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特開2024-93718画像解析システム、画像解析方法、および画像解析プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093718
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】画像解析システム、画像解析方法、および画像解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/11 20170101AFI20240702BHJP
【FI】
G06T7/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210268
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100144440
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 一之
(72)【発明者】
【氏名】筏井 大斗
(72)【発明者】
【氏名】上田 一貴
(72)【発明者】
【氏名】富坂 克彦
(72)【発明者】
【氏名】関 英之
(72)【発明者】
【氏名】松沢 光晴
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096BA08
5L096CA02
5L096DA02
5L096FA06
5L096FA64
5L096HA11
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】画像中の対象物を正確に特定すること。
【解決手段】画像解析システムは、基材と該基材上のコーティング領域とを有する1以上の対象物を示す対象画像を取得し、インスタンスセグメンテーションを実行するインスタンスセグメンテーションモデルに対象画像を入力して、1以上の対象物のうち少なくとも一つの対象物に対応する少なくとも一つのインスタンスマスクを設定し、セマンティックセグメンテーションを実行するセマンティックセグメンテーションモデルに対象画像を入力して、少なくとも一つの対象物から成る対象物集合の輪郭およびコーティング領域を示すセマンティックマスクを設定し、少なくとも一つのインスタンスマスクとセマンティックマスクとに基づいて、少なくとも一つの対象物のそれぞれについて、該対象物の輪郭およびコーティング領域を特定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのプロセッサを備え、
前記少なくとも一つのプロセッサが、
基材と該基材上のコーティング領域とを有する1以上の対象物を示す対象画像を取得し、
インスタンスセグメンテーションを実行するインスタンスセグメンテーションモデルに前記対象画像を入力して、前記1以上の対象物のうち少なくとも一つの対象物に対応する少なくとも一つのインスタンスマスクを設定し、
セマンティックセグメンテーションを実行するセマンティックセグメンテーションモデルに前記対象画像を入力して、前記少なくとも一つの対象物から成る対象物集合の輪郭およびコーティング領域を示すセマンティックマスクを設定し、
前記少なくとも一つのインスタンスマスクと前記セマンティックマスクとに基づいて、前記少なくとも一つの対象物のそれぞれについて、該対象物の前記輪郭および前記コーティング領域を特定する、
画像解析システム。
【請求項2】
前記少なくとも一つのプロセッサが、前記少なくとも一つのインスタンスマスクのそれぞれについて、該インスタンスマスクを、前記セマンティックマスクのうち対応する部分に置換して、該インスタンスマスクに対応する前記対象物の前記輪郭および前記コーティング領域を特定する、
請求項1に記載の画像解析システム。
【請求項3】
前記1以上の対象物が、隣り合う第1対象物および第2対象物を含み、
前記少なくとも一つのインスタンスマスクが、前記第1対象物に対応する第1インスタンスマスクと、前記第2対象物に対応する第2インスタンスマスクとを含み、
前記少なくとも一つのプロセッサが、
前記第1インスタンスマスクおよび前記第2インスタンスマスクの重複部分を、前記第1インスタンスマスクに対応する第1部分と前記第2インスタンスマスクに対応する第2部分とに分割し、
前記第1インスタンスマスクの非重複部分および前記第1部分を、前記セマンティックマスクのうち前記対応する部分に置換して、前記第1対象物の前記輪郭および前記コーティング領域を特定し、
前記第2インスタンスマスクの非重複部分および前記第2部分を、前記セマンティックマスクのうち前記対応する部分に置換して、前記第2対象物の前記輪郭および前記コーティング領域を特定する、
請求項2に記載の画像解析システム。
【請求項4】
前記少なくとも一つのプロセッサが、
前記重複部分の各画素について、該画素から前記第1インスタンスマスクの第1重心までの距離と、該画素から前記第2インスタンスマスクの第2重心までの距離とに基づいて、該画素を前記第1インスタンスマスクおよび前記第2インスタンスマスクの一方に割り当て、これにより前記重複部分を前記第1部分と前記第2部分とに分割する、
請求項3に記載の画像解析システム。
【請求項5】
前記少なくとも一つのプロセッサが、
前記少なくとも一つのインスタンスマスクのそれぞれを膨張させ、
前記膨張させた少なくとも一つのインスタンスマスクと前記セマンティックマスクとに基づいて、前記少なくとも一つの対象物のそれぞれについて前記輪郭および前記コーティング領域を特定する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の画像解析システム。
【請求項6】
前記少なくとも一つのプロセッサが、
前記輪郭についてのセマンティックセグメンテーションを実行する第1セマンティックセグメンテーションモデルに前記対象画像を入力して、前記対象物集合の前記輪郭を示す第1セマンティックマスクを設定し、
前記コーティング領域についてのセマンティックセグメンテーションを実行する第2セマンティックセグメンテーションモデルに前記対象画像を入力して、前記コーティング領域を示す第2セマンティックマスクを設定し、
前記第1セマンティックマスクおよび前記第2セマンティックマスクを合成して、前記対象物集合の前記輪郭および前記コーティング領域を示す前記セマンティックマスクを設定する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の画像解析システム。
【請求項7】
前記対象物が粒子状物質である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の画像解析システム。
【請求項8】
前記基材がコア粒子であり、
前記コーティング領域が複数の微粒子の集合である、
請求項7に記載の画像解析システム。
【請求項9】
少なくとも一つのプロセッサを備える画像解析システムにより実行される画像解析方法であって、
基材と該基材上のコーティング領域とを有する1以上の対象物を示す対象画像を取得するステップと、
インスタンスセグメンテーションを実行するインスタンスセグメンテーションモデルに前記対象画像を入力して、前記1以上の対象物のうち少なくとも一つの対象物に対応する少なくとも一つのインスタンスマスクを設定するステップと、
セマンティックセグメンテーションを実行するセマンティックセグメンテーションモデルに前記対象画像を入力して、前記少なくとも一つの対象物から成る対象物集合の輪郭およびコーティング領域を示すセマンティックマスクを設定するステップと、
前記少なくとも一つのインスタンスマスクと前記セマンティックマスクとに基づいて、前記少なくとも一つの対象物のそれぞれについて、該対象物の前記輪郭および前記コーティング領域を特定するステップと、
を含む画像解析方法。
【請求項10】
基材と該基材上のコーティング領域とを有する1以上の対象物を示す対象画像を取得するステップと、
