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特開2024-94263(メタ)アクリル共重合体およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094263
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル共重合体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/18 20060101AFI20240702BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20240702BHJP
   C08F 290/12 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C08F220/18
C08F8/00
C08F290/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023203958
(22)【出願日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2022210559
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恵
(72)【発明者】
【氏名】内田 一幸
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛
【テーマコード(参考)】
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4J100AJ02Q
4J100AL03R
4J100AL04R
4J100AL05R
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AL08R
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4J100BC75P
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4J127BG31X
4J127CB341
4J127CB371
4J127CB372
4J127CC092
4J127CC111
4J127CC112
4J127CC131
4J127CC171
4J127FA14
(57)【要約】
【課題】接着剤層形成用組成物に用いたときに、355nmのレーザー照射による被着体の剥離が容易であり、かつ接着前のパターニング性も良好にすることができる(メタ)アクリル共重合体を提供すること。
【解決手段】紫外線吸収基と、重合性不飽和基と、カルボキシル基とを有する(メタ)アクリル共重合体。前記(メタ)アクリル共重合体は、全構造単位に対する下記構造単位(AA)の割合が0.1モル%以上90モル%以下であり、かつ、少なくとも下記構造単位(AB)および下記構造単位(AC)を含むか、または少なくとも下記構造単位(AD)を含む。
(AA)紫外線吸収基を有する構造単位
(AB)重合性不飽和基を有し、カルボキシル基を有さない構造単位
(AC)カルボキシル基を有し、重合性不飽和基を有さない構造単位
(AD)重合性不飽和基とを有する構造単位
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線吸収基と、重合性不飽和基と、カルボキシル基とを有する(メタ)アクリル共重合体であって、全構造単位に対する下記構造単位(AA)の割合が0.1モル%以上90モル%以下であり、かつ、少なくとも下記構造単位(AB)および下記構造単位(AC)を含むか、または少なくとも下記構造単位(AD)を含む、(メタ)アクリル共重合体。
(AA)紫外線吸収基を有する構造単位
(AB)重合性不飽和基を有し、カルボキシル基を有さない構造単位
(AC)カルボキシル基を有し、重合性不飽和基を有さない構造単位
(AD)重合性不飽和基とカルボキシル基とを有する構造単位
【請求項2】
前記構造単位(AB)または前記構造単位(AD)は、前記重合性不飽和基がウレタン結合を介して側鎖にグラフトされている、
請求項1に記載の(メタ)アクリル共重合体。
【請求項3】
前記構造単位(AB)または前記構造単位(AD)は、前記重合性不飽和基がエポキシアクリレート残基を介して側鎖にグラフトされている、
請求項1に記載の(メタ)アクリル共重合体。
【請求項4】
前記構造単位(AC)は、前記カルボキシル基がエステル結合を介して側鎖にグラフトされている、
請求項3に記載の(メタ)アクリル共重合体。
【請求項5】
前記構造単位(AD)は、前記カルボキシル基が前記エポキシアクリレート残基を介して側鎖にグラフトされている、
請求項3に記載の(メタ)アクリル共重合体。
【請求項6】
重量平均分子量が1000以上100000以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル共重合体。
【請求項7】
酸価が20mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル共重合体。
【請求項8】
前記構造単位(AB)および前記構造単位(AC)、ならびに下記構造単位(AE)を含み、
(AE)紫外線吸収基、重合性不飽和基およびカルボキシル基のいずれも有さない構造単位
全構造単位に対する前記構造単位(AA)、前記構造単位(AB)、前記構造単位(AC)および前記構造単位(AE)の割合が、下記割合である、請求項1~4のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル共重合体。
構造単位(AA) 0.1モル%以上90モル%以下
構造単位(AB) 3モル%以上90モル%以下
構造単位(AC) 3モル%以上50モル%以下
構造単位(AE) 0.1モル%以上90モル%以下
【請求項9】
前記構造単位(AA)は、下記一般式(A-1)で示される構造単位であり、
前記構造単位(AB)は、下記一般式(A-2)で示される構造単位であり、
前記構造単位(AC)は、下記一般式(A-3)で示される構造単位であり、
前記構造単位(AE)は、下記一般式(A-4)で示される構造単位である、請求項8に記載の(メタ)アクリル共重合体。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
(一般式(A-1)~一般式(A-4)中、R11~R14およびR19は独立して、水素原子またはメチル基を示す。R15~R18およびR20~R21は独立して、環状構造または芳香環を有してもよく、置換基を有してもよく、エーテル結合を有していてもよく、かつ不飽和結合を有してもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基を示す。m1は0または1であり、m2は0または1であり、m3は0、1または2であり、m4は0、1または2である。R22は、環状構造または芳香環を有してもよく、置換基を有してもよく、かつアルキレンオキサイド変性されていてもよく、かつ1個または2個のヘテロ原子を有してもよい炭素数1以上30以下の炭化水素基を示す。Xは、2級水酸基を有するエポキシアクリレート残基、エステル結合またはウレタン結合を示す。XおよびXは独立して、2級水酸基を有するエポキシアクリレート残基、エステル結合またはウレタン結合を示す。Zは紫外線吸収基を示す。*は、他の構造単位との結合部位を示す。)
【請求項10】
前記構造単位(AB)および前記構造単位(AD)、ならびに下記構造単位(AE)を含み、
(AE)紫外線吸収基、重合性不飽和基およびカルボキシル基のいずれも有さない構造単位
全構造単位に対する前記構造単位(AA)、前記構造単位(AB)、前記構造単位(AD)および前記構造単位(AE)の割合が、下記割合である、請求項1~5のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル共重合体。
構造単位(AA) 0.1モル%以上90モル%以下
構造単位(AB) 0.001モル%以上85モル%以下
構造単位(AD) 5モル%以上50モル%以下
構造単位(AE) 0.001モル%以上94モル%以下
【請求項11】
前記構造単位(AA)は、下記一般式(A-5)で示される構造単位であり、
前記構造単位(AB)は、下記一般式(A-6)で示される構造単位であり、
前記構造単位(AD)は、下記一般式(A-7)で示される構造単位であり、
前記構造単位(AE)は、下記一般式(A-8)で示される構造単位である、請求項10に記載の(メタ)アクリル共重合体。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
(一般式(A-5)~一般式(A-8)中、R31~R34およびR39は独立して、水素原子またはメチル基を示す。R35~R38は独立して、環状構造または芳香環を有してもよく、置換基を有してもよく、エーテル結合を有していてもよく、かつ不飽和結合を有してもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基を示す。m5は0または1であり、m6は0または1である。R40はカルボキシル基を有してもよい、環状構造または芳香環を有してもよく、置換基を有してもよく、エーテル結合を有していてもよく、かつ不飽和結合を有してもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基を示す。R41は、環状構造または芳香環を有してもよく、置換基を有してもよく、かつアルキレンオキサイド変性されていてもよく、かつ1個または2個のヘテロ原子を有してもよい炭素数1以上30以下の炭化水素基を示す。Xは、2級水酸基を有するエポキシアクリレート残基、エステル結合またはウレタン結合を示す。Zは紫外線吸収基を示す。*は、他の構造単位との結合部位を示す。)
【請求項12】
前記構造単位(AA)は、波長355nmのモル吸光係数が3000以上の単量体に由来する構造単位である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル共重合体。
【請求項13】
前記紫外線吸収基は、ベンゾトリアゾール構造またはトリアジン構造を有する官能基である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル共重合体。
【請求項14】
(Aa)(メタ)アクリロイル基と、紫外線吸収基と、を有する単量体と、
(Ac)(メタ)アクリロイル基と、カルボキシル基と、を有する単量体と、
(Ae)(メタ)アクリロイル基を有し、紫外線吸収基、およびカルボキシル基のいずれも有さない単量体と、
(Ax1)(メタ)アクリロイル基と、水酸基と、を有する単量体と、
を共重合させて共重合体を得る工程と、
前記共重合体に(Ay1a)イソシアネート基と重合性不飽和基とを有する単量体を反応させ、前記単量体(Ax1)に由来する水酸基と前記単量体(Ay1a)が有するイソシアネート基との間でウレタン結合を形成させて、前記共重合体に重合性不飽和基をグラフトする工程と、を有する、
(メタ)アクリル共重合体の製造方法。
【請求項15】
(Aa1)(メタ)アクリロイル基と、紫外線吸収基と、を有する単量体と、
(Ae)(メタ)アクリロイル基を有し、紫外線吸収基、およびカルボキシル基のいずれも有さない単量体と、
(Ax3)(メタ)アクリロイル基と、グリシジル基または脂環エポキシ基と、を有する単量体と、
任意成分として
(Ax1)(メタ)アクリロイル基と、水酸基と、を有する単量体と、
を共重合させて共重合体を得る工程と、
前記共重合体に(Ay3)重合性不飽和基と、カルボキシル基と、を有する単量体を反応させて、前記単量体(Ax3)に由来するグリシジル基または脂環エポキシ基と、前記単量体(Ay3)が有するカルボキシル基との反応により、前記共重合体に重合性不飽和基をグラフトする工程と、
前記重合性不飽和基をグラフトされた共重合体と、(Az3)多価カルボン酸またはその無水物とを反応させて、前記単量体(Ax1)に由来する水酸基または前記単量体(Ax3)と前記単量体(Ay3)との反応により生成したエポキシアクリレート残基と、化合物(Az3)が有するカルボキシル基またはカルボン酸無水物基と、の反応により、前記共重合体にカルボキシル基をさらにグラフトする工程と、を有する、
(メタ)アクリル共重合体の製造方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル共重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル機器などの高機能化に伴い、搭載されるフレキシブルディスプレイおよび半導体チップなどの薄型化が進んでいる。しかし、薄型化によって強度が低下したフレキシブルディスプレイおよび半導体チップなどを、従来の自動搬送で搬送することは困難である。
【0003】
そこで、薄型化されたフレキシブルディスプレイおよび半導体チップなどを安全かつ容易に搬送するための方法が検討されている。たとえば、ガラス基板等の光透過性の支持体上に接着剤層を介してフレキシブルディスプレイおよび半導体チップなど被着体を固定した積層体を作成し、この積層体ごと、上記フレキシブルディスプレイおよび半導体チップなどを搬送する方法が検討されている。このとき、上記接着剤層として、光を照射されると変質または分解して接着力が低減する組成物を使用することがある。上記接着剤層を用いると、搬送後に、支持体側から接着剤層に向けて光を照射することにより、被着体を支持体から分離(剥離)して、たとえば他の基板に転写することができる(レーザーリフトオフプロセス、以下単に「LLOプロセス」ともいう。)。
【0004】
LLOプロセスを可能とする接着剤用の組成物として、特許文献1には、9,9’-ジフェニルフルオレン(カルド)構造および不飽和基を有する硬化性樹脂を溶媒に溶解させた組成物が記載されている。特許文献1には、この組成物をガラス支持体上に塗布し、加熱して形成された接着層は、308nmの波長を有するレーザーの照射によって被着体からガラス支持体を容易に剥離することができたと記載されている。また、特許文献1には、ベンゾトリアゾール構造を有する樹脂を溶媒に溶解させた組成物をガラス支持体上に塗布し、加熱して形成された接着層は、355nmの波長を有するレーザーの照射によって被着体からガラス支持体を容易に剥離することができたと記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、上記接着剤用の組成物として、カルド構造および不飽和基を含有する硬化性樹脂と、光重合性モノマーと、光吸収剤(カーボンブラック)と、を有する感光性組成物が記載されている。この感光性組成物は、ガラス支持体上に塗布し、加熱して形成された硬化膜の、被着体への接着性に優れていたと、特許文献2には記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-106486号公報
【特許文献2】特開2018-001604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、LLOプロセスに用いる接着剤の開発は、エネルギーが高く加工性に優れた短波長レーザー(波長248nmおよび266nmなど)による被着体の剥離が可能な組成を中心に検討が進められてきた。しかし、これらの波長のレーザーで加工するためには、短波長領域の透過性が高い石英ガラスやサファイア基板などの、高価な材料からなる支持体を用いる必要がある。そのため、従来のLLOプロセスには、ランニングコストが高くなるという問題があった。そこで、より安価な透明ガラスを使用できるようにするため、より長波長のレーザー(たとえば355nmなど)による被着体の剥離が可能な接着剤層の開発が要求されている。
