(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094440
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子、電子機器及び有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 33/12 20060101AFI20240703BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240703BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H05B33/12 C
H05B33/14 B
H05B33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021039399
(22)【出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸野 賢悟
(72)【発明者】
【氏名】田崎 聡美
(72)【発明者】
【氏名】西村 和樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良明
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB08
3K107CC04
3K107DD51
3K107DD53
3K107DD67
3K107FF00
3K107FF13
3K107FF15
3K107FF19
3K107FF20
(57)【要約】
【課題】発光効率が向上した有機EL素子の提供。
【解決手段】陽極3と、陰極4と、陽極3及び陰極4の間に配置された発光層とを有し、発光層は、第一の発光層51及び第二の発光層52を含み、第一の発光層51は、第一のホスト材料と、第一の発光性化合物とを含み、第二の発光層52は、第二のホスト材料と、第二の発光性化合物とを含み、第一のホスト材料と第二のホスト材料とは互いに異なり、第一の発光性化合物と第二の発光性化合物とが、互いに同一であるか、又は異なり、第一のホスト材料の三重項エネルギーT
1(H1)と第二のホスト材料の三重項エネルギーT
1(H2)とが数式(数1)の関係を満たし、拡散方程式から算出した前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT
1(H1)の拡散係数D
1が、3.0×10
-9(cm
2/s)以上である有機EL素子1。
T
1(H1)>T
1(H2) …(数1)
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、
陰極と、
前記陽極及び前記陰極の間に配置された発光層と、を有し、
前記発光層は、第一の発光層及び第二の発光層を含み、
前記第一の発光層は、第一のホスト材料と、第一の発光性化合物と、を含み、
前記第二の発光層は、第二のホスト材料と、第二の発光性化合物と、を含み、
前記第一のホスト材料と前記第二のホスト材料とは互いに異なり、
前記第一の発光性化合物と前記第二の発光性化合物とが、互いに同一であるか、又は異なり、
前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)と前記第二のホスト材料の三重項エネルギーT1(H2)とが、下記数式(数1)の関係を満たし、
拡散方程式から算出した前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)の拡散係数D1が、3.0×10-9(cm2/s)以上である、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
T1(H1)>T1(H2) …(数1)
【請求項2】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)の拡散係数D1は、前記第一のホスト材料に第一の燐光錯体を添加した第一の解析層と、前記第一のホスト材料に第二の燐光錯体を添加した第二の解析層とが積層された拡散速度解析層を用いて、励起光が前記第一の解析層の側から入射し、透過光が前記第二の解析層から透過するようにして測定された前記透過光の過渡PLスペクトルに基づき、拡散方程式から算出され、
前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)と前記第一の燐光錯体の三重項エネルギーT1(C1)とが、下記数式(数X)の関係を満たし、
前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)と前記第二の燐光錯体の三重項エネルギーT1(C2)とが、下記数式(数Y)の関係を満たす、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
T1(C1)>T1(H1) …(数X)
T1(H1)>T1(C2) …(数Y)
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第一の発光性化合物の最大ピーク波長が500nm以下である、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第二の発光性化合物の最大ピーク波長が500nm以下である、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第一の燐光錯体が、Ir(ppy)3であり、
前記第二の燐光錯体が、Ir(piq)2(acac)である、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第一のホスト材料の最高被占軌道のエネルギー準位HOMO(H1)の絶対値と、前記第一の発光性化合物の最高被占軌道のエネルギー準位HOMO(D1)の絶対値とが、下記数式(数2)の関係を満たす、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
|HOMO(H1)|―|HOMO(D1)|≧0.2eV …(数2)
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第一の発光性化合物の三重項エネルギーT1(D1)と、前記第二のホスト材料の三重項エネルギーT1(H2)とが、下記数式(数3)の関係を満たす、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
T1(D1)>T1(H2) …(数3)
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第二のホスト材料の電子移動度μe(H2)と、前記第一のホスト材料の電子移動度μe(H1)とが、下記数式(数4)の関係を満たす、
μe(H2)>μe(H1) …(数4)
有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第一のホスト材料の一重項エネルギーS1(H1)と、前記第二のホスト材料の一重項エネルギーS1(H2)とが、下記数式(数5)の関係を満たす、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
S1(H1)>S1(H2) …(数5)
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
分子軌道計算により算出される前記第一のホスト材料のファンデルワールス半径が、1.08nm以上である、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第一の発光層の膜厚が2nm以上20nm以下である、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を搭載した電子機器。
【請求項13】
陽極と、陰極と、前記陽極及び前記陰極の間に配置された第一の発光層及び第二の発光層と、を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
第一のホスト材料と、第一の発光性化合物とを含む前記第一の発光層を形成する工程と、
第二のホスト材料と、第二の発光性化合物とを含む前記第二の発光層を形成する工程と、を有し、
前記第一のホスト材料と前記第二のホスト材料とは互いに異なり、
前記第一の発光性化合物と前記第二の発光性化合物とが、互いに同一であるか、又は異なり、
前記第一の発光層を形成する工程及び前記第二の発光層を形成する工程で用いる前記第一のホスト材料及び前記第二のホスト材料は、下記数式(数1)及び数式(数6)を満たす材料から選択される、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
T1(H1)>T1(H2) …(数1)
D1≧3.0×10-9(cm2/s)…(数6)
(前記数式(数1)及び数式(数6)において、
T1(H1)は、前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)であり、
T1(H2)は、前記第二のホスト材料の三重項エネルギーT1(H2)であり、
D1は、拡散方程式から算出された前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)の拡散係数である。)
【請求項14】
請求項13に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)の拡散係数D1は、前記第一のホスト材料に第一の燐光錯体を添加した第一の解析層と、前記第一のホスト材料に第二の燐光錯体を添加した第二の解析層とが積層された拡散速度解析層を用いて、励起光が前記第一の解析層の側から入射し、透過光が前記第二の解析層から透過するようにして測定された前記透過光の過渡PLスペクトルに基づき、拡散方程式から算出され、
前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)と前記第一の燐光錯体の三重項エネルギーT1(C1)とが、下記数式(数X)の関係を満たし、
前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)と前記第二の燐光錯体の三重項エネルギーT1(C2)とが、下記数式(数Y)の関係を満たす、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
T1(C1)>T1(H1) …(数X)
T1(H1)>T1(C2) …(数Y)
【請求項15】
請求項13または請求項14に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
前記第一の発光性化合物の最大ピーク波長が500nm以下である、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項16】
請求項13から請求項15のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
前記第二の発光性化合物の最大ピーク波長が500nm以下である、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項17】
請求項14から請求項16のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
前記第一の燐光錯体が、Ir(ppy)3であり、
前記第二の燐光錯体が、Ir(piq)2(acac)である、
有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、電子機器及び有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」という場合がある。)は、携帯電話及びテレビ等のフルカラーディスプレイへ応用されている。有機EL素子に電圧を印加すると、陽極から正孔が発光層に注入され、また陰極から電子が発光層に注入される。そして、発光層において、注入された正孔と電子とが再結合し、励起子が形成される。このとき、電子スピンの統計則により、一重項励起子が25%の割合で生成し、及び三重項励起子が75%の割合で生成する。
有機EL素子の性能向上を図るため、例えば、特許文献1~3においては、複数の発光層を積層させることについて検討がなされている。また、特許文献1には、2つの三重項励起子から1つの一重項励起子が生成される現象(以下、Triplet-Triplet Fusion=TTF現象と称する場合がある。)が記載されている。特許文献1に記載の有機発光素子は、陽極と陰極と、該陽極と該陰極との間に挟持される有機化合物からなる層と、から構成され、該有機化合物からなる層が、第一の材料からなる第一の発光領域と、該第一の材料と第二の材料とからなる第二の発光領域と、を含み、該第二の材料のエネルギーギャップが該第一の材料のエネルギーギャップよりも大きく、該第二の材料の最低三重項励起エネルギーが、該第一の材料の最低三重項励起エネルギーよりも小さいことを特徴とする。
有機EL素子の性能としては、例えば、輝度、発光波長、色度、発光効率、駆動電圧、及び寿命が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-16478号公報
【特許文献2】特開2011-103189号公報
【特許文献3】米国特許出願公開2019/280209号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の発光層を積層させた有機EL素子においては、更なる性能の向上が要望されている。
本発明の目的の一つは、性能が向上した有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することである。また、本発明の別の目的の一つは、発光効率が向上した有機エレクトロルミネッセンス素子を提供すること、当該有機エレクトロルミネッセンス素子を搭載した電子機器を提供すること、及び当該有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、
陽極と、
陰極と、
前記陽極及び前記陰極の間に配置された発光層と、を有し、
前記発光層は、第一の発光層及び第二の発光層を含み、
前記第一の発光層は、第一のホスト材料と、第一の発光性化合物と、を含み、
前記第二の発光層は、第二のホスト材料と、第二の発光性化合物と、を含み、
前記第一のホスト材料と前記第二のホスト材料とは互いに異なり、
前記第一の発光性化合物と前記第二の発光性化合物とが、互いに同一であるか、又は異なり、
前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)と前記第二のホスト材料の三重項エネルギーT1(H2)とが、下記数式(数1)の関係を満たし、
拡散方程式から算出した前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)の拡散係数D1が、3.0×10-9(cm2/s)以上である、有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
T1(H1)>T1(H2) …(数1)
【0006】
本発明の一態様によれば、前述の本発明の一態様に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を搭載した電子機器が提供される。
【0007】
本発明の一態様によれば、陽極と、陰極と、前記陽極及び前記陰極の間に配置された第一の発光層及び第二の発光層と、を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
第一のホスト材料と、第一の発光性化合物とを含む前記第一の発光層を形成する工程と、
第二のホスト材料と、第二の発光性化合物とを含む前記第二の発光層を形成する工程と、を有し、
前記第一のホスト材料と前記第二のホスト材料とは互いに異なり、
前記第一の発光性化合物と前記第二の発光性化合物とが、互いに同一であるか、又は異なり、
前記第一の発光層を形成する工程及び前記第二の発光層を形成する工程で用いる前記第一のホスト材料及び前記第二のホスト材料は、下記数式(数1)及び数式(数6)を満たす材料から選択される、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法が提供される。
T1(H1)>T1(H2) …(数1)
D1≧3.0×10-9(cm2/s)…(数6)
(前記数式(数1)及び数式(数6)において、
T1(H1)は、前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)であり、
T1(H2)は、前記第二のホスト材料の三重項エネルギーT1(H2)であり、
D1は、拡散方程式から算出された前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)の拡散係数である。)
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、性能が向上した有機エレクトロルミネッセンス素子を提供できる。また、本発明の一態様によれば、発光効率が向上した有機エレクトロルミネッセンス素子を提供できる。また、本発明の一態様によれば、当該有機エレクトロルミネッセンス素子を搭載した電子機器を提供できる。また、本発明の一態様によれば、当該有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】過渡PLデータ測定用試料1の過渡PLスペクトルを示す図である。
【
図2A】過渡PLデータ測定用試料1に励起光を入射した時のトリプレットの挙動及び密度を説明するための図である。
【
図2B】過渡PLデータ測定用試料1に励起光を入射してから時間t
1が経過した時のトリプレットの挙動及び密度を説明するための図である。
【
図2C】過渡PLデータ測定用試料1に励起光を入射してから時間t
2が経過した時のトリプレットの挙動及び密度を説明するための図である。
【
図3】過渡PLデータ測定用試料1の過渡PLスペクトル及びフィッティングした後の過渡PLスペクトルを示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の一例の概略構成を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の別の一例の概略構成を示す図である。
【
図6】実施例及び比較例に係る第一のホスト材料の三重項エネルギーT
1(H1)の拡散係数D
1及び積層素子のTTF比率の関係を示すグラフである。
【
図8A】TTF由来の発光強度比の測定方法を示す図であり、EL素子の発光強度の時間変化を示すグラフである。
【
図8B】TTF由来の発光強度比の測定方法を示す図であり、光強度の平方根の逆数の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[定義]
本明細書において、水素原子とは、中性子数が異なる同位体、即ち、軽水素(protium)、重水素(deuterium)、及び三重水素(tritium)を包含する。
【0011】
本明細書において、化学構造式中、「R」等の記号や重水素原子を表す「D」が明示されていない結合可能位置には、水素原子、即ち、軽水素原子、重水素原子、又は三重水素原子が結合しているものとする。
【0012】
本明細書において、環形成炭素数とは、原子が環状に結合した構造の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、及び複素環化合物)の当該環自体を構成する原子のうちの炭素原子の数を表す。当該環が置換基によって置換される場合、置換基に含まれる炭素は環形成炭素数には含まない。以下で記される「環形成炭素数」については、別途記載のない限り同様とする。例えば、ベンゼン環は環形成炭素数が6であり、ナフタレン環は環形成炭素数が10であり、ピリジン環は環形成炭素数5であり、フラン環は環形成炭素数4である。また、例えば、9,9-ジフェニルフルオレニル基の環形成炭素数は13であり、9,9’-スピロビフルオレニル基の環形成炭素数は25である。
また、ベンゼン環に置換基として、例えば、アルキル基が置換している場合、当該アルキル基の炭素数は、ベンゼン環の環形成炭素数に含めない。そのため、アルキル基が置換しているベンゼン環の環形成炭素数は、6である。また、ナフタレン環に置換基として、例えば、アルキル基が置換している場合、当該アルキル基の炭素数は、ナフタレン環の環形成炭素数に含めない。そのため、アルキル基が置換しているナフタレン環の環形成炭素数は、10である。
【0013】
本明細書において、環形成原子数とは、原子が環状に結合した構造(例えば、単環、縮合環、及び環集合)の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、及び複素環化合物)の当該環自体を構成する原子の数を表す。環を構成しない原子(例えば、環を構成する原子の結合を終端する水素原子)や、当該環が置換基によって置換される場合の置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。以下で記される「環形成原子数」については、別途記載のない限り同様とする。例えば、ピリジン環の環形成原子数は6であり、キナゾリン環の環形成原子数は10であり、フラン環の環形成原子数は5である。例えば、ピリジン環に結合している水素原子、又は置換基を構成する原子の数は、ピリジン環形成原子数の数に含めない。そのため、水素原子、又は置換基が結合しているピリジン環の環形成原子数は、6である。また、例えば、キナゾリン環の炭素原子に結合している水素原子、又は置換基を構成する原子については、キナゾリン環の環形成原子数の数に含めない。そのため、水素原子、又は置換基が結合しているキナゾリン環の環形成原子数は10である。
【0014】
本明細書において、「置換もしくは無置換の炭素数XX~YYのZZ基」という表現における「炭素数XX~YY」は、ZZ基が無置換である場合の炭素数を表し、置換されている場合の置換基の炭素数を含めない。ここで、「YY」は、「XX」よりも大きく、「XX」は、1以上の整数を意味し、「YY」は、2以上の整数を意味する。
【0015】
本明細書において、「置換もしくは無置換の原子数XX~YYのZZ基」という表現における「原子数XX~YY」は、ZZ基が無置換である場合の原子数を表し、置換されている場合の置換基の原子数を含めない。ここで、「YY」は、「XX」よりも大きく、「XX」は、1以上の整数を意味し、「YY」は、2以上の整数を意味する。
【0016】
本明細書において、無置換のZZ基とは「置換もしくは無置換のZZ基」が「無置換のZZ基」である場合を表し、置換のZZ基とは「置換もしくは無置換のZZ基」が「置換のZZ基」である場合を表す。
本明細書において、「置換もしくは無置換のZZ基」という場合における「無置換」とは、ZZ基における水素原子が置換基と置き換わっていないことを意味する。「無置換のZZ基」における水素原子は、軽水素原子、重水素原子、又は三重水素原子である。
また、本明細書において、「置換もしくは無置換のZZ基」という場合における「置換」とは、ZZ基における1つ以上の水素原子が、置換基と置き換わっていることを意味する。「AA基で置換されたBB基」という場合における「置換」も同様に、BB基における1つ以上の水素原子が、AA基と置き換わっていることを意味する。
【0017】
「本明細書に記載の置換基」
以下、本明細書に記載の置換基について説明する。
【0018】
本明細書に記載の「無置換のアリール基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30、より好ましくは6~18である。
本明細書に記載の「無置換の複素環基」の環形成原子数は、本明細書に別途記載のない限り、5~50であり、好ましくは5~30、より好ましくは5~18である。
本明細書に記載の「無置換のアルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~20、より好ましくは1~6である。
本明細書に記載の「無置換のアルケニル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、2~50であり、好ましくは2~20、より好ましくは2~6である。
本明細書に記載の「無置換のアルキニル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、2~50であり、好ましくは2~20、より好ましくは2~6である。
本明細書に記載の「無置換のシクロアルキル基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、3~50であり、好ましくは3~20、より好ましくは3~6である。
本明細書に記載の「無置換のアリーレン基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30、より好ましくは6~18である。
本明細書に記載の「無置換の2価の複素環基」の環形成原子数は、本明細書に別途記載のない限り、5~50であり、好ましくは5~30、より好ましくは5~18である。
本明細書に記載の「無置換のアルキレン基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~20、より好ましくは1~6である。
【0019】
・「置換もしくは無置換のアリール基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」の具体例(具体例群G1)としては、以下の無置換のアリール基(具体例群G1A)及び置換のアリール基(具体例群G1B)等が挙げられる。(ここで、無置換のアリール基とは「置換もしくは無置換のアリール基」が「無置換のアリール基」である場合を指し、置換のアリール基とは「置換もしくは無置換のアリール基」が「置換のアリール基」である場合を指す。)本明細書において、単に「アリール基」という場合は、「無置換のアリール基」と「置換のアリール基」の両方を含む。
「置換のアリール基」は、「無置換のアリール基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアリール基」としては、例えば、下記具体例群G1Aの「無置換のアリール基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び下記具体例群G1Bの置換のアリール基の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換のアリール基」の例、及び「置換のアリール基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のアリール基」には、下記具体例群G1Bの「置換のアリール基」におけるアリール基自体の炭素原子に結合する水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び下記具体例群G1Bの「置換のアリール基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0020】
・無置換のアリール基(具体例群G1A):
フェニル基、
p-ビフェニル基、
m-ビフェニル基、
o-ビフェニル基、
p-ターフェニル-4-イル基、
p-ターフェニル-3-イル基、
p-ターフェニル-2-イル基、
m-ターフェニル-4-イル基、
m-ターフェニル-3-イル基、
m-ターフェニル-2-イル基、
o-ターフェニル-4-イル基、
o-ターフェニル-3-イル基、
o-ターフェニル-2-イル基、
1-ナフチル基、
2-ナフチル基、
アントリル基、
ベンゾアントリル基、
フェナントリル基、
ベンゾフェナントリル基、
フェナレニル基、
ピレニル基、
クリセニル基、
ベンゾクリセニル基、
トリフェニレニル基、
ベンゾトリフェニレニル基、
テトラセニル基、
ペンタセニル基、
フルオレニル基、
9,9’-スピロビフルオレニル基、
ベンゾフルオレニル基、
ジベンゾフルオレニル基、
フルオランテニル基、
ベンゾフルオランテニル基、
ペリレニル基、及び
下記一般式(TEMP-1)~(TEMP-15)で表される環構造から1つの水素原子を除くことにより誘導される1価のアリール基。
【0021】
【0022】
【0023】
・置換のアリール基(具体例群G1B):
o-トリル基、
m-トリル基、
p-トリル基、
パラ-キシリル基、
メタ-キシリル基、
オルト-キシリル基、
パラ-イソプロピルフェニル基、
メタ-イソプロピルフェニル基、
オルト-イソプロピルフェニル基、
パラ-t-ブチルフェニル基、
メタ-t-ブチルフェニル基、
オルト-t-ブチルフェニル基、
3,4,5-トリメチルフェニル基、
9,9-ジメチルフルオレニル基、
9,9-ジフェニルフルオレニル基、
9,9-ビス(4-メチルフェニル)フルオレニル基、
9,9-ビス(4-イソプロピルフェニル)フルオレニル基、
9,9-ビス(4-t-ブチルフェニル)フルオレニル基、
シアノフェニル基、
トリフェニルシリルフェニル基、
トリメチルシリルフェニル基、
フェニルナフチル基、
ナフチルフェニル基、及び
前記一般式(TEMP-1)~(TEMP-15)で表される環構造から誘導される1価の基の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基。
【0024】
・「置換もしくは無置換の複素環基」
本明細書に記載の「複素環基」は、環形成原子にヘテロ原子を少なくとも1つ含む環状の基である。ヘテロ原子の具体例としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、及びホウ素原子が挙げられる。
本明細書に記載の「複素環基」は、単環の基であるか、又は縮合環の基である。
本明細書に記載の「複素環基」は、芳香族複素環基であるか、又は非芳香族複素環基である。
本明細書に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」の具体例(具体例群G2)としては、以下の無置換の複素環基(具体例群G2A)、及び置換の複素環基(具体例群G2B)等が挙げられる。(ここで、無置換の複素環基とは「置換もしくは無置換の複素環基」が「無置換の複素環基」である場合を指し、置換の複素環基とは「置換もしくは無置換の複素環基」が「置換の複素環基」である場合を指す。)本明細書において、単に「複素環基」という場合は、「無置換の複素環基」と「置換の複素環基」の両方を含む。
「置換の複素環基」は、「無置換の複素環基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換の複素環基」の具体例は、下記具体例群G2Aの「無置換の複素環基」の水素原子が置き換わった基、及び下記具体例群G2Bの置換の複素環基の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換の複素環基」の例や「置換の複素環基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換の複素環基」には、具体例群G2Bの「置換の複素環基」における複素環基自体の環形成原子に結合する水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び具体例群G2Bの「置換の複素環基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0025】
