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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094729
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240703BHJP
   B23K 26/046 20140101ALI20240703BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20240703BHJP
【FI】
H01L21/78 B
B23K26/046
B23K26/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211464
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】新井 裕介
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CA06
4E168CA07
4E168CA13
4E168CB03
4E168CB07
4E168CB13
4E168DA02
4E168DA24
4E168DA45
4E168HA01
4E168JA12
5F063AA22
5F063AA28
5F063AA41
5F063AA43
5F063BA25
5F063CB03
5F063CB07
5F063CB28
5F063DD29
5F063DD31
5F063DD32
5F063DE03
5F063DE17
5F063DE23
5F063DE34
5F063FF01
(57)【要約】
【課題】簡単かつ低コストにレーザ加工中の対物レンズの焦点位置調整を実行可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供する。
【解決手段】レーザ光(加工用レーザ光L1)を被加工物(ウェーハW)の内部に集光させる対物レンズ32であって、レンズ光軸O1と、補正環35と、補正環35の回転に応じてレンズ光軸O1に沿って移動する移動レンズ34aと、を有する対物レンズ32と、補正環35を回転させる回転駆動部22と、レーザ加工中に、レンズ光軸O1の光軸方向における一面(裏面Wb)の位置を検出する位置検出部(AF装置38)と、レーザ加工中に、位置検出部の検出結果に基づいて、光軸方向における一面の位置変化に応じて回転駆動部22を駆動して、光軸方向における一面と焦点位置DPとの間の距離Δdの変化を打ち消す方向に補正環35を回転させる焦点位置調整部46と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の一面に対向する位置から被加工物の内部にレーザ光の焦点位置を合わせて前記レーザ光を前記被加工物に照射して、前記被加工物のストリートに沿って前記被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工を実行するレーザ加工装置において、
前記レーザ光を前記被加工物の内部に集光させる対物レンズであって、レンズ光軸と、補正環と、前記補正環の回転に応じて前記レンズ光軸に沿って移動する1又は複数の移動レンズと、を有する対物レンズと、
前記補正環を回転させる回転駆動部と、
前記レーザ加工中に、前記レンズ光軸の光軸方向における前記一面の位置を検出する位置検出部と、
前記レーザ加工中に、前記位置検出部の検出結果に基づいて、前記一面の起伏に応じて前記回転駆動部を駆動して、前記光軸方向における前記一面と前記焦点位置との間の距離の変化を打ち消す方向に前記補正環を回転させる焦点位置調整部と、
を備えるレーザ加工装置。
【請求項2】
前記焦点位置調整部が、前記回転駆動部のみを駆動して、前記距離の変化を打ち消す方向に前記焦点位置を変化させる請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
レンズ光軸と、補正環と、前記補正環の回転に応じて前記レンズ光軸に沿って移動する1又は複数の移動レンズと、を有する対物レンズによって被加工物の内部にレーザ光の焦点位置を合わせた状態で、前記被加工物の一面に対向する位置から前記レーザ光を前記被加工物に照射して、前記被加工物のストリートに沿って前記被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工を実行するレーザ加工方法において、
前記レーザ加工中に、前記レンズ光軸の光軸方向における前記一面の位置を検出する位置検出工程と、
前記レーザ加工中に、前記位置検出工程の検出結果に基づいて、前記一面の起伏に応じて前記補正環を回転する回転駆動部を駆動して、前記光軸方向における前記一面と前記焦点位置との間の距離の変化を打ち消す方向に前記補正環を回転させる焦点位置調整工程と、
を有するレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物であるシリコンウェーハ(以下、ウェーハと略す)は、複数のデバイスが格子状のストリート(加工ライン、切断予定ラインともいう)によって格子状に区画されており、ウェーハをストリートに沿って割断(分割)することで個々のデバイスが製造される。ウェーハを複数のデバイス(チップ)に割断する前工程として、レーザ加工装置によるウェーハのレーザ加工が実行される。