【0008】
また、本発明者らの知見によれば、接着剤組成物により接着剤層を形成した後、接着の前に、接着剤層にパターニングを施すことで、支持体と被着体を接着させる部分にのみ硬化性組成物による接着剤層を形成することができ、支持体と被着体を分離する際における、被着体の剥離不良や位置ずれを抑制することができる。
【0009】
しかし、従来知られている接着剤組成物は、355nmにおける透過率が高く、レーザー照射による被着体の剥離が困難であったか、あるいはパターニング性がよくなかった。たとえば、特許文献1に記載の組成物は、ベンゾトリアゾール構造を有する樹脂によって335nmのレーザーの吸収効率が高まるのではないかとも期待される。しかし、引用文献1に記載の組成物にアルカリ現像性を付与するためアルカリ可溶性樹脂を配合した場合、アルカリ現像性を確保するためには、上記樹脂の配合量を多くしてベンゾトリアゾール構造を有する樹脂の相対量を減らす必要があり、355nmのレーザーの吸収効率を高めることができなかった。一方で、355nmのレーザーの吸収効率を高めるために上記樹脂の配合量を多くすると、アルカリ可溶性樹脂の配合量が少なくなり、パターニング性が良好にならなかった。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、接着剤層形成用組成物に用いたときに、355nmのレーザー照射による被着体の剥離が容易であり、かつ接着前のパターニング性も良好にすることができる(メタ)アクリル共重合体、および当該(メタ)アクリル共重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、下記[1]~[13]の(メタ)アクリル共重合体に関する。
[1]紫外線吸収基と、重合性不飽和基と、カルボキシル基とを有する(メタ)アクリル共重合体であって、全構造単位に対する下記構造単位(AA)の割合が0.1モル%以上90モル%以下であり、かつ、少なくとも下記構造単位(AB)および下記構造単位(AC)を含むか、または少なくとも下記構造単位(AD)を含む、(メタ)アクリル共重合体。
(AA)紫外線吸収基を有する構造単位
(AB)重合性不飽和基を有し、カルボキシル基を有さない構造単位
(AC)カルボキシル基を有し、重合性不飽和基を有さない構造単位
(AD)重合性不飽和基とカルボキシル基とを有する構造単位
[2]前記構造単位(AB)または前記構造単位(AD)は、前記重合性不飽和基がウレタン結合を介して側鎖にグラフトされている、
[1]に記載の(メタ)アクリル共重合体。
[3]前記構造単位(AB)または前記構造単位(AD)は、前記重合性不飽和基がエポキシアクリレート残基を介して側鎖にグラフトされている、
[1]または[2]に記載の(メタ)アクリル共重合体。
[4]前記構造単位(AC)は、前記カルボキシル基がエステル結合を介して側鎖にグラフトされている、
[1]~[3]のいずれかに記載の(メタ)アクリル共重合体。
[5]前記構造単位(AD)は、前記カルボキシル基が前記エポキシアクリレート残基を介して側鎖にグラフトされている、
[1]~[4]のいずれかに記載の(メタ)アクリル共重合体。
[6]重量平均分子量が1000以上100000以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の(メタ)アクリル共重合体。
[7]酸価が20mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の(メタ)アクリル共重合体。
[8]前記構造単位(AB)および前記構造単位(AC)、ならびに下記構造単位(AE)を含み、
(AE)紫外線吸収基、重合性不飽和基およびカルボキシル基のいずれも有さない構造単位
全構造単位に対する前記構造単位(AA)、前記構造単位(AB)、前記構造単位(AC)および前記構造単位(AE)の割合が、下記割合である、[1]~[7]のいずれかに記載の(メタ)アクリル共重合体。
構造単位(AA) 0.1モル%以上90モル%以下
構造単位(AB) 3モル%以上90モル%以下
構造単位(AC) 3モル%以上50モル%以下
構造単位(AE) 0.1モル%以上90モル%以下
[9]前記構造単位(AA)は、下記一般式(A-1)で示される構造単位であり、
前記構造単位(AB)は、下記一般式(A-2)で示される構造単位であり、
前記構造単位(AC)は、下記一般式(A-3)で示される構造単位であり、
前記構造単位(AE)は、下記一般式(A-4)で示される構造単位である、[1]~[8]のいずれかに記載の(メタ)アクリル共重合体。
【0012】
【化1】
【0013】
【化2】
【0014】
【化3】
【0015】
【化4】
【0016】
(一般式(A-1)~一般式(A-4)中、R11~R14およびR19は独立して、水素原子またはメチル基を示す。R15~R18およびR20~R21は独立して、環状構造または芳香環を有してもよく、置換基を有してもよく、エーテル結合を有していてもよく、かつ不飽和結合を有してもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基を示す。m1は0または1であり、m2は0または1であり、m3は0、1または2であり、m4は0、1または2である。R22は、環状構造または芳香環を有してもよく、置換基を有してもよく、かつアルキレンオキサイド変性されていてもよく、かつ1個または2個のヘテロ原子を有してもよい炭素数1以上30以下の炭化水素基を示す。Xは、2級水酸基を有するエポキシアクリレート残基、エステル結合またはウレタン結合を示す。XおよびXは独立して、2級水酸基を有するエポキシアクリレート残基、エステル結合またはウレタン結合を示す。Zは紫外線吸収基を示す。*は、他の構造単位との結合部位を示す。)
[10]前記構造単位(AB)および前記構造単位(AD)、ならびに下記構造単位(AE)を含み、
(AE)紫外線吸収基、重合性不飽和基およびカルボキシル基のいずれも有さない構造単位
全構造単位に対する前記構造単位(AA)、前記構造単位(AB)、前記構造単位(AD)および前記構造単位(AE)の割合が、下記割合である、[1]~[7]のいずれかに記載の(メタ)アクリル共重合体。
構造単位(AA) 0.1モル%以上90モル%以下
構造単位(AB) 0.001モル%以上85モル%以下
構造単位(AD) 5モル%以上50モル%以下
構造単位(AE) 0.001モル%以上94モル%以下
[11]前記構造単位(AA)は、下記一般式(A-5)で示される構造単位であり、
前記構造単位(AB)は、下記一般式(A-6)で示される構造単位であり、
前記構造単位(AD)は、下記一般式(A-7)で示される構造単位であり、
前記構造単位(AE)は、下記一般式(A-8)で示される構造単位である、[1]~[7]および[10]のいずれかに記載の(メタ)アクリル共重合体。
【0017】
【化5】
【0018】
【化6】
【0019】
【化7】
【0020】
【化8】
【0021】
(一般式(A-5)~一般式(A-8)中、R31~R34およびR39は独立して、水素原子またはメチル基を示す。R35~R38は独立して、環状構造または芳香環を有してもよく、置換基を有してもよく、エーテル結合を有していてもよく、かつ不飽和結合を有してもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基を示す。m5は0または1であり、m6は0または1である。R40はカルボキシル基を有してもよい、環状構造または芳香環を有してもよく、置換基を有してもよく、エーテル結合を有していてもよく、かつ不飽和結合を有してもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基を示す。R41は、環状構造または芳香環を有してもよく、置換基を有してもよく、かつアルキレンオキサイド変性されていてもよく、かつ1個または2個のヘテロ原子を有してもよい炭素数1以上30以下の炭化水素基を示す。Xは、2級水酸基を有するエポキシアクリレート残基、エステル結合またはウレタン結合を示す。Zは紫外線吸収基を示す。*は、他の構造単位との結合部位を示す。)
[12]前記構造単位(AA)は、波長355nmのモル吸光係数が3000以上の単量体に由来する構造単位である、
[1]~[11]のいずれかに記載の(メタ)アクリル共重合体。
[13]前記紫外線吸収基は、ベンゾトリアゾール構造またはトリアジン構造を有する官能基である、
[1]~[12]のいずれかに記載の(メタ)アクリル共重合体。
【0022】
上記課題を解決するための本発明の別の態様は、下記[14]~[15]の(メタ)アクリル共重合体の製造方法に関する。
[14](Aa)(メタ)アクリロイル基と、紫外線吸収基と、を有する単量体と、
(Ac)(メタ)アクリロイル基と、カルボキシル基と、を有する単量体と、
(Ae)(メタ)アクリロイル基を有し、紫外線吸収基、およびカルボキシル基のいずれも有さない単量体と、
(Ax1)(メタ)アクリロイル基と、水酸基と、を有する単量体と、
を共重合させて共重合体を得る工程と、
前記共重合体に(Ay1a)イソシアネート基と重合性不飽和基とを有する単量体を反応させ、前記単量体(Ax1)に由来する水酸基と前記単量体(Ay1a)が有するイソシアネート基との間でウレタン結合を形成させて、前記共重合体に重合性不飽和基をグラフトする工程と、を有する、
(メタ)アクリル共重合体の製造方法。
[15](Aa1)(メタ)アクリロイル基と、紫外線吸収基と、を有する単量体と、
(Ae)(メタ)アクリロイル基を有し、紫外線吸収基、およびカルボキシル基のいずれも有さない単量体と、
(Ax3)(メタ)アクリロイル基と、グリシジル基または脂環エポキシ基と、を有する単量体と、
任意成分として
(Ax1)(メタ)アクリロイル基と、水酸基と、を有する単量体と、
を共重合させて共重合体を得る工程と、
前記共重合体に(Ay3)重合性不飽和基と、カルボキシル基と、を有する単量体を反応させて、前記単量体(Ax3)に由来するグリシジル基または脂環エポキシ基と、前記単量体(Ay3)が有するカルボキシル基との反応により、前記共重合体に重合性不飽和基をグラフトする工程と、
前記重合性不飽和基をグラフトされた共重合体と、(Az3)多価カルボン酸またはその無水物とを反応させて、前記単量体(Ax1)に由来する水酸基または前記単量体(Ax3)と前記単量体(Ay3)との反応により生成したエポキシアクリレート残基と、化合物(Az3)が有するカルボキシル基またはカルボン酸無水物基と、の反応により、前記共重合体にカルボキシル基をさらにグラフトする工程と、を有する、
(メタ)アクリル共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、接着剤層形成用組成物に用いたときに、355nmのレーザー照射による被着体の剥離が容易であり、かつ接着前のパターニング性も良好にすることができる(メタ)アクリル共重合体、および当該(メタ)アクリル共重合体の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、各成分の含有量について、小数第一位が0であるときは、小数点以下の表記を省略することがある。また、これ以降に例示する化合物または官能基もしくは構造は、特に言及されない限り、例示されたもののうち1種類のみを用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0025】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよびメタクリルの総称であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基およびメタクリロイル基の総称であり、これらの一方または両方を意味する。
【0026】
本発明の一実施形態は、紫外線吸収基と、重合性不飽和基と、カルボキシル基とを有する(メタ)アクリル共重合体に関する。上記(メタ)アクリル共重合体は、分子中に紫外線吸収基、重合性不飽和基およびアルカリ可溶性基であるカルボキシル基を有する。そして、上記(メタ)アクリル共重合体によれば、材料となるモノマー量の調整等により、共重合体中のこれらの官能基の量を調整することで、組成物中におけるこれらの官能基の量を容易に調整可能である。そのため、上記(メタ)アクリル共重合体は、組成物中のこれらの官能基の量の調整を容易とし、かつ、他の官能基の量を減らさずに1の官能基の量を増やすこと等を可能とするため、組成物において各官能基の量が取り得る範囲を拡張することができる。たとえば、上記(メタ)アクリル共重合体によれば、組成物中の(メタ)アクリル共重合体の量を増やすことにより、組成物中の紫外線吸収基の量とカルボキシル基の量とをいずれも増やすことも可能である。
【0027】
上記(メタ)アクリル共重合体は、異なる単量体に由来する以下の構造単位(AA)~(AE)のうちいずれかまたは全てが組み合わされてなる。そして、上記(メタ)アクリル共重合体は、これらのうち少なくとも構造単位(AA)、構造単位(AB)および構造単位(AC)を含むか、または少なくとも構造単位(AA)および構造単位(AD)を含むものである。
(AA)紫外線吸収基を有する構造単位
(AB)重合性不飽和基を有し、カルボキシル基を有さない構造単位
(AC)カルボキシル基を有し、重合性不飽和基を有さない構造単位
(AD)重合性不飽和基とカルボキシル基とを有する構造単位
(AE)紫外線吸収基、重合性不飽和基およびカルボキシル基のいずれも有さない構造単位
【0028】
構造単位(AA)は、紫外線吸収基を有する構造単位である。構造単位(AA)は、上記紫外線吸収基を(メタ)アクリル共重合体の主鎖に有してもよく、側鎖に有してもよいが、(メタ)アクリル共重合体による製造の容易さの観点からは、側鎖に有することが好ましい。
【0029】
なお、(メタ)アクリル共重合体の紫外線吸収能を高める観点からは、構造単位(AA)は、波長355nmのモル吸光係数が3000以上の単量体に由来する構造単位であることが好ましい。同様の観点から、構造単位(AA)は、波長355nmのモル吸光係数が3000以上100000以下の単量体に由来する構造単位であることがより好ましく、4000以上90000以下の単量体に由来する構造単位であることがさらに好ましく、5000以上80000以下の単量体に由来する構造単位であることが特に好ましい。
【0030】
上記紫外線吸収基は、ベンゾトリアゾール構造、ベンゼン環に含まれる水素原子の一部が水酸基で置換されたベンゾフェノン構造(以下、単に「置換ベンゾフェノン構造」ともいう。)、トリアジン構造、サリチル酸構造、ベンゾエート構造、桂皮酸誘導体構造、ジフェニルスルホキシド構造、ジフェニルスルホン構造、ジフェニル構造、ジフェニルアミン構造、ナフタレン誘導体構造、アントラセンおよびその誘導体に基づく構造、ジナフタレン構造を有する構造、およびフェナントロリン構造を有する構造などを有する官能基が含まれる。これらのうち、355nmの紫外線を効率よく吸収することから、ベンゾトリアゾール構造、置換ベンゾフェノン構造またはトリアジン構造を有する官能基が好ましく、ベンゾトリアゾール構造またはトリアジン構造を有する官能基がより好ましく、ベンゾトリアゾール構造(ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール構造)を有する官能基がより好ましい。
【0031】
ベンゾトリアゾール構造を有する官能基の例には、2-(2’-ヒドロキシ-フェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-{2’-ヒドロキシ-3’-(3’’,4’’,5’’,6’’-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、C7-C9-アルキル-3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオンエーテルなどの化合物に由来する構造を含む官能基が含まれる。