具体例群G2Aは、例えば、以下の窒素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A1)、酸素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A2)、硫黄原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A3)、及び下記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から1つの水素原子を除くことにより誘導される1価の複素環基(具体例群G2A4)を含む。
【0026】
具体例群G2Bは、例えば、以下の窒素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B1)、酸素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B2)、硫黄原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B3)、及び下記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から誘導される1価の複素環基の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基(具体例群G2B4)を含む。
【0027】
・窒素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A1):
ピロリル基、
イミダゾリル基、
ピラゾリル基、
トリアゾリル基、
テトラゾリル基、
オキサゾリル基、
イソオキサゾリル基、
オキサジアゾリル基、
チアゾリル基、
イソチアゾリル基、
チアジアゾリル基、
ピリジル基、
ピリダジニル基、
ピリミジニル基、
ピラジニル基、
トリアジニル基、
インドリル基、
イソインドリル基、
インドリジニル基、
キノリジニル基、
キノリル基、
イソキノリル基、
シンノリル基、
フタラジニル基、
キナゾリニル基、
キノキサリニル基、
ベンゾイミダゾリル基、
インダゾリル基、
フェナントロリニル基、
フェナントリジニル基、
アクリジニル基、
フェナジニル基、
カルバゾリル基、
ベンゾカルバゾリル基、
モルホリノ基、
フェノキサジニル基、
フェノチアジニル基、
アザカルバゾリル基、及びジアザカルバゾリル基。
【0028】
・酸素原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A2):
フリル基、
オキサゾリル基、
イソオキサゾリル基、
オキサジアゾリル基、
キサンテニル基、
ベンゾフラニル基、
イソベンゾフラニル基、
ジベンゾフラニル基、
ナフトベンゾフラニル基、
ベンゾオキサゾリル基、
ベンゾイソキサゾリル基、
フェノキサジニル基、
モルホリノ基、
ジナフトフラニル基、
アザジベンゾフラニル基、
ジアザジベンゾフラニル基、
アザナフトベンゾフラニル基、及び
ジアザナフトベンゾフラニル基。
【0029】
・硫黄原子を含む無置換の複素環基(具体例群G2A3):
チエニル基、
チアゾリル基、
イソチアゾリル基、
チアジアゾリル基、
ベンゾチオフェニル基(ベンゾチエニル基)、
イソベンゾチオフェニル基(イソベンゾチエニル基)、
ジベンゾチオフェニル基(ジベンゾチエニル基)、
ナフトベンゾチオフェニル基(ナフトベンゾチエニル基)、
ベンゾチアゾリル基、
ベンゾイソチアゾリル基、
フェノチアジニル基、
ジナフトチオフェニル基(ジナフトチエニル基)、
アザジベンゾチオフェニル基(アザジベンゾチエニル基)、
ジアザジベンゾチオフェニル基(ジアザジベンゾチエニル基)、
アザナフトベンゾチオフェニル基(アザナフトベンゾチエニル基)、及び
ジアザナフトベンゾチオフェニル基(ジアザナフトベンゾチエニル基)。
【0030】
・下記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から1つの水素原子を除くことにより誘導される1価の複素環基(具体例群G2A4):
【0031】
【0032】
【0033】
前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)において、XA及びYAは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、NH、又はCH2である。ただし、XA及びYAのうち少なくとも1つは、酸素原子、硫黄原子、又はNHである。
前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)において、XA及びYAの少なくともいずれかがNH、又はCH2である場合、前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から誘導される1価の複素環基には、これらNH、又はCH2から1つの水素原子を除いて得られる1価の基が含まれる。
【0034】
・窒素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B1):
(9-フェニル)カルバゾリル基、
(9-ビフェニリル)カルバゾリル基、
(9-フェニル)フェニルカルバゾリル基、
(9-ナフチル)カルバゾリル基、
ジフェニルカルバゾール-9-イル基、
フェニルカルバゾール-9-イル基、
メチルベンゾイミダゾリル基、
エチルベンゾイミダゾリル基、
フェニルトリアジニル基、
ビフェニリルトリアジニル基、
ジフェニルトリアジニル基、
フェニルキナゾリニル基、及び
ビフェニリルキナゾリニル基。
【0035】
・酸素原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B2):
フェニルジベンゾフラニル基、
メチルジベンゾフラニル基、
t-ブチルジベンゾフラニル基、及び
スピロ[9H-キサンテン-9,9’-[9H]フルオレン]の1価の残基。
【0036】
・硫黄原子を含む置換の複素環基(具体例群G2B3):
フェニルジベンゾチオフェニル基、
メチルジベンゾチオフェニル基、
t-ブチルジベンゾチオフェニル基、及び
スピロ[9H-チオキサンテン-9,9’-[9H]フルオレン]の1価の残基。
【0037】
・前記一般式(TEMP-16)~(TEMP-33)で表される環構造から誘導される1価の複素環基の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基(具体例群G2B4):
【0038】
前記「1価の複素環基の1つ以上の水素原子」とは、該1価の複素環基の環形成炭素原子に結合している水素原子、XA及びYAの少なくともいずれかがNHである場合の窒素原子に結合している水素原子、及びXA及びYAの一方がCH2である場合のメチレン基の水素原子から選ばれる1つ以上の水素原子を意味する。
【0039】
・「置換もしくは無置換のアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」の具体例(具体例群G3)としては、以下の無置換のアルキル基(具体例群G3A)及び置換のアルキル基(具体例群G3B)が挙げられる。(ここで、無置換のアルキル基とは「置換もしくは無置換のアルキル基」が「無置換のアルキル基」である場合を指し、置換のアルキル基とは「置換もしくは無置換のアルキル基」が「置換のアルキル基」である場合を指す。)以下、単に「アルキル基」という場合は、「無置換のアルキル基」と「置換のアルキル基」の両方を含む。
「置換のアルキル基」は、「無置換のアルキル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアルキル基」の具体例としては、下記の「無置換のアルキル基」(具体例群G3A)における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び置換のアルキル基(具体例群G3B)の例等が挙げられる。本明細書において、「無置換のアルキル基」におけるアルキル基は、鎖状のアルキル基を意味する。そのため、「無置換のアルキル基」は、直鎖である「無置換のアルキル基」、及び分岐状である「無置換のアルキル基」が含まれる。尚、ここに列挙した「無置換のアルキル基」の例や「置換のアルキル基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のアルキル基」には、具体例群G3Bの「置換のアルキル基」におけるアルキル基自体の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び具体例群G3Bの「置換のアルキル基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0040】
・無置換のアルキル基(具体例群G3A):
メチル基、
エチル基、
n-プロピル基、
イソプロピル基、
n-ブチル基、
イソブチル基、
s-ブチル基、及び
t-ブチル基。
【0041】
・置換のアルキル基(具体例群G3B):
ヘプタフルオロプロピル基(異性体を含む)、
ペンタフルオロエチル基、
2,2,2-トリフルオロエチル基、及び
トリフルオロメチル基。
【0042】
・「置換もしくは無置換のアルケニル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルケニル基」の具体例(具体例群G4)としては、以下の無置換のアルケニル基(具体例群G4A)、及び置換のアルケニル基(具体例群G4B)等が挙げられる。(ここで、無置換のアルケニル基とは「置換もしくは無置換のアルケニル基」が「無置換のアルケニル基」である場合を指し、「置換のアルケニル基」とは「置換もしくは無置換のアルケニル基」が「置換のアルケニル基」である場合を指す。)本明細書において、単に「アルケニル基」という場合は、「無置換のアルケニル基」と「置換のアルケニル基」の両方を含む。
「置換のアルケニル基」は、「無置換のアルケニル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアルケニル基」の具体例としては、下記の「無置換のアルケニル基」(具体例群G4A)が置換基を有する基、及び置換のアルケニル基(具体例群G4B)の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換のアルケニル基」の例や「置換のアルケニル基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のアルケニル基」には、具体例群G4Bの「置換のアルケニル基」におけるアルケニル基自体の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び具体例群G4Bの「置換のアルケニル基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0043】
・無置換のアルケニル基(具体例群G4A):
ビニル基、
アリル基、
1-ブテニル基、
2-ブテニル基、及び
3-ブテニル基。
【0044】
・置換のアルケニル基(具体例群G4B):
1,3-ブタンジエニル基、
1-メチルビニル基、
1-メチルアリル基、
1,1-ジメチルアリル基、
2-メチルアリル基、及び
1,2-ジメチルアリル基。
【0045】
・「置換もしくは無置換のアルキニル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキニル基」の具体例(具体例群G5)としては、以下の無置換のアルキニル基(具体例群G5A)等が挙げられる。(ここで、無置換のアルキニル基とは、「置換もしくは無置換のアルキニル基」が「無置換のアルキニル基」である場合を指す。)以下、単に「アルキニル基」という場合は、「無置換のアルキニル基」と「置換のアルキニル基」の両方を含む。
「置換のアルキニル基」は、「無置換のアルキニル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のアルキニル基」の具体例としては、下記の「無置換のアルキニル基」(具体例群G5A)における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基等が挙げられる。
【0046】
・無置換のアルキニル基(具体例群G5A):
エチニル基。
【0047】
・「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」の具体例(具体例群G6)としては、以下の無置換のシクロアルキル基(具体例群G6A)、及び置換のシクロアルキル基(具体例群G6B)等が挙げられる。(ここで、無置換のシクロアルキル基とは「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」が「無置換のシクロアルキル基」である場合を指し、置換のシクロアルキル基とは「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」が「置換のシクロアルキル基」である場合を指す。)本明細書において、単に「シクロアルキル基」という場合は、「無置換のシクロアルキル基」と「置換のシクロアルキル基」の両方を含む。
「置換のシクロアルキル基」は、「無置換のシクロアルキル基」における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。「置換のシクロアルキル基」の具体例としては、下記の「無置換のシクロアルキル基」(具体例群G6A)における1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び置換のシクロアルキル基(具体例群G6B)の例等が挙げられる。尚、ここに列挙した「無置換のシクロアルキル基」の例や「置換のシクロアルキル基」の例は、一例に過ぎず、本明細書に記載の「置換のシクロアルキル基」には、具体例群G6Bの「置換のシクロアルキル基」におけるシクロアルキル基自体の炭素原子に結合する1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基、及び具体例群G6Bの「置換のシクロアルキル基」における置換基の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。
【0048】
・無置換のシクロアルキル基(具体例群G6A):
シクロプロピル基、
シクロブチル基、
シクロペンチル基、
シクロヘキシル基、
1-アダマンチル基、
2-アダマンチル基、
1-ノルボルニル基、及び
2-ノルボルニル基。
【0049】
・置換のシクロアルキル基(具体例群G6B):
4-メチルシクロヘキシル基。
【0050】
・「-Si(R901)(R902)(R903)で表される基」
本明細書に記載の-Si(R901)(R902)(R903)で表される基の具体例(具体例群G7)としては、
-Si(G1)(G1)(G1)、
-Si(G1)(G2)(G2)、
-Si(G1)(G1)(G2)、
-Si(G2)(G2)(G2)、
-Si(G3)(G3)(G3)、及び
-Si(G6)(G6)(G6)
が挙げられる。ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
-Si(G1)(G1)(G1)における複数のG1は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G1)(G2)(G2)における複数のG2は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G1)(G1)(G2)における複数のG1は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G2)(G2)(G2)における複数のG2は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G3)(G3)(G3)における複数のG3は、互いに同一であるか、又は異なる。
-Si(G6)(G6)(G6)における複数のG6は、互いに同一であるか、又は異なる。
【0051】
・「-O-(R904)で表される基」
本明細書に記載の-O-(R904)で表される基の具体例(具体例群G8)としては、
-O(G1)、
-O(G2)、
-O(G3)、及び
-O(G6)
が挙げられる。
ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
【0052】
・「-S-(R905)で表される基」
本明細書に記載の-S-(R905)で表される基の具体例(具体例群G9)としては、
-S(G1)、
-S(G2)、
-S(G3)、及び
-S(G6)
が挙げられる。
ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
【0053】
・「-N(R906)(R907)で表される基」
本明細書に記載の-N(R906)(R907)で表される基の具体例(具体例群G10)としては、
-N(G1)(G1)、
-N(G2)(G2)、
-N(G1)(G2)、
-N(G3)(G3)、及び
-N(G6)(G6)
が挙げられる。
ここで、
G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。
G2は、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」である。
G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。
G6は、具体例群G6に記載の「置換もしくは無置換のシクロアルキル基」である。
-N(G1)(G1)における複数のG1は、互いに同一であるか、又は異なる。
-N(G2)(G2)における複数のG2は、互いに同一であるか、又は異なる。
-N(G3)(G3)における複数のG3は、互いに同一であるか、又は異なる。
-N(G6)(G6)における複数のG6は、互いに同一であるか、又は異なる。
【0054】
・「ハロゲン原子」
本明細書に記載の「ハロゲン原子」の具体例(具体例群G11)としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0055】
・「置換もしくは無置換のフルオロアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のフルオロアルキル基」は、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している少なくとも1つの水素原子がフッ素原子と置き換わった基を意味し、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している全ての水素原子がフッ素原子で置き換わった基(パーフルオロ基)も含む。「無置換のフルオロアルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。「置換のフルオロアルキル基」は、「フルオロアルキル基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。尚、本明細書に記載の「置換のフルオロアルキル基」には、「置換のフルオロアルキル基」におけるアルキル鎖の炭素原子に結合する1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び「置換のフルオロアルキル基」における置換基の1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。「無置換のフルオロアルキル基」の具体例としては、前記「アルキル基」(具体例群G3)における1つ以上の水素原子がフッ素原子と置き換わった基の例等が挙げられる。
【0056】
・「置換もしくは無置換のハロアルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のハロアルキル基」は、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子と置き換わった基を意味し、「置換もしくは無置換のアルキル基」におけるアルキル基を構成する炭素原子に結合している全ての水素原子がハロゲン原子で置き換わった基も含む。「無置換のハロアルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。「置換のハロアルキル基」は、「ハロアルキル基」の1つ以上の水素原子が置換基と置き換わった基を意味する。尚、本明細書に記載の「置換のハロアルキル基」には、「置換のハロアルキル基」におけるアルキル鎖の炭素原子に結合する1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基、及び「置換のハロアルキル基」における置換基の1つ以上の水素原子がさらに置換基と置き換わった基も含まれる。「無置換のハロアルキル基」の具体例としては、前記「アルキル基」(具体例群G3)における1つ以上の水素原子がハロゲン原子と置き換わった基の例等が挙げられる。ハロアルキル基をハロゲン化アルキル基と称する場合がある。
【0057】
・「置換もしくは無置換のアルコキシ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルコキシ基」の具体例としては、-O(G3)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。「無置換のアルコキシ基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。
【0058】
・「置換もしくは無置換のアルキルチオ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキルチオ基」の具体例としては、-S(G3)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。「無置換のアルキルチオ基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~18である。
【0059】
・「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリールオキシ基」の具体例としては、-O(G1)で表される基であり、ここで、G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。「無置換のアリールオキシ基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~18である。
【0060】
・「置換もしくは無置換のアリールチオ基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリールチオ基」の具体例としては、-S(G1)で表される基であり、ここで、G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。「無置換のアリールチオ基」の環形成炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、6~50であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~18である。
【0061】
・「置換もしくは無置換のトリアルキルシリル基」
本明細書に記載の「トリアルキルシリル基」の具体例としては、-Si(G3)(G3)(G3)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」である。-Si(G3)(G3)(G3)における複数のG3は、互いに同一であるか、又は異なる。「トリアルキルシリル基」の各アルキル基の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、1~50であり、好ましくは1~20であり、より好ましくは1~6である。
【0062】
・「置換もしくは無置換のアラルキル基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアラルキル基」の具体例としては、-(G3)-(G1)で表される基であり、ここで、G3は、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」であり、G1は、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」である。従って、「アラルキル基」は、「アルキル基」の水素原子が置換基としての「アリール基」と置き換わった基であり、「置換のアルキル基」の一態様である。「無置換のアラルキル基」は、「無置換のアリール基」が置換した「無置換のアルキル基」であり、「無置換のアラルキル基」の炭素数は、本明細書に別途記載のない限り、7~50であり、好ましくは7~30であり、より好ましくは7~18である。
「置換もしくは無置換のアラルキル基」の具体例としては、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルイソプロピル基、2-フェニルイソプロピル基、フェニル-t-ブチル基、α-ナフチルメチル基、1-α-ナフチルエチル基、2-α-ナフチルエチル基、1-α-ナフチルイソプロピル基、2-α-ナフチルイソプロピル基、β-ナフチルメチル基、1-β-ナフチルエチル基、2-β-ナフチルエチル基、1-β-ナフチルイソプロピル基、及び2-β-ナフチルイソプロピル基等が挙げられる。
【0063】
本明細書に記載の置換もしくは無置換のアリール基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくはフェニル基、p-ビフェニル基、m-ビフェニル基、o-ビフェニル基、p-ターフェニル-4-イル基、p-ターフェニル-3-イル基、p-ターフェニル-2-イル基、m-ターフェニル-4-イル基、m-ターフェニル-3-イル基、m-ターフェニル-2-イル基、o-ターフェニル-4-イル基、o-ターフェニル-3-イル基、o-ターフェニル-2-イル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、9,9’-スピロビフルオレニル基、9,9-ジメチルフルオレニル基、及び9,9-ジフェニルフルオレニル基等である。
【0064】
本明細書に記載の置換もしくは無置換の複素環基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくはピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、ベンゾイミダゾリル基、フェナントロリニル基、カルバゾリル基(1-カルバゾリル基、2-カルバゾリル基、3-カルバゾリル基、4-カルバゾリル基、又は9-カルバゾリル基)、ベンゾカルバゾリル基、アザカルバゾリル基、ジアザカルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ナフトベンゾフラニル基、アザジベンゾフラニル基、ジアザジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ナフトベンゾチオフェニル基、アザジベンゾチオフェニル基、ジアザジベンゾチオフェニル基、(9-フェニル)カルバゾリル基((9-フェニル)カルバゾール-1-イル基、(9-フェニル)カルバゾール-2-イル基、(9-フェニル)カルバゾール-3-イル基、又は(9-フェニル)カルバゾール-4-イル基)、(9-ビフェニリル)カルバゾリル基、(9-フェニル)フェニルカルバゾリル基、ジフェニルカルバゾール-9-イル基、フェニルカルバゾール-9-イル基、フェニルトリアジニル基、ビフェニリルトリアジニル基、ジフェニルトリアジニル基、フェニルジベンゾフラニル基、及びフェニルジベンゾチオフェニル基等である。
【0065】
本明細書において、カルバゾリル基は、本明細書に別途記載のない限り、具体的には以下のいずれかの基である。
【0066】
【0067】
本明細書において、(9-フェニル)カルバゾリル基は、本明細書に別途記載のない限り、具体的には以下のいずれかの基である。
【0068】
【0069】
前記一般式(TEMP-Cz1)~(TEMP-Cz9)中、*は、結合位置を表す。
【0070】
本明細書において、ジベンゾフラニル基、及びジベンゾチオフェニル基は、本明細書に別途記載のない限り、具体的には以下のいずれかの基である。
【0071】
【0072】
前記一般式(TEMP-34)~(TEMP-41)中、*は、結合位置を表す。
【0073】
本明細書に記載の置換もしくは無置換のアルキル基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及びt-ブチル基等である。
【0074】
・「置換もしくは無置換のアリーレン基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアリーレン基」は、別途記載のない限り、上記「置換もしくは無置換のアリール基」からアリール環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基である。「置換もしくは無置換のアリーレン基」の具体例(具体例群G12)としては、具体例群G1に記載の「置換もしくは無置換のアリール基」からアリール環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基等が挙げられる。
【0075】
・「置換もしくは無置換の2価の複素環基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換の2価の複素環基」は、別途記載のない限り、上記「置換もしくは無置換の複素環基」から複素環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基である。「置換もしくは無置換の2価の複素環基」の具体例(具体例群G13)としては、具体例群G2に記載の「置換もしくは無置換の複素環基」から複素環上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基等が挙げられる。
【0076】
・「置換もしくは無置換のアルキレン基」
本明細書に記載の「置換もしくは無置換のアルキレン基」は、別途記載のない限り、上記「置換もしくは無置換のアルキル基」からアルキル鎖上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基である。「置換もしくは無置換のアルキレン基」の具体例(具体例群G14)としては、具体例群G3に記載の「置換もしくは無置換のアルキル基」からアルキル鎖上の1つの水素原子を除くことにより誘導される2価の基等が挙げられる。
【0077】
本明細書に記載の置換もしくは無置換のアリーレン基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは下記一般式(TEMP-42)~(TEMP-68)のいずれかの基である。
【0078】
【0079】
【0080】
前記一般式(TEMP-42)~(TEMP-52)中、Q1~Q10は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
前記一般式(TEMP-42)~(TEMP-52)中、*は、結合位置を表す。
【0081】
【0082】
前記一般式(TEMP-53)~(TEMP-62)中、Q1~Q10は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
式Q9及びQ10は、単結合を介して互いに結合して環を形成してもよい。
前記一般式(TEMP-53)~(TEMP-62)中、*は、結合位置を表す。
