(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093316
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/30 20060101AFI20240702BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240702BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H05H1/30
H01L21/304 645C
H01L21/304 642A
H01L21/304 647Z
H05H1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209616
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】社本 光弘
(72)【発明者】
【氏名】安藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】藤方 淳平
(72)【発明者】
【氏名】東 嵩晃
(72)【発明者】
【氏名】作江 大樹
(72)【発明者】
【氏名】石島 達夫
【テーマコード(参考)】
2G084
5F157
【Fターム(参考)】
2G084AA03
2G084BB02
2G084BB35
2G084BB36
2G084CC14
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2G084CC35
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2G084GG08
2G084GG16
2G084GG26
5F157AB02
5F157AB14
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5F157BB02
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5F157BB79
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5F157DC86
(57)【要約】
【課題】低出力で基板の表面を液中プラズマ処理することができる技術を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置10は、液体Lqを貯留するチャンバ20と、基板Wfが液体の内部に配置された状態で基板を保持する基板ホルダ50と、気体Gaを収容するガス室60であって、ガス室は、基板に対向する箇所に開口64を有し、且つ、少なくとも開口が基板との間に空間を有しつつチャンバの液体の内部に配置された、ガス室と、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置80と、ガス室の内部に配置された所定箇所84を有し、マイクロ波発生装置によって発生されたマイクロ波を所定箇所まで伝搬させる導波管82と、導波管の所定箇所に配置されて、マイクロ波をガス室の内部に放射することでプラズマを誘起させるアンテナ90と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留するチャンバと、
基板が前記液体の内部に配置された状態で前記基板を保持する基板ホルダと、
気体を収容するガス室であって、前記ガス室は、前記基板に対向する箇所に開口を有し、且つ、少なくとも前記開口が前記基板との間に空間を有しつつ前記チャンバの前記液体の内部に配置された、ガス室と、
マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置と、
前記ガス室の内部に配置された所定箇所を有し、前記マイクロ波発生装置によって発生された前記マイクロ波を前記所定箇所まで伝搬させる導波管と、
前記導波管の前記所定箇所に配置されて、前記マイクロ波を前記ガス室の内部に放射することでプラズマを誘起させるアンテナと、を備える、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記ガス室で誘起されたプラズマが、前記ガス室の前記開口を通過し、前記チャンバの前記液体中に気泡プラズマとして放出され、前記気泡プラズマが前記基板の表面に接触することで、液中プラズマ処理する、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記ガス室に気体を供給するための気体供給装置を備える、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記ガス室は、前記基板ホルダよりも下方に配置されている、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記ガス室は、前記基板ホルダよりも上方に配置されている、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記液体は、純水である、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記液体は、前記基板の表面に残存したレジストを除去するための洗浄液を含む、請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記洗浄液は、硫酸及び過酸化水素を含む、請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記アンテナは、スロットを有するスロットアンテナである、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記スロットは、第1スロット部位と、前記第1スロット部位に接続した第2スロット部位と、を含み、
前記第2スロット部位のスロット幅は、前記第1スロット部位のスロット幅よりも狭く、
前記ガス室の前記開口は、前記第2スロット部位に対向する位置に配置されている、請求項9に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記ガス室の周囲に配置された磁気コイルと、
前記磁気コイルと電気的に接続された電源と、をさらに備える、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
第1電極と、
前記第1電極との間に空間を有するように配置され、前記第1電極とは反対の極性を有する第2電極と、
前記第1電極及び前記第2電極と電気的に接続された電源と、をさらに備え、
前記基板ホルダに保持された前記基板は、前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、
前記基板ホルダは、磁力を発生するように構成されている、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記ガス室は、誘電体によって構成された壁部を備える、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
請求項1に記載のプラズマ処理装置と、
