(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093126
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及び液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20240702BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240702BHJP
B05B 1/32 20060101ALI20240702BHJP
B41J 2/14 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
B05B1/32
B41J2/14 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209305
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】寒河江 英利
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 智子
(72)【発明者】
【氏名】中島 牧人
(72)【発明者】
【氏名】金松 俊宏
【テーマコード(参考)】
2C057
4F033
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C057AF44
2C057AG17
2C057AG44
2C057AG76
2C057BA08
2C057BA14
2C057BF04
4F033AA01
4F033BA03
4F033DA05
4F033EA01
4F033FA03
4F033GA02
4F033GA10
4F033HA02
4F033NA01
4F041AA02
4F041AA07
4F041AA12
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA12
4F041BA13
4F041BA17
4F041BA22
4F041BA36
4F041BA48
4F042AA02
4F042AA09
4F042AA22
4F042BA08
4F042BA12
4F042BA19
4F042CB03
4F042CB08
4F042CB26
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】液漏れ不良を低減する。
【解決手段】
液体を吐出する吐出口と、吐出口を開閉する弁体と、弁体を開閉駆動する駆動手段とを備える液体吐出ヘッドであって、弁体は、吐出口に当接することで液体の吐出を封止する弾性部材と、弾性部材を支持する支持部が設けられた芯材とを有し、弾性部材は、少なくとも弾性率が異なる2以上の部位を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出口と、
前記吐出口を開閉する弁体と、前記弁体を開閉駆動する駆動手段とを備える液体吐出ヘッドであって、
前記弁体は、前記吐出口に当接することで前記液体の吐出を封止する弾性部材と、
前記弾性部材を支持する支持部が設けられた芯材とを有し、
前記弾性部材は、少なくとも弾性率が異なる2以上の部位を含むことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記吐出口側に位置する第1の弾性部と、前記芯材側に位置し且つ前記第1の弾性部とは弾性率の異なる第2の弾性部とを有することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第1の弾性部は、前記第2の弾性部よりも弾性率が大きいことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1の弾性部のバネ定数は、前記弾性部材の直径が0.5~1mmで且つ厚みが500μmのときに1~2N/μmであり、
前記第2の弾性部のバネ定数は、前記弾性部材の直径が0.5~1mmで且つ厚みが500μmのときに0.05~1N/μmであることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記第2の弾性部は、前記第1の弾性部よりも弾性率が大きいことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第1の弾性部のバネ定数は、前記弾性部材の直径が0.5~1mmで且つ厚みが500μmのときに0.05~1N/μmであり、
前記第2の弾性部のバネ定数は、前記弾性部材の直径が0.5~1mmで且つ厚みが500μmのときに1~2N/μmであることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記液体は、硬質粒子が含まれていることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記第1の弾性部と前記第2の弾性部とのうちの少なくとも一方は、樹脂またはゴム部材のいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記第1の弾性部は、樹脂またはゴム部材のうちのいずれかであり、
前記第2の弾性部は、バネ部材であることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記支持部は、前記弾性部材を挿入するための凹部を有することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記弾性部材の外周部と、前記凹部の側壁との間は、所定の間隔が設けられていることを特徴とする請求項10に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記弾性部材の外周部の一部と、前記凹部の側壁とが当接することを特徴とする請求項10に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
前記芯材は、前記弾性部材を前記凹部から前記吐出口側への抜けることを防止するための抜け止め部材を有することを特徴とする請求項10に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項14】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドと、制御手段と、前記液体吐出ヘッドに前記液体を供給する液体供給手段と、液体吐出ヘッドを支持する支持手段とを有する液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド及び液体を吐出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置として、液体を吐出する吐出口(ノズル)を開閉弁よって開閉する弁型ノズルタイプの液体を吐出する装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、液体を吐出する吐出口に向けて、移動可能に形成された弁体を押圧することにより液体の吐出を制御する液体吐出ヘッドにおいて、弁体の吐出口に対向する位置に凹部が配置されている液体吐出ヘッドが開示されている。また、当該弁体の先端部は、弾性樹脂で構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開閉弁の先端部に樹脂等の弾性部材を備える構成の場合、弁体の開閉動作を繰り返し行うと先端部の弾性部材が塑性変形することで封止機能が劣化し、その結果として液漏れ不良を生じる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、液漏れ不良を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、液体を吐出する吐出口と、前記吐出口を開閉する弁体と、前記弁体を開閉駆動する駆動手段とを備える液体吐出ヘッドであって、前記弁体は、前記吐出口に当接することで前記液体の吐出を封止する弾性部材と、前記弾性部材を支持する支持部が設けられた芯材とを有し、前記弾性部材は、少なくとも弾性率が異なる2以上の部位を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液漏れ不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの全体断面図。
【
図3】液体吐出ヘッドに設けられたヒータの位置を示す図。
【
図6】本発明に係る第1の実施形態(実施例1)を示した図。
【
図7】弾性部材の機械的特性の評価方法についての説明図。
【
図8】2層の異なる弾性部材を重ねた時における複合の弾性率を説明するための図。
【
図9】弾性部材の厚みを1/2ずつにした場合におけるバネ定数k1とk2とで置き換えた時の合成バネ定数Kgを示す図。
【
図10】比較例1に係る構成において圧縮ひずみを受けた場合について説明するための図。
【
図11】弾性部材を複数の層で構成するときの塑性ひずみを説明するための図。
【
図12】開閉弁の端面の後退を防ぐ効果の違いについて説明するための図。
【
図13】本発明に係る第2の実施形態(実施例2)を示した図。
【
図14】本発明に係る第3の実施形態(実施例3)を示した図。
【
図15】本発明に係る第4の実施形態(実施例4)を示した図。
【
図16】本発明に係る第5の実施形態(実施例5)を示した図。
【
図17】比較例1に係る構成における課題を説明するための図。
【
図19】比較例2に係る構成における課題を説明するための図。
【
図20】本発明に係る第6の実施形態(実施例6)を示した図。
【
図21】本発明に係る構成と比較例2に係る構成との開閉量の違いを示した図。
【
図22】本発明に係る構成と比較例2に係る構成との開閉弁の開閉駆動動作の違いを示す図。
【
図23】本発明に係る第7の実施形態(実施例7)を示した図。
【
図24】開閉弁の位置(変位)とインクの吐出量との関係を示す図。
【
図28】液体吐出装置の自動車に対する配置例を示す斜視図。
【
図29】液体吐出装置の自動車に対する他の配置例を示す斜視図。
【
図30】液体吐出装置により球面に液体を吐出した場合の説明図。
【
図31】実施形態に係る電極の製造方法を実現するための電極の製造装置の一例を示す模式図。
【
