(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093387
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】配線基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240702BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H05K1/11 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209741
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山村 京太
【テーマコード(参考)】
5E316
5E317
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA15
5E316AA32
5E316AA43
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC13
5E316CC32
5E316DD12
5E316DD22
5E316DD32
5E316DD33
5E316EE33
5E316FF07
5E316FF15
5E316GG15
5E316GG17
5E316HH31
5E317AA24
5E317BB02
5E317BB03
5E317BB12
5E317CC32
5E317CC33
5E317CD11
5E317CD25
5E317CD27
5E317GG17
(57)【要約】
【課題】配線層の厚さの設計自由度を向上することが可能な配線基板を提供する。
【解決手段】本配線基板は、第1配線層と、前記第1配線層を被覆する絶縁層と、前記絶縁層を貫通するビア配線と、前記絶縁層の上面に設けられ、前記ビア配線を介して前記第1配線層と接続された第2配線層と、を有し、前記ビア配線は、前記絶縁層を貫通するビアホールの内壁面、及び前記ビアホール内に露出する前記第1配線層の上面を被覆する第1シード層と、前記第1シード層上に設けられた第1電解めっき層と、を含み、前記第2配線層は、前記絶縁層の上面及び前記第1電解めっき層の上面に設けられた第2シード層と、前記第2シード層上に設けられた第2電解めっき層と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1配線層と、
前記第1配線層を被覆する絶縁層と、
前記絶縁層を貫通するビア配線と、
前記絶縁層の上面に設けられ、前記ビア配線を介して前記第1配線層と接続された第2配線層と、を有し、
前記ビア配線は、前記絶縁層を貫通するビアホールの内壁面、及び前記ビアホール内に露出する前記第1配線層の上面を被覆する第1シード層と、前記第1シード層上に設けられた第1電解めっき層と、を含み、
前記第2配線層は、前記絶縁層の上面及び前記第1電解めっき層の上面に設けられた第2シード層と、前記第2シード層上に設けられた第2電解めっき層と、を含む、配線基板。
【請求項2】
前記第1シード層の端面は、前記絶縁層の上面側に露出し、
前記第1シード層の端面と前記第2シード層の下面とが接続される、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記第2配線層は、前記ビア配線上に位置するパッドと、前記絶縁層の上面に位置する配線パターンと、を含む、請求項1に記載の配線基板。
【請求項4】
前記絶縁層の上面と前記第1電解めっき層の上面とは、面一である、請求項1に記載の配線基板。
【請求項5】
前記第2配線層の厚さは、10μm以下である、請求項1乃至4の何れか一項に記載の配線基板。
【請求項6】
第1配線層を被覆する絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層を貫通し、前記第1配線層の上面を露出するビアホールを形成する工程と、
前記絶縁層の上面、前記ビアホールの内壁面、及び前記ビアホール内に露出する前記第1配線層の上面を被覆する第1シード層を形成する工程と、
前記第1シード層の表面を乾燥させる工程と、
前記第1シード層をウェットエッチングし、前記ビアホール内に位置する前記第1シード層を残存させ、前記絶縁層の上面に位置する前記第1シード層を除去する工程と、
前記ビアホール内に位置する前記第1シード層上に第1電解めっき層を形成する工程と、
前記絶縁層の上面及び前記第1電解めっき層の上面に第2シード層を形成する工程と、
前記第2シード層上に第2電解めっき層を形成する工程と、を含む、配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記第1シード層をウェットエッチングする工程では、前記第1シード層にエッチングマスクを設けることなく、前記第1シード層の全体をエッチング液に浸漬させる、請求項6に記載の配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記乾燥させる工程では、前記第1シード層に、20℃以上30℃以下の気体を送風する、請求項6に記載の配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記第2電解めっき層は、銅から形成され、
前記第2電解めっき層の形成に用いるめっき浴は、硫酸及び硫酸銅五水和物を含み、
前記硫酸の濃度は、前記硫酸銅五水和物の濃度以上である、請求項6乃至8の何れか一項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記第2電解めっき層は、銅から形成され、
前記第2電解めっき層の形成に用いるめっき浴は、硫酸及び硫酸銅五水和物を含み、
