(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093393
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ガス漏れ検知装置及びガス漏れ検知方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/02 20060101AFI20240702BHJP
G01V 8/10 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
G01M3/02 J
G01V8/10 S
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209751
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】中田 直樹
【テーマコード(参考)】
2G067
2G105
【Fターム(参考)】
2G067AA02
2G067BB15
2G067BB25
2G067CC04
2G067DD08
2G067EE06
2G067EE08
2G067EE11
2G067EE12
2G105AA01
2G105BB16
2G105CC04
2G105DD01
2G105EE02
2G105FF02
2G105FF15
2G105GG01
2G105GG03
2G105HH05
2G105JJ05
2G105KK05
(57)【要約】
【課題】検知対象空間における液化ガスの漏洩を簡易に検知し、漏洩箇所を特定し、メンテナンスフリーであるガス漏れ検知装置及びガス漏れ検知方法を提供する。
【解決手段】船舶において、液化ガスを収納する検知対象物101、102に向けられて配置された複数の熱画像カメラ1a、1bと、熱画像カメラ1a、1bから熱画像を取得する制御装置2とを備え、各熱画像カメラ1a、1bは、検知対象物101、102の外接球Sの中心C周りの中心角Acが所定角度である複数の直線上に1台ずつ配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けられ、互いに離れて配置された複数の熱画像カメラと、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する制御装置と
を備え、
前記各熱画像カメラは、前記検知対象物の外接球の中心周りの中心角が略30°乃至略180°である2直線上に1台ずつ、計2台が配置されている
ことを特徴とするガス漏れ検知装置。
【請求項2】
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けられ、互いに離れて配置された複数の熱画像カメラと、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する制御装置と
を備え、
前記各熱画像カメラは、前記検知対象物の外接球の中心周りの中心角が略120°である3直線上に1台ずつ、計3台が配置されている
ことを特徴とするガス漏れ検知装置。
【請求項3】
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けられ、互いに離れて配置された複数の熱画像カメラと、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する制御装置と
を備え、
前記各熱画像カメラは、前記検知対象物の外接球の中心周りの中心角が略90°乃至略110°である4直線上に1台ずつ、計4台が配置されている
ことを特徴とするガス漏れ検知装置。
【請求項4】
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けられ、互いに離れて配置された複数の熱画像カメラと、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する制御装置と
を備え、
前記各熱画像カメラは、前記検知対象空間の前側、後側、左側、右側及び上側に1台ずつ、計5台が配置されている
ことを特徴とするガス漏れ検知装置。
【請求項5】
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けられ、互いに離れて配置された複数の熱画像カメラと、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する制御装置と
を備え、
前記各熱画像カメラは、前記検知対象物の外接球の中心を原点とするxyz直交座標の各軸上に対向して2台ずつ、計6台が配置され、
前記xyz直交座標が前記検知対象空間に対して回転されており、前記検知対象空間の床面上への前記熱画像カメラの配置が回避されている
ことを特徴とするガス漏れ検知装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記熱画像における閾値温度(Tr)以下の温度の領域の面積(At)の、前記熱画像の面積(A0)に対する比率(α)が、閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のガス漏れ検知装置。
【請求項7】
前記閾値温度(Tr)は、前記液化ガスの大気圧下での飽和温度と気温との間の任意の温度に設定される
ことを特徴とする請求項6記載のガス漏れ検知装置。
【請求項8】
前記熱画像の面積(A0)は、1台の前記熱画像カメラによる熱画像の面積であり、少なくともいずれか1台の前記熱画像カメラによる熱画像において、前記比率(α)が、前記閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とする請求項6記載のガス漏れ検知装置。
【請求項9】
前記熱画像の面積(A0)は、前記複数の熱画像カメラによる複数の熱画像の面積の合計であり、前記複数の熱画像カメラによる複数の熱画像の全体において、前記比率(α)が、前記閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とする請求項6記載のガス漏れ検知装置。
【請求項10】
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けられ、互いに離れて配置された複数の熱画像カメラと、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、前記熱画像における閾値温度(Tr)以下の温度の領域の面積(At)の、前記熱画像の面積(A0)に対する比率(α)が、閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とするガス漏れ検知装置。
【請求項11】
前記閾値温度(Tr)は、前記液化ガスの大気圧下での飽和温度と気温との間の任意の温度に設定される
ことを特徴とする請求項10記載のガス漏れ検知装置。
【請求項12】
前記熱画像の面積(A0)は、1台の前記熱画像カメラによる熱画像の面積であり、少なくともいずれか1台の前記熱画像カメラによる熱画像において、前記比率(α)が、前記閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とする請求項10記載のガス漏れ検知装置。
【請求項13】
