(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094243
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】エチレン-α-オレフィン共重合体
(51)【国際特許分類】
C08F 210/16 20060101AFI20240702BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C08F210/16
C08F4/6592
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023190675
(22)【出願日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2022209252
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山田 英和
(72)【発明者】
【氏名】長手 武尊
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100AA03Q
4J100AA04Q
4J100AA06Q
4J100AA07Q
4J100AA08Q
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4J128EB09
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4J128FA09
4J128GA05
4J128GA08
4J128GA16
4J128GA26
(57)【要約】
【課題】適切な押出加工性を維持しながら、難燃剤として含有されるフィラーの受容性に比較的優れたエチレン-α-オレフィン共重合体を提供する。
【解決手段】以下の(i)~(iv)の要件を全て満たす、エチレン-α-オレフィン共重合体。
(i)ビカット軟化点が85.0℃以下。
(ii)160℃における溶融トルクをX[N・m]、メルトフローレートをY[g/10分]としたとき、X+6.5×Ln(Y)の値が23.0以下。
(iii)微分分子量分布曲線を3つの正規分布曲線に分割した際の、低分子量成分(A成分)のピーク高さに対する、中分子量分布成分(B成分)および高分子量成分(C成分)のピーク高さの和の比が10.00以上。
(iv)メルトフローレートが0.10g/10分以上、10.00g/10分以下。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(i)~(iv)の要件を全て満たす、エチレン-α-オレフィン共重合体。
(i)ビカット軟化点が85.0℃以下。
(ii)160℃における溶融トルクをX[N・m]、メルトフローレートをY[g/10分]としたとき、X+6.5×Ln(Y)の値が23.0以下。
(iii)微分分子量分布曲線を3つの正規分布曲線に分割した際の、低分子量成分(A成分)のピーク高さに対する、中分子量分布成分(B成分)および高分子量成分(C成分)のピーク高さの和の比が10.00以上。
(iv)メルトフローレートが0.10g/10分以上、10.00g/10分以下。
【請求項2】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体のビカット軟化点が80.0℃以下である、請求項1に記載のエチレン-α-オレフィン共重合体。
【請求項3】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体のX+6.5×Ln(Y)の値が21.0以下である、請求項1または2に記載のエチレン-α-オレフィン共重合体。
【請求項4】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体の微分分子量分布曲線を3つの正規分布曲線に分割した際の、低分子量成分(A成分)のピーク高さに対する、中分子量分布成分(B成分)および高分子量成分(C成分)のピーク高さの和の比が11.00以上である、請求項1または2に記載のエチレン-α-オレフィン共重合体。
【請求項5】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体のメルトフローレートが0.20g/10分以上、10.00g/10分以下である、請求項1または2に記載のエチレン-α-オレフィン共重合体。
【請求項6】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体のα-オレフィンが、プロピレン、ブテン、および、ヘキセンの中から選ばれる少なくとも一つを含む、請求項1または2に記載のエチレン-α-オレフィン共重合体。
【請求項7】
オレフィン重合触媒の存在下、エチレンと、炭素原子数3~20のα-オレフィンとを共重合し、密度が911kg/m
3以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体を製造する方法であって、
下記式(1)で定義されたAが67.0以上100.0以下となるように重合条件を調整する、エチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法。
【数1】
【請求項8】
上記式(1)中の炭化水素以外のガス濃度が、水素濃度および窒素濃度の和であり、
該窒素濃度が、5.0mol%以上30.0mol%以下である、請求項7に記載のエチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法。
【請求項9】
上記式(1)中の重合温度が、66℃以上84℃以下である、請求項7または8に記載のエチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法。
【請求項10】
前記オレフィン重合触媒が、有機アルミニウム化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物および有機亜鉛化合物の中から選ばれる少なくとも一つの助触媒成分を粒子状担体に担持させてなる固体粒子状の助触媒成分と、アルキレン基およびシリレン基の中から選ばれる少なくとも一つの架橋基で2つのシクロペンタジエニル型アニオン骨格が結合した構造を持つ配位子を有するメタロセン錯体と、を触媒成分として用いてなる重合触媒である、請求項7または8に記載のエチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン-α-オレフィン共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エチレン-α-オレフィン共重合体は、食品包装材、医薬品包装材、電子部品包装材、表面保護材、電線、ケーブル等の絶縁体、シース等に用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、流動の活性化エネルギー、メルトフローレートおよび分子量分布のそれぞれが特定の範囲にあるエチレン-α-オレフィン共重合体と難燃剤とを含むエチレン系樹脂組成物であって、シースに用いることができ、外観および機械的強度に優れる押出成形体を得ることができるエチレン系樹脂組成物が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、メルトフローレート、密度、流動の活性化エネルギー、分子量分布およびヘキサン抽出量のそれぞれが特定の範囲にあるエチレン-α-オレフィン共重合体であって、食品包装材に用いることができ、成形加工性および溶融加工時の低発煙性に優れるエチレン-α-オレフィン共重合体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-023229号公報
【特許文献2】特開2008-106264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のエチレン-α-オレフィン共重合体を電線被覆材等に用いる場合、エチレン-α-オレフィン共重合体には、適切な押出加工性を維持しながら、難燃剤として含有されるフィラーの受容性を高めること、すなわち、より多くのフィラーを含有させることが求められている。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、適切な押出加工性を維持しながら、難燃剤として含有されるフィラーの受容性に比較的優れたエチレン-α-オレフィン共重合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエチレン-α-オレフィン共重合体は、以下の(i)~(iv)の要件を全て満たす。
(i)ビカット軟化点が85.0℃以下。
(ii)160℃における溶融トルクをX[N・m]、メルトフローレートをY[g/10分]としたとき、X+6.5×Ln(Y)の値が23.0以下。
(iii)微分分子量分布曲線を3つの正規分布曲線に分割した際の、低分子量成分(A成分)のピーク高さに対する、中分子量分布成分(B成分)および高分子量成分(C成分)のピーク高さの和の比が10.00以上。
(iv)メルトフローレートが0.10g/10分以上、10.00g/10分以下。
【0009】
本発明に係るエチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法は、オレフィン重合触媒の存在下、エチレンと、炭素原子数3~20のα-オレフィンとを共重合し、密度が911kg/m
3以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体を製造する方法であって、
下記式(1)で定義されたAが67.0以上100.0以下となるように重合条件を調整する。
【数1】
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、適切な押出加工性を維持しながら、難燃剤として含有されるフィラーの受容性に比較的優れたエチレン-α-オレフィン共重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
<エチレン-α-オレフィン共重合体>
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体は、以下の(i)~(iv)の要件を全て満たす。
(i)ビカット軟化点が85.0℃以下。
(ii)160℃における溶融トルクをX[N・m]、メルトフローレートをY[g/10分]としたとき、X+6.5×Ln(Y)の値が23.0以下。
(iii)微分分子量分布曲線を3つの正規分布曲線に分割した際の、低分子量成分(A成分)のピーク高さに対する、中分子量分布成分(B成分)および高分子量成分(C成分)のピーク高さの和の比が10.00以上。
(iv)メルトフローレートが0.10g/10分以上、10.00g/10分以下。
【0013】
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンと炭素原子数3~20のα-オレフィンとを共重合して得られるエチレン-α-オレフィン共重合体である。炭素原子数3~20のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられ、好ましくは、プロピレン、1-ブテン、または、1-ヘキセンである。また、上記の炭素原子数3~20のα-オレフィンは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体としては、α-オレフィンが、プロピレン、ブテン、および、ヘキセンの中から選ばれる少なくとも一つを含んでもよい。このようなエチレン-α-オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体等が挙げられ、好ましくは、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体である。
【0015】
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体中のエチレンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン-α-オレフィン共重合体の全質量(100質量%)に対して、通常50~99質量%である。前記エチレン-α-オレフィン共重合体中の炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン-α-オレフィン共重合体の全質量(100質量%)に対して、通常1~50質量%である。