前記めっき浴の導電率は30S/m以上である、請求項6乃至8の何れか一項に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線層及び絶縁層を交互に積層する多層の配線基板が知られている。このような配線基板において、隣接する配線層は、絶縁層を貫通するビア配線により接続される。また、ビア配線と、ビア配線の上に形成される配線層とは、例えば、同一のめっき工程により一体に形成される。すなわち、同一のめっき工程で、絶縁層に形成されたビアホールを充填する処理と、絶縁層の上面に配線層を形成する処理が実施される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、絶縁層の上面に形成する配線層を一定以上の厚さにしないとビアホールを充填することができないため、ビアホールを充填する処理と配線層を形成する処理を同時に実施すると、配線層の厚さを自由に設計できない。すなわち、配線層の厚さの設計の自由度が低くなる。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、配線層の厚さの設計自由度を向上することが可能な配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本配線基板は、第1配線層と、前記第1配線層を被覆する絶縁層と、前記絶縁層を貫通するビア配線と、前記絶縁層の上面に設けられ、前記ビア配線を介して前記第1配線層と接続された第2配線層と、を有し、前記ビア配線は、前記絶縁層を貫通するビアホールの内壁面、及び前記ビアホール内に露出する前記第1配線層の上面を被覆する第1シード層と、前記第1シード層上に設けられた第1電解めっき層と、を含み、前記第2配線層は、前記絶縁層の上面及び前記第1電解めっき層の上面に設けられた第2シード層と、前記第2シード層上に設けられた第2電解めっき層と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、配線層の厚さの設計自由度を向上することが可能な配線基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る配線基板を例示する断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図(その1)である。
【
図3】第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図(その2)である。
【
図4】第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図(その3)である。
【
図5】第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図(その4)である。
【
図6】第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図(その5)である。
【
図7】第1実施形態に係る配線基板の製造工程の他の例を示す図である。
【
図8】第1実施形態の変形例に係る配線基板を例示する断面図である。
【
図9】めっき浴と膜厚比との関係を例示する図である。
【
図10】めっき浴と導電率との関係を例示する図である。
【
図11】導電率と膜厚比との関係を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
[配線基板の構造]
図1は、第1実施形態に係る配線基板を例示する断面図である。
図1を参照すると、配線基板1は、コア基板10の両面に配線層及び絶縁層が積層された配線基板である。
【0011】
具体的には、配線基板1において、コア基板10の上面10aには、配線層11と、絶縁層12と、ビア配線13と、配線層14と、絶縁層15と、ビア配線16と、配線層17と、絶縁層18と、ビア配線19と、配線層20とが順次積層されている。又、コア基板10の下面10bには、配線層31と、絶縁層32と、ビア配線33と、配線層34と、絶縁層35と、ビア配線36と、配線層37と、絶縁層38と、ビア配線39と、配線層40とが順次積層されている。
【0012】
なお、本実施形態では、便宜上、
図1における配線基板1の配線層20側を上側又は一方の側、配線層40側を下側又は他方の側とする。また、各部位の配線層20側の面を一方の面又は上面、配線層40側の面を他方の面又は下面とする。但し、配線基板1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。また、平面視とは対象物を配線層20の一方の面の法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を配線層20の一方の面の法線方向から視た形状を指すものとする。
【0013】
コア基板10としては、例えば、ガラスクロスにエポキシ系樹脂等の熱硬化性の絶縁樹脂を含浸させた所謂ガラスエポキシ基板等を用いることができる。コア基板10として、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の織布や不織布にエポキシ系樹脂等の熱硬化性の絶縁樹脂を含浸させた基板等を用いてもよい。コア基板10の厚さは、例えば、80~1200μm程度とすることができる。なお、各図において、ガラスクロス等の図示は省略されている。
【0014】
コア基板10には、コア基板10を貫通する複数の貫通孔10xが形成されている。貫通孔10xの平面形状は、例えば、直径が50~100μm程度の円形とすることができる。貫通孔10xのピッチは、例えば、100~1000μm程度とすることができる。貫通孔10x内には、貫通電極25が形成されている。貫通電極25の材料としては、例えば、銅(Cu)等を用いることができる。
