(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093717
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】高周波給電ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 7/32 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
H01B7/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210265
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 瞳
(72)【発明者】
【氏名】西口 雅己
(72)【発明者】
【氏名】前田 仁志
【テーマコード(参考)】
5G315
【Fターム(参考)】
5G315BA02
(57)【要約】
【課題】高周波給電ケーブルに高周波電流を流した場合の高周波給電効率の向上を図る。
【解決手段】中心に配置された温度感知線20と、温度感知線20の周囲に当該温度感知線20に沿うように配置された複数本の給電用電線30と、を有し、複数本の給電用電線30が同方向に撚り合わせられており、温度感知線20と全ての給電用電線30とが非接触である場合を100%とした場合に、温度感知線20と複数本の給電用電線30とが非接触となる比率が40%以上である高周波給電ケーブル10とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心に配置された温度感知線と、
前記温度感知線の周囲に当該温度感知線に沿うように配置された複数本の給電用電線と、
を有し、
前記複数本の給電用電線が同方向に撚り合わせられており、
前記温度感知線と全ての前記給電用電線とが非接触である場合を100%とした場合に、前記温度感知線と複数本の前記給電用電線とが非接触となる比率が40%以上であることを特徴とする高周波給電ケーブル。
【請求項2】
前記温度感知線と複数本の前記給電用電線が非接触となる前記比率が50%以上であることを特徴とする請求項1に記載の高周波給電ケーブル。
【請求項3】
前記温度感知線と複数本の前記給電用電線が非接触となる前記比率が60%以上であることを特徴とする請求項2に記載の高周波給電ケーブル。
【請求項4】
複数の前記給電用電線は、いずれも、複数の素線の撚り合わせからなる導体を有し、
複数の前記給電用電線の前記導体は、いずれも、前記素線の撚り線ピッチが撚り合わされた前記導体の外径の10倍以上25倍以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の高周波給電ケーブル。
【請求項5】
複数の前記給電用電線の前記導体は、いずれも、前記素線の撚り線ピッチが撚り合わされた前記導体の外径の12倍以上20倍以下であることを特徴とする請求項4に記載の高周波給電ケーブル。
【請求項6】
前記複数本の給電用電線の撚り合わせピッチが層心径の15倍以上35倍以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の高周波給電ケーブル。
【請求項7】
前記複数本の給電用電線の撚り合わせピッチが層心径の18倍以上32倍以下であることを特徴とする請求項6に記載の高周波給電ケーブル。
【請求項8】
前記複数本の給電用電線の撚り合わせピッチが層心径の20倍以上30倍以下であることを特徴とする請求項7に記載の高周波給電ケーブル。
【請求項9】
前記複数本の給電用電線は、これらを束ねる押さえ巻きが存在しないか又は糸巻によって束ねられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の高周波給電ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度感知線を内部に有する高周波給電ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触型給電用機器などに用いられる高周波給電ケーブルは、何らかの要因によって過大電流が流れた場合にケーブル温度が異常上昇する虞がある。
そこで、ケーブルに電流を流す電線のほかに温度感知線を組み入れて複合型ケーブルとすることによって、過電流による昇温を早急に検知していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記複合型ケーブルは、温度感知線をケーブルの中心に配置し、その周囲に給電用電線を配置した構成としている。これにより、給電用電線と温度感知線とが緊密となって熱伝播効率が高くなり、温度感知性能が向上する。
