(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094338
(43)【公開日】2024-07-09
(54)【発明の名称】タッチパネル用導電部材およびタッチパネル
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20240702BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G06F3/041 490
G06F3/044 122
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024060520
(22)【出願日】2024-04-04
(62)【分割の表示】P 2022545514の分割
【原出願日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2020143351
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和弘
(57)【要約】
【課題】画像表示装置に使用した際のモアレの発生を抑制しつつ、ざらつき感を低減することができるタッチパネル用導電部材およびタッチパネルを提供する。
【解決手段】タッチパネル用導電部材は、導電層が、平面視において、変形された菱形からなる複数の不規則なメッシュセルを含み且つ複数の金属細線により形成されるメッシュパターンを有し、複数の金属細線(E1~E4)は、変形された菱形の鋭角(A1、A2)を挟むように延びる少なくとも1対の金属細線(E1~E4)を含み、1対の金属細線(E1~E4)のうち少なくとも一方の金属細線(E1~E4)は、1対の金属細線(E1~E4)が互いに交差する交差部(CP1)に向かって鋭角(A1、A2)の内側に屈曲する屈曲部(B1、B2)を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明絶縁基板と、前記透明絶縁基板の少なくとも一方の面上に配置された導電層とを含むタッチパネル用導電部材であって、
前記導電層は、平面視において、変形された菱形からなる複数の不規則なメッシュセルを含み且つ複数の金属細線により形成されるメッシュパターンを有し、
前記複数の金属細線は、前記変形された菱形の鋭角を挟むように延びる少なくとも1対の金属細線を含み、
前記1対の金属細線のうち少なくとも一方の金属細線は、前記1対の金属細線が互いに交差する交差部に向かって前記鋭角の内側に屈曲する屈曲部を有するタッチパネル用導電部材。
【請求項2】
前記変形された菱形は、規則的な菱形の参照メッシュセルの少なくとも1つの頂点を一定の範囲内においてランダムに再配置させた形状、または、規則的な菱形の参照メッシュセルの互いに平行な少なくとも1対の辺の間隔を一定の範囲内においてランダムに変化させた形状を有し、前記参照メッシュセルに対して2%以上10%以下の不規則性を有する請求項1に記載のタッチパネル用導電部材。
【請求項3】
前記交差部における前記1対の金属細線の交差角度は直角である請求項1または2に記載のタッチパネル用導電部材。
【請求項4】
前記屈曲部における屈曲の起点は、前記交差部から、対応する前記変形された菱形の辺の長さの1/10以内の距離の位置にある請求項1~3のいずれか一項に記載のタッチパネル用導電部材。
【請求項5】
前記屈曲部は、直線形状または曲線形状を有する請求項1~4のいずれか一項に記載のタッチパネル用導電部材。
【請求項6】
前記1対の金属細線は、同一面上に配置され、前記交差部において互いに電気的に接続されている請求項1~5のいずれか一項に記載のタッチパネル用導電部材。
【請求項7】
前記1対の金属細線は、互いに異なる面上に配置され、前記交差部において互いに電気的に絶縁されている請求項1~5のいずれか一項に記載のタッチパネル用導電部材。
【請求項8】
前記導電層は、前記透明絶縁基板の一方の面上に配置された第1導電層と、絶縁層を挟んで前記第1導電層の上に配置された第2導電層を有し、
前記1対の金属細線のうち、一方の金属細線は、前記第1導電層に配置され、他方の金属細線は、前記第2導電層に配置されている請求項7に記載のタッチパネル用導電部材。
【請求項9】
前記導電層は、前記透明絶縁基板の一方の面上に配置された第1導電層と、前記透明絶縁基板の他方の面上に配置された第2導電層を有し、
前記1対の金属細線のうち、一方の金属細線は、前記第1導電層に配置され、他方の金属細線は、前記第2導電層に配置されている請求項7に記載のタッチパネル用導電部材。
【請求項10】
前記金属細線の線幅は、1μm以上3μm以下の線幅を有する請求項1~9のいずれか一項に記載のタッチパネル用導電部材。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のタッチパネル用導電部材を含むタッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タッチセンサまたはタッチパネルの電極として利用されるタッチパネル用導電部材に関する。
また、この発明は、タッチパネル用導電部材を含むタッチパネルにも関している。
【背景技術】
【0002】
近年、タブレット型コンピュータおよびスマートフォン等の携帯情報機器を始めとした各種の電子機器において、液晶表示装置等の表示装置と組み合わせて用いられ、指、スタイラスペン等を画面に接触または近接させることにより電子機器への入力操作を行うタッチパネルの普及が進んでいる。
【0003】
タッチパネルには、透明絶縁基板上に、指、スタイラスペン等の接触または近接によるタッチ操作を検出するための検出部が形成された導電部材が用いられる。
検出部は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電性酸化物で形成されるが、透明導電性酸化物以外に金属等の不透明な導電材料でも形成される。金属等の不透明な導電材料は上述の透明導電性酸化物に比べて、パターニングがしやすく、屈曲性に優れ、抵抗がより低い等の利点があるため、タッチパネル等において銅または銀等の導電材料が用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、不透明な導電材料を用いたタッチパネルが記載されている。特許文献1のタッチパネルは、複数の不規則な四角形形状の開口部を有するメッシュ状導電体を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の発明によれば、メッシュ状導電体の複数の開口部が不規則な四角形形状を有しているため、特許文献1のタッチパネルが、画像を表示するための液晶ディスプレイ等の上に配置されて画像表示装置として使用された場合に、複数の開口部と液晶ディスプレイ等の画素パターンとの干渉によるモアレを目立たなくする効果が期待される。しかしながら、特許文献1のタッチパネルでは、複数の開口部が鋭角の角部を有しており、この鋭角の角部が目立って視認されるため、特許文献1のタッチパネルを見た観察者は、ざらつきがあるように感じることがあった。
【0007】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、画像表示装置に使用した際のモアレの発生を抑制しつつ、ざらつき感を低減できるタッチパネル用導電部材を提供することを目的とする。
また、この発明は、このようなタッチパネル用導電部材を含むタッチパネルを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るタッチパネル用導電部材は、透明絶縁基板と、透明絶縁基板の少なくとも一方の面上に配置された導電層とを含むタッチパネル用導電部材であって、導電層は、平面視において、変形された菱形からなる複数の不規則なメッシュセルを含み且つ複数の金属細線により形成されるメッシュパターンを有し、複数の金属細線は、変形された菱形の鋭角を挟むように延びる少なくとも1対の金属細線を含み、1対の金属細線のうち少なくとも一方の金属細線は、1対の金属細線が互いに交差する交差部に向かって鋭角の内側に屈曲する屈曲部を有することを特徴とする。
【0009】
変形された菱形は、規則的な菱形の参照メッシュセルの少なくとも1つの頂点を一定の範囲内においてランダムに再配置させた形状、または、規則的な菱形の参照メッシュセルの互いに平行な少なくとも1対の辺の間隔を一定の範囲内においてランダムに変化させた形状を有し、規則的な菱形に対して2%以上10%以下の不規則性を有することが好ましい。
【0010】
交差部における1対の金属細線の交差角度は直角であることが好ましい。
屈曲部における屈曲の起点は、交差部から、対応する変形された菱形の辺の長さの1/10以内の距離の位置にあることが好ましい。
屈曲部は、直線形状または曲線形状を有することができる。
【0011】
1対の金属細線は、同一面上に配置され、交差部において互いに電気的に接続されることができる。
1対の金属細線は、互いに異なる面上に配置され、交差部において互いに電気的に絶縁されることもできる。
【0012】
この場合に、導電層は、透明絶縁基板の一方の面上に配置された第1導電層と、絶縁層を挟んで第1導電層の上に配置された第2導電層を有し、1対の金属細線のうち、一方の金属細線は、第1導電層に配置され、他方の金属細線は、第2導電層に配置されることができる。
もしくは、導電層は、透明絶縁基板の一方の面上に配置された第1導電層と、透明絶縁基板の他方の面上に配置された第2導電層を有し、1対の金属細線のうち、一方の金属細線は、第1導電層に配置され、他方の金属細線は、第2導電層に配置されることもできる。
