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特開2024-94862石英部材、エッジリング及びエッチング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094862
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】石英部材、エッジリング及びエッチング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240703BHJP
   C23F 1/08 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
C23F1/08 101
C23F1/08 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211724
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135677
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 光一
(74)【代理人】
【識別番号】100131598
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 和宗
(72)【発明者】
【氏名】菊池 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】安住 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】黒田 亮人
【テーマコード(参考)】
4K057
5F004
【Fターム(参考)】
4K057WM11
4K057WN01
5F004BA09
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB29
5F004CA06
(57)【要約】
【課題】基板処理装置が有する処理チャンバ内に使用される部品の消耗を抑制しつつ、処理チャンバ内における基板の処理を適切に行うことができる技術を提供する。
【解決手段】石英部材は、基板処理装置が有する処理チャンバ内に使用される石英部材であって、石英からなる本体を含み、本体は、本体の表面の少なくとも一部において、酸化物又はフッ化物を含むドープ層を含み、酸化物又はフッ化物は、MgO,CaO,CaF,SrO,BaO,Y,La,Al,HfO及びZrOからなる群から選択される少なくとも1種である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置が有する処理チャンバ内に使用される石英部材であって、
石英からなる本体を含み、
前記本体は、前記本体の表面の少なくとも一部において、酸化物又はフッ化物を含むドープ層を含み、
前記酸化物又は前記フッ化物は、MgO,CaO,CaF,SrO,BaO,Y,La,Al,HfO及びZrOからなる群から選択される少なくとも1種である、石英部材。
【請求項2】
前記ドープ層は、MgO,SrO及びBaOからなる群から選択される少なくとも1種が0~35重量%、CaOが0~55重量%、CaFが0~15重量%、及びY、La、Al、HfO及びZrOからなる群から選択される少なくとも1種が0~20重量%となる組成を有する、
請求項1に記載の石英部材。
【請求項3】
前記ドープ層を除く前記本体が含有する前記酸化物又は前記フッ化物は、1重量%以下である、
請求項1に記載の石英部材。
【請求項4】
前記ドープ層が有する誘電率は、5.5~13の範囲内である、
請求項1に記載の石英部材。
【請求項5】
前記ドープ層が有する気孔率は、1%未満である、
請求項1に記載の石英部材。
【請求項6】
前記処理チャンバは、ハロゲン化物ガス又はプラズマを使用する処理を行うものである、
請求項1に記載の石英部材。
【請求項7】
前記基板処理装置は、前記処理チャンバ内に配置される基板を囲むように配置されるエッジリングを含み、
前記石英部材は、前記エッジリングに使用される、
請求項1に記載の石英部材。
【請求項8】
前記ドープ層の厚みは、前記本体の厚みに対して10~35%の範囲内である、
請求項7に記載の石英部材。
【請求項9】
前記ドープ層の厚みは、0.4~2.5mmの範囲内である、
請求項7に記載の石英部材。
【請求項10】
前記ドープ層は、前記エッジリングの内周から外周に向けて前記ドープ層の厚みが減少するように構成されている、
請求項7に記載の石英部材。
【請求項11】
前記ドープ層は、前記エッジリングの内周から外周に向けて前記酸化物又は前記フッ化物の濃度が減少するように構成されている、
請求項7に記載の石英部材。
【請求項12】
前記ドープ層は、前記エッジリングの内周から外周に向けて誘電率が減少するように構成されている、
請求項7に記載の石英部材。
【請求項13】
処理チャンバ内に配置される基板を囲むように配置されるエッジリングであって、
第1の誘電率を有する本体部と、
前記本体部の上面の少なくとも一部に形成され、前記第1の誘電率よりも高い第2の誘電率を有する上面部と、
を含む、エッジリング。
【請求項14】
前記第1の誘電率は、3~5.5の範囲内である、
請求項13に記載のエッジリング。
【請求項15】
前記第2の誘電率は、5.5~13の範囲内である、
