(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093464
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】光学式膜厚測定器の光量調整方法および研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 37/013 20120101AFI20240702BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240702BHJP
B24B 49/04 20060101ALI20240702BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240702BHJP
G01B 11/06 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B24B37/013
B24B49/12
B24B49/04 Z
H01L21/304 622S
G01B11/06 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209855
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】木下 将毅
【テーマコード(参考)】
2F065
3C034
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
2F065AA30
2F065BB15
2F065CC17
2F065DD08
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2F065QQ25
3C034AA19
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5F057AA19
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5F057DA01
5F057GA13
5F057GB02
5F057GB13
(57)【要約】
【課題】光源の運用効率を向上させて、光源の寿命を延ばすことができる光学式膜厚測定器の光量調整方法が提供される。
【解決手段】光学式膜厚測定器25の光量調整方法は、光源30の光量を監視し、監視された光量に基づいて、光源30に印加される電圧を調整する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨装置において、研磨される基板の表面に光を照射し、前記基板から反射する光を受けることによって、前記基板の膜厚を測定する光学式膜厚測定器の光量調整方法であって、
前記光学式膜厚測定器の光源の光量を監視し、
前記監視された光量に基づいて、前記光源に印加される電圧を調整する、光学式膜厚測定器の光量調整方法。
【請求項2】
電圧の調整時において、第1電圧を前記光源に印加して、前記光源の光量が所定の量に到達するか否かを確認し、
前記光源の光量の監視中において、前記光源の光量が低下した場合、第2電圧を前記光源に印加して、前記光源の光量を維持することができるか否かを確認する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光源の光量のばらつき値が所定の許容値よりも大きくなった場合に、前記光源の異常を決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記光源の光量のばらつき値が経時的に変化した場合に、前記光源の交換時期の到達を決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記光源の使用開始前あるいは使用開始後に、前記光源に取り付けられたヒーターによって、前記光源を加熱することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記光源の温度を検出する温度センサからの信号に基づいて、前記光源の温度を監視しながら、前記ヒーターを制御する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
研磨パッドを支持する研磨テーブルと、
基板を前記研磨パッドに押し付ける研磨ヘッドと、
前記基板の表面に光を照射し、前記基板から反射する光を受けることによって、前記基板の膜厚を測定する光学式膜厚測定器と、を備え、