【0003】
例えば特許文献1に記載のレーザ加工装置は、レーザヘッドの対物レンズの焦点位置をウェーハの内部に合わせた状態でこのレーザヘッドからレーザ光をストリートに沿って照射することで、ストリートに沿ってウェーハの内部に切断の起点となるレーザ加工領域を形成するレーザ加工(内部集光加工ともいう)を実行する。これにより、レーザ加工領域からウェーハの厚さ方向に亀裂(クラックともいう)が伸展するので、後工程の割断工程においてウェーハが各デバイス(チップ)に割断される。
【0004】
このようなレーザ加工を実行する場合には、ウェーハの裏面(レーザヘッドに対向する面)から所定の加工深さ位置に精密にレーザ加工領域を生成することが重要である。この場合に、ウェーハ(シリコン)内部の屈折率差異などにより焦点位置の位置決め誤差が約4倍のスケールになるので、ウェーハの裏面から所定の加工深さ位置にレーザ光の焦点位置を精密に合わせる必要がある。
【0005】
そこで、特許文献1に記載のレーザ加工装置は、レーザ加工中に、対物レンズの光軸方向におけるウェーハの裏面の位置検出と、この位置検出結果に基づいて対物レンズを光軸方向に移動させるレンズ駆動部を駆動して対物レンズの焦点位置をウェーハの裏面から一定の加工深さ位置に調整するAF(Auto Focus)制御と、を繰り返し実行する。これにより、レーザ光の焦点位置、すなわち光軸方向におけるレーザ加工領域の形成位置が上述の加工深さ位置で維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-171433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載のレーザ加工装置のレンズ駆動部としてはピエゾユニットが一般的に用いられる。この場合には、ウェーハの裏面の起伏(凹凸)に合わせて相応の重量を有する対物レンズの焦点位置調整(AF制御)をリアルタイムで実行するため、容量(駆動力)の大きいピエゾユニットが必要になり、コストがかかる。また、ピエゾユニット駆動時に発生する慣性力によるオーバーシュート発生などの不安定要素の払拭には限界があり、結果的に焦点位置調整の遅れ(応答遅れ)が発生するおそれがある。なお、この応答遅れを最小限に留めるためには、高度(高価)な制御システムが必要になる。
【0008】
また、メンテナンスのタイミングでピエゾユニットに対して対物レンズを脱着する場合において、ピエゾユニットに搭載されているピエゾ素子に許容以上のトルク(負荷)がかかるとピエゾ素子の破損のおそれがあり、トルク管理に手間がかかるという問題もある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、簡単かつ低コストにレーザ加工中の対物レンズの焦点位置調整を実行可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的を達成するためのレーザ加工装置は、被加工物の一面に対向する位置から被加工物の内部にレーザ光の焦点位置を合わせてレーザ光を被加工物に照射して、被加工物のストリートに沿って被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工を実行するレーザ加工装置において、レーザ光を被加工物の内部に集光させる対物レンズであって、レンズ光軸と、補正環と、補正環の回転に応じてレンズ光軸に沿って移動する1又は複数の移動レンズと、を有する対物レンズと、補正環を回転させる回転駆動部と、レーザ加工中に、レンズ光軸の光軸方向における一面の位置を検出する位置検出部と、レーザ加工中に、位置検出部の検出結果に基づいて、一面の起伏に応じて回転駆動部を駆動して、光軸方向における一面と焦点位置との間の距離の変化を打ち消す方向に補正環を回転させる焦点位置調整部と、を備える。
【0011】
このレーザ加工装置によれば、ピエゾユニット等の対物レンズを光軸方向に移動させるレンズ移動機構を用いることなく、焦点位置を被加工物の一面の位置変化に追従させることができる。
【0012】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、焦点位置調整部が、回転駆動部のみを駆動して、距離の変化を打ち消す方向に焦点位置を変化させる。これにより、補正環を回転させるだけでレーザ光の焦点位置調整が実行可能になるので、焦点位置調整の応答性及び被加工物の一面の起伏に対する焦点位置の追従性が向上し、さらにピエゾユニットを用いる必要がなくなるので低コスト化が図れると共にピエゾユニットの破損のおそれがなくなる。
【0013】
