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特開2024-93271化合物、高分子化合物、感光性表面処理剤、積層体、パターン形成用基板、トランジスタ、パターン形成方法、及びトランジスタの製造方法
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  • 特開-化合物、高分子化合物、感光性表面処理剤、積層体、パターン形成用基板、トランジスタ、パターン形成方法、及びトランジスタの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093271
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】化合物、高分子化合物、感光性表面処理剤、積層体、パターン形成用基板、トランジスタ、パターン形成方法、及びトランジスタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 271/12 20060101AFI20240702BHJP
   C08F 120/36 20060101ALI20240702BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240702BHJP
   G03F 7/38 20060101ALI20240702BHJP
   H10K 10/46 20230101ALI20240702BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20240702BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240702BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20240702BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240702BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240702BHJP
   H10K 59/12 20230101ALI20240702BHJP
   H10K 59/125 20230101ALI20240702BHJP
   H10K 59/131 20230101ALI20240702BHJP
   H10K 85/10 20230101ALN20240702BHJP
   H10K 85/60 20230101ALN20240702BHJP
【FI】
C07C271/12 CSP
C08F120/36
G03F7/004 521
G03F7/38 512
H10K10/46
H01L21/288 E
H01L29/78 616L
H01L29/78 617M
H01L29/78 616V
H10K50/10
H10K59/10
H10K59/12
H10K59/125
H10K59/131
H10K85/10
H10K85/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209535
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】川上 雄介
(72)【発明者】
【氏名】山口 和夫
(72)【発明者】
【氏名】力石 紀子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 倫子
【テーマコード(参考)】
2H196
2H225
3K107
4H006
4J100
4M104
5F110
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196AA27
2H196BA16
2H196EA02
2H196FA05
2H196HA27
2H225AG00P
2H225AN61P
2H225CA11
2H225CB02
2H225CB05
2H225CC08
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC35
3K107CC45
3K107GG11
3K107GG22
3K107GG28
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB46
4H006AB84
4H006BP30
4H006RA10
4H006RB28
4J100AL08P
4J100BA04P
4J100BA38P
4J100BA41P
4J100BC43P
4J100CA01
4J100JA38
4M104BB04
4M104BB05
4M104BB07
4M104BB08
4M104BB09
4M104DD53
5F110CC01
5F110CC03
5F110CC05
5F110CC07
5F110EE01
5F110EE02
5F110EE06
5F110EE14
5F110EE42
5F110GG05
5F110GG42
5F110HK01
5F110HK02
5F110HK06
5F110HK21
5F110HK32
(57)【要約】
【課題】化合物の提供。
【解決手段】下記一般式(M1)で表される化合物。式(M1)中、Yは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~10のアルキル基、重合性基含有基、又は[SiX-Y11-*]で表される基である。Y11は直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキレン基であり、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基であり、*はN原子との結合箇所である。Rは、水素原子又はメチル基である。Rは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基又はフルオロアルキル基である。n=2である。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(M1)で表される化合物。
【化1】
(式(M1)中、Yは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~10のアルキル基、重合性基含有基、又は[SiX-Y11-*]で表される基である。Y11は直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキレン基であり、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基であり、*はN原子との結合箇所である。Rは、水素原子又はメチル基である。Rは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基又はフルオロアルキル基である。n=2である。)
【請求項2】
下記一般式(P1)で表される繰返し単位を備える高分子化合物。
【化2】
(式(P1)中、R11は、水素原子又はメチル基であり、Y11は直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキレン基である。Rは、水素原子又はメチル基である。Rは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基又はフルオロアルキル基である。n=2である。)
【請求項3】
請求項1に記載の化合物又は請求項2に記載の高分子化合物を含む、感光性表面処理剤。
【請求項4】