前記光学式膜厚測定器は、前記基板からの反射光の信号に基づいて、前記基板の膜厚を測定する制御装置を備えており、
前記制御装置は、
前記光学式膜厚測定器の光源の光量を監視し、
前記監視された光量に基づいて、前記光源に印加される電圧を調整する、研磨装置。
【請求項8】
前記制御装置は、
電圧の調整時において、第1電圧を前記光源に印加して、前記光源の光量が所定の量に到達するか否かを確認し、
前記光源の光量の監視中において、前記光源の光量が低下した場合、第2電圧を前記光源に印加して、前記光源の光量を維持することができるか否かを確認する、請求項7に記載の研磨装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記光源の光量のばらつき値が所定の許容値よりも大きくなった場合に、前記光源の異常を決定する、請求項7に記載の研磨装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記光源の光量のばらつき値が経時的に変化した場合に、前記光源の交換時期の到達を決定する、請求項7に記載の研磨装置。
【請求項11】
前記光源は、ランプ部を加熱するためのヒーターを有している、請求項7に記載の研磨装置。
【請求項12】
前記制御装置は、前記ランプ部の温度を検出する温度センサからの信号に基づいて、前記ランプ部の温度を監視しながら、前記ヒーターを制御する、請求項11に記載の研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式膜厚測定器の光量調整方法および研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程における技術として、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)が知られている。CMPを行うための研磨装置は、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、ウェハを保持するための研磨ヘッドと、を備えている。
【0003】
このような研磨装置を用いてウェハの研磨を行う場合には、研磨ヘッドによりウェハを保持しつつ、ウェハを研磨パッドの研磨面に対して所定の圧力で押圧する。このとき、研磨テーブルと研磨ヘッドとを相対運動させることによりウェハが研磨面に摺接し、ウェハの表面が研磨される。
【0004】
例えば、シリコン酸化膜などの非金属膜の膜厚を測定するために、研磨装置は、光学式膜厚測定器を備える。この光学式膜厚測定器は、光ファイバーの先端から構成される投光部から光をウェハの表面に導き、ウェハからの反射光を受光部で受け取るように構成されている。研磨装置は、反射光のスペクトルを解析することで、ウェハの膜厚を測定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-194427号公報
【特許文献2】特開2019-125733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光源から発せられる光量は、発光回数あるいは発光時間の経過とともに減衰する。光源の定格寿命は、このような光量の減衰挙動に基づいて決められているが、光源の個体差に応じて、光量の減衰の傾向は異なり、定格寿命の到達後も十分に安定した光量を保つことがある。一般的に、光源は、その定格寿命の到達に従って一律に交換されるが、この場合、光源の長寿命化を実現する観点から、光源の運用効率が必ずしも良くないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、光源の運用効率を向上させて、光源の寿命を延ばすことができる光学式膜厚測定器の光量調整方法および研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、研磨装置において、研磨される基板の表面に光を照射し、前記基板から反射する光を受けることによって、前記基板の膜厚を測定する光学式膜厚測定器の光量調整方法が提供される。光量調整方法は、前記光学式膜厚測定器の光源の光量を監視し、前記監視された光量に基づいて、前記光源に印加される電圧を調整する。
【0009】
一態様では、電圧の調整時において、第1電圧を前記光源に印加して、前記光源の光量が所定の量に到達するか否かを確認し、前記光源の光量の監視中において、前記光源の光量が低下した場合、第2電圧を前記光源に印加して、前記光源の光量を維持することができるか否かを確認する。