【0032】
置換ベンゾフェノン構造を有する官能基の例には、4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノントリヒドレート、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシベンゾフェノン、ナトリウム2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、4-ドデシロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-クロロ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシドデシルベンゾフェノンなどの化合物に由来する構造を含む官能基が含まれる。
【0033】
トリアジン構造を有する官能基の例には、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソオクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジンン、2-[4((2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)-オキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンン、2-[4-((2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)-オキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンなどの化合物に由来する構造を含む官能基が含まれる。
【0034】
なお、構造単位(AA)は、重合性不飽和基を有さないことが好ましい。また、構造単位(AA)は、カルボキシル基を有さないことが好ましい。
【0035】
構造単位(AB)は、重合性不飽和基を有する構造単位である。ただし、本明細書においては、重合性不飽和基およびカルボキシル基の両方を有する構造単位は、構造単位(AD)であり、構造単位(AB)には含まれない。
【0036】
上記重合性不飽和基の例には、ビニル基、アリル基および(メタ)アクリロイル基などが含まれる。これらのうち、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0037】
上記重合性不飽和基は、構造単位(AB)における側鎖にグラフトされていることが好ましい。言い換えると、上記重合性不飽和基は、構造単位(AB)における側鎖に、グラフト時に生じる連結基または連結構造を介して結合されていることが好ましい。上記連結基または連結構造の例には、エステル結合、ウレタン結合、およびエポキシアクリレート残基などが含まれる。これらのうち、グラフトが容易であることから、上記重合性不飽和基は、ウレタン結合またはエポキシアクリレート残基を介して側鎖にグラフトされていることが好ましい。(メタ)アクリル共重合体と、他のアルカリ可溶性樹脂(例えばフルオレン骨格を有するアルカリ可溶性樹脂)との相溶性をより高める観点からは、上記重合性不飽和基は、ウレタン結合を介して側鎖にグラフトされていることが好ましく、現像速度をより調整しやすくする観点からは、上記重合性不飽和基は、エポキシアクリレート残基を介して側鎖にグラフトされていることが好ましい。
【0038】
なお、構造単位(AB)は、紫外線吸収基を有さないことが好ましい。
【0039】
構造単位(AC)は、カルボキシル基を有する構造単位である。ただし、本明細書においては、カルボキシル基および重合性不飽和基の量方を有する構造単位は、構造単位(AD)であり、構造単位(AC)には含まれない。
【0040】
上記カルボキシル基は、構造単位(AC)の材料である単量体(たとえば(メタ)アクリル酸など)に由来する官能基であってもよいし、構造単位(AC)における側鎖にグラフトされていてもよい。言い換えると、上記カルボキシル基は、構造単位(AC)における側鎖に、グラフト時に生じる連結基または連結構造を介して結合されていてもよい。現像速度をより調整しやすくする観点からは、上記カルボキシル基は、構造単位(AC)における側鎖にグラフトされていることが好ましい。上記連結基または連結構造の例には、エステル結合、ウレタン結合、およびエポキシアクリレート残基などが含まれる。これらのうち、グラフトを容易に行う観点からは、上記カルボキシル基は、ウレタン結合またはエポキシアクリレート残基を介して側鎖にグラフトされていることが好ましく、現像速度をより速くする観点からは、上記カルボキシル基は、エステル結合を介して側鎖にグラフトされていることが好ましい。
【0041】
なお、構造単位(AC)は、紫外線吸収基を有さないことが好ましい。
【0042】
構造単位(AD)は、重合性不飽和基とカルボキシル基とを有する構造単位である。上記重合性不飽和基は、構造単位(AB)について説明した官能基である。
【0043】
上記重合性不飽和基およびカルボキシル基は、いずれも、構造単位(AD)における側鎖にグラフトされていることが好ましい。言い換えると、上記重合性不飽和基は、構造単位(AD)における側鎖に、グラフト時に生じる連結基または連結構造を介して結合されていることが好ましい。上記連結基または連結構造の例には、エステル結合、ウレタン結合、およびエポキシアクリレート残基などが含まれる。たとえば、グリシジル基または脂環エポキシ基を有する単量体の共重合により構造単位(AD)の骨格を形成した後、重合性不飽和基およびカルボキシル基を有する単量体を反応させて、エポキシアクリレートの形成により重合性不飽和基をグラフトする。さらに、エポキシアクリレートの形成により生じた水酸基に、多価カルボン酸またはその無水物を反応させてカルボキシル基をグラフトすることで、構造単位(AD)を形成することができる。このようにして形成した構造単位(AD)は、上記重合性不飽和基およびカルボキシル基が、エポキシアクリレート残基を介して側鎖にグラフトされており、なおかつ上記カルボキシル基が、エステル結合を介して側鎖にグラフトされている。エステル結合およびウレタン結合によるグラフトも、公知の方法で行うことができる。
【0044】
構造単位(AE)は、分子量の調整や、紫外線吸収基、重合性不飽和基およびカルボキシル基の各官能基の量の調整等のために任意に導入される構造単位である。
【0045】
構造単位(AE)は、上記各官能基を有さない単量体に由来する構造単位であればよい。なお、(メタ)アクリル共重合体の物性を調整するため、上記各官能基とは異なる官能基をグラフトした構造単位であってもよい。
【0046】
なお、上述の各構造単位は、アルキレンオキサイド変性、またはラクトン変性されていてもよい。
【0047】
(メタ)アクリル共重合体は、構造単位(AA)、構造単位(AB)および構造単位(AC)を必須の構造単位として、構造単位(AD)および構造単位(AE)を任意に含む共重合体であってもよいし、構造単位(AA)および構造単位(AD)を必須の構造単位として、構造単位(AB)、構造単位(AC)および構造単位(AE)を任意に含む共重合体であってもよい。構造単位(AA)、構造単位(AB)および構造単位(AC)を必須の構造単位とする(メタ)アクリル共重合体は、構造単位(AD)を導入するための工程が不要であるため、合成が容易である。構造単位(AA)および構造単位(AD)を必須の構造単位とする(メタ)アクリル共重合体は、構造単位(AD)による各官能基の付与量の調整が容易であり、これによる現像速度の調整等が容易である。
【0048】
(メタ)アクリル共重合体は、重量平均分子量(Mw)が1000以上100000以下であることが好ましく、5000以上70000以下であることがより好ましく、10000以上50000以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量(Mw)が1000以上であると、接着剤層形成用組成物として用いたときの密着性を向上させることができる。また、重量平均分子量(Mw)が100000以下であると、塗布に好適な硬化性組成物の溶液粘度に調整しやすく、短時間での塗布が可能であり、かつ接着性が高まりやすい。(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)測定(HLC-8220GPC、東ソー株式会社製)によるポリスチレン換算値とすることができる。
【0049】
また、(メタ)アクリル共重合体は、全構造単位100モル%に対する構造単位(AA)の割合が0.1モル%以上90モル%以下であることが好ましく、0.1モル%以上89モル%以下であることがより好ましく、1モル%以上85モル%以下であることがさらに好ましく、5モル%以上80モル%以下であることが特に好ましい。構造単位(AA)の割合を0.1モル%以上とすることで、硬化物に紫外線を吸収させやすくして、355nmのレーザーの照射による硬化物の変質または分解をより効果的に促進することができる。構造単位(A)の割合を90モル%以下とすることで、(メタ)アクリル共重合体に含まれる紫外線吸収基以外の官能基の量を多くして、接着剤層の硬度やアルカリ可溶性等を十分に高めることができる。
【0050】
(メタ)アクリル共重合体は、酸価が20mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましく、30mgKOH/g以上180mgKOH/g以下であることがより好ましく、50mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。酸価を20mgKOH/g以上とすることで、アルカリ現像時に残渣を残りにくくすることができる。酸価を200mgKOH/g以下とすることで、組成物中へのアルカリ現像液の浸透を適度に調整し、アルカリ現像液の急速な浸透による剥離現像を抑制することができる。酸価は、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して求めることができる。
【0051】
また、同様の観点から、(メタ)アクリル共重合体は、全構造単位100モル%に対するカルボキシル基を有する構造単位の割合(構造単位(AC)および構造単位(AD)の合計量の割合)が3モル%以上50モル%以下であることが好ましく、5モル%以上45モル%以下であることがより好ましく、7モル%以上40モル%以下であることがさらに好ましい。
【0052】
(メタ)アクリル共重合体は、アクリル当量が300g/eq以上3000g/eq以下であることが好ましく、350g/eq以上2500g/eq以下であることがより好ましく、400g/eq以上2000g/eq以下であることがさらに好ましい。アクリル当量を300g/eq以上とすることで、紫外線吸収基およびカルボキシル基を同一の分子内に組み込みやすくなる。アクリル当量を3000g/eq以下とすることで、低露光量においても感度が担保でき、良好な現像パターンを形成することができる。
【0053】
また、同様の観点から、(メタ)アクリル共重合体は、全構造単位100モル%に対する重合性不飽和基を有する構造単位の割合(構造単位(AB)および構造単位(AD)の合計量の割合)が3モル%以上90モル%以下であることが好ましく、5モル%以上85モル%以下であることがより好ましく、7モル%以上80モル%以下であることがさらに好ましい。
【0054】
(メタ)アクリル共重合体の紫外線吸収基の当量、酸価、アクリル当量および各構造単位の比率は、上述した各単量体を共重合させる際の共重合比により調整することができる。
【0055】
たとえば、(メタ)アクリル共重合体は、下記の構造単位を下記割合で有する共重合体とすることができる。なお、下記割合は、(メタ)アクリル共重合体が有する全構造単位100モル%に対する、それぞれの構造単位の割合(単位はモル%)である。
【0056】
構造単位(AA) 0.1モル%以上80モル%以下、
構造単位(AB) 5モル%以上70モル%以下、
構造単位(AC) 3モル%以上50モル%以下、
好ましくは、
構造単位(AA) 6モル%以上70モル%以下、
構造単位(AB) 10モル%以上60モル%以下、
構造単位(AC) 5モル%以上45モル%以下。
【0057】
構造単位(AA) 0.1モル%以上80モル%以下、
構造単位(AB) 0.001モル%以上70モル%以下、
構造単位(AD) 3モル%以上50モル%以下、
好ましくは、
構造単位(AA) 6モル%以上70モル%以下、
構造単位(AB) 0.1モル%以上60モル%以下、
構造単位(AD) 5モル%以上45モル%以下、
より好ましくは、
構造単位(AA) 16モル%以上60モル%以下、
構造単位(AB) 1モル%以上50モル%以下、
構造単位(AD) 7モル%以上40モル%以下。
【0058】
構造単位(AA) 50モル%以上90モル%以下、
構造単位(AD) 10モル%以上50モル%以下、
好ましくは、
構造単位(AA) 55モル%以上80モル%以下、
構造単位(AD) 20モル%以上45モル%以下。
【0059】
構造単位(AA) 0.1モル%以上90モル%以下、
構造単位(AB) 3モル%以上89モル%以下、
構造単位(AC) 3モル%以上49モル%以下、
構造単位(AD) 0.001モル%以上47モル%以下、
好ましくは、
構造単位(AA) 6モル%以上80モル%以下、
構造単位(AB) 5モル%以上80モル%以下、
構造単位(AC) 5モル%以上44モル%以下、
構造単位(AD) 0.001モル%以上40モル%以下、
より好ましくは、
構造単位(AA) 16モル%以上70モル%以下、
構造単位(AB) 7モル%以上70モル%以下、
構造単位(AC) 7モル%以上39モル%以下、
構造単位(AD) 0.001モル%以上33モル%以下。
【0060】
構造単位(AA) 0.1モル%以上90モル%以下、
構造単位(AB) 3モル%以上90モル%以下、
構造単位(AC) 3モル%以上50モル%以下、
構造単位(AE) 0.1モル%以上90モル%以下、
好ましくは、
構造単位(AA) 6モル%以上80モル%以下、
構造単位(AB) 5モル%以上80モル%以下、
構造単位(AC) 5モル%以上45モル%以下、
構造単位(AE) 0.1モル%以上80モル%以下、
より好ましくは、
構造単位(AA) 16モル%以上70モル%以下、
構造単位(AB) 7モル%以上70モル%以下、
構造単位(AC) 7モル%以上40モル%以下、
構造単位(AE) 0.1モル%以上70モル%以下。
【0061】
構造単位(AA) 0.1モル%以上80モル%以下、
構造単位(AD) 3モル%以上50モル%以下、
構造単位(AE) 0.1モル%以上80モル%以下、
好ましくは、
構造単位(AA) 6モル%以上70モル%以下、
構造単位(AD) 5モル%以上45モル%以下、
構造単位(AE) 1モル%以上70モル%以下。
【0062】
構造単位(AA) 0.1モル%以上90モル%以下、
構造単位(AB) 0.001モル%以上85モル%以下、
構造単位(AD) 3モル%以上50モル%以下、
構造単位(AE) 0.1モル%以上95モル%以下、
好ましくは、
構造単位(AA) 6モル%以上80モル%以下、
構造単位(AB) 0.001モル%以上80モル%以下、
構造単位(AD) 5モル%以上45モル%以下、
構造単位(AE) 0.1モル%以上85モル%以下、
より好ましくは、
構造単位(AA) 16モル%以上70モル%以下、
構造単位(AB) 0.001モル%以上70モル%以下、
構造単位(AD) 7モル%以上40モル%以下、