本発明の目的を達成するためのレーザ加工方法は、レンズ光軸と、補正環と、補正環の回転に応じてレンズ光軸に沿って移動する1又は複数の移動レンズと、を有する対物レンズによって被加工物の内部にレーザ光の焦点位置を合わせた状態で、被加工物の一面に対向する位置からレーザ光を被加工物に照射して、被加工物のストリートに沿って被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工を実行するレーザ加工方法において、レーザ加工中に、レンズ光軸の光軸方向における一面の位置を検出する位置検出工程と、レーザ加工中に、位置検出工程の検出結果に基づいて、一面の起伏に応じて補正環を回転する回転駆動部を駆動して、光軸方向における一面と焦点位置との間の距離の変化を打ち消す方向に補正環を回転させる焦点位置調整工程と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、簡単かつ低コストにレーザ加工中の対物レンズの焦点位置調整を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】レーザ加工装置の概略図である。
図2】レーザ加工装置による加工対象のウェーハの平面図である。
図3図2に示したウェーハの一部の断面図である。
図4】符号4Aは対物レンズの側面図であり、符号4B及び符号4Cは対物レンズの断面図である。
図5】回転駆動部の構成を説明するための説明図である。
図6】回転駆動部による補正環の回転駆動を説明するための説明図である。
図7】制御装置の機能ブロック図である。
図8】ウェーハの内部へのレーザ加工領域の形成を説明するための説明図である。
図9】ウェーハの内部への複数層のレーザ加工領域の形成を説明するための説明図である。
図10】焦点位置調整部によるレーザ加工中の加工用レーザ光の焦点位置調整を説明するための説明図である。
図11】レーザ加工装置によるウェーハのレーザ加工処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[レーザ加工装置の構成]
図1は、本発明のレーザ加工装置10の概略図である。図1に示すように、レーザ加工装置10は、被加工物であるウェーハW(例えばシリコンウェーハ)を複数のチップ4(図2参照)に割断する割断プロセスの前工程として、ウェーハWに対してレーザ加工(内部集光加工)を施す。なお、図中のXYZ方向は互いに直交し、このうちX方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向(ウェーハWの厚み方向)である。またθ方向は、Z方向を回転軸とする回転方向である。
【0017】
図2は、レーザ加工装置10による加工対象のウェーハWの平面図である。図3は、図2に示したウェーハWの一部の断面図である。図2及び図3に示すように、ウェーハWには、複数のストリートCH1と複数のストリートCH2とが互いに交差して格子状に形成されている。これにより、ウェーハWは、各ストリートCH1,CH2により複数の領域に区画されている。この区画された各領域にはチップ4を構成するデバイス層6が設けられている。
【0018】
レーザ加工装置10は、レーザ加工により、最初にストリートCH1ごとにストリートCH1に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域Pを形成し、次いでストリートCH2ごとにストリートCH2に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域Pを形成する。
【0019】
図1に戻って、レーザ加工装置10は、テーブル12(XYZθステージともいう)と、移動機構14と、赤外線カメラ16と、レーザヘッド18と、回転駆動部22と、制御装置24と、を備える。
【0020】
テーブル12は、不図示のバックグラインドテープ等を介して、ウェーハWのデバイス層6が設けられている側の表面Waを吸着保持するチャックテーブルである。これにより、ウェーハWは、その表面Waとは反対側の裏面Wb(本発明の被加工物の一面に相当)が後述のレーザヘッド18と対向するようにテーブル12に保持される。
【0021】
移動機構14は、アクチュエータ及びモータ等により構成されており、後述の制御装置24の下、テーブル12をXYZ方向に移動させたり、或いはテーブル12をθ方向に回転させたりする。移動機構14は、レーザ加工時にはテーブル12をX方向(加工送り方向)に移動させる。なお、移動機構14は、テーブル12及びウェーハWに対してレーザヘッド18をXYZθ方向に相対移動可能であれば特に限定されず、例えば、レーザヘッド18を移動させてもよい。
【0022】
赤外線カメラ16は、レーザヘッド18と一体(別体でも可)に設けられている。この赤外線カメラ16は、ウェーハWのレーザ加工前にウェーハWに形成されているアライメント基準を撮影して、このアライメント基準の撮影画像データを制御装置24へ出力する。ここでいうアライメント基準とは、レーザ加工装置10がウェーハWのストリートCH1,CH2の位置を認識するための基準であり、例えば、ストリートCH1,CH2、或いはアライメントマーク(図示は省略)等の公知の基準が用いられる。なお、アライメント基準は、赤外線カメラ16で撮影可能であれば、ウェーハWの内部、表面Wa、及び裏面Wb等の任意の位置に設けられていてもよい。
【0023】
