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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094241
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】画像記録方法及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20240702BHJP
   D06P 5/00 20060101ALI20240702BHJP
   D06P 5/30 20060101ALI20240702BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240702BHJP
   C09D 11/322 20140101ALN20240702BHJP
【FI】
B41M5/00 132
B41M5/00 114
D06P5/00 106
D06P5/30
B41J2/01 123
B41J2/01 125
B41J2/01 401
B41J2/01 501
C09D11/322
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023190012
(22)【出願日】2023-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2022209992
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】平出 智大
(72)【発明者】
【氏名】黒沼 慎
(72)【発明者】
【氏名】松本 彩香
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4H157
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA13
2C056EC14
2C056EC29
2C056FB03
2C056HA42
2C056HA46
2H186AB02
2H186AB03
2H186AB12
2H186AB13
2H186AB23
2H186AB27
2H186AB45
2H186AB49
2H186AB54
2H186AB55
2H186AB56
2H186AB57
2H186BA08
2H186DA17
2H186FA07
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB18
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB56
4H157BA15
4H157CA15
4H157GA06
4J039BE01
4J039CA06
4J039EA36
4J039EA42
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】布帛へ画像を印刷しても、印刷された画像のべたつきがなく、布帛下地の隠蔽性と印刷物の堅牢性が共に向上し両立する画像記録方法の提供。
【解決手段】水を含み、有機溶剤を実質的に含まない第1の処理液を布帛に付与する第1の工程と、前記第1の工程の後に、前記第1の処理液が付与された領域に、水、水溶性溶剤、及び凝集剤を含む第2の処理液を付与する第2の工程と、前記第2の工程の後に、前記第2の処理液が施された領域にインクを付与する第3の工程と、を含む画像記録方法であって、前記第1の工程と前記第2の工程の間、及び前記第2の工程と前記第3の工程の間に乾燥工程を設けないことを特徴とする画像記録方法。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含み、有機溶剤を実質的に含まない第1の処理液を布帛に付与する第1の工程と、
前記第1の工程の後に、前記第1の処理液が付与された領域に、水、水溶性溶剤、及び凝集剤を含む第2の処理液を付与する第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記第2の処理液が施された領域にインクを付与する第3の工程と、を含む画像記録方法であって、
前記第1の工程と前記第2の工程の間、及び前記第2の工程と前記第3の工程の間に乾燥工程を設けないことを特徴とする画像記録方法。
【請求項2】
前記布帛は、濃色又は淡色の化学繊維製布帛である、請求項1に記載の画像記録方法。
【請求項3】
前記化学繊維製布帛は、ポリエステル製布帛である、請求項2に記載の画像記録方法。
【請求項4】
前記第1の処理液がさらに、シリコーン系界面活性剤を含む、請求項1または2に記載の画像記録方法。
【請求項5】
前記第1の処理液がさらに、滑剤及び増粘剤の少なくともいずれかを含む、請求項1または2に記載の画像記録方法。
【請求項6】
前記第2の処理液中の水溶性溶剤は沸点240℃未満である、請求項1または2に記載の画像記録方法。
【請求項7】
前記第2の処理液中の水溶性溶剤の含有量が、前記第2の処理液の全量に対して35質量%以下である、請求項1または2に記載の画像記録方法。
【請求項8】
前記第2の処理液中の凝集剤が、無機塩である、請求項1または2に記載の画像記録方法。
【請求項9】
前記第2の処理液中の凝集剤の含有量が、前記第2の処理液の全量に対して10質量%以上25質量%以下である、請求項1または2に記載の画像記録方法。
【請求項10】
前記インクは、色材、水溶性溶剤、樹脂エマルジョン、シリコーン系界面活性剤を含む、請求項1または2に記載の画像記録方法。
【請求項11】
請求項1または2に記載の画像記録方法により、前記布帛に画像を形成する画像形成工程と、
前記画像形成工程において形成された前記画像を加熱して乾燥する工程と、
を含み、
前記乾燥工程における加熱温度が100℃以上140℃以下であることを特徴とする印刷方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録方法及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、捺染分野においても、Tシャツ等の衣類に直接印字するいわゆるDTG(Direct to Garment)分野の市場規模は年々拡大しており、また、近年のアパレル業界におけるパーソナルレコメンデーションビジネスの隆盛や、インテリアテキスタイル分野において認められるファインアートとのコラボレーションの活発化といった動向より、ファブリックに対して発色性及び種々堅牢性に優れた画像を形成可能なインクジェット記録システムへの需要がますます高まりつつある。
【0003】
顔料を色材として含むインクを用いて生地に直接インクジェットで作像する捺染方式においては、スクリーン捺染及びその他の従来の捺染とは異なり、版の作製・保管・洗浄等版に関する事柄が必要なく、少量多品種生産に適していること、転写等の工程を含まないため短納期化が可能なこと、耐光性に優れること等の点において優位性を有している。顔料捺染では、印刷物の発色性、堅牢性等向上のため種々の検討がされているが、インクのみでこれらの特性を満足することは困難であり、近年ではインクを布帛に印捺する前に布帛に前処理を行う手法が提案されている。
【0004】
特許文献1には、水及びインク凝集剤を少なくとも含有する第一の前処理液を布に塗布する第一の工程と、第一の前処理液よりもインク凝集力の小さい第二の前処理液を前記布に塗布する第二の工程と、水性インクジェットインクを用いて前記布にインクジェット印刷する第三の工程と、を含む捺染物の製造方法が開示されている。
特許文献2には、多価カチオン塩または酸を含む処理液を付与する工程と、樹脂を含むクリアインクをインクジェット付与する工程と、白インクをインクジェット付与する工程と、カラーインクをインクジェット付与する工程と、を含む捺染物の印刷方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、布帛への画像印刷において、印刷物のべたつきがなく、インク付与による布帛下地の隠蔽性と印刷物の堅牢性を両立させることは困難であった。
【0006】
本発明は、布帛へ画像を印刷しても、印刷された画像のべたつきがなく、布帛下地の隠蔽性と印刷物の堅牢性が共に向上し両立する画像記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像記録方法は、
水を含み、有機溶剤を実質的に含まない第1の処理液を布帛に付与する第1の工程と、
前記第1の工程の後に、前記第1の処理液が付与された領域に、水、水溶性溶剤、及び凝集剤を含む第2の処理液を付与する第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記第2の処理液が施された領域にインクを付与する第3の工程と、を含む画像記録方法であって、
前記第1の工程と前記第2の工程の間、及び前記第2の工程と前記第3の工程の間に乾燥工程を設けないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、布帛へ画像を印刷しても、印刷された画像のべたつきがなく、布帛下地の隠蔽性と印刷物の堅牢性が共に向上し両立する画像記録方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、本発明の画像記録装置の一例を示す概略説明図である。
図1B図1Bは、本発明の画像記録装置の別の一例を示す概略説明図である。
図2図2は、図1A又は図1Bの画像記録装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、図1A又は図1Bの画像記録装置における制御の概要の一例を示す概略説明図である。
図4図4は、本発明のインクカートリッジの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
布帛への印刷は、フィルムや紙などへの印刷と異なり、布帛下地の隠蔽性や印刷物の堅牢性などの特性を求められることが多い。
しかし、布帛下地の隠蔽性を高くさせるために前処理液の付着量を多くする必要があり、従来の前処理液を使用したインクを用いて布帛へウェットオンウェット印刷する方法では、前処理液中には有機溶剤が含有されているため、乾燥工程において印刷物のべたつきが残り、十分にインクを定着させることが難しく、布帛下地の隠蔽性と印刷物の堅牢性を両立させることが困難である。
このような問題を解決するため、発明者らは本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、
水を含み、有機溶剤を実質的に含まない第1の処理液を布帛に付与する第1の工程と、
前記第1の工程の後に、前記第1の処理液が付与された領域に、水、水溶性溶剤、及び凝集剤を含む第2の処理液を付与する第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記第2の処理液が施された領域にインクを付与する第3の工程と、を含む画像記録方法であって、
前記第1の工程と前記第2の工程の間、及び前記第2の工程と前記第3の工程の間に乾燥工程を設けない画像記録方法である。
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
(画像記録方法)
本発明の画像記録方法は、
水を含み、有機溶剤を実質的に含まない第1の処理液を布帛に付与する第1の工程と、
前記第1の工程の後に、前記第1の処理液が付与された領域に、水、水溶性溶剤、及び凝集剤を含む第2の処理液を付与する第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記第2の処理液が施された領域にインクを付与する第3の工程と、を含む画像記録方法であって、
前記第1の工程と前記第2の工程の間、及び前記第2の工程と前記第3の工程の間に乾燥工程を設けない画像記録方法である。
【0014】
第1の工程と前記第2の工程の間、及び前記第2の工程と前記第3の工程の間に乾燥工程を設けない(「ウェットオンウェットオンウェット」と称することがある。)とは、具体的には、第1の処理液を付着させた後、生地の表面温度が32℃以下の状態で第2の処理液を付着させ(第2の工程)、第2の処理液を付着させた後、生地の表面温度が32℃以下の状態でインクを付着させる(第3の工程)ことを示す。
【0015】
第1の工程と前記第2の工程の間、及び前記第2の工程と前記第3の工程の間の少なくともいずれかに乾燥工程を設けると、布帛下地の隠蔽性が低下してしまう。