【0016】
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体のビカット軟化点は、85.0℃以下である(要件(i))。ビカット軟化点は、フィラー受容性向上の観点から、好ましくは、80.0℃以下である。
【0017】
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体のビカット軟化点は、以下の方法で測定されるビカット軟化点(単位:℃)である。
【0018】
[ビカット軟化点(単位:℃)の測定方法]
熱プレスによりエチレン-α-オレフィン共重合体の試料をプレスし約5mm厚みのシートを作製する。得られたシートを、JIS K7206-1999に規定されたA50法に従って測定する。
【0019】
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体の160℃における溶融トルクをX[N・m]、メルトフローレートをY[g/10分]としたとき、X+6.5×Ln(Y)の値は、23.0以下である(要件(ii))。X+6.5×Ln(Y)の値は、押出加工性向上の観点から、好ましくは、21.0以下である。
【0020】
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体の前記X+6.5×Ln(Y)の値は、以下の方法で測定される溶融トルクX[単位:N・m]と、メルトフローレートY[単位:g/10分]から算出される値である。なお、Lnは自然対数を示す。
【0021】
[溶融トルクX[単位:N・m]の測定方法]
溶融トルクXは、ラボプラストミルを用いて、以下の条件で測定する。装置は東洋精機社製ラボプラストミル3S150を用いる。エチレン-α-オレフィン共重合体の試料38gと住友化学社製の酸化防止剤スミライザーGPを400ppm混合し、設定温度160℃、スクリュー回転数60rpmの条件で30分間混練する。混練中の溶融トルクデータを0.125秒間隔で取得し、混練開始後25分から測定終了までの5分間の平均値を求める。得られた平均値を溶融トルクXとする。
【0022】
[メルトフローレートY[g/10分]の測定方法]
メルトフローレートYは、エチレン-α-オレフィン共重合体の試料を用いて、JIS K7210-1995に規定されるA法に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定する。
【0023】
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体の微分分子量分布曲線を3つの正規分布曲線に分割した際の、低分子量成分(A成分)のピーク高さに対する、中分子量分布成分(B成分)および高分子量成分(C成分)のピーク高さの和の比は、10.00以上である(要件(iii))。前記比は、フィラー受容性向上の観点から、好ましくは、11.00以上である。
【0024】
前記比は、以下の方法で微分分子量曲線(GPC)を測定し、微分分子量曲線(GPC)のピーク分割を行って得られる、低分子量成分(A成分)のピーク高さに対する、中分子量分布成分(B成分)および高分子量成分(C成分)のピーク高さの和の比である。
【0025】
(1)微分分子量分布曲線(GPC)
エチレン-α-オレフィン共重合体の試料の分子量はGPC法により、以下の条件で測定する。溶媒にオルトジクロロベンゼン(酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエンを0.1w/V添加)を使用し、試料濃度は1mg/mLとする。装置としては、例えば、東ソー社製、HLC-8121GPC/HTを用いる。測定カラムとしては、例えば、東ソー社製GPCカラム、TSKgel GMHHR-H(S)HT 7.5mm、I.D.×300mmを3本連結して用いる。移動相はオルトジクロロベンゼン(酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエンを0.1w/V添加)とし、流速は1mL/分、カラムオーブン温度を140℃、オートサンプラー温度は140℃、システムオーブン温度は40℃に設定する。検出器は示差屈折率検出器(RID)を用い、RIDセル温度は140℃、試料溶液注入量は300μLとする。得られた測定値にQファクター値41.3を乗算し、ポリスチレン換算分子量(M)とする。
【0026】
(2)微分分子量分布曲線のピーク分割
微分分子量分布曲線のピーク分割は、例えば、Pythonを用いて行うことができ、具体的には、以下に示す方法で行われる。
【0027】
最初のステップとして、対応するモデルのAnacondaバージョンをダウンロードしてインストールし、環境設定を行う。
【0028】
2番目のステップとして、微分分子量分布曲線の電子データの1列目のタイトルを「x」、2列目のタイトルを「y」とする。次に、1列目の2行名以降にlogM値を、2列目の2行名以降にdwt/d(logM)を入力し、csvファイルとして保存する(‘データ名.csv’)。
【0029】
3番目のステップでは、Jupyter Notebook(Anaconda3)を用いて、以下に示すコードを入力し、実行する。
【0030】
#モジュールの読み込み
from scipy.optimize import curve_fit
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
import matplotlib.cm as cm
import pandas as pd
【0031】
# Dataの入力
dataset = pd.read_csv(‘データ名.csv’)
x = dataset['x']
y = dataset['y']
【0032】
#フィッティング関数の定義
def func(x, *params):
【0033】
# paramsの長さでフィッティングする関数の数を判別
num_func = int(len(params)/3)
【0034】
# ガウス関数にそれぞれのパラメータを挿入してy_listに追加
y_list = []
for i in range(num_func):
y = np.zeros_like(x)
param_range = list(range(3*i,3*(i+1),1))
amp = params[int(param_range[0])]
ctr = params[int(param_range[1])]
wid = params[int(param_range[2])]
y = y + amp * np.exp( -((x - ctr)/wid)**2)
y_list.append(y)
【0035】
# y_listに入っているすべてのガウス関数を重ね合わせる
y_sum = np.zeros_like(x)
for i in y_list:
y_sum = y_sum + i
【0036】
# バックグラウンドを追加
y_sum = y_sum + params[-1]
return y_sum
【0037】
# フィッティングに用いるガウス関数の定義: y = amp*exp[-((x-ctr)/wid)^2]
# amp = 1/(sqrt(2pi)*sig), ctr = m, wid = 2sig
def fit_plot(x, *params):
num_func = int(len(params)/3)
y_list = []
for i in range(num_func):
y = np.zeros_like(x)
param_range = list(range(3*i,3*(i+1),1))
amp = params[int(param_range[0])]
ctr = params[int(param_range[1])]
wid = params[int(param_range[2])]
y = y + amp * np.exp( -((x - ctr)/wid)**2) + params[-1]
y_list.append(y)
return y_list
【0038】
#初期値の設定
# guess.appen([amp,ctr,wid]) --> amp:高さ, ctr:中心値, wid:幅
#以下のいずれかに該当する場合は、”Amp“,”Center“,”Width“の初期値を変更して、該当しなくなるまで実施する。
#Runtime Errorが出る場合
#Amp、Center、Widthのいずれかひとつ以上が負の値になる場合
#Baselineの絶対値が3を超える場合
guess = []
guess.append([”Amp“の初期値,”Center“の初期値,”Width“の初期値]) # 1st curve
guess.append([”Amp“の初期値,”Center“の初期値,”Width“の初期値]) # 2nd curve
guess.append([”Amp“の初期値,”Center“の初期値,”Width“の初期値]) # 3rd curve
【0039】
# バックグラウンドの初期値
background = 0.1
【0040】
# 初期値リストの結合
guess_total = []
for i in guess:
guess_total.extend(i)
guess_total.append(background)
【0041】
# Fitting 最適化したパラメータをpoptへ代入
popt, pcov = curve_fit(func, x, y, p0=guess_total)
【0042】
# 実験データと最適化データのプロット
fit = func(x, *popt)
plt.figure(figsize=(8,5))
plt.scatter(x, y, marker="o", s=50, c="blue")
plt.plot(x, fit , ls='-', c='red', lw=3)
【0043】
# 各カーブのプロット
y_list = fit_plot(x, *popt)
baseline = np.zeros_like(x) + popt[-1]
for n, i in enumerate(y_list):
plt.fill_between(x, i, baseline, facecolor=cm.rainbow(n/len(y_list)), alpha=0.7)
【0044】
# パラメータのリスト化, Baselineは全体に付加する
data = {
"C1" : popt[0:3],
"C2" : popt[3:6],
"C3" : popt[6:9],
"Baseline" : popt[9:10],
}
【0045】
# パラメータをリスト形式で表示
idx = ["Amp","Center","Width"]
df = pd.DataFrame(data, index=idx)
df
【0046】
[ピーク高さ比[単位:なし]]
上記の方法で分割した3つのピーク中心値(“Center”)の値を小さい側から、A成分、B成分、C成分とし、A成分のピーク高さ(“Amp”)に対する、B成分とC成分のピーク高さの和の比を求める。
【0047】
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体のメルトフローレートは、0.10g/10分以上、10.00g/10分以下(要件(iv))である。前記メルトフローレートは、押出加工性向上の観点から、好ましくは、0.20g/10分以上、10.00g/10分以下である。
【0048】
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体のメルトフローレートは、エチレン-α-オレフィン共重合体の試料を用いて、JIS K7210-1995に規定されるA法に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で、測定して得られる値である。
【0049】
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体は、好ましくは、長鎖分岐を有する。前記エチレン-α-オレフィン共重合体としては、通常40kJ/mol以上の高い流動の活性化エネルギー(Ea)を有するものが挙げられる。前記流動の活性化エネルギー(Ea)は、押出成形体の外観を高める観点から、好ましくは、45kJ/mol以上であり、より好ましくは、50kJ/mol以上であり、さらに好ましくは、60kJ/mol以上である。また、前記流動の活性化エネルギー(Ea)は、押出成形体の機械的強度を高める観点から、好ましくは、100kJ/mol以下であり、より好ましくは、90kJ/mol以下である。
