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特開2024-93996積層基板の製造方法、表示装置の製造方法及び積層基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024093996
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】積層基板の製造方法、表示装置の製造方法及び積層基板
(51)【国際特許分類】
   B41F 15/30 20060101AFI20240702BHJP
   C03C 17/00 20060101ALI20240702BHJP
   B41F 15/42 20060101ALI20240702BHJP
   B41M 1/12 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B41F15/30
C03C17/00
B41F15/42
B41M1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210683
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 陽介
【テーマコード(参考)】
2C035
2H113
4G059
【Fターム(参考)】
2C035AA07
2C035FA30
2C035FC08
2C035FD01
2C035FD04
2H113AA01
2H113AA06
2H113BA10
2H113BA14
2H113BB07
2H113BB09
2H113BB10
2H113BB18
2H113BB23
2H113DA04
2H113DA15
2H113FA06
4G059AA01
4G059AA20
4G059AB05
4G059AC01
4G059AC08
4G059AC11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スジムラの発生を抑制する。
【解決手段】本製造方法は、台座2の保持面21上に、主面G1が保持面21側となり、かつ回転軸24が湾曲部GAの曲げ軸に平行になるように基板Gを配置し、基板Gの主面G2側に配置されたスクリーン版3を、スキージ4により主面G2に押し当てつつ、スキージ4を回転軸24の交差方向に移動させて、主面G2上に印刷層を形成する。印刷層を形成する際において、主面G2上の湾曲部GAに印刷層を形成する際のスキージ4の移動速度を、主面G2上の平坦部GBに印刷層を形成する際のスキージ4の移動速度よりも、低くする。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び第2主面を有する基板に、台座、スクリーン版、及びスキージを用いて、印刷層を形成して積層基板を製造する製造方法であって、
前記基板は、前記第2主面側に凸となる湾曲部と、前記湾曲部に隣り合う位置に設けられ、前記湾曲部よりも曲率半径が大きく、かつ曲率半径が5000mm以上となる平坦部と、を有し、
前記台座は、前記基板を保持する保持面と、前記保持面の反対側に設けられる回転軸とを有し、
前記台座の前記保持面上に、前記第1主面が前記保持面側となり、かつ前記回転軸が前記湾曲部の曲げ軸に平行になるように、前記基板を配置し、
前記基板の前記第2主面の側に配置された前記スクリーン版を、前記スキージにより前記第2主面に押し当てつつ、前記スキージを前記回転軸の交差方向に移動させて、前記第2主面上に前記印刷層を形成し、
前記印刷層を形成する際において、前記第2主面上の前記湾曲部に前記印刷層を形成する際の前記スキージの移動速度を、前記第2主面上の前記平坦部に前記印刷層を形成する際の前記スキージの移動速度よりも、低くする、
積層基板の製造方法。
【請求項2】
前記湾曲部に前記印刷層を形成する際の前記スキージの移動速度Vr(mm/s)が、次の式(1A)を満たす、請求項1に記載の積層基板の製造方法。
Vr≦0.10×R-0.25 ・・・(1A)
ここで、Rは、前記湾曲部の曲率半径(mm)である。
【請求項3】
第1主面及び第2主面を有する基板に、台座、スクリーン版、及びスキージを用いて、印刷層を形成して積層基板を製造する製造方法であって、
前記基板は、前記第2主面側に凸となる湾曲部を有し、
前記台座は、前記基板を保持する保持面と、前記保持面の反対側に設けられる回転軸とを有し、
前記台座の前記保持面上に、前記第1主面が前記保持面側となり、かつ前記回転軸が前記湾曲部の曲げ軸に平行になるように、前記基板を配置し、
前記基板の前記第2主面の側に配置された前記スクリーン版を、前記スキージにより前記第2主面に押し当てつつ、前記スキージを前記回転軸の交差方向に移動させて、前記第2主面上に前記印刷層を形成し、
前記第2主面上の前記湾曲部に前記印刷層を形成する際に、前記回転軸を中心に前記台座を回転させ、前記台座の回転速度を設定値に到達させる際の、前記台座の回転速度の変化率である立ち上がり加速度At1(mm/s)が、次の式(2)を満たす、
積層基板の製造方法。
At1≦1.5×ln(R)+46 ・・・(2)
ここで、Rは、前記湾曲部の曲率半径(mm)である。
【請求項4】
前記湾曲部に前記印刷層を形成する際の前記スキージの移動速度Vr(mm/s)が、次の式(1B)を満たす、請求項3に記載の積層基板の製造方法。
Vr≦0.084×R+5.4 ・・・(1B)
【請求項5】
前記基板は、前記湾曲部に対して隣り合う位置に、前記湾曲部よりも曲率半径が大きく、かつ曲率半径が5000mm以上となる平坦部が形成されている、請求項3又は請求項4に記載の積層基板の製造方法。
【請求項6】
前記湾曲部が形成されている領域に前記印刷層を形成する際の前記スキージの移動速度を、前記平坦部が形成されている領域に前記印刷層を形成する際の前記スキージの移動速度よりも、低くする、請求項5に記載の積層基板の製造方法。
【請求項7】
前記湾曲部に前記印刷層を形成する際の前記台座の振動が、1m/s以下である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の積層基板の製造方法。
【請求項8】
前記湾曲部の曲率半径は、300mm以下である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の積層基板の製造方法。
【請求項9】
前記印刷層の膜厚は、3μm以上10μm以下である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の積層基板の製造方法。
【請求項10】
前記基板はガラスである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の積層基板の製造方法。
【請求項11】
前記積層基板は、ディスプレイ用のカバーガラスであり、外周部に前記印刷層が形成され、前記外周部よりも内側に、前記印刷層が形成されない開口領域を有する、請求項10に記載の積層基板の製造方法。
【請求項12】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の製造方法で製造される積層基板と、ディスプレイとを有する表示装置を製造する、表示装置の製造方法。
【請求項13】
第1主面及び第2主面を有し、前記第2主面側に凸となり曲率半径が300mm以下の湾曲部と、前記湾曲部に隣り合う位置に設けられ曲率半径が5000mm以上となる平坦部と、を有する基板と、
前記基板の前記第2主面上に形成される印刷層と、
を有する積層基板であって、
前記積層基板は、外周部に前記印刷層が形成され、前記外周部よりも内側に、前記印刷層が形成されない開口領域を有し、