構造単位(AE) 1モル%以上70モル%以下。
【0063】
構造単位(AA) 0.1モル%以上90モル%以下、
構造単位(AC) 0.1モル%以上47モル%以下、
構造単位(AD) 3モル%以上49モル%以下、
構造単位(AE) 0.1モル%以上90モル%以下、
好ましくは、
構造単位(AA) 6モル%以上80モル%以下、
構造単位(AC) 1モル%以上40モル%以下、
構造単位(AD) 5モル%以上39モル%以下、
構造単位(AE) 0.1モル%以上80モル%以下。
【0064】
構造単位(AA) 0.1モル%以上90モル%以下、
構造単位(AB) 3モル%以上90モル%以下、
構造単位(AC) 3モル%以上49モル%以下、
構造単位(AD) 0.001モル%以上47モル%以下、
構造単位(AE) 0.1モル%以上90モル%以下、
好ましくは、
構造単位(AA) 6モル%以上80モル%以下、
構造単位(AB) 5モル%以上80モル%以下、
構造単位(AC) 5モル%以上44モル%以下、
構造単位(AD) 0.001モル%以上40モル%以下、
構造単位(AE) 0.1モル%以上80モル%以下、
より好ましくは、
構造単位(AA) 16モル%以上70モル%以下、
構造単位(AB) 7モル%以上70モル%以下、
構造単位(AC) 7モル%以上39モル%以下、
構造単位(AD) 0.001モル%以上33モル%以下、
構造単位(AE) 0.1モル%以上70モル%以下。
【0065】
(メタ)アクリル共重合体の具体例には、構造単位(AA)が下記一般式(A-1)で示される構造単位であり、構造単位(AB)が下記一般式(A-2)で示される構造単位であり、構造単位(AC)が下記一般式(A-3)で示される構造単位であり、構造単位(AE)が下記一般式(A-4)で示される構造単位である共重合体が含まれる。
【0066】
【化9】
【0067】
【化10】
【0068】
【化11】
【0069】
【化12】
【0070】
一般式(A-1)~一般式(A-4)中、R11~R14およびR19は、水素原子またはメチル基を示す。これらのうち、メチル基が好ましい。
【0071】
15~R18およびR20~R21は、環状構造または芳香環を有してもよく、置換基を有してもよく、エーテル結合を有していてもよく、かつ不飽和結合を有してもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基を示す。
【0072】
上記炭素数1以上10以下の炭化水素基の例には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基などを含む、直鎖状または分岐鎖を有する2価のアルキレン基、シクロヘキシレン基、メチルシクロヘキシレン基、エチルシクロヘキシレン基、ジメチルシクロヘキシレン基、ジエチルシクロヘキシレン基、メチルエチルシクロヘキシレン基、プロピルシクロヘキシレン基、およびメチルプロピルシクロヘキシレン基などを含む脂環式構造を有する2価の炭化水素基、フェニレン基、メチルフェニレン基、エチルフェニレン基、ジメチルフェニレン基、メチルエチルフェニレン基、およびナフチレン基などを含む芳香族を有する2価の炭化水素基などが含まれる。これらのうち、メチレン基およびエチレン基が好ましくR15~R16はエチレン基がより好ましく、R17~R18はメチレン基がより好ましい。また、上記置換基の例には、メチル基およびメトキシ基などが含まれる。
【0073】
m1およびm2は0または1であり、0であることが好ましい。m3およびm4は0、1または2であり、0であることが好ましい。
【0074】
22は、環状構造または芳香環を有してもよく、置換基を有してもよく、かつアルキレンオキサイド変性されていてもよく、かつ1個または2個のヘテロ原子を有してもよい炭素数1以上30以下の炭化水素基を示す。R22は、直鎖状または分岐鎖を有する炭素数1以上10以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数3以上30以下のシクロアルキル基、または置換基を有してもよい炭素数6以上30以下のアリール基であることが好ましい。
【0075】
炭素数1以上10以下のアルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニルン基、およびデシル基などが含まれる。炭素数3以上30以下のシクロアルキル基の例には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、およびアダマンチル基などが含まれる。炭素数6以上30以下のアリール基の例には、フェニル基、ビフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、9-アンスリル基、9-フェナントリル基、1-ピレニル基、5-ナフタセニル基、1-インデニル基、2-アズレニル基、9-フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、o-、m-、およびp-トリル基、キシリル基、o-、m-、およびp-クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、およびピラントレニル基などが含まれる。これらのうち、メチル基およびエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。また、上記置換基の例には、メチル基およびメトキシ基などが含まれる。
【0076】
は、2級水酸基を有するエポキシアクリレート残基、エステル結合、またはウレタン結合を示す。これらのうち、エステル結合およびウレタン結合が好ましく、エステル結合がより好ましい。
【0077】
およびXは独立して、2級水酸基を有するエポキシアクリレート残基、エステル結合またはウレタン結合を示す。これらのうち、ウレタン結合が好ましい。
【0078】
~Xは、互いに異なる結合または構造であることが好ましい。
【0079】
Zは紫外線吸収基を示す。上記紫外線吸収基は、構造単位(AA)が有する紫外線吸収基として挙げた構造を有する官能基であればよい。
【0080】
*は、他の構造単位との結合部位を示す。
【0081】
(一般式(A-1)で示される構造単位のモル割合):(一般式(A-2)で示される構造単位のモル割合):(一般式(A-3)で示される構造単位のモル割合):(一般式(A-4)で示される構造単位のモル割合)は、0.1~89:5~89:5~50:0.1~89である。ただし、a:b:c:dの好ましい範囲は、上述した構造単位(AA)、構造単位(AB)、構造単位(AC)および構造単位(AE)の好ましい範囲と同様の範囲とすることができる。
【0082】
(メタ)アクリル共重合体の別の具体例には、構造単位(AA)が下記一般式(A-5)で示される構造単位であり、構造単位(AB)が下記一般式(A-6)で示される構造単位であり、構造単位(AD)が下記一般式(A-7)で示される構造単位であり、構造単位(AE)が下記一般式(A-8)で示される構造単位である共重合体が含まれる。
【0083】
【化13】
【0084】
【化14】
【0085】
【化15】
【0086】
【化16】
【0087】
一般式(A-5)~一般式(A-8)中、R31~R34およびR39は独立して、水素原子またはメチル基を示す。これらのうち、メチル基が好ましい。
【0088】
35~R38は独立して、環状構造または芳香環を有してもよく、置換基を有してもよく、エーテル結合を有していてもよく、かつ不飽和結合を有してもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基を示す。
【0089】
上記炭素数1以上10以下の炭化水素基の例には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基などを含む、直鎖状または分岐鎖を有する2価のアルキレン基、シクロヘキシレン基、メチルシクロヘキシレン基、エチルシクロヘキシレン基、ジメチルシクロヘキシレン基、ジエチルシクロヘキシレン基、メチルエチルシクロヘキシレン基、プロピルシクロヘキシレン基、およびメチルプロピルシクロヘキシレン基などを含む脂環式構造を有する2価の炭化水素基、フェニレン基、メチルフェニレン基、エチルフェニレン基、ジメチルフェニレン基、メチルエチルフェニレン基、およびナフチレン基などを含む芳香族を有する2価の炭化水素基などが含まれる。これらのうち、メチレン基およびエチレン基が好ましく、R35~R36はエチレン基がより好ましく、R37~R38はメチレン基がより好ましい。また、上記置換基の例には、メチル基およびメトキシ基などが含まれる。
【0090】
m5およびm6は0または1であり、0であることが好ましい。
【0091】
40は環状構造または芳香環を有してもよく、置換基を有してもよく、エーテル結合を有していてもよく、かつ不飽和結合を有してもよい炭素数1以上10以下の炭化水素基を示す。R40は、カルボキシル基を有してもよい炭素数1以上10以下のアルキレン基、カルボキシル基を有してもよい炭素数3以上10以下のシクロアルキレン基、カルボキシル基を有してもよい炭素数3以上10以下のシクロアルケン基、またはカルボキシル基を有してもよい炭素数6以上10以下のアリール基であることが好ましい。R40の具体例には、R35~R38が取り得る炭素数1以上10以下の炭化水素基、ならびにシクロプロペン基、シクロブテン基、シクロペンテン基、シクロヘキセン基、シクロヘプテン基、およびシクロオクテン基などの炭素数3以上10以下のシクロアルケン基が含まれる。エチレン基およびプロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0092】
41は、環状構造または芳香環を有してもよく、置換基を有してもよく、かつアルキレンオキサイド変性されていてもよく、かつ1個または2個のヘテロ原子を有してもよい炭素数1以上30以下の炭化水素基を示す。R41は、炭素数1以上10以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数3以上30以下のシクロアルキル基、または置換基を有してもよい炭素数6以上30以下のアリール基であることが好ましい。
【0093】
炭素数1以上10以下のアルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニルン基、およびデシル基などが含まれる。炭素数3以上30以下のシクロアルキル基の例には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、およびアダマンチル基などが含まれる。炭素数6以上30以下のアリール基の例には、フェニル基、ビフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、9-アンスリル基、9-フェナントリル基、1-ピレニル基、5-ナフタセニル基、1-インデニル基、2-アズレニル基、9-フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、o-、m-、およびp-トリル基、キシリル基、o-、m-、およびp-クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、およびピラントレニル基などが含まれる。これらのうち、メチル基およびエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。また、上記置換基の例には、メチル基およびメトキシ基などが含まれる。
【0094】
は、2級水酸基を有するエポキシアクリレート残基、エステル結合、またはウレタン結合を示す。これらのうち、エステル結合が好ましい。
【0095】
Zは紫外線吸収基を示す。上記紫外線吸収基は、構造単位(AA)が有する紫外線吸収基として挙げた構造を有する官能基であればよい。
【0096】
*は、他の構造単位との結合部位を示す。
【0097】
(一般式(A-5)で示される構造単位のモル割合):(一般式(A-6)で示される構造単位のモル割合):(一般式(A-7)で示される構造単位のモル割合):(一般式(A-8)で示される構造単位のモル割合)は、0.1~90:0.001~50:5~50:0.1~94である。ただし、e:f:g:hの好ましい範囲は、上述した構造単位(AA)、構造単位(AB)、構造単位(AD)および構造単位(AE)の好ましい範囲と同様の範囲とすることができる。
【0098】
(メタ)アクリル共重合体は、下記の単量体を適宜組み合わせて共重合させ、その後、単量体(Ax1)~単量体(Ax3)に由来する構造単位が有する側鎖に、紫外線吸収基、重合性不飽和基、またはカルボキシル基をグラフトする方法で、合成することができる。
(Aa)(メタ)アクリロイル基と、紫外線吸収基と、を有する単量体
(Ac)(メタ)アクリロイル基と、カルボキシル基と、を有する単量体
(Ae)(メタ)アクリロイル基を有し、紫外線吸収基およびカルボキシル基のいずれも有さない単量体
(Ax1)(メタ)アクリロイル基と、水酸基と、を有する単量体
(Ax2)(メタ)アクリロイル基と、イソシアネート基と、を有する単量体
(Ax3)(メタ)アクリロイル基と、グリシジル基または脂環エポキシ基と、を有する単量体
【0099】
単量体(Aa)は、(メタ)アクリル共重合体に紫外線吸収基を導入するための単量体である。
【0100】
なお、(メタ)アクリル共重合体の紫外線吸収能を高める観点からは、単量体(Aa)は、波長355nmのモル吸光係数が3000以上の単量体であることが好ましい。同様の観点から、単量体(Aa)は、波長355nmのモル吸光係数が3000以上100000以下の単量体であることがより好ましく、4000以上90000以下の単量体であることがさらに好ましく、5000以上80000以下の単量体であることが特に好ましい。
【0101】
単量体(Aa)の例には、特開2004-182924号公報、特開2007-286123号公報、特開2007-331359号公報、特開2013-204001号公報、特開2015-124254号公報、特開2019-137844号公報、および特開2020-189906号公報などに記載の化合物が含まれる。
【0102】
単量体(Ac)は、(メタ)アクリル共重合体にカルボキシル基を導入するための単量体である。単量体(Ac)は、上述した紫外線吸収基を有さない単量体であることが好ましい。また、単量体(Ac)は、波長355nmのモル吸光係数が3000未満の単量体であることが好ましい。
【0103】
単量体(Ac)の例には、(メタ)アクリル酸、コハク酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、ヘキサヒドロフタル酸(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、フタル酸(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、マレイン酸(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、フマル酸(2-アクリロイルオキシエチル)(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、イタコン酸(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、シトラコン酸(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、3-カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、4-カルボキシブチル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノn-ブチル(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、フマル酸モノn-ブチル(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、およびイタコン酸モノn-ブチル(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)などが含まれる。