【0015】
配線層11は、コア基板10の上面10aに形成されている配線パターンである。配線層31は、コア基板10の下面10bに形成されている配線パターンである。配線層11は、コア基板10を貫通する貫通電極25を介して、配線層31と電気的に接続されている。配線層11及び配線層31は、例えば、銅箔等の金属箔や銅めっき等のめっき層からなる。配線層11及び配線層31の厚さは、例えば、15~35μm程度とすることができる。配線層11及び配線層31のライン/スペースは、例えば、10μm/10μm~50μm/50μm程度とすることができる。
【0016】
なお、ライン/スペースにおけるラインとは配線幅を表し、スペースとは隣り合う配線同士の間隔(配線間隔)を表す。例えば、ライン/スペースが10μm/10μm~50μm/50μmと記載されていた場合、配線幅が10μm以上50μm以下で、かつ隣り合う配線同士の配線間隔が10μm以上50μm以下であることを表す。必ずしも配線幅と配線間隔とを等しくしなくてもよい。
【0017】
絶縁層12は、コア基板10の上面10aに、配線層11を被覆するように形成されている。絶縁層32は、コア基板10の下面10bに、配線層31を被覆するように形成されている。絶縁層12及び絶縁層32は、例えば、非感光性樹脂を主成分とする絶縁層である。絶縁層12及び絶縁層32は、例えば、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂、フェノール系樹脂、シアネート系樹脂等の熱硬化性の非感光性樹脂を主成分とすることができる。絶縁層12及び絶縁層32の厚さは、例えば、20~40μm程度とすることができる。絶縁層12及び絶縁層32は、シリカ(SiO2)等のフィラーを含有してもよい。絶縁層12及び絶縁層32は、例えば、感光性樹脂を主成分とする絶縁層であってもよい。
【0018】
ビア配線13は、絶縁層12を貫通し配線層11の上面を露出するビアホール12x内に充填されている。ビアホール12xは、絶縁層15側に開口されている開口部の径が配線層11の上面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい逆円錐台状の凹部とすることができる。ビア配線13は、ビアホール12xの内壁面、及びビアホール12x内に露出する配線層11の上面を連続的に被覆するシード層13aと、シード層13a上に設けられた電解めっき層13bとを含む。ビアホール12xの開口部の径は、例えば、50~80μm程度とすることができる。
【0019】
ビア配線33は、絶縁層32を貫通し配線層31の下面を露出するビアホール32x内に充填されている。ビアホール32xは、絶縁層35側に開口されている開口部の径が配線層31の下面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい円錐台状の凹部とすることができる。ビア配線33は、ビアホール32xの内壁面、及びビアホール32x内に露出する配線層31の下面を連続的に被覆するシード層33aと、シード層33a下に設けられた電解めっき層33bとを含む。ビアホール32xの開口部の径は、例えば、50~80μm程度とすることができる。
【0020】
シード層13aの端面は、絶縁層12の上面側に露出している。シード層13aの端面及び電解めっき層13bの上面は、例えば、絶縁層12の上面と面一である。シード層33aの端面は、絶縁層32の下面側に露出している。シード層33aの端面及び電解めっき層33bの下面は、例えば、絶縁層32の下面と面一である。シード層13a及び33aは、例えば、銅から形成することができる。シード層13a及び33aの厚さは、例えば、200~400nm程度とすることができる。電解めっき層13b及び33bは、例えば、銅から形成することができる。電解めっき層13b及び33bの厚さは、例えば、20~40μm程度とすることができる。
【0021】
配線層14は、絶縁層12の上面に設けられ、絶縁層12を貫通するビア配線13を介して配線層11と接続されている。配線層14の厚さは、例えば、10μm以下とすることができる。配線層14の厚さは、10μmより厚くしてもよい。配線層14は、ビア配線13上に位置するパッドと、絶縁層12の上面に位置する配線パターンとを含む。絶縁層12の上面に位置する配線パターンのライン/スペースは、例えば、10μm/10μm~50μm/50μm程度とすることができる。配線層14は、絶縁層12の上面及び電解めっき層13bの上面に形成されたシード層14aと、シード層14a上に設けられた電解めっき層14bとを含む。ビア配線13上に位置するパッドにおいて、シード層14aの下面は、シード層13aの端面に接続される。
【0022】
配線層34は、絶縁層32の下面に設けられ、絶縁層32を貫通するビア配線33を介して配線層31と接続されている。配線層34の厚さは、例えば、10μm以下とすることができる。配線層34の厚さは、10μmより厚くしてもよい。配線層34は、ビア配線33下に位置するパッドと、絶縁層32の下面に位置する配線パターンとを含む。絶縁層32の下面に位置する配線パターンのライン/スペースは、例えば、10μm/10μm~50μm/50μm程度とすることができる。配線層34は、絶縁層32の下面及び電解めっき層33bの下面に形成されたシード層34aと、シード層34a下に設けられた電解めっき層34bとを含む。ビア配線33下に位置するパッドにおいて、シード層34aの上面は、シード層33aの端面に接続される。
【0023】
シード層14a及び34aは、例えば、銅から形成することができる。シード層14a及び34aの厚さは、例えば、200~400nm程度とすることができる。電解めっき層14b及び34bは、例えば、銅から形成することができる。電解めっき層14b及び34bの厚さは、例えば、1~20μm程度とすることができる。
