(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093495
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】水分散体、及び感熱記録材料
(51)【国際特許分類】
C08L 29/04 20060101AFI20240702BHJP
C08K 5/20 20060101ALI20240702BHJP
B41M 5/337 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C08L29/04 A
C08K5/20
B41M5/337 212
B41M5/337 230
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209913
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】北脇 真由佳
(72)【発明者】
【氏名】石原 千津子
(72)【発明者】
【氏名】平野 泰広
【テーマコード(参考)】
2H026
4J002
【Fターム(参考)】
2H026AA07
2H026BB01
2H026BB21
2H026CC05
2H026DD02
2H026DD43
2H026DD53
2H026HH03
4J002BE021
4J002ED067
4J002EP026
4J002FD317
4J002GS00
4J002HA06
(57)【要約】
【課題】粘度が低く、作業性に優れる水分散体、かかる水分散体を用いた感熱記録材料を提供する。
【解決手段】脂肪酸ビスアミド(A)及びポリビニルアルコール系樹脂(B)を含有する水分散体であって、前記脂肪酸ビスアミド(A)100質量部に対する前記ポリビニルアルコール系樹脂(B)の含有量が、2.5~10質量部である、水分散体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸ビスアミド(A)及びポリビニルアルコール系樹脂(B)を含有する水分散体であって、前記脂肪酸ビスアミド(A)100質量部に対する前記ポリビニルアルコール系樹脂(B)の含有量が、2.5~10質量部である、水分散体。
【請求項2】
前記脂肪酸ビスアミド(A)が、飽和脂肪酸ビスアミドである、請求項1記載の水分散体。
【請求項3】
前記飽和脂肪酸ビスアミドが、炭素数12~22の飽和脂肪酸を有する飽和脂肪酸ビスアミドである、請求項2記載の水分散体。
【請求項4】
前記ポリビニルアルコール系樹脂(B)が、変性ポリビニルアルコール系樹脂である、請求項1又は2記載の水分散体。
【請求項5】
前記水分散体に含まれる固形分の含有量が、前記水分散体の全体に対して、2~80質量%である、請求項1又は2記載の水分散体。
【請求項6】
更に、界面活性剤(C)を含有する、請求項1又は2記載の水分散体。
【請求項7】
23℃における粘度が、5000mPa・s以下である、請求項1又は2記載の水分散体。
【請求項8】
前記脂肪酸ビスアミド(A)の平均粒子径が、2.0μm以下である、請求項1又は2記載の水分散体。
【請求項9】
請求項1又は2記載の水分散体を塗工してなる層を有する感熱記録材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪酸アミド及びポリビニルアルコール系樹脂を含有する水分散体に関する。詳細には、脂肪酸ビスアミド及びポリビニルアルコール系樹脂を含有する水分散体であって、粘度が低く、流動性が良好であり、例えば、感熱記録材料等として使用する際の作業性に優れる、水分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と略記する場合がある)は、優れた水溶性、界面特性(分散性、保護コロイド性等)、皮膜特性(造膜性、強度、耐油性等)等を利用して、分散剤、乳化剤、懸濁剤、繊維加工剤、紙加工剤、バインダー、接着剤、フィルム等に広く用いられている。
【0003】
例えば、PVA系樹脂を分散剤として使用する技術は広く知られており、特許文献1には、感熱記録材料に用いられる増感剤分散液を調製する際に、分散剤としてPVA系樹脂を用いることが記載されている。具体的には、当該増感剤分散液として、増感剤であるステアリン酸モノアミドと、スルホン酸変性PVA系樹脂とを含有する増感剤分散液が記載されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、増感剤であるステアリン酸ビスアミドと、メチルメルロースとを含有する増感剤分散液や、前記増感剤分散液に対してPVA系樹脂等を混合して得られた感熱記録層用塗工液が記載されている。
【0005】
更に、特許文献3には、増感剤であるステアリン酸アミド又はステアリン酸ビスアミドと、PVA系樹脂とを含有する分散液や、前記分散液を含む感熱発色層塗工液が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-146642号公報