【0016】
<布帛>
本明細書において「布帛」とは、繊維を、織物、編物、不織布などの形態にしたものを表す。前記繊維の太さや網目の大きさに制限はない。
前記繊維としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然繊維、化学繊維、生分解性繊維、又はこれらの混紡繊維などが挙げられるが、化学繊維が特に好適に挙げられる。
【0017】
前記天然繊維としては、例えば、綿、麻、羊毛、絹などからなる繊維、又はこれらの混紡繊維が挙げられる。
【0018】
前記化学繊維としては、例えば、再生繊維、合成繊維、半合成繊維、またはこれらの混紡繊維が挙げられるが、合成繊維が特に好適に挙げられる。
【0019】
前記再生繊維としては、例えば、ビスコース、リヨセル、ポリノジック、レーヨン、キュプラなどからなる繊維、又はこれらの混紡繊維が挙げられる。
【0020】
前記合成繊維としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、アクリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ナイロン、Nomex(登録商標)(Dupon社製)、Kevlar(登録商標)(Dupon社製)などからなる繊維、又はこれらの混紡繊維が挙げられるが、ポリエステル製のものが特に好適に挙げられる。
【0021】
前記半合成繊維としては、例えば、アセテート、ジアセテート、トリアセテートなどからなる繊維、又はこれらの混紡繊維が挙げられる。
【0022】
前記生分解性繊維としては、例えば、ポリ乳酸などからなる繊維が挙げられる。
【0023】
前記布帛を形成する繊維の中でも、綿等の天然繊維よりも、ポリエステル等の合成繊維の方が、インクを下地層とする際に高い下地隠蔽性を出すことが難しく、また堅牢性を両立させることが難しいとされる。しかし、本発明の画像記録方法で用いられる前記第1の処理液及び前記第2の処理液は、このような布帛に対しても好適に作用し、高い下地隠蔽性と堅牢性を確保することが可能となる点で有利である。
【0024】
前記布帛は、濃色又は淡色の布帛であることが好適であり、化学繊維を含む、濃色又は淡色の化学繊維製布帛であることがより好適であり、ポリエステルを含む、濃色又は淡色のポリエステル製布帛であることがさらにより好適である。
本明細書において「濃色の布帛」とは、L色空間におけるL値が50以下の明度の低い布帛のことであり、「淡色の布帛」とは、L色空間におけるL値が50超100未満の、前記「濃色の布帛」よりも明度の高い布帛のことである。
前記L色空間は、国際照明委員会(CIE)で規格化されている。L色空間では、明度をL、色相と彩度を示す色度をaで表わす。aは、色の方向を示しており、aは赤方向、-aは緑方向、bは黄方向、-bは青方向を示す。
【0025】
「濃色のポリエステル製布帛」は、白色以外の有色(例えば、黒色、赤色、青色、ピンク色等)での分散染料を用いて着色されたポリエステル製布帛であり、「淡色のポリエステル製布帛」は、有色(例えば、薄ピンク、薄水色、黄色、ベージュ色等)または白色の分散染料を用いて着色されたポリエステル製布帛を意味する。
【0026】
<第1の工程>
第1の工程は、水を含み、有機溶剤を実質的に含まない第1の処理液を布帛に付与する工程である。
第1の処理液を布帛に付与する方法としては、特に限定されず、例えば、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。これらの中でも、スプレーコート法が好ましい。
【0027】
第1の処理液の付着量は、5mg/cm以上12mg/cm以下が好ましい。上記範囲内であると、滲みを抑制しつつ、布帛下地の隠蔽性を向上することができる。
【0028】
<<第1の処理液>>
第1の処理液は水を含み、有機溶剤を実質的に含まない。
本発明は、第1の処理液を使用することで、第2の処理液のみを使用する場合よりも第2の処理液の使用量を少なくすることができるため、布帛に付与される水溶性溶剤の量も少なくなり、印刷物が乾きやすくべたつきにくくなる。
また、第1の処理液を使用することによって、布帛下地の隠蔽性を向上させることができる。これは、第1の処理液を使用することで、第2の処理液を付与する前からすでに布帛が液体を吸収した状態となるため、第2の処理液が布帛に吸収されにくくなり、布帛表面に凝集剤が存在しやすくなって、インクが布帛内部に浸透する前に布帛表面で凝集剤と反応しやすくなって、顔料成分が生地表面に留まりやすくなるためであると推測される。
【0029】
-水-
第1の処理液に含まれる水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、純水、超純水などを用いることができる。
第1の処理液における水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、第1の処理液の乾燥性及の点から、第1の処理液の質量に対して50.0質量%以上100.0質量%以下が好ましく、60.0質量%以上100.0質量%以下がより好ましく、70.0質量%以上100.0質量%以下が更により好ましい。
【0030】
-有機溶剤-
第1の処理液は、有機溶剤を実質的に含まない。
ここで、「有機溶剤を実質的に含まない」とは、第1の処理液中の有機溶剤の含有量が1%未満であることを意味する。
【0031】
第1の処理液は、界面活性剤を含むことが好ましく、さらに、滑剤及び増粘剤の少なくとも1つを含むことが好ましく、前記増粘剤として、ウレタン変性ポリエーテル系ポリマーを含むことがより好ましい。
また、第1の処理液は、必要に応じて、その他成分を含んでもよい。
【0032】
-界面活性剤-
第1の処理液は、界面活性剤を含むことが好ましい。
第1の処理液に含まれ得る界面活性剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性及び吐出安定性に優れる点から、第1の処理液全量に対して、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0033】
前記界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤などが使用可能であるが、シリコーン系界面活性剤が特に好ましい。
第1の処理液にシリコーン系界面活性剤が含まれると、印刷物への濡れ性を向上させて均一な状態を得ることができ、布帛下地の隠蔽性を向上させることができる。
なお、前記界面活性剤は、第1の処理液中において溶解している態様で含有されることが好ましい。
【0034】
--シリコーン系界面活性剤--
第1の処理液に含有させることができるシリコーン系界面活性剤には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも高pHでも分解しないものが好ましい。
前記シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
前記シロキサンにおける変性基としては、ポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましく、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
また、前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学株式会社などから入手できる。
【0035】
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(S-1)式で表される、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【化1】
(ただし、前記一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表し、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
【0036】
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社製)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社製)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社製)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社製)などが挙げられる。
【0037】
--フッ素系界面活性剤--
第1の処理液に含有させることができるフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。
【0038】
前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。
これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
【0039】
第1の処理液に含有させることができるフッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。
これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に下記一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表されるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0040】
【化2】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
【0041】
【化3】
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はC2m+1でmは1~6の整数、又はCHCH(OH)CH-C2m+1でmは4~6の整数、又はC2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
【0042】
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、DIC株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0043】
--両性界面活性剤--
第1の処理液に含有させることができる両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
【0044】
--ノニオン系界面活性剤--
第1の処理液に含有させることができるノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0045】
--アニオン系界面活性剤--
第1の処理液に含有させることができるアニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。
【0046】
両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学株式会社などから入手できる。
【0047】
-滑剤-
第1の処理液は、滑剤を含有することが好ましい。
滑剤とは、印刷物を構成する成分として含まれることで、印刷物の堅牢性及び布帛下地の隠蔽性を向上させる機能を有する成分を表す。第1の処理液に滑剤を含有させることで、第1の処理液等を付与することで形成される印刷物における堅牢性及び布帛下地の隠蔽性を向上させることができる。
【0048】
前記滑剤は、第1の処理液中において滑剤粒子の形態、言い換えると分散状態で含有されていることが好ましい。
第1の処理液中において滑剤粒子の形態を安定して維持できることで、第1の処理液における粘度変化が抑制されて貯蔵安定性が向上し、吐出性能が粘度等の影響を強く受けるインクジェット方式であっても好適に適用できる。
なお、滑剤粒子を構成する滑剤は液体であっても固体であってもよい。
【0049】
前記滑剤の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm以上が好ましく、0.01μm以上0.2μm以下がより好ましい。前記滑剤の体積平均粒径が、0.01μm以上であると、印刷物に柔軟性をより向上させることができる。体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(装置名:ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0050】