前記熱画像の面積(A0)は、前記複数の熱画像カメラによる複数の熱画像の面積の合計であり、前記複数の熱画像カメラによる複数の熱画像の全体において、前記比率(α)が、前記閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とする請求項10記載のガス漏れ検知装置。
【請求項14】
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けた複数の熱画像カメラを、互いに離して、前記検知対象物の外接球の中心周りの中心角が略30°乃至略180°である2直線上に1台ずつ、計2台を配置し、
前記熱画像カメラにより、前記検知対象空間を撮影し、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する
ことを特徴とするガス漏れ検知方法。
【請求項15】
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けた複数の熱画像カメラを、互いに離して、前記検知対象物の外接球の中心周りの中心角が略120°である3直線上に1台ずつ、計3台を配置し、
前記熱画像カメラにより、前記検知対象空間を撮影し、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する
ことを特徴とするガス漏れ検知方法。
【請求項16】
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けた複数の熱画像カメラを、互いに離して、前記検知対象物の外接球の中心周りの中心角が略90°乃至略110°である4直線上に1台ずつ、計4台を配置し、
前記熱画像カメラにより、前記検知対象空間を撮影し、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する
ことを特徴とするガス漏れ検知方法。
【請求項17】
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けた複数の熱画像カメラを、互いに離して、前記検知対象空間の前側、後側、左側、右側及び上側に1台ずつ、計5台を配置し、
前記熱画像カメラにより、前記検知対象空間を撮影し、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する
ことを特徴とするガス漏れ検知方法。
【請求項18】
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けた複数の熱画像カメラを、互いに離して、前記検知対象物の外接球の中心を原点とするxyz直交座標の各軸上に対向して2台ずつ、計6台を配置し、
前記熱画像カメラにより、前記検知対象空間を撮影し、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する
ことを特徴とするガス漏れ検知方法。
【請求項19】
前記熱画像における閾値温度(Tr)以下の温度の領域の面積(At)の、前記熱画像の面積(A0)に対する比率(α)が、閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とする請求項14~18の何れかに記載のガス漏れ検知方法。
【請求項20】
前記閾値温度(Tr)は、前記液化ガスの大気圧下での飽和温度と気温との間の任意の温度に設定する
ことを特徴とする請求項19記載のガス漏れ検知方法。
【請求項21】
前記熱画像の面積(A0)は、1台の前記熱画像カメラによる熱画像の面積であり、少なくともいずれか1台の前記熱画像カメラによる熱画像において、前記比率(α)が、前記閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とする請求項19記載のガス漏れ検知方法。
【請求項22】
前記熱画像の面積(A0)は、前記複数の熱画像カメラによる複数の熱画像の面積の合計であり、前記複数の熱画像カメラによる複数の熱画像の全体において、前記比率(α)が、前記閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とする請求項19記載のガス漏れ検知方法。
【請求項23】
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けた複数の熱画像カメラを、互いに離して配置し、
前記熱画像カメラにより、前記検知対象空間を撮影し、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得し、
前記熱画像における閾値温度(Tr)以下の温度の領域の面積(At)の、前記熱画像の面積(A0)に対する比率(α)が、閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とするガス漏れ検知方法。
【請求項24】
前記閾値温度(Tr)は、前記液化ガスの大気圧下での飽和温度と気温との間の任意の温度に設定する
ことを特徴とする請求項23記載のガス漏れ検知方法。
【請求項25】
前記熱画像の面積(A0)は、1台の前記熱画像カメラによる熱画像の面積であり、少なくともいずれか1台の前記熱画像カメラによる熱画像において、前記比率(α)が、前記閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とする請求項23記載のガス漏れ検知方法。
【請求項26】
前記熱画像の面積(A0)は、前記複数の熱画像カメラによる複数の熱画像の面積の合計であり、前記複数の熱画像カメラによる複数の熱画像の全体において、前記比率(α)が、前記閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とする請求項23記載のガス漏れ検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス漏れ検知装置及びガス漏れ検知方法に関し、詳しくは、検知対象空間における液化ガスの漏洩を簡易に検知でき、かつ漏洩箇所を特定でき、メンテナンスフリーであるガス漏れ検知装置及びガス漏れ検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化アンモニアやLPG(液化石油ガス)などの液化ガスは、船舶で貨物以外に燃料として使用され、需要が高まっている。
【0003】
船内において、液化ガスを貯蔵するタンクや液化ガスを送液する配管等の破損や劣化により、液化ガスが漏洩した場合には、乗員の安全の確保のため、漏洩を検知する必要がある。
【0004】
従来、液化ガスの漏洩の検知方法としては、半導体式の固体センサを用いる方法や、定電位電離式の電気化学センサを用いる方法がある。
【0005】
特許文献1には、水素吸蔵合金からなる水素吸蔵部の温度上昇を温度センサにより検知して、水素の漏洩の有無を判別する水素漏洩検知装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述した固体センサ及び電気化学センサは、漏洩を検知したい液化ガスの組成(種類)によって、その組成に適合する方式のものを選定しなければならない。そのため、複数の組成(種類)の液化ガスを輸送又は使用する船舶においては、複数の方式のセンサを用いなければならず、必要なセンサの数が多くなってしまう。
【0008】
