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特開2024-94676骨材の品質予測方法、生コンクリートの製造方法、及び、生コンクリートの製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094676
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】骨材の品質予測方法、生コンクリートの製造方法、及び、生コンクリートの製造システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/359 20140101AFI20240703BHJP
   G01N 21/3563 20140101ALI20240703BHJP
   G01N 33/38 20060101ALI20240703BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240703BHJP
   C04B 14/02 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
G01N21/359
G01N21/3563
G01N33/38
C04B28/02
C04B14/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211375
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】市川 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】板橋 庸行
(72)【発明者】
【氏名】玉滝 浩司
【テーマコード(参考)】
2G059
4G112
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059CC09
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE11
2G059EE13
2G059FF01
2G059HH01
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM02
2G059MM05
2G059MM12
4G112PA02
(57)【要約】
【課題】生コンクリートの品質の安定化、品質管理の高効率化を図る。
【解決手段】骨材の品質予測方法は、骨材に対して光が照射された際の、780nmよりも大きい2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じたスペクトルデータから得られる特徴量と、骨材の表面水率との関係を示す検量線を取得する準備工程と、評価対象の骨材に対して光が照射された際の、上記2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じた評価用のスペクトルデータを取得する第1取得工程と、評価用のスペクトルデータから、評価用の特徴量を取得する第2取得工程と、評価用の特徴量と、検量線とに基づいて、評価対象の骨材の表面水率を予測する予測工程と、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材に対して光が照射された際の、780nmよりも大きい2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じたスペクトルデータから得られる特徴量と、骨材の表面水率との関係を示す検量線を取得する準備工程と、
評価対象の骨材に対して光が照射された際の、前記2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じた評価用のスペクトルデータを取得する第1取得工程と、
前記評価用のスペクトルデータから、前記特徴量に対応する評価用の特徴量を取得する第2取得工程と、
前記評価用の特徴量と、前記検量線とに基づいて、前記評価対象の骨材の表面水率を予測する予測工程と、を含む、骨材の品質予測方法。
【請求項2】
前記スペクトルデータ及び前記評価用のスペクトルデータのそれぞれは、ハイパースペクトルカメラを用いて取得される、請求項1に記載の骨材の品質予測方法。
【請求項3】
前記第1取得工程では、前記評価対象の骨材が積み重なった状態で、前記評価対象の骨材から離れた位置から前記評価対象の骨材を含む範囲が撮像されて、前記評価用のスペクトルデータが得られる、請求項1に記載の骨材の品質予測方法。
【請求項4】
前記特徴量及び前記評価用の特徴量のそれぞれは、前記2以上の波長のうちの第1波長における第1スペクトル値と、前記第1波長よりも大きい第2波長における第2スペクトル値との差分に応じて求められる、請求項1~3のいずれか一項に記載の骨材の品質予測方法。
【請求項5】
前記特徴量及び前記評価用の特徴量のそれぞれは、前記差分を前記第2スペクトル値で除算することで求められる、請求項4に記載の骨材の品質予測方法。
【請求項6】
前記検量線では、前記特徴量と骨材の表面水率との関係が一次関数を用いて示されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の骨材の品質予測方法。
【請求項7】
前記準備工程では、
前記特徴量が第1範囲に含まれる場合での前記特徴量と骨材の表面水率との関係を示す第1検量線が前記検量線として取得され、
前記特徴量が前記第1範囲とは異なる第2範囲に含まれる場合での前記特徴量と骨材の表面水率との関係を示す第2検量線が更に取得され、
前記予測工程では、前記評価用の特徴量と、前記第1検量線及び前記第2検量線のいずれか一方とに基づいて、前記評価対象の骨材の表面水率が予測される、請求項1~3のいずれか一項に記載の骨材の品質予測方法。
【請求項8】
前記準備工程で用いられる骨材、及び前記評価対象の骨材それぞれの、表面水率0%における明度Lは20以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の骨材の品質予測方法。
【請求項9】
骨材を含む材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造工程と、
前記製造工程に用いられる骨材の少なくとも一部の表面水率を予測する品質予測工程と、を含み、
前記品質予測工程は、
骨材に対して光が照射された際の、780nmよりも大きい2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じたスペクトルデータから得られる特徴量と、骨材の表面水率との関係を示す検量線を取得する準備工程と、
評価対象の骨材に対して光が照射された際の、前記2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じた評価用のスペクトルデータを取得する第1取得工程と、
前記評価用のスペクトルデータから、前記特徴量に対応する評価用の特徴量を取得する第2取得工程と、
前記評価用の特徴量と、前記検量線とに基づいて、前記評価対象の骨材の表面水率を予測する予測工程と、を含む、生コンクリートの製造方法。
【請求項10】
骨材を含む材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造装置と、
前記製造装置が用いる骨材の少なくとも一部の表面水率を予測する品質予測装置と、を備え、
前記品質予測装置は、
骨材に対して光が照射された際の、780nmよりも大きい2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じたスペクトルデータから得られる特徴量と、骨材の表面水率との関係を示す検量線を取得する準備工程と、
評価対象の骨材に対して光が照射された際の、前記2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じた評価用のスペクトルデータを取得する第1取得工程と、
前記評価用のスペクトルデータから、前記特徴量に対応する評価用の特徴量を取得する第2取得工程と、