【0104】
単量体(Ae)は、(メタ)アクリル共重合体の分子量や官能基量を調整するための単量体である。
【0105】
単量体(Ae)の例には、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、およびデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、およびステアリル(メタ)アクリレートなどの、炭素数1以上20以下、好ましくは炭素数1以上10以下のアルキル鎖を有する(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのアルキレンオキサイド変性された炭素数1以上10以下のアルキル鎖を有する(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンタン-1-イル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの炭素数3以上30以下の脂環式炭化水素を有する(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ビフェニル(メタ)アクリレート、2-ナフチル(メタ)アクリレートなどの炭素数3以上30以下の芳香族炭化水素を有する(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール-アクリル酸-安息香酸エステル、フェノキシエチレングリコールメタクリレート、エトキシ化-O-フェニルフェノール(メタ)アクリレートなどのアルキレンオキサイド変性された炭素数3以上30以下の芳香族炭化水素を有する(メタ)アクリレート、フタルイミド(メタ)アクリレート、マレイミド(メタ)アクリレート、ベンゾフェノン(メタ)アクリレート、2―ヒドロキシ-4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、ヒドロキシ-4-(2-(メタ)アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノンなどの1個または2個のヘテロ原子を有してもよい炭素数1以上30以下の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートなどが含まれる。
【0106】
単量体(Ax1)~単量体(Ax3)は、上述した官能基を(メタ)アクリル共重合体の側鎖にグラフトにより導入するための単量体である。
【0107】
単量体(Ax1)~単量体(Ax3)は、上述した紫外線吸収基を有さない単量体であることが好ましい。また、単量体(Ax1)~単量体(Ax3)は、単量体(Aa)は、波長355nmのモル吸光係数が3000未満の単量体であることが好ましい。また、単量体(Ax1)~単量体(Ax3)は、カルボキシル基を有さない単量体であることが好ましい。
【0108】
たとえば、水酸基を有する単量体(Ax1)は、他の単量体との共重合の後に、(Ay1a)イソシアネート基および重合性不飽和基を有する化合物を当該水酸基に反応させて、ウレタン結合を介して重合性不飽和基を(メタ)アクリル共重合体に導入するために用いることができる。
【0109】
あるいは、水酸基を有する単量体(Ax1)は、他の単量体との共重合の後に、(Ay1b)ジカルボン酸またはその酸一無水物を当該水酸基に反応させて、エステル結合を介してカルボキシル基を(メタ)アクリル共重合体に導入するために用いることができる。
【0110】
このような単量体(Ax1)の例には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、およびエチル-α-ヒドロキシメチルアクリレートなどが含まれる。
【0111】
単量体(Ax1)と共に用いられる、(Ay1a)イソシアネート基および重合性不飽和基を有する化合物の例には、(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアネートなどが含まれる。
【0112】
単量体(Ax1)と共に用いられる、(Ay1b)ジカルボン酸またはそれらの酸一無水物の例には、鎖式炭化水素ジカルボン酸、脂環式炭化水素ジカルボン酸、芳香族炭化水素ジカルボン酸、およびこれらの酸一無水物などが含まれる。
【0113】
上記鎖式炭化水素ジカルボン酸はトリカルボン酸の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、およびジグリコール酸など、ならびに任意の置換基が導入されたこれらのジカルボン酸などが含まれる。
【0114】
上記脂環式炭化水素ジカルボン酸の例には、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、およびノルボルナンジカルボン酸など、ならびに任意の置換基が導入されたこれらのジカルボン酸などが含まれる。
【0115】
上記芳香族炭化水素ジカルボン酸の例には、フタル酸、イソフタル酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、および2,3-ナフタレンジカルボン酸など、ならびに任意の置換基が導入されたこれらのジカルボン酸が含まれる。
【0116】
上記ジカルボン酸は、これらのうち、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、およびフタル酸が好ましく、コハク酸、イタコン酸、およびテトラヒドロフタル酸がより好ましい。
【0117】
上記ジカルボン酸は、その酸一無水物を用いることが好ましい。
【0118】
なお、(Ay1a)イソシアネート基および重合性不飽和基を有する化合物のかわりに、イソシアネート基および紫外線吸収基を有する化合物や、イソシアネート基およびカルボキシル基を有する化合物を用いて、単量体(Ax1)に由来する構造単位の側鎖にウレタン結合を介して紫外線吸収基やカルボキシル基を導入してもよい。
【0119】
また、(Ay1b)ジカルボン酸またはその酸一無水物のかわりに、カルボキシル基および紫外線吸収基を有する化合物や、カルボキシル基および重合性不飽和基を有する化合物を用いて、単量体(Ax1)に由来する構造単位の側鎖にウレタン結合を介して紫外線吸収基や重合性不飽和基を導入してもよい。
【0120】
また、イソシアネート基を有する単量体(Ax2)は、他の単量体との共重合の後に、(Ay2)水酸基および重合性不飽和基を有する化合物を当該イソシアネート基に反応させて、ウレタン結合を介して重合性不飽和基を(メタ)アクリル共重合体に導入するために用いることができる。
【0121】
このような単量体(Ax2)の例には、上記イソシアネート基および重合性不飽和基を有する化合物として例示した各化合物が含まれる。
【0122】
単量体(Ax2)と共に用いられる、(y2)水酸基および重合性不飽和基を有する化合物の例には、単量体(Ax1)として例示した各化合物が含まれる。
【0123】
なお、(Ay2)水酸基および重合性不飽和基を有する化合物のかわりに、水酸基および紫外線吸収基を有する化合物や、水酸基およびカルボキシル基を有する化合物を用いて、単量体(Ax2)に由来する構造単位の側鎖にウレタン結合を介して紫外線吸収基やカルボキシル基を導入してもよい。
【0124】
また、グリシジル基または脂環エポキシ基を有する単量体(Ax3)は、他の単量体との共重合の後に、(Ay3)カルボキシル基とおよび重合性不飽和基を有する化合物を当該グリシジル基または脂環エポキシ基に反応させて、エポキシアクリレート残基を介して重合性不飽和基を(メタ)アクリル共重合体に導入するために用いることができる。
【0125】
このような単量体(Ax3)の例には、グリシジル(メタ)アクリレート、β-プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル-α-エチル(メタ)アクリレート、3-メチル-3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、4-メチル-4,5-エポキシペンチル(メタ)アクリレート、5-メチル-5,6-エポキシヘキシル(メタ)アクリレート、および3,4,-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートなどが含まれる。
【0126】
単量体(Ax3)と共に用いられる、(Ay3)カルボキシル基および重合性不飽和基を有する化合物の例には、単量体(Ac)として例示した各化合物が含まれる。
【0127】
なお、単量体(Ax3)から生成したエポキシアクリレート残基に、さらに(Az3)多価カルボン酸またはその無水物を反応させて、上記エポキシアクリレート残基を介してカルボキシル基を(メタ)アクリル共重合体に導入してもよい。
【0128】
上記エポキシアクリレート残基に反応させる多価カルボン酸の例には、単量体(Ay1b)として例示したジカルボン酸またはその酸一無水物、ならびにトリカルボン酸またはその酸一無水物およびテトラカルボン酸またはその酸二無水物が含まれる。
【0129】
上記トリカルボン酸の例には、トリメリット酸およびヘキサヒドロトリメリット酸等が含まれる。
【0130】
上記テトラカルボン酸の例には、鎖式炭化水素テトラカルボン酸、脂環式炭化水素テトラカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸等が含まれる。
【0131】
上記鎖式炭化水素テトラカルボン酸の例には、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸、および脂環式炭化水素基、不飽和炭化水素基等の置換基が導入された鎖式炭化水素テトラカルボン酸等が含まれる。
【0132】
上記脂環式炭化水素テトラカルボン酸の例には、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸、および鎖式炭化水素基、不飽和炭化水素基等の置換基が導入された脂環式テトラカルボン酸等が含まれる。
【0133】
芳香族テトラカルボン酸の例には、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸等が含まれる。
【0134】
上記テトラカルボン酸は、その酸二無水物を用いることが好ましい。
【0135】
たとえば上記一般式(A-1)で示される構造単位(AA)、上記一般式(A-2)で示される構造単位(AB)、上記一般式(A-3)で示される構造単位(AC)、および上記一般式(A-4)で示される構造単位(AE)を有する共重合体は、下記工程により合成することができる。
【0136】
[工程(1)-1]
(Aa)(メタ)アクリロイル基と、紫外線吸収基と、を有する単量体と、
(Ac)(メタ)アクリロイル基と、カルボキシル基と、を有する単量体と、
(Ae)(メタ)アクリロイル基を有し、紫外線吸収基およびカルボキシル基のいずれも有さない単量体と、
(Ax1)(メタ)アクリロイル基と、水酸基と、を有する単量体と、
を共重合させて共重合体を得る工程
【0137】
[工程(1)-2]
工程(1)-1で得られた共重合体に(Ay1a)イソシアネート基および重合性不飽和基を有する化合物を反応させ、単量体(Ax1)に由来する水酸基と化合物(Ay1a)が有するイソシアネート基との間でウレタン結合を形成させて、前記共重合体に重合性不飽和基をグラフトする工程
【0138】
工程(1)-1の共重合は、共重合せしめる単量体を熱重合開始剤とともに溶剤中で混合し、反応させて行うことができる。反応温度は使用する熱重合開始剤の種類に依存するが、たとえば60~100℃の温度範囲で、2~12時間、溶剤中で反応させることが好ましい。
【0139】
熱重合開始剤は、一般的な熱ラジカル重合開始剤であればよく、アゾ化合物や過酸化物が好ましく、直鎖ポリマー生成の観点からアゾ化合物がより好ましい。
【0140】
アゾ化合物としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等が含まれる。中でも、反応温度の観点から、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)が好ましい。
【0141】
溶剤は、樹脂組成物に使用されるものを適宜選択して使用することができる。使用できる溶剤の例には、アルコール類、グリコール類、脂肪族環状ケトン類、および酢酸エステル類等が含まれる。これらのうち、アルコール類以外の溶剤を用いることが好ましい。
【0142】
グリコール類の例には、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、およびエチレングリコールモノブチルエーテル等が含まれる。
【0143】
脂肪族環状ケトン類の例には、シクロヘキサノン、オルト-メチルシクロヘキサノン、メタ-メチルシクロヘキサノン、およびパラ-メチルシクロヘキサノン等が含まれる。
【0144】
酢酸エステル類の例には、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、および酢酸n-ブチル等が含まれる。
【0145】
これらのほか、ソルベントナフサ、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、n-オクタン、およびイソオクタン等の飽和炭化水素溶剤、ならびにエチルセロソルブ、およびブチルセロソルブ等を用いてもよい。
【0146】
このとき、イソプロピルアルコール(IPA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)などの水酸基を含有している溶剤を用いないことが好ましい。これにより、次の工程での(Ay1a)イソシアネート基および重合性不飽和基を有する化合物のイソシアネート基と溶剤の水酸基が反応することを回避し、確実かつ十分にウレタン結合を形成する反応を行わせることができる。
【0147】
溶剤の量は、上記範囲で混合した共重合せしめる単量体の合計100重量部に対して、10重量部以上2000重量部以下であることが好ましく、50重量部以上500重量部以下であることがより好ましい。
【0148】
工程(1)-2の反応は、 前述した工程(1)-1で得られた反応溶液に、単量体(Ay1a)イソシアネート基および重合性不飽和基を有する化合物を混合した後、40℃~100℃の温度範囲で、2~12時間、溶剤中で反応させることが好ましい。
【0149】
溶剤は、上述したもののなかから適宜選択して用いることができる。また、反応は必要に応じて触媒を添加して行うことができる。上記触媒の例には、スズ化合物またはチタン化合物、およびアミン化合物等が含まれる。触媒の具体例には、ジブチルスズラウレート、テトラn-ブトキシチタン、およびトリエチルアミン等が含まれる。これらのうち、反応制御が容易であることから、スズ化合物がより好ましい。触媒の添加量は、単量体(Ay1a)イソシアネート基および重合性不飽和基を有する化合物の合計100重量部に対して、0.01重量部以上10重量部以下であることが好ましい。このとき、単量体(Ay1a)イソシアネート基および重合性不飽和基を有する化合物の(メタ)アクリロイル基を重合させないことが好ましく、この目的のために重合禁止剤等を添加してもよい。
【0150】
