(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094184
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ワーク加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240702BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H01L21/304 622J
H01L21/304 631
B24B7/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022210982
(22)【出願日】2022-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】清野 悠太
(72)【発明者】
【氏名】八木 隆之
【テーマコード(参考)】
3C043
5F057
【Fターム(参考)】
3C043BA03
3C043BA09
3C043CC04
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD06
5F057AA02
5F057AA03
5F057AA31
5F057AA41
5F057BA11
5F057BA19
5F057BB03
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5F057EB17
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5F057EC14
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5F057FA13
5F057FA28
5F057FA30
5F057GA12
5F057GB02
5F057GB13
5F057GB17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】非円形状のワークを所望形状に高精度に加工可能なワーク加工方法を提供する。
【解決手段】非円形状のワーク1の表面3側をチャックテーブル31で吸着保持した状態でワークの裏面8を砥石で研削するワーク加工方法であって、ワーク1をチャックテーブル31に吸着保持させる前に、ワーク1をワーク1と砥石とが接触する複数の略円弧状の加工領域に区分したとき、各加工領域の面積変化に伴うワーク1の研削量変化を減少するように各加工領域に対応して膜厚が調整された厚み調整膜7をワークの表面側に形成する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非円形状のワークの一方面側をチャックで吸着保持した状態で前記ワークの他方面を砥石で研削するワーク加工方法であって、
前記ワークを前記チャックに吸着保持させる前に、前記ワークを前記ワークと前記砥石とが接触する複数の略円弧状の加工領域に区分したとき、各加工領域の面積変化に伴う前記ワークの研削量変化を減少するように各加工領域に対応して膜厚が調整された厚み調整膜を前記ワークの一方面側に形成することを特徴とするワーク加工方法。
【請求項2】
前記厚み調整膜の膜厚は、平面から視て前記厚み調整膜と重なる前記加工領域の面積が狭いほど薄く設定されることを特徴とする請求項1に記載のワーク加工方法。
【請求項3】
前記ワークには、オリフラが形成され、
前記オリフラに達する前記加工領域と重なる前記厚み調整膜の膜厚が、前記オリフラに達しない前記加工領域と重なる前記厚み調整膜の膜厚より薄く設定されることを特徴とする請求項2に記載のワーク加工方法。
【請求項4】
前記ワークは、矩形状に形成され、
前記厚み調整膜のうち相対的に小面積の前記加工領域と重なる部分の膜厚が、前記厚み調整膜のうち相対的に大面積の前記加工領域と重なる部分の膜厚より薄く設定されることを特徴とする請求項2に記載のワーク加工方法。
【請求項5】
前記厚み調整膜は、前記一方面を覆うように貼着された保護テープの表面上に形成されることを特徴とする請求項1に記載のワーク加工方法。
【請求項6】
前記厚み調整膜は、液体状態で前記保護テープ上に塗布された後に固化可能な物質から成ることを特徴とする請求項5に記載のワーク加工方法。
【請求項7】
前記厚み調整膜は、UV硬化インクから成ることを特徴とする請求項6に記載のワーク加工方法。
【請求項8】
