(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093522
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】加工装置の制御方法及び加工装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/02 20060101AFI20240702BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20240702BHJP
B24B 19/02 20060101ALI20240702BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240702BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20240702BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G01B11/02 G
B23Q17/24 A
B24B19/02
B24B49/12
B23K26/364
H01L21/78 M
H01L21/78 B
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209955
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】田母神 崇
【テーマコード(参考)】
2F065
3C029
3C034
3C049
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
2F065AA12
2F065AA30
2F065AA52
2F065BB02
2F065BB17
2F065BB22
2F065CC19
2F065CC31
2F065DD03
2F065FF52
2F065GG24
2F065HH04
2F065HH13
2F065JJ01
2F065JJ09
2F065MM16
2F065PP24
2F065QQ03
2F065QQ28
2F065QQ41
2F065UU06
3C029CC10
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB73
3C034BB93
3C034CA11
3C034CA22
3C034CB14
3C034DD10
3C049AA03
3C049AB04
3C049AC02
3C049BA07
3C049BB02
3C049BC01
3C049BC02
3C049CB01
4E168AD02
4E168CA06
4E168CB07
4E168CB15
4E168CB23
4E168HA01
5F063AA02
5F063AA41
5F063AA48
5F063BA07
5F063CB05
5F063CB06
5F063DD06
5F063DD17
5F063DE17
5F063DE23
5F063DE33
5F063DF06
5F063DF11
5F063DF19
5F063FF01
(57)【要約】
【課題】ワークの加工不良を防止可能な加工装置の制御方法及び加工装置を提供する。
【解決手段】ワークWの表面に加工溝を形成する加工装置(ダイシング装置10)の制御方法において、加工溝の形成前又は形成後に、ワークWの表面に形成されている単層又は複層の保護膜9の膜厚dを測定する。これにより、保護膜9の未塗布及び局所的な膜厚dのバラツキなどを管理したり、保護膜9の断面構成を把握してワークWの表面へのブレードの切込み量を管理したりすることができるので、ワークWの加工不良を防止することができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの表面に加工溝を形成する加工装置の制御方法において、
前記加工溝の形成前又は形成後に、前記ワークの表面に形成されている単層又は複層の保護膜の膜厚を測定する加工装置の制御方法。
【請求項2】
前記加工装置がレーザ加工により前記加工溝を形成する場合には、前記ワークの表面に塗布された前記保護膜の膜厚を測定する請求項1に記載の加工装置の制御方法。
【請求項3】
前記加工装置がブレードにより前記加工溝を形成する場合には、前記ワークの表面に元々形成されている前記保護膜の膜厚を測定する請求項1に記載の加工装置の制御方法。
【請求項4】
少なくとも白色干渉法を用いて前記保護膜の膜厚を測定する請求項1から3のいずれか1項に記載の加工装置の制御方法。
【請求項5】
前記ワークの表面に単層の前記保護膜が形成されている場合に、前記白色干渉法を用いて前記保護膜の表面の高さ位置である第1高さ位置を検出し、合焦法を用いて前記保護膜と前記ワークとの境界面の高さ位置である第2高さ位置を検出して、前記第1高さ位置及び前記第2高さ位置の検出結果に基づいて、前記保護膜の膜厚を測定する請求項4に記載の加工装置の制御方法。
【請求項6】
前記保護膜の表面の形状を表す複数の3次元座標データと、前記保護膜の裏面の形状を表す複数の3次元座標データと、を取得し、
前記保護膜の表面及び裏面の前記3次元座標データを、前記ワークの表面に対して垂直な2次元平面上に投影して前記保護膜の表面及び裏面の2次元投影データを生成し、
前記保護膜の表面及び裏面の2次元投影データに基づいて、前記保護膜の表面及び裏面の断面プロファイルを演算し、