一態様では、前記光源の光量のばらつき値が所定の許容値よりも大きくなった場合に、前記光源の異常を決定する。
一態様では、前記光源の光量のばらつき値が経時的に変化した場合に、前記光源の交換時期の到達を決定する。
【0010】
一態様では、前記光源の使用開始前あるいは使用開始後に、前記光源に取り付けられたヒーターによって、前記光源を加熱することをさらに含む。
一態様では、前記光源の温度を検出する温度センサからの信号に基づいて、前記光源の温度を監視しながら、前記ヒーターを制御する。
【0011】
一態様では、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドに押し付ける研磨ヘッドと、前記基板の表面に光を照射し、前記基板から反射する光を受けることによって、前記基板の膜厚を測定する光学式膜厚測定器と、を備える研磨装置が提供される。前記光学式膜厚測定器は、前記基板からの反射光の信号に基づいて、前記基板の膜厚を測定する制御装置を備えており、前記制御装置は、前記光学式膜厚測定器の光源の光量を監視し、前記監視された光量に基づいて、前記光源に印加される電圧を調整する。
【0012】
一態様では、前記制御装置は、電圧の調整時において、第1電圧を前記光源に印加して、前記光源の光量が所定の量に到達するか否かを確認し、前記光源の光量の監視中において、前記光源の光量が低下した場合、第2電圧を前記光源に印加して、前記光源の光量を維持することができるか否かを確認する。
一態様では、前記制御装置は、前記光源の光量のばらつき値が所定の許容値よりも大きくなった場合に、前記光源の異常を決定する。
一態様では、前記制御装置は、前記光源の光量のばらつき値が経時的に変化した場合に、前記光源の交換時期の到達を決定する。
【0013】
一態様では、前記光源は、ランプ部を加熱するためのヒーターを有している。
一態様では、前記制御装置は、前記ランプ部の温度を検出する温度センサからの信号に基づいて、前記ランプ部の温度を監視しながら、前記ヒーターを制御する。
【発明の効果】
【0014】
光源の光量を監視し、監視された光量に基づいて、光源に印加される電圧を調整することにより、光源の個体差を考慮した電圧調整が可能となり、光源の運用効率を向上させることができる。結果として、膜厚測定器の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】研磨パッドおよび研磨テーブルを示す上面図である。
【
図4】光源に印加される電圧が一定である場合の光量の経時変化を示すグラフである。
【
図5】制御装置による電圧制御フローを示す図である。
【
図6】電圧が印加されたときの光源の光量を示すグラフである。
【
図7】光源が冷えた状態から発光を開始したときの光源の光量の時間変化を示すグラフである
【
図8】ランプ部に取り付けられたヒーターを示す図である。
【
図9】ランプ部に取り付けられたヒーターを示す図である。
【
図10】光源の光量の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、研磨装置の一実施形態を示す図である。
図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド1を保持しつつ、研磨パッド1を回転する研磨テーブル3と、ウェハW(基板の一例)を研磨パッド1に押し付けて、ウェハWを研磨する研磨ヘッド(トップリング)5と、研磨パッド1に研磨液を供給するための研磨液供給ノズル10と、を備えている。
【0017】
研磨テーブル3は、テーブル軸3aを介してその下方に配置されるテーブルモータ19に連結されている。研磨テーブル3は、テーブルモータ19により、矢印で示す方向に回転する。研磨パッド1は、研磨テーブル3の上面に貼付されており、研磨パッド1の上面は、ウェハWを研磨する研磨面1aを構成している。
【0018】
研磨ヘッド5は、研磨ヘッドシャフト16の下端に連結されている。研磨ヘッド5は、真空吸引により、その下面にウェハWを保持するように構成されている。研磨ヘッドシャフト16は、図示しない上下動機構により上下動するように構成されている。
【0019】
ウェハWの研磨は次のようにして行われる。研磨ヘッド5および研磨テーブル3をそれぞれ矢印で示す方向に回転させ、研磨液供給ノズル10から研磨パッド1上に研磨液を供給する。この状態で、研磨ヘッド5は、ウェハWを研磨パッド1の研磨面1aに押し付ける。ウェハWの表面は、研磨液の化学的作用と研磨液に含まれる砥粒の機械的作用により研磨される。