【0024】
絶縁層15は、絶縁層12の上面に、配線層14を被覆するように形成されている。絶縁層35は、絶縁層32の下面に、配線層34を被覆するように形成されている。絶縁層15及び絶縁層35の材料や厚さは、例えば、絶縁層12及び絶縁層32と同様とすることができる。絶縁層15及び絶縁層35は、シリカ(SiO2)等のフィラーを含有してもよい。
【0025】
ビア配線16は、絶縁層15を貫通し配線層14の上面を露出するビアホール15x内に充填されている。ビアホール15xは、絶縁層18側に開口されている開口部の径が配線層14の上面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい逆円錐台状の凹部とすることができる。ビア配線16は、ビアホール15xの内壁面、及びビアホール15x内に露出する配線層14の上面を連続的に被覆するシード層16aと、シード層16a上に設けられた電解めっき層16bとを含む。ビアホール15xの開口部の径は、例えば、50~80μm程度とすることができる。
【0026】
ビア配線36は、絶縁層35を貫通し配線層34の下面を露出するビアホール35x内に充填されている。ビアホール35xは、絶縁層38側に開口されている開口部の径が配線層34の下面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい円錐台状の凹部とすることができる。ビア配線36は、ビアホール35xの内壁面、及びビアホール35x内に露出する配線層34の下面を連続的に被覆するシード層36aと、シード層36a下に設けられた電解めっき層36bとを含む。ビアホール35xの開口部の径は、例えば、50~80μm程度とすることができる。
【0027】
シード層16aの端面は、絶縁層15の上面側に露出している。シード層16aの端面及び電解めっき層16bの上面は、例えば、絶縁層15の上面と面一である。シード層36aの端面は、絶縁層35の下面側に露出している。シード層36aの端面及び電解めっき層36bの下面は、例えば、絶縁層35の下面と面一である。シード層16a及び36aの材料や厚さは、例えば、シード層13a及び33aと同様とすることができる。電解めっき層16b及び36bの材料や厚さは、例えば、電解めっき層13b及び33bと同様とすることができる。
【0028】
配線層17は、絶縁層15の上面に設けられ、絶縁層15を貫通するビア配線16を介して配線層14と接続されている。配線層17の厚さは、例えば、10μm以下とすることができる。配線層17の厚さは、10μmより厚くしてもよい。配線層17は、ビア配線16上に位置するパッドと、絶縁層15の上面に位置する配線パターンとを含む。絶縁層15の上面に位置する配線パターンのライン/スペースは、例えば、10μm/10μm~50μm/50μm程度とすることができる。配線層17は、絶縁層15の上面及び電解めっき層16bの上面に形成されたシード層17aと、シード層17a上に設けられた電解めっき層17bとを含む。ビア配線16上に位置するパッドにおいて、シード層17aの下面は、シード層16aの端面に接続される。
【0029】
配線層37は、絶縁層35の下面に設けられ、絶縁層35を貫通するビア配線36を介して配線層34と接続されている。配線層37の厚さは、例えば、10μm以下とすることができる。配線層37の厚さは、10μmより厚くしてもよい。配線層37は、ビア配線36下に位置するパッドと、絶縁層35の下面に位置する配線パターンとを含む。絶縁層35の下面に位置する配線パターンのライン/スペースは、例えば、10μm/10μm~50μm/50μm程度とすることができる。配線層37は、絶縁層35の下面及び電解めっき層36bの下面に形成されたシード層37aと、シード層37a下に設けられた電解めっき層37bとを含む。ビア配線36下に位置するパッドにおいて、シード層37aの上面は、シード層36aの端面に接続される。
【0030】
シード層17a及び37aの材料や厚さは、例えば、シード層14a及び34aと同様とすることができる。電解めっき層17b及び37bの材料や厚さは、例えば、電解めっき層14b及び34bと同様とすることができる。
【0031】
絶縁層18は、絶縁層15の上面に、配線層17を被覆するように形成されている。絶縁層38は、絶縁層35の下面に、配線層37を被覆するように形成されている。絶縁層18及び絶縁層38の材料や厚さは、例えば、絶縁層15及び絶縁層35と同様とすることができる。絶縁層18及び絶縁層38は、シリカ(SiO2)等のフィラーを含有してもよい。
【0032】
ビア配線19は、絶縁層18を貫通し配線層17の上面を露出するビアホール18x内に充填されている。ビアホール18xは、配線層20側に開口されている開口部の径が配線層17の上面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい逆円錐台状の凹部とすることができる。ビア配線19は、ビアホール18xの内壁面、及びビアホール18x内に露出する配線層17の上面を連続的に被覆するシード層19aと、シード層19a上に設けられた電解めっき層19bとを含む。ビアホール18xの開口部の径は、例えば、50~80μm程度とすることができる。
【0033】
ビア配線39は、絶縁層38を貫通し配線層37の下面を露出するビアホール38x内に充填されている。ビアホール38xは、配線層40側に開口されている開口部の径が配線層37の下面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい円錐台状の凹部とすることができる。ビア配線39は、ビアホール38xの内壁面、及びビアホール38x内に露出する配線層37の下面を連続的に被覆するシード層39aと、シード層39a下に設けられた電解めっき層39bとを含む。ビアホール38xの開口部の径は、例えば、50~80μm程度とすることができる。