【特許文献2】特開2016-55619号公報
【特許文献3】特開2017-177346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、分散質として脂肪酸アミド、分散剤としてPVA系樹脂を用いる水分散系において、その分散性ないし作業性について鋭意検討を行う過程において、脂肪酸アミドの種別とPVA系樹脂の配合量との関連性に着目した。かかる観点から研究を重ねた結果、脂肪酸アミドの種別の相違やPVA系樹脂の配合量等によって、水分散体の粘度が高くなる場合があり、作業性等の観点からは未だ改善の余地がある課題を知得した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、かかる知見に基づいて更なる研究を重ねた結果、意外にも、脂肪酸ビスアミドとPVA系樹脂との含有割合を特定範囲に制御した水分散体とすることによって、分散性が向上し、粘度を低減させることができることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は以下の[1]~[9]である。
[1]
脂肪酸ビスアミド(A)及びポリビニルアルコール系樹脂(B)を含有する水分散体であって、前記脂肪酸ビスアミド(A)100質量部に対する前記ポリビニルアルコール系樹脂(B)の含有量が、2.5~10質量部である、水分散体。
[2]
前記脂肪酸ビスアミド(A)が、飽和脂肪酸ビスアミドである、[1]記載の水分散体。
[3]
前記飽和脂肪酸ビスアミドが、炭素数12~22の飽和脂肪酸を有する飽和脂肪酸ビスアミドである、[2]記載の水分散体。
[4]
前記ポリビニルアルコール系樹脂(B)が、変性ポリビニルアルコール系樹脂である、[1]~[3]のいずれかに記載の水分散体。
[5]
前記水分散体に含まれる固形分の含有量が、前記水分散体の全体に対して、2~80質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の水分散体。
[6]
更に、界面活性剤(C)を含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の水分散体。
[7]
23℃における粘度が、5000mPa・s以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の水分散体。
[8]
前記脂肪酸ビスアミド(A)の平均粒子径が、2.0μm以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の水分散体。
[9]
[1]~[8]のいずれかに記載の水分散体を塗工してなる層を有する感熱記録材料。
【発明の効果】
【0010】
本発明のように、脂肪酸ビスアミド(A)及びポリビニルアルコール系樹脂(B)を含有する水分散体であって、前記脂肪酸ビスアミド(A)100質量部に対する前記ポリビニルアルコール系樹脂(B)の含有量が2.5~10質量部の水分散体であれば、脂肪酸ビスアミドを良好に分散させることができ、水分散体の粘度を低く制御できるため、流動性が良好である。それゆえ、例えば、感熱記録材料等として使用する際の使用性に優れた水分散体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について具体的に説明するが、これらは本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に限定されるものではない。
【0012】
なお、本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特に断らない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」又は「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
本明細書において「水分散体」とは、分散媒として少なくとも水を含有し、分散質として少なくとも脂肪酸ビスアミド(粒子)を含有し、分散剤として少なくともポリビニルアルコール系樹脂を含有する混合物を意味する。
また、本明細書において「固形分」とは、水分散体に含まれる揮発性成分以外の成分を意味する。具体的には、例えば、支持体等に水分散体を塗工して乾燥させた際に、支持体上に塗膜として残る成分を意味する。
【0013】
本発明の一実施態様にかかる水分散体(以下、「本水分散体」という場合がある)は、脂肪酸ビスアミド(A)及びPVA系樹脂(B)を含有する水分散体であって、脂肪酸ビスアミド(A)100質量部に対するPVA系樹脂(B)の含有量が、2.5~10質量部であることを特徴とする。
【0014】
本水分散体によれば、脂肪酸ビスアミド(A)の分散性を向上することができ、粘度を好適な範囲に制御することができるため、作業性が良好な水分散体を得ることができる。
