IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧

<>
  • 特開-水嚢、および防水堤 図1
  • 特開-水嚢、および防水堤 図2
  • 特開-水嚢、および防水堤 図3A
  • 特開-水嚢、および防水堤 図3B
  • 特開-水嚢、および防水堤 図3C
  • 特開-水嚢、および防水堤 図3D
  • 特開-水嚢、および防水堤 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094864
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】水嚢、および防水堤
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/04 20060101AFI20240703BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
E02B3/04 301
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211730
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】能見 基彦
(72)【発明者】
【氏名】中塩 雄二
【テーマコード(参考)】
2D118
2E139
【Fターム(参考)】
2D118AA20
2D118GA48
2E139AA07
2E139AC19
2E139AC20
(57)【要約】
【課題】作成および設置が容易であり、かつ、設置場所に制約を生じにくい水嚢および防水堤を提供する。
【解決手段】水嚢は、水を貯蔵可能な容器と、前記容器に水を流入させる第1バルブと、重力方向において前記第1バルブよりも上方に設けられて前記容器から空気を排出する第2バルブと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯蔵可能な容器と、
前記容器に水を流入させる第1バルブと、
重力方向において前記第1バルブよりも上方に設けられて前記容器から空気を排出する第2バルブと、を備える、
水嚢。
【請求項2】
前記容器に空気を注入可能な空気注入口をさらに備え、
前記容器は、前記空気注入口から空気を注入することで膨張可能である、
請求項1に記載の水嚢。
【請求項3】
前記容器を設置面に固定するための固定部をさらに備える、
請求項1または2に記載の水嚢。
【請求項4】
前記容器は、設置面に当接する底部を有し、
前記第1バルブは、前記底部の近傍に設けられている、
請求項1または2に記載の水嚢。
【請求項5】
前記容器は、設置面に当接する底部と、前記重力方向において前記底部と対向する天頂部と、を有し、
前記第2バルブは、前記天頂部に設けられている、
請求項1または2に記載の水嚢。
【請求項6】
前記容器から水を排出可能な排水口をさらに備える、
請求項1または2に記載の水嚢。
【請求項7】
前記容器は、設置面に当接する底部と、前記重力方向において前記底部と対向する天頂部と、を有し、
前記底部の強度は、前記天頂部の強度よりも高い、
請求項1または2に記載の水嚢。
【請求項8】
重力方向に交差する左右方向において並べられた複数の水嚢と、
前記重力方向および前記左右方向の双方に交差する前後方向において前記複数の水嚢と隣接するように配され、前記前後方向における水の流れを抑制する抑制部と、を備え、
前記水嚢は、
水を貯蔵可能な容器と、
前記容器に水を流入させる第1バルブと、
前記重力方向において前記第1バルブよりも上方に位置して前記容器から空気を排出する第2バルブと、を有する、
防水堤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水嚢、および防水堤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物や地下施設等の浸水を防止する手段として、土嚢や水嚢が知られている。また、特許文献1には、建築物の上部に降った雨水が袋体に導入されることで形成される防水壁(防水堤)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-59718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、土嚢は重く、人間の手によって運搬するためには多大な労力を要する場合があった。また、袋体に土を封入する作業が煩雑であった。これらの問題から、短時間で土嚢の作成および設置を行うことは困難であった。同様に、従来の水嚢においても、袋体に水を封入する作業が煩雑であった。また、特許文献1に記載の防水壁には、近くに建築物が存在しない場合、または、天候が雨でない場合に使用できないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされ、作成および設置が容易であり、かつ、設置場所に制約を生じにくい水嚢および防水堤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の態様1に係る水嚢は、水を貯蔵可能な容器と、前記容器に水を流入させる第1バルブと、重力方向において前記第1バルブよりも上方に設けられて前記容器から空気を排出する第2バルブと、を備える。