【0034】
シード層19aの端面は、絶縁層18の上面側に露出している。シード層19aの端面及び電解めっき層19bの上面は、例えば、絶縁層18の上面と面一である。シード層39aの端面は、絶縁層38の下面側に露出している。シード層39aの端面及び電解めっき層39bの下面は、例えば、絶縁層38の下面と面一である。シード層19a及び39aの材料や厚さは、例えば、シード層13a及び33aと同様とすることができる。電解めっき層19b及び39bの材料や厚さは、例えば、電解めっき層13b及び33bと同様とすることができる。
【0035】
配線層20は、絶縁層18の上面に設けられ、絶縁層18を貫通するビア配線19を介して配線層17と接続されている。配線層20の厚さは、例えば、10μm以下とすることができる。配線層20の厚さは、10μmより厚くしてもよい。配線層20は、ビア配線19上に位置するパッドと、絶縁層18の上面に位置する配線パターンとを含む。絶縁層18の上面に位置する配線パターンのライン/スペースは、例えば、10μm/10μm~50μm/50μm程度とすることができる。配線層20は、絶縁層18の上面及び電解めっき層19bの上面に形成されたシード層20aと、シード層20a上に設けられた電解めっき層20bとを含む。ビア配線19上に位置するパッドにおいて、シード層20aの下面は、シード層19aの端面に接続される。
【0036】
配線層40は、絶縁層38の下面に設けられ、絶縁層38を貫通するビア配線39を介して配線層37と接続されている。配線層40の厚さは、例えば、10μm以下とすることができる。配線層40の厚さは、10μmより厚くしてもよい。配線層40は、ビア配線39下に位置するパッドと、絶縁層38の下面に位置する配線パターンとを含む。絶縁層38の下面に位置する配線パターンのライン/スペースは、例えば、10μm/10μm~50μm/50μm程度とすることができる。配線層40は、絶縁層38の下面及び電解めっき層39bの下面に形成されたシード層40aと、シード層40a下に設けられた電解めっき層40bとを含む。ビア配線39下に位置するパッドにおいて、シード層40aの上面は、シード層39aの端面に接続される。
【0037】
シード層20a及び40aの材料や厚さは、例えば、シード層14a及び34aと同様とすることができる。電解めっき層20b及び40bの材料や厚さは、例えば、電解めっき層14b及び34bと同様とすることができる。
【0038】
[配線基板の製造方法]
次に、第1実施形態に係る配線基板の製造方法について説明する。
図2~
図6は、第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図である。なお、配線基板1は、コア基板10に対して上下が対称な構造であるため、コア基板10の上側と下側は同じ工程で形成することができる。ここでは、コア基板10の上側についてのみ、図示して説明する。具体的には、
図1(a)に示す配線基板1の破線Aで囲んだ領域について図示しながら、配線基板1の製造工程を説明する。
【0039】
なお、ここでは、1つの配線基板を作製する工程の例を示すが、配線基板は、大判の基板に複数の配線基板の形成領域が設けられた多数個取りの基板として製造することができる。この多数個取りの基板において、各配線基板の形成領域間を切断することで、個々の配線基板を得ることができる。
【0040】
まず、
図2(a)に示す工程では、貫通電極25を有するコア基板10を準備し、コア基板10の上面10aに配線層11を形成する。配線層11は、例えば、サブトラクティブ法やセミアディティブ法等の各種配線形成方法を用いて形成することができる。配線層11は、例えば、銅層とすることができる。
【0041】
次に、
図2(b)に示す工程では、コア基板10の上面10aに配線層11を被覆する絶縁層12を形成する。具体的には、例えば、配線層11を被覆するように半硬化状態のフィルム状のエポキシ系樹脂等をラミネートし、硬化させて絶縁層12を形成する。或いは、フィルム状のエポキシ系樹脂等のラミネートに代えて、液状又はペースト状のエポキシ系樹脂等を塗布後、硬化させて絶縁層12を形成してもよい。
【0042】
次に、
図2(c)に示す工程では、絶縁層12に、絶縁層12を貫通し配線層11の上面を露出するビアホール12xを形成する。ビアホール12xは、例えば、CO
2レーザ等を用いたレーザ加工法により形成できる。ビアホール12xは、絶縁層15が形成される側に開口されている開口部の径が配線層11の上面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい逆円錐台状の凹部とすることができる。ビアホール12xを形成後、デスミア処理を行い、ビアホール12xの底部に各々露出する配線層11の表面に付着した樹脂残渣を除去することが好ましい。
【0043】
次に、
図3(a)に示す工程では、絶縁層12の上面、ビアホール12xの内壁面、及びビアホール12x内に露出する配線層11の上面を被覆するシード層13aを形成する。シード層13aは、例えば、銅の無電解めっきや銅のスパッタにより形成することができる。シード層13aの厚さは、例えば、200~400nm程度とすることができる。
【0044】
次に、
図3(b)に示す工程では、シード層13aの表面を乾燥させる(基板乾燥工程)。具体的には、例えば、コンプレッサに接続したエアガンから、シード層13aに、20℃以上30℃以下の気体Wを送風することにより、シード層13aの表面を乾燥させることができる。気体Wは、例えば、空気である。気体Wの送風時間は、例えば、10秒以上180秒以下とすることができる。シード層13aの表面を乾燥させることにより、シード層13aの表面の濡れ性が低下する。