前記保護膜の表面及び裏面の断面プロファイルに基づいて、前記保護膜の膜厚を演算する請求項1から3のいずれか1項に記載の加工装置の制御方法。
【請求項7】
ワークの表面に加工溝を形成する加工装置において、
前記加工溝の形成前又は形成後に、前記ワークの表面に形成されている単層又は複層の保護膜の膜厚を測定する膜厚測定部を備える加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの表面に加工溝を形成する加工装置の制御方法及び加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等のワークは、複数のデバイスが格子状のストリートによって格子状に区画されている。このワークをストリートに沿って分割することにより個々のデバイスが製造される。ワークを複数のデバイス(チップ)に分割するダイシング装置(加工装置)として、レーザ加工装置及びブレードダイサがよく知られている。
【0003】
レーザ加工装置は、ワークに対してレーザ光学系をストリートに沿った加工送り方向に相対移動させつつレーザ光学系からレーザ光をストリートに照射することでストリートに沿って加工溝を形成するレーザ加工(アブレーション溝加工ともいう)を実行する(特許文献1及び2参照)。ブレードダイサは、ワークに対して高速回転するブレードを相対移動させつつこの高速回転するブレードによりストリートに沿って加工溝を形成する切削加工を実行する(特許文献3参照)。
【0004】
特許文献1から特許文献3に記載のダイシング装置は、白色干渉顕微鏡、レーザ変位計、又は共焦点顕微鏡等の各種3次元形状測定部を用いて加工溝の形状を測定する。これにより、加工溝の品質及び位置精度を確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-085397号公報
【特許文献2】特開2015-099026号公報
【特許文献3】特開2022-037488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1及び特許文献2に記載のレーザ加工装置によりレーザ加工されるワークには、レーザ加工により発生するデブリがワークに付着することを防止するために、予めワークの表面に保護膜が塗布形成されている。この保護膜は、レーザ加工の完了後にワークから除去されるため、加工溝のように形状測定されてはいない。このため、ワークの表面上に形成された保護膜の実膜厚が管理されておらず、保護膜の未塗布及び膜厚バラツキを管理できないという問題がある。その結果、ワークの表面が保護膜により保護されずに、レーザ加工により発生したデブリがワークに付着して加工不良が発生するおそれがある。
【0007】
また、ブレードダイサにより切削加工されるワークの表面にもデバイスを保護するための単層又は複層の保護膜(窒化膜等)が元々形成されている。このブレードダイサによるワーク表面へのブレードの切込み量を管理(測定)する場合において、ワークのデバイス表層付近のどの膜の表面高さを基準として測定するのかが不明瞭になることがある。例えば、保護膜が複層であり、さらに最上層の保護膜が高い光透過性を有している場合には、最上層の保護膜の下層にある保護膜の表面が上述の基準として検出されるおそれがある。このため、ブレードの切込み量の管理が不十分となり、ワークの加工不良が発生するおそれがある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ワークの加工不良を防止可能な加工装置の制御方法及び加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を達成するための加工装置の制御方法は、ワークの表面に加工溝を形成する加工装置の制御方法において、加工溝の形成前又は形成後に、ワークの表面に形成されている単層又は複層の保護膜の膜厚を測定する。
【0010】
この加工装置の制御方法によれば、加工溝の形成前又は形成後に、加工装置においてワークの表面に形成されている単層又は複層の保護膜の膜厚を測定することができる。
【0011】
本発明の他の態様に係る加工装置の制御方法において、加工装置がレーザ加工により加工溝を形成する場合には、ワークの表面に塗布された保護膜の膜厚を測定する。これにより、保護膜の未塗布及び局所的な膜厚のバラツキなどを管理することができる。
【0012】
本発明の他の態様に係る加工装置の制御方法において、加工装置がブレードにより加工溝を形成する場合には、ワークの表面に元々形成されている保護膜の膜厚を測定する。これにより、保護膜の断面構成を把握可能であり、ワークの表面へのブレードの切込み量を管理することができる。
【0013】
本発明の他の態様に係る加工装置の制御方法において、少なくとも白色干渉法を用いて保護膜の膜厚を測定する。
【0014】
本発明の他の態様に係る加工装置の制御方法において、ワークの表面に単層の保護膜が形成されている場合に、白色干渉法を用いて保護膜の表面の高さ位置である第1高さ位置を検出し、合焦法を用いて保護膜とワークとの境界面の高さ位置である第2高さ位置を検出して、第1高さ位置及び第2高さ位置の検出結果に基づいて、保護膜の膜厚を測定する。これにより、保護膜の膜厚の測定精度を向上させることができる。
【0015】