請求項3に記載の感光性表面処理剤を含む積層体。
【請求項5】
請求項3に記載の感光性表面処理剤を用いて化学修飾された表面を有するパターン形成用基板。
【請求項6】
請求項3に記載の感光性表面処理剤を含むトランジスタ。
【請求項7】
請求項3に記載の感光性表面処理剤を基板上に塗布し、感光性樹脂膜を成膜する工程と、
前記感光性樹脂膜に所定のパターンの光を照射する工程と、
前記所定のパターン光の照射領域の少なくとも一部の領域に対して無電解めっきを行う工程と、を備える、パターン形成方法。
【請求項8】
請求項3に記載の感光性表面処理剤を基板上に塗布し、感光性樹脂膜を成膜する工程と、
前記感光性樹脂膜に所定のパターンの光を照射する工程と、
前記所定のパターン光の照射領域の少なくとも一部の領域に無電解めっき用触媒を配置し、無電解めっきを行う工程と、を備える、パターン形成方法。
【請求項9】
請求項3に記載の感光性表面処理剤を基板上に塗布し、感光性樹脂膜を成膜する工程と、
前記感光性樹脂膜に所定のパターンの光を照射して、露光領域にアミン発生領域を形成する工程と、
前記アミン発生領域に無電解めっき用触媒を配置し、無電解めっきを行う工程と、を備える、パターン形成方法。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一項に記載のパターン形成方法により、ソース電極、ドレイン電極、またはゲート電極のうちいずれか1以上の電極を形成する工程を含む、トランジスタの製造方法。
【請求項11】
下記式(M1)で表される化合物又は下記式(P1)で表される繰返し単位を有する高分子化合物を含む、トランジスタ。
【化3】
(式(M1)中、Yは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~10のアルキル基、重合性基含有基、又は[SiX-Y11-*]で表される基である。Y11は直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキレン基であり、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基であり、*はN原子との結合箇所である。Rは、水素原子又はメチル基である。Rは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基又はフルオロアルキル基である。n=2である。)
【化4】
(式(P1)中、R11は、水素原子又はメチル基であり、Y11は直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキレン基である。Rは、水素原子又はメチル基である。Rは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基又はフルオロアルキル基である。n=2である。)
【請求項12】
前記化合物又は高分子化合物は、少なくとも一部のニトロベンジル基が脱離してアミノ基が発生した部分を有する、請求項11に記載のトランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、高分子化合物、感光性表面処理剤、積層体、パターン形成用基板、トランジスタ、パターン形成方法、及びトランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子、集積回路、有機ELディスプレイ用デバイス等の微細デバイス等の製造において、基板上に、表面特性の異なるパターンを形成し、その表面特性の違いを利用して微細デバイスを作成する方法が提案されている。
【0003】
基板上の表面特性の違いを利用したパターン形成方法としては、たとえば、基板の一部に化学的に活性な置換基を発生させた領域を形成する方法がある。この方法により基板の一部に金属材料、有機材料又は無機材料を密着させることができる。
【0004】
基板上に金属材料を密着させ、金属膜を形成する技術として無電解めっき処理がある。例えば特許文献1は、無電解めっき処理による微細な配線を形成する技術を開示している。具体的には、特許文献1は、触媒活性化層とフォトレジストを用い、一面にめっきした状態からエッチング、またはリフトオフによる光パターニングを行うことを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-2201号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明の一つの態様は、下記式(M1)で表される化合物である。
【0007】
【化1】
(式(M1)中、Yは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~10のアルキル基、重合性基含有基、又は[SiX-Y11-*]で表される基である。Y11は直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキレン基であり、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基であり、*はN原子との結合箇所である。Rは、水素原子又はメチル基である。Rは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基又はフルオロアルキル基である。n=2である。)
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態のパターン形成方法を説明するための模式図である。
図2】本実施形態のトランジスタの製造方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<化合物>
本発明の一つの態様は、下記式(M1)で表される化合物である。
【0010】
【化2】
【0011】
式(M1)中、Yは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~10のアルキル基であり、Yのアルキル基としては、炭素数1~5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましい。具体的には、Yは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
【0012】
式(M1)中、Yの重合性基含有基としては、[CH=(C-R11)-C(=O)-O-(Y11)-*]で表される基が挙げられる。R11は、水素原子又はメチル基であり、Y11は直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキレン基であり、*はN原子との結合箇所である。
【0013】
式(M1)中、Yが「SiX-Y11-*」で表される基である場合、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基である。Xで表されるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等を挙げることができる。
【0014】
11は、メチレン基[-CH-]、エチレン基[-(CH-]、トリメチレン基[-(CH-]、テトラメチレン基[-(CH-]等が挙げられる。また、Yは、-CH(CH)-、-CH(CHCH)-、-C(CH-、-C(CH)(CHCH)-等が挙げられる。
【0015】
Xはアルコキシ基であることが好ましい。Xのアルコキシ基としては、-O-(CH)、-O-(CH)n12(CH)が挙げられる。n12は、1~3の自然数である。
【0016】
式(M1)中、Rは水素原子又はメチル基である。
【0017】
