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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093653
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】粉状組成物及び液状食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20240702BHJP
   A23L 23/10 20160101ALI20240702BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240702BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20240702BHJP
   A23L 23/00 20160101ALN20240702BHJP
   A23L 35/00 20160101ALN20240702BHJP
   A23L 29/212 20160101ALN20240702BHJP
【FI】
A23L7/10 Z
A23L23/10
A23L5/00 D
A23L5/10 C
A23L23/00
A23L35/00
A23L29/212
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210170
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100202603
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】森 利弥
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 みゆき
【テーマコード(参考)】
4B023
4B025
4B035
4B036
【Fターム(参考)】
4B023LE26
4B023LG06
4B023LK08
4B023LK13
4B025LB23
4B025LD02
4B025LD03
4B025LG04
4B025LG27
4B025LG28
4B025LG44
4B025LG45
4B025LP01
4B025LP06
4B025LP10
4B025LP20
4B035LC12
4B035LE01
4B035LE03
4B035LG21
4B035LG26
4B035LG35
4B035LG40
4B035LK12
4B035LP16
4B035LP21
4B035LP36
4B036LE01
4B036LE02
4B036LF01
4B036LF04
4B036LG01
4B036LH11
4B036LH12
4B036LH22
4B036LH29
4B036LH35
4B036LP01
(57)【要約】
【課題】本開示の目的は、マイクロ波加熱を用いて小麦粉特有のとろりとした粘性を有する液状食品を調理可能な小麦粉含有粉状組成物を提供すること、及び上記粉状組成物を用いる液状食品の製造方法を提供することを含む。
【解決手段】本開示は、液体中でのマイクロ波加熱によって液状食品を提供するための粉状組成物を提供する。粉状組成物は、小麦粉を含む第1固体材料と、上記第1固体材料とは独立に存在しており、かつ、マイクロ波加熱された液体における上記小麦粉の分散性を向上させる第2固体材料と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉を含む第1固体材料と、
前記第1固体材料とは独立に存在しており、かつ、マイクロ波加熱された液体における前記小麦粉の分散性を向上させる第2固体材料と、を含む、
液体中でのマイクロ波加熱によって液状食品を提供するための粉状組成物。
【請求項2】
前記小麦粉の総質量に対する前記第2固体材料の総質量の比が、0.5~2.0の範囲内である、請求項1に記載の粉状組成物。
【請求項3】
前記第2固体材料の総質量が、100質量部の粉状組成物に対して、15質量部~30質量部の範囲内である、請求項1又は請求項2に記載の粉状組成物。
【請求項4】