特に、上記複合型ケーブルは、温度感知線とすべての給電用電線が接触した最密充填構造を採ることで、さらなる温度感知性能の向上が図られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の複合型ケーブルは、温度感知性能をあげるために温度感知線と給電用電線とが緊密に接触する構造になっていた。このような複合型ケーブルを高周波給電の用途に利用すると、給電用電線に高周波電流を流した場合に温度感知線と給電用電線の距離が近過ぎて密となり、交流導体抵抗が上昇して高周波給電効率が低下してしまう、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、高周波電流を流した場合の高周波給電効率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の問題を解決するために、本発明は、高周波給電ケーブルにおいて、
中心に配置された温度感知線と、
前記温度感知線の周囲に当該温度感知線に沿うように配置された複数本の給電用電線と、
を有し、
前記複数本の給電用電線が同方向に撚り合わせられており、
前記温度感知線と全ての前記給電用電線とが非接触である場合を100%とした場合に、前記温度感知線と複数本の前記給電用電線とが非接触となる比率が40%以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高周波電流を流した場合の高周波給電効率の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】発明の実施形態にかかる高周波給電ケーブルの軸垂直断面図である。
【
図2】発明の実施形態にかかる高周波給電ケーブルの斜視図である。
【
図4】実施例1~10について、「非接触となる比率」、給電用電線の導体の素線の撚り線ピッチ、各給電用電線の撚り合わせピッチ、各給電用電線の押さえ巻きの有無と種別、交流導体抵抗の良否を示した図表である。
【
図5】比較例1~5について、「非接触となる比率」、給電用電線の導体の素線の撚り線ピッチ、各給電用電線の撚り合わせピッチ、各給電用電線の押さえ巻きの有無と種別、交流導体抵抗の良否を示した図表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係る高周波給電ケーブルについて説明する。
ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態や図示例に限定するものではない。
【0011】
本実施形態の高周波給電ケーブル10は、非接触によって対象に電力を供給するために交流を通電するケーブルである。
図1は高周波給電ケーブル10の軸垂直断面図、
図2は斜視図である。
【0012】
図示のように、高周波給電ケーブル10は、中心に配置された温度感知線20と、温度感知線20の周囲に当該温度感知線20に沿うように同方向に撚り合わされて配置された複数の給電用電線30と、温度感知線20及び複数の給電用電線30を一括して覆う外側シース40と、を備えている。
なお、本実施形態では、給電用電線30を六本で例示しているがこれに限定されず、その本数は二本以上の複数本であってもよい。
また、以下に示す各構成の寸法、数値は、一例であり、適宜変更可能である。また、以下に例示する数値について、「a~b」と記載した場合には、「a以上b以下」の範囲を示すものとする。
【0013】
[温度感知線]
温度感知線20は、撚り合わされた一対の温度感知用電線21と、一対の温度感知用電線21の周囲に巻かれた押さえテープ22と、押さえテープ22が巻かれた一対の温度感知用電線21を被覆するシース23と、シース23を覆うジャケット24とを有する。
【0014】
各温度感知用電線21は、良導体からなる導体211を有し、導体211の周囲に絶縁体212を有する。
各温度感知用電線21の導体211は、銅合金、例えば、銅に錫5wt%以上7wt%未満、リン0.03~0.35wt%を添加したリン青銅からなる。
また、導体211の外径は、例えば、0.1~3.0mm、好ましくは0.2~2.0mm、さらに好ましくは0.3~1.5mmである。
【0015】
一対の温度感知用電線21は、過電流等によって周囲の各給電用電線30が発熱した場合に、一対の温度感知用電線21の絶縁体212が軟化し、導体211同士が短絡する。これらの短絡を検出することで給電用電線30の発熱を検知することができる。
このため、各温度感知用電線21の絶縁体212は、低融点及び/または低軟化点の絶縁性樹脂が好ましい。より好ましくは、後述する給電用電線30の絶縁体32よりも低融点及び/または低軟化点の絶縁性樹脂が使用される。これにより、各給電用電線30の絶縁体32が軟化して給電不能となる前に過電流等による給電用電線30の発熱を検知することが可能となる。