【0050】
エチレン-α-オレフィン共重合体の流動の活性化エネルギー(Ea)は、温度-時間重ね合わせ原理に基づいて、190℃での溶融複素粘度(単位:Pa・sec)の角周波数(単位:rad/sec)依存性を示すマスターカーブを作成する際のシフトファクター(aT)からアレニウス型方程式により算出される数値であって、以下に示す方法で求められる値である。すなわち、130℃、150℃、170℃、190℃、210℃の温度の中から、190℃を含む4つの温度について、夫々の温度(T、単位:℃)におけるエチレン-α-オレフィン共重合体の溶融複素粘度-角周波数曲線(溶融複素粘度の単位はPa・sec、角周波数の単位はrad/secである。)を、温度-時間重ね合わせ原理に基づいて、各温度(T)での溶融複素粘度-角周波数曲線毎に、190℃でのエチレン系共重合体の溶融複素粘度-角周波数曲線に重ね合わせた際に得られる各温度(T)でのシフトファクター(aT)を求め、夫々の温度(T)と、各温度(T)でのシフトファクター(aT)とから、最小自乗法により[Ln(aT)]と[1/(T+273.16)]との一次近似式(下記式(I))を算出する。次に、前記一次式の傾きmと下記式(II)とからEaを求める。
【0051】
Ln(aT)=m(1/(T+273.16))+n (I)
Ea=|0.008314×m| (II)
【0052】
前記式(I)および式(II)中、aT、Ea、Tは、下記のものを表す。
aT:シフトファクター
Ea:流動の活性化エネルギー(単位:kJ/mol)
T :温度(単位:℃)
【0053】
上記計算は、市販の計算ソフトウェアを用いてもよい。前記計算ソフトウェアとしては、例えば、Rheometrics社製Rhios V.4.4.4等が挙げられる。なお、シフトファクター(aT)は、夫々の温度(T)における溶融複素粘度-角周波数の両対数曲線を、log(Y)=-log(X)軸方向に移動させて(但し、Y軸を溶融複素粘度、X軸を角周波数とする。)、190℃での溶融複素粘度-角周波数曲線に重ね合わせた際の移動量であり、該重ね合わせでは、夫々の温度(T)における溶融複素粘度-角周波数の両対数曲線は、角周波数をaT倍に、溶融複素粘度を1/aT倍に移動させる。また、130℃、150℃、170℃、190℃、210℃の中から190℃を含む4つの温度でのシフトファクターと温度から得られる一次近似式(I)式を最小自乗法で求めるときの相関係数は、通常、0.99以上である。
【0054】
上記の溶融複素粘度-角周波数曲線の測定は、粘弾性測定装置(例えば、Rheometrics社製Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS-800等。)を用い、通常、ジオメトリー:パラレルプレート、プレート直径:25mm、プレート間隔:1.5~2mm、ストレイン:5%、角周波数:0.1~100rad/秒の条件で行われる。なお、測定は窒素雰囲気下で行われ、また、測定試料には予め酸化防止剤を適量(例えば1000ppm)配合することが好ましい。
【0055】
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体のメルトフローレート比(MFRR)は、通常40~300である。前記MFRRは、押出成形体の外観をより高める観点から、好ましくは、50以上であり、より好ましくは、60以上である。また、前記MFRRは、押出成形体の機械的強度を高める観点から、好ましくは、250以下であり、より好ましくは、200以下である。なお、前記MFRRは、JIS K7210-1995に規定されるA法に従い、荷重21.6kg、測定温度190℃の条件で測定されるメルトフローレート(MFR-H、単位:g/10分)を、JIS K7210-1995に規定されるA法に従い、荷重2.16kgおよび温度190℃の条件で測定されるメルトフローレート(MFR)で除した値である。
【0056】
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体の密度は、通常、870~960kg/m3である。前記密度は、押出成形体の機械的強度を高める観点から、好ましくは、940kg/m3以下であり、より好ましくは、930kg/m3以下であり、さらに好ましくは925kg/m3以下であり、特に好ましくは920kg/m3以下である。また、前記密度は、押出成形体の耐熱性を高める観点から、好ましくは、880kg/m3以上であり、より好ましくは、890kg/m3以上である。なお、前記密度は、JIS K7112-1980に規定された方法に従って測定される。
【0057】
<エチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法>
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法は、オレフィン重合触媒の存在下、エチレンと、炭素原子数3~20のα-オレフィンとを共重合し、密度が911kg/m3以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体を製造する方法であって、下記式(1)で定義されたAが67.0以上100.0以下となるように重合条件を調整する。
【0058】
【0059】
近年、エチレン-α-オレフィン共重合体の低密度化に伴い、エチレン-α-オレフィン共重合体を製造する際、重合槽内における重合体の流動不良が生じ、その結果、安定的に運転できないという問題がある。そのため、該流動不良の要因となり得る、重合体粒子の互着、溶融等による塊の生成抑制、および、触媒原単位向上の観点から重合槽塔頂部からの重合体粒子の飛散抑制の両立が求められている。本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法は、エチレン-α-オレフィン共重合体の密度が911kg/m3以下と低密度であっても、上記式(1)で定義されたAが67.0以上100.0以下となるように重合条件を調整することにより、重合体粒子の飛散を抑制し、かつ、重合体粒子の互着、溶融等による塊の生成を抑制して、流動不良を比較的生じにくくすることができる。
【0060】
上記式(1)で定義されたAは、好ましくは75.0以上98.0以下である。上記式(1)で定義されたAは、重合反応ガス中の炭素原子数3~20のα-オレフィン濃度、アルカン濃度、エチレン濃度および炭化水素以外のガス濃度、並びに、重合温度を調整することにより、所定の範囲に調整することができる。
【0061】
エチレン-α-オレフィン共重合体の密度は、例えば、889kg/m3以上911kg/m3以下であってもよい。
【0062】
上記式(1)中、エチレン-α-オレフィン共重合体の短鎖分岐数は、流動不良を比較的生じにくくする観点から、炭素原子1000個あたり、好ましくは21.0以上であり、より好ましくは25.0以上である。エチレン-α-オレフィン共重合体の短鎖分岐数は、例えば、33.0以下であってもよい。
【0063】
[短鎖分岐数の測定方法]
エチレン-α-オレフィン共重合体の短鎖分岐数は、以下の方法で測定することができる。
【0064】
<標準品の13C-NMR測定>
下記測定条件により、標準品のカーボン核磁気共鳴(13C-NMR)スペクトルを測定する。
(測定条件)
装置:Bruker社製 AVANCE600
測定プローブ:10mmクライオプローブ
測定溶媒:1,2-ジクロロベンゼン-d4
測定温度:135℃
測定方法:プロトンデカップリング法
パルス幅:45度
パルス繰り返し時間:4秒
窓関数:負の指数関数およびガウス関数
積算回数:5000
【0065】
<標準品の短鎖分岐数>
得られたカーボン核磁気共鳴(13C-NMR)のスペクトルにおいて、指数関数にて解析処理を実施し、5~50ppmにピークトップを有するすべてのピークのピーク面積の総和を1000としたときの、炭素原子数が2の分岐が結合したメチン炭素に由来するピーク面積を短鎖分岐量として算出する。
【0066】
<赤外分光測定>
例えば、「社団法人日本分析化学会編、新版高分子分析ハンドブック、初版、590ページ」に記載されている通り、赤外分光スペクトルにおいてエチレン-α-オレフィン共重合体の短鎖分岐は1378cm-1にピークが観測されることが知られている。エチレン-α-オレフィン共重合体を150℃で5分間予熱した熱プレスを用いて6MPaで5分間加熱した後、水冷した金型で5分間冷却し、厚み0.01cmに成形する。成形後の厚みを厚み計で計測する。下記測定条件により、成形したエチレン-α-オレフィン共重合体の赤外分光スペクトルを測定する。13C-NMRを測定した標準品についても同じ手順で赤外分光スペクトルを測定する。
【0067】
(測定条件)
装置:日本分光(株)社製FTIR470plus
検出器:TGS
スキャン回数:16回
分解能:2cm-1
縦軸:吸光度
【0068】
<短鎖分岐数>
得られた赤外分光スペクトルにおいて、955cm-1と1790cm-1を直線で結び、ベースラインとする。短鎖分岐数Bは式(i)により算出する。
B=Bs×F/Fs 式(i)
ここで、Bsは標準品の13C-NMRで求めた短鎖分岐数であり、Fは式(ii)、Fsは式(iii)で与えられる。
F=(A1/(ρ×t)-0.95A2/(ρ×t)+3.8) 式(ii)
Fs=(A1s/(ρs×ts)-0.95A2/(ρs×ts)+3.8) 式(iii)
ここで、A1はエチレン-α-オレフィン共重合体の赤外分光スペクトルにおける1378cm-1のベースラインからの高さ、ρはエチレン-α-オレフィン共重合体の密度(g/cm3)、tはエチレン-α-オレフィン共重合体の計測厚み(cm)、A2はエチレン-α-オレフィン共重合体のベースライン控除後の赤外分光スペクトルにおける1281~1324cm-1の範囲の高さの最大値、A1sは標準品の赤外分光スペクトルにおける1378cm-1のベースラインからの高さ、ρsは標準品の密度(g/cm3)、tsは標準品の計測厚み(cm)、A2sは標準品のベースライン控除後の赤外分光スペクトルにおける1281~1324cm-1の範囲の高さの最大値である。
【0069】
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法としては、例えば、有機アルミニウム化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物、有機亜鉛化合物等の助触媒成分を粒子状担体に担持させてなる固体粒子状の助触媒成分(以下、「成分(イ)」と記載することがある。)と、アルキレン基、シリレン基等の架橋基で2つのシクロペンタジエニル型アニオン骨格が結合した構造を持つ配位子を有するメタロセン錯体(以下、「成分(ロ)」と記載することがある。)と、を触媒成分として用いてなるオレフィン重合触媒の存在下、エチレンとα-オレフィンとを共重合する方法が挙げられる。前記オレフィン重合触媒は、一態様として、有機アルミニウム化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物および有機亜鉛化合物の中から選ばれる少なくとも一つの助触媒成分を粒子状担体に担持させてなる固体粒子状の助触媒成分と、アルキレン基およびシリレン基の中から選ばれる少なくとも一つの架橋基で2つのシクロペンタジエニル型アニオン骨格が結合した構造を持つ配位子を有するメタロセン錯体と、を触媒成分として用いてなる重合触媒である。
【0070】
前記固体粒子状の助触媒成分としては、メチルアルモキサンを多孔質シリカと混合させた成分、ジエチル亜鉛と水とフッ化フェノールを多孔質シリカと混合させた成分等が挙げられる。
【0071】
前記固体粒子状の助触媒成分の具体例としては、成分(a)ジエチル亜鉛、成分(b)フッ素化フェノール、成分(c)水、成分(d)多孔質シリカおよび成分(e)トリメチルジシラザン(((CH3)3Si)2NH)を接触させてなる助触媒担体成分(イ)が挙げられる。
【0072】
