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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094282
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】家畜用飼料
(51)【国際特許分類】
   A23K 40/10 20160101AFI20240702BHJP
   A23K 10/37 20160101ALI20240702BHJP
【FI】
A23K40/10
A23K10/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216435
(22)【出願日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2022209396
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 一寿
【テーマコード(参考)】
2B150
【Fターム(参考)】
2B150AA03
2B150AA05
2B150AA06
2B150AA20
2B150AB20
2B150AE22
2B150BE01
2B150CA22
2B150CA24
2B150CA26
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、一定の粗繊維含有量を有する飼料を使用する際に、糞量を効果的に低減できる家畜用飼料を提供することである。
【解決手段】中心粒子径が200μm以下であり、粗繊維含有量が8~38質量%である飼料によって、家畜の糞量を効果的に低減することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心粒子径が200μm以下であり、粗繊維含有量が8~38質量%である家畜用飼料。
【請求項2】
植物油を製造する際の油粕を原料とする、請求項1に記載の飼料。
【請求項3】
前記家畜が反芻胃を持たない家畜である、請求項1に記載の飼料。
【請求項4】
家畜の糞量を低減させるための飼料である、請求項1に記載の飼料。
【請求項5】
粒子径が305μm以上の粒子の割合が10%以下である、請求項1に記載の飼料。
【請求項6】
粗蛋白含有量が15~50質量%である、請求項1に記載の飼料。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の飼料を1~30質量%含む配合飼料。
【請求項8】
粗繊維含有量が8~38質量%である原料を、中心粒子径が200μm以下になるまで粉砕する工程を含む、家畜用飼料の製造方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれかに記載の飼料を家畜に給餌することを含む、家畜の糞量を低減させる方法。
【請求項10】
請求項8に記載の配合飼料を家畜に給餌することを含む、家畜の糞量を低減させる方法。
【請求項11】
請求項1~6のいずれかに記載の飼料を家畜に給餌することを含む、家畜の飼育方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜用の飼料に関する。特に本発明は、糞量を低減することのできる家畜用飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
畜産業界において、家畜排泄物の適切な処理が求められており、多大な労力とコストが費やされている。
【0003】
例えば、飼料加工の面からは、飼料をペレット加工したり、エキスパンダー加工したりすることによって排泄物量を低減することが提案されている。また、飼料配合の面からも、家畜の発育を維持しながら排泄物を減らす技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、特定量のβ-グルカナーゼとキシラナーゼとペクチナーゼを配合した飼料を豚に給餌することによって豚の糞排泄量を低減することが提案されている。また、特許文献2には、ダッタンソバを含有する飼料によって家畜や家禽の排泄物量を低減することが提案されている。さらに、特許文献3には、蛋白質含量が41%以上であり粗繊維が8%以下の菜種粕を0.1~30%配合した飼料によって家畜の排泄物量を低減することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-299236号公報
【特許文献2】特開2006-174790号公報