前記評価用の特徴量と、前記検量線とに基づいて、前記評価対象の骨材の表面水率を予測する予測工程と、を実行するように構成されている、生コンクリートの製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、骨材の品質予測方法、生コンクリートの製造方法、及び、生コンクリートの製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、骨材の品質推定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-135199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、生コンクリートの品質の安定化、品質管理の高効率化に有用な骨材の品質予測方法、生コンクリートの製造方法、及び、生コンクリートの製造システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]骨材に対して光が照射された際の、780nmよりも大きい2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じたスペクトルデータから得られる特徴量と、骨材の表面水率との関係を示す検量線を取得する準備工程と、評価対象の骨材に対して光が照射された際の、前記2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じた評価用のスペクトルデータを取得する第1取得工程と、前記評価用のスペクトルデータから、前記特徴量に対応する評価用の特徴量を取得する第2取得工程と、前記評価用の特徴量と、前記検量線とに基づいて、前記評価対象の骨材の表面水率を予測する予測工程と、を含む、骨材の品質予測方法。
[2]前記スペクトルデータ及び前記評価用のスペクトルデータのそれぞれは、ハイパースペクトルカメラを用いて取得される、上記[1]に記載の骨材の品質予測方法。
[3]前記第1取得工程では、前記評価対象の骨材が積み重なった状態で、前記評価対象の骨材から離れた位置から前記評価対象の骨材を含む範囲が撮像されて、前記評価用のスペクトルデータが得られる、上記[1]又は[2]に記載の骨材の品質予測方法。
[4]前記特徴量及び前記評価用の特徴量のそれぞれは、前記2以上の波長のうちの第1波長における第1スペクトル値と、前記第1波長よりも大きい第2波長における第2スペクトル値との差分に応じて求められる、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の骨材の品質予測方法。
[5]前記特徴量及び前記評価用の特徴量のそれぞれは、前記差分を前記第2スペクトル値で除算することで求められる、上記[4]に記載の骨材の品質予測方法。
[6]前記検量線では、前記特徴量と骨材の表面水率との関係が一次関数を用いて示されている、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の骨材の品質予測方法。
[7]前記準備工程では、前記特徴量が第1範囲に含まれる場合での前記特徴量と骨材の表面水率との関係を示す第1検量線が前記検量線として取得され、前記特徴量が前記第1範囲とは異なる第2範囲に含まれる場合での前記特徴量と骨材の表面水率との関係を示す第2検量線が更に取得され、前記予測工程では、前記評価用の特徴量と、前記第1検量線及び前記第2検量線のいずれか一方とに基づいて、前記評価対象の骨材の表面水率が予測される、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の骨材の品質予測方法。
[8]前記準備工程で用いられる骨材、及び前記評価対象の骨材それぞれの、表面水率0%における明度Lは20以上である、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の骨材の品質予測方法。
[9]骨材を含む材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造工程と、前記製造工程に用いられる骨材の少なくとも一部の表面水率を予測する品質予測工程と、を含み、前記品質予測工程は、骨材に対して光が照射された際の、780nmよりも大きい2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じたスペクトルデータから得られる特徴量と、骨材の表面水率との関係を示す検量線を取得する準備工程と、評価対象の骨材に対して光が照射された際の、前記2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じた評価用のスペクトルデータを取得する第1取得工程と、前記評価用のスペクトルデータから、前記特徴量に対応する評価用の特徴量を取得する第2取得工程と、前記評価用の特徴量と、前記検量線とに基づいて、前記評価対象の骨材の表面水率を予測する予測工程と、を含む、生コンクリートの製造方法。
[10]骨材を含む材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造装置と、前記製造装置が用いる骨材の少なくとも一部の表面水率を予測する品質予測装置と、を備え、前記品質予測装置は、骨材に対して光が照射された際の、780nmよりも大きい2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じたスペクトルデータから得られる特徴量と、骨材の表面水率との関係を示す検量線を取得する準備工程と、評価対象の骨材に対して光が照射された際の、前記2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じた評価用のスペクトルデータを取得する第1取得工程と、前記評価用のスペクトルデータから、前記特徴量に対応する評価用の特徴量を取得する第2取得工程と、前記評価用の特徴量と、前記検量線とに基づいて、前記評価対象の骨材の表面水率を予測する予測工程と、を実行するように構成されている、生コンクリートの製造システム。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、生コンクリートの品質の安定化、品質管理の高効率化に有用な骨材の品質予測方法、生コンクリートの製造方法、及び、生コンクリートの製造システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、生コンクリートの製造システムの一例を示す模式図である。
図2図2は、骨材での反射又は吸収に応じたスペクトルデータの一例を可視化して示す模式図である。
図3図3は、制御装置のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
図4図4(a)は、準備フェーズで実行される処理の一例を示すフローチャートである。図4(b)は、評価フェーズで実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図5図5(a)及び図5(b)は、スペクトルデータから特徴量を導出する過程の一例を説明するための図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、検量線の一例を示すグラフである。
図7図7(a)及び図7(b)は、検量線の一例を示すグラフである。
図8図8(a)及び図8(b)は、予測結果に対する骨材の明度の影響を検証した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
図1には、一実施形態に係る生コンクリートの製造システムが模式的に示されている。図1に示される製造システム1は、生コンクリートを製造するシステムである。製造システム1は、コンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造(生成)する。製造システム1は、生コンクリートを製造する機能に加えて、コンクリート材料の品質を予測する機能を有する。
【0010】
