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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093914
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】検査装置及び検査画像の生成方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/2251 20180101AFI20240702BHJP
   G01N 23/18 20180101ALI20240702BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240702BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G01N23/2251
G01N23/18
G06T7/00 610C
G01N21/956 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210563
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】杉原 真児
【テーマコード(参考)】
2G001
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G001AA03
2G001BA07
2G001CA03
2G001DA09
2G001FA06
2G001GA06
2G001HA13
2G001KA03
2G001LA11
2G051AA51
2G051AA56
2G051AB02
2G051CA04
2G051CB01
2G051CB02
2G051EA12
2G051EB01
2G051ED11
5L096BA03
5L096DA02
5L096FA06
5L096FA35
5L096FA59
5L096GA51
(57)【要約】
【課題】検査画像の輪郭線の抽出精度を向上する。
【解決手段】実施形態によれば、検査装置1は、試料30の第1画像(SEM画像)を撮像する撮像機構10と、第1画像の階調値に基づいて第1閾値(面積閾値)を算出する第1回路302と、第1画像に含まれる2行×2列に配置された4つの第1画素の中央に設けられた第2画素(面積画素)に、第1閾値に基づく第1等高線を生成する第2回路303と、生成された第1等高線を利用して第2画素における第1輪郭点を算出する第3回路304と、参照画像と第1輪郭点に基づく検査画像とを比較する比較回路215とを含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の第1画像を撮像する撮像機構と、
前記第1画像の階調値に基づいて第1閾値を算出する第1回路と、
前記第1画像に含まれる2行×2列に配置された4つの第1画素の中央に設けられた第2画素に、前記第1閾値に基づく第1等高線を生成する第2回路と、
生成された前記第1等高線を利用して前記第2画素における第1輪郭点を算出する第3回路と、
参照画像と前記第1輪郭点に基づく検査画像とを比較する比較回路と
を備える、検査装置。
【請求項2】
前記第2回路は、前記第2画素において、前記第1等高線で囲まれる前記第1閾値以上である第1面積を算出し、
前記第3回路は、ソーベルフィルタを用いて、前記第2画素の第1法線ベクトルを算出し、前記第2画素において、前記第1法線ベクトルと直交し、前記第2画素と算出された前記第1面積が同じになる第1半平面を形成し、前記第2画素の前記第1半平面を構成する線分の中点を前記第1輪郭点として算出する、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記第3回路は、前記第2画素の前記第1等高線の中点を前記第1輪郭点とする、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記第1回路は、前記第1画像の前記階調値のヒストグラムを生成し、前記ヒストグラムを用いて予め設定された第2閾値以上の画素数を有する階調値の最小値と最大値とを決定し、前記最小値と最大値とを用いて前記第1閾値を算出する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
試料の第1画像及び前記第1画像の比較対象となる前記試料の第2画像を撮像する撮像機構と、
前記第1画像の階調値に基づいて第1閾値を算出し、前記第1閾値を用いて前記第2画像の第2閾値を算出する第1回路と、
前記第1画像に含まれる2行×2列に配置された4つの第1画素の中央に設けられた第2画素に、前記第1閾値に基づく第1等高線を生成し、前記第2画像に含まれる2行×2列に配置された4つの第3画素の中央に設けられた第4画素に、前記第2閾値に基づく第2等高線を生成する第2回路と、
生成された前記第1等高線を利用して前記第2画素における第1輪郭点を算出し、生成された前記第2等高線を利用して前記第4画素における第2輪郭点を算出する第3回路と
前記第1輪郭点に基づく検査画像と前記第2輪郭点に基づく参照画像とを比較する比較回路と
を備える、検査装置。
【請求項6】
前記第2回路は、前記第2画素において、前記第1等高線で囲まれる前記第1閾値以上である第1面積を算出し、前記第4画素において、前記第2等高線で囲まれる前記第2閾値以上である第2面積を算出し、
前記第3回路は、ソーベルフィルタを用いて、前記第2画素の第1法線ベクトルと前記第4画素の第2法線ベクトルとをそれぞれ算出し、前記第2画素において、前記第1法線ベクトルと直交し、前記第2画素と算出された前記第1面積が同じになる第1半平面を形成し、前記第2画素の前記第1半平面を構成する線分の中点を前記第1輪郭点として算出し、前記第4画素において、前記第2法線ベクトルと直交し、前記第4画素と算出された前記第2面積が同じになる第2半平面を形成し、前記第4画素の前記第2半平面を構成する線分の中点を前記第2輪郭点として算出する、
請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記第3回路は、前記第2画素の前記第1等高線の中点を前記第1輪郭点とし、前記第4画素の前記第2等高線の中点を前記第2輪郭点とする、
請求項5に記載の検査装置。
【請求項8】
試料の第1画像を撮像する工程と、
前記第1画像の階調値に基づいて第1閾値を算出する工程と、
前記第1画像に含まれる2行×2列に配置された4つの第1画素の中央に設けられた第2画素に、前記第1閾値に基づく第1等高線を生成する工程と、
生成された前記第1等高線を利用して前記第2画素における第1輪郭点を算出する工程と
を備える、検査画像の生成方法。
【請求項9】
前記第2画素において、前記第1等高線で囲まれる前記第1閾値以上である第1面積を算出する工程を更に備え、
前記第1輪郭点を算出する工程は、
ソーベルフィルタを用いて、前記第2画素における法線ベクトルを算出する工程と、
前記第2画素において、前記法線ベクトルと直交し、前記第2画素と算出された前記第1面積が同じになる第1半平面を形成し、前記第2画素の前記第1半平面を構成する線分の中点を前記第1輪郭点として算出する工程と
を含む、請求項8に記載の検査画像の生成方法。
【請求項10】
前記第2画素の前記第1等高線の中点を前記第1輪郭点とする工程を更に備える、
請求項8に記載の検査画像の生成方法。
【請求項11】
前記第1閾値を算出する工程は、
前記第1画像の前記階調値のヒストグラムを生成する工程と、
前記ヒストグラムを用いて予め設定された第2閾値以上の画素数を有する階調値の最小値と最大値とを決定する工程と、
前記最小値と最大値とを用いて前記第1閾値を算出する工程と
を含む、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の検査画像の生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料上に形成されたパターンの欠陥検査をするための検査装置及び検査画像の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程では、露光装置(「ステッパ」または「スキャナ」とも呼ばれる)を用いた縮小露光により、回路パターンが半導体基板上に転写される。露光装置では、回路パターンを半導体基板(以下、「ウェハ」とも表記する)上に転写するために、原画パターンが形成されたマスク(「レチクル」とも呼ばれる)が用いられる。
