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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093376
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ロック機能付きギヤードモータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/34 20060101AFI20240702BHJP
   F16H 1/08 20060101ALI20240702BHJP
   F16D 63/00 20060101ALI20240702BHJP
   F16D 65/16 20060101ALI20240702BHJP
   B60K 17/12 20060101ALI20240702BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20240702BHJP
   F16D 127/06 20120101ALN20240702BHJP
   F16D 127/02 20120101ALN20240702BHJP
   F16D 129/10 20120101ALN20240702BHJP
【FI】
F16H63/34
F16H1/08
F16D63/00 H
F16D65/16
B60K17/12
H02K7/116
F16D127:06
F16D127:02
F16D129:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209711
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松原 勇太
(72)【発明者】
【氏名】小野 孝司
(72)【発明者】
【氏名】平野 広昭
【テーマコード(参考)】
3D042
3J009
3J058
3J067
5H607
【Fターム(参考)】
3D042AA06
3D042AB01
3J009DA17
3J009EA04
3J009EA12
3J009EA32
3J009EB17
3J009EC02
3J009FA07
3J009FA14
3J058AB21
3J058CC15
3J058FA42
3J067AA21
3J067AB21
3J067AC03
3J067DB31
3J067FA57
3J067FB83
3J067GA01
5H607AA12
5H607BB01
5H607CC03
5H607EE31
(57)【要約】
【課題】 大型化を抑制可能なロック機能付きギヤードモータの一例を開示する。
【解決手段】 ギヤードモータの係合用歯車31は、第2歯車22を挟んでロータ軸11の先端と反対側の位置にてロータ軸11に固定されている。このため、当該ギヤードモータでは、ロータ軸11を第2歯車22を超えて電動モータ10と反対側まで延ばす必要性がない。したがって、当該ギヤードモータでは、ギヤードモータ1の大型化を抑制でき得る。なお、第1歯車21がロータ軸11の先端側に直接的に歯切りされて形成され、係合用歯車31が第1歯車21の不完全歯部21Aに配置されていれば、さらに大型化を抑制できる。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータのロータ軸に設けられた第1歯車と、
歯車ケーシングに支持された第2歯車であって、前記第1歯車と噛み合う第2歯車と、
前記ロータ軸に固定された係合用歯車であって、当該ロータ軸が挿入された環状の環状部、及び当該環状部の外周に少なくとも1つの凸部を有する係合用歯車と、
前記凸部と係合する位置と当該凸部と非係合となる位置との間で変位可能な係合ラッチとを備え、
前記係合用歯車は、前記第2歯車を挟んで前記ロータ軸の先端と反対側の位置にて前記ロータ軸に固定されているロック機能付きギヤードモータ。
【請求項2】
前記第1歯車は、前記ロータ軸の先端部に直接的に歯切りされて形成されており、
さらに、前記係合用歯車は、前記第1歯車の不完全歯部に配置されている請求項1に記載のロック機能付きギヤードモータ。
【請求項3】
前記環状部の内周には、前記不完全歯部と係合した係合部が設けられている請求項2に記載のロック機能付きギヤードモータ。
【請求項4】
前記歯車ケーシングに保持され、前記第2歯車の軸部を回転可能に支持する軸受部を備え、
前記ロータ軸の中心軸線及び前記第2歯車の回転中心軸線と直交する方向を軸間方向としたとき、
前記軸間方向と直交する仮想平面に投影された前記軸受部と当該仮想平面に投影された前記係合用歯車とは、少なくとも一部が重なる請求項2又は3に記載のロック機能付きギヤードモータ。
【請求項5】
前記第1歯車は、歯筋方向が螺旋状に延びるヘリカル歯車であり、
前記係合部は、前記第1歯車の歯溝に嵌り込んだ複数の突起部により構成されている請求項3に記載のロック機能付きギヤードモータ。