【0007】
また、本発明の態様2は、態様1の水嚢において、前記容器に空気を注入可能な空気注入口をさらに備え、前記容器は、前記空気注入口から空気を注入することで膨張可能である。
【0008】
また、本発明の態様3は、態様1または態様2の水嚢において、前記容器を設置面に固定するための固定部をさらに備える。
【0009】
また、本発明の態様4は、態様1から態様3のいずれか一つの水嚢において、前記容器は、設置面に当接する底部を有し、前記第1バルブは、前記底部の近傍に設けられている。
【0010】
また、本発明の態様5は、態様1から態様4のいずれか一つの水嚢において、前記容器は、設置面に当接する底部と、前記重力方向において前記底部と対向する天頂部と、を有し、前記第2バルブは、前記天頂部に設けられている。
【0011】
また、本発明の態様6は、態様1から態様5のいずれか一つの水嚢において、前記容器から水を排出可能な排水口をさらに備える。
【0012】
また、本発明の態様7は、態様1から態様6のいずれか一つの水嚢において、前記容器は、設置面に当接する底部と、前記重力方向において前記底部と対向する天頂部と、を有し、前記底部の強度は、前記天頂部の強度よりも高い。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の態様8に係る防水堤は、重力方向に交差する左右方向において並べられた複数の水嚢と、前記重力方向および前記左右方向の双方に交差する前後方向において前記複数の水嚢と隣接するように配され、前記前後方向における水の流れを抑制する抑制部と、を備え、前記水嚢は、水を貯蔵可能な容器と、前記容器に水を流入させる第1バルブと、前記重力方向において前記第1バルブよりも上方に位置して前記容器から空気を排出する第2バルブと、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記態様によれば、作成および設置が容易であり、かつ、設置場所に制約を生じにくい水嚢および防水堤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る防水堤を示す斜視図である。
図2図1に示すII-II線に沿う断面図である。
図3A】本発明の実施形態に係る水嚢の使用方法について説明する図である。
図3B図3Aに続く状態を示す図である。
図3C図3Bに続く状態を示す図である。
図3D図3Cに続く状態を示す図である。
図4】本発明の変形例に係る水嚢を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る防水堤および水嚢について図面に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る防水堤3は、複数の水嚢1と、抑制部2と、を備える。防水堤3は、設置面Sに設置されて用いられる。なお、本明細書における語句「設置面S」は、防水堤3が設置される面を意味する。例えば、防水堤3が屋外で用いられる場合には、語句「設置面S」は、地面や舗装面等を指す場合がある。防水堤3が屋内で用いられる場合には、語句「設置面S」は、建築物中における床面などを指す場合がある。
【0018】
防水堤3は、集中豪雨、河川の氾濫等に起因した浸水を抑制する堰として機能する。複数の水嚢1は、河川等から水が流れてくる方向と交差する方向に並んだ状態で設置面Sに設置される。
【0019】
(方向定義)
本明細書では、重力と平行な方向を、単に重力方向Zと称する。重力方向Zに交差する(例えば、直交する)方向であって、複数の水嚢1が並べられた方向を左右方向Xと称する。重力方向Zおよび左右方向Xの双方に交差する(例えば、直交する)方向を、前後方向Yと称する。前後方向Yは、防水堤3に向けて水が流れてくる方向でもある。また、重力方向Zにおける上方を、単に上方と称し、+Zの向きとして表す。重力方向Zにおける下方を、単に下方と称し、-Zの向きとして表す。前後方向Yにおいて、防水堤3に向けて水が流れてくる向きを、後方と称し、-Yの向きとして表す。前後方向Yにおいて、防水堤3に向かう水の流れに逆らう向きを、前方または水害側と称し、+Yの向きとして表す。また、重力方向Zから見ることを、平面視と称する。
【0020】