図32】実施形態に係る電極合材層の製造方法を実現するための電極の製造装置の他の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る実施形態を、図面を用いて以下に説明する。
【0010】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観説明図である。
図1(a)は、液体吐出ヘッド(液体吐出ヘッドの一例)の全体斜視図、
図1(b)は、同ヘッドの全体側面図である。本実施形態に係る液体吐出ヘッドは、液体としてのインクを吐出する。
【0012】
液体吐出ヘッド10は、第1筐体としての第1ハウジング11aと、第2筐体としての第2ハウジング11bとを備える。第2ハウジング11bは、第1ハウジング11aに積層及び接合される。第1ハウジング11aは、金属などの熱伝導性の高い材質から成り、第2ハウジング11bは、第1ハウジング11aと同材質から成る。以下の説明において2つのハウジングを総称する場合は、ハウジング11と記す。
【0013】
また、第1ハウジング11aは、その正面と背面に、加熱手段としてのヒータ12を備える。ヒータ12は温度制御が可能であり、第1ハウジング11aを加熱する。また、第2ハウジング11bは、その上部に電気信号の通信のためのコネクタ13をえる。
【0014】
図2は、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッド10の全体断面図で、
図1(a)のA-A線矢視断面図である。第1ハウジング11aは、吐出口形成部材としてのノズル板15を保持する。ノズル板15は、液体を吐出する、吐出口としてのノズル14(吐出口の一例)を備える。また、第1ハウジング11aは、液体供給部である流路17を備える。流路17は、供給ポート16側からのインクを、ノズル板15上を経て回収ポート18側へ送る。
【0015】
第2ハウジング11bは、供給ポート16及び回収ポート18を備える。供給ポート16及び回収ポート18は、流路17の一方側及び他方側にそれぞれ接続される。供給ポート16と回収ポート18との間には、複数の液体吐出モジュール30が配置されている。液体吐出モジュール30は、流路17内のインクをノズル14から吐出する。また、液体吐出モジュール30の上部に規制部材20が設けられる。
【0016】
液体吐出モジュール30は、第1ハウジング11aに設けられたノズル14の数に対応しており、本例では1列に並べた8個のノズル14に対応する8個の液体吐出モジュール30を備える構成が示されている。なお、ノズル14及び液体吐出モジュール30の数及び配列は、上記に限るものではない。例えば、ノズル14及び液体吐出モジュール30は、複数ではなく1個であってもよい。また、ノズル14及び液体吐出モジュール30の配列は、1列ではなく、複数列であってもよい。
【0017】
なお、
図2において符号19は、第1ハウジング11aと第2ハウジング11bとの接合部に設けたハウジングシール部材である。本例ではハウジングシール部材としてOリングが用いられており、Oリングは、第1ハウジング11aと第2ハウジング11bとの接合部からのインクの漏れを防いでいる。
【0018】
上記の構成により、供給ポート16は、加圧した状態のインクを外部から取り込み、インクを矢印a1方向へ送り、インクを流路17に供給する。流路17は、供給ポート16からのインクを矢印a2方向へ送る。そして、回収ポート18は、流路17に沿って配置したノズル14から吐出しなかったインクを矢印a3方向へ回収する。
【0019】
液体吐出モジュール30は、開閉弁31と、駆動体(駆動手段の一例)としての圧電素子32を備える。開閉弁31は、弁体の一例であり、弁体あるいはバルブとも呼ぶこともある。そして、開閉弁31は、ノズル14を開閉する。圧電素子32は、開閉弁31を駆動する。また、圧電素子32は、電圧の印加により、
図2の上下方向である長手方向に伸縮作動する。
【0020】
上記の構成において、圧電素子32が作動して開閉弁31が上方向へ動かされた場合は、開閉弁31によって閉じていたノズル14が開いた状態になり、ノズル14からインクを吐出することができる。また、圧電素子32が作動して開閉弁31が下方向へ動かされた場合は、開閉弁31の先端部がノズル14を封止してノズル14が閉じた状態になり、ノズル14からインクが吐出しなくなる。
【0021】
図3は、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッド10の加熱手段との位置関係を示す説明図である。第1ハウジング11aは、ヒータ12を備えている。
図3中の破線で示されるように、ヒータ12は、複数のノズル14を横断するようにしてノズル14の近傍に設けられている。
【0022】
次に、液体吐出モジュール30の詳細を
図4に基づいて説明する。
図4(a)は、単一の液体吐出モジュールの断面図、
図4(b)は、
図4(a)の要部拡大図である。開閉弁31の軸部外周には、高圧インクの漏出防止用にOリング34が上下二段で装着されている。
【0023】
液体吐出モジュール30は、前述の開閉弁31及び圧電素子32と、固定部材33と、保持体35と、プラグ36などを主に備える。
【0024】
保持体35は、その内部に駆動体収容部35aを有し、駆動体収容部35aに圧電素子32を収容して保持する。保持体35は、圧電素子32の長手方向に弾性伸縮可能な金属で構成されている。弾性伸縮可能な金属として、例えばSUS304又はSUS316Lなどのステンレス鋼を使用可能である。保持体35は、長手方向に延びた細長部材が圧電素子32の周囲に複数本配置(例えば90°間隔で4本配置)された枠体であり、圧電素子32は、保持体35を構成する細長部材の相互間を通して保持体35の内側に挿入される。
【0025】
圧電素子32の長手方向は、
図4(a)に示される両矢印方向Aであり、この長手方向Aは、開閉弁31、液体吐出モジュール30及び第2ハウジング11bの長手方向でもある。また、長手方向Aは、開閉弁31の移動方向でもある。
【0026】
保持体35のノズル14側の先端部に開閉弁31が連結されている。また、保持体35のノズル14側に蛇腹部35bが形成されている。蛇腹部35bは、圧電素子32が伸縮作動する際に、保持体35の先端側を圧電素子32と同じように長手方向に伸縮作動させるためのものである。
【0027】
また、保持体35のノズル14側と反対側である基端側に固定部材33が連結されている。別の言い方をすると、固定部材33は、第2ハウジング11bの上端部に収容されている。
【0028】
固定部材33は、径方向に延在する貫通ネジ穴33aを有する。貫通ネジ穴33aに第2ハウジング11b外から位置決めネジ60がねじ込まれている。
【0029】
位置決めネジ60は、第2ハウジング11bの上端部に形成された長手方向の長穴11b1に挿通されている。このため、位置決めネジ60は、第2ハウジング11bの長手方向に所定長さ移動可能である。位置決めネジ60は、固定部材33を長手方向に位置決めした状態にして締め付けられる。
【0030】
図4(a)に示されるように、第2ハウジング11bの上端開口部には、雌ネジ穴11b2が形成されている。この雌ネジ穴11b2に、
図2の規制部材20に当接するプラグ36が螺合されている。プラグ36は、位置決めネジ60によって長手方向に位置決めされた固定部材33の上端部に当接して、固定部材33を最終的に位置固定する。
【0031】
また、第2ハウジング11bの下端部には、圧縮バネ37が配設されている。この圧縮バネ37で、圧電素子32及び圧電素子32を保持した保持体35などが上方に付勢されている。
【0032】
図4(b)に示されるように、開閉弁31は、芯材310と、シール部材である円柱状の弾性部材40(弾性部材の一例)と、を有する。軸状の芯材310は、ステンレスなどの金属材料により形成される。なお、本実施例ではSUS303製を用いているが、本発明はこれに限られないものとする。また、芯材310の先端は、約20度の傾斜を成して先細っていく形状となっている。芯材310のノズル14側の端部には、ノズル14側へ開口する凹部(凹み部ともよぶ)312が設けられている。弾性部材40は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂又はゴムなどの弾性部材により形成され、芯材310の凹部312に嵌合することにより芯材310の先端部(ノズル14側の端部)に取り付けられる。また、弾性部材40の一部は、芯材310の凹部312からノズル14側へ突出している。このため、圧電素子32が作動することにより開閉弁31が
図4(a)における下方向へ動かされると、開閉弁31(芯材310)の先端部に設けられる弾性部材40がノズル板15に押し当てられ、弾性部材40によってノズル14が封止される。反対に、開閉弁31が
図4(a)における上方向へ動かされると、弾性部材40がノズル板15から離間してノズル14が開放される。このように、開閉弁31が、弾性部材40をノズル板15(吐出口形成部材)に押し当てる(当接させる)位置とノズル板15から離間した位置との間で移動することにより、ノズル14(吐出口)が開閉される。
【0033】
<本発明における特徴部について>
次に、本発明における特徴部について説明する。その前に、本発明の特徴部の概要を簡潔に述べる。開閉弁に用いる弾性部材は、弾性部材の素材の弾性率と塑性変形特性である降伏点に着目し、機械的な材料特性が大きく異なる素材を2種以上組み合わせた構成としている。このようにすることで、フィラーが含まれていない(フィラー無し)インクを使用する場合には、長時間運転での開閉弁(弾性部材)の端面の後退を低減し、液漏れを抑制できる封止用の開閉弁を提供するものである。また、フィラー(金属酸化物や雲母等の硬質粒子)入りインクを使用する場合においては、装置に薄膜のゴム材の開閉弁を適用することを可能としている。また、このことにより液漏れを防止すると共に、小ストロークで高周波応答可能な封止用の開閉弁を提供し、発熱の抑制、残留振動等の低減を図る。
【0034】
上記から本発明に係る特徴部は、大きく「フィラーが含まれていない(フィラー無し)インクを使用する場合に適用させる構成」と「硬質粒子であるフィラーが含まれているインクを使用する場合に適用させる構成」との2つに分けられる。ここでは、前者を特徴部1とし、後者を特徴部2とする。まずは、特徴部1について説明する。
【0035】
<比較例1について>
ここで、特徴部1(フィラーが含まれていない(フィラー無し)インクを使用する場合に適用させる構成)について説明する前に、比較対象となる構成(比較例1)を挙げ、その課題について説明することにする。