【0003】
例えば、最先端のデバイスでは、数nmの線幅の回路パターンの形成が要求される。回路パターンの微細化に伴い、マスクにおける原画パターンも微細化している。このため、電子線欠陥検査装置には、微細なパターンに対応した高い欠陥検出性能が求められる。
【0004】
欠陥検査方式には、試料(マスク等)を撮影した画像(撮影画像)に基づく検査画像と、設計データに基づく参照画像とを比較するD-DB(Die to Database)方式と、試料上に形成された同一パターンからなる複数の領域同士を比較するD-D(Die to Die)方式とがある。
【0005】
電子線欠陥検査装置は、撮影画像からパターンの輪郭線を抽出して、検査画像を生成する。電子線欠陥検査装置は、検査画像のパターンの輪郭線と、参照画像のパターンの輪郭線とを比較することにより欠陥を検出している。
【0006】
例えば、特許文献1では、異なる方向性を持った複数の二次元空間フィルタ関数を用いて撮影画像から輪郭線の抽出を行う方法が開示されている。この場合、各フレーム画像(画素)において、異なる方向毎にフィルタ処理が行われる。そして、方向毎に得られた値(フィルタ後強度)のうち少なくとも1つが閾値よりも大きい場合、当該画素が、輪郭線を含む画素の候補(輪郭画素候補)として抽出される。
【0007】
また、例えば、特許文献2では、検査画像及び参照画像の任意の矩形領域毎に、輝度値が補間され、補間された輝度値が基準輝度値よりも大きい領域の面積が演算される。そして、検査画像の面積と参照画像の面積とを比較する方法が開示されている。この場合、矩形領域内における面積の差分から検査画像と参照画像とのズレが検査される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2022-16779号公報
【特許文献2】特開2020-183928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電子線欠陥検査装置において、撮影画像のパターンのエッジの強度が低下すると、撮影画像のエッジプロファイルが緩慢になり、撮影画像からパターンの輪郭線を安定的に抽出するのが困難となる。更に、パターンの微細化により、エッジフィルタのサイズよりもパターンのエッジ間の距離が小さくなると、輪郭線の抽出が困難となる。これに対応するため、エッジフィルタの長さを小さくすると、ノイズ耐性及び位置精度が低下する。
【0010】
本発明はこうした点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明では、SEM画像の撮像において、試料に電子線を照射すると、照射面の材料の種類によって、得られる二次電子の放出強度が異なる部分、すなわち、パターンのエッジ部分で得られる信号の差異(以下、「マテリアルコントラスト」と表記する)が大きく(以下、「マテリアルコントラストリッチ」と表記する)、エッジの強度が小さい場合においても、パターンの輪郭点線を抽出することができる。これにより、輪郭線の抽出精度を向上できる検査装置及び検査画像の生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、検査装置は、試料の第1画像を撮像する撮像機構と、第1画像の階調値に基づいて第1閾値を算出する第1回路と、第1画像に含まれる2行×2列に配置された4つの第1画素の中央に設けられた第2画素に、第1閾値に基づく第1等高線を生成する第2回路と、生成された第1等高線を利用して第2画素における第1輪郭点を算出する第3回路と、参照画像と第1輪郭点に基づく検査画像とを比較する比較回路とを含む。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、検査装置は、試料の第1画像及び第1画像の比較対象となる試料の第2画像を撮像する撮像機構と、第1画像の階調値に基づいて第1閾値を算出し、第1閾値を用いて第2画像の第2閾値を算出する第1回路と、第1画像に含まれる2行×2列に配置された4つの第1画素の中央に設けられた第2画素に、第1閾値に基づく第1等高線を生成し、第2画像に含まれる2行×2列に配置された4つの第3画素の中央に設けられた第4画素に、第2閾値に基づく第2等高線を生成する第2回路と、生成された第1等高線を利用して第2画素における第1輪郭点を算出し、生成された第2等高線を利用して第4画素における第2輪郭点を算出する第3回路と第1輪郭点に基づく検査画像と第2輪郭点に基づく参照画像とを比較する比較回路とを含む。
【0013】
本発明の第3の態様によれば、検査画像の生成方法は、試料の第1画像を撮像する工程と、第1画像の階調値に基づいて第1閾値を算出する工程と、第1画像に含まれる2行×2列に配置された4つの第1画素の中央に設けられた第2画素に、第1閾値に基づく第1等高線を生成する工程と、生成された第1等高線を利用して第2画素における第1輪郭点を算出する工程とを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の検査装置及び検査画像の生成方法によれば、検査画像の輪郭線の抽出精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1実施形態に係る検査装置の全体構成を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る検査装置が含む輪郭抽出回路のブロック図である。
図3図3は、第1実施形態に係る検査装置における検査工程のフローチャートである。
図4図4は、第1実施形態に係る検査装置における比較工程において、検査画像の輪郭線と参照画像の輪郭線を含む4×4画素の具体例を示す図である。
図5図5は、第1実施形態に係る検査装置における面積画像生成及び輪郭データ生成のフローチャートである。
図6図6は、第1実施形態に係る検査装置におけるSEM画像の階調値と画素数の関係を示すヒストグラムの具体例である。
図7図7は、第1実施形態に係る検査装置における面積画素の面積算出の具体例を示す図である。
図8図8は、第1実施形態に係る検査装置におけるSEM画像と面積画像との関係を示す図である。
図9図9は、第1実施形態に係る検査装置における第1のフィルタ処理の具体例を示す図である。
図10図10は、第1実施形態に係る検査装置における第2のフィルタ処理の具体例を示す図である。
図11図11は、第1実施形態に係る検査装置における輪郭点算出の具体例を示す図である。
図12図12は、第1実施形態に係る検査装置における面積画像の具体例を示す図である。
図13図13は、第1実施形態に係る検査装置における近接輪郭点の具体例を示す図である。
図14図14は、第1実施形態に係る検査装置における検査画像の具体例を示す図である。
図15図15は、第2実施形態に係る検査装置における面積画像生成及び輪郭データ生成のフローチャートである。
図16図16は、第2実施形態に係る検査装置における輪郭点算出の具体例を示す図である。
図17図17は、第3実施形態に係る検査装置における検査工程のフローチャートである。
図18図18は、第3実施形態に係る検査装置における面積画像生成及び輪郭データ生成のフローチャートである。
図19図19は、第3実施形態に係る検査装置における検査用SEM画像及び参照用SEM画像をそれぞれ4つの領域に分割した例を示す図である。
図20図20は、第4実施形態に係る検査装置における面積画像生成及び輪郭データ生成のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。実施形態は、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示している。図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法及び比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。本発明の技術的思想は、構成要素の形状、構造、配置等によって特定されるものではない。
【0017】