前記プラズマ処理装置による液中プラズマ処理がされた後の基板、及び、当該液中プラズマ処理がされる前の基板の少なくとも一方を洗浄するように構成された洗浄装置と、を備える、基板処理装置。
【請求項15】
前記洗浄装置によって洗浄された後の基板を乾燥させるように構成された乾燥装置を備える、請求項14に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板が液体の内部に配置された状態で基板の表面をプラズマ処理する「液中プラズマ処理」が知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この特許文献1に開示されたプラズマ処理装置は、液体を貯留するチャンバと、液体の内部に配置された基板(ワーク)と、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置と、先端が液体の内部に配置されて、マイクロ波発生装置によって発生されたマイクロ波を先端まで伝搬させる導波管と、導波管の先端に配置されて、マイクロ波を液体の内部に放射することでプラズマを誘起させるアンテナと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に例示されるような従来技術は、導波管の先端が液体の内部に配置されているので、この導波管の先端に配置されたアンテナが液体に濡れてしまう。この場合、プラズマを誘起させる際に、ジュール熱によってアンテナに付着した水分を飛ばし、且つ、液体を気化させ、プラズマを誘起させる気体あるいは気泡を生成する必要が生じるので、プラズマを誘起させる際に高い出力が要求される。このように、従来技術は、液中プラズマを低出力で行うという観点において、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、低出力で基板の表面を液中プラズマ処理することができる技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(態様1)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るプラズマ処理装置は、液体を貯留するチャンバと、基板が前記液体の内部に配置された状態で前記基板を保持する基板ホルダと、気体を収容するガス室であって、前記ガス室は、前記基板に対向する箇所に開口を有し、且つ、少なくとも前記開口が前記基板との間に空間を有しつつ前記チャンバの前記液体の内部に配置された、ガス室と、マイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置と、前記ガス室の内部に配置された所定箇所を有し、前記マイクロ波発生装置によって発生された前記マイクロ波を前記所定箇所まで伝搬させる導波管と、前記導波管の前記所定箇所に配置されて、前記マイクロ波を前記ガス室の内部に放射することでプラズマを誘起させるアンテナと、を備える。
【0007】
この態様によれば、アンテナによって誘起されたプラズマをガス室の開口を通過させて、チャンバの液体の内部に導入することができる。液体の内部に導入されたプラズマは、液体の内部において、気泡(「気泡プラズマ」と称する)となる。この気泡プラズマと気泡プラズマの周囲の液体との界面では、活性種が生成される。そして、気泡プラズマが基板の表面に接触することで、気泡プラズマ中の電子と、気泡プラズマ周囲の活性種と、によって、基板の表面を液中プラズマ処理することができる。
【0008】
また、この態様によれば、アンテナが、チャンバの液体の内部ではなく、ガス室の内部(ガス室の内部に配置された、導波管の所定箇所)に配置されているので、アンテナが液体に濡れることを抑制することができる。これにより、アンテナが液体に濡れる場合に比較して、低出力でプラズマを誘起させることができる。この結果、低出力で基板の表面を液中プラズマ処理することができる。
【0009】
また、この態様によれば、プラズマを誘起させるための気体をチャンバの外部からガス室に供給することができるため、気体生成に伴う出力損失を抑制することもできる。この点においても、低出力で基板の表面を液中プラズマ処理することができる。
【0010】
(態様2)
上記の態様1において、前記ガス室で誘起されたプラズマが、前記ガス室の前記開口を通過し、前記チャンバの前記液体中に気泡プラズマとして放出され、前記気泡プラズマが前記基板の表面に接触することで、液中プラズマ処理してもよい。
【0011】
(態様3)
上記の態様1又は2は、前記ガス室に気体を供給するための気体供給装置を備えていてもよい。
【0012】
(態様4)
上記の態様1~3のいずれか1態様において、前記ガス室は、前記基板ホルダよりも下方に配置されていてもよい。
【0013】
(態様5)
上記の態様1~3のいずれか1態様において、前記ガス室は、前記基板ホルダよりも上方に配置されていてもよい。
【0014】
(態様6)
上記の態様1~5のいずれか1態様において、前記液体は、純水であってもよい。
【0015】
(態様7)
上記の態様6において、前記液体は、前記基板の表面に残存したレジストを除去するための洗浄液を含んでいてもよい。
【0016】
(態様8)
上記の態様7において、前記洗浄液は、硫酸及び過酸化水素を含んでいてもよい。
【0017】
(態様9)
上記の態様1~8のいずれか1態様において、前記アンテナは、スロットを有するスロットアンテナであってもよい。
【0018】
(態様10)
上記の態様9において、前記スロットは、第1スロット部位と、前記第1スロット部位に接続した第2スロット部位と、を含み、前記第2スロット部位のスロット幅は、前記第1スロット部位のスロット幅よりも狭く、前記ガス室の前記開口は、前記第2スロット部位に対向する位置に配置されていてもよい。
【0019】
(態様11)
上記の態様1~10のいずれか1態様は、前記ガス室の周囲に配置された磁気コイルと、前記磁気コイルと電気的に接続された電源と、をさらに備えていてもよい。
【0020】
この態様によれば、磁気コイルに電気を流すことで、マイクロ波共鳴を発生させて、電子サイクロトロン共鳴プラズマを発生させることができる。
【0021】
(態様12)
上記の態様1~10のいずれか1態様は、第1電極と、前記第1電極との間に空間を有するように配置され、前記第1電極とは反対の極性を有する第2電極と、前記第1電極及び前記第2電極と電気的に接続された電源と、をさらに備え、前記基板ホルダに保持された前記基板は、前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、前記基板ホルダは、磁力を発生するように構成されていてもよい。
【0022】
この態様によれば、第1電極と第2電極との間に生じる電場と、基板ホルダが発生する磁場と、に起因して発生するローレンツ力によって、ガス室と基板との間に気泡プラズマの回転流を形成させることができる。
【0023】
(態様13)
上記の態様1~10のいずれか1態様において、前記ガス室は、誘電体によって構成された壁部を備えていてもよい。
【0024】
この態様によれば、ガス室の内部において、この誘電体によって構成された壁部に沿って、表面波プラズマを発生させることができる。
【0025】