第1の処理液に含有させることができる滑剤の含有量は、第1の処理液の質量に対して0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上6.0質量%以下であることがより好ましい。上記範囲内であると、印刷物の堅牢性及び布帛下地の隠蔽性をより向上させることができる。
【0051】
第1の処理液に含有させることができる滑剤としては、第1の処理液を布帛に付与する際に生じるミストが装置内を汚染することを抑制する観点から、アニオン性化合物又はノニオン性化合物であることが好ましい。
【0052】
前記滑剤としては、例えば、シロキサン化合物及びワックスなどが挙げられる。これらの中でも、印刷物の堅牢性及び布帛下地の隠蔽性をより向上させることができる観点からシロキサン化合物が好ましい。
【0053】
--シロキサン化合物--
前記シロキサン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジメチルポリシロキサンなどのオルガノポリシロキサンや、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、ヒドロキシ変性オルガノポリシロキサン、エポキシ変性オルガノポリシロキサン、フェニル変性オルガノポリシロキサンなどの変性オルガノポリシロキサンなどが挙げられる。
これらの中でも、印刷物の乾摩擦堅牢性及び柔軟性をより向上させることができる観点から、ジメチルポリシロキサン又はアミノ変性オルガノポリシロキサンを用いることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
前記シロキサン化合物の市販品としては、例えば、ジメチルポリシロキサン(商品名:KM-860A、信越化学工業株式会社製)、ジメチルポリシロキサン(商品名:KM-9737A、信越化学工業株式会社製)、ジメチルポリシロキサン(商品名:KM-9782、信越化学工業株式会社製)、ジメチルポリシロキサン(商品名:KM-862T、信越化学工業株式会社製)、ジメチルポリシロキサン(商品名:KM-9738A、信越化学工業株式会社製)、アミノ変性オルガノポリシロキサン(商品名:POLON-MF-14、信越化学工業株式会社製)、アミノ変性オルガノポリシロキサン(商品名:POLON-MF-51、信越化学工業株式会社製)、エポキシ変性オルガノポリシロキサン(商品名:X-51-1264、信越化学工業株式会社製)、フェニル変性オルガノポリシロキサン(商品名:KM-9739、信越化学工業株式会社製)、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン(商品名:BYK-307、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、ジメチルポリシロキサン(商品名:BYK-333、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、ジメチルポリシロキサン(商品名:BYK-378、ビックケミー・ジャパン株式会社製)などが挙げられる。
【0055】
--ワックス--
前記ワックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、印刷物の堅牢性及び柔軟性をより向上させることができる観点から、例えば、ポリエチレンワックス及びカルナバワックスなどが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
前記ポリエチレンワックスとしては、市販品を用いることができ、例えば、サンノプコ社製のノプコートシリーズ、サンノプコ社製のノプコマルシリーズ、東邦化学工業株式会社製のハイテックシリーズ、ビックケミー・ジャパン株式会社製のAQUACERシリーズ(例えば、AQUACER-515)などが挙げられる。
【0057】
前記カルナバワックスとしては、市販品を用いることができ、例えば、中京油脂株式会社製のセロゾール524、トラソルCNなどが挙げられる。
【0058】
第1の処理液に含有させることができるワックスの融点は、50℃以上130℃以下が好ましく、60℃以上120℃以下がより好ましい。融点が上記範囲であることで印刷物の堅牢性及び柔軟性をより向上させることができる。
【0059】
-増粘剤-
第1の処理液は、増粘剤を含有することが好ましい。
印刷物を構成する成分として増粘剤が含まれることで、第1の処理液の粘度を向上させることができる。
第1の処理液に含まれる増粘剤としては、ウレタン変性ポリエーテル系ポリマーを使用することが好ましい。
【0060】
--ウレタン変性ポリエーテル系ポリマー--
ウレタン変性ポリエーテル系ポリマーは、疎水性部位と親水性部位とを有し、水性媒体中で疎水性相互作用によって分子同士が会合して系の粘度を増大させる増粘剤である。
第1の処理液に含有させることができるウレタン変性ポリエーテル系ポリマーは、1種単独で、または2種以上を任意の比率で組み合わせて用いることができる。ウレタン変性ポリエーテル系ポリマーとしては、例えば、下記一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0061】
【化4】
一般式(1)中、RおよびRはそれぞれ、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基を示し、m1およびn1はそれぞれ、1以上の整数を示す。
【0062】
このようなウレタン変性ポリエーテル系ポリマーは、公知方法に従い製造することができ、また市販品としても入手可能である。 市販品の例としては、SNシックナー603、607、612、612NC、625N、A803、A804、A812、A814(以上、サンノプコ社製)、アデカノールUHシリーズ(旭電化工業社製)等が挙げられる。
【0063】
第1の処理液に含有させることができるウレタン変性ポリエーテル系ポリマーの添加量は、固形分量として、例えば、0.01質量%以上2.00質量%以下であり、0.05質量%以上1.00質量%以下が好ましい。0.01質量%以上2.00質量%以下であると、処理液が粘度上昇し、生地内への浸透抑制効果が得られ、第2の処理液及びインクの浸透が抑制され、布帛下地の隠蔽性の向上が期待できる。
【0064】
-その他成分-
第1の処理液に含むことができる上記以外のその他の成分として、必要に応じて、公知の種々の添加剤を用いることができ、例えば、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、及び防錆剤などが挙げられる。
【0065】
<<<第1の処理液の物性>>>
第1の処理液の物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
第1の処理液の25℃での粘度は、5mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数100rpm、3分間で測定可能である。
第1の処理液の表面張力としては、布帛上で好適にレベリングされ、乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
第1の処理液のpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0066】
<第2の工程>
第2の工程は、前記第1の工程の後に、前記第1の処理液が付与された領域に、水、水溶性溶剤、及び凝集剤を含む第2の処理液を付与する工程である。
第2の処理液を付与する方法としては、特に限定されず、例えば、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。これらの中でも、インクジェット法が好ましい。
【0067】
第2の処理液の付着量は、5mg/cm以上15mg/cm以下が好ましく、6mg/cm以上14mg/cm以下がより好ましい。処理液の付着量が5mg/cm以上であると、適度なインク凝集により画像濃度が向上し、15mg/cm以下であると、過剰なインク凝集により生地表面への広がりが弱く画像濃度の低下、堅牢性低下、処理液中の溶剤量増加による印刷物のべたつきを抑制することができる。
【0068】
<<第2の処理液>>
第2の処理液は水、水溶性溶剤、及び凝集剤を含む。
第2の処理液に水や水溶性溶剤を含むことにより、布帛に付与しやすい粘度に調整しやすくなる。
また、第2の処理液に凝集剤を含むことにより、インクが凝集し、印刷物の画像濃度の低下や画像のにじみが抑制でき、布帛下地の隠蔽性が向上する。
また、第2の処理液は、必要に応じて、界面活性剤やその他成分を含んでもよい。
【0069】
-水-
第2の処理液に含まれる水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、純水、超純水などを用いることができる。
第2の処理液に含まれる水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、第2の処理液の乾燥性及の点から、第2の処理液の質量に対して10.0質量%以上90.0質量%以下が好ましく、30.0質量%以上90.0質量%以下がより好ましく、50.0質量%以上90.0質量%以下が更に好ましい。
【0070】
-水溶性溶剤-
第2の処理液に含まれる水溶性溶剤としては、沸点240℃未満であることが好ましい。水溶性溶剤の沸点が240℃未満であることにより、適度な乾燥性が保持され、結果として印刷物のべたつきが抑制される。このような水溶性溶剤としては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類等のエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、モノアルコール類、含酸素化合物などが挙げられる。
【0071】
--多価アルコール類--
多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオールなどが挙げられる。
【0072】
--多価アルコールアルキルエーテル類--
多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類などが挙げられる。
【0073】
--多価アルコールアリールエーテル類--
多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
【0074】
--含窒素複素環化合物--
含窒素複素環化合物としては、例えば、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0075】
--アミド類--
アミド類としては、例えば、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミドなどが挙げられる。
【0076】
--アミン類--
アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。
【0077】
--含硫黄化合物類--
含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノールなどが挙げられる。
【0078】
--モノアルコール類--
モノアルコールとしては、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールが挙げられる。
【0079】
--含酸素化合物--
含酸素化合物としては、例えば、3-エチル-3-メチルヒドロキシオキセタンが挙げられる。
【0080】
--ポリオール化合物--
水溶性溶剤として、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。
炭素数8以上のポリオール化合物としては、例えば、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
【0081】
--グリコールエーテル化合物--
グリコールエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0082】