【特許文献3】国際公開2009/157112
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、飼料配合の面から家畜の糞を減らす技術が提案されてきたが、特殊な飼料原料が必要だったり、その効果が十分でなかったりした。
【0007】
このような状況に鑑み、本発明の課題は、一定の粗繊維含有量を有する飼料を使用する際に、糞量を効果的に低減することのできる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、一定の粗繊維含有量を有する飼料を微粉砕することによって、糞量を効果的に低減することに成功した。さらに、飼料要求率を低減させることができることを見出した。
【0009】
これに限定されるものではないが、本発明は、以下の態様を包含する。
[1] 中心粒子径が200μm以下であり、粗繊維含有量が8~38質量%である家畜用飼料。
[2] 植物油を製造する際の油粕を原料とする、[1]に記載の飼料。
[3] 前記家畜が反芻胃を持たない家畜である、[1]に記載の飼料。
[4] 家畜の糞量を低減させるための飼料である、[1]に記載の飼料。
[5] 粒子径が305μm以上の粒子の割合が10%以下である、[1]に記載の飼料。
[6] 粗蛋白含有量が15~50質量%である、[1]に記載の飼料。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の飼料を1~30質量%含む配合飼料。
[8] 粗繊維含有量が8~38質量%である原料を、中心粒子径が200μm以下になるまで粉砕する工程を含む、家畜用飼料の製造方法。
[9] [1]~[6]のいずれかに記載の飼料または[7]に記載の配合飼料を家畜に給餌することを含む、家畜の糞量を低減させる方法。
[10] [1]~[6]のいずれかに記載の飼料または[7]に記載の配合飼料を家畜に給餌することを含む、家畜の飼育方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の飼料によれば、一定の粗繊維含有量を有する飼料を使用する際に、家畜の発育を維持しつつ、糞量を効果的に低減することができる。また、本発明の飼料によれば、一定の粗繊維含有量を有する飼料を使用する際に、卵などの生産量を低下させることなく、糞量を効果的に低減することができる。さらに、本発明の飼料によれば、一定の粗繊維含有量を有する飼料を使用する際に、飼料要求率を低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は家畜用飼料に関しており、本発明に係る飼料は、中心粒子径が200μm以下と微細であり、粗繊維含有量が8~38質量%である。
【0012】
本発明に係る飼料は家畜用であり、本発明に係る家畜は、その生産物(乳、肉、卵、毛、皮、毛皮など)または能力(力、感覚など)を人が利用するために馴致・飼育している動物を意味する。家畜は、例えば、豚、鳥類、馬、犬、魚類などの反芻胃を持たない家畜はもちろん、例えば、牛、羊、ヤギなどの反芻家畜であってもよいが、反芻胃を持たない動物であることが好ましく、豚、鳥類、馬、犬などの単胃動物であることがより好ましい。一般に飼料の消化吸収は、反芻胃を持たない家畜では小腸において、反芻家畜では胃において、盛んに行われている。また、単胃家畜の小腸における消化吸収には、腸液、膵液、小腸の微絨毛に存在する膜酵素などが関与し、単胃家畜間で大きな差は見られない。本発明に係る単胃家畜は、好ましくは豚、鳥類であり、より好ましくは鳥類である。鳥類は、鶏、ウズラ、七面鳥、アヒル、ガチョウなどである。より好ましくは鶏であり、さらに好ましくは成鶏である。本発明に係る成鶏は、産卵開始後の鶏で種鶏以外のものをいう。
【0013】
本発明に係る飼料は、中心粒子径が200μm以下と微細であり、これによって、一定の粗繊維含有量を有する飼料を使用する際に、糞量を効果的に低減することができ、また、飼料要求率を低減させることができる。本発明に係る飼料の中心粒子径は、180μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、120μm以下や110μm以下としてもよい。また、本発明に係る飼料の中心粒子径の下限値は、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、40μm以上さらに好ましく、50μm以上がよりさらに好ましい。中心粒子径の下限値をこの範囲にすることで、粉舞いが抑えられ、他の資材との混合や飼料形態の加工、給餌の際の作業性が向上する。
