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特開2024-94869プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094869
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240703BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240703BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/31 C
H05H1/46 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211738
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 能吏
(72)【発明者】
【氏名】田村 淳
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA13
2G084BB02
2G084CC05
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD23
2G084DD37
2G084DD38
2G084DD55
2G084FF15
2G084HH09
2G084HH17
2G084HH28
2G084HH34
2G084HH35
2G084HH36
2G084HH42
2G084HH55
2G084HH56
5F004AA16
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB28
5F004CA03
5F004CA06
5F004CA08
5F004CB02
5F004DA00
5F004DA26
5F004EA28
5F045AA06
5F045AA15
5F045DP03
5F045EE19
5F045EF05
5F045EH12
5F045EH20
5F045EJ03
5F045EM05
5F045GB08
(57)【要約】
【課題】プラズマプロセスの効率を高めること。
【解決手段】プラズマ処理方法は、工程aと、工程bと、工程cとを含む。工程aは、チャンバへの処理ガスの供給と、前記チャンバ内の排気が周期的に繰り返されるプラズマ処理において、前記チャンバ内の発光強度を検出するセンサにより、前記チャンバ内の前記処理ガスが電離したラジカルの発光強度を取得する。工程bは、発光強度の目標とする設定値を取得する。工程cは、前記工程aにより取得した前記発光強度と前記工程bにより取得した前記設定値に基づいて、前記発光強度を前記設定値に近づける前記プラズマ処理の処理条件を算出する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)チャンバへの処理ガスの供給と、前記チャンバ内の排気が周期的に繰り返されるプラズマ処理において、前記チャンバ内の発光強度を検出するセンサにより、前記チャンバ内の前記処理ガスが電離したラジカルの発光強度を取得する工程と、
b)発光強度の目標とする設定値を取得する工程と、
c)前記工程aにより取得した前記発光強度と前記工程bにより取得した前記設定値に基づいて、前記発光強度を前記設定値に近づける前記プラズマ処理の処理条件を算出する工程と、
を含むことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】
前記工程aは、前記チャンバに供給した前記処理ガスのガス流量と前記チャンバの排気量を調整する調整部の操作量をさらに取得し、
前記工程cは、前記工程aにより取得した前記発光強度、前記ガス流量、前記操作量と、前記工程bにより取得した前記設定値に基づいて、前記処理条件を算出する
請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記工程cは、前記処理条件として、前記チャンバに供給する前記処理ガスのガス流量と前記調整部の操作量を算出する
請求項2に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記工程cは、前記処理条件として、前記チャンバに供給する高周波電力のパワーを算出する
請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
前記工程cは、状態空間モデルを用いて、前記処理条件を算出する
請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
前記工程cは、前記チャンバ内の圧力、前記チャンバ内のプラズマを生成する高周波電力のパワーに応じて、前記状態空間モデルを更新し、更新した前記状態空間モデルを用いて、前記処理条件を算出する
請求項5に記載のプラズマ処理方法。
【請求項7】
d)前記状態空間モデルを用いて算出した発光強度の予測値と前記センサにより得られる発光強度との差に基づいて、前記状態空間モデルを更新する工程をさらに有する
請求項5に記載のプラズマ処理方法。
【請求項8】
前記状態空間モデルは、前記チャンバ内に発生する外乱のモデルを含む
請求項5に記載のプラズマ処理方法。
【請求項9】
前記工程aは、2種類以上のラジカルの発光強度を取得し、
前記工程bは、前記2種類以上のラジカルそれぞれの発光強度の目標とする設定値を取得し、
前記工程cは、前記2種類以上のラジカルの発光強度をそれぞれ前記設定値に近づける前記処理条件を算出する
請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項10】
前記工程cは、所定の周期のタイムステップごとに、前記処理条件を算出し、
e)前記タイムステップごとに、前記工程cにより算出した前記処理条件を用いて前記プラズマ処理の制御する工程をさらに有する
請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項11】
前記工程cは、前記タイムステップごとに、当該タイムステップから複数先のタイムステップまで各タイムステップの前記処理条件を算出し、
前記工程dは、前記工程cにより算出した各タイムステップの前記処理条件のうち、直近のタイムステップの前記処理条件を用いて前記プラズマ処理を制御する
請求項10に記載のプラズマ処理方法。
【請求項12】
チャンバに処理ガスを供給するように構成される供給部と、
前記チャンバの排気量を調整する調整部が設けられ、前記チャンバ内を排気するように構成される排気部と、
前記チャンバ内の発光強度を検出するように構成されるセンサと、
前記供給部による前記チャンバへの処理ガスの供給と、前記排気部による前記チャンバ内の排気を周期的に繰り返してプラズマ処理を実施するように構成される制御部と、
を有するプラズマ処理装置であって、
前記制御部は、
前記センサにより、前記チャンバ内の前記処理ガスが電離したラジカルの発光強度を取得し、
前記発光強度の目標とする設定値を取得し、
取得した前記発光強度と前記設定値に基づいて、前記発光強度を前記設定値に近づける前記プラズマ処理の処理条件を算出する
プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、「処理容器と、前記処理容器内にガスを供給するガス供給システムと、前記処理容器内にプラズマ発生用の高周波を導入する高周波発生源と、前記ガス供給システム及び前記高周波発生源を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、第1ステップにおいて、前記高周波発生源を第1エネルギー条件で駆動し、第2ステップにおいて、前記高周波発生源を第2エネルギー条件で駆動し、前記第1ステップと、前記第2ステップの切り替わり時刻よりも先に、前記ガス供給システムから前記処理容器内に供給されるガス種を切り替え、切り替え直後の初期期間のガス流量を、前記初期期間経過後の安定期間におけるガス流量よりも大きく設定する、ことを特徴とするプラズマ処理装置。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-027592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマプロセスの効率を高める技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によるプラズマ処理方法は、工程aと、工程bと、工程cとを含む。工程aは、チャンバへの処理ガスの供給と、前記チャンバ内の排気が周期的に繰り返されるプラズマ処理において、前記チャンバ内の発光強度を検出するセンサにより、前記チャンバ内の前記処理ガスが電離したラジカルの発光強度を取得する。工程bは、発光強度の目標とする設定値を取得する。工程cは、前記工程aにより取得した前記発光強度と前記工程bにより取得した前記設定値に基づいて、前記発光強度を前記設定値に近づける前記プラズマ処理の処理条件を算出する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、プラズマプロセスの効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
図2図2は、周期的なプラズマプロセスの一例を示す図である。
図3図3は、第1実施形態に係る処理部による最適化の制御の流れを機能的に示した図である。
図4図4は、第1実施形態に係るプラズマ処理方法の処理を含む制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5図5は、第1実施形態に係る操作量の最適化を実施した結果の一例を示す図である。
図6図6は、従来の周期的なプラズマプロセスの一例を示す図である。
