディショナーに投入して解凍し、生地を38℃、湿度60%の条件で40分間ホイロ(発酵)し、油温190℃に予熱したフライヤーに投入し、1分間潜行フライした後油きりしてイーストドーナツを得た。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
製造例1 本発明のイーストドーナツの製造方法
強力粉80質量部、コーンスターチ20質量部及び水200質量部をミキサー(エスケーミキサー社製SK-20型ミキサー)に投入して混合し、バッター生地(被覆用)を得た。得られたバッター生地を15℃に保持し、No.1号ローターを装着したB型粘度計(リオン社製ビスコメーター VT-0 6)を用い、ローター回転開始から2秒後に測定したピーク値を粘度として、5.8Pa・sであった。
【0037】
表3の配合表に従い、強力粉と湯とをミキサー(エスケーミキサー社製SK-20型ミキサー)に投入し、低速2分、高速3分混捏して湯種を得た。得られた湯種と本捏用原料のうちの油脂以外の原料とを用い、表4記載の条件で低速2分、高速3分混捏した後、油脂を加えてさらに低速2分、高速5分混捏し、塩と追い水を加えて低速0.5分、高速2分混捏してドウ生地を得た。使用する水の合計量は、参考例1のドーナツ生地と同様な伸展性が得られるように調整した。得られたドウ生地をリバースシーターにより厚み10mmになるように圧延し、直径38mmの円形の抜き型を用いて15g/個になるように分割してドウ生地を成形した。
【0038】
深底金属製バットにバッター生地を満たし、成形したドウ生地を順次バッター生地に浸漬し、重ならないように湯切りバットに並べて余分なバッター生地を自重滴下により除去した。
【0039】
浅底金属製バットに粒度0.7mmのドライパン粉(kkドライパン粉焙焼No.3、旭トラストフーズ株式会社)を満たし、バッター生地で被覆したドウ生地を投入し、満遍なくドライパン粉を付着させた。
【0040】
ドライパン粉を付着させたドウ生地を庫内温度-30℃のショックフリーザーに投入し、25分間急速冷凍し、庫内温度-20℃の冷凍庫で1週間保存した。ドウコンディショナーに投入して解凍し、温度38℃、湿度60%の条件で40分間ホイロし、油温190℃に予熱したフライヤーに投入し、1分間潜行フライした後油きりして本発明のイーストドーナツを得た。
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
評価例1 外観及び食感の評価
10名の熟練パネラーにより、得られたイーストドーナツ10個に対して外観(火膨れの有無とその程度)及び食感(クラム(内層)のもち感とクラスト(外層)の歯切れ感)について表5記載の基準に従って評価した。
【0044】
【表5】
【0045】
試験例1 バッター生地の粘度の検討
バッター生地粘度が表6記載の粘度になるように加水量を調節した以外は製造例1に従って実施例1~5及び比較例1のイーストドーナツを製造した。また、製造例1で得たドウ生地をバッター生地で被覆することなく、ドライパン粉を付着させることなくフライして参考例2のイーストドーナツを製造した。これらのイーストドーナツを、参考例1のイーストドーナツと共に評価例1に従って評価した。結果を表6に示す。
【0046】
実施例1及び5では、小さな火膨れが散見され、ややクラストの浮きがあったが、クラムから剥がれるほどに外観が損なわれるものではなく、クラムのもち感とクラストの歯切れ感があり、外観も食感も許容され得るものであった。実施例2では、実施例1と比較すると火膨れの数が少なく、クラムのもち感がやや強く、クラストの歯切れ感がやや良く、食感は良好であった。実施例3では、図1の左側に示されるように、小さい火膨れがわずかに観察されるもののクラムからクラストが浮くようなことはなく、外観は良好であり、クラムのもち感が強くてクラストの歯切れ感が良く、食感は非常に良好であった。実施例4では、火膨れの程度は実施例3よりやや劣る程度であり、クラムのもち感がやや強くてクラストの歯切れ感がやや良く、食感は良好であった。比較例1では、図1の右側に示されるように、やや大きな火膨れがあり、わずかにクラストの剥がれがあり、クラムのもち感がやや弱く、クラストの歯切れ感がやや弱くなった。
【0047】
参考例2では、大きな火膨れが散見され、火膨れ部の大半でクラストがクラムから剥がれ、非常に外観に劣るものであった。また、クラムにもち感はあったが、食感は実施例1ほどではなかった。湯種を用いた従来法の参考例2では、湯種を用いない参考例1と比較して、食感の向上はみられるものの、より多くの火膨れが生じて外観が非常に悪かった。実施例1~5では、参考例2と比較して、火膨れの発生を抑えつつ、より食感が向上していた。
【0048】
【表6】
【0049】
試験例2 ブレッダーの粒度の検討
表7記載のブレッダーを用いた以外は製造例1に従って実施例3、6、7及び比較例2のイーストドーナツを製造した。また、製造例1で得たドウ生地をバッター生地で被覆し、ドライパン粉を付着させることなくフライして参考例3のイーストドーナツを製造した。これらのイーストドーナツを評価例1に従って評価した。結果を表7に示す。
【0050】
実施例6では、外観及び食感共に実施例3と大差なく、良好なイーストドーナツであった。実施例7では、小さな火膨れがやや散見されたが、クラストの浮きはほとんどなく十分に許容し得る外観であり、クラムのもち感は良好であったものの、ブレッダー粒度が大きすぎたためか実施例6よりも硬く歯切れ感が劣るものであったが、食感も許容し得るものであった。
【0051】
比較例2では、食感は許容範囲であったものの、ブレッダー粒度が小さかったために幾分大きな火膨れが生じ、クラストの剥がれも散見され、不適な外観であった。
【0052】
参考例3では、やや油っぽさを感じるが許容し得る食感であったが、大きな火膨れがあり、ところどころクラストの剥がれがあり、不適な外観であった。
【0053】
【表7】

※本試験に用いたブレッダーは以下の通りである。
実施例3:kkドライパン粉焙焼No.3(旭トラストフーズ株式会社)
実施例6:トラスト粗挽き焙焼ドライパン粉(旭トラストフーズ株式会社)
実施例7:クルトンNo.8(旭トラストフーズ株式会社)
比較例2:kkドライパン粉細目(旭トラストフーズ株式会社)
図1