絶縁体212は、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)等の絶縁性樹脂などが挙げられる。
【0016】
一対の温度感知用電線21は、螺旋状に撚り合わされ、その周囲に押さえテープ22がラップ巻きされて、一対の温度感知用電線21の撚り合わせ状態を保持している。
押さえテープ22は、例えば、厚さ10~100μm程度のポリエステルテープ等の樹脂テープからなる。
【0017】
押さえテープ22によって保持された一対の温度感知用電線21は、シース23で被覆され、さらにその外側をジャケット24で被覆される。
シース23は、フッ素樹脂、例えば、FEP(テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体)やPFA(テトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体)などからなる。シース23の被覆厚さは、例えば、0.05~1.0mm程度である。
【0018】
ジャケット24は、一対の温度感知用電線21の保護層である。
ジャケット24は、絶縁性樹脂、例えば、軟質PVCからなる。ジャケット24及びシース23の内側において、押さえテープ22が巻かれた一対の温度感知用電線21は、空隙を有する状態で内包される。
【0019】
[給電用電線及び外側シース]
給電用電線30は、いずれも、中心に位置する導体31と、導体31を覆う絶縁体32とを有する。
図3は導体31の斜視図である。図示のように、導体31は、良導体からなる複数(例えば、20~200本、好ましくは30~180、さらに好ましくは40~150本)の素線311を集合撚り、同心撚り、ロープ撚りなどで撚り合わせた導体である。素線311は、銅線、より具体的には、外径0.05~0.5mm程度の錫メッキ又は銀メッキ等が施された軟銅線や裸軟銅線からなる。
また、導体31の外径は、0.5~5.0mmである。
絶縁体32は、例えば、被覆厚さ0.05~1.0mm程度であって、フッ素樹脂やエンジニアリングプラスチック、オレフィン系樹脂などの樹脂からなり、例えば、ETFE(テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体)から形成される。
【0020】
六本の給電用電線30は、
図1及び
図2に示すように、温度感知線20を中心として螺旋状に撚り合わされている。撚り合わせされた給電用電線30に対して、押さえテープは使用されず、外側シース40によって被覆されて、撚り合わせ状態が保持される。また、各給電用電線30は、その外周に螺旋状に糸33を巻いて、補助的に撚り合わせ状態を保持してもよい。
【0021】
撚り合わせられた各給電用電線30を被覆する外側シース40は、絶縁性樹脂、例えば、軟質PVCからなる。外側シース40の被覆厚さは、例えば、0.4~3.0mm程度である。
【0022】
[温度感知線と給電用電線の配置について]
図1に示すように、高周波給電ケーブル10は、軸方向断面(ケーブル長手方向に直交する断面)において、温度感知線20の周囲に配置された六本の給電用電線30の外周と温度感知線20の外周との非接触となる比率が所定値以上となっている。
例えば、
図1の場合には、六本の内の四本の給電用電線30が温度感知線20に対して隙間Nを生じた非接触となっている(
図1では二か所にのみ符号Nを付している)。
なお、
図1において、外側シース40の内側における余白部分は全て空隙となっており、各余白部分に介在は充填されていない。なお、「介在」とは一般的なケーブルにおいて、空隙を埋めるために充填される充填材料をいう。
【0023】
ここで、上述の「非接触となる比率」とは、高周波給電ケーブル10の長手方向における少なくとも任意の五か所以上の軸垂直断面において、給電用電線30の総数に対する温度感知線20と非接触となる給電用電線30の本数の合計の比率を示す。
即ち、n本の給電用電線30を有する高周波給電ケーブル10に対して、c箇所の軸垂直断面を選出した場合を例示する。この場合、各軸垂直断面において温度感知線20に対して非接触となっている給電用電線30の本数をt1~t5とし、その合計をt(t=t1+t2+t3+t4+t5)とする。そして、非接触となる比率をrとした場合、下式(1)が成立する。但し、比率rを百分率[%]で示す場合には、下式(2)となる。
r=t/(c・n) …(1)
r=t×100/(c・n) …(2)
【0024】
温度感知線20を備える高周波給電ケーブル10は、必要な温度感知性能を確保しつつ、高周波給電効率の向上を図ることが要求される。