インスタンスセグメンテーションを実行するインスタンスセグメンテーションモデルに前記対象画像を入力して、前記1以上の対象物のうち少なくとも一つの対象物に対応する少なくとも一つのインスタンスマスクを設定するステップと、
セマンティックセグメンテーションを実行するセマンティックセグメンテーションモデルに前記対象画像を入力して、前記少なくとも一つの対象物から成る対象物集合の輪郭およびコーティング領域を示すセマンティックマスクを設定するステップと、
前記少なくとも一つのインスタンスマスクと前記セマンティックマスクとに基づいて、前記少なくとも一つの対象物のそれぞれについて、該対象物の前記輪郭および前記コーティング領域を特定するステップと、
をコンピュータに実行させる画像解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は画像解析システム、画像解析方法、および画像解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表面に導電性の複数の突起部を備えた導電粒子の表面形状を評価する導電粒子形状評価装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-061722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像中の対象物を正確に特定するための仕組みが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る画像解析システムは少なくとも一つのプロセッサを備える。少なくとも一つのプロセッサは、基材と該基材上のコーティング領域とを有する1以上の対象物を示す対象画像を取得し、インスタンスセグメンテーションを実行するインスタンスセグメンテーションモデルに対象画像を入力して、1以上の対象物のうち少なくとも一つの対象物に対応する少なくとも一つのインスタンスマスクを設定し、セマンティックセグメンテーションを実行するセマンティックセグメンテーションモデルに対象画像を入力して、少なくとも一つの対象物から成る対象物集合の輪郭およびコーティング領域を示すセマンティックマスクを設定し、少なくとも一つのインスタンスマスクとセマンティックマスクとに基づいて、少なくとも一つの対象物のそれぞれについて、該対象物の輪郭およびコーティング領域を特定する。
【0006】
本開示の一側面に係る画像解析方法は、少なくとも一つのプロセッサを備える画像解析システムにより実行される。この画像解析方法は、基材と該基材上のコーティング領域とを有する1以上の対象物を示す対象画像を取得するステップと、インスタンスセグメンテーションを実行するインスタンスセグメンテーションモデルに対象画像を入力して、1以上の対象物のうち少なくとも一つの対象物に対応する少なくとも一つのインスタンスマスクを設定するステップと、セマンティックセグメンテーションを実行するセマンティックセグメンテーションモデルに対象画像を入力して、少なくとも一つの対象物から成る対象物集合の輪郭およびコーティング領域を示すセマンティックマスクを設定するステップと、少なくとも一つのインスタンスマスクとセマンティックマスクとに基づいて、少なくとも一つの対象物のそれぞれについて、該対象物の輪郭およびコーティング領域を特定するステップとを含む。
【0007】
本開示の一側面に係る画像解析プログラムは、基材と該基材上のコーティング領域とを有する1以上の対象物を示す対象画像を取得するステップと、インスタンスセグメンテーションを実行するインスタンスセグメンテーションモデルに対象画像を入力して、1以上の対象物のうち少なくとも一つの対象物に対応する少なくとも一つのインスタンスマスクを設定するステップと、セマンティックセグメンテーションを実行するセマンティックセグメンテーションモデルに対象画像を入力して、少なくとも一つの対象物から成る対象物集合の輪郭およびコーティング領域を示すセマンティックマスクを設定するステップと、少なくとも一つのインスタンスマスクとセマンティックマスクとに基づいて、少なくとも一つの対象物のそれぞれについて、該対象物の輪郭およびコーティング領域を特定するステップとをコンピュータに実行させる。
【0008】
このような側面においては、インスタンスセグメンテーションとセマンティックセグメンテーションという2種類の画像セグメンテーションが実行されて、各対象物について2種類のマスクが設定される。そして、その2種類のマスクに基づいて、各対象物について輪郭およびコーティング領域が特定される。このように一つの対象画像に対して2種類の画像セグメンテーションを適用することで、画像中の対象物を正確に特定できる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一側面によれば、画像中の対象物を正確に特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】評価システムの機能構成を示す図である。
図2】学習済みモデルの生成の一例を示すフローチャートである。
図3】画像解析および評価の一例を示すフローチャートである。
図4】対象画像から対象物を特定する処理の詳細を示すフローチャートである。
図5】インスタンスセグメンテーションの一例を示す図である。
図6】セマンティックセグメンテーションの一例を示す図である。
図7】仮インスタンスマスクの膨張の一例を示す図である。
図8】マスクの置換の一例を示す図である。
図9】評価値の算出方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本開示での実施形態を詳細に説明する。図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
[システムの概要]
本開示に係る画像解析システムは、画像に写る対象物を特定するコンピュータシステムである。一例では、画像解析システムは画像に写る対象物の輪郭およびコーティング領域を特定する。
【0013】
対象物とは画像解析システムによって特定される固体をいう。対象物は基材およびコーティング領域を有する。基材は対象物の主たる領域を占める構成要素をいう。コーティング領域は基材上に位置する構成要素をいう。対象物は任意の形状、寸法、および成分を有する。例えば、対象物は球状、平面状、または柱状を呈してもよいし、より複雑な形状を呈してもよい。対象物は視認できる大きさを有してもよいし、顕微鏡を用いないと確認できないほどに小さくてもよい。基材の形状および寸法は、対象物の形状および寸法を左右し得る。コーティング領域は基材の表面の少なくとも一部を被覆する構成要素である。コーティング領域は粉状または粒状の粒子が基材上に付着することで形成されてもよいし、液状のコーティング剤または金属を含むコーティング剤が基材上に適用されることで形成されてもよい。互いに離れた複数のコーティング領域が一つの基材上に設けられてもよい。コーティング領域は、基材上に配置された1以上のコーティング要素によって形成され得る。コーティング要素の例として個々の粒子が挙げられる。コーティング要素として基材上に配置された粒子は、突起として把握されてもよい。コーティング領域は、基材の表面よりも盛り上がった凸部として、または密集した突起の集合として把握されてもよい。基材とコーティング領域との間で、成分の少なくとも一部が異なってもよいし、全成分が共通してもよい。基材およびコーティング領域のいずれも、有機化合物でも無機化合物でもよいし、有機化合物および無機化合物の双方を含んでもよい。
【0014】
対象物は粒子状物質であってもよい。一例では、粒子状物質は、コア粒子と、該コア粒子の表面に配置される複数の微粒子とを備える。微粒子の径はコア粒子の径より小さい。コア粒子は基材の一例であり、個々の微粒子はコーティング要素の一例であり、複数の微粒子の集合はコーティング領域の一例である。
【0015】