式(M1)中、Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。Rのアルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基が好ましく、イソプロピル基がより好ましい。
【0018】
式(M1)中、R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基又はフルオロアルキル基である。
、Rのアルキル基としては、炭素数1~3の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、が挙げられる。
、Rがフルオロアルキル基である場合、炭素数1~3の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が部分的にフッ素化されたものであってもよく、パーフルオロアルコキシ基であってもよい。本実施形態においては、部分的にフッ素化されたフッ素化アルコキシ基であることが好ましい。
【0019】
式(M1)中、n=2である。
【0020】
式(M1)で表される化合物は、n=2であるジニトロベンジル基を有する。式(M1)で表される化合物に光を照射すると、ジニトロベンジル基が脱離してアミンが発生する。アミンが発生した部分には、金属材料、有機材料又は無機材料を密着させることができる。式(M1)で表される化合物から発生するアミンは、1級アミン(-NH)、又は2級アミン(-NH-)である。
【0021】
式(M1)で表される化合物は、モノニトロベンジル基を有する化合物よりも光反応効率(Φ365)が大きい。本明細書において光反応効率(Φ365)とは、光分解速度定数(k)と吸光度(A365)との比であり、吸収した光に対する反応の効率を示す指標である。光反応効率(Φ)は、具体的には下記の式により算出する。
光反応効率(Φ365)=光分解速度定数(k)/吸光度(A365)
【0022】
上記の式により得られる光反応効率(Φ365)の値が大きいほど、受け取った光に対する反応の効率が高く、少ない露光量でも保護基の脱離反応が進行しやすいことを意味する。
【0023】
本発明者らの検討により、式(M1)で表される化合物において、ジニトロベンジル基を有する化合物は、モノニトロベンジル基を有する化合物よりも光反応効率が高いことが見いだされた。
これは、ニトロ基の増加や構造の変化によって、光反応に寄与するニトロ基の効果が促進するためと考えられる。この化学構造では光を受けるとベンジル位の水素からニトロ基の酸素を含む6員環遷移状態を形成し、ニトロ基の酸素にベンジル位の水素が移動することが光分解の最初の過程となる。ニトロ基の効果を得るには、ベンジル位の水素との位置関係、立体配座が重要である。モノニトロベンジル基と比べ、光反応効率が向上したのは、ジニトロベンジル基を含む化合物が水素移動のための効果的な配座であるためと推察される。
【0024】
さらに、本発明者らの検討により、式(M1)で表される化合物において、ジニトロベンジル基を有する化合物の方が、モノニトロベンジル基を有する化合物よりも光分解速度が向上することが見いだされた。
【0025】
式(M1)は、以下の式(M1)-1、(M1)-2、(M1)-3のいずれかであることが好ましい。
以下の式(M1)-1、(M1)-2、(M1)-3中、各符号の説明は前記式(M1)における符号の説明と同様である。
【0026】
【化3】
【0027】
式(M1)で表される化合物の具体例を以下に示す。
【0028】
【化4】
【0029】
【化5】
【0030】
【化6】
【0031】
【化7】
【0032】
【化8】
【0033】
【化9】
【0034】
<化合物(M1)の製造方法>
式(M1)で表される化合物は、以下の方法により製造できる。
以下の製造方法の説明において、n=2であり、各符号に関する説明は、前記式(M1)における各符号の説明と同様である。
【0035】
式(M1)で表される化合物は、ジニトロ中間体1又はジニトロ中間体2を製造する工程と、得られたジニトロ中間体1又はジニトロ中間体2に、Yを導入することで製造できる。
【0036】
【化10】
【0037】
ジニトロ中間体1は、以下の(R)-1に示す反応により得られる。
【0038】
【化11】
【0039】
ジニトロ中間体2は、以下の(R)-2に示す反応により得られる。
【0040】
【化12】
【0041】
得られたジニトロ中間体1又は2に、Yを導入し、化合物(M1)を製造する反応例を以下に示す。
【0042】
【化13】
【0043】
式中、「Y-NCO」は、アルキルイソシアネートである。アルキルイソシアネートが有するアルキル基は、炭素数1~5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
【0044】
【化14】
【0045】
【化15】
【0046】
【化16】
【0047】
【化17】
【0048】
【化18】
【0049】
<化合物(M1)-1の製造方法>
式(M1)-1で表される化合物は、ジニトロ中間体1-1又はジニトロ中間体2-1を製造する工程と、得られたジニトロ中間体1-1又はジニトロ中間体2-1に、Yを導入することで製造できる。
【0050】
【化19】
【0051】
ジニトロ中間体1-1は、以下の(R)-1-1に示す反応により得られる。
【0052】
【化20】
【0053】
ジニトロ中間体2-1は、以下の(R)-2-1に示す反応により得られる。
【0054】
【化21】
【0055】
得られたジニトロ中間体1-1又はジニトロ中間体2-1に、Yを導入し、化合物(M1)-1を製造する反応例を以下に示す。
【0056】
【化22】
【0057】
【化23】
【0058】
【化24】
【0059】
【化25】
【0060】
【化26】
【0061】
【化27】
【0062】
<化合物(M1)-2の製造方法>
式(M1)-2で表される化合物は、ジニトロ中間体1-2又はジニトロ中間体2-2を製造する工程と、得られたジニトロ中間体1-2又はジニトロ中間体2-2に、Yを導入することで製造できる。
【0063】
【化28】
【0064】
ジニトロ中間体1-2は、以下の(R)-1-2に示す反応により得られる。
【0065】
【化29】
【0066】
上記(R)-1-1に示す反応と、上記(R)-1-2に示す反応では、ジニトロ中間体1-1と1-2とが両方同時に生成される。ジニトロ中間体1-1と1-2とを含む生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、ジニトロ中間体1-1と1-2とをそれぞれ得ることができる。
【0067】
ジニトロ中間体2-2は、以下の(R)-2-2に示す反応により得られる。
【0068】
【化30】
【0069】
得られたジニトロ中間体1-2又はジニトロ中間体2-2にYを導入し、化合物(M1)-2を製造する反応例を以下に示す。
【0070】
【化31】
【0071】
【化32】
【0072】
【化33】
【0073】
【化34】
【0074】
【化35】
【0075】
【化36】
【0076】
<高分子化合物>
本発明の一態様は、下記式(P1)で表される繰返し単位を備える高分子化合物である。
【0077】
【化37】
(式(P1)中、R11は、水素原子又はメチル基であり、Y11は直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキレン基である。Rは、水素原子又はメチル基である。Rは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。R、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基又はフルオロアルキル基である。n=2である。)