請求項13に記載のエッジリング。
【請求項16】
前記上面部の厚みは、0.4~2.5mmの範囲内である、
請求項13に記載のエッジリング。
【請求項17】
前記上面部は、前記本体部の内側から外側に向けて厚みが減少するように構成されている、
請求項13に記載のエッジリング。
【請求項18】
前記上面部は、前記本体部の内側から外側に向けて誘電率が小さくなるように構成されている、
請求項13に記載のエッジリング。
【請求項19】
処理チャンバと、
前記処理チャンバ内に配置され、基板を保持するチャックと、
前記チャック上に配置された基板を囲むように配置されるエッジリングと、を含み、
前記エッジリングは、
石英からなる本体を含み、
前記本体は、前記本体の表面の少なくとも一部において、酸化物又はフッ化物を含むドープ層を含み、
前記酸化物又は前記フッ化物は、MgO,CaO,CaF,SrO,BaO,Y,La,Al,HfO及びZrOからなる群から選択される少なくとも1種である、
エッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、石英部材、エッジリング及びエッチング装置
に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置が有する部材に使用される、耐久性の高い石英ガラスを提供する技術として、特許文献1に記載された技術がある。当該技術は、石英ガラスにMgなどの元素を含有させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-356346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板処理装置が有する処理チャンバ内に使用される部品の消耗を抑制しつつ、処理チャンバ内における基板の処理を適切に行うことができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一つの例示的実施形態における石英部材は、基板処理装置が有する処理チャンバ内に使用される石英部材であって、石英からなる本体を含み、本体は、本体の表面の少なくとも一部において、酸化物又はフッ化物を含むドープ層を含み、酸化物又はフッ化物は、MgO,CaO,CaF,SrO,BaO,Y,La,Al,HfO及びZrOからなる群から選択される少なくとも1種である。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一つの例示的実施形態によれば、基板処理装置が有する処理チャンバ内に使用される部品の消耗を抑制しつつ、処理チャンバ内における基板の処理を適切に行うことができる技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】プラズマ処理システムの構成例を説明するための図である。
図2】容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
図3】エッジリングの構成例を示す図である。
図4】エッジリングとその周辺の構成例を説明するための図である。
図5】(1)~(4)のエッジリングを説明するための図である。
図6】(1)~(4)のエッジリングについて、基板上に形成される電界が有する強度をシミュレーションした結果を示す。
図7】(1)~(4)のエッジリングについて、基板外周部の位置における電界強度を示すグラフである。
図8】(2)~(4)のエッジリングと、(1)ののエッジリングとのチルティンッグの差異(ΔT(°))を示すグラフである。
図9】(2)~(4)のエッジリングについて、チルティンッグの差異(ΔT)を示すグラフである。
図10】エッジリングの厚みの消耗傾向を示す図である。
図11】ドープ層の厚みが変動するエッジリングとその周辺の構成例を説明するための図である。
図12】ドープ層における添加物の濃度が変動するエッジリングとその周辺の構成例を説明するための図である。
図13】、(5)、(6)、(1)、(2)を用いた場合について、基板上に形成される電界が有する強度をシミュレーションした結果を示す。
図14】(5)、(6)、(2)を用いた場合について、(1)を用いた場合とのチルティンッグの差異(ΔT)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の各実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、基板処理装置が有する処理チャンバ内に使用される石英部材であって、石英からなる本体を含み、本体は、本体の表面の少なくとも一部において、酸化物又はフッ化物を含むドープ層を含み、酸化物又はフッ化物は、MgO,CaO,CaF,SrO,BaO,Y,La,Al,HfO及びZrOからなる群から選択される少なくとも1種である、石英部材が提供される。
【0010】
一つの例示的実施形態において、ドープ層は、MgO,SrO及びBaOからなる群から選択される少なくとも1種が0~35重量%、CaOが0~55重量%、CaFが0~15重量%、及びY、La、Al、HfO及びZrOからなる群から選択される少なくとも1種が0~20重量%となる組成を有する、
請求項1に記載の石英部材。
【0011】
一つの例示的実施形態において、ドープ層を除く本体が含有する酸化物又はフッ化物は、1重量%以下である。
【0012】