【0036】
図5に比較例1に係る構成を示す。フィラー無しのインクを使用する場合では、フッ素系樹脂に代表される樹脂製の封止の開閉弁が用いられてきた。これは、V字型の溝に圧入で部材を充填するものである。そして、弾性部材1040が単一のフッ素系樹脂で形成されている。そのため、液体(インク)を吐出するノズル板15のノズル面に形状が馴染みやすいフッ素系樹脂製の開閉弁31は、弾性部材1040の端面である端面1040bの後退によって経時的な液漏れが課題となっていた。なお、この課題が生じる理由の詳細は、
図12において後述する。
【0037】
<本発明における特徴部1について>
次に、本発明における特徴部1について
図6を用いて説明する。
【0038】
<実施例1について>
図6は、本発明に係る第1の実施形態(実施例1)を示した図である。なお、第1の実施形態においては、フィラーが含まれていない(フィラー無し)インクを使用する場合に適用させる構成であるとする。
【0039】
軸状の芯材310の最先端部は、平坦で中央部に円柱状の部材が納まるような凹部312が設けられている。そして、この凹部312の先端側には、円柱状の弾性部材40が設けられている。この弾性部材40は、吐出側に位置する弾性部位である吐出側弾性部401(第1の弾性部の一例)と、芯材310側に位置する弾性部位である芯材側弾性部402(第2の弾性部の一例)とが2層構造として結合されている。また、この2つの弾性部は、互いに弾性率が異なる。そして、吐出側弾性部401の材質としては、フッ素系樹脂PCTFEが用いられている。また、芯材側弾性部402の材質としては、パーフロゴムシート、フッ素ゴムであるFFKM、FFKO等が用いられている。
【0040】
弾性部材40は、直径Φ0.6mmであり、凹部312の穴の内径φは0.7mmで寸法差がある。また、弾性部材40と芯材310の間には、間隙311(所定の間隔の一例)が設けられている。この間隙311は、弾性部材40が軸方向(
図6における上下方向)の圧縮力をうけたときに、幅方向(軸方向に直交する方向、
図6における左右方向)への変形を妨げぬように設けたものである。また、間隙311を設けることで、仮に、ノズル板15が傾斜していた場合に、その傾斜面に弾性部材40が追従し易くなるという効果も得られる。
【0041】
ここで、吐出側弾性部401は、芯材310の端部より約100μm程度突き出している。そして、その突き出しは、ノズル14の穴の封止動作時に、芯材310がノズル板15に接触しない構成となっている。また、吐出側弾性部401の先端の端部(端面401b)には凹み401aが形成されている。この凹み401aは、高粘度のインク吐出時の流路幅を確保して、流体抵抗を下げる機能を果たす。
【0042】
そして、上記したように吐出側弾性部401は、フッ素系樹脂で形成されている。この樹脂はパーフロゴムと比較して弾性率は高いが、その一方で塑性変形が始まる弾性限界(ひずみ量)は小さいという特性を持つ。そこで、この特性を生かして、ノズル板15の微細なうねりや傾斜に対して、形状が倣うように変形させて、少ない押しつぶし量で安定した封止が可能となる。なお、ここでいう「少ない押しつぶし量」とは、後述する
図24において、ゼロ流量となった位置から安全のために開閉弁の圧電素子をさらに前進させて樹脂部を弾性域でつぶして固定することを示すこととする。
【0043】
ここで、吐出側弾性部401のバネ定数は、「弾性部材の直径Φ0.5~1mm、厚み500μm」の条件のときに1~2N/μmと設定している。これは、駆動体で押せる適切なストロークで押し潰した場合に、封止性能を発揮する(液漏れを発生させない)のが1~2μmであったことが実験的にわかった。そして、そのとき得られた1~2N/μmをバネ定数の値として設定している。
【0044】
また、芯材側弾性部402のバネ定数は、「弾性部材の直径Φ0.5~1mm、厚み500μm」の条件のときに0.05~1.0N/μmと設定している。0.05N/μm未満にすると柔らかすぎてしまい、封止する機能が失われる。また、1.0N/μmより大きくすると硬すぎてしまい、ノズル14側からの衝撃力を受けることができなくなる。このような理由から、芯材側においては、バネ定数の値を上記の値に設定している。
【0045】
また、本実施形態における吐出側弾性部401と芯材側弾性部402との厚みの関係は、バネ定数を調整して降伏点を超えないような荷重とし、狙いとしては発生する力の30~50%の低減を踏まえ、次のように設定している。まず、断面の径φ0.5~1.0mmのときにおいて厚み方向の圧縮に対して、吐出側弾性部401はバネ定数:1N/μmとしたとき、厚み:0.45mmとし、一方で、芯材側弾性部402はバネ定数:0.1N/μmとしたとき、厚み:0.05mmとしている。
【0046】
本実施形態においては、樹脂部材およびゴム部材の機械的特性に着目し、開閉弁の端面の過度な塑性変形を抑制するために、封止面の素材よりも低弾性で且つ弾性域の広い素材をバックアップ部材として結合する構成とした。これによって、開閉弁(弾性部材)の端面に過度な圧縮変位が発生した場合においても、バックアップ部材が変位の大部分を吸収することで開閉弁(弾性部材)の端面の後退を防ぐことができる。
【0047】
なお、本実施形態においては、凹部312の穴の内径がストレート状となっており、アンダーカット等がないため、芯材310を組み立てるために分割構造とする必要がないため、組み立て易いという効果を得ることができる。
【0048】
<開閉弁の端面とノズル板との隙間の低減方法の原理について>
図7は、弾性部材の機械的特性の評価方法についての説明図である。
図7(a)および(b)は、比較例に係るフッ素系樹脂製の開閉弁(弾性部材)に塑性ひずみが残ってしまうことを説明するための図である。また、
図7(c)は、ダンベル型試験片を示す図である。
図7の評価方法における機械的特性は、
図7(c)に示すダンベル型試験片を用いてプラスチックの引っ張り試験(プラスチックの規格は、JIS K7161―1準拠、ISO527-1)での結果を参照しているものとする。
【0049】
まず、
図7(a)を用いて説明する。
図7(a)では、樹脂部材の降伏点と弾性限界を示している。そして、この図が示すように、特に注目しているのが弾性域での傾き(ヤング率)と塑性変形が始まる限界のひずみとなる弾性限界である。通常ノズルのインク封止は、弾性限界内での押圧(後述する
図24で示す圧縮ひずみ)で実施される。しかしながら、ハウジングの熱変形やピエゾストロークの熱的ドリフト等によって過大なひずみε1が付加される場合がある。
図7(b)で、これを説明する。この時に生ずる応力は、降伏点を超えて
図7(b)のP1点に達する。その後、開放動作による付加されたひずみがなくなった場合でも弾性傾きに対して平行にひずみは開放されるため、塑性ひずみε0が残ることとなる。このことが、次回使用時の定格位置で隙間となり、そしてインクの液体漏れ(リーク)を発生することとなる。
【0050】
図8は、本発明に係る実施形態のように2層の異なる弾性部材を重ねた時の複合の弾性率を説明するための図である。ここで、説明を簡潔にするためバネ定数に置き換えて説明する。一般的に、2つの異なるバネ定数k1およびk2を直列に連結した時のバネ定数は、図中の式Kで求められることが知られている。なお、K=k1*k2/(k1+k2)である。ここで、
図8(a)に示すように、1つの弾性部材の長さをLとする。そして、直列に連結すると、
図8(b)に示すようにバネの全長は2Lとなっている。本発明では、複合化の有無にかかわらず、弾性部材の厚さ(すなわち、弾性部材の長さ)は固定であり、当該Lは一定である必要ある。また、それぞれバネ定数k1およびk2であるバネを各々L/2ずつ結合して、全長を固定した時の合成のバネ定数は、図中においてKgの式で求められる(
図8(c))。
【0051】
図9は、弾性部材の厚みを1/2ずつにした場合におけるバネ定数k1とk2とで置き換えた時の合成バネ定数Kgを示す図である。これは、バネの長さが1/2でバネ定数が2倍となることを考慮したものである。この図では、実線がk1を示し、点線がk2を示し、破線がKgを示している。そして、バネ定数をk1=1N/μm、k2=2N/μmとしたとき、全長固定での合成バネ定数は、上述した式によって、Kg=1.33N/μmとなる。
【0052】
ここで、バネ定数は、荷重面の断面積変化を考慮しない微小変形ではヤング率と同義に扱える。そのため、例えば、特徴部1の実施例1~5において、吐出側弾性部401の弾性率をE1とし、芯材側弾性部402の弾性率をE2とするとき、E1が2倍の弾性率をもち、E1=2*E2の関係であることを前提として、以下に説明する。
【0053】
図10は、比較例(比較例1)に係る構成において圧縮ひずみを受けた場合について説明するための図である。ここで、
図10に示すように、比較例1に係る構成においては、圧縮ひずみε1を受けたときに塑性ひずみεsが残ることがわかる。すなわち、弾性限界を超えるような負荷をうけて圧縮ひずみε1が生じると、完全にひずみは0にならずに塑性ひずみεsが残ることを示している。
【0054】
図11は、弾性部材を複数の層で構成するときの圧縮応力について説明するための図である。なお、
図11は、実施例1~5における場合を例に挙げて説明している。ここで、
図11(a)に示すように合成ヤング率は、図中の破線であるEgとなり、これによって発生応力がP1からP2に軽減される。また、その時のひずみは、図中の長さa:b=1:2の比率でそれぞれの弾性部材に配分され、塑性ひずみが低減する。このことから、弾性部材を複数の層で構成するときの圧縮応力が軽減されるようになる。次に、
図11(b)を用いて説明する。
図11(b)は、弾性部材を複数の層で構成するときの塑性ひずみを説明するための図である。
図11(b)において、P3はP1に比べて降伏点に近づくため、その分だけ塑性ひずみは低減され、P4については芯材側弾性部の弾性域であり、塑性ひずみは発生していない。そして、塑性ひずみは
図11(b)におけるεsからεs’に軽減されることとなる。これにより、塑性変形を防ぎ、開閉弁(弾性部材)の端面とノズル板との間の隙間を低減することが可能となる。
【0055】
なお、ここでは、バネ定数k1=1N/μm、k2=2N/μmとして説明しているが、これは、あくまでひずみ低減の原理の例として説明している。そして、仮に、弾性部材を構成する弾性部(弾性層)の数の増加等でバネ定数が変わったとしても、基本的な考え方は、上記した原理と変わらないものとする。