他方、例えば、脂肪酸アミドとして脂肪酸モノアミドを用いる場合や、脂肪酸ビスアミド及びPVA系樹脂の含有割合が前記の特定範囲外である場合など、本発明の要件を充足しない場合には、水分散体の粘度を好適に抑制し難く、作業性が良好な水分散体を得ることが困難になる傾向がある。
【0015】
以下、本水分散体に用いられる各成分等について詳細に説明する。
【0016】
〔脂肪酸ビスアミド(A)〕
本水分散体に用いられる脂肪酸ビスアミド(A)としては、例えば、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド等が挙げられる。脂肪酸ビスアミド(A)の脂肪酸は直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0017】
脂肪酸ビスアミド(A)を構成する飽和脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸等が挙げられる。
【0018】
脂肪酸ビスアミド(A)を構成する不飽和脂肪酸としては、例えば、ツズ酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ゾーマリン酸、ペトロセリン酸、ペトロセライジン酸、オレイン酸、エライジン酸、ネルボン酸等が挙げられる。
【0019】
飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、例えば、エチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N'-ジステアリルアジピン酸アミド、エチレンビスアラキジン酸アミド等が挙げられる。
【0020】
不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、例えば、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N'-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N'-ジオレイルセバシン酸アミド等が挙げられる。
【0021】
脂肪酸ビスアミド(A)は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。前記脂肪酸ビスアミド(A)のなかでも、水分散体の粘度を好適に制御する観点から、飽和脂肪酸ビスアミドが好ましく、飽和脂肪酸ビスアミドのなかでも、炭素数24~52の直鎖飽和脂肪酸ビスアミドが好ましく、より好ましくは、炭素数30~46の直鎖飽和脂肪酸ビスアミドである。
【0022】
また、脂肪酸ビスアミド(A)としては、水分散体の粘度を好適に制御する観点から、炭素数12~22の飽和脂肪酸を有する飽和脂肪酸ビスアミドが好ましく、より具体的には、直鎖飽和脂肪酸の炭素数が12~22の直鎖状飽和脂肪酸ビスアミドが好ましく、より好ましくは、直鎖飽和脂肪酸の炭素数が16~18の直鎖飽和脂肪酸ビスアミドである。特に好ましい飽和脂肪酸ビスアミド(A)としては、直鎖飽和脂肪酸の炭素数が17の直鎖飽和脂肪酸ビスアミドであるステアリン酸ビスアミドが挙げられる。
【0023】
脂肪酸ビスアミド(A)は、フレーク状、ビーズ状、粉末状等のいずれの形状でもよいが、粉末状が好適に使用できる。
【0024】
なお、本水分散体には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、脂肪酸ビスアミド(A)を除く他の脂肪酸アミド(例えば、脂肪酸モノアミド等)を併用してもよい。但し、本水分散体の全体に含まれる脂肪酸アミドの全量(100質量%)に対する脂肪酸ビスアミド(A)の含有量は、10質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、更により好ましくは80~100質量%、特に好ましくは90~100質量%である。
【0025】
本水分散体の全量(100質量%)に対する脂肪酸ビスアミド(A)の含有量は、5~70質量%が好ましく、より好ましくは10~60質量%であり、更により好ましくは、15~50質量%である。
【0026】
〔PVA系樹脂(B)〕
本水分散体に用いられるPVA系樹脂(B)としては、未変性PVA系樹脂、変性PVA系樹脂が挙げられる。
【0027】
未変性PVA系樹脂とは、ビニルエステル系化合物を重合して得られるポリビニルエステル系樹脂をケン化して得られる、ビニルアルコール構造単位を主体とする樹脂であり、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位とケン化されずに残存したビニルエステル構造単位から構成される。
【0028】
かかるビニルエステル系化合物としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、バーサティック酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等が挙げられる。なかでも、酢酸ビニルを用いることが好ましい。前記ビニルエステル系化合物は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記ビニルエステル系化合物の重合方法としては、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等、公知の重合方法を任意に用いることができるが、通常、メタノール、エタノールあるいはイソプロピルアルコール等のアルコールを溶媒とする溶液重合法により行われる。