図7図7は、第1実施形態に係る操作量の最適化を実施した結果の一例を示す図である。
図8A図8Aは、インパルス応答の波形の一例を示す図である。
図8B図8Bは、インパルス応答の波形の一例を示す図である。
図8C図8Cは、インパルス応答の波形の一例を示す図である。
図9図9は、従来の周期的なプラズマプロセスの一例を示す図である。
図10図10は、第2実施形態に係る操作量の最適化を実施した結果の一例を示す図である。
図11図11は、実施形態に係る処理部の処理の流れを機能的に示した図である。
図12図12は、OES発光強度との相関の一例を示す図である。
図13図13は、OES発光強度との相関の他の一例を示す図である。
図14図14は、従来の周期的なプラズマプロセスの一例を示す図である。
図15図15は、実施形態に係るBgas、BapcをHFパワーのタイミングと合わせて変えて操作量Uの最適化を実施した結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、開示されるプラズマ処理方法及びプラズマ処理装置が限定されるものではない。
【0009】
従来から、半導体製造では、ALE(Atomic Layer Etching)などの周期的なプラズマプロセスが実施されている。周期的なプラズマプロセスでは、チャンバ内に処理ガスを供給するガス供給ステップと、チャンバ内に供給した処理ガスや反応生成物を排出する排出ステップの切り替えが頻繁に行われる。
【0010】
プラズマプロセスにおいて、プロセス結果に影響するラジカル密度の間接的な指標として、OES(Optical Emission Spectroscopy)センサによりチャンバ内を検出した発光強度が用いられている。
【0011】
プラズマプロセスでは、チャンバ内に導入されたガスがプラズマにより電離してラジカルが生成され、生成されたラジカルが基板に衝突する。しかし、プラズマプロセス中にラジカルがチャンバ内の堆積物などにも消費され、OESセンサにより検出される発光強度の波形が一定ではないことが多い。つまり、ラジカル密度が一定ではないため、プラズマプロセスが非効率となっていると考えられる。そこで、プラズマプロセスの効率を高める技術が期待されている。
【0012】
(第1実施形態)
[装置構成]
以下、実施形態を用いて本開示のプラズマ処理方法及びプラズマ処理装置の一例について説明する。以下に説明する実施形態では、本開示のプラズマ処理装置をシステム構成のプラズマ処理システムとした場合を例に説明する。最初に、第1実施形態を説明する。
【0013】
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。図1は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0014】
プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0015】
プラズマ処理装置1は、プラズマの発光強度をモニタするセンサ14が設けられている。センサ14は、例えば、OESセンサなどである。プラズマ処理チャンバ10の側壁10aには、光を透過する透過窓10bが設けられている。透過窓10bは、例えば、石英基板により構成され、光(可視光)を透過する透過性を有する。センサ14は、透過窓10bを介してプラズマ処理中のプラズマ処理チャンバ10内のプラズマの発光強度をモニタする。例えば、センサ14は、プラズマの波長毎の発光強度を検出する。センサ14は、検出した波長毎の発光強度を示す発光データを制御部2へ出力する。なお、センサ14は、プラズマ処理チャンバ10内に配置されてもよい。
【0016】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0017】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF(Radio Frequency)電源31及び/又はDC(Direct Current)電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号及び/又はDC信号が少なくとも1つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数の下部電極として機能してもよい。また、静電電極1111bが下部電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つの下部電極を含む。
【0018】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0019】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0020】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、少なくとも1つの上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0021】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0022】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0023】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0024】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。以下では、ソースRF信号とバイアスRF信号のうち、周波数の高いソースRF信号をHF(High Frequency)とも称し、周波数の低いバイアスRF信号をLF(Low Frequency)とも称する。
【0025】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0026】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0027】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、排気管40aと、APC(Auto Pressure Controller)バルブ40bと、真空ポンプ40cとを有する。排気管40aは、ガス排出口10eに接続されている。排気管40aは、真空ポンプ40cに接続されている。排気管40aには、ガス排出口10eと真空ポンプ40cの間にAPCバルブ40bが設けられている。真空ポンプ40cは、排気管40aを介してプラズマ処理チャンバ10内を排気する。真空ポンプ40cは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。APCバルブ40bは、排気管40aの開度を調整する。排気システム40は、真空ポンプ40cにより排気しつつ、APCバルブ40bの開度を調整することにより、プラズマ処理チャンバ10の圧力を調整することが可能とされている。
【0028】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0029】
記憶部2a2には、プラズマ処理装置1で実行される各種処理を処理部2a1の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や、レシピが格納されている。レシピには、各種の処理条件が記憶されている。例えば、レシピには、プラズマプロセスに沿って、プラズマプロセスの各ステップの開始、終了タイミングが記憶されている。また、レシピには、ステップごとに、プロセスで用いる各種のガスのガス流量の設定値や、プラズマ処理チャンバ10内の圧力の設定値、HF、LFなどの高周波電力のパワーや電圧に関する設定値が記憶されている。また、本実施形態では、レシピに、プラズマプロセスに沿って、目標とする発光強度が設定値として記憶されている。なお、制御プログラムやレシピは、コンピュータで読み取り可能なコンピュータ記録媒体(例えば、ハードディスク、DVDなどの光ディスク、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)などに格納された状態のものを利用してもよい。また、制御プログラムやレシピは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0030】
処理部2a1は、プログラムやデータを格納するための内部メモリを有し、記憶部2a2に記憶された制御プログラムを読み出し、読み出した制御プログラムの処理を実行する。処理部2a1は、プラズマ処理装置1の各部を制御する。例えば、処理部2a1は、記憶部2a2に記憶されたレシピに従い、プラズマプロセスを実施するようプラズマ処理装置1の各部を制御する。例えば、処理部2a1は、排気装置104を制御し、プラズマ処理チャンバ10内の圧力が、レシピに記憶された圧力の設定値となるようにプラズマ処理チャンバ10内を排気する。また、処理部2a1は、ガス供給部20を制御し、レシピに記憶された設定値のガス流量でプロセスに用いる各種のガスをプラズマ処理チャンバ10内に供給する。また、処理部2a1は、電源30を制御し、レシピに記憶された設定値のパワーや電圧で電源30からHF、LFなどの高周波電力を供給する。
【0031】
次に、プラズマ処理装置1の動作について説明する。
【0032】
基板Wは、搬送アームなどの搬送機構により、不図示の搬入出口を介してプラズマ処理チャンバ10内に搬入され、基板支持部11に載置される。
【0033】
プラズマ処理装置1は、処理部2a1の制御により、基板支持部11に載置された基板Wに対して、周期的なプラズマプロセスを実施する。本実施形態では、記憶部2a2にALEの処理を含んだレシピが記憶されている。プラズマ処理装置1は、処理部2a1の制御により、レシピに従い、基板Wに対してALEを実施する。