【0020】
研磨装置は、ウェハWの膜厚を測定するための光学式膜厚測定器25を備えている。以下、本明細書において、光学式膜厚測定器を単に膜厚測定器と呼ぶ。膜厚測定器25は、光を発する光源30と、研磨テーブル3内の所定の位置に配置された投光部(例えば、投光ファイバー)34と、研磨テーブル3内の所定の位置に配置された受光部(例えば、受光ファイバー)50と、ウェハWからの反射光を波長に従って分解して各波長での反射光の強度を測定する分光器26と、ウェハWからの反射光の信号に基づいて、ウェハWの膜厚を測定する制御装置12と、を備えている。
【0021】
研磨テーブル3は、透明な液体(例えば、純水)を流入させる流路7を有している。投光部34および受光部50は、研磨テーブル3内に形成された流路7に配置されている。研磨パッド1は、流路7に連通する通孔1bを有している。投光部34は通孔1bを通じて研磨パッド1上のウェハWに光を導き、受光部50はウェハWからの反射光を受ける。
【0022】
図1に示すように、研磨装置は、流路7に連通する液体供給ライン62および液体排出ライン73と、液体供給ライン62および液体排出ライン73のそれぞれに接続された開閉弁(図示しない)と、を備えている。液体供給ライン62は、液体供給源35に接続されている。
【0023】
ウェハWの研磨中において、開閉弁を開くと、液体供給源35から供給された液体が液体供給ライン62を通って流路7(および通孔1b)に流入し、投光部34および受光部50に接触する。投光部34および受光部50とウェハWとの間の空間を満たす透明な液体は、研磨液の、流路7(および通孔1b)への浸入を防止することができる。流路7(および通孔1b)に供給された液体は、投光部34および受光部50に接触した後、流体排出ライン73を通じて流路7から排出される。
【0024】
図1に示すように、制御装置12は、プログラムを格納した記憶装置12aと、プログラムに従って演算を実行する処理装置12bと、を備えている。コンピュータから構成された制御装置12は、記憶装置12aに電気的に格納されたプログラムに従って動作する。
【0025】
図2は、研磨パッドおよび研磨テーブルを示す上面図である。投光部34および受光部50は、回転軌跡(点線参照)に示すように、研磨テーブル3が一回転するたびにウェハWを横切る。
図2に示す実施形態では、研磨テーブル3の中心と投光部34および受光部50との間の距離は、研磨テーブル3の中心と研磨ヘッド5の中心との間の距離に等しい。したがって、投光部34および受光部50は、研磨テーブル3が一回転するたびにウェハWの中心を横切りながら、ウェハWに光を導き、ウェハWからの反射光を受ける。
【0026】
ウェハWの研磨中において、投光部34および受光部50とウェハWとの間の空間は、透明な液体で満たされている。このような構成により、空間を満たす透明な液体は、研磨液の、流路7(および通孔1b)への浸入を防止する。さらに、空間が透明な液体で満たされているため、投光部34から発せられる光は、安定的にウェハWに導かれ、受光部50は、ウェハWからの反射光を安定的に受ける。
【0027】
図3は、光学式膜厚測定器を示す図である。
図3に示すように、膜厚測定器25は、光源30に接続された光源電源部31と、光源30および受光部50から送られた光を選択的に分光器26に送るための切替器32と、を備えている。分光器26は、切替器32を通じて送られた光を波長に従って分解し、光のスペクトルデータを制御装置12に送る。
【0028】
制御装置12は、受光部50によって検出された信号に基づいて、分光器26によって生成された分光波形(スペクトルデータ)に基づいて、ウェハWの膜厚を決定(測定)するように構成されている。
【0029】
図3に示すように、膜厚測定器25は、光源30および切替器32に接続されたモニタリングライン36を備えている。モニタリングライン36は、切替器32を通じて、光源30から発せられた光を直接、分光器26に送るように構成されている。モニタリングライン36(および切替器32)を通じて分光器26に送られた光は分光器26によって波長に従って分解され、その分光波形は制御装置12に送られる。制御装置12は、分光器26によって生成された分光波形に基づいて、光源30から発せられた光(すなわち、モニタリング光)の基準強度を取得(測定)する。
【0030】