【0030】
重合触媒としては、重合方法に応じて、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系触媒、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物触媒等の公知の重合触媒を適宜選択することができる。また、重合の反応温度は50℃~沸点程度の範囲から選択される。
【0031】
ケン化は公知の方法で行うことができ、通常、得られた共重合体をアルコールに溶解してケン化触媒の存在下で行なわれる。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。アルコール中の共重合体の濃度は、溶解率の観点から20~50質量%の範囲から選択される。
【0032】
ケン化触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒を用いることができ、酸触媒を用いることも可能である。ケン化触媒の使用量はビニルエステル系化合物に対して1~100ミリモル当量にすることが好ましい。
【0033】
変性PVA系樹脂とは、ビニルエステル系化合物を重合して得られるポリビニルエステル系樹脂をケン化して得られるビニルアルコール構造単位を主体とする樹脂に対して、共重合や後反応等で変性基を導入した樹脂であり、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位とケン化されずに残存したビニルエステル構造単位に加え、共重合による不飽和単量体構造単位もしくは後反応による構造体単位から構成される。
【0034】
かかるビニルエステル系化合物としては、前記未変性PVA系樹脂の場合と同様の化合物を用いることができる。
【0035】
共重合による変性PVA系樹脂に用いられる、ビニルエステル系モノマーと共重合される不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ、又はジアルキルエステル等、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、N-アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(1-(メタ)アクリルアミド-1,1-ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン、3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類及びそのアシル化物等の誘導体等の共重合が挙げられる。
【0036】
また、後反応による変性PVA系樹脂としては、例えば、エチレンオキサイドとの反応によるポリアルキレンオキサイド基を有するエチレンオキサイド変性PVA系樹脂、ジケテンとの反応によるアセトアセチル基を有するジケテン変性PVA系樹脂、エポキシ化合物等との反応によるヒドロキシアルキル基を有するエポキシ変性PVA系樹脂、あるいは各種官能基を有するアルデヒド化合物等をエステル化、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、オキシアルキレン化等によってPVA系樹脂と反応させて得られたもの等を挙げることができる。
【0037】
また、変性PVA系樹脂としては、側鎖に一級水酸基を有するもので、例えば、側鎖の一級水酸基の数が、通常1~5個、好ましくは1~2個、特に好ましくは1個であるものも挙げられ、更には、一級水酸基以外にも二級水酸基を有するものが挙げられる。かかる変性PVA系樹脂としては、例えば、側鎖にヒドロキシアルキル基を有する変性PVA系樹脂、側鎖に1,2-ジオール構造単位を有する変性PVA系樹脂等が挙げられる。
【0038】
側鎖に1,2-ジオール構造単位を有する変性PVA系樹脂は、例えば、(i)酢酸ビニルと3,4-ジアセトキシ-1-ブテンとの共重合体をケン化する方法、(ii)酢酸ビニルとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(iii)酢酸ビニルと2,2-ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法、(iv)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法、等により製造することができる。
【0039】
前記ビニルエステル系化合物と、ビニルエステル系化合物と共重合可能な不飽和単量体との共重合方法としては、前記未変性PVA系樹脂の場合と同様の方法を用いることができ、通常、アルコールを溶媒とする溶液重合法により行われる。また、重合触媒、ケン化方法、ケン化触媒等も、前記未変性PVA系樹脂の場合と同様のものを適宜選択することができる。