【0083】
【0084】
前記一般式(TEMP-63)~(TEMP-68)中、Q1~Q8は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
前記一般式(TEMP-63)~(TEMP-68)中、*は、結合位置を表す。
【0085】
本明細書に記載の置換もしくは無置換の2価の複素環基は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは下記一般式(TEMP-69)~(TEMP-102)のいずれかの基である。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
前記一般式(TEMP-69)~(TEMP-82)中、Q1~Q9は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
前記一般式(TEMP-83)~(TEMP-102)中、Q1~Q8は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基である。
【0095】
以上が、「本明細書に記載の置換基」についての説明である。
【0096】
・「結合して環を形成する場合」
本明細書において、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は互いに結合せず」という場合は、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合と、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合と、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合しない」場合と、を意味する。
本明細書における、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合、及び「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合(以下、これらの場合をまとめて「結合して環を形成する場合」と称する場合がある。)について、以下、説明する。母骨格がアントラセン環である下記一般式(TEMP-103)で表されるアントラセン化合物の場合を例として説明する。
【0097】
【0098】
例えば、R921~R930のうちの「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、環を形成する」場合において、1組となる隣接する2つからなる組とは、R921とR922との組、R922とR923との組、R923とR924との組、R924とR930との組、R930とR925との組、R925とR926との組、R926とR927との組、R927とR928との組、R928とR929との組、並びにR929とR921との組である。
【0099】
上記「1組以上」とは、上記隣接する2つ以上からなる組の2組以上が同時に環を形成してもよいことを意味する。例えば、R921とR922とが互いに結合して環QAを形成し、同時にR925とR926とが互いに結合して環QBを形成した場合は、前記一般式(TEMP-103)で表されるアントラセン化合物は、下記一般式(TEMP-104)で表される。
【0100】
【0101】
「隣接する2つ以上からなる組」が環を形成する場合とは、前述の例のように隣接する「2つ」からなる組が結合する場合だけではなく、隣接する「3つ以上」からなる組が結合する場合も含む。例えば、R921とR922とが互いに結合して環QAを形成し、かつ、R922とR923とが互いに結合して環QCを形成し、互いに隣接する3つ(R921、R922及びR923)からなる組が互いに結合して環を形成して、アントラセン母骨格に縮合する場合を意味し、この場合、前記一般式(TEMP-103)で表されるアントラセン化合物は、下記一般式(TEMP-105)で表される。下記一般式(TEMP-105)において、環QA及び環QCは、R922を共有する。
【0102】
【0103】
形成される「単環」、又は「縮合環」は、形成された環のみの構造として、飽和の環であっても不飽和の環であってもよい。「隣接する2つからなる組の1組」が「単環」、又は「縮合環」を形成する場合であっても、当該「単環」、又は「縮合環」は、飽和の環、又は不飽和の環を形成することができる。例えば、前記一般式(TEMP-104)において形成された環QA及び環QBは、それぞれ、「単環」又は「縮合環」である。また、前記一般式(TEMP-105)において形成された環QA、及び環QCは、「縮合環」である。前記一般式(TEMP-105)の環QAと環QCとは、環QAと環QCとが縮合することによって縮合環となっている。前記一般式(TMEP-104)の環QAがベンゼン環であれば、環QAは、単環である。前記一般式(TMEP-104)の環QAがナフタレン環であれば、環QAは、縮合環である。
【0104】
「不飽和の環」とは、芳香族炭化水素環、又は芳香族複素環を意味する。「飽和の環」とは、脂肪族炭化水素環、又は非芳香族複素環を意味する。
芳香族炭化水素環の具体例としては、具体例群G1において具体例として挙げられた基が水素原子によって終端された構造が挙げられる。
芳香族複素環の具体例としては、具体例群G2において具体例として挙げられた芳香族複素環基が水素原子によって終端された構造が挙げられる。
脂肪族炭化水素環の具体例としては、具体例群G6において具体例として挙げられた基が水素原子によって終端された構造が挙げられる。
「環を形成する」とは、母骨格の複数の原子のみ、あるいは母骨格の複数の原子とさらに1以上の任意の元素で環を形成することを意味する。例えば、前記一般式(TEMP-104)に示す、R921とR922とが互いに結合して形成された環QAは、R921が結合するアントラセン骨格の炭素原子と、R922が結合するアントラセン骨格の炭素原子と、1以上の任意の元素とで形成する環を意味する。具体例としては、R921とR922とで環QAを形成する場合において、R921が結合するアントラセン骨格の炭素原子と、R922とが結合するアントラセン骨格の炭素原子と、4つの炭素原子とで単環の不飽和の環を形成する場合、R921とR922とで形成する環は、ベンゼン環である。
【0105】
ここで、「任意の元素」は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは、炭素元素、窒素元素、酸素元素、及び硫黄元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素である。任意の元素において(例えば、炭素元素、又は窒素元素の場合)、環を形成しない結合は、水素原子等で終端されてもよいし、後述する「任意の置換基」で置換されてもよい。炭素元素以外の任意の元素を含む場合、形成される環は複素環である。
単環または縮合環を構成する「1以上の任意の元素」は、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは2個以上15個以下であり、より好ましくは3個以上12個以下であり、さらに好ましくは3個以上5個以下である。
本明細書に別途記載のない限り、「単環」、及び「縮合環」のうち、好ましくは「単環」である。
本明細書に別途記載のない限り、「飽和の環」、及び「不飽和の環」のうち、好ましくは「不飽和の環」である。
本明細書に別途記載のない限り、「単環」は、好ましくはベンゼン環である。
本明細書に別途記載のない限り、「不飽和の環」は、好ましくはベンゼン環である。
「隣接する2つ以上からなる組の1組以上」が、「互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合、又は「互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合、本明細書に別途記載のない限り、好ましくは、隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、母骨格の複数の原子と、1個以上15個以下の炭素元素、窒素元素、酸素元素、及び硫黄元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素とからなる置換もしくは無置換の「不飽和の環」を形成する。
【0106】
上記の「単環」、又は「縮合環」が置換基を有する場合の置換基は、例えば後述する「任意の置換基」である。上記の「単環」、又は「縮合環」が置換基を有する場合の置換基の具体例は、上述した「本明細書に記載の置換基」の項で説明した置換基である。
上記の「飽和の環」、又は「不飽和の環」が置換基を有する場合の置換基は、例えば後述する「任意の置換基」である。上記の「単環」、又は「縮合環」が置換基を有する場合の置換基の具体例は、上述した「本明細書に記載の置換基」の項で説明した置換基である。
以上が、「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成する」場合、及び「隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成する」場合(「結合して環を形成する場合」)についての説明である。
【0107】
・「置換もしくは無置換の」という場合の置換基
本明細書における一実施形態においては、前記「置換もしくは無置換の」という場合の置換基(本明細書において、「任意の置換基」と呼ぶことがある。)は、例えば、
無置換の炭素数1~50のアルキル基、
無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)、
-O-(R904)、
-S-(R905)、
-N(R906)(R907)、
ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、
無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、及び
無置換の環形成原子数5~50の複素環基
からなる群から選択される基等であり、
ここで、R901~R907は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。
R901が2個以上存在する場合、2個以上のR901は、互いに同一であるか、又は異なり、
R902が2個以上存在する場合、2個以上のR902は、互いに同一であるか、又は異なり、
R903が2個以上存在する場合、2個以上のR903は、互いに同一であるか、又は異なり、
R904が2個以上存在する場合、2個以上のR904は、互いに同一であるか、又は異なり、
R905が2個以上存在する場合、2個以上のR905は、互いに同一であるか、又は異なり、
R906が2個以上存在する場合、2個以上のR906は、互いに同一であるか、又は異なり、
R907が2個以上存在する場合、2個以上のR907は、互いに同一であるか又は異なる。
【0108】
一実施形態においては、前記「置換もしくは無置換の」という場合の置換基は、
炭素数1~50のアルキル基、
環形成炭素数6~50のアリール基、及び
環形成原子数5~50の複素環基
からなる群から選択される基である。
【0109】
一実施形態においては、前記「置換もしくは無置換の」という場合の置換基は、
炭素数1~18のアルキル基、
環形成炭素数6~18のアリール基、及び
環形成原子数5~18の複素環基
からなる群から選択される基である。
【0110】
上記任意の置換基の各基の具体例は、上述した「本明細書に記載の置換基」の項で説明した置換基の具体例である。
【0111】
本明細書において別途記載のない限り、隣接する任意の置換基同士で、「飽和の環」、又は「不飽和の環」を形成してもよく、好ましくは、置換もしくは無置換の飽和の5員環、置換もしくは無置換の飽和の6員環、置換もしくは無置換の不飽和の5員環、又は置換もしくは無置換の不飽和の6員環を形成し、より好ましくは、ベンゼン環を形成する。
本明細書において別途記載のない限り、任意の置換基は、さらに置換基を有してもよい。任意の置換基がさらに有する置換基としては、上記任意の置換基と同様である。
【0112】
本明細書において、「AA~BB」を用いて表される数値範囲は、「AA~BB」の前に記載される数値AAを下限値とし、「AA~BB」の後に記載される数値BBを上限値として含む範囲を意味する。
【0113】
〔第一実施形態〕
(有機エレクトロルミネッセンス素子)
本実施形態に係る有機EL素子は、陽極と、陰極と、前記陽極及び前記陰極の間に配置された発光層と、を有する。前記発光層は、第一の発光層及び第二の発光層を含む。前記第一の発光層は、第一のホスト材料と、第一の発光性化合物と、を含む。前記第二の発光層は、第二のホスト材料と、第二の発光性化合物と、を含む。
前記第一のホスト材料と前記第二のホスト材料とは互いに異なる。前記第一の発光性化合物と前記第二の発光性化合物とは互いに同一であるか、又は異なる。
前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)と前記第二のホスト材料の三重項エネルギーT1(H2)とが、下記数式(数1)の関係を満たし、拡散方程式から算出した前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)の拡散係数D1が、3.0×10-9(cm2/s)以上である。
T1(H1)>T1(H2) …(数1)
【0114】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)の拡散係数D1は、前記第一のホスト材料に第一の燐光錯体を添加した第一の解析層と、前記第一のホスト材料に第二の燐光錯体を添加した第二の解析層とが積層された拡散速度解析層を用いて、励起光が前記第一の解析層の側から入射し、透過光が前記第二の解析層から透過するようにして測定された前記透過光の過渡PLスペクトルに基づき、拡散方程式から算出される。
前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)と前記第一の燐光錯体の三重項エネルギーT1(C1)とが、下記数式(数X)の関係を満たす。
前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)と前記第二の燐光錯体の三重項エネルギーT1(C2)とが、下記数式(数Y)の関係を満たす。
T1(C1)>T1(H1) …(数X)
T1(H1)>T1(C2) …(数Y)
【0115】
本発明者らは、第一の発光層及び第二の発光層を積層した有機EL素子において、前記数式(数1)の関係を満たす第一のホスト材料及び第二のホスト材料を選択し、かつ第一のホスト材料として、拡散方程式から算出した三重項エネルギーT1(H1)の拡散係数D1が3.0×10-9(cm2/s)以上の材料を選択することにより、発光効率をより向上できることを見出した。
【0116】
始めに、有機EL素子の発光効率を向上させるための技術として知られているTripret-Tripret-Annhilation(TTAと称する場合がある。)について説明する。
従来、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率を向上させるための技術として、Tripret-Tripret-Annhilation(TTAと称する場合がある。)が知られている。TTAは、三重項励起子と三重項励起子とが衝突して、一重項励起子を生成するという機構(メカニズム)である。なお、TTAメカニズムは、TTFメカニズムと称する場合もある。
【0117】
TTF現象を説明する。陽極から注入された正孔と、陰極から注入された電子とは、発光層内で再結合し励起子を生成する。そのスピン状態は、従来から知られているように、一重項励起子が25%、三重項励起子が75%の比率である。従来知られている蛍光素子においては、25%の一重項励起子が基底状態に緩和するときに光を発するが、残りの75%の三重項励起子については光を発することなく熱的失活過程を経て基底状態に戻る。従って、従来の蛍光素子の内部量子効率の理論限界値は25%といわれていた。
一方、有機物内部で生成した三重項励起子の挙動が理論的に調べられている。S.M.Bachiloらによれば(J.Phys.Chem.A,104,7711(2000))、五重項等の高次の励起子がすぐに三重項に戻ると仮定すると、三重項励起子(以下、3A*と記載する)の密度が上がってきたとき、三重項励起子同士が衝突し下記式のような反応が起きる。ここで、1Aは、基底状態を表し、1A*は、最低励起一重項励起子を表す。
3A*+3A*→(4/9)1A+(1/9)1A*+(13/9)3A*
即ち、53A*→41A+1A*となり、当初生成した75%の三重項励起子のうち、1/5即ち20%が一重項励起子に変化することが予測されている。従って、光として寄与する一重項励起子は、当初生成する25%分に75%×(1/5)=15%を加えた40%ということになる。このとき、全発光強度中に占めるTTF由来の発光比率(TTF比率)は、15/40、すなわち37.5%となる。また、当初生成した75%の三重項励起子のお互いが衝突して一重項励起子が生成した(2つの三重項励起子から1つの一重項励起子が生成した)とすると、当初生成する一重項励起子25%分に75%×(1/2)=37.5%を加えた62.5%という非常に高い内部量子効率が得られる。このとき、TTF比率は、37.5/62.5=60%である。
【0118】
次に、第一の発光層中の第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)と、第二の発光層中の第二のホスト材料の三重項エネルギーT1(H2)とが、前記数式(数1)の関係を満たす意義について説明する。
【0119】
本実施形態に係る有機EL素子によれば、第一の発光層で正孔と電子との再結合によって生成した三重項励起子は、当該第一の発光層と直接に接する有機層との界面にキャリアが過剰に存在していても、第一の発光層と当該有機層との界面に存在する三重項励起子がクエンチされ難くなると考えられる。例えば、再結合領域が、第一の発光層と正孔輸送層又は電子障壁層との界面に局所的に存在する場合には、過剰な電子によるクエンチが考えられる。一方、再結合領域が、第一の発光層と電子輸送層又は正孔障壁層との界面に局所的に存在する場合には、過剰な正孔によるクエンチが考えられる。
本実施形態に係る有機EL素子は、前記数式(数1)の関係を満たすように、少なくとも2つの発光層(すなわち、第一の発光層及び第二の発光層)を備えることで、第一の発光層で生成した三重項励起子は、過剰キャリアによってクエンチされずに第二の発光層へと移動し、また、第二の発光層から第一の発光層へ逆移動することを抑制できる。その結果、第二の発光層において、TTFメカニズムが発現して、一重項励起子が効率良く生成され、発光効率が向上する。
このように、有機EL素子が、三重項励起子を主に生成させる第一の発光層と、第一の発光層から移動してきた三重項励起子を活用してTTFメカニズムを主に発現させる第二の発光層と、を異なる領域として備え、第二の発光層中の第二のホスト材料として、第一の発光層中の第一のホスト材料よりも小さな三重項エネルギーを有する化合物を用いて、三重項エネルギーの差を設けることで、発光効率が向上する。
【0120】
次に、本実施形態に係る有機EL素子において、三重項エネルギーT1(H1)の拡散係数D1が3.0×10-9(cm2/s)以上の第一のホスト材料を用いる意義について説明する。
本実施形態の有機EL素子は、前述の通り、発光層を積層構成とした上で、さらに前記数式(数1)の関係を満たす第一のホスト材料及び第二のホスト材料を用いて、発光効率の向上を図っている。
一方、第一のホスト材料で生成された一重項励起子は第一の発光性化合物の一重項励起子にエネルギー移動したのち発光するが、第一のホスト材料で生成された三重項励起子は生存寿命が長く、自己失活するため、第一の発光層での発光に寄与し難い。このような三重項励起子を効率よく、第二のホスト材料及び第二の発光性化合物へエネルギー移動(拡散)させることが素子性能の向上に重要である。
本実施形態の有機EL素子によれば、第一のホスト材料として三重項エネルギーT1(H1)の拡散係数D1が大きい(3.0×10-9(cm2/s)以上)材料を選択することにより、第一のホスト材料で生成された三重項励起子が、前記数式(数1)の関係に加えて、第二の発光層中の第二のホスト材料及び第二の発光性化合物に、より多くエネルギー移動されて第二の発光層での発光に有効活用されると考えられる。その結果、発光効率がより向上すると考えられる。
また、第一のホスト材料で生成された三重項励起子が第二の発光層中へより多く拡散することで第一の発光層中の発光部位の負荷を低減することができる。その結果、素子の駆動寿命についても向上すると考えられる。
【0121】
<拡散係数D1>
本実施形態に係る有機EL素子において、第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)の拡散係数D1は、下記数式(数6)を満たす。
第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)の拡散係数D1は、下記数式(数6A)を満たすことが好ましく、下記数式(数6B)を満たすことがより好ましい。なお、当該拡散係数D1の上限値は、第二のホスト材料でのTTFを阻害しない程度であることが好ましく、例えば1.0×10-5(cm2/s)以下であることが好ましい。
D1≧3.0×10-9(cm2/s)…(数6)
D1≧5.0×10-9(cm2/s)…(数6A)
D1≧1.0×10-8(cm2/s)…(数6B)
【0122】
<拡散係数D1の算出方法>
第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)の拡散係数D1は、
(1)拡散速度解析層を備える過渡PLデータ測定用試料を準備し、
(2)当該過渡PLデータ測定用試料を用いて、過渡PLスペクトルを測定し、
(3)当該過渡PLスペクトルに基づき、後述する数式(100)で表される拡散方程式を数値解法することにより算出される。
【0123】
上記(1)~(3)について順に説明する。
【0124】
(1)拡散速度解析層を備える過渡PLデータ測定用試料の準備
過渡PLデータ測定用試料は、ガラス基板上に拡散速度解析層を形成し、拡散速度解析層を封止ガラスで封止することで作製される。
拡散速度解析層は、第一のホスト材料に第一の燐光錯体を添加した第一の解析層と、第一のホスト材料に第二の燐光錯体を添加した第二の解析層とを積層することにより作製される。
第一の解析層に含まれる第一のホスト材料及び第一の燐光錯体は、それぞれの三重項エネルギーT1が前記数式(数X)の関係を満たすように選択される。
第二の解析層に含まれる第一のホスト材料及び第二の燐光錯体は、それぞれの三重項エネルギーT1が前記数式(数Y)の関係を満たすように選択される。
ただし、第一の燐光錯体及び第二の燐光錯体は、第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)に応じて選択されることが好ましい。
例えば、2.2eV≧T1(H1)≧2.0eVである場合、第一の燐光錯体はIr(ppy)3であり、第二の燐光錯体はIr(piq)2(acac)であることが好ましい。
また、2.0eV>T1(H1)≧1.9eVである場合、第一の燐光錯体としてはIr(ppy)3を用いることができ、第二の燐光錯体としてはPtOEPを用いることができる。
【0125】
過渡PLデータ測定用試料は、例えば、下記の手順で作製される。
ガラス基板上に、第一のホスト材料としての化合物Targetと、第二の燐光錯体としての化合物C2とを共蒸着して第二の解析層を形成する。
次に、第二の解析層の上に、第一のホスト材料としての化合物Targetと、第一の燐光錯体としての化合物C1とを共蒸着して第一の解析層を形成する。このようにして、ガラス基板上に第一の解析層と第二の解析層とが積層された拡散速度解析層が得られる。
次に、拡散速度解析層を封止ガラスで封止する。
以上のようにして、過渡PLデータ測定用試料が得られる。
化合物Target、化合物C1及び化合物C2は、前記数式(数X)及び前記数式(数Y)を満たすように選択される。
第一の解析層の膜厚d1は、10nm以上200nm以下に調整される。第二の解析層の膜厚d2は、10nm以上200nm以下に調整される。
過渡PLデータ測定用試料の構成は、d1=100nm、d2=20nmであり、略式的に示すと、次の通りである。
透過光側/glass(0.7mm)/化合物Target:化合物C2(20nm,95%:5%)/化合物Target:化合物C1(100nm,80%:20%)/封止ガラス(0.6mm)/入射光側
なお、括弧内の数字は、膜厚を示す。同じく括弧内において、パーセント表示された数字(95%:5%)は化合物Target及び化合物C2の割合(質量%)を示す。パーセント表示された数字(80%:20%)は、化合物Target及び化合物C1の割合(質量%)を示す。
【0126】
(2)過渡PLスペクトルの測定
上記(1)で作製した過渡PLデータ測定用試料を用いて、励起光が第一の解析層の側から入射し、透過光が第二の解析層から透過するようにして前記透過光の過渡PLスペクトルを測定する。具体的には、下記条件(測定系)にて、第二の解析層中の化合物C2(第二の燐光錯体)の遅延発光成分を、過渡PLスペクトルとして測定する。
-条件-
・使用光源 ;NanoLED-340
・検出器 ;HORIBA製 PPD850
・検出波長 :620nm
【0127】
化合物C2(第二の燐光錯体)の遅延発光成分は、第二の燐光錯体の発光スペクトルのピーク波長における強度に相当する。
一般的に重原子を含まない有機化合物の光励起では三重項励起子(トリプレット)は禁制遷移のため、通常、一重項励起子が形成される。そのため第一のホスト材料の一重項励起子を三重項励起子に変換する増感剤として、前記数式(数X)の関係を満たす化合物C1(第一の燐光錯体)を用いる。増感剤としての化合物C1により、一重項励起子は、三重項励起子に変換され、さらに化合物C1により生成した三重項励起子は、第一のホスト材料の三重項励起子へとエネルギー移動する。
したがって、第一の解析層で生成される第一のホスト材料の一重項励起子はわずかであり、第一のホスト材料からの一重項励起子のエネルギー移動は無視できるものとする。
また、第一のホスト材料と化合物C1との最低三重項励起準位の差、並びに第一のホスト材料と化合物C2との最低三重項励起準位の差は、前記数式(数X)及び(数Y)の関係を満たすため、化合物C1及び化合物C2から第一のホスト材料への逆エネルギー移動も無視できるものとする。
【0128】
測定された過渡PLスペクトルについて説明する。
図1は、化合物Targetとして下記化合物BH1-C(第一のホスト材料)を用いて作製された過渡PLデータ測定用試料1の過渡PLスペクトルである。
図2A~
図2Cは、過渡PLデータ測定用試料1に励起光(入射光)を入射した時(t=0)、時間t
1が経過した時、及び時間t
2が経過した時のトリプレットの挙動及び密度を説明するための図である。
図2A~
図2C中、Tpはトリプレットを示し、「C2からの発光」は、化合物C2(第二の燐光錯体)からの発光を示す。
【0129】
【0130】
図1中、過渡PLデータ測定用試料1の構成は以下の通りである。
・過渡PLデータ測定用試料1
透過光側/glass(0.7mm)/化合物BH1-C:Ir(piq)
2(acac)(20,95%:5%)/化合物BH1-C:Ir(ppy)
3(100,80%:20%)/封止ガラス(0.6mm)/入射光側
図1中、t=0は、過渡PLデータ測定用試料に励起光(入射光)を入射した時を示し、t=t
1は、入射時から時間t
1が経過した時を示し、t=t
2は、入射時から時間t
2が経過した時を示す。これらは、
図2A~
図2Cに示すt=0、t=t
1、及びt=t
2に対応する。
【0131】
トリプレットの挙動について具体的に説明する。
図1及び
図2Aにおいて、t=0の時、励起光が第一の解析層の側から入射されると、化合物C1(第一の燐光錯体)が入射光で励起され、励起光の吸収量に準じたトリプレットTpが生成される。下記数式(数10)で表されるランベルトの法則に準じた量の励起子が生成される。ここで吸収されたエネルギーはすべてトリプレットに変換されると仮定した。
【0132】
【0133】
T(x);測定試料内の位置xにおけるtriplet濃度[cm-3]
A;吸光係数 /cm
To;入射端面(x=0)でt=0で生成されるtriplet濃度 /cm3
【0134】
図1及び
図2Bにおいて、t=t
1の時、第一の解析層中で生成されたトリプレットTpは、前記数式(数1)に示す関係より、第二の解析層に向かって拡散する。
図1及び
図2Cにおいて、t=t
2の時、第二の解析層まで拡散して第二の燐光錯体に到達したトリプレットTpは、燐光発光する。なお、第二の解析層からの燐光発光は、化合物C2が入射光で励起されて生成されたトリプレット、及び第一の解析層から拡散したトリプレットTpの両者による発光(
図2C中の「C2からの発光」)である。
以上に説明したモデル(トリプレットTpの挙動)を用いて、下記数式(数100)で表される拡散方程式から、三重項エネルギーT
1(H1)の拡散係数D
1を過渡PLスペクトル(光強度)から算出する。
なお、t>0におけるx=0へのエネルギーの発生及び流入はないものとして計算する(T(t>0,x=0)=0とする。)
【0135】
(3)第一のホスト材料の三重項エネルギーT
1(H1)の拡散係数D
1の算出
第一のホスト材料の三重項エネルギーT
1(H1)の拡散係数D
1は、以下の手順で算出される。
以下の説明では、
図1に示す過渡PLデータ測定用試料1の過渡PLスペクトルの測定結果に基づき、下記数式(数100)で表される拡散方程式から第一のホスト材料の三重項エネルギーT
1(H1)の拡散係数D
1を算出する方法について説明する。
【0136】
【0137】
T :triplet濃度[cm-3]
D :拡散係数[cm2/s]
ktt:TTF速度[cm-3/s]
kt :自己失活速度[ /s]
【0138】
拡散方程式の数値解法について説明する。
数値解法としては、陽解法を適用する。陽解法とは、下記表1に示すように、空間・時間を格子状に分割し、逐次的に次の値を算出し、最終的に全体の値を計算する方法である。過渡PLデータ測定用試料1の場合、空間(入射光側の第一の解析層の表面(表2中、x=0)から測定器側の第二の解析層の表面(表2中、x=A)へ向かう厚さ方向)をx、時間をtとした場合、「Triplet濃度の時間空間分布T(x,t)」は、例えば表2のように作成される。
過渡PLデータ測定用試料1においては、第一の解析層及び第二の解析層の総厚は120nmであるため、表2中、x=AにおけるAは120nmに相当する。そのため、空間x1から空間x20は、第一の解析層及び第二の解析層が厚さ方向に20分割されていることを表す。
同様に、表2中、時間t=t15におけるt15は、
図1中のt
2に相当する。そのため、時間t1から時間t15は、時間t
2が15分割されていることを表す。
【0139】
【0140】
【0141】
ここで、表2中、各セルに算出される値は、Triplet濃度の時間空間分布T(x,t)のため、発光に変換する必要がある。
イリジウム錯体が励起されると、時間依存性で発光強度I(t)が得られる。時刻tにおけるイリジウム錯体の発光強度は、下記数式(数101)で表される。
【0142】
【0143】
T :triplet濃度[cm-3]
τ :Triplet発光寿命[s]
I :規格化発光強度[a.u.]