画像解析システムは、機械学習によって生成された学習済みモデルを用いて対象物を特定する。機械学習とは、与えられた情報に基づいて反復的に学習することで、法則またはルールを自律的に見つけ出す手法をいう。画像解析システムで用いられる学習済みモデルは、画像中の対象物を特定するために用いられる計算モデル、すなわち、画像セグメンテーションのための計算モデルである。一例では、画像解析システムは一つの対象画像に対して、インスタンスセグメンテーション(instance segmentation)とセマンティックセグメンテーション(semantic segmentation)という2種類の画像セグメンテーションを実行し、これらの実行結果に基づいて対象物を特定する。
【0016】
インスタンスセグメンテーションとは、画像に写る1以上の物体を、物体毎に、すなわちインスタンス毎に区別して特定する手法をいう。インスタンスセグメンテーションの例として、Mask R-CNN、R-RCN、およびYOLACTが挙げられる。インスタンスセグメンテーションは同種の個々の物体を互いに区別して検出する。一般に、インスタンスセグメンテーションでは、画像中における物体の領域を示すマスクの形状の精度がセマンティックセグメンテーションよりも低い。
【0017】
セマンティックセグメンテーションとは、インスタンスの違いを区別することなく、画像に写る1以上の物体を特定する手法をいう。セマンティックセグメンテーションの例として、U-Net、FCN、およびSegNetが挙げられる。セマンティックセグメンテーションは同種の2以上の物体を区別することができず、該2以上の物体の集合を示すマスクに対して一つの意味を与えることしかできない。しかし、一般に、セマンティックセグメンテーションでは、そのマスクの形状の精度はインスタンスセグメンテーションよりも高い。
【0018】
このようにインスタンスセグメンテーションおよびセマンティックセグメンテーションのそれぞれは長所および短所を持つ。画像解析システムはこれら2種類の画像セグメンテーションの長所を利用して、画像中の個々の対象物を自動的に且つ正確に特定することを目指す。
【0019】
一例では、画像解析システムは、画像に写る対象物の被覆に関する評価を実行するコンピュータシステムである評価システムの少なくとも一部として実現されてもよい。被覆とは、対象物の外観において基材の少なくとも一部がコーティング領域によって隠れた状態をいう。評価システムは、画像に写る対象物の輪郭およびコーティング領域を特定し、コーティング領域に関する評価を実行する。コーティング領域に関する評価とは、基材を被覆するコーティング領域について定量的に判断する処理をいう。例えば、評価システムは、コーティング領域による基材の被覆に関して評価してもよいし、コーティング領域そのものを評価してもよい。一例では、評価システムはコーティング領域に関する定量的な指標である評価値を算出し、その評価値を出力する。評価値は、コーティング領域による基材の被覆に関する値でもよいし、コーティング領域そのものの物理量でもよい。評価システムは、コーティング領域を自動的にかつ正確に特定して、対象物の被覆に関する評価を正確に実行することができる。
【0020】
[システムの構成]
図1は、本開示に係る画像解析システムが適用された評価システム10の機能構成の一例を示す図である。評価システム10はハードウェア構成要素としてプロセッサ101を備える。プロセッサ101は例えばCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、またはGPU(Graphics Processing Unit)である。評価システム10はハードウェア構成要素として更に、RAMおよびROMで構成される主記憶装置と、フラッシュメモリ、ハードディスク等で構成される補助記憶装置と、キーボード、マウス等の入力装置と、モニタ、スピーカ等の出力装置と、外部装置との間のデータ通信を実行する通信モジュールとを備える。評価システム10の各機能モジュールは、補助記憶装置に格納されたプログラムをプロセッサ101が実行することで実現される。
【0021】
コンピュータを評価システム10として機能させるための評価プログラムは、評価システム10の各機能モジュールを実現するためのプログラムコードを含む。この評価プログラムは本開示に係る画像解析プログラムを含む。評価プログラムは、例えばCD―ROM、DVD―ROM、または半導体メモリの非一時的な記録媒体に記録された上で提供されてもよい。あるいは、評価プログラムは、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。提供された評価プログラムは例えば補助記憶装置に記憶される。
【0022】
評価システム10は1台のコンピュータで構成されてもよいし、複数のコンピュータの集合、すなわち分散システムで構成されてもよい。評価システム10のために用いられるコンピュータの例として、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、タブレット端末、スマートフォン等の様々な種類のコンピュータが挙げられる。評価システム10のために複数台のコンピュータが用いられる場合には、これらのコンピュータがインターネット、イントラネット等の通信ネットワークを介して接続されることで、論理的に一つの評価システム10が構築される。評価システム10は、クラウドシステムのようなクライアント-サーバシステムとして実現されてもよいし、スタンドアローンのコンピュータによって実現されてもよい。
【0023】
一例では、評価システム10は通信ネットワークを介して少なくとも一つの外部ストレージと連携する。外部ストレージは、評価システム10での処理に用いられる各種のデータを格納する装置または記録媒体である。外部ストレージは評価システム10の構成要素でもよいし、評価システム10の外部に設けられてもよい。通信ネットワークはインターネット、イントラネット、またはこれらの組合せによって構築されてもよい。通信ネットワークは有線ネットワーク、無線ネットワーク、またはこれらの組合せによって構築されてもよい。
【0024】
図1は外部ストレージの例として教師画像データベース41および原画像データベース42を示す。教師画像データベース41は、機械学習のために用いられる少なくとも一つの教師画像を記憶するストレージである。原画像データベース42は、少なくとも一つの対象物を示す少なくとも一つの原画像51を記憶するストレージである。教師画像データベース41および原画像データベース42は一つのデータベースとして統合されてもよい。
【0025】
一例では、評価システム10は通信ネットワークを介して学習装置30と連携する。学習装置30は学習済みモデル20を生成するコンピュータまたはコンピュータシステムである。学習装置30は評価システム10の構成要素でもよいし、評価システム10の外部に設けられてもよい。学習済みモデル20はコンピュータシステム間で移植可能なので、評価システム10は他のコンピュータまたはコンピュータシステムから提供された学習済みモデル20を用いることも可能である。学習装置30による学習済みモデル20の生成は学習フェーズに相当する。
【0026】
一例では、プロセッサ101は、前処理部11、インスタンスセグメンテーション部12、第1セマンティックセグメンテーション部13、第2セマンティックセグメンテーション部14、特定部15、後処理部16、および算出部17として機能する。これらの機能モジュールは、生成された学習済みモデル20を用いる運用フェーズに対応する。
【0027】
前処理部11は、原画像51に対して前処理を実行して、1以上の対象物を示す対象画像52を生成する機能モジュールである。
【0028】
インスタンスセグメンテーション部12は、対象画像52に対してインスタンスセグメンテーションを実行して、対象画像52内の少なくとも一つの対象物に対応する少なくとも一つのインスタンスマスクを設定する機能モジュールである。インスタンスセグメンテーション部12は、学習済みモデル20の一例であるインスタンスセグメンテーションモデル21を用いてインスタンスマスクを設定する。インスタンスマスクは、個々の対象物が互いに区別されるように、インスタンスセグメンテーションによって各対象物に設定されるマスクである。