一実施形態では、制御装置12は、投光部34から鏡に向かって光を照射し、鏡からの反射光の強度を測定することによって基準反射光を取得する。他の例として、制御装置12は、膜が形成されていないシリコンウェハ(すなわち、ベアウェハ)に向かって光を照射し、シリコンウェハからの反射光の強度を測定することによって基準反射光を取得してもよい。
【0031】
記憶装置12aは、基準光に相当する基準光データおよび/または基準反射光に相当する基準反射光データを記憶している。以下、基準光データおよび基準反射光データを総称して、基準データと呼ぶことがある。制御装置12は、光源30に印加される電圧(例えば、放電電圧)の大きさを制御可能である。
【0032】
制御装置12は、ウェハWの膜厚を精度よく測定し、かつ光源30の寿命を延ばすために、光源30の光量を監視し、監視された光量に基づいて、光源30に印加される電圧を調整(制御)するように構成されている。
【0033】
図4は、光源に印加される電圧が一定である場合の光量の経時変化を示すグラフである。
図4の横軸は発光回数、発光時間を示しており、縦軸は光量を示している。
図4に示すように、光量は、発光回数あるいは発光時間の経過とともに減衰する。光源の定格寿命は、このような光量の減衰挙動に基づいて決められているが、光源の個体差に応じて、光量の減衰の傾向は異なり、定格寿命後も十分に安定した光量を保つことがある。
【0034】
したがって、光源の定格寿命の到達に従って一律に光源を交換した場合、光源の長寿命化を実現する観点から、光源の運用効率が必ずしも良くないという問題がある。そこで、本実施形態に係る制御装置12は、光源の個体差を考慮して、電圧を調整することにより、光源の運用効率を向上させることができ、結果として、光源の寿命を延ばすことができる。言い換えれば、光源を長時間使用することができる。
【0035】
図5は、制御装置による電圧制御フローを示す図である。制御装置12は、光源30の交換後に、初期印加電圧を決定する(ステップS101参照)。初期印加電圧の決定方法については後述する。複数のウェハWを研磨する間の任意のタイミング、例えば、研磨装置の待機時において、光源30の光量を測定し、光量を監視する(
図5のステップS102参照)。
【0036】
監視対象となる光量は、基準光の出力値(光量)、または基準反射光の出力値(光量)である。分光器26によって生成された分光波形から光量を決定する方法は、任意の手法を採用することができる。例えば、任意の波長の光強度、任意の波長範囲内のピーク強度、任意の波長範囲内の光強度の平均値に基づいて、光量を決定することができる。
【0037】
制御装置12は、記憶装置12aに記憶された初期の基準データと、監視対象となる現在の光量と、に基づいて、現在の光量の減衰率を算出する(ステップS103参照)。その後、制御装置12は、現在の光量の減衰率と所定のしきい値とを比較し、現在の光量の減衰率が所定のしきい値まで低下したか否かを判定する(ステップS104参照)。ここで、しきい値は、ウェハWの膜厚を精度よく測定するための最低限の光量に応じて決めることができる。
【0038】
図6は、電圧が印加されたときの光源の光量を示すグラフである。
図6において、横軸は発光回数、発光時間を示しており、縦軸は光量を示している。現在の光量の減衰率が所定のしきい値まで低下した場合には(ステップS104の「YES」参照)、
図6に示すように、制御装置12は、所定の必要光量に達するまで、光源30への印加電圧を上昇させる(ステップS105参照)。ここで、必要光量は、ウェハWの膜厚を精度よく測定するために必要な光量である。
【0039】
制御装置12は、現在の光量の減衰率が所定のしきい値まで低下していない場合には(ステップS104の「NO」参照)、ステップS105を実行することなく、光量の監視動作を終了する。
【0040】
光源30に印加される電圧の初期値を決定する場合、制御装置12は、ウェハWの膜厚を測定するために必要な光量に基づいて、初期電圧値を決定する。より具体的には、制御装置12は、ウェハWの測定周期を実現する印加電圧の最大値よりも小さな範囲内で、必要光量が得られる初期電圧値を決定する。このとき、制御装置12は、光源30の光量のばらつきの程度を取得する。
【0041】
研磨テーブル3に埋め込まれた膜厚測定器25は、研磨テーブル3とともに回転する。膜厚測定器25の回転時において、研磨対象となるウェハWの測定周期は、ウェハWの研磨条件に応じて予め決定されており、このようなウェハWの測定周期は研磨の制御パラメータとして記憶装置12aに保存されている。
【0042】