前記第2固体材料が、水溶性α化デンプン及びシトラスファイバーからなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む、請求項1又は請求項2に記載の粉状組成物。
【請求項5】
前記水溶性α化デンプンが、α化リン酸架橋デンプン、α化ヒドロキシプロピルデンプン、α化アセチル化アジピン酸架橋デンプン、α化アセチル化リン酸架橋デンプン及びα化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンからなる群より選択される少なくとも1つの水溶性α化デンプンを含む、請求項4に記載の粉状組成物。
【請求項6】
前記第2固体材料が、水溶性α化デンプンを含む造粒物である、請求項1又は請求項2に記載の粉状組成物。
【請求項7】
前記第1固体材料及び前記第2固体材料の各々とは独立に存在しており、かつ、前記第1固体材料及び前記第2固体材料の各々とは異なる第3固体材料を更に含み、前記第3固体材料が多孔質材料である、請求項1又は請求項2に記載の粉状組成物。
【請求項8】
前記多孔質材料が、不溶性α化デンプン及びセルロースからなる群より選択される少なくとも1つの多孔質材料を含む、請求項7に記載の粉状組成物。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載の粉状組成物を準備することと、
前記粉状組成物と液体とを混合して、混合物を得ることと、
前記混合物にマイクロ波を照射して、前記混合物を加熱することと、を含む、
液状食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は粉状組成物及び液状食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
簡単な調理によって飲食可能な即席食品は、粉状組成物の形態で提供されることがある。例えば、粉状組成物は、熱湯と混合されて、スープ及びソースといった液状食品を提供できる。
【0003】
下記特許文献1は、熱湯を注ぐことにより煮込まずにスープ又はソースを作るための即席食品を開示している。即席食品は、小麦粉及び馬鈴薯澱粉並びに調味料を含有する粉粒物を含む。
【0004】
下記特許文献2は、顆粒状組成物及び粉末状組成物を含む、溶媒を添加して食品を調製するための組成物を開示している。顆粒状組成物は、穀粉と、油脂と、α化澱粉と、第1の澱粉分解物とを含み、粉末状組成物は、第2の澱粉分解物を含む。
【0005】
熱湯の代わりに電子レンジを用いる調理に使用される組成物も提案されている。下記特許文献3は、増粘多糖類と、油脂と、を含む、電子レンジ調理用組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-006742号公報
【特許文献2】特開2020-198856号公報
【特許文献3】特開2021-023153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、煮込んで作るスープ及びソースといった液状食品には小麦粉が使用される。小麦粉を使用した液状食品は、小麦由来の優れた風味を有する。液体中で小麦粉を加熱及び煮込む過程で小麦粉のデンプンが糊化し、特徴的なとろみを液体に与えることができる。例えば、小麦粉を液体に加えて煮込むことで、粘度が高いにもかかわらず、粘着性がなく、糸を引かず、とろりとした切れの良い粘性を液体に与えることができる。このため、小麦粉を使用した液状食品は、非常においしく、好ましい食感を有する。
【0008】
マイクロ波加熱による液状食品の調理は、小麦粉のおいしさを手軽に提供できる可能性を有している。例えば、マイクロ波加熱は、電子レンジによって実施される。しかしながら、小麦粉を含む粉状組成物は、マイクロ波加熱による液状食品の調理に適していない。例えば、小麦粉を含む粉状組成物を水と混合し、次に電子レンジ内で加熱しても、目標のとろみが得られないことがある。
【0009】
本開示の目的は、マイクロ波加熱を用いて小麦粉特有のとろりとした粘性を有する液状食品を調理可能な小麦粉含有粉状組成物を提供すること、及び上記粉状組成物を用いる液状食品の製造方法を提供することを含む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は以下の実施形態を包含する。