【0013】
金属細線の線幅は、1μm以上3μm以下の線幅を有することが好ましい。
【0014】
本発明のタッチパネルは、上記のタッチパネル用導電部材を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、導電層が、平面視において、変形された菱形からなる複数の不規則なメッシュセルを含み且つ複数の金属細線により形成されるメッシュパターンを有し、複数の金属細線が、変形された菱形の鋭角を挟むように延びる少なくとも1対の金属細線を含み、1対の金属細線のうち少なくとも一方の金属細線が、1対の金属細線が互いに交差する交差部に向かって鋭角の内側に屈曲する屈曲部を有するため、画像表示装置に使用した際のモアレの発生を抑制しつつ、ざらつき感を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の実施の形態1におけるタッチパネルの部分断面図である。
【
図2】実施の形態1に係るタッチパネル用導電部材の平面図である。
【
図3】実施の形態1における第1電極の部分拡大平面図である。
【
図4】実施の形態1における第1電極の交差部の部分拡大平面図である。
【
図5】実施の形態1におけるタッチパネルを含む画像表示装置の部分断面図である。
【
図6】実施の形態1の変形例における第1電極の交差部の部分拡大平面図である。
【
図7】実施の形態2における第1電極の交差部の部分拡大平面図である。
【
図8】実施の形態2の変形例における第1電極の交差部の部分拡大平面図である。
【
図9】実施の形態3において第1電極の第1金属細線と第2電極の第2金属細線とが互いに重なる部分の部分拡大平面図である。
【
図10】実施の形態3の変形例において第1電極の第1金属細線と第2電極の第2金属細線とが互いに重なる部分の部分拡大平面図である。
【
図11】実施の形態4において第1電極の第1金属細線と第2電極の第2金属細線とが互いに重なる部分の部分拡大平面図である。
【
図12】実施の形態4の変形例において第1電極の第1金属細線と第2電極の第2金属細線とが互いに重なる部分の部分拡大平面図である。
【
図13】実施の形態5における第1電極部の部分拡大平面図である。
【
図14】実施の形態6におけるタッチパネルの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、添付の図面に示す好適な実施の形態に基づいて、この発明に係るタッチパネル用導電部材およびタッチパネルを詳細に説明する。
なお、以下において、数値範囲を示す表記「~」は、両側に記載された数値を含むものとする。例えば、「sが数値t1~数値t2である」とは、sの範囲は数値t1と数値t2を含む範囲であり、数学記号で示せばt1≦s≦t2である。
「直交」および「平行」等を含め角度は、特に記載がなければ、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。
「透明」とは、光透過率が、波長400nm~800nmの可視光波長域において、少なくとも40%以上のことであり、好ましくは75%以上であり、より好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上のことである。光透過率は、JIS K 7375:2008に規定される「プラスチック--全光線透過率および全光線反射率の求め方」を用いて測定されるものである。
【0018】
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1におけるタッチパネル1の構成を示す。
タッチパネル1は、表面1Aと裏面1Bを有しており、裏面1B側に液晶ディスプレイ等を有する図示しない表示モジュールが配置された状態で使用される。タッチパネル1の表面1Aは、タッチ検出面であり、タッチパネル1の操作者が、タッチパネル1を通して表示モジュールに表示された画像を観察する視認側となる。
タッチパネル1は、表面1A側に配置された透明な絶縁性のカバーパネル2を有し、表面1Aとは反対側のカバーパネル2の面上にタッチパネル用導電部材3が透明な接着剤4により接合されている。
【0019】
タッチパネル用導電部材3は、透明絶縁基板5と、透明絶縁基板5の一方の面5A上に形成され且つパターニングされた第1導電層6Aと、透明絶縁基板5の他方の面5B上に形成された且つパターニングされた第2導電層6Bとを有している。また、
図1に示すように、パターニングされた第1導電層6Aを保護する目的または平坦化の目的で第1導電層6Aを覆うように透明絶縁部材7Aが配置されていてもよい。また、パターニングされた第2導電層6Bを保護する目的または平坦化の目的で第2導電層6Bを覆うように透明絶縁部材7Bが配置されていてもよい。
【0020】
図2に、タッチパネル用導電部材3の平面図を示す。タッチパネル用導電部材3には、指およびスタイラスペン等によるタッチ操作を検出するための透過領域S1と、タッチパネル用導電部材3を、図示しない表示モジュールに接続される周辺配線等を配置するための、透過領域S1の外側の領域である周辺領域S2が区画されている。
【0021】
第1導電層6Aと第2導電層6Bには、タッチ操作を検出するための電極およびそれに接続される周辺配線等がパターニングされている。第1導電層6Aと第2導電層6Bのうち、カバーパネル2側に位置する、すなわち、視認側に位置する第1導電層6Aは、それぞれ一定の方向に沿って延び且つそれに直交する方向に間隔を隔てて配列された複数の第1電極11を有している。これらの複数の第1電極11は、それぞれ、端部に第1パッド12を有している。
【0022】
また、第1導電層6Aは、複数の第1電極11の複数の第1パッド12から引き出された複数の第1周辺配線13と、複数の第1周辺配線13のそれぞれに接続される複数の第1外部接続端子14を有している。
【0023】
タッチパネル1の裏面1B側に位置する第2導電層6Bは、複数の第1電極11が延びる方向に対して直交する方向に沿って延び且つそれに直交する方向すなわち複数の第1電極11が延びる方向に間隔を隔てて配列された複数の第2電極21を有している。これらの複数の第2電極21は、それぞれ、端部に第2パッド22を有している。
【0024】
また、第2導電層6Bは、複数の第2電極21の複数の第2パッド22から引き出された複数の第2周辺配線23と、複数の第2周辺配線23のそれぞれに接続される複数の第2外部接続端子24を有している。
【0025】
ここで、第1導電層6Aの複数の第1電極11および第2導電層6Bの複数の第2電極21は、タッチパネル用導電部材3に区画された透過領域S1に配置されている。
また、第1導電層6Aの複数の第1パッド12、複数の第1周辺配線13、複数の第1外部接続端子14、第2導電層6Bの複数の第2パッド22、複数の第2周辺配線23、複数の第2外部接続端子24は、タッチパネル用導電部材3に区画された周辺領域S2に配置されている。
【0026】
図3に、第1電極11の部分拡大平面図を示す。
第1電極11は、平面視において、概ね第1方向D1に沿って屈曲しながら延びる複数の金属細線MW1と、概ね第2方向D2に沿って屈曲しながら延びる複数の金属細線W2を有している。第1方向D1と第2方向D2は互いに交差している。また、複数の金属細線MW1と複数の金属細線MW2は同一面上において互いに電気的に接続されるように交差することにより、金属細線MW1と金属細線MW2が交差する複数の交差部CP1が形成されている。
【0027】
また、このようにして複数の金属細線MW1と複数の金属細線MW2が互いに交差することにより、四角形の複数の不規則なメッシュセルMC1が形成され、複数の不規則なメッシュセルMC1により、メッシュパターンMP1が形成されている。このメッシュパターンMP1は、
図3において点線で描かれるような、第1方向D1に沿って直線的に延びる複数の金属細線MW3と第2方向D2に沿って直線的に延びる複数の金属細線MW4により形成される複数の菱形の参照メッシュセルMC2を有する規則的な参照メッシュパターンMP2に対して、複数の金属細線MW3と複数の金属細線MW4の交差部の位置を一定の範囲内でランダムに再配置したものである。
【0028】
複数の金属細線MW3と複数の金属細線MW4の交差部の位置をランダムに再配置する方法としては、参照メッシュパターンの交差部すなわち規則的な菱形の参照メッシュセルMC2の少なくとも1つの頂点に対して、それぞれの頂点を中心とした円の内部に新たな頂点をランダムに配置する方法を用いることができる。この円の半径は、画像を表示するための図示しない表示モジュール上にタッチパネル1を配置した際に視認されるモアレを抑制するために、参照メッシュセルMC2の1辺の長さの1/50以上の長さを有することが好ましい。しかしながら、菱形の参照メッシュセルMC2に対する不規則なメッシュセルMC1の不規則性が大きくなりすぎると、表示モジュール上にタッチパネル1を配置した際に視認される濃度ムラが大きくなってしまうため、円の半径は、菱形の参照メッシュセルMC2の1辺の長さの1/10以下の長さを有することが好ましく、1/20以下の長さを有することがより好ましい。
【0029】
ここで、菱形の参照メッシュセルMC2の頂点を中心とした円の内部に新たな頂点をランダムに配置する方法により複数の金属細線MW3と複数の金属細線MW4の交差部の位置をランダムに再配置する場合に、菱形の参照メッシュセルMC2に対する不規則なメッシュセルMC1の不規則性[%]は、下記の式(1)で表すことができる。