【0078】
式(P1)中、R11、Y11、R、R、Rに関する説明は前記式(M1)における各符号の説明と同様である。
【0079】
式(P1)で表される繰返し単位を備える高分子化合物は、主鎖の末端の少なくとも1つに、下記式(1x)で表される置換基が結合していることが好ましい。下記式(1x)中、*は式(P1)で表される繰返し単位を備える高分子化合物の主鎖の末端との結合箇所を意味する。
【0080】
【化38】
【0081】
式(P1)で表される繰返し単位を有する高分子化合物の、主鎖の末端に上記式(1x)で表される置換基が結合している高分子化合物(P1)-Aを下記に例示する。
【0082】
【化39】
【0083】
式(P1)で表される繰返し単位は、下記式(P1)-1~(P1)-3のいずれかであることが好ましい。
【0084】
【化40】
【0085】
<高分子化合物(P1)の製造方法>
重合性基を含む式(M1)で表される化合物を、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤などの各種重合開始剤とを反応させることで、一般式(P1)で表される繰返し単位を備える高分子化合物が得られる。この反応の例を以下に記載する。
【0086】
【化41】
【0087】
【化42】
【0088】
【化43】
【0089】
【化44】
【0090】
重合性基を含む式(M1)で表される化合物の重合は特に限定されないが、ラジカル重合、アニオン重合などにより重合してもよい。なかでも制御の容易性等の観点からラジカル重合法が好ましい。分子量を制御することで任意の溶解性を得るという観点からは、ラジカル重合の中でも、制御ラジカル重合がより好ましい。
【0091】
制御ラジカル重合法としては、連鎖移動剤法、リビング重合の一種であるリビングラジカル重合法等が挙げられるが、分子量分布の制御が容易であるリビングラジカル重合がさらに好ましい。なお、リビングラジカル重合法としては、ニトロキシラジカル重合法(NMP)、原子移動ラジカル重合法(ATRP)、可逆的付加解裂連鎖移動法(RAFT)等があるが、温度や汎用性の観点から、特に原子移動ラジカル重合法(ATRP)が好ましい。
【0092】
低分子から高分子にかけて分子量分布を広くさせ任意の成膜性を得るという観点に加え、生産性と経済性の観点からは、連鎖移動反応を伴うラジカル重合が好ましい。
なお、ラジカル重合を用いる場合には、従来公知の重合開始剤を適宜用いることができる。また、ラジカル重合開始剤は、単独又は二種以上を使用してもよく、また、市販されているものをそのまま使用してもよい。
【0093】
例えば、アゾ基(-N=N-)を有し、N2とラジカルを発生する化合物であるアゾ重合開始剤を用いることができる。具体的には、アゾニトリル、アゾエステル、アゾアミド、アゾアミジン、アゾイミダゾリン等が挙げられる。さらに具体的には、例えば、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジハイドロクロライド、4,4’-アゾビス(4-シアノヴァレリックアシド)、2,2’-ビス(2-イミダゾリン-2-イル)-2,2’-アゾプロパンジハイドロクロライド、2,2’-ビス(2-イミダゾリン-2-イル)-2,2’-アゾプロパン、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ヂメチルバレロニトリル)(ADBN)が挙げられる。
【0094】
この中でも好ましくは2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ヂメチルバレロニトリル)(ADBN)であり、特に好ましくは2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)である。
【0095】
本実施形態の高分子化合物は、式(P1)で表される繰返し単位からなってもよく、式(P1)で表される繰返し単位に加え、必要に応じてその他の繰返し単位を有する共重合体であってもよい。本実施形態の高分子化合物が式(P1)で表される繰返し単位以外の繰返し単位を含む共重合体である場合、その他の繰返し単位の割合は、高分子化合物を構成する全繰返し単位の合計量(100モル%)に対し、例えば50モル%以下であり、40%%以下、30モル%以下である。
【0096】
その他の繰返し単位としては、例えば、メチルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメトキシニトロベンジルカルボニルアミノエチルアクリレート、フルオレニルメトキシカルボニルアミノエチルアクリレート、メチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメトキシニトロベンジルカルボニルアミノエチルメタクリレート、フルオレニルメトキシカルボニルアミノエチルメタクリレート、が挙げられる。
【0097】
式(P1)で表される繰返し単位を備える高分子化合物の数平均分子量は、めっき浴などへの溶解・剥離のリスクを下げ、成膜時の溶解性を担保するという観点からは、湿式成膜できる程度の300以上100,000以下であるのが好ましく、より好ましくは1,000以上90,000以下であり、さらに好ましくは2,000以上40,000以下である。また同様の理由から、分子量分布のピークは、1,000以上90,000以下であり、さらに好ましくは2,000以上40,000以下の範囲である。これらは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定可能である。
【0098】
<感光性表面処理剤>
本発明の一態様において、感光性表面処理剤は上記式(M1)で表される化合物を含む。また、本発明の一態様において、感光性表面処理剤は上記式(M1)で表される化合物からなっていてもよい。
【0099】
本発明の一態様において、感光性表面処理剤は上記式(P1)で表される繰返し単位を備える高分子化合物を含む。また、本発明の一態様において、感光性表面処理剤は上記式(P1)で表される繰返し単位を備える高分子化合物からなっていてもよい。
【0100】
本発明の一態様において、感光性表面処理剤は上記式(M1)で表される化合物と、上記式(P1)で表される繰返し単位を含む高分子化合物とを含む。
【0101】
本発明の一態様において、感光性表面処理剤は溶剤を含んでいてもよい。
溶剤としてアルコール系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系芳香族溶剤、アミン系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、エーテル系溶剤など一般的な有機溶剤に溶かすことで、好適な表面処理剤として用いることができる。
【0102】
アルコール系溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、n-ブチルアルコール(n-ブタノール)などが挙げられる。
【0103】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル(EAC)、酢酸ブチル(NBAC)、酢酸n-プロピル(NPAC)、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテートなどが挙げられる。
【0104】
炭化水素系芳香族溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼンなどが挙げられる。
【0105】