<1> 小麦粉を含む第1固体材料と、上記第1固体材料とは独立に存在しており、かつ、マイクロ波加熱された液体における上記小麦粉の分散性を向上させる第2固体材料と、を含む、液体中でのマイクロ波加熱によって液状食品を提供するための粉状組成物。
<2> 上記小麦粉の総質量に対する上記第2固体材料の総質量の比が、0.5~2.0の範囲内である、<1>に記載の粉状組成物。
<3> 上記第2固体材料の総質量が、100質量部の粉状組成物に対して、15質量部~30質量部の範囲内である、<1>又は<2>に記載の粉状組成物。
<4> 上記第2固体材料が、水溶性α化デンプン及びシトラスファイバーからなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の粉状組成物。
<5> 上記水溶性α化デンプンが、α化リン酸架橋デンプン、α化ヒドロキシプロピルデンプン、α化アセチル化アジピン酸架橋デンプン、α化アセチル化リン酸架橋デンプン及びα化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンからなる群より選択される少なくとも1つの水溶性α化デンプンを含む、<4>に記載の粉状組成物。
<6> 上記第2固体材料が、水溶性α化デンプンを含む造粒物である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の粉状組成物。
<7> 上記第1固体材料及び上記第2固体材料の各々とは独立に存在しており、かつ、上記第1固体材料及び上記第2固体材料の各々とは異なる第3固体材料を更に含み、上記第3固体材料が多孔質材料である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の粉状組成物。
<8> 上記多孔質材料が、不溶性α化デンプン及びセルロースからなる群より選択される少なくとも1つの多孔質材料を含む、<7>に記載の粉状組成物。
<9> <1>~<8>のいずれか1つに記載の粉状組成物を準備することと、上記粉状組成物と液体とを混合して、混合物を得ることと、上記混合物にマイクロ波を照射して、上記混合物を加熱することと、を含む、液状食品の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示は、マイクロ波加熱を用いて小麦粉特有のとろりとした粘性を有する液状食品を調理可能な小麦粉含有粉状組成物及び上記粉状組成物を用いる液状食品の製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。以下に説明される実施形態は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更されてもよい。
【0013】
本開示において、序数詞(例えば、「第1」及び「第2」)は、要素を区別するために使用される用語であり、要素の数量、要素の順序及び要素の優劣を制限しない。
【0014】
<粉状組成物>
本開示に係る粉状組成物は、液体中でのマイクロ波加熱によって液状食品を提供するための粉状組成物である。粉状組成物は、小麦粉を含む第1固体材料を含む。さらに、粉状組成物は、第1固体材料とは独立に存在しており、かつ、マイクロ波加熱された液体における小麦粉の分散性を向上させる第2固体材料を含む。上記実施形態によれば、マイクロ波加熱を用いて小麦粉特有のとろりとした粘性を有する液状食品を調理可能な小麦粉含有粉状組成物が提供される。
【0015】
(第1固体材料)
粉状組成物は、小麦粉を含む第1固体材料を含む。1種類又は2種類以上の第1固体材料が使用されてもよい。
【0016】
小麦粉のデンプンは、液体中でのマイクロ波加熱によって糊化し、液状食品に粘性を付与できる。さらに、小麦粉は、小麦由来の優れた風味を液状食品に付与できる。小麦粉の例としては、強力粉、中力粉及び薄力粉が挙げられる。小麦粉は、好ましくは強力粉を含む。1種類又は2種類以上の小麦粉が使用されてもよい。
【0017】
第1固体材料は、小麦粉のみから構成されてもよい。第1固体材料は、小麦粉及び他の成分を含んでもよい。他の成分は、液状食品の粘性、食感及び風味を考慮して選択されてもよい。他の成分の例としては、小麦デンプン以外のデンプン、糖類、油脂、粉乳、調味料及び乳化剤が挙げられる。1種類又は2種類以上の他の成分が使用されてもよい。
