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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093274
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】静電チャック装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
H01L21/68 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209541
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】乾 敏祥
(72)【発明者】
【氏名】金原 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】一由 拓
(72)【発明者】
【氏名】菅又 徹
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131AA40
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131BA23
5F131CA03
5F131CA06
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB81
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】冷却効率を高めた静電チャック装置を提供する。
【解決手段】厚さ方向の一方側を向く載置面で板状試料を支持するとともに静電吸着用内部電極を内蔵するプレート状の静電チャック部と、厚さ方向の他方側から静電チャック部を支持し静電チャック部を冷却するベース部と、静電チャック部とベース部との間に位置し静電チャック部とベース部とを固定する第1接着部を有する接着層と、筒状の絶縁碍子と、を備え、静電チャック部には、厚さ方向に沿って延びる第1貫通孔が設けられ、ベース部には、厚さ方向に沿って延びて第1貫通孔と連通する第2貫通孔が設けれ、第2貫通孔には、絶縁碍子が配置され、ベース部は、静電チャック部と対向する対向面を有し、第2貫通孔の開口に位置し対向面と連なる湾曲面と、を有する、静電チャック装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向の一方側を向く載置面で板状試料を支持するとともに静電吸着用内部電極を内蔵するプレート状の静電チャック部と、
前記厚さ方向の他方側から前記静電チャック部を支持し前記静電チャック部を冷却するベース部と、
前記静電チャック部と前記ベース部との間に位置し前記静電チャック部と前記ベース部とを固定する第1接着部を有する接着層と、
筒状の絶縁碍子と、を備え、
前記静電チャック部には、前記厚さ方向に沿って延びる第1貫通孔が設けられ、
前記ベース部には、前記厚さ方向に沿って延びて前記第1貫通孔と連通する第2貫通孔が設けれ、
前記第2貫通孔には、前記絶縁碍子が配置され、
前記ベース部は、
前記静電チャック部と対向する対向面を有し、
前記第2貫通孔の開口に位置し前記対向面と連なる湾曲面と、を有する、
静電チャック装置。
【請求項2】
前記第2貫通孔の中心軸線に沿う断面における前記湾曲面の曲率半径は、前記静電吸着用内部電極の厚さ寸法よりも大きい、
請求項1に記載の静電チャック装置。
【請求項3】
前記第2貫通孔の中心軸線に沿う断面における前記湾曲面の曲率半径は、前記第1接着部の厚さ寸法よりも大きい、
請求項1に記載の静電チャック装置。
【請求項4】
前記第2貫通孔の中心軸線に沿う断面における前記湾曲面の曲率半径は、10μm以上である、
請求項1に記載の静電チャック装置。
【請求項5】
前記接着層は、前記湾曲面の全体を覆う、
請求項1に記載の静電チャック装置。
【請求項6】
前記絶縁碍子の前記厚さ方向の一方側の端面は、前記湾曲面と前記第2貫通孔の前記厚さ方向の他方側の端部よりも前記厚さ方向の他方側に位置し、
前記接着層は、前記絶縁碍子の前記端面と前記静電チャック部との間に位置する第2接着部を有する、
請求項5に記載の静電チャック装置。
【請求項7】
前記第2接着部の厚さ寸法は、前記第1接着部の厚さ寸法の2倍以上である、
請求項6に記載の静電チャック装置。
【請求項8】
前記第2貫通孔の径方向における前記第2接着部の寸法は、前記第1接着部の厚さ寸法よりも大きい、
請求項6に記載の静電チャック装置。
【請求項9】
前記接着層は、前記第2貫通孔の内周面と前記絶縁碍子の外周面の間に介在し前記絶縁碍子を前記第2貫通孔の内周面に固定する第3接着部を有する、
請求項5に記載の静電チャック装置。
【請求項10】
前記絶縁碍子の内部の体積は、前記第1貫通孔の内部の体積の5倍以上である、
請求項1に記載の静電チャック装置。
【請求項11】
前記絶縁碍子の内周面の算術平均粗さRaは、前記第1貫通孔の内周面の算術平均粗さRaよりも大きい、
請求項1に記載の静電チャック装置。
【請求項12】
前記絶縁碍子の内周面の算術平均粗さRaは、前記第1貫通孔の内周面の算術平均粗さRaの2倍以上である、
請求項11に記載の静電チャック装置。
【請求項13】
前記絶縁碍子の内周面の算術平均粗さRaは、1.5μm以上であり、
前記第1貫通孔の内周面の算術平均粗さRaは、0.5μm以下である、
請求項11に記載の静電チャック装置。
【請求項14】
前記絶縁碍子の内周面には、前記厚さ方向の一方側に向かうに従い直径を小さくするテーパ面が設けられる、
請求項1に記載の静電チャック装置。
【請求項15】
前記対向面と前記第2貫通孔の内周面との境界部には、面取り部が設けられ、
前記湾曲面は、前記対向面と前記面取り部とに連なる、
請求項1に記載の静電チャック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置においては、ウエハやガラス基板などの板状試料をチャック面に固定する静電チャック装置が使用されている。静電チャック装置は、静電吸着機構を有する静電チャック部と、静電チャック部を冷却するベース部と、静電チャック部とベース部とを接着する接着層と、を有する。このような静電チャック装置には、冷却ガスを導入するための貫通孔が設けられている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-31665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷却ガスによる冷却効率を高めるためには、例えば、貫通孔を大きくしてベース部における冷却ガスの吸熱量を多くすることなどが考えられる。しかしながら、この場合には、貫通孔が大きくなることでベース部や静電チャック部からの放電が生じやすくなるなどの問題が生じうる。すなわち、冷却ガスによる板状試料の冷却効率を高めるためには、このような問題を解決する必要がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、放電を抑制し冷却効率を高めた静電チャック装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、以下の態様を包含する。以下の発明は2つ以上を互いに組み合わせてもよい。