【0144】
最小二乗法で過渡PLデータ測定用試料1の過渡PLスペクトルのフィッティングを行う。
図3に、過渡PLデータ測定用試料1の過渡PLスペクトル及びフィッティングした後の過渡PLスペクトルを示す。
次に、前記数式(数100)で表される拡散方程式から、拡散係数(D)、TTF速度(k
tt)及び自己失活速度(k
t)を求める。なお、フィッティングに用いる時間範囲は、t=0から1.0E-05(sec)とする。ここでEは、10のべき乗を表す。
算出された拡散係数(D)を前記化合物BH1-C(第一のホスト材料)の三重項エネルギーT
1(H1)の拡散係数D
1とする。以上のようにして、第一のホスト材料の三重項エネルギーT
1(H1)の拡散係数D
1は算出される。
【0145】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記第一のホスト材料の最高被占軌道のエネルギー準位HOMO(H1)の絶対値と、前記第一の発光性化合物の最高被占軌道のエネルギー準位HOMO(D1)の絶対値とが、下記数式(数2)の関係を満たすことが好ましい。
|HOMO(H1)|―|HOMO(D1)|≧0.2eV …(数2)
【0146】
HOMO(H1)の絶対値と、HOMO(D1)の絶対値とが、前記数式(数2)の関係を満たすと、ホールトラップが生じ易くなる。その結果、再結合が第一の発光層の内部で起こり易くなる。
第一のホスト材料の最高被占軌道のエネルギー準位HOMO(H1)の絶対値は、7.0eV以下であることが好ましい。
【0147】
本明細書において、最高被占軌道のエネルギー準位HOMOは、大気下で、光電子分光装置を用いて測定する。具体的には、実施例に記載の方法により最高被占軌道のエネルギー準位HOMOを測定できる。
【0148】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層と第二の発光層との積層順が、陽極側から、第一の発光層と第二の発光層との順序である場合、第二のホスト材料の電子移動度μe(H2)と、第一のホスト材料の電子移動度μe(H1)とが、下記数式(数4)の関係を満たすことが好ましい。
μe(H2)>μe(H1) …(数4)
【0149】
第一のホスト材料と第二のホスト材料とが、前記数式(数4)の関係を満たすことで、第一の発光層でのホールと電子との再結合能が向上する。
【0150】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層と第二の発光層との積層順が、陽極側から、第一の発光層と第二の発光層との順序である場合、第一のホスト材料の正孔移動度μh(H1)と、第二のホスト材料の正孔移動度μh(H2)とが、下記数式(数40)の関係を満たすことも好ましい。
μh(H1)>μh(H2) …(数40)
【0151】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層と第二の発光層との積層順が、陽極側から、第一の発光層と第二の発光層との順序である場合、第一のホスト材料の正孔移動度μh(H1)と、第一のホスト材料の電子移動度μe(H1)と、第二のホスト材料の正孔移動度μh(H2)と、第二のホスト材料の電子移動度μe(H2)とが、下記数式(数40A)の関係を満たすことも好ましい。
(μe(H2)/μh(H2))>(μe(H1)/μh(H1)) …(数40A)
【0152】
電子移動度は、インピーダンス分光法を用い、以下の方法で測定できる。
陽極及び陰極で厚さ100nm~200nmの測定対象層を挟み、バイアスDC電圧を印加しながら100mV以下の微小交流電圧を印加する。このときに流れる交流電流値(絶対値と位相)を測定する。交流電圧の周波数を変えながら本測定を行い、電流値と電圧値とから、複素インピーダンス(Z)を算出する。このときモジュラスM=iωZ(i:虚数単位、ω:角周波数)の虚数部(ImM)の周波数依存性を求め、ImMが最大値となる周波数ωの逆数を、測定対象層内を伝導する電子の応答時間と定義する。そして以下の式により電子移動度を算出する。
電子移動度=(測定対象層の膜厚)2/(応答時間・電圧)
【0153】
正孔移動度は、インピーダンス分光法を用い、電子移動度と同様の方法で測定できる。
以下の式により正孔移動度を算出する。
正孔移動度=(測定対象層の膜厚)2/(応答時間・電圧)
【0154】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光性化合物の三重項エネルギーT1(D1)と、前記第二のホスト材料の三重項エネルギーT1(H2)とが、下記数式(数3)の関係を満たすことが好ましい。
T1(D1)>T1(H2) …(数3)
【0155】
T1(D1)と、T1(H2)とが、前記数式(数3)の関係を満たすと、第二のホスト材料のトリプレットが生じ易くなる。その結果、第二のホスト材料で効率よくTTFが起こり易くなる。
【0156】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一のホスト材料の一重項エネルギーS1(H1)と、第二のホスト材料の一重項エネルギーS1(H2)とが、下記数式(数5)の関係を満たすことが好ましい。
S1(H1)>S1(H2) …(数5)
【0157】
S1(H1)と、S1(H2)とが、前記数式(数5)の関係を満たすと、第一のホスト材料から第二のホスト材料への一重項励起子のエネルギー移動が生じ易くなる。その結果、再結合箇所と発光箇所を分離することができるため、発光効率が高くなる、あるいは、駆動寿命が長くなると考えられる。
【0158】
本実施形態に係る有機EL素子において、分子軌道計算により算出される第一のホスト材料のファンデルワールス半径が、1.08nm以上であることが好ましく、1.20nm以上であることがより好ましい。
【0159】
第一のホスト材料のファンデルワールス半径が、1.08nm以上であると、自己失活が抑えられる。その結果、効率よく第二のホスト材料へのエネルギー移動が起こり易くなり、発光効率が向上する。
【0160】
「化合物(第一のホスト材料)のファンデルワールス半径」は、分子軌道計算法により最適化された構造をWinmosterによって表示した際、「化合物のファンデルワールス体積」から下記数式(数102)によって算出される。分子軌道計算は、量子化学計算プログラム(Gaussian 09 (Gaussian Inc.); 計算手法: B3LYP/6-31G*(理論にはB3LYP、基底関数に6-31G*を使用したことを意味する))を用いて行う。
「化合物のファンデルワールス体積」とは、化合物を構成する「原子のファンデルワールス半径」に基づいたファンデルワールス球により占有される領域の体積をいい、分子軌道計算ソフトを用い、PM3法で安定構造を求めることによって計算した値をいう。
V=4/3×πr3 …(数102)
(Vは化合物のファンデルワールス体積、rは化合物のファンデルワールス半径である。)
【0161】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層の膜厚が2nm以上20nm以下であることが好ましく、5nm以上10nm以下であることがより好ましい。
第一の発光層の膜厚が2nm以上20nm以下であると、第一のホスト材料で生成されたトリプレットが失活することなく第二のホスト材料へのエネルギー移動が生じ易くなる。その結果、効率が向上する。
【0162】
(TTF比率)
本実施形態に係る有機EL素子は、前記数式(数1)の関係を満たす第一のホスト材料及び第二のホスト材料を含み、かつ三重項エネルギーT1(H1)の拡散係数D1が3.0×10-9(cm2/s)以上の第一のホスト材料を選択することにより、全発光に対するTTF由来の発光強度比を高い値とすることができる。
【0163】
TTF由来の発光強度比は、過渡EL法により測定することができる。過渡EL法とは、素子に印加しているDC電圧を除去したあとのEL発光の減衰挙動(過渡特性)を測定する手法である。EL発光強度は、最初の再結合で生成する一重項励起子からの発光成分と、TTF現象を経由して生成する一重項励起子からの発光成分に分類される。一重項励起子の寿命はナノ秒オーダーであり非常に短いためDC電圧除去後速やかに減衰する。
【0164】
一方、TTF現象は寿命の長い三重項励起子を経由して生成する一重項励起子からの発光のため、ゆるやかに減衰する。このように一重項励起子からの発光と三重項励起子からの発光は時間的に大きな差があるため、TTF由来の発光強度を求めることができる。。具体的には以下の方法により決定することができる。
【0165】
過渡EL波形は以下のようにして測定する(
図7を参照)。電圧パルスジェネレータ(PG)から出力されるパルス電圧波形をEL素子に印加する。印加電圧波形をオシロスコープ(OSC)に取り込む。パルス電圧をEL素子に印加すると、EL素子はパルス発光を生じる。この発光を、光電子増倍管(PMT)を経由してオシロスコープ(OSC)に取り込む。電圧波形とパルス発光を同期させてパーソナルコンピュータ(PC)に取り込む。
【0166】
さらに、過渡EL波形の解析によりTTF由来の発光強度比を以下のようにして決定する。
【0167】
三重項励起子の減衰挙動のレート方程式を解いて、TTF現象に基づく発光強度の減衰挙動をモデル化する。発光層内部の三重項励起子密度nTの時間減衰は、三重項励起子の寿命による減衰速度αと三重項励起子の衝突による減衰速度γを用いて次のようなレート方程式で表すことができる。
【0168】
【0169】
この微分方程式を近似的に解くと、次の式が得られる。ここで、ITTFはTTF由来の発光強度であり、Aは定数である。このように、過渡EL発光がTTFに基づくものであれば、その強度の平方根の逆数が直線近似で表されることになる。そこで、測定した過渡EL波形データを下記近似式にフィッティングし定数Aを求める。このときDC電圧を除去した時刻t=0における発光強度1/A2がTTF由来の発光強度比と定義する。
【0170】
【0171】
図8Aのグラフは、EL素子に所定のDC電圧を印加し、その後電圧を除去した時の測定例であり、EL素子の発光強度の時間変化を表したものである。
図8Aのグラフにて時刻約3×10
-8秒のところでDC電圧を除去する。なお、グラフは、電圧を除去した時の輝度を1として表したものである。その後約2×10
-7秒までの急速な減衰の後、緩やかな減衰成分が現れる。
図8Bのグラフは、電圧除去時点を原点にとり、電圧除去後、10
-5秒までの光強度の平方根の逆数をプロットしたグラフであり、直線によく近似できることがわかる。直線部分を時間原点へ延長したときの縦軸との交点Aの値は2.41である。すると、この過渡EL波形から得られるTTF由来発光強度比は、1/2.41
2=0.17となり、全発光強度のうちの17%がTTF由来であることになる。
直線へのフィッティングは、最小二乗法により行うことが好ましい。この場合に、10
-5秒までの値を用いてフィッティングすることが好ましい。
【0172】
パルスジェネレータ(アジレントテクノロジー社製、8114A)から出力した電圧パルス波形(パルス幅:500マイクロ秒、周波数:20Hz、電圧:0.1~100mA/cm2相当の電圧)を印加し、EL発光を光電子増倍管(浜松ホトニクス社製R928)に入力し、パルス電圧波形とEL発光とを同期させてオシロスコープ(テクトロニクス社製2440)に取り込んで過渡EL波形を得た。これを解析してTTF比率を決定する。
【0173】
本明細書において、「ホスト材料」とは、例えば「層の50質量%以上」含まれる材料である。したがって、第一の発光層は、例えば、第一のホスト材料を、第一の発光層の全質量の50質量%以上、含有する。第二の発光層は、例えば、第二のホスト材料を、第二の発光層の全質量の50質量%以上、含有する。
【0174】
(有機EL素子の発光波長)
本実施形態に係る有機EL素子は、素子駆動時に最大ピーク波長が500nm以下の光を放射することが好ましい。
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、素子駆動時に最大ピーク波長が、430nm以上480nm以下の光を放射することがより好ましい。
素子駆動時に有機EL素子が放射する光の最大ピーク波長の測定は、以下のようにして行う。電流密度が10mA/cm2となるように有機EL素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを分光放射輝度計CS-2000(コニカミノルタ社製)で計測する。得られた分光放射輝度スペクトルにおいて、発光強度が最大となる発光スペクトルのピーク波長を測定し、これを最大ピーク波長(単位:nm)とする。
【0175】
(第一の発光層)
第一の発光層は、第一のホスト材料と、第一の発光性化合物とを含む。第一のホスト材料は、第二の発光層が含有する第二のホスト材料とは、異なる化合物である。
前記第一の発光性化合物の最大ピーク波長は、500nm以下であることが好ましい。
第一の発光層が含有する第一の発光性化合物は、最大ピーク波長が500nm以下の蛍光発光を示す蛍光発光性化合物であることがより好ましい。
【0176】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光性化合物と第二の発光性化合物とは異なる化合物であってもよいし、同じ化合物であってもよい。
【0177】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光性化合物は、分子中にアジン環構造を含まない化合物であることが好ましい。
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光性化合物は、ホウ素含有錯体ではないことが好ましく、第一の発光性化合物は、錯体ではないことがより好ましい。
【0178】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層は、金属錯体を含有しないことが好ましい。また、本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層は、ホウ素含有錯体を含有しないことも好ましい。
【0179】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層は、燐光発光性材料(ドーパント材料)を含まないことが好ましい。
また、第一の発光層は、重金属錯体及び燐光発光性の希土類金属錯体を含まないことが好ましい。ここで、重金属錯体としては、例えば、イリジウム錯体、オスミウム錯体、及び白金錯体等が挙げられる。
【0180】
化合物の最大ピーク波長の測定方法は、次の通りである。測定対象となる化合物の5μmol/Lトルエン溶液を調製して石英セルに入れ、常温(300K)でこの試料の発光スペクトル(縦軸:発光強度、横軸:波長とする。)を測定する。発光スペクトルは、株式会社日立ハイテクサイエンス製の分光蛍光光度計(装置名:F-7000)により測定できる。なお、発光スペクトル測定装置は、ここで用いた装置に限定されない。
発光スペクトルにおいて、発光強度が最大となる発光スペクトルのピーク波長を最大ピーク波長とする。なお、本明細書において、蛍光発光の最大ピーク波長を蛍光発光最大ピーク波長(FL-peak)と称する場合がある。
【0181】
第一の発光性化合物の発光スペクトルにおいて、発光強度が最大となるピークを最大ピークとし、当該最大ピークの高さを1としたとき、当該発光スペクトルに現れる他のピークの高さは、0.6未満であることが好ましい。なお、発光スペクトルにおけるピークは、極大値とする。
また、第一の発光性化合物の発光スペクトルにおいて、ピークの数が3つ未満であることが好ましい。
【0182】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層は、素子駆動時に最大ピーク波長が500nm以下の光を放射することが好ましい。
素子駆動時に発光層が放射する光の最大ピーク波長の測定は、次に記載の方法で行うことができる。
【0183】
・素子駆動時に発光層から放射される光の最大ピーク波長λp
素子駆動時に第一の発光層から放射される光の最大ピーク波長λp1は、第二の発光層を第一の発光層と同じ材料を用いて有機EL素子を作製し、有機EL素子の電流密度が10mA/cm2となるように素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを分光放射輝度計CS-2000(コニカミノルタ株式会社製)で計測する。得られた分光放射輝度スペクトルから、最大ピーク波長λp1(単位:nm)を算出する。
素子駆動時に第二の発光層から放射される光の最大ピーク波長λp2は、第一の発光層を第二の発光層と同じ材料を用いて有機EL素子を作製し、有機EL素子の電流密度が10mA/cm2となるように素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを分光放射輝度計CS-2000(コニカミノルタ株式会社製)で計測する。得られた分光放射輝度スペクトルから、最大ピーク波長λp2(単位:nm)を算出する。
【0184】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一のホスト材料の一重項エネルギーS1(H1)と、第一の発光性化合物の一重項エネルギーS1(D1)とが下記数式(数20)の関係を満たすことが好ましい。
S1(H1)>S1(D1) …(数20)
一重項エネルギーS1とは、最低励起一重項状態と基底状態とのエネルギー差を意味する。
【0185】
第一のホスト材料と第一の発光性化合物とが、数式(数20)の関係を満たすことにより、第一のホスト材料上で生成された一重項励起子は、第一のホスト材料から第一の発光性化合物へエネルギー移動し易くなり、第一の発光性化合物の発光(好ましくは蛍光性発光)に寄与する。
【0186】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)と、第一の発光性化合物の三重項エネルギーT1(D1)とが下記数式(数20A)の関係を満たすことが好ましい。
T1(D1)>T1(H1) …(数20A)
【0187】
第一のホスト材料と第一の発光性化合物とが、数式(数20A)の関係を満たす事により、第一の発光層内で生成した三重項励起子は、より高い三重項エネルギーを有する第一の発光性化合物ではなく、第一のホスト材料上を移動するため、第二の発光層へ移動し易くなる。
【0188】
本実施形態に係る有機EL素子は、下記数式(数20B)の関係を満たすことが好ましい。
T1(D1)>T1(H1)>T1(H2) …(数20B)
【0189】
(三重項エネルギーT1)
三重項エネルギーT1の測定方法としては、下記の方法が挙げられる。
測定対象となる化合物をEPA(ジエチルエーテル:イソペンタン:エタノール=5:5:2(容積比))中に、10-5mol/L以上10-4mol/L以下となるように溶解し、この溶液を石英セル中に入れて測定試料とする。この測定試料について、低温(77[K])で燐光スペクトル(縦軸:燐光発光強度、横軸:波長とする。)を測定し、この燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]に基づいて、次の換算式(F1)から算出されるエネルギー量を三重項エネルギーT1とする。
換算式(F1):T1[eV]=1239.85/λedge
【0190】
燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線は以下のように引く。燐光スペクトルの短波長側から、スペクトルの極大値のうち、最も短波長側の極大値までスペクトル曲線上を移動する際に、長波長側に向けて曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち上がるにつれ(つまり縦軸が増加するにつれ)、傾きが増加する。この傾きの値が極大値をとる点において引いた接線(すなわち変曲点における接線)が、当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
なお、スペクトルの最大ピーク強度の15%以下のピーク強度をもつ極大点は、上述の最も短波長側の極大値には含めず、最も短波長側の極大値に最も近い、傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
燐光の測定には、(株)日立ハイテクノロジー製のF-4500形分光蛍光光度計本体を用いることができる。なお、測定装置はこの限りではなく、冷却装置、及び低温用容器と、励起光源と、受光装置とを組み合わせることにより、測定してもよい。
【0191】
(一重項エネルギーS1)
溶液を用いた一重項エネルギーS1の測定方法(溶液法と称する場合がある。)としては、下記の方法が挙げられる。
測定対象となる化合物の10-5mol/L以上10-4mol/L以下のトルエン溶液を調製して石英セルに入れ、常温(300K)でこの試料の吸収スペクトル(縦軸:吸収強度、横軸:波長とする。)を測定する。この吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を次に示す換算式(F2)に代入して一重項エネルギーを算出する。
換算式(F2):S1[eV]=1239.85/λedge
吸収スペクトル測定装置としては、例えば、日立社製の分光光度計(装置名:U3310)が挙げられるが、これに限定されない。
【0192】
吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対する接線は以下のように引く。吸収スペクトルの極大値のうち、最も長波長側の極大値から長波長方向にスペクトル曲線上を移動する際に、曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち下がるにつれ(つまり縦軸の値が減少するにつれ)、傾きが減少しその後増加することを繰り返す。傾きの値が最も長波長側(ただし、吸光度が0.1以下となる場合は除く)で極小値をとる点において引いた接線を当該吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対する接線とする。
なお、吸光度の値が0.2以下の極大点は、上記最も長波長側の極大値には含めない。
【0193】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光性化合物は、第一の発光層中に、1.1質量%を超えて、含有されることが好ましい。すなわち、第一の発光層は、第一の発光性化合物を、第一の発光層の全質量の1.1質量%超、含有することが好ましく、第一の発光層の全質量の1.2質量%以上、含有することがより好ましく、第一の発光層の全質量の1.5質量%以上、含有することがさらに好ましい。
第一の発光層は、第一の発光性化合物を、第一の発光層の全質量の10質量%以下、含有することが好ましく、第一の発光層の全質量の7質量%以下、含有することがより好ましく、第一の発光層の全質量の5質量%以下、含有することがさらに好ましい。
【0194】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層は、第一のホスト材料としての第一の化合物を、第一の発光層の全質量の60質量%以上、含有することが好ましく、第一の発光層の全質量の70質量%以上、含有することがより好ましく、第一の発光層の全質量の80質量%以上、含有することがさらに好ましく、第一の発光層の全質量の90質量%以上、含有することがよりさらに好ましく、第一の発光層の全質量の95質量%以上、含有することがさらになお好ましい。
第一の発光層は、第一のホスト材料を、第一の発光層の全質量の99質量%以下、含有することが好ましい。
ただし、第一の発光層が第一のホスト材料と第一の発光性化合物とを含有する場合、第一のホスト材料及び第一の発光性化合物の合計含有率の上限は、100質量%である。
【0195】
なお、本実施形態は、第一の発光層に、第一のホスト材料と第一の発光性化合物以外の材料が含まれることを除外しない。
第一の発光層は、第一のホスト材料を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。第一の発光層は、第一の発光性化合物を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0196】
(第二の発光層)
第二の発光層は、第二のホスト材料と、第二の発光性化合物とを含む。第二のホスト材料は、第一の発光層が含有する第二のホスト材料とは、異なる化合物である。
前記第二の発光性化合物の最大ピーク波長は、500nm以下であることが好ましい。
第二の発光層が含有する第二の発光性化合物は、最大ピーク波長が500nm以下の蛍光発光を示す蛍光発光性化合物であることがより好ましい。
化合物の最大ピーク波長の測定方法は、前述の通りである。
【0197】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光層は、素子駆動時に最大ピーク波長が500nm以下の光を放射することが好ましい。
【0198】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光性化合物の最大ピークの半値幅が、1nm以上、20nm以下であることが好ましい。
【0199】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光性化合物のストークスシフトは、7nmを超えることが好ましい。
第二の発光性化合物のストークスシフトが7nmを越えていれば、自己吸収による発光効率の低下を防止し易くなる。
自己吸収とは、放出した光を同一化合物が吸収する現象であり、発光効率の低下を引き起こす現象である。自己吸収は、ストークスシフトの小さい(すなわち、吸収スペクトルと蛍光スペクトルの重なりが大きい)化合物で顕著に観測されるため、自己吸収を抑制するには、ストークスシフトの大きい(吸収スペクトルと蛍光スペクトルの重なりが小さい)化合物を用いることが好ましい。ストークスシフトは、次に記載する方法で測定できる。
測定対象となる化合物を2.0×10-5mol/Lの濃度でトルエンに溶解し、測定用試料を調製する。石英セルへ入れた測定用試料に室温(300K)で紫外-可視領域の連続光を照射し、吸収スペクトル(縦軸:吸光度、横軸:波長)を測定する。吸収スペクトル測定には、分光光度計を用いることができ、例えば、日立ハイテクサイエンス社の分光光度計U-3900/3900H形を用いることができる。また、測定対象となる化合物を4.9×10-6mol/Lの濃度でトルエンに溶解し、測定用試料を調製する。石英セルへ入れた測定用試料に室温(300K)で励起光を照射し、蛍光スペクトル(縦軸:蛍光強度、横軸:波長)を測定した。蛍光スペクトル測定には、分光光度計を用いることができ、例えば、日立ハイテクサイエンス社の分光蛍光光度計F-7000形を用いることができる。
これらの吸収スペクトルと蛍光スペクトルから、吸収極大波長と蛍光極大波長の差を算出し、ストークスシフト(SS)を求める。ストークスシフトSSの単位は、nmである。
【0200】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光性化合物の三重項エネルギーT1(D2)と、第二のホスト材料の三重項エネルギーT1(H2)とが下記数式(数3A)の関係を満たすことが好ましい。
T1(D2)>T1(H2) …(数3A)
【0201】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光性化合物と、第二のホスト材料とが、前記数式(数3A)の関係を満たすことにより、第一の発光層で生成した三重項励起子は、第二の発光層に移動する際、より高い三重項エネルギーを有する第二の発光性化合物ではなく、第二のホスト材料の分子にエネルギー移動する。また、第二のホスト材料上で正孔及び電子が再結合して発生した三重項励起子は、より高い三重項エネルギーを持つ第二の発光性化合物には移動しない。第二の発光性化合物の分子上で再結合し発生した三重項励起子は、速やかに第二のホスト材料の分子にエネルギー移動する。
第二のホスト材料の三重項励起子が第二の発光性化合物に移動することなく、TTF現象によって第二のホスト材料上で三重項励起子同士が効率的に衝突することで、一重項励起子が生成される。
【0202】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二のホスト材料の一重項エネルギーS1(H2)と第二の発光性化合物の一重項エネルギーS1(D2)とが、下記数式(数41)の関係を満たすことが好ましい。
S1(H2)>S1(D2) …(数41)
【0203】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光性化合物と、第二のホスト材料とが、前記数式(数41)の関係を満たすことにより、第二の発光性化合物の一重項エネルギーは、第二のホスト材料の一重項エネルギーより小さいため、TTF現象によって生成された一重項励起子は、第二のホスト材料から第二の発光性化合物へエネルギー移動し、第二の発光性化合物の発光(好ましくは蛍光性発光)に寄与する。
【0204】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光性化合物は、分子中にアジン環構造を含まない化合物であることが好ましい。
【0205】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光性化合物は、ホウ素含有錯体ではないことが好ましく、第二の発光性化合物は、錯体ではないことがより好ましい。