上記水溶性溶剤の中でも、湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、最高沸点が240℃未満のものを用いることが好ましい。これらの中でも、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、3-エチル-3-メチルヒドロキシオキセタンが特に好ましい。
【0083】
水溶性溶剤の含有量は、印刷物のべたつき抑制の点から、第2の処理液の全量に対して、45質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましい。
【0084】
-凝集剤-
第2の処理液に含まれる凝集剤の含有量は、印刷物における画像濃度向上及び滲み抑制の観点から、第2の処理液の全量に対して7.5質量%以上27.5質量%以下であることが好ましく、10質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。
【0085】
第2の処理液に含まれる凝集剤としては、例えば、無機塩、有機塩、及びカチオンポリマーなどを用いることができる。これらの中でも、材料の安全性の観点から無機塩又は有機塩であることが好ましい。得られる印刷物の布帛下地の隠蔽性の観点から2価の無機塩であることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0086】
--無機塩--
前記無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸カリウムなどの1価の無機塩、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ニッケル、硫酸バリウム、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸鉄(III)、硫酸カリウムアルミニウム、カリウム鉄ミョウバン、アンモニウム鉄ミョウバンなどの2価以上の無機塩が挙げられ、前記無機塩の水和物を凝集剤として使用してもよく、これら無機塩の水和物としては、硝酸カルシウム四水和物が好ましい。
【0087】
--有機塩-
前記有機塩としては、酢酸アンモニウム、蟻酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、乳酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0088】
--カチオンポリマー--
前記カチオンポリマーとしては、例えば、第4級アンモニウム塩型のカチオン性高分子化合物が好ましく、具体的には、ジアルキルアリルアンモニウムクロライド重合物、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級アンモニウム塩重合物、変性ポリビニルアルコールジアルキルアンモニウム塩重合物、及びジアルキルジアリルアンモニウム塩重合物などが挙げられる。
【0089】
また、その他のカチオンポリマーとしては、カチオン性特殊変性ポリアミン化合物、カチオン性ポリアミドポリアミン化合物、カチオン性尿素-ホルマリン樹脂化合物、カチオン性ポリアクリルアミド化合物、カチオン性アルキルケテンダイマー、カチオン性ジシアンジアミド化合物、カチオン性ジシアンジアミド-ホルマリン縮合化合物、カチオン性ジシアンジアミド-ポリアミン縮合化合物、カチオン性ポリビニルホルムアミド化合物、カチオン性ポリビニルピリジン化合物、カチオン性ポリアルキレンポリアミン化合物、及びカチオン性エポキシポリアミド化合物などが挙げられる。
【0090】
また、第2の処理液は、必要に応じて、界面活性剤やその他成分を含んでもよく、使用できる界面活性剤やその他成分の内容は、上記で第1の処理液について説明したものと同様である。
【0091】
<<<第2の処理液の物性>>>
第2の処理液の物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
第2の処理液の25℃での粘度は、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。
第2の処理液の表面張力としては、布帛上で好適にレベリングされ、乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
第2の処理液のpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、4~8が好ましく、5~8がより好ましい。
【0092】
<第3の工程>
第3の工程は、前記第2の工程の後に、前記第2の処理液が施された領域にインクを付与する工程である。
【0093】
前記インクを付与する方法としては、特に限定されず、例えば、インクジェット法、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。これらの中でも、インクジェット法が好ましい。
【0094】
布帛に対する前記インクの単位面積当たりの付与量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、布帛下地の遮蔽性の点から、10mg/cm以上30mg/cm以下であることが好ましく、15mg/cm以上25mg/cm以下であることがより好ましい。
前記布帛に対する前記インクの付与量が、10mg/cm以上であると、布帛下地の隠蔽性の観点で好適であり、30mg/cm以下であると、柔軟な風合いが得られる観点で好適である。
【0095】
<<インク>>
前記インクは、水、色材、水溶性溶剤、樹脂、界面活性剤、及びその他成分などを含み得る。
【0096】
また、第2の処理液がカチオン性の凝集剤を含む場合、前記インクに含まれ得る色材及び樹脂から選ばれる少なくとも1つは、アニオン性であることが好ましい。
第2の処理液がカチオン性の凝集剤を含む場合に、インクに含まれ得る色材及び樹脂から選ばれる少なくとも1つがアニオン性であることで、インクが第2の処理液に含まれている成分(凝集剤)と接触した際に、インクが凝集又は増粘を生じ、これにより布帛表面において色材等を留めることができ、画像濃度を向上させることができる。
【0097】
-水-
インクに含まれ得る水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、純水、超純水などを用いることができる。
インクに含まれ得る水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、第2の処理液の乾燥性の点から、第2の処理液の質量に対して10.0質量%以上90.0質量%以下が好ましく、30.0質量%以上90.0質量%以下がより好ましく、50.0質量%以上90.0質量%以下が更に好ましい。
【0098】
-色材-
インクに含まれ得る色材の含有量は、インクの用途等によって適宜決定すればよいが、インクの質量に対して0.1質量%以上15.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下がより好ましい。
【0099】
前記インクの色については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン、白色、緑色、橙色、金色、銀色などの光沢色やメタリック色などから選択することができる。
布帛下地の隠蔽性の観点から、前記インクの色は白色であることが好ましく、濃色のポリエステル製布帛を使用する場合は、特に白色が好ましい。
【0100】
インクに含まれ得る色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能であるが、顔料であることが好ましい。また、色材は、上記の通り、第2の処理液がカチオン性の凝集剤を含む場合は、凝集剤と作用する観点からアニオン性であることが好ましく、アニオン性の顔料であることがより好ましい。
【0101】
前記顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができ、無機顔料、有機顔料を用いることができる。
【0102】
--無機顔料--
前記無機顔料としては、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
【0103】
--有機顔料--
前記有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性のよいものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
【0104】
前記白色顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウムが挙げられる。
【0105】
前記顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
【0106】
前記顔料の具体例として、黒色以外のカラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
【0107】
前記染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0108】
前記染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35が挙げられる。
【0109】
前記顔料を分散させてインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
【0110】
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
【0111】
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、用いられる顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料が含まれてもよい。
【0112】
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0113】
-樹脂-
インクに含まれ得る樹脂の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性及びインクの保存安定性の点から、インクの質量に対して、1.0質量%以上30.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以上20.0質量%以下がより好ましい。
【0114】
インクに含まれ得る樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、画像堅牢性と柔軟性の観点から、ウレタン樹脂であることが好ましい。また、インクに含まれ得る樹脂は、上記の通り、第2の処理液がカチオン性の凝集剤を含む場合は、凝集剤と作用する観点からアニオン性であることが好ましい。
【0115】
インクに含まれ得る樹脂のインク中における形態は特に限定されないが、樹脂粒子の形態で分散されていることが好ましい。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルジョンの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0116】
インクに含まれ得る樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が更に好ましい。
樹脂粒子の体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0117】
-水溶性溶剤-
インクに含まれ得る水溶性溶剤は、第2の処理液に含むことができる水溶性溶剤の量、種類について同様である。
【0118】
-界面活性剤-
インクに含まれ得る界面活性剤は、第1の処理液に含むことができる界面活性剤の量、種類について同様である。
【0119】
-その他成分-
インクに含まれ得るその他成分は、第1の処理液に含むことができるその他成分の量、種類について同様である。
【0120】
<<<インクの物性>>>
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。
インクの表面張力としては、布帛上で好適にレベリングされ、乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0121】
(印刷方法)
本発明の印刷方法は、
前記画像記録方法により、前記布帛に画像を形成する画像形成工程と、
前記画像形成工程において形成された前記画像を加熱して乾燥する乾燥工程と、