また、これら固体センサ及び電気化学センサは、定期的な部品交換や、定期的に校正を行う必要があるので、多大な手間を要する。このような手間のかかるメンテナンスには、定期船では早急に対応できるが、不定期船では、早急な対応ができない。
【0009】
また、漏洩した液化ガスは気化して空間内に拡散するため、固定式のガス検知センサによっては、漏洩箇所とセンサ設置個所とが離れている場合には、検知するまでに、気化したガスがセンサに達するまでの長い時間がかかる。
【0010】
さらに、固定式のガス検知センサや、特許文献1に記載されたような固定式の温度センサによっては、検知できる面積が限られているため、検知対象空間が広い場合や、対象とする機器が多い場合には、多数のセンサを設置しなければならず、設置の手間も費用も多大なものになってしまう。この場合において、換気ファンを用いて気化したガスを集約させて検知する方法が考えられるが、構成する機器が多数必要になってしまい、設置の手間も費用も多大なものになってしまう。
【0011】
固定式のガス検知センサや温度センサによっては、漏洩箇所を特定するには、気密試験等をしなければできないので、煩雑である。また、送液配管から漏洩した場合について、ドリップトレイを設置し、このドリップトレイに温度センサを設置する方法が考えられるが、漏洩物がドリップトレイに集約されるまでは温度変化が把握できず、漏洩物が集約されない場合には、液化ガスの漏洩が検知できない。
【0012】
なお、熱画像カメラを用いて、液化ガスの漏洩により低温化した箇所を検知することが考えられるが、船舶においてタンクや配管等の形状は複雑であり、船室内のみならず甲板上などの開放空間に設置されることもあるので、タンクや配管等の表面について、撮像できない箇所、すなわち、死角が生じないように熱画像カメラを配置することが困難であった。
【0013】
そこで、本発明の課題は、検知対象空間における液化ガスの漏洩を、検知できない箇所なく簡易に検知でき、かつ漏洩箇所を特定でき、メンテナンスフリーであるガス漏れ検知装置及びガス漏れ検知方法を提供することにある。
【0014】
さらに本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
1.
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けられ、互いに離れて配置された複数の熱画像カメラと、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する制御装置と
を備え、
前記各熱画像カメラは、前記検知対象物の外接球の中心周りの中心角が略30°乃至略180°である2直線上に1台ずつ、計2台が配置されている
ことを特徴とするガス漏れ検知装置。
2.
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けられ、互いに離れて配置された複数の熱画像カメラと、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する制御装置と
を備え、
前記各熱画像カメラは、前記検知対象物の外接球の中心周りの中心角が略120°である3直線上に1台ずつ、計3台が配置されている
ことを特徴とするガス漏れ検知装置。
3.
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けられ、互いに離れて配置された複数の熱画像カメラと、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する制御装置と
を備え、
前記各熱画像カメラは、前記検知対象物の外接球の中心周りの中心角が略90°乃至略110°である4直線上に1台ずつ、計4台が配置されている
ことを特徴とするガス漏れ検知装置。
4.
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けられ、互いに離れて配置された複数の熱画像カメラと、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する制御装置と
を備え、
前記各熱画像カメラは、前記検知対象空間の前側、後側、左側、右側及び上側に1台ずつ、計5台が配置されている
ことを特徴とするガス漏れ検知装置。
5.
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けられ、互いに離れて配置された複数の熱画像カメラと、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する制御装置と
を備え、
前記各熱画像カメラは、前記検知対象物の外接球の中心を原点とするxyz直交座標の各軸上に対向して2台ずつ、計6台が配置され、
前記xyz直交座標が前記検知対象空間に対して回転されており、前記検知対象空間の床面上への前記熱画像カメラの配置が回避されている
ことを特徴とするガス漏れ検知装置。
6.
前記制御装置は、前記熱画像における閾値温度(Tr)以下の温度の領域の面積(At)の、前記熱画像の面積(A0)に対する比率(α)が、閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とする前記1~5の何れかに記載のガス漏れ検知装置。
7.
前記閾値温度(Tr)は、前記液化ガスの大気圧下での飽和温度と気温との間の任意の温度に設定される
ことを特徴とする前記6記載のガス漏れ検知装置。
8.
前記熱画像の面積(A0)は、1台の前記熱画像カメラによる熱画像の面積であり、少なくともいずれか1台の前記熱画像カメラによる熱画像において、前記比率(α)が、前記閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とする前記6記載のガス漏れ検知装置。
9.
前記熱画像の面積(A0)は、前記複数の熱画像カメラによる複数の熱画像の面積の合計であり、前記複数の熱画像カメラによる複数の熱画像の全体において、前記比率(α)が、前記閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とする前記6記載のガス漏れ検知装置。
10.
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けられ、互いに離れて配置された複数の熱画像カメラと、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する制御装置と
を備え、
前記制御装置は、前記熱画像における閾値温度(Tr)以下の温度の領域の面積(At)の、前記熱画像の面積(A0)に対する比率(α)が、閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とするガス漏れ検知装置。
11.
前記閾値温度(Tr)は、前記液化ガスの大気圧下での飽和温度と気温との間の任意の温度に設定される
ことを特徴とする前記10記載のガス漏れ検知装置。
12.
前記熱画像の面積(A0)は、1台の前記熱画像カメラによる熱画像の面積であり、少なくともいずれか1台の前記熱画像カメラによる熱画像において、前記比率(α)が、前記閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とする前記10記載のガス漏れ検知装置。
13.