製造システム1によって用いられるコンクリート材料は、セメント、混和材、粗骨材、細骨材、水、及び混和剤等を含む。粗骨材には、例えば、山砂利、陸砂利、川砂利、海砂利などの砂利;砕石;高炉スラグ骨材、フェロニッケルスラグ骨材、電気炉酸化スラグ骨材、石炭ガス化スラグ骨材などのスラグ粗骨材;天然軽量骨材、副産軽量骨材、人工軽量骨材などの軽量粗骨材;再生粗骨材;回収骨材又はこれらを混合した粗骨材が挙げられる。粗骨材は、例えば、砕岩砕石、又は石灰砕石を含んでよい。細骨材には、例えば、山砂、陸砂、川砂、海砂などの砂;砕砂;高炉スラグ骨材、フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ骨材、電気炉酸化スラグ骨材、石炭ガス化スラグ骨材などのスラグ細骨材;天然軽量骨材、副産軽量骨材、人工軽量骨材などの軽量細骨材;再生細骨材;回収骨材又はこれらを混合した細骨材が挙げられる。また砕石、砕砂の岩種には、花崗岩、閃緑岩、斑れい岩、ひん岩、輝緑岩、流紋岩、安山岩、玄武岩、蛇紋岩などの火成岩類;礫岩、砂岩、頁岩、粘板岩、凝灰岩などの堆積岩類;片麻岩、結晶片岩などの変成岩類;その他、珪石、石灰岩、ドマロイト、かんらん岩などがある。
【0011】
本開示では、粗骨材及び細骨材を総称して、「骨材」と称する場合がある。この場合、「骨材」は、粗骨材、細骨材、又は、粗骨材及び細骨材の両方を意味する。骨材の表面水率が0%であるときの明度L(表面水率0%における明度L)は、20以上、22以上、又は25以上であってもよい。骨材の表面水率0%における明度Lは、後述の表面水率の予測精度の観点から、例えば、30以上であることがより好ましく、33以上であることが更に好ましく、40以上、50以上、又は60以上であることがより一層好ましい。また、骨材の表面水率が7%であるときの明度Lが、15以上、17以上、又は20以上であってもよい。骨材の表面水率7%における明度Lは、表面水率の予測精度の観点から、例えば、22以上であることがより好ましく、24以上であることが更に好ましく、30以上、40以上、又は50以上であることがより一層好ましい。
【0012】
製造システム1は、製造した生コンクリートを運搬車Cに積み込む。運搬車Cは、生コンクリートが積み込まれた後に、生コンクリートが使用される現場(例えば、工事現場)まで生コンクリートを運搬する。運搬車Cとしては、例えば、アジテータ車(ミキサ車)、及び、ダンプトラックが挙げられる。製造システム1は、現場ごとに設定された目標品質(要求品質)を満たすように、コンクリート材料から生コンクリートを製造してもよい。一例では、生コンクリートの目標品質は、スランプ、又はスランプフローの目標値を含む。製造システム1は、例えば、材料置場2と、運搬装置8と、製造装置10と、計測装置50と、制御装置60とを備える。
【0013】
材料置場2は、コンクリート材料を貯蔵する場所である。材料置場2は、複数のサイロ4を含む。複数のサイロ4は、コンクリート材料の少なくとも一部を、材料の種類ごとに貯蔵する容器である。複数のサイロ4は、粗骨材を貯蔵するサイロ4と、細骨材を貯蔵するサイロ4と、セメントを含むサイロ4とを含む。
【0014】
運搬装置8は、複数のサイロ4に貯蔵されたコンクリート材料を、製造装置10まで運搬する装置である。運搬装置8は、例えば、コンクリート材料を搬送するベルトコンベアを含む。運搬装置8は、互いに異なるタイミングで、材料の種類ごとにコンクリート材料を運搬してもよい。一例では、制御装置60による動作指示に基づいて、各種コンクリート材料のうちの特定の材料が運搬装置8に移され、製造装置10まで搬送される。
【0015】
製造装置10は、骨材を含むコンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する装置である。製造装置10は、制御装置60からの動作指示に基づいて動作する。製造装置10は、例えば、貯蔵瓶12と、計量瓶14と、集合ホッパ16と、ミキサ20と、積込ホッパ30とを備える。
【0016】
貯蔵瓶12は、各種のコンクリート材料を一時的に貯蔵する。貯蔵瓶12には、材料置場2から、運搬装置8によって各種のコンクリート材料が運搬(搬送)される。貯蔵瓶12は、各種のコンクリート材料を個別に貯蔵するように構成されている。以下、「コンクリート材料」を単に「材料」と表記する場合がある。貯蔵瓶12に貯蔵されている各種材料は、必要に応じて計量瓶14に供給される。
【0017】
計量瓶14は、貯蔵瓶12の下方に配置されている。計量瓶14は、制御装置60からの動作指示に基づいて動作し、各種材料を個別に計量する。計量瓶14は、制御装置60から指示された目標量の材料を検知すると、その材料を集合ホッパ16に供給する。水が計量瓶14に供給される際に、その水に混和剤が混合されてもよい。集合ホッパ16は、計量瓶14の下方に配置されている。集合ホッパ16は、計量瓶14から排出される各種材料を集約し、集約した各種材料をミキサ20に供給する。集合ホッパ16が備えられない場合、計量瓶14から各種材料がミキサ20に供給される。
【0018】
ミキサ20は、集合ホッパ16の下方に配置されている。ミキサ20は、コンクリート材料を練り混ぜる装置である。ミキサ20は、骨材、セメント、水、及び混和剤等を練り混ぜる(混練する)ことで、生コンクリートを製造する。ミキサ20の底部から、生コンクリートが積込ホッパ30に排出される。積込ホッパ30は、ミキサ20の下方に配置されており、生コンクリートを一時的に収容する。積込ホッパ30は、一時的に収容した生コンクリートを運搬車Cに供給する。
【0019】
以上に説明した製造装置10は、生コンクリートの製造装置の一例であり、生コンクリートの製造装置は、コンクリート材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造可能であれば、どのように構成されていてもよい。例えば、製造装置10は、集合ホッパ16を備えていなくてもよく、計量瓶14で計量された各種材料が、計量瓶14からミキサ20に供給されてもよい。
【0020】
計測装置50は、780nmよりも大きい波長を有する光が骨材に対して照射された際の骨材での反射又は吸収に応じたデータ(以下、「スペクトルデータ」という。)を取得する装置する。計測装置50は、780nmよりも大きい2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じたスペクトルデータを取得する。スペクトルデータは、少なくとも、第1の波長(波長帯)を有する光の骨材での反射又は吸収に応じたスペクトル値と、第1の波長とは異なる第2の波長(波長帯)を有する光の骨材での反射又は吸収に応じたスペクトル値とを含む。第1の波長及び第2の波長は、780nmよりも大きい。光の反射に応じたスペクトル値は、光が照射された骨材からの反射光の強度を示す値であってもよい。光の吸収に応じたデータは、光が照射された骨材からの透過光の強度を示す値であってもよい。
【0021】
計測装置50が取得するスペクトルデータにおける波長の下限は、780nm、800nm、850nm、又は、900nmであってもよい。計測装置50が取得するスペクトルデータにおける波長の上限は、4000nm、3500nm、3000nm、2500nm、又は2000nmであってもよい。水は、可視光の波長よりも大きい波長の光(例えば、近赤外光及び赤外光)を吸収する性質を有する。780nm~4000nmの波長範囲のうちの1450nm等の特定の波長において、光の吸収の程度が、その特定の波長の近傍よりも大きくなること(ピークが現れること)が知られている。スペクトルデータに含まれる波長の範囲は、水による光の吸収のピークが現れる波長を含むように設定されてもよい。計測装置50により取得されたスペクトルデータは、骨材に含まれる水の量(骨材の表面水率)に応じて変化し得る。
【0022】
計測装置50は、780nmよりも大きい範囲の波長を有する光を骨材に照射するように構成されてもよい。計測装置50は、骨材に対して光が照射されて反射した光に基づいて、骨材を撮像することによって上記スペクトルデータを取得してもよい。計測装置50は、撮像によりスペクトルデータを取得する際に、撮像対象の骨材が積み重なった状態で、撮像対象の骨材から離れた位置から当該骨材を含む範囲を撮像することで、上記スペクトルデータを取得してもよい。計測装置50に含まれる撮像を行う部材は、運搬装置8によって運搬されている骨材を撮像可能となるように配置されていてもよい。計測装置50は、運搬装置8に含まれるベルトコンベアが停止している状態、又は動いている状態で、運搬中の骨材を撮像してもよい。なお、計測装置50は、骨材の受入れ時において、輸送トラック又は輸送船に積載された状態の骨材を撮像してもよい。計測装置50は、床又はゴムシートが準備された撮像室内に配置され、床等に載せられた骨材を撮像してもよい。
