(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093205
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】エッチング方法及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 101B
H01L21/302 101C
H01L21/302 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209422
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】松橋 泰平
(72)【発明者】
【氏名】石田 和香子
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004BA04
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB29
5F004CA03
5F004CA06
5F004DA01
5F004DA03
5F004DA04
5F004DA15
5F004DA16
5F004DA20
5F004DA23
5F004DA24
5F004DA26
5F004DB03
5F004DB07
5F004EA03
5F004EA28
(57)【要約】
【課題】多層膜のエッチングにより形成される凹部の幅の拡大を抑制する技術を提供する。
【解決手段】開示されるエッチング方法は、チャンバ内で基板支持部上に基板を準備する工程(a)を含む。基板は、複数の第1の膜及び該複数の第1の膜と交互に積層された複数の第2の膜を含む多層膜と、多層膜上に設けられたマスクと、を含む。エッチング方法は、複数の第1の膜のうち一つ以上の第1の膜をエッチングする工程(b)を更に含む。エッチング方法は、複数の第2の膜のうち一つ以上の第2の膜をエッチングする工程(c)を更に含む。工程(b)及び工程(c)の各々において、プラズマ生成用のソース高周波電力のパルス及びイオン引き込みのための電気バイアスのパルスが間欠的又は周期的に供給される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)プラズマ処理装置のチャンバ内で基板支持部上に基板を準備する工程であり、該基板は、酸化シリコンから形成された複数の第1の膜及び窒化シリコンから形成されており該複数の第1の膜と交互に積層された複数の第2の膜を含む多層膜と、前記多層膜上に設けられたマスクと、を含み、前記多層膜は、前記マスクの開口の下方に第1の領域及び該第1の領域に隣接する第2の領域を含んでおり、該第1の領域及び該第2の領域の各々は、それらが並ぶ方向に直交する断面において階段形状を有しており、前記マスクの開口の下方で前記第1の領域が画成する第1の凹部の深さは、前記マスクの開口の下方で前記第2の領域が画成する第2の凹部の深さよりも深い、該工程と、
(b)前記チャンバ内で第1の処理ガスからプラズマを生成することにより、前記複数の第1の膜のうち一つ以上の第1の膜をエッチングする工程と、
(c)前記チャンバ内で第2の処理ガスからプラズマを生成することにより、前記複数の第2の膜のうち一つ以上の第2の膜をエッチングする工程と、
を含み、
前記(b)及び前記(c)の各々において、前記チャンバ内でプラズマを生成するためのソース高周波電力のパルス及び前記チャンバ内のプラズマから前記基板にイオンを引き込むための電気バイアスのパルスが間欠的又は周期的に供給される、
エッチング方法。
【請求項2】
前記ソース高周波電力の前記パルスと前記電気バイアスの前記パルスは、同期しており、同時に供給される、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記(b)が行われる期間は、第1の期間及び該第1の期間と交互の第2の期間を含み、
前記(c)が行われる期間は、第3の期間及び該第3の期間と交互の第4の期間を含み、
前記チャンバ内でプラズマを生成するためのソース高周波電力のパルスが、前記第1の期間及び前記第3の期間の各々において供給され、
前記チャンバ内のプラズマから前記基板にイオンを引き込むための電気バイアスのパルスが、前記第2の期間及び第4の期間の各々において供給される、
請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記第2の期間における前記ソース高周波電力のパワーレベルは、前記第1の期間における前記ソース高周波電力のパワーレベルよりも低く、
前記第4の期間における前記ソース高周波電力のパワーレベルは、前記第3の期間における前記ソース高周波電力のパワーレベルよりも低い、
請求項3に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記電気バイアスは、前記第2の期間における前記電気バイアスのレベルよりも低いレベルを前記第1の期間において有するか、前記第1の期間において停止され、且つ、前記第4の期間における前記電気バイアスのレベルよりも低いレベルを前記第3の期間において有するか、前記第3の期間において停止される、
請求項4に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記第1の期間の時間長と前記第2の期間の時間長の合計に占める前記第1の期間の時間長の割合及び前記第3の期間の時間長と前記第4の期間の時間長の合計に占める前記第3の期間の時間長の割合の各々は、65%以上である、請求項3~5の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記第1の処理ガスは、フルオロカーボンガスを含み、
前記第2の処理ガスは、ハイドロフルオロカーボンガスを含む、
請求項1~3の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記(b)及び前記(c)が交互に繰り返される、請求項1~3の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項9】
(a)プラズマ処理装置のチャンバ内で基板支持部上に基板を準備する工程であり、該基板は、複数の第1の膜及び該複数の第1の膜の材料とは異なる材料から形成されており該複数の第1の膜と交互に積層された複数の第2の膜を有する多層膜を含む、該工程と、
(b)第1のサイクルを繰り返す工程であって、該第1のサイクルは、
(b1)第1の期間において、前記複数の第1の膜のうち一つ以上の第1の膜上に第1の堆積物を形成する工程であり、該第1の堆積物は前記チャンバ内で第1の処理ガスから生成されたプラズマから供給される、該工程と、
(b2)第2の期間において前記チャンバ内で前記第1の処理ガスから生成されたプラズマを用いて前記一つ以上の前記第1の膜をエッチングする工程と、
を含む、該工程と、
(c)第2のサイクルを繰り返す工程であって、該第2のサイクルは、
(c1)第3の期間において、前記複数の第2の膜のうち一つ以上の第2の膜上に第2の堆積物を形成する工程であり、該第2の堆積物は前記チャンバ内で第2の処理ガスから生成されたプラズマから供給される、該工程と、