前記熱画像の面積(A0)は、前記複数の熱画像カメラによる複数の熱画像の面積の合計であり、前記複数の熱画像カメラによる複数の熱画像の全体において、前記比率(α)が、前記閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とする前記10記載のガス漏れ検知装置。
14.
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けた複数の熱画像カメラを、互いに離して、前記検知対象物の外接球の中心周りの中心角が略30°乃至略180°である2直線上に1台ずつ、計2台を配置し、
前記熱画像カメラにより、前記検知対象空間を撮影し、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する
ことを特徴とするガス漏れ検知方法。
15.
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けた複数の熱画像カメラを、互いに離して、前記検知対象物の外接球の中心周りの中心角が略120°である3直線上に1台ずつ、計3台を配置し、
前記熱画像カメラにより、前記検知対象空間を撮影し、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する
ことを特徴とするガス漏れ検知方法。
16.
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けた複数の熱画像カメラを、互いに離して、前記検知対象物の外接球の中心周りの中心角が略90°乃至略110°である4直線上に1台ずつ、計4台を配置し、
前記熱画像カメラにより、前記検知対象空間を撮影し、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する
ことを特徴とするガス漏れ検知方法。
17.
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けた複数の熱画像カメラを、互いに離して、前記検知対象空間の前側、後側、左側、右側及び上側に1台ずつ、計5台を配置し、
前記熱画像カメラにより、前記検知対象空間を撮影し、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する
ことを特徴とするガス漏れ検知方法。
18.
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けた複数の熱画像カメラを、互いに離して、前記検知対象物の外接球の中心を原点とするxyz直交座標の各軸上に対向して2台ずつ、計6台を配置し、
前記熱画像カメラにより、前記検知対象空間を撮影し、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得する
ことを特徴とするガス漏れ検知方法。
19.
前記熱画像における閾値温度(Tr)以下の温度の領域の面積(At)の、前記熱画像の面積(A0)に対する比率(α)が、閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とする前記14~18の何れかに記載のガス漏れ検知方法。
20.
前記閾値温度(Tr)は、前記液化ガスの大気圧下での飽和温度と気温との間の任意の温度に設定する
ことを特徴とする前記19記載のガス漏れ検知方法。
21.
前記熱画像の面積(A0)は、1台の前記熱画像カメラによる熱画像の面積であり、少なくともいずれか1台の前記熱画像カメラによる熱画像において、前記比率(α)が、前記閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とする前記19記載のガス漏れ検知方法。
22.
前記熱画像の面積(A0)は、前記複数の熱画像カメラによる複数の熱画像の面積の合計であり、前記複数の熱画像カメラによる複数の熱画像の全体において、前記比率(α)が、前記閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とする前記19記載のガス漏れ検知方法。
23.
船舶において、液化ガスを収納する検知対象物が配置された検知対象空間に向けた複数の熱画像カメラを、互いに離して配置し、
前記熱画像カメラにより、前記検知対象空間を撮影し、
前記熱画像カメラにより撮影された画像を熱画像として取得し、
前記熱画像における閾値温度(Tr)以下の温度の領域の面積(At)の、前記熱画像の面積(A0)に対する比率(α)が、閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とするガス漏れ検知方法。
24.
前記閾値温度(Tr)は、前記液化ガスの大気圧下での飽和温度と気温との間の任意の温度に設定する
ことを特徴とする前記23記載のガス漏れ検知方法。
25.
前記熱画像の面積(A0)は、1台の前記熱画像カメラによる熱画像の面積であり、少なくともいずれか1台の前記熱画像カメラによる熱画像において、前記比率(α)が、前記閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とする前記23記載のガス漏れ検知方法。
26.