【0023】
計測装置50は、例えば、ランプ52と、ハイパースペクトルカメラ54とを含む。ランプ52は、骨材に対して光を照射する部材である。ランプ52は、ハロゲンランプであってもよい。ランプ52によって照射される光の少なくとも一部の波長は、780nmよりも大きい。ハイパースペクトルカメラ54は、ある波長範囲(例えば、900nm~1700nm)において、波長(波長帯)ごとに2次元の領域内の複数箇所それぞれの光の強さに応じたスペクトル値を取得可能なカメラである。ハイパースペクトルカメラ54には、ラインレーザ式ハイパースペクトルカメラ、スナップショット式ハイパースペクトルカメラなどの種類がある。計測装置50では、撮像方法又は撮像対象に応じて適切な形式のハイパースペクトルカメラが選択されてもよい。なお、水による光の吸収のピークが現れる波長を含むスペクトルデータを取得できれば、例えば、ハイパースペクトルカメラ以外の撮像装置を用いてもよい。本開示の一部では、簡便のため、スペクトルデータを、例えば図2のような画像に変換して説明を行う。
【0024】
図2には、ハイパースペクトルカメラ54によって得られるスペクトルデータを可視化した画像が模式的に示されている。ハイパースペクトルカメラ54によって得られるスペクトルデータには、例えば、値が異なる100個~200個の波長λ(波長帯)ごとに、撮像領域の座標ごとのスペクトル値が含まれる。より具体的には、図2に例示されるスペクトルデータは、方向X、方向Y及び方向Zのデータを含む。このうち、方向X、方向Yのデータは座標を表す。また、方向Zの情報は波長データである。なお、図2では、方向X及び方向Yが、2次元の領域での縦方向及び横方向を表す。図2で示す画像は、あくまでハイパースペクトルカメラから得られるスペクトルデータを可視化するために構築したものであるが、わかりやすさのために画像を基に説明すると、1つの2次元画像では、撮像領域の座標ごとに、対応する波長λ(波長帯)を有する光の入射量に応じたスペクトル値が得られている。そのため、1つの座標に着目した場合に、波長λの変化に対する光の強度の変化を示すスペクトルが得られる。ハイパースペクトルカメラ54が反射光に基づき撮像を行う場合、座標ごとに、波長λの変化に対する反射光の強度の変化を示す反射スペクトルが得られる。
【0025】
図1に戻り、ハイパースペクトルカメラ54は、運搬装置8によって運搬中の骨材を含む範囲を撮像可能な位置に配置されてもよい。ハイパースペクトルカメラ54は、運搬装置8によって運搬されており、積み重なった状態の骨材を上方から撮像可能であってもよい。本開示において、積み重なった状態の骨材とは、上方から見て、当該骨材に含まれる一部の粒が、他の粒に重なっている状態をいう。ハイパースペクトルカメラ54としては、例えば、RESONON社製のPika IR(商品名)を用いることができる。
【0026】
制御装置60は、製造装置10を制御する装置である。制御装置60は、1つ又は複数のコンピュータによって構成される。制御装置60が複数のコンピュータで構成される場合、これらのコンピュータは、互いに通信可能に接続される。制御装置60は、設定された動作条件に従って製造装置10を制御する。動作条件の少なくとも一部は、作業員等のオペレータからの指示によって定められてもよい。
【0027】
制御装置60には、入出力デバイス62が接続されてもよい(図3参照)。入出力デバイス62は、作業員等からの指示を示す情報を制御装置60に入力すると共に、制御装置60からの情報を作業員等に出力するためのデバイスである。入出力デバイス62は、入力デバイスとして、キーボード、操作パネル、又はマウスを含んでいてもよく、出力デバイスとして、モニタ(例えば、液晶ディスプレイ)を含んでいてもよい。入出力デバイス62は、入力デバイス及び出力デバイスが一体化されたタッチパネルであってもよい。制御装置60及び入出力デバイス62が一体化されていてもよい。
【0028】
製造装置10によって製造される生コンクリートの品質は、コンクリート材料の品質に影響を受けることが知られている。具体的には、生コンクリートの製造に用いられる骨材の表面水率が、生コンクリートの流動性(例えば、スランプ、及びスランプフロー)に影響を及ぼす。例えば、骨材の表面水率が大きいほど、骨材由来の水が多くなるので、生コンクリートの流動性が大きくなり得る。反対に、骨材の表面水率が小さいほど、骨材由来の水が少なくなるので、生コンクリートの流動性が小さくなり得る。なお、骨材の表面水率は、コンクリートの強度、耐久性にも影響を及ぼす。したがって、骨材の表面水率は、適切な品質管理が求められる。
【0029】
一例では、生コンクリートの材料の配合は、骨材が表乾状態であるとして(すなわち、骨材の表面水率が0%であるとして)計算されるため、骨材に表面水がある場合には、計算上の配合よりも、骨材は多く計量され、水は少なく計量される。生コンクリートを製造する工場では、細骨材等の骨材の表面水率が変動し得る。そのため、骨材の表面水率に関して適切な管理を行わないと、実際の表面水率と、製造するために設定した表面水率との間に差異が生じ、目標の品質とは異なる生コンクリートを製造してしまう可能性がある。このように、生コンクリートの流動性を含む品質を安定化させるためには、骨材の表面水率を管理する必要がある。生コンクリートの品質の安定化を図るために、例えば、設定した骨材の表面水率が実際の表面水率と一致しているか否かを管理する必要がある。
【0030】
制御装置60は、製造装置10に対する制御に加えて、製造装置10による生コンクリートの製造に用いられる骨材の品質を予測するように構成されていてもよい。この場合、制御装置60が、骨材の品質を予測する品質予測装置を構成する。品質予測装置として機能する制御装置60は、製造装置10が用いる骨材の少なくとも一部の表面水率を予測する。
【0031】
制御装置60は、少なくとも、骨材に対して光が照射された際の、780nmよりも大きい2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じたスペクトルデータから得られる特徴量と、骨材の表面水率との関係を示す検量線を取得する準備工程を実行するように構成されている。また、制御装置60は、評価対象の骨材に対して光が照射された際の、2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じた評価用のスペクトルデータを取得する第1取得工程と、評価用のスペクトルデータから、評価用の特徴量を取得する第2取得工程と、評価用の特徴量と、検量線とに基づいて、評価対象の骨材の表面水率を予測する予測工程と、を実行するように構成されている。
【0032】
制御装置60は、機能上の構成(以下、「機能モジュール」という。)として、例えば、動作制御部68と、検量線取得部72と、検量線保持部74と、品質予測部76と、出力部78とを有する。これらの機能モジュールが実行する処理は、制御装置60が実行する処理に相当する。動作制御部68は、上記動作条件に従って、生コンクリートを製造するように製造装置10を制御する機能モジュールである。作業員等は、生コンクリートの目標品質に応じて、動作条件を調整(変更)してもよい。
【0033】
検量線取得部72は、上記スペクトルデータから得られる特徴量と、骨材の表面水率との関係を示す検量線を取得する機能モジュールである。スペクトルデータから得られる特徴量については、後述する。検量線は、スペクトルデータから得られる特徴量の入力に応じて、骨材の表面水率の予測値を出力する回帰式である。検量線取得部72が取得する検量線では、スペクトルデータから得られる特徴量と、骨材の表面水率との関係が一次関数を用いて示されていてもよい。
【0034】
検量線取得部72は、入出力デバイス62を介した作業員等の指示に基づいて検量線を作成することで、検量線を取得してもよい。この場合、制御装置60には、作業員等によって、特徴量と、当該特徴量に対応付けられた表面水率の正解値(実測値)とを1セットとした複数のデータセットが入力されてもよい。検量線取得部72は、特徴量及び表面水率の複数の組合せからなる上記複数のデータセットに基づき、最小二乗法により検量線を構築してもよい。検量線取得部72は、自身で検量線を作成することに代えて、作業員等が作成した検量線、又は、他のコンピュータで作成された検量線を取得してもよい。検量線取得部72が検量線を取得する段階は、準備フェーズに相当する。