[1] 厚さ方向の一方側を向く載置面で板状試料を支持するとともに静電吸着用内部電極を内蔵するプレート状の静電チャック部と、前記厚さ方向の他方側から前記静電チャック部を支持し前記静電チャック部を冷却するベース部と、前記静電チャック部と前記ベース部との間に位置し前記静電チャック部と前記ベース部とを固定する第1接着部を有する接着層と、筒状の絶縁碍子と、を備え、前記静電チャック部には、前記厚さ方向に沿って延びる第1貫通孔が設けられ、前記ベース部には、前記厚さ方向に沿って延びて前記第1貫通孔と連通する第2貫通孔が設けれ、前記第2貫通孔には、前記絶縁碍子が配置され、前記ベース部は、前記静電チャック部と対向する対向面を有し、前記第2貫通孔の開口に位置し前記対向面と連なる湾曲面と、を有する、静電チャック装置。
[2] 前記第2貫通孔の中心軸線に沿う断面における前記湾曲面の曲率半径は、前記静電吸着用内部電極の厚さ寸法よりも大きい、[1]の静電チャック装置。
[3] 前記第2貫通孔の中心軸線に沿う断面における前記湾曲面の曲率半径は、前記第1接着部の厚さ寸法よりも大きい、[1]又は[2]の静電チャック装置。
[4] 前記第2貫通孔の中心軸線に沿う断面における前記湾曲面の曲率半径は、10μm以上である、[1]~[3]の何れか一項の静電チャック装置。
[5] 前記接着層は、前記湾曲面の全体を覆う、[1]~[4]の何れか一項の静電チャック装置。
[6] 前記絶縁碍子の前記厚さ方向の一方側の端面は、前記湾曲面と前記第2貫通孔の前記厚さ方向の他方側の端部よりも前記厚さ方向の他方側に位置し、接着層は、前記絶縁碍子の前記端面と前記静電チャック部との間に位置する第2接着部を有する、[5]に記載の静電チャック装置。
[7] 前記第2接着部の厚さ寸法は、前記第1接着部の厚さ寸法の2倍以上である、[6]に記載の静電チャック装置。
[8] 前記第2貫通孔の径方向における前記第2接着部の寸法は、前記第1接着部の厚さよりも大きい、[6]又は[7]に記載の静電チャック装置。
[9] 前記接着層は、前記第2貫通孔の内周面と前記絶縁碍子の外周面の間に介在し前記絶縁碍子を前記第2貫通孔の内周面に固定する第3接着部を有する、[5]~[8]の何れか一項に記載の静電チャック装置。
[10] 前記絶縁碍子の内部の体積は、前記第1貫通孔の内部の体積の5倍以上である、[1]~[9]の何れか一項に記載の静電チャック装置。
[11] 前記絶縁碍子の内周面の算術平均粗さRaは、前記第1貫通孔の内周面の算術平均粗さRaよりも大きい、[1]~[10]の何れか一項に記載の静電チャック装置。
[12] 前記絶縁碍子の内周面の算術平均粗さRaは、前記第1貫通孔の内周面の算術平均粗さRaの2倍以上である、[11]に記載の静電チャック装置。
[13] 前記絶縁碍子の内周面の算術平均粗さRaは、1.5μm以上であり、前記第1貫通孔の内周面の算術平均粗さRaは、0.5μm以下である、[11]または[12]に記載の静電チャック装置。
[14] 前記絶縁碍子の内周面には、前記厚さ方向の一方側に向かうに従い直径を小さくするテーパ面が設けられる、[1]~[13]の何れか一項に記載の静電チャック装置。
[15] 前記対向面と前記第2貫通孔の内周面との境界部には、面取り部が設けられ、前記湾曲面は、前記対向面と前記面取り部とに連なる、[1]~[14]の何れか一項の静電チャック装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、放電を抑制し冷却効率を高めた静電チャック装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態の静電チャック装置の断面図である。
図2図2は、図1の領域IIの拡大図である。
図3図3は、第1実施形態に採用可能な湾曲面の変形例を示す断面模式図である。
図4図4は、第1実施形態の半導体製造装置の説明図である。
図5図5は、第2実施形態の静電チャック装置の断面拡大図である。
図6図6は、第3実施形態の静電チャック装置の断面拡大図である。
図7図7は、第4実施形態の静電チャック装置の断面拡大図である。
図8図8は、第5実施形態の静電チャック装置の断面拡大図である。
図9図9は、第5実施形態の変形例の静電チャック装置の断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の静電チャック装置1の断面図である。また、図2は、図1の領域IIの拡大図である。
静電チャック装置1は、静電チャック部2とベース部3と接着層4と絶縁碍子40とを有する。静電チャック部2は、プレート状であり、厚さ方向Zの一方側を向く載置面2aで板状試料Wを支持する。静電チャック部2は、内蔵する静電吸着用内部電極13によって板状試料Wを吸着する。ベース部3は、厚さ方向Zの他方側から静電チャック部2を支持する。ベース部3は、静電チャック部2を冷却する。接着層4は、ベース部3と、静電チャック部2とベース部3との間に位置する。絶縁碍子40は、筒状であり、ベース部3に固定される。
【0011】
以下、本実施形態の静電チャック装置1の各部について詳細に説明する。
本明細書において、静電チャック部2の厚さ方向Zを基準に各部の説明を行う。すなわち、静電チャック部2の載置面2aが向く方向を厚さ方向Zの一方側とし、その反対側を厚方向の他方側と呼ぶ。また、本明細書において、厚さ方向Zの一方側を上側に向けた姿勢で、静電チャック装置1の相対的な位置関係を説明する場合がある。以下の説明における上下方向は、静電チャック装置1の使用時の姿勢の一例における方向であって、使用時の静電チャック装置1の姿勢を限定するものではない。
【0012】
(静電チャック部)
静電チャック部2は、上側から順に、載置板11と、静電吸着用内部電極13および静電吸着用内部電極13の周縁部を囲む絶縁材層14と、支持板12と、が積層された構造を有する。また、静電チャック部2は、接着層4およびベース部3を貫通して、静電吸着用内部電極13に電圧を印加する給電用端子15を有する。
【0013】