を含み、
前記乾燥工程における加熱温度が100℃以上140℃以下である印刷方法である。
【0122】
本発明の印刷方法を使用すれば、分散染料を用いて着色された濃色のポリエステル製布帛に画像を形成させた後、乾燥工程において熱を加えて印刷しても、布帛のポリエステル繊維内から染料が染み出して布帛下地の隠蔽性が低下することがなく、定着性を確保することができるため、加熱温度を高めに調整しやすくなる。
【0123】
本発明の印刷方法は、前記乾燥工程を含むことにより、布帛上の画像の定着性を向上させることができるため、画像記録方法による画像形成工程の後、乾燥工程を含むことが好ましい。
【0124】
前記乾燥工程における乾燥方法としては、特に制限はなく、公知の乾燥方法から適宜選択することができ、例えば、ロールヒーター、ドラムヒーター、赤外線ヒーター、温風発生装置、ヒートプレス装置などを用いて乾燥する乾燥方法が挙げられる。
【0125】
前記乾燥工程では、加熱してもよく、加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100℃以上140℃以下であることが好ましい。
前記加熱温度が100℃以上であると、印刷物のべたつきを抑制して定着性を確保しやすく、前記加熱温度が140℃以下であると、「濃色の布帛」を使用する場合に、分散染料の染み出しを抑制し布帛下地の隠蔽性を確保しやすい。
また、前記加熱の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、1分間以上であることが好ましく、1分間以上5分間以下程度であることがより好ましい。
乾燥工程における圧力条件については、特に制限はないが、布帛へのインクの定着効率と生産性の観点から、インクが付与された布帛領域に圧力をかけて乾燥させることが好ましく、300~500gf/cmで押圧して乾燥させることがより好ましく、ヒートプレス装置などの加熱押圧装置で加熱しながら押圧して乾燥させることが更により好ましい。
【0126】
(画像記録装置)
本発明の画像記録装置は、布帛に、第1の処理液を付与する第1の処理液付与手段と、前記第1の処理液が付与された領域に、第2の処理液を付与する第2の処理液付与手段と、前記第2の処理液が付与された領域に、インクを付与するインク付与手段と、を有し、更に前記第1の処理液を収容する第1の処理液収容手段、前記第2の処理液を収容する第2の処理液収容手段、前記インクを収容するインク収容手段を有することが好ましく、更に必要に応じて、その他の手段を有することができる。
【0127】
なお、本発明において、画像記録装置及び画像記録方法とは、記録媒体に対して前記第1の処理液、前記第2の処理液、及び前記インク、更に必要に応じてその他の各種処理液等を付与することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。
前記記録媒体とは、前記第1の処理液、前記第2の処理液、及び前記インク、更に必要に応じてその他の各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味し、前記布帛が好適である。
また、前記画像記録装置及び画像記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
【0128】
本発明の画像記録方法は、本発明の画像記録装置により好適に行うことができる。
以下、本発明の画像記録方法の説明と併せて、本発明の画像記録装置について説明する。
【0129】
<第1の処理液収容手段>
前記第1の処理液収容手段は、前記第1の処理液を収容する手段である。
前記第1の処理液収容手段は、後述する本発明のインクカートリッジであってもよい。
前記第1の処理液としては、上述した通りであるため、説明は省略する。
【0130】
<第1の処理液付与工程(第1の工程)及び第1の処理液付与手段>
前記第1の処理液の付与工程は、布帛に、水を含み、有機溶剤を実質的に含まない第1の処理液を付与する工程である。
前記第1の処理液付与手段は、布帛に、水を含み、有機溶剤を実質的に含まない第1の処理液を付与する手段である。
前記第1の処理液の付与工程は、第1処理液付与手段により好適に行われる。
【0131】
前記第1の処理液の付与方法としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、インクジェット法、スプレーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。
これらの中でも、前記第1の処理液の付与方法は、インクジェット法が好ましい。
【0132】
前記布帛に対する前記第1の処理液の単位面積当たりの付与量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高い布帛下地隠蔽性が得られるという観点から、5mg/cm以上12mg/cm以下であることが好ましい。
前記布帛に対する前記第1の処理液の付与量が、5mg/cm以上であると、繊維表面に前記第2処理液及びインクを留める観点から好ましく、12mg/cm以下であると、乾燥性の観点から好ましい。
【0133】
<第2の処理液収容手段>
前記第2の処理液収容手段は、前記第2の処理液を収容する手段である。
前記第2の処理液収容手段は、後述する本発明のインクカートリッジであってもよい。
前記第2の処理液としては、上述した通りであるため、説明は省略する。
【0134】
<第2の処理液付与工程(第2の工程)及び第2の処理液付与手段>
前記第2の処理液付与工程(第2の工程)は、前記第1の処理液が付与された領域に、水、水溶性溶剤、及び凝集剤を含む第2の処理液を付与する工程である。
前記第2の処理液付与手段は、前記第1の処理液が付与された領域に、水、水溶性溶剤、及び凝集剤を含む第2の処理液を付与する手段である。
前記第2の処理液付与工程は、第2の処理液付与手段により好適に行われる。
【0135】
前記画像記録方法において、前記第1の処理液付与工程と、前記第2の処理液付与工程とは、分けて行うことが必要である。前記第1の処理液付与工程と、前記第2の処理液付与工程とを同時に行う場合、第2の処理液中の樹脂膜が繊維表層に形成しづらい、あるいは、前記第1の処理液と前記第2の処理液とを混合して行った場合、混合された処理液が布帛への付与前に凝集してしまうという問題がある。そのため、前記第1の処理液付与工程と、前記第2の処理液付与工程とを分けて行うことで、より顕著な布帛下地の隠蔽性向上の効果が得られる。
【0136】
また、前記第2の処理液付与工程は、前記布帛上に付与された前記第1の処理液が湿潤状態にあるうちに、前記第1の処理液が付与された領域に前記第2の処理液を付与すること(「ウエットオンウエット」と称することがある)により行われる。
本明細書において、前記第1の処理液が「湿潤状態にあるうちに」とは、以下の(1)を意味し、(2)、(3)の少なくともいずれかを意味してもよい。
(1)前記第1の処理液付与工程と、前記第2の処理液付与工程との間に強制的な乾燥工程を含まないこと。
(2)前記第1の処理液を布帛に付与した後、生地の表面温度が32℃以下の状態で前記第2の処理液を付与すること。
(3)前記第1の処理液に含まれる溶媒の70質量%以上が布帛に残存する状態で、前記第2の処理液を更に付与すること。
ただし、前記第1の処理液が「湿潤状態にあるうち」には、上記の通り、前記第1の処理液と前記第2の処理液とを布帛に同時に付与すること(即ち、前記第1の処理液付与工程と、前記第2の処理液付与工程とを同時に行う)、及び前記第1の処理液と前記第2の処理液とを混合して布帛に付与することは含まない。
前記布帛上に付与された前記第1の処理液が湿潤状態にあるうちに前記第2の処理液を付与しても、前記第2の処理液と混合することなく好適に前記第1の処理液の増粘した膜を維持することができる。
【0137】
また、本明細書において、「強制的な乾燥工程」とは、5℃~35℃、相対湿度5%~90%の条件下における自然乾燥は含まれず、人工的に風を付与する又は人工的に加熱することを意味する。また、前記温度及び湿度の条件以外の場合であっても、前記(1)又は(2)を満たす限り、前記第1の処理液が「湿潤状態にある」と言える。
人工的に加熱する場合、その加熱温度としては、前記自然乾燥条件以外の温度であり、例えば、35℃超などが挙げられる。また、人工的に加熱する場合、その加熱時間としては、特に制限はなく、例えば、1分間以上などが挙げられる。前記「強制的な乾燥工程」には、後述する加熱又は乾燥工程と同様の条件も含まれる。
【0138】
前記第2の処理液の付与方法としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、前記第1の処理液付与工程及び前記第1の処理液付与手段と同様に行うことができる。
【0139】
前記布帛に対する前記第2の処理液の単位面積当たりの付与量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記インクの布帛への浸透を抑制する観点から、5mg/cm以上15mg/cm以下であることが好ましく、6mg/cm以上14mg/cm以下であることがより好ましい。前記布帛に対する前記第2の処理液の付与量が、5mg/cm以上であると、白隠蔽性向上のため好ましく、15mg/cm以下であると、柔軟な風合いが得られるため好適である。
【0140】
<インク収容手段>
前記インク収容手段は、前記インクを収容する手段である。
前記インク収容手段は、後述する本発明のインクカートリッジであってもよい。
前記インクとしては、上述した通りであるため、説明は省略する。
【0141】
<インク付与工程及びインク付与手段>
前記インク付与工程は、前記第2の処理液が付与された領域を含む布帛に、インクを付与する工程であり、本発明の画像記録方法における第3の工程を含む。
前記インク付与手段は、布帛(前記第2の処理液が付与された領域を含む)に、インクを付与する手段である。
前記インク付与工程は、インク付与手段により好適に行われる。
【0142】
前記画像記録方法において、前記第2の処理液付与工程と、前記インク付与工程とは、分けて行うことが必要である。前記第2の処理液付与工程と、前記インク付与工程とを同時に行う、あるいは、前記第2の処理液と前記インクとを混同して行うと、布帛下地の隠蔽性が低下するおそれがある。そのため、前記第2の処理液付与工程と、前記インク付与工程とを分けて行うことで、布帛下地の隠蔽性向上の効果が得られる。
【0143】
また、前記インク付与工程は、前記第2の処理液が湿潤状態にあるうち(ウエットオンウエット)に、前記第2の処理液が付与された領域を含め、布帛に前記インクを付与することにより行われる。
本明細書において、前記第2の処理液が「湿潤状態にあるうちに」とは、以下の(1)を意味し、(2)、(3)のいずれかを意味してもよい。
(1)前記第2の処理液付与工程と、前記インク付与工程との間に強制的な乾燥工程を含まないこと。
(2)前記第2の処理液を布帛に付与した後、生地の表面温度が32℃以下の状態で前記インクを付与すること。
(3)前記第2の処理液に含まれる溶媒の70質量%以上が布帛に残存する状態で、前記インクを更に付与すること。
ただし、前記第2の処理液が「湿潤状態にあるうち」には、上記の通り、前記第2の処理液と前記インクとを布帛に同時に付与すること(即ち、前記第2の処理液付与工程と、前記インク付与工程とを同時に行う)、及び前記第2の処理液と前記インクとを混合して布帛に付与することは含まない。
前記インク付与工程を、前記布帛上に付与された前記第2の処理液が湿潤状態にあるうちに行ことにより、前記インクが含有し得る樹脂を好適に架橋反応させることができる。なお、前記第2の処理液が湿潤状態にあるうちに前記インクを付与しても、前記第2の処理液と混合することなく好適に前記第2の処理液の増粘した膜を維持することができる。
【0144】
また、本明細書において、「強制的な乾燥工程」とは、5℃~35℃、相対湿度5%~90%の条件下における自然乾燥は含まれず、人工的に風を付与する又は人工的に加熱することを意味する。また、前記温度及び湿度の条件以外の場合であっても、前記(1)又は(2)を満たす限り、前記第2の処理液が「湿潤状態にある」と言える。
人工的に加熱する場合、その加熱温度としては、前記自然乾燥条件以外の温度であり、例えば、35℃超などが挙げられる。また、人工的に加熱する場合、その加熱時間としては、特に制限はなく、例えば、1分間以上などが挙げられる。前記「強制的な乾燥工程」には、後述する加熱又は乾燥工程と同様の条件も含まれる。