(不規則性)=(交差部の再配置に用いられる円の半径)/(菱形の参照メッシュセルMC2の1辺の長さ)×100・・・(1)
したがって、不規則性は、2%以上10%以下であることが好ましく、2%以上5%以下であることが好ましい。
このように、不規則なメッシュセルMC1は、菱形が変形された形状を有している。
【0030】
ここで、複数の交差部CP1を直線で結んだ全ての不規則なメッシュセルMC1は、各辺の長さが四辺の長さの平均値の±20%以内であれば、変形された菱形といえる。また、規則的な参照メッシュセルMC2は、任意の交差部CP1を中心として互いに隣接する100個の不規則なメッシュセルMC1の各辺の長さの平均値と、同じ方向を向いた内角の角度の平均値を求めることで復元できる。
【0031】
なお、規則的な参照メッシュパターンMP2を構成する菱形の参照メッシュセルMC2の鋭角の角度は、モアレを抑制する観点から、55度~85度が好ましく、60度~80度がより好ましく、65度~75度が最も好ましい。
【0032】
図4に、金属細線MW1と金属細線MW2との交差部CP1の部分拡大平面図を示す。
交差部CP1を中心として、第1金属細線E1、第2金属細線E2、第3金属細線E3および第4金属細線E4の4本の金属細線が延びている。第1金属細線E1と第3金属細線E3は金属細線MW1の一部であり、第2金属細線E2と第4金属細線E4は金属細線MW2の一部である。
【0033】
第1金属細線E1と第2金属細線E2は、それぞれ、概ねメッシュセルMC1の辺に沿って延びる直線形状を有しており、鋭角A1を挟むように延びている。
第2金属細線E2は、屈曲の起点SP1から交差部CP1に向かって鋭角A1の内側に屈曲する屈曲部B1を有している。屈曲部B1は、直線形状を有しており、鋭角A1の角度よりも大きい交差角度T1で第1金属細線E1と交差している。
なお、屈曲部B1における屈曲の起点SP1は、屈曲部B1が目立って視認されることを防止する観点により、交差部CP1から、対応する変形された菱形の辺の長さすなわち第2金属細線E2の長さの1/10以内の距離の位置にあることが好ましい。
【0034】
また、第3金属細線E3と第4金属細線E4は、それぞれ、概ねメッシュセルMC1の辺に沿って延びる直線形状を有しており、鋭角A2を挟むように延びている。
第4金属細線E4は、屈曲の起点SP2から交差部CP1に向かって鋭角A2の内側に屈曲する屈曲部B2を有している。屈曲部B2は、直線形状を有しており、鋭角A2の角度よりも大きい交差角度T2で第3金属細線E3と交差している。
なお、屈曲部B2における屈曲の起点SP2は、屈曲部B2が目立って視認されることを防止する観点により、交差部CP1から、対応する菱形の辺の長さすなわち第4金属細線E4の長さの1/10以内の距離の位置にあることが好ましい。
【0035】
ここで、第2金属細線E2が屈曲部B1を有しておらず、第4金属細線E4が屈曲部B2を有していない場合には、第1金属細線E1と第2金属細線E2は鋭角A1の角度で互いに交差し、第3金属細線E3と第4金属細線E4は鋭角A2の角度で互いに交差する。さらに、第2金属細線E2と第3金属細線E3は鈍角の角度で互いに交差し、第1金属細線E1と第4金属細線E4は鈍角の角度で互いに交差する。
【0036】
そのため、この場合には、第1金属細線E1と第2金属細線E2とに挟まれる鋭角の角部および第3金属細線E3と第4金属細線E4とに挟まれる鋭角の角部が、第2金属細線E2と第3金属細線E3とに挟まれる鈍角の角部および第1金属細線E1と第4金属細線E4とに挟まれる鈍角の角部よりも目立って見える。これにより、第2金属細線E2が屈曲部B1を有しておらず、第4金属細線E4が屈曲部B2を有していない場合には、目立って見える箇所が点在するため、第1電極11を見る観察者は、ざらつきがあるように感じることがある。
【0037】
本発明の実施の形態1における第1電極11では、第2金属細線E2が、鋭角A1よりも大きい交差角度T1で第1金属細線E1と交差する屈曲部B1を有し、第4金属細線E4が、鋭角A2よりも大きい交差角度T2で第3金属細線E3と交差する屈曲部B2を有しているため、第1金属細線E1と第2金属細線E2が鋭角A1で交差する角部および第3金属細線E3と第4金属細線E4が鋭角A2で交差する角部が存在せず、ざらつき感が低減される。
【0038】
また、例えば、フォトリソグラフィとエッチングにより金属細線MW1、MW2を形成し、メッシュパターンMP1をパターニングすることを考える。
第2金属細線E2が屈曲部B1を有しておらず、第4金属細線E4が屈曲部B2を有していない場合には、交差部CP1の近傍において、第1金属細線E1と第2金属細線E2との間および第3金属細線E3と第4金属細線E4との間が、第2金属細線E2と第3金属細線E3との間および第1金属細線E1と第4金属細線E4との間よりも狭くなる。
【0039】
このようなパターンを形成するためにフォトリソグラフィとエッチングを行うと、第1金属細線E1と第2金属細線E2に挟まれる鋭角の角部では、十分にエッチングがなされないことによって、第1金属細線E1および第2金属細線E2を構成する導電材料が残ってしまうことがある。また、第3金属細線E3と第4金属細線E4に挟まれる鋭角の角部でも、同様にして、第3金属細線E3および第4金属細線E4を構成する導電材料が残ってしまうことがある。これにより、交差部CP1が本来の設計されたパターンにおける交差部よりも太くなってしまうことがあった。
【0040】
本発明の実施の形態1における第1電極11では、第2金属細線E2が、鋭角A1よりも大きい交差角度T1で第1金属細線E1と交差する屈曲部B1を有し、第4金属細線E4が、鋭角A2よりも大きい交差角度T2で第3金属細線E3と交差する屈曲部B2を有しているため、フォトリソグラフィの方法を用いてメッシュパターンMP1をパターニングする場合でも、交差部CP1が設計よりも太くパターニングされてしまうことを抑制することができる。
【0041】
ここで、ざらつき感を低減する観点およびフォトリソグラフィにおいて交差部CP1が設計よりも太くパターニングされることを抑制する観点から、屈曲部B1と第1金属細線E1との交差角度T1と、屈曲部B2と第3金属細線E3との交差角度T2は、それぞれ、直角であることが好ましい。なお、本発明において直角とは、90度を含む一定の角度範囲内の角度のこととする。例えば、直角とは、85度以上90度以下の角度範囲内の角度のことをいう。
【0042】
また、タッチパネル用導電部材3におけるすべての交差部CP1の数に対する、屈曲部B1、B2が形成されている交差部CP1の数の割合は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、100%が特に好ましい。この割合が80%未満になると、ざらつき感が観察されやすくなる。
【0043】
第2電極21は、第1電極11と同様に、金属細線MW1およびMW2により形成され、
図3に示す変形された菱形からなる不規則なメッシュセルMC1により形成されたメッシュパターンMP1を有している。また、第2電極21においても、第1電極11と同様に、
図4に示すように、第2電極21における金属細線MW1およびMW2の交差部CP1を中心として、第1金属細線E1~第4金属細線E4が延びている。第2金属細線E2は鋭角A1の内側に屈曲する屈曲部B1を有し、第4金属細線E4は鋭角A2の内側に屈曲する屈曲部B2を有している。
【0044】
そのため、第2電極21によれば、第1電極11と同様にして、観察者が第2電極21を見た場合に感じるざらつき感を低減すると共に、フォトリソグラフィにおいて交差部CP1が設計よりも太くパターニングされることを抑制することができる。
【0045】
ここで、実施の形態1のタッチパネル用導電部材3を備えたタッチパネル1が、例えば、
図5に示すように、画像を表示するための表示モジュール8上に配置されることにより、画像表示装置9が構成される。
図5において、表示モジュール8は、透明な接着剤4Aによりタッチパネル1の裏面1Bに接着されている。また、表示モジュール8は、詳細には図示しないが、液晶ディスプレイ等の表示画面と、表示画面における画像の表示等を制御するためのコントローラ等を含んでいる。画像表示装置9の操作者は、表示モジュール8に表示される画像を、タッチパネル1を通して視認し、視認された画像に基づいてタッチパネル1を介してタッチ操作を行う。
【0046】
一般的に、このような画像表示装置では、表示モジュールの画素パターンとタッチパネルのセンサを構成する金属細線により形成されるメッシュパターンとの干渉により、モアレが発生することがある。特に、一定の形状を有するメッシュセルが規則正しく配列されることによりメッシュパターンが形成されている場合には、メッシュパターンと表示モジュールの画素パターンとが干渉しやすく、モアレが発生しやすかった。
【0047】
また、メッシュパターンがフォトリソグラフィによりパターニングされる場合には、メッシュパターンにおける金属細線の交差部が設計よりも太くパターニングされることがあるが、この場合に、メッシュパターンにおける光透過率の局所的なムラが生じる。そのため、タッチパネルを通して視認される表示モジュール上の画像において、濃度ムラが生じることがあった。
【0048】
実施の形態1における第1電極11および第2電極21は、変形された菱形からなる複数の不規則なメッシュセルMC1により形成されるメッシュパターンMP1を有しているため、表示モジュール8の画素パターンとの干渉が生じにくく、モアレの発生が抑制される。
【0049】