前記湾曲部における前記印刷層の厚さは、前記平坦部における前記印刷層の厚さより小さい、
積層基板。
【請求項14】
前記湾曲部における前記印刷層の厚さの、前記平坦部における前記印刷層の厚さからの減少率であるΔt(%)が、次の式(A)を満たす、請求項13に記載の積層基板。
Δt≧-0.58R+45・・・(A)
ここで、Rは、前記湾曲部の曲率半径(mm)である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層基板の製造方法、表示装置の製造方法及び積層基板に関する。
【背景技術】
【0002】
曲面を有する基板に印刷層を形成して積層基板を製造する方法が知られている。例えば特許文献1には、曲面を有する基板を台座上に配置し、台座を回転させながら基材上にスクリーン版を押し付けることで、印刷層を形成する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/162469号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、台座を回転させながら基材上に印刷層を形成する場合、振動が発生し、印刷層の厚みが不均一となることで、スジ状の厚みムラであるスジムラが発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、スジムラの発生が抑制可能な積層基板の製造方法及び積層基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る積層基板の製造方法は、第1主面及び第2主面を有する基板に、台座、スクリーン版、及びスキージを用いて、印刷層を形成して積層基板を製造する製造方法であって、前記基板は、前記第2主面側に凸となる湾曲部と、前記湾曲部に隣り合う位置に、前記湾曲部よりも曲率半径が大きく、かつ曲率半径が5000mm以上となる平坦部と、を有し、前記台座は、前記基板を保持する保持面と、前記保持面の反対側に設けられる回転軸とを有し、前記台座の前記保持面上に、前記第1主面が前記保持面側となり、かつ前記回転軸が前記湾曲部の曲げ軸に平行になるように、前記基板を配置し、前記基板の前記第2主面の側に配置された前記スクリーン版を、前記スキージにより前記第2主面に押し当てつつ、前記スキージを前記回転軸の交差方向に移動させて、前記第2主面上に前記印刷層を形成し、前記印刷層を形成する際において、前記第2主面上の前記湾曲部に前記印刷層を形成する際の前記スキージの移動速度を、前記第2主面上の前記平坦部に前記印刷層を形成する際の前記スキージの移動速度よりも、低くする。
【0007】
本開示に係る積層基板の製造方法は、第1主面及び第2主面を有する基板に、台座、スクリーン版、及びスキージを用いて、印刷層を形成して積層基板を製造する製造方法であって、前記基板は、前記第2主面側に凸となる湾曲部を有し、前記台座は、前記基板を保持する保持面と、前記保持面の反対側に設けられる回転軸とを有し、前記台座の前記保持面上に、前記第1主面が前記保持面側となり、かつ前記回転軸が前記湾曲部の曲げ軸に平行になるように、前記基板を配置し、前記基板の前記第2主面の側に配置された前記スクリーン版を、前記スキージにより前記第2主面に押し当てつつ、前記スキージを前記回転軸の交差方向に移動させて、前記第2主面上に前記印刷層を形成し、前記第2主面上の前記湾曲部に前記印刷層を形成する際に、前記回転軸を中心に前記台座を回転させ、前記台座の前記回転速度を設定値に到達させる際の、前記台座の回転速度の変化率である立ち上がり加速度At1(mm/s)が、次の式(2)を満たす。
【0008】
At1≦1.5×ln(R)+46 ・・・(2)
【0009】
ここで、Rは、前記湾曲部の曲率半径(mm)である。
【0010】
本開示に係る積層基板は、第1主面及び第2主面を有し、前記第2主面側に凸となり曲率半径が300mm以下の湾曲部と、前記湾曲部に隣り合う位置に設けられ曲率半径が5000mm以上となる平坦部と、を有する基板と、前記基板の前記第2主面上に形成される印刷層と、を有する積層基板であって、前記積層基板は、外周部に前記印刷層が形成され、前記外周部よりも内側に、前記印刷層が形成されない開口領域を有し、前記湾曲部における前記印刷層の厚さは、前記平坦部における前記印刷層の厚さより小さい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スジムラの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態に係る印刷装置の模式図である。
図2図2は、積層基板の模式的な正面図である。
図3図3は、積層基板の模式的な上面図である。
図4図4は、印刷装置の詳細な構成を説明する模式図である。
図5図5は、印刷装置の詳細な構成を説明する模式図である。
図6図6は、印刷装置の詳細な構成を説明する模式図である。
図7図7は、積層基板の製造方法を説明するための模式図である。
図8図8は、積層基板の製造方法を説明するための模式図である。
図9図9は、積層基板の製造方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、数値については四捨五入の範囲が含まれる。
【0014】
図1は、本実施形態に係る印刷装置の模式図である。本実施形態に係る印刷装置1は、基板Gに印刷層Pを形成して積層基板GPを製造する装置である。以降において各構成の配置位置を説明するときには、図1のXYZ軸を基準にして方向を定義する。すなわち、Z軸方向をZ方向とし、Z方向に直交する一方向をX方向とし、Z方向及びX方向に直交する方向を方向Yとする。また、X方向に平行な一方の向きを向きX1、X方向に平行な他方の向きを向きX2、Y方向に平行な一方の向きを向きY1、Y方向に平行な他方の向きを向きY2、Z方向に平行な一方の向きを向きZ1、Z方向に平行な他方の向きを向きZ2とする。
【0015】
(積層基板)
図2は積層基板の模式的な正面図であり、図3は積層基板の模式的な上面図である。印刷装置1を用いた本実施形態の製造方法で製造される積層基板GPは、基板Gと、基板G上に形成される印刷層Pとを含む板状の積層体である。なお、図2は、積層基板GPの主面の中央位置における厚み方向がZ方向に平行となるように、積層基板GPが配置された場合を例示している。
積層基板GPの用途は任意であってよいが、ディスプレイ用のカバーガラスとして使用されることが好ましく、車載ディスプレイ用のカバーガラスとして使用されることが好ましい。すなわち、本実施形態においては、図示しないディスプレイの表示面側に積層基板GPが設けられることで、表示装置(好ましくは車載表示装置)が製造されることが好ましいといえる。ディスプレイは積層基板GPの印刷層Pの側と貼合されることが好ましい。
【0016】
基板Gは、主面G1(第1主面)と、主面G1の反対側の主面である主面G2(第2主面)とを有する板状の部材である。基板Gは、主面G2側に凸となる湾曲部GAが形成されている。すなわち、湾曲部GAとは、基板Gの全体のうちで、主面G2側に凸となっている部分を指す。より詳しくは、湾曲部GAは、所定の一方向(図2の例ではY方向)を曲げ軸として、主面G2側に凸となるように湾曲している。ここでの曲げ軸とは、湾曲部GAの主面に沿った曲率円(湾曲部GAの主面に沿った近似円)の中心軸といえる。湾曲部GAの曲率半径は、300mm以下であることが好ましく、50mm以上300mm以下であることがより好ましく50mm以上250mm以下であることがさらに好ましい。本実施形態によると、湾曲部GAの曲率半径の上限が上記の値の基板Gに対して、スジムラを抑制しつつ、適切に印刷層Pを形成できる。また、湾曲部GAの曲率半径の下限が上記の値であることで、タクトを確保できる。