図2に示すように、本実施形態に係る水嚢1は、容器10と、第1バルブ11と、第2バルブ12と、空気注入口13と、固定部20と、を備える。第1バルブ11、第2バルブ12および空気注入口13は容器10に設けられている。容器10は、液密な内部空間Iを有する。内部空間Iには水が貯蔵可能である。
【0021】
本実施形態に係る容器10は、可撓性を有する素材で形成されている。そして、容器10は、空気注入口13(後述)から空気を注入することで、図1に示すような略直方体状の形状に膨張する(図3Aおよび図3Bも参照)。なお、「略直方体状」には、製造誤差や内圧による膨らみを無視すれば直方体状とみなせる場合も含まれる。空気を注入しない状態において、容器10は、例えばシート状に圧縮可能に構成されていてもよい(図3Aを参照)。
【0022】
図1および図2に示すように、容器10は、底部10aと、天頂部10bと、周部10cと、を有する。底部10aは、容器10のうち設置面Sに当接する部分である。略直方体状の容器10においては、容器10の下面が底部10aに該当する。天頂部10bは、容器10のうち底部10aと重力方向Zにおいて対向する部分である。言い換えれば、天頂部10bは、容器10のうち底部10aと平面視において重なる部分である。直方体状の容器10においては、容器10の上面が天頂部10bに該当する。周部10cは、底部10aの外周縁と天頂部10bの外周縁とを接続する筒状の部分である。
【0023】
内部空間Iに貯蔵された水の圧力に起因する破れを防止するため、容器10の強度(例えば、引張強度)はある程度高いことが好ましい。特に、底部10aは設置面Sと接触するため、容器10のうち底部10a以外の部分と比較して、摩擦による破れが生じやすい。さらに、上方から下方に向かうにつれて水圧は大きくなるため、水圧に起因する破れは底部10aにおいて特に生じやすい。
【0024】
これらの問題を鑑み、底部10aの強度は、天頂部10bの強度よりも高くなっていてもよい。この場合、容器10の破損を抑制しつつも、容器10全体の強度を高める場合と比較して容器10の重量を抑えることができる。なお、容器10の強度を高める方法は特に限定されない。例えば、容器10の厚みを大きくする方法、容器10に多層構造を採用する方法、容器10に強度(引張強度)の高い材質を適用する方法その他の方法を用いることができる。また、容器10は、上方から下方に向かうにしたがって漸次強度が高くなるように構成されていてもよい。
【0025】
図2に示すように、本実施形態に係る第1バルブ11は、周部10cのうち、底部10aの近傍に設けられている。第1バルブ11は、水害側(+Y側)に面している。第1バルブ11は、容器10に固定されている。第1バルブ11は、容器10の内部空間Iに水を流入させるバルブである。本実施形態に係る第1バルブ11は、容器10の内部空間Iにおける圧力よりも容器10の外側における水圧が高くなった場合に開となるチェックバルブである。なお、以下の説明においては、「容器10の内部空間Iにおける圧力」を単に「容器10の内圧」と称する。
【0026】
第2バルブ12は、第1バルブ11よりも上方に設けられている。具体的に、本実施形態に係る第2バルブ12は、天頂部10bに設けられている。第2バルブ12は、容器10に固定されている。第2バルブ12は、容器10の内部空間Iから空気を排出するバルブである。本実施形態に係る第2バルブ12は、容器10の内圧が所定の圧力P以上となった場合に開となるリリーフバルブである。第2バルブ12は、容器10の内圧を所定の圧力P以下に保つ。
【0027】
第2バルブ12に係る圧力Pは、大気圧Pよりも大きく設定される。これは、内部空間Iに封入された空気によって容器10を自立させるためである。一方、第2バルブ12は、容器10の内圧を一定値(P)以下に保つことで、容器10の破裂を防ぐ役割を有する。また、容器10の内圧がある一定値(P)以下に制限されることで、第1バルブ11が開きやすくなり、内部空間Iに水が流入しやすくするという効果も得られる。したがって、容器10を自立させつつ、容器10の破裂を防いだり内部空間Iに水を流入させやすくしたりする観点から、圧力Pの値は、大気圧Pよりも僅かに大きい程度に設定することが好ましい。圧力Pの値は、例えば、1.01P~1.1P程度であってもよい。
【0028】
空気注入口13は、容器10の内部空間Iに空気を注入可能な部分である。空気注入口13は、意図しない空気の排出を抑制する逆止弁等を備えていてもよい。空気注入口13は、例えば、エアーコンプレッサー4(図3Aおよび図3B参照)が接続可能に構成されていてもよい。
【0029】
固定部20は、容器10に固定されている。本実施形態に係る固定部20には、容器10および固定部20を設置面Sに固定するための固定手段21が取り付けられる。固定手段21は、例えば、杭や重りである。ただし、固定手段21の種類はこれらに限定されず、適宜変更可能である。固定手段21が杭等である場合、固定部20は、固定手段21が挿通される孔20aを有していてもよい。なお、容器10が十分重く水によって流されることが想定されにくい場合等には、水嚢1が固定部20を備えていなくてもよい。