以下では、検査装置として、走査型電子顕微鏡(以下、「SEM(Scanning Electron Microscope)」と表記する)を用いて試料の電子線画像(以下、「SEM画像」とも表記する)を撮像する欠陥検査装置について説明する。なお、欠陥検査装置は、電子線以外のエネルギービームを試料に照射して、画像を撮像してもよい。欠陥検査装置は、光学顕微鏡を用いて試料の光学画像を撮像してもよいし、受光素子を用いて、試料を反射または透過した光の光学画像を撮像してもよい。また、本実施形態では、検査対象となる試料がマスクである場合について説明するが、試料は、半導体装置の製造に用いられるウェハ、または液晶表示装置などに使用される基板等、表面にパターンが設けられている試料であればよい。
【0018】
1.第1実施形態
第1実施形態について説明する。第1実施形態では、欠陥検査方式がD-DB(Die to Database)方式である場合について説明する。
【0019】
1.1 検査装置の全体構成
まず、図1を参照して、検査装置の全体構成の一例について説明する。図1は、検査装置1の全体構成を示す図である。
【0020】
図1に示すように、検査装置1は、撮像機構10と制御機構20とを含む。
【0021】
撮像機構10は、試料室11及び鏡筒12を含む。鏡筒12は、試料室11の上に設置されている。例えば、鏡筒12は、試料室11に対し垂直に延伸する円筒形状を有している。試料室11及び鏡筒12は、互いに接する面が開口している。試料室11と鏡筒12とにより形成される空間は、ターボ分子ポンプ等を用いて真空(減圧)状態に保持される。
【0022】
試料室11内には、ステージ13、ステージ駆動機構14、及び検出器15が設けられている。
【0023】
ステージ13の上には、試料(マスク)30が載置される。ステージ13は、ステージ13の表面に平行なX方向、及びステージ13の表面に平行であり且つX方向と交差するY方向に移動可能である。また、ステージ13は、ステージ13の表面に垂直なZ方向に移動可能であってもよいし、Z方向を回転軸として、XY平面上で回転軸周りに回転可能であってもよい。
【0024】
ステージ駆動機構14は、ステージ13を、X方向及びY方向に移動させるための駆動機構を有する。なお、ステージ駆動機構14は、例えば、ステージ13をZ方向に移動させる機構を有していてもよいし、Z方向を回転軸として、ステージ13をXY平面上で回転軸周りに回転させる機構を有していてもよい。
【0025】
検出器15は、試料から放出された二次電子または反射電子等を検出する。検出器15は、検出した二次電子または反射電子等の信号、すなわちSEM画像の撮像データを、画像取得回路213に送信する。
【0026】
鏡筒12内には、SEMの構成要素である電子銃16及び電子光学系17が設けられている。図1の例では、試料30にシングルビームを照射する電子光学系17の構成が示されている。なお、電子光学系17は、試料30にマルチビームを照射する構成であってもよい。
【0027】
電子銃16は、試料室11に向かって電子線を射出するように設置されている。電子銃16が射出する電子線は、シングルビームであってもよいし、マルチビームであってもよい。
【0028】
電子光学系17は、電子銃16から射出された電子線を、試料30の所定の位置に収束させて照射する。例えば、電子光学系17は、複数の集束レンズ101及び102と、複数の走査コイル103及び104と、対物レンズ105を含む。電子銃16から射出された電子線は、加速された後に集束レンズ101及び102、並びに対物レンズ105によって、ステージ13上に載置された試料30の表面に電子スポットとして集束する。走査コイル103及び104は、試料30上における電子スポットの位置を制御する。
【0029】
制御機構20は、制御回路21、記憶装置22、表示装置23、入力装置24、及び通信装置25を含む。
【0030】
制御回路21は、検査装置1の全体を制御する。より具体的には、制御回路21は、撮像機構10を制御してSEM画像(撮影画像)を取得する。また、制御回路21は、制御機構20を制御して、参照画像と検査画像とを比較し、欠陥を検出する。すなわち、制御回路21は、欠陥検査を実行するためのプロセッサである。例えば、制御回路21は、図示せぬCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を含む。例えば、CPUは、非一時的な記憶媒体としてのROMあるいは記憶装置22に格納されたプログラムをRAMに展開する。そして、制御回路21は、RAMに展開されたプログラムをCPUにより解釈及び実行して、検査装置1を制御する。なお、制御回路21は、例えば、マイクロプロセッサなどのCPUデバイスであってもよいし、パーソナルコンピュータなどのコンピュータ装置であってもよい。また、制御回路21は、少なくとも一部の機能が、特定用途集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Alley)、または、グラフィック処理ユニット(GPU:Graphics Processing Unit)等の他の集積回路によって担われる専用回路(専用プロセッサ)を含んでいてもよい。
【0031】
制御回路21は、展開回路211、参照画像生成回路212、画像取得回路213、輪郭抽出回路214、及び比較回路215を含む。なお、これらは、制御回路21が実行するプログラムによって構成されてもよいし、制御回路21が備えるハードウェアまたはファームウェアによって構成されてもよいし、制御回路21によって制御される個別の回路によって構成されてもよい。以下では、制御回路21が、実行するプログラムによって、展開回路211、参照画像生成回路212、画像取得回路213、輪郭抽出回路214、及び比較回路215の機能を実現する場合について説明する。
【0032】
展開回路211は、例えば、記憶装置22に保持されている設計データ221をパターン(図形)毎のデータに展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード及び図形寸法などを解釈する。そして、展開回路211は、設計データを、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして、2値または多値(例えば8bit)の画像(以下、「展開画像」とも表記する)に展開する。展開回路211は、展開画像の画素毎に図形が占める占有率を演算する。このようにして演算された各画素内の図形占有率が画素値である。以下では、展開画像の画素値が8ビットの階調値データで表される場合について説明する。この場合、各画素の画素値は、0~255の階調値で表される。画素値が0の場合、図形占有率は、0%であり、画素値が255の場合、図形占有率は、100%である。なお、検査装置1の欠陥検査方式がD-D(Die to Die)方式である場合、展開回路211は、廃されてもよい。
【0033】
参照画像生成回路212は、展開画像のリサイズ処理及びコーナー丸め処理を行う。リサイズ処理は、展開画像の図形パターンをリサイズする処理である。コーナー丸め処理は、リサイズ処理後の図形パターンのコーナー部分を丸める処理である。そして、参照画像生成回路212は、リサイズ処理及びコーナー丸め処理後の展開画像から図形パターンの輪郭を抽出して参照画像(輪郭画像)を生成する。参照画像生成回路212は、生成した参照画像を比較回路215及び記憶装置22に送信する。なお、検査装置1の欠陥検査方式がD-D(Die to Die)方式である場合、参照画像生成回路212は、輪郭抽出回路214において生成された輪郭画像のいずれかを参照画像として適用する。
【0034】
画像取得回路213は、撮像機構10の検出器15から撮像データを取得する。画像取得回路213は、撮像データに基づいて、SEM画像の階調値データを生成し、輪郭抽出回路214及び記憶装置22に送信する。
【0035】
輪郭抽出回路214は、SEM画像データに基づいて、パターンの輪郭データを抽出して検査画像(輪郭画像)を生成する。本実施形態の輪郭抽出回路214は、SEM画像に基づいて面積画像を生成する。面積画像は、SEM画像の各画素(以下、「SEM画素」とも表記する)の階調値に基づいて生成される。面積画像の詳細については後述する。輪郭抽出回路214は、面積画像からパターンの輪郭データを抽出する。輪郭データは、パターンの輪郭点及び輪郭点を結ぶ輪郭線に関する情報を含む。換言すると、輪郭データは、画素(面積画像の画素)毎に輪郭線が通る座標の代表値、すなわち輪郭点の座標位置と、輪郭点における輪郭ベクトルの法線方向の情報とを含む。輪郭抽出回路214の詳細については後述する。
【0036】