レーザヘッド18は、テーブル12のZ方向上方側の位置(ウェーハWの裏面に対向する位置)に配置されており、後述の制御装置24により制御される。このレーザヘッド18は、ウェーハWの内部に加工用レーザ光L1の焦点位置(集光点)を合わせて加工用レーザ光L1をウェーハWに向けて照射することで、ストリートCH1,CH2に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域Pを形成する。
【0024】
レーザヘッド18は、大別して、レーザ光源30と対物レンズ32とダイクロイックミラー37とAF装置38とを備える。なお、レーザ光源30と対物レンズ32との間の加工用レーザ光L1の光路中には、ダイクロイックミラー37以外にも公知の各種光学系が設けられているが、ここでは具体的な説明は省略する。
【0025】
レーザ光源30は、レーザ加工用のレーザ光である加工用レーザ光L1(パルスレーザ光)を出射する。このレーザ光源30及び加工用レーザ光L1の条件としては、例えば、レーザ光源30が半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ、波長が波長:1.1μm、レーザ光スポット断面積が3.14×10-8cm、発振形態がQスイッチパルス、繰り返し周波数が80~120kHz、パルス幅が180~280ns、出力が8Wである。
【0026】
対物レンズ32は、所謂補正環付き対物レンズであり、レーザ光源30から出射された加工用レーザ光L1をウェーハWの内部に集光する。これにより、レーザ加工によってウェーハWの内部にレーザ加工領域Pが形成される。
【0027】
図4の符号4Aは対物レンズ32の側面図であり、符号4B及び符号4Cは対物レンズ32の断面図である。図4の符号4Aから符号4Cに示すように、対物レンズ32は、Z方向に平行なレンズ光軸O1と、レンズ鏡筒33と、複数のレンズ34(レンズ群)と、補正環35と、駆動伝達機構36と、を有する。
【0028】
レンズ鏡筒33は、レンズ光軸O1の方向である光軸方向(Z方向)に対して平行に延びた略円筒形状に形成されており、レーザヘッド18の筐体に固定されている。このレンズ鏡筒33の内部には光軸方向に沿って複数のレンズ34が収納されている。これらレンズ34の中には、後述の駆動伝達機構36によって光軸方向に移動可能に保持されている1又は複数の移動レンズ34a(移動レンズ群)が含まれている。
【0029】
補正環35は、レンズ鏡筒33の外周面に設けられており、レンズ光軸O1の軸周り方向に回転可能である。この補正環35は後述の回転駆動部22によって回転される。また、補正環35は、図示は省略するが駆動伝達機構36に連結されている。
【0030】
駆動伝達機構36は、レンズ鏡筒33の内部において移動レンズ34aを光軸方向に移動可能に保持している。この駆動伝達機構36は、補正環35がレンズ光軸O1の軸周り方向に回転した場合に、この補正環35の回転運動を、移動レンズ34aをレンズ光軸O1に沿って移動可能な直線運動に変換する。これにより、補正環35の回転(回転方向及び回転角度)に応じて移動レンズ34aがレンズ光軸O1に沿って移動する(図4の符号4B,4C及び矢印A1参照)。その結果、公知のように対物レンズ32の収差(球面収差等)を補正することができる(上記特許文献1参照)。また、補正環35を回転させた場合には、移動レンズ34aの移動により対物レンズ32の焦点位置も光軸方向(Z方向)に沿って移動する。なお、駆動伝達機構36の具体的な構成については公知技術であるのでここでは説明を省略する。
【0031】
図1に戻って、ダイクロイックミラー37は、レーザ光源30と対物レンズ32との間の加工用レーザ光L1の光路中に配置されている。このダイクロイックミラー37は、レーザ光源30から出射される加工用レーザ光L1を透過し、かつ後述するAF装置38から出射される検出用レーザ光L2を反射する。なお、本実施形態においては、ダイクロイックミラー37によって、検出用レーザ光L2の光軸と加工用レーザ光L1の光軸とを同軸(レンズ光軸O1)にして対物レンズ32からウェーハWに向けて出射する。
【0032】
AF装置38は、ダイクロイックミラー37と共に本発明の位置検出部を構成する。
【0033】
AF装置38は、ウェーハWの裏面WbのZ方向(レンズ光軸O1の光軸方向)の位置である裏面位置情報を検出するための検出用レーザ光L2をダイクロイックミラー37に向けて出射する。この検出用レーザ光L2は、加工用レーザ光L1とは異なる波長であって裏面Wbで反射可能な波長を有する。AF装置38から出射された検出用レーザ光L2は、ダイクロイックミラー37により反射された後でウェーハWの裏面Wbに入射する。そして、この裏面Wbで反射された検出用レーザ光L2の反射光がダイクロイックミラー37によりAF装置38に向けて反射される。
【0034】
AF装置38は、ダイクロイックミラー37により反射された検出用レーザ光L2の反射光を受光し、その受光した反射光に基づいて、Z方向における裏面Wbの位置を示す裏面位置情報を検出する。なお、この裏面位置情報として、裏面WbのZ方向の基準位置(レーザ加工領域Pを形成する目標位置)からのZ方向の変位を検出してもよい。
【0035】