【0018】
小麦デンプン以外のデンプンの例としては、米デンプン、馬鈴薯デンプン、コーンスターチ、ワキシコーンスターチ、タピオカデンプン、エンドウ豆デンプン、サツマイモデンプン、クズ(葛)デンプン、カタクリ(片栗)デンプン、緑豆デンプン及びサゴヤシデンプンが挙げられる。例えば、これらのデンプンは、液状食品の物性を調整するために補助的に用いられる。
【0019】
糖類の例としては、ショ糖、トレハロース、還元糖及びデキストリンが挙げられる。還元糖の例としては、単糖類(例えば、グルコース、フルクトース及びグリセルアルデヒド)、転化糖(例えば、上白糖、中白糖及び異性化糖)、二糖類(例えば、ラクトース、アラビノース及びマルトース)及びオリゴ糖が挙げられる。
【0020】
油脂の例としては、牛脂、豚脂及び鶏脂が挙げられる。油脂の例としては、植物性硬化油が挙げられる。植物性硬化油の例としては、菜種硬化油、パーム硬化油及び大豆硬化油が挙げられる。硬化油は極度硬化油であってもよい。油脂の例としては、ショートニングが挙げられる。
【0021】
粉乳の例としては、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳及びクリーミングパウダー(油脂成分の一部に植物性油脂を含むクリーミングパウダーも含まれる)が挙げられる。
【0022】
調味料の例としては、食塩、香辛料、カレー粉、醤油、グルタミン酸ナトリウム及びエキスが挙げられる。エキスの例としては、酵母エキス、野菜エキス、果物のエキス、チキンエキス、ポークエキス及びビーフエキスが挙げられる。
【0023】
乳化剤の例としては、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びソルビンタン脂肪酸エステルが挙げられる。
【0024】
第1固体材料の形態は、粒子であってもよい。粒子は、単一成分又は複数成分の造粒物であってもよい。例えば、造粒物は、小麦粉及び任意選択の他の成分を造粒することによって得られる。造粒方法は制限されない。造粒方法は、公知の造粒方法から選択されてもよい。造粒方法の例としては、湿式造粒が挙げられる。湿式造粒の例としては、押出造粒、流動層造粒、攪拌造粒及び転動造粒が挙げられる。
【0025】
第1固体材料の粒度は、乾式篩分け法により、好ましくは1μm~6mm、より好ましくは20μm~5mm、更に好ましくは40μm~4mmの範囲内である。
【0026】
液状食品の粘性及び風味の観点から、小麦粉の総質量は、100質量部の第1固体材料に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。小麦粉の総質量の上限は、100質量部の第1固体材料に対して、60質量部、50質量部又は40質量部であってもよい。小麦粉の総質量は、100質量部の第1固体材料に対して、10質量部~60質量部の範囲内であってもよい。
【0027】
液状食品の粘性及び風味の観点から、小麦粉の総質量は、100質量部の粉状組成物に対して、好ましくは10質量部~40質量部、より好ましくは15質量部~35質量部、更に好ましくは20質量部~30質量部の範囲内である。
【0028】
(第2固体材料)
粉状組成物は、第1固体材料とは独立に存在しており、かつ、マイクロ波加熱された液体における小麦粉の分散性を向上させる第2固体材料を含む。1種類又は2種類以上の第2固体材料が使用されてもよい。
【0029】
本開示において、「第2固体材料が第1固体材料とは独立に存在する」という状態は、第2固体材料及び第1固体材料が互いに明確に区別されており、第2固体材料が下記2つの状態に該当しないことを意味する。上記定義は、後述の第3固体材料に準用される。
(1)第2固体材料が第1固体材料と一体化している。
(2)第2固体材料が直接的に又は他の物質を介して間接的に第1固体材料と繋がっている。例えば、第1固体材料及び第2固体材料が1つの造粒物を形成している。
【0030】