【0145】
なお、前記第2の処理液付与工程が、前記布帛に付与された前記第1の処理液が湿潤状態にあるうちに、前記1の処理液が付与された領域に前記第2の処理液を付与することにより行われ、かつ、前記インク付与工程が、前記第2の処理液が湿潤状態にあるうちに、前記第2の処理液が付与された領域に前記インクを付与することにより行われる場合、前記第1の処理液により前記布帛からの移染抑制に対する保護層を更に好適に形成することができ、次に、前記第2の処理液によりインク受容層を更に好適に形成することができる。
【0146】
前記インクの付与方法としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、前記第1の処理液付与工程及び前記第1の処理液付与手段と同様に行うことができる。
【0147】
前記布帛に対する前記インクの単位面積当たりの付与量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、布帛下地の遮蔽性の点から、10mg/cm以上30mg/cm以下であることが好ましく、15mg/cm以上25mg/cm以下であることがより好ましい。
前記布帛に対する前記インクの付与量が、10mg/cm以上であると、布帛下地の隠蔽性の観点で好適であり、30mg/cm以下であると、柔軟な風合いが得られる観点で好適である。
【0148】
<その他の工程及びその他の手段>
前記第1の処理液付与工程、前記第2の処理液付与工程、前記インク付与工程以外のその他の工程としては、例えば、乾燥工程、後処理液付与工程などが挙げられる。
その他の手段としては、例えば、乾燥手段、記録媒体の給送、搬送、又は排紙に係わる手段、後処理液付与手段などが挙げられる。
【0149】
<<乾燥工程・乾燥手段>>
前記乾燥工程は、前記布帛に付与された前記第1の処理液、前記第2の処理液、前記インクの印字面や裏面を乾燥する工程である。
前記加熱乾燥手段は、前記布帛に付与された前記第1の処理液、前記第2の処理液前記インクの印字面や裏面を乾燥する手段である。
前記乾燥工程は、前記乾燥手段により好適に行われる。
画像形成において、前記乾燥工程を経ることにより、布帛上の画像の定着性が向上する点で好ましく、本発明の前記画像記録方法に前記乾燥工程を含む印刷方法を本発明として提供することができる。
【0150】
前記乾燥手段としては、特に制限はなく、公知の乾燥手段の中から適宜選択することができ、例えば、ロールヒーター、ドラムヒーター、赤外線ヒーター、温風発生装置、ヒートプレス装置などが挙げられる。
【0151】
前記乾燥工程においては加熱してもよく、前記加熱の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、100℃以上140℃以下であることが好ましい。
前記加熱温度が100℃以上であれば、印刷物のべたつきを抑制して定着性を確保しやすく、140℃以下であれば、「濃色の布帛」を使用する場合に、分散染料の染み出しを抑制し布帛下地の隠蔽性を確保しやすい。
また、前記加熱の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができるが、1分間以上であることが好ましく、1分間以上5分間以下程度であることがより好ましい。
【0152】
前記乾燥工程は、印字後に行うことができる。また、前記乾燥工程は、前記第1の処理液付与工程と前記第2の処理液付与工程の間、及び前記第2の処理液付与工程と前記インク付与工程との間のいずれにおいても行われない。
上述した通り、前記第2の処理液付与工程は前記布帛に付与された前記第1の処理液が湿潤状態にあるうちに行われ、前記インク付与工程は前記第2の処理液が湿潤状態にあるうちに行われるため、前記第1の処理液付与工程と前記第2の処理液付与工程の間、及び前記第2の処理液付与工程と前記インク付与工程との間に前記加熱乾燥工程を含まず、連続して前記第1の処理液付与工程、前記第2の処理液付与工程、及び前記インク付与工程を行い、その後に前記乾燥工程を含むことができる。これにより、前記布帛上にインク層が好適に形成され、高い布帛下地の隠蔽性を得ることができる。
【0153】
<<2色目以降のインク付与工程及び2色目以降のインク付与手段>>
2色目以降のインク付与工程は、前記インク付与工程の後、2色目以降のインクも付与する場合、1色目のインクを付与した後に、前記1色目のインク上に2色目のインクを付与する工程である。前記印刷方法が、前記乾燥工程を含む場合、前記2色目以降のインク付与工程は、前記乾燥工程後の1色目のインク層上に2色目以降のインクを付与する工程であることが好ましい。
前記2色目以降のインク付与手段は、前記1色目のインク上に2色目以降のインクを付与する手段である。
前記2色目以降のインク付与工程は、前記2色目以降のインク付与手段により好適に行われる。
【0154】
なお、1色目のインクに白色インクを使用して2色目以降のインクの下地とすることが好ましく、その場合、使用する2色目以降のインクとしては、特に制限はなく、公知のインクの中から適宜選択することができる。
布帛において前記白色インクが付与された領域に対して「カラーインク」を付与することは、カラー画像を形成するのに好適である。
また、本明細書において、「カラー」とは、前記「白色」に含まれない色を表し、例えば、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、又はK(ブラック)などのインクが挙げられる。
【0155】
前記カラーインクの付与方法としては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、前記第1の処理液付与工程及び前記第1の処理液付与手段と同様に行うことができる。
【0156】
<<後処理液付与工程及び後処理液付与手段>>
前記後処理液付与工程は、前記インク付与工程の後に、透明な層を形成する工程である。
前記後処理液付与工程は、前記インク付与工程の後、前記乾燥工程を行い、その後、前記後処理液付与工程を行ってもよい。
前記後処理液付与手段は、前記インクを付与後に透明な層を形成する手段である。
前記後処理液付与工程は、前記後処理液付与手段により好適に行われる。
前記後処理液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機溶剤、水、樹脂、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等、必要に応じて選択し、混合して得られる。また、後処理液は、布帛に形成された記録領域の全域に付与してもよいし、前記インクによる像が形成された領域のみに付与してもよい。
【0157】
前記後処理液を付与する方法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット法、ローラー塗布法、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。
【0158】
以下に図面を用いて本発明の画像記録方法及び画像記録装置について具体的に説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0159】
図1Aは、本発明の画像記録装置の一例を示す概略説明図である。
図1Bは、本発明の画像記録装置の別の一例を示す概略説明図である。
図2は、図1A又は図1Bの画像記録装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図3は、図1A又は図1Bの画像記録装置における制御の概要の一例を示す概略説明図である。
なお、本発明の画像記録方法におけるインク付与工程と、第1の処理液付与工程と、第2の処理液付与工程とは同じ画像記録装置で実施してもよいし、それぞれ独立した装置(例えば、印刷機器)で実施してもよい。
【0160】
本発明の画像記録装置の一例としての画像記録装置100は、処理液付与手段110、及びインク付与手段120、制御手段160、及び記憶部170を有し、更に必要に応じて後処理液付与手段130、乾燥手段140、及び搬送手段150を有していてもよい。処理液付与手段110は、記録媒体Mに前記第1の処理液又は前記第2の処理液を付与する。なお、図1Aにおいて、処理液付与手段110は、1つのみを図示しており、第1の処理液の付与又は第2の処理液の付与が独立して行われる態様である。
【0161】
処理液付与手段110における第1の処理液又は第2の処理液の付与方法は、特に制限はなく、公知のあらゆる方法を用いることができる。例えば、第1の処理液又は第2の処理液中に記録媒体を浸漬させる方法(浸漬塗布法)、第1の処理液又は第2の処理液をロールコーター等で塗布する方法(ローラー塗布法)、第1の処理液又は第2の処理液をスプレー装置等によって噴射する方法(スプレー塗布法)、第1の処理液又は第2の処理液をインクジェット方式により噴射する方法(インクジェット塗布法)などが挙げられ、いずれの方法も使用してもよい。これらの中でも、装置構成が簡便であり、第1の処理液又は第2の処理液の付与が迅速に行えるという点から、浸漬塗布法、ローラー塗布法、スプレー塗布法、インクジェット塗布法が好ましい。
【0162】
インク付与手段120は、記録媒体Mの第1の処理液及び第2の処理液が付与された面に、インクを付与する。
インク付与手段120としては、例えば、公知のインクジェットヘッド等を用いることができる。
なお、図1Aにおいて、インク付与手段としては一つのインク付与手段120のみを図示しているが、インク付与手段として、更に複数の任意のインクを付与するヘッドを、インク付与手段120と同様の構成で有していてもよい。例えば、必要に応じて、白色インク、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)等のインクを付与するヘッドを設けてもよい。
【0163】
記憶部170としては、例えば、ハード・ディスク・ドライブ(HDD)などであり、印刷する画像等のデータを保持する。画像記録装置100の制御手段160は、例えばCPUなどであり、記憶部170や各制御部への指示を出す。
処理液付与制御部161は、制御手段160からの指示に応じて処理液付与手段110の駆動を制御する。
インク付与制御部162は、制御手段160からの指示に応じてインク付与手段120の駆動を制御する。また、前記画像記録装置100が複数のインク付与手段を有する場合は、インク付与制御部162は、これら複数のインク付与手段の駆動も制御する。
【0164】
後処理液付与手段130は、記録媒体Mのインクジェットインクが付与された面のインクジェットインクが付与された領域に後処理液を付与できればよく、例えば、インクジェットヘッド以外にも、スプレーやローラーなどを用いることができる。なお、後処理液付与手段130は、省略してもよい。
【0165】
画像記録装置100は、第1の処理液、第2の処理液、及びインクが付与された記録媒体Mの印字面や裏面を乾燥させる乾燥手段140を有していてもよい。必要に応じて、後処理液を含むその他の液体が付与された後や、各液体の付与前後に記録媒体Mを乾燥させる工程を含んでもよい。加熱に用いる装置としては、多くの既知の装置を使用することができる。乾燥手段140としては、例えば、温風加熱、輻射加熱、伝導加熱、高周波乾燥、マイクロ波乾燥、ヒートプレス、定着ローラー等の装置が挙げられ、これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。乾燥の強度は記録媒体の厚さや材質など熱収縮特性に応じて設定されるのが好ましい。これらの中でも、堅牢性向上、加熱時間短縮の観点からヒートプレスが好ましい。なお、乾燥手段140は、省略してもよい。
【0166】
搬送手段150は、記録媒体Mを搬送する。搬送手段150としては、記録媒体Mを搬送することが可能であれば、特に限定されないが、搬送ベルト、プラテンなどが挙げられる。なお、搬送手段150は、必要に応じて省略してもよい。
【0167】
なお、画像記録装置100は、記録媒体Mに形成された画像を加熱定着させる定着部を必要に応じて有してもよい。定着部としては、特に限定されないが、定着ローラーなどが挙げられる。
【0168】
卓上プリンタを画像記録装置として用いる場合には、処理液付与手段、後処理液付与手段の一態様として、白色インクや、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などの一般的なインクの場合と同様に、第1の処理液、第2の処理液、及び後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、第1の処理液、第2の処理液、及び後処理液をインクジェット方式で付与する態様がある。