一つの例示的実施形態において、ドープ層が有する誘電率は、5.5~13の範囲内である。
【0013】
一つの例示的実施形態において、ドープ層が有する気孔率は、1%未満である。
【0014】
一つの例示的実施形態において、処理チャンバは、ハロゲン化物ガス又はプラズマを使用する処理を行うものである。
【0015】
一つの例示的実施形態において、基板処理装置は、処理チャンバ内に配置される基板を囲むように配置されるエッジリングを含み、石英部材は、エッジリングに使用される。
【0016】
一つの例示的実施形態において、ドープ層の厚みは、本体の厚みに対して10~35%の範囲内である。
【0017】
一つの例示的実施形態において、ドープ層の厚みは、0.4~2.5mmの範囲内である。
【0018】
一つの例示的実施形態において、ドープ層は、エッジリングの内周から外周に向けてドープ層の厚みが減少するように構成されている。
【0019】
一つの例示的実施形態において、ドープ層は、エッジリングの内周から外周に向けて酸化物又はフッ化物の濃度が減少するように構成されている。
【0020】
一つの例示的実施形態において、ドープ層は、エッジリングの内周から外周に向けて誘電率が減少するように構成されている。
【0021】
一つの例示的実施形態において、処理チャンバ内に配置される基板を囲むように配置されるエッジリングであって、第1の誘電率を有する本体部と、本体部の上面の少なくとも一部に形成され、第1の誘電率よりも高い第2の誘電率を有する上面部と、を含む、エッジリングが提供される。
【0022】
一つの例示的実施形態において、第1の誘電率は、3~5.5の範囲内である。
【0023】
一つの例示的実施形態において、第2の誘電率は、5.5~13の範囲内である。
【0024】
一つの例示的実施形態において、上面部の厚みは、0.4~2.5mmの範囲内である。
【0025】
一つの例示的実施形態において、上面部は、本体部の内側から外側に向けて厚みが減少するように構成されている、
請求項13に記載のエッジリング。
【0026】
一つの例示的実施形態において、上面部は、本体部の内側から外側に向けて誘電率が小さくなるように構成されている。
【0027】
一つの例示的実施形態において、処理チャンバと、処理チャンバ内に配置され、基板を保持するチャックと、チャック上に配置された基板を囲むように配置されるエッジリングと、を含み、エッジリングは、石英からなる本体を含み、本体は、本体の表面の少なくとも一部において、酸化物又はフッ化物を含むドープ層を含み、酸化物又はフッ化物は、MgO,CaO,CaF,SrO,BaO,Y,La,Al,HfO及びZrOからなる群から選択される少なくとも1種である、エッチング装置が提供される。
【0028】
以下、図面を参照して、本開示の各実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づいて上下左右等の位置関係を説明する。図面の寸法比率は実際の比率を示すものではなく、また、実際の比率は図示の比率に限られるものではない。
【0029】
<プラズマ処理システムの一例>
図1は、プラズマ処理システムの構成例を説明するための図である。一実施形態において、プラズマ処理システムは、プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理システムは、基板処理システムの一例であり、プラズマ処理装置1は、基板処理装置の一例である。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ(処理チャンバ)10、基板支持部11及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持部11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0030】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP;Capacitively Coupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。また、AC(Alternating Current)プラズマ生成部及びDC(Direct Current)プラズマ生成部を含む、種々のタイプのプラズマ生成部が用いられてもよい。一実施形態において、ACプラズマ生成部で用いられるAC信号(AC電力)は、100kHz~10GHzの範囲内の周波数を有する。従って、AC信号は、RF(Radio Frequency)信号及びマイクロ波信号を含む。一実施形態において、RF信号は、 100kHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。
【0031】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0032】