【0017】
本実施形態では、基板Gは、湾曲部GAに加えて、平坦部GBが形成されていることが好ましい。平坦部GBは、湾曲部GAに対して、湾曲部GAの曲げ軸の直交方向(図2の例ではX方向)に隣り合う位置に形成されている部分であり、湾曲部GAよりも曲率半径が大きい。より詳しくは、平坦部GBは、曲率半径が5000mm以上であることが好ましく、曲率半径が10000mm以上であることがより好ましい。
【0018】
本実施形態の例では、湾曲部GAに対して、湾曲部GAの曲げ軸の直交方向の一方側及び他方側(図2の例では向きX1側及び向きX2側)に、平坦部GBが形成されている。すなわち、本実施形態における基板Gは、向きX1側の平坦部GB、湾曲部GA、及び向きX2側の平坦部GB2が、湾曲部GAの曲げ軸の直交方向(本例では方向X)に並ぶように構成されている。ただし、基板Gの形状はこれに限られず任意であってよい。例えば、基板Gは、湾曲部GAの曲げ軸の直交方向に複数の湾曲部GAが形成されており、湾曲部GA同士が平坦部GBで接続されていてもよいし、曲率半径が異なる湾曲部GA同士が接続されていてもよい。また、本実施形態の例では、基板Gは、上面視において矩形状であるが、上面視における形状は任意であってよく、多角形、円形、楕円形、その他のいかなる形状であってもよい。
【0019】
基板Gは、1つの湾曲部GAにおいて、方向が異なる曲げ軸が複数存在しない(曲げ軸が一方向のみであること)が好ましい。例えば、基板Gにおいて、平坦部GBを介して一対の湾曲部GAがある場合には、それぞれの湾曲部GAについて、曲げ軸が一方向のみであり、それぞれの湾曲部GA同士では、曲げ軸の向きが異なっていてもよい。ただし、基板Gは、湾曲部GAの曲げ軸に平行な方向(図2の例ではY方向)以外の方向を曲げ軸とする湾曲部が、形成されていないことがより好ましい。
【0020】
基板Gが例えばガラスの場合、基板Gの厚みは、特に制限されるものではないが、化学強化処理を効果的に行うために、通常は5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。また、カーナビゲーション等の車載用ディスプレイ装置のカバーガラスに用いる場合には、強度の観点から、ガラスの厚みは0.2mm以上が好ましく、0.8mm以上がより好ましく、1mm以上が更に好ましい。すなわち、ガラスである場合の基板Gの厚みは、好ましくは0.2mm以上5mm以下、より好ましくは0.8mm以上3mm以下、更に好ましくは1mm以上3mm以下である。
【0021】
基板Gの、湾曲部GAの曲げ軸に平行な方向における長さ(幅)は、100mm以上300mm以下であることが好ましい。ここでの幅とは、湾曲部GAの曲げ軸に平行な方向(図2の例ではY方向)における、基板Gの一方側の端部から他方側の端部までの、主面G2に沿った長さを指す。
基板Gの、湾曲部GAの曲げ軸に直交する方向における長さは、350mm以上1000mm以下であることが好ましい。ここでの長さとは、湾曲部GAの曲げ軸に直交する方向(図2の例ではX方向)における、基板Gの一方側の端部から他方側の端部までの、主面G2に沿った長さを指す。
本実施形態によると、幅や長さがこの範囲となる基板Gに対して、振動を抑制して印刷層Pを適切に形成できる。
【0022】
基板Gは、任意の材料であってよく、ガラスや、セラミクス、樹脂、木材、金属などの板が挙げられる。ただし、本実施形態における基板Gは、ガラス製であることが好ましい。
基板Gがガラス製である場合、基板Gは、化学強化ガラスなどの強化ガラスであることが好ましい。基板Gが強化ガラスである場合、基板Gの圧縮応力層の厚さ(DOL)は、例えば5μm以上であることが好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましい。また、圧縮応力層の厚さ(DOL)は、例えば180μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
【0023】
圧縮応力層における表面圧縮応力(CS)は、500MPa以上が好ましく、650MPa以上がより好ましく、750MPa以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが、例えば、CSは、1200MPa以下が好ましい。
ガラスに化学強化処理を施して化学強化ガラスを得る方法は、公知の方法を用いてよい。化学強化処理に用いられる溶融塩としては、例えば、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム等のアルカリ硝酸塩、アルカリ硫酸塩およびアルカリ塩化物塩などが挙げられる。これらの溶融塩は単独で用いることに限られず、複数種を組み合わせて用いてもよく、化学強化特性を調整するために、その他の塩を混ぜてもよい。これにより、基板Gの表層において、アルカリイオン(LiイオンまたはNaイオン)を、溶融塩中のイオン半径の大きい他のアルカリイオン(NaイオンまたはKイオン)とイオン交換(置換)した後、室温付近まで冷却する。このイオン交換によって、基板Gの表層に、高密度化によって圧縮応力が発生した層(圧縮応力層)を形成する。こうして、基板Gを強化できる。溶融塩の温度や浸漬時間などの処理条件は、圧縮応力層の圧縮応力値(CS)および圧縮応力層の厚さ(DOL)などが所望の値となるように設定すればよい。
【0024】
化学強化処理を施した基板Gに、更に、酸処理およびアルカリ処理を施してもよい。
酸処理は、化学強化処理を施した基板Gを、酸性溶液中に浸漬させる処理である。これにより、化学強化処理を施した基板Gの表面のNaおよび/またはKが、Hに置換される。すなわち、化学強化処理を施した基板Gにおける圧縮応力層の表層が変質し、低密度化された低密度層となる。
また、アルカリ処理は、酸処理を施した基板Gを、塩基性溶液中に浸漬させる処理である。これにより、酸処理で形成された低密度層の一部または全部が除去される。こうして、基板Gの表面に存在するクラックや潜傷を、低密度層と共に除去できる。
【0025】
基板Gの材料は任意であるが、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス(SiO-Al-NaO系ガラスもしくはSiO-Al-LiO-NaO系ガラス)等が挙げられる。なかでも、強度の観点からは、アルミノシリケートガラスが好ましい。
基板Gの材料としては、例えば、酸化物基準のモル%表示で、SiOを50%以上80%以下、Alを1%以上20%以下、NaOを6%以上20%以下、KOを0%以上11%以下、MgOを0%以上15%以下、CaOを0%以上6%以下、および、ZrOを0%以上5%以下含有するガラス材料や、酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを50%以上80%以下、Alを2%以上25%以下、LiOを0.1%以上20%、NaOを0.1以上18%以下、KOを0%以上10%以下、MgOを0%以上15%以下、CaOを0%以上5%以下、Pを0以上5%以下、Bを0%以上5%以下、Yを0%以上5%以下、および、ZrOを0%以上5%以下含有するガラス材料が挙げられる。
また、基板Gの材料としては、アルミノシリケートガラスをベースとする化学強化用ガラス(例えば、AGC社製「ドラゴントレイル(登録商標)」)も好適に用いられる。
【0026】
(印刷層)