(態様14)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る基板処理装置は、上記の態様1~13のいずれか1態様に係るプラズマ処理装置と、前記プラズマ処理装置による液中プラズマ処理がされた後の基板、及び、当該液中プラズマ処理がされる前の基板の少なくとも一方を洗浄するように構成された洗浄装置と、を備える。
【0026】
この態様によれば、低出力で基板の表面を液中プラズマ処理することができる。
【0027】
(態様15)
上記の態様14は、前記洗浄装置によって洗浄された後の基板を乾燥させるように構成された乾燥装置を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施形態1に係るプラズマ処理装置の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2(A)は実施形態1に係るガス室の模式的な平面図である。
図2(B)は実施形態1に係るアンテナの模式的な平面図である。
【
図3】実施形態1に係る液中プラズマ処理の実行時の基板の周辺構成を示す模式図である。
【
図4】実施形態1の変形例1に係るプラズマ処理装置を説明するための模式図である。
【
図5】実施形態1の変形例2に係るプラズマ処理装置を説明するための模式図である。
【
図6】実施形態1の変形例3に係るプラズマ処理装置を説明するための模式図である。
【
図7】実施形態1の変形例4に係るプラズマ処理装置を説明するための模式図である。
【
図8】実施形態1の変形例5に係るプラズマ処理装置を説明するための模式図である。
【
図9】実施形態2に係る基板処理装置の構成を説明するための模式図である。
【
図10】実施形態2の変形例に係る基板処理装置の構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面は、特徴の理解を容易にするために模式的に図示されており、各構成要素の寸法比率等は実際のものと同じであるとは限らない。また、図面には、必要に応じて、X-Y-Zの直交座標が図示されている。この直交座標のうち、Z方向は上方に相当し、-Z方向は下方(重力が作用する方向)に相当する。また、後述する実施形態1の変形例や実施形態2等において、実施形態1と同一又は対応する構成については同一の符号を付して説明を適宜省略する場合がある。
【0030】
(実施形態1)
まず、本発明の実施形態1に係るプラズマ処理装置10について説明する。
図1は、本実施形態に係るプラズマ処理装置10の構成を示す模式図である。プラズマ処理装置10は、基板Wfが液体の内部に配置された状態で基板Wfの表面をプラズマ処理する「液中プラズマ処理」を実行可能な装置(すなわち、液中プラズマ処理装置)である。
【0031】
具体的には、
図1に例示するように、本実施形態に係るプラズマ処理装置10は、一例として、チャンバ20と、液体循環装置30と、排気ポンプ40と、基板ホルダ50と、駆動装置55と、ガス室60と、気体供給装置70と、マイクロ波発生装置80と、接続部材81と、導波管82と、アンテナ90と、制御装置100と、を備えている。
【0032】
制御装置100は、プラズマ処理装置10の動作を統合的に制御するための装置である。具体的には、本実施形態に係る制御装置100は、マイクロコンピュータを備えている。このマイクロコンピュータは、プロセッサ101や、非一時的な記憶媒体としての記憶装置102、等を備えている。制御装置100においては、プロセッサ101が記憶装置102に記憶されているプログラムの指令に基づいて作動することで、プラズマ処理装置10を制御する。
【0033】
チャンバ20は、その内部に液体Lqを貯留している。すなわち、チャンバ20は、液体貯留槽としての機能を有している。液体Lqとして、例えば、水を用いることができ、この水として、好ましくは純水を用いることができ、この純水として、好ましくは超純水を用いることができる。なお、純水は、例えば25℃における電気抵抗率が0.1(MΩ・cm)以上のものを用いることができる。超純水は、例えば25℃における電気抵抗率が15.0(MΩ・cm)以上のものを用いることができる。
【0034】
液体Lqは、基板Wfの表面に残存したレジストを除去するための洗浄液を含んでいてもよい。この洗浄液の具体的な種類は、特に限定されるものではないが、例えば、酸性の洗浄液を用いることができる。この酸性の洗浄液の具体例として、硫酸を含む洗浄液を用いることができ、この具体例として、硫酸及び過酸化水素を含む洗浄液を用いることができる。
【0035】
上述したように、液体Lqが洗浄液を含む場合、
図1に例示するように、プラズマ処理装置10は、洗浄液供給装置110を備えていてもよい。この洗浄液供給装置110は、制御装置100の指示を受けて、チャンバ20の内部の液体Lq(純水)に洗浄液を供給する。
【0036】
洗浄液供給装置110の具体的な構成は、特に限定されるものではないが、
図1に例示
する洗浄液供給装置110は、一例として、洗浄液を貯留するためのタンク111と、洗浄液を圧送するための圧送ポンプ112と、洗浄液が流通するための配管113と、を備えている。配管113は、タンク111、圧送ポンプ112、及び、チャンバ20を連通している。制御装置100の指示を受けて圧送ポンプ112が駆動することで、タンク111の洗浄液をチャンバ20に供給することができる。
【0037】
チャンバ20は、底壁21と、上壁22(又は、天井壁)と、底壁21及び上壁22を接続する側壁23と、を備えている。本実施形態に係るチャンバ20は、一例として、円筒形状を有している。但し、チャンバ20の外観形状は、内部に液体Lqを貯留できるものであればよく、円筒形状に限定されるものではない。
【0038】
なお、チャンバ20の内部が液体Lqで全体的に満たされている必要はない(すなわち、液面が上壁22の内面に達している必要はない)。本実施形態の場合、少なくとも基板Wfが液体Lqの内部に浸漬される程度に、チャンバ20の内部に液体Lqが存在していればよい。
【0039】
液体循環装置30は、液体Lqを一時的に貯留するためのタンク31と、液体Lqを圧送するための圧送ポンプ32と、液体Lqの温度を調整するための温調器33と、液体Lqが流通するための配管34と、を備えている。配管34は、チャンバ20、タンク31、及び、圧送ポンプ32を連通している。本実施形態において、配管34の上流端はチャンバ20の底壁21に接続され、下流端はチャンバ20の側壁23に接続されている。但し、配管34のチャンバ20への接続箇所はこれに限定されるものではない。
【0040】
圧送ポンプ32が制御装置100の指示を受けて駆動すると、チャンバ20とタンク31との間を液体Lqが循環する。また、この場合、温調器33は、制御装置100の指示を受けて、配管34を流通する液体Lqの温度を所定の温度範囲に調整する。
【0041】
排気ポンプ40は、チャンバ20の内部の空気をチャンバ20の外部に排出するための装置である。本実施形態に係る排気ポンプ40は、チャンバ20の上壁22に接続されている。排気ポンプ40としては、例えば真空ポンプを用いることができる。排気ポンプ40の動作は制御装置100によって制御されている。排気ポンプ40によってチャンバ20の内部の空気が外部に排出されることで、液中プラズマ処理の実行時において、チャンバ20の内部の気圧は大気圧以下に維持されている。具体例として、本実施形態では、液中プラズマ処理の実行時に、チャンバ20の内部の気圧は2kPa以下に維持されている。