前記厚み調整膜は、UV硬化インクを積層塗布して形成されることを特徴とする請求項7に記載のワーク加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを加工するワーク加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野では、シリコンウェハ等の半導体ウェハ(以下、「ワーク」という)を薄く形成するために、ワークを吸着保持するチャックテーブル及び砥石をそれぞれ回転させながら、砥石をワークに押し当ててワークを所定厚みに研削するインフィード研削が行われている(例えば、特許文献1参照)。このような研削方式では、砥石とワークとが接触する加工領域は平面から視て円弧状に形成されるため、ワークの厚みは同心円状で同一に研削される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、小径の半導体ウェハの多くは、外周の一部に結晶方位を示すオリフラが形成されている。また近年では、矩形状の半導体ウェハのニーズが高まっている。このような非円形状のワークをインフィード研削する場合、砥石とワークとが接触する円弧状の加工領域の面積は、ワークの周方向において一定ではない。
【0005】
そして、面積が相対的に狭い加工領域内では、面圧が過剰になり研削量が増大するため、研削後のワークは局所的に薄くなる。一方、面積が相対的に広い加工領域内では、面圧が過小になり研削量が減少するため、研削後のワークが局所的に厚くなる。このようにして、加工領域の面積変化に起因して研削後のワークに厚みバラつきが生じる虞があった。
【0006】
そこで、非円形状のワークを所望形状に高精度に加工するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明は、この課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るワーク加工方法は、非円形状のワークの一方面側をチャックで吸着保持した状態で前記ワークの他方面を砥石で研削するワーク加工方法であって、前記ワークを前記チャックに吸着保持させる前に、前記ワークを前記ワークと前記砥石とが接触する複数の略円弧状の加工領域に区分したとき、各加工領域の面積変化に伴う前記ワークの研削量変化を減少するように各加工領域に対応して膜厚が調整された厚み調整膜を前記ワークの一方面側に形成する。
【0008】
また、本発明に係るワーク加工方法は、前記厚み調整膜の膜厚が、平面から視て前記厚み調整膜と重なる前記加工領域の面積が狭いほど薄く設定されることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るワーク加工方法は、前記ワークには、オリフラが形成され、前記オリフラに達する前記加工領域と重なる前記厚み調整膜の膜厚が、前記オリフラに達しない前記加工領域と重なる前記厚み調整膜の膜厚より薄く設定されることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るワーク加工方法は、前記ワークは、矩形状に形成され、前記厚み調整膜のうち相対的に小面積の前記加工領域と重なる部分の膜厚が、前記厚み調整膜のうち相対的に大面積の前記加工領域と重なる部分の膜厚より薄く設定されることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るワーク加工方法は、前記厚み調整膜が、前記一方面を覆うように貼着された保護テープの表面上に形成されることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るワーク加工方法は、前記厚み調整膜が、液体状態で前記保護テープ上に塗布された後に固化可能な物質から成ることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るワーク加工方法は、前記厚み調整膜が、UV硬化インクから成ることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るワーク加工方法は、前記厚み調整膜が、UV硬化インクを積層塗布して形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、砥石とワークとが接触する加工領域の面積変化に起因したワークの研削量の変化が軽減されて、研削後のワークの厚みバラつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】砥石とワークとの位置関係を模式的に示す平面図である。
【
図2】非円形状のワークを示す図であり、(a)はオリフラを有するワークを示す平面図であり、(b)は4枚の矩形状のワークがチャックテーブルに保持されている状態を示す平面図である。
【
図3】ワーク加工方法の手順を示すフローチャートである。
【
図5】ワーク加工方法における要部を模式的に示す断面図である。