また、第1電極11および第2電極21におけるメッシュパターンMP1がフォトリソグラフィによりパターニングされる場合には、メッシュパターンMP1における複数の交差部CP1が設計よりも太くパターニングされることを抑制できるため、タッチパネル1を通して視認される表示モジュール8上の画像における濃度ムラも抑制される。
【0050】
以上から、本発明のタッチパネル用導電部材3によれば、第1電極11および第2電極21が、金属細線MW1およびMW2により形成され、変形された菱形からなる複数の不規則なメッシュセルMC1により形成されるメッシュパターンMP1を有し、さらに、金属細線MW1およびMW2の交差部CP1から延びる第2金属細線E2が屈曲部B1を有し、第4金属細線E4が屈曲部B2を有しているため、画像表示装置9に使用された場合にモアレの発生を抑制しつつ、ざらつき感を低減できる。
【0051】
また、第1電極11および第2電極21におけるメッシュパターンMP1がフォトリソグラフィによりパターニングされる場合には、メッシュパターンMP1における交差部CP1が設計よりも太くパターニングされることが抑制され、タッチパネル用導電部材3を含むタッチパネル1が画像表示装置9に用いられる際に、タッチパネル1を通して視認される表示モジュール8上の画像における濃度ムラも抑制される。
【0052】
なお、
図2に示す透過領域S1における複数の第1電極11の間には、複数の第1電極11と電気的に接続せず、周囲の回路から絶縁された図示しないダミー電極が設けられてもよい。また、透過領域S1における複数の第2電極21の間にも、複数の第2電極21と電気的に接続せず、周囲の回路から絶縁された図示しないダミー電極が設けられてもよい。これらのダミー電極は、第1電極11および第2電極21を構成する金属細線MW1およびMW2からなり、メッシュパターンMP1と同一のパターンを有する。第1電極11とダミー電極との間、および、第2電極21とダミー電極との間は、それぞれ、5μm~50μmの幅を有する破断部が形成される。これにより、第1電極11とダミー電極とが互いに電気的に絶縁され、第2電極21とダミー電極とが電気的に絶縁される。また、周囲の回路に対するダミー電極の電気的な絶縁性を高めるために、ダミー電極の内部に、追加の破断部をさらに形成してもよい。
【0053】
なお、第1電極11および第2電極21を構成する金属細線MW1およびMW2は、金属細線MW1およびMW2が目立って視認されることを防止し、且つ、第1電極11および第2電極21の電気抵抗を低い値に保ち、タッチ操作に対する検出感度を良好にする観点から、1μm以上3μm以下の線幅を有することが好ましい。
【0054】
また、タッチパネル1を表示モジュール8上に配置することにより、画像表示装置9として使用する際に、表示モジュール8上に表示された画像が明確に視認されるように、タッチパネル1は、一定以上の光透過率を有していることが好ましい。この観点から、第1電極11および第2電極21におけるメッシュパターンMP1の開口率は、95%~99%であることが好ましい。ここで、メッシュパターンMP1の開口率は、メッシュパターンMP1における単位面積あたりの金属細線MW1およびMW2が存在しない領域の面積の比率により定義される。
【0055】
また、第2金属細線E2が屈曲部B1を有し、第4金属細線E4が屈曲部B2を有する代わりに、第1金属細線E1および第3金属細線E3が屈曲部を有していてもよい。
【0056】
さらに、
図6に示すように、第1金属細線E1が屈曲部B3を有し、第2金属細線E2が屈曲部B1を有し、第3金属細線E3が屈曲部B4を有し、第4金属細線E4が屈曲部B2を有することもできる。
【0057】
このように、第1電極11および第2電極21の複数の金属細線MW1、MW2は、第1金属細線E1~第4金属細線E4のように、変形された菱形の鋭角を挟むように延びる少なくとも1対の金属細線を含み、1対の金属細線のうち少なくとも一方の金属細線が屈曲部を有することにより、すなわち、第1金属細線E1~第4金属細線E4の全てまたは一部が屈曲部B1~B4を有することにより、タッチパネル用導電部材3を含むタッチパネル1が画像表示装置9に使用された場合のモアレの発生が抑制され、ざらつき感も低減される。
【0058】
実施の形態2
実施の形態1において、屈曲部B1、B2は直線形状を有しているが、曲線形状を有していてもよい。
【0059】
図7に、実施の形態2における金属細線MW1およびMW2の交差部CP2を示す。
交差部CP2からは、第1金属細線E5、第2金属細線E6、第3金属細線E7および第4金属細線E8が延びている。
【0060】
これらの第1金属細線E5~第4金属細線E8のうち、第2金属細線E6は、屈曲の起点SP3から交差部CP2に向かって鋭角A3の内側に向かって屈曲する曲線形状の屈曲部B5を有している。この屈曲部B5は、第1金属細線E5と第2金属細線E6とにより挟まれる鋭角A3の角度よりも大きい交差角度T3で第1金属細線E5と交差している。
【0061】
また、第4金属細線E8は、屈曲の起点SP4から交差部CP2に向かって鋭角A4の内側に屈曲する曲線形状の屈曲部B6を有している。この屈曲部B6は、第3金属細線E7と第4金属細線E8とにより挟まれる鋭角A4の角度よりも大きい交差角度T4で第3金属細線E7と交差している。
【0062】
このように、屈曲部B5およびB6が曲線形状を有している場合でも、実施の形態1において屈曲部B1およびB2が直線形状を有している場合と同様に、実施の形態2のタッチパネル用導電部材を含むタッチパネルが画像表示装置に使用された場合にモアレの発生を抑制しつつ、ざらつき感を低減できる。
【0063】
なお、第2金属細線E6が屈曲部B3を有し、第4金属細線E8が屈曲部B4を有することに限定されず、
図8に示すように、第1金属細線E5が曲線形状の屈曲部B7を有し、第2金属細線E6が曲線形状の屈曲部B5を有し、第3金属細線E7が曲線形状の屈曲部B8を有し、第4金属細線E8が曲線形状の屈曲部B6を有することもできる。
ここで、曲線形状の屈曲部B5~B8は、交差部CP2において、金属細線E5~E8同士が連続的に接続されていればどのような曲線形状を有していてもよいが、計算により設計可能な多次曲線の形状の形状を有していることが好ましく、特に、計算が容易な2次曲線の形状を有していることが好ましい。
【0064】
実施の形態3
実施の形態1では、平面視において、第1電極11と第2電極21が、それぞれ、メッシュパターンMP1を有しているが、第1電極11と第2電極21が互いに重なることにより、平面視において、メッシュパターンMP1が形成されることもできる。この場合に、例えば、第1電極11の金属細線MW1と第2電極21の金属細線MW2が重なり合うか、第1電極11の金属細線MW2と第2電極21の金属細線MW1が重なり合うことにより、交差部が形成される。
【0065】
図9に、実施の形態3における、第1電極11の金属細線MW1と第2電極21の金属細線MW2の交差部CP3を示す。
交差部CP3からは、第1金属細線E9、第2金属細線E10、第3金属細線E11および第4金属細線E12が延びている。第1金属細線E9と第3金属細線E11は、第1電極11の金属細線MW1の一部である。また、第2金属細線E10と第4金属細線E12は、第2電極21の一部である。そのため、第1金属細線E9および第3金属細線E11と、第2金属細線E10および第4金属細線E12とは、互いに異なる面上に配置され、交差部CP3において互いに電気的に絶縁されている。
【0066】
第2金属細線E10は、屈曲の起点SP5から第1金属細線E9に向かって、第1金属細線E9と第2金属細線E10に挟まれる鋭角A5の内側に屈曲した屈曲部B9を有する。屈曲部B9は、直線形状を有し、鋭角A5よりも大きい交差角度T5で第1金属細線E9と交差している。
また、第4金属細線E12は、屈曲の起点SP6から第3金属細線E11に向かって、第3金属細線E11と第4金属細線E12に挟まれる鋭角A6の内側に屈曲した屈曲部B10を有する。屈曲部B10は、直線形状を有し、鋭角A6よりも大きい交差角度T6で第3金属細線E11と交差している。
【0067】
このようにして、第1金属細線E9と第2金属細線E10が互いに異なる平面上に配置され、第3金属細線E11と第4金属細線E12が互いに異なる平面上に配置されている場合でも、実施の形態1のように、第1金属細線E1~第4金属細線E4が同一の平面上に配置されている場合と同様に、実施の形態3のタッチパネル用導電部材を含むタッチパネルが画像表示装置に使用された場合のモアレの発生が抑制され、ざらつき感も低減される。
【0068】
なお、第2金属細線E10が屈曲部B9を有し、第4金属細線E12が屈曲部B10を有することに限定されず、例えば、
図10に示すように、第1金属細線E9が屈曲部B11を有し、第2金属細線E10が屈曲部B9を有し、第3金属細線E11が屈曲部B12を有し、第4金属細線E12が屈曲部B10を有することもできる。
【0069】
実施の形態4
実施の形態3では、屈曲部B9およびB10が直線形状を有しているが、実施の形態2の屈曲部B5およびB6のように、曲線形状を有していてもよい。
【0070】
図11に、実施の形態4における、第1電極11の金属細線MW1と第2電極21の金属細線MW2の交差部CP4を示す。
交差部CP4からは、第1金属細線E13、第2金属細線E14、第3金属細線E15および第4金属細線E16が延びている。第1金属細線E13と第3金属細線E15は、第1電極11の金属細線MW1の一部であり、第2金属細線E14と第4金属細線E16は、第2電極21の金属細線MW2の一部である。
【0071】