本発明の他の態様に係る加工装置の制御方法において、保護膜の表面の形状を表す複数の3次元座標データと、保護膜の裏面の形状を表す複数の3次元座標データと、を取得し、保護膜の表面及び裏面の3次元座標データを、ワークの表面に対して垂直な2次元平面上に投影して保護膜の表面及び裏面の2次元投影データを生成し、保護膜の表面及び裏面の2次元投影データに基づいて、保護膜の表面及び裏面の断面プロファイルを演算し、保護膜の表面及び裏面の断面プロファイルに基づいて、保護膜の膜厚を演算する。これにより、保護膜の膜厚の測定精度を向上させることができる。
【0016】
本発明の目的を達成するための加工装置は、ワークの表面に加工溝を形成する加工装置において、加工溝の形成前又は形成後に、ワークの表面に形成されている単層又は複層の保護膜の膜厚を測定する膜厚測定部を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、ワークの加工不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態のダイシング装置のブロック図である。
【
図2】ダイシング装置によりレーザ加工されるワークの表面の断面拡大図である。
【
図3】白色干渉顕微鏡の一例を示した断面図である。
【
図4】第1実施形態のダイシング装置によるレーザ加工前(加工溝の形成前)の保護膜の膜厚測定処理の流れを示したフローチャートである。
【
図5】白色干渉顕微鏡の垂直走査中に制御装置が取得する干渉信号ISの信号強度の変化を説明するための説明図である。
【
図6】第1実施形態のダイシング装置によるレーザ加工後(加工溝の形成後)の保護膜の膜厚測定処理の流れを示したフローチャートである。
【
図7】第2実施形態のダイシング装置による保護膜の膜厚測定を説明するための説明図である。
【
図8】第2実施形態のダイシング装置によるレーザ加工前の保護膜の膜厚測定処理の流れを示したフローチャートである。
【
図9】第2実施形態のダイシング装置によるレーザ加工後(加工溝の形成後)の保護膜の膜厚測定処理の流れを示したフローチャートである。
【
図10】第3実施形態のダイシング装置の制御装置の機能ブロック図である。
【
図11】第3実施形態の制御装置による保護膜の膜厚演算処理を説明するための説明図である。
【
図12】第4実施形態のダイシング装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
図1は、本発明の加工装置に相当する第1実施形態のダイシング装置10のブロック図である。
図2は、ダイシング装置10によりレーザ加工されるワークWの表面の断面拡大図である。なお、図中のXYZ方向は互いに直交し、このうちX方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向(ワークWの厚み方向)である。またθ方向は、Z方向を回転軸とする回転方向である。
【0020】
図1及び
図2に示すように、第1実施形態のダイシング装置10は、半導体ウェーハなどのワークWを複数のチップに分割する割断プロセスの前工程として、ワークWのストリートに沿って加工溝を形成するレーザ加工を実行するレーザ加工装置である。また、ワークWの表面(後述の加工ヘッド16に対向する側の面)には、レーザ加工により発生するデブリがワークWに付着することを防止するために、スピンコートなどの公知の塗布方法で単層の保護膜9(
図2参照)が形成されている。この保護膜9はレーザーグルービングで使用される水溶性保護膜であり光透過性を有している。そして、ダイシング装置10は、レーザ加工による加工溝の形成前又は形成後に、保護膜9の膜厚dの測定を実行する。
【0021】
ダイシング装置10は、吸着ステージ12と、ステージ駆動部14と、加工ヘッド16と、制御装置18と、を備える。
【0022】
吸着ステージ12は、ワークWの表面とは反対側の裏面を吸着保持する。これにより、ワークWは、保護膜9が形成されている側の表面が加工ヘッド16に対向するように、吸着ステージ12に保持される。
【0023】
ステージ駆動部14は、モータ駆動機構及びリニアモータなどの公知のアクチュエータにより構成されており、吸着ステージ12をXYZ方向に移動させると共にθ方向に回転させる。これにより、吸着ステージ12上のワークWに対して加工ヘッド16をXYZθ方向に相対移動させることができる。なお、ワークWに対して加工ヘッド16をXYZθ方向に相対移動させる方法は特に限定されず、加工ヘッド16を移動させたり、或いは吸着ステージ12及び加工ヘッド16の双方を移動させたりしてもよい。
【0024】
加工ヘッド16は、ワークWのストリートのレーザ加工及び保護膜9の膜厚測定に用いられ、吸着ステージ12のZ方向上方側の位置(ワークWの表面に対向する位置)に配置されている。この加工ヘッド16は、レーザ光学系20、アライメント用顕微鏡22、及び白色干渉顕微鏡24を備える。なお、本実施形態ではレーザ光学系20、アライメント用顕微鏡22、及び白色干渉顕微鏡24が別体で設けられているが、これらの一部又は全てが一体化されていてもよい。
【0025】
レーザ光学系20は、後述の制御装置18の制御の下、ワークWのストリートに向けてレーザ光を照射する。なお、レーザ光学系20の構成及びレーザ光の種類について公知技術であるので、ここでは詳細な説明は省略する(例えば上記特許文献1及び特許文献2、特開2022-071402号公報等参照)。レーザ光学系20からワークWのストリートに向けてレーザ光を照射した状態で、ステージ駆動部14により吸着ステージ12(ワークW)を加工送り方向であるX方向に移動させることで、ストリートに沿って加工溝が形成される。
【0026】