以下に、プラズマ処理装置1の一例としての誘導結合型のプラズマ処理装置の構成例について説明する。図2は、誘導結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。誘導結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。プラズマ処理チャンバ10は、誘電体窓101を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11、ガス導入部及びアンテナ14を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。アンテナ14は、プラズマ処理チャンバ10上又はその上方(すなわち誘電体窓101上又はその上方)に配置される。プラズマ処理チャンバ10は、誘電体窓101、プラズマ処理チャンバ10の側壁102及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。
【0033】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0034】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材はバイアス電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、RF又はDC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよく、この場合、RF又はDC電極がバイアス電極として機能する。なお、基台1110の導電性部材とRF又はDC電極との両方が2つのバイアス電極として機能してもよい。
【0035】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。一実施形態において、リングアセンブリ112は、一つのエッジリング200を含む。
【0036】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110 内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0037】
ガス導入部は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。一実施形態において、ガス導入部は、中央ガス注入部(CGI:Center Gas Injector)13を含む。中央ガス注入部13は、基板支持部11の上方に配置され、誘電体窓101に形成された中央開口部に取り付けられる。中央ガス注入部13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス流路13b、及び少なくとも1つのガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス流路13bを通過してガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。なお、ガス導入部は、中央ガス注入部13に加えて又はその代わりに、側壁102に形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0038】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してガス導入部に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する少なくとも1つの流量変調デバイスを含んでもよい。
【0039】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、少なくとも1つのバイアス電極及びアンテナ14に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ生成部12の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つのバイアス電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオンを基板Wに引き込むことができる。
【0040】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してアンテナ14に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、アンテナ14に供給される。
【0041】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つのバイアス電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つのバイアス電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0042】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、バイアスDC生成部32aを含む。一実施形態において、バイアスDC生成部32aは、少なくとも1つのバイアス電極に接続され、バイアスDC信号を生成するように構成される。生成されたバイアスDC信号は、少なくとも1つのバイアス電極に印加される。
【0043】
種々の実施形態において、バイアスDC信号は、パルス化されてもよい。この場合、DCに基づく電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つのバイアス電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部がバイアスDC生成部32aと少なくとも1つのバイアス電極との間に接続される。従って、バイアスDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、バイアスDC生成部32aは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0044】