液体中で第2固体材料は、第1固体材料に含まれる小麦粉の分散性を向上させ、結果的に液状食品への所望の粘性の付与に寄与する。上記効果の理由は次のように推定される。例えば、粉状組成物が液体と混合されると、第1固体材料とは独立に存在している第2固体材料は、液体に速やかに分散できる。液体に分散した第2固体材料はすぐに糊化し、液体への小麦粉の分散を容易にする程度の粘性を液体に与える。この粘性は、液体中での小麦粉の沈降速度を低下させ、調理過程における小麦粉の沈殿及び凝集を防止又は減少できる。液体に分散した小麦粉のデンプンは、マイクロ波加熱によって糊化し、液状食品の全体にとろりとした粘性を付与できる。対照的に、液体中で沈殿又は凝集した小麦粉のデンプンは、マイクロ波加熱によって糊化できたとしても、液状食品の全体に所望の粘性を付与できない。したがって、本開示に係る粉状組成物は、マイクロ波加熱によって小麦粉特有のとろりとした粘性を有する液状食品を提供できる。
【0031】
第2固体材料の例としては、水溶性α化デンプン及びシトラスファイバーが挙げられる。第2固体材料は、好ましくは水溶性α化デンプン及びシトラスファイバーからなる群より選択される少なくとも1つの材料を含む。第2固体材料は、好ましくは水溶性α化デンプン及びシトラスファイバーの両方を含む。第2固体材料は、水溶性α化デンプン又はシトラスファイバーであってもよい。
【0032】
水溶性α化デンプンの例としては、α化リン酸架橋デンプン、α化ヒドロキシプロピルデンプン、α化アセチル化アジピン酸架橋デンプン、α化アセチル化リン酸架橋デンプン及びα化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンが挙げられる。水溶性α化デンプンは、好ましくはα化リン酸架橋デンプン、α化ヒドロキシプロピルデンプン、α化アセチル化アジピン酸架橋デンプン、α化アセチル化リン酸架橋デンプン及びα化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンからなる群より選択される少なくとも1つの水溶性α化デンプンを含み、より好ましくはα化アセチル化アジピン酸架橋デンプンを含む。特にα化アセチル化アジピン酸架橋デンプンは、液状食品の味に大きな影響を与えず、液体に均一な粘性を付与できる。1種類又は2種類以上の水溶性α化デンプンが使用されてもよい。
【0033】
液体中の小麦粉の分散性の観点から、水溶性α化デンプンの総質量は、100質量部の粉状組成物に対して、好ましくは5質量部~50質量部、より好ましくは10質量部~40質量部、更に好ましくは20質量部~30質量部の範囲内である。
【0034】
シトラスファイバーの原料の例としては、ミカン、オレンジ、レモン及びライムが挙げられる。市販のシトラスファイバーの例としては、ヘルバセルAQプラスCF-D(Herbafood Ingredients GmbH)が挙げられる。1種類又は2種類以上のシトラスファイバーが使用されてもよい。
【0035】
液体中の小麦粉の分散性の観点から、シトラスファイバーの総質量は、100質量部の粉状組成物に対して、好ましくは17質量部~50質量部、より好ましくは18質量部~40質量部、更に好ましくは19質量部~30質量部の範囲内である。
【0036】
シトラスファイバーは、水溶性α化デンプンと併用してもよい。この場合、シトラスファイバーは、シトラスファイバーを単独で使用する場合よりも少量で効果を発揮する。液体中の小麦粉の分散性の観点から、水溶性α化デンプンと併用した場合のシトラスファイバーの総質量は、100質量部の粉状組成物に対して、好ましくは5質量部~40質量部、より好ましくは6質量部~30質量部、更に好ましくは7質量部~20質量部の範囲内である。
【0037】
液体中の小麦粉の分散性の観点から、シトラスファイバーの総質量に対する水溶性α化デンプンの総質量の比は、好ましくは0.5~10、より好ましくは1~8、更に好ましくは2~5の範囲内である。
【0038】
第2固体材料は、粒子であってもよい。粒子は、単一成分又は複数成分の造粒物であってもよい。第2固体材料は、好ましくは水溶性α化デンプンを含む造粒物である。第2固体材料は、水溶性α化デンプン及びシトラスファイバーを含む造粒物であってもよい。造粒方法は制限されない。造粒方法は、公知の造粒方法から選択されてもよい。造粒方法の例は、既述のとおりである。
【0039】
第2固体材料の粒度は、乾式篩分け法により、好ましくは5μm~1mm、より好ましくは50μm~0.8mm、更に好ましくは100μm~0.5mmの範囲内である。
【0040】