(c2)第4の期間において前記チャンバ内で前記第2の処理ガスから生成されたプラズマを用いて前記一つ以上の前記第2の膜をエッチングする工程であり、前記(b2)において前記基板上に形成された第3の堆積物が、前記一つ以上の第2の膜と共にエッチングされる、該工程と、
を含む、エッチング方法。
【請求項10】
前記チャンバ内でプラズマを生成するためのソース高周波電力のパルスが、前記第1の期間及び前記第3の期間の各々において供給され、
前記チャンバ内のプラズマから前記基板にイオンを引き込むための電気バイアスのパルスが、前記第2の期間及び第4の期間の各々において供給される、
請求項9に記載のエッチング方法。
【請求項11】
前記第2の期間における前記ソース高周波電力のパワーレベルは、前記第1の期間における前記ソース高周波電力のパワーレベルよりも低く、
前記第4の期間における前記ソース高周波電力のパワーレベルは、前記第3の期間における前記ソース高周波電力のパワーレベルよりも低い、
請求項10に記載のエッチング方法。
【請求項12】
前記電気バイアスは、前記第2の期間における前記電気バイアスのレベルよりも低いレベルを前記第1の期間において有するか、前記第1の期間において停止され、且つ、前記第4の期間における前記電気バイアスのレベルよりも低いレベルを前記第3の期間において有するか、前記第3の期間において停止される、
請求項11に記載のエッチング方法。
【請求項13】
前記第1の期間の時間長と前記第2の期間の時間長の合計に占める前記第1の期間の時間長の割合及び前記第3の期間の時間長と前記第4の期間の時間長の合計に占める前記第3の期間の時間長の割合の各々は、65%以上である、請求項10~12の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項14】
前記複数の第1の膜の各々は、酸化シリコンから形成されており、
前記複数の第2の膜の各々は、窒化シリコンから形成されており、
前記第1の処理ガスは、フルオロカーボンガスを含み、
前記第2の処理ガスは、ハイドロフルオロカーボンガスを含む、
請求項9~12の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項15】
前記(b)及び前記(c)が交互に繰り返される、請求項9~12の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項16】
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられた基板支持部と、
前記チャンバ内でガスからプラズマを生成するためのプラズマ生成部と、
前記基板支持部に電気的に結合されたバイアス電源と、
前記プラズマ生成部及び前記バイアス電源を制御するように構成された制御部と、
を備え、
前記制御部は、複数の第1の膜及び該複数の第1の膜の材料とは異なる材料から形成されており該複数の第1の膜と交互に積層された複数の第2の膜を有する多層膜を含む基板が前記基板支持部上に載置されている状態で、
(b)第1のサイクルを繰り返す工程であって、該第1のサイクルは、
(b1)第1の期間において、前記複数の第1の膜のうち一つ以上の第1の膜上に第1の堆積物を形成する工程であり、該第1の堆積物は前記チャンバ内で第1の処理ガスから生成されたプラズマから供給される、該工程と、
(b2)第2の期間において前記第1の処理ガスから生成されたプラズマを用いて前記一つ以上の前記第1の膜をエッチングする工程と、
を含む、該工程と、
(c)第2のサイクルを繰り返す工程であって、該第2のサイクルは、
(c1)第3の期間において、前記複数の第2の膜のうち一つ以上の第2の膜上に第2の堆積物を形成する工程であり、該第2の堆積物は前記チャンバ内で第2の処理ガスから生成されたプラズマから供給される、該工程と、
(c2)第4の期間において前記第2の処理ガスから生成されたプラズマを用いて前記一つ以上の前記第2の膜をエッチングする工程であり、前記(b2)において前記基板上に形成された第3の堆積物が、前記一つ以上の第2の膜と共にエッチングされる、該工程と、
を行うように構成されている、プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、エッチング方法及びプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板に対するプラズマエッチングでは、基板の膜がエッチングされて、凹部を画成する形状が当該膜に形成される。下記の特許文献1は、基板の多層膜をエッチングして凹部を画成する階段形状を形成する方法を開示している。多層膜は、複数のシリコン酸化膜と当該複数のシリコン酸化膜と交互に積層された複数のシリコン窒化膜を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、多層膜のエッチングにより形成される凹部の幅の拡大を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、エッチング方法が提供される。エッチング方法は、プラズマ処理装置のチャンバ内で基板支持部上に基板を準備する工程(a)を含む。基板は、酸化シリコンから形成された複数の第1の膜及び窒化シリコンから形成されており複数の第1の膜と交互に積層された複数の第2の膜を含む多層膜と、多層膜上に設けられたマスクと、を含む。多層膜は、マスクの開口の下方に第1の領域及び該第1の領域に隣接する第2の領域を含んでいる。第1の領域及び第2の領域の各々は、それらが並ぶ方向に直交する断面において階段形状を有している。マスクの開口の下方で第1の領域が画成する第1の凹部の深さは、マスクの開口の下方で第2の領域が画成する第2の凹部の深さよりも深い、エッチング方法は、チャンバ内で第1の処理ガスからプラズマを生成することにより、複数の第1の膜のうち一つ以上の第1の膜をエッチングする工程(b)を更に含む。エッチング方法は、チャンバ内で第2の処理ガスからプラズマを生成することにより、複数の第2の膜のうち一つ以上の第2の膜をエッチングする工程(c)を更に含む。工程(b)及び工程(c)の各々において、チャンバ内でプラズマを生成するためのソース高周波電力のパルス及びチャンバ内のプラズマから基板にイオンを引き込むための電気バイアスのパルスが間欠的又は周期的に供給される。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、多層膜のエッチングにより形成される凹部の幅の拡大を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】プラズマ処理システムの構成例を説明するための図である。
【
図2】容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【
図3】一つの例示的実施形態に係るエッチング方法について説明する。
【
図4】
図4の(a)及び
図4の(b)の各々は、一例の基板を示す断面図である。
【
図5】
図5の(a)及び
図5の(b)の各々は、
図3に示すエッチング方法の対応の工程が適用された一例の基板を示す断面図である。
【
図6】
図6の(a)及び
図6の(b)の各々は、
図3に示すエッチング方法の対応の工程が適用された一例の基板を示す断面図である。
【
図7】
図7の(a)及び
図7の(b)の各々は、
図3に示すエッチング方法の対応の工程が適用された一例の基板を示す断面図である。