アライメント用顕微鏡22(照明光源、カメラを含む)は、後述の制御装置18の制御の下、ワークWのレーザ加工前にはこのワークWに形成されているアライメント基準の撮影を実行し、ワークWのレーザ加工中にはその加工点を撮影する。アライメント用顕微鏡22がレーザ加工前に撮影したアライメント基準の撮影画像に基づいてワークWに対するレーザ光学系20のアライメントが実行される。また、アライメント用顕微鏡22がレーザ加工中に撮影した加工点の撮影画像に基づいて加工溝の加工状態等を判別可能である。
【0027】
図3は、本発明の膜厚測定部として機能する白色干渉顕微鏡24の一例を示した断面図である。
図3に示すように、白色干渉顕微鏡24はミラウ型白色干渉計であり、白色干渉法による保護膜9の膜厚測定に使用される。この白色干渉顕微鏡24は、ハウジング30と、白色光源31と、第1ビームスプリッタ32と、対物レンズ33と、ガラスプレート34と、第2ビームスプリッタ35と、撮像ユニット36と、を備える。
【0028】
ハウジング30は、第1ビームスプリッタ32と、対物レンズ33と、ガラスプレート34と、第2ビームスプリッタ35と、を収納する。このハウジング30内において、Z方向の下方側から上方側に向かって第2ビームスプリッタ35、ガラスプレート34、対物レンズ33、及び第1ビームスプリッタ32が設けられている。また、ハウジング30の側面には、第1ビームスプリッタ32の側方側の位置に白色光源31が取り付けられている。さらに、ハウジング30の上面には、第1ビームスプリッタ32の上方側の位置に撮像ユニット36が取り付けられている。
【0029】
白色光源31は、吸着ステージ12(ワークW)に対して白色干渉顕微鏡24が相対的にZ方向に垂直走査される間、第1ビームスプリッタ32に向けて白色光L1を出射する。第1ビームスプリッタ32は、白色光源31から入射した白色光L1の一部を対物レンズ33に向けて反射する。また、第1ビームスプリッタ32は、対物レンズ33から入射した後述の干渉光L4の一部を透過して撮像ユニット36に向けて出射する。
【0030】
対物レンズ33は、第1ビームスプリッタ32から入射した白色光L1をワークWに集光させる。
【0031】
ガラスプレート34は、その中央部に参照面として機能するミラー34aを備える。ガラスプレート34(ミラー34aを除く)は、対物レンズ33から入射した白色光L1をそのまま透過して第2ビームスプリッタ35に向けて出射する。
【0032】
第2ビームスプリッタ35は、対物レンズ33によって集光された白色光L1を測定光L2と参照光L3とに分割し、測定光L2を透過してワークWの表面に向けて照射すると共に参照光L3をミラー34aに向けて反射する。第2ビームスプリッタ35を透過した測定光L2は、保護膜9の表面と、保護膜9の裏面(保護膜9とワークWの表面との境界面)とで反射されて第2ビームスプリッタ35に入射する。また、ミラー34aで反射された参照光L3は、第2ビームスプリッタ35に入射してこの第2ビームスプリッタ35にてその一部が反射される。これにより、測定光L2と参照光L3との干渉光L4が生成される。この干渉光L4は、ガラスプレート34、対物レンズ33、及び第1ビームスプリッタ32を経て撮像ユニット36に入射する。
【0033】
ここで参照光L3の光路長は一定であるが、測定光L2の光路長は白色干渉顕微鏡24の垂直走査に応じて変化する。なお、公知のように、対物レンズ33の焦点が各種被測定物[ここでは保護膜9の表面、保護膜9の裏面(境界面)]に合った場合に、測定光L2及び参照光L3の光路長差がゼロ(ほぼゼロを含む)となり、測定光L2及び参照光L3の干渉が強め合う。その結果、干渉光L4の信号強度が高くなる。
【0034】
撮像ユニット36は、複数の画素(受光素子)がXY方向に2次元配列されたCCD(Charge Coupled Device)型又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の2次元撮像素子を備える。この撮像ユニット36は、白色干渉顕微鏡24が1垂直走査(複数回でも可)される間、第1ビームスプリッタ32から入射した干渉光L4を画素ごとに撮像することで、画素ごとに干渉光L4を検出(取得)して画素ごとの干渉光L4を制御装置18へ出力する。
【0035】
なお、本実施形態では、白色干渉顕微鏡24としてミラウ型干渉計を例に挙げて説明したが、例えばマイケルソン型干渉計などの各種被測定物の形状測定に使用される各種干渉計(干渉顕微鏡)を使用してもよい。
【0036】
図1に戻って、制御装置18は、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御装置18の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0037】
制御装置18は、ダイシング装置10の各部を統括制御して、ワークWのストリートに対するレーザ光学系20のアライメント及びストリートのレーザ加工を制御する。
【0038】
制御装置18は、アライメント時にはステージ駆動部14を駆動してアライメント用顕微鏡22の撮影範囲内にワークWのアライメント基準が含まれるようにワークWの位置調整を行った後、アライメント用顕微鏡22によるアライメント基準の撮影を実行させる。そして、制御装置18は、アライメント用顕微鏡22から出力されたアライメント基準の撮影画像に基づいて公知の方法でワークWとレーザ光学系20とのXYZ方向の相対位置関係を検出する。次いで、制御装置18は、この相対位置関係の検出結果に基づいて、ステージ駆動部14を駆動してワークWのストリートの加工開始位置にレーザ光学系20の光軸を位置合わせするアライメントを実行する。