【0029】
第1セマンティックセグメンテーション部13は、対象物の集合についての輪郭についてのセマンティックセグメンテーションを対象画像52に対して実行して、その輪郭を示すセマンティックマスクを設定する機能モジュールである。以下ではこのセマンティックマスクを第1セマンティックマスクともいう。第1セマンティックマスクは、対象画像52上の少なくとも一つの対象物から成る対象物集合に対して設定される。第1セマンティックセグメンテーション部13は、対象物集合の輪郭についてのセマンティックセグメンテーションを実行する学習済みモデル20である第1セマンティックセグメンテーションモデル22を用いて第1セマンティックマスクを設定する。
【0030】
第2セマンティックセグメンテーション部14は、対象物集合のコーティング領域についてのセマンティックセグメンテーションを対象画像52に対して実行して、そのコーティング領域を示すセマンティックマスクを設定する機能モジュールである。以下ではこのセマンティックマスクを第2セマンティックマスクともいう。第2セマンティックマスクは、対象物集合に対応する少なくとも一つのコーティング領域から成るコーティング集合に対して設定される。第2セマンティックセグメンテーション部14は、対象物集合のコーティング領域についてのセマンティックセグメンテーションを実行する学習済みモデル20である第2セマンティックセグメンテーションモデル23を用いて第2セマンティックマスクを設定する。
【0031】
特定部15は少なくとも一つのインスタンスマスク、第1セマンティックマスク、および第2セマンティックマスクに基づいて、対象画像52における対象物の輪郭およびコーティング領域を特定する機能モジュールである。
【0032】
後処理部16は、対象物が特定された対象画像52に対して後処理を実行する機能モジュールである。
【0033】
算出部17は、特定された各対象物の被覆に関する評価値を算出する機能モジュールである。
【0034】
[システムの動作]
以下では、評価システム10に関連する処理の例を説明すると共に、本開示に係る画像解析方法および評価方法の例を説明する。以下の例では対象物として粒子状物質を示し、コーティング要素としてコア粒子上の個々の微粒子を示す。
【0035】
(学習済みモデルの生成)
図2を参照しながら、学習済みモデル20の生成について説明する。図2はその処理の一例を処理フローS1として示すフローチャートである。処理フローS1は学習フェーズに相当する。処理フローS1はインスタンスセグメンテーションモデル21、第1セマンティックセグメンテーションモデル22、および第2セマンティックセグメンテーションモデル23のそれぞれについて実行され、したがって、これら3種類の学習済みモデルに共通の処理である。
【0036】
ステップS11では、学習装置30が一つの教師画像を教師画像データベース41から取得する。教師画像は、機械学習において正解(ground truth)として扱われる情報であるラベルが関連付けられた画像である。一例では、提供されたサンプル画像に対してユーザ操作によってラベルが設定されることで、教師画像が生成される。インスタンスセグメンテーションモデル21を生成するための教師画像のラベルは、各対象物に設定されるインスタンスマスクである。第1セマンティックセグメンテーションモデル22を生成するための教師画像のラベルは、対象物集合に設定される第1セマンティックマスクである。第2セマンティックセグメンテーションモデル23を生成するための教師画像のラベルは、コーティング集合に設定される第2セマンティックマスクである。一例では、ラベルとしての第2セマンティックマスクは、所定の閾値以上の面積または高さを有するコーティング領域またはコーティング要素に設定される。面積に関する閾値も高さに関する閾値も、対象物の種類等に応じて適宜設定されてよい。
【0037】
ステップS12では、学習装置30が教師画像に基づく学習を実行する。一例では、学習装置30はニューラルネットワークを含む機械学習モデルに教師画像を入力し、その機械学習モデルから出力される推定結果を得る。学習装置30はその推定結果と、教師画像のラベルとの誤差に基づいて、バックプロパゲーション(誤差逆伝播法)等の手法を用いて機械学習モデル内のパラメータを更新する。例えば学習装置30はニューラルネットワークの重みを更新する。一例では、学習装置30は、インスタンスセグメンテーションモデル21を生成するために、Mask R-CNNによる学習を実行し、第1および第2セマンティックセグメンテーションモデル22,23を生成するために、U-Netによる学習を実行する。
【0038】
ステップS13では、学習装置30が機械学習を終了するか否かを判定する。所定の終了条件を満たさないと学習装置30が判定した場合には(ステップS13においてNO)、処理はステップS11に戻る。繰り返し処理では、学習装置30はステップS11において次の教師画像を取得し、ステップS12においてその教師画像に基づく学習を実行する。一方、終了条件を満たすと学習装置30が判定した場合には(ステップS13においてYES)、処理はステップS14に進む。終了条件は誤差に基づいて設定されてもよいし、処理する教師画像の個数、すなわち学習の回数に基づいて設定されてもよい。あるいは、学習装置30は所与の検証用データを用いて機械学習モデルの性能を評価し、その評価が所与の基準を満たす場合に機械学習を終了してもよい。
【0039】
ステップS14では、学習装置30が、機械学習が終了した機械学習モデルを学習済みモデル20(インスタンスセグメンテーションモデル21、第1セマンティックセグメンテーションモデル22、または第2セマンティックセグメンテーションモデル23)として出力する。一例では、学習装置30はその学習済みモデル20を評価システム10の補助記憶装置に格納する。
【0040】
上述したように、処理フローS1はインスタンスセグメンテーションモデル21、第1セマンティックセグメンテーションモデル22、および第2セマンティックセグメンテーションモデル23のそれぞれについて実行される。これら3種類の学習済みモデル20は評価システム10によって用いられる。
【0041】
(対象画像の解析および対象物の評価)
図3および図4を参照しながら、対象画像を解析して対象物を評価する処理について説明する。図3はその処理の一例を処理フローS2として示すフローチャートである。図4は対象画像から対象物を特定する処理の詳細を示すフローチャートである。
【0042】
ステップS21では、前処理部11が原画像51を原画像データベース42から取得する。一例では、粒子状物質を示す原画像51は、カーボンテープ上に採取された複数の粒子状物質を走査型電子顕微鏡(SEM)によって撮像することにより得られるSEM画像である。
【0043】
ステップS22では、前処理部11が、原画像51に対する前処理を実行して対象画像52を生成する。文字列、目盛等の補助情報が原画像51中に表記されている場合には、前処理部11はその補助情報をトリミング等の画像処理によって除去して、補助情報を含まない対象画像52を生成してもよい。前処理部11は原画像51に対してヒストグラム平坦化を実行して、コントラストが高い対象画像52、すなわち対象物をより明瞭に写す対象画像52を生成してもよい。このように、前処理は補助情報の削除とヒストグラム平坦化との少なくとも一方を含み得る。
【0044】
ステップS23では、インスタンスセグメンテーション部12、第1セマンティックセグメンテーション部13、第2セマンティックセグメンテーション部14、および特定部15が協働して対象画像52から対象物を特定する。図4を参照しながらこの処理の詳細を説明する。
【0045】
ステップS231では、インスタンスセグメンテーション部12、第1セマンティックセグメンテーション部13、および第2セマンティックセグメンテーション部14のそれぞれが前処理部11から対象画像52を取得する。