印刷層Pは、本実施形態の製造方法により、基板Gの主面G2上に形成される層である。印刷層Pは、基板Gと材質が異なる任意の層であってよいが、本実施形態では、基板Gを遮光する遮光層であってよい。図3に示すように、積層基板GPは、印刷層Pが形成される領域AR1と、印刷層Pが形成されない開口領域AR2とを有する。すなわち、領域AR1は、積層基板GPの主面の全域のうちで、基板Gと印刷層Pとが積層されている領域を指し、開口領域AR2とは、積層基板GPの主面の全域のうちで、基板Gが設けられて印刷層Pが設けられない領域を指す。積層基板GPの上面視において、開口領域AR2は、周縁部よりも内側(主面の中央側)に形成されている。
印刷層P(領域AR1)は、基板Gの主面GBの周縁部の少なくとも一部に設けられることが好ましい。主面GBの周縁部とは、積層基板GPの上面視において、主面GBの中央から離れた縁部から主面GBの中央に向かって、所定の幅を有する帯状領域を意味する。印刷層Pは、この周縁部の全周、または、周縁部の少なくとも一部に形成される。図3の例では、印刷層Pは、第2の主面11Bの周縁部の全周を囲むように形成される。この印刷層P(領域AR1)で囲まれた領域が、光を透過可能な開口領域AR2となり、印刷層P(領域AR1)が、遮光層となる。印刷層P(遮光層)は、表示装置において、配線などを隠蔽して美観を向上する役割を果たす。なお、本例では、印刷層Pは、可視光を遮断するものであり、赤外線も遮光するものであってもよいし、赤外線を透過しつつ可視光を遮断するものであってもよい。印刷層Pは、1層であってもよく、複数の層が積層されていてもよい。
【0027】
印刷層Pの厚みは、平坦部GBにおいて、3.0μm以上10.0μm以下であることが好ましく、3.5μm以上5.0μm以下であることがより好ましく、4.0μm以上5.0μm以下であることがさらに好ましい。印刷層Pの厚みがこの範囲となることで、印刷層Pからの光漏れを抑制できる。
【0028】
ここで、以下で述べる製造方法によって印刷層Pを形成することにより、積層基板GPにおいては、湾曲部GAにおける印刷層Pの厚さが、平坦部GBにおける印刷層Pの厚さより小さくなる。湾曲部GAにおける印刷層Pの厚みの平坦部GBにおける印刷層Pの厚さからの減少率Δt(すなわち(「平坦部での印刷層厚み」-「湾曲部での印刷層厚み」)/「平坦部での印刷層厚み」)は、好ましくは10%以上であり、より好ましくは20%以上である。更に好ましくは、湾曲部GAにおける印刷層Pの厚みの平坦部GBにおける厚さからの減少率Δtと、湾曲部GAの曲率半径との関係は、下記式(A)を満たす。
【0029】
Δt≧-0.58R+45・・・(A)
【0030】
ここで、Rは、湾曲部GAの曲率半径(mm)を指す。
台座の振動の抑制のために、湾曲部GAにおいて平坦部GBよりもスキージ速度が充分に減速されることでΔtが上記式を満たすこととなり、スジムラの無い印刷層Pが得られやすい。
一方、湾曲部GAにおける印刷層Pの厚みの平坦部GBにおける厚さからの減少率Δtは、好ましくは60%以下であり、より好ましくは50%以下である。上記範囲であれば、湾曲部GAにおいても印刷層Pからの光漏れを抑制できる。
【0031】
なお、印刷層Pの厚さは、複数点で測定される膜厚の平均値を用いることが好ましい。測定点数としては、例えば3点以上が好ましく、対象領域内で偏り無く選択されることが好ましい。測定方法としては例えば、一部ガラス面を露出させ、非接触三次元測定装置(例えば、三鷹光器社NH-3MAS)を使用して、ステージ走査型レーザプローブ方式により印刷層Pおよび露出させたガラス面を通過するようにレーザプローブを走査することで、膜厚を測定できる。
【0032】
(印刷装置)
次に、基板G上に印刷層Pを形成するための印刷装置1について説明する。図1に示すように、印刷装置1は、台座2と、スクリーン版3と、スキージ4と、印刷制御ユニット5とを備えている。印刷制御ユニット5は、台座2を移動させる台座移動機構6と、スクリーン版3を移動させるスクリーン版移動機構8と、スキージ4を移動させるスキージ移動機構7とを備えている。
以降においては、向きX1を右、向きX2を左、向きY1を前、向きY2を後ろ、向きZ1を上、向きZ2を下、と表現する。
【0033】
図4から図6は、印刷装置の詳細な構成を説明する模式図である。台座2には、基板Gが載置される。図4および図5に示すように、台座2の一方の表面である保持面21は、基板Gの平面形状よりも大きく形成されている。保持面21の一部は、基板Gの湾曲部GAと同じ形状を有する凸面21Aを含む。本実施形態では、凸面21Aは、凸状に形成されている。
台座2の保持面21と反対側の面としての裏面22は、平面状に形成されている。裏面22には、軸固定部材23を介して回転軸24が固定されている。回転軸24は、裏面22の左右方向中央において、当該裏面22に対して平行かつ前後に延びるように固定されている。
台座2には、凸面21Aに基板Gを吸着する図示しない吸着ユニットが設けられている。
【0034】
台座移動機構6は、ベース61と、回転軸保持ユニット62と、回転角度制御ユニット63と、荷重制御ユニット64と、ベース移動機構65とを備えている。
【0035】
回転軸保持ユニット62は、回転軸24を中心にして台座2を回転可能に保持する。回転軸保持ユニット62は、ベース61の上面611から上方に延びる一対の支柱621を備えている。この一対の支柱621の上端には、回転軸24の端部をそれぞれ支持する軸受622が設けられている。軸受622は、印刷装置1を前から見たときに、回転軸24の中心が台座2の中心を通る仮想中心線Cと重なるように、回転軸24を支持する。なお、軸受622は、回転軸24の中心が仮想中心線Cと重ならないように回転軸24を支持してもよい。
【0036】
回転角度制御ユニット63は、台座2の裏面22における回転軸24よりも右側の部分に、台座2を回転させる力を付与する。回転角度制御ユニット63は、回転力付与機構としてのボールねじ631と、ボールねじ駆動ユニット632と、第1の垂直ガイド633と、第1の運動方向変換ユニット634とを備えている。
【0037】
ボールねじ631は、ベース61の上面611における回転軸保持ユニット62よりも右側において、ボールねじ駆動ユニット632で支持されている。ボールねじ631は、図6に示すように、ねじ軸631Aと、ナット631Bと、複数のボール631Cとを備えている。
ねじ軸631Aの外周面には、螺旋状の軸溝631Dが形成されている。
ナット631Bの内周面の一部には、螺旋状のナット溝631Eが形成されている。ナット溝631Eと軸溝631Dとで形成される空間は、ボール631Cが転動する転動経路631Fを構成している。ねじ軸631Aを回転させるトルクをなるべく小さくするために、転動経路631Fを構成する軸溝631Dおよびナット溝631Eとボール631Cとの間には、隙間が設けられている。つまり、ボールねじ631には、互いに噛み合う構成要素間に、バックラッシュが存在している。ナット631Bには、転動経路631Fの上端と下端とを連結して、ボール631Cを循環させる循環経路631Gが設けられている。
【0038】
ボールねじ駆動ユニット632は、ベース61の上面に固定されたモータ632Aと、モータ632Aのモータ軸632Cの上端とねじ軸631Aの下端とを接続するカップリング632Bとを備えている。
【0039】
第1の垂直ガイド633は、ベース61の上面611における回転軸保持ユニット62よりも右側かつボールねじ631よりも左側に設けられている。第1の垂直ガイド633は、支持部材633Aと、上方に延びるように支持部材633Aの上端に固定された第1の垂直レール633Bと、第1の垂直レール633Bに沿って昇降する第1の昇降スライダ633Cとを備えている。
第1の昇降スライダ633Cの側面には、当該第1の昇降スライダ633Cの移動方向と、ナット631Bの軸方向とが平行になるように、ナット631Bの側面が固定されている。
【0040】