第2金属細線E14は、屈曲の起点SP7から第1金属細線E13に向かって、第1金属細線E13と第2金属細線E14に挟まれる鋭角A7の内側に屈曲した屈曲部B13を有する。屈曲部B13は、曲線形状を有し、鋭角A7よりも大きい交差角度T7で第1金属細線E13と交差している。
また、第4金属細線E16は、屈曲の起点SP8から第3金属細線E15に向かって、第3金属細線E15と第4金属細線E16に挟まれる鋭角A8の内側に屈曲した屈曲部B14を有する。屈曲部B14は、曲線形状を有し、鋭角A8よりも大きい交差角度T8で第3金属細線E15と交差している。
【0072】
このようにして、屈曲部B13およびB14が曲線形状を有している場合でも、実施の形態3と同様に、実施の形態4のタッチパネル用導電部材を含むタッチパネルが画像表示装置に使用された場合のモアレの発生が抑制され、ざらつき感も低減される。
【0073】
なお、第2金属細線E14が屈曲部B13を有し、第4金属細線E16が屈曲部B14を有することに限定されず、例えば、
図12に示すように、第1金属細線E13が曲線形状の屈曲部B15を有し、第2金属細線E14が曲線形状の屈曲部B13を有し、第3金属細線E15が曲線形状の屈曲部B16を有し、第4金属細線E16が曲線形状の屈曲部B14を有することもできる。
【0074】
実施の形態5
実施の形態1では、第1電極11および第2電極21におけるメッシュパターンMP1は、複数の菱形の参照メッシュセルMC2を有する規則的な参照メッシュパターンMP2に対して、複数の金属細線MW3と複数の金属細線MW4の交差部の位置を一定の範囲内でランダムに配置したものであるが、本発明におけるメッシュパターンMP1の形状は、これに限定されない。
【0075】
図13に、実施の形態1における第1電極31の部分拡大平面図を示す。
第1電極31は、平面視において、第1方向D1に沿って延びる複数の金属細線MW5と、第2方向D2に沿って延びる複数の金属細線MW6を有している。また、複数の金属細線MW5と複数の金属細線MW6は同一面上において互いに電気的に接続されるように交差しており、金属細線MW5と金属細線MW6が交差する複数の交差部CP5が形成されている。
【0076】
また、このようにして複数の金属細線MW5と複数の金属細線MW6が互いに交差することにより、平行四辺形の複数の不規則なメッシュセルMC3が形成され、複数の不規則なメッシュセルMC3により、メッシュパターンMP3が形成されている。このメッシュパターンMP3は、
図13において点線で描かれるような、第1方向D1に沿って直線的に延びる複数の金属細線MW3と第2方向D2に沿って直線的に延びる複数の金属細線MW4により形成される複数の菱形の参照メッシュセルMC2を有する規則的な参照メッシュパターンMP2に対して、第1方向D1において隣り合う金属細線MW4間の距離と、第2方向D2において隣り合う金属細線MW3間の距離を、それぞれ一定範囲内でランダムに変化させたものである。
【0077】
ここで、第1方向D1において隣り合う金属細線MW4間の距離(ピッチ)と、第2方向D2において隣り合う金属細線MW3間の距離(ピッチ)を、それぞれ一定範囲内でランダムに変化させる方法として、参照メッシュパターンMP2の金属細線MW3を第2方向D2に沿って一定の範囲内で平行移動させ、金属細線MW4を第1方向D1に沿って一定の範囲内で平行移動させる方法、すなわち、規則的な菱形の参照メッシュセルMC2の互いに平行な少なくとも1対の辺の間隔を一定の範囲内でランダムに変化させる方法を用いることができる。
【0078】
規則的な菱形の参照メッシュセルMC2の互いに平行な少なくとも1対の辺の間隔を変化させる範囲は、モアレを抑制する観点から、第1方向D1および第2方向D2において、それぞれ、菱形の参照メッシュセルMC2の隣り合う平行な2辺間の距離の1/50以上の長さ範囲であることが好ましい。しかしながら、規則的な菱形の参照メッシュセルMC2に対する不規則なメッシュセルMC3の不規則性が大きくなりすぎると、タッチパネルが表示モジュール8上に配置された際に視認される濃度ムラが大きくなるため、規則的な菱形の参照メッシュセルMC2の互いに平行な少なくとも1対の辺の間隔を変化させる範囲は、第1方向D1および第2方向D2において、それぞれ、菱形の参照メッシュセルMC2の隣り合う平行な2辺間の距離の1/10以下の長さ範囲であることが好ましく、1/20以下の長さ範囲であることがより好ましい。
【0079】
第1方向D1における参照メッシュパターンMP1のピッチと、第2方向D2における参照メッシュパターンMP1のピッチを、それぞれ一定範囲内でランダムに変化させる場合に、規則的な菱形の参照メッシュセルMC2に対する不規則なメッシュセルMC3の不規則性[%]は、下記の式(2)で表すことができる。
(不規則性)=(菱形の参照メッシュセルMC2の1辺を平行移動させる距離)/(菱形の参照メッシュセルMC2の平行な2辺間の距離)×100・・・(2)
したがって、不規則性は、2%以上10%以下が好ましく、2%以上5%以下がより好ましい。
このように、不規則なメッシュセルMC3は、菱形が変形された形状を有している。
【0080】
ここで、複数の交差部CP5を直線で結んだ全ての不規則なメッシュセルMC3は、各辺の長さが四辺の長さの平均値の±20%以内であれば、変形された菱形といえる。また、規則的な参照メッシュセルMC2は、任意の交差部CP5を中心として互いに隣接する100個の不規則なメッシュセルMC3の各辺の長さの平均値を求めることで復元できる。
【0081】
なお、規則的な参照メッシュパターンMP3の菱形のメッシュセルMC3の鋭角の角度は、モアレを抑制する観点から、55度~80度がより好ましく、65度~75度が最も好ましい。
【0082】
また、実施の形態5における第2電極は、第1電極31と同様に、
図13に示すような複数の不規則なメッシュセルMC3により構成されるメッシュパターンMP3を有している。
【0083】
メッシュパターンMP3が
図13に示すような形状を有している場合でも、実施の形態1におけるメッシュパターンMP1のように、
図3に示すような形状を有している場合と同様に、実施の形態5のタッチパネル用導電部材を含むタッチパネルが画像表示装置に使用された場合のモアレの発生が抑制され、ざらつき感も低減される。
【0084】
なお、実施の形態5の態様は、実施の形態1に対して適用されることが説明されているが、実施の形態2~実施の形態4に対しても、同様に適用されることができる。
【0085】
実施の形態6
実施の形態1では、透明絶縁基板5の一方の面5A側に第1導電層6Aが配置され、透明絶縁基板5の他方の面5B側に第2導電層6Bが配置されているが、第1導電層6Aと第2導電層6Bの配置は、これに限定されない。
【0086】
図14に、実施の形態6におけるタッチパネル41の構成を示す。
タッチパネル41は、表面41Aと裏面41Bを有しており、裏面41B側に表示モジュール8が配置された状態で使用される。タッチパネル41の表面41Aは、タッチ検出面であり、タッチパネル41の操作者が、タッチパネル41を通して表示モジュール8に表示された画像を観察する視認側となる。
タッチパネル41は、表面41Aに配置されたカバーパネル2を有し、表面41Aとは反対側のカバーパネル2の面上にタッチパネル用導電部材43が透明な接着剤4により接合されている。
【0087】
タッチパネル用導電部材43は、透明絶縁基板5と、透明絶縁基板5の一方の面5A上に形成された第2導電層6Bと、第2導電層6B上に形成された透明絶縁部材7Bと、透明絶縁部材7B上に形成された第1導電層6Aを有している。また、
図14に示すように、第1導電層6Aを保護する目的または平坦化の目的で第1導電層6Aを覆うように透明絶縁部材7Aが配置されていてもよい。第1導電層6A、第2導電層6B、透明絶縁部材7A、7Bは、透明絶縁基板5の表面5B上に形成されてもよい。
【0088】
このようにして、透明絶縁基板5の一方の面5A側に第1導電層6Aと第2導電層6Bが配置されている場合でも、実施の形態1のタッチパネル用導電部材3のように、透明絶縁基板5の一方の面5A側に第1導電層6Aが配置され、透明絶縁基板5の他方の面5B上に第2導電層6Bが配置されている場合と同様に、実施の形態6のタッチパネル用導電部材43を含むタッチパネル41が画像表示装置に使用された場合のモアレの発生が抑制され、ざらつき感も低減される。
【0089】
なお、実施の形態6の態様は、実施の形態1に対して適用されることが説明されているが、実施の形態2~実施の形態5に対しても、同様に適用されることができる。
【0090】
以下、実施の形態1のタッチパネル用導電部材3を構成する各部材について説明する。なお、実施の形態2~実施の形態5のタッチパネル用導電部材および実施の形態6のタッチパネル用導電部材43を構成する各部材についても、実施の形態1のタッチパネル用導電部材3を構成する各部材に準ずるものとする。
【0091】
<透明絶縁基板>