【0014】
本発明に係る飼料は、515μm以上の粒子の割合が10%以下であることが好ましく、5%以下がより好ましく、2%以下や1%以下であってもよい。また、本発明に係る飼料は、305μm以上の粒子の割合が30%以下であることが好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下、7%以下、5%以下であってもよい。飼料に含まれる粗大な粒子を少なくすることによって、一定の粗繊維含有量を有する飼料を使用する際に、糞量をより効果的に低減すること、また、飼料要求率を低減させることが期待できる。
【0015】
本技術において、飼料の中心粒子径、粒子径515μm以上の粒子の割合、粒子径305μm以上の粒子の割合は、体積基準の粒子径累積分布から決定することができ、レーザー回折式の粒度分布測定装置を用いて測定することができる。具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、フラウンホーファー回折によって体積基準の粒子径分布を得て、体積基準での積算分析曲線の50%に相当する粒子径を中心粒子径とすればよい。また、得られた粒子分布から、粒子径515μm以上の粒子の割合、粒子径305μm以上の粒子の割合を算出することができる。
【0016】
本発明に係る飼料は、乾物換算の粗繊維含有量が8~38質量%である。乾物換算の粗繊維含有量は飼料分析基準の濾過法に基づいて測定すればよい。本発明に係る飼料の粗繊維含有量は、9~30質量%が好ましく、9.5~25質量%、10~20質量%、10.2~15質量%であってもよい。本発明に係る飼料において乾物換算の粗蛋白含有量は特に制限されないが、例えば、10~70質量%であり、15~60質量%や20~55質量%、25~52質量%、30~50質量%であってもよい。乾物換算の粗蛋白含有量は飼料分析基準のケルダール法に基づいて測定すればよい。
【0017】
本発明に係る飼料を調製するための原料は特に制限されないが、例えば、植物油を製造する際の油粕をはじめ、燕麦、モミ米、モミ、小麦ふすま、グルテンフィード、醤油粕、ビール粕、豆腐粕、ビートパルプなどを好適に使用することができる。好ましい態様において、本発明に係る飼料の原料として粗繊維が8~38質量%の飼料を1種または2種以上用いることができる。また、粗繊維が8~38質量%になるように、一般的に飼料に使用されている任意の材料を混合して、原料として用いることができる。好ましい態様において、粗繊維含有量が9~30質量%であり、9.5~25質量%、10~20質量%、10.2~15質量%であってもよく、植物油を製造する際の油粕であることがより好ましい。なお、植物油を製造する際の油粕とは、菜種など種々の植物原料から植物油が製造する際に副生する残渣であり、例えば、菜種粕、米糠、コーンジャームミール、綿実粕、ゴマ粕、ヤシ粕、パーム核粕、ひまわり粕、カポック粕、エゴマ粕、サフラワー粕などが挙げられる。また、本発明に係る飼料を調整するための原料の別の好ましい態様は、粗蛋白含有量が10~70質量%であり、15~60質量%や20~55質量%、25~52質量%、30~50質量%であってもよい。さらに、本発明に係る飼料を調整するための原料の別の好ましい態様は、中心粒子径が300μm以上、より好ましくは500μm以上であり、粒子径515μm以上の粒子の割合が25%以上、より好ましくは50%以上であり、粒子径305μm以上の粒子の割合が55%以上、より好ましくは70%以上である。
【0018】
本発明に係る飼料の製造方法は特に限定されず、常法に従って製造すればよい。例えば、一般的な粉砕機(ピンミル、ハンマーミル、ターボミル、ジェットミル、ローターミルなど)を用いた粉砕工程、分級工程などによって粒度構成を調整することができる。また、分級機を内蔵した粉砕機を用いても良い。本発明に係る飼料は、例えば、中心粒子径が200μm以下になるようにピンミルなどの粉砕機で原料を粉砕して製造すればよい。好ましい態様において、本発明に係る飼料の製造方法は、原料を本発明に係る飼料の粒子径の規定範囲になるように粉砕する粉砕工程を含む。また、本発明の好ましい態様において、原料と本発明に係る飼料の粗繊維含有量の差が3質量%以下となる製造方法であり、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、実質的に差がないのがよりさらに好ましい。
【0019】