【0046】
ステップS232では、インスタンスセグメンテーション部12が対象画像52に対してインスタンスセグメンテーションを実行する。インスタンスセグメンテーション部12は対象画像52をインスタンスセグメンテーションモデル21に入力し、この学習済みモデルによって推定されたインスタンスマスクを取得する。この結果、インスタンスセグメンテーション部12は、対象画像52に写る1以上の対象物のうち少なくとも一つの対象物に対応する少なくとも一つのインスタンスマスクを設定する。
【0047】
図5はインスタンスセグメンテーションの一例を示す図である。図5は、インスタンスセグメンテーション部12によって処理された対象画像52の一部を部分画像201として示す。部分画像201は、隣り合う対象物310,320を写す。この例では、対象物310に対してインスタンスマスク211が設定され、対象物320に対してインスタンスマスク212が設定される。上述したように、インスタンスマスクの形状の精度は相対的に低い。この例では、インスタンスマスク211,212の外縁は対象物310,320の輪郭と完全に一致しない。例えば、インスタンスマスク211は、対象物310の輪郭より外側の領域を覆う一方で、対象物310のわずかな部分を覆っていない。インスタンスマスク212と対象物320との関係も同様である。
【0048】
図4に戻って、ステップS233では、第1セマンティックセグメンテーション部13が対象画像52に対して輪郭についてのセマンティックセグメンテーションを実行する。第1セマンティックセグメンテーション部13は対象画像52を第1セマンティックセグメンテーションモデル22に入力し、この学習済みモデルによって推定された第1セマンティックマスクを取得する。この結果、第1セマンティックセグメンテーション部13は、対象画像52に写る少なくとも一つの対象物から成る対象物集合の輪郭を示す第1セマンティックマスクを設定する。
【0049】
ステップS234では、第2セマンティックセグメンテーション部14が対象画像52に対してコーティング領域についてのセマンティックセグメンテーションを実行する。第2セマンティックセグメンテーション部14は対象画像52を第2セマンティックセグメンテーションモデル23に入力し、この学習済みモデルによって推定された第2セマンティックマスクを取得する。この結果、第2セマンティックセグメンテーション部14は、コーティング集合を示す第2セマンティックマスクを設定する。
【0050】
ステップS235では、特定部15が第1セマンティックマスクおよび第2セマンティックマスクを合成して、対象物集合の輪郭およびコーティング領域の双方を示す統合セマンティックマスクを生成する。
【0051】
図6はセマンティックセグメンテーションの一例を示す図である。図6は、第1セマンティックセグメンテーション部13によって処理された対象画像52の一部を部分画像202として示し、第2セマンティックセグメンテーション部14によって処理された対象画像52の一部を部分画像203として示す。部分画像202,203はいずれも、図5に示す部分画像201に対応する。
【0052】
この例では、対象物310,320の集合に対して第1セマンティックマスク221が設定され、対象物310,320上のコーティング領域の集合に対して第2セマンティックマスク222が設定される。この例では、第2セマンティックマスク222は、所定の閾値以上の面積または高さを有するコーティング領域またはコーティング要素に設定される。このような第2セマンティックマスク222の結果は、教師画像に設定されるラベルに起因する。セマンティックマスクは同種の2以上の物体を区別しないので、第1セマンティックマスク221は対象物310と320とを区別せず、第2セマンティックマスク222は個々のコーティング領域を区別しない。上述したように、セマンティックマスクの形状の精度は相対的に高い。この例では、第1セマンティックマスク221の外縁は対象物310,320の輪郭とほぼ一致し、第2セマンティックマスク222の外縁は個々のコーティング領域の輪郭とほぼ一致する。部分画像204は部分画像202,203を合成することで得られる。部分画像204は、第1セマンティックマスク221および第2セマンティックマスク222の双方から成る統合セマンティックマスクを示す。
【0053】
図4に戻って、ステップS236では、特定部15が、インスタンスセグメンテーション部12によって得られた各インスタンスマスクに基づいて、仮インスタンスマスクおよび仮重心を設定する。一例では、特定部15はそれぞれのインスタンスマスクをそのまま仮インスタンスマスクとして設定し、それぞれのインスタンスマスクの重心をそのまま仮重心として設定する。
【0054】
ステップS237では、特定部15がそれぞれの仮インスタンスマスクを膨張させる。この膨張は、仮インスタンスマスクの外縁を径方向外側に向けてnピクセルだけ移動させて、仮インスタンスマスクの面積を増加させる処理である。この処理は、対象物の全体を覆うようにそれぞれの仮インスタンスマスクを設定することを意図する。値nは対象物の一般的な形状または寸法に応じて設定されてよい。
【0055】
図7は仮インスタンスマスクの膨張の一例を示す図である。この例では、特定部15は、仮インスタンスマスク211,212のそれぞれを膨張させる。この処理により、膨張させた仮インスタンスマスク211は対象物310の全体を覆い、膨張させたインスタンスマスク212は対象物320の全体を覆う。
【0056】
図4に戻って、ステップS238では、特定部15が、膨張させたそれぞれの仮インスタンスマスクについて非重複部分を統合セマンティックマスクに置換する。仮インスタンスマスクの非重複部分とは、他の仮インスタンスマスクと重ならない部分をいう。特定部15はその非重複部分を、統合セマンティックマスクのうち該非重複部分に対応する部分に置換して、該非重複部分における対象物の輪郭およびコーティング領域を最終的に特定する。一例では、特定部15は、個々の対象物を一意に特定するための識別子である対象物IDをそれぞれの非重複部分に関連付けて、置換された個々のマスクを個々の対象物に対応させる。
【0057】
ステップS239では、特定部15が、膨張させたそれぞれの仮インスタンスマスクについて重複部分を統合セマンティックマスクに置換する。重複部分が存在しない場合にはステップS239は省略される。仮インスタンスマスクの重複部分とは、他の仮インスタンスマスクと重なる部分をいう。一例では、特定部15は、重複部分の個々の画素と個々の仮重心との距離に基づいて、重複部分の各画素を単一の仮インスタンスマスクに割り当てる。例えば、特定部15は重複部分の各画素について、該画素からの距離が最も短い仮重心を判定し、その仮重心を有する仮インスタンスマスクに該画素を割り当てる。特定部15はこのような処理によって、重複部分を、個々の仮インスタンスマスクに対応する個々の部分に分割する。特定部15はその分割によって個々の対象物の輪郭を最終的に決定する。更に、特定部15は重複部分に対応する統合セマンティックマスクを参照して、重複部分に位置する1以上の対象物のそれぞれのコーティング領域を特定する。
【0058】
ステップS238,S239において、特定部15は少なくとも一つのインスタンスマスクと統合セマンティックマスクとに基づいて、対象画像52中の少なくとも一つの対象物のそれぞれについて、該対象物の輪郭およびコーティング領域を特定する。一例では、特定部15は、少なくとも一つのインスタンスマスクのそれぞれについて、該インスタンスマスクを、セマンティックマスクのうち対応する部分に置換して、該インスタンスマスクに対応する対象物の輪郭およびコーティング領域を特定する。第1対象物および第2対象物の重複部分が存在する場合には、特定部15はその重複部分を、第1仮インスタンスマスクに対応する第1部分と第2仮インスタンスマスクに対応する第2部分とに分割する。そして、特定部15は、第1仮インスタンスマスクの非重複部分および第1部分を、統合セマンティックマスクのうち対応する部分に置換して、第1対象物の輪郭およびコーティング領域を特定する。また、特定部15は、第2インスタンスマスクの非重複部分および第2部分を、統合セマンティックマスクのうち対応する部分に置換して、第2対象物の輪郭およびコーティング領域を特定する。一例では、特定部15は特定された各対象物について、対象物ID、輪郭、およびコーティング領域の対応を示すインスタンス情報を生成する。