比較回路215は、検査画像と参照画像とを比較して欠陥を検出する。より具体的には、比較回路215は、検査画像と参照画像とのアライメントを行い、参照画像に対する検査画像のシフト量を算出する。比較回路215は、例えば、試料30面内におけるシフト量のばらつき等から検査画像の歪み量を測定し、歪み係数を算出する。例えば、歪み量を画像内の座標(X,Y)の多項式モデルで表し、歪み係数をその多項式の係数とすると好適である。比較回路215は、シフト量及び歪み係数を考慮した適切なアルゴリズムを用いて、検査画像と参照画像とを比較する。比較回路215は、検査画像と参照画像の誤差が予め設定された値を超えた場合には、対応する試料30の座標位置に欠陥があると判定する。
【0037】
記憶装置22は、欠陥検査に関するデータ及びプログラムを記憶する。例えば、記憶装置22は、設計データ221、検査条件のパラメータ情報222、検査データ223、及び閾値データ224等を記憶する。例えば、検査条件のパラメータ情報222には、撮像機構10の撮像条件、参照画像生成条件、SEM画像の輪郭抽出条件、及び欠陥検出条件等が含まれる。検査データ223には、画像データ(展開画像、参照画像、SEM画像、及び検査画像)、並びに検出された欠陥に関するデータ(座標及びサイズ等)が含まれる。閾値データ224には、後述する頻度閾値、面積閾値、分散閾値、距離閾値等のデータが含まれる。また、記憶装置22は、非一時的な記憶媒体として、欠陥検査プログラム225を記憶し得る。欠陥検査プログラム225は、制御回路21に欠陥検査を実行させるためのプログラムである。
【0038】
なお、記憶装置22は、外部ストレージとして、磁気ディスク記憶装置(HDD:Hard Disk Drive)またはソリッドステートドライブ(SSD)等の各種記憶装置を含んでいてもよい。更に、記憶装置22は、例えば、非一時的な記憶媒体としてCD(Compact Disc)またはDVD(Digital Versatile Disc)等に記憶されたプログラムを読み込むためのドライブを含んでいてもよい。
【0039】
表示装置23は、例えば、表示画面(例えば、LCD(Liquid Crystal Display)またはEL(Electroluminescence)ディスプレイ等)等を含む。表示装置23は、制御回路21の制御により、例えば、欠陥検出結果を表示する。
【0040】
入力装置24は、キーボード、マウス、タッチパネル、またはボタンスイッチなどの入力装置である。
【0041】
通信装置25は、外部装置との間でデータの送受信を行うために、ネットワークに接続するための装置である。通信には、各種の通信規格が用いられ得る。例えば、通信装置25は、外部装置から設計データ221を受信し、検査データ223等を外部装置に送信する。
【0042】
1.2 輪郭抽出回路の構成
次に、図2を参照して、輪郭抽出回路214の構成の一例について説明する。図2は、輪郭抽出回路214のブロック図である。なお、輪郭抽出回路214の各ブロックは、制御回路21がファームウェア等を実行することによりその機能が実現されてもよいし、専用回路によりその機能が実現されてもよい。
【0043】
図2に示すように、輪郭抽出回路214は、ノイズフィルタ処理回路301、面積閾値算出回路302、面積画像生成回路303、輪郭点算出回路304、及び近接輪郭点除去回路305を含む。なお、各部により生成されたデータは、その都度、記憶装置22に記憶され得る。
【0044】
ノイズフィルタ処理回路301は、SEM画像データのノイズを低減(除去)させる回路である。ノイズフィルタ処理回路301は、画像取得回路213からSEM画像データを取得する。そして、ノイズフィルタ処理回路301は、SEM画像の図形パターンの端部のノイズを低減させて、パターン端部の形状を滑らかにする。ノイズフィルタ処理には、ガウシアンフィルタ(Gaussian Filter)やバイラテラルフィルタ(Bilateral Filter)などの一般的なフィルタを用いることができる。
【0045】
面積閾値算出回路302は、面積閾値を算出する回路である。面積閾値は、後述する面積画像の生成に用いられる閾値である。面積閾値算出回路302は、SEM画像の階調値のヒストグラムを生成し、ヒストグラムから面積閾値を算出する。面積閾値の算出方法の詳細については、後述する。面積閾値は、閾値データ224として、記憶装置22に記憶され得る。
【0046】
面積画像生成回路303は、面積画像を生成する回路である。より具体的には、面積画像生成回路303は、SEM画像の互いに隣接する2(行)×2(列)のSEM画素の各中心点を頂点とした1画素領域(以下、「面積画素」と表記する)において、各頂点における階調値を線形補間して、面積閾値に対応する等高線を生成する。そして、面積画像生成回路303は、面積画素に占める面積閾値以上の領域の面積の占有率(単に「面積」と表記する)を算出する。面積画素における面積は、0~1の占有率で表記されてもよいし、SEM画素と同様に、8ビットの階調値データ(0~255の階調値)で表されてもよい。例えば、面積画素の4つの頂点に対応する4つのSEM画素の階調値が全て面積閾値以上である場合、面積画素の面積は1である。この場合、当該面積画素は、白地で表される。他方で、面積画素の4つの頂点に対応する4つSEM画素の階調値が全て面積閾値未満である場合、面積画素における面積は0である。この場合、当該面積画素は、黒地で表される。面積画像生成回路303は、SEM画素を1画素ずつシフトさせながら、各面積画素における面積閾値以上の面積を算出して、面積画像を生成する。なお、面積画像は、検査データ223として、記憶装置22に記憶され得る。
【0047】
また、面積画像生成回路303は、面積画像における擬似輪郭点の抽出を抑制するため、2つのフィルタ処理を実行し得る。
【0048】
第1のフィルタ処理は、孤立画素に対応した処理である。例えば、SEM画像の3×3のSEM画素において、中央のSEM画素の階調値が面積閾値未満であり且つ周辺の隣接する8つのSEM画素の階調値が面積閾値以上である場合、中央のSEM画素の中心点を頂点に含む2×2の面積画素の各々を、白地(すなわち、面積“1”)と判定する。換言すれば、面積画像生成回路303は、面積閾値未満の階調値のSEM画素が孤立している場合、すなわち、隣接8画素に面積閾値未満の階調値のSEM画素が無い場合、中央のSEM画素に基づく面積画素は、白地と判定する。なお、面積画像生成回路303は、第1のフィルタ処理を、5×5のSEM画素に適用してもよい。
【0049】
第2のフィルタ処理は、各画素の階調値が面積閾値に比較的近い値である場合に、擬似輪郭の抽出を抑制する処理である。例えば、SEM画像の3×3のSEM画素において、階調値の分散が、予め設定された分散閾値以下である場合、当該3×3のSEM画素に基づく2×2の面積画素の各々を、白地(すなわち、面積“1”)または黒地(すなわち、面積“0”)と判定する処理である。例えば、面積画像生成回路303は、3×3のSEM画素の階調値の平均値が面積閾値以上である場合、対象となる2×2の面積画素を白地と判定する。他方で、面積画像生成回路303は、3×3のSEM画素の階調値の平均値が面積閾値未満の場合、対象となる2×2の面積画素を黒地と判定する。白地または黒地と判定された面積画素は等高線を含まない。なお、面積画像生成回路303は、第2のフィルタ処理を、5×5のSEM画素に適用してもよい。
【0050】
輪郭点算出回路304は、面積画像の輪郭点を算出する回路である。本実施形態の輪郭点算出回路304は、例えばソーベルフィルタを用いて、等高線を含む面積画素(輪郭点候補画素)における輪郭点の座標位置及び法線方向ベクトルを算出する。すなわち、輪郭点算出回路304は、面積が0より大きく1より小さい面積画素における輪郭点の座標位置及び法線方向ベクトルを算出する。輪郭点抽出方法の詳細については、後述する。
【0051】
近接輪郭点除去回路305は、近接輪郭点を除去する回路である。近接輪郭点とは、隣接する輪郭点との距離が予め設定された距離閾値以下の輪郭点である。近接輪郭点を除去することにより、輪郭線を推定する処理の誤差が低減される。
【0052】
1.3 検査工程の全体の流れ
次に、検査工程の全体の流れの一例について、図3を用いて説明する。図3は、検査工程のフローチャートである。
【0053】
図3に示すように、検査工程は、大まかに、検査画像取得工程(ステップS1)と、参照画像生成工程(ステップS2)と、比較工程(ステップS3)とを含む。