【0169】
[画像記録装置100の動作例]
画像記録装置100の動作について説明する。図2は、図1A又は図1Bの画像記録装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0170】
画像形成開始の指示を受け付けると、図1Aの画像記録装置100は画像形成動作を開始する。
図2のステップS1にて、図1Aの画像記録装置100の搬送手段150は記録媒体Mを搬送し、処理液付与手段110は記録媒体Mに対して第1の処理液を付与する(第1の処理液付与工程)。この際、処理液付与手段110は、画像を形成する部分のみに対して第1の処理液を付与してもよいし、記録媒体全面に付与してもよい。
処理液付与手段110が画像を形成する部分のみに対して第1の処理液を付与する際には、処理液付与制御部161や制御手段160からの指示に応じて付与範囲を決定し、記録媒体Mに第1の処理液を付与する。
処理液付与手段110が記録媒体全面に対して第1の処理液を付与する際には、処理液付与制御部161や制御手段160からの指示に応じて記録媒体全面に第1の処理液の付与を行う。
【0171】
図2のステップS2では、搬送手段150により搬送された、第1の処理液が付与された記録媒体Mに対して、処理液付与手段110が第2の処理液を付与する(第2の処理液付与工程)。この際、処理液付与手段110は、第1の処理液が付与された部分に対して第2の処理液を付与するが、記録媒体全面に付与してもよい。
第1の処理液が付与された部分に対して第2の処理液を付与する際には処理液付与制御部161や制御手段160からの指示に応じて付与範囲を決定し、記録媒体Mに第2の処理液を付与する。
処理液付与手段110が記録媒体全面に対して第2の処理液を付与する際には、処理液付与制御部161や制御手段160からの指示に応じて記録媒体全面に第2の処理液の付与を行う。
【0172】
図2のステップS3では、搬送手段150により搬送された、第1の処理液及び第2の処理液が付与された記録媒体Mに対して、インク付与手段120がインクを付与する(インク付与工程)。この際、インク付与手段120は、第1の処理液及び第2の処理液が付与された部分に対してインクを付与するが、記録媒体全面に付与してもよい。
画像を形成する部分に対してインクを付与する際には、インク付与制御部162や制御手段160からの指示に応じて付与範囲を決定し、インク付与手段120がインクを付与する。
インク付与手段120が記録媒体全面に対してインクを付与する際には、インク付与制御部162や制御手段160からの指示に応じて記録媒体全面にインクの付与を行う。
【0173】
画像記録装置100には、記録媒体の位置や場所の認識を行うセンサーを設けていてもよい。記録媒体の位置や場所の認識を行う前記センサーを設けることで、処理液付与手段110及びインク付与手段120が、ステップS1、ステップS2、及びステップS3にてより効率的に、第1の処理液、第2の処理液、及びインクを記録媒体に付与することが可能となる。
【0174】
ステップS3の後、第1の処理液、第2の処理液、及びインクを付与した記録媒体を搬送手段150が乾燥手段140に搬送し、乾燥させる乾燥工程を設けてもよい。乾燥手段140は、本発明における画像記録方法及び画像記録装置に必須ではない。
乾燥工程を設けない場合には、ユーザーが手動で別の乾燥装置を用いて乾燥を行ってもよい。
乾燥工程を設ける場合、乾燥時間や乾燥温度は、一定であってもよく、第1の処理液、第2の処理液、及びインクの付与量に応じて調節してもよい。第1の処理液、第2の処理液、及びインクの付与量に応じて調節することがより好ましい。
【0175】
画像記録装置100は、記録媒体に付与された第1の処理液、第2の処理液、及びインクの付与量の認識を行うセンサーを設けていてもよい。前記センサーを設けることで、第1の処理液、第2の処理液、及びインクが記録媒体に付与された量に応じて乾燥時間や乾燥温度を設定、調節することが可能となるため、乾燥手段140がより効率的に記録媒体を乾燥させることができる。
第1の処理液、第2の処理液、及びインクの付与量を認識する前記センサーは、実際に記録媒体に付着している液体量を認識するものであってもよいし、各付与手段にて記録媒体に付与された量を計測して認識するものであってもよい。
【0176】
記録媒体の乾燥を行った後、画像記録装置による画像記録工程は終了するが、必要に応じて記録媒体を画像記録装置から取り出す工程や、記録媒体を搬送する工程があってもよい。
【0177】
図1Bは、本発明の画像記録装置の別の一例を示す概略説明図である。
本発明の画像記録装置の別の一例としての画像記録装置200は、図1Aに示す画像記録装置100における処理液付与手段110を、第1の処理液付与手段210及び第2の処理液付与手段211に変更した態様であり、その他の構成は、図1Aに示す画像記録装置100と同様であるため、詳細な説明は省略する。
図1Aに示す画像記録装置100では、第1の処理液の付与又は第2の処理液の付与が独立して行われる態様であったところ、図1Bに示す画像記録装置200では、第1の処理液付与手段210による第1の処理液の付与と、第2の処理液付与手段211による第2の処理液の付与が連続して行われる態様とすることができる。
【0178】
なお、本発明の用語における、画像形成、画像記録、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。また、本発明の画像記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この画像記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の画像記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙や布帛を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
【0179】
(カートリッジ)
本発明のカートリッジは、本発明の画像記録方法に使用される第1の処理液、第2の処理液、又はインクを収容してなり、容器に収容してなることが好ましく、必要に応じて適宜選択したその他の部材等を有する。
前記カートリッジは、インク交換などの作業において、処理液やインクに直接触れる必要がなく、手指や着衣の汚れなどの心配がなく、また処理液やインクへのごみ等の異物混入を防止できる点で有利である。
【0180】
本発明の画像記録方法に使用される第1の処理液、第2の処理液、又はインクを収容する各カートリッジを使用する場合、これら複数のカートリッジを一体的な構成にして使用してもよく、それぞれのカートリッジを独立させて使用してもよい。
【0181】
また、前記インクを1種又は複数有するとき、本発明の画像記録方法に使用される第1の処理液、第2の処理液、又は1種もしくは複数のインクを収容する各カートリッジを使用する場合、これら複数のカートリッジを一体的な構成にして使用してもよく、それぞれのカートリッジを独立させて使用してもよい。
【0182】
前記カートリッジに使用される容器としては、特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、プラスチック製容器、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋等を有するものが挙げられる。
【0183】
図4は、本発明のインクカートリッジの一例を示す概略断面図である。
前記インクカートリッジの一例として前記インクを収容する場合について、図4を用いて具体的に説明するが、本発明のインクカートリッジはこれに限られるものではない。
前記インクは、インク注入口242からインク袋241内に充填され、排気した後、該インク注入口242を融着により閉じる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口243に装置本体の針を刺して装置にインクを供給する。インク袋241は、透気性の無いアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。このインク袋241は、通常、プラスチック製のカートリッジケース244内に収容され、インクカートリッジ240として、各種画像記録装置に着脱可能に装着して用いられるようになっている。
【0184】
上記インクカートリッジ240に、インクの代わりに前記第1の処理液又は前記第2の処理液を入れ、第1の処理液用カートリッジ又は第2の処理液用カートリッジとして用いれば、インクカートリッジと同様に、各種画像記録装置に着脱可能に装着して用いることができる。
【0185】
(記録物)
本発明の画像記録方法、本発明の画像記録装置、又は本発明の画像記録方法により画像形成された記録物は、布帛上に、第1の処理液、第2の処理液、及びインクを用いて形成された画像を有してなる。このような記録物も、本発明の範囲内である。
前記記録物は、好ましくは、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録された記録物である。
【実施例0186】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
なお、特に記載が無い場合、各種液体の調製及び評価は、室温25℃、湿度60%の条件下で行った。
【0187】
<第1の処理液の作製>
下記表1に示す組成の処理液を常法により調製し、平均孔径1.2μmのメンブランフィルター(セルロースアセテート膜)にて濾過を行い、第1の処理液1-1~1-9を作製した。なお、表1中の組成物の含有量を示す数値の単位は「質量%」である。
【0188】
なお、下記表1において示す各種材料の詳細は以下の通りである。
-水-
・イオン交換水
-界面活性剤-
・SAG-503A:日信化学工業社製、シリコーン系界面活性剤
・Capstone FS-34:デュポン社製、フッ素系界面活性剤
-滑剤-
・KM-9738A:信越化学工業株式会社製、ジメチルポリシロキサン
・AQUACER497:三井化学社製、酸化ポリエチレン
-増粘剤(会合型粘弾性調整剤)-
・UH-530:サンノプコ社製、ウレタン変性ポリエーテル
【0189】
【表1】
【0190】
<第2の処理液の作製>
下記表2に示す組成の処理液を常法により調製し、平均孔径1.2μmのメンブランフィルター(セルロースアセテート膜)にて濾過を行い、第2の処理液2-1~2-11を作製した。なお、表2中の組成物の含有量を示す数値の単位は「質量%」である。
【0191】
なお、下記表2において示す各種材料の詳細は以下の通りである。
-水-
・イオン交換水
-水溶性溶剤-
・プロピレングリコール:沸点188℃
・1,3-ブタンジオール:沸点207℃
・ジエチレングリコール:沸点244℃
・グリセリン:沸点290℃
-界面活性剤-
・SAG-503A:日信化学工業社製、シリコーン系界面活性剤
【0192】
【表2】
【0193】
<白色顔料分散液の作製>
酸化チタン(商品名:JR-403、テイカ社製)40質量部、顔料分散剤(商品名TEGO Dispers651、エボニック社製)8質量部、水52質量部を混合し、ビーズミル(商品名:リサーチラボ、シンマルエンタープライズ社製)にて、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填率60%、8m/sにて5分間分散し、白色顔料分散液(顔料固形分濃度:40質量%)を得た。
白色顔料分散液の体積平均粒径D50をナノトラック Wave-EX1500(マイクロトラック・ベル社製)を用いて測定したところ、250nmであった。
【0194】
<ポリウレタン樹脂エマルジョンの調製>
撹拌機、温度計、窒素シール管及び冷却器の付いた容量2Lの反応器に、メチルエチルケトンを100質量部、ポリエステルポリオール(1)(iPA/AA=6/4(モル比)とEG/NPG=1/9(モル比)から得られたポリエステルポリオール、数平均分子量:2,000、平均官能基数:2、iPA:イソフタル酸、AA:アジピン酸、EG:エチレングリコール、及びNPG:ネオペンチルグリコール)345質量部、及び2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)9.92質量部を仕込み、60℃にて均一に混合した。