【
図6】実施例1、2においてワーク上に形成された厚み調整膜の構造を示す平面図及び側面図である。
【
図7】実施例1における研削後のワークの厚み分布を示す図である。
【
図8】実施例2における研削後のワークの厚み分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0018】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0019】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0020】
図1は、円形状のワーク100及び砥石101の位置関係を示す模式図である。ワーク100及び砥石101をそれぞれ回転させた状態で、ワーク100に砥石101を押し当てることにより、ワーク100の裏面(被研削面)102が研削される。このとき、ワーク100と砥石101とが接触する加工領域Aは、平面から視て略円弧状に形成される。略円弧状の加工領域Aは、通常、ワーク100を保持するチャックテーブルの回転中心Oからワーク100の外周に亘って連続して形成される。円形状のワーク100を周方向に亘って複数の加工領域Aで区分したとき、全ての加工領域Aの面積は略同一になるところ、非円形状のワークを周方向に亘って複数の加工領域Aで区分したときは、全ての加工領域Aの面積が同一にはならない。
【0021】
非円形状のワークとしては、例えば、
図2(a)に示すような外周の一部にオリフラ2が形成されたワーク1、又は
図2(b)に示すような略矩形状に形成されたワーク1等が考えられる。なお、
図2(b)は、4枚の矩形状のワーク1がチャックテーブル102に保持された状態を示している。ワーク1は、例えば、シリコン基板であるが、ワーク1の材質は如何なるものであっても構わない。また、ワーク1は、単一の基板から成るものであっても、脆性材料から成る基板又は目標厚みが極めて薄い基板に支持基板が貼り合された複合基板等であっても構わない。
【0022】
そして、
図2(a)に示すワーク1において、オリフラ2に達しないように設定された加工領域A1の面積と、オリフラ2に達するように設定された加工領域A2の面積とを比較すると、前者が後者より広い。そして、砥石101を略平坦なワーク1に押し当てて研削する場合、ワーク1と砥石101との接触面積が増大するにつれて、ワーク1の研削量が減少して研削後のワーク1は厚くなる。したがって、
図2(a)に示すワーク1において、オリフラ2に達しないように設定された加工領域A1及びオリフラ2に達するように設定された加工領域A2における研削後のワーク1の厚みを比較すると、前者が後者より厚くなることが予測される。
【0023】
同様に、
図2(b)に示す矩形状のワーク1において、ワーク1の一対の対角を通るように設定された加工領域A3の面積と、ワーク1の角及び辺の中央を通るように設定された加工領域A4の面積とを比較すると、前者が後者より約2倍程度広い。そして、砥石101を略平坦なワーク1に押し当てて研削する場合、ワーク1と砥石101との接触面積が増大するにつれて、ワーク1の研削量が減少して研削後のワーク1は厚くなるため、
図2(b)に示す矩形状のワーク1において、ワーク1の一対の対角を通るように設定された加工領域A3及びワーク1の角及び辺の中央を通るように設定された加工領域A4における研削後のワーク1の厚みを比較すると、前者が後者より厚くなることが予測される。
【0024】
次に、非円形状のワーク1を加工する加工方法について説明する。
図3は、ワーク加工方法の手順を示すフローチャートである。
図4は、ワーク加工方法の手順を示す模式図である。
図5は、ワーク加工方法における要部を模式的に示す断面図である。なお、以下では、オリフラ2が形成されたワーク1を加工する場合を例に説明するが、非円形状のワーク1がこの形状に限定されるものではない。
【0025】
<BGテープ貼着>
まず、ワーク1の表面3側に保護テープとしてのBG(バックグラインド)テープ4を貼着する(ステップS1)。具体的には、
図4(a)に示すように、ワーク1の上方に繰り出されたBGテープ4を押圧ローラ10でワーク1の表面3側に貼着する。ワーク1は、図示しないチャックテーブルに吸着保持されており、チャックテーブルを水平方向にスライドさせることにより、BGテープ4が、ワーク1の全面に亘って貼り付けられる。
【0026】
BGテープ4には、一般的にUV(Ultra Violet)を照射することで固化するUV硬化タイプが用いられるが、後述する厚み調整膜7にUV硬化インク6を用いる場合、UV硬化インク6にUVを照射して硬化させる際にBGテープ4も同時に硬化して剥離する虞がある。したがって、厚み調整膜7にUV硬化インク6を用いる場合には、BGテープ4は、非UV硬化タイプが好ましい。なお、BGテープ4は、スピンコート又はスプレーコート等により形成された樹脂膜等であっても構わない。