【0035】
検量線保持部74は、検量線を保持(記憶)する機能モジュールである。品質予測部76は、骨材の表面水率を予測する機能モジュールである。本開示では、表面水率の予測が行われる対象の骨材を「評価対象の骨材」と称する。品質予測部76は、評価対象の骨材に光が照射された際の評価用のスペクトルデータを取得する。品質予測部76は、評価用のスペクトルデータから得られる特徴量と、検量線保持部74が保持する検量線とに基づいて、評価対象の骨材の表面水率を予測する。具体的には、品質予測部76は、評価用のスペクトルデータから得られる特徴量を上記検量線に入力して、当該検量線から出力される値を表面水率の予測値として取得する。品質予測部76が検量線を用いて表面水率を予測する段階は、評価フェーズに相当する。
【0036】
出力部78は、品質予測部76による表面水率の予測結果を出力する機能モジュールである。出力部78は、表面水率の予測結果を入出力デバイス62の出力デバイス(例えば、モニタ)に出力することで、予測結果を作業員等に報知してもよい。
【0037】
図3に示されるように、制御装置60は、回路91を有する。回路91は、1以上のプロセッサ92と、メモリ93と、ストレージ94と、入出力ポート95と、タイマ96とを含む。ストレージ94は、例えば不揮発性の半導体メモリ等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。ストレージ94は、予め設定された制御手順で製造装置10を制御することを制御装置60に実行させるためのプログラム、及び、予め設定された予測手順で骨材の表面水率を予測することを制御装置60に実行させるためのプログラムを記憶している。例えばストレージ94は、上述した各機能モジュールを構成するためのプログラムを記憶している。
【0038】
メモリ93は、ストレージ94の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ92による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ92は、メモリ93と協働して上記プログラムを実行することで、制御装置60の各機能モジュールを構成する。入出力ポート95は、プロセッサ92からの指令に従って、製造装置10、計測装置50、及び入出力デバイス62等との間で電気信号の入出力を行う。タイマ96は、例えば一定周期の基準パルスをカウントすることで経過時間を計測する。なお、回路91は、必ずしもプログラムにより各機能を構成するものに限られない。例えば回路91は、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により少なくとも一部の機能を構成してもよい。
【0039】
[生コンクリートの製造方法]
続いて、製造システム1において実行される生コンクリートの製造方法の一例について説明する。生コンクリートの製造方法は、生コンクリートを製造する工程と、骨材の品質を予測する工程とを含む。生コンクリートを製造する工程が実行されている期間の少なくとも一部と重複する期間において、骨材の品質を予測する工程が実行されてもよい。
【0040】
生コンクリートを製造する工程(以下、「製造工程」という。)は、例えば、搬送工程と、計量工程と、投入工程と、練混ぜ工程と、排出工程と、積込工程とを含む。搬送工程では、運搬装置8によって、各種のコンクリート材料が貯蔵瓶12まで搬送されて、貯蔵瓶12に各種材料が個別に供給される。計量工程では、貯蔵瓶12から計量瓶14に各種材料が個別に供給され、計量瓶14において各種材料が計量される。計量工程では、材料ごとに、計測量が所定の設定量に達した場合に、その材料が集合ホッパ16に排出される。
【0041】
投入工程では、集合ホッパ16に全ての種類の材料が集約された後に、集合ホッパ16内の材料がミキサ20に投入(供給)される。練混ぜ工程では、ミキサ20において複数種のコンクリート材料が練り混ぜられる。排出工程では、ミキサ20においてコンクリート材料の練混ぜが終了した後に、ミキサ20から積込ホッパ30に生コンクリートが排出される。積込工程では、積込ホッパ30内に排出された生コンクリートが、運搬車Cに積み込まれる。
【0042】
骨材の品質を予測する工程(以下、「品質予測工程」という。)は、準備フェーズでの準備工程と、評価フェーズでの品質評価工程とを含む。品質予測工程(品質予測方法)において、準備工程は、品質評価工程の前に実行される。以下、準備工程の一例と、品質評価工程の一例とについて説明する。なお、骨材の品質として、細骨材の表面水率が予測され、ハイパースペクトルカメラ54によって上記スペクトルデータが得られる場合を例に説明する。
【0043】
(準備工程)
図4(a)は、準備工程において実行される一連の処理の一例を示すフローチャートである。この準備工程は、製造装置10での上記製造工程が実行される前、又は、上記製造工程が開始された初期段階において実行されてもよい。この準備工程では、製造装置10において生コンクリートの製造に用いられる細骨材の一部が抽出されて、その細骨材の一部が「試験用の細骨材」として検量線の作成に用いられてもよい。
【0044】
準備工程では、最初にステップS11が実行される。ステップS11では、例えば、作業員等によって、検量線を作成するためのデータが準備される。まず、作業員等によって、表面水率が既知の試験用の細骨材が準備される。この際、表面水率が互いに異なる複数の試料(サンプル)が、試験用の細骨材として準備される。試験用の細骨材における複数の試料それぞれの既知の表面水率が、検量線を作成する際の正解データとなる。
【0045】
そして、ステップS11では、上記複数の試料それぞれについて、ランプ52によって光が照射された状態で、ハイパースペクトルカメラ54によって試料が撮像される。検量線取得部72は、ハイパースペクトルカメラ54による撮像で得られたスペクトルデータを取得する。これにより、試験用の細骨材に対して光が照射された際の、780nmよりも大きい2以上の波長における細骨材での反射に応じたスペクトルデータが得られる。
【0046】
次に、ステップS12が実行される。ステップS12では、例えば、検量線取得部72が、試料ごとに、ステップS12で得られたスペクトルデータから特徴量を演算する。図5(a)及び図5(b)には、特徴量の演算方法の一例を説明するための図が示されている。検量線取得部72は、試料ごとに、以下の演算処理を行ってもよい。演算処理の一部では、複数の波長それぞれの2次元画像Iλが、複数の領域に区画されて処理が行われる。図5(a)に示されるように、複数の波長それぞれの2次元画像Iλが、複数(この例では、9個)の領域に均等に区画される。図5(a)では、2次元画像Iλが、領域R1~R9に区画されている様子が例示されている。
【0047】
演算処理は、第1変換処理と、第1変換処理の後に実行される第2変換処理とを含む。検量線取得部72は、演算処理の最初に、領域R1~R9に含まれる領域ごとに、第1変換処理を行う。第1変換処理では、検量線取得部72が、波長ごとに、対象となる領域に含まれる全座標でのスペクトル値の算術平均を算出する。これにより、図5(b)に示されるように、各領域に関して、波長の変化に対する、領域内のスペクトル値の算術平均の変化を示す反射スペクトルが得られる。図5(b)に示される反射スペクトルのグラフにおいて、横軸は波長(nm)であり、縦軸は、スペクトル値の算術平均である。
【0048】
検量線取得部72は、領域R1~R9に関して得られた複数の反射スペクトルそれぞれについて(反射スペクトルごとに)、第2変換処理を行う。第2変換処理において、検量線取得部72は、反射スペクトルにおける第1波長λ1での第1スペクトル値ρ(λ1)と、反射スペクトルにおける第2波長λ2での第2スペクトル値ρ(λ2)との差分に応じて特徴量を求める。第1波長λ1及び第2波長λ2は、作業員等によって定められてもよい。この例では、第1スペクトル値は、第1波長λ1での1つの領域内のスペクトル値の算術平均であり、第2スペクトル値は、第2波長λ2での1つの領域内のスペクトル値の算術平均である。作業員等は、複数の反射スペクトルの傾向を観察して、第1スペクトル値と第2スペクトル値との差分が、ある程度大きくなるように第1波長λ1及び第2波長λ2を選定してもよい。