【0039】
また、制御装置18は、ワークWのストリートのレーザ加工時には、上述のアライメント完了後にレーザ光学系20からストリートに対してレーザ光を照射させながら、ステージ駆動部14を駆動してワークWをX方向に移動させることで、ストリートに沿って加工溝を形成する。そして、制御装置18は、1ストリート分のレーザ加工が完了すると、ステージ駆動部14を駆動して次のストリートの加工開始位置にレーザ光学系20の光軸を位置合わせした後、レーザ光学系20からのレーザ光の照射と、ステージ駆動部14によるワークWのX方向の移動と、を繰り返し実行させる。以下同様にして、制御装置18は全てのストリートのレーザ加工を実行させる。
【0040】
さらに、制御装置18は、レーザ加工前(加工溝の形成前)又はレーザ加工後(加工溝の形成後)に、ステージ駆動部14及び白色干渉顕微鏡24を制御して、白色干渉法による保護膜9の膜厚測定を実行する。
【0041】
図4は、本発明の加工装置の制御方法に係る、第1実施形態のダイシング装置10によるレーザ加工前(加工溝の形成前)の保護膜9の膜厚測定処理の流れを示したフローチャートである。
【0042】
図4に示すように、保護膜9が塗布されたワークWが吸着ステージ12上にセットされると(ステップS1)、制御装置18は保護膜9の膜厚測定処理を開始する。最初に制御装置18は、ステージ駆動部14を制御してワークWのXY方向位置を調整することで、ワークWの任意或いは予め指定された測定エリアに白色干渉顕微鏡24の光軸を位置合わせする。
【0043】
次いで、制御装置18は、ステージ駆動部14を制御して白色干渉顕微鏡24の垂直走査(ステップS2)を開始させる。また同時に制御装置18は、白色干渉顕微鏡24の白色光源31からの白色光L1の出射と、撮像ユニット36による干渉光L4の撮像及び干渉信号ISの出力と、を実行させる。これにより、制御装置18は、白色干渉顕微鏡24の垂直走査が実行されている間、撮像ユニット36からその画素ごとに干渉信号ISを連続的に取得する(ステップS3、ステップS4でNO)。
【0044】
図5は、白色干渉顕微鏡24の垂直走査中に制御装置18が取得する干渉信号ISの信号強度の変化を説明するための説明図である。
図5に示すように、白色干渉顕微鏡24の垂直走査中に対物レンズ33の焦点が保護膜9の表面に合った場合と保護膜9の裏面に合った場合とにおいて、測定光L2及び参照光L3の光路長差がほぼゼロとなるので干渉信号ISの強度が高くなる。このため、制御装置18は、干渉信号ISの強度が高くなる白色干渉顕微鏡24のZ方向位置(高さ位置)を検出することで、保護膜9の表面のZ方向位置である第1高さ位置H1と、保護膜9の裏面(保護膜9とワークWの表面との境界面)のZ方向位置である第2高さ位置H2と、を演算することができる。また、制御装置18は、第1高さ位置H1と第2高さ位置H2との差分を演算することで保護膜9の膜厚dを演算することができる。
【0045】
図4に戻って、白色干渉顕微鏡24の垂直走査が完了すると(ステップS4でYES)、制御装置18は、この垂直走査中の白色干渉顕微鏡24のZ方向位置と撮像ユニット36の画素ごとに取得した干渉信号ISと、に基づいて、撮像ユニット36の画素ごとに、保護膜9の表面の第1高さ位置H1及び裏面の第2高さ位置H2を演算する(ステップS5)。
【0046】
次いで、制御装置18は、撮像ユニット36の画素ごとに、第1高さ位置H1と第2高さ位置H2の高さ位置との差分を演算することで、上述の測定エリア内の保護膜9の膜厚d(膜厚分布)を演算する(ステップS6)。これにより、保護膜9の未塗布及び局所的な膜厚dのバラツキなどを管理することができる。
【0047】
保護膜9の膜厚測定が完了すると、制御装置18は、ステージ駆動部14及びアライメント用顕微鏡22を制御してワークWのストリートの加工開始位置に対するレーザ光学系20の光軸のアライメントを実行させた後、ステージ駆動部14及びレーザ光学系20を制御してストリートに対するレーザ加工を実行させる(ステップS7)。保護膜9の未塗布及び局所的な膜厚dのバラツキなどが管理されているので、レーザ加工により発生したデブリがワークWに付着して加工不良が発生することが防止される。またレーザ加工後の溝測定においても、保護膜9の膜厚を考慮した深さ算出を行うことで膜厚を除いた真の加工溝の加工深さを測定できる。
【0048】
図6は、本発明の加工装置の制御方法に係る、第1実施形態のダイシング装置10によるレーザ加工後(加工溝の形成後)の保護膜9の膜厚測定処理の流れを示したフローチャートである。
図6に示すように、ワークWのレーザ加工前に
図4に示した保護膜9の膜厚測定処理(ステップS2からステップS6)を実行する代わりに、ワークWのレーザ加工後(ステップS1A)に保護膜9の膜厚測定処理(ステップS2からステップS6)を実行してもよい。
【0049】
以上のように第1実施形態のダイシング装置10では、レーザ加工前又はレーザ加工後にワークWの表面上に塗布された保護膜9の膜厚を測定することで、保護膜9の未塗布及び局所的な膜厚dのバラツキなどを管理することができ、その結果、ワークWの加工不良の発生が防止される。またレーザ加工後の溝測定においても、保護膜9の膜厚を考慮した深さ算出を行うことで膜厚を除いた真の加工溝の加工深さを測定できる。