【請求項6】
前記ロータ軸と前記環状部とは、「しまりばめ」にて圧接している請求項1又は2に記載のロック機能付きギヤードモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロック機能付きギヤードモータに関する。
【背景技術】
【0002】
ロック機能付きギヤードモータとは、例えば、特許文献1に示されるように、減速機等の歯車機構と電動モータとが一体となったギヤードモータにおいて、ロータ軸や歯車等の回転体の回転を機械的に規制する機能(以下、ロック機能という。)を有する電動モータである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-158058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、ロック機能付きギヤードモータの大型化を抑制可能であって、特許文献1に記載の発明(以下、文献発明という。)と異なる新規な構成のロック機能付きギヤードモータの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ロック機能付きギヤードモータは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。すなわち、当該構成要件は、電動モータ(10)のロータ軸(11)に設けられた第1歯車(21)と、歯車ケーシング(25)に支持された第2歯車(22)であって、第1歯車(21)と噛み合う第2歯車(22)と、ロータ軸(11)に固定された係合用歯車(31)であって、当該ロータ軸(11)が挿入された環状の環状部(31A)、及び当該環状部(31A)の外周に少なくとも1つの凸部(31B)を有する係合用歯車(31)と、凸部(31B)と係合する位置と当該凸部(31B)と非係合となる位置との間で変位可能な係合ラッチ(32)とを備えている。
【0006】
そして、本願に係る係合用歯車(31)は、第2歯車(22)を挟んでロータ軸(11)の先端と反対側の位置にてロータ軸(11)に固定されている。換言すれば、係合用歯車(31)は、第2歯車(22)に対して電動モータ(10)側の位置にてロータ軸(11)に固定されている。
【0007】
これに対して、文献発明では、パークギヤが第1中間歯車を挟んで電動モータと反対側の配置されている。なお、パークギヤは係合用歯車(31)に相当する。第1中間歯車は第2歯車(22)に相当する。入力歯車は、第1歯車(21)に相当する。入力歯車32の軸部は、ロータ軸(11)に相当する(特許文献1の図3参照)。
【0008】
このため、文献発明では、入力歯車の軸部31が入力歯車を超えて電動モータと反対側まで延びた構成とならざるを得ない。これに対して、本願では、ロータ軸(11)を第2歯車(22)を超えて電動モータ(10)と反対側まで延ばす必要性に乏しい。したがって、当該ロック機能付きギヤードモータでは、文献発明と異なる新規な構成にて、ロック機能付きギヤードモータの大型化を抑制でき得る。
【0009】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るロック機能付きギヤードモータの外観図である。
図2】第1実施形態に係るロック機能付きギヤードモータの構造図である。
図3】第1実施形態に係るロック機能付きギヤードモータの第1歯車、第2歯車22、係合用歯車及び係合ラッチ等の配置を示す図である。
図4】第1実施形態に係る係合用歯車を示す図である。
図5】第1実施形態に係るロック機能付きギヤードモータの第1歯車、第2歯車22及び係合用歯車の配置を示す図である。
図6】第1実施形態に係るロック機能付きギヤードモータの第1歯車、第2歯車22、係合用歯車及び係合ラッチ等の配置を示す図である。
図7】第1実施形態に係る第1歯車ケーシングを示す図である。
図8】第1実施形態に係るロック機能付きギヤードモータの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0012】
なお、各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び各部材又は部位の形状を理解し易くするために記載されたものである。したがって、本開示に示された発明は、各図に付された方向に限定されない。
【0013】
符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。本開示に示されたロック機能付きギヤードモータ(以下、ギヤードモータと略す。)は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0014】
(第1実施形態)
<1.ギヤードモータの概要>