本発明に係る飼料は、中心粒子径が200μm以下であり、粗繊維含有量が8~38質量%であるが、一つの態様において、このような飼料を他の飼料と混合して配合飼料としてもよい。混合する他の飼料は、給餌する家畜やその生育段階にあわせて適宜調整できる。配合飼料中の本発明に係る飼料の含有量は、特に限定されず、例えば1~30質量%であり、3~27質量%、5~25質量%、7~23質量%であってもよい。
【0020】
本発明に係る配合飼料には、本発明の効果を阻害しない限り、一般的に飼料に使用されている任意の材料を使用することができる。例えば、トウモロコシ、マイロ、大麦、小麦、ライ麦などの穀類;穀類の外皮などの糟糠類;魚粉、肉骨粉などの動物性飼料;オリゴ糖などの糖類;動物性油脂や植物性油脂などの油脂;ビタミンB1及びビタミンEなどの各種ビタミン類;食塩、ケイ酸、炭酸カルシウム、第3リン酸カルシウムなどのミネラル類;アミノ酸類;有機酸類などを配合することができる。
【0021】
本発明に係る飼料、本発明に係る配合飼料の形態は、特に制限されず、給餌する対象の種類、飼育期間などに合わせて適宜選択することができる。例えば、マッシュ飼料、ペレット飼料、クランブル飼料、エキスパンダー飼料、フレーク飼料などをそのまま、もしくはそれらを混合したものを選択してもよい。マッシュ飼料は、穀類原料を粉砕したものに粉状の原料や液体原料を混ぜ合わせたもの、ペレット飼料は、マッシュ飼料に水蒸気等により水分を加えて加熱調湿し加圧成形したもの、クランブル飼料は、ペレット飼料を荒砕きしたもの、エキスパンダー飼料は、水蒸気を加え高い圧力で押出造粒したもの、フレーク飼料は、穀類原料に水蒸気等により水分を加えて加熱調湿しロールでフレーク状にしたものである。本発明に係る飼料、本発明に係る配合飼料を前述の形態とする際は、本発明に係る飼料の粒子径の規定範囲になるように製造した後に加工する。例えば、任意の材料と適宜混ぜ合わせ、前述の形態に加工してもよいし、前述の形態に加工した任意の材料と適宜混ぜ合わせてもよい。
【0022】
一つの態様において、本発明は飼料の製造方法である。本発明に係る飼料は、粗繊維含有量が8~38質量%である原料を、中心粒子径が200μm以下になるまで粉砕することによって製造することができる。
【0023】
原料の混合には、公知の手段を用いればよく、例えば、一軸または二軸ミキサー、ボールカッター、サイレントカッターなどの裁断混合機、粉砕混合機などを用いることができる。各原料はすべて同時に混合してもよく、一部の材料をあらかじめ混合した後に残りの材料を混合するなど、複数回に分けて混合してもよい。各原料は、混合前に粉砕・解砕等の前処理を行ったりすることも可能である。
【0024】
本発明においては、本発明に係る飼料が適当な水分となるように乾燥してもよい。乾燥するタイミングに制限はなく、原料を乾燥しても、本発明に係る飼料の製造途中または製造後に乾燥してもよい。乾燥は、公知の手段を用いればよく、例えば、自然乾燥、通風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥などの方法で行うことができる。一つの態様において、水分含有量を1~15質量%程度に乾燥することが好ましく、水分含有量を5~15質量%にすることがより好ましい。水分含有量が低いと粉舞いしやすくなるため作業性が悪くなり、水分含有量が高いと腐敗しやすく保存性に問題が生じる。飼料の水分含有量は、飼料分析基準に記載の加熱減量法に基づいて測定することが可能である。
【0025】
一つの態様において本発明は、上述した飼料や配合飼料を給餌することを含む、家畜の飼育方法であり、さらに本発明は、上述した飼料や配合飼料を家畜に給餌することを含む、糞量を低減する方法である。加えて、本発明は、上述した飼料や配合飼料を家畜に給餌することを含む、飼料要求率を低減する方法である。本発明においては飼育の全期間にわたって本発明の飼料や配合飼料のみを給餌することもできるが、一定の期間のみ本発明の飼料や配合飼料を給餌することが可能であり、他の飼料と併用してもよい。例えば、豚に給餌する場合、特に限定されないが、豚人工乳後期、子豚期、肉豚期、種豚期から選択される1以上の期間の一部又はすべてで給餌することが好ましい。本発明において、家畜に給餌する飼料全量中の本発明に係る飼料の含有量は、給餌する家畜やその生育段階にあわせて適宜調整でき、例えば1~30質量%であり、3~27質量%、5~25質量%、7~23質量%であってもよい。
【実施例0026】
以下、具体例を挙げながら本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の具体例に限定されるものではない。また、本明細書において、特に記載しない限り、濃度などは質量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0027】