【0049】
検量線取得部72は、第1スペクトル値と第2スペクトル値との差分を、第2スペクトル値で除算して得られる値を、特徴量として算出してもよい。以上のように、表面水率が互いに異なる複数の試料それぞれについて、第1変換処理及び第2変換処理を含む演算処理が行われる。これにより、複数の試料それぞれについて(試料ごとに)、複数の特徴量と、複数の特徴量に対応付けられた表面水率の正解値と含むデータセットが得られる。
【0050】
次に、ステップS13が実行される。ステップS13では、例えば、検量線取得部72が、ステップS12で得られた試料ごとのデータセットを用いて、特徴量と表面水率との関係を示す検量線を作成する(図6(a)等を参照)。検量線取得部72は、特徴量を「x」で表し、表面水率を「y」で表したときに、下記の式(1)に示される一次の回帰式を検量線として作成してもよい。
表面水率y=係数a×特徴量x+係数b ・・・(1)
【0051】
検量線取得部72は、それぞれのデータセットにおいて特徴量と表面水率の正解値とが対応付けられた複数のデータセットに基づき、最小二乗法により上記式(1)における係数a及び係数bを決定することで、一次の回帰式を構築してもよい。
【0052】
図6(a)等に示されるように、表面水率がある値(例えば、3.5%程度)を境界として、特徴量の変化に対する表面水率の変化の傾向が異なる場合が想定される。表面水率が小さい領域では、反射スペクトル(特徴量)の変化率が大きく、表面水率が大きい領域では、反射スペクトル(特徴量)の変化率が小さい。そのため、検量線取得部72は、特徴量が第1範囲に含まれる場合での特徴量と表面水率との関係を示す第1検量線C1と、特徴量が第1範囲とは異なる第2範囲に含まれる場合での特徴量と骨材の表面水率との関係を示す第2検量線C2とを作成してもよい。第1範囲及び第2範囲は、連続した2つの範囲であり、作業員等の指示によって設定されてもよい。作業員等は、特徴量の変化に対する表面水率の変化の傾向を観察して、第1検量線C1を作成する第1範囲、及び第2検量線C2を作成する第2範囲を決定してもよい。第1検量線C1及び第2検量線C2は、上記式(1)に示される一次の回帰式であってもよく、第1検量線C1と第2検量線C2との間では、係数a及び係数bの少なくとも一方が異なってもよい。
【0053】
次に、ステップS14が実行される。ステップS14では、例えば、検量線保持部74が、ステップS13で作成(取得)された検量線を記憶する。第1検量線C1及び第2検量線C2が作成される場合には、検量線保持部74は、第1検量線C1及び第2検量線C2を記憶する。検量線保持部74は、第1検量線C1に対応する第1範囲を示す情報と、第2検量線C2に対応する第2範囲を示す情報と記憶してもよい。以上により、準備工程が終了する。製造装置10が生コンクリートの製造に使用する材料に2種類以上の細骨材が含まれる場合、細骨材の種類ごとに、上述のステップS11~S14の一連の処理が実行されてもよい。
【0054】
(品質評価工程)
図4(b)は、品質評価工程において実行される一連の処理の一例を示すフローチャートである。この品質評価工程は、例えば、製造装置10での上記製造工程が実行されている期間に行われる。
【0055】
この品質評価工程では、最初に、制御装置60がステップS21を実行する。ステップS21では、例えば、品質予測部76が、計測タイミングとなるまで待機する。計測タイミングは、1日のうちのある時刻に予め定められてもよく、作業員等のオペレータからの指示を受けたタイミングであってもよい。計測タイミングとなった場合に、材料置場2から細骨材が運搬装置8に載せられるように、制御装置60が制御を実行してもよい。なお、細骨材が運搬装置8により運搬されているタイミングに合わせて、計測タイミングが設定されもよい。
【0056】
次に、制御装置60は、ステップS22を実行する。ステップS22では、例えば、品質予測部76が、上記ステップS11でのスペクトルデータの取得と同じ条件で、評価対象の骨材についてのスペクトルデータ(以下、「評価用のスペクトルデータ」という。)を取得する。一例では、品質予測部76は、運搬装置8上において積み重なった状態の評価対象の細骨材に対して光が照射されるようにランプ52を制御する。そして、品質予測部76は、ランプ52により光が照射されている状態で、評価対象の骨材から離れた位置に配置されたハイパースペクトルカメラ54に運搬装置8上の評価対象の骨材の撮像を実行させる。品質予測部76は、ハイパースペクトルカメラ54による撮像で生成された評価用のスペクトルデータを取得する。これにより、評価対象の細骨材に対して光が照射された際の、780nmよりも大きい2以上の波長における細骨材での反射に応じた評価用のスペクトルデータが得られる。ステップS11及びステップS22では、同じハイパースペクトルカメラ54が用いられてもよい。
【0057】
次に、制御装置60は、ステップS23を実行する。ステップS23では、例えば、品質予測部76が、上記ステップS12での演算処理と同じ方法で、評価用のスペクトルデータから評価用の特徴量を取得する。この場合、評価用のスペクトルデータにおける2次元画像Iλの領域R1~R9それぞれについて、評価用の特徴量が取得される。なお、品質予測部76は、いずれか1つの領域について評価用の特徴量を演算してもよく、領域に区画せずに2次元画像Iλの全域においてスペクトル値の算術平均を算出して、上記演算処理の第2変換処理を行って1つの評価用の特徴量を算出してもよい。
【0058】
次に、制御装置60は、ステップS24を実行する。ステップS24では、例えば、品質予測部76が、ステップS23で取得した評価用の特徴量と、検量線保持部74に保持されている検量線とに基づいて、評価対象の骨材の表面水率を予測する。一例では、品質予測部76は、領域R1~R9に含まれる領域ごとに、対応する評価用の特徴量を検量線に入力して、検量線から出力される値を表面水率の予測値として取得する。品質予測部76は、領域R1~R9それぞれの表面水率の予測値の算術平均を演算して、その平均値を評価対象の骨材の表面水率であると予測してもよい。
【0059】
上述した第1検量線C1及び第2検量線C2が準備されている場合には、品質予測部76は、評価用の特徴量と、第1検量線C1及び第2検量線C2のいずれか一方とに基づいて、評価対象の骨材の表面水率を予測する。具体的には、品質予測部76は、評価用の特徴量が第1検量線C1に対応する第1範囲に含まれる場合には、第1検量線C1を選択して、第1検量線C1から表面水率の予測値を取得する。また、品質予測部76は、評価用の特徴量が第2検量線C2に対応する第2範囲に含まれる場合には、第2検量線C2を選択して、第2検量線C2から表面水率の予測値を取得する。
【0060】
次に、制御装置60は、ステップS25を実行する。ステップS25では、例えば、出力部78が、ステップS24での表面水率の予測結果を出力する。一例では、出力部78は、評価対象の骨材に関する表面水率の予測値を入出力デバイス62のモニタ上に表示させる。これにより、作業員等が、表面水率の予測結果を確認できる。表面水率の予測結果を確認した作業員等は、設定した表面水率が表面水率の予測結果と異なる場合に、生コンクリートの品質を保つための処理(例えば、骨材の表面水率の調整、配合の修正)を行ってもよい。
【0061】
以上により、1回の表面水率の予測を行う一連の処理が終了する。制御装置60は、ステップS25の実行後において、ステップS21~S25の一連の処理を繰り返してもよい。上述の例では、計測タイミングごとに表面水率の予測が行われるが、運搬装置8により運搬中の骨材を連続的に撮像して、生コンクリートの製造に用いられる骨材に対して全数検査が行われてもよい。
【0062】