【0045】
次に、
図3(c)に示す工程では、シード層13aをウェットエッチングし、ビアホール12x内に位置するシード層13aを残存させ、絶縁層12の上面に位置するシード層13aを除去する。具体的には、例えば、シード層13aの全体をエッチング液に浸漬させる。この際、シード層13aにエッチングマスクを設ける必要はない。すなわち、前述のように、基板乾燥工程によりシード層13aの表面の濡れ性が低下するため、ウェットエッチングに用いるエッチング液がビアホール12x内に侵入しにくくなる。その結果、ビアホール12x内に位置するシード層13aを残存させ、絶縁層12の上面に位置するシード層13aのみを除去することができる。
【0046】
次に、
図4(a)に示す工程では、配線層11及びシード層13aから給電する銅の電解めっきにより、ビアホール12x内に位置するシード層13a上に銅を析出させて電解めっき層13bを形成する。この際、電解めっき層13bの上面と絶縁層12の上面とが面一になるように、めっき条件を調整する。なお、必要な場合には、電解めっき層13bを形成後、絶縁層12の上面及び電解めっき層13bの上面をCMP法(chemical mechanical polishing法)等を用いて研磨し、平坦化してもよい。
【0047】
なお、配線層11は、めっき用の給電ライン(図示せず)に接続されている。この給電ラインを通じで、配線層11及びシード層13aに電解めっきのための給電が行われる。配線基板を多数個取りの基板として製造する場合、この給電ラインは、多数個取りの基板の各配線基板の形成領域間に設けられ、配線層11に接続されている。多数個取りの基板において、各配線基板の形成領域間を切断する際に、給電ラインが切断され、給電ラインと配線層11とが分離する。
【0048】
次に、
図4(b)に示す工程では、絶縁層12の上面及び電解めっき層13bの上面を被覆するシード層14aを形成する。シード層14aは、例えば、銅の無電解めっきや銅のスパッタにより形成することができる。シード層14aの厚さは、例えば、200~400nm程度とすることができる。
【0049】
次に、
図4(c)に示す工程では、シード層14a上に配線層14の形状に合わせた開口部300xを有するめっきレジストパターン300を形成する。めっきレジストパターン300は、例えば、感光性のドライフィルムレジストをシード層14a上に貼り付けることで形成できる。開口部300xは、例えば、感光性のドライフィルムレジストを露光及び現像することにより形成できる。開口部300x内には、シード層14aの上面の一部が露出する。
【0050】
次に、
図5(a)に示す工程では、シード層14aから給電する銅の電解めっきにより、めっきレジストパターン300の開口部300xに露出するシード層14a上に電解めっき層14bを形成する。電解めっき層14bの形成に用いるめっき浴は、例えば、硫酸及び硫酸銅五水和物を含むことができる。この場合、硫酸の濃度は、硫酸銅五水和物の濃度以上であることが好ましい。また、めっき浴の導電率は30S/m以上であることが好ましい。これらにより、均一電着性が向上するため、電解めっき層14bにおいて、幅の異なる部分の厚さのばらつきを低減することができる。例えば、電解めっき層14bにおいて、ビア配線13上に位置するパッドと、絶縁層12上に位置する配線パターンとの厚さのばらつきを低減することができる。
【0051】
次に、
図5(b)に示す工程では、めっきレジストの剥離液を用いて、めっきレジストパターン300を除去する。そして、
図5(c)に示す工程では、電解めっき層14bをマスクとしたエッチングを行い、電解めっき層14bから露出するシード層14aを除去し配線層14を形成する。
【0052】
次に、
図6に示す工程では、
図2(b)~
図5(c)の工程を必要数繰り返すことにより、
図5(c)に示す構造体の上に、絶縁層15、ビア配線16、配線層17、絶縁層18、ビア配線19、及び配線層20を積層する。以上の工程で、配線基板1が完成する。
【0053】
前述のように、従来の工法では絶縁層の上面に形成する配線層を一定以上の厚さにしないとビアホールを充填することができない。しかし、配線基板1では、ビア配線と、その上に形成される配線層とが別体である。そのため、ビア配線の形成(ビアホールの充填)を考慮することなく、配線層の厚さを独自に設計することができる。すなわち、配線基板1の構造とすることにより、配線層の厚さの設計自由度を向上することが可能となる。
【0054】
また、配線基板1では、ビア配線と、その上に形成される配線層とが別体であるため、ビア配線を形成する工程と、配線層を形成する工程とで、条件の異なるめっき浴を用いることができる。例えば、ビア配線の形成を行うめっき浴は、均一電着性よりも充填性を重視したものを選択することにより、ビアホールを容易に充填することができる。一方、配線層の形成を行うめっき浴は、充填性よりも均一電着性を重視したものを選択することで、配線層の幅に対する厚さのばらつきを低減することができる。すなわち、一般に、配線層を電解めっきで形成する場合において、配線層の幅の狭い部分は厚さが薄く、幅の広い部分は厚さが厚くなる傾向にある。しかし、配線基板1では、配線層において、幅の狭い部分と幅の広い部分との厚さのばらつきを、従来よりも低減することができる。均一電着性と充填性は、例えば、めっき浴における硫酸銅と硫酸の濃度を変えることや、添加する添加剤の種類をビア配線形成用途もしくは高均一電着性用途に変えることにより調整することができる。
【0055】