光源30がフラッシュ光源である場合には、研磨対象となるウェハWに応じた測定周期と光源30の印加電圧との間には、相関関係が存在しており、記憶装置12aは、相関関係を示す相関データ(第1相関データ)を記憶している。基本的に、光源30の印加電圧を高くすると、発光可能な最大周波数は小さくなる。したがって、測定周期を短くして、ウェハWの膜厚測定のサンプリング数を増やすためには、ウェハWの膜厚測定に必要な発光周波数を最大周波数として発光可能な印加電圧より小さな電圧を印加する必要がある。制御装置12は、第1相関データと、記憶装置12aに保存されている測定周期と、に基づいて、ウェハWの測定周期を実現する印加電圧の最大値を算出する。
【0043】
記憶装置12aは、印加電圧と光量との間に存在する相関関係を示す相関データ(第2相関データ)を記憶している。
図5のステップS104の一例として、制御装置12は、第2相関データに基づいて、所定の必要光量が得られるように、光源30への印加電圧を上昇させてもよい。ただし、制御装置12は、ウェハWの測定周期を実現する印加電圧の最大値を超えないように、光源30への印加電圧を制御する。
【0044】
一実施形態では、記憶装置12aが第2相関データを記憶していない場合であっても、制御装置12は、所定の光量になるように、実験的に電圧を徐々に上げて、印加電圧を決めるように構成されてもよい。
【0045】
一実施形態では、制御装置12は、電圧調整時において、ウェハWの測定周期を実現する印加電圧の最大電圧を印加して、基準光の出力値(光量)または基準反射光の出力値(光量)を測定し、電圧の調整前の基準光の出力値(光量)または基準反射光の出力値(光量)との比例計算により、光量の減衰分を補うように印加電圧を調整してもよい。
【0046】
制御装置12による電圧制御フローに代えて、あるいは付加して、制御装置12は、光源30の光量(すなわち、基準光の出力値、基準反射光の出力値)のばらつきに基づいて、印加電圧を上昇させてもよい。光源30の長寿命化を実現するために、印加電圧を可能な範囲で低下させることが望ましいが、印加電圧の低下に起因して、光源30の光量が不安定になり、結果として、光量のばらつきが生じるおそれがある。
【0047】
そこで、制御装置12は、光源30の光量のばらつきを監視し、光量のばらつきが所定の許容範囲を超えた場合に、光量のばらつきが所定の許容範囲内に収まるように、印加電圧を調整してもよい。
【0048】
本実施形態によれば、光源30の光量を監視して得られた、光量の大きさ、および/または、ばらつきに基づいて、光源30への印加電圧を調整することにより、光源30の個体差に応じて、光源30の光量の大きさ、および/または、ばらつきを許容範囲に維持することができる。したがって、結果的に光源30の長寿命化を実現することができる。
【0049】
制御装置12は、所定の電圧を光源30に印加して、光源30の動作確認を行ってもよい。より具体的には、制御装置12は、電圧の調整時において、光源30に第1電圧(例えば、定格電圧またはウェハWの測定周期を実現する印加電圧の最大値)を印加して、光源30の光量が所定の量に到達するか否かを確認する(動作確認)。動作確認における「所定の量」は、ウェハWの膜厚測定に必要な光量(必要光量)であってもよく、必要光量とは別に定められた値であってもよい。
【0050】
一実施形態では、動作確認時において、光源30の光量が所定の量に到達しなかった場合には、制御装置12は、光源30の異常を示すアラームを発報してもよい。
【0051】
動作確認において、光源30の光量が所定の量に到達した場合には、上述のように、制御装置12は、光源30の光量が所定の大きさ(必要光量)になるように、あるいは光源30の光量のばらつきが所定の範囲に入るように、電圧を調整する。
【0052】
このように、制御装置12は、光源30の電圧調整を2段階で行うことができる。2段階の電圧調整により、制御装置12は、光源30の異常の有無を判断することができる。結果として、制御装置12は、光源30の故障に起因するウェハWの膜厚の測定不良を引き起こすことなく、ウェハWの膜厚をより確実に測定することができる。
【0053】
一実施形態では、制御装置12は、光源30の光量(すなわち、基準光の出力値あるいは基準反射光の出力値)を任意の回数だけ測定し、測定された光量のばらつき値と、所定の許容値と、を比較してもよい。例えば、ばらつき値は、任意の波長範囲内の光量ピーク値の変動から算出されてもよく、所定の許容値は、研磨対象となるウェハWに応じて設定されてもよい。