【0059】
図8はマスクの置換の一例を示す図であり、図7に対応する。その図7で示すように、対象物310,320の仮インスタンスマスクは範囲240内で重なる。したがって、それら2個の対象物の間には重複部分が存在する。
【0060】
この例では、特定部15は仮インスタンスマスク211の非重複部分を統合セマンティックマスクに置換して、対象物310の輪郭を示すマスク231と、対象物310のコーティング領域を示すマスク232とを設定する。また、特定部15は仮インスタンスマスク212の非重複部分を統合セマンティックマスクに置換して、対象物320の輪郭を示すマスク233と、対象物320のコーティング領域を示すマスク234とを設定する。マスク231,233は第1セマンティックマスク221に対応し、マスク232,234は第2セマンティックマスク222に対応する。
【0061】
特定部15は更に、範囲240内に位置する重複部分を統合セマンティックマスクに置換する。特定部15は重複部分の各画素について、対象物310の仮重心311からの距離と、対象物320の仮重心321からの距離とを求め、該画素に最も近い仮重心を有する仮インスタンスマスクに該画素を関連付ける。この結果、境界線250が対象物310および対象物320の輪郭の一部として設定される。特定部15は対象物310に対応する部分を統合セマンティックマスクに置換して、対象物310の輪郭を示すマスク231と、対象物310のコーティング領域を示すマスク232とを最終的に確定する。また、特定部15は対象物320に関連付けられた部分を統合セマンティックマスクに置換して、対象物320の輪郭を示すマスク233と、対象物320のコーティング領域を示すマスク234とを最終的に確定する。確定されたマスク231,232は、対象物310を示す最終的なインスタンスマスクであるといえ、確定されたマスク233,234は、対象物320を示す最終的なインスタンスマスクであるといえる。
【0062】
図4に戻って、ステップS240では、特定部15が、対象物が特定された対象画像52に対する後処理を実行する。例えば、特定部15は、対象画像52の端に位置して全体が写っていない対象物のインスタンス情報を削除または無効化してもよい。
【0063】
図3に戻って、ステップS24では、算出部17が、特定された対象物に関する評価値を算出する。対象物に関する評価値は、基材およびコーティング層を含む対象物全体に関する評価値でもよいし、コーティング層に関する評価値でもよいし、コーティング要素に関する評価値でもよい。例えば、算出部17は対象物の寸法を算出してもよい。あるいは、算出部17は、コーティング領域による基材の被覆に関する評価値を算出してもよく、例えば、コーティング領域によって基材が被覆された割合を示す被覆率を算出してもよい。あるいは、算出部17は少なくとも一つのコーティング要素のそれぞれについて、面積、高さ、半径等の物理パラメータを評価値として算出してもよい。コーティング要素の高さとは、基材表面からコーティング要素の頂部までの距離をいう。あるいは、算出部17は少なくとも一つのコーティング要素のそれぞれについて、真円度等のような、形状に関する評価値を算出してもよい。算出部17は標準偏差、平均値、中央値等のような、複数のコーティング要素に関する統計値を評価値として算出してもよい。例えば、算出部17は面積、真円度、高さ、半径等の様々な物理パラメータについての統計値を算出し得る。コーティング要素が粒子である場合には、算出部17は粒子径の変動係数(Coefficient of Variation)であるCV値を評価値として算出してもよい。CV値は下記式により得られる。CV値も統計値の一例である。
CV値=(標準偏差)/(中位径)
【0064】
算出部17は、特定された1以上の対象物のうち、所定の要件を満たす対象物に限って評価値を算出してもよい。例えば、算出部17は、対象物の輪郭の全長に対する、重複部分に対応する輪郭の長さの割合が所定の閾値以下である対象物に限って、評価値を算出してもよい。その閾値は例えば30%でもよい。図8に示す例では、「重複部分に対応する輪郭」は境界線250上に位置する輪郭である。重複部分に対応する輪郭の長さの割合が相対的に大きい場合には、特定された輪郭が対象物の実際の輪郭から乖離する可能性がある。そのような可能性を持つ対象物を評価値の計算から排除することで、より正確な評価値を得ることが可能になる。
【0065】
図9を参照しながら、評価値の算出方法に関する様々な例を説明する。図9はその算出方法を説明するための図である。この例に示す対象物は、基材331と、コーティング要素である微粒子332とを有する粒子状物質330である。
【0066】
一例では、算出部17は粒子状物質330の径、すなわち粒径を算出する。算出部17は仮重心333を中心に周方向に沿って粒子状物質330を仮想的にn等分して、n個の扇状区間を設定する。続いて、算出部17は各扇状区間において粒子状物質330の半径を算出する。算出部17はi番目の扇状区間について次のようにその半径を算出する。すなわち、算出部17はi番目の扇状区間と(i+1)番目の扇状区間とにわたって、粒子状物質330の輪郭上に角度θ毎にサンプル点を設定する。そして、算出部17は各サンプル点について仮重心333からの距離を算出する。続いて、算出部17は算出された複数の距離を降順にソートして上位p個の距離を取得し、そのp個の距離の平均値を半径として得る。或る扇状区間での半径を算出するために次の扇状区間のサンプル点も用いることで、扇状区間の境界上に微粒子332が存在したり歪な微粒子332が存在したりするために生じ得る半径の誤差を抑制し得る。算出部17はn個の扇状区間での半径の平均値を求め、その平均値の2倍を粒径として得る。
【0067】
算出部17は、重複部分に対応する輪郭に対応する扇状区間を除外し、残りの扇状区間のそれぞれにおける半径を算出し、算出された複数の半径の平均値の2倍を粒径として求めてもよい。
【0068】
図9の例では、算出部17は20°毎に粒子状物質330を仮想的に分割して18個の扇状区間401,402,403,404,…を設定する。続いて、算出部17は各扇状区間について半径を算出する。一例では、θ=2°であり、p=3である。扇状区間401での半径を算出する場合には、算出部17は扇状区間401,402にわたって2°毎にサンプル点を設定し、各サンプル点について仮重心333からの距離411を算出する。そして、算出部17は上位3個の距離411の平均値を扇状区間401での半径として得る。扇状区間402での半径を算出する場合には、算出部17は扇状区間402,403にわたって2°毎にサンプル点を設定し、続いて、扇状区間401の場合と同様に、扇状区間402での半径を得る。その後、算出部17は18個の扇状区間での半径の平均値を求め、その平均値の2倍を粒径として算出する。図9はその粒径を円421で示す。
【0069】
一例では、算出部17は粒子状物質330での被覆率を次のように求める。すなわち、算出部17は算出された粒径のα倍の径を有し、仮重心333を中心とする規定円422を設定する。係数αは0より大きく1より小さい値であり、例えばα=0.6である。規定円422は粒子状物質330の中央領域に対応する。算出部17は、規定円422内に位置するコーティング領域の総面積、すなわち、中央領域内に位置する1以上のコーティング要素の総面積を算出する。そして、算出部17は中央領域(規定円422)の面積に対する該総面積の割合を被覆率として算出する。それぞれの面積は画素数によって特定され得る。したがって、算出部17は、中央領域の画素数に対する、該中央領域内に位置するコーティング領域の総画素数の割合を被覆率として算出してもよい。