【0054】
1.3.1 検査画像取得工程
まず、ステップS1の検査画像取得工程の一例について説明する。画像取得回路213は、撮像機構10から、試料30のSEM画像を取得する(ステップS11)。画像取得回路213は、SEM画像を輪郭抽出回路214に送信する。
【0055】
次に、輪郭抽出回路214のノイズフィルタ処理回路301は、SEM画像のノイズを除去(低減)するため、面積画像生成の前処理として、プレフィルタ処理を実行する(ステップS12)。
【0056】
次に、輪郭抽出回路214は、プレフィルタ処理後のSEM画像を用いて、面積画像を生成する(ステップS13)。
【0057】
次に、輪郭抽出回路214は、面積画像から輪郭データを生成する(ステップS14)。すなわち、輪郭抽出回路214は、検査画像(輪郭画像)を生成する。
【0058】
輪郭抽出回路214は、生成した検査画像を比較回路215及び記憶装置22に送信する。
【0059】
1.3.2 参照画像取得工程
次に、参照画像取得工程の一例について説明する。例えば、検査装置1は、通信装置25を介して、設計データ221を取得する(ステップS21)。取得された設計データ221は、例えば、記憶装置22に記憶される。
【0060】
展開回路211は、記憶装置22に記憶された設計データ221を読み出す。そして、展開回路211は、展開処理を実行し、設計データ221を、例えば8bitの画像データ(展開画像)に展開(変換)する(ステップS22)。展開画像の各画素は、画素値として、設計データの図形が当該画素を占める占有率に相当する値を持つ。例えば8bitの画像データの場合、設計図形の占有率が0%の場合の画素値は0であり、占有率が100%の場合の画素値は255である。展開回路211は、展開画像を参照画像生成回路212及び記憶装置22に送信する。
【0061】
次に、参照画像生成回路212は、展開画像のリサイズ処理及びコーナー丸め処理を実行する(ステップS23)。
【0062】
次に、参照画像生成回路212は、リサイズ処理及びコーナー丸め処理が施された展開画像からパターンの輪郭データを生成する(ステップS24)。すなわち、参照画像生成回路212は、参照画像(輪郭画像)を生成する。参照画像生成回路212は、生成した参照画像を比較回路215及び記憶装置22に送信する。
【0063】
1.3.3 比較工程
次に、比較工程の一例について説明する。まず、比較回路215は、検査画像と参照画像とを用いてアライメントを実行し(ステップS31)、検査画像内のパターンと、参照画像内のパターンとの位置合わせを行う。例えば、比較回路215は、検査画像の各輪郭線位置と参照画像の対応する輪郭線位置との相対ベクトルを求め、その平均値をアライメントシフト量とする。すなわち、比較回路215は、参照画像に対する検査画像のアライメントシフト量を算出する。
【0064】
次に、比較回路215は、検査画像の歪み量を測定し(ステップS32)、歪み係数を算出する。例えば、ステージ移動精度あるいは試料30の歪み等により、設計データ221に基づくパターンの座標情報と、撮影画像から算出されたパターンの座標との間に位置ずれが生じる場合がある。比較回路215は、例えば、試料30面内における局所的なアライメントシフト量の分布等から検査画像の歪み量を測定し、歪み係数を算出する。
【0065】
次に、比較回路215は、検査画像と参照画像とを比較する(ステップS33)。比較回路215は、比較した結果に基づいて、欠陥を検出する。換言すれば、比較回路215は、相対ベクトルと歪み係数とに基づいて、画素毎に検査画像の輪郭線と参照画像の輪郭線との間の位置ずれ量を算出する。そして、比較回路215は、位置ずれ量に基づいて、欠陥を検出する。比較結果は、記憶装置22または表示装置(モニタ)23に出力される。
【0066】
検査画像と参照画像とを比較した具体例を図4に示す。図4は、検査画像の輪郭線と参照画像の輪郭線を含む4×4画素の具体例を示す図である。
【0067】
図4に示すように、比較回路215は、検査画像の輪郭点毎に、参照画像の輪郭線までの距離(位置ずれ量)を算出する。そして、比較回路215は、位置ずれ量が予め設定された閾値を超えた場合に、欠陥と判定する。
【0068】
制御回路21は、欠陥検査の結果を、記憶装置22に保存した後、例えば、表示装置23に表示してもよく、通信装置25を介して外部装置(例えば、レビュー装置等)に出力してもよい。
【0069】
1.4 面積画像の生成及び輪郭データ生成工程の詳細
次に、図5を参照して、図3を用いて説明したステップS13の面積画像生成工程と、ステップS14の輪郭データ生成工程との詳細について説明する。図5は、面積画像生成及び輪郭データ生成のフローチャートである。
【0070】
図5に示すように、面積画像生成工程(ステップS13)としてステップS101~S104の処理が実行される。そして、輪郭データ生成工程(ステップS14)として、ステップS105~S107が実行される。各ステップの詳細について説明する。
【0071】
[ステップS101]
ノイズフィルタ処理回路301は、プレフィルタ処理後のSEM画像に対して、ガウシアンフィルタを用いたフィルタ処理を実行する。これにより、SEM画像のノイズとホワイトバンドの影響が緩和される。なお、ステップS101において、ガウシアンフィルタ以外のフィルタ処理が適用されてもよい。また、ステップS101は、省略されてもよい。
【0072】
[ステップS102]
面積閾値算出回路302は、SEM画像の階調値のヒストグラムを生成する。面積閾値算出回路302は、ヒストグラムから、パターンに対応する階調値の最大値と最小値を決定する。このとき、面積閾値算出回路302は、ノイズの影響を低減するため、予め設定された頻度閾値よりも画素数が多い階調値の範囲内で最小値と最大値を決定する。なお、面積閾値算出回路302は、SEM画像を複数の領域に分割して、領域毎にヒストグラムを作成してもよい。この場合、面積閾値算出回路302は、領域毎に面積閾値を算出する。
【0073】
図6を参照して、ヒストグラムの具体例について説明する。図6は、SEM画像の階調値と画素数の関係を示すヒストグラムの具体例である。
【0074】
図6に示すように、グラフの横軸は、SEM画像の階調値である。グラフの縦軸は、各階調値に対応するSEM画素の画素数である。図6の例では、頻度閾値として200が設定されている。面積閾値算出回路302は、画素数が頻度閾値(200)を超える階調値から最小値及び最大値をそれぞれ決定する。
【0075】
[ステップS103]
面積閾値算出回路302は、面積閾値を算出する。面積閾値算出回路302は、式(1)の演算を行い、面積閾値Zを算出する。
【0076】
【数1】
【0077】
ここで、変数kは、最小値と最大値との間の幅における比率を表している。変数kは、0<k<1の範囲で、任意に設定され得る。例えば、面積閾値Zを最小値と最大値の中点とする場合、k=0.5が設定される。
【0078】
[ステップS104]
面積画像生成回路303は、面積画素の面積を演算する。このとき、面積画像生成回路303は、第1のフィルタ処理と第2のフィルタ処理を実行する。すなわち、面積画像生成回路303は、面積画像のフィルタ処理を実行する。面積画像生成回路303は、SEM画素を1画素ずつシフトさせながら、面積画素の面積の演算を繰り返すことにより、面積画像を生成する。
【0079】
図7図10を参照して、面積画像生成の具体例について説明する。図7は、面積画素の面積算出の具体例を示す図である。図8は、SEM画像と面積画像との関係を示す図である。図9は、第1のフィルタ処理の具体例を示す図である。図10は、第2のフィルタ処理の具体例を示す図である。
【0080】
図7の紙面左側の図は、2×2のSEM画素を示す。例えば、紙面左上のSEM画素の階調値を50とし、その中心点を“A”とする。中心点“A”のSEM画素にX方向に隣接するSEM画素の階調値を80とし、その中心点を“B”とする。中心点“A”のSEM画素にY方向に隣接するSEM画素の階調値を100とし、その中心点を“C”とする。中心点“C”のSEM画素にX方向に隣接するSEM画素の階調値を150とし、その中心点を“D”とする。
【0081】
面積画像生成回路303は、2×2のSEM画素の中心点“A”~“D”を頂点とした面積画素を生成する。換言すれば、2×2のSEM画素の中央に面積画素が生成される。従って、SEM画素の1画素のサイズと、面積画素の1画素のサイズとは、同じである。また、面積画素は、SEM画素からX方向及びY方向にそれぞれ1/2画素シフトした座標位置に形成される。