静電チャック部2は、上面を半導体ウエハ等の板状試料Wを載置するための載置面2aとする円形状の載置板11と、この載置板11の下面側に対向配置された円形状の支持板12と、これら載置板11と支持板12との間に挟持され載置板11および支持板12より径の小さい円形状の静電吸着用内部電極13と、この静電吸着用内部電極13の下面に接続されて直流電圧を印加する給電用端子15と、を有する。
【0014】
載置板11および支持板12は、酸化アルミニウム-炭化ケイ素(Al-SiC)複合焼結体、酸化アルミニウム(Al)焼結体、窒化アルミニウム(AlN)焼結体、酸化イットリウム(Y)焼結体等の機械的な強度を有し、かつ腐食性ガスおよびそのプラズマに対する耐久性を有する絶縁性のセラミックス焼結体からなる。載置板11は、上側に載置面2aを構成することから、特に誘電率が高い材質であって、静電吸着する板状試料Wに対して不純物とならない材料から構成されることが好ましい。このような観点から、載置板11の構成材料として、炭化ケイ素を4重量%以上かつ20重量%以下含み、残部を酸化アルミニウムとする炭化ケイ素-酸化アルミニウム複合焼結体を採用することが好ましい。
【0015】
図2に示すように、載置板11の載置面2aには、直径が板状試料Wの厚みより小さい突起部16が複数個形成され、これらの突起部16が板状試料Wを支える。
【0016】
静電吸着用内部電極13は、載置板11の下側に位置する。静電吸着用内部電極13は、電荷を発生させて静電吸着力で板状試料Wを固定するための静電チャック用電極として用いられるもので、その用途によって、その形状や、大きさが適宜調整される。例えば、静電吸着用内部電極13は、静電吸着用内部電極13が形成される階層に、所定のパターンを有する電極として設けられる。なお、静電吸着用内部電極13は、パターンを有しない、いわゆるベタ電極として設けられていても機能する。
【0017】
静電吸着用内部電極13は、スパッタや蒸着により支持板12に金属箔を成膜することで形成できる。他にも、静電吸着用内部電極13の形成材料である導電性材料と、有機物との複合材料を、スクリーン印刷等の塗工法を用いて塗布することにより形成することができる。
【0018】
静電吸着用内部電極13は、酸化アルミニウム-炭化タンタル(Al-Ta)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム-タングステン(Al-W)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム-炭化ケイ素(Al-SiC)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム-タングステン(AlN-W)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム-タンタル(AlN-Ta)導電性複合焼結体、酸化イットリウム-モリブデン(Y-Mo)導電性複合焼結体等の導電性セラミックス、あるいは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属により形成することができる。また、静電吸着用内部電極13は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、炭素(C)により形成することもできる。静電吸着用内部電極13の厚さ寸法d1は、特に限定されるものではないが、3μm以上200μm以下から選定されることが多く、10μm以上100μm以下がより好ましい。
【0019】
絶縁材層14は、載置板11および支持板12を接合一体化するとともに、静電吸着用内部電極13をプラズマから保護するためのものである。この絶縁材層14を構成する材料としては、載置板11および支持板12と主成分が同一の絶縁性材料が好ましく、例えば、載置板11および支持板12が炭化ケイ素-酸化アルミニウム複合焼結体により構成されている場合には、酸化アルミニウム(Al)とするのが好ましい。
【0020】
給電用端子15は、静電吸着用内部電極13に直流電圧を印加するために設けられた棒状のもので、給電用端子15の形成材料としては、耐熱性に優れた導電性材料であれば特に制限されるものではなく、金属材料や導電性有機材料を用いることができる。給電用端子15は、ベース部3に対して絶縁されている。
【0021】
(ベース部)
ベース部3は、静電チャック部2の下側に設けられて、この静電チャック部2の温度を所望の温度に制御する。ベース部3は、静電チャック部2と対向する対向面3aを有する。対向面3aは、ベース部3の上面である。ベース部3は、対向面3aで静電チャック部2を支持する。
【0022】
ベース部3は、高周波発生用電極の機能を兼ね備えている。ベース部3の内部には、水や有機溶媒等の冷却用媒体を循環させる流路21が形成されている。これにより、ベース部3は、静電チャック部2を冷却し、載置面2aに載置される板状試料Wの温度を所望の温度に維持する。加えて、ベース部3は、後述する冷却ガスCを冷却し、冷却ガスCを介して板状試料Wを冷却する。
【0023】
ベース部3は、アルミニウム(Al)又はアルミニウム合金からなる。ベース部3の少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理が施されているか、あるいはアルミナ等の絶縁膜が成膜されていることが好ましい。これにより、耐プラズマ性が向上する他、異常放電が防止され、したがって、耐プラズマ安定性が向上したものとなる。また、表面に傷が付き難くなるので、傷の発生を防止することができる。なお、ベース部3は、熱伝導性のよい金属材料であればその材質が限定されることはなく、例えば、銅(Cu)、銅合金、ステンレス鋼(SUS)等を採用しもよい。
【0024】
(接着層)
接着層4は、第1接着部4aと第2接着部4bと余剰部4eと、を有する。第1接着部4aは、静電チャック部2の下面2bとベース部3の対向面3aとの間に位置する。第1接着部4aは、静電チャック部2とベース部3とを固定する。第1接着部4aの厚さ寸法t1は、例えば20μm以上300μm以下である。
【0025】
第2接着部4bは、静電チャック部2の下面2bと絶縁碍子40の上端面40aとの間に配置される。本実施形態において、第2接着部4bの厚さ寸法は、第1接着部4aの厚さ寸法と略等しい。余剰部4eは、絶縁碍子40の内周面40bよりも径方向内側の領域で、前記静電チャック部2の下面2bに接着する部分である。余剰部4eは、除去されていてもよい。
【0026】
接着層4は、例えば、-20℃~150℃の温度範囲で耐熱性を有する接着剤から構成されることが好ましい。接着層4を構成する接着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、エポキシ系樹脂等が好適である。特に、酸素系プラズマを用いる場合には、酸素系プラズマに対して耐プラズマ性に優れているシリコン系樹脂が好ましい。