【0027】
続いて、BGテープ4の表面5側の形状を測定する。具体的には、
図4(b)に示すように、形状測定器11をBGテープ4の上方で走査させて、BGテープ4の表面形状を測定する。形状測定器11は、例えば触針式の段差計や光学式表面測定器等である。なお、BGテープ4の表面形状とワーク1の形状とは略同一であるから、ワーク1の形状が既知であれば、BGテープ4の形状も既知であるから、本工程は省略可能である。
【0028】
<厚み調整膜形成>
次に、BGテープ4の表面5に、UV硬化インク6を塗布して厚み調整膜7を形成する(ステップS2)。具体的には、ワーク1とBGテープ4とが略同一形状であることから、ワーク1を周方向に沿って複数の加工領域Aに区分したとき、各加工領域Aに対応するようにBGテープ4の表面5を周方向に沿って複数の仮想加工領域に区分し、仮想加工領域毎に膜厚を調整した厚み調整膜7を形成する。
【0029】
すなわち、まず、汎用のコンピュータ等を用いて、形状測定器11が測定したBGテープ4の表面形状又は予め記憶されたBGテープ4の表面形状に基づいて、BGテープ4を周方向に沿って円弧状の仮想加工領域に複数区分し、各仮想加工領域の面積(推定接触面積)を算出する。このとき、BGテープ4を複数区分して設定された各仮想加工領域は、ワーク1を周方向に沿って複数区分して設定された各加工領域Aに対応しており、平面から視て各加工領域Aと各仮想加工領域とは重なるように設定される。
【0030】
次に、予め設定された基準となる仮想加工領域の面積(基準面積)と各仮想加工領域の推定接触面積とを比較して、仮想加工領域毎に形成する厚み調整膜7の膜厚を算出する。なお、コンピュータ等には、予め実験等により算出された、加工領域Aの面積が基準面積から推定接触面積に変化した場合に生じる加工領域A内の研削量の変化量と、このような研削量の変化量を相殺するために当該加工領域A内に形成すべき厚み調整膜7の膜厚との関係式等が記憶されている。
【0031】
厚み調整膜7の膜厚は、推定接触面積が狭いほど、換言すれば仮想加工領域に対応する加工領域Aの面積が狭いほど薄く設定される。すなわち、面積が相対的に広い加工領域A内では研削量が少ないため、当該加工領域Aに対応する仮想加工領域内の厚み調整膜7の膜厚を厚く設定する。一方、面積が相対的に狭い加工領域A内では研削量が多いため、当該加工領域Aに対応する仮想加工領域内の厚み調整膜7の膜厚を薄く設定する。なお、厚み調整膜7の膜厚は、例えば0~150μmの範囲内で任意に調整可能である。
【0032】
例えば、
図2(a)に示すオリフラ2が形成されたワーク1において、オリフラ2に達しないように設定された加工領域A1及びオリフラ2に達するように設定された加工領域A2における研削後のワーク1の厚みを比較して、前者が後者より1μm程度厚くなる厚みバラつきが生じる場合、例えば、前者に2μmの厚み調整膜7を形成し、後者に1μmの厚み調整膜7を形成することが考えられる。
【0033】
そして、
図4(c)に示すように、UVインクジェットプリンタ20のインクジェットヘッド21から液状のUV硬化インク6を、BGテープ4の表面5上に微小量吐出する。UVインクジェットプリンタ20には、各仮想加工領域の座標及び各仮想加工領域内に形成する厚み調整膜7の膜厚を含むCADデータが入力され、インクジェットヘッド21は、各仮想加工領域に所定量のUV硬化インク6を吐出する。なお、UV硬化インク6は、液状のUV硬化樹脂から成る。
【0034】
次に、
図4(d)に示すように、UVインクジェットプリンタ20のUV照射装置22からBGテープ4の表面5に向けてUV光を照射してUV硬化インク6を硬化定着させる。これにより、
図5(a)に示すように、BGテープ4の表面5上に層状の厚み調整膜7が形成される。UVインクジェットプリンタ20は、公知の構成であり、例えばローランド ディー.ジー.株式会社製フラットベッドUVプリンタ(型番:Versa UV LEF2 300)等である。
【0035】
インクジェットヘッド21が一度に吐出可能なUV硬化インク6で形成される厚み調整膜7の膜厚が、仮想加工領域内に形成すべき厚み調整膜7の膜厚を下回る場合には、一度硬化させたUV硬化インク6上にUV硬化インク6を再度吐出・硬化させることで、
図5(b)に示すように、UV硬化インク6を局所的に積層させて厚み調整膜7の膜厚を調整することができる。また、厚み調整膜7を形成した後にBGテープ4の表面5の形状を再測定し、必要に応じてUV硬化インク6を再塗布しても構わない。