具体的にはAF装置38は、受光した検出用レーザ光L2の反射光の分布と光量を検出する。これら反射光の分布と光量は、対物レンズ32からウェーハWまでのZ方向の距離、すなわち、裏面WbのZ方向の変位に応じて変化する。AF装置38は、この性質を利用して、裏面Wbで反射された検出用レーザ光L2の反射光の分布と光量の変化に基づいて、例えば公知の非点収差方式或いはナイフエッジ方式などを用いて裏面位置情報を求める。なお、これらの方式については公知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。そして、AF装置38は、裏面位置情報の検出結果を制御装置24へ出力する。
【0036】
なお、本実施形態では、レーザヘッド18内にAF装置38が設けられており、検出用レーザ光L2の光軸をダイクロイックミラー37により加工用レーザ光L1の光軸(レンズ光軸O1)と同軸にして出射する構成となっているが、この構成に限らない。例えば、AF装置38がレーザヘッド18とは独立して隣接した位置に設けられていてもよい。
【0037】
回転駆動部22は、後述の制御装置24の制御の下、補正環35をレンズ光軸O1の軸周り方向に回転させる。
【0038】
図5は、回転駆動部22の構成を説明するための説明図である。なお、符号5Aは対物レンズ32及び回転駆動部22をY方向側から見た側面図であり、符号5Bは符号5Aの対物レンズ32及び回転駆動部22をZ方向下方側(矢印A2方向側)から見た下面図である。
【0039】
また、図6は、回転駆動部22による補正環35の回転駆動を説明するための説明図である。なお、符号6Aは対物レンズ32及び回転駆動部22をY方向側から見た側面拡大図であり、符号6Bは符号6Aの対物レンズ32及び回転駆動部22をZ方向下方側(矢印A3方向側)から見た下面図である。
【0040】
図5の符号5A及び符号5Bに示すように、回転駆動部22は、例えば、補正環レバー25、アーム26、及びアーム駆動機構27により構成される。
【0041】
補正環レバー25は、略円環形状に形成されており、補正環35の外周面に対して着脱自在に外嵌固定される。これにより、補正環レバー25は、補正環35と一体にレンズ光軸O1の軸回り方向に回転する。また、補正環レバー25の外周面には、補正環レバー25の径方向外側に延びる棒状のレバー部25aが突設されている。
【0042】
アーム26は、2辺で構成された略L字型に形成されており、Y方向に延びる第1アーム部26aと、X方向に延びる第2アーム部26bと、を有する。
【0043】
第1アーム部26aの基端部は第2アーム部26bに接続されている。また、第1アーム部26aの先端部には、補正環レバー25に向かってX方向に突出する2つの突出部26cが形成されている。これら2つの突出部26cは互いに離隔して第1アーム部26a上に形成されている。2つの突出部26cの間隙(ギャップ)には補正環レバー25のレバー部25aが遊嵌する。
【0044】
第2アーム部26bは、アーム駆動機構27によりY方向に移動自在に保持されている。
【0045】
アーム駆動機構27は、第2アーム部26b、すなわちアーム26をY方向に移動可能な公知のアクチュエータである。このアーム駆動機構27は、後述の制御装置24の制御の下、アーム26をY方向に移動させることで補正環35を任意の回転方向及び回転角度で回転させる。具体的にはアーム駆動機構27がアーム26をY方向に移動させると、アーム26上の2つの突出部26cのいずれか1つにレバー部25aが押されて、このレバー部25aにY方向の力が加えられる。これにより、図6の符号6A及び符号6Bに示すように、レバー部25aを介して補正環レバー25及び補正環35が一体的にレンズ光軸O1の軸回り方向に回転される(矢印A4参照)。
【0046】
なお、回転駆動部22の構成は、図5及び図6に示した構成に限定されるものではなく、補正環35を回転可能であれば特に限定はされない。
【0047】
図7は、制御装置24の機能ブロック図である。図7及び既述の図1に示すように、制御装置24は、移動機構14、赤外線カメラ16、レーザヘッド18(レーザ光源30及びAF装置38)、及び回転駆動部22(アーム駆動機構27)などのレーザ加工装置10の各部の動作を統括的に制御する。これにより、制御装置24は、ウェーハWに対するレーザヘッド18のアライメント、及びストリートCH1,CH2ごとのレーザ加工(後述の加工用レーザ光L1の焦点位置調整を含む)などを制御する。
【0048】
制御装置24には、既述の移動機構14、赤外線カメラ16、レーザヘッド18(レーザ光源30、AF装置38)、及び回転駆動部22などの他に、不図示の記憶部及び不図示の操作部(公知のキーボード、マウス、及び操作ボタン等)が接続されている。
【0049】
制御装置24は、不図示の制御プログラムを実行することで、検出制御部40、レーザ加工制御部42、検出制御部43、及び焦点位置調整部46として機能する。以下、本実施形態において「~部」として説明するものは「~回路」、「~装置」、又は「~機器」であってもよい。すなわち、「~部」として説明するものは、ファームウェア、ソフトウェア、及びハードウェアまたはこれらの組み合わせのいずれで構成されていてもよい。
【0050】
検出制御部40は、レーザ加工装置10の各部を制御して、テーブル12に保持されているウェーハWのストリートCH1,CH2の位置(XY面内での向きを含む)を検出するアライメント検出を実行する。
【0051】