【0034】
図2は、周期的なプラズマプロセスの一例を示す図である。図2は、ALEにより基板Wに形成されたエッチング対象膜をエッチングする場合を示している。エッチング対象膜は、例えば、シリコン酸化膜である。
【0035】
ALEでは、ステップ1~4を所定の条件を満たすまで繰り返し実施する。所定の条件は、ステップ1~4を繰り返す回数であってもよく、エッチングする膜厚などエッチングを終了とする終了条件であってもよい。
【0036】
ステップ1では、Cガスを含むデポジション用のガスを供給しつつプラズマを生成し、エッチング対象膜にデポジション(Deposition)を行う。ステップ1により、エッチング対象膜には、Cに基づく吸着物が物理吸着される。ステップ2では、次のステップ3に遷移(Transition)するため、Cガスを排気する。
【0037】
ステップ3では、Oガスなどの酸素(O)ガスを含むエッチング用のガスを供給しつつプラズマを生成し、エッチング対象膜のエッチング(Etching)を行う。ステップ3により、吸着物とエッチング対象膜とがOガスにより反応してエッチング対象膜がエッチングされる。ステップ4では、再度、ステップ1に遷移(Transition)するため、酸素ガスを排気する。
【0038】
図2(A)には、センサ14により検出されるプラズマの発光強度の変化の波形が示されている。プラズマプロセスでは、チャンバ内に導入されたガスがプラズマにより電離してラジカルが生成される。例えば、Cガスは、電離してCF2などのラジカルが生成される。Oガスなどの酸素(O)ガスは、電離してOなどのラジカルが生成される。プラズマは、プラズマに含まれるガスや粒子などにより、波長ごとの発光強度が異なり、プラズマ中のラジカル密度に相関する波長も異なる。例えば、Cガスによるプラズマでは、252.0nmの波長の発光強度がCF2のラジカル密度に相関する。また、酸素ガスによるプラズマでは、777.5nmの波長の発光強度がOのラジカル密度に相関する。図2(A)には、ステップ1~4でのセンサ14により検出されるプラズマの252.0nmと777.5nmの波長の発光強度の変化が示されている。以下では、センサ14により検出されるプラズマの発光強度を「OES発光強度」とも称する。
【0039】
図2(B)には、ガス流量の設定値(SV)と実際のガス流量(PV)の変化の波形が示されている。図2(B)では、Cガス、酸素(O)ガスのガス流量の設定値(SV)をそれぞれ点線により示している。また、図2(B)では、Cガス、酸素(O)ガスの実際のガス流量(PV)をそれぞれ実線により示している。
【0040】
プラズマ処理装置1では、ガス供給部20でガスの供給を開始からガスがプラズマ処理チャンバ10内に到達するまでに、配管を通る分のむだ時間が発生する。例えば、図2では、右側のステップ1において、Cガスの設定値(SV)を上昇させたタイミングから、プラズマ処理チャンバ10内にCガスが到達したことにより、252.0nmの波長の発光強度が上昇するまでの期間T1がむだ時間に相当する。
【0041】
従来、このようなむだ時間は、プロセスエンジニアが手作業により、レシピ上に反映させている。あるいは、むだ時間を考慮せずにレシピを作成している。
【0042】
図2(C)には、電源30から供給されるソースRF信号(HF)の電力のパワー(HF Power)の変化の波形と、HFの電圧Vのpeak to peakの値Vppの変化の波形が示されている。
【0043】
図2(D)には、APCバルブ40bの開度(APC Position)の変化の波形と、プラズマ処理チャンバ10内の圧力の変化の波形が示されている。APCバルブ40bは、開度の数値が大きいほど、排気量が大きくなる。
【0044】
プラズマ処理装置1では、APCバルブ40bでも、APCバルブ40bの開度を変えてからプラズマ処理チャンバ10内の圧力が変化するまでにむだ時間が発生する。例えば、ステップ1~4において、APCバルブ40bの開度を変えてからプラズマ処理チャンバ10内の圧力が変化するまでの期間がむだ時間に相当する。
【0045】
ところで、プラズマプロセス中にセンサ14により検出される発光強度の波形が一定ではないことが多い。例えば、図2(A)に示すように、ステップ3では、777.5nmの波長の発光強度の波形が崩れている。このように、発光強度の波形が崩れている場合、ラジカル密度が一定ではないため、プラズマプロセスが非効率となっていると考えられる。
【0046】
ここで、プラズマ処理装置1でのプラズマプロセスに関する状態空間モデルを説明する。以下では、プラズマプロセス中の状態の変化を算出するため、プラズマプロセスの一定時間ごとのタイミングに順に番号を付けてタイムステップとしている。本実施形態では、タイムステップを0.1秒周期のタイミングとしている。
【0047】
プラズマプロセスでは、状態空間モデルの状態方程式を以下の式(1)のように表すことができる。式(1)は、タイムステップkのx(k)からタイムステップk+1でのx(k+1)を求める式である。
【0048】
【数1】
【0049】
ここで、
kは、タイムステップである。
x(k)は、タイムステップkでのガスに対応する波長のOES発光強度のベクトルである。
Aは、OES発光強度に関するパラメータである。
τ,gasは、ガス到達のむだ時間である。本実施形態では、nτ,gasを、ガス到達のむだ時間分のタイムステップ数としている。
gas(k-nτ,gas)は、タイムステップkからガス到達のむだ時間nτ,gas過去のガスの流量である。
gasは、ガスの流量に関するパラメータである。
τ,apcは、APC開度操作のむだ時間である。本実施形態では、nτ,gasを、APC開度操作のむだ時間分のタイムステップ数としている。
apc(k-nτ,apc)は、タイムステップkからAPC開度操作のむだ時間nτ,apc過去のAPC開度である。
apcは、APC開度操作に関するパラメータである。
【0050】
プラズマ処理装置1では、タイムステップkからむだ時間nτ,gas過去にガス供給部20から供給されたガスがプラズマ処理チャンバ10内に到達してプラズマ化される。このため、式(1)では、ガスの流量をugas(k-nτ,gas)としている。また、プラズマ処理装置1では、タイムステップkからむだ時間nτ,apc過去のAPC開度操作がタイムステップkでのプラズマ処理チャンバ10内の圧力に影響する。このため、式(1)では、APC開度をuapc(k-nτ,apc)としている。
【0051】
式(1)は、2つのガス(ガス1、ガス2)に関するOES発光強度の状態方程式とする場合、x(k)、x(k+1)、A、Bgas、ugas(k-nτ,gas)、Bapcを行列とすることで、以下の式(2)のように表すことができる。
【0052】
【数2】
【0053】
ここで、
oes1(k)は、タイムステップkのガス1に対応する波長のOES発光強度である。
oes2(k)は、タイムステップkのガス2に対応する波長のOES発光強度である。
oes1、aoes2は、行列Aの要素となるパラメータである。
gas1(k-nτ,gas)は、タイムステップkからガス到達のむだ時間nτ,gas過去の時点のガス1の流量である。
gas2(k-nτ,gas)は、タイムステップkからガス到達のむだ時間nτ,gas過去の時点のガス2のガスの流量である。
oes1、gas1、boes1、gas2、boes2、gas1、boes2、gas2は、行列Bgasの要素となるパラメータである。
oes1、apc、boes2、apcは、行列Bapcの要素となるパラメータである。
【0054】
式(2)は、ガス1、ガス2に応じて定まる。本実施形態では、Cガス、酸素ガスの一方をガス1とし、Cガス、酸素ガスの他方をガス2とする。例えば、Cガスをガス1とし、酸素ガスをガス2とする。この場合、xoes1(k)は、タイムステップkでのCガスのラジカルに対応する252.0nmの波長のOES発光強度となる。xoes2(k)は、タイムステップkでの酸素ガスのラジカルに対応する777.5nmの波長のOES発光強度である。
【0055】
ガス到達のむだ時間nτ,gasは、プラズマ処理装置1において、ガス供給部20でガスの供給を開始からプラズマ処理チャンバ10内に到達するまでの時間を計測し、計測した時間に相当するタイムステップ数を求めることで特定できる。APC開度操作のむだ時間nτ,apcは、プラズマ処理装置1において、APCバルブ40bの開度を変えてからプラズマ処理チャンバ10内の圧力が変化するまでの時間を計測し、計測した時間に相当するタイムステップ数を求めることで特定できる。
【0056】
行列A、行列Bgas及び行列Bapcは、プラズマプロセスに対応して特定できる。例えば、Cガス、酸素ガスの流量の変化と、Cガス、酸素ガスに対応する波長のOES発光強度の変化を測定する。行列Aのaoes1、aoes2、行列Bgasのboes1、gas1~boes2、gas2、及び行列Bapcのboes1、apc、boes2、apcは、測定結果を式(2)に適用して誤差が小さくなる値を探索することで特定できる。例えば、図2のステップ1~4でのCガス、酸素ガスの流量の変化と、252.0nm、777.5nmの波長のOES発光強度の変化をタイムステップごとに式(2)に適用して、行列A、行列Bgas及び行列Bapcを特定する。
【0057】
式(2)は、タイムステップkの2つのガスのOES発光強度xoes1(k)、xoes2(k)から、タイムステップk+1の2つのガスのOES発光強度xoes1(k+1)、xoes2(k+1)を算出できる。また、式(2)は、算出したタイムステップk+1のOES発光強度xoes1(k+1)、xoes2(k+1)から、タイムステップk+2の2つのガスのOES発光強度xoes1(k+2)、xoes2(k+2)を算出できる。すなわち、式(2)を繰り返し用いることでタイムステップkから複数タイムステップ先のOES発光強度xoes1、xoes2を算出できる。