本実施形態は、電動車両等の輸送機器に用いられるギヤードモータに本開示に係るギヤードモータの一例が適用されたものである。なお、本願に係る電動車両とは、電動機のみで走行可能な車両、及び電動機と内燃機関とを併用して走行可能な車両等をいう。
【0015】
図1に示されるギヤードモータ1は、車両を走行させるための動力を発生させるギヤードモータである。当該ギヤードモータ1は、電動モータ10、ギヤボックス20及びロック装置30等を少なくとも備える。
【0016】
<2.ギヤードモータの詳細>
<2.1 電動モータ>
電動モータ10は、ロータ(図示せず。)、ステータ(図示せず。)及びハウジング12等を少なくとも有する電動モータである。ロータは、ロータ軸11(図3参照)にて回転可能に支持されている。ハウジング12は、ロータ及びステータを収納する。
【0017】
本実施形態に係る電動モータ10は、ステータ内でロータが回転するインナーロータ型である。そして、ロータは、永久磁石が埋設されたマグネットロータである。ステータは、巻き線で構成されたコイル、及び当該巻き線が巻かれたコアを有する。
【0018】
<2.2 ギヤボックス>
ギヤボックス20は、電動モータ10の出力を変速(本実施形態では、減速)して外部に出力する。具体的には、当該ギヤボックス20は、図2に示されるように、複数の歯車21~24及び歯車ケーシング25等を少なくとも有する。
【0019】
歯車ケーシング25は、複数の歯車21~24を収納するケーシングである。当該歯車ケーシング25は、第1歯車ケーシング25A及び第2歯車ケーシング25Bにより構成されている。第1歯車ケーシング25Aは、電動モータ10のハウジング12に固定されている。
【0020】
第2歯車ケーシング25Bは、ロータ軸11の軸線方向と平行な方向において、歯車21~24を挟んで第1歯車ケーシング25Aと反対側に配置されている。そして、第1歯車ケーシング25Aと第2歯車ケーシング25Bとは、複数のボルトにて互いに締結固定されている。
【0021】
複数の歯車21~24は、ロータ軸11の回転速を減速する減速機構を構成する。そして、各歯車21~24の回転軸線は、ロータ軸11の軸線方向と平行である。なお、本実施形態に係る歯車21~24は、歯筋方向が螺旋状に延びるヘリカル歯車である。
【0022】
歯車21(以下、第1歯車21という。)は、ロータ軸11に設けられ、当該ロータ軸11と一体的に回転する入力歯車である。本実施形態に係る第1歯車21は、ロータ軸11の先端部に直接的に歯切りされて形成されている。
【0023】
ロータ軸11の先端部とは、例えば、ロータ軸11の端部のうち歯車22(以下、第2歯車22という。)と対向する部分を含む範囲をいう(図5参照)。なお、第1歯車21は、ホブ加工又はギヤスカイビング加工にて形成されている。
【0024】
第2歯車22は、第1歯車21と噛み合う歯車であって、第1歯車21より歯数の多い歯車である。このため、第2歯車22は、第1歯車21より遅い回転速となる。歯車23は、第2歯車22の歯数より少ない歯車であって、第2歯車22と同軸上に配置されて第2歯車22と一体的に回転する。
【0025】
歯車24は、図2に示されるように、歯車23と噛み合う出力歯車であって、歯車23の歯数より少ない歯数の歯車である。このため、歯車24は、歯車23より遅い回転速となる。したがって、第1歯車21の回転速、つまりロータ軸11の回転速が減速されて出力される。
【0026】
出力軸(図示せず。)は、歯車24と一体的に回転する。本実施形態に係る出力軸は、第1歯車ケーシング25Aを貫通して電動モータ10側に突出している。なお、歯車22~24は、軸受(図示せず。)を介して歯車ケーシング25に支持されている。
【0027】
本実施形態に係るギヤボックス20には、オイルノズル26が設けられている。オイルノズル26は、複数の歯車21~24(特、第1歯車21と第2歯車22と噛合部)に潤滑油を供給する。
【0028】
<2.3 ロック装置>
ロック装置30は、電動モータ10が停止している場合において、出力軸から回転力が入力したときに、当該回転力によって複数の歯車21~24及び電動モータ10が大きく回転してしまうことを規制する装置である。
【0029】
当該ロック装置30は、図3に示されるように、係合用歯車31、係合ラッチ32、バネ33及びアクチュエータ34等を少なくとも有して構成されている。係合用歯車31は、ロータ軸11に固定され、係合ラッチ32と係合したときに当該ロータ軸11の回転を機械的に規制する。
【0030】
<係合用歯車>
係合用歯車31は、図4に示されるように、環状部31A、凸部31B及び係合部31C等を少なくとも有して構成されている。環状部31Aは、ロータ軸11が挿入されるリング状の部位である。
【0031】
凸部31Bは、環状部31Aの外周に少なくとも1つ(本実施形態では、等間隔で複数)設けられた突起部である。係合部31Cは、少なくとも1つ(本実施形態では、複数)の突起部にて構成されている。
【0032】