実験1
1-1.飼料の調製
植物油粕を原料として、下表に示す中心粒子径を有する飼料を調製した。具体的には、市販の菜種粕(昭和産業)および脱脂米糠(ボーソー油脂)を粉砕機で粉砕して飼料を調製した。
(粉砕機)
・ピンミル(コロプレックス160Z、槇野産業)
・ターボミル(T400、フロイント・ターボ)
・ローターミル(ZM200、Retsch)
また、得られた飼料について、下記の方法で粗繊維含有量などを測定した。
・水分含有量
飼料分析基準に記載の加熱減量法に基づいて測定した。
・乾物換算の粗繊維含有量
飼料分析基準の濾過法に基づき粗繊維含有量を測定し、水分含量から乾物換算の粗繊維含有量を算出した。
・乾物換算の粗蛋白含有量
飼料分析基準のケルダール法に基づき粗蛋白含有量を測定し、水分含量から乾物換算の粗蛋白含有量を算出した。
・飼料の粒度分布
レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した。具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置(HELOS&RODOS、日本レーザー)を用いて、フラウンホーファー回折によって体積基準の粒子径分布を得て、体積基準での積算分析曲線の50%に相当する粒子径を中心粒子径(D50)とした。また、得られた粒子分布から、粒子径515μm以上の粒子の割合、粒子径305μm以上の粒子の割合を算出した。なお、分析条件は、分散圧2bar、測定レンジR5とした。
【0028】
1-2.消化性の評価
調製した飼料について、下記の手順に基づいて消化性を評価した。
(1)人工消化液の調製
下記のようにして、人工胃消化液と人工小腸消化液を調製した。
・人工胃消化液: ブタ胃粘膜由来ペプシン(Sigma Aldrich)を最終濃度8000U/mLになるように、10mM NaClと0.15mM CaClを含む20mM リン酸緩衝液(pH2)に溶解し、人工胃消化液を得た。なお、ペプシンの酵素活性は、37℃、pH2の条件下で、1分当たり280nmの吸光度が0.001変化させる酵素量を1Uとした。
・人工小腸消化液: ブタ膵臓由来パンクレアチン(Sigma Aldrich)を最終濃度200U/mL、ブタ胆汁抽出物(Sigma Aldrich)をグリコケノデオキシコール酸の最終濃度20mMになるように、10mM NaClと0.6mM CaClを含む20mM リン酸緩衝液(pH7)に溶解し、人工小腸消化液を得た。なお、パンクレアチンの酵素活性は、トリプシン活性で評価し、25℃、pH8.1の条件下で、1分間当たりp-トルエンスルホニル-L-アルギニンメチルエステルを1μmol加水分解する酵素量を1Uとした。
(2)消化性試験
試料0.5gに人工胃消化液10mLを添加し、塩酸を用いてpH2.0に調整後、37℃、4時間反応させた。その後、水酸化ナトリウムを用いてpH7.0に調整し、人工小腸消化液を10mL添加、37℃、4時間反応させた。反応液を遠心分離して上清を捨て、水洗いし、反応残渣を回収した。
【0029】
次いで、試料及び反応残渣の水分含有量を測定し、下式に基づいて消化率を算出した。
・消化率(%)=(1-残渣の乾物質量/試料の乾物質量)×100
また、試料及び反応残渣の粗蛋白含有量を測定し、下式に基づいて、粗蛋白の消化率を算出した。
・粗蛋白の消化率(%)=(1-残渣の粗蛋白質量/試料の粗蛋白質量)×100
【0030】
【表1】
【0031】
上記の表から明らかなように、飼料原料を微粉砕することによって、粗繊維含有量や粗蛋白含有量に影響を及ぼすことなく、消化率及び粗蛋白の消化率が向上した。これより、飼料を微粉砕することによって家畜の糞量を低減できることが期待された。
【0032】
実験2
2-1.飼料の調製
下表に示す配合に基づいて飼料組成物(配合飼料)を調製した。菜種粕は実験1の試料調製に使用した市販の菜種粕(試験番号1-1)、実験1で調製した微粉砕菜種粕(飼料番号1-4)を用いて、トウモロコシ、大豆粕、コーングルテンミール、動物性油脂(飼料用油脂、YG)は一般的なものを使用した。参考までに、中央畜産会の「日本標準飼料成分表(2009年版)」に記載の飼料番号、粗繊維及び粗蛋白、粗脂肪の含有量(平均値)を以下に記載する(ただし、粗蛋白、粗脂肪、粗繊維の含有量は乾物換算の値ではない)。
・トウモロコシ(飼料番号5501、粗蛋白質:約7.6質量%、粗脂肪:約3.8質量%、粗繊維:約1.7質量%)