【
図8】ソース高周波電力及び電気バイアスの一例のタイミングチャートである。
【
図9】ソース高周波電力及び電気バイアスの一例のタイミングチャートである。
【
図10】
図3に示すエッチング方法の工程STbの例を示す流れ図である。
【
図11】
図11の(a)及び
図11の(b)の各々は、
図3に示すエッチング方法の対応の工程が適用された一例の基板を示す断面図である。
【
図12】
図12の(a)及び
図12の(b)の各々は、
図3に示すエッチング方法の対応の工程が適用された一例の基板を示す断面図である。
【
図13】
図3に示すエッチング方法の工程STcの例を示す流れ図である。
【
図14】
図14の(a)及び
図14の(b)の各々は、
図3に示すエッチング方法の対応の工程が適用された一例の基板を示す断面図である。
【
図15】
図15の(a)及び
図15の(b)の各々は、
図3に示すエッチング方法の対応の工程が適用された一例の基板を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0009】
図1は、プラズマ処理システムの構成例を説明するための図である。一実施形態において、プラズマ処理システムは、プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理システムは、基板処理システムの一例であり、プラズマ処理装置1は、基板処理装置の一例である。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、基板支持部11及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持部11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0010】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP;CapacitivelyCoupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。また、AC(Alternating Current)プラズマ生成部及びDC(DirectCurrent)プラズマ生成部を含む、種々のタイプのプラズマ生成部が用いられてもよい。一実施形態において、ACプラズマ生成部で用いられるAC信号(AC電力)は、100kHz~10GHzの範囲内の周波数を有する。従って、AC信号は、RF(RadioFrequency)信号及びマイクロ波信号を含む。一実施形態において、RF信号は、100kHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。
【0011】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0012】
以下に、プラズマ処理装置1の一例としての容量結合型のプラズマ処理装置の構成例について説明する。
図2は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0013】
容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0014】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0015】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF電源31及び/又はDC電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号及び/又はDC信号が少なくとも1つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数の下部電極として機能してもよい。また、静電電極1111bが下部電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つの下部電極を含む。
【0016】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0017】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0018】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、少なくとも1つの上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0019】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する少なくとも1つの流量変調デバイスを含んでもよい。
【0020】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ生成部12の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0021】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0022】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0023】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0024】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号がパルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0025】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0026】
以下、
図3を参照して、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法について説明する。
図3は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法の流れ図である。以下、プラズマ処理装置1が用いられる場合を例にとって、
図3に示すエッチング方法(以下、「方法MT」という)について説明する。また、方法MTにおける制御部2によるプラズマ処理装置1の各部の制御について説明する。なお、方法MTは、プラズマ処理装置1以外のプラズマ処理装置を用いて行われてもよい。
【0027】
図3に示すように、方法MTは、工程STaで開始する。基板Wが、基板支持部11上に準備される。基板Wは、静電チャック1111上に載置されて、静電チャック1111によって保持される。
【0028】
図4の(a)及び
図4の(b)の各々は、一例の基板を示す断面図である。
図4の(a)は、
図4の(b)に示す基板WのIVA-IVA線に沿ってとった断面を示している。基板Wは、多層膜MLを含んでいる。基板Wは、マスクMKを更に含んでいてもよい。マスクMKは、多層膜ML上に設けられ得る。マスクMKは、多層膜MLをマスクMKに対して選択的にエッチングするために選択された材料から形成される。マスクMKは、アモルファスカーボンのような有機膜から形成されていてもよい。また、基板Wは、下地領域URを更に含んでいてもよい。多層膜MLは、下地領域UR上に設けられ得る。下地領域URは、タングステンから形成されていてもよい。