液体中の小麦粉の分散性の観点から、小麦粉の総質量に対する第2固体材料の総質量の比は、好ましくは0.5~3.0、より好ましくは0.5~2.5の範囲内である。さらに、小麦粉の総質量に対する第2固体材料の総質量の比は、好ましくは0.5~2.0、より好ましくは0.9~1.2の範囲内である。
【0041】
液体中の小麦粉の分散性の観点から、第2固体材料の総質量は、100質量部の粉状組成物に対して、好ましくは5質量部~40質量部、より好ましくは10質量部~35質量部、更に好ましくは15質量部~30質量部の範囲内である。
【0042】
(第3固体材料)
好ましい実施形態において、粉状組成物は、第1固体材料及び第2固体材料の各々とは独立に存在しており、かつ、上記第1固体材料及び上記第2固体材料の各々とは異なる第3固体材料を更に含み、上記第3固体材料は、多孔質材料である。1種類又は2種類以上の多孔質材料が使用されてもよい。
【0043】
多孔質材料は、マイクロ波加熱による小麦粉のデンプンの糊化を促進できる。マイクロ波加熱前のデンプンの過剰な膨潤及び糊化は、デンプンの溶け残りを増やす可能性がある。多孔質材料は、水分を保持できるため、液体中で多孔質材料は、第1固体材料の表面に付着する、又は上記表面付近に存在することで、マイクロ波加熱前に第1固体材料の表面に存在する小麦粉のデンプンの過剰な膨潤及び糊化を抑制できると考えられる。この結果、マイクロ波加熱の過程において小麦粉のデンプンが溶けやすくなり、小麦粉のデンプンの糊化が促進される。多孔質材料の例としては、不溶性α化デンプン及びセルロースが挙げられる。多孔質材料は、好ましくは不溶性α化デンプン及びセルロースからなる群より選択される少なくとも1つの多孔質材料を含む。多孔質材料は、不溶性α化デンプン及びセルロースの両方を含んでもよい。多孔質材料は、不溶性α化デンプン又はセルロースであってもよい。
【0044】
不溶性α化デンプンの例としては、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、オクテニルコハク酸デンプン、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン及びリン酸架橋デンプンが挙げられる。市販の不溶性α化デンプンの例としては、ネオトラストW-600(株式会社J-オイルミルズ)及びTEXTAID A FP(Ingredion Inc.)が挙げられる。1種類又は2種類以上の不溶性α化デンプンが使用されてもよい。不溶性α化デンプンは、水に溶解しないか、又は水への溶解性が無視できる程小さいという性質を有する。
【0045】
小麦粉のデンプンの糊化を促進する観点から、不溶性α化デンプンの総質量は、100質量部の粉状組成物に対して、好ましくは1質量部~20質量部、より好ましくは2質量部~15質量部、更に好ましくは3質量部~10質量部の範囲内である。
【0046】
セルロースの例としては、結晶セルロース、微結晶セルロース及び粉末セルロースが挙げられる。1種類又は2種類以上のセルロースが使用されてもよい。
【0047】
小麦粉のデンプンの糊化を促進する観点から、セルロースの総質量は、100質量部の粉状組成物に対して、好ましくは1質量部~20質量部、より好ましくは2質量部~15質量部、更に好ましくは3質量部~10質量部の範囲内である。
【0048】
小麦粉のデンプンの糊化を促進する観点から、多孔質材料の総質量は、100質量部の粉状組成物に対して、好ましくは1質量部~20質量部、より好ましくは2質量部~15質量部、更に好ましくは3質量部~10質量部の範囲内である。
【0049】
(他の材料)
粉状組成物は、他の材料を更に含んでもよい。他の材料の例としては、固形食材が挙げられる。固形食材の例としては、例えば、肉類、キノコ、豆腐、魚、果物及び野菜が挙げられる。果物の例としては、バナナ、ミカン、リンゴ、モモ、イチゴ、マンゴー及びイチジクが挙げられる。固形食材は、乾燥固形食材であってもよい。固形食材は、事前に加熱調理された固形食材であってもよい。固形食材は、生や冷凍の固形食材であってもよい。他の材料は、既述の他の成分から選択されてもよい。1種類又は2種類以上の他の材料が使用されてもよい。粉状組成物の包装形態に関して、乾燥固形食材を粉状組成物は、単一の包装材に密封されてもよい。粉状組成物及び乾燥固形食材は、単一の容器の中で個別に包装材に密封されてもよい。