【0027】
本実施形態において、第1接着部4aと第2接着部4bは、単一の接着剤から構成される。しかしながら、第1接着部4aと第2接着部4bとは、互いに異なる工程によって形成された異なる接着剤の各部であってもよい。一例として、第1接着部4aは、シート状の接着剤を硬化させたものであり、第2接着部4bは液状の接着剤を硬化させたものであってもよい。
【0028】
(冷却ガス導入孔)
静電チャック部2、ベース部3、および接着層4には、これらを上下に貫通するピン挿通孔30Bと冷却ガス導入孔30とがそれぞれ複数設けられている。ピン挿通孔30Bは、載置面2aに吸着された板状試料Wの離脱を補助するリフトピン22が挿通される。リフトピン22の下端には、図示略の駆動部が接続され、ピン挿通孔30Bの貫通方向に沿ってリフトピン22を上下に駆動する。本実施形態では、ピン挿通孔30Bの構成は、冷却ガス導入孔30の構成とされている。本実施形態によれば、ピン挿通孔30B、および冷却ガス導入孔30の形成する工程を共通化することができ、静電チャック装置1の製造コストの低減を図ることができる。なお、リフトピン22が設置されるピン挿通孔30Bは冷却ガス導入孔を兼ねる場合と兼ねない場合が有り得え、設計の状況により種々選択される。
【0029】
冷却ガス導入孔30は、静電チャック部2に載置された板状試料Wに向かってヘリウム(He)等の冷却ガスCを供給するために設けられている。冷却ガス導入孔30は、静電チャック部2を貫通する部分である第1貫通孔31と、ベース部3を貫通する部分である第2貫通孔32と、を有する。すなわち、静電チャック部2には第1貫通孔31が設けられ、ベース部3には第2貫通孔32が設けられ、第1貫通孔31、および第2貫通孔32は、互いに連通して冷却ガス導入孔30を構成する。
【0030】
第1貫通孔31、および第2貫通孔32は、厚さ方向Zから見て円形である。本実施形態において、第1貫通孔31、よび第1貫通孔31が延びる方向は、厚さ方向Zと一致する。しかしながら、第1貫通孔31、および第2貫通孔32は、厚さ方向Zに沿って延びていれば、厚さ方向Zに対し傾斜して延びていてもよい。また、第1貫通孔31と第2貫通孔32の延びる方向は、互いに平行でなくてもよい。本実施形態の第1貫通孔31および第2貫通孔32は、互いに中心軸線Jが一致している。しかしながら、第1貫通孔31と第2貫通孔32とは、互いに連通していれば中心軸線同士がずれていてもよい。
【0031】
第2貫通孔32には、筒状の絶縁碍子40が配置されている。第2貫通孔32の内径は、第1貫通孔31の内径より大きい。第2貫通孔32の上側の開口には、湾曲面3fが設けられる。湾曲面3fについては、後段において詳細に説明する。
【0032】
第2貫通孔32は、中心軸線Jを囲む内周面32aを有する。本明細書において、第2貫通孔32の内周面32aとは、第2貫通孔32の中心軸線Jを中心として延びる円筒面を意味し、湾曲面3fは第2貫通孔32の内周面32aに含まれないものとする。
【0033】
(絶縁碍子)
絶縁碍子40は、例えばセラミックからなる。絶縁碍子40は、プラズマに対する耐久性を有する。絶縁碍子40を構成するセラミックスとしては、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al)、窒化ケイ素(Si)、酸化ジルコニウム(ZrO)、サイアロン、窒化ホウ素(BN)、炭化ケイ素(SiC)から選択された1種からなるセラミックス、あるいは2種以上を含む複合セラミックスを採用できる。
【0034】
本実施形態において、絶縁碍子40の上端面40aは、ベース部3の対向面3aと略同一平面上に配置される。絶縁碍子40の外径は、第2貫通孔32の内径と略等しい。絶縁碍子40の外周面40cは、第2貫通孔32の内周面32aに固定される。絶縁碍子40は、第2貫通孔32に嵌合によって固定されていてもよいし、接着固定されていてもよい。
【0035】
絶縁碍子40は、第2貫通孔32の長さと略等しく、第1貫通孔31の長さよりも大きい。また、絶縁碍子40の内径は、第1貫通孔31の内径よりも大きい。絶縁碍子40の内径は、第1貫通孔31の内径の2倍以上であることが好ましい。冷却ガスCは、絶縁碍子40の内部V2を上側に向かって流れて、第1貫通孔31の内部V1に侵入する。冷却ガスCは、第1貫通孔31の内部V1をさらに上側に向かって流れ、上端の開口から上側に吹き出される。冷却ガスCの流路長さは、絶縁碍子40の内部V2の方が、第1貫通孔31の内部V1よりも長い。冷却ガスCの流路断面積は、絶縁碍子40の内部V2の方が、第1貫通孔31の内部V1よりも大きい。このため、絶縁碍子40の内部V2の体積を、第1貫通孔31の内部V1の体積よりも大きい。
【0036】
絶縁碍子40の内部V2の体積は、第1貫通孔31の内部V1の体積の5倍以上であることが好ましい。冷却ガスCは、絶縁碍子40の内部V2を通過する際に絶縁碍子40を介してベース部3によって冷却される。絶縁碍子40の内部V1の体積を大きくすることで、冷却ガスCに接触する内周面40bの面積を広くし、冷却ガスCの温度をさらに下げることができる。一方で、第1貫通孔31の内部V1の体積を大きくすると、冷却ガスCと静電チャック部2との接触面積が大きくなり、静電チャック部2による冷却ガスCの加熱が促進され冷却ガスCの温度が上がる。さらに、第1貫通孔31の内径が大きくなると第1貫通孔31の上側の開口から板状試料Wの下側に吹き出される冷却ガスCの流速が低下してしまい、冷却ガスCによる冷却効率が低下する虞がある。本実施形態によれば、絶縁碍子40の内部V2の体積を、第1貫通孔31の内部V1の体積の5倍以上とすることで、冷却ガスCの温度を下げつつ冷却ガスCの流速を確保でき、板状試料Wの冷却効率を高めることができる。
【0037】
本実施形態において、絶縁碍子40の内周面40bの算術平均粗さRaは、第1貫通孔31の内周面31aの算術平均粗さRaよりも大きいことが好ましい。上述したように、冷却ガス導入孔30を通過する冷却ガスCは、絶縁碍子40の内周面40bを介してベース部3に熱を移動させる。このため、絶縁碍子40の内周面40bの算術平均粗さRaを大きくして内周面40bの表面積を大きくすることで冷却ガスCからベース部3により多くの熱が伝わり冷却ガスCの冷却効率を高めることができる。一方で、第1貫通孔31の算術平均粗さRaを大きくすると、冷却ガスCと静電チャック部2との接触面積が大きくなり、静電チャック部2による冷却ガスCの加熱が促進されてしまう。また、第1貫通孔31の内周面31aの算術平均粗さRaを大きくすると、板状試料Wの加工時に発生するパーティクルが内周面31aに堆積し易くなる。第1貫通孔31の内周面31aに堆積したパーティクルは、突発的に剥離し板状試料Wの加工に悪影響を与える虞がある。本実施形態によれば、絶縁碍子40の内周面の表面積を広く確保して冷却ガスCの冷却効率を高めつつ、第1貫通孔31の内周面31aにパーティクルが堆積することを抑制することができる。
