(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094481
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】食肉加工装置、及び、食肉加工システム
(51)【国際特許分類】
A22C 17/00 20060101AFI20240703BHJP
A22C 21/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
A22C17/00
A22C21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211037
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】桜山 浩之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 修
(72)【発明者】
【氏名】小山 佑亮
【テーマコード(参考)】
4B011
【Fターム(参考)】
4B011EA03
4B011FA04
4B011FA05
(57)【要約】
【課題】比較的大きな力を要する加工処理を効率的に実施可能な食肉加工装置、及び、食肉加工システムを提供する。
【解決手段】食肉加工装置は、第1ロボットアームと、ミートセパレータとを備える。
第1ロボットアームは、先端部にスクレーパを含むツールを有する。ミートセパレータは、第1ロボットアームとは別に設けられ、スクレーパによって広げられたワークの切れ込みに挿入され、ワークに対して上下に相対移動することによりワークから肉部を引き剥がす。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部にスクレーパを含むツールを有する第1ロボットアームと、
前記第1ロボットアームとは別に設けられ、前記スクレーパによって広げられたワークの切れ込みに挿入され、前記ワークに対して上下に相対移動することにより前記ワークから肉部を引き剥がすためのミートセパレータと、
を備える、食肉加工装置。
【請求項2】
前記ツールは、前記スクレーパによって前記切れ込みが広げられた前記ワークに対して筋入れを行うカッタを含むマルチツールである、請求項1に記載の食肉加工装置。
【請求項3】
前記第1ロボットアームとは別に設けられ、先端部に前記ワークを把持するクランプ部を有する第2ロボットアームを更に備え、
前記第1ロボットアームは、前記クランプ部で把持された前記ワークに対して、前記ツールを用いて加工処理を行う、請求項1又は2に記載の食肉加工装置。
【請求項4】
前記第2ロボットアームは、前記切れ込みに挿入された前記ミートセパレータを固定した状態で、前記ワークを移動させることにより前記肉部を引き剥がす、請求項3に記載の食肉加工装置。
【請求項5】
前記ツールは、引き剥がされた前記肉部を切断することにより、前記ワークから分離する、請求項4に記載の食肉加工装置。
【請求項6】
前記第1ロボットアームは、6軸以上の軸数を有する、請求項1又は2に記載の食肉加工装置。
【請求項7】
前記ワークを搬送するための搬送ラインと、
前記搬送ラインによって搬送された前記ワークを加工するための少なくとも1つの加工ステーションと、
請求項1又は2に記載の食肉加工装置と、
を備える、食肉加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、食肉加工装置、及び、食肉加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
食肉をワークとして、搬送や加工を自動的に実行するための食肉加工装置が知られている。例えば、特許文献1には、ワークを搬送するための複数のコンベアを備える食肉加工装置が開示されている。この文献では、コンベアによって搬送されるワークが筋入れステーションに投入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2009/139031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のような食肉加工装置が備える加工ステーションでは、コンベアで搬送されたワークが床面上に寝かされた状態で加工処理が行われる。加工ステーションでは、同一のハードを用いてソフトの変更により多様な種類、形状の複合処理が可能である。
【0005】