【0206】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光層は、金属錯体を含有しないことが好ましい。また、本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光層は、ホウ素含有錯体を含有しないことも好ましい。
【0207】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光層は、燐光発光性材料(ドーパント材料)を含まないことが好ましい。
また、第二の発光層は、重金属錯体及び燐光発光性の希土類金属錯体を含まないことが好ましい。ここで、重金属錯体としては、例えば、イリジウム錯体、オスミウム錯体、及び白金錯体等が挙げられる。
【0208】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光性化合物は、第二の発光層中に、1.1質量%を超えて、含有されることが好ましい。すなわち、第二の発光層は、第二の発光性化合物を、第二の発光層の全質量の1.1質量%超、含有することが好ましく、第二の発光層の全質量の1.2質量%以上、含有することがより好ましく、第二の発光層の全質量の1.5質量%以上、含有することがさらに好ましい。
第二の発光層は、第二の発光性化合物を、第二の発光層の全質量の10質量%以下、含有することが好ましく、第二の発光層の全質量の7質量%以下、含有することがより好ましく、第二の発光層の全質量の5質量%以下、含有することがさらに好ましい。
【0209】
第二の発光層は、第二のホスト材料としての第二の化合物を、第二の発光層の全質量の60質量%以上、含有することが好ましく、第二の発光層の全質量の70質量%以上、含有することがより好ましく、第二の発光層の全質量の80質量%以上、含有することがさらに好ましく、第二の発光層の全質量の90質量%以上、含有することがよりさらに好ましく、第二の発光層の全質量の95質量%以上、含有することがさらになお好ましい。
第二の発光層は、第二のホスト材料を、第二の発光層の全質量の99質量%以下、含有することが好ましい。
第二の発光層が第二のホスト材料と第二の発光性化合物とを含有する場合、第二のホスト材料及び第二の発光性化合物の合計含有率の上限は、100質量%である。
【0210】
なお、本実施形態は、第二の発光層に、第二のホスト材料と第二の発光性化合物以外の材料が含まれることを除外しない。
第二の発光層は、第二のホスト材料を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。第二の発光層は、第二の発光性化合物を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0211】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光層の膜厚は、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。第二の発光層の膜厚が5nm以上であれば、第一の発光層から第二の発光層へ移動してきた三重項励起子が、再び第一の発光層に戻ることを抑制し易い。また、第二の発光層の膜厚が5nm以上であれば、第一の発光層における再結合部分から三重項励起子を充分離すことができる。
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光層の膜厚は、30nm以下であることが好ましい。第二の発光層の膜厚が30nm以下であれば、第二の発光層中の三重項励起子の密度を向上させて、TTF現象をさらに起こり易くすることができる。
本実施形態に係る有機EL素子において、第二の発光層の膜厚は、5nm以上、30nm以下であることが好ましい。
【0212】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光性化合物の三重項エネルギーT1(D1)と、第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)とが、下記数式(数11A)の関係を満たすことが好ましい。
0eV<T1(D1)-T1(H1)<0.6eV …(数11A)
【0213】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)が、下記数式(数12)の関係を満たすことが好ましい。
T1(H1)>2.0eV …(数12)
【0214】
(有機EL素子のその他の層)
本実施形態に係る有機EL素子は、第一の発光層及び第二の発光層以外に、1以上の有機層を有していてもよい。有機層としては、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層、電子輸送層、正孔障壁層及び電子障壁層からなる群から選択される少なくともいずれかの層が挙げられる。
【0215】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層及び第二の発光層だけで構成されていてもよいが、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、正孔障壁層、及び電子障壁層等からなる群から選択される少なくともいずれかの層をさらに有していてもよい。
【0216】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層は、陽極と陰極との間に配置され、第二の発光層は、第一の発光層と陰極との間に配置されていることも好ましい。陽極側から、第一の発光層と第二の発光層とをこの順序に有していてもよいし、陽極側から、第二の発光層と第一の発光層とをこの順序に有していてもよい。第一の発光層と第二の発光層の順序がいずれの場合も、前記数式(数1)の関係を満たす材料の組合せを選択することにより、発光層が積層構成であることによる効果が期待できる。
【0217】
図4に、本実施形態に係る有機EL素子の一例の概略構成を示す。
有機EL素子1は、透光性の基板2と、陽極3と、陰極4と、陽極3と陰極4との間に配置された有機層10と、を含む。有機層10は、陽極3側から順に、正孔注入層6、正孔輸送層7、第一の発光層51、第二の発光層52、電子輸送層8、及び電子注入層9が、この順番で積層されて構成される。
【0218】
図5に、本実施形態に係る有機EL素子の別の一例の概略構成を示す。
有機EL素子1Aは、透光性の基板2と、陽極3と、陰極4と、陽極3と陰極4との間に配置された有機層10と、を含む。有機層10Aは、陽極3側から順に、正孔注入層6、正孔輸送層7、第二の発光層52、第一の発光層51、電子輸送層8、及び電子注入層9が、この順番で積層されて構成される。
【0219】
本発明は、
図4及び
図5に示す有機EL素子の構成に限定されない。
【0220】
(第三の発光層)
本実施形態に係る有機EL素子は、第三の発光層をさらに含んでいてもよい。
第三の発光層は、第三のホスト材料を含み、第一のホスト材料と第二のホスト材料と第三のホスト材料とは、互いに異なり、第三の発光層は、第三の発光性化合物を少なくとも含み、第一の発光性化合物と、第二の発光性化合物と、第三の発光性化合物とが、互いに同一であるか、又は異なり、第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)と第三のホスト材料の三重項エネルギーT1(H3)とが、下記数式(数1A)の関係を満たすことが好ましい。
T1(H1)>T1(H3) …(数1A)
【0221】
前記第三の発光性化合物の最大ピーク波長は、500nm以下であることが好ましい。
前記第三の発光性化合物は、最大ピーク波長が500nm以下の蛍光発光を示す蛍光発光性化合物であることがより好ましい。
【0222】
本実施形態に係る有機EL素子が第三の発光層を含んでいる場合、第二のホスト材料の三重項エネルギーT1(H2)と第三のホスト材料の三重項エネルギーT1(H3)とが、下記数式(数1B)の関係を満たすことが好ましい。
T1(H2)>T1(H3) …(数1B)
【0223】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光層と第二の発光層とが、直接、接していることが好ましい。
【0224】
本明細書において、「第一の発光層と第二の発光層とが、直接、接している」層構造は、例えば、以下の態様(LS1)、(LS2)及び(LS3)のいずれかの態様も含み得る。
(LS1)第一の発光層に係る化合物の蒸着の工程と第二の発光層に係る化合物の蒸着の工程を経る過程で第一のホスト材料及び第二のホスト材料の両方が混在する領域が生じ、当該領域が第一の発光層と第二の発光層との界面に存在する態様。
(LS2)第一の発光層及び第二の発光層が発光性の化合物を含む場合に、第一の発光層に係る化合物の蒸着の工程と第二の発光層に係る化合物の蒸着の工程を経る過程で第一のホスト材料、第二のホスト材料及び発光性の化合物が混在する領域が生じ、当該領域が第一の発光層と第二の発光層との界面に存在する態様。
(LS3)第一の発光層及び第二の発光層が発光性の化合物を含む場合に、第一の発光層に係る化合物の蒸着の工程と第二の発光層に係る化合物の蒸着の工程を経る過程で当該発光性の化合物からなる領域、第一のホスト材料からなる領域、又は第二のホスト材料からなる領域が生じ、当該領域が第一の発光層と第二の発光層との界面に存在する態様。
【0225】
本実施形態に係る有機EL素子が第三の発光層を含んでいる場合、第一の発光層と第二の発光層とが、直接、接しており、第二の発光層と第三の発光層とが、直接、接していることが好ましい。
【0226】
本明細書において、「第二の発光層と第三の発光層とが、直接、接している」層構造は、例えば、以下の態様(LS4)、(LS5)及び(LS6)のいずれかの態様も含み得る。
(LS4)第二の発光層に係る化合物の蒸着の工程と第三の発光層に係る化合物の蒸着の工程を経る過程で第二のホスト材料及び第三のホスト材料の両方が混在する領域が生じ、当該領域が第二の発光層と第三の発光層との界面に存在する態様。
(LS5)第二の発光層及び第三の発光層が発光性の化合物を含む場合に、第二の発光層に係る化合物の蒸着の工程と第三の発光層に係る化合物の蒸着の工程を経る過程で第二のホスト材料、第三のホスト材料及び発光性の化合物が混在する領域が生じ、当該領域が第二の発光層と第三の発光層との界面に存在する態様。
(LS6)第二の発光層及び第三の発光層が発光性の化合物を含む場合に、第二の発光層に係る化合物の蒸着の工程と第三の発光層に係る化合物の蒸着の工程を経る過程で当該発光性の化合物からなる領域、第二のホスト材料からなる領域、又は第三のホスト材料からなる領域が生じ、当該領域が第二の発光層と第三の発光層との界面に存在する態様。
【0227】
また、本実施形態に係る有機EL素子は、拡散層をさらに有することも好ましい。
【0228】
本実施形態に係る有機EL素子が拡散層を有する場合、拡散層は、第一の発光層と第二の発光層との間に配置されていることが好ましい。
【0229】
有機EL素子の構成についてさらに説明する。以下、符号の記載は省略することがある。
【0230】
(基板)
基板は、有機EL素子の支持体として用いられる。基板としては、例えば、ガラス、石英、及びプラスチック等を用いることができる。また、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、折り曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、プラスチック基板等が挙げられる。プラスチック基板を形成する材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、及びポリエチレンナフタレート等が挙げられる。また、無機蒸着フィルムを用いることもできる。
【0231】
(陽極)
基板上に形成される陽極には、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム-酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素もしくは酸化珪素を含有した酸化インジウム-酸化スズ、酸化インジウム-酸化亜鉛、酸化タングステン、および酸化亜鉛を含有した酸化インジウム、グラフェン等が挙げられる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。
【0232】
これらの材料は、通常、スパッタリング法により成膜される。例えば、酸化インジウム-酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1質量%以上10質量%以下の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いることにより、スパッタリング法で形成することができる。また、例えば、酸化タングステン、および酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5質量%以上5質量%以下、酸化亜鉛を0.1質量%以上1質量%以下含有したターゲットを用いることにより、スパッタリング法で形成することができる。その他、真空蒸着法、塗布法、インクジェット法、スピンコート法などにより作製してもよい。
【0233】
陽極上に形成されるEL層のうち、陽極に接して形成される正孔注入層は、陽極の仕事関数に関係なく正孔(ホール)注入が容易である複合材料を用いて形成されるため、電極材料として可能な材料(例えば、金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物、その他、元素周期表の第1族または第2族に属する元素も含む)を用いることができる。
【0234】
仕事関数の小さい材料である、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(例えば、MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等を用いることもできる。なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびこれらを含む合金を用いて陽極を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。さらに、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0235】
(陰極)
陰極には、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(例えば、MgAg、AlLi)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。
【0236】
なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金を用いて陰極を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0237】
なお、電子注入層を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、グラフェン、珪素もしくは酸化珪素を含有した酸化インジウム-酸化スズ等様々な導電性材料を用いて陰極を形成することができる。これらの導電性材料は、スパッタリング法やインクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することができる。
【0238】
(電子輸送層)
本実施形態に係る有機EL素子において、発光層と陰極との間に電子輸送層を含むことが好ましい。
電子輸送層は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送層には、1)アルミニウム錯体、ベリリウム錯体、亜鉛錯体等の金属錯体、2)イミダゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、アジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントロリン誘導体等の複素芳香族化合物、3)高分子化合物を使用することができる。具体的には低分子の有機化合物として、Alq、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq3)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq2)、BAlq、Znq、ZnPBO、ZnBTZなどの金属錯体等を用いることができる。また、金属錯体以外にも、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(ptert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、3-(4-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-5-(4-ビフェニリル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、3-(4-tert-ブチルフェニル)-4-(4-エチルフェニル)-5-(4-ビフェニリル)-1,2,4-トリアゾール(略称:p-EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs)などの複素芳香族化合物も用いることができる。本実施態様においては、ベンゾイミダゾール化合物を好適に用いることができる。ここに述べた物質は、主に10-6cm2/(V・s)以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔輸送性よりも電子輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いてもよい。また、電子輸送層は、単層で構成されていてもよいし、上記物質からなる層が二層以上積層されて構成されていてもよい。
【0239】
また、電子輸送層には、高分子化合物を用いることもできる。例えば、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(ピリジン-3,5-ジイル)](略称:PF-Py)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジイル)](略称:PF-BPy)などを用いることができる。
【0240】
(電子注入層)
電子注入層は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)、リチウム酸化物(LiOx)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。その他、電子輸送性を有する物質にアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を含有させたもの、具体的にはAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いてもよい。なお、この場合には、陰極からの電子注入をより効率良く行うことができる。
【0241】
あるいは、電子注入層に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0242】
(層形成方法)
本実施形態の有機EL素子の各層の形成方法としては、上記で特に言及した以外には制限されないが、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ法、イオンプレーティング法などの乾式成膜法や、スピンコーティング法、ディッピング法、フローコーティング法、インクジェット法などの湿式成膜法などの公知の方法を採用することができる。
【0243】
(膜厚)
本実施形態の有機EL素子の各有機層の膜厚は、上記で特に言及した場合を除いて限定されない。一般に、膜厚が薄すぎるとピンホール等の欠陥が生じやすく、膜厚が厚すぎると高い印加電圧が必要となり効率が悪くなるため、通常、有機EL素子の各有機層の膜厚は、数nmから1μmの範囲が好ましい。
【0244】
(第一のホスト材料、第二のホスト材料及び第三のホスト材料)
本実施形態に係る有機EL素子において、第一のホスト材料としては、前記数式(数1)の関係を満たし、前記拡散係数D1が、3.0×10-9(cm2/s)以上であるホスト材料であれば特に限定されない。第二のホスト材料としては、前記数式(数1)の関係を満たすホスト材料であれば特に限定されない。
第一のホスト材料としては、縮合芳香環を有する化合物、縮合複素芳香環を有する化合物、または縮合芳香環及び縮合複素芳香環を有する化合物であることが好ましい。縮合芳香環としては、アントラセン骨格、ピレン骨格、フルオランテン骨格、フェナントレン骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、クリセン骨格、トリフェニレン骨格、テトラセン骨格、ベンゾアントラセン骨格、及びベンゾクリセン骨格からなる群から選択される1以上の骨格を有する化合物が好ましい。縮合複素芳香環としては、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、キサンテン骨格、及びベンゾキサンテン骨格からなる群から選択される1以上の骨格を有する化合物が好ましい。
第一のホスト材料としては、例えば、下記一般式(1)、一般式(1X)、一般式(12X)、一般式(13X)、一般式(14X)、一般式(15X)又は一般式(16X)で表される第一の化合物、及び下記一般式(2)で表される第二の化合物のうち、前記数式(数1)の関係を満たし、かつ前記拡散係数D1が、3.0×10-9(cm2/s)以上である化合物を選択して用いることができる。
第二のホスト材料としては、例えば、下記一般式(1)、一般式(1X)、一般式(12X)、一般式(13X)、一般式(14X)、一般式(15X)又は一般式(16X)で表される第一の化合物、及び下記一般式(2)で表される第二の化合物のうち、前記数式(数1)の関係を満たす化合物を選択して用いることができる。
また、第一の化合物を第一のホスト材料及び第二のホスト材料として用いることもでき、この場合、第二のホスト材料として用いた下記一般式(1)、又は下記一般式(1X)、一般式(12X)、一般式(13X)、一般式(14X)、一般式(15X)又は一般式(16X)で表される化合物を、便宜的に第二の化合物と称する場合がある。
第三のホスト材料としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)、一般式(1X)、一般式(12X)、一般式(13X)、一般式(14X)、一般式(15X)もしくは一般式(16X)で表される第一の化合物、又は下記一般式(2)で表される第二の化合物を用いることができる。
【0245】
(第一の化合物)
・一般式(1)で表される化合物
【0246】
【0247】
(前記一般式(1)において、
R101~R110は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基、又は
前記一般式(11)で表される基であり、
ただし、R101~R110の少なくとも1つは、前記一般式(11)で表される基であり、
前記一般式(11)で表される基が複数存在する場合、複数の前記一般式(11)で表される基は、互いに同一であるか又は異なり、
L101は、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar101は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mxは、0、1、2、3、4又は5であり、
L101が2以上存在する場合、2以上のL101は、互いに同一であるか、又は異なり、
Ar101が2以上存在する場合、2以上のAr101は、互いに同一であるか、又は異なり、
前記一般式(11)中の*は、前記一般式(1)中のピレン環との結合位置を示す。)
【0248】
(本実施形態に係る第一の化合物中、R901、R902、R903、R904、R905、R906、R907、R801及びR802は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
R901が複数存在する場合、複数のR901は、互いに同一であるか又は異なり、
R902が複数存在する場合、複数のR902は、互いに同一であるか又は異なり、
R903が複数存在する場合、複数のR903は、互いに同一であるか又は異なり、
R904が複数存在する場合、複数のR904は、互いに同一であるか又は異なり、
R905が複数存在する場合、複数のR905は、互いに同一であるか又は異なり、
R906が複数存在する場合、複数のR906は、互いに同一であるか又は異なり、
R907が複数存在する場合、複数のR907は、互いに同一であるか又は異なり、
R801が複数存在する場合、複数のR801は、互いに同一であるか又は異なり、
R802が複数存在する場合、複数のR802は、互いに同一であるか又は異なる。)
【0249】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記一般式(11)で表される基は、下記一般式(111)で表される基であることが好ましい。
【0250】
【0251】
(前記一般式(111)において、
X1は、CR123R124、酸素原子、硫黄原子、又はNR125であり、
L111及びL112は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
maは、0、1、2、3又は4であり、
mbは、0、1、2、3又は4であり、
ma+mbは、0、1、2、3又は4であり、
Ar101は、前記一般式(11)におけるAr101と同義であり、
R121、R122、R123、R124及びR125は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mcは、3であり、
3つのR121は、互いに同一であるか、又は異なり、
mdは、3であり、
3つのR122は、互いに同一であるか、又は異なる。)
【0252】
前記一般式(111)で表される基における下記一般式(111a)で表される環構造中の炭素原子*1~*8の位置のうち、*1~*4のいずれか1つの位置にL111が結合し、*1~*4の残りの3つの位置にR121が結合し、*5~*8のいずれか1つの位置にL112が結合し、*5~*8の残りの3つの位置にR122が結合する。
【0253】
【0254】
例えば、前記一般式(111)で表される基において、L111が前記一般式(111a)で表される環構造中の*2の炭素原子の位置に結合し、L112が前記一般式(111a)で表される環構造中の*7の炭素原子の位置に結合する場合、前記一般式(111)で表される基は、下記一般式(111b)で表される。
【0255】
【0256】
(前記一般式(111b)において、
X1、L111、L112、ma、mb、Ar101、R121、R122、R123、R124及びR125は、それぞれ独立に、前記一般式(111)におけるX1、L111、L112、ma、mb、Ar101、R121、R122、R123、R124及びR125と同義であり、
複数のR121は、互いに同一であるか、又は異なり、
複数のR122は、互いに同一であるか、又は異なる。)
【0257】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記一般式(111)で表される基は、前記一般式(111b)で表される基であることが好ましい。
【0258】
本実施形態に係る有機EL素子において、maは、0、1又は2であり、mbは、0、1又は2である、ことが好ましい。
【0259】
本実施形態に係る有機EL素子において、maは、0又は1であり、mbは、0又は1であることが好ましい。
【0260】
本実施形態に係る有機EL素子において、Ar101は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であることが好ましい。
【0261】
本実施形態に係る有機EL素子において、
Ar101は、
置換もしくは無置換のフェニル基、
置換もしくは無置換のナフチル基、
置換もしくは無置換のビフェニル基、
置換もしくは無置換のターフェニル基、
置換もしくは無置換のピレニル基、
置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は
置換もしくは無置換のフルオレニル基であることが好ましい。
【0262】
本実施形態に係る有機EL素子において、Ar101は、下記一般式(12)、一般式(13)又は一般式(14)で表される基であることも好ましい。
【0263】
【0264】
(前記一般式(12)、一般式(13)及び一般式(14)において、
R111~R120は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R124で表される基、
-COOR125で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
前記一般式(12)、一般式(13)及び一般式(14)中の*は、前記一般式(11)中のL101との結合位置、又は前記一般式(111)もしくは一般式(111b)中のL112との結合位置を示す。)
【0265】
・一般式(1X)で表される化合物
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の化合物は、下記一般式(1X)で表される化合物であることも好ましい。
【0266】
【0267】
(前記一般式(1X)において、