【0042】
基板ホルダ50は、基板Wf(すなわち、被処理部材)を保持するための装置である。具体的には、基板ホルダ50は、基板Wfがチャンバ20の液体Lqの内部に配置された状態で基板Wfを保持するように構成されている。また、本実施形態に係る基板ホルダ50は、基板Wfの「被処理面」が下方を向くように、基板Wfを保持している。基板Wfとしては、角形の基板を用いてもよく、円形の基板を用いてもよい。
【0043】
本実施形態に係る基板ホルダ50は、一例として、ホルダ本体51と、ホルダ爪52とを有している。ホルダ本体51は、一例として、平板状の部材によって構成されている。ホルダ本体51は、その下面が基板Wfの上面に接している。ホルダ爪52は、基板Wfの下面の外縁に接している。基板ホルダ50は、ホルダ爪52が基板Wfをホルダ本体51に押圧するようにして、基板Wfを保持している。
【0044】
なお、基板ホルダ50による基板Wfの保持態様は、
図1に例示するものに限定されない。他の例を挙げると、基板ホルダ50は、ホルダ爪52が基板Wfの外周側面を保持す
るように構成されていてもよい。
【0045】
駆動装置55は、基板ホルダ50を駆動するための装置である。駆動装置55は、回転軸53を介して基板ホルダ50と接続されている。また、本実施形態に係る駆動装置55は、チャンバ20の上壁22に配置されている。駆動装置55は、回転軸53を回転させることで、基板ホルダ50を回転させる。駆動装置55の動作は、制御装置100が制御している。
【0046】
なお、駆動装置55は、基板ホルダ50を上下方向に移動させる(すなわち、昇降させる)ことができるように構成されていてもよい。さらに、駆動装置55は、基板ホルダ50を水平方向(X-Y平面内の方向)に移動させることができるように構成されていてもよい。
【0047】
ガス室60は、その内部に気体Gaを収容するように構成されている。少なくとも液中プラズマ処理の実行時において、ガス室60の内部は気体Gaで満たされている。本実施形態に係るガス室60は、基板ホルダ50よりも下方に配置されている。また、本実施形態に係るガス室60は、チャンバ20に貯留された液体Lqの内部に全体的に配置されている。基板Wfとガス室60の後述する開口64との間には、所定の空間(この空間は液体Lqで満たされている)が設けられている。
【0048】
気体Gaの具体的な種類は、特に限定されるものではないが、例えば、空気や、窒素、アルゴン、ヘリウム等を用いることができる。なお、気体Gaには、水素や酸素がさらに含まれていてもよい。
【0049】
ガス室60は、底壁61と、上壁62(又は、天井壁)と、底壁61及び上壁62を接続する側壁63と、を備えている。この底壁61、上壁62、及び、側壁63によって囲まれた空間に、気体Gaが収容される。本実施形態に係るガス室60の外観形状は、一例として、円筒形状である。但し、ガス室60の外観形状は、内部に気体Gaを収容できるものであればよく、これに限定されるものではない。
【0050】
図2(A)は、ガス室60の模式的な平面図である。また、
図2(A)には、後述するアンテナ90も点線で図示されている。
図1及び
図2(A)を参照して、ガス室60は、基板ホルダ50に保持された基板Wfに対向する箇所に、少なくとも1つの開口64を有している。具体的には、本実施形態に係るガス室60は、上壁62における基板Wfに対向する箇所に、複数の開口64(一例として、6つの開口64)を有している。ガス室60の内部の気体Gaの一部は、後述するプラズマに相転位し、この開口64を通過して、ガス室60の外部に排出される。
【0051】
なお、
図1を参照して、本実施形態に係る開口64は、一例として、上下方向に所定距離延在する、ノズル形状を有している(すなわち、ノズル孔になっている)。但し、開口64の形状は、これに限定されるものではない。
【0052】
気体供給装置70は、気体Gaをガス室60に供給するための装置である。気体供給装置70は、チャンバ20の外部に配置されている。気体供給装置70は、配管71を介して、ガス室60と接続されている。本実施形態に係る配管71の下流端は、一例として、ガス室60の側壁63に接続されている。
【0053】
気体Gaとして空気を用いる場合、気体供給装置70として、例えばエアーコンプレッサ等を用いることができる。また、気体Gaとして空気以外の気体を用いる場合は、気体供給装置70として、気体Gaを貯留したボンベ等を用いることができる。気体供給装置
70からガス室60への気体Gaの供給動作は、制御装置100が制御している。本実施形態に係る気体供給装置70は、液中プラズマ処理の実行時にガス室60が気体Gaで満たされるように、ガス室60に気体Gaを供給する。
【0054】
マイクロ波発生装置80は、マイクロ波を発生させるための装置である。マイクロ波発生装置80の具体的な構成は、特に限定されるものではなく、公知の構成を用いることができる。本実施形態に係るマイクロ波発生装置80は、一例として、マイクロ波用の電源と、この電源から発生したマイクロ波を整合するための整合器と、を備えている。なお、本実施形態に係るマイクロ波発生装置80が発生するマイクロ波の周波数は、一例として、2.45GHz以上の周波数である。
【0055】
マイクロ波発生装置80は、接続部材81を介して、導波管82に接続されている。接続部材81は、マイクロ波発生装置80が発生したマイクロ波を導波管82に伝搬させるための部材である。このような機能を有するものであれば、接続部材81の具体的な構成は特に限定されるものではないが、例えば、ケーブルや導波管等を用いることができる。
【0056】
導波管82は、ガス室60の内部に配置された所定箇所84を有し、マイクロ波発生装置80によって発生されたマイクロ波を所定箇所84まで伝搬させるための部材である。この所定箇所84には、後述するアンテナ90が配置されている。本実施形態に係る所定箇所84は、一例として、導波管82の先端である。但し、所定箇所84は、導波管82の先端に限定されるものではなく、例えば、導波管82の先端よりも所定距離(例えば、1mm以上20mm以下の範囲から選択された値)だけ後端側(基端側)に位置した箇所であってもよい。
【0057】
導波管82の内部には、マイクロ波が透過可能なマイクロ波透過部材83が配置されている。マイクロ波透過部材83としては、例えば、水晶等を用いることができる。このマイクロ波透過部材83は、導波管82の内部におけるアンテナ90よりも後端側の箇所に、配置されている。
【0058】
図2(B)は、アンテナ90の模式的な平面図である。
図1及び
図2(B)を参照して、アンテナ90は、ガス室60の内部に配置されている。具体的には、アンテナ90は、ガス室60の内部に配置された導波管82の所定箇所84に配置されている。アンテナ90と、ガス室60における開口64が設けられている箇所(上壁62)と、の間には、所定の空間が設けられている。この空間は、気体Gaで満たされている。
【0059】
アンテナ90は、マイクロ波をガス室60の内部に放射することでプラズマを誘起させるように構成されている。本実施形態に係るアンテナ90は、一例として、導体や半導体の平板(例えば、鋼やシリコンの平板等)によって構成されている。アンテナ90の個数は、1つでもよく、複数でもよい。本実施形態に係るアンテナ90の個数は、一例として、1つである。