アミン系溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N、N-ジメチルアセトアミド(DMAC)が挙げられる。
【0106】
ケトン系溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン(DIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン(CPN)、シクロヘプタノン、アセトンなどが挙げられる。
【0107】
グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノt-ブチルエーテル(ETB)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロエーテル系溶剤ピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(MMB)などが挙げられる。
【0108】
その他の溶剤としては、塩素やフッ素を含むハロゲン系溶剤が挙げられ、例えば、クロロホルム、クロロベンゼン、フルオロアルキルエーテルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。有機溶剤は、公害性、溶解性、揮発性、基板や下地へのアタック性、成膜装置や成膜手法などの条件に応じて適宜選択することができる。
【0109】
本発明において、感光性表面処理層を難溶性にすることで、洗浄液やめっき液、多層成膜に用いられる溶剤などに不溶となり、配線及び積層工程において耐洗浄性やプロセス耐性などを向上できる。
【0110】
上記式(M1)で表される化合物からなる感光性表面処理剤の場合、下地剤と感光性表面処理剤、感光性表面処理剤の分子間での反応性を向上させる観点から、含まれる溶剤としてはアルコール系、エーテル系、炭化水素系溶媒が好ましく、特に炭化水素系溶媒、なかでもトルエンが好ましい。
さらに上記の反応性を高める観点から、成膜の際に任意の酸性あるいは塩基性化合物を含んでもよい。成膜条件に応じて適宜選択でき、とくに塩酸、酢酸、硝酸などの酸性化合物が好ましく、なかでも酢酸が好ましい。
【0111】
上記式(P1)で表される繰り返し単位を備える高分子化合物からなる感光性表面処理剤の場合、溶解性と成膜性の観点から、含まれる溶剤としてはエステル系、ケトン系溶媒が好ましく、特にケトン系溶媒、なかでもシクロペンタノンが好ましい。
【0112】
感光性表面処理剤に含まれる上記式(M1)で表される化合物または上記式(P1)で表される繰返し単位を備える高分子化合物の濃度としては、成膜条件に応じて適宜選択できるが、保管安定性や経済性の観点から、0.001~10質量%が好ましく、より好ましくは0.01~2質量%であり、なかでも0.1~0.3質量%が好ましい。
【0113】
<パターン形成方法>
本実施形態のパターン形成方法は、前記本実施形態の感光性表面処理剤を基板上に塗布し、感光性樹脂膜を成膜する工程と、感光性樹脂膜に所定のパターンの光を照射して、露光領域にアミン発生領域を形成する工程と、アミン発生領域に無電解めっき用触媒を配置し、無電解めっきを行う工程と、を備える。
以下、各工程について図面を参照して説明する。
【0114】
図1(a)に示すように、基板11の上に前記本実施形態の感光性表面処理剤10aを塗布する。
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ロールコート法、マイクログラビア法、リップコート法、インクジェット法、アプリケーター塗布、刷毛塗り等の塗布方法使用できる。また、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷法により塗布してもよい。またSAM膜、LB膜としてもよい。
【0115】
なお、本工程においては、図1(a)に示すように、例えば熱や減圧等によって溶剤を乾燥させる処理を加えてもよい。
【0116】
これにより、図1(b)に示すように基板11の上に感光性表面処理剤層10が形成される。
【0117】
次に、図1(c)に示すように、所定のパターンの露光領域を有するフォトマスク13を用意する。露光方法としては、フォトマスクを用いる手段に限られず、レンズやミラーなどの光学系を用いたプロジェクション露光、空間光変調素子、レーザービームなどを用いたマスクレス露光等の手段を用いることができる。なお、フォトマスク13は、感光性表面処理剤層10と接触するよう設けてもよいし、非接触となるよう設けてもよい。
【0118】
その後、図1(c)に示すように、フォトマスク13を介して感光性表面処理剤層10にUV光を照射する。これにより、フォトマスク13の露光領域において感光性表面処理剤層10が露光される。
【0119】
その結果、図1(d)に示すように、露光部にはアミン発生部14が、未露光部にはアミン未発生部12が形成される。
【0120】
UV光は例えば、波長が365nmのi線が挙げられる。また、その露光量や露光時間は、必ずしも完全に脱保護が進行する必要はなく、一部のアミンが発生する程度でよい。
【0121】
次に、図1(e)に示すように、表面に無電解めっき用触媒を付与し、触媒層15を形成する。無電解めっき用触媒は、無電解めっき用のめっき液に含まれる金属イオンを還元する触媒であり、銀やパラジウムが挙げられる。
【0122】
アミン発生部14の表面にはアミノ基が露出している。アミノ基は、上述の無電解めっき用触媒を捕捉・還元することが可能である。そのため、アミン発生部14上のみに無電解用めっき用触媒が捕捉され、触媒層15が形成される。また、無電解めっき用触媒はアミノ基が担持可能なものを用いることができる。
【0123】
図1(f)に示すように、無電解めっき処理を行い、めっき層16を形成する。なお、めっき層16の材料としては、ニッケル-リン(NiP)や、金(Au)、銅(Cu)が挙げられる。
【0124】
本工程では、基板11を無電解めっき浴に浸漬して触媒表面に金属イオンを還元し、めっき層16を析出させる。その際、アミン発生部14表面には十分な量の触媒を担持する触媒層15が形成されているため、アミン発生部14上にのみ選択的にめっき層16を析出させることができる。
【0125】
以上の工程により、前記本実施形態の感光性表面処理剤を用いて所定の基板に配線パターンを形成することが可能である。
【0126】
<トランジスタの製造方法>
さらに、上記<パターン形成方法>で得られためっき層16をゲート電極とするトランジスタの製造方法について図2を用いて説明する。
【0127】
図2(a)に示すように、上述したパターン形成方法により形成した無電解めっきパターンのめっき層16とアミン未発生部12とを覆うように、公知の方法により絶縁体層17を形成する。絶縁体層17は、例えば、紫外線硬化型のアクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、シリコーン樹脂等の1つ以上の樹脂を有機溶媒に溶解させた塗布液を用い、当該塗布液を塗布することにより形成してもよい。絶縁体層17を形成する領域に対応して開口部が設けられたマスクを介して塗膜に紫外線を照射することで、絶縁体層17を所望のパターンに形成することが可能である。なお、絶縁体層17を形成する前に、アミン未発生部12を必要に応じて除去してもよい。
【0128】
図2(b)に示すように、上述した無電解めっきパターン形成方法と同様にして絶縁体層17上に感光性表面処理剤層10を形成し、ソース電極及びドレイン電極が形成される部分にアミン発生部14を形成する。
【0129】