【0038】
絶縁碍子40の内周面40bの算術平均粗さRaは、第1貫通孔31の内周面31aの算術平均粗さRaの2倍以上であることが好ましい。この場合、絶縁碍子40の内周面40bで冷却ガスCを十分に冷却し、第1貫通孔31の内周面31aによって加熱されにくい冷却ガス導入孔30を構成できる。また、同様の理由から、絶縁碍子40の内周面40bの算術平均粗さRaは、第1貫通孔31の内周面31aの算術平均粗さRaの3倍以上であることがより好ましい。さらに、上述の各効果を得るために、絶縁碍子40の内周面40bの算術平均粗さRaは、1.5μm以上であり、第1貫通孔31の内周面31aの算術平均粗さRaは、0.5μm以下であることがさらに好ましい。
【0039】
本実施形態の第1貫通孔31は、主に切削加工によって形成される。第1貫通孔31の内周面31aの表面性状を高めるために、第1貫通孔31の形成時に、緻密な仕上げ加工を行うことが好ましい。さらに、第1貫通孔31の形成後に、ブラシ研磨、又はバフ研磨などを行うことで、内周面31aの表面性状を高めてもよい。
【0040】
(湾曲面)
図2に示すように、ベース部3は、第2貫通孔32の開口に位置する湾曲面3fを有する。湾曲面3fは、対向面3aに連なる。湾曲面3fは、一様な断面形状で中心軸線J周りの周方向に延びる。
以下、湾曲面3fの説明において、中心軸線Jを中心軸線とする径方向を単に「径方向」といい、中心軸線Jに対する周方向を単に「周方向」という場合がある。
【0041】
本実施形態の湾曲面3fは、対向面3aと第2貫通孔32の内周面32aとを一様な曲率半径で繋ぐ。湾曲面3fは、上端部において対向面3aと滑らかに連なり下端部において内周面32aと滑らかに連なる。
【0042】
湾曲面3fの径方向内側には、絶縁碍子40の外周面40cが対向する。湾曲面3fと絶縁碍子40の内周面40bとの間には、接着層4の第1接着部4aの一部が侵入する。これにより、湾曲面3fは、第1接着部4aによって覆われる。また、絶縁碍子40の外周面40cのうち湾曲面3fと径方向に対向する部分も、第1接着部4aに覆われる。
【0043】
ベース部3と接着層4とは、異なる熱膨張係数の材料から構成される。より具体的には、ベース部3は、熱伝導の高い金属材料から構成され、接着層4は樹脂から構成される。このため、温度変化に伴い接着層4とベース部3との界面には、熱応力が付与され、接着層4が界面から剥離する虞がある。接着層が剥離すると金属ベースの一部がHeガス流路中に露出し、ここが放電の起点/終点になり得る。特に金属の角部は電界が集中し易く、より放電の起点/終点となり易い。また、熱応力も、ベース部3に設けられる角部に集中し易いため、剥離はベース部3の角部を起点として最も生じやすい。本実施形態によれば、ベース部3の接着層4と接触する対向面3aのうち、第2貫通孔32の開口縁の角部は、丸められて湾曲面3fが形成されている。これにより、接着層4とベース部3とが接着する界面に剥離の起点となりやすい角部が形成されず、ベース部3に対する接着層4の剥離を抑制できる。
【0044】
ベース部3と接着層4との界面に剥離が生じるとベース部3から放電が発生する虞がある。また、角部には電荷が集中し易いため、ベース部3において剥離した部分が角部である場合、より一層放電が発生し易くなる。本実施形態によれば、ベース部3の角部を湾曲面3fとすることで、ベース部3から放電が発生することを抑制できる。一般的に、冷却ガス導入孔30を構成する第2貫通孔32の直径を大きくすると、ベース部3からの放電が生じやすくなることが知られている。本実施形態では、ベース部3からの放電を抑制できる構成が採用されているため、第2貫通孔32の直径を大きくすることができる。すなわち、本実施形態によれば、第2貫通孔32の直径を大きくして、絶縁碍子40の内部V2の体積を大きくし、冷却ガス導入孔30内で冷却ガスCを十分に冷却する構成を採用することが可能となり、結果的に冷却ガスCによる板状試料Wの冷却効率を高めることができる。
【0045】
本実施形態では、湾曲面3fの全体が第1接着部4aに覆われるものとして説明した。第1接着部4aは、ベース部3と静電チャック部2とを接着層4を介して貼り合わせる際に、湾曲面3fと絶縁碍子40の外周面40cとの間の隙間内に侵入する。このため、第1接着部4aは、湾曲面3f全体を覆うことができず、湾曲面3fのうち上方の領域のみが第1接着部4aに覆われることも起こり得る。しかしながら、この場合であっても、第1接着部4aが、対向面3aと湾曲面3fとの境界部分を覆っていれば、この境界部分からのベース部3に対する接着層4の剥離を抑制する効果を一定以上得ることができる。
【0046】
本実施形態において、中心軸線Jに沿う断面における湾曲面3fの曲率半径Rは、静電吸着用内部電極13の厚さ寸法d1よりも大きいことが好ましい。これにより、湾曲面3fの曲率半径Rを接着層4の剥離を抑制するための十分な大きさとすることができる。
【0047】
本実施形態において、中心軸線Jに沿う断面における湾曲面3fの曲率半径Rは、第1接着部4aの厚さ寸法t1よりも大きいことが好ましい。これにより、湾曲面3fの曲率半径Rを接着層4の剥離を抑制するための十分な大きさとすることができる。加えて、このよう曲率半径Rの範囲とすることで、ベース部3と静電チャック部2を貼り合わせる際に、接着層4を構成する接着剤が、対向面3aから湾曲面3fにかけて円滑に広がりながら第1接着部4aが形成される。このため、第1接着部4aが、対向面3aと湾曲面3fとの境界部をムラなく覆うことができ、角部への応力の集中をより低減させる事が出来ると共に接着層4とベース部3との界面に気泡が生じ難く第1接着部4aを均質に形成できる。
【0048】
中心軸線Jに沿う断面における湾曲面3fの曲率半径Rは、この部分に集中する電界が分散するよう、静電吸着用内部電極13の厚さ寸法d1より大きくする事が好ましく、具体的には10μm以上であることが好ましい。湾曲面3fの曲率半径Rを10μm以上とすることで、湾曲面3fに熱応力に起因する応力が集中し難くなり、湾曲面3fにおける接着層4の剥離を抑制できると共に、集中する電界を分散させる事が出来、飛来/吸着する異物荷電粒子などを分散させる事が出来る。また、湾曲面3fの曲率半径Rは、厚さ寸法t1の接着部層が安定して湾曲面3fに連続するようt1より大きいことが好ましく、具体的には例えば100μm以上であることがより好ましく、1000μm以上である場合にさらに好ましい。曲率半径Rを100μm以上、または1000μm以上とする場合には、湾曲面3fにおける接着層4の剥離をより確実に抑制でき、加えて湾曲面3fを容易に安定的に形成できる。