【0060】
また、
図2(B)を参照して、アンテナ90は、マイクロ波を透過させるための開口であるスロット91を、少なくとも1つ以上有している。すなわち、本実施形態に係るアンテナ90は、「スロットアンテナ」である。具体的には、本実施形態に係るアンテナ90は、一例として、2つのスロット91を有している。
【0061】
各々のスロット91は、第1スロット部位92と、第1スロット部位92に接続された第2スロット部位93とを有している。具体的には、本実施形態に係るスロット91は、2つの第1スロット部位92を有している。そして、第2スロット部位93の一端は、一方の第1スロット部位92に接続され、第2スロット部位93の他端は他方の第1スロッ
ト部位92に接続されている。
【0062】
第2スロット部位93のスロット幅W2は、第1スロット部位92のスロット幅W1よりも狭くなっている。アンテナ90において、第1スロット部位92よりも第2スロット部位93の方が、電界が集中し易い。
【0063】
図2(A)を参照して、本実施形態に係るガス室60の開口64は、この第2スロット部位93に対向する位置に配置されている。具体的には、本実施形態に係るガス室60の開口64は、第2スロット部位93の直上に配置されている。
【0064】
この構成によれば、ガス室60の開口64を、アンテナ90における電界が集中し易い箇所に対向するように設けることができる。これにより、アンテナ90によって誘起されたプラズマを、ガス室60の開口64から液体Lqの内部に効果的に導入することができる。
【0065】
図3は、液中プラズマ処理の実行時の基板Wfの周辺構成を示す模式図である。なお、
図3には、気泡プラズマ(Bu)の流れが矢印で例示されている。
図1、
図2(A)、及び、
図3を参照して、プラズマ処理装置10の動作について説明する。まず、マイクロ波発生装置80がマイクロ波を発生させる。このマイクロ波発生装置80が発生したマイクロ波は、導波管82を通過して、アンテナ90に導入される。アンテナ90は、マイクロ波をガス室60の内部に放射することで、ガス室60の内部にプラズマを誘起させる。
【0066】
このガス室60の内部で誘起されたプラズマは、ガス室60の開口64を通過して、チャンバ20の液体Lqの内部に導入される。液体Lqの内部に導入されたプラズマは、液体Lqの内部において、気泡(これを「気泡プラズマ(Bu)」と称する)となる。この気泡プラズマと気泡プラズマの周囲の液体Lqとの界面では、活性種(具体的には、ラジカル活性種)が生成される。そして、気泡プラズマが基板Wfの表面に接触することで、気泡プラズマ中の電子と、気泡プラズマ周囲の活性種と、によって、基板Wfの表面を液中プラズマ処理することができる。
【0067】
なお、液中プラズマ処理の実行時において、駆動装置55は、基板ホルダ50を回転させてもよい。この構成によれば、気泡プラズマを基板Wfの表面全体に接触させることが容易になり、この結果、基板Wfの表面を効果的に液中プラズマ処理することができる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態によれば、基板Wfを液中プラズマ処理することができる。これにより、基板Wfの表面を効果的に改質することができる。具体例を挙げると、例えば、基板Wfの表面のレジストを、液中プラズマ処理によって効果的に分解させて除去することができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、アンテナ90が、チャンバ20の液体Lqの内部ではなく、ガス室60の内部(具体的には、ガス室60の内部に配置された、導波管82の所定箇所84)に配置されているので、アンテナ90が液体Lqに濡れることを抑制することができる。これにより、アンテナ90が液体Lqに濡れる場合に比較して、低出力(kW)でプラズマを誘起させることができる。この結果、低出力で基板Wfを液中プラズマ処理することができる。これにより、本実施形態によれば、例えば、マイクロ波発生装置80の小型化を図ることができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、プラズマを誘起させるための気体をチャンバ20の外部からガス室60に供給することができるため、気体生成に伴う出力損失を抑制することもできる。この点においても、低出力で基板Wfの表面を液中プラズマ処理することができる
。
【0071】
具体的には、本実施形態によれば、マイクロ波発生装置80の出力が例えば0.2kW程度であっても、プラズマを誘起させて、基板Wfを液中プラズマ処理することができる。この0.2kWという数値は、従来の液中プラズマ処理装置(アンテナが液体の内部に配置されているタイプの液中プラズマ処理装置)で用いられるマイクロ波発生装置の出力の1/7以下の値である。
【0072】
また、本実施形態によれば、アンテナ90が液体Lqに濡れることが抑制されているので、チャンバ20の液体Lq(純水)に、前述した洗浄液を添加した場合であっても、アンテナ90によるプラズマの誘起が、この洗浄液によって悪影響を受けることを抑制することができる。これにより、気泡プラズマを利用したレジストの除去と、洗浄液によるレジストの除去(すなわち、基板Wfの洗浄)とを一つのチャンバ20内で同時期に行うことができる。
【0073】
なお、液体Lqとして洗浄液を含まない純水を用いて基板Wfに液中プラズマ処理を行った後に、液体Lqに洗浄液を添加して、基板Wfを洗浄液で洗浄してもよい。あるいは、液体Lqとして洗浄液を含まない純水を用いて基板Wfに液中プラズマ処理を行った後に、チャンバ20内の液体Lqを排出し、次いで、洗浄液をチャンバ20内に貯留させて、この洗浄液で基板Wfを洗浄してもよい。このような場合においても、1つのチャンバ20を用いて、気泡プラズマを利用したレジストの除去と、洗浄液によるレジストの除去とを行うことができる。
【0074】
なお、液中プラズマ処理の実行時に、温調器33は、液体Lqの温度が予め設定された温度範囲を超えないように、液体Lqの温度を調整(具体的には冷却)することが好ましい。この構成によれば、液中プラズマ処理の実行時に基板Wfの温度が高温になり過ぎることを抑制することができる。これにより、基板Wfが高温になり過ぎることに起因して基板Wfの内部のガスが破裂する「ポッピング現象」が生じることを、効果的に抑制することができる。
【0075】
(変形例1)
図4は、実施形態1の変形例1に係るプラズマ処理装置10aを説明するための模式図である。本変形例に係るプラズマ処理装置10aは、ガス室60が基板ホルダ50よりも上方に配置されている点において、前述した実施形態1に係るプラズマ処理装置10と異なっている。
【0076】
この結果、本変形例において、駆動装置55は、チャンバ20の底壁21に配置されている。また、基板Wfは、被処理面が上方を向くように、基板ホルダ50に保持されている。また、ガス室60の開口64は、チャンバ20の底壁61に設けられている。
【0077】
なお、本変形例において、ガス室60の全体が液体Lqの内部に配置されている必要はなく、少なくともガス室60の開口64が液体Lqの内部に配置されていればよい。
図4に例示するプラズマ処理装置10aにおいては、一例として、ガス室60の上壁62の全体、及び、側壁63の一部は、液体Lqの液面よりも上方に位置し、ガス室60の側壁63の残部、及び、開口64を有する底壁61の全部は、液体Lqの液面よりも下方に位置している。