前記熱画像の面積(A0)は、前記複数の熱画像カメラによる複数の熱画像の面積の合計であり、前記複数の熱画像カメラによる複数の熱画像の全体において、前記比率(α)が、前記閾値比率(αr)以上であるときに、前記液化ガスが漏洩していると判別する
ことを特徴とする前記23記載のガス漏れ検知方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、検知対象空間における液化ガスの漏洩を、検知できない箇所なく簡易に検知でき、かつ漏洩箇所を特定でき、メンテナンスフリーであるガス漏れ検知装置及びガス漏れ検知方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の実施形態に係るガス漏れ検知装置の構成を示すブロック図
【
図2】熱画像カメラにより撮像される熱画像の例を模式的に示す図であり、(a)は、漏洩のない正常時の画像、(b)は、タンクの溶接部より漏洩した状態の画像、(c)は、フランジ面より漏洩した状態の画像。
【
図3】実施形態に係るガス漏れ検知方法の手順を示すフローチャート
【
図4】第2の実施形態に係るガス漏れ検知装置の構成を示すブロック図
【
図5】第3の実施形態に係るガス漏れ検知装置の構成を示すブロック図
【
図6】第3の実施形態に係るガス漏れ検知装置の構成の他の例を示すブロック図
【
図7】第4の実施形態に係るガス漏れ検知装置の構成を示すブロック図
【
図8】第5の実施形態に係るガス漏れ検知装置の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明について好ましい実施の形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係るガス漏れ検知装置の構成を示すブロック図である。
【0019】
本実施形態のガス漏れ検知装置は、
図1に示すように、複数の熱画像カメラ1a、1bを備えて構成されている。複数の熱画像カメラ1a、1bは、船舶において、液化ガスを収納する検知対象物101、102が配置された検知対象空間103に向けて配置されている。各熱画像カメラ1a、1bは、互いに離されて配置されている。
【0020】
液化ガスを収納する検知対象物101、102は、液化ガスを貯蔵するタンク101及び/又は液化ガスを送液する配管102などであるが、タンク101及び配管102のみに限定されるのではなく、液化ガスを収納する種々の物品が検知対象物に含まれてもよい。
「液化ガスを貯蔵するタンク」には、「燃料タンク」や「バッファタンク」など、種々のタンクが含まれ、加圧式でないもの、加圧式のもの、低温式でないもの、低温式のものなど、何れも含まれる。
検知対象物101、102に収納される液化ガスは、特に限定されず、例えば、液化アンモニアや、液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)などである。
なお、液化ガスを貯蔵するタンク101や配管102内には、気相部分と液相部分とが有り得る。つまり、液体として貯蔵された液化ガスは、タンク101や配管102内の液面より上の空間では、気化して気体となっている。また、「ガス漏れ」には、気相部分から気体のガスが大気へ放出されること、液相部分から液化ガスが大気へ放出されること、及び、気相部分及び液相部分から一部が気化ガスである気液混合流体が大気へ放出されることの何れもが含まれる。
【0021】
検知対象空間103は、例えば、燃料調整室であるが、これに限られず、船室内であるか甲板上であるかを問わない。また、検知対象空間103は、天井、壁面及び床面によって閉塞された空間に限られず、一定の領域として観念される開放された空間であってもよい。
【0022】
熱画像カメラ1a、1bは、例えば、赤外線熱画像カメラであって、例えば、「株式会社チノー製「Chino熱画像カメラ」CPA-T1000/CPA-T800/CPA-T500」を使用することができる。赤外線熱画像カメラは、タンク101や配管102などの検知対象物(固体)の表面温度に応じた色分けがなされた熱画像を撮像することができる。
【0023】
このガス漏れ検知装置は、制御装置2を備えている。制御装置2は、各熱画像カメラ1a、1bが撮影して出力する画像信号が送られ、熱画像カメラ1a、1bにより撮影された画像を熱画像として取得する。制御装置2は、取得した熱画像を、図示しない表示装置(ディスプレイ)に表示する。
【0024】
検知対象物101、102の腐食や接合の緩みなどの不具合によって、液化ガスの大気中への漏洩が生ずると、低温の漏洩液化ガスが接触した検知対象物101、102の表面は吸熱されて気温以下に冷却され、また、漏洩液化ガスが気化すると、検知対象物101、102の表面は気化熱を吸熱されて気温以下に冷却される。液化ガスの漏洩により冷却された箇所は、熱画像カメラ1a、1bにより撮像された熱画像において、早期に、容易に特定することができる。
【0025】
図2は、熱画像カメラにより撮像される熱画像の例を模式的に示す図であり、(a)は、漏洩のない正常時の画像、(b)は、タンクの溶接部より漏洩した状態の画像、(c)は、フランジ面より漏洩した状態の画像である。
【0026】
液化ガスの漏洩により冷却された箇所は、
図2に示すように、熱画像カメラ1a、1bによって検知される。
図2では、検知対象物として、タンク101及び配管102を示している。