【0049】
なお、本実施形態では、湾曲面3fの曲率半径Rが湾曲面3f全体に亘って一定である場合について説明したが、湾曲面3fの曲率半径Rは、中心軸線Jの径方向に沿って連続的に変化していてもよい。すなわち、湾曲面3fは、楕円曲面や自由曲面などの複雑な曲面から構成されていてもよい。この場合であっても、湾曲面3fの各部の曲率半径Rのうち最小の曲率半径Rが、上述の範囲内に入っていればよい。
【0050】
湾曲面3fは、第2貫通孔32をドリルによって形成した後に、第2貫通孔32の開口縁に設けられた角部に対し、バフ研磨を行うことで形成できる。また、第2貫通孔32の開口縁を湾曲形状に追加工する専用の切削工具を用いて湾曲面3fを形成してもよい。
【0051】
(湾曲面の変形例)
上述の実施形態では、湾曲面3fが対向面3aと第2貫通孔32の内周面32aとに直接連なる場合について説明した。しかしながら、湾曲面は、対向面3aに連なっていれば、第2貫通孔32の内周面32aと連なっていなくてもよい。
【0052】
図3は、第1実施形態に採用可能な変形例の湾曲面3Afの断面模式図である。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。また、本変形例の湾曲面3Afは、第1実施形態のみならず、以下に説明する全ての実施形態に採用可能である。
【0053】
本変形例のベース部3Aの対向面3aと第1貫通孔31との間には、面取り部3Acが設けられる。面取り部3Acは、一様な断面形状で中心軸線J周りの周方向に延びる。面取り部3Acは、第2貫通孔32の上側の開口に位置し上側に向かうに従い第2貫通孔32の直径を大きくする。
【0054】
本変形例の湾曲面3Afは、対向面3aと面取り部3Acとの境界部に設けられる。湾曲面3Afは、対向面3aと面取り部3Acとに連なっている。湾曲面3Afがこのような構成を有する場合であっても、湾曲面3Afは、第1接着部4aと対向面3aとの界面に角部が設けられることを抑制することができ、第1接着部4aが対向面3aから剥離することを抑制できる。
【0055】
なお、図3に示す変形例では、面取り部3Acと第2貫通孔32の内周面32aとの境界部3Agには、角部が形成されている。この境界部3Agについても、対向面3aとの境界部と同様の湾曲面としてもよい。
【0056】
[半導体製造装置]
図4は、上述の静電チャック装置1を有する半導体製造装置1000の説明図である。半導体製造装置1000は、静電チャック装置1と、真空チャンバ200と、上部電極300と、磁石400と、ガス供給手段500と、真空ポンプ600と、プラズマ安定化システム700と、を有する。
【0057】
真空チャンバ200は、静電チャック装置1を収容し、内部でプラズマ処理を行う反応場として用いられる。真空チャンバ200は、半導体製造装置に用いられる公知の構成を採用することができる。真空チャンバ200は、板状試料の出し入れを行う不図示のゲートを有する。
【0058】
上部電極300は、真空チャンバ200内に収容され、真空チャンバ200内にプラズマを発生させる際に静電チャック装置1と協働して用いられる対向電極である。上部電極300は、不図示の電源に接続される。
【0059】
磁石400は、真空チャンバ200の周囲に配置され、真空チャンバ200内の上部電極300と静電チャック装置1との間の空間に縦方向の磁界を発生させる。
【0060】
ガス供給手段500は、真空チャンバ200内にプラズマガスGを供給する。ガス供給手段500は、例えば、上部電極300に設けられたガス孔から、真空チャンバ200内にプラズマガスGを供給する。
【0061】
真空ポンプ600は、真空チャンバ200内の気体を排気し、プラズマを発生させる雰囲気を整える。真空ポンプ600は、例えば、真空チャンバ200において静電チャック装置1よりも下方に接続されている。
【0062】
プラズマ安定化システム700は、半導体製造装置1000において発生させるプラズマの状態を変動させる種々の外的要因を検出し、補償することで、プラズマの状態を安定させる。プラズマ安定化システム700は、検出器710と、検出器710による検出結果に基づいて半導体製造装置1000を制御する制御部720と、を有する。
【0063】
検出器710は、真空チャンバ200内のプラズマの様子を直接又は間接的に検出する。検出器710は、1つであってもよく、複数であってもよい。検出器710により検出される項目としては、例えば、真空チャンバ200内の真空度、プラズマの色、プラズマの温度、上部電極300と静電チャック装置1が有するプラズマ発生用内部電極(不図示)との間の電気容量、上部電極300とプラズマ発生用内部電極との間のインダクタンスなどが挙げられる。
【0064】
制御部720は、検出器710により検出される各項目の検出値、又は検出値の単位時間あたりの変化量に基づいて、半導体製造装置1000を制御する。制御部720は、上記項目の検出値と、真空チャンバ200内で発生するプラズマの状態と、の対応関係を予め記憶している。制御部720は、検出値と上記対応関係とに基づいて、プラズマの状態が予め定めた範囲に収まるように、半導体製造装置1000をフィードバック制御する。
フィードバック制御する項目は、例えば、半導体製造装置内の温度、真空度、バイアス電圧が挙げられる。
【0065】
これらにより、プラズマ安定化システム700は、半導体製造装置1000におけるプラズマ状態の長期的な変動を抑制し、状態を安定化させることができる。
【0066】
このようなプラズマ安定化システムは、半導体製造装置を用いた製造プロセス全体に航プラズマ状態の変動抑制には効果的である。一方、プラズマ安定化システムは、ウエハプロセス中の異常放電のように、極めて短い時間発生する変動要因に対しては、状態変動を抑制する効果が無かった。
【0067】
一方で、半導体製造装置1000は、上述の静電チャック装置1を有するため、ウエハはプロセス中に発生する異常放電を抑制することができる。そのため、半導体製造装置1000は、プラズマ安定化システム700を有することにより、長期的にも短期的にもプラズマを安定させることが可能となる。
【0068】
なお、制御部720は、プラズマ安定化システム700の固有の構成であってもよく、半導体製造装置1000の制御を行う制御装置が、機能を兼ねていてもよい。
【0069】
このような半導体製造装置1000においては、例えば、真空チャンバ200の排気口の位置(真空ポンプ600の接続位置)によって、静電チャック部2の側周面における荷電性異物粒子の付着しやすさの傾向が異なることがある。半導体製造装置1000について経験的に上記傾向が判明している場合、静電チャック部2は、荷電性異物粒子が付着しやすい位置の側周面について、その他の側周面よりも算術平均粗さRaを小さくしておく等、荷電性異物粒子の付着を抑制する構成を採用するとよい。