【0078】
本変形例においても、前述した実施形態1に係るプラズマ処理装置10と同様に、ガス室60の開口64から液体Lqの内部に導入された気泡プラズマを利用して、基板Wfの表面を液中プラズマ処理することができる。これにより、実施形態1に係るプラズマ処理
装置10と同様の作用効果を奏することができる。
【0079】
(変形例2)
図5は、実施形態1の変形例2に係るプラズマ処理装置10bを説明するための模式図である。具体的には、
図5は、本変形例に係るプラズマ処理装置10bのガス室60の周辺構成を模式的に図示している。プラズマ処理装置10bは、磁気コイル120と、電源121と、をさらに備えている点において、実施形態1に係るプラズマ処理装置10と異なっている。
【0080】
磁気コイル120は、ガス室60の周囲に配置されている。具体的には、本変形例に係る磁気コイル120は、ガス室60の側壁63の外周面を囲むように、側壁63に巻き付けられている。
【0081】
電源121は、磁気コイル120と電気的に接続されている。電源121は、制御装置100の指示を受けて、磁気コイル120への電気の供給及び供給停止を行う。電源121から磁気コイル120へ電気が供給された場合、マイクロ波共鳴が生じて、電子サイクロトロン共鳴プラズマ(すなわち、Electron Cyclotron Resonance(ECR)プラズマ)を発生させることができる。
【0082】
なお、磁気コイル120が発生する磁場の磁束密度の具体的な値は、特に限定されるものではないが、本変形例では、一例として、500(mT)以上であり、具体的には700(mT)以上であり、より具体的には875(mT)である。
【0083】
本変形例によれば、上述したようにECRプラズマをさらに発生させることができるので、ガス室60の内部におけるプラズマの体積及び密度を上昇させることができる。これにより、気泡プラズマの体積及び密度を上昇させることができる。この結果、基板Wfを効果的に液中プラズマ処理することができる。
【0084】
(変形例3)
図6は、実施形態1の変形例3に係るプラズマ処理装置10cを説明するための模式図である。具体的には、
図6は、本変形例に係るプラズマ処理装置10cのガス室60及び基板Wfの周辺構成を模式的に図示している。なお、
図6において、磁束密度ベクトルが「矢印B」で例示され、電流密度ベクトルが「矢印J」で例示されている。
【0085】
本変形例に係るプラズマ処理装置10cは、一対の電極(具体的には、第1電極130a及び第2電極130b)と、第1電極130a及び第2電極130bに電気的に接続された電源131と、をさらに備えている点と、基板ホルダ50が磁力を発生するように構成されている点と、において、実施形態1に係るプラズマ処理装置10と異なっている。
【0086】
第1電極130a及び第2電極130bは、互いに反対の極性を有している。本変形例では、一例として、第1電極130aは陽極であり、第2電極130bは陰極である。また、本変形例に係る第1電極130a及び第2電極130bは、互いに対向するように配置されている。また、第1電極130aと第2電極130bとの間には、空間が設けられている。この空間は、液体Lqによって満たされている。
【0087】
本変形例に係る基板Wfは、第1電極130aと第2電極130bとの間に配置されている。
【0088】
本変形例に係る第1電極130aは、基板ホルダ50のホルダ本体51の下面に配置されている。この第1電極130aの下面に、基板Wfが配置されている。本変形例に係る
第2電極130bは、基板Wfとガス室60との間に配置されている。具体的には、本変形例に係る第2電極130bは、一例として、ガス室60の上壁62の上面に配置されている。また、本変形例に係る第2電極130bには、気泡プラズマが通過可能な開口132が設けられている。
【0089】
前述したように、本変形例に係る基板ホルダ50は、磁力を発生するように構成されている。この具体例として、基板ホルダ50は、ホルダ本体51が全体的に磁石によって構成されている。但し、基板ホルダ50の構成はこれに限定されるものではない。他の例を挙げると、基板ホルダ50は、ホルダ本体51の一部に磁石が配置された構成とすることもできる。
【0090】
電源131は、制御装置100の指示を受けて、第1電極130a及び第2電極130bへの電気の供給及び供給停止を行うように構成されている。電源131から第1電極130a及び第2電極130bへ電気が供給された場合、第1電極130aと第2電極130bとの間に生じる電場と、基板ホルダ50が発生する磁力と、に起因してローレンツ力が発生する。このローレンツ力によって、ガス室60と基板Wfとの間に気泡プラズマの回転流(Bur)を形成させることができる。
【0091】
本変形例によれば、気泡プラズマの回転流(Bur)をさらに利用して、基板Wfを液中プラズマ処理することができる。
【0092】
(変形例4)
図7は、実施形態1の変形例4に係るプラズマ処理装置10dを説明するための模式図である。具体的には、
図7は、本変形例に係るプラズマ処理装置10dの後述するガス室60dの周辺構成を模式的に図示している。プラズマ処理装置10dは、ガス室60に代えて、ガス室60dを備えている点において、実施形態1に係るプラズマ処理装置10と異なっている。
【0093】
ガス室60dは、誘電体によって構成された壁部を備えている点において、実施形態1に係るガス室60と異なっている。具体的には、本変形例に係るガス室60dは、ガス室60dの壁部を構成する底壁61、上壁62、及び、側壁63が、全体的に誘電体によって構成されている。
【0094】
誘電体の具体的な材質は、特に限定されるものではないが、この材質として、例えば、ガラス(具体的には石英ガラス)、セラミックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド等を用いることができる。
【0095】
本変形例によれば、ガス室60dが誘電体によって構成された壁部を備えているので、ガス室60dの内部において、このガス室60の壁部に沿って表面波(電磁波)を発生させることができる。そして、このガス室60の壁部に沿って発生した表面波が、ガス室60の壁部の表面の気体Gaをプラズマ化して、表面波プラズマを発生させることができる。この表面波プラズマは、ガス室60dの開口64を通過して、気泡プラズマになることができる。したがって、本変形例によれは、この表面波プラズマに起因する気泡プラズマをさらに利用して、基板Wfを液中プラズマ処理することができる。
【0096】
(変形例5)
前述した実施形態1や変形例1~4において、アンテナ90の個数は1つに限定されるものではない。アンテナ90の個数は複数であってもよい。
図8は、実施形態1の変形例5に係るプラズマ処理装置10eを説明するための模式図である。具体的には、
図8は、本変形例に係るプラズマ処理装置10eの後述するスロットアレイアンテナ95の模式的
な側面図である。
【0097】
本変形例に係るプラズマ処理装置10eは、複数のアンテナ90(具体的には、複数のスロットアンテナ)を有するスロットアレイアンテナ95を備えている点において、実施形態1に係るプラズマ処理装置10と異なっている。