【0050】
なお、上記第1実施形態では保護膜9が単層である場合を例に挙げて説明したが、保護膜9が複層であってもよい。この場合には、白色干渉顕微鏡24の対物レンズ33の焦点が、最上層の保護膜9の表面、各保護膜9の境界面、及び最下層の保護膜9の裏面(ワークWの表面との境界面)にそれぞれ合った場合に、干渉信号ISの強度が高くなる。このため、制御装置18は、干渉信号ISの強度が高くなる白色干渉顕微鏡24のZ方向位置(高さ位置)を検出することで、各保護膜9の表裏面の高さ位置をそれぞれ演算することができ、その結果、各保護膜9の膜厚を個別に演算することができる。
【0051】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態のダイシング装置10による保護膜9の膜厚測定を説明するための説明図である。
図7の符号7Aに示すように、上記第1実施形態のダイシング装置10では、白色干渉法(白色干渉顕微鏡24)を用いて保護膜9の表裏面の第1高さ位置H1及び第2高さ位置H2の両方を測定している。この際に、白色干渉法は保護膜9の表面のような平坦面の高さ位置の測定には適しているが、凹凸面の高さ位置の測定には適してない。具体的には保護膜9の裏面、すなわち保護膜9とワークWの表面との境界面が、ワークWの表面に形成されているストリートのパターン等の影響で凹凸面になっている場合には、保護膜9の裏面に対応する干渉信号ISにノイズ等の外乱が発生するおそれがある。また、保護膜9の裏面の干渉信号ISの強度は、保護膜9の表面の干渉信号ISの強度よりも低下するおそれがある。このため、白色干渉法では第2高さ位置H2が正確に測定されないおそれがある。
【0052】
そこで、
図7の符号7Bに示すように、第2実施形態のダイシング装置10では、保護膜9の表面の第1高さ位置H1については第1実施形態と同様に白色干渉法を用いて測定するが、保護膜9の裏面の第2高さ位置H2については合焦法(フォーカスバリエーション法)を用いて測定する。
【0053】
合焦法は、凹凸のある被測定面(ここでは保護膜9の裏面)の形状測定に適した方法である。例えば第2実施形態では、制御装置18の制御の下、本発明の膜厚測定部として機能するアライメント用顕微鏡22を垂直走査しながらアライメント用顕微鏡22による保護膜9及びワークWの撮影を繰り返し実行して、アライメント用顕微鏡22により撮影された複数の撮影画像の画素ごとに合焦度EV(評価値)を演算する(例えば特開2021-124429号公報参照)。そして、制御装置18により各撮影画像の同一座標の画素ごとに合焦度が最大になるZ方向位置を決定することで、保護膜9の裏面の3次元形状(3次元座標群)が得られ、その結果、保護膜9の裏面の第2高さ位置H2も求められる。
【0054】
第2実施形態のダイシング装置10は、上記第1実施形態のダイシング装置10と基本的に同じ構成であるので、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。なお、第2実施形態のダイシング装置10では、合焦法にアライメント用のアライメント用顕微鏡22を利用しているが、専用の撮影装置を別途設けてもよいし、或いは白色干渉顕微鏡24のガラスプレート34(ミラー34a)を挿脱可能にすることで白色干渉顕微鏡24による合焦法の測定を可能にしてもよい。また、第2実施形態では、ワークWの表面上に形成される保護膜9は単層であるものとする。
【0055】
第2実施形態の制御装置18は、レーザ加工前又はレーザ加工後に、ステージ駆動部14、アライメント用顕微鏡22、及び白色干渉顕微鏡24を制御して、白色干渉法による保護膜9の表面の第1高さ位置H1の測定と、合焦法による保護膜9の裏面の第2高さ位置H2の測定と、を実行することで、保護膜9の膜厚測定を実行する。
【0056】
図8は、本発明の加工装置の制御方法に係る、第2実施形態のダイシング装置10によるレーザ加工前の保護膜9の膜厚測定処理の流れを示したフローチャートである。
図8に示すように、第1実施形態と同様に、レーザ加工前のワークWが吸着ステージ12上にセットされると(ステップS1)、制御装置18が、ステージ駆動部14を制御してワークWのXY方向位置を調整することで、ワークWの測定エリアにアライメント用顕微鏡22及び白色干渉顕微鏡24のそれぞれの光軸を位置合わせする。
【0057】
次いで、制御装置18は、ステージ駆動部14を制御して吸着ステージ12及びワークWをZ方向に移動させることで、白色干渉顕微鏡24及びアライメント用顕微鏡22の垂直走査(ステップS2A)を開始させる(両者の垂直走査は同時でなくてもよい)。また同時に制御装置18は、白色干渉顕微鏡24による白色光L1の出射、干渉光L4の撮像、及び干渉信号ISの出力と、アライメント用顕微鏡22による撮影と、を実行させる。これにより、制御装置18は、垂直走査される白色干渉顕微鏡24の撮像ユニット36からその画素ごとに干渉信号ISを連続的に取得すると共に、垂直走査されるアライメント用顕微鏡22から保護膜9等の撮影画像を連続的に取得する(ステップS3A、ステップS4AでNO)。
【0058】