【0082】
面積画像生成回路303は、面積画素の4つの頂点“A”~“D”(すなわち4つのSEM画素の中心点“A”~“D”)の階調値を線形補間する。より具体的には、例えば、面積閾値Zが90である場合(Z=90)、面積画像生成回路303は、面積画素において、Z=90となる等高線yを算出する。
【0083】
例えば、等高線yは、式(2)で表される。
【0084】
【数2】
【0085】
ここで、変数a~dは、a=D-C、b=A-C、c=C+B-D-A、及びd=Cの演算式により、それぞれ算出される。A~Dは、頂点“A”~“D”における階調値である。図7の例では、A=50、B=80、C=100、及びD=150である。従って、変数a~dは、a=50、b=-50、c=-20、及びd=100である。
【0086】
面積画像生成回路303は、式(3)の演算(すなわち、式(2)の積分)を行い、面積閾値Z以上の面積を算出する。
【0087】
【数3】
【0088】
図7の例の場合、面積閾値90に対応する面積画素の面積は、0.5653である。
【0089】
なお、A+D=B+Cである場合、c=0である。この場合、等高線yは、式(4)で表される。
【0090】
【数4】
【0091】
この場合、面積画像生成回路303は、式(5)の演算(すなわち、式(4)の積分)を行い、面積閾値Z以上の面積を算出する。
【0092】
【数5】
【0093】
また、D=B且つA=Cである場合、b=0且つc=0である。この場合、等高線は、式(6)で表される。
【0094】
【数6】
【0095】
図8に示すように、面積画像生成回路303は、SEM画素を1画素ずつシフトさせながら、面積画素の面積の算出を繰り返すことにより、面積画像を生成する。このとき、面積画素は、SEM画素に対して、X方向及びY方向にそれぞれ1/2画素シフトした座標位置に形成される。例えば、面積画像は、比較工程(ステップS3)のアライメント(ステップS31)において、その位置を補正されて、参照画像と比較される。
【0096】
次に、第1のフィルタ処理の具体例について説明する。
【0097】
図9に示すように、3×3のSEM画素において、上段の3つのSEM画素の階調値を紙面左側から順に、117、119、及び105とする。中段の3つのSEM画素の階調値を紙面左側から順に、108、70、及び108とする。下段の3つのSEM画素の階調値を紙面左側から順に、113、113、及び109とする。例えば、面積閾値は、80である。この場合、中央のSEM画素の階調値は、面積閾値未満であり、且つ周辺の8つのSEM画素の階調値は、面積閾値以上である。すなわち、階調値が面積閾値未満であるSEM画素が孤立している。この場合、面積画像生成回路303は、中央のSEM画素の中心点を含む2×2の4つの面積画素は、擬似輪郭を含むと判定する。そして、面積画像生成回路303は、各面積画素を、白地(すなわち、面積“1”)と判定する。
【0098】
次に、第2のフィルタ処理の具体例について説明する。
【0099】
図10に示すように、3×3のSEM画素において、上段の3つのSEM画素の階調値を紙面左側から順に、83、85、及び88とする。中段の3つのSEM画素の階調値を紙面左側から順に、84、78、及び85とする。下段の3つのSEM画素の階調値を紙面左側から順に、86、82、及び79とする。例えば、面積閾値は、80である。面積画像生成回路303は、注目画素の周辺3×3画素の階調値の分散を算出する。図10の例では、分散Vは、10.5である。例えば、分散閾値が20である場合、分散Vは、分散閾値よりも小さい。この場合、面積画像生成回路303は、注目画素である中央のSEM画素の中心点を含む2×2の4つの面積画素は、擬似輪郭を含むと判定する。図10の例では、3×3のSEM画素の階調値の平均値が面積閾値以上である。この場合、面積画像生成回路303は、対象の面積画素を白地(すなわち、面積“1”)と判定する。他方で、3×3のSEM画素の階調値の平均値が面積閾値未満である場合、面積画像生成回路303は、対象の面積画素を黒地(すなわち、面積“0”)と判定する。
【0100】
[ステップS105]
輪郭点算出回路304は、ソーベルフィルタを用いて、面積画像から輪郭点を算出する。
【0101】
図11及び図12を参照して、輪郭点の算出の具体例について説明する。図11は、輪郭点算出の具体例を示す図である。図12は、面積画像の具体例を示す図である。図12の例では、14×14の面積画素が示されている。また、図12の例は、輪郭点が算出された面積画素上に、輪郭点及び法線ベクトルが示されている。
【0102】
図11に示すように、輪郭点算出回路304は、ソーベルフィルタを用いて注目画素における輪郭の法線方向(法線ベクトル)を求める。より具体的には、輪郭点算出回路304は、面積画像に対して、ソーベルフィルタのX方向のカーネルとの畳み込み演算とY方向のカーネルとの畳み込み演算とをそれぞれ行う。そして、輪郭点算出回路304は、面積画素の注目画素において、X方向に対する演算値及びY方向に対する演算値を合成して得られた輪郭ベクトルの法線角度θを算出する。例えば、ソーベルフィルタ処理後のX方向の値をFx、Y方向の値をFyとすると、法線方向の角度θは、θ=atan(Fy/Fx)という式で表される(Fx=0のときは、θ=π/2)。
【0103】
次に、輪郭点算出回路304は、面積画素の面積と同じ値であり、且つソーベルフィルタで求めた法線ベクトルと境界線が垂直となる半平面を計算する。
【0104】
次に、輪郭点算出回路304は、境界線の中点位置を、輪郭点の座標位置に設定する。輪郭点の座標位置は、1つの面積画素を複数のサブ画素に分割したサブ画素単位で設定される。
【0105】
図12の例は、ラインパターンがX方向に延伸するラインアンドスペース(Line and Space)を示している。白地の面積画素領域がラインパターンに対応し、黒地の面積画素がスペースに対応する。この場合、Y方向において、白地の面積画素と黒地の面積画素とに挟まれた面積画素において、輪郭点及び法線ベクトルが算出される。
【0106】
[ステップS106]
近接輪郭点除去回路305は、近接輪郭点を除去する。近接輪郭点除去回路305は、対象の輪郭点と隣り合う輪郭点間の距離が予め設定された距離閾値Lt未満である場合、2つの輪郭点は近接位置にあると判定し、いずれか一方の輪郭点を近接輪郭点として除去する。なお、近接位置にある2つの輪郭点のうち、除去される輪郭点は、任意に設定される。例えば、近接位置にある2つの輪郭点のうち、面積画素の中心からの距離が遠い輪郭点が除去されてもよい。また、例えば、試料30の電子線のスキャン(撮像)に対して、スキャンの順番が遅いSEM画素(面積画素)に対応する輪郭点が除去されてもよい。
【0107】
図13に、近接輪郭点の具体例を示す。図13は、近接輪郭点の具体例を示す図である。図13の例では、近接輪郭点を中心とした5×5の面積画素が示されている。
【0108】
図13に示すように、例えば、近接輪郭点除去回路305は、近接輪郭点の確認対象となる輪郭点2に対して、隣り合う輪郭点1及び3との距離を算出する。図13の例では、輪郭点1と輪郭点2との距離L12が距離閾値Lt未満であるため、輪郭点2は除去される。
【0109】
[ステップS107]
輪郭抽出回路214は、近接輪郭点除去後に残った輪郭点を含む面積画素を輪郭画素とする。そして、輪郭抽出回路214は、輪郭点を結ぶ輪郭線を生成する。これにより、検査画像が生成される。輪郭抽出回路214は、各輪郭画素における輪郭点の座標位置及び法線ベクトルの角度θ、並びに検査画像を記憶装置22に記憶させる。
【0110】
図14に、検査画像の具体例を示す。図14は、検査画像の具体例を示す図である。図14の例では、4×4の面積画素が示されている。
【0111】
図14に示すように、輪郭抽出回路214は、隣接する輪郭画素の輪郭点を結ぶ輪郭線を生成する。
【0112】
1.5.本実施形態に係る効果
例えば、電子線欠陥検査装置において、エッジフィルタのサイズよりもパターンのエッジ間の距離が小さい場合、輪郭線の抽出が困難となり、緩慢なエッジプロファイルとなる場合がある。また、試料のチャージアップ等による輝度ムラが生じる場合がある。輝度ムラは、輪郭線の誤検出の要因となり得る。
【0113】