上記の「非接触となる比率」は、高周波給電ケーブル10の高周波給電効率を決定する交流導体抵抗と相関がある。即ち、「非接触となる比率」は、高周波給電ケーブル10における各給電用電線30の粗密の程度を示す要素である。各給電用電線30が密であれば、交流導体抵抗は増加し、各給電用電線30が疎であれば、交流導体抵抗は低減する。
【0025】
十分な温度感知性能を確保しつつ、高周波給電効率の向上を図るためには、「非接触となる比率」は、40%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上であって、好ましくは90%以下とすべきである。あまり非接触部が増加すると温度感知の速度が遅くなり、実用上不具合が生じる。
本発明の発明者は、[1]各給電用電線30の導体31を構成する素線311の撚り線ピッチを適宜調整すること、及び/又は、[2]複数の給電用電線30の撚り合わせピッチを適宜調整すること、によって「非接触となる比率」を変動させることができるという知見を得た。
【0026】
上記[1]の各給電用電線30の素線311の撚り線ピッチに関しては、撚り合わされた状態の導体31の外径に対し25倍以下の短ピッチにすることによって、撚り合わされた素線311が密になって円形に近づけることができる。
なお、「素線311の撚り線ピッチ」とは、撚り合わせにより螺旋を描く素線311が導体31の中心を一周する場合の撚り合わされた導体31の長手方向の間隔を示す。
これにより、導体31全体の曲げ強度を高めて、給電用電線30ごとの曲げ強度を高めることができる。各給電用電線30の曲げ強度が高いと、各給電用電線30を撚り合わせたときの反発力が大きくなる。このため、各給電用電線30の撚り合わせた後に当該各給電用電線30が径方向外側に広がる作用が生じて「非接触となる比率」を高めることができる。そして、これに伴い、各給電用電線30の周方向の間隔が広げられて交流導体抵抗値が低くなる。
一方、素線311の撚り線ピッチを撚り線外径に対し10倍未満とした場合には、各素線311の撚りから外れた一部の素線311が絶縁体32を突き破り、絶縁不良が発生する虞が生じる。
従って、各給電用電線30の素線311の撚り線ピッチは、撚り合わされた状態の導体31の外径に対し10~25倍が好ましく、12~20倍がさらに好ましい。
【0027】
上記[2]の複数の給電用電線30の撚り合わせピッチに関しては、層心径の35倍の短ピッチにすることによって、各給電用電線30は、その曲げ強度に抗してより大きく曲げられることになる。このため、各給電用電線30の撚り合わせた後に各給電用電線30が径方向外側に広がる作用が生じて「非接触となる比率」を高めることができる。そして、これに伴い、各給電用電線30の周方向の間隔が広げられて交流導体抵抗値が低くなる。
なお、「複数の給電用電線30の撚り合わせピッチ」とは、撚り合わせにより螺旋を描く給電用電線30が温度感知線20を中心に一周する場合の撚り合わされた給電用電線30の長手方向の間隔を示す。なお、複数の給電用電線30は、撚り合わせ直後から撚りに若干のゆるみが生じて撚り合わせピッチが幾分増加して安定するが、ここでいう「複数の給電用電線30の撚り合わせピッチ」は、撚り合わせ後に撚りが幾分戻されて安定した後の値を示す。
また、「層心径」とは、撚り線(給電用電線30)の円周方向に並んだ全ての線心の中心を連ねて出来る円の直径を示す。
一方、各給電用電線30の撚り合わせピッチを短くし過ぎた場合、例えば、撚り合わせピッチを層心径の15倍未満にすると、各給電用電線30の導体31がコイル形状に近づいて自己インダクタンスが徐々に増加し始め、層心径の12倍未満では自己インダクタンスの増加によって高周波給電効率が悪化する。
従って、複数の給電用電線30の撚り合わせピッチは、層心径の15倍以上35倍以下が好ましく、層心径の18倍以上32倍以下がより好ましく、層心径の20倍以上30倍以下がさらに好ましい範囲といえる。
【0028】
[実施例による比較試験]
比較試験では、細部の製造条件が個別に異なる複数の高周波給電ケーブルを用意した。そして、各高周波給電ケーブルの長さを全て10mに揃えて、その両端部に圧着端子を取り付けた。
さらに、これらの高周波給電ケーブルを地面から80cmの高さとし、5m地点で折り返して折り返し地点の前の部分と後の部分とが7cmの間隔で並列状態となるようにループ状に敷設した。これらの高周波給電ケーブルに対して周波数9.7kHzの交流電流を流した際のインピーダンスを測定し、交流導体抵抗を算出した。また、各高周波給電ケーブルに対して直流電流も流して直流導体抵抗も算出した。