白色干渉顕微鏡24及びアライメント用顕微鏡22の垂直走査が完了すると(ステップS4AでYES)、制御装置18は、第1実施形態と同様に垂直走査中の白色干渉顕微鏡24のZ方向位置と撮像ユニット36の画素ごとに取得した干渉信号ISと、に基づいて、撮像ユニット36の画素ごとに保護膜9の表面の第1高さ位置H1を演算する。また、制御装置18は、アライメント用顕微鏡22により撮影された複数の撮影画像の画素ごとに合焦度EVを演算して、各撮影画像の同一座標の画素ごとに合焦度が最大になるZ方向位置を決定することで、この画素ごとに保護膜9の裏面(境界面)の第2高さ位置H2を演算する(ステップS5A)。これにより、保護膜9の表面の第1高さ位置H1の測定に適した白色干渉法と、保護膜9の裏面の第2高さ位置H2の測定に適した合焦法と、を組み合わせて保護膜9の膜厚測定を実行することができる。
【0059】
以下、第1実施形態(
図4参照)と同様に、制御装置18による保護膜9の膜厚dの演算が実行された後(ステップS6)、レーザ光学系20等によるワークWのストリートに対するレーザ加工が実行される(ステップS7)。
【0060】
図9は、本発明の加工装置の制御方法に係る、第2実施形態のダイシング装置10によるレーザ加工後(加工溝の形成後)の保護膜9の膜厚測定処理の流れを示したフローチャートである。
図9に示すように、第1実施形態(
図6参照)と同様に、ワークWのレーザ加工後(ステップS1A)に第2実施形態の保護膜9の膜厚測定処理(ステップS2AからステップS6)を実行してもよい。
【0061】
以上のように第2実施形態では、保護膜9の表面の第1高さ位置H1の測定に適した白色干渉法と、保護膜9の裏面の第2高さ位置H2の測定に適した合焦法と、を組み合わせて保護膜9の膜厚測定を実行することで、第1実施形態よりも保護膜9の膜厚dの測定精度を向上させることができる。また、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0062】
[第3実施形態]
図10は、第3実施形態のダイシング装置10の制御装置18の機能ブロック図である。第3実施形態のダイシング装置10は、垂直走査中の白色干渉顕微鏡24のZ方向位置と撮像ユニット36の画素ごとに取得した干渉信号ISと、に基づいて、上記第1実施形態とは異なる方法で保護膜9の膜厚dを演算する。なお、第3実施形態のダイシング装置10は、制御装置18が座標データ取得部40、投影データ生成部42、断面プロファイル生成部44、及び膜厚演算部46として機能する点を除けば、上記第1実施形態のダイシング装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0063】
図11は、第3実施形態の制御装置18(座標データ取得部40、投影データ生成部42、断面プロファイル生成部44、及び膜厚演算部46)による保護膜9の膜厚演算処理を説明するための説明図である。
【0064】
図11及び既述の
図10に示すように、座標データ取得部40は、白色干渉顕微鏡24の垂直走査中に、白色干渉顕微鏡24のZ方向位置と、撮像ユニット36の画素(XY座標)ごとに出力された干渉信号ISと、を取得する。そして、座標データ取得部40は、白色干渉顕微鏡24のZ方向位置と撮像ユニット36の画素(XY座標)ごとの干渉信号ISとに基づいて、測定エリア内での保護膜9の表面の形状を表す3次元座標データ群50Aと、測定エリア内での保護膜9の裏面の形状を表す3次元座標データ群50Bと、を取得する。これら3次元座標データ群50A,50Bは、それぞれ複数の3次元座標データ(XYZ座標データ)により構成される点群データ(ドットデータ群)である。
【0065】
投影データ生成部42は、保護膜9の表裏面の3次元座標データ群50A,50Bの各ドットを、ワークWの表面(保護膜9の表裏面)に対して垂直な仮想の2次元平面、例えば加工送り方向であるX方向に対して垂直な仮想の2次元平面52上(YZ平面上)に投影して、保護膜9の表裏面に対応する2次元投影データ54A,54Bを生成する。2次元投影データ54A,54Bには、X方向に沿った保護膜9の表裏面の凹凸が反映されている。
【0066】
断面プロファイル生成部44は、投影データ生成部42が生成した保護膜9の表裏面の2次元投影データ54A,54Bに対して、ノイズ除去処理及び統計処理などを施すことで、保護膜9の表裏面の断面プロファイルを演算する。ここで、2次元投影データ54A,54BにはX方向に沿った保護膜9の表裏面の凹凸が反映されている。このため、2次元投影データ54A,54Bには同一Y座標で複数のZ位置に保護膜9の表裏面の情報があらわれるが、2次元投影データ54A,54Bをノイズ除去及び統計処理することにより確度の高い保護膜9の表裏面の断面プロファイルが得られる。
【0067】
ここで、白色干渉顕微鏡24による保護膜9の膜厚測定中に振動が生じると、その測定結果(3次元座標データ群50A,50B)にばらつきが生じてしまう。例えば、ダイシング装置10には、高精度・高耐久性を目的としてステージ駆動部14にエアガイド/リニアモータを用いる場合があるが、この場合には吸着ステージ12の規制力が弱くなる。このため、ダイシング装置10の設置床環境での外乱振動、及びダイシング装置10に搭載された他ユニット(スピン洗浄等)による振動などにより、保護膜9の膜厚測定中に吸着ステージ12が微揺動する場合には、保護膜9の膜厚測定結果に誤差(ばらつき)が生じてしまう。
【0068】
このような問題に対しては高剛性のステージを設計する必要があるが、本実施形態のように断面プロファイルを演算することで、ダイシング装置10が許容できる精度レベルの振動抑制を行っておけば、3次元座標データ群50A,50BをX方向に積算・投影する効果により統計的な解析が可能となりロバスト性の向上を実現できる。その結果、第1実施形態よりも保護膜9の膜厚dの測定精度を向上させることができる。