【0040】
また、変性PVA系樹脂としては、例えば、カルボキシ基変性PVA系樹脂、スルホン酸変性PVA系樹脂、リン酸基変性PVA系樹脂等のアニオン性基変性PVA系樹脂が挙げられる。
【0041】
カルボキシ基変性PVA系樹脂は、任意の方法で製造することができ、例えば、(I)カルボキシ基を有する不飽和単量体とビニルエステル系化合物を共重合した後にケン化する方法、(II)カルボキシ基を有するアルコールやアルデヒドあるいはチオール等を連鎖移動剤として共存させてビニルエステル系化合物を重合した後にケン化する方法等を挙げることができる。前記(I)又は(II)の方法におけるビニルエステル系化合物としては、前述のものを用いることができるが、酢酸ビニルを用いることが好ましい。
【0042】
また、スルホン酸変性PVA系樹脂は、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等の共重合成分を、ビニルエステル系化合物と共重合した後、ケン化する方法、ビニルスルホン酸もしくはその塩、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸もしくはその塩等をPVAにマイケル付加させる方法等により、側鎖にスルホン酸基を有するスルホン酸変性PVA系樹脂を製造することができる。
【0043】
これら変性PVA系樹脂の変性量は、例えば、1~20モル%であることが好ましく、更に好ましくは1.5~15モル%、特に好ましくは2~12モル%である。
【0044】
PVA系樹脂(B)としては、未変性PVA系樹脂や変性PVA系樹脂から選択される1種のPVA系樹脂を用いてもよく、2種以上のPVA系樹脂を含有するPVA系樹脂を用いてもよい。例えば、1種以上の変性PVA系樹脂を含有する変性PVA系樹脂や、ケン化度、粘度、変性種、変性量のうち少なくとも1つが異なる2種以上のPVA系樹脂を含有するPVA系樹脂を用いてもよい。
【0045】
かかるPVA系樹脂(B)のなかでも、水分散体の粘度を好適に制御する観点から、変性PVA系樹脂が好ましい。変性PVA系樹脂のなかでも、スルホン酸変性PVA系樹脂、エチレンオキサイド変性PVA系樹脂が好ましく、特に好ましくはスルホン酸変性PVA系樹脂である。
【0046】
本水分散体で用いられるPVA系樹脂(B)の平均ケン化度は、70~99モル%であることが好ましく、特に好ましくは75~97モル%、更に好ましくは80~95モル%である。
変性PVA系樹脂を用いる場合、その平均ケン化度は、40~99モル%であることが好ましく、特に好ましくは60~97モル%、更に好ましくは70~95モル%である。
平均ケン化度が大きすぎると親水性が高くなりすぎ、その水溶液が脂肪酸ビスアミドと馴染まなくなる傾向があり、小さすぎるとPVA樹脂が水に溶解しなくなる傾向がある。
【0047】
本水分散体で用いられるPVA系樹脂(B)の平均重合度は、50~4000であることが好ましく、特に好ましくは100~3000、更に好ましくは150~1000である。
変性PVA系樹脂を用いる場合、その平均重合度は、50~5000であることが好ましく、特に好ましくは100~4000、更に好ましくは100~1000である。
平均重合度が大きすぎると水分散体の粘度が高くなる傾向があり、平均重合度が小さすぎると保護コロイド能力が低くなる傾向がある。
【0048】
本水分散体で用いられるPVA系樹脂(B)の4質量%水溶液粘度(20℃)は、例えば、0.5~400mPa・sであり、より好ましくは1~50mPa・sであり、更に好ましくは1.5~10mPa・sである。
変性PVA系樹脂を用いる場合、その4質量%水溶液粘度(20℃)は、例えば、0.5~600mPa・sであり、より好ましくは1~50mPa・sであり、更に好ましくは1.5~10mPa・sである。
4質量%水溶液粘度が大きすぎると水分散体の粘度が高くなる傾向があり、4質量%水溶液粘度が小さすぎると保護コロイド能力が低くなる傾向がある。
【0049】
前記の平均ケン化度はJIS K6726に準じて測定され、平均重合度はJIS K6726に準じて測定され、4質量%水溶液粘度はJIS K6726に準じて測定されるものである。
【0050】
本水分散体の全量(100質量%)に対するPVA系樹脂(B)の含有量は、0.1~20質量%が好ましく、より好ましくは1~15質量%であり、更により好ましくは、2~10質量%である。
【0051】
本水分散体において、脂肪酸ビスアミド(A)100質量部に対するPVA系樹脂(B)の含有量は、前述のとおり、本水分散体の粘度を好適に制御する観点から、2.5~10質量部であることが重要であり、好ましくは3.5~8質量部、より好ましくは4.5~7質量部である。
【0052】
〔界面活性剤(C)〕
本水分散体は、任意に界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、本水分散体において、通常、消泡剤、分散剤、レベリング剤等の少なくとも1つとしての機能を有する。