【0058】
上述した式(2)は、Cガス、酸素ガスに関するOES発光強度の状態方程式である。本実施形態では、簡易化するため、状態方程式のOES発光強度を観測されるOES発光強度として、以下の式(3)のように観測値の予測式を定める。
【0059】
y(k)=x(k) ・・・(3)
ここで、
y(k)は、タイムステップkで観測されるCガスと酸素ガスに対応する波長のOES発光強度を要素としたベクトルである。
【0060】
式(2)を時間遷移させて、複数先のタイムステップまで各タイムステップまでベクトルxを算出する予測式を作成する。例えば、あるタイムステップをタイムステップ0として、タイムステップ0でのOES発光強度のベクトルx(0)から1~mタイムステップ先のOES発光強度のベクトルx(1)~x(m)を算出する予測式を作成する。予測式は、以下の式(4)のようにベクトルX、行列F、行列G、ベクトルUの関係式として表すことができる。式(4)は、状態空間モデルの状態方程式を時間遷移させて複数先のタイムステップまで予測する予測式としたものである。
【0061】
【数3】
【0062】
ここで、
ベクトルXは、以下の式(5-1)のように、1~mタイムステップ先のOES発光強度のベクトルx(1)~x(m)をそれぞれ要素としたベクトルである。
行列Fは、以下の式(5-2)のように、2行ごとに、乗数が1ずつ増加した行列Aを要素とした行列である。
ベクトルUは、以下の式(5-3)のように、ベクトルu(-nτ,gas)~u(m-1)を要素としたベクトルである。
ベクトルu(-nτ,gas)~u(m-1)は、それぞれのタイムステップでのガス1(Cガス)の流量ugas1、ガス2(酸素ガス)の流量ugas2、APC開度uapcを要素としたベクトルである。例えば、ベクトルu(-nτ,gas)は、以下の式(5-4)に示すように、タイムステップ0からむだ時間nτ,gas過去のタイムステップの流量ugas1(-nτ,gas)、流量ugas2(-nτ,gas)、APC開度uapc(-nτ,gas)を要素としたベクトルである。
行列Gは、以下の式(6)のような行列である。
Δnτは、むだ時間nτ,gas-むだ時間nτ,apcした値である。
【0063】
【数4】
【0064】
【数5】
【0065】
式(6)に示した行列Gの各要素は、それぞれに示した行列の要素を、対応する要素とした2行3列の行列である。例えば、要素aは、以下の式(7-1)のように、2行2列の行列Bgasと2行1列のゼロ行列を合わせた行列である。また、要素bは、以下の式(7-2)のように、2行2列のゼロ行列と2行1列の行列Bapcを合わせた行列である。また、要素cは、以下の式(7-3)のように、2行2列のBgasと2行1列の行列AΔnτapcを合わせた行列である。
【0066】
【数6】
【0067】
本実施形態では、簡易化するため、状態方程式のOES発光強度を観測されるOES発光強度としている。この場合、上述した式(4)のベクトルXは、以下の式(8)のように観測値の予測式が定まる。
【0068】
Y = X ・・・(8)
ここで、
ベクトルYは、1~mタイムステップ先の時点での観測されるOES発光強度のベクトルy(k)をそれぞれ要素とした観測値のベクトルである。
【0069】
上述した式(4)のベクトルUは、式(5-3)に示したように、ベクトルu(-nτ,gas)~u(m-1)を要素としたベクトルである。ベクトルu(-nτ,gas)~u(m-1)は、それぞれのタイムステップでのガス1(Cガス)の流量ugas1、ガス2(酸素ガス)の流量ugas2、APC開度uapcを要素としたベクトルである。流量ugas1、流量ugas2、APC開度uapは、処理部2a1により操作可能である。よって、ベクトルUは、操作量とすることができる。
【0070】
処理部2a1は、上述した式(4)に示した予測式を用いてプラズマ処理装置1を制御する。処理部2a1は、発光強度を設定値に近づけるプラズマ処理の処理条件を算出する。処理部2a1は、予測式を用いて、処理条件を算出する。処理部2a1は、算出した処理条件を用いてプラズマ処理装置1を制御する。例えば、処理部2a1は、ベクトルUを操作量Uとし、式(4)を用いて、処理条件として、最適な操作量Uを算出する。そして、処理部2a1は、算出した最適な操作量Uを用いてプラズマ処理装置1を制御する。
【0071】
操作量Uを変更するコストJ(U)を、ベクトルY、ベクトルSV、行列P、行列Qを用いて以下の式(9-1)のように定める。
【0072】
【数7】
【0073】
ここで、
ベクトルYは、1~mタイムステップ先の時点での観測されるOES発光強度のベクトルy(k)をそれぞれ要素とした観測値のベクトルである。
ベクトルSVは、以下の式(10)のように、ベクトルr(1)~r(m)を要素としたベクトルである。ベクトルSVのベクトルr(1)~r(m)には、1~mタイムステップ先のOES発光強度の設定値を設定する。
行列Pは、設定値追従コストの重み行列である。
行列Qは、操作量コストの重み行列である。
【0074】
【数8】
【0075】
式(9-1)の項aは、設定値追従コストを算出する項である。項aは、ベクトルYとベクトルSVとの差(Y-SV)を求めることで、OES発光強度の観測値と設定値との偏差を求めている。また、項aは、(Y-SV)P(Y-SV)と正定(positive definite)とすることで設定値追従コストが正の値となるようにしている。式(9-1)の項bは、操作量コストを算出する項である。項bも、UQUと正定とすることで操作量コストが正の値となるようにしている。行列P、行列Qは、設定値追従コストと操作量コストの重み付けに応じて調整しており、また、設定値追従コスト、項bの操作量コストが正となるように事前に定めている。
【0076】
式(9-1)は、式(8)でY=Xであることから、ベクトルYに式(4)を代入し、式(3)を用いてx(k)をy(k)に代えると、式(9-2)のように表すことができる。
【0077】
そして、式(9-2)は、ベクトルMを以下の式(11-1)とし、行列Nを以下の式(11-2)とした場合、式(9-3)のように表すことができる。
【0078】
【数9】
【0079】
行列Nは、式(11-1)のように、行列G、行列P、行列Qの演算により得られる。行列G、行列P、行列Qは、各要素に変数が無く、定数となっている。このため、行列Nは、要素が固定値に定まる。
【0080】
ベクトルMは、式(11-2)のように、行列F、ベクトルy(0)、ベクトルSV、行列P、行列Gの演算により得られる。行列F、行列P、行列Gは、各要素に変数が無く、定数となっている。行列y(0)は、タイムステップ0でのOES発光強度の観測値の行列であり、要素が固定値に定まる。ベクトルSVは、式(10)のように、ベクトルr(1)~r(m)を要素としたベクトルである。ベクトルSVのベクトルr(1)~r(m)には、1~mのタイムステップのOES発光強度の設定値を設定する。ベクトルr(1)~r(m)の詳細な設定については、後述する。このようにベクトルSVに1~mのタイムステップのOES発光強度の設定値を設定することで、ベクトルSVは、要素が固定値に定まる。このため、ベクトルMは、要素が固定値に定まる。
【0081】
よって、式(9-3)によるコストJ(U)は、操作量Uに応じて変化する。
【0082】
次に、最適な操作量Uを算出する流れを説明する。
【0083】
処理部2a1は、最適な操作量Uとして、コストJ(U)が最小となる操作量Uを算出する。例えば、処理部2a1は、操作量Uについて適切な制約条件を定めて、二次計画法により、コストJ(U)が最小となる操作量Uを算出する。
【0084】
1~mタイムステップのうち、何れかのタイムステップを現在のタイムステップkとする。現在のタイムステップkは、むだ時間nτ,gas、むだ時間nτ,apcのうち、長い方のむだ時間分の過去のタイムステップがタイムステップ1~mの範囲内となるように定める。本実施形態では、m=10としており、むだ時間nτ,gasが0.4秒となって長い方のむだ時間分となっており、k=5のタイムステップを現在のタイムステップとする。
【0085】
ベクトルSVは、現在のタイムステップ(k=5)よりも過去のタイムステップ1~4のベクトルr(1)~r(4)に、過去のそれぞれのタイムステップでのOES発光強度の設定値を設定する。本実施形態では、ベクトルr(1)~r(4)に、現在のタイムステップからそれぞれ1~4タイムステップ前のタイムステップでの252.0nm、777.5nmの波長のOES発光強度の設定値を設定する。また、ベクトルSVは、現在のタイムステップ(k=5)から先のタイムステップ5~10のベクトルr(5)~r(10)にOES発光強度の設定値を設定する。本実施形態では、ベクトルr(5)~r(10)に、現在のタイムステップから先のそれぞれのタイムステップでの252.0nm、777.5nmの波長のOES発光強度の設定値を設定する。また、例えば、タイムステップ5~10においてOES発光強度を一定となるように制御する場合は、ベクトルr(5)~r(10)に、目標とする一定の値を設定する。すなわち、ベクトルr(1)~r(m)には、現在のタイムステップから前後に1タイムステップずつずれた各タイムステップでのOES発光強度の設定値を設定する。
【0086】
式(9-3)からコストJ(U)を最小とする最適化問題を以下の式(12-1)のように定義する。また、制約条件を以下の式(12-2)、式(12-3)のように定義する。
【0087】
【数10】
【0088】
ここで、
行列lbは、操作量Uの下限である。
ベクトルubは、操作量Uの上限である。
行列Aeqは、操作量Uの固定する要素を規定する行列である。
ベクトルbeqは、操作量Uの固定する要素を設定するベクトルである。
【0089】