R101~R112は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基、又は
前記一般式(11X)で表される基であり、
ただし、R101~R112の少なくとも1つは、前記一般式(11X)で表される基であり、
前記一般式(11X)で表される基が複数存在する場合、複数の前記一般式(11X)で表される基は、互いに同一であるか又は異なり、
L101は、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar101は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mxは、1、2、3、4又は5であり、
L101が2以上存在する場合、2以上のL101は、互いに同一であるか、又は異なり、
Ar101が2以上存在する場合、2以上のAr101は、互いに同一であるか、又は異なり、
前記一般式(11X)中の*は、前記一般式(1X)中のベンズ[a]アントラセン環との結合位置を示す。)
【0268】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記一般式(11X)で表される基は、下記一般式(111X)で表される基であることが好ましい。
【0269】
【0270】
(前記一般式(111X)において、
X1は、CR143R144、酸素原子、硫黄原子、又はNR145であり、
L111及びL112は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
maは、1、2、3又は4であり、
mbは、1、2、3又は4であり、
ma+mbは、2、3又は4であり、
Ar101は、前記一般式(11)におけるAr101と同義であり、
R141、R142、R143、R144及びR145は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mcは、3であり、
3つのR141は、互いに同一であるか、又は異なり、
mdは、3であり、
3つのR142は、互いに同一であるか、又は異なる。)
【0271】
前記一般式(111X)で表される基における下記一般式(111aX)で表される環構造中の炭素原子*1~*8の位置のうち、*1~*4のいずれか1つの位置にL111が結合し、*1~*4の残りの3つの位置にR141が結合し、*5~*8のいずれか1つの位置にL112が結合し、*5~*8の残りの3つの位置にR142が結合する。
【0272】
【0273】
例えば、前記一般式(111X)で表される基において、L111が前記一般式(111aX)で表される環構造中の*2の炭素原子の位置に結合し、L112が前記一般式(111aX)で表される環構造中の*7の炭素原子の位置に結合する場合、前記一般式(111X)で表される基は、下記一般式(111bX)で表される。
【0274】
【0275】
(前記一般式(111bX)において、
X1、L111、L112、ma、mb、Ar101、R141、R142、R143、R144及びR145は、それぞれ独立に、前記一般式(111X)におけるX1、L111、L112、ma、mb、Ar101、R141、R142、R143、R144及びR145と同義であり、
複数のR141は、互いに同一であるか、又は異なり、
複数のR142は、互いに同一であるか、又は異なる。)
【0276】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記一般式(111X)で表される基は、前記一般式(111bX)で表される基であることが好ましい。
【0277】
前記一般式(1X)で表される化合物において、maは、1又は2であり、mbは、1又は2であることが好ましい。
【0278】
前記一般式(1X)で表される化合物において、maは、1であり、mbは、1であることが好ましい。
【0279】
前記一般式(1X)で表される化合物において、Ar101は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であることが好ましい。
【0280】
前記一般式(1X)で表される化合物において、Ar101は、
置換もしくは無置換のフェニル基、
置換もしくは無置換のナフチル基、
置換もしくは無置換のビフェニル基、
置換もしくは無置換のターフェニル基、
置換もしくは無置換のベンズ[a]アントリル基、
置換もしくは無置換のピレニル基、
置換もしくは無置換のフェナントリル基、又は
置換もしくは無置換のフルオレニル基であることが好ましい。
【0281】
・一般式(12X)で表される化合物
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の化合物は、下記一般式(12X)で表される化合物であることも好ましい。
【0282】
【0283】
(前記一般式(12X)において、
R1201~R1210のうちの隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、
互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、又は
互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成し、
前記置換もしくは無置換の単環を形成せず、かつ及び前記置換もしくは無置換の縮合環を形成しないR1201~R1210は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基、又は
前記一般式(121)で表される基であり、
ただし、前記置換もしくは無置換の単環が置換基を有する場合の当該置換基、前記置換もしくは無置換の縮合環が置換基を有する場合の当該置換基、並びにR1201~R1210の少なくとも1つが、前記一般式(121)で表される基であり、
前記一般式(121)で表される基が複数存在する場合、複数の前記一般式(121)で表される基は、互いに同一であるか又は異なり、
L1201は、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar1201は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mx2は、0、1、2、3、4又は5であり、
L1201が2以上存在する場合、2以上のL1201は、互いに同一であるか、又は異なり、
Ar1201が2以上存在する場合、2以上のAr1201は、互いに同一であるか、又は異なり、
前記一般式(121)中の*は、前記一般式(12X)で表される環との結合位置を示す。)
【0284】
前記一般式(12X)において、R1201~R1210のうちの隣接する2つからなる組とは、R1201とR1202との組、R1202とR1203との組、R1203とR1204との組、R1204とR1205との組、R1205とR1206との組、R1207とR1208との組、R1208とR1209との組、並びにR1209とR1210との組である。
【0285】
・一般式(13X)で表される化合物
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の化合物は、下記一般式(13X)で表される化合物であることも好ましい。
【0286】
【0287】
(前記一般式(13X)において、
R1301~R1310は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基、又は
前記一般式(131)で表される基であり、
ただし、R1301~R1310の少なくとも1つは、前記一般式(131)で表される基であり、
前記一般式(131)で表される基が複数存在する場合、複数の前記一般式(131)で表される基は、互いに同一であるか又は異なり、
L1301は、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar1301は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mx3は、0、1、2、3、4又は5であり、
L1301が2以上存在する場合、2以上のL1301は、互いに同一であるか、又は異なり、
Ar1301が2以上存在する場合、2以上のAr1301は、互いに同一であるか、又は異なり、
前記一般式(131)中の*は、前記一般式(13X)中のフルオランテン環との結合位置を示す。)
【0288】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記一般式(131)で表される基ではないR1301~R1310のうち隣接する2つ以上からなる組は、いずれも、互いに結合しない。前記一般式(13X)において隣接する2つからなる組とは、R1301とR1302との組、R1302とR1303との組、R1303とR1304との組、R1304とR1305との組、R1305とR1306との組、R1307とR1308との組、R1308とR1309との組、並びにR1309とR1310との組である。
【0289】
・一般式(14X)で表される化合物
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の化合物は、下記一般式(14X)で表される化合物であることも好ましい。
【0290】
【0291】
(前記一般式(14X)において、
R1401~R1410は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基、又は
前記一般式(141)で表される基であり、
ただし、R1401~R1410の少なくとも1つは、前記一般式(141)で表される基であり、
前記一般式(141)で表される基が複数存在する場合、複数の前記一般式(141)で表される基は、互いに同一であるか又は異なり、
L1401は、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar1401は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mx4は、0、1、2、3、4又は5であり、
L1401が2以上存在する場合、2以上のL1401は、互いに同一であるか、又は異なり、
Ar1401が2以上存在する場合、2以上のAr1401は、互いに同一であるか、又は異なり、
前記一般式(141)中の*は、前記一般式(14X)で表される環との結合位置を示す。)
【0292】
・一般式(15X)で表される化合物
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の化合物は、下記一般式(15X)で表される化合物であることも好ましい。
【0293】
【0294】
(前記一般式(15X)において、
R1501~R1514は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基、又は
前記一般式(151)で表される基であり、
ただし、R1501~R1514の少なくとも1つは、前記一般式(151)で表される基であり、
前記一般式(151)で表される基が複数存在する場合、複数の前記一般式(151)で表される基は、互いに同一であるか又は異なり、
L1501は、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar1501は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mx5は、0、1、2、3、4又は5であり、
L1501が2以上存在する場合、2以上のL1501は、互いに同一であるか、又は異なり、
Ar1501が2以上存在する場合、2以上のAr1501は、互いに同一であるか、又は異なり、
前記一般式(151)中の*は、前記一般式(15X)で表される環との結合位置を示す。)
【0295】
・一般式(16X)で表される化合物
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の化合物は、下記一般式(16X)で表される化合物であることも好ましい。
【0296】
【0297】
(前記一般式(16X)において、
R1601~R1614は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基、又は
前記一般式(161)で表される基であり、
ただし、R1601~R1614の少なくとも1つは、前記一般式(161)で表される基であり、
前記一般式(161)で表される基が複数存在する場合、複数の前記一般式(161)で表される基は、互いに同一であるか又は異なり、
L1601は、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar1601は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mx6は、0、1、2、3、4又は5であり、
L1601が2以上存在する場合、2以上のL1601は、互いに同一であるか、又は異なり、
Ar1601が2以上存在する場合、2以上のAr1601は、互いに同一であるか、又は異なり、
前記一般式(161)中の*は、前記一般式(16X)で表される環との結合位置を示す。)
【0298】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一のホスト材料は、分子中に、単結合で連結されたベンゼン環とナフタレン環とを含む連結構造を有し、当該連結構造中のベンゼン環及びナフタレン環には、それぞれ独立に、さらに単環又は縮合環が縮合しているか又は縮合しておらず、当該連結構造中のベンゼン環とナフタレン環とが、当該単結合以外の少なくとも1つの部分において架橋によりさらに連結していることも好ましい。
第一のホスト材料が、このような架橋を含んだ連結構造を有していることにより、有機EL素子の色度悪化の抑制が期待できる。
この場合の第一のホスト材料は、分子中に、下記式(X1)又は式(X2)で表されるような、単結合で連結されたベンゼン環とナフタレン環とを含む連結構造(ベンゼン-ナフタレン連結構造と称する場合がある。)を最小単位として有していればよく、当該ベンゼン環にさらに単環又は縮合環が縮合していてもよいし、当該ナフタレン環にさらに単環又は縮合環が縮合していてもよい。例えば、第一のホスト材料が、分子中に、下記式(X3)、式(X4)、又は式(X5)で表されるような、単結合で連結されたナフタレン環とナフタレン環とを含む連結構造(ナフタレン-ナフタレン連結構造と称する場合がある。)においても、一方のナフタレン環は、ベンゼン環を含んでいるため、ベンゼン-ナフタレン連結構造を含んでいることになる。
【0299】
【0300】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記架橋が二重結合を含むことも好ましい。すなわち、前記ベンゼン環と前記ナフタレン環とが、単結合以外の部分において二重結合を含む架橋構造によりさらに連結した構造を有することも好ましい。
【0301】
ベンゼン-ナフタレン連結構造中のベンゼン環とナフタレン環とが、単結合以外の少なくとも1つの部分において架橋によりさらに連結すると、例えば、前記式(X1)の場合、下記式(X11)で表される連結構造(縮合環)になり、前記式(X3)の場合、下記式(X31)で表される連結構造(縮合環)になる。
ベンゼン-ナフタレン連結構造中のベンゼン環とナフタレン環とが、単結合以外の部分において二重結合を含む架橋によりさらに連結すると、例えば、前記式(X1)の場合、下記式(X12)で表される連結構造(縮合環)になり、前記式(X2)の場合、下記式(X21)又は式(X22)で表される連結構造(縮合環)になり、前記式(X4)の場合、下記式(X41)で表される連結構造(縮合環)になり、前記式(X5)の場合、下記式(X51)で表される連結構造(縮合環)になる。
ベンゼン-ナフタレン連結構造中のベンゼン環とナフタレン環とが、単結合以外の少なくとも1つの部分においてヘテロ原子(例えば、酸素原子)を含む架橋によりさらに連結すると、例えば、前記式(X1)の場合、下記式(X13)で表される連結構造(縮合環)になる。
【0302】
【0303】
本実施形態に係る有機EL素子において、第一のホスト材料は、分子中に、第一のベンゼン環と第二のベンゼン環とが単結合で連結されたビフェニル構造を有し、当該ビフェニル構造中の第一のベンゼン環と第二のベンゼン環とが、当該単結合以外の少なくとも1つの部分において架橋によりさらに連結していることも好ましい。
【0304】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記ビフェニル構造中の第一のベンゼン環と第二のベンゼン環とが、前記単結合以外の1つの部分において前記架橋によりさらに連結していることも好ましい。第一のホスト材料が、このような架橋を含んだビフェニル構造を有していることにより、有機EL素子の色度悪化の抑制が期待できる。
【0305】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記架橋が二重結合を含むことも好ましい。
本実施形態に係る有機EL素子において、前記架橋が二重結合を含まないことも好ましい。
【0306】
前記ビフェニル構造中の第一のベンゼン環と第二のベンゼン環とが、前記単結合以外の2つの部分において前記架橋によりさらに連結していることも好ましい。
【0307】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記ビフェニル構造中の第一のベンゼン環と第二のベンゼン環とが、前記単結合以外の2つの部分において前記架橋によりさらに連結し、前記架橋が二重結合を含まないことも好ましい。第一のホスト材料が、このような架橋を含んだビフェニル構造を有していることにより、有機EL素子の色度悪化の抑制が期待できる。
【0308】
例えば、下記式(BP1)で表される前記ビフェニル構造中の第一のベンゼン環と第二のベンゼン環とが、単結合以外の少なくとも1つの部分において架橋によりさらに連結すると、当該ビフェニル構造は、下記式(BP11)~(BP15)等の連結構造(縮合環)になる。
【0309】
【0310】
前記式(BP11)は、前記単結合以外の1つの部分において二重結合を含まない架橋によって連結した構造である。
前記式(BP12)は、前記単結合以外の1つの部分において二重結合を含む架橋によって連結した構造である。
前記式(BP13)は、前記単結合以外の2つの部分において二重結合を含まない架橋によって連結した構造である。
前記式(BP14)は、前記単結合以外の2つの部分の一方において二重結合を含まない架橋によって連結し、前記単結合以外の2つの部分の他方において二重結合を含む架橋によって連結した構造である。
前記式(BP15)は、前記単結合以外の2つの部分において二重結合を含む架橋によって連結した構造である。
【0311】
第一の化合物及び第二の化合物において、「置換もしくは無置換」と記載された基は、いずれも「無置換」の基であることが好ましい。
【0312】
(第一の化合物の製造方法)
第一の化合物は、公知の方法により製造できる。また、第一の化合物は、公知の方法に倣い、目的物に合わせた既知の代替反応及び原料を用いることによっても、製造できる。
【0313】
(第一の化合物の具体例)
第一の化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。ただし、本発明は、これら第一の化合物の具体例に限定されない。
【0314】
【0315】
(第二の化合物)
本実施形態に係る有機EL素子において、第二のホスト材料は、縮合芳香環を有する化合物、縮合複素芳香環を有する化合物、または縮合芳香環及び縮合複素芳香環を有する化合物であることが好ましい。縮合芳香環としては、アントラセン骨格、ピレン骨格、フルオランテン骨格、フェナントレン骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、クリセン骨格、トリフェニレン骨格、テトラセン骨格、ベンゾアントラセン骨格、及びベンゾクリセン骨格からなる群から選択される1以上の骨格を有する化合物が好ましい。縮合複素芳香環としては、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、キサンテン骨格、及びベンゾキサンテン骨格からなる群から選択される1以上の骨格を有する化合物が好ましい。
特に第二のホスト材料は、第一のホスト材料よりもTTFを効率よく起こす化合物が好ましく、アントラセン骨格を有する化合物が好ましく、下記一般式(2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0316】
【0317】
(前記一般式(2)において、
R201~R208は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
L201及びL202は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar201及びAr202は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。)
【0318】
(本実施形態に係る第二の化合物中、R901、R902、R903、R904、R905、R906、R907、R801及びR802は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
R901が複数存在する場合、複数のR901は、互いに同一であるか又は異なり、
R902が複数存在する場合、複数のR902は、互いに同一であるか又は異なり、
R903が複数存在する場合、複数のR903は、互いに同一であるか又は異なり、
R904が複数存在する場合、複数のR904は、互いに同一であるか又は異なり、
R905が複数存在する場合、複数のR905は、互いに同一であるか又は異なり、
R906が複数存在する場合、複数のR906は、互いに同一であるか又は異なり、
R907が複数存在する場合、複数のR907は、互いに同一であるか又は異なり、
R801が複数存在する場合、複数のR801は、互いに同一であるか又は異なり、
R802が複数存在する場合、複数のR802は、互いに同一であるか又は異なる。)
【0319】
本実施形態に係る有機EL素子において、
R201~R208は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
置換もしくは無置換の炭素数7~50のアラルキル基、
-C(=O)R801で表される基、
-COOR802で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、又は
ニトロ基であり、
L201及びL202は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
Ar201及びAr202は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であることが好ましい。
【0320】
本実施形態に係る有機EL素子において、
L201及びL202は、それぞれ独立に、
単結合、又は
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基であり、
Ar201及びAr202は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であることが好ましい。
【0321】
本実施形態に係る有機EL素子において、
Ar201及びAr202は、それぞれ独立に、
フェニル基、
ナフチル基、
フェナントリル基、
ビフェニル基、
ターフェニル基、
ジフェニルフルオレニル基、
ジメチルフルオレニル基、
ベンゾジフェニルフルオレニル基、
ベンゾジメチルフルオレニル基、
ジベンゾフラニル基、
ジベンゾチエニル基、
ナフトベンゾフラニル基、又は
ナフトベンゾチエニル基であることが好ましい。
【0322】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記一般式(2)で表される第二の化合物は、下記一般式(201)、一般式(202)、一般式(203)、一般式(204)、一般式(205)、一般式(206)、一般式(207)、一般式(208)又は一般式(209)で表される化合物であることが好ましい。
【0323】
【0324】
【0325】
【0326】
【0327】
【0328】
【0329】
【0330】
【0331】
【0332】
(前記一般式(201)~(209)中、
L201及びAr201は、前記一般式(2)におけるL201及びAr201と同義であり、
R201~R208は、それぞれ独立に、前記一般式(2)におけるR201~R208と同義である。)
【0333】
前記一般式(201)~(209)中、R202及びR203は、それぞれ独立に、-L203-Ar203であることが好ましく、R202及びR203の一方が、-L203-Ar203であることがより好ましい。
このとき、L203は、前記一般式(2)におけるL201と同義であり、Ar203は、前記一般式(2)におけるAr201と同義でる。
L203とL201とは、互いに同一であるか、又は異なり、Ar203とAr201とは、互いに同一であるか、又は異なる。
R202及びR203が、-L203-Ar203である場合、2つのL203は、互いに同一であるか、又は異なり、2つのAr203は、互いに同一であるか、又は異なる。
【0334】
本実施形態に係る有機EL素子において、第二のホスト材料が前記一般式(2)で表される第二の化合物である場合、前記一般式(2)で表される第二の化合物中、アントラセン骨格の置換基であるR201~R208は、分子間の相互作用が抑制されることを防ぎ、電子移動度の低下を抑制する点から、水素原子であることが好ましいが、R201~R208は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基でもよい。
R201~R208がアルキル基及びシクロアルキル基等のかさ高い置換基となった場合、分子間の相互作用が抑制され、第一のホスト材料に対し電子移動度が低下し、前記数式(数4)に記載のμe(H2)>μe(H1)の関係を満たさなくなるおそれがある。第二の化合物を第二のホスト材料として第二の発光層に用いた場合には、μe(H2)>μe(H1)の関係を満たす事で第一の発光層でのホールと電子との再結合能の低下、及び発光効率の低下を抑制することが期待できる。なお、置換基としては、ハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、-O-(R904)で表される基、-S-(R905)で表される基、-N(R906)(R907)で表される基、アラルキル基、-C(=O)R801で表される基、-COOR802で表される基、ハロゲン原子、シアノ基、及びニトロ基がかさ高くなるおそれがあり、アルキル基、及びシクロアルキル基がさらにかさ高くなるおそれがある。
前記一般式(2)で表される第二の化合物中、アントラセン骨格の置換基であるR201~R208は、かさ高い置換基ではないことが好ましく、アルキル基及びシクロアルキル基ではないことが好ましく、アルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、-O-(R904)で表される基、-S-(R905)で表される基、-N(R906)(R907)で表される基、アラルキル基、-C(=O)R801で表される基、-COOR802で表される基、ハロゲン原子、シアノ基、及びニトロ基ではないことがより好ましい。
【0335】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記一般式(2)で表される第二の化合物中、R201~R208は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、又は-Si(R901)(R902)(R903)で表される基であることも好ましい。
【0336】
本実施形態に係る有機EL素子において、前記一般式(2)で表される第二の化合物中、R201~R208は、水素原子であることが好ましい。
【0337】
第二の化合物中、R201~R208における「置換もしくは無置換の」という場合における置換基は、前述のかさ高くなるおそれのある置換基、特に置換もしくは無置換のアルキル基、及び置換もしくは無置換のシクロアルキル基を含まないことも好ましい。R201~R208における「置換もしくは無置換の」という場合における置換基が、置換もしくは無置換のアルキル基、及び置換もしくは無置換のシクロアルキル基を含まないことにより、アルキル基及びシクロアルキル基等のかさ高い置換基が存在する事による分子間の相互作用が抑制されるのを防ぎ、電子移動度の低下を防ぐことができ、また、このような第二の化合物を第二のホスト材料として第二の発光層に用いた場合には、第一の発光層でのホールと電子との再結合能の低下、及び発光効率の低下を抑制できる。
【0338】
アントラセン骨格の置換基であるR201~R208がかさ高い置換基ではなく、置換基としてのR201~R208は、無置換であることがさらに好ましい。また、アントラセン骨格の置換基であるR201~R208がかさ高い置換基ではない場合において、かさ高くない置換基としてのR201~R208に置換基が結合する場合、当該置換基もかさ高い置換基ではないことが好ましく、置換基としてのR201~R208に結合する当該置換基は、アルキル基及びシクロアルキル基ではないことが好ましく、アルキル基、シクロアルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、-O-(R904)で表される基、-S-(R905)で表される基、-N(R906)(R907)で表される基、アラルキル基、-C(=O)R801で表される基、-COOR802で表される基、ハロゲン原子、シアノ基、及びニトロ基ではないことがより好ましい。