各突起部は、第1歯車21の不完全歯部21A(図5参照)の歯溝に嵌り込んで当該不完全歯部21Aと係合する部位である。なお、本実施形態に係る複数の係合部31Cは、ヘリカル内歯歯車の歯部と同様な構成となっている。
【0033】
不完全歯部21Aとは、ロータ軸11が直接的に歯切りされて第1歯車21が形成される際に必然的に生じる部位であって、例えば、歯溝の溝深さが、当該第1歯車21で必要とされる溝深さに満たない部位をいう。すなわち、不完全歯部21Aの溝深さは、第1歯車21の溝深さよりも浅い。
【0034】
そして、係合用歯車31は、図5示されるように、第2歯車22を挟んでロータ軸11の先端11Aと反対側の位置、つまり第2歯車22に対して電動モータ10側の位置にてロータ軸11に固定されている。
【0035】
換言すれば、係合用歯車31は、第1歯車21と第2歯車22とが噛み合っている部分よりも電動モータ10のロータ側の位置にてロータ軸11に固定されている。そして、本実施形態係る係合用歯車31は、第1歯車21の不完全歯部21Aに配置されている。
【0036】
さらに、本実施形態では、ロータ軸11と環状部31Aとを「しまりばめ」にて圧接させて係合用歯車31をロータ軸11に固定している。因みに、本実施形態では、締め代が大きいため、「しまりばめ」の施工時に「焼ばめ」を用いている。
【0037】
そして、図5に示されるように、軸間方向L3と直交する仮想平面に投影された軸受部22Aと当該仮想平面に投影された係合用歯車31とは、少なくとも一部が重なっている。このため、係合用歯車31は、第1歯車ケーシング25Aのうち電動モータ10側に凹んだ部位25C(図7参照)に配置されている。
【0038】
なお、軸受部22Aは、第2歯車22の軸部を回転可能に支持する軸受部のうち第1歯車ケーシング25Aに支持された軸受部である。軸間方向L3とは、ロータ軸11の中心軸線L1及び第2歯車22の回転中心軸線L2と直交する方向をいう。
【0039】
<係合ラッチ>
係合ラッチ32は、係合用歯車31の凸部31Bと係合する係合位置(図3参照)と当該凸部31Bと非係合となる非係合位置(図6参照)との間で変位可能な部材である。具体的には、係合ラッチ32は、軸部32A(図6参照)を介して第1歯車ケーシング25Aに揺動可能に支持されている。このため、係合ラッチ32は、係合位置と非係合位置との間で揺動できる。
【0040】
<バネ及びアクチュエータ>
バネ33は、図6に示されるように、係合ラッチ32を非係合位置に変位させる弾性力を当該係合ラッチ32に作用させる。なお、本実施形態に係るバネ33は、捻りコイルばねにて構成されている。当該バネ33のコイル部33Aは、第1歯車ケーシング25Aに支持されている。
【0041】
アクチュエータ34は、係合ラッチ32を係合位置に変位させる力を発生する電動式のアクチュエータである。具体的には、アクチュエータ34のロッド34Aは、本体部34Bに対して所定寸法だけ出没変位可能である。
【0042】
そして、ロッド34Aが本体部34B内に没したときには、バネ33の弾性力により係合ラッチ32が非係合位置となる。ロッド34Aが本体部34Bから突出すると、ロッド34Aのカム部34Cが係合ラッチ32に当たるため、係合ラッチ32が係合位置となる。
【0043】
さらに、アクチュエータ34は、図8に示されるように、歯車ケーシング25の最大外形寸法範囲に収まるように配置されている。すなわち、本体部34Bは、第2歯車ケーシング25Bの凹み部25D(図1参照)に配置されている。
【0044】
そして、ロッド34Aが第2歯車ケーシング25Bを貫通して歯車ケーシング25内に到達している。このため、アクチュエータ34は、歯車ケーシング25の最大外形寸法範囲(図8の細線の囲まれた範囲)に収まる。
【0045】
<3.本実施形態に係るギヤードモータの特徴>
本実施形態に係るギヤードモータ1の係合用歯車31は、第2歯車22を挟んでロータ軸11の先端と反対側の位置にてロータ軸11に固定されている。つまり、係合用歯車31は、第2歯車22に対して電動モータ10側の位置にてロータ軸11に固定されている。
【0046】
これに対して、特許文献1に記載の発明では、パークギヤが第1中間歯車を挟んで電動モータと反対側の配置されている。このため、当該文献に記載の発明では、入力歯車の軸部が入力歯車を超えて電動モータと反対側まで延びた構成とならざるを得ない。
【0047】
これに対して、本実施形態では、ロータ軸11の先端を第2歯車22を超えて電動モータ10と反対側まで延ばす必要性がない(図5参照)。したがって、当該ギヤードモータ1では、当該文献に記載の発明と異なる新規な構成にて、ギヤードモータ1の大型化を抑制でき得る。
【0048】
そして、本実施形態に係るギヤードモータ1では、第1歯車21がロータ軸11の先端側に直接的に歯切りされて形成され、係合用歯車31が第1歯車21の不完全歯部21Aに配置されている。
【0049】