【0056】
<開閉弁の端面の後退を防ぐ効果の違いについて>
図12は、開閉弁の端面の後退を防ぐ効果の違いについて示した図である。
【0057】
図12は、うねりのあるノズル板15の微小なうねり15aに対して、フッ素系樹脂製の開閉弁(弾性部材)が形状的に倣う挙動を示している。ここで
図12(a)は、本発明に係る構成を示し、
図12(b)は、比較例1に係る構成を示している。なお、開閉動作の順番としては、
図12(a)においては(a‐1)から(a‐4)の順になり、
図12(b)においては、(b‐1)から(b‐4)の順になる。まずは、比較例1に係る構成(
図12(b)に係る構成)から説明する。また、符号については、開閉動作以外は構成が同じであるため、
図12(a)においては(a‐1)のみ示して、
図12(b)においては、(b‐1)のみ示し、その他は省略するものとする。
【0058】
まず、
図12(b)では、うねり15aをフッ素系樹脂の開閉弁31の端面1040bに転写させるために過大に押し付けて芯材310の端部をギャップdまでノズル板15に近づけた後、離した状態を示している。
図12(b‐1)から(b‐2)では、端面1040bがノズル板15に当接する。そして、
図12(b-3)は、芯材310の位置を初期位置である
図12(b-1)に戻した状態を示す図である。
図12(b‐3)によれば、端面1040bは、変形していることがわかる。この場合だが、仮に、フッ素系樹脂が完全塑性変形した場合には、開閉弁31の突き出し量が
図12(b-2)におけるギャップ量dと同じ量まで減少するので、開閉弁1040の端面1040bの位置が後退してしまう。その後、
図12(b‐4)では、芯材310の端部をギャップdまでノズル板15に近づけることで変形した端面1040bがノズル板15に再び当接する。しかし、開閉弁1040の突き出し量が、ギャップ量dと同じ量まで減少し、開閉弁1040の端面1040bの位置が後退している。そのため、芯材310は、端面1040bをノズル板15に十分に押し付けることができない。
【0059】
ここで、開閉弁(弾性部材)の可塑性は、ノズル板15の(傾きを含めた)形状転写ができるものの、過度に塑性変形が進むと開閉弁(弾性部材)の端面自体の位置が後退する。このとき、ピエゾ駆動のような変位制御の開閉動作においては、経時的に封止機能が劣化し、液漏れ不良を生じてしまう。そして、実稼働状態の液体吐出ヘッドで熱変形から所定のストロークより強く開閉弁(弾性部材)がノズル板15に当接することがあり、このとき上記した変形が残ると、封止動作時に隙間が出来てしまう。
【0060】
それに対して、本発明では
図12(a)に示すようになる。まず、
図12(a‐1)から(a‐2)では、弾性部材40の端面401bがノズル板15に当接する。この時、芯材310の端部がギャップdまでノズル板15に近づけられ、弾性部材40の突き出し量dがとなるまで弾性部材40は圧縮され変形する。そして、
図12(a-3)は、芯材310の位置を初期位置である
図12(a-1)に戻した状態を示す図である。
図12(a‐3)によれば、当該端面401bは変形していることがわかる。しかしながら、芯材側弾性部402が弾性ひずみとして変位を蓄えている。そのため、その分回復して
図12(a‐3)に示すように、開閉弁31の突き出し量が1.4倍の1.4dとなる。すなわち、弾性部材40の端面401bの位置は、0.4d回復する。その後、
図12(a‐4)において、再び芯材310の端部をギャップdまでノズル板15に近づけることで、端面401bが回復した状態で再びノズル板15に当接するようになる。この場合、弾性部材40の突き出し量は1.4dからd(1.0d)になるまで0.4d分だけ圧縮されるので、端面401bをノズル15に十分に押圧することができる。このため、本発明に係る構成においては、比較例1に係る構成と比べたとき、開閉弁31の端面の後退を防ぐ効果があることがわかる。なお、フッ素系樹脂部の圧縮後退によるメンテナンス周期は3か月であるが、本発明に係る構成にすることで当該周期が6か月程度となり、比較例1に係る構成と比べて2倍程度に寿命を延ばすことができた。
【0061】
<特徴部1に係る他の実施例について>
本発明の特徴部1に係る実施例は、上記した実施例1以外に、実施例2~5も挙げられる。これについて、以下に説明していく。
【0062】
<実施例2について>
図13は、本発明に係る第2の実施形態(実施例2)を示した図である。なお、第2の実施形態においても、フィラーが含まれていない(フィラー無し)インクを使用する場合に適用させる構成であるとする。
【0063】
本実施形態においては、第1の実施形態に係る構成とは、吐出側弾性部の外周につば部401cを設けて、芯材310と吐出側弾性部401f(第1の弾性部の一例)との間隙をなくしている点で構成が異なっている。なお、本実施形態におけるその他の構成については、第1の実施形態と同様である。
【0064】
これによって芯材310の先端の凹部312の内部(芯材側弾性部402が位置するところ)までインクが侵入することを抑制することができ、例えば、インクに対する耐性のない素材や弾性体を芯材側弾性部402として用いることが可能となる。
【0065】
なお、本実施形態においても、凹部312の穴の内径がストレート状となっており、アンダーカット等がないため、芯材310を組み立てるために分割構造とする必要がない。
【0066】
<実施例3>
図14は、本発明に係る第3の実施形態(実施例3)を示した図である。なお、第3の実施形態においても、フィラーが含まれていない(フィラー無し)インクを使用する場合に適用させる構成であるとする。
【0067】
本実施形態においては、第2の実施形態に係る構成と同様に吐出側弾性部の外周につば部401cを設けて、芯材310と吐出側弾性部401fとの間隙をなくしている。また、芯材310には、アンダーカットとなるカギ状の抜け止め部310aを設けている。また、芯材側弾性部402は、ゴム部材ではなく、コイルバネであるバネ402a(第2の弾性部の一例)を用いている。すなわち、本実施形態は、弾性部材40について凹部312の芯材側(奥側)に配置された弾性部である芯材側弾性部402をバネ部材とした構成である。なお、本実施形態におけるその他の構成については、第1の実施形態と同様である。
【0068】
ここで、芯材側弾性部402にゴム部材を用いた場合、一般に弾性域は広いものの、ヤング率が大きく下ってしまう。そのため、ゴム部材の弾性部材を複数組み合わせて複合した構成としたときには、合成バネ定数が大きく下がってしまうという課題が生じる。そこで、弾性部材としてバネ部材を用いることで、大きく変形することが可能であり且つ高いヤング率を得ることができるため、多様な封止形態(圧縮量と発生力のバリエーション)を実現することができる。なお、上記した合成バネ定数についての詳細は、
図9で説明したとおりとなる。
【0069】
また、本実施形態においては、吐出側弾性部401fの外周につば部401cを設けて、芯材310と吐出側弾性部401との間隙をなくしているが、わずかにインクが凹部312に侵入してくる可能性がある。その場合に、バネ402aがインクによって腐食するおそれがある。そこで、バネ402aの材質としては、チタン合金、ハステロイ等といった耐食金属を用いることが望ましい。また、バネ402aの材質には、樹脂を用いてもよい。その場合は、フッ素系樹脂が挙げられる。
【0070】
本実施形態では、吐出側弾性部401fとバネ402aとの高精度な連結が困難な場合がある。そのため、
図14に示すように、芯材310側にアンダーカットとなるカギ状の抜け止め310a(抜け止め部材の一例)を設けている。これにより、予備的な圧力(予圧)を与えて、分割線310cを設けることによりそこで結合する構成としている。なお、この結合する方法としては、接着やネジによる締結が挙げられる。
【0071】
本実施形態においては、上記したようにバネ402aとしてコイルバネを用いている。このようにすることで、変形するときの単位体積当たりの弾性エネルギーは他のバネ部品と比較して大きく、エネルギー吸収効率が高い。そのため、バネの取り付けに必要な空間が比較的小さくすることができるという効果が挙げられる。なお、
図13に示すように素材のヤング率をそのまま使うのではないため、バネの形状によって多様な硬さのバネ定数を発現できる。
【0072】
<実施例4>
本発明においては、バネ部材として別の種類を用いることも可能である。
図15は、本発明に係る第4の実施形態(実施例4)を示した図である。なお、第4の実施形態においても、フィラーが含まれていない(フィラー無し)インクを使用する場合に適用させる構成であるとする。
図14における第3の実施形態に係る構成では、芯材側弾性部402をコイルバネ402aとしていたが、本実施形態においては、コイルバネに代わり皿バネであるバネ402b(第2の弾性部の一例)を用いている点で実施形態3に係る構成とは異なっている。なお、本実施形態におけるその他の構成については、第3の実施形態と同様である。
【0073】
本実施形態においては、上記したようにバネ402bとして皿バネを用いている。このようにすることで、例えば、皿バネ同士を組み合せることによって様々なバネ特性が得られ、全体としてのバネ高さも変えることができる等といった様々な用途に展開することできる。
【0074】
また、本実施形態においてもバネ402bの材質には樹脂を用いることができる。なお、その場合には、本実施形態のように皿バネの方がコイルバネに比べて硬いバネが作り易くなる。
【0075】
<実施例5について>
図16は、本発明に係る第5の実施形態(実施例5)を示した図である。なお、第5の実施形態においても、フィラーが含まれていない(フィラー無し)インクを使用する場合に適用させる構成であるとする。
【0076】
本実施形態においては、第1の実施形態と異なり、芯材310にはアンダーカットとなるカギ状の抜け止め部310aが設けている。また、芯材310には、弾性部材40が位置する凹部312の軸方向の中央部付近に、三角山状の抜け止め部310b(抜け止め部材の一例)が形成されている。そして、それに伴い、吐出側弾性部401d(第1の弾性部の一例)にも三角山状の凹凸である抜け止め部401gが形成されている。なお、本実施形態におけるその他の構成については、第1の実施形態と同様である。
【0077】
この三角山状の抜け止め部401gは、弾性部材40が凹部312の内部(芯材310の奥側)に押し込まれるときは弱い抵抗で作用し、逆に、吐出側(ノズル14側)に引き抜かれるときは、その外力に対しては強い抵抗として作用する。