図2(c)に示すように、上述したパターン形成方法と同様にして、アミン発生部14上に無電解めっき用触媒を担持させ、触媒層15を形成した後、無電解めっきを行うことによりめっき層18(ソース電極)及びめっき層19(ドレイン電極)を形成する。なお、めっき層18及び19の材料としてもニッケル-リン(NiP)や、銅(Cu)が挙げられるが、めっき層16(ゲート電極)と異なる材料で形成してもよく、ニッケル-リン(NiP)や、銅(Cu)の表面に異なる金属、例えば無電解金めっきを行うことで、金(Au)を析出させてもよい。
【0130】
図2(d)に示すように、めっき層18(ソース電極)及びめっき層19(ドレイン電極)の間に半導体層21を形成する。
【0131】
半導体層21は、例えば、TIPSペンタセン(6,13-Bis(triisopropylsilylethynyl)pentacene)のような有機溶媒に可溶な有機半導体材料を当該有機溶媒に溶解させた溶液を作製し、めっき層18(ソース電極)及びめっき層19(ドレイン電極)の間に塗布、乾燥させることにより形成してもよい。
【0132】
また、半導体層21は、上記溶液にPS(ポリスチレン)やPMMA(ポリメタクリル酸メチル)などの絶縁性ポリマーを1種類以上添加し、当該絶縁性ポリマーを含む溶液を塗布、乾燥することにより形成してもよい。
【0133】
このようにして半導体層21を形成すると、半導体層21の下方(絶縁体層17側)に絶縁性ポリマーが集中して形成される。有機半導体と絶縁体層との界面にアミノ基などの極性基が存在する場合、トランジスタ特性の低下を生じる傾向にあるが、上述の絶縁性ポリマーを介して有機半導体を設ける構成とすることにより、トランジスタ特性の低下を抑制することができる。以上のようにして、トランジスタを製造することが可能である。
【0134】
上記のような方法によれば、UV露光工程において別途化学的なレジスト等を設ける必要がなく、フォトマスクのみによる簡素な工程とすることができる。従って当然ながら、レジスト層を除去する工程についても必要としない。また、アミノ基の触媒還元能により、通常必要となる触媒の活性化処理工程も省略することができ、大幅な低コスト化と時間短縮を実現しながら、高精細なパターニングが可能となる。また、ディップコート法を用いることができるため、ロール・ツー・ロール工程でも非常に相性良く利用することができる。
【0135】
なお、トランジスタの構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、トップコンタクト・ボトムゲート型、トップコンタクト・トップゲート型、ボトムコンタクト・トップゲート型のトランジスタも同様にして製造してもよい。
【0136】
<積層体>
本実施形態は、前記本実施形態の感光性表面処理剤を含む積層体である。
本実施形態の積層体は、基板と金属パターンとが積層された積層体であって、パターンが形成されていない未露光部に感光性表面処理剤を含む。
【0137】
<トランジスタ>
本実施形態は、前記本実施形態の感光性表面処理剤を含むトランジスタである。
本実施形態の積層体は、基板と金属パターンとが積層された積層体を有するトランジスタであって、パターンが形成されていない未露光部に感光性表面処理剤を含む。
【実施例0138】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0139】
以下に示す反応により、1-(4,5-dimethoxy-2-nitrophenyl)-2-methylpropanoneのニトロ化を行い、中間体A及び中間体Bを得た。
【0140】
【化45】
【0141】
100mLの広口ナスフラスコに、1-(4,5-dimethoxy-2-nitrophenyl)-2-methylpropanone 500mg(1.97mmol,1.0eq,MI457)を入れて、0℃(氷水)でfuming HNO 3mL(70.2mol,36eq)をゆっくり5分間かけて滴下後、室温で30分間撹拌した。
反応溶液にcold water(45mL)を加え、0℃で1時間撹拌後、メンプレンフィルタで吸引ろ過し、HO(45mL)でリンス、真空乾燥し、淡茶色固体 421mgを得た。
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒hexane:ethyl acetate=2:1)で精製し、濃縮、真空乾燥し、展開溶媒フラクション1として黄色オイルA(中間体A) 30mg(0.10mmol,5%)、フラクション2として淡黄色固体B(中間体B) 144mg(純度63%、換算収量91mg,0.30mmol,15%)を得た。
【0142】
中間体A及び中間体Bの測定結果を以下に示す。
中間体A
1H NMR (CDCl3) 1.23(6H, d), 2.82 (1H, m), 4.05 (3H, s), 4.07 (3H, s), 7.81 (1H, s).
13C NMR (CDCl3) 18.33, 41.80, 57.14, 62/69, 109.67, 124.30. 140.79, 146.30, 153.48, 201.89.
FTIR(NaCl) 1706, 1549, 1341, 1293 cm-1.
ESI MS 321.0730, calcd for C12H14N2O7Na [M + Na+] 321.0699.
Mp. 70.1-72.6℃
中間体B
1H NMR (CDCl3) 1.23 (6H, d), 2.92 (1H, m), 4.00 (3H, s), 4.04 (3H, s), 6.87 (1H, s).
13C NMR (CDCl3)18.54, 40.77, 57.24, 62.75, 111.03, 131.26, 134.63, 140.25, 142.46, 157.63, 203.96.
ESI MS 321.0723, calcd for C12H14N2O7Na [M + Na+] 321.0699.
Mp. 115.2-117.2 ℃
【0143】
<実施例1>
以下に示す反応により、上記で得た中間体Aを還元し、1-(3.4-dimethoxy-2.6-dinitrophenyl)-2-methylprooan-1-olを得た。
【0144】
【化46】
【0145】
20mLナスフラスコに、1-(3,4-dimethoxy-2,6-dinitrophenyl)-2-methylpropanone 57mg(0.19mmol,1.0eq)を入れてtetrahydrofuran(THF) 1mLとmethanol 0.5 mLに溶解し、0℃でsodium tetrahydroborate 11mg(0.29mmol,1.5eq)を少しずつ添加し、0℃で30分間撹拌、さらに室温で3時間撹拌した。
減圧濃縮後、ethyl acetate(2mL×5)と水(2mL)を加えて抽出、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥し、茶色粘体46mgを得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 hexane::ethyl acetate=3:1)で精製し、濃縮、真空乾燥し、黄色オイル18mg(純度60%、0.0036mmol、収率19%)を得た。
【0146】
1-(3.4-dimethoxy-2.6-dinitrophenyl)-2-methylprooan-1-olの測定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3) 0.74 (3H, d), 1.08 (3H, d), 2.07 (1H, m), 3.98 (3H, s), 4.00 (3H, s), 4.57 (1H, br), 7.46 (1H, s).