さらに、インピーダンスの測定が完了した高周波給電ケーブルに対して、水平に敷設された状態を維持したまま外側シースの内部にエポキシ樹脂を充填して硬化させることにより温度感知線に対する給電用電線の配置を固定した。そして、当該高周波給電ケーブルの長手方向における任意の五か所をケーブル長手方向に対して垂直に切断し、切断部の端面を研磨した。研磨された切断端面について、温度感知用電線に対する周囲の各給電用電線の非接触を示す隙間の有無を観察した。
【0029】
発明の実施例1~10と比較例1~5について、「非接触となる比率」、給電用電線の導体の素線の撚り線ピッチ、各給電用電線の撚り合わせピッチ、各給電用電線の押さえ巻きの有無と種別、交流導体抵抗の良否を示した図表を
図4及び
図5に示す。
【0030】
図4及び
図5において、交流導体抵抗の良否は、AA,A,B,Cの四段階で行った。AAは優良、Aは良、Bは不可の上、Cは不可の下を示す。これらの段階的評価は、各高周波給電ケーブルについて取得された直流導体抵抗値を1とした場合の交流導体抵抗値の倍率に基づいて判断した。
即ち、評価AA:0.95以下、A:0.96~1、B:1.01~1.05、C:1.06以上である。
【0031】
実施例1~10は、いずれも、給電用電線の撚り合わされた状態の導体の外径が3.5mm、素線の撚り線ピッチが前述した撚り合わされた状態の導体の外径の10倍以上25倍以下の範囲内である。
実施例1~10は、いずれも、各給電用電線の撚り合わせピッチが前述した層心径の15倍以上35倍以下の範囲内である。
実施例1~10は、いずれも、撚り合わされた給電用電線に対する押さえ巻きテープは巻かれておらず、実施例8~10は糸が巻かれている。
また、実施例1~10について、上記以外の細部の構成については、既に述べた高周波給電ケーブル10と同一である。
【0032】
比較例1~5は、給電用電線の導体の素線の撚り線ピッチについて、比較例1のみが撚り合わされた状態の導体の外径の30倍であって、それ以外は全て撚り合わされた状態の導体の外径の18倍である。
比較例1~5は、各給電用電線の撚り合わせピッチについて、比較例1,3,4が撚り線外径の23倍であって、比較例2,5は撚り線外径の40倍である。
比較例1~5は、撚り合わされた給電用電線に対する押さえ巻きテープについて、比較例1,2は巻かれておらず、比較例3~5は押さえ巻きテープが巻かれている。さらに、比較例3は、押さえ巻きテープを幅の1/4を重ねて螺旋に巻いたラップ巻きである。比較例4,5は、押さえ巻きテープを幅の1/2の隙間をあけて螺旋に巻いたギャップ巻きである。
また、比較例1~5について、上記以外の細部の構成については、既に述べた高周波給電ケーブル10と同一である。
【0033】
また、実施例1~10及び比較例1~5は、各々と同じ製造条件で作成された被検体によって、いずれも、温度感知線によって、ケーブル敷設箇所周辺の火災や隣接機器の熱暴走、あるいは、給電設備の不具合等による過電流時における高温状態が検出できることが確認された。
【0034】
上記実施例1~10は、いずれも「非接触となる比率」が40%以上となった。また、給電用電線の導体の素線の撚り線ピッチ、各給電用電線の撚り合わせピッチは、いずれも推奨範囲内でより小さい倍数となっているものが「非接触となる比率」がより大きくなった。
また、各給電用電線に対する糸の巻き付けを行った場合には、「非接触となる比率」が若干の低下を生じる程度であり、推奨範囲内を十分に維持することができた。
【0035】
さらに、上記実施例1~10は、いずれも、直流導体抵抗に対する交流導体抵抗の倍率値が十分に低下して、優良又は良となる結果が得られた。これらは、高周波給電ケーブルに交流を流して給電を行う場合に、交流導体抵抗の上昇が抑制され、高周波給電効率が向上することが示している。
特に、「非接触となる比率」が60%以上の実施例は、軒並み優良となっており、高周波給電効率が極めて向上するという結果が得られた。
【0036】
一方、比較例1~5は、いずれも「非接触となる比率」が40%に達しなかった。給電用電線の導体の素線の撚り線ピッチ又は各給電用電線の撚り合わせピッチのいずれかが推奨範囲より大きくなった場合に、「非接触となる比率」が明確に低下を生じた。
また、複数の給電用電線に対して押さえ巻きテープの巻き付けを行った場合には、「非接触となる比率」が顕著に低下を生じた。
【0037】
さらに、上記比較例1~5は、いずれも、直流導体抵抗に対する交流導体抵抗の倍率値が大きくなり、悪化を生じている。このため、比較例1~5の高周波給電ケーブルは、高周波を流した場合に交流導体抵抗が高くなり、高周波給電効率が低下することが明確となった。
なお、比較例2では、交流導体抵抗について測定不可となっているが、これは、撚り合わせピッチが長くなり過ぎると共に、押さえテープの巻き付けが行われていない構成のため、ケーブル形状を保持することが出来ず、測定を行うことができなかったことを示している。