【0078】
また、本実施形態に係る構成の組み立て方法としては、予め芯材側弾性部402を凹部312に配置した状態で先端の開口部から吐出側弾性部401dを圧入して行う。そして、この圧入によって、弾性部材40が径方向に拡張し、抜け止め部401gに充填される。このため、例えば、一体型の芯材の構成で、吐出側弾性部401dと芯材側弾性部402とに予圧をかけた組み立てが可能となる。本実施形態においては、単なる圧入で組み立てできるため、組み立て性に優れた構成となる。
【0079】
<本発明における別の特徴部について>
次に、本発明に係る特徴部2(硬質粒子であるフィラーが含まれているインクを使用する場合に適用させる構成)について説明する。その前に、比較対象となる構成(比較例1,2)を挙げ、その課題について説明することにする。
【0080】
<比較例1について>
再び
図5を用いて、比較例1に係る構成において、今度はフィラー入りインクを使用する場合においての課題を説明する。比較例1に係る構成においては、上記したように弾性部材1040が単一のフッ素系樹脂で形成されている。このフッ素系樹脂製の弾性部材1040の先端にフィラーを挟むとする。ここで、
図17は、比較例1に係る構成におけるフッ素系樹脂の開閉弁がフィラーによる圧痕を受けてインクが漏れる(リークする)状態を示した図である。なお、順番としては、
図17の(a)から(d)の順となる。また、符号については、
図17(a)から
図17(d)までは、基本的に構成が同じであるため、
図17(a)のみ示して、その他は省略するものとする。
【0081】
図17(a)から(b)では、弾性部材1040の先端がノズル板15に当接する。そして、
図17(c)によれば、弾性部材1040の先端には、フィラーによる圧痕によって微細な凹み1040dが多数形成されることがわかる。そのため、
図17(d)では、再び弾性部材1040の先端がノズル板15に当接するが、その微細な凹み1040dの集合体が先端とノズル板15との間に隙間を形成し、これが液漏れ原因となる。なお、比較例1に係る構成は、これだけでなく特徴部1のときでも説明したが、開閉弁(弾性部材)の端面の後退によっても液漏れが生じる。
【0082】
<比較例2について>
次に、別の比較例である比較例2について説明する。
図18に、比較例2に係る構成を示す。
図18に示すように、比較例2は、金属製の芯材1310の表層に圧縮成形でゴムの被膜を形成して、開閉弁1031として用いる構成がなされている。このように、フィラー入りのインクを使用する場合では、パーフロゴムに代表されるゴム製の開閉弁が用いられてきた。そして、ゴム製の開閉弁1031の場合は、フィラーによるダメージを受けにくい。
【0083】
ここで、
図19は、比較例2に係る構成における課題を説明するための図である。なお、
図19(a)から(d)の順番となる。また、符号については、
図19(a)から
図19(d)までは、基本的に構成が同じであるため、
図19(a)のみ示して、その他は省略するものとする。
図19に係る構成では、金属の芯材1310をフッ素系の弾性部材1041で成形被覆する構成としている。
図19(a)から(b)では、弾性部材1041の先端がノズル板15に当接する。そして、
図19(c)によれば、弾性部材1041の先端には、フィラーによる圧痕が形成されない。すなわち、フィラーによる圧痕の形成を防いでいる状況を示したものである。そして、
図19(d)では、再び弾性部材1041の先端がノズル板15に当接するが、比較例1に係る構成にように、当該先端には微細な凹みが形成されていないため、隙間が発生するようなことはない。そのため、比較例1に係る構成に比べて液漏れが生じにくくなる。一方で、このような構成においては、以下の課題が挙げられる。
【0084】
ここで、開閉弁(弾性部材)の先端の端面とノズル板15の面との平行度を厳密に確保することは、組み立ての工程上難しい。そのため、
図19(e)に示すように、弾性部材1041の先端の端面に対して、ノズル板15が傾斜することになるのが一般的である。このような場合には、その傾きからくるノズル板15の高さ変化D1も吸収して封止が可能となるように、当該端面のゴム厚さ(ゴムの厚み)tを十分にとる必要があった。しかしながら、その場合は、弾性部材1041はゴム部材であることから、塑性変形しにくく且つ弾性回復に優れることから、ノズル板15の傾斜面に倣い難い。そのため、開閉弁の開閉駆動には大きなストロークを要するという課題が挙げられる。なお、この課題についての詳細は、
図21を用いて後述することにする。
【0085】
<本発明における特徴部2について>
上記課題に対して、本発明では、以下に述べるように対応している。ここで、本発明における特徴部2について図を用いて説明する。
【0086】
<実施例6について>
図20は、本発明に係る第6の実施形態(実施例6)を示した図である。なお、第6の実施形態においては、硬質粒子であるフィラーが含まれているインク(以下、フィラー入りインクとよぶ)を使用する場合に適用させる構成であるとする。本実施形態においても、液漏れの低減という目的を踏まえて構成された点では特徴部1に係る実施形態と同じであるが、一方で、用いるインクの種類が異なるため、これに伴い上記した実施形態とは液漏れの原因が異なっている。これに伴い構成についても、これまでの実施形態とは異なっている。この詳細について、以下に説明する。
【0087】
ここで、フッ素系樹脂は、優れた弾塑性特性をもつことで知られている。そのため、加圧部材の形状が転写され易い特性を有する。また、フィラー入りインク使う場合、降伏応力の高いゴム部材がノズル14側に配置する必要がある。そこで、本実施形態においては、この特性を活用した構成にしている。
【0088】
まず、本実施形態において、弾性部材40は、上記した第1~第5の実施形態とは異なり、ゴム部材と樹脂部材とを吐出側と芯材側で反対に配置して複合した構成としている。すなわち、
図20(a)に示すように、ノズル板15の当接面側に配置し且つゴム部材からなる吐出側弾性部411(第1の弾性部の一例)と、凹部312の芯材310側(奥側)に樹脂部材からなる芯材側弾性部412(第2の弾性部の一例)を配置している構成としている。また、芯材310にはカギ状の抜け止め部310f(抜け止め部材の一例)が設けられており、この抜け止め部310fは、芯材310の凹部312の最も芯材310に近いところ(最深部)に設けている。
【0089】
図20(b)は、組み立て時に、予め大きなつぶし量(後述する
図24に示すH軸のゼロ点からさらにプラス方向に前進させたとき)で、芯材側弾性部412がノズル板15の面の傾斜にならうように塑性変形させたのち、改めてギャップ調整した場合を示した図である。これは、
図9で合成バネ定数について説明したが、これは特徴部1だけでなく本特徴部である特徴部2にも当てはめることができる。そのため、弾性部材をゴム部材のみで構成するよりも、2つの弾性部材を合成させたものの方が相対的に硬くなるため、弾性部材40が塑性変形を起こし、これを利用している。再び
図20に戻って説明する。そして、傾斜したノズル板15に対して、吐出側弾性部411の先端は略平行となるように変形するため、その傾斜分を考慮せずに最小のストロークで開閉弁の開閉駆動が可能となる。
【0090】
<発明に係る構成と比較例2に係る構成との開閉量の違いについて>
ここで、本実施形態では上記した構成を採用するが、その理由について、
図21を用いて説明する。
図21は、本発明に係る構成と比較例2に係る構成との開閉量の違いを示した図である。また、
図21(a-1)は、本実施形態(実施例6)における弾性部材とノズル板との距離関係を説明するための図である。
図21(a-2)は、本実施形態におけるノズル板が傾斜している状態において開閉弁(弾性部材)を開閉駆動させるときを説明するための図である。一方で、
図21(b-1)は、比較例(比較例2)における弾性部材とノズル板との距離関係を説明するための図である。
図21(b-2)は、比較例におけるノズル板が傾斜している状態において開閉弁(弾性部材)を開閉駆動させるときを説明するための図である。
【0091】
ここで、
図21(a-1)において、本発明に係る構成におけるノズル板15の弾性部材40との当接面と弾性部材40の先端の左端部の点G1を通る平行な線との距離をJとする。なお、この平行線は、弾性部材40の先端の右端部の点G2も通るものとする。そのため、当該点G2とノズル板15の弾性部材40との当接面との距離はJとなる。また、
図21(a-2)において、本発明に係る構成におけるノズル板15の弾性部材40との当接面上の点G3と上記点G1との距離をJ1とする。そして、この距離J1だが、ノズル板15の弾性部材40との当接面上の点G4と上記点G2との距離でもある。
【0092】
一方で、
図21(b-1)において、比較例2に係る構成におけるノズル板15の弾性部材1041との当接面と弾性部材1041の先端の左端部の点Q1を通る平行な線との距離をRとする。そして、比較例2に係る構成におけるノズル板15の弾性部材1041との当接面と弾性部材1041の先端の右端部の点Q2を通る平行な線との距離をDとする。なお、大きさの関係としてD>Rとする。また、
図21(b-2)において、比較例2に係る構成におけるノズル板15の弾性部材1041との当接面上の点Q3と弾性部材1041の先端の左端部の点Q1との距離をR1とする。さらに、比較例2に係る構成におけるノズル板15の弾性部材1041との当接面上の点Q4と開閉弁31の先端の右端部の点Q2との距離をD1とする。なお、大きさの関係としてD1>R1とする。また、線G1-G3、G2-G4、Q1-Q3およびQ2-Q4は、それぞれ開閉弁(弾性部材)の開閉方向(駆動方向)に対して平行となっているものとする。
【0093】
まず、比較例2(ここでは、単に、比較例とよぶ)に係る構成から説明する。
図21(b‐1)に示す比較例は、芯材1310にゴム部材である弾性部材1041を覆う構成である。この比較例に係る構成において、弾性部材のゴムの厚みtを大きくすることも考えられる。ここで、ノズル板15が傾斜する場合には、比較例に係る構成だと、弾性部材1041の先端の左端部と右端部とでノズル板15の弾性部材1041との先端と当接する面との距離は、RとDとで異なる。この場合、開閉弁を駆動させる場合は、
図21(b‐2)に示すように距離R1だけ動かすだけでは足りず、距離R1よりも大きい距離D1も動かす必要がある。このような場合には、装置自体も大型化するうえに、開閉弁の開閉距離を大きく駆動させる必要がある(すなわち、ストロークが大きくなる)。