配線基板1の製造工程では、配線層の厚さの均一化のために、配線層の表面に研磨等を施す必要がない。このような処理を施さなくとも、良好な膜厚比の配線層を得ることができる。
【0056】
図7は、第1実施形態に係る配線基板の製造工程の他の例を示す図である。
図7(a)に示すように、
図3(c)の工程におけるウェットエッチングの際に、シード層13aの端面が絶縁層12の上面からビアホール12x内に引き下がる場合がある。この場合、ビアホール12xの開口部近傍において、ビアホール12xの内壁面が露出する。
【0057】
この場合、
図7(b)に示すように、
図4(a)の工程における電解めっきの際に、シード層13aの端面が電解めっき層13bで被覆される。よって、この場合でも、ビアホール12x内を電解めっき層13bにより充分に充填することが可能となる。
【0058】
よって、
図7(c)に示すように、良好に、絶縁層12の上面と電解めっき層13b上面にシード層14aを形成し、シード層14aの上面に電解めっき層14bを形成することが可能となる。
【0059】
なお、本発明は、配線層が2層以上あり、隣接する配線層が絶縁層を貫通するビア配線で接続される配線基板に適用可能である。例えば、本発明は、
図1に示した配線基板1のようなコア基板を有する配線基板には限定されず、
図8に示す配線基板1Aのようなコアレスの配線基板にも適用可能である。
図8に示す配線基板1Aは、配線基板1のコア基板10の上面10aに積層されていた部分と同一の層構造である。
【0060】
以下、実施例、比較例について説明するが、本発明は、これらの例に何ら限定されない。
【0061】
[実施例1]、[比較例1]
図3(b)及び
図3(c)を参照して説明したように、第1実施形態に係る配線基板の製造工程では、絶縁層の上面及ビアホール内にシード層を形成後、基板乾燥工程を設け、その後のエッチング工程により絶縁層の上面に形成したシード層のみを除去する。実施例1では、基板乾燥工程の効果について確認する実験を行った。
【0062】
具体的には、実施例1では、
図2(a)~
図3(c)までの工程を実施した。また、比較例1では、
図3(b)の基板乾燥工程を行わなかった以外は実施例1と同様にして、
図3(c)までの工程を実施した。そして、実施例1及び比較例1で作製した配線基板について、SEMを用いて反射電子像観察(コントラスト差の確認)を行った。実験は、繰り返し再現性の確認のため、3回ずつ行った。また、基板乾燥工程は、コンプレッサに接続したエアガンから常温の空気を60秒間シード層の表面全体に当てることで行った。
【0063】
なお、
図3(c)に示す工程で、絶縁層の上面のシード層が除去され、ビアホール内にシード層が存在している場合は、反射電子像観察において、絶縁層の上面の炭素とビアホール内の銅で、平均原子番号に依存したコントラスト差が確認できる。一方、
図3(c)に示す工程で、絶縁層の上面のシード層が除去され、ビアホール内のシード層も除去されている場合は、反射電子像観察において、絶縁層の上面とビアホール内に平均原子番号に依存したコントラスト差が確認できない。結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
表1に示すように、実施例1では、3回ともコントラスト差ありという観察結果が得られた。一方、比較例1では、3回ともコントラスト差なしという観察結果が得られた。すなわち、シード層をエッチングする前に基板乾燥工程を設けることにより、絶縁層の上面のシード層のみを除去し、ビアホール内のシード層を残存させることができることが確認された。また、繰り返し再現性があることも確認された。
【0065】
実施例1の結果は、基板乾燥工程によりシード層の表面の濡れ性が悪化し、エッチング工程でビアホール内にエッチング液が侵入しにくくなったことで得られたと考えられる。一方、基板乾燥工程を有していない比較例1の結果は、シード層の表面の濡れ性が良好であり、エッチング工程でビアホール内にエッチング液が侵入したことで得られたと考えられる。
【0066】
なお、実施例1で
図3(c)までの工程を実施した配線基板において、引き続き
図4(a)の工程を実施した。その結果、絶縁層の上面への銅の析出はなく、ビアホール内を銅で充填させることができた。これにより、
図3(c)の工程では絶縁層の上面のシード層のみが除去され、ビアホール内のシード層は残存していることが裏付けられた。
【0067】
[比較例2]、[比較例3]、[実施例2]
比較例2では、通常のセミアディティブ法の工程にしたがって、配線基板を作製した。比較例2に係る配線基板の製造方法は、
図2~
図6を参照して説明した第1実施形態に係る配線基板の製造工程における
図3(b)~
図6に示す工程を有していない。すなわち、比較例2に係る配線基板の製造方法では、
図3(a)の工程の後、絶縁層上に配線層に対応する開口部を有するめっきレジストパターンを形成し、ビア配線とビア配線上に形成するパッドと配線パターンとを同一の電解銅めっき工程で形成する。そして、めっきレジストパターンを剥離後、不要なシード層を除去する。
【0068】
比較例2に係る配線基板では、絶縁層の上面側の開口径がφ55μm、φ65μm、及びφ75μmの3種類のビアホールを形成した。また、比較例2に係る配線基板では、配線パターンは、ライン/スペース=16μm/16μmの直線状の配線パターンとした。そして、比較例2に係る配線基板において、各開口径のビアホール上に形成されたパッドの厚さと、配線パターンの厚さを、レーザ顕微鏡で計測した。結果を表2に示す。
【0069】
【表2】
表2に示すように、開口径がφ55μm、φ65μm、及びφ75μmのビアホール上のパッドの厚さは、いずれも約22μmであり有意差はなかった。これに対して、配線パターンの厚さは、約18μmであり、ビアホール上のパッドに比べて約4μm薄くなった。この結果から膜厚比を算出すると、約82%となる。ここで、膜厚比は、ビアホール上のパッドの厚さと配線パターンの厚さをレーザ顕微鏡で計測し、配線パターンの厚さ÷パッドの厚さ×100で定義した。なお、膜厚比は、100に近いほど好ましい。