【0036】
厚み調整膜7を形成する方法としては、UVインクジェットプリンタ20の他に、液状樹脂中に光を照射して所望の箇所のみ樹脂を硬化させて3次元構造物を得る光造形や、各種リソグラフィ等も考えられるが、UVインクジェットプリンタ20は、インクを吐出する位置をCADデータ等で簡便に指定可能であり、また一度硬化させたUV硬化インク6上に再度UV硬化インク6を重ねる重ね打ちが可能であってBGテープ4の表面形状に細かく対応可能である点で好適である。さらに、ワーク1の形状に適した厚み調整膜7を得るために、UVインクジェットプリンタ20が吐出するインクの種類や吐出量、重ね打ち回数は、任意に調整できるのが好ましい。
【0037】
なお、厚み調整膜7の材質は、UV硬化インク6に限らず、例えば、光照射や加熱により急速に固化する樹脂、常温で緩やかに固化する樹脂、銀インク又は絶縁性を示す材質等で構成されたものであっても構わないが、光照射や加熱により急速に固化する樹脂は、重ね打ちが可能な点で好適である。
【0038】
<研削>
次に、研削装置30を用いてワーク1を薄く研削する(ステップS3)。具体的には、まず、表面3を下にした状態でワーク1をチャックテーブル31に載置させる。
【0039】
チャックテーブル31は、上面にアルミナ等の多孔質材料から成る吸着体32を備えている。チャックテーブル31は、内部を通って吸着体32に延びる管路を備えている。管路は、ロータリージョイントを介して真空源に接続されている。真空源が起動すると、チャックテーブル31上に載置されたワーク1が厚み調整膜7を介してチャックテーブル31に吸着保持される。このとき、
図5(c)に示すように、ワーク1の裏面8のうち局所的に厚く形成された厚み調整膜7に対応する部分は、局所的に盛り上がっている。
【0040】
次に、
図4(e)に示すように、チャックテーブル31上に真空吸着されたワーク1の裏面8を砥石33で研削する。
【0041】
砥石33は、例えばカップ型砥石であり、チャックテーブル31の上方に設置された砥石スピンドル34の下端に取り付けられ、砥石スピンドル34によって回転軸35回りに回転駆動する。砥石33の番手は、例えば#8000である。砥石33の加工面は、略円環状に形成されている。砥石スピンドル34は、図示しないインフィード機構によって垂直方向に昇降する。インフィード機構は、例えば、砥石スピンドル34を昇降させるボールネジスライダ機構である。
【0042】
チャックテーブル31は、チャックスピンドル36によって回転軸37回りに回転駆動する。チャックスピンドル36の駆動源は、例えばサーボモータ等である。また、チャックテーブル31は、回転軸37の傾きを調整可能なチルト機構が設けられている。回転軸37の傾きを調整することにより、砥石33とワーク1との接触具合を調整して研削後のワーク1の厚みを加減することができる。
【0043】
そして、砥石33をワーク1の近傍まで下降させた後に、砥石スピンドル34及びチャックスピンドル36をそれぞれ回転させた状態でインフィード機構を駆動し、砥石33をワーク1の裏面8に押し当てることにより、裏面8がインフィード研削される。例えば、砥石スピンドル34の回転速度は2000rpm、チャックスピンドル36の回転速度は300rpmに設定される。また、インフィード送り機構の送り速度は0.4μm/sに設定される。
【0044】
このとき、非円形状のワーク1の裏面8を研削すると加工領域Aの面積変化に起因してワーク1の研削量が局所的に増減し、研削後のワーク1に厚みバラつきが生じ得るところ、加工領域Aの面積変化に応じて膜厚が増減された厚み調整膜7をワーク1の表面3側に形成することにより、厚み調整膜7の膜厚に応じてワーク1の裏面8に微小な凹凸が形成され、面積が相対的に狭い加工領域A内の研削量の上振れが軽減されるとともに、面積が相対的に広い加工領域A内の研削量の下振れが軽減されて、加工領域Aの面積変化に起因したワーク1の研削量の変化が軽減されるため、研削後のワーク1の厚みバラつきを抑制できる。
【0045】
研削中のワーク1の厚みを計測するインプロセスゲージ38の計測値が目標厚みに達すると、チャックスピンドル36及び砥石スピンドル34を停止させた後に、砥石33を上方に退避させる。
【0046】
<ワーク形状測定>
次に、研削後のワーク形状を測定して、研削の適否を判定する(ステップS4)。ワーク1の形状測定は、例えばワーク1の厚みを測定する光干渉式膜厚センサを用いて行われる。研削後のワーク形状と所定の判定基準(例えば、TTV1μm)とを比較して、研削後のワーク形状が判定基準を満たさない場合には(ステップS5でNo)、ステップS2に戻り、BGテープ4の表面5にUV硬化インク6を塗布して厚み調整膜7を形成する。