図2(a)は、漏洩のない正常時のタンク101及び配管102の画像である。このタンク101は、ドリップトレイ107上に載置され、配管102が溶接箇所104において接続されている。また、配管102は、フランジ105によって、他の配管102と接続されている。フランジ105の周囲は、断熱材106によって覆われている。
【0027】
図2(b)に示すように、タンク101内の液化ガスが溶接箇所104より漏洩した場合には、漏洩液化ガス108が、大気圧中に曝されることにより低温になり、漏洩箇所の周辺及びドリップトレイ107上に滴下した漏洩液化ガス109の周辺が低温になり、熱画像カメラ1a、1bにより撮像された熱画像において検知される。
【0028】
また、
図2(c)に示すように、タンク101内の液化ガスがフランジ105の突合面より漏洩した場合には、断熱材106の隙間から、ドリップトレイ107上に漏洩液化ガス109が滴下し、この周辺が低温になり、熱画像カメラ1a、1bにより撮像された熱画像において検知される。
【0029】
なお、
図2(b)(c)のいずれの場合も、タンク101内の液化ガスの種類に応じて、専用のレンズを用いれば、気化したガスも検知することができ、検知面積をより広くすることも可能である。
【0030】
また、漏洩箇所を拡大表示するズーム機能を設けることにより、漏洩箇所の面積の算出の精度を高めることができる。さらに、熱画像を撮像時刻情報とともに記録しておくことにより、漏洩時刻の後の時刻になっても、漏洩箇所及び漏洩時刻の特定を行うことができる。
【0031】
熱画像カメラ1a、1bは、故障などの不具合がなければ、センサや薬剤の交換や補充などのメンテナンスを行う必要がなく、いわゆるメンテナンスフリーである。
【0032】
熱画像カメラ1a、1bによる液化ガスの漏洩箇所(冷却箇所)の検知は、対象となる液化ガスの大気圧下での飽和温度と気温との間の任意の温度を閾値温度(漏洩検出温度)Trとして設定しておき、測定された温度Teが閾値温度(漏洩検出温度)Tr以下である箇所を、冷却箇所として特定することができる。なお、液化ガスの漏洩による検知対象物101、102の表面の冷却は、対象となる液化ガスの大気圧下での飽和温度よりも低温になることもある。
【0033】
冬場の最低温度が、例えば、-20℃であるとすれば、対象となる液化ガスが液化アンモニアの場合には、大気圧下での飽和温度が-33℃なので、閾値温度Trは、-33℃~-21℃とすることができる。対象となる液化ガスが液化石油ガスの場合には、大気圧下での飽和温度が-42℃なので、閾値温度Trは、-42℃~-21℃とすることができる。
【0034】
この実施形態のように、互いに離されて配置される熱画像カメラ1a、1bが2台である場合には、これら熱画像カメラ1a、1bは、検知対象物101、102の外接球Sの中心C周りの中心角Acが、略30°~略180°である2直線上に、1台ずつが配置されている。中心角Acが、略30°以上であれば、各熱画像カメラ1a、1bが互いに離れているといえる。
【0035】
各熱画像カメラ相互の位置関係について、検知対象物の外接球を基準とすることが好ましい。検知対象物は全て外接球内に存在しており、外接球外には検知対象物が存在しないので、外接球内を撮影するべきであり、外接球外を撮影する必要がないからである。
【0036】
検知対象物によって決定される外接球を基準とすることにより、燃料調整室のような検知対象空間において、タンクや配管などの検知対象物が偏在して設置されている場合、つまり、燃料調整室の片方の隅のみに検知対象物があるような場合においても、燃料調整室の形状や壁面の位置にとらわれずに、撮影するべき検知対象物の形状及び位置に応じた適切な位置に、各熱画像カメラを配置できる。ただし、各熱画像カメラは、必ずしも外接球の外側に配置するわけではなく、検知対象物の表面について、撮像できない箇所、すなわち、死角が生じないならば、外接球の球面上や外接球の内側に配置してもよい。
【0037】
また、検知対象物が設置された検知対象空間が、船室内ではなく甲板上などの開放空間である場合にも、検知対象物によって決定される外接球を基準とすることにより、撮影するべき検知対象物の形状及び位置に応じた適切な位置に、各熱画像カメラを配置できる。
【0038】
なお、外接球Sの中心Cと熱画像カメラ1a、1bが配置される2直線とを含む平面は、水平面に限定されず、傾斜面であっても鉛直面であってもよい。また、外接球Sの中心Cと各熱画像カメラとの距離は、互いに等しい距離である必要はなく、熱画像カメラごとに異なる距離であってもよい。
これらのことは、熱画像カメラを3台以上とした後述する他の実施形態においても同様である。
【0039】
熱画像カメラ1a、1bは、検知対象物101、102の表面について、撮像できない箇所、すなわち、死角が生じないように配置する。死角が生じないようにするには、熱画像カメラ1a、1bは、検知対象物の外接球Sの中心周りの中心角が略180°である2直線上に1台ずつ配置することが好ましい。検知対象物101、102の形状及び配置によっては、2台の熱画像カメラ1a、1bによっては、死角が生じてしまう場合には、後述する他の実施形態のように、3台以上の熱画像カメラを配置することとしてもよい。
【0040】
図3は、実施形態に係るガス漏れ検知方法の手順を示すフローチャートである。
【0041】
制御装置2は、熱画像カメラ1a、1bにより撮影された熱画像を解析する機能も有している。すなわち、制御装置2は、
図3に示すように、実施形態のガス漏れ検知方法を実行する。このガス漏れ検知方法は、後述する他の実施形態のガス漏れ検知装置においても実行される。
【0042】