【0054】
制御装置12は、ばらつき値が所定の許容値よりも大きくなった場合に、光源30の異常を決定する。この場合、制御装置12は、光源30の異常を示すアラームを発報してもよい。
【0055】
一実施形態では、制御装置12は、ばらつき値が経時的に変化した場合に、光源30の交換時期の到達を決定する。この場合、制御装置12は、光源30の交換時期の到来を示すアラームを発報してもよい。
【0056】
上述したように、光源30への印加電圧を調整することにより、光源30の長寿命化を実現することができる。光源30の光量は、光源30に印加される電圧の大きさに依存している。したがって、大きな電圧を光源30に印加すると、光源30の光量が大きくなる一方で、光源30の寿命が短くなってしまう。光源30の寿命は、印加電圧の大きさによって変化し、印加電圧が低い方が光源30の寿命は長くなる。したがって、制御装置12は、光源30の交換後における印加電圧の初期値を最適化することにより、光源30のさらなる長寿命化を実現することができる。
【0057】
図7は、光源が冷えた状態から発光を開始したときの光源の光量の時間変化を示すグラフである。
図7の横軸は時間を示しており、縦軸は光量を示している。
図7に示すように、光源30が冷えた状態で(例えば、光源30の交換時(後)、研磨装置のメンテナンス後、あるいは研磨装置の運転待機後)、光源30の発光を開始すると、十分な光量が得られず、結果として、光源30の光量が必要光量に達するまでに多くの時間がかかってしまう(
図7の時間TA参照)。
【0058】
通常、このように光量が不足した状態で光源30を使用することを避けるために、予備発光が行われる。しかしながら、本実施形態では、光源30の寿命を延ばすために、必要光量が得られる範囲内で、印加電圧を抑えて使用する。したがって、特に、光源30が冷えた後に光量が低下する問題は、より顕著になり、予備発光を行ったとしても光源30の光量が必要光量に達するまでに、ある程度の時間が必要となる。さらに予備発光は、光源の寿命にも影響する。そこで、光源30は、ヒーターを備えている。以下、図面を参照して、ヒーターの構成について説明する。
【0059】
図8および
図9は、ランプ部に取り付けられたヒーターを示す図である。
図8に示すように、光源30は、光を発するランプ部30aと、ランプ部30aおよび電機部品を収容するハウジング30bと、を有している。ランプ部30aには、封入ガスが封入されている。ヒーター40Aは、ランプ部30aに取り付けられており、ランプ部30aを加熱するように構成されている。より具体的には、ランプ部30aは、光を投光部34に導くための接続面(図示しない)を有しており、ヒーター40Aは、この接続面を除くランプ部30aに取り付けられている。
【0060】
本明細書において、「ランプ部30aに取り付けられている」との表現は、ヒーターがランプ部30aに直接取り付けられている構成を含むのみならず、ヒーターがランプ部30aの周囲に取り付けられている構成をも含む。
【0061】
本実施形態では、ヒーター40Aは、ランプ部30aに貼り付けられたラバーヒーターであるが、ヒーター40Aは、ランプ部30aを加熱する構造を有していれば、特に限定されない。例えば、ヒーター40Aは、ランプ部30aに巻き付けられたニクロム線であってもよく、ペルチェ素子であってもよい。
【0062】
図8に示すように、光源30は、投光部34とランプ部30aとを接続するカップリング部41を有している場合がある。この場合、光源30は、ランプ部30aに取り付けられたヒーター40Aのみならず、カップリング部41に取り付けられたヒーター40Bをも備えてもよい。ヒーター40Bは、カップリング部41を加熱することにより、ランプ部30aを間接的に加熱する。ヒーター40Bは、ヒーター40Aと同一の構造を有してもよい。
図9に示すように、ヒーター40Aおよびヒーター40Bは、重なるように配置されてもよい。
【0063】
上述したように、ヒーターがランプ部30aの周囲に取り付けられている構成も「ランプ部30aに取り付けられている」と表現される。したがって、ヒーター40Bがカップリング部41を加熱する場合、このような構成であっても、ヒーター40Bが「ランプ部30aに取り付けられている」と表現される。
【0064】