【0098】
本変形例に係るスロットアレイアンテナ95において、複数のアンテナ90は上下方向に積層している。なお、このようなスロットアレイアンテナ95として、例えば、特許第5368995号公報(又は、国際公開第2008/121168号公報)に開示されているような公知のアンテナ(具体的にはフェーズドアレイアンテナ)を用いてもよい。
【0099】
本変形例においても、前述した実施形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0100】
(実施形態2)
続いて、本発明の実施形態2について説明する。
図9は、実施形態2に係る基板処理装置200の構成を説明するための模式図である。基板処理装置200は、搬送装置210(第1の搬送装置)と、搬送装置215(第2の搬送装置)と、洗浄・乾燥装置220と、プラズマ処理装置10と、制御装置100と、を備えている。また、基板処理装置200は、ロードポート240と、搬送室250と、洗浄・乾燥室260と、ロードロック室270と、前処理室280と、搬送室290と、プラズマ処理室300と、を備えている。
【0101】
なお、
図9、及び、後述する
図10において、基板Wfの搬送の流れの一例が、一方向実線矢印、又は、両方向実線矢印で例示されている。具体的には、
図9及び後述する
図10において、各搬送装置による各ロードポートと各室との間における基板Wfの搬送流れ、及び、各搬送装置による各室の内部における基板Wfの搬送流れの一例が、一方向実線矢印、又は、両方向実線矢印で例示されている。但し、プラズマ処理室300と搬送室290との間における基板Wfの搬送流れを示す矢印(これは、両方向実線矢印である)は、省略されている。
【0102】
本実施形態において、ロードポート240、搬送室250、及び、洗浄・乾燥室260の雰囲気は、一例として、大気圧に設定されている。一方、前処理室280、搬送室290、及び、プラズマ処理室300の雰囲気は、一例として、真空状態、又は、大気圧よりも気圧の低い減圧状態に設定されている。
【0103】
ロードポート240は、基板Wfを基板処理装置200に搬入するための搬入口、及び、基板Wfを基板処理装置200から搬出するための搬出口としての機能を有する部位である。本実施形態に係るロードポート240は、複数(一例として、4つ)設けられている。但し、ロードポート240の数は、複数に限定されるものではなく、1つでもよい。搬送室250は、搬送装置210が配置された室である。この搬送室250の内部を、搬送装置210が移動する。
【0104】
洗浄・乾燥室260は、洗浄・乾燥装置220が配置された室である。本実施形態に係る洗浄・乾燥室260は、複数(一例として、2つ)設けられている。具体的には、本実施形態に係る2つの洗浄・乾燥室260は、ロードロック室270を挟んで一方の側(-X方向の側)及び他方の側(X方向の側)にそれぞれ配置されている。但し、洗浄・乾燥室260の数は、複数に限定されるものではなく、1つでもよい。
【0105】
ロードロック室270(真空予備室)は、その内圧を大気圧状態から真空状態、又は、大気圧よりも気圧の低い減圧状態の間の所定の圧力に調整することができる。また、ロー
ドロック室270は、真空状態や減圧状態で、前処理室280、搬送室290及びプラズマ処理室300を大気圧に開放することなく、基板Wfの搬入及び搬出を行えるように構成されている。前処理室280は、ロードロック室270と搬送室290との間に設けられた室である。なお、基板処理装置200は、この前処理室280を備えていない構成とすることもできる。搬送室290は、搬送装置215が配置された室である。
【0106】
なお、ロードロック室270の周囲に隣接する、4つの室との境界壁面には、それぞれ、基板Wfを通過させるゲートバルブ275が設けられている。各ゲートバルブ275は、ロードロック室270が各室と同圧になり、基板Wfの搬入及び搬出が可能になるまで閉じられている。
【0107】
プラズマ処理室300は、プラズマ処理装置10が配置された室である。本実施形態に係るプラズマ処理室300は、複数設けられている。具体的には、本実施形態に係る複数のプラズマ処理室300は、一例として、搬送室290を囲むように、4つ設けられている。但し、プラズマ処理室300の数は、複数に限定されるものではなく、1つでもよい。
【0108】
搬送装置210は、大気圧雰囲気下において、基板Wfを搬送するための装置である。本実施形態においては、搬送装置210の一例として、自走式の搬送ロボットを用いている。搬送装置210は、搬送装置210の本体が回転でき、X方向及びZ方向に移動可能である。また、搬送装置210は、先端に基板Wfを保持し、X-Y平面内で直線移動させる第1の保持ハンドを備えている。
【0109】
搬送装置215は、真空雰囲気下又は減圧雰囲気下において、基板Wfを搬送するための装置である。本実施形態においては、搬送装置215の一例として、多関節のロボットハンドを有する搬送ロボット(一例として、垂直多関節式の搬送ロボット)を用いている。搬送装置215は、搬送装置215の本体が回転でき、X-Y平面内で固定され、さらにZ方向に移動可能である。また、搬送装置215は、第1の保持ハンドと同様な第2の保持ハンドを備えている。
【0110】
なお、ロードロック室270には、搬送装置215と同様な「第3の搬送装置(図示せず)」が備えられている。各搬送装置間の基板Wfの受け渡しは仮置台(図示せず)を介して行ってもよく、あるいは、それぞれの搬送装置の保持ハンドを用いて直接受け渡しする構成としてもよい。
【0111】
洗浄・乾燥装置220は、基板Wfを洗浄及び乾燥するための装置である。すなわち、洗浄・乾燥装置220は、「洗浄装置」及び「乾燥装置」としての機能を有している。具体的には、本実施形態に係る洗浄・乾燥装置220は、プラズマ処理装置10によって液中プラズマ処理された基板Wfを、洗浄液で洗浄し、次いで、乾燥するように構成されている。この洗浄液としては、例えば、純水等を用いることができる。
【0112】
なお、上述した洗浄・乾燥装置220は、洗浄装置及び乾燥装置としての機能を有する一つの装置によって構成されているが、これに限定されるものではない。洗浄・乾燥装置220として、洗浄装置と乾燥装置とが一体化せずに別体化したものを用いてもよい。また、基板処理装置200は、洗浄装置及び乾燥装置のいずれか一方のみを備える構成とすることもできる。この場合、基板処理装置200は、洗浄・乾燥装置220に代えて「洗浄装置」又は「乾燥装置」を用いればよい。なお、洗浄・乾燥装置220として、例えば、特開2010-050436号公報に開示されているような洗浄・乾燥装置を用いることもできる。
【0113】
本実施形態では、プラズマ処理装置10として、前述した実施形態1に係るプラズマ処理装置10を用いている。本実施形態に係る制御装置100は、基板処理装置200の動作を統合的に制御するように構成されている。
【0114】
基板処理装置200において、処理前の基板Wfは、ロードポート240に配置されている。ロードポート240に配置された基板Wfは、搬送装置210によって、ロードロック室270に搬送される。その後、ロードロック室270に隣接する全てのゲートバルブ275は閉じられ、ロードロック室270は前処理室280と同じ圧力まで減圧される。ロードロック室270と前処理室280の境界壁面のゲートバルブ275が開放された後、ロードロック室270に搬送された基板Wfは、前述の第3の搬送装置により、前処理室280に一旦配置される。次いで、この前処理室280に配置された基板Wfは、搬送装置215により、各プラズマ処理装置10に搬送される。プラズマ処理装置10は、搬送された基板Wfに液中プラズマ処理を施す。