・大豆粕(飼料番号7451、粗蛋白質:約45.0質量%、粗脂肪:約1.9質量%、粗繊維:約5.3質量%)
・コーングルテンミール(飼料番号7771、粗蛋白質:約63.7質量%、粗脂肪:約2.5質量%、粗繊維:約0.8質量%)
・動物性油脂(飼料番号8950、粗脂肪:約99.0質量%)
2-2.家畜への給餌
上記のようにして調製した飼料組成物を、下記の条件で家畜(採卵鶏)へ給餌した。
(給餌試験条件)
・馴致期間:7日間
・試験期間:3日間
・家畜:採卵鶏(給与開始時において606日齢)
・羽数:各試験区について10羽
・給餌方法:1200g/日(120g/羽/日)を給与して24時間後に残餌を回収
2-3.糞量の評価
馴致期間の最後の1日および試験期間の3日間、糞回収板を用いて24時間ごとに糞を回収した。回収した生糞について、飼料分析基準に記載の加熱減量法に基づいて水分含有量を測定し、乾燥糞量を算出した。
【0033】
【表2】
【0034】
飼料摂取量当たりの生糞量及び乾燥糞量を表に示す。微粉砕した菜種粕(中心粒子径:60μm)を配合した飼料を給餌することによって、菜種粕(中心粒子径:808μm)を配合した飼料を与えた場合に比べて、飼料摂取量当たりの生糞量及び乾燥糞量が減少した。
【0035】
実験3
3-1.飼料の調製と給餌
下表に示す配合に基づいて実験2と同様に飼料を調製し、下記の条件で家畜(採卵鶏)へ給餌した。
(給餌試験条件)
・試験期間:19日間
・家畜:採卵鶏(給与開始時において614日齢)
・羽数:各試験区について20羽(ただし、糞の採取は10羽)
・給餌方法:1200g/日(120g/羽/日)を給与して24時間後に残餌を回収
3-2.糞量の評価
試験期間の19日間、実験2と同様にして糞を回収して、乾燥糞量を算出した。また、本実験においては日卵量も測定した。日卵量は、1日分の総卵重量を鶏の羽数で割った値とした。飼料要求率は、全期間の総飼料摂取量を全期間の総卵重量で割って算出した。
【0036】
【表3】
【0037】
日卵量、飼料要求率、飼料摂取量当たりの生糞量及び乾燥糞量を表に示す。微粉砕した菜種粕(中心粒子径:60μm)を配合した飼料を給餌することによって、菜種粕(中心粒子径:808μm)を配合した飼料に比べて、日卵量を低下させることなく、飼料摂取量当たりの生糞量及び乾燥糞量が減少し、飼料要求率が減少した。また、菜種粕を微粉砕した菜種粕に置き換える量を増やすことで、効果は高まった。
【0038】
実験4
4-1.飼料の調製
下表に示す配合に基づいて、可消化養分総量(TDN)が約80%である飼料組成物(配合飼料)を調製した。菜種粕は実験1の試料調製に使用した市販の菜種粕(試験番号1-1)、実験1で調製した微粉砕菜種粕(飼料番号1-4)を用いて、トウモロコシ、大豆粕、動物性油脂(飼料用油脂、YG)は一般的なものを使用した。なお、本実験においては、ペレットクランブル加工した菜種粕および微粉砕菜種粕を飼料組成物に配合した。すなわち、菜種粕および微粉砕菜種粕は、ペレットミル(CPM社)で造粒してから、テストミル(サタケ)で粒子径が約2~4mmになるように粉砕してから使用した。
【0039】
4-2.家畜への給餌
上記のようにして調製した飼料組成物を、下記の条件で家畜(豚)へ給餌した。
(給餌試験条件)
・試験期間:20日間
・家畜:豚(試験開始時において約57日齢、平均体重18.7kg)
・頭数:各試験区について18頭
・給餌方法:飽食給餌
4-3.糞量および飼料要求率の評価
糞量および乾物糞量は、事前に採便用個体を各試験区について3頭識別した上で、6回(試験18日目、19日目、20日目の9時と15時)直腸便を採取し、採取した生糞について、飼料分析基準に記載の加熱減量法に基づいて水分含有量(質量%)を測定し、乾燥糞量を算出した。なお、本実験においては、飼料に約0.3質量%の指標物質(含水非晶質二酸化ケイ素、カープレックス#80、エボニックジャパン)を配合し、指標物質を定量することによって飼料摂取量当たりの糞量を算出した。
【0040】
飼料要求率は、試験開始時と試験終了時に体重を測定し、各試験区すべての豚の総体重増加量を算出した上で、試験期間中の総飼料摂取量を総体重増加量で除して算出した。
【0041】
【表4】
【0042】
飼料要求率、飼料摂取量当たりの生糞量および乾燥糞量を表に示す。微粉砕した菜種粕(中心粒子径:60μm)を配合した飼料は、微粉砕していない菜種粕(中心粒子径:808μm)を配合した飼料に比べて、飼料摂取量当たりの生糞量および乾燥糞量が減少し、飼料要求率が低くなった。また、本発明による効果は、微粉砕した菜種粕にペレットクランブル加工を施した場合でも発揮されることが確認できた。