ヒーター40Aおよびヒーター40Bは、制御装置12に電気的に接続されており、制御装置12は、ヒーター40Aおよびヒーター40Bの動作を制御することができる。したがって、制御装置12は、研磨装置の運転開始後、光源30の発光開始(または使用開始)前に、ヒーター40A(およびヒーター40B)を動作させて、光源30の光量が安定するまで、ランプ部30aを加熱する。言い換えれば、制御装置12は、冷えた状態の光源30を使い始めるとき(発光を開始するとき)、ヒーター40A(およびヒーター40B)を動作させて、光源30の光量が安定するまで、ランプ部30aを加熱する。
【0065】
図10は、光源の光量の時間変化を示すグラフである。
図10の横軸は時間を示しており、縦軸は光量を示している。
図10に示すように、光源30の発光開始前に、ヒーター40A(およびヒーター40B)でランプ部30aを加熱することにより、光源30は、その発光直後に十分な光量を得ることができ、光源30の光量は、短時間で必要光量に達することができる(
図10の時間Ta参照)。
【0066】
上述したように、通常、光源30の光量が必要光量に達するまで、光源30を暖機運転(すなわち、予備発光)する必要がある。したがって、暖機運転の時間だけ、ウェハWの研磨を開始することができず、結果として、スループットが低下してしまう。本実施形態によれば、ヒーター40A(およびヒーター40B)でランプ部30aを加熱することにより、光源30の光量は、短時間で必要光量に達する。結果として、光源30の光量不足に起因するスループットの低下を防止することができる。
【0067】
一実施形態では、光源30の発光開始前にランプ部30aを加熱しても、光源30の光量が安定しない場合には、光源30を発光した後に(発光開始後または使用開始後)、制御装置12は、光源30の光量が安定するまで、光源30への印加電圧を上昇してもよい。その後、制御装置12は、
図5を参照して説明した実施形態に示す制御フローを実行してもよい。
【0068】
上述した実施形態では、光源30が冷えた状態における光源30の発光前に、ランプ部30aを加熱する構成について説明したが、制御装置12は、研磨装置のアイドリング運転中に、ランプ部30aを加熱してもよい。
【0069】
一実施形態では、研磨装置は、ランプ部30aの温度を検出する温度センサ45を備えてもよい(
図8および
図9参照)。温度センサ45は、制御装置12に電気的に接続されており、制御装置12は、温度センサ45によって検出された信号に基づいて、ランプ部30aの温度を監視しながら、ヒーター40A(およびヒーター40B)を制御するように構成されている。
【0070】
例えば、制御装置12は、ランプ部30aの現在の温度が所定のしきい温度まで上昇したら、ヒーター40A(およびヒーター40B)の動作を停止する。例えば、記憶装置12aは、ヒーター40A(およびヒーター40B)によるランプ部30aの温度上昇曲線を示す関係式(曲線データ)を記憶してもよい。制御装置12は、ランプ部30aの温度が記憶装置12aに記憶された曲線データに沿って上昇するように、ヒーター40A(およびヒーター40B)の動作を制御してもよい。
【0071】
図8および
図9に示すように、研磨装置は、ハウジング30bを冷却するペルチェ素子46を備えてもよい。ペルチェ素子46は、制御装置12に電気的に接続されている。光源30の光量の安定性を確保するために、ランプ部30aを加熱することは有効である一方で、ランプ部30aの加熱に起因して、ハウジング30b内に収容された精密部品が損傷するおそれがある。ペルチェ素子46は、ハウジング30bを冷却するように構成されているため、制御装置12は、ランプ部30aを加熱しつつ、ハウジング30bを冷却することができる。
【0072】
上述した実施形態では、制御装置12が光量の監視および印加電圧を調整する構成について説明したが、光量の監視および印加電圧の調整は、制御装置12の代わりに、操作者が研磨装置を操作することによって行ってもよい。
【0073】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0074】
1 研磨パッド
1a 研磨面
1b 通孔
3 研磨テーブル
3a テーブル軸
5 研磨ヘッド
7 流路
10 研磨液供給ノズル
12 制御装置
12a 記憶装置
12b 処理装置
16 研磨ヘッドシャフト
19 テーブルモータ
25 膜厚測定器
26 分光器
30 光源
30a ランプ部
30b ハウジング
32 切替器
33 接続ライン
34 投光部
35 液体供給源
36 モニタリングライン
40A,40B ヒーター
41 カップリング部
45 温度センサ
46 ペルチェ素子
50 受光部
62 液体供給ライン
73 液体排出ライン