【0115】
液中プラズマ処理が施された基板Wfは、搬送装置215によって、前処理室280に配置される。次いで、この基板Wfは、前述した第3の搬送装置によってロードロック室270に搬送され、ロードロック室270と前処理室280の境界壁面のゲートバルブ275は閉じられる。
【0116】
ロードロック室270が大気圧状態に加圧され,ロードロック室270と各洗浄・乾燥室260の境界壁面のゲートバルブ275が開放された後、ロードロック室270に搬送された基板Wfは、前述した第3の搬送装置によって、洗浄・乾燥装置220に搬送される。ロードロック室270と洗浄・乾燥室260の境界壁面のゲートバルブ275が閉じた後、洗浄・乾燥装置220により、基板Wfは洗浄され、次いで、乾燥される。乾燥後の基板Wfは、搬送装置210によって、ロードポート240に搬送される。以上の手順で、基板Wfは処理される。
【0117】
なお、搬送室250のY方向下側の各ロードポート240との境界壁面、及び、搬送室250のY方向上側の各洗浄・乾燥室260との境界壁面には、基板Wfを搬入・搬出出可能にする開閉シャッター(図示せず)が設けられていてもよい。
【0118】
本実施形態においても、プラズマ処理装置10を備えているので、前述した実施形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0119】
なお、本実施形態に係る基板処理装置200は、実施形態1に係るプラズマ処理装置10に代えて、前述した実施形態1の変形例1~5に係るプラズマ処理装置を備えていてもよい。
【0120】
また、上述した基板処理装置200は、液中プラズマ処理後の基板Wfを洗浄しているが、この構成に限定されるものではない。基板処理装置200は、液中プラズマ処理後の基板Wfのみならず、液中プラズマ処理前の基板Wfに対しても、洗浄を行ってもよい。すなわち、この場合、基板Wfは、洗浄・乾燥装置220によって洗浄・乾燥された後に、プラズマ処理装置10によって液中プラズマ処理され、次いで、洗浄・乾燥装置220で洗浄・乾燥される。あるいは、基板処理装置200は、液中プラズマ処理前の基板Wfに対して、洗浄を行う一方で、液中プラズマ処理後の基板Wfには、洗浄を行わない構成であってもよい。
【0121】
(実施形態2の変形例)
図10は、実施形態2の変形例に係る基板処理装置200aの構成を説明するための模式図である。本変形例に係る基板処理装置200aは、前処理室280を備えていない点
と、搬送装置210はその本体がX方向ではなくY方向に移動する点と、搬送装置215A(第4の搬送装置)を備えている点と、第5の搬送装置(図示せず)を備えている点と、において、前述した
図9に例示する基板処理装置200と異なっている。
【0122】
搬送装置215Aの本体は搬送室290内で回転することができ、X方向及びZ方向に移動可能である。搬送装置215Aは、先端に基板Wfを保持してY方向に直線移動させる第4の保持ハンドを備えている。
【0123】
第5の搬送装置(図示せず)は、ロードロック室270内に配置されている。第5の搬送装置は、その本体が回転することができ、Y方向及びZ方向に移動可能である。また、第5の搬送装置は、先端に基板Wfを保持してX方向に直線移動させる第5の保持ハンドを備えている。
【0124】
本変形例において、4つのプラズマ処理室300は、一例として、搬送室290を挟んで一方の側(Y方向側)及び他方の側(-Y方向側)にそれぞれ2個、隣接して配置されている。
【0125】
本変形例において、ロードポート240に配置された基板Wfは、搬送装置210によって、大気圧状態のロードロック室270に搬送される。その後、ロードロック室270に隣接するすべてのゲートバルブ275は閉じられ、ロードロック室270は搬送室290と同じ圧力まで減圧される。ロードロック室270と搬送室290の境界壁面のゲートバルブ275が開放された後、ロードロック室270に搬送された基板Wfは、前述した第5の搬送装置(図示せず)により、搬送室290に搬送される。搬送室290に搬送された基板Wfは、搬送装置215Aによって各プラズマ処理装置10に搬送される。プラズマ処理装置10は、搬送された基板Wfに液中プラズマ処理を施す。
【0126】
プラズマ処理装置10によって液中プラズマ処理が施された基板Wfは、搬送装置215Aによって搬送室290に搬送される。搬送室290に搬送された基板Wfは、前述した第5の搬送装置(図示せず)によって、ロードロック室270に搬送される。次いで、ロードロック室270と搬送室290の境界壁面のゲートバルブ275は閉じられる。
【0127】
ロードロック室270が大気圧状態に加圧され、ロードロック室270と各洗浄・乾燥室260の境界壁面のゲートバルブ275が開放された後、ロードロック室270に搬送された基板Wfは、前述した第5の搬送装置によって、洗浄・乾燥装置220に搬送される。ロードロック室270と洗浄・乾燥室260の境界壁面のゲートバルブ275が閉じた後、洗浄・乾燥装置220により、基板Wfは洗浄され、次いで、乾燥される。乾燥後の基板Wfは、搬送装置210によって、ロードポート240に搬送される。以上の手順で、基板Wfは処理される。
【0128】
なお、本変形例に係る基板処理装置200aは、実施形態1に係るプラズマ処理装置10に代えて、前述した実施形態1の変形例1~5に係るプラズマ処理装置を備えていてもよい。
【0129】
また、基板処理装置200aは、液中プラズマ処理後の基板Wfのみならず、液中プラズマ処理前の基板Wfに対しても、洗浄を行ってもよい。あるいは、基板処理装置200aは、液中プラズマ処理前の基板Wfに対して、洗浄を行う一方で、液中プラズマ処理後の基板Wfには、洗浄を行わない構成であってもよい。
【0130】
本変形例においても、前述した実施形態2と同様の作用効果を奏することができる。
【0131】
なお、
図9に例示する基板処理装置200や
図10に例示する基板処理装置200aは、複数のプラズマ処理装置10、及び/又は、複数の洗浄・乾燥装置220が、さらに、上下方向に積層(すなわち、複数段に積層)された構成を有していてもよい。
【0132】
以上、本発明の実施形態や変形例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態や変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0133】
10 プラズマ処理装置
20 チャンバ
50 基板ホルダ
60 ガス室
64 開口
70 気体供給装置
80 マイクロ波発生装置
82 導波管
84 所定箇所
90 アンテナ
91 スロット
92 第1スロット部位
93 第2スロット部位
120 磁気コイル
121 電源
130a 第1電極
130b 第2電極
131 電源
200 基板処理装置
220 洗浄・乾燥装置(「洗浄装置」、「乾燥装置」)
Wf 基板
Ga 気体
Lq 液体
Bu 気泡プラズマ