【0029】
多層膜MLは、複数の第1の膜F1及び複数の第2の膜F2を含んでいる。複数の第1の膜F1及び複数の第2の膜F2は、交互に積層されている。複数の第1の膜F1及び複数の第2の膜F2は、複数の積層膜SLを構成している。複数の積層膜SLは、順に重ねられている。複数の積層膜SLは、第1の膜F1と第2の膜F2を含む。積層膜SLにおいて、第1の膜F1は、第2の膜F2上に設けられている。
【0030】
複数の第1の膜F1の各々は、複数の第2の膜F2の各々の材料とは異なる材料から形成されている。複数の第1の膜F1の各々と複数の第2の膜F2の各々は、互いに異なるシリコン含有材料から形成されていてもよい。複数の第1の膜F1の各々は、酸化シリコンから形成されていてもよく、複数の第2の膜F2の各々は、窒化シリコンから形成されていてもよい。複数の第1の膜F1の各々は、窒化シリコンから形成されていてもよく、複数の第2の膜F2の各々は、酸化シリコンから形成されていてもよい。
【0031】
一実施形態において、多層膜MLは、
図4の(b)に示すように、マスクMKの開口の下方に第1の領域R1及び第2の領域R2を提供している。第2の領域R2は、第1の領域R1に隣接している。第1の領域R1及び第2の領域R2の各々は、
図4の(a)に示すように、それらが並ぶ方向に直交する断面において階段形状を有している。
図4の(b)に示すように、マスクMKの開口の下方で第1の領域R1が画成する第1の凹部C1の深さは、マスクMKの開口の下方で第2の領域R2が画成する第2の凹部C2の深さよりも深い。なお、以下の説明では、第1の領域R1及び第2の領域R2が並ぶ方向をX方向とよぶ。また、多層膜MLの深さ方向及びX方向に直交する方向をY方向とよぶ。
【0032】
以下、
図3、
図4の(a)、及び
図4の(b)と共に、
図5の(a)、
図5の(b)、
図6の(a)、
図6の(b)、
図7の(a)、及び
図7の(b)を参照する。
図5の(a)、
図5の(b)、
図6の(a)、
図6の(b)、
図7の(a)、及び
図7の(b)の各々は、
図3に示すエッチング方法の対応の工程が適用された一例の基板を示す断面図である。
【0033】
図3に示すように、方法MTでは、工程STaの後に、工程STbが実行される。工程STbでは、チャンバ10内で第1の処理ガスからプラズマを生成することにより、
図5の(a)及び
図5の(b)に示すように、複数の第1の膜F1のうち一つ以上の第1の膜F1がエッチングされる。工程STbでは、一つ以上の第1の膜F1各々の全領域のうちその上にマスクMK及び多層膜MLの他の層が存在していない領域がエッチングされる。第1の処理ガスは、フルオロカーボンガスを含んでいてもよい。第1の処理ガスは、酸素含有ガス(例えば酸素ガス)及び/又は貴ガスを更に含んでいてもよい。
【0034】
工程STbでは、制御部2は、第1の処理ガスをチャンバ10内に供給するよう、ガス供給部20を制御する。工程STbでは、制御部2は、チャンバ10内の圧力を指定圧力に設定するよう、排気システム40を制御する。工程STbでは、制御部2は、チャンバ10内で第1の処理ガスからプラズマを生成するよう、プラズマ生成部12を制御する。一実施形態では、制御部2は、第1の処理ガスからプラズマを生成するために、ソース高周波電力HF(即ち、第1のRF信号)を供給するよう、第1のRF生成部31aを制御する。また、工程STbでは、制御部2は、チャンバ10内でプラズマからイオンを引き込むために、基板支持部11(又は下部電極)に電気バイアスEBを供給するよう、バイアス電源を制御する。バイアス電源は、第2のRF生成部31b又は第1のDC生成部32aである。即ち、電気バイアスEBは、バイアス高周波電力であってもよい。或いは、電気バイアスEBは、パルス化された第1のDC信号、即ち、電圧パルスのシーケンスであってもよい。
【0035】
図3に示すように、方法MTでは、工程STbの後に、工程STcが行われる。工程STcでは、チャンバ10内で第2の処理ガスからプラズマを生成することにより、
図6の(a)及び
図6の(b)に示すように、複数の第2の膜F2のうち一つ以上の第2の膜F2がエッチングされる。工程STcでは、一つ以上の第2の膜F2各々の全領域のうちその上にマスクMK及び多層膜MLの他の層が存在していない領域がエッチングされる。第2の処理ガスは、ハイドロフルオロカーボンガスを含んでいてもよい。第2の処理ガスは、酸素含有ガス(例えば酸素ガス)及び貴ガスを更に含んでいてもよい。第2の処理ガスは、フルオロカーボンガスを更に含んでいてもよい。
【0036】
工程STcでは、制御部2は、第2の処理ガスをチャンバ10内に供給するよう、ガス供給部20を制御する。工程STcでは、制御部2は、チャンバ10内の圧力を指定圧力に設定するよう、排気システム40を制御する。工程STcでは、制御部2は、チャンバ10内で第2の処理ガスからプラズマを生成するよう、プラズマ生成部12を制御する。一実施形態では、制御部2は、第2の処理ガスからプラズマを生成するために、ソース高周波電力HFを供給するよう、第1のRF生成部31aを制御する。また、工程STcでは、制御部2は、チャンバ10内でプラズマからイオンを引き込むために、基板支持部11(又は下部電極)に電気バイアスEBを供給するよう、バイアス電源を制御する。
【0037】
一実施形態において、工程STbと工程STcは交互に繰り返されてもよい。この場合には、工程STJにおいて、停止条件が満たされるか否かが判定される。停止条件は、工程STbと工程STcの交互の繰り返しの回数が所定回数に達しているときに満たされる。工程STJにおいて停止条件が満たされないと判定されると、工程STb及び工程STcが順に繰り返される。工程STb及び工程STcの交互の繰り返しにより、多層膜MLは、
図7の(a)及び
図7の(b)に示すように、エッチングされる。一方、工程STJにおいて停止条件が満たされないと判定されると、方法MTは、終了する。
【0038】
方法MTの工程STb及び工程cの各々では、ソース高周波電力HFのパルスHFP及び電気バイアスEBのパルスEBPが、間欠的又は周期的に供給されてもよい。
【0039】
以下、
図8及び
図9を参照する。
図8及び
図9の各々は、ソース高周波電力及び電気バイアスの一例のタイミングチャートである。
図8及び
図9の各々において、ソース高周波電力HFがONであることは、パルスHFPが供給されていることを示しており、ソース高周波電力HFがOFFであることは、パルスHFPが供給されていないことを示している。
図8及び
図9の各々において、電気バイアスEBがONであることは、パルスEBPが供給されていることを示しており、電気バイアスEBがOFFであることは、パルスEBPが供給されていないことを示している。
【0040】
一実施形態においては、
図8に示すように、パルスHFPとパルスEBPは、同期されていてもよい。即ち、パルスHFPの供給開始タイミングとパルスEBPの供給開始タイミングは互いに同一であってもよく、パルスHFPの終了タイミングとパルスEBPの終了タイミングは互いに同一であってもよい。この場合において、パルスHFPとパルスEBPの各々のデューティ比は、40%以上、80%以下であってもよい。なお、デューティ比は、パルスHFPとパルスEBPの各々が供給されている期間の時間長の、パルス周期PCの時間長に対する割合(%)である。