【0094】
一方で、本発明のように、芯材側を塑性変形しやすい部材にする。このようにすると、当該部材は、塑性変形して弾性部材40の先端が傾斜する。この場合には、
図21(a‐1)に示すように、ノズル板15が傾斜すると、開閉弁31の先端の左端部と右端部とでノズル板15の弾性部材40の先端と当接する面との距離は、ともにJである。そのため、
図21(a‐2)に示すように、開閉弁を駆動させる場合は、距離J1だけ動かせばよい。このことから、駆動を大きく動かす必要がなくなる。このような理由から、上記配置としている。
【0095】
ここで、特徴部2における構成における各弾性部のバネ定数だが、特徴部1とは吐出側と芯材側で逆になっているが、基本的に同様の数値設定としている。すなわち、吐出側弾性部411のバネ定数は、「弾性部材の直径Φ0.5~1mm、厚み500μm」の条件のときに0.05~1.0N/μmと設定している。一方で、芯材側弾性部412のバネ定数は、「弾性部材の直径Φ0.5~1mm、厚み500μm」の条件のときに1~2N/μmと設定している。
【0096】
また、本実施形態における弾性部における厚みについてだが、厚みの大小関係では、芯材側弾性部412の厚みの方が、吐出側弾性部411の厚みよりも大きいものとしている。本実施形態に係る構成は、インクに含まれるフィラーを吐出側弾性部411の表面のゴム層に内包でき且つノズル板15の平面部を接触封止できる機能を持つことが必要となる。具体的にいえば、当該フィラー径の5~10倍程度が必要となる。また、その粒径の大きさは、用途によっても異なってくる。例えば、車塗装用であれば平均粒径が2μm程度であり、電池電極用であれば平均粒径が20μm程度である。そこで、フィラーの平均粒径を踏まえ、強度的をある程度確保する観点から、吐出側弾性部411の厚みは、100~300μm程度としている。また、芯材側弾性部412の厚みは、500~1000μm程度としている。
【0097】
本実施形態においては、構成が簡潔であり部品点数が少なくて済む。また、このことから、軽量化に有利である。そして、液漏れを防止すると共に、小ストロークで高周波応答可能な封止用の開閉弁を提供し、発熱の抑制、残留振動等の低減を図ることができる。
【0098】
図22は、開閉弁の開閉駆動動作の違いについて示した図である。ここで
図22(a)は、本発明に係る構成を示し、
図22(b)は、比較例2に係る構成を示している。なお、開閉動作の順番としては、
図22(a)においては(a‐1)から(a‐4)の順になり、
図22(b)においては、(b‐1)から(b‐4)の順になる。また、符号については、開閉動作以外は構成が同じであるため、
図22(a)においては(a‐1)のみ示して、
図22(b)においては(b‐1)のみ示し、その他は省略するものとする。そして、
図22(a)および(b)のいずれにおいても、弾性部材の右端部とノズル板との距離はD2であるとする。まずは、比較例2に係る構成(
図22(b)に係る構成)から説明する。
【0099】
ここで、
図22(b‐1)から(b‐2)では、ゴム部材である弾性部材1041の左端部がノズル板15に当接する。そして、
図22(b‐3)によれば、弾性部材1041の右端部は、ノズル板15とギャップがある。そして、当該右端部もノズル板15と当接させるためには、開閉弁の開閉の駆動量を右端部に合わせる必要がある。そのため、距離D2を大きくとる必要がある。その後、
図22(b‐4)に示すように、弾性部材1041とノズル板15とが離れると、弾性部材1041はノズル板15の傾斜には倣わないため、弾性部材1041の左端部と右端部とのノズル板15に対する距離は異なっていることがわかる。ここで、比較例2に係る構成においては、ゴム厚さtを大きくとる必要がある。しかしながら、ゴム部材は、フィラー対応の金属芯金製の開閉弁で傾斜するノズル板15の形状に倣うことができない(追従ができない)。そのため、弾性部材1041の先端の両端部でのギャップ量は異なるため、ギャップ量が大きい方に合わせて開閉弁を開閉駆動させる必要があるため、開閉弁の開閉量を大きく駆動させる必要がある。
【0100】
これに対して、本発明では
図22(a)に示すようになる。
図22(a‐1)から(a‐2)では、吐出側弾性部411の左端部がノズル板15に当接する。このとき、凹部312の芯材側(奥側)の芯材側弾性部412(ここではフッ素樹脂)を設けているため、吐出側弾性部411は、傾斜したノズル板15の形状に倣う(追従できる)ようになる。そのため、
図22(a‐3)に示すように、吐出側弾性部411の右端部もノズル板15に当接するようになる。その後、
図22(a‐4)に示すように、吐出側弾性部411とノズル板15とが離れると、吐出側弾性部411の先端がノズル板15に対して傾斜していることがわかる。すなわち、ノズル板15に対する吐出側弾性部411の両端部のギャップ量が略同じ量となる。そのため、開閉弁の開閉に要する距離D2を比較例2に係る構成ほど大きくする必要がない。このようにするため、吐出側弾性部411(フッ素ゴムシート)を極力薄くすることができ、開閉弁の開閉動作時にもノズル板15に対して平行なギャップで開閉弁の面を維持できる。
【0101】
<特徴部2に係る他の実施例について>
本発明の特徴部2に係る実施例は、上記した実施例6以外に、実施例7も挙げられる。これについて、以下に説明していく。
【0102】
<実施例7について>
図23は、本発明に係る第7の実施形態(実施例7)を示した図である。なお、第7の実施形態においても、第6の実施形態と同様にフィラー入りインクを使用する場合に適用させる構成であるとする。本実施形態においては、第6の実施形態に係る構成とは、主に、芯材310に押さえ板310gを設けた点で構成が異なっている。なお、本実施形態におけるその他の構成については、第6の実施形態と同様である。
【0103】
まず、本実施形態では、弾性部材40について、ノズル板15との当接面側にゴム部材からなる吐出側弾性部411s(第1の弾性部の一例)を配置し、凹部312の芯材310側(奥側)に樹脂部材からなる芯材側弾性部412を配置している構成としている。ここで、吐出側弾性部411sは、
図23における斜線が施された部分になり、シート状に形成されている。
【0104】
本発明のように、弾性部材40は複数の弾性体から構成されるが、その複数の弾性体の各々に化学的に安定なフッ素系樹脂やフッ素ゴムを用いた場合には、弾性体界面での接着や接合が困難となる場合がある。そこで、芯材310に押さえ板310gを設ける。そして、押さえ板310gを用いて弾性部材40を芯材310に固定することで、圧縮の予圧をかけた状態で組み立てすることができる。そのため、弾性体界面での接着力が弱い場合でも破損することを防止することができる。そして、押さえ板310gの材質は、金属,樹脂等の材質を用いることができる。また、押さえ板310gを芯材310へ固定する方法としては、接着、ネジによる締結、カシメ、圧着、あるいは熱溶着等から押さえ板310gの材質に適した方法を用いることができる。例えば、押さえ板310gの材質が熱収縮性のフッ素系樹脂の場合は、押さえ板310gを芯材310の周囲を覆うように配置して、その後に加熱する。このようにすることで、押さえ板310gの熱収縮によって、押さえ板310gが芯材310に圧着される。それにより、押さえ板310gは、接着剤やネジを用いることなく芯材310に固定される。
【0105】
ここで、本実施形態においては、以下に述べるようなメリットが挙げられる。例えば、第6の実施形態に係る構成では、吐出側弾性部411のノズル14側の先端の端面にV字の切り込みを入れたような形状の部品を成形加工あるいは機械加工する必要がある。そのため、弾性部材40を作成するには、吐出側弾性部411と芯材側弾性部412との接着等が最終的には必要となる。一方で、一般にフッ素系ゴムのゴム部材や樹脂部材の接着は困難とされており、部材の種類によって特殊な接着手段を必要とする場合がある。
【0106】
これに対して、本実施形態(実施例7)においては、吐出側弾性部411sを汎用のシート材からの製作ができる。また、吐出側弾性部411sはシート状に形成されており、それを押さえ板310gで押さえて固定していることから、吐出側弾性部411sと芯材側弾性部412との接着等が不要である。そのため、芯材側弾性部412の弾性層の劣化に応じて当該弾性層の交換を行うことで使用することが可能となる。
【0107】
<開閉弁の位置(変位)とインクの吐出量との関係について>
図24は、開閉弁の位置(変位)とインクの吐出量との関係を示す図である。まず、開閉弁の駆動体(圧電素子)の作業者は、開閉弁(弾性部材)が非接触状態でインクが吐出する状態から徐々に開閉弁の駆動体を前進(ノズル板に当接)させて、インク流量がゼロ点となる変位位置をさがす。その初期封止位置をH軸のゼロ点として、開閉弁(弾性部材)の弾性域内でさらに開閉弁の駆動体を前進させる。温度変化については、ピエゾのストロークばらつきがあってもインク漏れが生じない位置に移動させ、開閉弁の駆動体を止めねじをつかってヘッドハウジングに固定している。本発明のような形状的倣いを積極的に作用させるには、このH軸ゼロ点から弾性限界を超える域まで過大に前進させ、フッ素系樹脂部を一度塑性変形させてから改めて流量ゼロ点を探すことで、本発明の機能をより効率的に発現することが可能となる。
【0108】
もう少し具体的に作業方法を説明する。
図24(e)中の(a)~(d)は、弾性部材40が同図(a)~(d)の各位置に配置される場合のそれぞれの吐出量を示す。また、
図24(f)が示すように、弾性部材40の先端の変位Hは、矢印方向が
図24(e)におけるプラスであり、当該矢印の反対方向がマイナスであるとする。すなわち、弾性部材40とノズル板15との距離が減少する方向がプラスであり、弾性部材40とノズル板15との距離が増加する方向がマイナスである。ここで、
図24(a)に示される状態においては、弾性部材40の先端部がノズル14から最も離れた位置にある。このとき、インクの吐出量は最大となる。そして、
図24(b)に示されるように、弾性部材40の先端部がノズル14に近づくにつれて、インクの吐出量は減少する。さらに、弾性部材40の先端部がノズル14に対して接近し、
図24(c)に示されるように、弾性部材40がノズル板15に接触すると、インクの吐出量はほぼ0になる。ただし、この状態においてノズル14は完全には封止されていない。ノズル14の封止を完全に行うには、