式(12-2)は、操作量Uが変化しうる上限と下限を定めた不等式制約条件である。ベクトルlbは、プラズマ処理装置1で変更可能な流量ugas1、流量ugas2、APC開度uapcの最小値により定まる。本実施形態では、流量ugas1、流量ugas2、APC開度uapcの最小値をゼロしている。ベクトルlbは、以下の式(13-1)のように、各要素をゼロベクトルとしている。ベクトルlbは、流量ugas1、流量ugas2、APC開度uapcの実際の変更可能な下限に応じて定めればよい。また、ベクトルlbは、流量ugas1、流量ugas2、APC開度uapcの実際の値ではなく、システム上の操作量の下限として定めてもよい。
【0090】
また、ベクトルubは、プラズマ処理装置1で変更可能な流量ugas1、流量ugas2、APC開度uapcの最大値により定まる。本実施形態では、流量ugas1、流量ugas2、APC開度uapcの最大値を要素に設定としたベクトルuをベクトルumaxとする。ベクトルubは、以下の式(13-2)のように、各要素をベクトルumaxとしたベクトルとしている。ベクトルubは、流量ugas1、流量ugas2、APC開度uapcの実際の変更可能な上限に応じて定めればよい。また、ベクトルlbは、流量ugas1、流量ugas2、APC開度uapcの実際の値ではなく、システム上の操作量の上限として定めてもよい。
【0091】
【数11】
【0092】
式(12-3)は、操作量Uの固定する要素を定めた等式制約条件である。
【0093】
行列Aeqは、以下の式(14-1)のように、変更できないステップに対応する対角成分の要素を1とし、その他を0とした行列である。例えば、過去のタイムステップの要素は、変更できないステップとして、対角成分の要素を1とし、その他を0とする。本実施形態では、現在のタイムステップ(k=5)とし、現在のタイムステップよりも過去のタイムステップ1~4を変更できないステップとする。この場合、行列Aeqは、1行目から4行目までの対角成分の要素を1とし、その他の要素を0とした行列となる。
【0094】
ベクトルbeqは、以下の式(14-2)のように、変更できないステップに対応する要素に対して、ベクトルu(-nτ,gas)~u(-1)を設定した行列である。ベクトルuは、実際の流量ugas1、流量ugas2、APC開度uapcを要素としたベクトルuである。例えば、ベクトルu(-nτ,gas)は、むだ時間nτ,gas過去のタイムステップでの流量ugas1、流量ugas2、APC開度uapcを要素としたベクトルuである。ベクトルu(-nτ,gas)~u(-1)には、それぞれのタイムステップにおいて、実際に設定されたCガス、酸素ガスのガス流量の設定値、APCバルブ40bの開度を、流量ugas1、流量ugas2、APC開度uapcに設定する。本実施形態では、現在のタイムステップ(k=5)とし、現在のタイムステップよりも過去のタイムステップ1~4に対応する要素に対して、ベクトルuを設定する。この場合、ベクトルbeqは、1行目から4行目の要素に対して、タイムステップ1~4での実際の流量ugas1、流量ugas2、APC開度uapcを要素としたベクトルuを設定したベクトルとなる。これのように等式制約条件を定めることにより、ベクトルbeqのゼロとした部分に対応する要素(ベクトルu)が最適化の対象となる。
【0095】
【数12】
【0096】
処理部2a1は、コストJ(U)が最小となる操作量Uを算出する。例えば、処理部2a1は、式(12-2)、式(12-3)を制約条件として、式(12-1)の最適化問題を二次計画法により解析して、コストJ(U)が最小となる操作量Uを算出する。これにより、操作量Uの式(12-3)において固定する要素とされなかった各要素について、最適化されたベクトルuが算出される。本実施形態では、操作量Uのタイムステップ5~10の各要素について、最適化されたベクトルuが算出される。
【0097】
処理部2a1は、算出した操作量Uに基づいてプラズマ処理装置1を制御する。本実施形態では、処理部2a1は、操作量Uの現在のタイムステップに対応するベクトルuに基づいてプラズマ処理装置1を制御する。本実施形態では、現在のタイムステップ(k=5)であるため、操作量Uのベクトルu(5)に基づいてプラズマ処理装置1を制御する。すなわち、処理部2a1は、タイムステップごとに、現在のタイムステップから複数先のタイムステップまで各タイムステップの処理条件を算出する。そして、処理部2a1は、タイムステップごとに、算出した各タイムステップの処理条件のうち、直近のタイムステップの処理条件を用いてプラズマ処理を制御する。
【0098】
本実施形態では、現在のタイムステップ(k=5)の制御を行う際に、タイムステップ5~10まで最適化したベクトルuが算出される。このように現在のタイムステップのみではなく、複数タイムステップ先までそれぞれのタイムステップの最適化したベクトルuを算出することで、複数タイムステップ先まで考慮して現在のタイムステップに適したベクトルuを算出できる。処理部2a1は、複数タイムステップ先まで算出したベクトルuのうち、現在のタイムステップのベクトルuを用いてプラズマ処理装置1を制御する。これにより、処理部2a1は、複数タイムステップ先まで考慮して、プラズマ処理装置1を制御できる。
【0099】
図3は、第1実施形態に係る処理部2a1による最適化の制御の流れを機能的に示した図である。
【0100】
処理部2a1は、記憶部2a2に記憶されたレシピに従い、プラズマプロセスの処理を実施するようプラズマ処理装置1の各部を制御する。レシピには、プラズマプロセスに沿って、目標とするOES発光強度の設定値が記憶されている。本実施形態では、プラズマプロセスに沿って、252.0nm、777.5nmの波長のOES発光強度の設定値がレシピに記憶されている。処理部2a1は、記憶部2a2に記憶されたレシピを読み出すことにより、OES発光強度の設定値が入力される。
【0101】
プラズマ処理装置1では、センサ14が、プラズマの波長毎の発光強度を検出し、検出した波長毎の発光強度を示す発光データを処理部2a1へ出力する。
【0102】
処理部2a1は、センサ14から入力する発光データを記憶する。例えば、処理部2a1は、252.0nm、777.5nmの波長のOES発光強度を直近の4タイムステップ分記憶する。
【0103】
処理部2a1は、タイムステップのタイミングごとに、上述した式(4)に示した状態空間モデルを用いてプラズマ処理装置1を制御する。例えば、処理部2a1は、ベクトルUを操作量Uとし、式(4)を適用した式(12-1)を用いて、最適な操作量Uを算出する。
【0104】
例えば、処理部2a1は、ベクトルSVの現在のタイムステップよりも過去のタイムステップ1~4のベクトルr(1)~r(4)に直近の4タイムステップのOES発光強度の設定値を設定する。また、処理部2a1は、ベクトルSVの現在のタイムステップから先のタイムステップ5~10のベクトルr(5)~r(10)に、現在のタイムステップから6タイムステップ先までのOES発光強度の設定値を設定する。例えば、処理部2a1は、現在のタイムステップから前後に1タイムステップずつずれた各タイムステップのOES発光強度の設定値を記憶部2a2に記憶されたレシピから読み出し、ベクトルr(1)~r(m)に設定する。また、処理部2a1は、現在のタイムステップよりも過去のタイムステップ1~4を変更できないステップとなるように行列Aeqを設定する。また、処理部2a1は、ベクトルbeqの1行目から4行目の要素に、直近の4タイムステップの実際の流量ugas1、流量ugas2、APC開度uapcを設定したベクトルuを設定する。
【0105】
そして、処理部2a1は、式(12-2)、式(12-3)を制約条件として、式(12-1)の最適化問題を二次計画法により解析して、コストJ(U)が最小となる操作量Uを算出する。これにより、本実施形態では、操作量Uのタイムステップ5~10の各要素について、最適化されたベクトルuが算出される。
【0106】
処理部2a1は、算出した操作量Uに基づいてプラズマ処理装置1を制御する。本実施形態では、処理部2a1は、操作量Uの現在のタイムステップに対応するベクトルu(5)に基づいてプラズマ処理装置1を制御する。
【0107】
処理部2a1は、タイムステップのタイミングごとに、このような処理を繰り返してALEなどの周期的なプラズマプロセスを制御する。
【0108】
[プラズマ処理方法]
図4は、第1実施形態に係るプラズマ処理方法の処理を含む制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。図4は、制御処理により含まれるプラズマ処理方法の処理の流れを主に示している。図4に例示された処理は、プラズマ処理装置1でプラズマ処理を実施する際に実行される。
【0109】
処理部2a1は、記憶部2a2から実施するプラズマ処理のレシピを読み出し、レシピに従い、プラズマプロセスの実行を開始する(S10)。
【0110】
処理部2a1は、実行中のプラズマプロセスが周期的なプラズマプロセスであるか否かを判定する(S11)。処理部2a1は、例えば、プラズマ処理チャンバ10に処理ガスを供給するガス供給ステップと、プラズマ処理チャンバ10内を排出する排出ステップの切り替えを頻繁に行う場合、周期的なプラズマプロセスと判定する。例えば、ALEは、ガス供給ステップ(例えば、ステップ1、3)と、排出ステップ(例えば、ステップ2、4)の切り替えを頻繁に行うため、周期的なプラズマプロセスと判定される。なお、レシピが周期的なプラズマプロセスであるか否かの設定情報を記憶してもよい。処理部2a1は、レシピの設定情報に基づいて、周期的なプラズマプロセスであるか否かを判定してもよい。
【0111】
実行中のプラズマプロセスが周期的なプラズマプロセスではない場合(S11:No)、処理部2a1は、レシピに従い、プラズマ処理装置1の各部を制御する通常制御を行い(S12)、後述するステップS17へ移行する。