【0053】
界面活性剤(C)としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
前記アニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩等が挙げられる。
【0055】
前記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリアルキレングリコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルな等が挙げられる。
【0056】
前記アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-ジオール、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール等が挙げられる。
【0057】
本水分散体において、脂肪酸ビスアミド(A)100質量部に対する界面活性剤(C)の含有量は、例えば、0.01~10質量部が好ましく、より好ましくは0.05~7質量部、更により好ましくは0.08~5質量部である。界面活性剤(C)の含有量が多すぎると発泡の原因となる傾向があり、界面活性剤(C)の含有量が少なすぎると界面活性剤を使用することによる効果が十分得られない。
【0058】
本水分散体の全量(100質量%)に対する界面活性剤(C)の含有量は、例えば、0.001~1質量%が好ましく、より好ましくは0.005~0.8質量%であり、更により好ましくは、0.01~0.5質量%である。界面活性剤(C)の含有量が多すぎると発泡の原因となる傾向があり、界面活性剤(C)の含有量が少なすぎると界面活性剤を使用することによる効果が十分得られない。
【0059】
〔水〕
本水分散体は、分散媒として、少なくとも水を含有する。本水分散体の全量(100質量%)に対する水の含有量は、例えば、30~95質量%が好ましく、より好ましくは40~90質量%であり、更により好ましくは50~85質量%である。
【0060】
本水分散体は、水に加えて、水以外の分散媒を併用することもできる。但し、本水分散体における分散媒は、水を主成分とすることが好ましい。具体的には、本水分散体に含まれる分散媒の全体(100質量%)に対する水の含有量は、例えば、70~100質量%であり、80~100質量%が好ましく、より好ましくは90~100質量%、更により好ましくは95~100質量%、特に好ましくは100質量%である。
【0061】
なお、水以外の分散媒としては、水に相溶性のある有機溶媒、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコール等が挙げられる。
【0062】
〔その他の成分〕
本水分散体は、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の成分を含んでもよい。例えば、染料、顕色剤、増感剤(但し(A)成分を除く)、熱可融性物質、滑剤、填剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0063】
<水分散体>
本水分散体は、前述のとおり、脂肪酸ビスアミド(A)及びPVA系樹脂(B)、任意に界面活性剤(C)、その他の成分を含有する水分散体であって、前記脂肪酸ビスアミド(A)100質量部に対する前記PVA系樹脂(B)の含有量が、2.5~10質量部である。
【0064】
本水分散体の全体(100質量%)に対する固形分の含有量は、2~80質量%が好ましく、より好ましくは5~60質量%、更により好ましくは10~50質量%である。固形分の含有量が多すぎると高粘度となる傾向があり、固形分の含有量が少なすぎると、塗工後の乾燥工程が長くなる傾向がある。
【0065】
前記水分散体に含まれる固形分のうち、脂肪酸ビスアミド(A)の含有量としては、固形分の全体(100質量%)に対して、60~99.5質量%が好ましく、70~99質量%がより好ましく、更により好ましくは80~98質量%である。固形分中の脂肪酸ビスアミド(A)の含有量が少なすぎると発色感度が低下する等の傾向があり、多すぎると水と良好に混和しないため分散不良となる傾向がある。
【0066】
本水分散体に含まれる脂肪酸ビスアミド(A)の平均粒子径は、例えば、0.1~10.0μmであり、0.2~7.0μmが好ましく、より好ましくは0.5μm~5.0μmである。更により好ましくは、2.0μm以下であり、好ましくは0.8~2.0μm、特に好ましくは0.8~1.8μmである。当該範囲内であれば、例えば、発色感度が良好な感熱記録材料を提供できる。
脂肪酸ビスアミド(A)の平均粒子径が大きすぎると、例えば、増感剤としての効果が得られない傾向があり、平均粒子径が小さすぎると、凝集しやすくなる傾向がある。
【0067】