これに対し、本実施形態に係る構成であれば、検査装置1は、SEM画像に基づく面積画像を生成し、面積画像に基づく輪郭データ(検査画像)を生成できる。より具体的には、検査装置1は、SEM画素の2×2画素に基づく面積画素を生成できる。検査装置1は、面積画素において、面積閾値に基づく等高線を生成し、面積閾値以上の面積を算出できる。検査装置1は、面積画素における輪郭点及び輪郭点の法線ベクトルを算出できる。これにより、緩慢なエッジプロファイルの発生や輝度ムラの影響を低減できる。よって、検査画像におけるパターンの輪郭線の抽出精度を向上できる。また、面積画像を生成することにより、隣り合う画素間を重ねて処理することが出来るため、隣接画素間の輪郭点を滑らかに生成することが出来る。
【0114】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と異なる輪郭データの生成方法について説明する。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0115】
2.1 面積画像の生成及び輪郭データ生成工程の詳細
図15を参照して、図3を用いて説明したステップS13の面積画像生成工程と、ステップS14の輪郭データ生成工程との詳細について説明する。図15は、面積画像生成工程及び輪郭データ生成工程のフローチャートである。
【0116】
図15に示すように、本実施形態では、面積画像生成工程(ステップS13)としてステップS101~S103及びS110の処理が実行される。そして、輪郭データ生成工程(ステップS14)として、ステップS111、S106、及びS107が順に実行される。ステップS101~S103、S106、及びS107の各ステップは、第1実施形態の図5と同様である。
【0117】
[ステップS110]
ステップS103において面積閾値の算出が終了した後、面積画像生成回路303は、面積画素の等高線を算出する。すなわち、本実施形態では、面積画素の面積演算は省略される。より具体的には、第1実施形態のステップS104において説明した式(2)により面積画素の等高線が算出され、式(3)の面積算出は省略される。
【0118】
[ステップS111]
ステップS110において面積画素の等高線の算出が終了した後、輪郭点算出回路304は、面積画素の等高線から輪郭点を算出する。
【0119】
図16を参照して、輪郭点の算出の具体例について説明する。図16は、輪郭点算出の具体例を示す図である。
【0120】
図16に示すように、輪郭点算出回路304は、ステップS110で算出された面積画素の等高線の中点に輪郭点を設定し、その座標位置を算出する。そして、輪郭点算出回路304は、等高線の法線方向を輪郭点における法線ベクトルとして、角度θを算出する。
【0121】
2.2 本実施形態に係る効果
本実施形態に係る構成であれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0122】
更に、本実施形態に係る構成であれば、輪郭点算出回路304は、面積画素の等高線から輪郭点及びその法線ベクトルを算出できる。すなわち、輪郭点算出回路304は、ソーベルフィルタを用いて法線ベクトルの算出及び境界線に基づく輪郭点の算出を実行せずに、輪郭点及びその法線ベクトルを算出できる。これにより、検査装置1は、検査画像取得工程を高速化できる。
【0123】
3.第3実施形態
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、D-D方式に第1実施形態を適用した場合について説明する。以下、第1及び第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0124】
3.1 検査工程の全体の流れ
まず、検査工程の全体の流れの一例について、図17を用いて説明する。図17は、検査工程のフローチャートである。
【0125】
図17に示すように、本実施形態の検査工程は、画像取得工程(ステップS4)と、比較工程(ステップS3)とを含む。比較工程は、第1実施形態の図3のステップS3と同様である。
【0126】
ステップS4の画像取得工程の一例について説明する。本実施形態では、画像取得工程において、検査画像及び参照画像が生成される。以下の説明において、検査画像の生成に用いられるSEM画像を、「検査用SEM画像」、または「Left画像」とも表記する。他方で、参照画像の生成に用いられるSEM画像を、「参照用SEM画像」、または「Right画像」とも表記する。
【0127】
画像取得回路213は、撮像機構10から、検査用SEM画像及び参照用SEM画像を取得する(ステップS41)。画像取得回路213は、検査用SEM画像及び参照用SEM画像を輪郭抽出回路214に送信する。
【0128】
次に、輪郭抽出回路214のノイズフィルタ処理回路301は、検査用SEM画像及び参照用SEM画像のプレフィルタ処理を実行する(ステップS42)。
【0129】
次に、輪郭抽出回路214は、プレフィルタ処理後の検査用SEM画像を用いて、面積画像(以下、「検査用面積画像」とも表記する)を生成する。また、輪郭抽出回路214は、プレフィルタ処理後の参照用SEM画像を用いて、面積画像(以下、「参照用面積画像」とも表記する)を生成する。(ステップS13)。
【0130】
次に、輪郭抽出回路214は、検査用面積画像及び参照用面積画像の各々から輪郭データを生成する(ステップS14)。すなわち、輪郭抽出回路214は、検査画像(輪郭画像)及び参照画像(輪郭画像)を生成する。
【0131】
輪郭抽出回路214は、検査画像及び参照画像を比較回路215及び記憶装置22に送信する。
【0132】
3.2 面積画像の生成及び輪郭データ生成工程の詳細
図18を参照して、面積画像生成工程と輪郭データ生成工程との詳細について説明する。図18は、面積画像生成及び輪郭データ生成のフローチャートである。
【0133】
図18に示すように、面積画像生成工程(ステップS43)としてステップS401~S407の処理が実行される。そして、輪郭データ生成工程(ステップS44)として、ステップS408~S410が実行される。各ステップの詳細について説明する。
【0134】
[ステップS401]
ノイズフィルタ処理回路301は、第1実施形態の図5のステップS101と同様に、プレフィルタ処理後の検査用SEM画像に対して、ガウシアンフィルタ処理を実行する。なお、ステップS401において、ガウシアンフィルタ以外のフィルタ処理が適用されてもよい。また、ステップS401は、省略されてもよい。
【0135】
[ステップS402]
面積閾値算出回路302は、第1実施形態の図5のステップS102と同様に、検査用SEM画像の階調値のヒストグラムを生成する。面積閾値算出回路302は、ヒストグラムから、パターンに対応する階調値の最大値と最小値を決定する。このとき、面積閾値算出回路302は、ノイズの影響を低減するため、予め設定された頻度閾値よりも画素数が多い階調値の範囲内で最小値と最大値を決定する。なお、面積閾値算出回路302は、SEM画像を複数の領域(フレーム)に分割して、領域毎にヒストグラムを作成してもよい。この場合、面積閾値算出回路302は、領域毎に面積閾値を算出する。
【0136】
[ステップS403]
面積閾値算出回路302は、Left画像(検査用SEM画像)の面積閾値Z(以下、「検査用面積閾値Z」とも表記する)を算出する。検査用面積閾値Zの算出方法は、第1実施形態の図5のステップS103と同様である。
【0137】
[ステップS404]
面積閾値算出回路302は、検査用SEM画像(Left画像)及び参照用SEM画像(Right画像)の各々の指定された領域における階調値の標準偏差及び平均値を算出する。
【0138】
[ステップS405]
面積閾値算出回路302は、式(7)の演算を行い、Right画像(参照用SEM画像)の面積閾値Z(以下、「参照用面積閾値Z」とも表記する)を算出する。Left画像とRight画像とは、ほぼ同じ性質、すなわち同じパターンを有する画像である。このため、面積閾値算出回路302は、ゲインオフセットによる閾値補正により、参照用面積閾値Zを算出し得る。
【0139】
【数7】
【0140】
ここで、Zは、Left画像(検査用SEM画像)の面積閾値である。μは、Left画像の階調値の平均値である。σは、Left画像の階調値の標準偏差である。Μは、Right画像の階調値の平均値である。σは、Right画像の階調値の標準偏差である。