その後、トリエチレングリコールジイソシアネート(TEGDI)45.1質量部、及びジオクチルチンジラウレート(DOTDL)0.08質量部を仕込み、72℃で3時間反応させて、ポリウレタン溶液を得た。
このポリウレタン溶液に、IPA80質量部、MEK220質量部、トリエタノールアミン(TEA)3.74質量部、及び水596質量部を仕込んで転相させた後、ロータリーエバポレーターにてMEK及びIPAを除去して、ポリウレタン樹脂エマルジョンを得た。
得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水溶液と、を添加して固形分濃度30質量%、pH8に調整した。
このポリウレタン樹脂エマルジョン1を、「Thermo plus EVO2」(Rigaku社製)を用いて測定したガラス転移点(Tg)は-5℃であった。
【0195】
<インクの作製>
白色顔料分散液(顔料固形分濃度:40質量%) 25.0質量%、ポリウレタン樹脂エマルジョン(固形分濃度:30質量%) 30.0質量%、プロピレングリコール 10.0質量%、1,3-プロパンジオール 10.0質量部、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール 5.0質量%、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール 1.0質量%、界面活性剤としてSAG-503A(日信化学工業社製、シリコーン系界面活性剤)1.0質量%、防腐剤として商品名:プロキセルLV(アビシア社製)0.1質量%、及び高純水を合計が100質量%となるように残量を添加し、常法によりインクを調製し、平均孔径5.0μmのメンブランフィルター(セルロースアセテート膜)にて濾過を行い、インクを作製した。
【0196】
<印刷物の作製>
(実施例1)
自動スプレー塗布機(EZPrep Pretreatment System for Direct-Garment Printing、M&R社製)に第1の処理液1-1を充填し、A4サイズに切り出した濃色のポリエステル製布帛(濃色ドライTシャツ、Glimmer 00300-ACT Black、トムス社製)に対して、10.0mg/cmの付着量で第1の処理液1-1を付与した。
その直後に、インクジェットプリンターRi100(株式会社リコー製)に第2の処理液2-1を充填し、濃色のポリエステル製布帛の第1の処理液1-1が付与された領域に対して、10.0mg/cmの付着量で第2の処理液2-1を付与した。
さらにその直後に、インクジェットプリンターRi2000(株式会社リコー製)にインクを充填し、濃色のポリエステル製布帛の第2の処理液2-1が付与された領域に対して、200mg/cmの付着量でインクを付与してベタ画像を形成した。
その後、110℃に設定したヒートプレスClam/Hover Press(STAHLS’Hotronix社製)にて、400gf/cmでプレスした後、120秒間乾燥させ、実施例1の印刷物を作製した。
実施例1~14,比較例1~3の作製条件は表3に示す通りである。
【0197】
(実施例2~14)
実施例1において、表3に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~14の印刷物を作製した。
【0198】
(実施例15)
濃色のポリエステル製布帛を、淡色のポリエステル製布帛(淡色ドライTシャツ(ライトピンク)、Glimmer 00300-ACT トムス社製)に変更し、表3に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例15の印刷物を作製した。
【0199】
【表3】
【0200】
(比較例1)
自動スプレー塗布機(EZPrep Pretreatment System for Direct-Garment Printing、M&R社製)に第1の処理液1-2を充填し、A4サイズに切り出した濃色のポリエステル製布帛に対して、10.0mg/cmの付着量で第1の処理液1-2を付与した。
その直後に、インクジェットプリンターRi100(株式会社リコー製)に第2の処理液2-10を充填し、濃色のポリエステル製布帛の第1の処理液1-2が付与された領域に対して、10.0mg/cmの付着量で第2の処理液2-10を付与した。
その後、110℃に設定したヒートプレスClam/Hover Press(STAHLS’Hotronix社製)にて、400gf/cmでプレスした後、90秒間乾燥させた。
さらに、インクジェットプリンターRi2000(株式会社リコー製)にインクを充填し、濃色のポリエステル製布帛の第2の処理液2-10が付与された領域に対して、200mg/cmの付着量でインクを付与してベタ画像を形成した。
その後、110℃に設定したヒートプレスClam/Hover Press(STAHLS’Hotronix社製)にて、400gf/cmでプレスした後、120秒間乾燥させ、比較例1の印刷物を作製した。
【0201】
(比較例2~5)
実施例1において、表3に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2~5の印刷物を作製した。
【0202】
各実施例及び比較例で作製された印刷物における「布帛下地の隠蔽性」、「乾摩擦堅牢性」、及び「印刷物のべたつき」を下記のようにして評価した。評価結果を表4に示す。
【0203】
【表4】
【0204】
<布帛下地の隠蔽性>
各実施例及び比較例で作製された印刷物に対し、X-rite exact(X-rite社製)を用いて測色して布帛下地の隠蔽性を以下の式の通り算出し、下記評価基準に基づいて布帛下地の隠蔽性を評価した。なお、「B-」以上を実施可能なレベルとした。
布帛下地の隠蔽性(%)=[(元生地のOD-ベタ画像のOD)/元生地のOD]×100
[評価基準]
A:布帛下地の隠蔽性が90%以上である
B+:布帛下地の隠蔽性が85%以上90%未満である
B-:布帛下地の隠蔽性が80%以上85%未満である
C:布帛下地の隠蔽性が80%未満である
【0205】
<乾摩擦堅牢性>
各実施例及び比較例で作製された印刷物に対し、JIS L0849 II型に基づいた乾摩擦堅牢性の試験を実施し、下記評価基準に基づいて評価した。なお、「B-」以上を実施可能なレベルとした。
(評価基準)
A:3.5級以上である
B+:3.0級である
B-:2.5級である
C:2.0級以下である
【0206】
<印刷物のべたつき>
各実施例及び比較例で作製された印刷物に対し、下記評価基準に基づいて印刷物のべたつきを評価した。なお、「B-」以上を実施可能なレベルとした。
[評価基準]
A:印刷面に触れても全くべたつきがない
B+:印刷面に触れるとわずかにべたつきを感じる
B-:印刷面に触れるとべたつきを感じる
C:印刷面に触れると触れた部分が濡れる
【0207】
実施例1~15の印刷物は、布帛の下地隠蔽性、乾摩擦堅牢性、印刷物のべたつきの評価がすべて「B-」以上と実施可能なレベルであった。
実施例11~15に使用した第1の処理液と第2の処理液は同じものであったが、ベタ画像を乾燥させる際の温度に違いがあり、100~130℃で乾燥させた実施例11と実施例12と実施例15の印刷物は、下地隠蔽性、乾摩擦堅牢性、印刷物のべたつきの評価がどれも「B+」以上であったが、140℃で乾燥させた実施例13は、下地隠蔽性の評価が「B-」であり、90℃で乾燥させた実施例14は、乾摩擦堅牢性と印刷物のべたつきの評価が「B-」であった。
【0208】
滑剤を含まない第1の処理液と、沸点が240℃以上の水溶性溶剤を含む第2の処理液を使用して作製された実施例4の印刷物については、下地隠蔽性、乾摩擦堅牢性、印刷物のべたつきの評価に「A」はなかったが、上記のすべての評価が「B-」以上で、実施可能なものであった。
【0209】
界面活性剤を含まない第1の処理液と、水溶性溶剤の含有量が多い第2の処理液を使用して作製された実施例8の印刷物については、下地隠蔽性、乾摩擦堅牢性、印刷物のべたつきの評価に「A」はなかったが、上記のすべての評価が「B-」以上で、実施可能なものであった。
【0210】
界面活性剤及び滑剤を含まない第1の処理液と、沸点が240℃以上の水溶性溶剤を含む第2の処理液を使用して作製された実施例9の印刷物については、下地隠蔽性、乾摩擦堅牢性、印刷物のべたつきの評価に「A」はなかったが、上記のすべての評価が「B-」以上で、実施可能なものであった。
【0211】
比較例1の印刷物は、第2の工程の後に乾燥工程があったため、凝集剤とインクの反応性が低下し、布帛下地の隠蔽性が劣っていた。
比較例2の印刷物は、第1の処理液に有機溶剤を実質的に含んでいたため、乾燥工程において十分にインクを定着させることができず、乾摩擦堅牢性に劣り、べたついたものとなった。
比較例3の印刷物は、第2の処理液に凝集剤を含んでいないため、布帛内部にインクが浸透してしまい、布帛下地の隠蔽性が劣っていた。
比較例4の印刷物は、第1の工程の後に乾燥工程があったため、凝集剤とインクの反応性が低下し、布帛下地の隠蔽性が劣っていた。
比較例5の印刷物は、第2の処理液が水溶性溶剤を含まず、乾摩擦堅牢性に劣っていた。
【0212】
以上より、本発明の画像記録方法を使用すれば、布帛に対して、印刷物のべたつきがなく、布帛下地の隠蔽性と堅牢性を両立させることができる画像記録方法を提供できることが示された。
【0213】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1>水を含み、有機溶剤を実質的に含まない第1の処理液を布帛に付与する第1の工程と、前記第1の工程の後に、前記第1の処理液が付与された領域に、水、水溶性溶剤、及び凝集剤を含む第2の処理液を付与する第2の工程と、前記第2の工程の後に、前記第2の処理液が施された領域にインクを付与する第3の工程と、を含む画像記録方法であって、前記第1の工程と前記第2の工程の間、及び前記第2の工程と前記第3の工程の間に乾燥工程を設けないことを特徴とする画像記録方法。
<2>前記布帛は、濃色又は淡色の化学繊維製布帛である、前記<1>に記載の画像記録方法。
<3>前記化学繊維製布帛は、ポリエステル製布帛である、前記<2>に記載の画像記録方法。
<4>前記第1の処理液がさらに、シリコーン系界面活性剤を含む、前記<1>から<3>のいずれかに記載の画像記録方法。
<5>前記第1の処理液がさらに、滑剤及び増粘剤の少なくともいずれかを含む、前記<1>から<4>のいずれかに記載の画像記録方法。
<6>前記第2の処理液中の水溶性溶剤は沸点240℃未満である、前記<1>から<5>のいずれかに記載の画像記録方法。
<7>前記第2の処理液中の水溶性溶剤の含有量が、前記第2の処理液の全量に対して35質量%以下である、前記<1>から<6>のいずれかに記載の画像記録方法。
<8>前記第2の処理液中の凝集剤が、無機塩である、前記<1>から<7>のいずれかに記載の画像記録方法。
<9>前記第2の処理液中の凝集剤の含有量が、前記第2の処理液の全量に対して10質量%以上25質量%以下である、前記<1>から<8>のいずれかに記載の画像記録方法。
<10>前記インクは、色材、水溶性溶剤、樹脂エマルジョン、シリコーン系界面活性剤を含む、前記<1>から<9>のいずれかに記載の画像記録方法。
<11>前記<1>から<10>のいずれかに記載の画像記録方法により、前記布帛に画像を形成する画像形成工程と、前記画像形成工程において形成された前記画像を加熱して乾燥する工程と、を含み、前記乾燥工程における加熱温度が100℃以上140℃以下であることを特徴とする印刷方法。
【0214】
前記<1>から<10>のいずれかに記載の画像記録方法、及び前記<11>に記載の印刷方法によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0215】
100 画像記録装置
110 処理液付与手段
120 インク付与手段
130 後処理液付与手段
140 乾燥手段
150 搬送手段
160 制御手段
161 処理液付与制御部
162 インク付与制御部
170 記憶部
M 記録媒体(布帛)
200 画像記録装置
210 第1の処理液付与手段
211 第2の処理液付与手段
240 インクカートリッジ
241 インク袋
242 インク注入口
243 インク排出口
244 カートリッジケース
【先行技術文献】
【特許文献】
【0216】
【特許文献1】特開2020‐139242号公報
【特許文献2】WO2021/055700号
図1A
図1B
図2
図3
図4