アンテナ14は、1又は複数のコイルを含む。一実施形態において、アンテナ14は、同軸上に配置された外側コイル及び内側コイルを含んでもよい。この場合、RF電源31は、外側コイル及び内側コイルの双方に接続されてもよく、外側コイル及び内側コイルのうちいずれか一方に接続されてもよい。前者の場合、同一のRF生成部が外側コイル及び内側コイルの双方に接続されてもよく、別個のRF生成部が外側コイル及び内側コイルに別々に接続されてもよい。
【0045】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0046】
図3は、本例示的実施形態におけるエッジリングを示す図である。図4は、エッジリングとその周辺の構成例を示す図である。一実施形態において、リングアセンブリ112は、エッジリング200を有する。エッジリング200は、円環状形状を有し得る。図4に示すように、エッジリング200は、縦断面の形状が略方形の外周部210と、外周部210から内側に突出する内周部211とを有し得る。内周部211の上面は、外周部210の上面よりも低く、内周部211は、基板Wの外周部を支持し得る。エッジリング200は、30mm~40mmの幅(内側から外側に向かう方向(径方向)の寸法)を有し得る。
【0047】
一実施形態において、エッジリング200は石英部材の一例である。エッジリング200は、本体300を含み得る。本体300は、ドープ層301を含み得る。本体300は、石英(SiO)製であり得る。本体300は、99重量%以上の石英で構成されていてよい。
【0048】
ドープ層301は、添加元素を含む酸化物又はフッ化物のドープ材を本体300の石英にドープして構成されている。ドープ層301は、本体300の上面に形成されていてよい。ドープ層301は、エッジリング200の上面層の一例である。ドープ層301は、0.4~2.5mmの範囲内の厚みD1を有し得る。ドープ層301は、0.4~2.0mmの範囲内の厚みD1を有し得る。ドープ層301は、0.4~1.5mmの範囲内の厚みD1を有し得る。ドープ層301の厚みD1は、一定であり得る。ドープ層301の厚みD1は、本体300全体の厚みD2に対して10~35%の範囲内であり得る。厚みD1、D2は、エッジリング200の製造時、出荷時、組み立て時の厚みであってよい。
【0049】
添加元素は、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、La、Al、HfおよびZrからなる群から選択される少なくとも1種であり得る。添加元素を含む酸化物又はフッ化物は、MgO,CaO,CaF,SrO,BaO,Y,La,Al,HfO及びZrOからなる群から選択される少なくとも1種であり得る。ドープ層301は、MgO,SrO及びBaOからなる群から選択される少なくとも1種が0~35重量%、CaOが0~55重量%、CaFが0~15重量%、及びY、La、Al、HfO及びZrOからなる群から選択される少なくとも1種が0~20重量%となる組成を有する。ドープ層301は、ドープ層301を除いた本体部302よりも高い誘電率を有し得る。ドープ層301は、5.5~13の範囲内の誘電率を有し得る。本体部302は、3~5.5の範囲内の誘電率を有し得る。
【0050】
本体部302は、ドープ層301における上記添加元素を含む酸化物又はフッ化物を含有していなくてよい。本体部302は、ドープ層301における上記添加元素を含む酸化物又はフッ化物を含有していても、それらは1重量%以下であってよい。
【0051】
一実施形態において、エッジリング200は、型に入れた石英原料の表層に、添加元素を含む酸化物又はフッ化物のドープ材を入れ、それらを焼結することでドープして成形されてよい。一実施形態において、ドープ層301の気孔率は、1%未満である。
【0052】
<プラズマ処理方法の一例>
プラズマ処理方法は、プラズマを用いて基板W上の膜をエッチングするエッチング処理を含む。一実施形態において、プラズマ処理方法は、プラズマ処理装置1において制御部2により実行される。
【0053】
先ず、基板Wが、搬送アームにより処理チャンバ10内に搬入され、リフターにより基板支持部11に載置され、図2に示すように基板支持部11の静電チャック1111及びエッジリング200上に吸着保持される。
【0054】
次に、処理ガスが、ガス供給部20により中央ガス注入部13に供給され、中央ガス注入部13から処理チャンバ10内のプラズマ処理空間10sに供給される。このとき供給される処理ガスは、基板Wのエッチング処理のために必要な活性種を生成するガスを含む。
【0055】
1又は複数のRF信号がRF電源31からアンテナ14及び/又は下部電極に供給される。RF信号又はDC信号がRF電源31又はDC電源32から下部電極(バイアス電極)に供給され、基板Wにバイアス電位が発生し、基板W上のプラズマ中のイオン成分が、基板W側に引き込まれる。プラズマ処理空間10sの基板支持部11上にプラズマが生成され、基板Wがエッチング処理される。
【0056】