成分(b)のフッ素化フェノールとしては、ペンタフルオロフェノール、3,5-ジフルオロフェノール、3,4,5-トリフルオロフェノール、2,4,6-トリフルオロフェノール等が挙げられる。前記フッ素化フェノールは、本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体の流動の活性化エネルギー(Ea)、分子量分布(Mw/Mn)を高める観点から、好ましくは、フッ素原子数の異なる2種類のフッ素化フェノールを用いる。この場合、フッ素原子数が多いフェノールとフッ素原子数が少ないフェノールとのモル比としては、通常、20/80~80/20である。該モル比は、好ましくは、30/70~70/30である。
【0073】
前記成分(a)、成分(b)および成分(c)の使用量としては、各成分の使用量のモル比率を成分(a):成分(b):成分(c)=1:y:zとすると、yおよびzが下記の式を満足することが好ましい。
【0074】
|2-y-2z|≦1
上記の式におけるyは、好ましくは、0.01~1.99の数であり、より好ましくは、0.10~1.80の数であり、さらに好ましくは、0.20~1.50の数であり、特に好ましくは、0.30~1.00の数である。
【0075】
成分(a)に対して使用する成分(d)の量は、成分(a)と成分(d)との接触により得られる粒子に含まれる亜鉛原子のモル数が、該粒子1gあたり、好ましくは、0.1mmol以上となる量であり、より好ましくは、0.5~20mmolとなる量である。成分(d)に対して使用する成分(e)の量は、成分(d)1gあたり、好ましくは、成分(e)0.1mmol以上となる量であり、より好ましくは、0.5~20mmolとなる量である。
【0076】
前記メタロセン錯体としては、2つのインデニル基が、エチレン基、ジメチルメチレン基またはジメチルシリレン基で結合したジルコノセン錯体、2つのメチルインデニル基が、エチレン基、ジメチルメチレン基またはジメチルシリレン基で結合したジルコノセン錯体、2つのメチルシクロペンタジエニル基が、エチレン基、ジメチルメチレン基またはジメチルシリレン基で結合したジルコノセン錯体、2つのジメチルシクロペンタジエニル基が、エチレン基、ジメチルメチレン基またはジメチルシリレン基で結合したジルコノセン錯体等が挙げられる。また、成分(ロ)の金属原子としては、例えば、ジルコニウムとハフニウムが挙げられ、さらに金属原子が有する残りの置換基としては、例えば、ジフェノキシ基、ジアルコキシ基が挙げられる。成分(ロ)は、好ましくは、エチレンビス(1-インデニル)ジルコニウムジフェノキシドである。
【0077】
上記の固体粒子状の助触媒成分とメタロセン錯体とを用いてなる重合触媒においては、適宜、有機アルミニウム化合物を触媒成分として併用してもよく、該有機アルミニウム化合物としては、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム等が挙げられる。
【0078】
前記メタロセン錯体の使用量は、前記固体粒子状の助触媒成分1gあたり、好ましくは、5×10-6~5×10-4molである。また、有機アルミニウム化合物の使用量は、前記メタロセン錯体の金属原子1molあたり、好ましくは、有機アルミニウム化合物のアルミニウム原子が1~2000molとなる量である。
【0079】
また、上記の固体粒子状の助触媒成分とメタロセン錯体とを用いてなる重合触媒においては、適宜、電子供与性化合物を触媒成分として併用してもよい。該電子供与性化合物としては、トリエチルアミン、トリノルマルオクチルアミン等が挙げられる。
【0080】
上記成分(b)のフッ素化フェノールとしてフッ素数の異なる2種類のフッ素化フェノールを用いる場合、好ましくは、電子供与性化合物を用いる。
【0081】
電子供与性化合物の使用量としては、上記の触媒成分として用いられる有機アルミニウム化合物のアルミニウム原子のモル数に対して、通常0.1~10mol%である。前記使用量は、本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)を高める観点から、上記の触媒成分として用いられる有機アルミニウム化合物のアルミニウム原子のモル数に対して、好ましくは、0.2~5mol%である。
【0082】
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法としては、より具体的には、前記助触媒担体成分(イ)、架橋型ビスインデニルジルコニウム錯体および有機アルミニウム化合物を接触させてなる触媒の存在下、エチレンと炭素原子数3~20のα-オレフィンとを共重合する方法が挙げられる。
【0083】
重合方法としては、例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体の粒子の成形を伴う連続重合方法が挙げられる。連続重合方法としては、例えば、連続気相重合、連続スラリー重合、連続バルク重合が挙げられ、好ましくは、連続気相重合である。気相重合反応装置は、通常、流動層型反応槽を有する装置であり、好ましくは、拡大部を有する流動層型反応槽を有する装置である。流動層型反応槽を有する装置は、反応槽内に攪拌翼が設置されていてもよい。
【0084】
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体の製造に用いられる重合触媒の各成分を反応槽に供給する方法としては、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス、水素、エチレン等を用いて、水分のない状態で供給する方法、各成分を溶媒に溶解または稀釈して、溶液またはスラリー状態で供給する方法が用いられる。重合触媒の各成分は個別に供給してもよく、任意の成分を任意の順序にあらかじめ接触させて供給してもよい。
【0085】
また、本重合を実施する前に、予備重合を実施してもよい。予備重合された予備重合触媒成分は、好ましくは、本重合の触媒成分または触媒として使用する。本重合と予備重合では、異なるα-オレフィンを用いてもよい。エチレンと予備重合されるα-オレフィンは、好ましくは、炭素原子数が4~12のα-オレフィンであり、より好ましくは、炭素原子数が6~8のα-オレフィンである。
【0086】
上記式(1)中、重合温度は、通常、エチレン-α-オレフィン共重合体が溶融する温度よりも低く、好ましくは、0℃以上150℃以下であり、より好ましくは、30℃以上100℃以下であり、さらに好ましくは50℃以上90℃以下であり、特に好ましくは66℃以上84℃以下である。また、重合温度は、エチレン-α-オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)を広げる観点から、好ましくは、60℃以上85℃以下である。
【0087】
重合時間としては(連続重合反応である場合は平均滞留時間として)、通常1~20時間である。重合時間(平均滞留時間)は、エチレン-α-オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)を広げる観点から、好ましくは、2~10時間である。
【0088】
上記式(1)中、重合反応ガス中の炭素原子数3~20のα-オレフィン濃度は、好ましくは1.0mol%以上2.5mol%以下であり、より好ましくは1.3mol%以上2.1mol%以下である。また、アルカン濃度は、好ましくは0.1mol%以上5.0mol%以下であり、より好ましくは0.3mol%以上3.0mol%以下である。また、エチレン濃度は、好ましくは65.0mol%以上95.0mol%以下であり、より好ましくは70.0mol%以上90.0mol%以下である。
【0089】
また、エチレン-α-オレフィン共重合体を製造する際、重合反応ガスに水素を分子量調節剤として添加してもよく、重合槽内における重合体の流動不良を生じにくくする観点から、重合反応ガス中に不活性ガス(例えば、窒素)を共存させてもよい。一態様として、重合反応ガス中に水素および窒素が含まれる場合、上記式(1)中、重合反応ガス中の炭化水素以外のガス濃度は、水素濃度および窒素濃度の和である。当該一態様において、窒素濃度は、5.0mol%以上30.0mol%以下であり、好ましくは10.0mol%以上25.0mol%以下である。また、当該一態様において、水素濃度は、好ましくは0.3mol%以上2.5mol%以下であり、より好ましくは0.5mol%以上1.5mol%以下である。
【0090】
重合反応ガス中のエチレンのモル濃度に対する重合反応ガス中の水素のモル濃度は、重合反応ガス中のエチレンのモル濃度を100mol%として、通常、0.1mol%以上3mol%以下である。また、該重合反応ガス中の水素のモル濃度は、エチレン-α-オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)を広げる観点から、重合反応ガス中のエチレンのモル濃度を100mol%として、好ましくは、0.2mol%以上2.5mol%以下である。
【0091】
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体には、必要に応じて、添加剤を含有させてもよい。以下、添加剤を含有させたエチレン-α-オレフィン共重合体をポリエチレン樹脂組成物とする。前記ポリエチレン樹脂組成物は、当該ポリエチレン樹脂組成物の全量を100質量%として、本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体を、好ましくは、5質量%以上95質量%以下含み、より好ましくは、10質量%以上90質量%以下含み、さらに好ましくは、15質量%以上85質量%以下含む。
【0092】
前記添加剤としては、例えば、有機過酸化物、ヒンダードアミン系光安定化剤、架橋助剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等が挙げられる。
【0093】
(1)有機過酸化物
前記ポリエチレン樹脂組成物には有機過酸化物を配合することができる。前記有機過酸化物は、主にポリエチレン樹脂を架橋するために用いられる。有機過酸化物としては、分解温度(半減期が1時間である温度)が70~180℃、特に90~160℃の有機過酸化物を用いることができる。このような有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3,1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキシル-2,5-ジパーオキシベンゾエート、t-ブチルハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、p-クロルベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、ヒドロキシヘプチルパーオキサイド、ジクロヘキサノンパーオキサイド等が挙げられる。
【0094】
有機過酸化物の配合割合は、本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体を100質量部としたときに、好ましくは、0.2~5質量部であり、より好ましくは、0.5~3質量部であり、さらに好ましくは、1~2質量部である。有機過酸化物の配合割合が上記範囲内であると、ポリエチレン樹脂の架橋が、十分にかつ均一に行われる。
【0095】
(2)ヒンダードアミン系光安定化剤
前記ポリエチレン樹脂組成物にはヒンダードアミン系光安定化剤を配合することができる。ヒンダードアミン系光安定化剤は、ポリマーに対して有害なラジカル種を捕捉し、新たなラジカルを発生しないようにするものである。ヒンダードアミン系光安定化剤には、低分子量のものから高分子量のものまで多くの種類の化合物があるが、従来公知のものであれば、特に制限されずに用いることができる。
【0096】