【0070】
一例では、算出部17は中央領域(規定円422)内に位置するコーティング要素のそれぞれについて、面積を評価値として算出してもよいし、形状に関する評価値を算出してもよい。算出部17は中央領域内に位置する複数のコーティング要素に関する統計値を評価値として算出してもよい。コーティング要素が粒子である場合には、算出部17は中央領域内におけるCV値を評価値として算出してもよい。
【0071】
一例では、算出部17は微粒子332の高さを算出する。まず、算出部17はn個の扇状区間のそれぞれにおいて微粒子332の高さを算出する。i番目の扇状区間における高さの算出方法は次のとおりである。すなわち、算出部17はi番目の扇状区間と(i+1)番目の扇状区間とにわたって、粒子状物質330の輪郭上に角度θ毎にサンプル点を設定する。そして、算出部17は各サンプル点について仮重心333からの距離を算出し、算出された複数の距離を降順にソートする。続いて、算出部17は上位p個の距離を取得し、そのp個の距離の平均値Haveを最高地点として得る。また、算出部17は下位p個の距離を取得し、そのp個の距離の平均値Laveを最低地点として得る。そして、算出部17はその二つの平均値Have,Laveの差を、i番目の扇状区間での微粒子332の高さとして求める。或る扇状区間での微粒子332の半径を算出するために次の扇状区間のサンプル点も用いることで、扇状区間の境界上に微粒子332が存在したり歪な微粒子332が存在したりするために生じ得る高さの誤差を抑制し得る。算出部17はn個の扇状区間での高さの平均値を求め、その平均値を粒子状物質330の微粒子332の高さとして得る。
【0072】
図9の例では、算出部17は18個の扇状区間のそれぞれについて微粒子332の高さを算出する。一例では、θ=2°であり、p=3である。扇状区間401での高さを算出する場合には、算出部17は扇状区間401,402にわたって2°毎にサンプル点を設定し、各サンプル点について仮重心333からの距離411を算出する。そして、算出部17は、上位3個の距離411の平均値Haveと下位3個の距離411の平均値Laveとの差を、扇状区間401での微粒子332の高さとして得る。扇状区間402での半径を算出する場合には、算出部17は扇状区間402,403にわたって2°毎にサンプル点を設定し、続いて、扇状区間401の場合と同様に、扇状区間402での微粒子332の高さを得る。その後、算出部17は18個の扇状区間での高さの平均値を、粒子状物質330の微粒子332の高さとして求める。
【0073】
算出部17は、重複部分に対応する輪郭に対応する扇状区間を除外し、残りの扇状区間のそれぞれについて微粒子332の高さを算出し、算出された複数の高さの平均値を粒子状物質330の微粒子332の高さとして求めてもよい。
【0074】
図3に戻って、ステップS25では、算出部17が評価値を出力する。算出部17は評価値を、モニタ上に表示してもよいし、データベース等の所定の記憶装置に格納してもよいし、他のコンピュータに送信してもよい。
【0075】
算出部17は、インスタンスセグメンテーションおよびセマンティックセグメンテーションの少なくとも一方の結果を表示してもよい。例えば、算出部17は、インスタンスマスク(仮インスタンスマスク)、第1セマンティックマスク、第2セマンティックマスク、または統合セマンティックマスクが重畳された対象画像52を表示してもよい。あるいは、算出部17はインスタンス情報に基づいて、最終的なインスタンスマスクが重畳された対象画像52を表示してもよい。ユーザはこれらのような画像を通して、画像セグメンテーションの結果、評価値の根拠等を確認できる。
【0076】
評価システム10は処理フローS2を複数回または繰り返し実行し得る。例えば、評価システム10は、ユーザが対象画像52を選択する度に、その選択に応答して処理フローS2を実行する。評価システム10は、複数の対象物に対応する複数の評価値の統計値を、更なる評価値として算出してもよい。
【0077】
[変形例]
以上、本開示に係る技術をその様々な例に基づいて詳細に説明した。しかし、本開示は上記の例に限定されるものではない。本開示に係る技術については、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0078】
原画像はデータベース以外の装置から提供されてもよく、例えば、SEM、カメラ等のような撮像装置から直接に提供されてもよい。
【0079】
上記の例では特定部15が第1セマンティックマスクおよび第2セマンティックマスクを合成して統合セマンティックマスクを生成するが、対象物集合の輪郭およびコーティング領域を示すセマンティックマスクは別の手法により設定されてもよい。例えば、画像解析システムは、対象物集合の輪郭およびコーティング領域の双方についてのセマンティックセグメンテーションを実行するセマンティックセグメンテーションモデルに対象画像を入力して、そのセマンティックマスクを設定してもよい。
【0080】
少なくとも一つのプロセッサにより実行される方法の処理手順は上記実施形態での例に限定されない。例えば、上述したステップの一部が省略されてもよいし、別の順序で各ステップが実行されてもよい。また、上述したステップのうちの任意の2以上のステップが組み合わされてもよいし、ステップの一部が修正または削除されてもよい。あるいは、上記の各ステップに加えて他のステップが実行されてもよい。例えば、対象画像に対する前処理および後処理の少なくとも一方が省略されてもよい。仮インスタンスマスクの膨張も省略可能である。
【0081】
本開示における二つの数値の大小関係の比較では、「以上」および「よりも大きい」という二つの基準のどちらが用いられてもよく、「以下」および「未満」の二つの基準のうちのどちらが用いられてもよい。
【0082】
本開示において、「少なくとも一つのプロセッサが、第1の処理を実行し、第2の処理を実行し、…第nの処理を実行する。」との表現、またはこれに対応する表現は、第1の処理から第nの処理までのn個の処理の実行主体(すなわちプロセッサ)が途中で変わる場合を含む概念を示す。すなわち、この表現は、n個の処理のすべてが同じプロセッサで実行される場合と、n個の処理においてプロセッサが任意の方針で変わる場合との双方を含む概念を示す。
【0083】
[付記]
上記の様々な例から把握されるとおり、本開示は以下に示す態様を含む。
(付記1)
少なくとも一つのプロセッサを備え、
前記少なくとも一つのプロセッサが、
基材と該基材上のコーティング領域とを有する1以上の対象物を示す対象画像を取得し、
インスタンスセグメンテーションを実行するインスタンスセグメンテーションモデルに前記対象画像を入力して、前記1以上の対象物のうち少なくとも一つの対象物に対応する少なくとも一つのインスタンスマスクを設定し、
セマンティックセグメンテーションを実行するセマンティックセグメンテーションモデルに前記対象画像を入力して、前記少なくとも一つの対象物から成る対象物集合の輪郭およびコーティング領域を示すセマンティックマスクを設定し、
前記少なくとも一つのインスタンスマスクと前記セマンティックマスクとに基づいて、前記少なくとも一つの対象物のそれぞれについて、該対象物の前記輪郭および前記コーティング領域を特定する、
画像解析システム。
(付記2)
前記少なくとも一つのプロセッサが、前記少なくとも一つのインスタンスマスクのそれぞれについて、該インスタンスマスクを、前記セマンティックマスクのうち対応する部分に置換して、該インスタンスマスクに対応する前記対象物の前記輪郭および前記コーティング領域を特定する、
付記1に記載の画像解析システム。
(付記3)
前記1以上の対象物が、隣り合う第1対象物および第2対象物を含み、
前記少なくとも一つのインスタンスマスクが、前記第1対象物に対応する第1インスタンスマスクと、前記第2対象物に対応する第2インスタンスマスクとを含み、