図24(d)に示されるように、弾性部材40の先端部をノズル板15に押し付けて弾性部材40を圧縮させる必要がある。しかしながら、弾性部材40の先端部をノズル板15に押し付けた際に、上記のように、弾性部材40が凹部312内へ後退すると、弾性部材40の圧縮量を十分に確保できないため、ノズル14を封止できなくなる。そのため、弾性部材40が後退する距離の分だけ開閉弁の基準位置(初期位置)を前進方向へずらし、弾性部材40の圧縮量が十分に得られるようにする必要がある。
【0109】
一方で、開閉弁の基準位置を前進方向へずらすと、圧電素子の伸縮量が一定(例えば、20μm~30μm程度)であることから、ノズル14が開放された状態での開閉弁の位置が変化する。ノズル14が開放された状態においては、所定のインク吐出量が得られるようにするため、弾性部材40とノズル14とのギャップを十分に(例えば5μm以上に)確保する必要がある。そのため、開閉弁の位置調整においては、ノズル開放時の弾性部材40とノズル14とのギャップを十分に確保しつつ、且つノズル14の閉鎖時の弾性部材40の圧縮量を十分に確保するといった管理が必要となる。このようなノズル開放時とノズル14の閉鎖時における開閉弁の位置を両立することは難しく、調整作業に多くの労力と時間を費やすことになる。そこで、本発明に係る上記した実施形態においては、開閉弁の位置調整作業を容易にすべく、弾性部材の弾性機能の低下と弾性体端部の位置変化に起因する課題を改善することを目的としている。
【0110】
<開閉弁の端面の評価について>
図25は、出荷前の機能評価について示した図である。
図25に示す装置は、出荷前の機能評価として弾性部材の端面の後退がないかをチェックする評価機である。具体的には、ニードル型の開閉弁を力センサーへ1μmずつ押し込み(行き)・引き戻し(帰り)、その際のニードル変位-荷重を測定しその関係をグラフ化して評価したものである。そして、弾性部材の端面の後退が起きた場合は圧縮の往路(行き)と復路(帰り)で異なる経路をたどり荷重ゼロ点での横軸位置の違いが塑性ひずみ量となる。また、カシメを行うことで、行きと帰りの差分であるヒステリシスが増大し、弾性率(1次係数)が小さくなる。そして、樹脂単体の弾性率は約1N/μmである。
図25に示す波形は、ナノインデンテーション評価法:ISO14577の波形に類似しており、圧子を挿入するのに類する塑性変形が生じていることを確認している。ここで、
図25に示すグラフ内の曲線が楕円を描くように不規則なかたちをしている。このようになっている理由としては、ゴム部材の弾性特性が時間的応答性を持ち、圧縮変位を与えた場合に発生力が一つに定まらないという挙動を持つためである。
【0111】
<液体を吐出する装置の実施例の構成について>
次に、液体を吐出する装置の実施例の構成について、図を参照して説明する。
【0112】
図26は、液体を吐出する装置100(液体を吐出する装置の一例)の全体概略構成図である。
図26(a)は液体を吐出する装置の側面図、
図26(b)は同装置の平面図である。液体を吐出する装置100は、対象物の一例である液体付与対象500に対向して設置されている。液体を吐出する装置100は、X軸レール101と、このX軸レール101と交差するY軸レール102と、X軸レール101及びY軸レール102と交差するZ軸レール103を備える。特に、本実施形態においては、各レール101,102,103は互いに直交する方向に延在する。
【0113】
Y軸レール102は、X軸レール101がY軸方向に移動可能なようにX軸レール101を保持する。また、X軸レール101は、Z軸レール103がX軸方向に移動可能なようにZ軸レール103を保持する。そして、Z軸レール103は、キャリッジ1(支持手段の一例)がZ軸方向に移動可能なようにキャリッジ1を保持する。
【0114】
液体を吐出する装置100は、キャリッジ1をZ軸レール103に沿ってZ軸方向に動かす第1のZ方向駆動部92と、Z軸レール103をX軸レール101に沿ってX軸方向に動かすX方向駆動部72を備える。また、液体を吐出する装置100は、X軸レール101をY軸レール102に沿ってY軸方向に動かすY方向駆動部82を備える。さらに、液体を吐出する装置100は、キャリッジ1に対してヘッド保持体70をZ軸方向に動かす第2のZ方向駆動部93を備える。
【0115】
前述した液体吐出ヘッドは、液体吐出ヘッド10のノズル14(
図2参照)が液体付与対象500に対向するようにヘッド保持体70に取り付けられる。このように構成された 液体を吐出する装置100は、キャリッジ1をX軸、Y軸及びZ軸の方向に動かしながら、ヘッド保持体70に取り付けられた液体吐出ヘッドから液体付与対象500に向けて液体の一例であるインクを吐出し、液体付与対象500に描画を行う。
【0116】
次に、液体吐出装置の別の実施例であるインクジェットプリンタ201の構成について、図を参照して、以下に説明する。
【0117】
図27に示されるように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ201は、プリントヘッド202と、X-Yテーブル203と、カメラ204と、制御部209と、駆動部211などを備えている。
【0118】
プリントヘッド202は、被塗装物Mの被塗装面に向けてインク(液体)を吐出するインクジェット方式の液体吐出ヘッドである。なお、ここでいう「インク」には「塗料」も含まれるものとする。プリントヘッド202は、複数の弁型ノズルを備え、インクは各弁型ノズルからプリントヘッド202の吐出面とは垂直な方向に吐出される。すなわち、プリントヘッド202のインクの吐出面は、X-Yテーブル203の移動によって形成されるXY平面と平行であり、各弁型ノズルから吐出されるインクドットはX-Y平面に対して垂直な方向に吐出される。また、各弁型ノズルから吐出されるインクの吐出方向はそれぞれ平行に吐出される。各弁型ノズルは、それぞれ所定の色のインクタンクと連結されている。また、インクタンクが加圧装置によって加圧されていることにより、各弁型ノズルと被塗装物Mのプリント対象面との距離が20cm程度であれば、問題なく各弁型ノズルからインクドットをプリント対象面に吐出することができる。
【0119】
X-Yテーブル203は、プリントヘッド202及びカメラ204を互いに直交するX方向及びY方向に移動させる機構を備えている。具体的に、X-Yテーブル203は、プリントヘッド202及び後述のカメラ204を保持するスライダをX方向に移動させるX軸移動機構205と、X軸移動機構205を2つのアームで保持しつつY方向に移動させるY軸移動機構206とを備えている。また、Y軸移動機構206にはシャフト207が 設けられており、このシャフト207をロボットアーム208が保持して駆動することにより、プリントヘッド202を被塗装物Mに対してプリントを行うべき所定位置に自由に配置できる。例えば、被塗装物Mが自動車である場合、ロボットアーム208は、プリントヘッド202を
図28に示されるような自動車の上部あるいは
図29に示されるような 自動車の横位置などに配置できる。なお、ロボットアーム208の動作は、予め制御部209に格納されたプログラムに基づいて制御される。
【0120】
カメラ204は、被塗装物Mのプリント対象面を撮影するデジタルカメラなどの撮像手段である。カメラ204は、X軸移動機構205及びY軸移動機構206によってX方向及びY方向に移動しながら被塗装物Mのプリント対象面の所定の範囲を一定の微小な間隔で撮影する。カメラ204のレンズ及び解像度などの仕様は、プリント対象面の所定の範囲について複数の細分割画像の撮影が可能なように適宜選択される。カメラ204による プリント対象面の複数の細分割画像の撮影は、後述の制御部209によって連続的、かつ、自動的に行われる。
【0121】
制御部209は、カメラ204によって撮影された画像を編集する画像編集ソフトウエアSと予め設定された制御プログラムに基づいてX-Yテーブル203を動作させてプリントヘッド202のプリント動作(インク吐出動作)を制御する。制御部209は、いわゆるマイクロコンピュータによって構成され、各種のプログラム及び撮影済みの画像のデータのほかプリントすべき画像のデータなどを記録保存する記憶装置、プログラムに従って各種の処理を実行する中央処理装置、キーボードやマウスなどの入力装置、必要に応じてDVDプレイヤーなどを備えている。さらに、制御部209は、モニタ210を備えている。モニタ210は、制御部209への入力情報や制御部209による処理結果などを表示する。
【0122】
制御部209は、カメラ204によって撮影された複数の細分割画像データを、画像処理ソフトを用いて画像処理を行い、被塗装物Mの平面でないプリント対象面を平面に投影された合成プリント面として生成する。また、制御部209は、既にプリント対象面にプリントされた画像に対して連続するようにプリントされる描画対象画像を、合成プリント面に重ね、描画対象画像がプリント済み画像の縁端部と連続するように編集を行い、描画対象編集画像を生成する。例えば、
図30(c)に示した描画対象画像であるプリント画像252bについて、隣接するプリント画像252aとの間に非プリント領域253が形成されないようにプリント画像252bを合成プリント面に整合するように編集することにより、描画対象編集画像を生成する。そして、生成された描画対象編集画像に基づいて プリントヘッド202からプリント対象面にインクが吐出されることにより、新しい画像がプリント済みの画像との間に隙間を生じることなくプリントされる。なお、カメラ204による複数の細分割画像の撮影及びプリントヘッド202の各ノズルからのインクの吐出によるプリントの動作は、制御部209によって動作制御された駆動部211によって行われる。
【0123】
図30(a)においては、球状物の液体付与対象251の球面状の表面にインクジェットノズルによって二次元の四角形を形成するような場合に、ノズルヘッド250に搭載された各インクジェットノズルから噴射されるインクの吐出方向が図示されている。
図30(b)においては、ノズルヘッド250に搭載された各インクジェットノズルから噴射されるインクはノズルヘッド250に対して垂直方向に吐出されるので、液体付与対象251の表面にプリントされたプリント画像252aが、周辺が歪んだ形状の四角形となることが図示されている。
【0124】
<電極の製造装置>
本発明に係る実施形態は、電極および電気化学素子の製造装置を含む。以下、電極の製造装置について説明する。