低分子量のヒンダードアミン系光安定化剤としては、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル、1,1-ジメチルエチルヒドロパーオキサイドおよびオクタンの反応生成物(分子量737)70質量%とポリプロピレン30質量%からなるもの;ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート(分子量685);ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートとメチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートとの混合物(分子量509);ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(分子量481);テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート(分子量791);テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート(分子量847);2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレートとトリデシル-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレートとの混合物(分子量900);1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレートとトリデシル-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレートとの混合物(分子量900)等が挙げられる。
【0097】
高分子量のヒンダードアミン系光安定化剤としては、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}](分子量2,000~3,100);コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとの重合物(分子量3,100~4,000);N,N’,N”,N”’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン(分子量2,286)と、上記コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとの重合物と、の混合物;ジブチルアミン-1,3,5-トリアジン-N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物(分子量2,600~3,400)、ならびに、4-アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-アクリロイルオキシ-1-エチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-アクリロイルオキシ-1-プロピル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-アクリロイルオキシ-1-ブチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-メタクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルペリジン、4-メタクリロイルオキシ-1-エチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-メタクリロイルオキシ-1-ブチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-1-プロピル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の環状アミノビニル化合物とエチレンとの共重合体等が挙げられる。上記のヒンダードアミン系光安定化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0098】
これらの中でも、ヒンダードアミン系光安定化剤は、好ましくは、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}](分子量2,000~3,100);コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとの重合物(分子量3,100~4,000);N,N’,N”,N”’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン(分子量2,286)と、上記コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとの重合物と、の混合物;ジブチルアミン-1,3,5-トリアジン-N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物(分子量2,600~3,400);環状アミノビニル化合物とエチレンとの共重合体が用いられる。これにより、製品使用時に経時でのヒンダードアミン系光安定剤のブリードアウトが妨げられるからである。また、ヒンダードアミン系光安定化剤は、ポリエチレン樹脂組成物の作製しやすさの観点から、好ましくは、融点が、60℃以上である。
【0099】
前記ポリエチレン樹脂組成物において、ヒンダードアミン系光安定化剤の含有量は、前記エチレン-α-オレフィン共重合体100質量部に対して、好ましくは、0.01~2.5質量部であり、より好ましくは、0.01~1.0質量部であり、さらに好ましくは、0.01~0.5質量部であり、特に好ましくは、0.01~0.2質量部であり、最も好ましくは、0.03~0.1質量部である。
【0100】
前記ヒンダードアミン系光安定化剤の含有量を0.01質量部以上とすることにより安定化への効果が十分に得られ、2.5質量部以下とすることによりヒンダードアミン系光安定化剤の過剰な添加による樹脂の変色を抑えることができる。また、前記ポリエチレン樹脂組成物において、前記有機過酸化物と前記ヒンダードアミン系光安定化剤との質量比は、好ましくは、1:0.01~1:10であり、より好ましくは、1:0.02~1:6.5である。これにより、樹脂の黄変を顕著に抑制することが可能となる。
【0101】
(3)架橋助剤
前記ポリエチレン樹脂組成物には、架橋助剤を配合することができる。架橋助剤は、架橋反応を促進させ、エチレン-α-オレフィン共重合体の架橋度を高めるのに有効である。架橋助剤の具体例としては、ポリアリル化合物、ポリ(メタ)アクリロキシ化合物のような多不飽和化合物が挙げられる。より具体的には、架橋助剤としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルマレエートのようなポリアリル化合物、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートのようなポリ(メタ)アクリロキシ化合物、ジビニルベンゼン等が挙げられる。架橋助剤は、本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体100質量部に対し、0~5質量部程度の割合で配合することができる。
【0102】
(4)紫外線吸収剤
前記ポリエチレン樹脂組成物には、紫外線吸収剤を配合することができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系等、各種タイプのものが挙げられる。
【0103】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクタデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-5-クロロベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0104】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニル置換ベンゾトリアゾール化合物であって、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-メチル-5-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。また、トリアジン系紫外線吸収剤としては、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチルオキシ)フェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノール等が挙げられる。サリチル酸エステル系としては、フェニルサリチレート、p-オクチルフェニルサリチレート等が挙げられる。これら紫外線吸収剤の含有量は、前記エチレン-α-オレフィン共重合体100質量部に対して、好ましくは、2.0質量部以下であり、より好ましくは、0.05~2.0質量部であり、さらに好ましくは、0.1~1.0質量部であり、特に好ましくは、0.1~0.5質量部であり、最も好ましくは、0.2~0.4質量部である。
【0105】
(5)シランカップリング剤
前記ポリエチレン樹脂組成物には、樹脂を改質させる目的でシランカップリング剤を用いることができる。前記ポリエチレン樹脂組成物に用いられるシランカップリング剤としては、例えば、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリクロルシラン;ビニルトリエトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン;ビニル-トリス-(β-メトキシエトキシ)シラン;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;ビニルトリアセトキシシラン;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン;γ-アミノプロピルトリメトキシシラン;N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤は、好ましくは、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランである。これらのシランカップリング剤は、エチレン-α-オレフィン共重合体100質量部に対して、好ましくは、0~5質量部を用い、より好ましくは、0.01~4質量部を用い、さらに好ましくは、0.01~2質量部を用い、特に好ましくは、0.05~1質量部を用いる。
【0106】
(6)他の添加成分
前記ポリエチレン樹脂組成物には、本発明の目的を著しく損なわない範囲で、他の付加的任意成分を配合することができる。このような任意成分としては、通常のポリオレフィン系樹脂材料に使用される酸化防止剤、結晶核剤、透明化剤、滑剤、着色剤、分散剤、充填剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。
【0107】
また、前記ポリエチレン樹脂組成物には、柔軟性等を付与するため、本発明の目的を損なわない範囲で、潤滑油、チーグラー系またはメタロセン系触媒によって重合された結晶性のエチレン-α-オレフィン共重合体および/またはEBR、EPR等のエチレン-α-オレフィンエラストマーもしくはSEBS、水添スチレンブロック共重合体等のスチレン系エラストマー等のゴム系化合物を3~75質量部配合することができる。さらに、溶融張力等を付与するため、高圧法低密度ポリエチレンを3~75質量部配合することができる。
【0108】
前記ポリエチレン樹脂組成物に他の付加的任意成分を配合する方法としては、公知の溶融混練する方法が挙げられる。前記方法としては、例えば、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサー等でドライブレンドした後、さらに単軸押出機、多軸押出機等で溶融混練する方法、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練する方法が挙げられる。
【0109】
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体または本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体に他の付加的任意成分が配合された樹脂組成物は、例えば、シート、容器、電線、ケーブル等の絶縁体、シース、太陽電池封止材等に用いられる。
【0110】
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体または本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体に他の付加的任意成分が配合された樹脂組成物を各種成形体に成形する方法としては、公知の成形方法を用いることができる。公知の成形方法としては、例えば、押出成形法、電線、管の被覆等の被覆押出成形法が挙げられる。
【0111】
[太陽電池封止材および太陽電池]