13C NMR (CDCl3) 19.26, 19.67, 33.79, 56.81, 62.46, 74.75, 110.26, 123.02, 144.35, 144.54, 145.88, 151.90.
FTIR(NaCl) 3565, 2967, 1547, 1350, 1293 cm-1.
ESI MS 323.0883, calcd for C12H16N2O7Na [M + Na+] 323.0855.
【0147】
さらに、以下に示す反応により、モデル化合物A(1-(3,4-dimethoxy-2,6-dinitrophenyl)-2-methylpropyl N-butylcarbamate)を合成した。
【0148】
【化47】
【0149】
10mLすり付試験管に、1-(3,4-dimethoxy-2,6-dinitrophenyl)-2-methylpropanol 17mg(純度60%、0.034mmol)を入れてdry tetrahydrofuran (THF) 1mLに溶解し、dibutyltin dilaurate (DBTL) 5μL(0.008mmol,0.2eq)、butyl isocyanate(BuNCO)20μL(0.75mmol,22eq)を加えて、窒素雰囲気下、19時間還流した。減圧濃縮、真空乾燥し、濃茶色固体 56mgを得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒chloroform)で精製し、濃縮、真空乾燥し、黄色オイルの目的物(モデル化合物A) 13mg(0.030mmol,収率88%)を得た。
【0150】
モデル化合物Aの測定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3) 0.88 (3H, t), 0.89 (3H, d), 0.93 (3H, d), 1.32 (2H, m), 1.47 (2H, m), 2.25 (1H, m), 3.12 (2H, m), 3.97 (6H, s), 4.68 (1H, br), 5.92 (1H, d), 7.52 (1H, s).
13C NMR (CDCl3). 13.70, 18.21, 19.80, 19.98, 31.80, 33.18, 40.83, 56.73, 62.42, 74.89, 109.90, 121.37, 144.56, 144.76, 144.83, 151.86, 155.29
ESI MS 422.1571, calcd for C17H25N3O8Na [M + Na+] 422.1539.
【0151】
<実施例2>
以下に示す反応により、上記で得た中間体Bを還元し、1-(4.5-dimethoxv-2.3-dinitrophenyl)-2-methylpropan-1-olを得た。
【0152】
【化48】
【0153】
50mLナスフラスコに、1-(4,5-dimethoxy-2,3-dinitrophenyl)-2-methylpropanone 144mg(純度63%,換算91mg,0.30mmol,1.0eq)を入れてtetrahydrofuran (THF) 2mLとmethanol 1mLに溶解し、0℃でsodium tetrahydroborate 17mg(0.45mmol,1.5eq)を少しずつ涼加し、0℃で30分間撹拌、さらに室温で3時間撹拌した。
減圧濃縮後、ethyI acetate(2mL×5)と水(5mL)を加えて抽出、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥し、茶色粘体139mgを得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒hexane:ethyl acetate=2:1)で精製し、濃縮、真空乾燥し、原料を含む目的物)として黄色オイル75mg(0.25mmol,82%)を得た。
【0154】
1-(4.5-dimethoxv-2.3-dinitrophenyl)-2-methylpropan-1-olの測定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3) 0.92 (3H, d), 0.97 (3H, d), 1.95 (1H, m), 2.21(1H, d), 3.99 (3H, s), 4.01 (3H, s), 4.87 (1H, br), 7.31 (1H, s).
13C NMR (CDCl3). 16.83, 19.48, 34.70, 56.83, 62.62, 73.28, 111.71, 134.10, 135.89, 140.07, 140.94, 156.12.
FTIR(NaCl) 3585, 2964, 1551, 1350, 1291 cm-1.
ESI MS 323.0873, calcd for C12H16N2O7Na [M + Na+] 323.0855.
【0155】
さらに、以下に示す反応により、モデル化合物B(1-(4,5-dimethoxy-2,3-dinitrophenyl)-2-methylpropyl N-butylcarbamate)を合成した。
【0156】
【化49】
【0157】
10mLすり付試験管に、1-(4,5-dimethoxy-2,3-dinitrophenyl)-2-methylpropan-1-ol 150mg(0.50mmol)を入れてdry tetrahydrofuran (THF) 1.5mLに溶解し、dibutyltin dilaurate (DBTL) 15μL(0.025mmol,0.05eq)、butyl isocyanate(BuNCO) 85μL(0.75mmol,1.5eq)を加えて、窒素雰囲気下、19時間還流した。減圧濃縮、真空乾燥し、濃茶色固体 251mgを得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒hexane: ethyl acetate =2:1)で精製し、濃縮、真空乾燥した。hexaneでリンス後、真空乾燥し、橙色固体の目的物(モデル化合物B) 156mg(0.39mmol,78%)を得た。
【0158】
モデル化合物Bの測定結果を以下に示す。
1H NMR (CDCl3) 0.90 (3H, t), 0.91 (3H, d), 1.03 (3H, d), 1.32 (2H, m), 1.45 (2H, m), 2.18 (1H, m), 3.13 (2H, m), 3.93 (3H x 2, 2s), 4.76 (1H, br), 5.61 (1H, d), 6.97 (1H, s).
13C NMR (CDCl3) 13.69, 17.88, 19.21, 19.86, 31.88, 33.39, 40.85, 56.71, 62.58, 76.04, 111.29, 131.17, 134.82, 140.45, 141.14, 155.28, 155.84.