図31は、本実施形態に係る電極の製造装置の一例を示す模式図である。電極の製造装置は、上記した液体を吐出する装置を用いて液体組成物を吐出することで電極材料を有する層を有する電極を製造する装置である。
【0125】
<電極材料を有する層形成手段、電極材料を有する層形成工程>
本実施形態における吐出手段は、上記した液体を吐出する装置である。前記吐出により、対象物上に液体組成物を付与して、液体組成物層を形成することができる。前記対象物(以下、「吐出対象物」と称することがある。)としては、電極材料を有する層を形成する対象であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電極基体(集電体)や活物質層、固体電極材料を有する層などが挙げられる。また、吐出手段及び吐出工程は、吐出対象物に対して電極材料を有する層を形成することが可能であれば、直接液体組成物を吐出することで電極材料を有する層を形成する構成であってもよく、間接的に液体組成物を吐出することで電極材料を有する層を形成する構成であってもよい。
【0126】
<その他の構成、その他の工程>
電極合材層の製造装置におけるその他の構成としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱手段などが挙げられる。電極合材層の製造方法におけるその他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱工程などが挙げられる。
【0127】
<加熱手段、加熱工程>
前記加熱手段は、前記吐出手段により吐出された液体組成物を加熱する手段である。加熱工程は、前記吐出工程で吐出された液体組成物を加熱する工程である。前記加熱により、前記液体組成物層を乾燥させることができる。
【0128】
<直接液体組成物を吐出することで電極材料を有する層を形成する構成>
ここで、電極の製造装置の一例として、電極基体(集電体)上に活物質を含む電極合材層を形成する電極製造装置を説明する。電極製造装置は、吐出対象物を有する印刷基材704上に、液体組成物を付与して液体組成物層を形成する工程を含む吐出工程部110と、液体組成物層を加熱して電極合材層を得る加熱工程を含む加熱工程部130を備える。電極製造装置は、印刷基材704を搬送する搬送部705を備え、搬送部705は、吐出工程部110、加熱工程部130の順に印刷基材704をあらかじめ設定された速度で搬送する。前記活物質層などの吐出対象物を有する印刷基材704の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。吐出工程部110は、印刷基材704上に液体組成物を付与する付与工程を実現する本発明の印刷装置281aと、液体組成物を収容する収容容器281bと、収容容器281bに貯留された液体組成物を印刷装置281aに供給する供給チューブ281cを備える。
【0129】
収容容器281bは液体組成物707を収容し、吐出工程部110は、印刷装置281aから液体組成物707を吐出して、印刷基材704上に液体組成物707を付与して液体組成物層を薄膜状に形成する。なお、収容容器281bは、電極合材層の製造装置と一体化した構成であってもよいが、電極合材層の製造装置から取り外し可能な構成であってもよい。また、電極合材層の製造装置と一体化した収容容器や電極合材層の製造装置から取り外し可能な収容容器に添加するために用いられる容器であってもよい。
【0130】
収容容器281bや供給チューブ281cは、液体組成物707を安定して貯蔵及び供給できるものであれば任意に選択可能である。
【0131】
加熱工程部130は、
図31に示すように、加熱装置703を有し、液体組成物層に残存する溶媒を、加熱装置703により加熱して乾燥させて除去する溶媒除去工程を含む。これにより電極合材層を形成することができる。加熱工程部130は、溶媒除去工程を減圧下で実施してもよい。
【0132】
加熱装置703としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基板加熱、IRヒータ、温風ヒータなどが挙げられ、これらを組み合わせてもよい。また、加熱温度や時間に関しては、液体組成物707に含まれる溶媒の沸点や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
【0133】
図32は、本実施形態に係る電極製造装置(液体を吐出する装置)の他の一例を示す模式図である。液体を吐出する装置100は、ポンプ810と、制御バルブ811、812を制御することにより、液体組成物が吐出ヘッド1、タンク807、チューブ808を循環することが可能である。また、液体を吐出する装置100は、外部タンク813が設けられており、タンク807内の液体組成物が減少した際に、ポンプ810と、制御バルブ811、812、814を制御することにより、外部タンク813からタンク807に液体組成物を供給することも可能である。本実施形態に係る電極製造装置を用いると、吐出対象物の狙ったところに液体組成物を吐出することができる。前記電極合材層は、例えば、電気化学素子の構成の一部として、好適に用いることができる。前記電気化学素子における前記電極合材層以外の構成としては、特に制限はなく、公知のものを適宜選択することができ、例えば、正極、負極、セパレータなどが挙げられる。
【0134】
<本発明に係る弾性部材を構成する弾性部の数について>
上記した実施例では、弾性部材40が弾性率の異なる2つの弾性部から構成される例を挙げて説明した。一方で、本発明はこれに限らず、例えば、弾性部材を3つ以上の弾性部から構成しても適用することができる。
【0135】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0136】
[第1態様]
第1態様は、液体(例えば、インク)を吐出する吐出口(例えば、ノズル14)と、前記吐出口を開閉する弁体(例えば、開閉弁31)と、前記弁体を開閉駆動する駆動手段(例えば、圧電素子32)とを備える液体吐出ヘッド(例えば、液体吐出ヘッド10)であって、前記弁体は、前記吐出口に当接することで前記液体の吐出を封止する弾性部材(例えば、弾性部材40)と、前記弾性部材を支持する支持部が設けられた芯材(例えば、芯材310)とを有し、前記弾性部材は、少なくとも弾性率が異なる2以上の部位を含むことを特徴としている。
【0137】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記弾性部材は、前記吐出口側に位置する第1の弾性部(例えば、吐出側弾性部401、401d、401f、411、411s)と、前記芯材側に位置し且つ前記第1の弾性部とは弾性率の異なる第2の弾性部(例えば、芯材側弾性部402、412、バネ402a、402b)とを有することを特徴としている。
【0138】
[第3態様]
第3態様は、第2態様において、前記第1の弾性部は、前記第2の弾性部よりも弾性率が大きいことを特徴としている。
【0139】
[第4態様]
第4態様は、第3態様において、前記第1の弾性部のバネ定数は、前記弾性部材の直径が0.5~1mmで且つ厚みが500μmのときに1~2K/μmであり、前記第2の弾性部のバネ定数は、前記弾性部材の直径が0.5~1mmで且つ厚みが500μmのときに0.05~1K/μmであることを特徴としている。
【0140】
[第5態様]
第5態様は、第2態様において、前記第2の弾性部は、前記第1の弾性部よりも弾性率が大きいことを特徴としている。
【0141】
[第6態様]
第6態様は、第5態様において、前記第1の弾性部のバネ定数は、前記弾性部材の直径が0.5~1mmで且つ厚みが500μmのときに0.05~1N/μmであり、前記第2の弾性部のバネ定数は、前記弾性部材の直径が0.5~1mmで且つ厚みが500μmのときに1~2N/μmであることを特徴としている。
【0142】
[第7態様]
第7態様は、第5態様または第6態様において、前記液体は、硬質粒子が含まれている(例えば、フィラー入りインク)ことを特徴としている。
【0143】
[第8態様]
第8態様は、第2態様において、前記第1の弾性部と前記第2の弾性部とのうちの少なくとも一方は、樹脂またはゴム部材のいずれかであることを特徴としている。
【0144】
[第9態様]
第9態様は、第2態様において、前記第1の弾性部は、樹脂またはゴム部材のうちのいずれかであり、前記第2の弾性部は、バネ部材であることを特徴としている。
【0145】
[第10態様]
第10態様は、第1態様において、前記支持部は、前記弾性部材を挿入するための凹部(例えば、凹部312)を有することを特徴としている。
【0146】
[第11態様]
第11態様は、第10態様において、前記弾性部材の外周部と、前記凹部の側壁との間は、所定の間隔(例えば、間隙311)が設けられていることを特徴としている。
【0147】
[第12態様]
第12態様は、第10態様において、前記弾性部材の外周部の一部と、前記凹部の側壁とが当接することを特徴としている。
【0148】
[第13態様]
第13態様は、第10態様において、前記芯材は、前記弾性部材を前記凹部から前記吐出口側への抜けることを防止するための抜け止め部材(例えば、抜け止め部310a、310b、310f)を有することを特徴としている。
【0149】
[第14態様]
第14態様は、第1態様乃至第13態様のいずれかの液体吐出ヘッドと、制御手段と、前記液体吐出ヘッドに前記液体を供給する液体供給手段と、液体吐出ヘッドを支持する支持手段(例えば、キャリッジ1)とを有する液体を吐出する装置(例えば、液体を吐出する装置100)であることを特徴としている。
【符号の説明】
【0150】
10 液体吐出ヘッド
14 ノズル(吐出口)
15 ノズル板
15a 微小なうねり
31、1031 開閉弁
32 圧電素子(駆動体)
40、1040、1041 弾性部材(円柱部材)
100 液体を吐出する装置
310、1310芯材
310a、310f 抜け止め部(カギ状)
310b 抜け止め部(三角山状)
310c 分割線
310g 押さえ板
311 間隙
312 凹部
401、401d、401f、411、411s 吐出側弾性部
401a 凹み
401b 端面
401c つば部
401g 抜け止め部
402、412 芯材側弾性部
402a バネ(コイルバネ)
402b バネ(皿バネ)
1040b 端面
1040d 微細な凹み
1041b 端面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0151】