【0141】
図19を参照して、SEM画像を複数の領域に分割した場合の具体例について説明する。図19は、検査用SEM画像及び参照用SEM画像をそれぞれ4つの領域に分割した例を示す図である。
【0142】
図19に示すように、Left画像及びRight画像は、4つの領域(領域F、領域F、領域F、領域F)にそれぞれ分割されている。Left画像の領域FがRight画像の領域Fに対応する。ここで、Left画像の領域Fにおける階調値の平均値をμLAとし、標準偏差をσLAとする。同様に、Right画像の領域Fにおける階調値の平均値をμRAとし、標準偏差をσRAとする。この場合、Right画像の領域Fにおける参照用面積閾値ZRAは、式(8)を用いて算出される。
【0143】
【数8】
【0144】
同様に、Left画像の領域Fは、Right画像の領域Fに対応する。Left画像の領域Fにおける階調値の平均値をμLBとし、標準偏差をσLBとする。そして、Right画像の領域Fにおける階調値の平均値をμRBとし、標準偏差をσRBとする。この場合、Right画像の領域Fにおける参照用面積閾値ZRBは、式(9)を用いて算出される。
【0145】
【数9】
【0146】
Left画像の領域Fは、Right画像の領域Fに対応する。Left画像の領域Fにおける階調値の平均値をμLCとし、標準偏差をσLCとする。そして、Right画像の領域Fにおける階調値の平均値をμRCとし、標準偏差をσRCとする。この場合、Right画像の領域Fにおける参照用面積閾値ZRCは、式(10)を用いて算出される。
【0147】
【数10】
【0148】
また、Left画像の領域Fは、Right画像の領域Fに対応する。Left画像の領域Fにおける階調値の平均値をμLDとし、標準偏差をσLDとする。そして、Right画像の領域Fにおける階調値の平均値をμRDとし、標準偏差をσRDとする。この場合、Right画像の領域Fにおける参照用面積閾値ZRDは、式(11)を用いて算出される。
【0149】
【数11】
【0150】
[ステップS406]
面積画像生成回路303は、第1実施形態の図5のステップS104と同様に、検査用面積閾値Zを用いて、検査用SEM画像から面積画素(以下、「検査用面積画素」とも表記する)の面積を演算する。このとき、面積画像生成回路303は、第1のフィルタ処理と第2のフィルタ処理を実行し得る。面積画像生成回路303は、SEM画素を1画素ずつシフトさせながら、面積画素の面積の演算を繰り返すことにより、検査用面積画像を生成する。
【0151】
[ステップS407]
面積画像生成回路303は、ステップS406と同様に、参照用面積閾値Z(あるいはZRA~ZRD)を用いて、参照用SEM画像から面積画素(以下、「参照用面積画素」とも表記する)の面積を演算する。このとき、面積画像生成回路303は、第1のフィルタ処理と第2のフィルタ処理を実行し得る。面積画像生成回路303は、SEM画素を1画素ずつシフトさせながら、面積画素の面積の演算を繰り返すことにより、参照用面積画像を生成する。なお、ステップS406とS407とは同時に実行されてもよいし、順序が入れ替わってもよい。
【0152】
[ステップS408]
輪郭点算出回路304は、第1実施形態の図5のステップS105と同様に、ソーベルフィルタを用いて、面積画像から輪郭点を算出する。輪郭点算出回路304は、検査用面積画像及び参照用面積画像の各々において、輪郭点を算出する。
【0153】
[ステップS409]
近接輪郭点除去回路305は、第1実施形態の図5のステップS106と同様に、検査用面積画像及び参照用面積画像の各々の近接輪郭点を除去する。
【0154】
[ステップS410]
輪郭抽出回路214は、第1実施形態の図5のステップS107と同様に、検査用面積画像及び参照用面積画像の各々において、輪郭点を結ぶ輪郭線を生成する。これにより、検査画像及び参照画像が生成される。輪郭抽出回路214は、検査画像及び参照画像を比較回路215に送信する。
【0155】
3.3 本実施形態に係る効果
本実施形態に係る構成であれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0156】
本実施形態に係る構成であれば、欠陥検査方式がD-D方式である場合においても、輪郭抽出を行うことができる。
【0157】
更に、本実施形態に係る構成であれば、画像の領域(フレーム)を分割して、領域毎に異なる面積閾値を設定できる。これにより、Die間、すなわち、検査用SEM画像と参照用SEM画像とにおける輝度ムラが補正できる。
【0158】
なお、本実施形態は、設計データからSEM画像を模擬して参照画像を生成するD-DB方式にも適用できる。
【0159】
4.第4実施形態
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態では、D-D方式に第2実施形態を適用した場合について説明する。以下、第1乃至第3実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0160】
4.1 面積画像の生成及び輪郭データ生成工程の詳細
図20を参照して、図17を用いて説明したステップS43の面積画像生成工程と、ステップS44の輪郭データ生成工程との詳細について説明する。図20は、面積画像生成工程及び輪郭データ生成工程のフローチャートである。
【0161】
図20に示すように、面積画像生成工程(ステップS43)としてステップS401~S405、S420、及びS421の処理が実行される。そして、輪郭データ生成工程(ステップS44)として、ステップS422、S409、及びS410が順に実行される。ステップS401~S405、S409、及びS410の各ステップは、第3実施形態の図18と同様である。
【0162】
[ステップS420]
ステップS405において参照用面積閾値Zの算出が終了した後、面積画像生成回路303は、第2実施形態の図15のステップS110と同様に、検査用面積閾値Zを用いて、検査用面積画素の等高線を算出する。すなわち、本実施形態では、面積画素の面積演算は省略される。
【0163】
[ステップS421]
面積画像生成回路303は、ステップS420と同様に、参照用面積閾値Z(あるいはZRA~ZRD)を用いて、参照用面積画素の等高線を算出する。なお、ステップS420とS421とは同時に実行されてもよいし、順序が入れ替わってもよい。
【0164】
[ステップS422]
ステップS421において参照用面積画素の等高線の算出が終了した後、輪郭点算出回路304は、第2実施形態の図15のステップS111と同様に、面積画素の等高線から検査用面積画像及び参照用面積画像の輪郭点を算出する。
【0165】
4.2 本実施形態に係る効果
本実施形態に係る構成であれば、第2実施形態及び第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0166】
なお、本実施形態は、第3実施形態と同様に、設計データからSEM画像を模擬して参照画像を生成するD-DB方式にも適用できる。
【0167】
5.変形例等
上述の実施形態では、検査装置において検査画像を生成する場合について説明したが、検査画像の生成方法は、検査装置に限定されない。画像データに基づいて検査画像を生成する装置、例えば、測定装置等、他の装置に適用されてもよい。
【0168】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0169】
1…検査装置、10…撮像機構、11…試料室、12…鏡筒、13…ステージ、14…ステージ駆動機構、15…検出器、16…電子銃、17…電子光学系、20…制御機構、21…制御回路、22…記憶装置、23…表示装置、24…入力装置、25…通信装置、30…試料、101、102…集束レンズ、103、104…走査コイル、105…対物レンズ、211…展開回路、212…参照画像生成回路、213…画像取得回路、214…輪郭抽出回路、215…比較回路、221…設計データ、222…パラメータ情報、223…検査データ、224…閾値データ、225…欠陥検査プログラム、301…ノイズフィルタ処理回路、302…面積閾値算出回路、303…面積画像生成回路、304…輪郭点算出回路、305…近接輪郭点除去回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
図17
図18
図19
図20