画像解析装置としても機能する制御装置2は、ステップst1において、閾値温度Tr(℃)、閾値比率αr、検出間隔t(sec)を設定し、ステップst2に進む。
【0043】
制御装置2は、ステップst2において、熱画像カメラ1a、1bにより撮影された熱画像(検出範囲)において、温度Te(℃)を測定し、温度Te(℃)が閾値温度Tr(℃)以下である領域の面積Atを算出し、ステップst3に進む。
【0044】
制御装置2は、ステップst3において、面積Atの、熱画像の面積A0に対する比率α(=At/A0)が、閾値比率αr以上であるかを判別し、比率αが閾値比率αr未満であればステップst4に進み、比率αが閾値比率αr以上であればステップst5に進む。なお、閾値比率αrは、なるべく低く設定することが好ましく、例えば、1%程度とすることが好ましい。
【0045】
なお、熱画像の面積A0は、1台の熱画像カメラによる熱画像の面積であってもよいし、複数の熱画像カメラによる複数の熱画像の面積の合計であってもよい。熱画像の面積A0が1台の熱画像カメラによる熱画像の面積である場合には、少なくともいずれか1台の熱画像カメラによる熱画像において、比率αが、閾値比率αr以上であるときに、ステップst5に進む。
【0046】
熱画像の面積A0が複数の熱画像カメラによる複数の熱画像の全体である場合には、複数の熱画像の全体において、比率αが、閾値比率αr以上であるときに、ステップst5に進む。この場合には、閾値比率を、αr/n(∵n:熱画像カメラの台数)として判別する。この場合には、閾値温度Tr(℃)以下である1つの領域が、複数の熱画像において一部分ずつに分かれて撮像され、1つの熱画像においては当該部分の面積が小さい場合であっても、これら部分の面積が合算され、正しく判別される。
【0047】
制御装置2は、ステップst4において、液化ガスの漏洩はないと判別して、ステップst2に戻る。
【0048】
制御装置2は、ステップst5において、液化ガスの漏洩があると判別し、漏洩信号を発報し、熱画像の記録を行い、ステップst6に進む。
【0049】
制御装置2は、ステップst6において、漏洩信号に基づいて、液化ガスの漏洩がある旨を船内に連絡する。この連絡は、サイレン等による警告音の発報、予め録音されている警告メッセージの再生、赤色灯等による警告光の発光などによって行われる。
【0050】
制御装置2は、液化ガスの漏洩への対処が行われた後に、再びステップst1からスタートする。または、閾値温度Tr(℃)、閾値比率αr、検出間隔t(sec)の再設定が不要である場合には、ステップst2からスタートするようにしてもよい。
【0051】
本発明のガス漏れ検知方法においては、ガス漏れの有無の判別を、面積At(温度Te(℃)が閾値温度Tr(℃)以下である領域の面積)の熱画像の面積A0に対する比率α(=At/A0)を基準として行うことにより、以下の効果がある。
すなわち、固定されたある一点の温度のみで判別するのではなく、閾値温度Tr(℃)以下の領域(面積)を数値化することによって、安定した判別を行うことができる。
また、画像データを全て記録してゆくと、蓄積されるデータ容量が膨大なものになってしまうが、本発明のガス漏れ検知装置においては、比率αの数値のみを記録すればよいので、蓄積されるデータ容量を低減できる。
さらに、閾値比率αrの設定さえしておけば、判別を完全自動化することができる。
【0052】
なお、比率αを用いない方法としては、ある取得画像と、次の取得画像(検出間隔t(sec)後)との画素を比較するという方法が考えられる。しかし、ガス漏れにしたがって連続的に徐々に変化する温度の検出は困難である。本発明のガス漏れ検知方法においては、温度が連続的に徐々に変化する場合であっても、面積の比率αが変化してゆくので、確実にガス漏れを検知することができる。
また、外部の環境によっては、漏洩ガスよりも強い風力の空気流がある場合があり、この場合には、漏洩ガスの流れが変化してしまうので、画素の比較によっては検知が困難である。本発明のガス漏れ検知方法においては、漏洩ガスの流れが変化した場合においても、面積の比率αが変化してゆくので、確実にガス漏れを検知することができる。
【0053】
〔第2の実施形態〕
図4は、第2の実施形態に係るガス漏れ検知装置の構成を示すブロック図である。
【0054】
この実施形態では、
図4に示すように、複数の熱画像カメラ1a、1b、1cは、検知対象物101、102の外接球Sの中心C周りの中心角Acが略120°である3直線上に1台ずつ、計3台が配置されている。
【0055】
3台の熱画像カメラ1a、1b、1cを用いることによって、2台を用いる場合よりも、検知対象物101、102の表面について、死角が生じないようにすることができる。
【0056】
なお、外接球Sの中心C周りの中心角Acは、検知対象物101、102の形状及び配置に応じて、適宜設定することができる。また、熱画像カメラ1a、1b、1cの配置位置の高さも、検知対象物101、102の形状及び配置に応じて、適宜設定することができる。
【0057】
この実施形態においても、外接球Sの中心Cと何れか2台の熱画像カメラ1a、1b(1a、1c)(1b、1c)が配置される2直線とを含む平面は、水平面に限定されず、傾斜面であっても鉛直面であってもよい。また、各熱画像カメラ1a、1b、1cは、外接球Sの中心Cを含む1つの平面上に配置される必要はなく、外接球Sの中心Cを含む3つの平面上に2台ずつが配置されてもよい。
【0058】
この実施形態においても、制御装置2により、第1の実施形態において説明したガス漏れ検知方法が実行される。