本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体または本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体に他の付加的任意成分が配合された樹脂組成物は、太陽電池封止材(以下、単に「封止材」ともいう。)に用いることができる。太陽電池封止材は、本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体、または、前記ポリエチレン樹脂組成物をペレット化、あるいはシート化したものである。この太陽電池封止材を用いれば、太陽電池素子を上下の保護材とともに固定することにより太陽電池モジュールを製作することができる。このような太陽電池モジュールとしては、種々のタイプのものを例示することができる。例えば、上部透明保護材/封止材/太陽電池素子/封止材/下部保護材のように太陽電池素子の両側から封止材で挟む構成のもの、下部基板保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子上に封止材と上部透明保護材を形成させるような構成のもの、上部透明保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子、例えば、フッ素樹脂系透明保護材上にアモルファス太陽電池素子をスパッタリング等で作成したものの上に封止材と下部保護材を形成させるような構成のもの等が挙げられる。
【0112】
太陽電池素子としては、特に制限されず、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等のシリコン系、ガリウム-砒素、銅-インジウム-セレン、カドミウム-テルル等のIII-V族、II-VI族化合物半導体系等の各種太陽電池素子を用いることができる。本発明においては、基板には、好ましくは、ガラスを用いる。
【0113】
太陽電池モジュールを構成する上部保護材としては、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、フッ素含有樹脂等を例示することができる。また、下部保護材としては、金属、各種熱可塑性樹脂フィルム等の単体もしくは多層のシートであり、例えば、錫、アルミ、ステンレススチール等の金属、ガラス等の無機材料、ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、ポリオレフィン等の1層もしくは多層の保護材を例示することができる。このような上部および/または下部の保護材には、封止材との接着性を高めるためにプライマー処理を施すことができる。本発明においては、上部保護材には、好ましくは、ガラスを用いる。
【0114】
前記太陽電池封止材は、ペレットとして使用してもよいが、通常、0.1~1mm程度の厚みのシート状に成形して使用される。太陽電池封止材の厚さが上記の範囲であれば、強度を大きくでき、接着が十分となり、また透明性を保つことができる。前記厚さは、好ましくは、0.25~0.6mmである。シート状太陽電池封止材は、前記厚さが0.25mm以上であれば、充分に衝撃を緩和でき、例えば、前記厚さ0.25mm程度に薄膜化した場合においても、モールディング特性と耐熱性とを十分に好ましい水準において兼ね備えるものとすることができる。また、前記厚さが0.6mm以下であれば、衝撃緩和効果は十分であり、太陽電池モジュールの薄膜化の要請に対応でき、かつ、経済的である。
【0115】
シート状太陽電池封止材はスキン層-コア層-スキン層の構成からなる多層シートであってもよい。スキン層は、シート状太陽電池封止材の最表面に形成され、好ましくは、相対的に低密度で融点が低い層である。コア層は、好ましくは、相対的に高密度密度で融点が高い層である。本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体は、シート状太陽電池封止材のスキン層に用いてもよいし、コア層に用いてもよい。また、本実施形態に係るエチレン-α-オレフィン共重合体は、スキン層とコア層の両方に用いてもよい。
【0116】
シート状太陽電池封止材をスキン層-コア層-スキン層の構成からなる多層シートとする場合、コア層には架橋剤および架橋助剤を含まなくてもよい。
【0117】
コア層は、シラン変性ポリエチレン系樹脂を含有してもよい。コア層にシラン変性ポリエチレン系樹脂を添加する場合には、シラン変性ポリエチレン系樹脂はポリスチレン換算による質量平均分子量が、70000以上であって、融点が90℃程度のものを用いることができる。シート状太陽電池封止材において、シラン変性ポリエチレン系樹脂は、好ましくは、中間融点樹脂成分として作用させる。
【0118】
コア層用の封止材組成物の密度は、好ましくは、0.905g/cm3以上0.925g/cm3以下であり、より好ましくは、0.910g/cm3以上0.920g/cm3以下である。
【0119】
コア層用の封止材組成物の融点は、好ましくは、70℃以上110℃以下であり、より好ましくは、80℃以上100℃以下である。コア層用の封止材組成物の融点を上記の通り、70℃以上に保持することにより、太陽電池封止材に必要な耐熱性を付与することができる。また、シート状太陽電池封止材としてのシート化のための溶融成形時および太陽電池モジュールとしての一体化のための熱ラミネーション処理時の加熱条件との関係において、コア層用の封止材組成物の融点は、一般的に110℃以下程度であればよい。コア層用の封止材組成物の融点は、シート状太陽電池封止材のモールディング特性を十分に高める観点から、好ましくは、100℃以下である。
【0120】
スキン層用の封止材組成物は、シラン変性ポリエチレン系樹脂を含有してもよい。スキン層用の封止材組成物にシラン変性ポリエチレン系樹脂を添加する場合には、シラン変性ポリエチレン系樹脂は、ポリスチレン換算による重量平均分子量が、70000以上であって、融点が90℃程度のものを用いることができる。シート状太陽電池封止材において、シラン変性ポリエチレン系樹脂は、好ましくは、中間融点樹脂成分として作用させる。
【0121】
スキン層用の封止材組成物の密度は、好ましくは、0.880g/cm3以上0.910g/cm3以下であり、より好ましくは、0.880g/cm3以上0.899g/cm3以下である。
【0122】
スキン層用の封止材組成物の融点は、好ましくは、70℃以上90℃以下であり、より好ましくは、70℃以上80℃以下である。コア層同様にスキン層の融点を上記範囲に保持することができる限りにおいて、融点の異なるポリエチレン系樹脂を適宜混合してスキン層用の封止材組成物とすることができる。コア層用の封止材組成物の好ましい材料樹脂の配合例として、例えば、融点60℃、90℃、97℃の3種類のポリエチレン系樹脂を、各、65質量部、8質量部、20質量部ずつ混合された樹脂組成物が挙げられる。この樹脂組成物は、コア層全体の融点を73℃とすることができる。スキン層用の封止材組成物の融点を70℃以上とすることにより、太陽電池封止材に必要な耐熱性を付与することができる。また、スキン層用の封止材組成物の融点を90℃以下とすることにより、太陽電池モジュールとしての一体化時における封止材シートのモールディング特性を好ましい範囲に保持することができる。
【0123】
各層に含有されるシラン変性ポリエチレン系樹脂は、好ましくは、高分子量タイプのシラン変性ポリエチレン系樹脂である。
【0124】
シート状太陽電池封止材におけるコア層の厚さは、好ましくは、0.2mm以上0.4mm以下であり、より好ましくは、0.25mm以上0.35mm以下である。また、スキンの各層毎の厚さは、好ましくは、0.03mm以上0.1mm以下であり、より好ましくは、0.035mm以上0.080mm以下である。また、コア層の両面に積層されている2層のスキンの総厚さは、好ましくは、シート状太陽電池封止材の総厚さの1/20以上1/3以下であり、より好ましくは、1/15以上1/4以下である。シート状太陽電池封止材の各層の厚さをこのような範囲とすることにより、シート状太陽電池封止材の耐熱性とモールディング特性を良好な範囲に保持することができる。
【0125】
シート状太陽電池封止材は、T-ダイ押出機、カレンダー成形機等を使用する公知のシート成形法によって製造することができる。シート状太陽電池封止材は、例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体に、架橋剤を添加し、必要に応じて、ヒンダードアミン系光安定化剤、さらには架橋助剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の添加剤を予めドライブレンドしてT-ダイ押出機のホッパーから供給し、80~150℃の押出温度において、シート状に押出成形することによって得ることができる。これらドライブレンドに際して、一部または全部の添加剤は、マスターバッチの形で使用することができる。また、T-ダイ押出、カレンダー成形において、予め非晶性α-オレフィン系共重合体に一部または全部の添加剤が、溶融混合されたポリエチレン樹脂組成物を使用することもできる。前記溶融混合には、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いることができる。また、成形されたシートは、容易に保管および輸送するために紙管に巻き取られるが、このときにシート同士が密着(ブロッキングが発生)することがある。ブロッキングが発生してしまうと、次の工程でシートを繰り出して使用する際に、安定して繰り出すことができず、生産性が低下してしまう。そのため、シート表面を荒らす、または凹凸構造を作製することで、ブロッキングを回避することが一般的に行われている。
【0126】
太陽電池モジュールを製造するにあたっては、前記太陽電池封止材のシートを予め作っておき、前記太陽電池封止材のポリエチレン樹脂組成物が溶融する温度、例えば、150~200℃で圧着するという方法によって、上述のような構成のモジュールを形成することができる。
【0127】
一方、太陽電池モジュールを製造する際、有機過酸化物が実質的に分解せず、かつ前記太陽電池封止材が溶融するような温度で、太陽電池素子、保護材に該太陽電池封止材を仮接着し、次いで昇温して充分な接着とエチレン-α-オレフィン共重合体の架橋を行うこともできる。この場合は、太陽電池封止材の融点(DSC法)が85℃以上、150℃の貯蔵弾性率が103Pa以上の耐熱性が良好な太陽電池モジュールを得るために、太陽電池封止材におけるゲル分率(試料1gをキシレン100mlに浸漬し、110℃、24時間加熱した後、400メッシュ金網で濾過し未溶融分の質量分率を測定)が、好ましくは、50~98%、より好ましくは、70~95%になるように架橋するのがよい。
【0128】
太陽電池素子の封止作業では、太陽電池素子を前記太陽電池封止材でカバーした後、有機過酸化物が分解しない程度の温度に数分から10分程度加熱して仮接着し、次に、オーブン内において有機過酸化物が分解する150~200℃程度の高温で5分から30分間加熱処理して接着させる等の方法がある。
【0129】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]以下の(i)~(iv)の要件を全て満たす、エチレン-α-オレフィン共重合体。
(i)ビカット軟化点が85.0℃以下。
(ii)160℃における溶融トルクをX[N・m]、メルトフローレートをY[g/10分]としたとき、X+6.5×Ln(Y)の値が23.0以下。
(iii)微分分子量分布曲線を3つの正規分布曲線に分割した際の、低分子量成分(A成分)のピーク高さに対する、中分子量分布成分(B成分)および高分子量成分(C成分)のピーク高さの和の比が10.00以上。
(iv)メルトフローレートが0.10g/10分以上、10.00g/10分以下。
[2]前記エチレン-α-オレフィン共重合体のビカット軟化点が80.0℃以下である、上記[1]に記載のエチレン-α-オレフィン共重合体。
[3]前記エチレン-α-オレフィン共重合体のX+6.5×Ln(Y)の値が21.0以下である、上記[1]または[2]に記載のエチレン-α-オレフィン共重合体。
[4]前記エチレン-α-オレフィン共重合体の微分分子量分布曲線を3つの正規分布曲線に分割した際の、低分子量成分(A成分)のピーク高さに対する、中分子量分布成分(B成分)および高分子量成分(C成分)のピーク高さの和の比が11.00以上である、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のエチレン-α-オレフィン共重合体。