単量体(Ay1a)イソシアネート基および重合性不飽和基を有する化合物は、そのイソシアネート基のモル数が、単量体(Ax1)に由来する水酸基のモル数より少ない条件で反応させることが好ましい。具体的には、単量体(Ay1a)由来のイソシアネート基のモル数は、単量体(Ax1)に由来する水酸基のモル数の95~99%であることがより好ましい。
【0151】
なお、得られる重合体が有する各構造単位の構成にあわせて、適宜使用する材料を変更してもよい。
【0152】
また、上記一般式(A-5)で示される構造単位(AA)、上記一般式(A-6)で示される構造単位(AB)、上記一般式(A-7)で示される構造単位(AD)、および上記一般式(A-8)で示される構造単位(AE)を有する共重合体は、下記工程により合成することができる。
【0153】
[工程(2)-1]
(Aa)(メタ)アクリロイル基と、紫外線吸収基と、を有する単量体と、
(Ae)(メタ)アクリロイル基を有し、紫外線吸収基およびカルボキシル基のいずれも有さない単量体と、
(Ax3)(メタ)アクリロイル基と、グリシジル基または脂環エポキシ基と、を有する単量体と、
を共重合させて共重合体を得る工程
【0154】
[工程(2)-2]
工程(2)-1で得られた共重合体に(Ay3)カルボキシル基および重合性不飽和基を有する化合物を反応させて、単量体(Ax3)に由来するグリシジル基または脂環エポキシ基と、化合物(Ay3)が有するカルボキシル基との反応によりエポキシアクリレート残基を形成させて、共重合体に重合性不飽和基をグラフトする工程
【0155】
[工程(2)―3]
工程(2)-2で重合性不飽和基をグラフトされた共重合体に、(Az3)多価カルボン酸またはその無水物を反応させて、単量体(Ax1)に由来する水酸基、または単量体(Ax3)と単量体(Ay3)との反応により生成したエポキシアクリレート残基と、化合物(Az3)が有するカルボキシル基またはカルボン酸無水物基と、の反応により、共重合体にカルボキシル基をさらにグラフトする工程
【0156】
工程(2)-1の共重合は、上述した工程(1)-1の共重合と同様に行うことができる。反応温度は使用する熱重合開始剤の種類に依存するが、たとえば60~100℃の温度範囲で、2~12時間、溶剤中で反応させることが好ましい。
【0157】
熱重合開始剤は、一般的な熱ラジカル重合開始剤であればよく、アゾ化合物や過酸化物が好ましく、直鎖ポリマー生成の観点からアゾ化合物がより好ましい。
【0158】
アゾ化合物としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等が含まれる。中でも、反応温度の観点から、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)が好ましい。
【0159】
溶剤は、樹脂組成物に使用されるものを適宜選択して使用することができる。使用できる溶剤の例には、アルコール類、グリコール類、脂肪族環状ケトン類、および酢酸エステル類等が含まれる。これらのうち、アルコール類以外の溶剤を用いることが好ましい。
【0160】
グリコール類の例には、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、およびエチレングリコールモノブチルエーテル等が含まれる。
【0161】
脂肪族環状ケトン類の例には、シクロヘキサノン、オルト-メチルシクロヘキサノン、メタ-メチルシクロヘキサノン、およびパラ-メチルシクロヘキサノン等が含まれる。
【0162】
酢酸エステル類の例には、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、および酢酸n-ブチル等が含まれる。
【0163】
これらのほか、ソルベントナフサ、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、n-オクタン、およびイソオクタン等の飽和炭化水素溶剤、ならびにエチルセロソルブ、およびブチルセロソルブ等を用いてもよい。
【0164】
このとき、イソプロピルアルコール(IPA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)などの水酸基を含有している溶剤を用いないことにより、次の工程での(Az3)多価カルボン酸またはその無水物の酸無水物基と溶剤の水酸基が反応することを回避し、確実かつ十分にエステル結合を形成する反応を行わせることができる。
【0165】
溶剤の量は、上記範囲で混合した共重合せしめる単量体の合計100重量部に対して、10重量部以上2000重量部以下であることが好ましく、50重量部以上500重量部以下であることがより好ましい。
【0166】
工程(2)-2の反応は、反応温度80~130℃の温度範囲で、5~18時間、溶剤中で反応させることにより形成できる。なお、塩基触媒を添加することで反応を効率的に進めることができる。上記塩基触媒の例には、テトラエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類等が含まれる。
【0167】
工程(2)-3の反応は、反応温度80~130℃の温度範囲で、5~48時間、溶剤中で反応させることにより形成することができる。
【0168】
なお、工程(2)-1において、(Ax1)(メタ)アクリロイル基と、水酸基と、を有する単量体を共重合させて、工程(2)-3において同時に、単量体(Ax1)に由来する水酸基と化合物(Az3)が有するカルボキシル基またはカルボン酸無水物基との間でエステル結合を形成させて、前記共重合体にカルボキシル基をグラフトすることもできる。この時の反応条件は、工程(2)-3の反応条件と同様にすればよい。
【0169】
なお、上述の合成方法で例示した単量体および化合物はあくまで例示であり、同様の官能基を有するこれら以外の単量体および化合物をも使用し得ることは言うまでもない。
【0170】
アルカリ可溶性樹脂は、LLOプロセスに用いる接着剤用の組成物に用いることができる。
【0171】
上記接着剤用の組成物には、(A)アルカリ可溶性樹脂の他に、たとえば下記成分を用いることができる。
(B)紫外線吸収基を有さない不飽和基含有重合性化合物
(C)光重合開始剤
(D)エポキシ化合物
(E)溶剤
【0172】
これら(B)成分~(E)成分としては、LLOプロセスに用いる接着剤用の組成物に用いられ得る公知の化合物を使用することができる。
【0173】
また、本実施形態に係るアルカリ可溶性樹脂は、FO-WLP用仮接着剤や極薄基板用仮固定接着剤等にも好適に用いることができる。
【実施例0174】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0175】
まず、(A)成分である不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の合成例から説明するが、これらの合成例における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りに行った。
【0176】
なお、各種測定機器について、同一の機種を使用した場合には、2か所目から機器メーカー名を省略している。また、実施例において、測定用硬化膜付き基板の作製に使用しているガラス基板は、全て同じ処理を施して使用している。また、各成分の含有量について、小数点以下の表記を四捨五入し省略する。
【0177】
[固形分濃度]
合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W(g)〕に含浸させた後の重量〔W(g)〕と、(A)成分は130℃、(B)成分は160℃にて2時間加熱した後の重量〔W(g)〕から次式より求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W-W)/(W-W
【0178】
[酸価]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して求めた。
【0179】
[分子量]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuper H-2000(2本)+TSKgelSuper H-3000(1本)+TSKgelSuper H-4000(1本)+TSKgelSuperH-5000(1本)(東ソー株式会社製)、温度:40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PS-オリゴマーキット)換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0180】
合成例で記載する略号は次のとおりである。
MMA :メタクリル酸メチル
MA :メタクリル酸
AA :アクリル酸
GMA :メタクリル酸グリシジル
HPMA :メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル
HEMA :メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
MOI :メタクリル酸2-イソシアナトエチル
AOI :アクリル酸2-イソシアナトエチル
SA :無水コハク酸
RUVA-93 :2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルオキシエチルフェニル)-2-H-ベンゾトリアゾール(大塚化学株式会社製、分子量:323.35、波長355nmの光の吸光度:0.25)
Tinuvin400:ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製、分子量583.8、波長355nmの光の吸光度0.12)
ADVN :2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)
TPP :トリフェニルホスフィン
BPFE :ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量256g/eq)
BPDA :3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA :1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物
PGME :プロピレングリコールモノメチルエーテル
PGMEA :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0181】
なお、上記吸光度は、紫外可視赤外分光光度計「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、0.001重量%濃度のアセトニトリル溶液の吸光度を、光路長1cm石英セル中にて測定した値である。
【0182】
[合成例A-1]
温度調節機、攪拌器、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備えた反応器に、溶媒としてPGME233重量部、紫外線吸収性基含有不飽和単量体としてRUVA-9359重量部(0.18mol)、別の不飽和単量体としてMMA0.047重量部(0.047mmol)とMA28重量部(0.32mol)を加え80℃に加温した後、窒素で置換した。重合開始剤としてADVN4重量部を加え1時間反応させた。その後ADVN0.5重量部を加え90℃に加温し3時間熟成させて紫外線吸収性共重合物を合成した。70℃に冷却し、GMA31重量部(0.22mol)、触媒として4級アンモニウム塩2重量部、重合禁止剤としてメトキノン0.03重量部を加え、紫外線吸収性重合物へGMAの付加反応を90℃で24時間行った。反応終点は滴定手法を用いてエポキシ基が90%反応転換した際のエポキシ当量とした。これにPGMEを加えて、固形分が30重量%になるように調整し、本発明品(A-1)を得た。得られた樹脂溶液の酸価(固形分換算)は65mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは18000であり、仕込み比から計算した紫外線吸収基を含む構造単位(AA)は36.0モル%であり、仕込み比から計算したアクリル当量は539.5であった。
【0183】
[合成例A-2]
温度調節機、攪拌器、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備えた反応器に、溶媒としてPGME233重量部、紫外線吸収性基含有不飽和単量体としてRUVA-93を58重量部(0.18mol)、別の不飽和単量体としてMMA23重量部(0.23mol)とMA19重量部(0.22mol)を加え80℃に加温した後、窒素で置換した。重合開始剤としてADVN 4重量部を加え1時間反応させた。その後ADVN0.5重量部を加え90℃に加温し3時間熟成させて紫外線吸収性共重合物を合成した。70℃に冷却し、GMA16重量部(0.12mol)、触媒として4級アンモニウム塩2重量部、重合禁止剤としてメトキノン0.03重量部を加え、紫外線吸収性重合物へGMAの付加反応を90℃で24時間行った。反応終点は滴定手法を用いてエポキシ基が90%反応転換した際のエポキシ当量とした。これにPGMEを加えて、固形分が30重量%になるように調整し、本発明品(A-2)を得た。得られた樹脂溶液の酸価(固形分換算)は59mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは16000であり、仕込み比から計算した紫外線吸収基を含む構造単位(AA)は28.7モル%であり、仕込み比から計算したアクリル当量は1001.1であった。
【0184】
[合成例A-3]
温度調節機、攪拌器、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備えた反応器に、溶媒としてPGMEA233重量部、紫外線吸収性基含有不飽和単量体としてRUVA-93を64重量部(0.20mol)、別の不飽和単量体としてMMA5.6重量部(0.06mol)、HPMA24重量部(0.17mol)を加え80℃に加温した後、窒素で置換した。重合開始剤としてADVN 4重量部を加え1時間反応させた。その後ADVN0.5重量部を加え90℃に加温し3時間熟成させて紫外線吸収性共重合物を合成した。これにMOI27重量部(0.17mol)、触媒としてスズ化合物0.01重量部、重合禁止剤としてメトキノン0.04重量部を加え、60℃で紫外線吸収性共重合物へMOI付加反応を約6時間行った。反応終点はFT-IRからイソシアネートピークの消失で確認した。反応終了後、これにPGMEAを加えて、固形分が30重量%となるように調整し、本発明品(A-3)を得た。得られた樹脂溶液の酸価(固形分換算)は59mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは17000であり、仕込み比から計算した紫外線吸収基を含む構造単位(AA)は37.1モル%であり、仕込み比から計算したアクリル当量は761.2であった。
【0185】
[合成例A-4]
温度調節機、攪拌器、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備えた反応器に、溶媒としてPGMEA233重量部、紫外線吸収性基含有不飽和単量体としてRUVA-93を59重量部(0.18mol)、別の不飽和単量体としてMMA16重量部(0.16mol)とMA9.0重量部(0.10mol)、HEMA15重量部(0.12mol)を加え80℃に加温した後、窒素で置換した。重合開始剤としてADVN4重量部を加え1時間反応させた。その後ADVN0.5重量部を加え90℃に加温し3時間熟成させて紫外線吸収性共重合物を合成した。これにMOI18重量部(0.12mol)、触媒としてスズ化合物0.01重量部、重合禁止剤としてメトキノン0.04重量部を加え、60℃で紫外線吸収性共重合物へMOI付加反応を約6時間行った。反応終点はFT-IRからイソシアネートピークの消失で確認した。反応終了後、これにPGMEAを加えて、固形分が30重量%となるように調整し、本発明品(A-4)を得た。得られた樹脂溶液の酸価(固形分換算)は52mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは16000であり、仕込み比から計算した紫外線吸収基を含む構造単位(AA)は32.1モル%であり、仕込み比から計算したアクリル当量は1001.0であった。