【0041】
別の実施形態においては、
図9に示すように、工程STbにおけるパルス周期PCは、第1の期間P1及び第2の期間P2を含んでいてもよい。また、工程STcにおけるパルス周期PCは、第3の期間P3及び第4の期間P4を含んでいてもよい。パルスHFPは、第1の期間P1及び第3の期間P3において供給されてもよく、パルスEBPは、第2の期間P2及び第4の期間P4において供給されてもよい。
【0042】
第2の期間P2におけるソース高周波電力HFのパワーレベルは、第1の期間P1におけるソース高周波電力HFのパワーレベルよりも低くてもよい。また、第4の期間P4におけるソース高周波電力HFのパワーレベルは、第3の期間P3におけるソース高周波電力HFのパワーレベルよりも低くてもよい。
【0043】
電気バイアスEBは、第2の期間P2における電気バイアスEBのレベルよりも低いレベルを第1の期間P1において有するか、第1の期間P1において停止されてもよい。また、電気バイアスEBは、第4の期間P4における電気バイアスEBのレベルよりも低いレベルを第3の期間P3において有するか、第3の期間P3において停止されてもよい。なお、電気バイアスEBのレベルは、電気バイアスEBがバイアス高周波電力である場合には、そのパワーレベルである。電気バイアスEBのレベルは、電気バイアスEBが電圧パルスを含む場合には、当該電圧パルスの電圧レベルが基準電圧(例えば0V)に対して負方向に大きな差を有するほど大きく、且つ、負の電圧レベルの絶対値が大きいほど、大きい。
【0044】
パルス周期PCにおいて第1の期間P1の時間長が占める割合及びパルス周期PCにおいて第3の期間P3の時間長が示す割合の各々、即ちデューティ比は、50%以上であってもよい。このデューティ比は、65%以上又は70%以上であってもよい。
【0045】
かかる方法MTによれば、多層膜MLのエッチングにより基板Wの凹部の深さを増加させても、凹部の幅の拡大が抑制される。例えば、第1の凹部C1の最深部におけるX方向の幅W1(
図7の(b)参照)及びY方向の幅W3の拡大が抑制される。また、第2の凹部C2の最深部におけるX方向の幅W2(
図7の(b)参照)及びY方向の幅の拡大が抑制される。
【0046】
【0047】
一実施形態において、工程STbは、
図10に示すように、第1のサイクルCY1を繰り返すことを含んでいてもよい。第1のサイクルCY1は、工程STb1及び工程STb2を含む。
【0048】
工程STb1は、第1の期間において行われる。工程STb1では、
図11の(a)及び
図11の(b)に示すように、堆積物D1(第1の堆積物)が、複数の第1の膜F1のうち一つ以上の第1の膜F1上に形成される。堆積物D1は、一つ以上の第1の膜F1の各々の全領域のうち、その上にマスクMK及び多層膜MLの他の膜が存在していない領域に形成される。なお、堆積物D1は、基板Wの表面の全体に形成されてもよい。堆積物D1は、チャンバ10内で上述の第1の処理ガスから生成されたプラズマから基板Wに供給される。工程STb1が行われる期間は、上述の第1の期間P1であってもよい。即ち、工程STb1では、パルスHFPが供給されてもよい。工程STb1では、電気バイアスEBは供給されなくてもよく、電気バイアスEBのレベルが工程STb2における電気バイアスEBのレベルよりも低いレベルに設定されてもよい。
【0049】
工程STb1では、制御部2は、第1の処理ガスをチャンバ10内に供給するよう、ガス供給部20を制御する。工程STb1では、制御部2は、チャンバ10内の圧力を指定圧力に設定するよう、排気システム40を制御する。工程STb1では、制御部2は、チャンバ10内で第1の処理ガスからプラズマを生成するよう、プラズマ生成部12を制御する。一実施形態では、制御部2は、第1の処理ガスからプラズマを生成するために、ソース高周波電力HF(又はそのパルスHFP)を供給するよう、第1のRF生成部31aを制御する。
【0050】
工程STb2は、第1の期間の後の第2の期間において行われる。工程STb2では、一つ以上の第1の膜F1が、
図12の(a)及び
図12の(b)に示すように、チャンバ10内で上述の第1の処理ガスから生成されたプラズマを用いてエッチングされる。工程STb2では、一つ以上の第1の膜F1の各々の全領域のうち、その上にマスクMK及び多層膜MLの他の膜が存在していない領域がエッチングされる。また、工程STb2では、エッチングによって生じた反応生成物が、堆積物D3(第3の堆積物)として基板W上に堆積する。堆積物D3の一部は、基板Wに形成されている凹部を画成する側壁面、具体的には第2の膜F2の断面を含む側壁面に形成される。工程STb2が行われる期間は、上述の第2の期間P2であってもよい。即ち、工程STb2では、電気バイアスEBが供給される。工程STb2では、ソース高周波電力HFが供給されてもよい。工程STb2では、ソース高周波電力HFのパワーレベルは、工程STb1におけるソース高周波電力HFのパワーレベルよりも低いレベルに設定され得る。
【0051】
工程STb2では、制御部2は、第1の処理ガスをチャンバ10内に供給するよう、ガス供給部20を制御する。工程STb2では、制御部2は、チャンバ10内の圧力を指定圧力に設定するよう、排気システム40を制御する。工程STb2では、制御部2は、チャンバ10内で第1の処理ガスからプラズマを生成するよう、プラズマ生成部12を制御する。一実施形態では、制御部2は、第1の処理ガスからプラズマを生成するために、ソース高周波電力HFを供給するよう、第1のRF生成部31aを制御する。また、制御部2は、基板支持部11(又は下部電極)に電気バイアスEB(又はそのパルスEBP)を供給するよう、バイアス電源を制御する。
【0052】
工程STbは、工程STbJを更に含んでいてもよい。工程STbJでは、停止条件が満たされるか否かが判定される。停止条件は、第1のサイクルCY1の実行回数が所定回数に達しているときに満たされる。工程STbJにおいて停止条件が満たされないと判定されると、再び第1のサイクルCY1が実行される。一方、工程STbJにおいて停止条件が満たされていると判定されると、工程STbが終了し、工程STcに処理が移る。
【0053】
一実施形態において、工程STcは、
図13に示すように、第2のサイクルCY2を繰り返すことを含んでいてもよい。第2のサイクルCY2は、工程STc1及び工程STc2を含む。
【0054】
工程STc1は、第3の期間において行われる。工程STc1では、
図14の(a)及び
図14の(b)に示すように、堆積物D2(第2の堆積物)が、複数の第2の膜F2のうち一つ以上の第2の膜F2の上に形成される。堆積物D2は、一つ以上の第2の膜F2の各々の全領域のうち、その上にマスクMK及び多層膜MLの他の膜が存在していない領域に形成される。なお、堆積物D2は、基板Wの表面の全体に形成されてもよい。堆積物D2は、チャンバ10内で上述の第2の処理ガスから生成されたプラズマから基板Wに供給される。工程STc1が行われる期間は、上述の第3の期間P3であってもよい。即ち、工程STc1では、パルスHFPが供給されてもよい。工程STc1では、電気バイアスEBは供給されなくてもよく、電気バイアスEBのレベルが工程STc2における電気バイアスEBのレベルよりも低いレベルに設定されてもよい。