【0112】
一方、実行中のプラズマプロセスが周期的なプラズマプロセスである場合(S11:Yes)、処理部2a1は、プラズマ処理チャンバ10内の処理ガスが電離したラジカルの発光強度を取得する。また、処理部2a1は、プラズマ処理チャンバ10に供給した処理ガスのガス流量とAPCバルブ40bの開度を取得する(ステップS13)。例えば、処理部2a1は、センサ14から入力する252.0nm、777.5nmの波長のOES発光強度を記憶する。また、例えば、処理部2a1は、実施中のプラズマプロセスで実際に設定したCガス、酸素ガスのガス流量の設定値、APCバルブ40bの開度を記憶する。処理部2a1は、直近の所定期間(4タイムステップ)の252.0nm、777.5nmの波長のOES発光強度、Cガス、酸素ガスのガス流量の設定値、APCバルブ40bの開度を読み出すことで、取得する。
【0113】
処理部2a1は、発光強度の目標とする設定値を取得する(ステップS14)。例えば、処理部2a1は、現在のタイムステップからベクトルSVにおいてタイムステップ1~mの範囲内となる期間の発光強度の目標とする設定値をレシピから取得する。例えば、本実施形態では、処理部2a1は、現在のタイムステップの4タイムステップ前から6タイムステップ先までの各タイムステップでのOES発光強度の設定値をレシピから取得する。
【0114】
処理部2a1は、発光強度を設定値に近づけるプラズマ処理の処理条件を算出する(ステップS15)。例えば、処理部2a1は、操作量Uについて適切な制約条件を定めて、二次計画法により、コストJ(U)が最小となる最適な操作量Uを算出する。
【0115】
処理部2a1は、算出した処理条件に基づいてプラズマ処理装置1を制御する(ステップS16)。例えば、処理部2a1は、算出した操作量Uに基づいてプラズマ処理装置1を制御する。本実施形態では、処理部2a1は、操作量Uの現在のタイムステップに対応するベクトルu(5)に基づいてプラズマ処理装置1を制御する。
【0116】
処理部2a1は、プラズマプロセスが終了したか否かを判定する(S17)。プラズマプロセスが終了していない場合、上述のS11へ移行する。一方、プラズマプロセスが終了した場合、本フローチャートに示された処理を終了する。
【0117】
図5は、第1実施形態に係る操作量Uの最適化を実施した結果の一例を示す図である。図5は、ALEについて、上述したような操作量Uの最適化を実施した場合をコンピュータによりシミュレーションした結果である。
【0118】
図5には、ALEのステップ1~4が示されている。図5(A)には、Cガスに対応する252.0nmの波長と、酸素(O)ガスに対応する777.5nmの波長について、最適化において設定したOES発光強度の設定値(SV)の変化がそれぞれ点線により示されている。また、図5(A)には、最適化した操作量UでALEを実施した場合のCガスに対応する252.0nmの波長と、酸素ガスに対応する777.5nmの波長のOES発光強度の観測値(PV)の変化が実線により示されている。図5(B)には、Cガス、酸素ガスのガス流量の設定値の変化と、APCバルブ40bの開度の変化がそれぞれ示されている。APCバルブ40bの開度は、角度(APC Angle)として示している。
【0119】
操作量Uを最適化した結果、ステップ1では、直前のステップ4の終了の前からCガスを先出しており、ガス流量も最初に一時的に大きくしている。また、ステップ1では、ステップ1を開始した際にAPCバルブ40bの開度を一時的に小さくしている。これにより、ステップ1では、Cガスをプラズマ処理チャンバ10内に早く満たすことができる。この結果、ステップ1では、252.0nmの波長のOES発光強度が速やかに立ち上がった後、一定の発光強度に安定する。
【0120】
また、ステップ1~ステップ2では、ステップ1の終了の前からCガスを止めており、APCバルブ40bの開度を大きくしている。これにより、ステップ2では、Cガスを早く、効率的に排気できる。この結果、ステップ2では、252.0nmの波長のOES発光強度も速やかに低下する。
【0121】
また、ステップ3では、直前のステップ2の終了の前から酸素ガスを先出しており、ガス流量も最初に一時的に大きくしている。また、ステップ3では、ステップ3を開始した際にAPCバルブ40bの開度を一時的に小さくしている。これにより、ステップ3では、酸素ガスをプラズマ処理チャンバ10内に早く満たすことができる。この結果、ステップ3では、777.5nmの波長のOES発光強度が速やかに立ち上がった後、一定の発光強度に安定する。
【0122】
また、ステップ3~ステップ4では、ステップ3の終了の前から酸素ガスを止めており、APCバルブ40bの開度を大きくしている。これにより、ステップ4では、酸素ガスを早く、効率的に排気できる。この結果、ステップ4では、777.5nmの波長のOES発光強度も速やかに低下する。
【0123】
次に、従来と比較して第1実施形態の最適化を実施した結果の一例を説明する。
【0124】
図6は、従来の周期的なプラズマプロセスの一例を示す図である。図6は、ALEにより基板Wに形成されたエッチング対象膜のエッチングを実施する場合を示している。
【0125】
図6には、ALEのステップ1~4が示されている。図6(A)には、Cガスに対応する252.0nmの波長と、酸素(O)ガスに対応する777.5nmの波長のOES発光強度の観測値の変化が示されている。図6(B)には、Cガス、酸素ガスのガス流量の設定値の変化が示されている。図6(C)には、APCバルブ40bの開度の変化の波形と、プラズマ処理チャンバ10内の圧力の変化の波形が示されている。図6(D)には、電源30から供給されるソースRF信号(HF)の電力のパワー(HF Power)の変化の波形と、HFの電圧Vのpeak to peakの値Vppの変化の波形が示されている。
【0126】
図7は、第1実施形態に係る操作量Uの最適化を実施した結果の一例を示す図である。図7は、図6に示したALEのプロセスに対して操作量Uの最適化を実施した場合を示している。なお、図7は、ステップ2、4の期間のみAPCバルブ40bの開度を変更可能とする制約条件をさらに加えて操作量Uの最適化を実施した場合を示している。
【0127】
図7には、ALEのステップ1~4が示されている。図7(A)には、Cガスに対応する252.0nmの波長と、酸素(O)ガスに対応する777.5nmの波長について、最適化において設定したOES発光強度の設定値(SV)の変化がそれぞれ点線により示されている。また、図7(A)には、最適化した操作量UでALEを実施した場合のCガスに対応する252.0nmの波長と、酸素ガスに対応する777.5nmの波長のOES発光強度の観測値(PV)の変化が実線により示されている。図7(B)には、最適化した操作量UでのCガス、酸素ガスのガス流量の設定値の変化が示されている。図7(C)には、最適化した操作量UでALEを実施した場合のAPCバルブ40bの開度の変化の波形と、プラズマ処理チャンバ10内の圧力の変化の波形が示されている。図7(D)には、ALEを実施した場合の電源30から供給されるソースRF信号(HF)の電力のパワー(HF Power)の変化の波形と、HFの電圧Vのpeak to peakの値Vppの変化の波形が示されている。
【0128】
図6(A)では、ステップ1において、Cガスに対応する252.0nmの波長の波形が一定とならずに崩れている。つまり、ラジカル密度が一定ではないため、プロセスが非効率となっている。
【0129】
一方、図7(A)では、ステップ1において、252.0nmの波長の波形が設定値(SV)に近く、一定となっている。これにより、ラジカル密度を一定になるため、プロセスの効率を高めることができている。
【0130】
また、図6では、ステップ2、4の期間が2秒であったが、図7では、最適化を実施したことにより、ステップ2、4の期間を1秒に短縮できる。これにより、ALEのステップ2、4の期間できるため、ALEのプロセスの生産性を高めることができる。
【0131】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態に係るプラズマ処理システムの構成は、図1に示した第1実施形態の構成と同様のため、説明を省略する。
【0132】
ところで、プラズマプロセスでは、外乱が発生してラジカルが一定とならず、プラズマプロセス中にセンサ14により検出されるOES発光強度の波形が一定とならない場合がある。例えば、プラズマ処理チャンバ10内に生成されたラジカルがプラズマ処理チャンバ10内に堆積した堆積物にも消費されるスカベンジング(Scavenging)が発生し、プラズマプロセス中のOES発光強度の波形が一定とならない場合がある。
【0133】
そこで、第2実施形態では、外乱をモデル化し、外乱のモデルを含んだ状態空間モデルを作成し、外乱のモデルを含んだ状態空間モデルを用いて、プラズマ処理の処理条件を算出する。
【0134】
外乱のモデルを含んだ場合の状態空間モデルの状態方程式は、以下の式(15)のように表すことができる。
【0135】
【数13】
【0136】
ここで、
dv(k)は、タイムステップkでの外乱である。
【0137】
式(15)は、上述した式(1)に、外乱wdv(k)の項が加算された式となっている。式(15)は、2つのガス(ガス1、ガス2)に関するOES発光強度の状態方程式とする場合、x(k)、x(k+1)、A、Bgas、ugas(k-nτ,gas)、Bapc、wdv(k)を行列またはベクトルとすることで、以下の式(16)のように表すことができる。
【0138】
【数14】
【0139】
ここで、
oes1、dv(k)、woes2、dv(k)は、ベクトルwdv(k)の要素となるパラメータである。
【0140】