【0059】
〔第3の実施形態〕
図5は、第3の実施形態に係るガス漏れ検知装置の構成を示すブロック図である。
【0060】
この実施形態では、
図5に示すように、複数の熱画像カメラ1a、1b、1c、1dは、検知対象物101、102の外接球Sの中心C周りの中心角Acが略90°~略110°である4直線上に1台ずつ、計4台が配置されている。
【0061】
4台の熱画像カメラ1a、1b、1c、1dを用いることによって、3台を用いる場合よりも、検知対象物101、102の表面について、死角が生じないようにすることができる。
【0062】
なお、外接球Sの中心C周りの中心角Acは、検知対象物101、102の形状及び配置に応じて、適宜設定することができる。また、熱画像カメラ1a、1b、1c、1dの配置位置の高さも、検知対象物101、102の形状及び配置に応じて、適宜設定することができる。
【0063】
この実施形態においても、外接球Sの中心Cと何れか2台の熱画像カメラが配置される2直線とを含む平面は、水平面に限定されず、傾斜面であっても鉛直面であってもよい。また、各熱画像カメラ1a、1b、1c、1dは、外接球Sの中心Cを含む1つの平面上に配置される必要はなく、外接球Sの中心Cを含む4つの平面上に2台ずつが配置されてもよい。
【0064】
図6は、第3の実施形態に係るガス漏れ検知装置の構成の他の例を示すブロック図である。
何れの2台の熱画像カメラ間の中心角Acを全て略110°とし、外接球Sの中心Cを含む4つの平面上に2台ずつを配置した場合には、
図6に示すように、4台の熱画像カメラ1a、1b、1c、1dは、外接球Sの中心Cを中心とする正四面体の頂点の位置に配置される。この場合の中心角Acは、2tan
-1√2≒109.47°である。
【0065】
この実施形態においても、制御装置2により、第1の実施形態において説明したガス漏れ検知方法が実行される。
【0066】
〔第4の実施形態〕
図7は、第4の実施形態に係るガス漏れ検知装置の構成を示すブロック図である。
【0067】
この実施形態では、
図7に示すように、複数の熱画像カメラ1a、1b、1c、1d、1eは、検知対象空間103の前側、後側、左側、右側及び上側に1台ずつ、計5台が配置されている。
【0068】
5台の熱画像カメラ1a、1b、1c、1d、1eを用いることによって、4台を用いる場合よりも、検知対象物101、102の表面について、死角が生じないようにすることができる。
【0069】
この実施形態では、上側(天井)に配置した熱画像カメラ1eによって、検知対象空間103の水平面方向の全体を撮像することができる。また、下側(床面)に熱画像カメラを配置しないことによって、検知対象空間103内の検知対象物101、102の配置及び歩行の邪魔になることがない。
【0070】
なお、熱画像カメラ1a、1b、1c、1d、1eの配置位置(方向及び高さ)は、検知対象空間103内の検知対象物の形状及び配置に応じて、各熱画像カメラ1a、1b、1c、1d、1eごと個々に、適宜設定することができる。
【0071】
この実施形態においても、制御装置2により、第1の実施形態において説明したガス漏れ検知方法が実行される。
【0072】
〔第5の実施形態〕
図8は、第5の実施形態に係るガス漏れ検知装置の構成を示すブロック図である。
【0073】
この実施形態では、
図8に示すように、複数の熱画像カメラ1a、1b、1c、1d、1e、1fは、検知対象空間103内の検知対象物の中心Cを原点とするxyz直交座標の各軸上に対向して2台ずつ、計6台が配置されている。xyz直交座標は、検知対象空間103に対して回転されており、検知対象空間103の床面上への熱画像カメラの配置が回避されている。
【0074】
6台の熱画像カメラ1a、1b、1c、1d、1e、1fを用いることによって、5台を用いる場合よりも、検知対象物101、102の表面について、死角が生じないようにすることができる。
【0075】
この実施形態では、検知対象物の外接球Sの中心C周りの全ての方向について、熱画像カメラ1a、1b、1c、1d、1e、1fを点対称の位置に配置することができるので、検知対象空間103の検知対象物のいろいろな形状及びいろいろな配置に対応することができる。また、下側(床面)に熱画像カメラを配置しないことによって、検知対象空間103内の検知対象物101、102の配置及び歩行の邪魔になることがない。
【0076】
この実施形態においては、何れの2台の熱画像カメラ間の中心角Acは全て90°であり、6台の熱画像カメラ1a、1b、1c、1d、1e、1fは、外接球Sの中心Cを中心とする正八面体の頂点の位置に配置される。
【0077】
なお、熱画像カメラ1a、1b、1c、1d、1e、1fの配置位置(方向及び高さ)は、検知対象空間103の検知対象物の形状及び配置に応じて、各熱画像カメラ1a、1b、1c、1d、1e、1fごと個々に、適宜設定することができる。
【0078】
この実施形態においても、制御装置2により、第1の実施形態において説明したガス漏れ検知方法が実行される。
【符号の説明】
【0079】
1a 熱画像カメラ
1b 熱画像カメラ
1c 熱画像カメラ
1d 熱画像カメラ
1e 熱画像カメラ
1f 熱画像カメラ
2 制御装置
101 タンク(検知対象物)
102 配管(検知対象物)
103 検知対象空間
104 溶接箇所
105 フランジ
106 断熱材
107 ドリップトレイ
108 漏洩液化ガス
109 漏洩液化ガス
S 検知対象物の外接球
C 外接球の中心
Ac 中心角