最初に検出制御部40は、移動機構14及び赤外線カメラ16を制御して、ウェーハWのアライメント基準の撮影画像データを取得(撮影)する。例えば検出制御部40は、ウェーハWの公知の設計情報に基づいて移動機構14を駆動して、赤外線カメラ16をウェーハWのアライメント基準を撮影可能な位置に相対移動させる。この移動後に検出制御部40は、赤外線カメラ16にアライメント基準を含むウェーハWの撮影を実行させる。これにより、赤外線カメラ16によりウェーハWのアライメント基準の撮影画像データが取得され、この撮影画像データが赤外線カメラ16から検出制御部40に出力される。
【0052】
次いで、検出制御部40は、赤外線カメラ16から入力された撮影画像データからアライメント基準を公知の画像認識法で検出することにより、ウェーハWの各ストリートCH1,CH2の位置を検出する。
【0053】
レーザ加工制御部42は、移動機構14及びレーザヘッド18を制御して、ウェーハWのストリートCH1,CH2ごとにレーザ加工を実行する。このレーザ加工は、各ストリートCH1に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域Pを形成する加工と、各ストリートCH2に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域Pを形成する加工と、を含む。
【0054】
図8は、ウェーハWの内部へのレーザ加工領域Pの形成を説明するための説明図である。図8に示すように、レーザ加工制御部42は、検出制御部40によるアライメント検出結果に基づいて、移動機構14を駆動してテーブル12をθ方向に回転させることにより、互いに交差するストリートCH1,CH2のうちのストリートCH1をX方向(加工送り方向)に平行にする。次いで、レーザ加工制御部42は、検出制御部40によるアライメント検出結果に基づいて、移動機構14を駆動してテーブル12の位置調整を実行することで、レーザヘッド18の光軸を第1番目のストリートCH1の一端に位置合わせするアライメントを実行する。
【0055】
レーザ加工制御部42は、上述のアライメント完了後、レーザヘッド18を制御して、加工用レーザ光L1をウェーハWの裏面WbからZ方向(レンズ光軸O1の光軸方向)の所定の加工深さ位置に集光させることで、この加工深さ位置にレーザ加工領域Pを形成する。
【0056】
次いで、レーザ加工制御部42は、移動機構14を駆動して、テーブル12をX方向に移動させる。これにより、ウェーハWの内部に加工用レーザ光L1を集光させた状態で、ウェーハWに対してレーザヘッド18がX方向に相対移動される、すなわち第1番目のストリートCH1に沿ってレーザヘッド18がウェーハWに対してX方向に相対移動される。その結果、第1番目のストリートCH1に沿ってウェーハWの内部に1層(単層)のレーザ加工領域Pが形成される。また、レーザ加工領域Pが形成されると、このレーザ加工領域Pを起点としてウェーハWの厚さ方向(Z方向)に亀裂Kが発生する。
【0057】
レーザ加工制御部42は、レーザ加工領域Pの層数が単層である場合には、第1番目のストリートCH1に対応するレーザ加工領域Pの形成後、移動機構14を駆動して、レーザヘッド18の光軸を第2番目のストリートCH1の一端に位置合わせ(アライメント)する。そして、レーザ加工制御部42は、レーザヘッド18によりウェーハWの内部に加工用レーザ光L1を集光させた状態で、移動機構14を駆動してテーブル12をX方向に移動させる。これにより、第2番目のストリートCH1に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域Pが形成される。
【0058】
以下同様に、全てのストリートCH1に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域Pが形成される。次いで、レーザ加工制御部42は、移動機構14を駆動して、テーブル12を90°回転させることにより、各ストリートCH2をX方向に平行にする。そして、レーザ加工制御部42は、既述の各ストリートCH1のレーザ加工の同様に、移動機構14及びレーザヘッド18等を制御して、全てのストリートCH2に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域Pを形成する。
【0059】
図9は、ウェーハWの内部への複数層のレーザ加工領域Pの形成を説明するための説明図である。図9に示すように、レーザ加工制御部42は、ウェーハWが厚い場合には、ストリートCH1,CH2に沿ってウェーハWの内部に複数層(2層以上)のレーザ加工領域Pを形成する。この場合には、レーザ加工制御部42は、ストリートCH1ごとに複数層のレーザ加工領域Pを連続して実行すると共に、ストリートCH2ごとに複数層のレーザ加工領域Pを連続して実行する。
【0060】