oes1、dv(k)、woes2、dv(k)は、外乱に応じて定める。
【0141】
例えば、スカベンジングなどの外乱をモデル化する場合、woes1、dv(k)、woes2、dv(k)は、以下の式(17-1)、式(17-2)のように定める。
【0142】
oes1、dv(k)=xoes1(k-1)-x^oes1(k-1) (17-1)
oes2、dv(k)=xoes2(k-1)-x^oes2(k-1) (17-2)
【0143】
ここで、
oes1(k-1)は、タイムステップk-1でのガス1に対応する波長のOES発光強度の観測値である。
oes2(k-1)は、タイムステップk-1でのガス2に対応する波長のOES発光強度の観測値である。
x^oes1(k-1)は、タイムステップk-1でのガス1に対応する波長のOES発光強度の予測値である。
x^oes2(k-1)は、タイムステップk-1でのガス2に対応する波長のOES発光強度の予測値である。
【0144】
x^oes1(k-1)及びx^oes2(k-1)は、例えば、式(1)又は式(2)を用いて、k-2のタイムステップのOES発光強度の観測値から算出する。
【0145】
すなわち、woes1、dv(k)、woes2、dv(k)は、それぞれ1タイムステップ過去のOES発光強度の観測値と予測値の差を外乱としている。
【0146】
また、例えば、伝達関数のインパルス応答により外乱をモデル化する場合、woes1、dv(k)、woes2、dv(k)は、以下の式(18-1)、式(18-2)のように定める。
【0147】
【数15】
【0148】
ここで、
oes1、dvは、ガス1についてのゲイン(外乱の大きさ)である。
oes2、dvは、ガス2についてのゲイン(外乱の大きさ)である。
oes1、dvは、ガス1についての時定数(減衰時間)である。
oes2、dvは、ガス2についての時定数(減衰時間)である。
τoes1、dvは、ガス1についてのむだ時間(時間遅れ)である。
τoes2、dvは、ガス2についてのむだ時間(時間遅れ)である。
ΔTは、サンプリング周期である。
【0149】
式(18-1)、式(18-2)は、ゲインKoes1、dv、Koes2、dv、時定数Toes1、dv、Toes2、dv、むだ時間τoes1、dv、τoes2、dvを変えることで様々なインパルス応答の波形を表現できる。
【0150】
図8A図8Cは、インパルス応答の波形の一例を示す図である。図8A図8Cでは、ゲインKoes1、dv、Koes2、dvをKとし、時定数Toes1、dv、Toes2、dvをTとし、むだ時間τoes1、dv、τoes2、dvをTauとして設定値を示している。図8Aには、Tを1.0、Tauを1.0に固定し、Kを-0.5、-1.5、-2.0に変化させた場合のwoes1、dv(k)、woes2、dv(k)の波形が示されている。図8Bには、Kを-1.0、Tauを1.0に固定し、Tを0.5、1.0、2.0に変化させた場合のwoes1、dv(k)、woes2、dv(k)の波形が示されている。図8Cには、Kを-1.0、Tを1.0に固定し、Tauを0.5、1.0、2.0に変化させた場合のwoes1、dv(k)、woes2、dv(k)の波形が示されている。
【0151】
観測値の予測式は、以下の式(19)のように式を定める。
【0152】
【数16】
【0153】
ここで、
Cは、ベクトルy(k)とベクトルx(k)を変換する行列である。
oes1、gas1、coes1、gas2、coes2、gas1、coes2、gas2は、行列Cの要素となるパラメータである。
【0154】
本実施形態では、簡易化するため、行列Cを単位行列として、観測値の予測式を、第1実施形態と同様に、y(k)=x(k)とする。
【0155】
式(16)を時間遷移させて、第1実施形態と同様に、タイムステップ0でのOES発光強度のベクトルx(0)から1~mタイムステップ先のOES発光強度のベクトルx(1)~x(m)を算出する予測式を作成する。予測式は、以下の式(20)のようにベクトルX、行列F、行列G、ベクトルU、行列G、ベクトルWの関係式として表すことができる。式(20)は、上述した式(4)にGWが加算された式となっている。
【0156】
【数17】
【0157】
ここで、
ベクトルWは、以下の式(21)のように、ベクトルwdv(0)~wdv(m-nτ,gas)をそれぞれ要素としたベクトルである。
行列Gは、以下の式(22-1)のような行列である。
行列Gは、以下の式(22-2)のような行列である。
【0158】
【数18】
【0159】
【数19】
【0160】
観測値の予測式は、以下の式(23-1)、式(23-2)のように式を定める。
【0161】
【数20】
【0162】
本実施形態では、簡易化するため、行列Cを単位行列として、第1実施形態と同様に、ベクトルY=ベクトルXとする。
【0163】
式(20)のベクトルUを操作量Uとする。操作量Uを変更するコストJ(U)を、ベクトルY、ベクトルSV、行列P、行列Qを用いて以下の式(24-1)のように定める。式(24-1)は、ベクトルXに式(20)を代入すると、式(24-2)のように表すことができる。式(24-2)は、上述した式(9-2)に項c部分が増えている。
【0164】
【数21】
【0165】
そして、式(24-2)は、行列Nを以下の式(25-1)とし、ベクトルMを以下の式(25-2)とした場合、式(24-3)のように表すことができる。
【0166】
【数22】
【0167】
行列Nは、式(25-1)のように、行列G、行列P、行列Qの演算により得られる。行列G、行列P、行列Qは、それぞれ要素に変数が無く、定数となっている。このため、行列Nは、要素が固定値に定まる。
【0168】
ベクトルMは、式(25-2)のように、行列F、ベクトルx(0)、行列G、ベクトルW、ベクトルSV、行列P、行列Gの演算により得られる。行列F、行列P、行列Q、行列G、ベクトルWは、それぞれ要素に変数が無く、定数となっている。ベクトルx(0)は、タイムステップ0でのOES発光強度の観測値のベクトルであり、要素が固定値に定まる。ベクトルSVは、上述の式(10)のように、ベクトルr(1)~x(m)を要素としたベクトルである。ベクトルSVのベクトルr(1)~r(m)には、第1実施形態と同様に、現在のタイムステップから前後に1タイムステップずつずれた各タイムステップでのOES発光強度の設定値を設定する。このようにベクトルSVにOES発光強度の設定値を設定することで、ベクトルSVは、要素が固定値に定まる。このため、ベクトルMは、要素が固定値に定まる。
【0169】
よって、式(24-3)から、第2実施形態でも、コストJ(U)は、操作量Uにより変化する。よって、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、式(24-3)からコストJ(U)を最小とする最適化問題を上述した式(12-1)のように定義できる。第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、操作量Uについて適切な制約条件を定めて、二次計画法により、コストJ(U)が最小となる操作量Uを算出できる。
【0170】
処理部2a1は、発光強度を設定値に近づけるプラズマ処理の処理条件を算出する。処理部2a1は、状態空間モデルを用いて、処理条件を算出する。例えば、処理部2a1は、ベクトルUを操作量Uとし、式(20)を用いて、処理条件として、最適な操作量Uを算出する。例えば、処理部2a1は、式(12-2)、式(12-3)を制約条件として、式(12-1)の最適化問題を二次計画法により解析して、コストJ(U)が最小となる操作量Uを算出する。これにより、操作量Uの式(12-3)において固定する要素とされなかった各要素について、最適化されたベクトルuが算出される。例えば、第1実施形態と同様に、操作量Uのタイムステップ5~10の各要素について、最適化されたベクトルuが算出される。
【0171】
処理部2a1は、算出した操作量Uに基づいてプラズマ処理装置1を制御する。例えば、第1実施形態と同様に、処理部2a1は、操作量Uの現在のタイムステップに対応するベクトルu(5)に基づいてプラズマ処理装置1を制御する。
【0172】
処理部2a1は、タイムステップのタイミングごとに、このような処理を繰り返してALEなどの周期的なプラズマプロセスを制御する。
【0173】
次に、従来と比較して第2実施形態の最適化を実施した結果の一例を説明する。
【0174】
図9は、従来の周期的なプラズマプロセスの一例を示す図である。図9は、ALEにより基板Wに形成されたエッチング対象膜のエッチングを実施する場合を示している。
【0175】
図9には、ALEのステップ1~4が示されている。図9(A)には、Cガスに対応する252.0nmの波長と、酸素(O)ガスに対応する777.5nmの波長のOES発光強度の観測値(PV)の変化がそれぞれ実線により示されている。また、図9(A)には、252.0nmの波長と、777.5nmの波長のOES発光強度の設定値(SV)の変化がそれぞれ点線により示されている。図9(B)には、Cガス、酸素ガスのガス流量の設定値の変化が示されている。図9(C)には、APCバルブ40bの開度の変化の波形と、プラズマ処理チャンバ10内の圧力の変化の波形が示されている。APCバルブ40bの開度は、角度(APC Angle)として示している。図9(D)には、電源30から供給されるソースRF信号(HF)の電力のパワー(HF Power)の変化の波形が示されている。
【0176】
図9では、ステップ1において、プラズマ処理チャンバ10内に生成されたラジカルがプラズマ処理チャンバ10内に堆積した堆積物にも消費されるスカベンジングが発生しており、OES発光強度の観測値(PV)が設定値(SV)まで徐々に増加する。つまり、ラジカル密度が一定ではないため、プロセスが非効率となっている。
【0177】