【0055】
工程STc1では、制御部2は、第2の処理ガスをチャンバ10内に供給するよう、ガス供給部20を制御する。工程STc1では、制御部2は、チャンバ10内の圧力を指定圧力に設定するよう、排気システム40を制御する。工程STc1では、制御部2は、チャンバ10内で第2の処理ガスからプラズマを生成するよう、プラズマ生成部12を制御する。一実施形態では、制御部2は、第2の処理ガスからプラズマを生成するために、ソース高周波電力HF(又はそのパルスHFP)を供給するよう、第1のRF生成部31aを制御する。
【0056】
工程STc2は、第3の期間の後の第4の期間において行われる。工程STc2では、一つ以上の第2の膜F2が、
図15の(a)及び
図15の(b)に示すように、チャンバ10内で上述の第2の処理ガスから生成されたプラズマを用いてエッチングされる。工程STc2では、一つ以上の第2の膜F2の各々の全領域のうち、その上にマスクMK及び多層膜MLの他の膜が存在していない領域がエッチングされる。工程STc2では、堆積物D3が、一つ以上の第2の膜F2と共にエッチングされる。
【0057】
工程STc2が行われる期間は、上述の第4の期間P4であってもよい。即ち、工程STc2では、電気バイアスEBが供給される。工程STc2では、ソース高周波電力HFが供給されてもよい。工程STc2では、ソース高周波電力HFのパワーレベルは、工程STc1におけるソース高周波電力HFのパワーレベルよりも低いレベルに設定され得る。
【0058】
工程STc2では、制御部2は、第2の処理ガスをチャンバ10内に供給するよう、ガス供給部20を制御する。工程STc2では、制御部2は、チャンバ10内の圧力を指定圧力に設定するよう、排気システム40を制御する。工程STc2では、制御部2は、チャンバ10内で第2の処理ガスからプラズマを生成するよう、プラズマ生成部12を制御する。一実施形態では、制御部2は、第2の処理ガスからプラズマを生成するために、ソース高周波電力HFを供給するよう、第1のRF生成部31aを制御する。また、制御部2は、基板支持部11(又は下部電極)に電気バイアスEB(又はそのパルスEBP)を供給するよう、バイアス電源を制御する。
【0059】
工程STcは、工程STcJを更に含んでいてもよい。工程STcJでは、停止条件が満たされるか否かが判定される。停止条件は、第2のサイクルCY2の実行回数が所定回数に達しているときに満たされる。工程STcJにおいて停止条件が満たされないと判定されると、再び第2のサイクルCY2が実行される。一方、工程STcJにおいて停止条件が満たされていると判定されると、工程STcが終了する。
【0060】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0061】
例えば、方法MTが適用される基板Wの多層膜MLは、階段形状を有していなくてもよい。また、方法MTが適用される前の状態における基板Wの多層膜MLは、凹部を有していなくてもよい。
【0062】
また、上述の第1の処理ガス及び第2の処理ガスの各々は、ハロゲン元素及びリンを更に含んでいてもよい。第1の処理ガス及び第2の処理ガスの各々に含まれるハロゲン元素は、フッ素であり得る。第1の処理ガス及び第2の処理ガスの各々は、少なくとも一つのハロゲン含有分子を含み得る。第1の処理ガス及び第2の処理ガスの各々は、少なくとも一つのハロゲン含有分子として、フルオロカーボン又はハイドロフルオロカーボンの少なくとも一つを含み得る。フルオロカーボンは、例えばCF4、C3F8、C4F6、又はC4F8の少なくとも一つである。ハイドロフルオロカーボンは、例えばCH2F2、CHF3、又はCH3Fの少なくとも一つである。ハイドロフルオロカーボンは、二つ以上の炭素を含んでいてもよい。ハイドロフルオロカーボンは、例えば、三つの炭素、又は四つの炭素を含んでいてもよい。
【0063】
第1の処理ガス及び第2の処理ガスの各々は、上述のリンとして、少なくとも一つのリン含有分子を含み得る。リン含有分子は、十酸化四リン(P4O10)、八酸化四リン(P4O8)、六酸化四リン(P4O6)のような酸化物であってもよい。十酸化四リンは、五酸化二リン(P2O5)と呼ばれることがある。リン含有分子は、三フッ化リン(PF3)、五フッ化リン(PF5)、三塩化リン(PCl3)、五塩化リン(PCl5)、三臭化リン(PBr3)、五臭化リン(PBr5)、ヨウ化リン(PI3)のようなハロゲン化物であってもよい。即ち、リンを含む分子は、ハロゲン元素としてフッ素を含んでいてもよい。或いは、リンを含む分子は、ハロゲン元素としてフッ素以外のハロゲン元素を含んでいてもよい。リン含有分子は、フッ化ホスホリル(POF3)、塩化ホスホリル(POCl3)、臭化ホスホリル(POBr3)のようなハロゲン化ホスホリルであってもよい。リン含有分子は、ホスフィン(PH3)、リン化カルシウム(Ca3P2等)、リン酸(H3PO4)、リン酸ナトリウム(Na3PO4)、ヘキサフルオロリン酸(HPF6)等であってもよい。リン含有分子は、フルオロホスフィン類(HxPFy)であってもよい。ここで、xとyの和は、3又は5である。フルオロホスフィン類としては、HPF2、H2PF3が例示される。第1の処理ガス及び第2の処理ガスの各々は、少なくとも一つのリン含有分子として、上記のリン含有分子のうち一つ以上のリン含有分子を含み得る。例えば、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの各々は、少なくとも一つのリン含有分子として、PF3、PCl3、PF5,PCl5,POCl3、PH3、PBr3、又はPBr5の少なくとも一つを含み得る。なお、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの各々に含まれる各リン含有分子は、それが液体又は固体である場合には、加熱等によって気化されてチャンバ10内に供給され得る。
【0064】
第1の処理ガス及び第2の処理ガスの各々は、炭素及び水素を更に含んでいてもよい。第1の処理ガス及び第2の処理ガスの各々は、水素を含む分子として、H2、フッ化水素(HF)、炭化水素(CxHy)、ハイドロフルオロカーボン(CHxFy)、又はNH3の少なくとも一つを含んでいてもよい。炭化水素は、例えばCH4又はC3H6である。ここで、x及びyの各々は自然数である。第1の処理ガス及び第2の処理ガスの各々は、炭素を含む分子として、フルオロカーボン又は炭化水素(例えばCH4)を含んでいてもよい。第1の処理ガス及び第2の処理ガスの各々は、酸素を更に含んでいてもよい。処理ガスは、例えばO2を含んでいてもよい。或いは、処理ガスは、酸素を含んでいなくてもよい。
【0065】