第1の運動方向変換ユニット634は、第1の水平ガイド634Aおよび第1の変換軸受634Bを備えている。
第1の水平ガイド634Aは、前後(向きY1、Y2)に延びるように台座2の裏面22に固定された第1の水平レール634Cと、第1の水平レール634Cに沿って前後(向きY1、Y2)に移動する第1の水平スライダ634Dとを備えている。第1の水平レール634Cは、印刷装置1を右(向きX1)から見たときに、その幅方向中心が仮想中心線Cと重なるように固定されている。第1の水平スライダ634Dの下端側には、前後に延びる回転軸634Eが固定されている。
第1の変換軸受634Bは、ナット631Bの上面に固定されている。第1の変換軸受634Bは、第1の水平スライダ634Dの下端側に固定された回転軸634Eの両端をそれぞれ支持する。
【0041】
荷重制御ユニット64は、台座2の裏面22における回転軸24よりも左側の部分に、台座2を回転させる力を付与する。荷重制御ユニット64は、エアシリンダ641と、第2の垂直ガイド642と、昇降部材643と、第2の運動方向変換ユニット644と、エアシリンダ641を駆動するシリンダ駆動ユニット645とを備えている。
【0042】
エアシリンダ641は、ベース61の上面611における回転軸保持ユニット62よりも左側において、出力軸641Aが上下に移動するように固定されている。
【0043】
第2の垂直ガイド642は、第1の垂直ガイド633の支持部材633A、第1の垂直レール633Bおよび第1の昇降スライダ633Cとそれぞれ同じ構成を有する、支持部材642A、第2の垂直レール642Bおよび第2の昇降スライダ642Cを備えている。
【0044】
昇降部材643は、第2の昇降スライダ642Cに固定され、上方に延びる基部643Aと、基部643Aの上端からエアシリンダ641の上方に延びる延出部643Bとを備えている。延出部643Bは、板状に形成されている。延出部643Bの下面は、エアシリンダ641の出力軸641A上端に連結部材643Cを介して固定されている。
【0045】
第2の運動方向変換ユニット644は、第1の運動方向変換ユニット634の第1の水平ガイド634Aおよび第1の変換軸受634Bとそれぞれ同じ構成を有する、第2の水平ガイド644Aと、第2の変換軸受644Bとを備えている。
第2の水平ガイド644Aの第2の水平レール644Cは、前後(向きY1、Y2)に延びるように台座2の裏面22に固定されている。第2の水平レール644Cは、印刷装置1を左(向きX2)から見たときに、その幅方向中心が仮想中心線Cと重なるように固定されている。第2の水平レール644Cは、前から見たときに、仮想中心線Cに対して第1の水平レール634Cと線対称となる位置に固定されている。第2の水平スライダ644Dの下端側には、前後に延びる回転軸644Eが固定されている。
第2の変換軸受644Bは、昇降部材643の延出部643Bの上面に固定されている。第2の変換軸受644Bは、回転軸644Eの両端をそれぞれ支持する。
【0046】
ベース移動機構65は、ベース61を下方から支持する一対のベース支持部材651と、一対のベース支持部材651を上下左右に移動させる図示しない支持部材移動ユニットとを備えている。一対のベース支持部材651は、印刷装置1を左から見たときに仮想中心線Cに対して線対称となる位置に設けられている。
【0047】
以上のように構成される印刷装置1は、図5に示すように、回転軸24を回転軸として台座2を回転させることができる。例えば台座2を左回りに回転させる場合には、回転角度制御ユニット63のモータ632Aを駆動して、ナット631Bが上昇するようにねじ軸631Aを回転させるとともに、荷重制御ユニット64のシリンダ駆動ユニット645がエアシリンダ641を駆動して、出力軸641Aを下降させる。
ナット631Bが上昇するとき、ナット631Bに固定された第1の昇降スライダ633Cが第1の垂直レール633Bにガイドされるため、ナット631Bは、直進性を保った状態で鉛直方向に上昇する。ナット631Bとともに第1の変換軸受634Bが上昇するとき、第1の水平スライダ634Dは、第1の変換軸受634Bで支持された回転軸634Eを中心にして、左回りに回転しつつ、第1の水平レール634Cにガイドされて左に移動する。
出力軸641Aとともに昇降部材643が下降するとき、昇降部材643に固定された第2の昇降スライダ642Cが第2の垂直レール642Bにガイドされるため、昇降部材643は、直進性を保った状態で鉛直方向に下降する。昇降部材643とともに第2の変換軸受644Bが下降するとき、第2の水平スライダ644Dは、第2の変換軸受644Bで支持された回転軸644Eを中心にして、左回りに回転しつつ、第2の水平レール644Cにガイドされて左に移動する。
なお、台座2を右回りに回転させる場合には、以上の制御と逆の制御を行えばよいため、説明は省略する。
【0048】
(積層基板の製造方法)
次に、印刷装置1を用いた積層基板GPの製造方法について説明する。図7から図9は、積層基板の製造方法を説明するための模式図である。なお、台座2、スクリーン版3およびスキージ4の移動方向や動作順序などは、以下の内容に限定されず、基板Gに印刷できるいかなる移動方向や動作順序などを適用してもよい。
【0049】
(基材の配置)
本製造方法においては、基板Gを台座2上に配置する。図7に示すように、基板Gは、基板Gの主面GAが台座2の保持面21側に位置するように(主面GAが保持面21に接するように)、台座2上に配置される。保持面21は、基板Gの形状に合わせて、平坦面と、Y方向に沿った曲げ軸で湾曲する凸面とを有する形状となっており、本実施形態では、平坦面、凸面、平坦面がX方向にこの順で並んでいる。基板Gは、主面GAのうちの湾曲部GAが形成されている領域G1Aが、保持面21の凸面に接触し、主面GAのうちの平坦部GBが形成されている領域G1Bが、保持面21の平坦面に接触する。そのため、基板Gは、湾曲部GAの曲げ軸がY方向に沿うように、台座2上に配置される。
なお、保持面21の形状は平坦面、凸面、平坦面がX方向に並ぶ形状に限られず任意であってよく、基板Gの主面GAと接触して基板Gを保持する任意の形状であってよい。また、基板Gを台座2上に配置する主体は、作業者であってもよいし、図示しない搬送ユニットであってもよい。また、基板Gを台座2上に設置した後、基板Gを位置決めしつつ、図示しない吸着ユニットで凸面21Aに基板Gを吸着してもよい。
【0050】
台座2の裏面22側には、回転軸24が設けられている。回転軸24は、中心軸がY方向に沿うように設けられている。従って、基板Gを台座2上に配置した状態において、回転軸24は、基板Gの湾曲部GAの曲げ軸に平行となるように設置されているといえる。
【0051】
(印刷層の形成)
本製造方法においては、台座2上に基板Gを配置したら、基板Gの台座2と反対側の主面G2上に、印刷層Pを形成して、積層基板GPを製造する。具体的には、台座2上に基板Gを配置したら、台座移動機構6もしくはスクリーン版移動機構8により、スクリーン版3と基板Gとを接近させ、スキージ移動機構7により、スキージ4を下降させて、スクリーン版3の向きZ1側の面を、基板Gの主面G2に押し当てる。この後、スクリーン版3を固定したまま、スキージ移動機構7により、スキージ4を回転軸24の交差方向に移動させる。これにより、スキージ4により、インクをスクリーン版3から押し出し、基板Gの主面G2に塗布して、主面G2上に印刷層Pが形成される。なお、スキージ4を移動させる回転軸24の交差方向とは、回転軸24(湾曲部GAの曲げ軸)に交差する方向であり、回転軸24に交差する(回転軸24と平行でない)任意の方法であってよいが、本実施形態では回転軸24(湾曲部GAの曲げ軸)に直交するX方向であることが好ましい。