【0069】
膜厚演算部46は、断面プロファイル生成部44が生成した保護膜9の表裏面の断面プロファイルに基づいて、保護膜9の膜厚dを演算する。
【0070】
以上のように第3実施形態のダイシング装置10では、保護膜9の表裏面の3次元座標データ群50A,50Bから保護膜9の表裏面の2次元投影データ54A,54Bを生成し、さらに2次元投影データ54A,54Bから保護膜9の表裏面の断面プロファイルを演算することで、保護膜9の膜厚dの測定精度を向上させることができる。また、ワークWへの加工溝の形成後に保護膜9の膜厚測定を実行する場合には、測定エリア内に加工溝を含めることで、加工溝の形状を表す3次元座標データ群の取得、加工溝の2次元投影データの生成、及び加工溝の断面プロファイルの生成も同時に実行することができる。
【0071】
なお、第3実施形態のダイシング装置10では、白色干渉法を用いて保護膜9の表裏面の3次元座標データ群50A,50Bを取得しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば第3実施形態のダイシング装置10が、上記第2実施形態のダイシング装置10と同様に、白色干渉法を用いて保護膜9の表面の3次元座標データ群50Aを取得し、合焦法を用いて保護膜9の裏面の3次元座標データ群50Bを取得してもよい。これにより、保護膜9の膜厚dの測定精度をより向上させることができる。
【0072】
[第4実施形態]
図12は、第4実施形態のダイシング装置10のブロック図である。上記各実施形態では、ダイシング装置10としてレーザ加工装置を例に挙げて説明したが、
図12に示すように、ブレードを用いてワークWのストリートに対して切削加工を行うダイシング装置10(ブレードダイサ)にも本発明を適用可能である。
【0073】
ここで第4実施形態のダイシング装置10(ブレードダイサ)により切削加工されるワークWの表面上に形成されている保護膜9は、上記各実施形態で説明したレーザ加工用の保護膜9とは異なり、パッシベーション膜(窒化膜など)ワークWの表面に元々形成されている単層又は複層の膜である。
【0074】
第4実施形態のダイシング装置10は、レーザ光学系20の代わりにツインスピンドルダイサ60(スピンドルダイサであればツインスピンドルダイサ60ではなくてもよい)を備える点を除けば、上記各実施形態のダイシング装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0075】
ツインスピンドルダイサ60は、一対の円盤状のブレードと、一対のブレードをそれぞれ高速回転させる一対のスピンドルモータと、を備える。なお、ツインスピンドルダイサ60の構成については公知技術(上記特許文献3参照)であるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0076】
第4実施形態の制御装置18は、ツインスピンドルダイサ60による切削加工前(加工溝の形成前)又は切削加工後(加工溝の形成後)に、上記各実施形態と同様に、ダイシング装置10の各部を制御して保護膜9の膜厚測定処理を実行する。
【0077】
以上のように第4実施形態のダイシング装置10においても、切削加工前又は切削加工後にワークWの表面上に元々形成されている保護膜9の膜厚を測定することできる。第4実施形態のダイシング装置10のようなブレードダイサでは、ワークWの表面へのブレードの切込み量を管理しているが、例えば保護膜9が複層であり、さらに最上層の保護膜9が透明である場合にはその下層の保護膜9の表面が最上層の保護膜9の表面として検出される場合がある。この際に第4実施形態のダイシング装置10のように各保護膜9の膜厚dを測定することで、各保護膜9の断面構成を把握可能であり、その結果、どの保護膜9を切込み量の管理の基準とするのかを明確に定義することができる。その結果、ブレードの切込み量の管理が不十分となりワークの加工不良が発生することが防止される。
【0078】
[その他]
上記各実施形態では、白色干渉法或いは合焦法を用いてワークWの表面上の保護膜9の膜厚測定を実行しているが、公知の他の方法(膜厚測定部)を用いてワークWの表面上の保護膜9の膜厚測定を実行してもよい。
【0079】
上記各実施形態では、ダイシング装置10(加工装置)においてワークWの表面上の保護膜9の膜厚測定を実行しているが、ダイシング装置10とは別体の保護膜9の膜厚測定装置を用いてワークWの表面上の保護膜9の膜厚測定(膜厚測定方法)を実行してもよい。
【符号の説明】
【0080】
9…保護膜
10…ダイシング装置
12…吸着ステージ
14…ステージ駆動部
16…加工ヘッド
18…制御装置
20…レーザ光学系
22…アライメント用顕微鏡
24…白色干渉顕微鏡
30…ハウジング
31…白色光源
32…第1ビームスプリッタ
33…対物レンズ
34…ガラスプレート
34a…ミラー
35…第2ビームスプリッタ
36…撮像ユニット
40…座標データ取得部
42…投影データ生成部
44…断面プロファイル生成部
46…膜厚演算部
50A…3次元座標データ群
50B…3次元座標データ群
52…2次元平面
54A…2次元投影データ
54B…2次元投影データ
60…ツインスピンドルダイサ
EV…合焦度
H1…第1高さ位置
H2…第2高さ位置
IS…干渉信号
L1…白色光
L2…測定光
L3…参照光
L4…干渉光
W…ワーク
d…膜厚