一実施形態において、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの各々は、リン含有ガス、フッ素含有ガス、及び水素含有ガスを含んでいてもよい。水素含有ガスは、フッ化水素(HF)、H2、アンモニア(NH3)、及び炭化水素からなる群から選択される少なくとも一つを含有する。リン含有ガスは、上述したリン含有分子のうち少なくも一つを含む。フッ素含有ガスは、フルオロカーボンガス及び炭素を含有しないフッ素含有ガスからなる群から選択される少なくとも一つのガスを含む。フルオロカーボンガスは、上述したフルオロカーボンを含有するガスである。炭素を含有しないフッ素含有ガスは、例えば三フッ化窒素ガス(NF3ガス)又は六フッ化硫黄ガス(SF6ガス)である。また、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの各々は、ハイドロフルオロカーボンガスを更に含んでいてもよい。ハイドロフルオロ-カーボンガスは、上述したハイドロフルオロカーボンのガスである。また、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの各々は、フッ素以外のハロゲン元素を含有するハロゲン含有ガスを更に含んでいてもよい。ハロゲン含有ガスは、例えばCl2ガス及び/又はHBrガスである。
【0066】
一例において、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの各々は、リン含有ガス、フルオロカーボンガス、水素含有ガス、及び酸素含有ガス(例えばO2ガス)を含むか、実質的にこれらからなっていてもよい。別の一例において、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの各々は、リン含有ガス、炭素を含有しないフッ素含有ガス、フルオロカーボンガス、水素含有ガス、ハイドロフルオロカーボンガス、及びフッ素以外のハロゲン元素を含有するハロゲン含有ガスを含むか、実質的にこれらからなっていてもよい。
【0067】
別の実施形態において、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの各々は、上述のリン含有ガス、上述のフッ素含有ガス、上述のハイドロフルオロカーボンガス、及び上述のフッ素以外のハロゲン元素を含有するハロゲン含有ガスを含むか、実質的にこれらからなっていてもよい。
【0068】
一実施形態において、第1の処理ガス及び第2の処理ガスの各々は、第1のガス及び第2のガスを含み得る。第1のガスは、リンを含有しないガスである。即ち、第1のガスは、処理ガスに含まれるリン含有ガス以外の全てのガスである。第1のガスは、ハロゲン元素を含み得る。第1のガスは、上述した少なくとも一つのハロゲン含有分子のガスを含み得る。第1のガスは、炭素及び水素を更に含んでいてもよい。第1のガスは、上述した水素を含む分子のガス及び/又は炭素を含む分子のガスを更に含んでいてもよい。第1のガスは、酸素を更に含んでいてもよい。第1のガスは、O2ガスを含んでいてもよい。或いは、第1のガスは、酸素を含んでいなくてもよい。第2のガスは、リンを含有するガスである。即ち、第2のガスは、上述のリン含有ガスである。第2のガスは、上述した少なくとも一つのリン含有分子のガスを含んでいてもよい。
【0069】
第1の処理ガス及び第2の処理ガスの各々において、第1のガスの流量に対する第2のガスの流量の比である流量比は、0より大きく、0.5以下に設定されてもよい。流量比は、0.075以上、0.3以下に設定されてもよい。流量比は、0.1以上、0.25以下に設定されてもよい。
【0070】
以下、方法MTの評価のために行った種々の実験について説明する。なお、方法MTは、以下に説明する種々の実験によって限定されるものではない。
【0071】
(第1~第3の実験)
【0072】
第1~第3の実験の各々では、
図4の(a)及び
図4の(b)に示した基板Wと同じ構造のサンプル基板を準備した。サンプル基板において、複数の第1の膜F1の各々はシリコン酸化膜であり、複数の第2の膜F2の各々はシリコン窒化膜であった。第1~第3の実験の各々では、プラズマ処理装1を用いて、サンプル基板の多層膜MLを、下地領域URが露出するまでエッチングした。第1~第3の実験の各々では、第1の処理ガスとして、フルオロカーボンガス、酸素ガス、及びアルゴンガスを含む混合ガスを用いた。また、第1~第3の実験の各々では、第2の処理ガスとして、ハイドロフルオロカーボンガス、フルオロカーボンガス、酸素ガス、及びアルゴンガスを含む混合ガスを用いた。第1の実験では、工程STb及び工程STcの各々において、ソース高周波電力HF及び電気バイアスを連続的に供給した。第2の実験では、方法MTの工程STb及び工程STcの各々において、
図8に示すように互いに同期されたパルスHFP及びパルスEBPを供給した。第2の実験において、パルス周期PCの時間長の逆数であるパルス周波数は、5kHzであり、デューティ比は80%であった。第3の実験では、方法MTの工程STb及び工程STcの各々において、
図9に示すようにパルスHFP及びパルスEBPを供給した。第3の実験において、パルス周期PCの時間長の逆数であるパルス周波数は、2kHzであった。また、第3の実験では、パルス周期PCにおいて第1の期間P1の時間長が占める割合及びパルス周期PCにおいて第3の期間P3の時間長が示す割合の各々、即ちデューティ比は、70%であった。
【0073】
第1~第3の実験の各々では、エッチング後のサンプル基板における幅W1と幅W2の合計に対する幅W1の比の値を求めた。なお、方法MTの適用前に、サンプル基板における幅W1と幅W2の合計に対する幅W2の比の値は、約0.5であった。そして、第1~第3の実験での方法MTの適用後の比の値はそれぞれ、0.32、0.46、0.43であった。したがって、工程STb及び工程STcの各々において、パルスHFP及びパルスEBPを供給することにより、エッチング前のサンプル基板における幅W1と幅W2の合計に対する幅W2の比の値に対して、エッチング後の当該比の値の変化が低減されることが確認された。よって、方法MTによれば、多層膜MLのエッチングにより凹部の深さが増加されても、凹部の幅の拡大が抑制されることが確認された。
【0074】
ここで、本開示に含まれる種々の例示的実施形態を、以下の[E1]~[E16]に記載する。
【0075】
[E1]
(a)プラズマ処理装置のチャンバ内で基板支持部上に基板を準備する工程であり、該基板は、酸化シリコンから形成された複数の第1の膜及び窒化シリコンから形成されており該複数の第1の膜と交互に積層された複数の第2の膜を含む多層膜と、前記多層膜上に設けられたマスクと、を含み、前記多層膜は、前記マスクの開口の下方に第1の領域及び該第1の領域に隣接する第2の領域を含んでおり、該第1の領域及び該第2の領域の各々は、それらが並ぶ方向に直交する断面において階段形状を有しており、前記マスクの開口の下方で前記第1の領域が画成する第1の凹部の深さは、前記マスクの開口の下方で前記第2の領域が画成する第2の凹部の深さよりも深い、該工程と、
(b)前記チャンバ内で第1の処理ガスからプラズマを生成することにより、前記複数の第1の膜のうち一つ以上の第1の膜をエッチングする工程と、
(c)前記チャンバ内で第2の処理ガスからプラズマを生成することにより、前記複数の第2の膜のうち一つ以上の第2の膜をエッチングする工程と、
を含み、
前記(b)及び前記(c)の各々において、前記チャンバ内でプラズマを生成するためのソース高周波電力のパルス及び前記チャンバ内のプラズマから前記基板にイオンを引き込むための電気バイアスのパルスが間欠的又は周期的に供給される、
エッチング方法。
【0076】
[E2]
前記ソース高周波電力の前記パルスと前記電気バイアスの前記パルスは、同期しており、同時に供給される、E1に記載のエッチング方法。