【0070】
[比較例3]
比較例3では、比較例2と同様の製造方法を用いて、配線基板を作製した。比較例3では、絶縁層の上面側の開口径がφ60μmで深さが32.5μmのビアホールを形成し、ビアホール上に形成するパッドの厚さを変えながら、ビアホールの充填度合いを観察した。なお、観察は、断面のSEM写真により行った。結果を表3に示す。ここでは、絶縁層の上面の高さまでビアホールが埋まっている場合を『良好』とし、そうでない場合を『不十分』とした。
【0071】
【表3】
表3に示すように、ビアホール上のパッドの厚さが約11μmとなるように電解銅めっきを行うことで、ビアホールの充填度合いが『良好』となることが分かった。言い換えれば、ビアホール上のパッドの厚さが約11μmより薄いと、ビアホールを充填することができないことが分かった。つまり、比較例3に係る配線基板の製造方法では、パッドや配線の厚さが薄い配線基板を製造することができず、配線パターンの設計自由度が低いといえる。
【0072】
[実施例2]
実施例2では、
図2(a)~
図4(c)までの工程を実施し、次に
図5(a)~
図5(c)の工程において、
図5(c)に示す配線層14を異なるめっき条件で作製した。作製した配線基板を、便宜上、配線基板(a)と称する。配線基板(a)の配線層14において、ビアホール上のパッドの径はφ80μmとし、配線パターンのライン/スペースは10μm/10μmとした。また、
図2(a)~
図4(c)までの工程を実施し、次に
図5(a)~
図5(c)の工程において、
図5(c)に示す配線層14を異なるめっき条件で作製した。作製した配線基板を、便宜上、配線基板(b)と称する。配線基板(b)の配線層14において、ビアホール上のパッドの径はφ120μmとし、配線パターンのライン/スペースは16μm/16μmとした。
【0073】
配線基板(a)及び配線基板(b)において、配線層14のパッド及び配線パターンを形成するための電解銅めっきの条件は、めっき浴中の硫酸銅5水和物濃度と硫酸濃度の総和を300g/Lとして、表4に示す5種類の比率とした。
【0074】
【表4】
そして、得られた配線基板(a)及び配線基板(b)において、膜厚比を算出し、
図9にまとめた。
図9に示すように、配線基板(a)及び配線基板(b)のいずれにおいても、硫酸銅5水和物濃度-硫酸濃度が200-100、及250-50である場合は、膜厚比が90%以上となり、良好であることがわかった。また、硫酸銅5水和物濃度-硫酸濃度が100-200、130-170、及150-150である場合は、膜厚比が95%以上となり、さらに良好であることがわかった。このように、硫酸銅5水和物濃度を下げて硫酸濃度を上げためっき浴を用いることで、均一電着性が向上して厚さのばらつきを低減することができる。
【0075】
次に、表4に示す各条件のときのめっき浴の導電率を測定した。結果を
図10に示す。さらに、
図9の結果と
図10の結果から、導電率と膜厚比との関係を求めた。結果を
図11に示す。
図11より、めっき浴の導電率に関わらず90%以上の膜厚比が得られるが、めっき浴の導電率を高くすると、膜厚比は向上する傾向があるといえる。具体的には、導電率が30S/m以上であれば、膜厚比は約95%以上となる。また、導電率が40S/m以上であれば、膜厚比をより向上することができる。
【0076】
前述のように、比較例2では、膜厚比は約82%となる。これに対して、実施例2では、90%以上の膜厚比が得られた。比較例2では、ビア配線とパッド及び配線パターンを1回のめっきで形成するため、めっき浴の条件を個別に選択することができない。一方、実施例2では、ビア配線を形成するめっき、パッド及び配線パターンを形成するめっきは別工程で行う。そのため、それぞれに適しためっき浴を選択することができる。その結果、例えば、パッド及び配線パターンを形成する際には、表4に示したような均一電着性の良いめっき液を選択することで、膜さばらつきの低減効果が得られる。また、実施例2では、ビア配線の形成を行うめっき浴は、均一電着性よりも充填性を重視したものを選択できるため、ビアホールを容易に充填することができる。
【0077】
また、比較例3に示したように、従来は、ビアホールを充填するためには、パッド及び配線パターンを一定以上の厚さにする必要があった。一方、実施例2では、ビア配線を形成するめっき、パッド及び配線パターンを形成するめっきは別工程で行うため、ビアホールの充填を気にすることなく、パッド及び配線パターンを任意の厚さに設計できるようになり、設計の自由度を向上することができる。実施例2では、例えば、パッド及び配線パターンの厚さを1μm以上10μm以下とすることも可能である。
【0078】
以上、好ましい実施形態及び実施例について詳説したが、上述した実施形態及び実施例に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0079】
1,1A 配線基板
10 コア基板
10a 上面
10b 下面
10x 貫通孔
11,14,17,20,31,34,37,40 配線層
12,15,18,32,35,38 絶縁層
12x,15x,18x,32x,35x,38x ビアホール
13,16,19,33,36,39 ビア配線
13a,14a,16a,17a,19a,20a,33a,34a,36a,37a,39a,40a シード層
13b,14b,16b,17b,19b,20b,33b,34b,36b,37b,39b,40b 電解めっき層
25 貫通電極
300 めっきレジストパターン
300x 開口部