このような加工ステーションにおける複合処理は、使用するロボットアームの力が比較的小さい処理であるため、例えばワークから肉を引き剥がすような大きな力を要する処理を行うことが難しい。そのため、従来の加工ステーションでワークから肉を引き剥がすためには、例えば、刃物によって肉を次第に切りながら剥がしていく必要があり、処理時間が長くなったり、ナイフ状の刃物を丸い骨に対して直線で入れていく必要があるため、歩留まりが低下してしまう。
【0006】
また加工ステーションではワークを寝かせた姿勢で加工処理が実施されるため、ワークの背面(すなわち床面に対向する側)にツールをアプローチすることが難しい。
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、比較的大きな力を要する加工処理を効率的に実施可能な食肉加工装置、及び、食肉加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る食肉加工装置は、上記課題を解決するために、
先端部にスクレーパを含むツールを有する第1ロボットアームと、
前記第1ロボットアームとは別に設けられ、前記スクレーパによって広げられたワークの切れ込みに挿入され、前記ワークに対して上下に相対移動することにより前記ワークから肉部を引き剥がすためのミートセパレータと、
を備える。
【0009】
上記(1)の態様によれば、第1ロボットアームの先端部に設けられたスクレーパを用いて、ワークの切れ込みを広げた箇所にミートセパレータが挿入される。このようにミートセパレータが挿入された状態でワークを上下に相対移動することで、ワークと引き剥がされる肉との間に比較的大きな力を作用させることができ、ワークから肉を効率的に引き剥がすことができる。またスクレーパは第1ロボットアームの先端部に設けられることで、第1ロボットアームの姿勢を変更することにより、ワークに対して様々な角度からアプローチすることができる。これにより、多様な形状のワークに対して、本装置を適用することができる。
【0010】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記ツールは、前記スクレーパによって前記切れ込みが広げられた前記ワークに対して筋入れを行うカッタを含むマルチツールである。
【0011】
上記(2)の態様によれば、第1ロボットアームの先端部に設けられるツールが、スクレーパ及びカッタの機能を含むマルチツールとして構成される。これにより、スクレーパによって切れ込みが広げられた状態のワークに対して筋入れを行うなど、複合処理を効率的に実施できる。
【0012】
(3)他の態様では、上記(1)又は(2)の態様において、
前記第1ロボットアームとは別に設けられ、先端部に前記ワークを把持するクランプ部を有する第2ロボットアームを更に備え、
前記第1ロボットアームは、前記クランプ部で把持された前記ワークに対して、前記ツールを用いて加工処理を行う。
【0013】
上記(3)の態様によれば、第1ロボットアームとは別に設けられた第2ロボットアームによって、加工対象となるワークが把持される。第1ロボットアームは、第2ロボットアームによって把持されたワークに対して加工を行うことで、両者のロボットアームの姿勢を変更することにより様々な複合加工処理を柔軟に実施できる。
【0014】
(4)他の態様では、上記(3)の態様において、
前記第2ロボットアームは、前記切れ込みに挿入された前記ミートセパレータを固定した状態で、前記ワークを移動させることにより前記肉部を引き剥がす。
【0015】
上記(4)の態様によれば、ツールが有するスクレーパで広げられた切れ込みに挿入されるミートセパレータを固定しながら、第2ロボットアームによって把持したワークを移動させることで、両者の間に大きな力を作用できる。これにより、ワークからの肉部の引き剥がしを的確に実施することができる。
【0016】
(5)他の態様では、上記(4)の態様において、
前記ツールは、引き剥がされた前記肉部を切断することにより、前記ワークから分離する。
【0017】
上記(5)の態様によれば、上記のように引き剥がされた肉部をツールによって切断することで、ワークから引き剥がした肉部を簡易に分離できる。
【0018】
(6)他の態様では、上記(1)又は(2)の態様において、
前記第1ロボットアームは、6軸以上の軸数を有する。
【0019】
上記(6)の態様によれば、第1ロボットアームの軸数を6軸以上とすることで、先端部に設けられたツールをワークに対して様々な角度でアプローチするなど柔軟な動作に対応でき、様々な加工処理が可能となる。
【0020】
(7)一態様に係る食品加工システムは、上記課題を解決するために、
前記ワークを搬送するための搬送ラインと、
前記搬送ラインによって搬送された前記ワークを加工するための少なくとも1つの加工ステーションと、
上記(1)又は(2)の態様の食肉加工装置と、