Anal. Calcd for C17H25N3O8: C 51.12, H 6.31, N 10.52%. Found: C 51.07, H6.20, N 10.42%.
FTIR (KBr disk): 1693, 1557, 1359 cm-1.
Mp 106.9 - 108.1 °C
【0159】
<比較例1>
以下に示す反応により、モノニトロ化合物(Synthesis of 1-(4,5-dimethoxy-2-nitrophenyl)-2-methylpropyl N-butylcarbamate)を製造した。
【0160】
【化50】
【0161】
200mLのナスフラスコに、1-(4,5-dimethoxy-2-nitrophenyl)-2-methylpropyl(2-methylene-5-oxopyrrolidin-1-yl)carbonate 4.0g(10mmol)を入れてdry tetrahydrofuran(THF)40mLに溶解し、butylamine 2mL(20mmol,2eq)を加えて、窒素雰囲気下、3時間、室温で撹拌した。減圧濃縮、酢酸エチル 80mLに溶解し、水 40mLで3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、真空乾燥し、薄黄色固体 4.51gを得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 chloroform)で精製し、濃縮、真空乾燥し、目的物であるモノニトロ化合物を3.41g(9.62mmol,収率96%)を得た。
【0162】
1-(4,5-dimethoxy-2-nitrophenyl)-2-methylpropyl (2-methylene-5-oxopyrrolidin-1-yl) carbonateはすでに報告している方法(以下の非特許文献1及び非特許文献2に記載の方法)で合成した。
非特許文献1:Noriko Chikaraishi Kasuga, Yusuke Saito, Naomichi Okamura, Tatsuya Miyazaki, Hikaru Satou, Kazuhiro Watanabe, Takaki Ohta, Shu-hei Morimoto, Kazuo Yamaguchi, Influences of alpha-substituent in 2-nitrobenzyl-protected esters on both photocleavage rate and subsequent photoreaction of the generated 2-nitrosoketones: A novel photorearrangement of 2-nitrosoketones, J. Photochem. Photobiol. A: Chem., 2016, 321, 41-47.
非特許文献2:Takuma Igari and Kazuo Yamaguchi, 2-Nitrobenzylcarbamate-bearing Alkylphosphonic Acid Derivative Forms Photodegradable Self-assembled Monolayer That Enables Fabrication of a Patterned Amine Surface, Chem. Lett. 2017, 46(8)1220-1222.
【0163】
モノニトロ化合物の測定結果を以下に示す。
1H-NMR ( CDCl3 )0.90 ( 3H, t ), 0.99 ( 6H, m ), 1.31 ( 2H, sext ), 1.46 ( 2H, quint ), 2.14 ( 1H, sept ), 3.14 ( 2H, m ), 3.94 ( 6H, s ), 4.76 ( 1H, t ), 6.23 ( 1H, d ), 6.90 ( 1H, s ), 7.61 ( 1H, s )
13C-NMR(CDCl3) 13.71, 17.20, 19.43, 19.88, 32.04, 33.34, 40.78, 56.33, 75.74, 107.97, 108.94, 132.17, 140.65, 147.76, 153.02, 155.73
FTIR(KBr) 3303, 1685, 1518, 1274 cm-1
【0164】
<光分解速度定数k(s-1)の測定>
上記で得られたモデル化合物A、モデル化合物B及びモノニトロ化合物を、それぞれアセトニトリルに溶解して0.1mM溶液を調製した。
超高圧水銀灯で365nmバンドパスフィルタ及び水フィルタを介して、波長365nm、照度25mW/cmの光を5、10、15、20、25、30秒間照射し、それぞれHPLC測定した。
【0165】
HPLC測定より得られた原料のピーク面積(S:光照射前の面積、S:光照射t秒後の面積)を下記の式に代入して、原料の減少率から光分解速度定数k(s-1)を求めた。その結果を表1に示す。
【0166】
【数1】
【0167】
<モル吸光係数(ε365/M-1cm-1)の測定>
上記で得られたモデル化合物A、モデル化合物B及びモノニトロ化合物を、それぞれアセトニトリルに溶解して0.1mM溶液を調製した。光路長1cmの石英セルに溶液を入れ、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製V-570)を用いて測定した吸光度からモル吸光係数(ε365/M-1cm-1)を算出した。
【0168】
<半減期(t1/2/s)の算出>
光分解速度定数から半減期(t1/2/s)を算出した。
【0169】
<光反応効率(Φ365)の算出>
濃度0.1mM溶液を用いて測定した光分解速度定数と吸光度(A365)とから、下記の方法で光反応効率(Φ365)を算出した。
光反応効率(Φ365)=光分解速度定数(k)/吸光度(A365)
【0170】
【表1】
【0171】
ジニトロベンジル基を有するモデル化合物A及びBは、モノニトロベンジル基を有するモノニトロ化合物よりも、約4倍又はそれ以上高い光反応効率を有することが確認できた。
また、ジニトロベンジル基を有するモデル化合物A及びBは、モノニトロベンジル基を有するモノニトロ化合物よりも、光分解速度が速かった。
さらに、モデル化合物AとBとを比べると、モデル化合物Bは光分解速度がより速いことが確認できた。
【0172】
上記モデル化合物A及びBの結果から、ジニトロベンジル基を有する式(M1)で表される化合物、式(P1)で表される高分子化合物も、高い光反応効率や光分解速度の向上という同様の効果が奏されることが十分に推察できる。
【符号の説明】
【0173】
11:基板、10a:感光性表面処理剤、10:感光性表面処理剤層、13:フォトマスク、14:アミン発生部、12:アミン未発生部、15:触媒層、16:めっき層、17:絶縁体層、18:めっき層(ソース電極)、19:めっき層(ドレイン電極)、21:半導体層
図1
図2