なお、前記平均粒子径は、例えば、動的光散乱法やレーザー回折・散乱法等を用いて測定することができる。具体的には、前記平均粒子径は、動的光散乱法やレーザー回折・散乱法を用いて、本水分散体の粒度分布を測定し、得られた分布結果に基づく算術平均により求めた体積平均粒子径(MV)である。具体的には、例えば、後記の実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0068】
本水分散体の23℃における粘度は、5000mPa・s以下が好ましく、0.5~3000mPa・sがより好ましく、更により好ましくは1~2000mPa・sである。かかる粘度が高すぎても低すぎても、塗工不良となる傾向がある。
【0069】
なお、前記粘度は、公知の方法により測定することができる。例えば、後記の実施例に記載のとおり、B型粘度計を用いて、液温23℃、回転数100rpm、スピンドルNO.5の条件下において測定することができる。
【0070】
〔用途〕
脂肪酸ビスアミド(A)は感熱記録材料において増感剤として使用することができるため、本水分散体は、感熱記録材料用の水分散体として好適に用いることができる。
すなわち、感熱記録材料用の水分散体の実施形態としては、例えば、増感剤及びPVA系樹脂を含有する増感剤含有水分散体であって、前記増感剤が脂肪酸ビスアミド(A)であり、前記脂肪酸ビスアミド(A)100質量部に対する前記PVA系樹脂(B)の含有量が2.5~10質量部である増感剤含有水分散体が挙げられる。
【0071】
また、本水分散体の実施形態としては、例えば、前記増感剤含有水分散体に対して、染料及び顕色剤を更に含有させてなる感熱記録層用の水分散体が挙げられる。
【0072】
〔水分散体の調製方法〕
本水分散体の調製方法としては、特に制限されないが、例えば、脂肪酸ビスアミド(A)、PVA系樹脂(B)、界面活性剤(C)、水、及びその他の成分を、ビーズミル(サンドミル)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、高圧乳化機等の各種撹拌機を用いて混合することによって調製することができる。
【0073】
また、例えば、感熱記録層用の水分散体は、例えば、増感剤である脂肪酸ビスアミド(A)、PVA系樹脂(B)、界面活性剤(C)、水、及びその他の成分を、ビーズミル(サンドミル)等を用いて混合することによって調製することができる。
【0074】
また、感熱記録層用の水分散体は、例えば、増感剤である脂肪酸ビスアミド(A)、PVA系樹脂(B)、界面活性剤(C)、水、及びその他の成分を、ビーズミル(サンドミル)等を用いて混合することによって増感剤含有水分散体を調製する一方、染料を分散させた染料含有水分散体、及び、顕色剤を分散させた顕色剤含有水分散体を別途調製し、これらの各分散体を混合して調製することもできる。
また、例えば、前記のように各水分散体を個々に調製することなく、増感剤、染料、顕色剤等を一括して配合し、各成分を混合し調製することもできる。
【0075】
なお、ビーズミルを用いて分散処理を行う方法において用いるビーズとしては、例えば、ガラス、アルミナ、ジルコニア、スチール、フリント石、有機樹脂等を原料とするビーズが挙げられる。前記ビーズの粒子径としては、適宜設定できるが、例えば、0.01~5mmが好適である。また、分散処理条件としては、適宜設定できるが、1000~4000rpm、0.5~10時間が好適である。分散処理後、ビーズを濾過等により除去することにより、所望の水分散体が得られる。
【0076】
〔感熱記録材料〕
本発明の一実施形態としては、本水分散体を塗工してなる層を有する感熱記録材料が挙げられる。具体的には、本水分散体を含む塗工液から構成される層、又は、本水分散体からなる塗工液から構成される層を有する感熱記録材料として特に好適である。
より具体的には、本水分散体を含む塗工液を塗工してなる感熱記録層、又は、本水分散体からなる塗工液を塗工してなる感熱記録層を有する感熱記録材料であることが好適であり、かかる感熱記録層は、例えば、本水分散体を含む塗工液、又は、本水分散体からなる塗工液を支持体上に塗工・乾燥することによって形成することができる。
【0077】
前記支持体としては、特に制限されないが、例えば、平板状、シート状等の任意の形状のものが挙げられる。また、支持体は、単層構造又は積層構造のいずれであってもよい。前記支持体を構成する材質としては、特に制限されないが、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、合成紙等の紙;セルロース誘導体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン等が挙げられる。
【0078】
前記塗工方法としては、特に制限されないが、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法等が挙げられる。
【0079】
前記感熱記録材料は、前記支持体上に形成された感熱記録層以外の他の層を有していてもよい。かかる他の層としては、例えば、粘着剤層、剥離層及び保護層等が挙げられる。