透明絶縁基板5は、透明で電気絶縁性を有し、第1導電層6Aおよび第2導電層6Bを支持することができれば、特に限定されるものではないが、例えば、樹脂基板またはガラス基板等が用いられる。より具体的に、透明絶縁基板5を構成する材料として、例えば、ガラス、強化ガラス、無アルカリガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET:polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(PEN:polyethylene naphthalate)、シクロオレフィンポリマー(COP:cyclo-olefin polymer)、環状オレフィン・コポリマー(COC:cyclic olefin copolymer)、ポリカーボネート(PC:polycarbonate)、アクリル樹脂、ポリエチレン(PE:polyethylene)、ポリプロピレン(PP:polypropylene)、ポリスチレン(PS:polystylene)、ポリ塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC:polyvinylidene chloride)、トリアセチルセルロース(TAC:cellulose triacetate)等を使用することができる。透明絶縁基板5の厚みは、例えば、20μm~1100μmが好ましく、20μm~500μmがより好ましい。特に、PETのような有機樹脂基板の場合は、厚み20μm~200μmであることが好ましく、30μm~100μmであることがより好ましい。
【0092】
透明絶縁基板5の全光線透過率は、40%~100%であることが好ましい。全光線透過率は、例えば、JIS K 7375:2008に規定される「プラスチック--全光線透過率および全光線反射率の求め方」を用いて測定されるものである。
【0093】
透明絶縁基板5の好適態様の1つとしては、大気圧プラズマ処理、コロナ放電処理および紫外線照射処理からなる群から選択される少なくとも1つの処理が施された処理済基板が挙げられる。上述の処理が施されることにより、処理された透明絶縁基板5の表面にOH基等の親水性基が導入され、透明絶縁基板5と第1導電層6Aとの密着性および透明絶縁基板5と第2導電層6Bとの密着性が向上する。また、上述の処理の中でも、透明絶縁基板5と第1導電層6Aとの密着性および透明絶縁基板5と第2導電層6Bとの密着性がより向上する点で、大気圧プラズマ処理が好ましい。
【0094】
<下塗り層>
透明絶縁基板5と第1導電層6Aおよび第2導電層6Bとの密着性を向上させるために、透明絶縁基板5と第1導電層6Aとの間および透明絶縁基板5と第2導電層6Bとの間に下塗り層を配置することもできる。この下塗り層は、高分子を含んでおり、透明絶縁基板5と第1導電層6Aとの密着性および透明絶縁基板5と第2導電層6Bとの密着性がより向上する。
【0095】
下塗り層の形成方法は特に限定されるものではないが、例えば、高分子を含む下塗り層形成用組成物を基板上に塗布して、必要に応じて加熱処理を施す方法が挙げられる。また、高分子を含む下塗り層形成用組成物として、ゼラチン、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、無機または高分子の微粒子を含むアクリル・スチレン系ラテックス等を使用してもよい。
【0096】
なお、必要に応じて、タッチパネル用導電部材3は、透明絶縁基板5と第1導電層6Aとの間および透明絶縁基板5と第2導電層6Bとの間に、他の層として、上述の下塗り層以外に、例えば、屈折率調整層を備えていてもよい。屈折率調整層として、例えば、屈折率を調整する酸化ジルコニウム等の金属酸化物の粒子が添加された有機層が使用できる。
【0097】
<金属細線>
実施の形態1~実施の形態4および実施の形態6における第1電極11および第2電極21の金属細線MW1、MW2、実施の形態5における第1電極31および第2電極における金属細線MW5、MW6の厚みは、特に限定されるものではないが、0.01μm~10.00μmが好ましく、2.00μm以下であることがより好ましく、0.02μm~1.00μmであることが特に好ましく、0.02μm~0.60μmであることが最も好ましい。これにより、第1電極11、31および第2電極21の耐久性の向上を容易に実現することができる。
【0098】
金属細線MW1、MW2、MW5、MW6は、金属または合金を形成材料とし、例えば、銅、アルミニウムまたは銀から形成することができる。金属細線MW1、MW2、MW5、MW6には、銅が含まれることが好ましいが、銅以外の金属、例えば、金、銀等が含まれていてもよい。また、金属細線MW1、MW2、MW5、MW6は、メッシュパターンの形成に好適な、金属銀およびゼラチンまたはアクリル・スチレン系ラテックス等の高分子バインダーが含有されたものでもよい。その他の好ましいものとして、アルミニウム、銀、モリブデン、チタンの金属およびその合金である。また、これらの積層構造であってもよく、例えば、モリブデン/銅/モリブデン、モリブデン/アルミニウム/モリブデン等の積層構造の金属細線が使用できる。
【0099】
さらに、金属細線MW1、MW2、MW5、MW6は、例えば、金属酸化物粒子、銀ペーストおよびは銅ペースト等の金属ペースト、並びに銀ナノワイヤおよび銅ナノワイヤ等の金属ナノワイヤ粒子を含むものであってもよい。
金属細線MW1、MW2、MW5、MW6の視認性を向上させるために、少なくとも金属細線MW1、MW2、MW5、MW6の視認側に黒化層を形成してもよい。黒化層としては、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、金属硫化物等が使用され、代表的には、酸窒化銅、窒化銅、酸化銅、酸化モリブデン等が使用できる。
【0100】
次に、金属細線MW1、MW2、MW5、MW6の形成方法について説明する。これらの金属細線の形成方法として、例えば、スパッタ法、めっき法、銀塩法および印刷法等が適宜利用可能である。
スパッタ法による金属細線MW1、MW2、MW5、MW6の形成方法について説明する。まず、スパッタにより、銅箔層を形成し、フォトリソグラフィ法により銅箔層から銅配線を形成することにより、金属細線MW1、MW2、MW5、MW6を形成することができる。なお、スパッタの代わりに、いわゆる蒸着により銅箔層を形成することもできる。銅箔層は、スパッタ銅箔または蒸着銅箔以外にも、電解銅箔が利用可能である。より具体的には、特開2014-29614号公報に記載の銅配線を形成する工程を利用することができる。
【0101】
めっき法による金属細線MW1、MW2、MW5、MW6の形成方法について説明する。例えば、金属細線MW1、MW2、MW5、MW6は、無電解めっき下地層に無電解めっきを施すことにより下地層上に形成される金属めっき膜を用いて構成することができる。この場合、金属細線MW1、MW2、MW5、MW6は、少なくとも金属微粒子を含有する触媒インクを基材上にパターン状に形成した後に、基材を無電解めっき浴に浸漬し、金属めっき膜を形成することにより形成される。より具体的には、特開2014-159620号公報に記載の金属被膜基材の製造方法を利用することができる。
【0102】
また、金属細線MW1、MW2、MW5、MW6は、少なくとも金属触媒前駆体と相互作用し得る官能基を有する樹脂組成物を基材上にパターン状に形成した後、触媒または触媒前駆体を付与し、基材を無電解めっき浴に浸漬し、金属めっき膜を形成することにより形成される。より具体的には、特開2012-144761号公報に記載の金属被膜基材の製造方法を応用することができる。
【0103】
銀塩法による金属細線MW1、MW2、MW5、MW6の形成方法について説明する。まず、ハロゲン化銀が含まれる銀塩乳剤層に、金属細線MW1、MW2、MW5、MW6となる露光パターンを用いて露光処理を施し、その後現像処理を行うことで、金属細線MW1、MW2、MW5、MW6を形成することができる。より具体的には、特開2012-6377号公報、特開2014-112512号公報、特開2014-209332号公報、特開2015-22397号公報、特開2016-192200号公報および国際公開第2016/157585号に記載の金属細線の製造方法を利用することができる。
【0104】
印刷法による金属細線MW1、MW2、MW5、MW6の形成方法について説明する。まず、導電性粉末を含有する導電性ペーストを金属細線MW1、MW2、MW5、MW6と同じパターンとなるように基板に塗布し、その後、加熱処理を施すことにより金属細線MW1、MW2、MW5、MW6を形成することができる。導電性ペーストを用いたパターン形成は、例えば、インクジェット法またはスクリーン印刷法によりなされる。導電性ペーストとしては、より具体的には、特開2011-28985号公報に記載の導電性ペーストを利用することができる。
【0105】
<カバーパネル>
カバーパネル2の材質としては、強化ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA:polymethyl methacrylate)等を使用することができ、カバーパネル2の厚みは0.1mm~1.5mmが好ましい。
<接着剤>
カバーパネル2とタッチパネル用導電部材3とを互いに接着させる接着剤4としては、光学透明粘着シート(OCA:Optical Clear Adhesive)または光学透明粘着樹脂(OCR:Optical Clear Resin)を使用することができ、好ましい膜厚は、10μm以上200μm以下である。光学透明粘着シートとしては、例えば、3M社製の8146シリーズの使用が可能である。
【実施例0106】
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順は、本発明の主旨を逸脱しない限り適宜変更することができ、本発明の範囲は、以下の実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0107】
<実施例1>
まず、透明絶縁基板として、易接着層が両面に形成された厚み50μmのPETフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャイン A4300)を準備した。