【0050】
(粒度)
粉状組成物の粒度は、乾式篩分け法により、好ましくは1μm~6mm、より好ましくは20μm~5mm、更に好ましくは40μm~4mmの範囲内である。
【0051】
(粉状組成物の製造方法)
目的の粉状組成物が得られる限り、粉状組成物の製造方法は制限されない。例えば、粉状組成物は、少なくとも第1固体材料及び第2固体材料を混合することによって得られる。混合方法は制限されない。公知の混合装置が使用されてもよい。混合装置の例としては、V型混合機、タンブラー混合機、パドル混合機及びロッキング混合機が挙げられる。
【0052】
(用途:液状食品)
粉状組成物は、液体中でのマイクロ波加熱によって液状食品を提供できる。液状食品の例としては、ポタージュスープ、コーンスープ、カボチャスープ、枝豆スープ、カレーソース、デミグラスソース、クリームソース、ベシャメルソース、パスタソース(例えば、ミートソース)、カスタードソース、シチュー及びグラタンソースが挙げられる。液状食品は、好ましくはシチュー又はグラタンソースである。
【0053】
液状食品は、粉状組成物を用いて製造される。例えば、液状食品の製造方法は、(1)粉状組成物を準備することと、(2)上記粉状組成物と液体とを混合して、混合物を得ることと、(3)上記混合物にマイクロ波を照射して、上記混合物を加熱することと、を含む。上記実施形態によれば、小麦粉特有のとろりとした粘性を有する液状食品が提供される。さらに、小麦粉を含む粉状組成物から得られる液状食品は、小麦由来の優れた風味を有する。
【0054】
液体の例としては、水、牛乳、果汁、飲料、豆乳及び酒が挙げられる。液体は、好ましくは水を含む。1種類又は2種類以上の液体が使用されてもよい。
【0055】
粉状組成物と混合される液体の温度は、好ましくは0℃~30℃、より好ましくは5℃~30℃、更に好ましくは10℃~25℃の範囲内である。
【0056】
粉状組成物の添加量は、150質量部の液体に対して、好ましくは5質量部~40質量部、より好ましくは10質量部~35質量部、更に好ましくは15質量部~25質量部の範囲内である。
【0057】
粉状組成物と液体とを混合する方法は制限されない。例えば、粉状組成物と液体とを混合することは、粉状組成物及び液体を容器内で攪拌することを含んでもよい。容器の例としては、カップ及びグラタン皿が挙げられる。容器は、マイクロ波加熱に利用可能な公知の容器から選択されてもよい。
【0058】
マイクロ波を照射可能な装置の例としては、電子レンジが挙げられる。液状食品の製造方法は、好ましくは電子レンジを用いて混合物にマイクロ波を照射することを含む。電子レンジは、公知の電子レンジから選択されてもよい。電子レンジの出力は、好ましくは500W~2000W、より好ましくは500W~1000W、更に好ましくは500W~700Wの範囲内である。加熱時間は、液体及び粉状組成物の総量と電子レンジの出力に応じて調節されてもよい。液体及び粉状組成物の総量が少ない、又は電子レンジの出力が大きいと、加熱時間は短くなる傾向にある。加熱時間は、2分間~10分間の範囲内であってもよい。液状食品の製造方法は、加熱後の混合物を攪拌することを含んでもよい。例えば、電子レンジの出力600Wで、100mL~150mLの液状食品の場合、加熱時間は2分30秒~3分間である。ただし、適切な加熱時間及び電子レンジの出力は容器の形状に応じて変わる可能性がある。適切な加熱時間及び電子レンジの出力は加熱対象物の成分に応じて変わる可能性もある。例えば、液状食品の具材として固形食材の豚生肉を使用する場合は、豚生肉70gに対して、水200mLで、電子レンジの出力600Wで9分の加熱が好ましい。
【0059】
液状食品の製造方法は、加熱前又は加熱後の混合物に固形食材を添加することを含んでもよい。固形食材が加熱後の混合物に添加される場合、固形食材を含む混合物はマイクロ波の照射によって更に加熱されてもよい。固形食材の例は、既述のとおりである。
【実施例0060】
以下、実施例に基づいて本開示を説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に制限されない。下記の技術的事項は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更されてもよい。