【0052】
本実施形態の例では、スキージ4を向きX2に移動させるため、図7に示すように向きX1側における平坦部GBが形成されている領域G2Bに印刷層Pを形成した後、図8に示すように湾曲部GAが形成されている領域G2A上に印刷層Pを形成し、その後、図9に示すように向きX2側における平坦部GBが形成されている領域G2Bに印刷層Pを形成する。
なお、スキージの移動方向は、X方向の成分を含んでいれば、X方向に平行であることに限られず、X,Y方向の両方の成分を含んでいてもよく、主面G2上で印刷層Pのデザインに応じて設定されてよい。
【0053】
(平坦部における印刷層の形成)
本製造方法においては、主面G2のうちの平坦部GBが形成されている領域G2B上に印刷層Pを形成する場合には、図7に示すように、回転軸24を中心軸として台座2を回転させて、領域G2Bがスクリーン版3に対して所定角度となる位置に台座2及び基板Gを配置し、台座2及び基板Gをその状態で保持する。そして、その状態(領域G2BがZ方向と垂直となっている状態)で、スクリーン版3を領域G2Bに押し付けながら、領域G2B上においてスキージ4を回転軸24の交差方向(X方向)に移動させる。これにより、領域G2B上に印刷層Pが形成される。なお、ここでの所定角度は、適宜設定されてよく、例えば領域G2Bがスクリーン版3と平行となるような角度であってよい。また、印刷時におけるスキージ4の領域G2Bに対する角度も、適宜設定されてよく、例えば、領域G2Bとスキージ4とが70°以上80°以下となる程度の角度としてよい。
【0054】
ここで、領域G2B上に印刷層Pを形成する際の、スキージ4を回転軸24の交差方向に移動させる速度を、移動速度Vr0とする。この場合、移動速度Vr0は、例えば15mm以上150mm/s以下が好ましく、75mm/s以上150mm/s以下がより好ましく、100mm/s以上130mm/s以下が更に好ましい。移動速度Vr0を上記範囲とすることで、領域G2B上に印刷層Pを適切に形成できる。特に、移動速度Vr0が75mm/s以上であると、印刷層Pの形成にかかる時間を抑制しつつも、領域G2B上に印刷層Pを適切に形成できる。
【0055】
上述のように、平坦部GBが形成されている領域G2B上に印刷層Pを形成する際には、台座2を保持した状態で、スクリーン版3を領域G2Bに押し付けつつスキージ4を移動させる。ただしそれに限られず、領域G2B上に印刷層Pを形成する際において、台座2を回転させつつ、スクリーン版3を領域G2Bに押し付けながらスキージ4を移動させてもよい。この場合例えば、領域G2Bのうちでスキージ4と接触する領域が、スクリーン版3に対して所定角度を維持するように、台座2を回転させつつ、スキージ4を移動させることが好ましい。なお、領域G2Bにおいても台座2を回転させる場合には、領域G2Bにおける台座2の回転速度は、後述の領域G2Aにおける台座2の回転速度Vtより低いことが好ましい。
【0056】
(湾曲部における印刷層の形成)
本製造方法においては、主面G2のうちの湾曲部GAが形成されている領域G2A上に印刷層Pを形成する場合には、図8に示すように、回転軸24を中心軸として台座2を回転させつつ、スクリーン版3を領域G2Aに押し付けながら、領域G2A上においてスキージ4を回転軸24の交差方向(X方向)に移動させる。これにより、領域G2A上に印刷層Pが形成される。
【0057】
(湾曲部におけるスキージの移動速度)
領域G2A上に印刷層Pを形成する際の、スキージ4を回転軸24の交差方向に移動させる速度を、移動速度Vrとする。この場合、移動速度Vrは、後述するスムージング処理を適用しない場合には、30mm/s以下が好ましい。また、移動速度Vrは、後述するスムージング処理を適用する場合には、100mm/s以下が好ましく、30mm/s以下がより好ましい。移動速度Vrの上限をこの範囲とすることで、台座2を回転させている際の台座2の振動を抑制して、印刷層Pにスジ状の厚みムラであるスジムラが発生することを、抑制できる。また、移動速度Vrは、後述するスムージング処理を適用しない場合には、5mm/s以上30mm/s以下が好ましく、後述するスムージング処理を適用する場合には、10mm/s以上100mm/s以下が好ましく、10mm/s以上30mm/s以下がより好ましい。移動速度Vrの下限を上記範囲とすることで、印刷層Pの形成に要する時間が過大となることを抑制できる。
【0058】
領域G2Aにおけるスキージ4の移動速度Vrは、次の式(1A)を満たすことがより好ましい。式(1A)におけるR(mm)は、湾曲部GAの曲率半径を指す。式(1A)を満たすように移動速度Vrを設定することで、台座2を回転させている際の台座2の振動を抑制して、スジムラの発生を好適に抑制できる。
【0059】
Vr≦0.10×R-0.25 ・・・(1A)
【0060】
より詳しくは、後述するスムージング処理を適用しない場合には、移動速度Vrは、上述の式(1A)を満たすことが好ましく、後述するスムージング処理を適用する場合には、次の式(1B)を満たすことが好ましい。式(1A)や式(1B)を満たすように移動速度Vrを設定することで、台座2を回転させている際の台座2の振動を抑制して、スジムラの発生を好適に抑制できる。
【0061】
Vr≦0.084×R+5.4 ・・・(1B)
【0062】
また、領域G2Aにおけるスキージ4の移動速度Vrは、領域G2Bにおけるスキージ4の移動速度Vr0よりも低いことがより好ましい。このように、湾曲部GAが形成される領域G2Aにおける移動速度Vrを、平坦部GBが形成される領域G2Bにおける移動速度Vr0よりも低くすることで、台座2の振動を抑制して、スジムラが発生することを抑制できる。
【0063】
(湾曲部における台座の回転速度)
領域G2A上に印刷層Pを形成する際の、回転軸24を中心軸として回転させる際の台座2の回転速度を、回転速度Vtとする。回転速度Vtは、スキージ4の動きに合わせて台座2が適宜回転可能なように、適宜設定されてよい。
なお、回転速度Vtとは、領域G2A上に印刷層Pを形成する際に台座2の回転速度が到達すべき回転速度の設定値を指す。言い換えれば、回転速度Vtとは、領域G2A上に印刷層Pを形成する最中における台座2の回転速度の、最大値を指す。
【0064】
また、回転速度Vt(mm/s)に対する移動速度Vr(mm/s)の比率(Vr/Vt)は、後述するスムージング処理を適用しない場合には、0.26以上1.43以下が好ましい。また、比率(Vr/Vt)は、後述するスムージング処理を適用する場合には、0.51以上1.45以下が好ましく、0.51以上1.43以下がより好ましい。比率がこの範囲となることで、台座2の振動を好適に抑制して、領域G2Aにおけるスジムラの発生を抑制できる。
【0065】
(湾曲部における台座の回転の立ち上がり加速度)
本実施形態では、平坦部GBの領域G2Bにおいては、台座2を回転させず(又は領域G2Aより回転速度を低くし)、湾曲部GAの領域G2Aにおいては、台座2を回転速度Vtで回転させることが好ましい。この場合、本実施形態においては、スキージ4の位置が領域G2Bから領域G2Aに切り替わるタイミングで、台座2の回転を開始させる(又は台座2の回転速度を上昇させる)ことになる。
【0066】
ここで、領域G2Aにおいて台座2の回転速度を回転速度Vtに到達させる際の、台座2の回転速度の変化率を、立ち上がり加速度At1とする。より詳しくは、領域G2Bにおける台座2の回転速度を回転速度Vt0(mm/s)(本実施形態では0mm/s)とする。