【0038】
[発明の実施形態の技術的効果]
発明の実施形態である高周波給電ケーブル10は、温度感知線20と複数本の給電用電線30が非接触となる比率を40%以上としている。これにより、各給電用電線30の配置が疎となり、高周波給電ケーブル10に交流を流して給電を行う場合に、交流導体抵抗が低減され、高周波給電効率が向上する。
また、温度感知線20と複数本の給電用電線30が非接触となる比率を50%以上、さらに、60%以上とした場合には、比率の増加に応じて、交流導体抵抗がさらに低減され、高周波給電効率がさらに良好となる。
【0039】
また、高周波給電ケーブル10は、各給電用電線30の導体31の素線311の撚り線ピッチを撚り合わされた状態の導体31の外径の10倍以上25倍以下の範囲としている。
このため、絶縁体32を突き破る素線311による絶縁不良の発生を抑えつつ、各給電用電線30の曲げ強度を高めて撚り合わされた各給電用電線30を径方向外側に広げ、「非接触となる比率」を十分に高めることができる。このため、交流導体抵抗値を効果的に低減すると共に高周波給電効率を高く維持することが可能となる。
特に、各給電用電線30の導体31の素線311の撚り線ピッチを撚り合わされた状態の導体31の外径の12倍以上20倍以下の範囲とした場合には、交流導体抵抗値をより効果的に低減して、高周波給電効率を効果的に高めることが可能となる。
【0040】
また、高周波給電ケーブル10は、給電用電線の撚り合わせピッチが層心径の15倍以上35倍以下の範囲としている。
このため、自己インダクタンスの発生を抑制しつつ、各給電用電線30が径方向外側に広がる作用を得ることができ、「非接触となる比率」を十分に高めることができる。このため、交流導体抵抗値を効果的に低減すると共に高周波給電効率を高く維持することが可能となる。
特に、給電用電線の撚り合わせピッチを層心径の18倍以上32倍以下の範囲、さらには、層心径の20倍以上30倍以下の範囲とした場合には、発生する自己インダクタンスの影響を抑えつつ、交流導体抵抗値をより効果的に低減して、高周波給電効率をさらに効果的に高めることが可能となる。
【0041】
また、上記高周波給電ケーブル10は、各給電用電線30が密とならないように離隔配置するための樹脂材料その他の介在物を介挿する構造を採らず、隣り合う給電用電線30同士の間や各給電用電線30と温度感知線20との間に空隙が生じた構造である。このため、隣り合う給電用電線30同士の間や各給電用電線30と温度感知線20との間には、樹脂材料その他の介在物よりも誘電率が低い空気が存在する構成のため、効果的に交流導体抵抗の上昇を抑制して高周波給電効率を向上させることが可能である。
さらに、各給電用電線30が密とならないように離隔配置するための樹脂材料その他の介在物を介挿する場合には、各給電用電線30を離隔配置で保持する構造物が必須となる。そのような特殊形状の構造物は、切削工程も必要となり、ケーブル長手方向に沿って形成する場合の製造の困難性が非常に高い。また、そのような特殊形状の構造物をケーブル内に配置するのも困難性が高い。このため、ケーブルの製造コスト増大が避けられない。
これに対して、上記高周波給電ケーブル10は、各給電用電線30が密とならないように離隔配置するための樹脂材料その他の介在物が不要であるため、製造が容易であって、生産コストも飛躍的に低減可能である。
【0042】
[その他]
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られるものではない。上記実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0043】
例えば、温度感知線は、絶縁体212の軟化による二本の温度感知用電線21の導体211の短絡によって発熱を検出する構成に限定されない。
例えば、温度感知用電線は、絶縁体の軟化によって生じる二本の温度感知用電線の導体の距離の変動を抵抗値や静電容量の変化を検出することによって発熱を検出してもよい。或いは、より簡易に、温度変化を導体の抵抗値の変化から検出してもよい。さらに、温度感知線は、電線利用のものに限らず、他の形式のものでもよい。例えば、光ファイバーにより温度検出を行う温度感知線を利用してもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 高周波給電ケーブル
20 温度感知線
21 温度感知用電線
211 導体
212 絶縁体
22 押さえテープ
23 シース
24 ジャケット
30 給電用電線
31 導体
311 素線
32 絶縁体
33 糸
40 外側シース
N 隙間