本例示的実施形態によれば、エッジリング200が、石英製の本体300を含み、本体300は、本体300の表面においてドープ層301を含む。本体300がドープ層301を含むことで、基板処理によりエッジリング200の消耗が進行することを抑制することができる。石英製の本体300が、その表面にドープ層301を含むことで、石英製のエッジリングに対して、エッジリング200の全体の電気特性が大きく変化することが抑えられる。石英製のエッジリングは、従来から一般的に用いられているものである。その結果、エッジリング200の電気特性の変化によって生じ得る、基板処理におけるプロセス特性の変動を抑制することができる。プロセス特性は、エッチングレート、パターン寸法などを含み得る。よって、基板処理装置が有する処理チャンバ10内に使用されるエッジリング200の消耗を抑制しつつ、処理チャンバ10内における基板処理を適切に行うことができる。
【0057】
ドープ層301は、耐プラズマ性が高いため、プラズマ処理によるエッジリング200の消耗を低減することができる。また、エッジリング200の本体300は石英製であり、本体300の表面にドープ層301を形成するので、エッジリング200全体の電気特性の変化が抑えられる。この結果、基板上に生成されるプラズマの特性が大きく変化することなく、石英製のエッジリングを用いた場合と同様のプロセス特性が得られる。
【0058】
エッジリング200の本体300の上面にドープ層301を形成することで、エッジリング200の下側は、誘電率が低く、エッジリング200の上側のみ誘電率が高くなる。基板支持部11の本体部111が有するバイアス電極は、エッジリング200よりも下に位置しており、当該バイアス電極にバイアス信号が供給された場合に、電荷がエッジリング200の下側の本体300を通ってエッジリング200から漏出することが抑制され、基板に適切なバイアス電位が生じる。
【0059】
<実施例1>
処理チャンバ内に、高周波と低周波のRF信号を供給してプラズマを発生させ、その際、基板支持部上に配置された基板上に生じる電気的挙動(電荷密度、電界強度など)をシミュレーションした。本シミュレーションにおいて、図5に示す、次の(1)~(4)の構造を有するエッジリングを使用した。基板には、直径300mmのウェハを使用した。厚みD2が4.4mmのエッジリングを使用した。
(1)石英(誘電率4.3)のみ(ドープ層無し)
(2)石英本体部(誘電率4.3)及びドープ層(誘電率8.4、厚み1.5mm)
(3)石英本体部(誘電率4.3)及びドープ層(誘電率8.4、厚み2.4mm)
(4)ドープ層(誘電率8.4、厚み4.4mm)のみ(石英本体部無し)。
【0060】
図6は、基板上に形成される電界が有する強度をシミュレーションした結果を示す。ドープ層がある(2)~(4)のエッジリングは、石英のみの(1)のエッジリングに対し、基板外周部(基板の中心から146mm~150mmの部分)における電界強度が減少するが、(2)、(3)を用いた場合は、(4)を用いた場合よりも(1)を用いた場合との差が小さい。電界強度の差が大きいほど、エッチングレート、パターン寸法などのプロセス特性が変わり得る。図7は、(1)~(4)を用いた場合における、基板外周部の位置(基板の中心から147mmの位置)における電界強度を示すグラフである。(2)、(3)を用いた場合は、(1)を用いた場合と電界強度の差が小さい。すなわち、(2)、(3)を用いた場合は、(1)を用いた場合と、基板処理におけるプロセス特性が大きく変わらないことが分かる。
【0061】
<実施例2>
上記(1)~(4)のエッジリングを用いた場合について、基板上に形成されるパターンの傾き(チルティング)を処理チャンバ内のイオンの挙動からシミュレーションした。図8は、(2)~(4)を用いた場合について、(1)を用いた場合とのチルティンッグの差異(ΔT(°))を示すグラフである。図9は、(1)~(4)を用いた場合における基板外周部の位置(基板の中心から147mmの位置)におけるチルティングの差異(ΔT)を示すグラフである。(2)、(3)を用いた場合は、(1)を用いた場合と、基板外周部におけるチルティングの差異(ΔT)が小さい。(2)を用いた場合、基板外周部におけるΔTが0.2°以下であり、(3)を用いた場合よりもさらに好ましい。なお、チルティングは、基板を用いた製品デバイスの特性上重要であり、製品の性能に大きく影響を与えるものである。
【0062】
図10は、エッジリングの厚みの消耗傾向を示す図である。横軸は、エッジリングの径方向である。エッジリングの内周側の方が、エッジリングの外周側よりも消耗量が大きい。エッジリングは、一般的に厚みが10%減少したときに交換する。本実施の形態においてドープ層301の厚みD1を、エッジリング200(本体300)の厚みD2の10%以上とすることで、エッジリング200の厚みD2が10%減少することを遅らせ、エッジリング200の寿命を延ばすことができる。
【0063】