すなわち、第1歯車21を歯切り加工にて形成すると、必然的に不完全歯部21Aが発生してしまう。この不完全歯部21Aは、歯車として不完全な形状であるので、実質的に歯車として利用できない部位である。
【0050】
そして、当該ギヤードモータ1では、係合用歯車31が不完全歯部21Aに配置されているので、歯車として利用できない部位をロック機能のために有効活用することができる。
延いては、係合用歯車31を配置するためにロータ軸11が長くなることを抑制でき得る。つまり、仮に、係合用歯車31が不完全歯部21Aに配置されていない構成(以下、他の構成という。)では、当該係合用歯車31を配置するための部位を新たに設ける必要がある。このため、当該他の構成では、ロータ軸11が長くなってしまう。
【0051】
当該ギヤードモータ1に係る環状部31Aの内周には、不完全歯部21Aと係合した係合部31Cが設けられている。これにより、本実施形態では、係合用歯車31がロータ軸11に対して回転してしまうことが確実に抑制され得る。
【0052】
第1歯車21はヘリカル歯車であり、係合部31Cは、第1歯車21の歯溝に嵌り込んだ複数の突起部により構成されている。これにより、ロータ軸11が、例えば高速で正転すると、係合用歯車31が不完全歯部21Aに食い込んでいく。
【0053】
つまり、第1歯車21は、歯筋方向が螺旋状に延びているため、第1歯車21と係合用歯車31との関係は、ボルトとナットとの関係に類似した関係となる。そして、ボルトに相当する第1歯車21が高速で回転すると、ナットに相当する係合用歯車31の慣性により、第1歯車21が係合用歯車31に対して相対的に回転しようとする。
【0054】
このため、第1歯車21の歯溝に嵌り込んだ係合部31Cが、ボルトの不完全ねじ部に相当する不完全歯部21Aに食い込んでいく。なお、正転とは、上記の作動をする向きの回転をいう。そして、多くの場合に、正転とは、車両が前進するときの電動モータ10の回転の向きをいう。
【0055】
さらに、本実施形態では、軸間方向L3と直交する仮想平面に投影された軸受部22Aと当該仮想平面に投影された係合用歯車31とは、少なくとも一部が重なっている。これにより、ギヤードモータ1の大型化を抑制でき得る。
【0056】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係る係合用歯車31は、第1歯車21の不完全歯部21Aに配置されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、不完全歯部21Aより更に電動モータ10側にずれた位置に係合用歯車31が配置された構成であってもよい。
【0057】
上述の実施形態では、係合用歯車31の内周に不完全歯部21Aと係合した係合部31Cが設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、係合部31Cが廃止された構成であってもよい。
【0058】
上述の実施形態に係る係合部31Cは、螺旋状の突条であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、単純な突起にて係合部31Cが構成されていてもよい。
【0059】
上述の実施形態に係る係合用歯車31は「しまりばめ」にてロータ軸11に圧接固定されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、止めネジやテーパキーにて係合用歯車31がロータ軸11に固定された構成であってもよい。
【0060】
上述の実施形態に係る第1歯車21及び第2歯車22はヘリカル歯車であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、歯筋方向が中心軸線L1と平行な平歯車であってもよい。
【0061】
上述の実施形態に係るロータ軸11の先端が第2歯車22を超えて電動モータ10と反対側まで延びていない構成であった(図5参照)。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、ロータ軸11の先端が第2歯車22を超えて電動モータ10と反対側まで延びた構成であってもよい。
【0062】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1… ギヤードモータ 10…電動モータ 11… ロータ軸
20… ギヤボックス 21…第1歯車 21A… 不完全歯部
22… 第2歯車 25…歯車ケーシング 25A… 第1歯車ケーシング
25B… 第2歯車ケーシング 30…ロック装置 31… 係合用歯車
31A… 環状部 31B…凸部 31C… 係合部 32… 係合ラッチ
33… バネ 34…アクチュエータ 34A… ロッド
34B… 本体部 34C…カム部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8