を備える。
【0021】
上記(7)の態様によれば、上記の食肉加工装置を、搬送ラインによって搬送されるワークを加工する加工ステーションと組み合わせることにより、従来の加工ステーションでは、力が足りなかったり、ツールのアプローチが困難な加工処理に対しても広く対応可能な食肉加工システムを実現できる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、比較的大きな力を要する加工処理を効率的に実施可能な食肉加工装置、及び、食肉加工システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態に係る食肉加工システムの概略構成図である。
【
図2】
図1の食肉加工装置を側方から示す概略図である。
【
図3】
図1の食肉加工装置の構成を概略的に示す図である。
【
図4】
図3の第1ロボットアームの先端部に設けられたツールの拡大図である。
【
図5】一実施形態に係る食肉加工装置の動作フローを示すフローチャートである。
【
図6A】
図5の各ステップに対応する動作説明図である。
【
図6B】
図5の各ステップに対応する動作説明図である。
【
図6C】
図5の各ステップに対応する動作説明図である。
【
図6D】
図5の各ステップに対応する動作説明図である。
【
図6E】
図5の各ステップに対応する動作説明図である。
【
図6F】
図5の各ステップに対応する動作説明図である。
【
図6G】
図5の各ステップに対応する動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0025】
図1は一実施形態に係る食肉加工システム1の概略構成図であり、
図2は
図1の食肉加工装置10を側方から示す概略図である。食肉加工システム1は、食肉であるワーク2の搬送及び加工を自動的に実行するためのシステムである。ワーク2は、骨部及び肉部を含む食肉であり、豚、牛又は馬などの肉であってもよいし、魚又は鳥などの肉であってもよい。
【0026】
食肉加工システム1は、搬送ライン3と、少なくとも1つの加工ステーション7と、少なくとも1つの食肉加工装置10とを備える。
【0027】
搬送ライン3は、加工対象であるワーク2を搬送するための構成であり、上流側に配置された供給ユニット(不図示)から供給されるワークを、下流側に配置された加工ステーション7又は食肉加工装置10に対して搬送可能なコンベア4を有する。コンベア4は、最上流側にある入口部5において、供給ユニットからワーク2を受ける。入口部5の近傍では、コンベア4の両サイドに作業員が配置可能な下処理エリア6が設けられる。下処理エリア6では、下流側にある加工ステーション7や食肉加工装置10で加工される前段階において、ワーク2に対して適宜下処理を実施可能である。
【0028】
コンベア4のうち下処理エリア6を含む比較的上流側では単独レーンで構成されているが、コンベア4は、途中から左レーン4L及び右レーン4Rに分岐しており、切替部8によって、上流側から搬送されてきたワーク2が左レーン4L又は右レーン4Rのいずれかに分配されるように構成される。左レーン4L又は右レーン4Rには、それぞれ対応する加工ステーション7及び食肉加工装置10が配置される。加工ステーション7及び食肉加工装置10で加工されたワーク2は、搬出レーンを介して、外部に搬出される。
【0029】
加工ステーション7は、加工ステーション7は、コンベア4からワーク2を受け取り、食肉加工用ツールを搭載した多軸ロボット(不図示)によって食肉加工を行う。加工ステーション7で実施される食肉加工は、例えば従来のワークに対して筋入れのような食肉加工を行うための食肉加工装置(例えば特許第4961613号公報、特許第4867050号公報、特許第5788076号公報、特許第5788077号公報、又は、特開2022-170894号公報等を参照)のように、比較的小さな力を用いて行われる。
【0030】
尚、本実施形態では、左レーン4L及び右レーン4Rに沿って、それぞれ2つずつ加工ステーション7が設けられる構成例を示しているが、各レーンに設けられる加工ステーション7の数は限定されない。また各加工ステーション7は互いに同じ構成を有してもよし、互いに異なる構成を有してもよい。
【0031】
食肉加工装置10は、加工ステーション7に比べて大きな力を必要とする加工処理を実施するための装置である。本実施形態では、このような加工処理の一例として、骨部を含む食肉であるワーク2からの肉部の引き剥がし処理を例に説明するが、他の処理を対象としてもよい。