上記実施の形態において、ドープ層301の厚みD1は変動してもよい。一実施形態において、図11に示すように、ドープ層301は、エッジリング200の内周から外周に向けて厚みD1が減少するように構成されていてよい。一実施形態において、エッジリング200の外周部210において、ドープ層301の厚みD1が外側に向かって減少していてもよい。内周部211におけるドープ層301の厚みは、一定であってよい。外周部210の内側端部において、ドープ層301の厚みD1は、エッジリング200の厚みD2の10~35%の範囲内であってよい。外周部210の外側端部において、ドープ層301の厚みD1は、エッジリング200の厚みD2の0~10%の範囲内であってよい。外周部210の外側端部において、ドープ層301の厚みD1は、0mmであってよい。ドープ層301における最も内側の位置の厚みに対し、ドープ層301の最も外側の位置の厚みが5~15%減少するように、ドープ層301の厚みに傾斜を設けてもよい。このとき、ドープ層301の上面が平坦で、ドープ層301の下面が傾斜していてよい。図10に示したように、エッジリングの内周側の方が、エッジリングの外周側よりも10%程度消耗量が大きい。ドープ層301の厚みに5~15%の傾斜を設けることで、ドープ層301の厚みによる傾斜と消耗量の傾斜とを近づけることができる。これにより、エッジリング200の交換時期を効率的に延ばしつつ、ドープ層301の総量を減らしてエッジリング200における電気特性の変化を抑制することができる。
【0064】
一実施形態において、図12に示すように、ドープ層301は、エッジリング200の内周から外周に向けて、添加する酸化物又はフッ化物(添加物)の濃度が減少するように構成されていてよい。一実施形態において、エッジリング200の外周部210において、ドープ層301の添加物の濃度が外側に向かって減少していてもよい。ドープ層301は、外側に向かって複数の部分301a、301b、301c、301d、301eを有し、各部分301a~301eにおける添加物の濃度は、この順番で減少していてよい。内周部211におけるドープ層301の添加物の濃度は、一定であってよい。
【0065】
外周部210の内側端部において、ドープ層301の添加物の濃度は、35~60重量%の範囲内であってよい。外周部210の外側端部において、ドープ層301の添加物の濃度は、0~25重量%の範囲内であってよい。外周部210の内側端部におけるドープ層301の添加物の濃度に対し、外周部210の外側端部におけるドープ層301の添加物の濃度は、0~60重量%の範囲内で小さくてよい。ドープ層301の添加物の濃度は、外側に向かって段階的に減少していてよいし、連続的に減少していてよい。
【0066】
ドープ層301は、エッジリング200の内周から外周に向けて誘電率が減少するように構成されていてよい。ドープ層301は、外側に向かって複数の部分301a、301b、301c、301d、301eを有し、各部分301a~301eにおける誘電率は、この順番で減少していてよい。外周部210の内側端部におけるドープ層301の誘電率に対し、外周部210の外側端部におけるドープ層301の誘電率は、30~70%の範囲内で小さくてよい。ドープ層301の誘電率は、外側に向かって段階的に減少していてよいし、連続的に減少していてよい。
【0067】
<実施例3>
エッジリング200の内周から外周に向けてドープ層301の厚みを減少させた場合(5)と、エッジリング200の内周から外周に向けてドープ層301の添加物の濃度を減少させた場合(6)について、上記実施例1、2と同様のシミュレーションをした。(5)は、内側端部の厚みD1が1.5mm、外側端部の厚みD1が0mmのドープ層を有するエッジリングである。(6)は、ドープ層を5分割し、内側から外側に向けて誘電率が8.4、7.3、6.3、5.3、4.3となるように添加物の濃度を減少させたエッジリングである。図13は、(5)、(6)、(1)、(2)を用いた場合について、基板上に形成される電界が有する強度をシミュレーションした結果を示す。図14は、(5)、(6)、(2)を用いた場合について、(1)を用いた場合とのチルティンッグの差異(ΔT)を示すグラフである。(5)、(6)を用いた場合は、(1)を用いた場合と電界強度の差が小さい。(5)、(6)を用いた場合は、(1)を用いた場合と、基板外周部におけるチルティングの差異(ΔT)が小さい。すなわち、(5)、(6)を用いた場合は、(1)を用いた場合と、基板処理におけるプロセス特性が大きく変わらないことが分かる。
【0068】
エッジリング200において、ドープ層301は、本体300の上面のみならず、側面、底面などの他の表面に形成されてもよい。エッジリング200は、他の形状を有していてよい。
【0069】
以上の実施の形態において、本体300とドープ層301を有する石英部材は、エッジリング200に用いられていたが、プラズマ処理装置1が有する処理チャンバ10内の他の部分に用いられてもよい。一実施形態において、石英部材は、ガス注入部(中央ガス注入部、サイドガス注入部)13に用いられてよい。
【0070】
石英部材は、誘導結合型のプラズマ処理装置に限られず、容量結合プラズマを用いた装置、ECRプラズマを用いた装置、ヘリコン波励起プラズマを用いた装置、又は、表面波プラズマを用いた装置等の他のプラズマ処理装置が有する処理チャンバン内に用いられてよい。
【0071】
石英部材は、プラズマ処理装置以外の基板処理装置が有する処理チャンバ内に用いられてもよい。一実施形態において、石英部材は、PE-CVD(Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition)装置、PVD(Physical Vapor Deposition)装置などが有する処理チャンバ内に用いられてよい。
【0072】
石英部材は、プラズマを用いた処理を行う処理チャンバ内に配置された部材に限られず、ハロゲン化合物を用いた処理を行う処理チャンバ内に配置された部材に用いられてよい。