【0080】
<脂肪酸ビスアミドを含有する水分散体の粘度抑制方法>
本発明の一実施形態としては、脂肪酸ビスアミド(A)、PVA系樹脂(B)を含有する水分散体の粘度抑制方法であって、前記水分散体における脂肪酸ビスアミド(A)100質量部に対する前記PVA系樹脂(B)の含有量を2.5~10質量部に調整する工程を有する、水分散体の粘度抑制方法が挙げられる。
より具体的には、増感剤及びPVA系樹脂を含有する増感剤含有水分散体の粘度抑制方法であって、前記増感剤が脂肪酸ビスアミド(A)であり、前記脂肪酸ビスアミド(A)100質量部に対する前記PVA系樹脂(B)の含有量を2.5~10質量部に調整する工程と、脂肪酸ビスアミド(A)、PVA系樹脂(B)及び水を混合撹拌する工程を有する、増感剤含有水分散体の粘度抑制方法が挙げられる。
【実施例0081】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、質量基準を意味する。
【0082】
まず、下記原料を用意した。
<脂肪酸アミド>
・脂肪酸ビスアミド(a1)
エチレンビスステアリン酸アミド
・脂肪酸モノアミド(a’)
エチレンステアリン酸モノアミド
【0083】
<PVA系樹脂>
・PVA系樹脂(b1)
スルホン酸変性PVA系樹脂(三菱ケミカル社製、L-3266、ケン化度88モル%、4質量%水溶液粘度(20℃)2.5mPa・s)
・PVA系樹脂(b2)
エチレンオキサイド変性PVA系樹脂(三菱ケミカル社製、LW-100、ケン化度40モル%、40質量%水溶液粘度(25℃)1700mPa・s)
【0084】
<界面活性剤>
・界面活性剤(消泡剤)(c1)
アセチレングリコール系界面活性剤(日信化学工業社製、E1004)
【0085】
(実施例1)
脂肪酸ビスアミド(A)として、脂肪酸ビスアミド(a1)を100質量部と、PVA系樹脂(B)として、スルホン酸変性PVA系樹脂であるPVA系樹脂(b1)の10%水溶液を50質量部と、界面活性剤(C)として、界面活性剤(c1)を0.5質量部とを、水349.5質量部に配合し、ホモジナイザー(特殊機化工業社製、TKロボミックス)を用いて、3000rpm、5分間の条件にてプレ撹拌をした後、バッチ式ビーズミル(AIMEX社製、レディミルRMB)を用いて、分散処理を行い、水分散体(固形分21質量%)を得た。
〔バッチ式ビーズミルの処理条件〕
・使用ビーズ:直径0.5mm、材質ジルコニア
・ビーズ使用量:脂肪酸ビスアミド100質量部に対して200質量部
・回転数:2000rpm
・撹拌時間:90分間
【0086】
(実施例2)
界面活性剤(c1)の含有量を、後記の表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして水分散体を調製した。
【0087】
(実施例3)
PVA系樹脂の種別及び含有量を、後記の表1に示すとおりに変更した以外は、実施例2と同様にして水分散体を調製した。なお、PVA系樹脂(b1)とPVA系樹脂(b2)の含有割合(b1:b2)は1:1(2.5質量部:2.5質量部)である。
【0088】
(比較例1)
PVA系樹脂(b1)の含有量を、後記の表1に示すとおりに変更した以外は(固形分25質量%)、実施例1と同様にして水分散体を調製した。
【0089】
(比較例2)
脂肪酸ビスアミド(a1)を、脂肪酸モノアミド(a’)に変更した以外は、実施例2と同様にして水分散体を調製した。
【0090】
次に、各水分散体について、以下のとおり諸特性を評価した。
【0091】
〔粘度測定〕
前記のとおり水分散体を調製し、10分間静置した後、水分散体の粘度を、ブルックフィールド粘度計(英弘精機社製、RVDV2T)を用いて、スピンドルNo.5、回転数100rpm、23℃の条件にて測定した。その結果を表1に示す。
【0092】
〔平均粒子径測定〕
前記のとおり水分散体を調製し、10分間静置した後、前記で得られた水分散体に含まれる脂肪酸アミドの体積平均粒子径(MV)を、粒子径測定装置(Particle Sizing Systems社製、NICOMP 380ZLS)を用いて、23℃条件、GAUSSIAN換算VOLUME-Weightingを使用して測定した。その結果を表1に示す。
【0093】
【0094】
表1の比較例1のとおり、脂肪酸アミドとして脂肪酸ビスアミドを用いているものの、脂肪酸ビスアミドに対するPVA系樹脂の含有量が「2.5~10質量部」の範囲外である場合には、脂肪酸ビスアミドの分散が不十分であり、高粘度であることが確認された。
また、比較例2のとおり、脂肪酸アミド100質量部に対するPVA系樹脂の含有量が「2.5~10質量部」の範囲内であっても、脂肪酸アミドとして脂肪酸モノアミドを用いている場合には、高粘度であることが確認された。
他方、実施例1~3のとおり、脂肪酸アミドとして脂肪酸ビスアミドを用いていると共に、脂肪酸ビスアミド100質量部に対するPVA系樹脂の含有量を「2.5~10質量部」の範囲内に制御した場合には、脂肪酸ビスアミドが良好に分散しており、低粘度であることが確認された。