【0070】
本実施形態の半導体製造装置1000によれば、上述した静電チャック装置1を有するため、絶縁破壊(放電)の発生を抑制できる。
【0071】
また、半導体製造装置1000は、静電チャック装置1により異常放電(プラズマの短期的な変動)を抑制すると共に、プラズマ安定化システム700により、プラズマの長期的な変動を抑制可能である。そのため、安定したプラズマ処理が可能となり、歩留まりが改善した半導体製造装置とすることができる。
【0072】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の静電チャック装置101の断面拡大図である。第2実施形態の静電チャック装置101は、第1実施形態と比較して、絶縁碍子140の上端部に碍子湾曲面140fが設けられる点が主に異なる。
なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0073】
静電チャック装置101は、静電チャック部2とベース部3と接着層4と絶縁碍子140を備える。また、静電チャック装置101において、静電チャック部2、ベース部3および接着層4には、これらを上下に貫通する複数の冷却ガス導入孔30が設けられている。冷却ガス導入孔30は、静電チャック部2を貫通する部分である第1貫通孔31と、ベース部3を貫通する部分である第2貫通孔32と、を有する。ベース部3には、第2貫通孔32の開口に位置し対向面3aと連なる湾曲面3fが設けられる。
【0074】
第1実施形態と同様に、第2貫通孔32には、筒状の絶縁碍子140が配置されている。絶縁碍子140は、厚さ方向Z(すなわち、鉛直方向)に沿って延びる。絶縁碍子140の上端は、ベース部3の対向面3aと同一平面上に位置する。
【0075】
本実施形態の絶縁碍子140は、上端面140aと外周面140cとの境界部に碍子湾曲面140fが設けられる。碍子湾曲面140fは、上端面140aと外周面140cとを一様な曲率半径で繋ぐ。碍子湾曲面140fは、上端部において上端面140aと滑らかに連なり下端部において外周面140cと滑らかに連なる。
【0076】
本実施形態によれば、絶縁碍子140と接着層4との界面に角部が形成されることを抑制できる。このため、絶縁碍子140と接着層4との界面に熱応力が付与されても接着層4が絶縁碍子140から剥離し難くなる。また、本実施形態によれば、絶縁碍子140に湾曲面3fが設けられることで、ベース部3の湾曲面3fと絶縁碍子140の碍子湾曲面140fとの間の隙間を広く確保して、この隙間に接着層4を構成する接着剤を十分に充填することができる。これにより、接着層4の第1接着部4aが、ベース部3の湾曲面3fをより幅広い範囲で覆うことができ、接着層4とベース部3との剥離をより効果的に抑制できる。
【0077】
本実施形態において、碍子湾曲面140fは、中心軸線Jに沿う断面における碍子湾曲面140fの曲率半径は、湾曲面3fの曲率半径と一致する。しかしながら、碍子湾曲面140fの曲率半径と湾曲面3fの曲率半径とは、必ずしも一致しなくてもよい。碍子湾曲面140fの曲率半径は、湾曲面3fの曲率半径と同様の数値範囲とすることが好ましい。すなわち、碍子湾曲面140fの曲率半径は、静電吸着用内部電極13の厚さ寸法d1よりも大きいことが好ましい。また、碍子湾曲面140fの曲率半径は、第1接着部4aの厚さ寸法t1よりも大きいことが好ましい。より具体的には、碍子湾曲面140fの曲率半径は、10μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、1000μm以上である場合にさらに好ましい。これにより、組み立て時の接着層4への気泡の混入を抑制しつつ、碍子湾曲面140fにおける接着層4の剥離を抑制できる。
【0078】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態の静電チャック装置201の断面拡大図である。第3実施形態の静電チャック装置201は、第1実施形態と比較して、絶縁碍子40の外周面40cと第2貫通孔32の内周面32aとの間に接着層204の第3接着部204cが設けられる点が主に異なる。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0079】
静電チャック装置201は、静電チャック部2とベース部3と接着層204と絶縁碍子40を備える。また、静電チャック装置201において、静電チャック部2、ベース部3および接着層204には、これらを上下に貫通する複数の冷却ガス導入孔30が設けられている。冷却ガス導入孔30は、静電チャック部2を貫通する部分である第1貫通孔31と、ベース部3を貫通する部分である第2貫通孔32と、を有する。ベース部3には、第2貫通孔32の開口に位置し対向面3aと連なる湾曲面3fが設けられる。
【0080】
第1実施形態と同様に、第2貫通孔32には、筒状の絶縁碍子40が配置されている。本実施形態の絶縁碍子40は、接着層204の第3接着部204cによって第2貫通孔32の内周面32aに接着固定される。すなわち、本実施形態の接着層204は、第1接着部4a、第2接着部4b、余剰部4eに加えて、第3接着部204cを有する。
【0081】
第3接着部204cは、第2貫通孔32の内周面32aと絶縁碍子40の外周面40cの間に介在する。第3接着部204cは、絶縁碍子40を第2貫通孔32の内周面32aに固定する。第3接着部204cは、第1接着部4aおよび第2接着部4bと同種の接着剤から構成されていてもよく、また別種の接着剤から構成されていてもよい。
【0082】
第3接着部204cは、第2貫通孔32の内周面32aを覆う。このため、接着層204は、ベース部3の対向面3a、湾曲面3f、および内周面32aを途切れることなく連続的に覆うことができる。本実施形態によれば、接着層204とベース部3との界面に剥離の起点が生じ難くなり、接着層204の剥離を抑制できる。特に、本実施形態では、接着層204が湾曲面3fの全体を覆うため、ベース部3と接着層204との界面に熱応力が付与されても、湾曲面3fの接着層204の剥離を効果的に抑制できる。
なお、本実施形態で説明した第3接着部204cは、本実施形態に限らず他の実施形態においても、それぞれの接着層に設けられていてもよい。
【0083】
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態の静電チャック装置301の断面拡大図である。第4実施形態の静電チャック装置301は、第1実施形態と比較して、絶縁碍子340の上端部の位置が主に異なる。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0084】