上述した品質予測方法は、生コンクリートの製造工程(製造ライン)において、生コンクリートの原料(材料)の全数検査を行って品質安定化を図ること以外に、抜取りによる品質試験の代用としても利用可能である。抜取りによる品質試験としては、例えば、原料受入れ時の検査である受入検査、生コンクリートの各製造工程における検査である工程検査が挙げられる。抜取りによる品質試験は、安定した品質の生コンクリートを供給するために、日常的に行われている。従来、抜取りによる品質試験によって表面水率を測定する場合、例えば、JIS A 1111「細骨材の表面水率試験方法」に従って表面水率が測定される。日常的な品質試験に対して、本実施形態に係る骨材の品質予測方法を適用すれば、品質予測試験の時間を大幅に短縮でき、例えば、1日における品質予測試験の頻度を増加させることができる。これにより、より安定した品質の生コンクリートを供給することが可能になる。本実施形態に係る骨材の品質予測方法を用いて、抜取りによる品質試験を行う場合、例えば、抜き取った骨材をゴムシートの上に堆積させ、その上に配置された計測装置50によってスペクトルデータ及び特徴量を取得することができる。なお、本実施形態に係る骨材の品質予測方法を受入検査に用いる場合、例えば、輸送トラック、又は輸送船に計測装置50を取り付け、輸送中に品質予測を行うことも可能である。
【0063】
[検量線を用いた予測方法の検証]
検量線を用いた表面水率の予測方法を検証するために、表面水率が既知であるデータセット用いて、検量線による予測結果と正解値との比較検証を行った。試験用の細骨材として、山砂、石灰砕砂、砂岩砕砂、及び安山岩砕砂の4種類の細骨材を準備した。細骨材の種類ごとに、図4(a)に示される一連の処理と同様の手順により、特徴量と表面水率との関係を示す検量線を構築した。検量線を構築する準備工程では、複数の試料それぞれの表面水率を、0%~7.0%の範囲において0.5%単位で設定した。すなわち、表面水率が0%、0.5%、1.0%、・・・、6.5%、及び7.0%の15段階の試料を準備した。表面水率の調整では、試料に対して表面水率の設定値に応じた水を加えて、20℃の室内で1日静置した。
【0064】
ハロゲンランプとラインレーザ式のハイパースペクトルカメラ(RESONON社製、商品名:Pika IR)とを用いて、複数の試料それぞれについて、波長範囲が900nm~1700mmであるスペクトルデータを取得した。試料ごとに、基台のうえに細骨材を並べたうえで、ハイパースペクトルカメラによりスキャンしてスペクトルデータを得た。試料ごとに、スペクトルデータにおける9つの領域(上記領域R1~R9)から反射スペクトルを演算して、9個の特徴量を取得した。複数の試料それぞれの9個の特徴量のうちの7個を検量線の作成に用いて、2個を検証に用いた。このように、1種類の細骨材について、それぞれのデータセットが特徴量と表面水率の正解値との組合せからなる105(15×7)個の作成用データセットと、それぞれのデータセットが特徴量と表面水率の正解値との組合せからなる30個(15×2)個の検証用データセットとを準備した。
【0065】
図6(a)は、試験用の細骨材が山砂である場合に作成された検量線を示すグラフであり、図6(b)は、試験用の細骨材が石灰砕砂である場合に作成された検量線を示すグラフである。図7(a)は、試験用の細骨材が砂岩砕砂である場合に作成された検量線を示すグラフであり、図7(b)は、試験用の細骨材が安山岩砕砂である場合に作成された検量線を示すグラフである。いずれの種類の細骨材であっても、表面水率3.5%に対応する特徴量を第1範囲及び第2範囲の境界として、第1検量線C1及び第2検量線C2を作成した。
【0066】
30個の検証用データセットを用いて、第1検量線C1及び第2検量線C2のいずれか一方を用いて算出される表面水率の予測値と、表面水率の正解値とを比較検証した結果を表1に示す。評価の指標として、細骨材の種類ごとに、許容差ごとの正解率(%)、絶対差平均値(%)、及び標準偏差(%)を算出した。
【0067】
【表1】
【0068】
許容差ごとの正解率は、30個の検証用データセットのうち、検量線を用いた予測値と正解値との差が、所定の許容差以内であるデータセットの割合である。許容差を±0.30%とした場合と、許容差を±0.50%とした場合との検証結果が示されている。絶対差平均値は、30個の検証用データセットにおける正解値と予測値との差分の絶対値の算術平均である。標準偏差は、30個の検証用データセットにおける複数の予測値の標準偏差である。
【0069】
表1に示される結果から、±0.50%を許容差とすると、いずれの種類の細骨材においても、正解率が85%より大きく、精度良く表面水率が予測されていることがわかる。また、細骨材が山砂、石灰砕砂、及び砂岩砕砂である場合に、細骨材が安山岩砕砂である場合に比べて、表面水率がより精度良く予測されていることがわかる。さらに、細骨材が石灰砕砂である場合に、他の種類の細骨材に比べて、表面水率の予測結果が高精度に得られていることがわかる。
【0070】
細骨材の色調による予測結果に対する影響を確認するために、検証に用いた4種類の細骨材について色調を測定した。色調の測定結果を表2に示す。「L値」は明度を表し、「0%」及び「7%」は、表面水率を表している。すなわち、表面水率が0%である場合の明度と、表面水率が7%である場合の明度とを測定した。「a値」及び「b値」は色度を表し、「C値」は彩度を表しており、明度Lと同様に、表面水率が0%及び7%それぞれの場合での色度、彩度の測定値が示されている。明度L等は、測定対象の細骨材の表面水率を0%又は7%に調整したうえで、日本電色工業(株)製の「ハンディー型色彩計・濃度計NR-12B」を用いて測定した。
【0071】
【表2】
【0072】
表1及び表2に示される評価結果から、許容差ごとの正解率と同じような変化の傾向を示す明度Lに着目した。図8(a)には、明度Lと、許容差が±0.30%である場合の正解率との関係を表すグラフが示されており、図8(b)には、明度Lと、絶対差平均値との関係を表すグラフが示されている。これらの結果から、表面水率0%における明度Lが30以上である場合に、正解値と予測結果との誤差が、より小さいことがわかる。また、表面水率0%における明度Lが33以上である場合に、上記誤差が更に小さいことがわかる。くわえて、表面水率0%における明度Lが40以上、50以上、又は60以上である場合に、上記誤差がより一層小さいことがわかる。
【0073】
表面水率が7%である場合では、表面水率7%における明度Lが22以上である場合に、正解値と予測結果との誤差が、より小さいことがわかる。また、表面水率7%における明度が24以上である場合に、上記誤差が更に小さいことがわかる。くわえて、表面水率7%における明度Lが30以上、40以上、又は50以上である場合に、上記誤差がより一層小さいことがわかる。以上のように、明度Lが大きいほど、すなわち、骨材の色が白に近いほど、上記品質予測方法での予測結果の精度が向上していていることがわかる。
【0074】
[変形例]
スペクトルデータの取得方法は、上述の例に限られない。試験用の骨材及び評価対象の骨材に対して光が照射された状態で、ハイパースペクトルカメラ54が、これらの骨材を透過する光に基づいて撮像することでスペクトルデータが得られてもよい。この場合、上述の領域R1~R9に含まれる各領域に関して、波長の変化に対する、領域内のスペクトル値の算術平均の変化を示す吸収スペクトルが得られる。ハイパースペクトルカメラ54以外の検出器を用いて、スペクトルデータが取得されてもよい。第1スペクトル値及び第2スペクトル値は、特定の波長での領域内のスペクトル値の算術平均に代えて、領域内のスペクトル値における最大値、最小値、又は最頻値等であってもよい。第1スペクトル値及び第2スペクトル値は、領域内での所定の演算により得られる値ではなく、ハイパースペクトルカメラ54等の検出器から得られるスペクトル値そのものであってもよい。
【0075】
特徴量の演算方法は、上述の例に限られない。表面水率との間に相関を有するようにスペクトルデータから得られる限り、特徴量は、どのようなものであってもよい。準備工程において、上記第1検量線C1及び上記第2検量線C2に加えて、第1範囲及び第2範囲とは異なる範囲での特徴量と表面水率との関係を示す別の1以上の検量線が取得されてもよい。
【0076】
製造システム1は、製造装置10を制御するコンピュータと、骨材の表面水率を予測するコンピュータ(品質予測装置)とを備えてもよい。骨材の表面水率を予測するコンピュータは、検量線取得部72、検量線保持部74、品質予測部76、及び出力部78を有してもよい。以上に説明した種々の例のうちの1つの例において、他の例で説明した事項の少なくとも一部が適用されてもよい。
【0077】
[本開示のまとめ]