【0061】
<小麦粉含有材料A1>
表1の記載に従って準備した原料を90℃で45分間混合した。混合物を60℃まで冷却し、次に押出造粒機(不二パウダル株式会社、ツインドームグラン、スクリーンの孔径:1mm)を用いて造粒した。押出造粒機から排出された粒子を20℃まで急速冷却し、小麦粉含有材料A1を得た。小麦粉含有材料A1は、小麦粉を含む第1固体材料の造粒物である。乾式篩分け法によって測定された小麦粉含有材料A1の粒度は、1000μm~4000μmの範囲内である。
【0062】
<小麦粉含有材料2>
表1の記載に従って準備した原料をポリエチレン製の袋に投入し、次に袋の口を塞いだ。袋を0.5分間振り動かすことによって原料を混合し、小麦粉含有材料A2を得た。小麦粉含有材料A2は、第1固体材料として小麦粉と、他の材料と、を含む混合粉である。乾式篩分け法によって測定された小麦粉含有材料A2の粒度は、10μm~2100μmの範囲内である。
【0063】
<比較材料B1>
表1の記載に従って小麦粉を米粉に変更したこと以外は、小麦粉含有材料A1の製造方法と同じ方法によって比較材料B1を得た。比較材料B1は、小麦粉の代わりに米粉を含む造粒物である。乾式篩分け法によって測定された比較材料B1の粒度は、1000μm~4000μmの範囲内である。
【0064】
<実施例1~10及び比較例1~3>
表2又は表3の記載に従って準備した原料をポリエチレン製の袋に投入し、次に袋の口を塞いだ。袋を0.5分間振り動かすことによって原料を混合し、粉状組成物を得た。
【0065】
<評価>
(液状食品)
表2又は表3の記載に従って計量した粉状組成物及び150gの水を容器に加え、次にスプーンを用いて30秒間混合した。電子レンジを用いて混合物を600Wで2分30秒間加熱し、液状食品を得た。加熱された液状食品をスプーンで軽く混合し、次に下記項目に基づいて液状食品を評価した。結果を表2及び表3に示す。
【0066】
(風味)
下記A~Dの基準に従って風味を評価した。評価者の数は3人である。3人の評価者の評価が完全に一致しない場合、多数派の評価及び協議に基づいて最終的な評価を決定した。
A:鍋で調理したソースと遜色がない、所望の風味
B:所望の風味
C:所望の風味に近い、許容できる風味
D:味が薄く、許容できない風味
【0067】
(粘性)
下記A~Dの基準に従って粘性を評価した。
A:鍋で調理したソースと遜色がない、均一なとろりとした粘性
B:ほぼ均一なとろりとした粘性
C:やや不均一であるが、とろりとした粘性
D:粘性が低く、とろりとしていない粘性
【0068】
(溶解性)
下記A~Dの基準に従って溶解性を評価した。
A:沈殿物及び塊がなく、非常に好ましい状態
B:沈殿物及び塊が目立たず、好ましい状態
C:沈殿物及び塊がやや目立つが、許容できる状態
D:沈殿物及び塊が多く、許容できない状態
【0069】
【表1】
【0070】
表1に記載された原料は、本開示における第2固体材料及び第3固体材料を含んでいない。したがって、表2及び表3に示される評価は、第2固体材料及び第3固体材料の影響を反映している。表1に記載された一部の原料の詳細は以下のとおりである。
「小麦粉」:強力粉(乾式篩分け法による粒度:10μm~130μm)
「糖類」:砂糖
「油脂」:動物性固形油脂、植物性固形油脂
「粉乳」:粉乳
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
表2及び表3に記載された原料の詳細は以下のとおりである。
「顆粒状水溶性α化デンプン」:α化アセチル化アジピン酸架橋デンプン(馬鈴薯デンプン由来の加工デンプン)
「シトラスファイバー」:「ヘルバセルAQプラスCF-D」(Herbafood Ingredients GmbH)
「膨化粒状不溶性α化デンプン」:「ネオトラストW-600」(株式会社J-オイルミルズ)
「粒状不溶性α化リン酸架橋デンプン」:「TEXTAID A FP」(Ingredion Inc.)
「微結晶セルロース」:「セオラスFD-F20」(旭化成株式会社)
【0074】
比較例1~3と比較して、実施例1~10は、液体中でのマイクロ波加熱によって十分な粘性を有する液状食品を提供した。