このようなレーザ加工を実行する場合には、ウェーハWの裏面Wbから所定の加工深さ位置に精密にレーザ加工領域Pを生成する必要がある。このため、レーザ加工装置10では、レーザ加工中に、加工用レーザ光L1(対物レンズ32)の焦点位置が裏面WbからZ方向(光軸方向)において所定の加工深さ位置(目標位置)に維持されるように、裏面Wbの起伏に合わせて対物レンズ32の焦点位置を調整するAF制御を実行する。この際に、従来のようにピエゾユニット等を用いてAF制御を実行した場合には、既述の通り、コスト増加、ピエゾユニット駆動時に発生するオーバーシュートによる焦点位置調整の応答遅れ、及びピエゾ素子の破損等が発生するおそれがある。
【0061】
そこで、本実施形態のレーザ加工装置10では、裏面Wbの起伏に合わせて裏面Wbと対物レンズ32の焦点位置との間のZ方向(光軸方向)における距離変化を打ち消す方向に補正環35を回転させることで、対物レンズ32の焦点位置を調整するAF制御を実行する。
【0062】
図7に戻って、検出制御部43は、レーザ加工中にAF装置38を作動させて、裏面Wbへの検出用レーザ光L2の照射と、裏面Wbからの検出用レーザ光L2の反射光の受光と、裏面位置情報の検出と、焦点位置調整部46への裏面位置情報の出力と、を繰り返し(連続的に)実行させる。
【0063】
図10は、焦点位置調整部46によるレーザ加工中の加工用レーザ光L1の焦点位置調整を説明するための説明図である。なお、図10中の符号M1は補正環35の現在の回転位置を示すマーク(実線で表示)であり、符号M0は補正環35が回転した場合にその回転前のマーク(点線で表示)の位置を示す。また、図中の符号Δdは、裏面Wbと加工用レーザ光L1の焦点位置DPとの間のZ方向(光軸方向)の距離Δdを示す。
【0064】
図10の符号XAからXC及び既述の図7に示すように、焦点位置調整部46は、レーザ加工中に検出制御部43から連続的に入力される裏面位置情報に基づいて回転駆動部22を駆動して、裏面Wbの起伏に応じた距離Δdの変化を打ち消す方向に補正環35を回転させる。
【0065】
具体的には、裏面位置情報が示す裏面WbのZ方向位置(裏面WbのZ方向位置と裏面Wbの目標位置との差分でも可)と、距離Δdの変化を打ち消す補正環35の回転方向及び回転角度と、の関係を示した補正情報(図示は省略)を予め生成する。或いは、裏面WbのZ方向位置と、焦点位置調整用の補正環35の回転方向及び回転角度とを教師データとして機械学習させた学習済みモデルを予め生成する。これにより、焦点位置調整部46は、検出制御部43から裏面位置情報が入力されるごとに、この裏面位置情報が示す裏面WbのZ方向位置に基づいて補正情報又は学習済みモデルを用いることで、焦点位置調整用の補正環35の回転方向及び回転角度を決定することができる。
【0066】
そして、焦点位置調整部46は、補正環35の回転方向及び回転角度を決定するごとに、この決定結果に基づいて回転駆動部22を駆動して補正環35を回転させる。これにより、裏面Wbに起伏が生じていたとしても距離Δdが一定(略一定を含む、以下同じ)に維持される、すなわち裏面Wbの起伏に対して焦点位置DPを追従させることができる。その結果、裏面Wbから所定の加工深さ位置(目標位置)にレーザ加工領域Pが形成される。
【0067】
なお、加工用レーザ光L1の焦点位置調整のために補正環35を回転させた場合には、対物レンズ32の収差も変化してしまうが、本実施形態のレーザ加工(内部集光加工)ではZ方向に一定の厚みを有するレーザ加工領域Pを形成する。このため、加工用レーザ光L1を厳密に一点に集光させる必要はなく、対物レンズ32の多少の収差変化が発生したとしても、レーザ加工領域Pの加工品質に重大な影響は及ぼさない。
【0068】
[本実施形態の作用]
図11は、本発明のレーザ加工方法に係る上記構成のレーザ加工装置10によるウェーハWのレーザ加工処理の流れを示すフローチャートである。
【0069】
図11に示すように、加工対象のウェーハW(製品ウェーハ)がテーブル12に吸着保持されると、制御装置24の検出制御部40が作動する。検出制御部40は、移動機構14及び赤外線カメラ16を制御して、ウェーハWのアライメント基準の撮影画像データを取得する。そして、検出制御部40は、この撮影画像データを解析して、ウェーハWの各ストリートCH1,CH2の位置を検出するアライメント検出を行う(ステップS1)。
【0070】
アライメント検出が完了するとレーザ加工制御部42が作動して、ストリートCH1のレーザ加工を開始する。
【0071】
最初にレーザ加工制御部42は、検出制御部40によるアライメント検出結果に基づいて、移動機構14を駆動して、レーザヘッド18のレンズ光軸O1を第1番目のストリートCH1の一端に位置合わせするアライメントを実行する(ステップS2)。このアライメントが完了すると、レーザ加工制御部42は、レーザヘッド18を制御して、加工用レーザ光L1をウェーハWの内部の所定の加工深さ位置に集光させる。これにより、レーザ加工が開始されて、ウェーハWの内部にレーザ加工領域Pが形成される(ステップS3)。
【0072】
また同時に、検出制御部43がAF装置38からの検出用レーザ光L2の出射を開始させる(ステップS3)。これにより、レーザ加工中に、検出用レーザ光L2がダイクロイックミラー37及び対物レンズ32を経てウェーハWの裏面Wbに入射し、この裏面Wbで反射された検出用レーザ光L2の反射光が対物レンズ32及びダイクロイックミラー37を経てAF装置38に入射する。
【0073】