【0339】
第二の化合物において、「置換もしくは無置換」と記載された基は、いずれも「無置換」の基であることが好ましい。
【0340】
(第二の化合物の製造方法)
第二の化合物は、公知の方法により製造できる。また、第二の化合物は、公知の方法に倣い、目的物に合わせた既知の代替反応及び原料を用いることによっても、製造できる。
【0341】
(第二の化合物の具体例)
第二の化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。ただし、本発明は、これら第二の化合物の具体例に限定されない。
【0342】
【0343】
(第一の発光性化合物、第二の発光性化合物及び第三の発光性化合物)
本実施形態に係る有機EL素子において、第一の発光性化合物、第二の発光性化合物及び第三の発光性化合物は、それぞれ独立に、縮合芳香環を有する化合物、複素環を有する化合物、または縮合芳香環及び縮合複素芳香環を有する化合物であることが好ましい。また、複素環にはホウ素原子を有することが好ましい。複素環は複素芳香環であることが好ましい。第一の発光性化合物、第二の発光性化合物及び第三の発光性化合物は、それぞれ独立に、ピレン誘導体、スチリルアミン誘導体、クリセン誘導体、フルオランテン誘導体、フルオレン誘導体、ジアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、またはホウ素原子を有する複素芳香環であることが好ましい。
第一の発光性化合物、第二の発光性化合物及び第三の発光性化合物としては、例えば、下記第三の化合物、及び下記第四の化合物等が挙げられる。
第三の化合物及び第四の化合物は、それぞれ独立に、下記一般式(3)で表される化合物、下記一般式(4)で表される化合物、下記一般式(6)で表される化合物、下記一般式(7)で表される化合物、下記一般式(8)で表される化合物、下記一般式(9)で表される化合物、及び下記一般式(10)で表される化合物からなる群から選択される1以上の化合物である。
【0344】
(一般式(3)で表される化合物)
一般式(3)で表される化合物について説明する。
【0345】
【0346】
(前記一般式(3)において、
R301~R310のうちの隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、
互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、
互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は
互いに結合せず、
R301~R310の少なくとも1つは下記一般式(31)で表される1価の基であり、
前記単環を形成せず、前記縮合環を形成せず、かつ下記一般式(31)で表される1価の基ではないR301~R310は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。)
【0347】
【0348】
(前記一般式(31)において、
Ar301及びAr302は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
L301~L303は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~30の2価の複素環基であり、
*は、前記一般式(3)中のピレン環における結合位置を示す。)
【0349】
第三の化合物及び第四の化合物中、R901、R902、R903、R904、R905、R906及びR907は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、又は
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であり、
R901が複数存在する場合、複数のR901は、互いに同一であるか又は異なり、
R902が複数存在する場合、複数のR902は、互いに同一であるか又は異なり、
R903が複数存在する場合、複数のR903は、互いに同一であるか又は異なり、
R904が複数存在する場合、複数のR904は、互いに同一であるか又は異なり、
R905が複数存在する場合、複数のR905は、互いに同一であるか又は異なり、
R906が複数存在する場合、複数のR906は、互いに同一であるか又は異なり、
R907が複数存在する場合、複数のR907は、互いに同一であるか又は異なる。
【0350】
前記一般式(3)において、R301~R310のうち2つが前記一般式(31)で表される基であることが好ましい。
【0351】
一実施形態において、前記一般式(3)で表される化合物は、下記一般式(33)で表される化合物である。
【0352】
【0353】
(前記一般式(33)において、
R311~R318は、それぞれ独立に、前記一般式(3)における、前記一般式(31)で表される1価の基ではないR301~R310と同義であり、
L311~L316は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~30の2価の複素環基であり、
Ar312、Ar313、Ar315及びAr316は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。)
【0354】
前記一般式(31)において、L301は、単結合であることが好ましく、L302及びL303は単結合であることが好ましい。
前記一般式(33)において、L311及びL314は、単結合であることが好ましく、L312、L313、L315及びL316は、単結合であることが好ましい。
【0355】
前記一般式(31)において、好ましくは、Ar301及びAr302のうち少なくとも1つが下記一般式(36)で表される基である。
前記一般式(33)において、好ましくは、Ar312及びAr313のうち少なくとも1つが下記一般式(36)で表される基である。
前記一般式(33)おいて、好ましくは、Ar315及びAr316のうち少なくとも1つが下記一般式(36)で表される基である。
【0356】
【0357】
(前記一般式(36)において、
X3は、酸素原子又は硫黄原子を示し、
R321~R327のうち隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、
互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、
互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は
互いに結合せず、
前記単環を形成せず、かつ前記縮合環を形成しないR321~R327は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
*は、L302、L303、L312、L313、L315又はL316との結合位置を示す。)
【0358】
X3は、酸素原子であることが好ましい。
【0359】
R321~R327のうち少なくとも1つは、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であることが好ましい。
【0360】
前記一般式(31)において、Ar301が前記一般式(36)で表される基であり、Ar302が置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であることが好ましい。
前記一般式(33)において、Ar312が前記一般式(36)で表される基であり、Ar313が置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であることが好ましい。
前記一般式(33)において、Ar315が前記一般式(36)で表される基であり、Ar316が置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基であることが好ましい。
【0361】
(一般式(4)で表される化合物)
一般式(4)で表される化合物について説明する。
【0362】
【0363】
(前記一般式(4)において、
Zは、それぞれ独立に、CRa又は窒素原子であり、
A1環及びA2環は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50の芳香族炭化水素環、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環であり、
Raが複数存在する場合、複数のRaのうちの隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、
互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、
互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は
互いに結合せず、
n21及びn22は、それぞれ独立に、0、1、2、3又は4であり、
Rbが複数存在する場合、複数のRbのうちの隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、
互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、
互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は
互いに結合せず、
Rcが複数存在する場合、複数のRcのうちの隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、
互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、
互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は
互いに結合せず、
前記単環を形成せず、かつ前記縮合環を形成しないRa、Rb及びRcは、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。)
【0364】
A1環及びA2環の「芳香族炭化水素環」は、上述した「アリール基」に水素原子を導入した化合物と同じ構造である。
A1環及びA2環の「芳香族炭化水素環」は、前記一般式(4)中央の縮合2環構造上の炭素原子2つを環形成原子として含む。
「置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50の芳香族炭化水素環」の具体例としては、具体例群G1に記載の「アリール基」に水素原子を導入した化合物等が挙げられる。
【0365】
A1環及びA2環の「複素環」は、上述した「複素環基」に水素原子を導入した化合物と同じ構造である。
A1環及びA2環の「複素環」は、前記一般式(4)中央の縮合2環構造上の炭素原子2つを環形成原子として含む。
「置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環」の具体例としては、具体例群G2に記載の「複素環基」に水素原子を導入した化合物等が挙げられる。
【0366】
Rbは、A1環としての芳香族炭化水素環を形成する炭素原子のいずれか、又は、A1環としての複素環を形成する原子のいずれかに結合する。
【0367】
Rcは、A2環としての芳香族炭化水素環を形成する炭素原子のいずれか、又は、A2環としての複素環を形成する原子のいずれかに結合する。
【0368】
Ra、Rb及びRcのうち、少なくとも1つが、下記一般式(4a)で表される基であることが好ましく、少なくとも2つが、下記一般式(4a)で表される基であることがより好ましい。
【0369】
【0370】
(前記一般式(4a)において、
L401は、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~30の2価の複素環基であり、
Ar401は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基、又は
下記一般式(4b)で表される基である。)
【0371】
【0372】
(前記一般式(4b)において、
L402及びL403は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~30の2価の複素環基であり、
Ar402及びAr403からなる組は、
互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、
互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は
互いに結合せず、
前記単環を形成せず、かつ前記縮合環を形成しないAr402及びAr403は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。)
【0373】
一実施形態において、前記一般式(4)で表される化合物は下記一般式(42)で表される。
【0374】
【0375】
(前記一般式(42)において、
R401~R411のうちの隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、
互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、
互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は
互いに結合せず、
前記単環を形成せず、かつ前記縮合環を形成しないR401~R411は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。)
【0376】
R401~R411のうち、少なくとも1つが、前記一般式(4a)で表される基であることが好ましく、少なくとも2つ前記一般式(4a)で表される基であることがより好ましい。
R404及びR411が前記一般式(4a)で表される基であることが好ましい。
【0377】
一実施形態において、前記一般式(4)で表される化合物は、A1環に下記一般式(4-1)又は一般式(4-2)で表される構造が結合した化合物である。
また、一実施形態において、前記一般式(42)で表される化合物は、R404~R407が結合する環に下記一般式(4-1)又は一般式(4-2)で表される構造が結合した化合物である。
【0378】
【0379】
(前記一般式(4-1)において、2つの*は、それぞれ独立に、前記一般式(4)のA1環としての芳香族炭化水素環の環形成炭素原子もしくは複素環の環形成原子と結合するか、又は前記一般式(42)のR404~R407のいずれかと結合し、
前記一般式(4-2)の3つの*は、それぞれ独立に、前記一般式(4)のA1環としての芳香族炭化水素環の環形成炭素原子もしくは複素環の環形成原子と結合するか、又は前記一般式(42)のR404~R407のいずれかと結合し、
R421~R427のうちの隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、
互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、
互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は
互いに結合せず、
R431~R438のうちの隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、
互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、
互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は
互いに結合せず、
前記単環を形成せず、かつ前記縮合環を形成しないR421~R427並びにR431~R438は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。)
【0380】
一実施形態においては、前記一般式(4)で表される化合物は、下記一般式(41-3)、一般式(41-4)又は一般式(41-5)で表される化合物である。
【0381】
【0382】
【0383】
【0384】
(前記一般式(41-3)、式(41-4)及び式(41-5)中、
A1環は、前記一般式(4)で定義した通りであり、
R421~R427は、それぞれ独立に、前記一般式(4-1)におけるR421~R427と同義であり、
R440~R448は、それぞれ独立に、前記一般式(42)におけるR401~R411と同義である。)
【0385】
一実施形態においては、前記一般式(41-5)のA1環としての置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50の芳香族炭化水素環は、
置換もしくは無置換のナフタレン環、又は
置換もしくは無置換のフルオレン環である。
【0386】
一実施形態においては、前記一般式(41-5)のA1環としての置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環は、
置換もしくは無置換のジベンゾフラン環、
置換もしくは無置換のカルバゾール環、又は
置換もしくは無置換のジベンゾチオフェン環である。
【0387】
(一般式(6)で表される化合物)
一般式(6)で表される化合物について説明する。
【0388】
【0389】
(前記一般式(6)において、
a環、b環及びc環は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50の芳香族炭化水素環、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環であり、
R601及びR602は、それぞれ独立に、前記a環、b環又はc環と結合して、置換もしくは無置換の複素環を形成するか、あるいは置換もしくは無置換の複素環を形成せず、
前記置換もしくは無置換の複素環を形成しないR601及びR602は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。)
【0390】
a環、b環及びc環は、ホウ素原子及び2つの窒素原子から構成される前記一般式(6)中央の縮合2環構造に縮合する環(置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50の芳香族炭化水素環、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環)である。
【0391】
a環、b環及びc環の「芳香族炭化水素環」は、上述した「アリール基」に水素原子を導入した化合物と同じ構造である。
a環の「芳香族炭化水素環」は、前記一般式(6)中央の縮合2環構造上の炭素原子3つを環形成原子として含む。
b環及びc環の「芳香族炭化水素環」は、前記一般式(6)中央の縮合2環構造上の炭素原子2つを環形成原子として含む。
【0392】
「置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50の芳香族炭化水素環」の具体例としては、具体例群G1に記載の「アリール基」に水素原子を導入した化合物等が挙げられる。
a環、b環及びc環の「複素環」は、上述した「複素環基」に水素原子を導入した化合物と同じ構造である。
a環の「複素環」は、前記一般式(6)中央の縮合2環構造上の炭素原子3つを環形成原子として含む。b環及びc環の「複素環」は、前記一般式(6)中央の縮合2環構造上の炭素原子2つを環形成原子として含む。「置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環」の具体例としては、具体例群G2に記載の「複素環基」に水素原子を導入した化合物等が挙げられる。
【0393】
R601及びR602は、それぞれ独立に、a環、b環又はc環と結合して、置換もしくは無置換の複素環を形成してもよい。この場合における複素環は、前記一般式(6)中央の縮合2環構造上の窒素原子を含む。この場合における複素環は、窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。R601及びR602がa環、b環又はc環と結合するとは、具体的には、a環、b環又はc環を構成する原子とR601及びR602を構成する原子が結合することを意味する。例えば、R601がa環と結合して、R601を含む環とa環が縮合した2環縮合(又は3環縮合以上)の含窒素複素環を形成してもよい。当該含窒素複素環の具体例としては、具体例群G2のうち、窒素を含む2環縮合以上の複素環基に対応する化合物等が挙げられる。
R601がb環と結合する場合、R602がa環と結合する場合、及びR602がc環と結合する場合も上記と同じである。
【0394】
一実施形態において、前記一般式(6)におけるa環、b環及びc環は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50の芳香族炭化水素環である。
一実施形態において、前記一般式(6)におけるa環、b環及びc環は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のベンゼン環又はナフタレン環である。
【0395】
一実施形態において、前記一般式(6)におけるR601及びR602は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
好ましくは置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基である。
【0396】
一実施形態において、前記一般式(6)で表される化合物は下記一般式(62)で表される化合物である。
【0397】
【0398】
(前記一般式(62)において、
R601Aは、R611及びR621からなる群から選択される1以上と結合して、置換もしくは無置換の複素環を形成するか、あるいは置換もしくは無置換の複素環を形成せず、
R602Aは、R613及びR614からなる群から選択される1以上と結合して、置換もしくは無置換の複素環を形成するか、あるいは置換もしくは無置換の複素環を形成せず、
前記置換もしくは無置換の複素環を形成しないR601A及びR602Aは、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
R611~R621のうちの隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、
互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、
互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は
互いに結合せず、
前記置換もしくは無置換の複素環を形成せず、前記単環を形成せず、かつ前記縮合環を形成しないR611~R621は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。)
【0399】
前記一般式(62)のR601A及びR602Aは、それぞれ、前記一般式(6)のR601及びR602に対応する基である。
例えば、R601AとR611が結合して、これらを含む環とa環に対応するベンゼン環が縮合した2環縮合(又は3環縮合以上)の含窒素複素環を形成してもよい。当該含窒素複素環の具体例としては、具体例群G2のうち、窒素を含む2環縮合以上の複素環基に対応する化合物等が挙げられる。R601AとR621が結合する場合、R602AとR613が結合する場合、及びR602AとR614が結合する場合も上記と同じである。
【0400】
R611~R621のうちの隣接する2つ以上からなる組の1組以上が、
互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、又は
互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成してもよい。
例えば、R611とR612が結合して、これらが結合する6員環に対して、ベンゼン環、インドール環、ピロール環、ベンゾフラン環又はベンゾチオフェン環等が縮合した構造を形成してもよく、形成された縮合環は、ナフタレン環、カルバゾール環、インドール環、ジベンゾフラン環又はジベンゾチオフェン環となる。
【0401】
一実施形態において、環形成に寄与しないR611~R621は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。
【0402】
一実施形態において、環形成に寄与しないR611~R621は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。
【0403】
一実施形態において、環形成に寄与しないR611~R621は、それぞれ独立に、
水素原子、又は
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基である。
【0404】
一実施形態において、環形成に寄与しないR611~R621は、それぞれ独立に、
水素原子、又は
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基であり、
R611~R621のうち少なくとも1つは、置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基である。
【0405】
(一般式(7)で表される化合物)
一般式(7)で表される化合物について説明する。
【0406】
【0407】
【0408】
(前記一般式(7)において、
r環は、隣接環の任意の位置で縮合する前記一般式(72)又は一般式(73)で表される環であり、
q環及びs環は、それぞれ独立に、隣接環の任意の位置で縮合する前記一般式(74)で表される環であり、
p環及びt環は、それぞれ独立に、隣接環の任意の位置で縮合する前記一般式(75)又は一般式(76)で表される構造であり、
X7は、酸素原子、硫黄原子、又はNR702である。
R701が複数存在する場合、隣接する複数のR701は、
互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、
互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は
互いに結合せず、
前記単環を形成せず、かつ前記縮合環を形成しないR701及びR702は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
Ar701及びAr702は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
L701は、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキレン基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニレン基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニレン基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキレン基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリーレン基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の2価の複素環基であり、
m1は、0、1又は2であり、
m2は、0、1、2、3又は4であり、
m3は、それぞれ独立に、0、1、2又は3であり、
m4は、それぞれ独立に、0、1、2、3、4又は5であり、
R701が複数存在する場合、複数のR701は、互いに同一であるか、又は異なり、
X7が複数存在する場合、複数のX7は、互いに同一であるか、又は異なり、
R702が複数存在する場合、複数のR702は、互いに同一であるか、又は異なり、
Ar701が複数存在する場合、複数のAr701は、互いに同一であるか、又は異なり、
Ar702が複数存在する場合、複数のAr702は、互いに同一であるか、又は異なり、
L701が複数存在する場合、複数のL701は、互いに同一であるか、又は異なる。)
【0409】
前記一般式(7)において、p環、q環、r環、s環及びt環の各環は、隣接環と炭素原子2つを共有して縮合する。縮合する位置及び向きは限定されず、任意の位置及び向きで縮合可能である。
【0410】
一実施形態において、r環としての前記一般式(72)又は一般式(73)において、m1=0又はm2=0である。
【0411】
(一般式(8)で表される化合物)
一般式(8)で表される化合物について説明する。
【0412】
【0413】
(前記一般式(8)において、
R801とR802、R802とR803、及びR803とR804の少なくとも一組は、互いに結合して下記一般式(82)で示される2価の基を形成し、
R805とR806、R806とR807、及びR807とR808の少なくとも一組は、互いに結合して下記一般式(83)で示される2価の基を形成する。)
【0414】
【0415】
(前記一般式(82)で示される2価の基を形成しないR801~R804、及びR811~R814の少なくとも1つは下記一般式(84)で表される1価の基であり、
前記一般式(83)で示される2価の基を形成しないR805~R808、及びR821~R824の少なくとも1つは下記一般式(84)で表される1価の基であり、
X8は、酸素原子、硫黄原子、又はNR809であり、