【0030】
図1に示すように、抑制部2は、前後方向Yにおいて複数の水嚢1と隣接するように配されている。より具体的に、本実施形態に係る抑制部2は、複数の水嚢1の後方に配置されている。抑制部2は、複数の水嚢1にわたって左右方向Xに延びている。抑制部2は、隣接する水嚢1同士の隙間から漏れ出た水の流れを抑制する役割を有する。
【0031】
本実施形態に係る抑制部2は、図2に示すように、左右方向Xに交差する断面において、重力方向Zに延びる防水板31と、前後方向Yに延びる固定板32と、を含む。これにより、本実施形態に係る抑制部2は、左右方向Xに交差する断面においてL字状の形状を有する。防水板31は、前後方向Yにおける水の流れを抑制する。固定板32は、防水板31によってせき止められた水の重みによって抑制部2を設置面Sに固定する。抑制部2は、抑制部2を設置面Sに固定するための固定部を有していてもよい。また、抑制部2に水を貯めるため、抑制部2の側面部(不図示)に板状の部材を取り付けてもよい。
【0032】
なお、前後方向Yにおける水の流れを抑制可能であれば、抑制部2の構成は上記の例に限定されず、適宜変更可能である。例えば、抑制部2はシート状の部材であってもよい。あるいは、抑制部2として複数の水嚢1を採用してもよい。すなわち、防水堤3は、複数の水嚢1が左右方向Xに並べられた列を複数有する構成であってもよい。なお、水嚢1同士の隙間が十分小さく水の漏出が十分少ない場合等において、防水堤3は抑制部2を備えていなくてもよい。
【0033】
次に、以上のように構成された水嚢1およびそれを用いた防水堤3の使用方法について説明する。
【0034】
まず、図3Aに示すように、防水堤3を設置したい場所に、複数の水嚢1を設置する。このとき、容器10に空気は注入されておらず、容器10はシート状に圧縮されている。また、容器10を設置面Sに設置するにあたっては、固定手段21を取り付けた固定部20を設置面Sに固定してもよい。複数の水嚢1は、水が流れてくる方向に交差する方向(左右方向X)に並べて設置する。また、必要に応じて複数の水嚢1の後方に抑制部2を設置する。
【0035】
次に、空気注入口13から容器10の内部空間Iに空気を注入する。空気を注入する方法は特に限定されないが、例えばエアーコンプレッサー4を用いることができる。内部空間Iに空気が注入されると、容器10は膨張する。やがて容器10の内圧が第2バルブ12の圧力Pに達すると、図3Bに示すように、第2バルブ12から空気が流出する。これにより、容器10の膨張が完了し、容器10が自立する。
【0036】
水害側(+Y側)から流れてきた水は、図3Cに示すように、容器10にせき止められる。これにより、容器10の前側(+Y側)の水面WSが上昇する。そして、水面WSの高さが第1バルブ11の高さから所定の距離Δh1だけ高くなると、容器10にせき止められた水の圧力によって第1バルブ11が開く。これにより、図3Dに示すように、第1バルブ11から内部空間Iへと水が流入する。容器10に水が流入すると、水の重みによって容器10が設置面Sに固定される。
【0037】
なお、距離Δh1の値は、容器10の内圧(すなわち、第2バルブ12の圧力P)に基づいて決定する。例えば、第2バルブ12の圧力Pが1.01Pに設定されている場合、距離Δh1の値は1cmとなる。第2バルブ12の圧力Pが1.1Pに設定されている場合、距離Δh1の値は10cmとなる。第2バルブ12の圧力Pの値を極力小さくすることで、距離Δh1の値を小さくし、内部空間Iへと速やかに水を流入させることができる。
【0038】
水害側からさらに水が流れてくると、水面WSはさらに上昇する。これに伴い、せき止められた水の圧力も上昇し、第1バルブ11から内部空間Iへとさらに水が流入する。このとき、第2バルブ12から空気が流出することで、容器10の内圧が一定(P)に保たれ、容器10の破裂が防止される。
【0039】
このように、本実施形態に係る水嚢1は、事前に水を注入せずとも、水嚢1に向けて流れてくる水を利用することで、水の流れを抑制する防水手段として機能する。したがって、事前に土や水を封入する作業を要する従来の土嚢や水嚢と比較して、より容易に作成および設置を行うことができる。また、例えば特許文献1に記載の防水堤とは異なり、建築物や降雨等を必要としないため、設置場所の制約も生じにくい。
【0040】