[5]前記エチレン-α-オレフィン共重合体のメルトフローレートが0.20g/10分以上、10.00g/10分以下である、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載のエチレン-α-オレフィン共重合体。
[6]前記エチレン-α-オレフィン共重合体のα-オレフィンが、プロピレン、ブテン、および、ヘキセンの中から選ばれる少なくとも一つを含む、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載のエチレン-α-オレフィン共重合体。
[7]オレフィン重合触媒の存在下、エチレンと、炭素原子数3~20のα-オレフィンとを共重合し、密度が911kg/m
3以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体を製造する方法であって、
下記式(1)で定義されたAが67.0以上100.0以下となるように重合条件を調整する、エチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法。
【数3】
[8]上記式(1)中の炭化水素以外のガス濃度が、水素濃度および窒素濃度の和であり、
該窒素濃度が、5mol%以上30mol%以下である、上記[7]に記載のエチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法。
[9]上記式(1)中の重合温度が、66℃以上84℃以下である、上記[7]または[8]に記載のエチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法。
[10]前記オレフィン重合触媒が、有機アルミニウム化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物および有機亜鉛化合物の中から選ばれる少なくとも一つの助触媒成分を粒子状担体に担持させてなる固体粒子状の助触媒成分と、アルキレン基およびシリレン基の中から選ばれる少なくとも一つの架橋基で2つのシクロペンタジエニル型アニオン骨格が結合した構造を持つ配位子を有するメタロセン錯体と、を触媒成分として用いてなる重合触媒である、上記[7]~[9]のいずれか一つに記載のエチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法。
【実施例0130】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0131】
[試験例1]
実施例1-1~1-7、比較例1-1~1-5における各項目は、下記の方法で測定または評価した。
【0132】
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210-1995に規定されたA法に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0133】
(2)密度(単位:kg/m3)
JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980に規定された方法に従い、A法により測定した。
【0134】
(3)微分分子量分布曲線(GPC)
試料の分子量はGPC法により、以下の条件で測定した。溶媒にオルトジクロロベンゼン(酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエンを0.1w/V添加)を使用し、試料濃度は1mg/mLとした。装置は東ソー社製、HLC-8121GPC/HTを用いた。測定カラムは東ソー社製GPCカラム、TSKgel GMHHR-H(S)HT 7.5mm、I.D.×300mmを3本連結して用いた。移動相はオルトジクロロベンゼン(酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエンを0.1w/V添加)とし、流速は1mL/分、カラムオーブン温度を140℃、オートサンプラー温度は140℃、システムオーブン温度は40℃に設定した。検出器は示差屈折率検出器(RID)を用い、RIDセル温度は140℃、試料溶液注入量は300μLとした。得られた測定値にQファクター値41.3を乗算し、ポリスチレン換算分子量(M)とした。
【0135】
(4)微分分子量分布曲線のピーク分割
本発明のPythonを用いた微分分子量分布曲線の分割の具体的な実施方法は以下の通りである。
最初のステップとして、対応するモデルのAnacondaバージョンをダウンロードしてインストールし、環境設定を行う。
2番目のステップとして、微分分子量分布曲線の電子データの1列目のタイトルを「x」、2列目のタイトルを「y」とする。次に、1列目の2行名以降にlogM値を、2列目の2行名以降にdwt/d(logM)を入力し、csvファイルとして保存する(‘データ名.csv’)。
3番目のステップでは、Jupyter Notebook(Anaconda3)を用いて、以下に示すコードを入力し、実行した。
【0136】
#モジュールの読み込み
from scipy.optimize import curve_fit
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
import matplotlib.cm as cm
import pandas as pd
【0137】
# Dataの入力
dataset = pd.read_csv(‘データ名.csv’)
x = dataset['x']
y = dataset['y']
【0138】
#フィッティング関数の定義
def func(x, *params):
【0139】
# paramsの長さでフィッティングする関数の数を判別
num_func = int(len(params)/3)
【0140】
# ガウス関数にそれぞれのパラメータを挿入してy_listに追加
y_list = []
for i in range(num_func):
y = np.zeros_like(x)
param_range = list(range(3*i,3*(i+1),1))
amp = params[int(param_range[0])]
ctr = params[int(param_range[1])]
wid = params[int(param_range[2])]
y = y + amp * np.exp( -((x - ctr)/wid)**2)
y_list.append(y)
【0141】
# y_listに入っているすべてのガウス関数を重ね合わせる
y_sum = np.zeros_like(x)
for i in y_list:
y_sum = y_sum + i
【0142】
# バックグラウンドを追加
y_sum = y_sum + params[-1]
return y_sum
【0143】
# フィッティングに用いるガウス関数の定義: y = amp*exp[-((x-ctr)/wid)^2]
# amp = 1/(sqrt(2pi)*sig), ctr = m, wid = 2sig
def fit_plot(x, *params):
num_func = int(len(params)/3)
y_list = []
for i in range(num_func):
y = np.zeros_like(x)
param_range = list(range(3*i,3*(i+1),1))
amp = params[int(param_range[0])]
ctr = params[int(param_range[1])]
wid = params[int(param_range[2])]
y = y + amp * np.exp( -((x - ctr)/wid)**2) + params[-1]
y_list.append(y)
return y_list
【0144】
#初期値の設定
# guess.appen([amp,ctr,wid]) --> amp:高さ, ctr:中心値, wid:幅
#以下のいずれかに該当する場合は、”Amp“,”Center“,”Width“の初期値を変更して、該当しなくなるまで実施する。
#Runtime Errorが出る場合
#Amp、Center、Widthのいずれかひとつ以上が負の値になる場合
#Baselineの絶対値が3を超える場合
guess = []
guess.append([”Amp“の初期値,”Center“の初期値,”Width“の初期値]) # 1st curve
guess.append([”Amp“の初期値,”Center“の初期値,”Width“の初期値]) # 2nd curve
guess.append([”Amp“の初期値,”Center“の初期値,”Width“の初期値]) # 3rd curve
【0145】
# バックグラウンドの初期値
background = 0.1
【0146】
# 初期値リストの結合
guess_total = []
for i in guess:
guess_total.extend(i)
guess_total.append(background)
【0147】
# Fitting 最適化したパラメータをpoptへ代入
popt, pcov = curve_fit(func, x, y, p0=guess_total)
【0148】
# 実験データと最適化データのプロット
fit = func(x, *popt)
plt.figure(figsize=(8,5))
plt.scatter(x, y, marker="o", s=50, c="blue")
plt.plot(x, fit , ls='-', c='red', lw=3)
【0149】
# 各カーブのプロット
y_list = fit_plot(x, *popt)
baseline = np.zeros_like(x) + popt[-1]
for n, i in enumerate(y_list):
plt.fill_between(x, i, baseline, facecolor=cm.rainbow(n/len(y_list)), alpha=0.7)
【0150】
# パラメータのリスト化, Baselineは全体に付加する
data = {
"C1" : popt[0:3],
"C2" : popt[3:6],
"C3" : popt[6:9],
"Baseline" : popt[9:10],
}
【0151】
# パラメータをリスト形式で表示
idx = ["Amp","Center","Width"]
df = pd.DataFrame(data, index=idx)
df
【0152】
ピーク高さ比(単位:なし)
上記の方法で分割した3つのピーク中心値("Center")の値が小さい側から、A成分、B成分、C成分とし、A成分のピーク高さ(“Amp”)に対する、B成分とC成分のピーク高さの和の比を求めた。
【0153】
(5)ビカット軟化点(単位:℃)
熱プレスにより試料をプレスし約5mm厚みのシートを作製した。得られたシートを、JIS K7206-1999に規定されたA50法に従って測定した。
【0154】
(6)溶融トルク(単位:N・m)
ラボプラストミルを用いて、以下の条件で測定した。装置は東洋精機社製ラボプラストミル3S150を用いた。試料38gに住友化学社製の酸化防止剤スミライザーGPを400ppm混合し、設定温度160℃、スクリュー回転数60rpmの条件で30分間混練した。混練中の溶融トルクデータを0.125秒間隔で取得し、混練開始後25分から測定終了までの5分間の平均値を求めた。
【0155】
(7)フィラー受容性(単位:%)
ラボプラストミルを用いて、以下の条件でサンプルを調製した。装置は東洋精機社製ラボプラストミル3S150を用いた。試料40gに対して、協和化学社製の水酸化マグネシウム キスマ5Bを150部混合し、設定温度150℃、スクリュー回転数50rpmの条件で10分間混練した。得られた混練物を、150℃で5分間静置し(予熱工程)、150℃、5MPaで5分間加圧し(プレス工程)、30℃で5分間徐冷し(徐冷工程)、厚み1mmのプレスシートを得た。得られたシートをJIS-K7127 タイプ5の形状に切り出した。切り出したシートをオリエンテック社製のテンシロン万能試験機RTG-1225-PLにセットし、200Nのロードセルを用いて、JIS-K7127に準拠して引張速度200mm/分で引張試験を実施した。破断点における標線間伸びをフィラー受容性とした。