また、回転速度Vt0から回転速度の上昇を開始させる時刻を時刻t0とし、回転速度が回転速度Vtに達する時刻を時刻t1とする。この場合、立ち上がり加速度At1(mm/s)は、次の式(2A)のように表される。なお、時刻t0から時刻t1までの時間(s)(時刻t1-時刻t0)は、すなわち時定数は、任意に設定されてよいが、例えば0.8msであってよい。
【0067】
At1=(Vt-Vt0)/(t1-t0) ・・・(2A)
【0068】
この場合、立ち上がり加速度At1は、30mm/s以下が好ましい。立ち上がり加速度At1の上限をこの範囲とすることで、台座2の回転速度の急激な変動を抑制して、台座2を回転させている際の台座2の振動を抑制して、領域G2Aにおけるスジムラの発生を抑制できる。また、立ち上がり加速度At1は、16mm/s以上30mm/s以下が好ましい。立ち上がり加速度At1の下限を上記範囲とすることで、台座2の回転速度が上限である回転速度Vtに達する時間が遅くなることを抑制して、適切に印刷層Pを形成できる。
【0069】
立ち上がり加速度At1は、次の式(2)を満たすことがより好ましい。式(2)を満たすように立ち上がり加速度At1を設定することで、台座2を回転させている際の台座2の振動を抑制して、スジムラの発生を好適に抑制できる。なお、本実施形態におけるスムージング処理とは、立ち上がり加速度At1を、式(2)を満たすように設定することを指す。
【0070】
At1≦1.5×ln(R)+46・・・(2)
【0071】
なお、立ち上がり加速度At1は、台座2の回転速度を、回転速度Vt0から回転速度Vtに上昇させる際の台座2の回転加速度であった。一方で、スキージ4の位置が領域G2Aから領域G2Bに切り替わるタイミングにおいては、台座2の回転を停止させる(又は台座2の回転速度を低下させる)ことになる。この場合の、台座2の回転速度を、回転速度Vtから回転速度Vt0に低下させる際の台座2の回転加速度を、立下り加速度At2とする。この場合、立下り加速度At2の値(絶対値)は、上述で説明した立ち上がり加速度At1の値と同じに設定してよい。立ち上がり加速度At2をこのように設定することで、台座2の回転速度の急激な変動を抑制して、台座2を回転させている際の台座2の振動を抑制し、スジムラの発生を好適に抑制できる。
【0072】
なお、立下り加速度At2は、次のように求められる。すなわち、回転速度Vtから回転速度の低下を開始させる時刻を時刻t2とし、時刻t2の直後に、回転速度が回転速度Vt0に達する時刻を時刻t3とする。この場合、立下り加速度At2(mm/s)は、次の式(2B)のように表される。なお、時刻t2から時刻t3までの時間(s)(時刻t3-時刻t2)は、すなわち時定数は、任意に設定されてよいが、例えば0.8msであってよい。
【0073】
At2=(Vt-Vt0)/(t3-t2) ・・・(2B)
【0074】
このように、本実施形態においては、立ち上がり加速度At1や立下り加速度At2を上記のように設定することで、回転速度をスムージング化して、台座2の振動を好適に抑制することが可能となる。
【0075】
(台座の振動)
本実施形態においては、上記のように印刷層Pを形成することで、印刷層Pを形成している最中における、台座2の振動が、1m/s以下となることが好ましく、0.2m/s以下となることがより好ましい。台座2の振動をこの範囲にすることで、スジムラの発生を適切に抑制できる。なお、台座2の振動は、台座2に加速度センサを設置して、印刷層Pの形成時に加速度センサに加速度を測定させることにより、検出できる。
【0076】
(積層基板のスジムラ)
本製造方法により製造された積層基板GPは、印刷層Pの表面においてスジムラが存在しないことが好ましい。具体的には、積層基板GPは、以下で規定するスジムラ検査方法において、印刷層Pにスジムラが検出されないことが好ましい。スジムラ検査方法は、暗室下で、ガラス面から高輝度ライトで積層基板GPを照らし、ガラス面から、積層基板GPの外観を目視で確認する、という内容である。より詳しくは、スジムラ検査方法は、次のように行われることが好ましい。
検査方法:外観目視検査(高輝度ライトで照射してガラス面で反射された反射光を目視)
検査照度:800Lux~1200Lux(高輝度ライトの照度)
検査距離:40±5cm(高輝度ライトから照射するガラス面までの距離)
検査角度:上下30°~60°、左右30°~60°(高輝度ライトの光軸とガラス面とのなす角度)
背景:黒背景(ガラス面の背景)
判定:ムラのありなし判定
【0077】
(効果)
以上説明したように、本開示の第1態様に係る積層基板GPの製造方法は、主面G1(第1主面)及び主面G2(第2主面)を有する基板Gに、台座2、スクリーン版3、及びスキージ4を用いて、印刷層Pを形成して積層基板GPを製造するものである。基板Gは、主面G2側に凸となる湾曲部GAと、湾曲部GAと隣り合う位置に設けられ、湾曲部GAよりも曲率半径が大きく、かつ曲率半径が5000mm以上の平坦部GBとを有する。台座2は、基板Gを保持する保持面21と、保持面21の反対側に設けられる回転軸24とを有する。本製造方法は、台座2の保持面21上に、主面G1が保持面21側となるように、かつ回転軸24が湾曲部GAの曲げ軸に平行になるように、基板Gを配置する。そして、本製造方法は、基板Gの主面G2側に配置されたスクリーン版3を、スキージ4により主面G2に押し当てつつ、スキージ4を回転軸24の交差方向に移動させて、主面G2上に印刷層Pを形成する。本製造方法は、印刷層Pを形成する際において、主面G2上の湾曲部GAに印刷層Pを形成する際のスキージ4の移動速度Vrを、平坦部GBに印刷層Pを形成する際のスキージ4の移動速度Vr0よりも、低くする。
本開示によると、湾曲部GAでのスキージ4の移動速度Vrを、平坦部GBでのスキージ4の移動速度Vr0より低くすることで、湾曲部GAに印刷層Pを形成する際の台座2の振動を抑制して、領域G2Aにおけるスジムラの発生を抑制できる。
【0078】
本開示の第2態様に係る積層基板GPの製造方法は、第1態様に係る積層基板GPの製造方法であって、湾曲部GAが形成されている領域G2Aに印刷層Pを形成する際のスキージ4の移動速度Vr(mm/s)が、式(1A)を満たすことが好ましい。移動速度Vrをこのように設定することで、台座2の振動を抑制して、領域G2Aにおけるスジムラの発生を抑制できる。
【0079】
本開示の第3態様に係る積層基板GPの製造方法は、主面G1(第1主面)及び主面G2(第2主面)を有する基板Gに、台座2、スクリーン版3、及びスキージ4を用いて、印刷層Pを形成して積層基板GPを製造するものである。基板Gは、主面G2側に凸となる湾曲部GAを有する。台座2は、基板Gを保持する保持面21と、保持面21の反対側に設けられる回転軸24とを有する。本製造方法は、台座2の保持面21上に、主面G1が保持面21側となるように、かつ回転軸24が湾曲部GAの曲げ軸に平行になるように、基板Gを配置する。そして、本製造方法は、基板Gの主面G2側に配置されたスクリーン版3を、スキージ4により主面G2に押し当てつつ、スキージ4を回転軸24の交差方向に移動させて、主面G2上に印刷層Pを形成する。本製造方法は、主面G2上の湾曲部GBに印刷層Pを形成する際に、回転軸24を中心に台座2を回転させ、台座2の回転速度を設定値に到達させる際の、台座2の回転速度の変化率である立ち上がり加速度At1(mm/s)が、式(2)を満たす。
本開示によると、式(2)を満たすように立ち上がり加速度At1を設定することで、台座2の振動を抑制して、領域G2Aにおけるスジムラの発生を抑制できる。
【0080】
本開示の第4態様に係る積層基板GPの製造方法は、湾曲部GBに印刷層Pを形成する際のスキージ4の移動速度Vr(mm/s)が、式(1B)を満たすことが好ましい。スキージ4の移動速度Vrをこのように設定することで、台座2の振動を抑制して、領域G2Aにおけるスジムラの発生を抑制できる。