図2に示すように、食肉加工装置10は、上段に位置するコンベア4によって搬送されたワーク2を受け取り、ワーク2から肉部を引き剥がし、分離する。ワーク2から分離された肉部は、下段に位置する搬出コンベア11によって外部に搬出される(尚、肉部が分離された残りのワーク2は、コンベア4に戻されることで、下流側の他の工程に搬送される)。
【0032】
尚、食肉加工システム1は、上記各構成を制御するためのコントローラを備えてもよい。コントローラは、1または複数の演算装置である。演算装置に含まれるプロセッサは、CPU、GPU、MPU、DSP、またはこれらの組み合わせなどでもよいし、もしくは、PLD、ASIC、FPGA、またはMCU等の集積回路により実現されてもよい。演算装置は、ROM、RAM、またはフラッシュメモリなどのメモリを適宜含んでもよい。
【0033】
続いて食肉加工装置10の具体的構成について説明する。
図3は
図1の食肉加工装置10の構成を概略的に示す図であり、
図4は
図3の第1ロボットアーム16の先端部20に設けられたツール20の拡大図である。
【0034】
食肉加工装置10は、装置本体12と、第1ロボットアーム14と、第2ロボットアーム16と、ミートセパレータ18とを備える。
【0035】
装置本体12は、食肉加工装置10が設置される床面に対して固定される構成であり、その構成は限定されない。
【0036】
第1ロボットアーム14は、装置本体12に設けられた多軸ロボットであり、不図示のコントローラからの制御信号に基づいて可動である。第1ロボットアーム14は、6軸以上の軸数を有するロボット構造を有しており、先端部20に搭載されたツール22がワーク2に対して任意の角度又は姿勢でアプローチできるように構成される。
【0037】
第1ロボットアーム14の先端部20に設けられたツール22は、少なくともスクレーパ22aを含む。本実施形態では
図4に例示するように、ツール22は、スクレーパ22aに加えて、ワーク2に対して筋入れを行うためのカッタ22bを含むマルチツールとして構成される。これにより、ツール22を使用することにより、カッタ22bによってワーク2に対して切れ込みを形成するとともに、当該切れ込みをスクレーパ22aによって同時に広げることが可能となる。
尚、カッタ22bはツール22の本体に対してカッタホルダ22cを介して取り付けられる。カッタホルダ22の内部には、カッタ22bを駆動するための振動ユニット(不図示)が収納されている。
【0038】
第2ロボットアーム16は、前述の第1ロボットアーム14と同様に、装置本体12に設けられた多軸ロボットであり、不図示のコントローラからの制御信号に基づいて可動である。第2ロボットアーム16もまた6軸以上の軸数を有するロボット構造を有しており、先端部24に搭載されたクランプ部26を用いて、コンベア4上に載置されているワーク2を把持可能に構成される。
【0039】
ミートセパレータ18は、ワーク2に形成された切れ込みに挿入されることで、ワーク2から肉部を引き剥がすための構成である。後述するように、ミートセパレータ18の挿入時には、ワーク2に形成された切れ込みが第1ロボットアーム14の先端部20に設けられるツール22に含まれるスクレーパによって広げられることにより、当該切れ込みに対してミートセパレータ18が適格に挿入されるようになっている。またミートセパレータ18には、不図示の駆動源からの動力によって、ミートセパレータ18から退避した位置(退避位置)と、ミートセパレータ18に接近することでミートセパレータ18が挿入されたワーク2を押さえるための位置(押さえ位置)とが互いに切替可能な押さえ部材19が対向配置されている(
図3では、押さえ部材19が押さえ位置にある様子が例示されている)。
【0040】
尚、前述の第1ロボットアーム14、第2ロボットアーム16及びミートセパレータ18は、それぞれ装置本体12に対して別に設けられる。
【0041】
続いて上記構成を有する食肉加工装置10の動作について説明する。
図5は一実施形態に係る食肉加工装置10の動作フローを示すフローチャートであり、
図6A~
図6Fは
図5の各ステップに対応する動作説明図である。
【0042】
まずコンベア4で搬送されるワーク2を検出し(ステップS1)、
図6Aに示すように、第2ロボットアーム16を用いてワーク2を把持する(ステップS2)。ステップS1では、不図示の検出用センサによってコンベア4上にあるワーク2を認識することにより、食肉加工装置10の加工対象であるワーク2を検出し、その姿勢を特定する。ステップS2では、ステップS1の検出結果に基づいて、コンベア4上に所定の姿勢で載置されているワーク2に対して、第2ロボットアーム16を操作することにより、その先端部24に設けられたクランプ部26によってワーク2を把持する。
【0043】