【0156】
(8)押出成形品の外観
東洋精機製キャピログラフを用いて、バレル設定温度190℃、L=40mm/D=1mmで流入角90度のタングステンカーバイド製のオリフィスを用い、ピストン降下速度100mm/minで溶融押出を行い、押し出されたストランドを回収した。ストランドの表面を目視で観察し、外観が良好であるものを〇、外観不良があるものを×と評価した。
【0157】
[成分(H)の製造例]
[実施例1-1]
(1)成分(H)の製造
特開2009-79180号公報に記載された実施例1(1)および(2)の成分(A)の調製と同様の方法で、成分(H)を製造した。元素分析の結果、Zn=11質量%、F=6.4質量%であった。
(2)予備重合触媒成分の製造
予め窒素置換した内容積210リットルの撹拌機付きオートクレーブに、ブタン41リットルを添加した後、ラセミ-エチレンビス(1-インデニル)ジルコニウムジフェノキシド60.9mmolを添加し、オートクレーブを50℃まで昇温して撹拌を2時間行った。次に、オートクレーブに上記で得られた成分(H)0.60kgを添加した。その後、オートクレーブを31℃まで降温し、系内が安定した後、オートクレーブにエチレン0.1kg、水素(常温常圧)0.1リットル添加し、続いてトリイソブチルアルミニウム240mmolを添加して予備重合を開始した。エチレンと水素(常温常圧)をそれぞれ0.5kg/hrと1.1リットル/hrで、30分間オートクレーブに供給し、その後、50℃へ昇温するとともに、エチレンと水素(常温常圧)をそれぞれ2.7kg/hrと8.2リットル/hrでオートクレーブに供給した。合計10.0時間の予備重合を実施した。予備重合終了後、エチレン、ブタンおよび水素等をパージし、残った固体を室温にて真空乾燥し、成分(H)1gあたり4.14gのポリエチレンを含有する予備重合触媒成分を得た。該ポリエチレンの[η]は1.26dl/gであった。
(3)成分(A)(LLDPE1)の製造
上記(2)で得た予備重合触媒成分の存在下、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1-ヘキセンとの共重合を実施し、エチレン-1-ヘキセン共重合体(以下、LLDPE1と称する)のパウダーを得た。重合条件としては、重合温度を72℃;重合圧力を2.0MPa;エチレンに対する水素のモル比を0.49%;エチレンと1-ヘキセンとの合計に対する1-ヘキセンのモル比を2.2%とした。重合中はガス組成を一定に維持するために、エチレン、1-ヘキセンおよび水素を連続的に供給した。
【0158】
また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウム、およびトリエチルアミンを連続的に供給し、流動床の総パウダー質量80kgを一定に維持した。LLDPE1に対するトリイソブチルアルミニウムの量を0.43mmol/kgとした。トリイソブチルアルミニウムに対するトリエチルアミンのモル比を3%とした。平均重合時間は5.0hrであった。得られたLLDPE1のパウダーを、押出機(株式会社神戸製鋼所社製LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数338rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1~0.2MPa、樹脂温度180~200℃の条件で造粒し、LLDPE1のペレットを得た。得られたLLDPE1のペレットの物性を評価し、結果を表2に示した。
【0159】
[実施例1-2~1-7]
表1に示した条件について変更した以外は、実施例1-1と同様の条件で実施し、LLDPE2~7のペレットをそれぞれ得た。
【0160】
[比較例1-1]
表1に示した条件について変更した以外は、実施例1-1と同様の条件で実施し、LLDPE8のペレットを得た。
【0161】
[比較例1-2]
住友化学社製のLLDPE9(MFR=0.28g/10分、密度=913kg/m3)のペレットを用いた。
【0162】
[比較例1-3]
住友化学社製のLLDPE10(MFR=1.97g/10分、密度=913kg/m3)のペレットを用いた。
【0163】
[比較例1-4]
住友化学社製のLLDPE11(MFR=1.25g/10分、密度=904kg/m3)のペレットを用いた。
【0164】
[比較例1-5]
住友化学社製のLDPE1(MFR=0.34g/10分、密度=922kg/m3)のペレットを用いた。
【0165】
【0166】
【0167】
表2から、本発明の構成要件をすべて満たす実施例1-1~1-7は、フィラー受容性が比較例1-1~1-5よりも大きい値を示し、押出加工性評価についても良好であった。したがって、本発明のエチレン-α-オレフィン共重合体は、適切な押出加工性を維持しながら、難燃剤として含有されるフィラーの受容性が比較的優れていることが示された。
【0168】
[試験例2]
実施例2-1~2-8、比較例2-1~2-6における各項目は、下記の方法で測定または評価した。
【0169】
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210-1995に規定されたA法に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0170】
(2)ビカット軟化点(単位:℃)
熱プレスにより試料をプレスし約5mm厚みのシートを作製した。得られたシートを、JIS K7206-1999に規定されたA50法に従って測定した。
【0171】
(3)密度(単位:kg/m3)
JIS K7112-1980に規定された方法に従って測定した。
【0172】
(4)短鎖分岐数(単位:1/1000C)
<標準品の13C-NMR測定>
下記測定条件により、標準品のカーボン核磁気共鳴(13C-NMR)スペクトルを測定した。標準品には住友化学社製FS140Aを用いた。
(測定条件)
装置:Bruker社製 AVANCE600
測定プローブ:10mmクライオプローブ
測定溶媒:1,2-ジクロロベンゼン-d4
測定温度:135℃
測定方法:プロトンデカップリング法
パルス幅:45度
パルス繰り返し時間:4秒
窓関数:負の指数関数およびガウス関数
積算回数:5000
【0173】
<標準品の短鎖分岐数>
得られたカーボン核磁気共鳴(13C-NMR)のスペクトルにおいて、指数関数にて解析処理を実施し、5~50ppmにピークトップを有するすべてのピークのピーク面積の総和を1000としたときの、炭素原子数が2の分岐が結合したメチン炭素に由来するピーク面積を短鎖分岐量として算出した。本測定条件においては、10.9~11.4ppmのピークのピーク面積から求めた。
【0174】
<赤外分光測定>
例えば、「社団法人日本分析化学会編、新版高分子分析ハンドブック、初版、590ページ」に記載されている通り、赤外分光スペクトルにおいてエチレン-α-オレフィン共重合体の短鎖分岐は1378cm-1にピークが観測されることが知られている。エチレン-α-オレフィン共重合体を150℃で5分間予熱した熱プレスを用いて6MPaで5分間加熱した後、水冷した金型で5分間冷却し、厚み0.01cmに成形した。成形後の厚みを厚み計で計測した。下記測定条件により、成形したエチレン-α-オレフィン共重合体の赤外分光スペクトルを測定した。13C-NMRを測定した標準品についても同じ手順で赤外分光スペクトルを測定した。
【0175】
(測定条件)
装置:日本分光(株)社製FTIR470plus
検出器:TGS
スキャン回数:16回
分解能:2cm-1
縦軸:吸光度
【0176】
<短鎖分岐数>
得られた赤外分光スペクトルにおいて、955cm-1と1790cm-1を直線で結び、ベースラインとした。短鎖分岐数Bは式(i)により算出した。
B=Bs×F/Fs 式(i)
ここで、Bsは標準品の13C-NMRで求めた短鎖分岐数であり、Fは式(ii)、Fsは式(iii)で与えられる。
F=(A1/(ρ×t)-0.95A2/(ρ×t)+3.8) 式(ii)
Fs=(A1s/(ρs×ts)-0.95A2/(ρs×ts)+3.8) 式(iii)
ここで、A1はエチレン-α-オレフィン共重合体の赤外分光スペクトルにおける1378cm-1のベースラインからの高さ、ρはエチレン-α-オレフィン共重合体の密度(g/cm3)、tはエチレン-α-オレフィン共重合体の計測厚み(cm)、A2はエチレン-α-オレフィン共重合体のベースライン控除後の赤外分光スペクトルにおける1281~1324cm-1の範囲の高さの最大値、A1sは標準品の赤外分光スペクトルにおける1378cm-1のベースラインからの高さ、ρsは標準品の密度(g/cm3)、tsは標準品の計測厚み(cm)、A2sは標準品のベースライン控除後の赤外分光スペクトルにおける1281~1324cm-1の範囲の高さの最大値である。
【0177】
(5)塊率(単位:wtppm)
気相重合装置から抜出した重合体パウダーを篩目10mmの篩に通し、篩を通過した重合体量に対する篩上に残存した重合体量の質量割合として求めた。なお、比較例2-2については、運転が困難であったため、塊率を求めることができなかった。
【0178】
(6)飛散率(単位:wtppm)
気相重合装置を循環するガスに同伴して装置塔頂部より飛散した重合体粒子を、固気分離装置を用いて回収し、回収した粒子量の、前記(5)における篩を通過した重合体量に対する質量割合を飛散率として算出した。なお、比較例2-2については、運転が困難であったため、飛散率を求めることができなかった。
【0179】
(7)運転評価
運転評価は、下記指標に基づき行った。
○:塊率および飛散率が比較的低く、安定的に運転が可能であった。
レベル指示振れ:差圧計を用いて測定された槽内流動層のレベル指示が乱れ、運転継続が困難であった。
塊増加:塊率が増加した。
飛散過多:飛散率が過多となった。
【0180】
[実施例2-1]
上記[実施例1-1](2)で得た予備重合触媒成分の存在下、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1-ヘキセンとの共重合を実施し、LLDPE12のパウダーを得た。重合条件としては、重合温度を84℃;重合圧力を2.0MPaG;気相のエチレン濃度を87.3mol%;水素濃度を0.8mol%;ヘキセン濃度を2.1mol%;ヘキサン濃度を0.3mol%;窒素濃度を9.5mol%に保持した。上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウム、およびトリエチルアミンを連続的に供給し、流動床の総パウダー質量80kgを一定に維持した。LLDPE12に対するトリイソブチルアルミニウムの量(X/PE)を0.37mmol/kgとした。トリイソブチルアルミニウムに対するトリエチルアミンのモル比(Z/X)を3%とした。平均滞留時間は3.9hrであった。得られたLLDPE12パウダーの密度は904kg/m3、短鎖分岐数は27.4であった。また、塊率は92wtppm、飛散率は118wtppmであった。
【0181】
[実施例2-2~2-8]
表3に示した重合条件について変更した以外は、実施例2-1と同様の条件で実施し、LLDPE13~19のペレットをそれぞれ得た。LLDPEに対するトリイソブチルアルミニウムの量(X/PE)、トリイソブチルアルミニウムに対するトリエチルアミンのモル比(Z/X)、平均滞留時間、得られたLLDPEパウダーの密度、短鎖分岐数、塊率、および、飛散率をそれぞれ表3に示す。
【0182】
[比較例2-1~2-6]
表3に示した重合条件について変更した以外は、実施例2-1と同様の条件で実施し、LLDPE20~25のペレットをそれぞれ得た。LLDPEに対するトリイソブチルアルミニウムの量(X/PE)、トリイソブチルアルミニウムに対するトリエチルアミンのモル比(Z/X)、平均滞留時間、得られたLLDPEパウダーの密度、短鎖分岐数、塊率、および、飛散率をそれぞれ表3に示す。
【0183】
【0184】
表3の結果から分かるように、本発明の構成要件をすべて満たす実施例2-1~2-8は、塊率および飛散率が比較的低く、流動不良を比較的生じにくいことから、安定的に運転が可能であった。
本発明のエチレン-α-オレフィン共重合体は、適切な押出加工性を維持しながら、フィラーの受容性を高くできる。したがって、本発明のエチレン-α-オレフィン共重合体は、シート、容器、電線、ケーブル等の絶縁体、シース、太陽電池封止材等の、種々の産業の分野で利用できる。