次いで、レーザ加工制御部42は、移動機構14を駆動して、テーブル12をX方向に移動させることで、ウェーハWに対してレーザヘッド18をX方向に相対移動させる(ステップS4)。これにより、ウェーハWの内部に第1番目のストリートCH1に沿ったレーザ加工領域Pが形成される。なお、レーザ加工制御部42は、ウェーハWが厚い場合には、移動機構14及びレーザヘッド18を制御して、第1番目のストリートCH1に沿った複数層のレーザ加工領域Pを形成する。
【0074】
また、ウェーハWのレーザ加工と並行して、検出制御部43がAF装置38による検出用レーザ光L2の反射光の受光と(ステップS5)、裏面位置情報の検出及び焦点位置調整部46への裏面位置情報の出力と(ステップS6)、を繰り返し実行させる(本発明の位置検出工程に相当)。これにより、レーザ加工中に裏面WbのZ方向位置がリアルタイムに検出される。
【0075】
そして、焦点位置調整部46がAF装置38から入力される裏面位置情報に基づいて、回転駆動部22を駆動して、裏面Wbの起伏に応じた距離Δdの変化を打ち消す方向に補正環35を回転させる(ステップS7、本発明の焦点位置調整工程に相当)。これにより、既述の図10に示したように、距離Δdが一定に維持されるように裏面Wbの起伏に応じて加工用レーザ光L1の焦点位置調整がリアルタイムに実行される。
【0076】
第1番目のストリートCH1に対する単層又は複数層のレーザ加工が完了するまで、既述のステップS4からステップS7までの処理が繰り返し実行される(ステップS8でNO)。このようにレーザ加工中に補正環35を用いた加工用レーザ光L1の焦点位置調整をリアルタイムに実行することで、裏面Wbの起伏に対して焦点位置DPを追従させることができる。その結果、ストリートCH1に沿って裏面Wbから所定の加工深さ位置(目標位置)にレーザ加工領域Pが形成される。
【0077】
以下同様に、残りのストリートCH1に対するレーザ加工と、レーザ加工中の裏面位置情報の検出及び加工用レーザ光L1の焦点位置調整(AF制御)と、が繰り返し実行される(ステップS8及びステップS9でYES、ステップS2からステップS7)。また、全てのストリートCH1のレーザ加工が完了すると、各ストリートCH2に対するレーザ加工と、レーザ加工中の裏面位置情報の検出及び加工用レーザ光L1の焦点位置調整と、が再び繰り返し実行される(ステップS9でNO)。
【0078】
以上のように本実施形態のレーザ加工装置10では、ウェーハWのレーザ加工中に裏面位置情報を検出して、距離Δdが一定に維持されるように補正環35を回転して加工用レーザ光L1の焦点位置調整を実行することで、従来のようにピエゾユニットを用いることなくレーザ加工中のAF制御を実行することができる。これにより、相応の重量を有する対物レンズ32のZ方向位置調整を実行することなく、単に補正環35を回転させるだけで加工用レーザ光L1の焦点位置調整が実行可能になるので、焦点位置調整の応答性及び裏面Wbの起伏に対する焦点位置DPの追従性が向上する。また、高価なピエゾユニットを用いる必要がなくなるので低コスト化が図れる。さらに、従来のようにメンテンナンス時にピエゾユニットを破損させるおそれもなくなる。その結果、従来よりも簡単かつ低コストに焦点位置調整を実行することができる。
【0079】
[その他]
本発明は、補正環35を備え且つピエゾユニット(対物レンズ32のZ方向位置を調整可能な装置)を備えないレーザ加工装置10に限定されず、補正環35及びピエゾユニットの双方を備える既存のレーザ加工装置(例えば特許文献1参照)に回転駆動部22を設けることで適用可能である。この場合には、ピエゾユニットを使用することなく補正環35のみを使用して加工用レーザ光L1の焦点位置調整を実行可能であるので、ピエゾユニットの長寿命化が図れる。
【0080】
また、上述のように補正環35及びピエゾユニットの双方を備えるレーザ加工装置に本発明を適用する場合には、例えば、補正環35とピエゾユニットとを組み合わせて加工用レーザ光L1の焦点位置調整を実行してもよい。この場合には、例えば、ピエゾユニットを用いて加工用レーザ光L1の焦点位置調整(粗調整)を実行し、その後、補正環35を用いて加工用レーザ光L1の焦点位置調整(微調整)を実行する。
【符号の説明】
【0081】
4 チップ
6 デバイス層
10 レーザ加工装置
12 テーブル
14 移動機構
16 赤外線カメラ
18 レーザヘッド
22 回転駆動部
24 制御装置
25 補正環レバー
25a レバー部
26 アーム
26a 第1アーム部
26b 第2アーム部
26c 突出部
27 アーム駆動機構
30 レーザ光源
32 対物レンズ
33 レンズ鏡筒
34 レンズ
34a 移動レンズ
35 補正環
36 駆動伝達機構
37 ダイクロイックミラー
38 AF装置
40 検出制御部
42 レーザ加工制御部
43 検出制御部
46 焦点位置調整部
C1 レンズ光軸
CH1 ストリート
CH2 ストリート
DP 焦点位置
K 亀裂
L1 加工用レーザ光
L2 検出用レーザ光
Nd 半導体レーザ励起
O1 レンズ光軸
P レーザ加工領域
W ウェーハ
Wa 表面
Wb 裏面
Δd 距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11