【0186】
[合成例A-5]
温度調節機、攪拌器、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備えた反応器に、溶媒としてPGMEA233重量部、紫外線吸収性基含有不飽和単量体としてRUVA-93を59重量部(0.18mol)、別の不飽和単量体としてMMA16重量部(0.16mol)とMA9.0重量部(0.10mol)、HEMA15重量部(0.12mol)を加え80℃に加温した後、窒素で置換した。重合開始剤としてADVN2重量部を加え1時間反応させた。その後ADVN0.5重量部を加え90℃に加温し3時間熟成させて紫外線吸収性共重合物を合成した。これにMOI18重量部(0.12mol)、触媒としてスズ化合物0.01重量部、重合禁止剤としてメトキノン0.04重量部を加え、60℃で紫外線吸収性共重合物へMOI付加反応を約6時間行った。反応終点はFT-IRからイソシアネートピークの消失で確認した。反応終了後、これにPGMEAを加えて、固形分が30重量%となるように調整し、本発明品(A-5)を得た。得られた樹脂溶液の酸価(固形分換算)は55mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは30000であり、仕込み比から計算した紫外線吸収基を含む構造単位(AA)は32.1モル%であり、仕込み比から計算したアクリル当量は1001.0であった。
【0187】
[合成例A-6]
温度調節機、攪拌器、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備えた反応器に、溶媒としてPGMEA233重量部、紫外線吸収性基含有不飽和単量体としてRUVA-93を59重量部(0.18mol)、別の不飽和単量体としてMMA16重量部(0.16mol)とMA9.0重量部(0.10mol)、HEMA15重量部(0.12mol)を加え80℃に加温した後、窒素で置換した。重合開始剤としてADVN1重量部を加え1時間反応させた。その後ADVN0.5重量部を加え90℃に加温し3時間熟成させて紫外線吸収性共重合物を合成した。これにMOI18重量部(0.12mol)、触媒としてスズ化合物0.01重量部、重合禁止剤としてメトキノン0.04重量部を加え、60℃で紫外線吸収性共重合物へMOI付加反応を約6時間行った。反応終点はFT-IRからイソシアネートピークの消失で確認した。反応終了後、これにPGMEAを加えて、固形分が30重量%となるように調整し、本発明品(A-6)を得た。得られた樹脂溶液の酸価(固形分換算)は63mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは48000であり、仕込み比から計算した紫外線吸収基を含む構造単位(AA)は32.1モル%であり、仕込み比から計算したアクリル当量は1001.0であった。
【0188】
[合成例A-7]
温度調節機、攪拌器、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備えた反応器に、溶媒としてPGMEA233重量部、紫外線吸収性基含有不飽和単量体としてRUVA-93を59重量部(0.18mol)、別の不飽和単量体としてMMA16重量部(0.16mol)とMA9重量部(0.10mol)、HEMA15重量部(0.12mol)を加え80℃に加温した後、窒素で置換した。重合開始剤としてADVN4重量部を加え1時間反応させた。その後ADVN0.5重量部を加え90℃に加温し3時間熟成させて紫外線吸収性共重合物を合成した。これにAOIを17重量部(0.12mol)、触媒としてスズ化合物0.01重量部、重合禁止剤としてメトキノン0.04重量部を加え、60℃で紫外線吸収性共重合物へAOI付加反応を約6時間行った。反応終点はFT-IRからイソシアネートピークの消失で確認した。反応終了後、これにPGMEAを加えて、固形分が30重量%となるように調整し、本発明品(A-7)を得た。得られた樹脂溶液の酸価(固形分換算)は58mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは17000であり、仕込み比から計算した紫外線吸収基を含む構造単位(AA)は32.1モル%であり、仕込み比から計算したアクリル当量は986.1であった。
【0189】
[合成例A-8]
温度調節機、攪拌器、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備えた反応器に、溶媒としてPGMEA233重量部、紫外線吸収性基含有不飽和単量体としてRUVA-93を67重量部(0.21mol)、別の不飽和単量体としてGMA34重量部(0.24mol)を加え80℃に加温した後、窒素置換した。重合開始剤としてADVN 4重量部を加え1時間反応させた。その後ADVN0.5重量部を加え90℃に加温し3時間熟成させて紫外線吸収性共重合物を合成した。70℃に冷却し、MA21重量部(0.24mol)、触媒として4級アンモニウム塩2重量部、重合禁止剤としてメトキノン0.03重量部を加え、紫外線吸収性共重合物へMAの付加反応を90℃で約10時間行った。反応終点は滴定的手法により算出したエポキシ当量を用いて、エポキシ基が90%反応転換した際のエポキシ当量を終点とした。その後、カルボキシル基を付与するため、多塩基酸無水物である無水コハク酸を12重量部(0.12mol)加え90℃で約28時間行った。反応終点は酸価を用いるかIR測定により酸無水物のピーク消失を確認しても良い。今回は酸価で反応終点を決めた。何も加えない場合と多塩基酸無水物に水を開環付加させた場合での酸価差が2mmgKOH/g以内の時点で反応終了とした。これにPGMEAを加えて、固形分が30重量%となるように調整し、本発明品(A-8)を得た。得られた樹脂溶液の酸価(固形分換算)は60mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは32000であり、仕込み比から計算した紫外線吸収基を含む構造単位(AA)は46.2モル%であり、仕込み比から計算したアクリル当量は555.4であった。
【0190】
[合成例A-9]
温度調節機、攪拌器、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備えた反応器に、溶媒としてPGMEA233重量部、紫外線吸収性基含有不飽和単量体としてRUVA-93を61重量部(0.19mol)、別の不飽和単量体としてMMA8重量部(80mmol)とHEMA14重量部(0.11mol)、GMA17重量部(0.12mol)を加え80℃に加温した後、窒素置換した。重合開始剤としてADVN 4重量部を加え1時間反応させた。その後ADVN0.5重量部を加え90℃に加温し3時間熟成させて紫外線吸収性共重合物を合成した。70℃に冷却し、MA11重量部(0.12mol)、触媒として4級アンモニウム塩2重量部、重合禁止剤としてメトキノン0.03重量部を加え、紫外線吸収性共重合物へメタクリル酸の付加反応を90℃で約10時間行った。反応終点は滴定的手法により算出したエポキシ当量を用いて、エポキシ基が90%反応転換した際のエポキシ当量を終点とした。その後、カルボキシル基を付与するため、多塩基酸無水物である無水コハク酸を11重量部(0.11mol)加え90℃で約28時間行った。何も加えない場合と多塩基酸無水物に水を開環付加させた場合での酸価差が2mmgKOH/g以内の時点で反応終了とした。これにPGMEAを加えて、固形分が30重量%となるように調整し、本発明品(A-9)を得た。得られた樹脂溶液の酸価(固形分換算)は65mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは25000であり、仕込み比から計算した紫外線吸収基を含む構造単位(AA)は37.7モル%であり、仕込み比から計算したアクリル当量は1000.9であった。
【0191】
[合成例A-10]
温度調節機、攪拌器、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備えた反応器に、溶媒としてPGMEA233重量部、紫外線吸収性基含有不飽和単量体としてRUVA-93を59重量部(0.18mol)、別の不飽和単量体としてMMA16重量部(0.16mol)とMA9重量部(0.10mol)、MOI18重量部(0.12mol)を加え80℃に加温した後、窒素で置換した。重合開始剤としてADVN4重量部を加え1時間反応させた。その後ADVN0.5重量部を加え90℃に加温し3時間熟成させて紫外線吸収性共重合物を合成した。これにHEMA15重量部(0.12mol)、触媒としてスズ化合物0.01重量部、重合禁止剤としてメトキノン0.04重量部を加え、60℃で紫外線吸収性共重合物へHEMA付加反応を約6時間行った。反応終点はFT-IRからイソシアネートピークの消失で確認した。反応終了後、これにPGMEAを加えて、固形分が30重量%となるように調整し、本発明品(A-10)を得た。得られた樹脂溶液の酸価(固形分換算)は63mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは19000であり、仕込み比から計算した紫外線吸収基を含む構造単位(AA)は32.1モル%であり、仕込み比から計算したアクリル当量は1001.0であった。
【0192】
[合成例A-11]
温度計、攪拌機を備えた反応器に、溶媒としてテトラヒドロフランを500g、紫外線吸収単量体としてTinuvin400を91重量部(0.14mol)加え、室温で攪拌した後、メタクリロイルクロリド22重量部(0.21mol)を少しずつ滴下し、付加反応を行った。その後、トリエチルアミン28重量部を滴下し、室温で1時間攪拌した。次いで、反応容器に水1.0kg仕込み、前述の反応液を滴下した後、室温で攪拌した。得られた反応溶液を減圧留去により反応生成物が析出するまでテトラヒドロフランを除去した後、ろ過を行った。その後、水500gで更に流し洗浄を行った。水500gを加えたビーカーに、ろ過で得られた析出物を投入し、室温で30分攪拌した後、再度ろ過を行った。この操作を2回繰り返した後、40℃で真空乾燥を行い、目的の紫外線吸収性基含有不飽和単量体1を得た。
【0193】
次いで、温度調節機、攪拌器、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備えた反応器に、溶媒としてPGMEA233重量部、前述の合成で得られた紫外線吸収性基含有不飽和単量体1を59重量部(0.08mol)、別の不飽和単量体としてMMA16重量部(0.16mol)とMA9重量部(0.10mol)、HEMA15重量部(0.12mol)を加え80℃に加温した後、窒素で置換した。重合開始剤としてADVN4重量部を加え1時間反応させた。その後ADVN0.5重量部を加え90℃に加温し3時間熟成させて紫外線吸収性共重合物を合成した。これにMOI18重量部(0.12mol)、触媒としてスズ化合物0.01重量部、重合禁止剤としてメトキノン0.04重量部を加え、60℃で紫外線吸収性共重合物へMOI付加反応を約6時間行った。反応終点はFT-IRからイソシアネートピークの消失で確認した。反応終了後、これにPGMEAを加えて、固形分が30重量%となるように調整し、本発明品(A-11)を得た。得られた樹脂溶液の酸価(固形分換算)は58mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは14000であり、仕込み比から計算した紫外線吸収基を含む構造単位(AA)は17.8モル%であり、仕込み比から計算したアクリル当量は1001.0であった。
【0194】
[合成例A-12]
温度調節機、攪拌器、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備えた反応器に、溶媒としてPGMEA233重量部、紫外線吸収性基含有不飽和単量体としてRUVA-93を82重量部(0.25mol)、別の不飽和単量体としてMMA0.1重量部(1mmol)とMA4重量部(0.04mol)、HEMA14重量部(0.11mol)を加え80℃に加温した後、窒素で置換した。重合開始剤としてADVN4重量部を加え1時間反応させた。その後ADVN0.5重量部を加え90℃に加温し3時間熟成させて紫外線吸収性共重合物を合成した。これにMOI17重量部(0.11mol)、触媒としてスズ化合物0.01重量部、重合禁止剤としてメトキノン0.04重量部を加え、60℃で紫外線吸収性共重合物へMOI付加反応を約6時間行った。反応終点はFT-IRからイソシアネートピークの消失で確認した。反応終了後、これにPGMEAを加えて、固形分が30重量%となるように調整し、本発明品(A-12)を得た。得られた樹脂溶液の酸価(固形分換算)は25mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは17000であり、仕込み比から計算した紫外線吸収基を含む構造単位(AA)は62.4モル%であり、仕込み比から計算したアクリル当量は1062.7であった。
【0195】
[合成例A-13]
温度調節機、攪拌器、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備えた反応器に、溶媒としてPGMEA233重量部、紫外線吸収性基含有不飽和単量体としてRUVA-93を30重量部(0.09mol)および紫外線吸収性基含有不飽和単量体1を30重量部(0.04mol)、別の不飽和単量体としてMMA17重量部(0.17mol)とMA9重量部(0.11mol)、HEMA16重量部(0.12mol)を加え80℃に加温した後、窒素で置換した。重合開始剤としてADVN4重量部を加え1時間反応させた。その後ADVN0.5重量部を加え90℃に加温し3時間熟成させて紫外線吸収性共重合物を合成した。これにMOI19重量部(0.12mol)、触媒としてスズ化合物0.01重量部、重合禁止剤としてメトキノン0.04重量部を加え、60℃で紫外線吸収性共重合物へMOI付加反応を約6時間行った。反応終点はFT-IRからイソシアネートピークの消失で確認した。反応終了後、これにPGMEAを加えて、固形分が30重量%となるように調整し、本発明品(A-13)を得た。得られた樹脂溶液の酸価(固形分換算)は60mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは15000であり、仕込み比から計算した紫外線吸収基を含む構造単位(AA)は25.6モル%であり、仕込み比から計算したアクリル当量は1001.0であった。
【0196】
[合成例B2-1]
温度調節機、攪拌器、還流冷却器を備えた反応器に、BPFE50重量部(0.10mol)、AA14重量部(0.20mol)、TPP0.26重量部、およびPGMEA40重量部を加え、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA25重量部を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0197】