【0073】
本開示の実施形態は、以下の態様をさらに含む。
【0074】
(付記1)
基板処理装置が有する処理チャンバ内に使用される石英部材であって、
石英からなる本体を含み、
前記本体は、前記本体の表面の少なくとも一部において、酸化物又はフッ化物を含むドープ層を含み、
前記酸化物又は前記フッ化物は、MgO,CaO,CaF,SrO,BaO,Y,La,Al,HfO及びZrOからなる群から選択される少なくとも1種である、石英部材。
【0075】
(付記2)
前記ドープ層は、MgO,SrO及びBaOからなる群から選択される少なくとも1種が0~35重量%、CaOが0~55重量%、CaFが0~15重量%、及びY、La、Al、HfO及びZrOからなる群から選択される少なくとも1種が0~20重量%となる組成を有する、
付記1に記載の石英部材。
【0076】
(付記3)
前記ドープ層を除く前記本体が含有する前記酸化物又は前記フッ化物は、1重量%以下である、
付記1又は2に記載の石英部材。
【0077】
(付記4)
前記ドープ層が有する誘電率は、5.5~13の範囲内である、
付記1から3のいずれか一項に記載の石英部材。
【0078】
(付記5)
前記ドープ層が有する気孔率は、1%未満である、
付記1から4のいずれか一項に記載の石英部材。
【0079】
(付記6)
前記処理チャンバは、ハロゲン化物ガス又はプラズマを使用する処理を行うものである、
付記1から5のいずれか一項に記載の石英部材。
【0080】
(付記7)
前記基板処理装置は、前記処理チャンバ内に配置される基板を囲むように配置されるエッジリングを含み、
前記石英部材は、前記エッジリングに使用される、
付記1から6のいずれか一項に記載の石英部材。
【0081】
(付記8)
前記ドープ層の厚みは、前記本体の厚みに対して10~35%の範囲内である、
付記7に記載の石英部材。
【0082】
(付記9)
前記ドープ層の厚みは、0.4~2.5mmの範囲内である、
付記7または8に記載の石英部材。
【0083】
(付記10)
前記ドープ層は、前記エッジリングの内周から外周に向けて前記ドープ層の厚みが減少するように構成されている、
付記7から9のいずれか一項に記載の石英部材。
【0084】
(付記11)
前記ドープ層は、前記エッジリングの内周から外周に向けて前記酸化物又は前記フッ化物の濃度が減少するように構成されている、
付記7から10のいずれか一項に記載の石英部材。
【0085】
(付記12)
前記ドープ層は、前記エッジリングの内周から外周に向けて誘電率が減少するように構成されている、
付記7から11のいずれか一項に記載の石英部材。
【0086】
(付記13)
処理チャンバ内に配置される基板を囲むように配置されるエッジリングであって、
第1の誘電率を有する本体部と、
前記本体部の上面の少なくとも一部に形成され、前記第1の誘電率よりも高い第2の誘電率を有する上面部と、
を含む、エッジリング。
【0087】
(付記14)
前記第1の誘電率は、3~5.5の範囲内である、
付記13に記載のエッジリング。
【0088】
(付記15)
前記第2の誘電率は、5.5~13の範囲内である、
付記13または14に記載のエッジリング。
【0089】
(付記16)
前記上面部の厚みは、0.4~2.5mmの範囲内である、
付記13から15のいずれか一項に記載のエッジリング。
【0090】
(付記17)
前記上面部は、前記本体部の内側から外側に向けて厚みが減少するように構成されている、
付記13から16のいずれか一項に記載のエッジリング。
【0091】
(付記18)
前記上面部は、前記本体部の内側から外側に向けて誘電率が小さくなるように構成されている、
付記13から17のいずれか一項に記載のエッジリング。
【0092】
(付記19)
処理チャンバと、
前記処理チャンバ内に配置され、基板を保持するチャックと、
前記チャック上に配置された基板を囲むように配置されるエッジリングと、を含み、
前記エッジリングは、
石英からなる本体を含み、
前記本体は、前記本体の表面の少なくとも一部において、酸化物又はフッ化物を含むドープ層を含み、
前記酸化物又は前記フッ化物は、MgO,CaO,CaF,SrO,BaO,Y,La,Al,HfO及びZrOからなる群から選択される少なくとも1種である、
エッチング装置。
【0093】
以上の各実施形態は、説明の目的で記載されており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。以上の各実施形態は、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく種々の変形をなし得る。例えば、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態に追加することができる。また、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態の対応する構成要素と置換することができる。
【符号の説明】
【0094】
1……プラズマ処理装置、10……チャンバ、11……基板支持部、112……リングアセンブリ、1111……静電チャック、200……エッジリング、300……本体、301……ドープ層、W…基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14