【0108】
<銅膜の形成>
次に、このPETフィルムの両面に、密着層として酸化銅膜を形成した。この際に、銅をターゲットとして用い、酸素ガス(流量:90sccm)とアルゴンガス(流量:270sccm)の混合ガスをスパッタ装置内に導入しながら、製膜室内圧力:0.4Pa、パワー密度:1.7W/cm2、製膜中のロール温度:90℃の条件でスパッタリング製膜を行った。得られた酸化銅膜の膜厚は、20nmであった。
【0109】
次いで、PETフィルムの両面に形成された酸化銅膜のうち一方の面側の酸化銅膜上に銅膜を形成した。銅をターゲットとして用い、アルゴンガス(流量:270sccm)をスパッタ装置内に導入しながら、製膜室内圧力:0.4Pa、パワー密度:4.2W/cm2、製膜中のロール温度:90℃の条件でスパッタリング製膜を行なった。このようにして得られた積層体において、銅膜の膜厚は、300nmであった。
【0110】
<金属配線のパターニング>
銅膜を形成した後、銅膜上に防錆処理を行い、フォトリソグラフィ法により銅膜をパターニングした。この際に、銅膜上に、ポジ型レジストを膜厚2μmとなるように塗布形成した。次に、
図1のメッシュパターンMP1に対応する、線幅5μmのメッシュパターンを有するガラス製フォトマスクを用意し、そのガラス製フォトマスクをレジスト膜上に配置した状態で銅膜に対してメタルハライドランプを照射した後、レジスト膜が配置された積層体を濃度3%の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬することで現像し、
図1のメッシュパターンMP1に対応するパターンを有するレジスト膜を得た。このレジスト膜をマスクとして、酸化銅膜および銅膜を、濃度5%の塩化第二鉄水溶液を用いて同時にエッチングして、金属配線のパターニングを行った。最後に、残ったレジスト膜を剥離して、
図1のメッシュパターンMP1を有する第1導電層6Aを備えたタッチパネル用導電部材を得た。
【0111】
実施例1におけるメッシュパターンMP1は、
図3において点線で示すような、1辺300μmで且つ鋭角の角度が65度である菱形の参照メッシュセルMC2が規則的に配置された参照メッシュパターンMP2を変形したものである。
具体的には、メッシュパターンMP1は、参照メッシュパターンMP2における金属細線MW3およびMW4の交差部の位置を、この交差部を中心とした半径10μmの円形の範囲内でランダムに再配置したメッシュパターンMP1である。このメッシュパターンMP1の不規則性は、3.3%であった。
【0112】
また、
図6に示すように、メッシュパターンMP1における交差部CP1を中心として第1金属細線E1~第4金属細線E4が延びており、第1金属細線E1は屈曲部B3を有し、第2金属細線E2は屈曲部B1を有し、第3金属細線E3は屈曲部B4を有し、第4金属細線E4は屈曲部B2を有している。また、屈曲部B1~B4は、直線形状を有している。
【0113】
屈曲部B1~B4の屈曲の起点は、参照メッシュパターンMP2における金属細線MW3およびMW4の交差部の位置をランダムに再配置した後で、鋭角を挟む2対の金属細線MW3、MW4上において、交差部CP1から15μmの距離に位置する点を、対応する金属細線MW3、MW4と直交する方向に沿って、鋭角の外側に向かって2.5μm平行移動した点として設計されている。このようにして設計される屈曲部B1~B4の屈曲の起点は、交差部CP1から15.2μmの位置に配置されている。メッシュパターンMP1におけるメッシュセルMC1の辺の長さの平均値を300μmとすると、屈曲部B1~B4の屈曲の起点は、交差部CP1から、メッシュセルMC1の1辺のおよそ1/20の位置に配置されている。
これによって、メッシュパターンMP1における交差部CP1の全てが、屈曲部B1~B4を有している。
【0114】
また、実施例1において、メッシュパターンMP1を形成する金属細線MW1、MW2の線幅は、平均で4.7μmであった。
また、第1金属細線E1と第2金属細線E2との平均交差角度は、約85度であり、第1金属細線E1と第2金属細線E2により挟まれる鋭角の角度よりも大きかった。また、第3金属細線E3と第4金属細線E4との平均交差角度も、約85度であり、第3金属細線E3と第4金属細線E4により挟まれる鋭角の角度よりも大きかった。
【0115】
ここで、メッシュパターンMP1の線幅は、光学顕微鏡を用いて、1000倍および100倍の倍率で撮影した光学顕微鏡画像に基づいて測定した。
また、第1金属細線E1と第2金属細線E2との平均交差角度および第3金属細線E3と第4金属細線E4との平均交差角度は、メッシュパターンMP1における任意の20箇所の交差部CP1に対して、光学顕微鏡を用いて1000倍および100倍の倍率で撮影し、得られた光学顕微鏡画像に基づいて、それぞれの交差部CP1における交差角度を撮影し、それらの交差角度を平均することにより算出した。
【0116】
<実施例2>
図8に示すように、屈曲部B5~B8が、2次曲線からなる曲線形状を有すること、および、メッシュパターンMP1が65度の鋭角を有する菱形の参照メッシュパターンMP2の代わりに60度の鋭角を有する菱形の参照メッシュパターンMP2を変形したパターンであること以外は、実施例1と同様にして実施例2のタッチパネル用導電部材を作製した。
<実施例3>
ガラス製フォトマスクのメッシュパターンの線幅を2.5μmとした以外は、実施例2と同様にして実施例3のタッチパネル用導電部材を作製した。実施例3においてメッシュパターンMP1を形成する金属細線MW1、MW2の線幅は、2.4μmであった。
【0117】
<実施例4>
ガラス製フォトマスクのメッシュパターンの線幅を1.5μmとした以外は、実施例2と同様にして実施例4のタッチパネル用導電部材を作製した。実施例4においてメッシュパターンMP1を形成する金属細線MW1、MW2の線幅は、1.4μmであった。
【0118】
<実施例5>
参照メッシュパターンMP2における金属細線MW3およびMW4の交差部の位置をランダムに再配置した後で、鋭角を挟む2対の金属細線MW3、MW4上において、交差部CP2から50μmの距離に位置する点を、対応する金属細線MW3、MW4と直交する方向に沿って、鋭角の外側に向かって9μm平行移動した点を、屈曲部B5~B8として設計する以外は、実施例2と同様にして実施例5のタッチパネル用導電部材を作製した。
【0119】
実施例5における屈曲部B5~B8の屈曲の起点は、交差部CP2から50.8μmの距離の位置に配置されていた。メッシュパターンMP1におけるメッシュセルMC1の辺の長さの平均値を300μmとすると、屈曲部B5~B8の屈曲の起点は、交差部CP2から、メッシュセルMC1の1辺のおよそ1/6の位置に配置されている。
【0120】
<実施例6>
参照メッシュパターンMP2における金属細線MW3およびMW4の交差部の位置をランダムに再配置した後で、鋭角を挟む2対の金属細線MW3、MW4上において、交差部CP2から25μmの距離に位置する点を、対応する金属細線MW3、MW4と直交する方向に沿って、鋭角の外側に向かって4μm平行移動した点を、屈曲部B5~B8として設計する以外は、実施例2と同様にして実施例6のタッチパネル用導電部材を作製した。
【0121】
実施例6における屈曲部B5~B8の屈曲の起点は、交差部CP2から25.3μmの距離の位置に配置されていた。メッシュパターンMP1におけるメッシュセルMC1の辺の長さの平均値を300μmとすると、屈曲部B5~B8の屈曲の起点は、交差部CP2から、メッシュセルMC1の1辺のおよそ1/12の位置に配置されている。
【0122】
<実施例7>
メッシュパターンMP1が、60度の鋭角を有する菱形の参照メッシュパターンMP2の代わりに、55度の鋭角を有する菱形の参照メッシュパターンMP2を変形したパターンである以外は、実施例3と同様にして実施例7のタッチパネル用導電部材を作製した。
実施例7のタッチパネル用導電部材において、第1金属細線E5と第2金属細線E6との平均交差角度と、第3金属細線E7と第4金属細線E8との平均交差角度は、いずれも約80度であり、第1金属細線E5と第2金属細線E6とに挟まれる鋭角の角度および第3金属細線E7と第4金属細線E8とに挟まれる鋭角の角度よりも大きかった。
<実施例8>
メッシュパターンMP1が、60度の鋭角を有する菱形の参照メッシュパターンMP2の代わりに、75度の鋭角を有する菱形の参照メッシュパターンMP2を変形したパターンである以外は、実施例3と同様にして実施例8のタッチパネル用導電部材を作製した。
実施例8のタッチパネル用導電部材において、第1金属細線E5と第2金属細線E6との平均交差角度と、第3金属細線E7と第4金属細線E8との平均交差角度は、いずれも約100度であり、第1金属細線E5と第2金属細線E6とに挟まれる鋭角の角度および第3金属細線E7と第4金属細線E8とに挟まれる鋭角の角度よりも大きかったが、それに対応して、第1金属細線E5と第4金属細線E8とに挟まれる角度、第2金属細線E6と第3金属細線E7とに挟まれる角度が鋭角となった。
【0123】
<実施例9>
図6に示すように、第1金属細線E1が屈曲部B3を有し、第2金属細線E2が屈曲部B1を有し、第3金属細線E3が屈曲部B4を有し、第4金属細線E4が屈曲部B2を有する代わりに、
図4に示すように、第2金属細線E2が屈曲部B1を有し、第4金属細線E4が屈曲部B2を有し、第1金属細線E1と第3金属細線E3が屈曲部を有しないようにメッシュパターンMP1をパターニングする以外は、実施例1と同様にして実施例9のタッチパネル用導電部材を作製した。