前記少なくとも一つのプロセッサが、
前記第1インスタンスマスクおよび前記第2インスタンスマスクの重複部分を、前記第1インスタンスマスクに対応する第1部分と前記第2インスタンスマスクに対応する第2部分とに分割し、
前記第1インスタンスマスクの非重複部分および前記第1部分を、前記セマンティックマスクのうち前記対応する部分に置換して、前記第1対象物の前記輪郭および前記コーティング領域を特定し、
前記第2インスタンスマスクの非重複部分および前記第2部分を、前記セマンティックマスクのうち前記対応する部分に置換して、前記第2対象物の前記輪郭および前記コーティング領域を特定する、
付記2に記載の画像解析システム。
(付記4)
前記少なくとも一つのプロセッサが、
前記重複部分の各画素について、該画素から前記第1インスタンスマスクの第1重心までの距離と、該画素から前記第2インスタンスマスクの第2重心までの距離とに基づいて、該画素を前記第1インスタンスマスクおよび前記第2インスタンスマスクの一方に割り当て、これにより前記重複部分を前記第1部分と前記第2部分とに分割する、
付記3に記載の画像解析システム。
(付記5)
前記少なくとも一つのプロセッサが、
前記少なくとも一つのインスタンスマスクのそれぞれを膨張させ、
前記膨張させた少なくとも一つのインスタンスマスクと前記セマンティックマスクとに基づいて、前記少なくとも一つの対象物のそれぞれについて前記輪郭および前記コーティング領域を特定する、
付記1~4のいずれか一つに記載の画像解析システム。
(付記6)
前記少なくとも一つのプロセッサが、
前記輪郭についてのセマンティックセグメンテーションを実行する第1セマンティックセグメンテーションモデルに前記対象画像を入力して、前記対象物集合の前記輪郭を示す第1セマンティックマスクを設定し、
前記コーティング領域についてのセマンティックセグメンテーションを実行する第2セマンティックセグメンテーションモデルに前記対象画像を入力して、前記コーティング領域を示す第2セマンティックマスクを設定し、
前記第1セマンティックマスクおよび前記第2セマンティックマスクを合成して、前記対象物集合の前記輪郭および前記コーティング領域を示す前記セマンティックマスクを設定する、
付記1~5のいずれか一つに記載の画像解析システム。
(付記7)
前記対象物が粒子状物質である、
付記1~6のいずれか一つに記載の画像解析システム。
(付記8)
前記基材がコア粒子であり、
前記コーティング領域が複数の微粒子の集合である、
付記7に記載の画像解析システム。
(付記9)
少なくとも一つのプロセッサを備える画像解析システムにより実行される画像解析方法であって、
基材と該基材上のコーティング領域とを有する1以上の対象物を示す対象画像を取得するステップと、
インスタンスセグメンテーションを実行するインスタンスセグメンテーションモデルに前記対象画像を入力して、前記1以上の対象物のうち少なくとも一つの対象物に対応する少なくとも一つのインスタンスマスクを設定するステップと、
セマンティックセグメンテーションを実行するセマンティックセグメンテーションモデルに前記対象画像を入力して、前記少なくとも一つの対象物から成る対象物集合の輪郭およびコーティング領域を示すセマンティックマスクを設定するステップと、
前記少なくとも一つのインスタンスマスクと前記セマンティックマスクとに基づいて、前記少なくとも一つの対象物のそれぞれについて、該対象物の前記輪郭および前記コーティング領域を特定するステップと、
を含む画像解析方法。
(付記10)
基材と該基材上のコーティング領域とを有する1以上の対象物を示す対象画像を取得するステップと、
インスタンスセグメンテーションを実行するインスタンスセグメンテーションモデルに前記対象画像を入力して、前記1以上の対象物のうち少なくとも一つの対象物に対応する少なくとも一つのインスタンスマスクを設定するステップと、
セマンティックセグメンテーションを実行するセマンティックセグメンテーションモデルに前記対象画像を入力して、前記少なくとも一つの対象物から成る対象物集合の輪郭およびコーティング領域を示すセマンティックマスクを設定するステップと、
前記少なくとも一つのインスタンスマスクと前記セマンティックマスクとに基づいて、前記少なくとも一つの対象物のそれぞれについて、該対象物の前記輪郭および前記コーティング領域を特定するステップと、
をコンピュータに実行させる画像解析プログラム。
【0084】
付記1,9,10によれば、インスタンスセグメンテーションとセマンティックセグメンテーションという2種類の画像セグメンテーションが実行されて、各対象物について2種類のマスクが設定される。そして、その2種類のマスクに基づいて、各対象物について輪郭およびコーティング領域が特定される。このように一つの対象画像に対して2種類の画像セグメンテーションを適用することで、上述したインスタンスセグメンテーションおよびセマンティックセグメンテーションの双方の長所を生かして、画像中の対象物を正確に特定できる。対象物が正確に特定されることで、その対象物に関する評価もより正確に行うことが可能になる。
【0085】
付記2によれば、個々の対象物を互いに区別するインスタンスマスクが基準として用いられた上で、形状の精度が高いセマンティックマスクによってそのインスタンスマスクが置換される。このように2種類のマスクを用いることで、対象物の輪郭およびコーティング領域を正確に特定できる。
【0086】
付記3によれば、隣り合うインスタンスマスクが重なり合った場合にそれぞれのインスタンスマスクが明確に分けられるので、隣り合う2個の対象物のそれぞれを的確に特定できる。
【0087】
付記4によれば、各インスタンスの重心からの距離を考慮することで、重複部分の各画素を、最も確からしいと推定されるインスタンスマスクに割り当てることができる。したがって、隣り合うインスタンスマスクが重なる場合にも画像中の各対象物を正確に特定できる。
【0088】
付記5によれば、形状の精度がセマンティックマスクよりも低いインスタンスマスクを膨張させることで、対象物の全体がインスタンスマスクによってより確実に覆われる。その膨張させたインスタンスマスクがセマンティックマスクによって置換されるので、対象物の輪郭およびコーティング領域を正確に特定できる。
【0089】
付記6によれば、対象物の輪郭およびコーティング領域のそれぞれについて個別にセマンティックセグメンテーションが実行されるので、その輪郭およびコーティング領域を示すセマンティックマスクの形状をより正確に設定できる。その結果、画像中の対象物をより正確に特定できる。
【0090】
付記7によれば、画像中の粒子状物質を正確に特定できる。その結果、粒子状物質に関する評価もより正確に行うことが可能になる。
【0091】
付記8によれば、インスタンスセグメンテーションおよびセマンティックセグメンテーションを用いて複数の微粒子の集合を正確に特定できる。その結果、微粒子をコーティング領域の構成要素として含む粒子状物質をより正確に評価できる。
【符号の説明】
【0092】
10…評価システム、11…前処理部、12…インスタンスセグメンテーション部、13…第1セマンティックセグメンテーション部、14…第2セマンティックセグメンテーション部、15…特定部、16…後処理部、17…算出部、20…学習済みモデル、21…インスタンスセグメンテーションモデル、22…第1セマンティックセグメンテーションモデル、23…第2セマンティックセグメンテーションモデル、30…学習装置、41…教師画像データベース、42…原画像データベース、51…原画像、52…対象画像、211,212…インスタンスマスク(仮インスタンスマスク)、221…第1セマンティックマスク、222…第2セマンティックマスク、310,320…対象物、311,321…仮重心、330…粒子状物質、331…基材、332…微粒子、333…仮重心。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9