静電チャック装置301は、静電チャック部2とベース部3と接着層304と絶縁碍子340とを備える。また、静電チャック装置301において、静電チャック部2、ベース部3および接着層304には、これらを上下に貫通する複数の冷却ガス導入孔30が設けられている。冷却ガス導入孔30は、静電チャック部2を貫通する部分である第1貫通孔31と、ベース部3を貫通する部分である第2貫通孔32と、を有する。ベース部3には、第2貫通孔32の開口に位置し対向面3aと連なる湾曲面3fが設けられる。
【0085】
第1実施形態と同様に、第2貫通孔32には、筒状の絶縁碍子340が配置されている。本実施形態の絶縁碍子340の上端面340aは、ベース部3の対向面3aよりも下側に位置する。絶縁碍子340の上端面340aは、湾曲面3fの厚さ方向Zの下側の端部3bよりも下側に位置する。
【0086】
第1実施形態と同様に、接着層304は、絶縁碍子340の上端面340aと静電チャック部2との間に位置する第2接着部304bを有する。本実施形態の第2接着部304bは、湾曲面3fの全体を覆う。このため、ベース部3と接着層304との界面に熱応力が付与されても、湾曲面3fの接着層304の剥離を効果的に抑制できる。
【0087】
湾曲面3fが全体に亘って一様な曲率半径Rである場合、第2接着部304bの厚さ寸法t2が、湾曲面3fの曲率半径Rと第1接着部4aの厚さ寸法t1との和より大きい場合に、湾曲面3fの全体を十分に覆うことができる。また、第2接着部304bの厚さ寸法t2が、第1接着部4aの厚さ寸法t1の2倍以上であれば、第2接着部304bは、湾曲面3fにおける剥離を抑制できる程度に湾曲面3fを覆うことができる。
【0088】
<第5実施形態>
図8は、第5実施形態の静電チャック装置401の断面拡大図である。第5実施形態の静電チャック装置401は、第4実施形態と類似しており、第4実施形態と比較して、絶縁碍子440内周面440bにテーパ面440tが設けられる点が主に異なる。なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0089】
静電チャック装置401は、静電チャック部2とベース部3と接着層304と絶縁碍子440とを備える。また、静電チャック装置401において、静電チャック部2、ベース部3および接着層304には、これらを上下に貫通する複数の冷却ガス導入孔30が設けられている。冷却ガス導入孔30は、静電チャック部2を貫通する部分である第1貫通孔31と、ベース部3を貫通する部分である第2貫通孔32と、を有する。ベース部3には、第2貫通孔32の開口に位置し対向面3aと連なる湾曲面3fが設けられる。
【0090】
第4実施形態と同様に、第2貫通孔32には、筒状の絶縁碍子440が配置されている。本実施形態の絶縁碍子440の上端面440aは、ベース部3の対向面3aよりも下側に位置する。絶縁碍子440の上端面440aは、湾曲面3fの厚さ方向Zの下側の端部3bよりも下側に位置する。このため、接着層304の第2接着部304bが湾曲面3fの全体を覆い、湾曲面3fの接着層304の剥離が抑制される。
【0091】
本実施形態において、絶縁碍子440の内周面440bには、上側に向かうに従い直径を小さくするテーパ面440tが設けられる。絶縁碍子440の上端面440aにおける内径は、第1貫通孔31の内径と略等しい。このため、接着層304のうち絶縁碍子440上端面440aと静電チャック部2との間に配置される第2接着部304bを第2貫通孔32の径方向において厚くすることができる。すなわち、絶縁碍子440と第2接着部304bとの界面を径方向に長くすることができ、これにより、ベース部3の放電経路を長くして、ベース部3からの放電を抑制できる。
【0092】
本実施形態において、第2貫通孔32の径方向における第2接着部304bの寸法d2は、第1接着部4aの厚さ寸法t1よりも大きいことが好ましい。この場合、絶縁碍子440と第2接着部304bとの界面を長くして、ベース部3からの放電を効果的に抑制できる。
【0093】
本実施形態のテーパ面440tは、絶縁碍子440の内周面440bの全長のうち、上端を含む上側の一領域に設けられる。しかしながら、テーパ面440tが設けられる領域は、本実施形態に限定されない。例えば、図9に変形例として示すテーパ面440Atのように、絶縁碍子440Aの内周面440Abの全長に設けられていてもよい。
【0094】
絶縁碍子440、440Aの内周面440b、440Abにテーパ面440t、440Atを設けることで、絶縁碍子440、440Aの内部V2を上側に流れる冷却ガスCの流路断面積を第1貫通孔31向けて徐々に小さくすることができる。特に、変形例に示すように、テーパ面440Atが絶縁碍子440の全長に亘って設けられる場合、テーパ面440Atのテーパ角を小さくすることができ、冷却ガスCの流路断面積をより緩やかに小さくできる。これにより、冷却ガスCの流路抵抗を低減し、板状試料Wに向けて吹き出される冷却ガスCの流速を高めることができる。
【0095】
本実施形態の冷却ガス導入孔30の構成は、図1に示すピン挿通孔30Bにも適用できる。この場合、テーパ面440t、440Atは、ピン挿通孔30B内のリフトピン22の上昇時のガイドとして機能する。
【0096】
以上に、本発明の様々な実施形態を説明したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
例えば、上述した実施形態で、接着層には静電チャック部を加熱するヒータエレメントが埋め込まれていてもよい。また、ヒータエレメントは、静電チャック部の内部又はベース部の内部に位置していてもよい。
また、上述の実施形態で説明した冷却ガス導入孔30の構成は、ピン挿通孔30Bに適用することもでき、またその他の貫通孔に適用することもできる。
【符号の説明】
【0097】
1,101,201,301,401…静電チャック装置、2…静電チャック部、2a…載置面、3,3A…ベース部、3a…対向面、3b…端部、3f,3Af…湾曲面、3Ac…面取り部、4,204,304…接着層、4a…第1接着部、4b,304b…第2接着部、13…静電吸着用内部電極、31…第1貫通孔、31a,32a,40b,440b,440Ab…内周面、32…第2貫通孔、40,140,340,440,440A…絶縁碍子、40c,140c…外周面、204c…第3接着部、440t,440At…テーパ面、d1,t1,t2…厚さ寸法、d2…寸法、J…中心軸線、R…曲率半径、V1,V2…内部、W…板状試料、Z…厚さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9