以上に説明した骨材の品質予測方法は、骨材に対して光が照射された際の、780nmよりも大きい2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じたスペクトルデータから得られる特徴量と、骨材の表面水率との関係を示す検量線を取得する準備工程と、評価対象の骨材に対して光が照射された際の、上記2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じた評価用のスペクトルデータを取得する第1取得工程と、評価用のスペクトルデータから、上記特徴量に対応する評価用の特徴量を取得する第2取得工程と、評価用の特徴量と、検量線とに基づいて、評価対象の骨材の表面水率を予測する予測工程と、を含む。
【0078】
骨材の表面水率が、骨材を含むコンクリート材料を練り混ぜて製造される生コンクリートの品質に影響する。例えば、生コンクリートの業界では、品質管理業務の内、フレッシュ性状試験といった工程検査に労力を使用しているという事情がある。そのため、生コンクリート製造の高効率化を図るため、品質管理を省力化することが望まれている。骨材の表面水率を実測するためには、表面水量を計測する必要があり、そのためには、骨材を表乾状態とした場合での測定と、飽水状態とした場合での測定とを行う必要がある。骨材の一種である細骨材は内部に空隙を有しており、細骨材においては、細骨材の表面に水が付着し、さらに、水が空隙に入り込む。細骨材を適切に乾燥させ、細骨材の表面の水を蒸発させて表乾状態とし、且つ、空隙の水を保ち飽水状態とするのは難しく、表面水率を実測して細骨材の品質管理を行うのは煩雑である。これに対して、上記品質予測方法では、光の照射に伴う反射又は吸収から得られるスペクトルデータに基づく特徴量と表面水率との関係を示す検量線を用いて骨材の表面水率を予測する。そのため、生コンクリートの製造に用いられる骨材の表面水率を検査するための作業の簡素化を図ることができる。その結果、検査頻度を増やすことができるので、又は、粗粒率の管理とは異なる品質管理業務に労力を使えるので、生コンクリートの品質の安定化、品質管理の高効率化に有用である。
【0079】
以上に説明した骨材の品質予測方法において、上記スペクトルデータ及び評価用のスペクトルデータのそれぞれは、ハイパースペクトルカメラ54を用いて取得されてもよい。この場合、2以上の波長を含む範囲での骨材での反射又は吸収に応じたスペクトルデータを取得するのが容易である。そのため、表面水率を検査するための作業の簡素化に更に有用である。
【0080】
以上に説明した骨材の品質予測方法において、第1取得工程では、評価対象の骨材が積み重なった状態で、評価対象の骨材から離れた位置から評価対象の骨材を含む範囲が撮像されて、評価用のスペクトルデータが得られてもよい。生コンクリートを製造する工場では、骨材が積み重なっている場合が多い。例えば、受入れ時には、骨材は輸送トラック又は輸送船に積載された状態で運ばれる。また、製造時には、骨材は積み重なった状態で、ベルトコンベア等により運搬される。上記構成では、骨材が積み重なった状態で撮像が行われるので、評価情報を取得するための作業を簡素化することができる。なお、上述した運搬時のみならず、上記品質予測方法を品質管理業務の代用とすることもできる。例えば、受入れ時又は製造時に、骨材の一部を採取して、床又はシートなどに敷き並べて撮像してもよい。
【0081】
以上に説明した骨材の品質予測方法において、上記特徴量及び評価用の特徴量のそれぞれは、2以上の波長のうちの第1波長λ1における第1スペクトル値ρ(λ1)と、第1波長λ1よりも大きい第2波長λ2における第2スペクトル値ρ(λ2)との差分に応じて求められてもよい。上記差分は、骨材での水の反射又は吸収の程度に応じて変化し得るので、表面水率との相関を有する特徴量を得ることができる。
【0082】
以上に説明した骨材の品質予測方法において、上記特徴量及び評価用の特徴量のそれぞれは、上記差分を第2スペクトル値ρ(λ2)で除算することで求められてもよい。上記の演算により特徴量を規格化することができ、第2スペクトル値の大きさによる特徴量への影響を低減することができる。
【0083】
以上に説明した骨材の品質予測方法において、検量線では、上記特徴量と骨材の表面水率との関係が一次関数を用いて示されていてもよい。この場合、検量線を容易に作成することができるので、コンピュータが検量線を作成する場合での演算負荷を低減することができる。
【0084】
以上に説明した骨材の品質予測方法において、準備工程では、上記特徴量が第1範囲に含まれる場合での上記特徴量と骨材の表面水率との関係を示す第1検量線C1が上記検量線として取得されてもよく、上記特徴量が第1範囲とは異なる第2範囲に含まれる場合での上記特徴量と骨材の表面水率との関係を示す第2検量線C2が更に取得されてもよい。予測工程では、評価用の特徴量と、第1検量線C1及び第2検量線C2のいずれか一方とに基づいて、評価対象の骨材の表面水率が予測されてもよい。この場合、表面水率の範囲によって、特徴量の変化に対する表面水率の変化の傾向が異なっていても、特徴量と表面水率との間に高い相関を有する検量線を得ることができる。従って、検量線を用いた表面水率の予測精度を向上させることができる。
【0085】
以上に説明した骨材の品質予測方法において、準備工程で用いられる骨材、及び評価対象の骨材それぞれの、表面水率0%における明度Lは20以上であってもよい。表面水率0%における明度Lが20以上である骨材において、表面水率を精度良く予測できる知見が得られた。したがって、上記のような骨材の表面水率を予測する際に、本品質予測方法を用いることが、より有益である。
【0086】
以上に説明した生コンクリートの製造方法は、骨材を含む材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造工程と、製造工程に用いられる骨材の少なくとも一部の表面水率を予測する品質予測工程と、を含む。品質予測工程は、骨材に対して光が照射された際の、780nmよりも大きい2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じたスペクトルデータから得られる特徴量と、骨材の表面水率との関係を示す検量線を取得する準備工程と、評価対象の骨材に対して光が照射された際の、2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じた評価用のスペクトルデータを取得する第1取得工程と、評価用のスペクトルデータから、上記特徴量に対応する評価用の特徴量を取得する第2取得工程と、評価用の特徴量と、検量線とに基づいて、評価対象の骨材の表面水率を予測する予測工程と、を含む。この製造方法は、上記品質予測方法と同様に、生コンクリートの品質の安定化、品質管理の高効率化に有用である。
【0087】
以上に説明した製造システム1は、骨材を含む材料を練り混ぜて、生コンクリートを製造する製造装置10と、製造装置10が用いる骨材の少なくとも一部の表面水率を予測する制御装置60(品質予測装置)と、を備える。制御装置60は、骨材に対して光が照射された際の、780nmよりも大きい2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じたスペクトルデータから得られる特徴量と、骨材の表面水率との関係を示す検量線を取得する準備工程と、評価対象の骨材に対して光が照射された際の、2以上の波長における骨材での反射又は吸収に応じた評価用のスペクトルデータを取得する第1取得工程と、評価用のスペクトルデータから、上記特徴量に対応する評価用の特徴量を取得する第2取得工程と、評価用の特徴量と、検量線とに基づいて、評価対象の骨材の表面水率を予測する予測工程と、を実行するように構成されている。この製造システム1は、上記品質予測方法と同様に、生コンクリートの品質の安定化、品質管理の高効率化に有用である。
【符号の説明】
【0088】
1…製造システム、2…材料置場、4…サイロ、8…運搬装置、10…製造装置、50…計測装置、52…ランプ、54…ハイパースペクトルカメラ、60…制御装置、72…検量線取得部、74…検量線保持部、76…品質予測部、78…出力部。
図1
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図8