【0077】
[EE]
前記(b)が行われる期間は、第1の期間及び該第1の期間と交互の第2の期間を含み、
前記(c)が行われる期間は、第3の期間及び該第3の期間と交互の第4の期間を含み、
前記チャンバ内でプラズマを生成するためのソース高周波電力のパルスが、前記第1の期間及び前記第3の期間の各々において供給され、
前記チャンバ内のプラズマから前記基板にイオンを引き込むための電気バイアスのパルスが、前記第2の期間及び第4の期間の各々において供給される、
E1に記載のエッチング方法。
【0078】
[E4]
前記第2の期間における前記ソース高周波電力のパワーレベルは、前記第1の期間における前記ソース高周波電力のパワーレベルよりも低く、
前記第4の期間における前記ソース高周波電力のパワーレベルは、前記第3の期間における前記ソース高周波電力のパワーレベルよりも低い、
E3に記載のエッチング方法。
【0079】
[E5]
前記電気バイアスは、前記第2の期間における前記電気バイアスのレベルよりも低いレベルを前記第1の期間において有するか、前記第1の期間において停止され、且つ、前記第4の期間における前記電気バイアスのレベルよりも低いレベルを前記第3の期間において有するか、前記第3の期間において停止され、
E3又はE4に記載のエッチング方法。
【0080】
[E6]
前記第1の期間の時間長と前記第2の期間の時間長の合計に占める前記第1の期間の時間長の割合及び前記第3の期間の時間長と前記第4の期間の時間長の合計に占める前記第3の期間の時間長の割合の各々は、65%以上である、E3~E5の何れか一項に記載のエッチング方法。
【0081】
[E7]
前記第1の処理ガスは、フルオロカーボンガスを含み、
前記第2の処理ガスは、ハイドロフルオロカーボンガスを含む、
E1~E6の何れか一項に記載のエッチング方法。
【0082】
[E8]
前記(b)及び前記(c)が交互に繰り返される、E1~E7の何れか一項に記載のエッチング方法。
【0083】
[E9]
(a)プラズマ処理装置のチャンバ内で基板支持部上に基板を準備する工程であり、該基板は、複数の第1の膜及び該複数の第1の膜の材料とは異なる材料から形成されており該複数の第1の膜と交互に積層された複数の第2の膜を有する多層膜を含む、該工程と、
(b)第1のサイクルを繰り返す工程であって、該第1のサイクルは、
(b1)第1の期間において、前記複数の第1の膜のうち一つ以上の第1の膜上に第1の堆積物を形成する工程であり、該第1の堆積物は前記チャンバ内で第1の処理ガスから生成されたプラズマから供給される、該工程と、
(b2)第2の期間において前記チャンバ内で前記第1の処理ガスから生成されたプラズマを用いて前記一つ以上の前記第1の膜をエッチングする工程と、
を含む、該工程と、
(c)第2のサイクルを繰り返す工程であって、該第2のサイクルは、
(c1)第3の期間において、前記複数の第2の膜のうち一つ以上の第2の膜上に第2の堆積物を形成する工程であり、該第2の堆積物は前記チャンバ内で第2の処理ガスから生成されたプラズマから供給される、該工程と、
(c2)第4の期間において前記チャンバ内で前記第2の処理ガスから生成されたプラズマを用いて前記一つ以上の前記第2の膜をエッチングする工程であり、前記(b2)において前記基板上に形成された第3の堆積物が、前記一つ以上の第2の膜と共にエッチングされる、該工程と、
を含む、エッチング方法。
【0084】
[E10]
前記チャンバ内でプラズマを生成するためのソース高周波電力のパルスが、前記第1の期間及び前記第3の期間の各々において供給され、
前記チャンバ内のプラズマから前記基板にイオンを引き込むための電気バイアスのパルスが、前記第2の期間及び第4の期間の各々において供給される、
E9に記載のエッチング方法。
【0085】
[E11]
前記第2の期間における前記ソース高周波電力のパワーレベルは、前記第1の期間における前記ソース高周波電力のパワーレベルよりも低く、
前記第4の期間における前記ソース高周波電力のパワーレベルは、前記第3の期間における前記ソース高周波電力のパワーレベルよりも低い、
E10に記載のエッチング方法。
【0086】
[E12]
前記電気バイアスは、前記第2の期間における前記電気バイアスのレベルよりも低いレベルを前記第1の期間において有するか、前記第1の期間において停止され、且つ、前記第4の期間における前記電気バイアスのレベルよりも低いレベルを前記第3の期間において有するか、前記第3の期間において停止され、
E10又はE11に記載のエッチング方法。
【0087】
[E13]
前記第1の期間の時間長と前記第2の期間の時間長の合計に占める前記第1の期間の時間長の割合及び前記第3の期間の時間長と前記第4の期間の時間長の合計に占める前記第3の期間の時間長の割合の各々は、65%以上である、E10~E12の何れか一項に記載のエッチング方法。
【0088】
[E14]
前記複数の第1の膜の各々は、酸化シリコンから形成されており、
前記複数の第2の膜の各々は、窒化シリコンから形成されており、
前記第1の処理ガスは、フルオロカーボンガスを含み、
前記第2の処理ガスは、ハイドロフルオロカーボンガスを含む、
E9~E13の何れか一項に記載のエッチング方法。
【0089】
[E15]
前記(b)及び前記(c)が交互に繰り返される、E9~E14の何れか一項に記載のエッチング方法。
【0090】
[E16]
チャンバと、
前記チャンバ内に設けられた基板支持部と、
前記チャンバ内でガスからプラズマを生成するためのプラズマ生成部と、
前記基板支持部に電気的に結合されたバイアス電源と、
前記プラズマ生成部及び前記バイアス電源を制御するように構成された制御部と、
を備え、
前記制御部は、複数の第1の膜及び該複数の第1の膜の材料とは異なる材料から形成されており該複数の第1の膜と交互に積層された複数の第2の膜を有する多層膜を含む基板が前記基板支持部上に載置されている状態で、
(b)第1のサイクルを繰り返す工程であって、該第1のサイクルは、
(b1)第1の期間において、前記複数の第1の膜のうち一つ以上の第1の膜上に第1の堆積物を形成する工程であり、該第1の堆積物は前記チャンバ内で第1の処理ガスから生成されたプラズマから供給される、該工程と、
(b2)第2の期間において前記第1の処理ガスから生成されたプラズマを用いて前記一つ以上の前記第1の膜をエッチングする工程と、
を含む、該工程と、
(c)第2のサイクルを繰り返す工程であって、該第2のサイクルは、
(c1)第3の期間において、前記複数の第2の膜のうち一つ以上の第2の膜上に第2の堆積物を形成する工程であり、該第2の堆積物は前記チャンバ内で第2の処理ガスから生成されたプラズマから供給される、該工程と、
(c2)第4の期間において前記第2の処理ガスから生成されたプラズマを用いて前記一つ以上の前記第2の膜をエッチングする工程であり、前記(b2)において前記基板上に形成された第3の堆積物が、前記一つ以上の第2の膜と共にエッチングされる、該工程と、
を行うように構成されている、プラズマ処理装置。
【0091】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0092】
1…プラズマ処理装置、10…チャンバ、11…基板支持部、2…制御部、12…プラズマ生成部、20…ガス供給部、31a…第1のRF生成部、31b…第2のRF生成部。