実施例9のタッチパネル用導電部材において、第1金属細線E1と第2金属細線E2との平均交差角度と、第3金属細線E3と第4金属細線E4との平均交差角度は、いずれも約75度であり、第1金属細線E1と第2金属細線E2とに挟まれる鋭角の角度および第3金属細線E3と第4金属細線E4とに挟まれる鋭角の角度よりも大きかった。
【0124】
<実施例10>
PETフィルムの両面に形成された酸化銅膜のうち一方の面側の酸化銅膜上に、実施例1おける銅膜の形成方法と同様の方法により、300nmの銅膜を形成した。次に、実施例1におけるメッシュセルMC1の1辺の長さを2倍にしたメッシュセルMC1が連続してなるメッシュパターンを有するガラス製フォトマスクを用意した。このガラス製フォトマスクを用いて、形成された銅膜に対して、実施例1における金属配線のパターニングと同様の方法により、銅膜をパターニングした。
【0125】
さらに、PETフィルムの他方の面側の酸化銅膜上に、実施例1おける銅膜の形成方法と同様の方法により、300nmの銅膜を形成した。次に、実施例1におけるメッシュセルMC1の1辺の長さを2倍にしたメッシュセルMC1が連続し、且つ、PETフィルムの一方の面側で使用されたガラス製フォトマスクのメッシュパターンと重なることで、平面視において実施例1のメッシュパターンMP1を形成するメッシュパターンを有するガラス製フォトマスクを用意した。このガラス製フォトマスクを用いて、形成された銅膜に対して、実施例1における金属配線のパターニングと同様の方法により、銅膜をパターニングした。
【0126】
これにより、第1導電層6Aと第2導電層6Bを備えた実施例10のタッチパネル用導電部材が得られた。実施例10のタッチパネル用導電部材では、第1導電層6Aと第2導電層6Bが互いに重なることにより、平面視において、
図1のメッシュパターンMP1が形成される。
【0127】
また、
図10に示すように、第1導電層6Aにおける金属細線MW1と第2導電層6Bにおける金属細線MW2が互いに電気的に絶縁しながら交差することにより、交差部CP3が形成されている。この交差部CP3を中心として、第1金属細線E9、第2金属細線E10、第3金属細線E11、第4金属細線E12が延びている。また、第1金属細線E9は屈曲部B11を有し、第2金属細線E10は屈曲部B9を有し、第3金属細線E11は屈曲部B12を有し、第4金属細線E12は屈曲部B10を有している。
【0128】
実施例10のタッチパネル用導電部材は、PETフィルムの一方の面側に第1導電層6Aを有し、PETフィルムの他方の面側に第2導電層6Bを有し、第1導電層6Aと第2導電層6Bが互いに重なることにより、平面視においてメッシュパターンMP1を形成する以外は、実施例1のタッチパネル用導電部材と同一である。
【0129】
<実施例11>
ガラス製フォトマスクのメッシュパターンを、
図13に示すメッシュパターンMP3に対応するメッシュパターンとし、その線幅を4μmとしてタッチパネル用導電部材を作製した。実施例11におけるメッシュパターンMP3は、
図13において点線で示すような、1辺300μmで且つ鋭角の角度が65度である菱形の参照メッシュセルMC2が規則的に配置された参照メッシュパターンMP2に対して、第1方向D1において隣り合う金属細線MW4間の距離と、第2方向D2において隣り合う金属細線MW3間の距離を、それぞれ±10μmの範囲内でランダムに変化させたメッシュパターンMP3である。このッシュパターンMP3の不規則性は、3.3%であった。
また、実施例1と同様にして、ランダムに再配置された交差部CP5に屈曲部B1~B4を形成した。
また、実施例11におけるメッシュパターンMP3を形成する金属細線MW5、ME6の平均の線幅は、3.8μmであった。
これによって、メッシュパターンMP3における交差部CP5の全てが、屈曲部B1~B4を有している。
【0130】
<実施例12>
メッシュパターンMP3における交差部CP5を中心として15μmの長さで延びる4本の金属細線のうち、鋭角を挟む1対の金属細線同士の交差角度を90度とし、メッシュパターンMP3の金属細線MW5、MW6に対して12.5度ずつ鋭角の外側にずらして配置させた以外は、実施例11と同様にして実施例12のタッチパネル用導電部材を作製した。
【0131】
<比較例1>
ガラス製フォトマスクのメッシュパターンを、1辺300μmで65度の鋭角を有する菱形が連続した規則的なメッシュパターンとした以外は、実施例1と同様にして比較例1のタッチパネル用導電部材を作製した。
【0132】
<比較例2>
ガラス製フォトマスクのメッシュパターンを、
図6に示す、交差部CP1を中心として延びる第1金属細線E1~第4金属細線E4がいずれも屈曲部B1~B4を有さないメッシュパターンとした以外は、実施例1と同様にして比較例2のタッチパネル用導電部材を作製した。
<比較例3>
PETフィルムの両面で使用される2つのガラス製フォトマスクのメッシュパターンを、それぞれ、
図10に示す、交差部CP3を中心として延びる第1金属細線E9~第4金属細線E12がいずれも屈曲部B9~B12を有さないメッシュパターンとした以外は、実施例10と同様にして比較例3のタッチパネル用導電部材を作製した。
【0133】
このようにして作製した実施例1~12および比較例1~3のタッチパネル用導電部材に対して、以下に説明するざらつき感の評価とモアレの評価を行った。
<ざらつき感の評価>
実施例1~12および比較例1~3のタッチパネル用導電部材を白色蛍光灯のシャーカステン上に配置して、タッチパネル用導電部材に対して30cm離れた所から、5人の評価者の目視により、タッチパネル用導電部材を平面視で観察した。これにより、評価者が感じるざらつき感について、以下の評価基準にしたがって評価し、最も多い評価結果を最終的な評価結果とした。
A:ざらつき感がなく、均一に見える。
B:若干ざらつき感がある。
C:ややざらつき感が強い。
D:ざらつき感が強い。
なお、評価「D」は、実用上問題があるレベルであり、評価「C」以上が実用上問題がないレベル、評価「B」は優れたレベル、評価「A」はとても優れたレベルである。
【0134】
<モアレの評価>
実施例1~12および比較例1~3のタッチパネル用導電部材を、7.9インチのQXGA(Quad Extended Graphics Array)の高精細液晶パネル上に配置して、タッチパネル用導電部材に対して30cm離れた所から5人の評価者の目視により、タッチパネル用導電部材を平面視で観察した。これにより、タッチパネル用導電部材のメッシュパターンMP1、MP3と高精細液晶パネルの画素パターンの干渉で発生するモアレを、以下の評価基準にしたがって評価し、最も多い評価結果を最終的な評価結果とした。
A:モアレが観察されない。
B:モアレが観察される。
【0135】
実施例1~12および比較例1~3に対するざらつき感の評価結果と、モアレの評価結果を、表1に示す。
【0136】
【0137】
実施例1~12は、ざらつき感の評価結果がいずれもCで、且つ、モアレの評価結果がいずれも「A」であった。特に、実施例3、4および12は、ざらつき感の評価結果とモアレの評価結果がいずれも「A」であり、非常に優れている。
【0138】
実施例3はメッシュパターンMP1を形成する金属細線MW1、MW2の線幅が2.4μm、実施例4は線幅が1.4μmであるため、金属細線MW1、MW2が目立たず、評価者がざらつき感を感じにくいと考えられる。
また、実施例12は、鋭角を挟む1対の金属細線MW1、MW2の交差角度が90度であるため、1対の金属細線MW1、MW2に挟まれる鋭角が目立たず、評価者がざらつき感を感じにくいと考えられる。
【0139】
比較例1は、ざらつき感の評価結果は「C」であるが、モアレの評価結果が「B」であった。比較例1のタッチパネル用導電部材は、規則的なメッシュパターンを有しているため、メッシュパターンと高精細液晶パネルの画素パターンとが干渉しやすく、モアレが観察されやすいと考えられる。
【0140】
比較例2および3は、モアレの評価結果がいずれも「A」であるが、ざらつき感の評価結果がいずれも「D」であった。比較例2および3のタッチパネル用導電部材は、不規則なメッシュパターンを有しているため、メッシュパターンと高精細液晶パネルの画素パターンとの干渉を抑制することができるが、メッシュパターンを構成する金属細線が屈曲部を有していないため、1対の金属細線に挟まれる鋭角が目立ってしまい、評価者がざらつき感を感じやすいと思われる。
【0141】
このような評価結果から、本発明のタッチパネル用導電部材によれば、画像表示装置に使用した際のモアレの発生を抑制しつつ、ざらつき感を低減できることは明らかである。
1,41 タッチパネル、1A,41A 表面、1B,41B 裏面、2 カバーパネル、3タッチパネル用導電部材、4、4A 接着剤、5 透明絶縁基板、5A,5B 面、6A 第1導電層、6B 第2導電層、7A,7B 透明絶縁部材、8 表示モジュール、9 画像表示装置、11,31 第1電極、12 第1パッド、13 第1周辺配線、14 第1外部接続端子、21 第2電極、22 第2パッド、23 第2周辺配線、24 第2外部接続端子、A1~A8 鋭角、B1~B16 屈曲部、CP1~CP5 交差部、D1 第1方向、D2 第2方向、E1,E5,E9,E13 第1金属細線、E2,E6,E10,E14 第2金属細線、E3,E7,E11,E15 第3金属細線、E4,E8,E12,E16 第4金属細線、MC1~MC3 メッシュセル、MP1,MP3 メッシュパターン、MP2 参照メッシュパターン、MW1~MW6 金属細線、S1 透過領域、S2 周辺領域、SP1~SP8 起点、T1~T8 交差角度。