【0081】
本開示の第5態様に係る積層基板GPの製造方法は、第3態様又は第4態様のいずれかに係る積層基板GPの製造方法であって、基板Gは、湾曲部GAに対して湾曲部GAの曲げ軸の直交方向に隣り合う位置に、湾曲部GAよりも曲率半径が大きく、かつ曲率半径が5000mm以上となる平坦部GBが形成されていることが好ましい。本製造方法によると、このような基板Gに印刷層Pを形成する際に、台座2の振動を抑制して、スジムラの発生を抑制できる。
【0082】
本開示の第6態様に係る積層基板GPの製造方法は、第5態様に係る積層基板GPの製造方法であって、湾曲部GAが形成されている領域G2Aに印刷層Pを形成する際のスキージ4の移動速度Vrを、平坦部GBが形成されている領域G2Bに印刷層Pを形成する際のスキージ4の移動速度よりも、低くすることが好ましい。本製造方法によると、湾曲部GAでのスキージ4の移動速度を、平坦部GBでのスキージ4の移動速度より低くすることで、台座2の振動を抑制して、スジムラの発生を抑制できる。
【0083】
本開示の第7態様に係る積層基板GPの製造方法は、第1態様から第6態様のいずれかに係る積層基板GPの製造方法であって、湾曲部GAが形成されている領域G2Aに印刷層Pを形成する際の台座2の振動が、1m/s以下であることが好ましい。振動加速度をこの範囲とすることで、スジムラの発生を抑制できる。
【0084】
本開示の第8態様に係る積層基板GPの製造方法は、第1態様から第7態様のいずれかに係る積層基板GPの製造方法であって、湾曲部GAの曲率半径が300mm以下であることが好ましい。本製造方法によると、このような形状の基板Gに印刷層Pを形成する際に、台座2の振動を抑制し、スジムラの発生を抑制できる。
【0085】
本開示の第9態様に係る積層基板GPの製造方法は、第1態様から第8態様のいずれかに係る積層基板GPの製造方法であって、印刷層Pの膜厚は、3μm以上10μm以下であることが好ましい。本製造方法によると、スジムラの発生を抑制しつつ、このような厚みの印刷層Pを形成できる。
【0086】
本開示の第10態様に係る積層基板GPの製造方法は、第1態様から第9態様のいずれかに係る積層基板GPの製造方法であって、基板Gがガラスである事が好ましい。本製造方法によると、ガラスである基板G上に、スジムラの発生を抑制しつつ印刷層Pを形成できる。
【0087】
本開示の第11態様に係る積層基板GPの製造方法は、第1態様から第10態様のいずれかに係る積層基板GPの製造方法であって、積層基板GPは、ディスプレイ用のカバーガラスであり、外周部(周縁部)に印刷層Pが形成され、外周部(周縁部)よりも内側に、印刷層Pが形成されない開口領域AR2を有することが好ましい。本製造方法によると、スジムラの発生を抑制しつつ、ディスプレイ用のカバーガラスを適切に製造できる。
【0088】
本開示の第12態様に係る表示装置の製造方法は、第1態様から第11態様のいずれかに係る積層基板GPの製造方法で製造される積層基板GPと、ディスプレイとを有する表示装置を製造することが好ましい。本製造方法によると、印刷層Pでのスジムラの発生が抑制された表示装置を製造できる。
【0089】
本開示の第13態様に係る積層基板GPは、主面G1及び主面G2を有し、主面G2側に凸となり曲率半径が300mm以下の湾曲部GAと、湾曲部GAに隣り合う位置に設けられ曲率半径が5000mm以上となる平坦部GBと、を有する基板Gと、基板Gの主面G2上に形成される印刷層Pと、を有する。積層基板GPは、外周部(周縁部)に印刷層Pが形成され、外周部よりも内側に、印刷層Pが形成されない開口領域AR2を有し、湾曲部GAにおける印刷層Pの厚さは、平坦部GBにおける印刷層Pの厚さより小さい。本開示によると、スジムラの発生が抑制された積層基板GPが得られる。
【0090】
本開示の第14態様に係る積層基板GPは、第13態様に係る積層基板GPであって、湾曲部GAにおける印刷層Pの厚さの、平坦部GBにおける印刷層の厚さからの減少率であるΔt(%)が、式(A)を満たすことが好ましい。本開示によると、Δtが式(A)を満たすことにより、スジムラの発生が抑制された積層基板GPが得られる。
【0091】
(実施例)
次に、実施例について説明する。表1及び表2は、各例の製造条件と評価結果とを示す表である。例1~17、19~24が実施例であり、例18が比較例である。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
(例1)
例1においては、湾曲部GAの曲率半径が290mm、平坦部GBの曲率半径が10000mm以上となる基板を準備した。基板の材料はガラスであり、厚みは1.3mmである。
上記の基板を、本実施形態で説明した印刷装置1の台座2上に配置して、基板の主面にスクリーン版を押し付けつつスキージを移動させることで、印刷層を形成した。湾曲部が形成されている領域におけるスキージ速度と、平坦部が形成されている領域におけるスキージ速度とは、表1に示すように設定した。また、湾曲部が形成されている領域に印刷層を形成する際には、台座2を回転させつつスキージを移動させた。台座2の回転速度と立ち上がり加速度は、表1に示すように設定した。
例1においては、湾曲部におけるスキージ速度を、平坦部におけるスキージ速度より低くしたので、表1に示すように、スキージの減速が有りである。また、湾曲部が形成されている領域におけるスキージ速度は、本実施形態における式(1A)を満たす。また、例1においては、台座2の立ち上がり加速度が表1に示したものとなるため、台座2の立ち上がり加速度が式(2)を満たし、スムージング処理が有りである。
印刷層を形成している最中の台座2の振動加速度を、本実施形態で説明した方法で測定した。その測定結果を表1に示す。
【0095】
(例2~例15)
例2~例15においては、湾曲部GAの曲率半径、スキージ速度、台座2の回転速度、台座2の立ち上がり加速度を表1、2に示したものとした以外は、例1と同じ方法で、基板上に印刷層を形成した。
【0096】
(評価)
評価においては、各例で形成した印刷層に対して、本実施形態で説明したスジムラ検査方法を用いてスジムラの程度を評価した。評価においては、無しの場合をA、スジムラが濃く、意匠性が著しく損なわれる場合をEとし、Eは不合格とした。B~Dは、スジムラが無い場合と、Eの場合とのあいだで、スジムラの程度に応じて3段階に評価した。
表1に示すように、実施例である例1~例17、19~24においては、湾曲部におけるスキージの減速を有りとすることと、スムージング処理を適用することの少なくとも一方を満たすことで、スジムラの発生を抑制できることが分かる。
一方、比較例である例18においては、湾曲部におけるスキージの減速と、スムージング処理の適用との両方を満たさず、スジムラ検査結果が不良で、スジムラの発生を抑制できないことが分かる。
更に、例13~16では、スムージング処理を適用しないが、スキージ速度が式(1A)を満たすことで、よりスジムラを軽減できた。
また、例1~12では、スムージング処理の適用により更にスジムラを低減でき、例1、2、4、7、8では、スムージング処理の適用に加え、更にスキージ速度が式(1B)を満たすことで、スジムラを無くすことができた。
【0097】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0098】
1 印刷装置
2 台座
3 スクリーン版
4 スキージ
21 保持面
24 回転軸
G 基板
GA 湾曲部
GB 平坦部
GP 積層基板
P 印刷層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9