なお、水嚢1は空気注入口13を有していなくてもよい。この場合においても、剛性を有する素材で容器10を形成することにより、容器10を自立させることができる。また、容器10が剛性を有さない場合においても、例えば、水に触れると膨張する素材(例えば、重曹等の膨化剤)を容器10に封入しておくことで、容器10に空気注入口13を設けなくとも容器10を膨張させることができる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る水嚢1は、水を貯蔵可能な容器10と、容器10に水を流入させる第1バルブ11と、重力方向Zにおいて第1バルブ11よりも上方に設けられて容器10から空気を排出する第2バルブ12と、を備える。
【0042】
この構成によれば、事前に水を注入せずとも、水嚢1に向けて流れてくる水を利用することで、水嚢1を水の流れを抑制する防水手段として機能させることができる。したがって、水嚢1の作成および設置を容易に行うことができる。また、建築物や降雨等を必要としないため、設置場所の制約も生じにくい。
【0043】
また、本実施形態に係る水嚢1は、容器10に空気を注入可能な空気注入口13をさらに備え、容器10は、空気注入口13から空気を注入することで膨張可能である。この構成によれば、容器10に空気に注入することで容器10を膨張させ、容器10を自立させることができる。また、使用時以外においては容器10を圧縮しておくことがで、水嚢1の収納性や運搬性を高めることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る水嚢1は、容器10を設置面Sに固定するための固定部20をさらに備える。この構成により、水嚢1を設置面Sに対して確実に固定することができる。
【0045】
また、容器10は、設置面Sに当接する底部10aを有し、第1バルブ11は、底部10aの近傍に設けられている。この構成により、例えば第1バルブ11が天頂部10b付近にある場合と比較して、容器10の内部空間Iへの水の流入を促進することができる。
【0046】
また、容器10は、重力方向Zにおいて底部10aと対向する天頂部10bを有し、第2バルブ12は、天頂部10bに設けられている。この構成によれば、例えば第2バルブ12が周部10cに設けられている場合と比較して、第2バルブ12が水没しにくくなる。これにより、空気を排出するという第2バルブ12の機能がより確実に発揮される。
【0047】
また、底部10aの強度は、天頂部10bの強度よりも高くてもよい。この構成によれば、容器10の破損を抑制しつつ、容器10全体の強度を高める場合と比較して容器10の重量を抑えた構成が実現しやすくなる。
【0048】
また、本実施形態に係る防水堤3は、重力方向Zに交差する左右方向Xにおいて並べられた上記の水嚢1を複数と、重力方向Zおよび左右方向Xの双方に交差する方向において前後方向Yと隣接するように配され、前後方向Yにおける水の流れを抑制する抑制部2と、を備える。この構成により、水嚢1同士の隙間から漏れ出た水の流れを抑制し、例えば複数の水嚢1を一列に並べたのみの構成と比較して防水堤3の防水効果を高めることができる。
【0049】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0050】
図4は、本発明の変形例に係る水嚢1Aを示す図である。図4に示す水嚢1Aは、前記実施形態に係る水嚢1とは異なり、容器10の内部空間Iから水を排出可能な排水口14を備えている。この構成によれば、容器10から水を排出することで水嚢1Aの再利用を促進することができる。
【0051】
また、第2バルブ12が第1バルブ11よりも上方に配されていれば、第1バルブ11の位置および第2バルブ12の位置は適宜変更可能である。例えば、第2バルブ12は周部10cに配されていてもよい。
【0052】
また、第1バルブ11の種類はチェックバルブに限られず、第2バルブ12の種類はリリーフバルブに限られない。第1バルブ11から容器10に水が流入し、第2バルブ12から空気を排出可能であればバルブ11、12の種類は適宜変更可能である。例えば、第1バルブ11はリリーフバルブであってもよい。
【0053】
また、容器10の形状は直方体状に限定されず、適宜変更可能である。例えば、容器10の形状を、上方から下方に向かうにしたがって漸次内部空間Iが広がるような形状にすることで、容器10の姿勢を安定させることができる。言い換えれば、容器10が転倒しにくくなる。
【0054】
また、容器10は袋状の一体部材でなくてもよい。容器10は、予め平面状に展開された一体部材を箱型に組み上げることで形成されていてもよい。あるいは、容器10は、複数の部材を組み合わせることによって形成されていてもよい。
【0055】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1、1A…水嚢 2…抑制部 3…防水堤 10…容器 10a…底部 10b…天頂部 11…第1バルブ 12…第2バルブ 13…空気注入口 14…排水口 Z…重力方向 X…左右方向 Y…前後方向
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4