本実施形態では、ワーク2として家畜の足部を含む食肉を取り扱っており、ステップS1においてワーク2の形状認識をすることで、ワーク2のうち足首部を特定し、ステップS2では、特定された足首部をクランプ部26で把持するように第2ロボットアーム16が操作される。
【0044】
尚、第2ロボットアーム16によって把持されたワーク2は、続くステップS3で行われる加工処理に適した姿勢(本実施形態では、
図6Bに示すように吊り下げ姿勢)にされる。
【0045】
続いて
図6Cに示すように、第1ロボットアーム14の先端部20に設けられたツール22を用いて、第2ロボットアーム16で把持されたワーク2に対して加工処理を行う(ステップS3)。ステップS3で実施される加工処理は限定されないが、本実施形態では、その一例として、吊り下げ姿勢に把持されたワーク2に対して、ツール22に含まれるカッタによる筋入れ処理が行われる。
【0046】
続いて
図6Dに示すように、ツール22に含まれるスクレーパによって広げられたワーク2の切れ込みに対して、ミートセパレータ18を挿入する(ステップS4)。前述のようにツール22は、ステップS3で加工処理を行うためのカッタ等に加えてスクレーパを含むマルチツールとして構成されている。そのため、ステップS3の加工処理では、ツール22の使用時にカッタ等による筋入れ処理とともに、スクレーパによってワーク2に形成された切れ込みが広げられる。ステップS4では、このようにスクレーパによって広げられた切れ込みに対してミートセパレータ18が挿入される。このとき、ミートセパレータ18がワーク2の切れ込みに挿入された状態で、退避位置にある押さえ部材19を回動して押さえ位置にすることにより、ワーク2をミートセパレータ18と押さえ部材19とによって挟み込むように固定することで姿勢を安定化できる。
【0047】
尚、ステップS4では、ミートセパレータ18の位置と、スクレーパによって広げられたワーク2の切れ込みの位置とが対応するように、ワーク2の位置及び姿勢を事前調整するステップを含んでもよい。
【0048】
続いて
図6Eに示すように、ワーク2に対してミートセパレータ18を上下に相対移動させることにより、ワーク2から肉部を引き剥がす(ステップS5)。本実施形態では、スクレーパによって広げられた切れ込みに挿入されたミートセパレータ18を装置本体12に対して固定した状態で、第2ロボットアーム16を操作することにより、第2ロボットアーム16の先端部24に設けられたクランプ部26によって把持されたワーク2を移動させる。これにより、装置本体12に対して固定されたミートセパレータ18に係合した肉部と、ワーク2との間に大きな力を作用させ、ワーク2から肉部を効果的に引き剥がすことができる。
【0049】
続いて
図6Fに示すように、第1ロボットアーム14を操作することにより、第1ロボットアーム14の先端部20に設けられたツール22を用いて、ステップS5で引き剥がされた肉部をワーク2から切断することにより分離する(ステップS6)。ステップS5では、ワーク2から肉部が引き剥がされるが、肉部の一部がワーク2につながっている状態にある。そこでステップS6では、当該つながっている部位を、ツール22に含まれるカッタを用いて切断することで、ワーク2から引きはがした肉部を分離する。
尚、分離された肉部は、
図6Gに示すように、下段にある搬出コンベア11を介して外部に搬出される。
【0050】
以上説明したように上記実施形態によれば、第1ロボットアーム14の先端部20に設けられたツール22に含まれるスクレーパを用いて、ワーク2の切れ込みを広げた箇所にミートセパレータ18が挿入される。このようにミートセパレータ18が挿入された状態でワーク2を上下に相対移動することで、ワーク2と引き剥がされる肉との間に比較的大きな力を作用させることができ、ワーク2から肉を効率的に引き剥がすことができる。またスクレーパを含むツール22は第1ロボットアーム14の先端部20に設けられることで、第1ロボットアーム14の姿勢を変更することにより、ワーク2に対して様々な角度からアプローチすることができる。これにより、多様な形状のワーク2に対して、本装置を適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 食肉加工システム
2 ワーク
3 搬送ライン
4 コンベア
4L 左レーン
4R 右レーン
5 入口部
6 処理エリア
7 加工ステーション
8 切替部
10 食肉加工装置
11 搬出コンベア
12 装置本体
14 第1ロボットアーム
16 第2ロボットアーム
18 ミートセパレータ
19 押さえ部材
20 先端部
22 ツール
24 先端部
26 クランプ部