前記一般式(82)及び一般式(83)で表される2価の基を形成せず、かつ、前記一般式(84)で表される1価の基ではないR801~R808、前記一般式(84)で表される1価の基ではないR811~R814及びR821~R824、並びにR809は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。)
【0416】
【0417】
(前記一般式(84)において、
Ar801及びAr802は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
L801~L803は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリーレン基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~30の2価の複素環基、又は
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリーレン基及び置換もしくは無置換の環形成原子数5~30の2価の複素環基からなる群から選択される2~4個の基が結合して形成される2価の連結基であり、
前記一般式(84)中の*は、前記一般式(8)で表される環構造、一般式(82)又は一般式(83)で表される基との結合位置を示す。)
【0418】
前記一般式(8)において、前記一般式(82)で示される2価の基及び一般式(83)で示される2価の基が形成される位置は特に限定されず、R801~R808の可能な位置において当該基を形成し得る。
【0419】
(一般式(9)で表される化合物)
一般式(9)で表される化合物について説明する。
【0420】
【0421】
(前記一般式(9)において、
A91環及びA92環は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50の芳香族炭化水素環、又は、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環であり、
A91環及びA92環からなる群から選択される1以上の環は、
下記一般式(92)で表される構造の*と結合する。)
【0422】
【0423】
(前記一般式(92)において、
A93環は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50の芳香族炭化水素環、又は、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環であり、
X9は、NR93、C(R94)(R95)、Si(R96)(R97)、Ge(R98)(R99)、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子であり、
R91及びR92は、
互いに結合して、置換もしくは無置換の単環を形成するか、
互いに結合して、置換もしくは無置換の縮合環を形成するか、又は
互いに結合せず、
前記単環を形成せず、かつ前記縮合環を形成しないR91及びR92、並びにR93~R99は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基である。)
【0424】
A91環及びA92環からなる群から選択される1以上の環は、前記一般式(92)で表される構造の*と結合する。即ち、一実施形態において、A91環の前記芳香族炭化水素環の環形成炭素原子、又は前記複素環の環形成原子は、前記一般式(92)で表される構造の*と結合する。また、一実施形態において、A92環の前記芳香族炭化水素環の環形成炭素原子、又は前記複素環の環形成原子は、前記一般式(92)で表される構造の*と結合する。
【0425】
一実施形態において、A91環及びA92環のいずれか又は両方に下記一般式(93)で表される基が結合する。
【0426】
【0427】
(前記一般式(93)において、
Ar91及びAr92は、それぞれ独立に、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
L91~L93は、それぞれ独立に、
単結合、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリーレン基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5~30の2価の複素環基、又は
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~30のアリーレン基及び置換もしくは無置換の環形成原子数5~30の2価の複素環基からなる群から選択される2~4個結合して形成される2価の連結基であり、
前記一般式(93)中の*は、A91環及びA92環のいずれかとの結合位置を示す。)
【0428】
一実施形態において、A91環に加えて、A92環の前記芳香族炭化水素環の環形成炭素原子、又は前記複素環の環形成原子は、前記一般式(92)で表される構造の*と結合する。この場合、前記一般式(92)で表される構造は、互いに同一でもよいし異なってもよい。
【0429】
一実施形態において、R91及びR92は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基である。
一実施形態において、R91及びR92は、互いに結合してフルオレン構造を形成する。
【0430】
一実施形態において、環A91及び環A92は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50の芳香族炭化水素環であり、例えば、置換もしくは無置換のベンゼン環である。
【0431】
一実施形態において、環A93は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50の芳香族炭化水素環であり、例えば、置換もしくは無置換のベンゼン環である。
一実施形態において、X9は、酸素原子又は硫黄原子である。
【0432】
(一般式(10)で表される化合物)
一般式(10)で表される化合物について説明する。
【0433】
【0434】
【0435】
(前記一般式(10)において、
Ax1環は、隣接環の任意の位置で縮合する前記一般式(10a)で表される環であり、
Ax2環は、隣接環の任意の位置で縮合する前記一般式(10b)で表される環であり、
前記一般式(10b)中の2つの*は、Ax3環の任意の位置と結合し、
XA及びXBは、それぞれ独立に、C(R1003)(R1004)、Si(R1005)(R1006)、酸素原子又は硫黄原子であり、
Ax3環は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50の芳香族炭化水素環、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環であり、
Ar1001は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
R1001~R1006は、それぞれ独立に、
水素原子、
置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルケニル基、
置換もしくは無置換の炭素数2~50のアルキニル基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数3~50のシクロアルキル基、
-Si(R901)(R902)(R903)で表される基、
-O-(R904)で表される基、
-S-(R905)で表される基、
-N(R906)(R907)で表される基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基、又は
置換もしくは無置換の環形成原子数5~50の複素環基であり、
mx1は、3であり、mx2は、2であり、
複数のR1001は、互いに同一であるか、又は異なり、
複数のR1002は、互いに同一であるか、又は異なり、
axは、0、1又は2であり、
axが0又は1の場合、「3-ax」で示されるカッコ内の構造は、互いに同一であるか、又は異なり、
axが2の場合、複数のAr1001は、互いに同一であるか、又は異なる。)
【0436】
一実施形態において、Ar1001は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50のアリール基である。
【0437】
一実施形態において、Ax3環は、置換もしくは無置換の環形成炭素数6~50の芳香族炭化水素環であり、例えば、置換もしくは無置換のベンゼン環、置換もしくは無置換のナフタレン環、又は置換もしくは無置換のアントラセン環である。
【0438】
一実施形態において、R1003及びR1004は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数1~50のアルキル基である。
【0439】
一実施形態において、axは1である。
【0440】
〔第二実施形態〕
(有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法)
第二実施形態に係る有機EL素子の製造方法(以下、第二実施形態の製造方法とも称する)は、陽極と、陰極と、前記陽極及び前記陰極の間に配置された第一の発光層及び第二の発光層と、を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法である。
第二実施形態に係る有機EL素子の製造方法は、第一のホスト材料と、第一の発光性化合物とを含む前記第一の発光層を形成する工程と、第二のホスト材料と、第二の発光性化合物とを含む前記第二の発光層を形成する工程と、を有する。
第一のホスト材料と第二のホスト材料とは互いに異なる。
第一の発光性化合物と第二の発光性化合物とが、互いに同一であるか、又は異なる。
第一の発光層を形成する工程及び第二の発光層を形成する工程で用いる第一のホスト材料及び第二のホスト材料は、下記数式(数1)及び数式(数6)を満たす材料から選択される。
T1(H1)>T1(H2) …(数1)
D1≧3.0×10-9(cm2/s)…(数6)
(前記数式(数1)及び数式(数6)において、
T1(H1)は、前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)であり、
T1(H2)は、前記第二のホスト材料の三重項エネルギーT1(H2)であり、
D1は、拡散方程式から算出された前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)の拡散係数である。)
【0441】
第二実施形態の製造方法において、前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)の拡散係数D1は、前記第一のホスト材料に第一の燐光錯体を添加した第一の解析層と、前記第一のホスト材料に第二の燐光錯体を添加した第二の解析層とが積層された拡散速度解析層を用いて、励起光が前記第一の解析層の側から入射し、透過光が前記第二の解析層から透過するようにして測定された前記透過光の過渡PLスペクトルに基づき算出され、前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)と前記第一の燐光錯体の三重項エネルギーT1(C1)とが、下記数式(数X)の関係を満たし、前記第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)と前記第二の燐光錯体の三重項エネルギーT1(C2)とが、下記数式(数Y)の関係を満たす。
T1(C1)>T1(H1) …(数X)
T1(H1)>T1(C2) …(数Y)
【0442】
第二実施形態の製造方法において、前記第一の発光性化合物の最大ピーク波長は、500nm以下であることが好ましい。
前記第一の発光性化合物は、最大ピーク波長が500nm以下の蛍光発光を示す蛍光発光性化合物であることがより好ましい。
第二実施形態の製造方法において、前記第二の発光性化合物の最大ピーク波長は、500nm以下であることが好ましい。
前記第二の発光性化合物は、最大ピーク波長が500nm以下の蛍光発光を示す蛍光発光性化合物であることがより好ましい。
【0443】
第二実施形態の製造方法は、
三重項エネルギーT1(H1)の拡散係数D1が3.0×10-9(cm2/s)以上である第一のホスト材料と、第一の発光性化合物とを含む第一の発光層を形成する工程と、
数式(数1)を満たす第二のホスト材料と、第二の発光性化合物とを含む第二の発光層を形成する工程とを有する。
第二実施形態の製造方法により、例えば、第一実施形態で説明した有機EL素子が製造される。よって、第二実施形態の製造方法によれば、発光効率が向上した有機EL素子が製造される。
【0444】
第二実施形態の製造方法で用いることができる第一のホスト材料、第一の発光性化合物、第二のホスト材料、及び第二の発光性化合物は、第一実施形態で説明した第一のホスト材料、第一の発光性化合物、第二のホスト材料、及び第二の発光性化合物と同様であり、好ましい範囲も同様である。
第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)の拡散係数D1は、第一実施形態で説明した方法と同様の方法で算出される。当該拡散係数D1の好ましい範囲も第一実施形態と同様である。
第一の解析層に含まれる第一の燐光錯体、及び第二の解析層に含まれる第二の燐光錯体は、第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)に応じて選択されることが好ましい。
例えば、T1(H1)≧2.0eVである場合、第一の燐光錯体はIr(ppy)3であり、第二の燐光錯体はIr(piq)2(acac)であることが好ましい。
また、2.0eV>T1(H1)≧1.9eVである場合、第一の燐光錯体としてはIr(ppy)3を用いることができ、第二の燐光錯体としてはPtOEPを用いることができる。
【0445】
(第一の発光層を形成する工程及び第二の発光層を形成する工程)
第一の発光層及び第二の発光層の形成方法としては、第一実施形態の「層形成方法」の項で説明した方法が挙げられる。
第一の発光層を形成する工程は、第一のホスト材料と、最大ピーク波長が500nm以下の発光を示す第一の発光性化合物とを共蒸着することにより、第一の発光層を形成する工程であることが好ましい。
第二の発光層を形成する工程は、第二のホスト材料と、最大ピーク波長が500nm以下の発光を示す第二の発光性化合物とを共蒸着することにより、第二の発光層を形成する工程であることが好ましい。
【0446】
第二実施形態の製造方法は、陽極及び陰極の間に第一の発光層を形成する工程と、第一の発光層及び陰極の間に第二の発光層を形成する工程と、を有する製造方法であってもよいし、陽極及び陰極の間に第二の発光層を形成する工程と、第二の発光層及び陰極の間に第一の発光層を形成する工程と、を有する製造方法であってもよい。
また、第二実施形態の製造方法は、さらに1以上の有機層を形成する工程を有していてもよいし、第一実施形態で説明した第三の発光層を形成する工程を有していてもよい。
有機層としては、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層、電子輸送層、正孔障壁層及び電子障壁層からなる群から選択される少なくともいずれかの層が挙げられる。
各層の形成方法としては、第一実施形態の「層形成方法」の項で説明した方法が挙げられる。第二実施形態の製造方法は、上記で説明した以外においても、第一実施形態で説明した構成を用いることができる。
【0447】
〔第三実施形態〕
(電子機器)
第三実施形態に係る電子機器は、上述の実施形態のいずれかの有機EL素子を搭載している。電子機器としては、例えば、表示装置及び発光装置等が挙げられる。表示装置としては、例えば、表示部品(例えば、有機ELパネルモジュール等)、テレビ、携帯電話、タブレット、及びパーソナルコンピュータ等が挙げられる。発光装置としては、例えば、照明及び車両用灯具等が挙げられる。
【0448】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変更、改良等は、本発明に含まれる。
【0449】
例えば、発光層は、2層に限られず、2を超える複数の発光層が積層されていてもよい。有機EL素子が2を超える複数の発光層を有する場合、少なくとも2つの発光層が上記実施形態で説明した条件を満たしていればよい。例えば、その他の発光層が、蛍光発光型の発光層であっても、三重項励起状態から直接基底状態への電子遷移による発光を利用した燐光発光型の発光層であってもよい。
また、有機EL素子が複数の発光層を有する場合、これらの発光層が互いに隣接して設けられていてもよいし、中間層を介して複数の発光ユニットが積層された、いわゆるタンデム型の有機EL素子であってもよい。
【0450】
また、例えば、発光層の陰極側に障壁層を隣接させて設けてもよい。発光層の陰極側で直接接して配置された障壁層は、正孔、及び励起子の少なくともいずれかを阻止することが好ましい。
例えば、発光層の陰極側で接して障壁層が配置された場合、当該障壁層は、電子を輸送し、かつ正孔が当該障壁層よりも陰極側の層(例えば、電子輸送層)に到達することを阻止する。有機EL素子が、電子輸送層を含む場合は、発光層と電子輸送層との間に当該障壁層を含むことが好ましい。
また、励起エネルギーが発光層からその周辺層に漏れ出さないように、障壁層を発光層に隣接させて設けてもよい。発光層で生成した励起子が、当該障壁層よりも電極側の層(例えば、電子輸送層及び正孔輸送層等)に移動することを阻止する。
発光層と障壁層とは接合していることが好ましい。
【0451】
その他、本発明の実施における具体的な構造、及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【実施例0452】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
【0453】
<化合物>
実施例に係る有機EL素子の製造に用いた、第一のホスト材料を以下に示す。
【0454】
【0455】
【0456】
比較例に係る有機EL素子の製造に用いた比較化合物の構造を以下に示す。
【0457】
【0458】
実施例及び比較例に係る有機EL素子の製造に用いた他の化合物の構造を以下に示す。
【0459】
【0460】
【0461】
【0462】
<有機EL素子の作製>
有機EL素子を以下のように作製し、評価した。
【0463】
〔実施例1〕
25mm×75mm×1.1mm厚のITO(Indium Tin Oxide)透明電極(陽極)付きガラス基板(ジオマテック株式会社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。ITO透明電極の膜厚は、130nmとした。
洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に透明電極を覆うようにして、化合物HT1及び化合物HA1を共蒸着し、膜厚10nmの正孔注入層(HI)を形成した。この正孔注入層中の化合物HT1の割合を90質量%とし、化合物HA1の割合を10質量%とした。
正孔注入層の成膜に続けて化合物HT1を蒸着し、膜厚85nmの第一の正孔輸送層(HT)を成膜した。
第一の正孔輸送層の成膜に続けて化合物HT3を蒸着し、膜厚5nmの第二の正孔輸送層(電子障壁層ともいう)(EBL)を成膜した。
第二の正孔輸送層上に化合物BH1-A(第一のホスト材料(BH))及び化合物BD(第一の発光性化合物(BD))を、化合物BDの割合が2質量%となるように共蒸着し、膜厚5nmの第一の発光層を成膜した。
第一の発光層上に化合物BH2(第二のホスト材料(BH))及び化合物BD(第二の発光性化合物(BD))を、化合物BDの割合が2質量%となるように共蒸着し、膜厚15nmの第二の発光層を成膜した。
第二の発光層上に化合物ET1を蒸着し、膜厚5nmの第一の電子輸送層(正孔障壁層(HBL)と称する場合もある。)を形成した。
第一の電子輸送層上に化合物ET2及び化合物Liqを共蒸着し、膜厚25nmの第二の電子輸送層(ET)を形成した。この第二の電子輸送層中の化合物ET2の割合を50質量%とし、化合物Liqの割合を50質量%とした。なお、Liqは、(8-キノリノラト)リチウム((8-Quinolinolato)lithium)の略称である。
第二の電子輸送層上に化合物Liqを蒸着して膜厚1nmの電子注入層を形成した。
電子注入層上に金属Alを蒸着して膜厚80nmの陰極を形成した。
実施例1の素子構成を略式的に示すと、次のとおりである。
ITO(130)/HT1:HA1(10,90%:10%)/HT1(85)/HT3(5)/
BH1-A:BD(5,98%:2%)/BH2:BD(15,98%:2%)/ET1(5)/ET2:Liq(25,50%:50%)/Liq(1)/Al(80)
なお、括弧内の数字は、膜厚(単位:nm)を示す。
同じく括弧内において、パーセント表示された数字(90%:10%)は、正孔注入層における化合物HT1及び化合物HA1の割合(質量%)を示し、パーセント表示された数字(98%:2%)は、第一の発光層又は第二の発光層におけるホスト材料(化合物BH1-A又はBH2)及び発光性化合物(化合物BD)の割合(質量%)を示し、パーセント表示された数字(50%:50%)は、第二の電子輸送層における化合物ET2及び化合物Liqの割合(質量%)を示す。
【0464】
〔実施例2~5及び比較例1〕
実施例2~5及び比較例1の有機EL素子は、実施例1の第一の発光層中の化合物BH1-A(第一のホスト材料)を表3に記載の化合物に変更したこと以外、実施例1と同様にして作製した。
【0465】
<第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)の拡散係数D1>
実施例1の第一のホスト材料を用いて、既述の方法で、第一の解析層と、第二の解析層とが積層された拡散速度解析層を備える過渡PLデータ測定用試料を作製した。この過渡PLデータ測定用試料を用いて第一のホスト材料の三重項エネルギーT1(H1)の拡散係数D1を算出した。結果を表3に示す。
なお、第一の燐光錯体として、Ir(ppy)3を用い、第二の燐光錯体として、Ir(piq)2(acac)を用いた。
前記数式(数10)において、吸光係数Aは1.0E5を用い、To=1.0E17(/cm3)を用いた。
前記数式(数101)において、Ir(piq)2(acac)のI(τ)はI(τ)=exp(-τ/τPH)とし、τPH=3.5E-7(s)を用いた。
【0466】
実施例1の過渡PLデータ測定用試料の構成を略式的に示すと、次の通りである。
透過光側/glass(0.7mm)/BH1-A:Ir(piq)2(acac)(20nm,95%:5%)/
BH1-A:Ir(ppy)3(100nm,80%:20%)/封止ガラス(0.6mm)/入射光側
なお、括弧内の数字は、膜厚を示す。同じく括弧内において、パーセント表示された数字(95%:5%)は化合物BH1-A及びIr(piq)2(acac)の割合(質量%)を示す。パーセント表示された数字(80%:20%)は、化合物BH1-A及びIr(ppy)3の割合(質量%)を示す。
【0467】
実施例2~5及び比較例1の過渡PLデータ測定用試料は、実施例1で用いた化合物BH1-A(第一のホスト材料)を表3に記載の化合物に変更したこと以外、実施例1と同様にして作製した。
【0468】
【0469】
<有機EL素子の評価>
作製した有機EL素子について、以下の評価を行った。結果を表4及び
図6に示す。
【0470】
・TTF比率
既述の方法でTTF比率を測定した。具体的な測定条件は以下の通りである。
各例で作製した有機EL素子に対して、室温(25℃)下で通電し、時刻約3×10-8秒のところでパルス電圧を除去した。
電圧除去時点を原点にとり、電圧除去後、1.5×10-5秒までの光強度の平方根の逆数をプロットしたこのグラフからTTF比率を求めた。
【0471】
・外部量子効率EQE
電流密度が10mA/cm2となるように素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを分光放射輝度計CS-2000(コニカミノルタ株式会社製)で計測した。得られた分光放射輝度スペクトルから、ランバシアン放射を行ったと仮定し外部量子効率EQE(単位:%)を算出した。
【0472】
【0473】
表4及び
図6に示すように、実施例1~5の有機EL素子は、数式(数1)を満たし、かつ三重項エネルギーT
1(H1)の拡散係数D
1が3.0×10
-9(cm
2/s)以上である第一のホスト材料を用いているので、比較例1の有機EL素子に比べて、TTF比率が高く、かつ高い外部量子効率EQEを示した。
【0474】
<化合物の評価方法>
表3、4中の化合物について、以下の評価を行った。
【0475】
(三重項エネルギーT1)
測定対象となる化合物をEPA(ジエチルエーテル:イソペンタン:エタノール=5:5:2(容積比))中に、濃度が10μmol/Lとなるように溶解し、この溶液を石英セル中に入れて測定試料とした。この測定試料について、低温(77[K])で燐光スペクトル(縦軸:燐光発光強度、横軸:波長とする。)を測定し、この燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]に基づいて、次の換算式(F1)から算出されるエネルギー量を三重項エネルギーT1とした。なお、三重項エネルギーT1は、測定条件によっては上下0.02eV程度の誤差が生じ得る。
換算式(F1):T1[eV]=1239.85/λedge
【0476】
燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線は以下のように引く。燐光スペクトルの短波長側から、スペクトルの極大値のうち、最も短波長側の極大値までスペクトル曲線上を移動する際に、長波長側に向けて曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち上がるにつれ(つまり縦軸が増加するにつれ)、傾きが増加する。この傾きの値が極大値をとる点において引いた接線(すなわち変曲点における接線)が、当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
なお、スペクトルの最大ピーク強度の15%以下のピーク強度をもつ極大点は、上述の最も短波長側の極大値には含めず、最も短波長側の極大値に最も近い、傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
燐光の測定には、(株)日立ハイテクノロジー製のF-4500形分光蛍光光度計本体を用いた。
【0477】
(一重項エネルギーS1)
測定対象となる化合物の10μmol/Lトルエン溶液を調製して石英セルに入れ、常温(300K)でこの試料の吸収スペクトル(縦軸:吸収強度、横軸:波長とする。)を測定した。この吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を次に示す換算式(F2)に代入して一重項エネルギーを算出した。
換算式(F2):S1[eV]=1239.85/λedge
吸収スペクトル測定装置としては、日立社製の分光光度計(装置名:U3310)を用いた。
【0478】
吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対する接線は以下のように引く。吸収スペクトルの極大値のうち、最も長波長側の極大値から長波長方向にスペクトル曲線上を移動する際に、曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち下がるにつれ(つまり縦軸の値が減少するにつれ)、傾きが減少しその後増加することを繰り返す。傾きの値が最も長波長側(ただし、吸光度が0.1以下となる場合は除く)で極小値をとる点において引いた接線を当該吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対する接線とする。
なお、吸光度の値が0.2以下の極大点は、上記最も長波長側の極大値には含めない。
【0479】
(最高被占軌道のエネルギー準位HOMO)
最高被占軌道のエネルギー準位HOMOは、大気下で、光電子分光装置(理研計器株式会社製、「AC-3」)を用いて測定した。具体的には、材料に光を照射し、その際に電荷分離によって生じる電子量を測定することにより、化合物の最高被占軌道のエネルギー準位HOMOを測定した。
【0480】
(蛍光発光最大ピーク波長(FL-peak)の測定)
化合物BDを、4.9×10-6mol/Lの濃度でトルエンに溶解し、化合物BDのトルエン溶液を調製した。蛍光スペクトル測定装置(分光蛍光光度計F-7000(株式会社日立ハイテクサイエンス製))を用いて、化合物BDのトルエン溶液を390nmで励起した場合の蛍光発光最大ピーク波長を測定した。
化合物BDの蛍光発光最大ピーク波長は、455nmであった。
【0481】
(化合物のファンデルワールス半径)
既述の方法で、「化合物のファンデルワールス半径」を算出した。
化合物BH1-Aのファンデルワールス半径は1.08nmと算出された。
化合物BH1-Bのファンデルワールス半径は1.27nmと算出された。
化合物BH1-Cのファンデルワールス半径は1.50nmと算出された。
化合物BH1-Dのファンデルワールス半径は1.24nmと算出された。
化合物BH1-Eのファンデルワールス半径は1.09nmと算出された。
化合物Ref-1のファンデルワールス半径は1.08nmと算出された。
1,1A…有機EL素子、2…基板、3…陽極、4…陰極、51…第一の発光層、52…第二の発光層、6…正孔注入層、7…正孔輸送層、8…電子輸送層、9…電子注入層。