【0047】
一方、研削後のワーク形状が判定基準を満たす場合には(ステップS4でYes)、研削を終了し、BGテープ4をワーク1から除去する。これにより、厚み調整膜7は、BGテープ4とともにワーク1から除去されるため、厚み調整膜7がワーク1に残留することを回避できる。
【0048】
このようにして、本実施形態に係るワーク加工方法は、非円形状のワーク1の表面3側をチャックテーブル31で吸着保持した状態でワーク1の裏面8を砥石33で研削するワーク加工方法であって、ワーク1をチャックテーブル31に吸着保持させる前に、ワーク1をワーク1と砥石33とが接触する複数の略円弧状の加工領域Aに区分したとき、各加工領域Aの面積変化に伴うワーク1の研削量変化を減少するように各加工領域Aに対応して膜厚が調整された厚み調整膜7をワーク1の表面3側に形成する構成とした。
【0049】
このような構成によれば、加工領域Aの面積変化に応じて膜厚が増減された厚み調整膜7をワーク1の表面3側に形成し、加工領域Aの面積変化に起因したワーク1の研削量の変化が軽減された状態でワーク1を加工することにより、非円形状のワーク1であっても略平坦に加工することができる。さらに、ワーク1枚毎の形状に適した位置、膜厚の厚み調整膜7を形成することにより、安価で歩留まりよく、平坦性の高い研削が可能になる。
【実施例0050】
次に、12インチのシリコンウェハに対して、比較的薄い厚み調整膜7をBGテープ4上に形成した状態で研削を行った場合(実施例1)、及び比較的厚い厚み調整膜7をBGテープ4上に形成した状態で研削を行った場合(実験例2)について説明する。なお、BGテープ4には、非UV硬化型のBGテープ(SB―170HRA)を用い、厚み調整膜7は、BGテープ4上にUV硬化インク6を重ね打ちして層状に形成した。
【0051】
実施例1、2における厚み調整膜7は、
図6(a)、(b)に示すように階段状に形成されており、具体的には「Zone1」~「Zone6」の6つに区分された互いに異なる膜厚の領域で構成されている。実施例1における厚み調整膜7を構成する各領域の膜厚差は約6~15μmとし、「Zone1」が最も薄く、「Zone6」が最も厚い。また、「Zone1」と「Zone6」との膜厚差は49μmに設定した。また、実験例2における厚み調整膜7の各領域の膜厚差は約20~30μmとし、「Zone1」と「Zone6」との膜厚差は123μmに設定した。そして、実施例1、2に係るシリコンウェハに対して同様に粗研削及び精研削を行い、研削後のシリコンウェハの厚みを全面に亘って測定した。
【0052】
実施例1では、
図7に示すように、研削後のシリコンウェハは、「Zone1」の最大膜厚が312μmであり、「Zone6」の最小膜厚が262μmであり、最大膜厚と最小膜厚の差は、「Zone1」と「Zone6」との膜厚差と略等しい50μmであった。したがって、シリコンウェハを厚み調整膜7の各領域の膜厚差に応じて研削量を調整できたことが分かる。また、研削後のシリコンウェハには、クラックは生じなかった。
【0053】
また、実施例2では、
図8に示すように、研削後のシリコンウェハは、「Zone1」の最大膜厚が351μmであり、「Zone6」の最小膜厚が225μmであり、最大膜厚と最小膜厚の差は、「Zone1」と「Zone6」との膜厚差と略等しい126μmであった。したがって、シリコンウェハを厚み調整膜7の各領域の膜厚差に応じて研削量を調整できたことが分かる。しかしながら、「Zone4」と「Zone5」との境界付近において、局所的に研削量が過剰で薄い箇所があり、この箇所ではクラックが生じた。
【0054】
なお、本発明は、上記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【0055】
また、上述した実施形態では、BGテープ4の表面5全面に厚み調整膜7を形成した場合を例に説明したが、厚み調整膜7は、BGテープ4の表面5上に局所的に形成されるものであっても構わない。
【0056】
なお、上述した実施形態では、BGテープ4の表面5に厚み調整膜7を形成した場合を例に説明したが、ワーク1の表面3上に厚み調整膜7を直接形成し、厚み調整膜7を覆うようにBGテープ4をワーク1に貼り付けても構わない。
【0057】
なお、本発明は、ワーク1の研削だけでなくワーク1の研磨にも適用可能である。例えば、ワークの被研磨面とは裏側の面に部分的に厚み調整膜を塗布して細かい凹凸を形成して、ワークに対してCMP(化学的機械的研磨)を行うことにより、ワークの部分研磨が可能である。なお、研削砥石とワークとが剛体同士の接触であるのに対し、CMPで用いるポリッシュヘッドは非剛体のため、厚み調整膜の凹凸が研磨量に直結しない。