次いで、得られた反応生成物にBPDA14重量部(0.05mol)およびTHPA7重量部(0.05mol)を加え、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有硬化性樹脂(B2)-1を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は57質量%であり、酸価(固形分換算)は96mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは3600であった。
【0198】
[合成例B2-2]
温度調節機、攪拌器、還流冷却器を備えた反応器に、BPFE50重量部(0.10mol)、AA14重量部(0.20mol)、TPP0.26重量部、およびPGMEA40重量部を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA25重量部を加え固形分が50質量%となるように調整した。
【0199】
次いで、得られた反応生成物にBPDA10重量部(0.03mol)およびTHPA12重量部(0.08mol)を加え、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有硬化性樹脂(B2)-2を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は57質量%であり、酸価(固形分換算)は98mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは2300であった。
【0200】
[合成例B2-3]
温度調節機、攪拌器、還流冷却器を備えた反応器に、BPFE50重量部(0.10mol)、AA14重量部(0.20mol)、TPP0.26重量部、およびPGMEA40重量部を仕込み、100~105℃で12時間攪拌して、反応生成物を得た。その後、PGMEA25重量部を仕込み固形分が50質量%となるように調整した。
【0201】
次いで、得られた反応生成物にBPDA19重量部(0.07mol)およびTHPA0.30重量部(0.002mol)を加え、115~120℃で6時間攪拌し、不飽和基含有硬化性樹脂(B2)-3を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は56質量%であり、酸価(固形分換算)は97mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは4700であった。
【0202】
表1~表4に記載の配合量(単位は質量部)で接着剤層形成用組成物を調製した。表1~表4で使用した配合成分は以下のとおりである。
【0203】
(紫外線吸収基を有する不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂)
(A)-1: 合成例A-1で得られた樹脂溶液 (固形分濃度30質量%)
(A)-2: 合成例A-2で得られた樹脂溶液 (固形分濃度30質量%)
(A)-3: 合成例A-3で得られた樹脂溶液 (固形分濃度30質量%)
(A)-4: 合成例A-4で得られた樹脂溶液 (固形分濃度30質量%)
(A)-5: 合成例A-5で得られた樹脂溶液 (固形分濃度30質量%)
(A)-6: 合成例A-6で得られた樹脂溶液 (固形分濃度30質量%)
(A)-7: 合成例A-7で得られた樹脂溶液 (固形分濃度30質量%)
(A)-8: 合成例A-8で得られた樹脂溶液 (固形分濃度30質量%)
(A)-9: 合成例A-9で得られた樹脂溶液 (固形分濃度30質量%)
(A)-10:合成例A-10で得られた樹脂溶液(固形分濃度30質量%)
(A)-11:合成例A-11で得られた樹脂溶液(固形分濃度30質量%)
(A)-12:合成例A-12で得られた樹脂溶液(固形分濃度30質量%)
(A)-13:合成例A-13で得られた樹脂溶液(固形分濃度30質量%)
【0204】
(紫外線吸収基を有さない重合性化合物)
(B1)-1:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサアクリレートとの混合物(DPHA、日本化薬株式会社製)
(B1)-2:トリメチロールプロパントリアクリレートのエチレンオキサイド6モル付加物(アロニックスM-360、東亞合成株式会社製)
(B1)-3:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのエチレンオキサイド12モル付加物(KAYARAD DPEA-12、日本化薬株式会社製)
(B1)-4:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのε-カプロラクトン6モル付加物(KAYARAD DPCA-60、日本化薬株式会社製)
(B2)-1: 合成例B2-1で得られた樹脂溶液 (固形分濃度57質量%)
(B2)-2: 合成例B2-2で得られた樹脂溶液 (固形分濃度57質量%)
(B2)-3: 合成例B2-3で得られた樹脂溶液 (固形分濃度56質量%)
【0205】
(光重合開始剤)
(C)-1:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)(Irgacure OXE-02、BASFジャパン社製、「Irgacure」は同社の登録商標)
(C)-2:オキシムエステル系光重合開始剤(アデカアークルズNCI-831E、株式会社ADEKA製)
(C)-3:2-[4-(メチルチオ)ベンゾイル]-2-(4-モルホリニル)プロパン(「Omnirad907」IGM Resins B.V.社製、「Omnirad」は同社の登録商標)
【0206】
(エポキシ樹脂)
(D):テトラメチルビフェノール型固形エポキシ樹脂(jER YX4000HK、三菱ケミカル株式会社製、エポキシ当量180g/eq)
【0207】
(溶剤)
(E):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
【0208】
(カルボキシル基および不飽和基を含有しない紫外線吸収剤)
(X):高分子型紫外線吸収樹脂(UVA-5080、新中村化学株式会社製)
【0209】
【表1】
【0210】
【表2】
【0211】
【表3】
【0212】
【表4】
【0213】
[評価]
上記接着剤層形成用組成物を硬化してなる硬化膜を用いて、以下の評価を行った。なお、参考例1~3の硬化膜については、透過率評価、レーザー加工性評価、接着強度の評価、耐熱性評価のみを行った。
【0214】
[透過率・レーザー加工性評価用の硬化膜付き基板の作製]
それぞれの接着剤層形成用組成物を、予め低圧水銀灯で波長254nmの照度1000mJ/cmの紫外線を照射して表面を洗浄した、125mm×125mmの合成石英ガラス基板(以下「石英ガラス基板」という)上に、加熱硬化処理後の膜厚が1.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で3分間プリベークをして乾燥膜を作製した。次いで、熱風乾燥機を用いて250℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、硬化膜(塗膜)付き基板を得た。なお、上記合成石英ガラス基板の、350nm以上450nm以下の波長の光の透過率は、上記波長の全範囲で90%以上である。
【0215】
なお、上記透過率は、紫外可視赤外分光光度計「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、石英ガラス単体の透過率をベースラインとして測定された値である。
【0216】
[透過率評価]
紫外可視赤外分光光度計「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、本硬化後の上記硬化膜付き基板の波長355nmおよび400nmにおける透過率を測定した。
【0217】
[レーザー加工性(剥離性)評価]
(評価方法)
本硬化後の硬化膜に対して、フラッシュランプ励起Nd:YAG Q-SWレーザー発振器「Callisto」(株式会社ブイ・テクノロジー製)を用いて、レーザー(レーザー波長:355nm)を石英ガラス基板側から照射した。100~600mJ/cmのレーザーエネルギーで硬化膜の加工(塗膜除去)を行い、加工した硬化膜を光学顕微鏡にて観察した。なお、△以上を合格とした。
【0218】
(評価基準)
◎:400mJ/cm以下でレーザー照射部に塗膜残渣がない
○:400mJ/cm超500mJ/cm以下でレーザー照射部に塗膜残渣がない
△:500mJ/cm超600mJ/cm以下でレーザー照射部に塗膜残渣がない
×:600mJ/cm超でレーザー照射部に塗膜残渣がある
【0219】
[接着強度評価用の硬化膜付き基板の作成]
それぞれの接着剤層形成用組成物を、ガラス基板「#1737」上に、加熱硬化処理後の膜厚が5.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で3分間プリベークをして乾燥膜を作製した。次いで、乾燥膜上に2mm×2mmにカットしたガラス基板「#1737」を置き、110℃のホットプレート上で1分間加熱し仮接着した。その後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、硬化膜付き基板を得た。
【0220】
[接着強度(せん断強度)の評価]
(評価方法)
硬化膜上に接着した2mm×2mmのガラス基板「#1737」について、ダイシェアテスター(アークテック社製)で接着強度の試験を実施した。なお、△以上を合格とした。
【0221】
(評価基準)
◎:接着強度が、20MPa以上である
○:接着強度が、10MPa以上、20MPa未満である
△:接着強度が、5MPa以上、10MPa未満である
×:接着強度が、5MPa未満である
【0222】
[現像性評価用の硬化膜付き基板の作製]
それぞれの接着剤層形成用組成物を、ガラス基板「#1737」上に、加熱硬化処理後の膜厚が5.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で3分間プリベークをして乾燥膜を作製した。次いで、上記乾燥膜上に10~50μm(5μm刻み)のネガ型フォトマスクを被せ、i線照度30mW/cmの高圧水銀ランプで500mJ/cmの紫外線を照射して光硬化反応を行った。
【0223】
次いで、露光した上記硬化膜を25℃、0.8%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により、Dip現像を行い、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から20秒間、現像処理を行った後、水洗を行い、上記硬化膜の未露光部分を除去してガラス基板上に硬化膜パターンを形成し、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、現像評価用の硬化膜付き基板を得た。
【0224】
上記現像特性評価用の硬化膜付き基板を用いて以下の評価を行った。
【0225】
[現像性評価]
(パターン形成性)
(評価方法)
本硬化(ポストベーク)後の20μmマスクパターンを光学顕微鏡で観察した。なお、△以上を合格とした。
【0226】
(評価基準)
〇:パターン形成されている
△:一部がパターン形成されていない
×:パターンが形成されていない
【0227】
[耐熱性評価・耐薬品性・洗浄性評価用の硬化膜の作製]
それぞれの接着剤層形成用組成物を、ガラス基板「#1737」上に、加熱硬化処理後の膜厚が5.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で3分間プリベークをして乾燥膜を作製した。その後、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、硬化膜付き基板を得た。なお、耐熱性評価の際には、得られた硬化膜を削り出して、TG-DTAの測定に用いた。
【0228】
[耐熱性評価]
(評価方法)
得られた硬化膜の粉末を、TG-DTA装置「TG/DTA6200」(セイコーインスツルメンツ株式会社製)を用いて、空気中、30℃から400℃まで昇温速度5℃/minで昇温し、検体の重量が5%減少する温度を測定した。なお、△以上を合格とした。
【0229】
(評価基準)
○:5%重量減少温度が、280℃以上である
△:5%重量減少温度が、250℃以上、280℃未満である
×:5%重量減少温度が、250℃未満である
【0230】
[耐溶剤性評価]
(評価方法)
得られた硬化膜付き基板の硬化膜(塗膜)を、N-メチルピロリドンに10分間浸漬した後、洗浄・乾燥した。その後、試験後の硬化膜(塗膜)の膜厚を触針式段差形状測定装置「P-17」(ケーエルエー・テンコール株式会社製)を用いて測定した。なお、△以上を合格とした。
【0231】
耐薬品性評価における残膜率は、試験前の膜厚をL1とし、試験後の膜厚をL2として、下記式から算出した。
残膜率(%)=L2/L1×100
【0232】
(評価基準)
○:残膜率が90%以上である
△:残膜率が80%以上、90%未満である
×:残膜率が80%未満である
【0233】
[洗浄性評価]
(評価方法)
得られた硬化膜付き基板の硬化膜(塗膜)を、洗浄液「NK poleve 480」(日本化薬株式会社製)に室温で10分間浸漬し、硬化膜(塗膜)の洗浄を行った。その後、試験後のガラス基板を洗浄・乾燥し、光学顕微鏡にてガラス基板上の残渣の有無を確認した。なお、△以上を合格とした。
【0234】
(評価基準)
○:ガラス基板上に、残渣が認められない
△:ガラス基板上の一部に、残渣が認められる
×:ガラス基板上の全面に、残渣が認められる
【0235】
評価結果を表5~表9に示す。
【0236】
【表5】
【0237】
【表6】
【0238】
【表7】
【0239】
【表8】
【0240】
【表9】
【0241】
表5~表8に示されるように、上述した接着剤層形成用組成物を接着剤層に用いた積層体は、波長355nmの透過率が低く、波長355nmのレーザーによる加工性(剥離性)に優れることがわかった。これは、(A)成分の添加により、当該波長の光が効率的に接着剤層に吸収され、接着剤層が変質・分解したためと考えられる。
【0242】
また、(A)成分の添加量を固形分の全質量に対して10質量%以上とすることで、良好なレーザー加工性(剥離性)を担保しつつ、パターニング性に優れた硬化膜が得られることがわかった。これは、(A)成分の不飽和基により塗膜乾燥後の感度が向上し、カルボキシル基により現像液溶解性が向上したため、添加量が高い場合においても現像特性が担保されたためと考えられる。
【0243】
さらに、(A)成分の添加量を固形分の全質量に対して10質量%以上80質量%以下とすることで、良好なレーザー加工性(剥離性)を担保しつつ、パターニング性、接着強度、耐薬品性に優れた硬化膜が得られることがわかった。これは、(B1)成分または(B2)成分の不飽和基が重合することにより熱硬化し、硬化膜の強度を向上するとともに溶剤への溶出が抑制されるためと考えられる。
【0244】
また、(B1)成分として(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性体またはラクトン変性体を含む接着剤層形成用組成物は、接着強度に優れることがわかった。これは、(B1)成分として加熱時の流動性が高い化合物を含むことにより、加熱接着時の乾燥膜の流動性が向上し、被着体に追従するためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0245】
本発明は、様々な製品の製造時に使用され得る接着剤を有する積層体を提供することができる。特に、半導体ウエハ等の支持体に仮止めして加工する工程にとって好適な積層体を提供することができる。