図10は、第2実施形態に係る操作量Uの最適化を実施した結果の一例を示す図である。図10は、図9に示したALEのプロセスに対して操作量Uの最適化を実施した場合を示している。
【0178】
図10には、ALEのステップ1~4が示されている。図10(A)には、Cガスに対応する252.0nmの波長と、酸素(O)ガスに対応する777.5nmの波長について、最適化において設定したOES発光強度の設定値(SV)の変化がそれぞれ点線により示されている。また、図10(A)には、最適化した操作量UでALEを実施した場合のCガスに対応する252.0nmの波長と、酸素ガスに対応する777.5nmの波長のOES発光強度の観測値(PV)の変化が実線により示されている。図10(B)には、最適化した操作量UでのCガス、酸素ガスのガス流量の設定値の変化が示されている。図10(C)には、最適化した操作量UでALEを実施した場合のAPCバルブ40bの開度の変化の波形と、プラズマ処理チャンバ10内の圧力の変化の波形が示されている。APCバルブ40bの開度は、角度(APC Angle)として示している。図10(D)には、ALEを実施した場合の電源30から供給されるソースRF信号(HF)の電力のパワー(HF Power)の変化の波形が示されている。
【0179】
図10(A)では、ステップ1において、252.0nmの波長の波形が設定値(SV)に近く、一定となっている。これにより、ラジカル密度が一定になるため、プロセスの効率を高めることができている。
【0180】
なお、上記の実施形態では、本開示のプラズマ処理装置をプラズマ処理システムとした場合を例に説明した。しかし、開示の技術はこれに限定されるものではない。本開示のプラズマ処理装置は、他の構成のプラズマ処理装置であってもよい。
【0181】
また、上記の実施形態では、周期的なプラズマプロセスをALEとした場合を例に説明した。しかし、開示の技術はこれに限定されるものではない。周期的なプラズマプロセスは、プラズマ処理チャンバ10への処理ガスの供給と、プラズマ処理チャンバ10内の排気が周期的に繰り返されるプラズマ処理であれば何れかでもよい。例えば、周期的なプラズマプロセスは、ALD(Atomic Layer Deposition)であってもよい。
【0182】
また、上記の実施形態では、行列Aのaoes1、aoes2や、行列Bgasのboes1、gas1~boes2、gas2などの状態空間モデルの処理特性を規定する係数となる各種のパラメータを事前に調整した固定値とした場合を例に説明した。しかし、開示の技術はこれに限定されるものではない。処理部2a1は、状態空間モデルの誤差を取り除く適応機構を有してもよい。処理部2a1は、適応機構により、状態空間モデルのパラメータを更新する。適応機構とは、実機を運転中に予測値と実測値の残差にもとづき、パラメータを更新することにより、モデル誤差を取り除く制御である。適応機構としては、忘却係数あり逐次最小二乗法を用いることができ、例えば、下記の式(26-1)~式(26-4)のように表すことができる。適応ゲイン、忘却係数は、パラメータごとに、事前に調整して適切に定める。
【0183】
【数23】
【0184】
図11は、第2実施形態に係る処理部2a1の処理の流れを機能的に示した図である。処理部2a1では、上述したように、状態空間モデルを用いて最適化を行い、最適な操作量Uを算出する。処理部2a1では、算出した操作量Uに基づいてプラズマ処理装置1を制御する。また、処理部2a1は、適応機構により、状態空間モデルのパラメータを更新する。例えば、処理部2a1は、状態空間モデルを用いてOES発光強度の予測値を算出する。例えば、処理部2a1は、式(2)を用いて、1つ前のタイムステップでのOES発光強度の観測値から現在タイムステップでのOES発光強度の予測値を算出する。そして、処理部2a1は、プラズマ処理装置1から得られるOES発光強度の観測値とOES発光強度の予測値との差分を予測誤差として算出する。処理部2a1は、上述した式(26-1)~式(26-4)を用いて、状態空間モデルのパラメータの値を算出し、最適化に用いる状態空間モデルのパラメータを更新する。これにより、状態空間モデルの予測誤差を小さくすることができる。
【0185】
また、上記の実施形態では、外乱をスカベンジングとした場合を例に説明した。しかし、外乱はこれに限定されるものではない。外乱は、プラズマ処理に影響するものであればどのようなものであってもよい。例えば、外乱は、装置機差や、部品消耗などの経時変化としてもよい。これにより、プラズマ処理装置1に装置機差や、部品消耗などの経時変化などの外乱が発生する場合でも、状態空間モデルの予測誤差を小さくすることができる。
【0186】
また、上記の実施形態では、最適化する処理条件を、流量ugas1、流量ugas2、APC開度uapcとした場合を例に説明した。しかし、開示の技術はこれに限定されるものではない。最適化する処理条件は、OES発光強度を変更可能な処理条件であれば、何れかの処理条件であってもよい。例えば、処理条件を、プラズマ処理チャンバ10内の圧力や、HF、LFなどの高周波電力のパワーとしてもよい。例えば、プラズマ処理装置1は、HF、LFなどの高周波電力のパワーを変えることでプラズマの電子密度を変えることができ、発光強度を制御できる。状態空間モデルは、ベクトルugas、ベクトルuapcなどのベクトルuを最適化する処理条件のベクトルとすることで、最適化する処理条件を用いたモデルを作成できる。例えば、状態空間モデルは、ベクトルuをHFのパワーの行列とすることで、最適化する処理条件をHFのパワーのベクトルとしたモデルを作成できる。このような状態空間モデルを用いて、実施形態にて説明した手法で最適な操作量U(ベクトルU)を算出できる。
【0187】
また、状態空間モデルは、パラメータを処理条件やプラズマ処理チャンバ10の状態に応じて変更してもよい。例えば、処理部2a1は、プラズマ処理チャンバ10内の圧力、プラズマ処理チャンバ10内にプラズマを生成する高周波電力のパワーに応じて状態空間モデルを更新してもよい。処理部2a1は、更新した状態空間モデルを用いて、処理条件を算出してもよい。例えば、状態空間モデルの状態方程式は、以下の式(27)のように表すことができる。式(27)では、Bgas、Bapcを圧力p(k)、高周波電力(RF)のパワーrf(k)を含んだ関数としている。なお、高周波電力(RF)パワーrf(k)は、プラズマの生成に用いるソースRF信号(HF)の電力のパワーとする。状態空間モデルの状態方程式は、以下の式(27)のように表すことができる。
【0188】
【数24】
【0189】
式(27)は、2つのガス(ガス1、ガス2)に関するOES発光強度の状態方程式とする場合、以下の式(28)のように表すことができる。
【0190】
【数25】
【0191】
ここで、
kは、タイムステップである。
p(k)は、タイムステップkでのプラズマ処理チャンバ10内の圧力である。
rf(k)は、タイムステップkでのRFパワーである。
p(k),rf(k)は、操作量にかかる係数(圧力とRFパワーの関数)である。
【0192】
p(k),rf(k)は、圧力とRFパワーの線形回帰式で、以下の式(29)のように表すことができる。
【0193】
【数26】
【0194】
ここで、
a、b、cは、線形回帰式のパラメータである。
【0195】
式(29)のパラメータa、b、cは、OES発光強度との相関が高くなるように事前に定める。
【0196】
図12は、OES発光強度との相関の一例を示す図である。図12(A)~(C)は、Cガスに対応する252.0nmの波長の発光強度との相関との相関が高くなるようにパラメータa、b、cを定めた場合を示している。図12(A)は、KC4F8/log(C4F8+1)との相関を求めた場合を示している。KC4F8は、Cガスの供給量に対応した252.0nmの波長の発光強度である。C4F8は、Cガスの供給量である。図12(B)は、KAPC/log(APCAngle)との相関を求めた場合を示している。KAPCは、APCバルブ40bの開度に対応した252.0nmの波長の発光強度である。APCAngleは、APCバルブ40bの開度は、角度(APC Angle)である。図12(C)は、Kdvとの相関を求めた場合を示している。Kdvは、外乱による252.0nmの波長の発光強度の変化量である。図12(A)~(C)に示すように、式(29)は、パラメータa、b、cを適切に定めることにより、相関性を持たせることができる。
【0197】
図13は、OES発光強度との相関の他の一例を示す図である。図13(A)~(C)は、酸素ガスに対応する777.5nmの波長の発光強度との相関との相関が高くなるようにパラメータa、b、cを定めた場合を示している。図13(A)は、KO2/log(O2+1)との相関を求めた場合を示している。KO2は、酸素ガス(O)ガスの供給量に対応した777.5nmの波長の発光強度である。O2は、Oガスの供給量である。図13(B)は、KC4F8/log(C4F8+1)との相関を求めた場合を示している。KC4F8は、Cガスの供給量に対応した777.5nmの波長の発光強度である。C4F8は、Cガスの供給量である。図13(C)は、KAPC/log(APCAngle)との相関を求めた場合を示している。KAPCは、APCバルブ40bの開度に対応した777.5nmの波長の発光強度である。APCAngleは、APCバルブ40bの開度は、角度(APC Angle)である。
【0198】
このような場合、式(4)、式(20)に示した予測式の行列Gは、以下の式(30)のように表せる。なお、式(30)に示した行列Gは、各行の成分が長いため、各行を下側に分けて示している。
【0199】
【数27】
【0200】
は、実測値とする。
rf(k)は、レシピからのRFパワーの設定値を設定する。
【0201】
処理部2a1は、プラズマ処理チャンバ10内の圧力、プラズマ処理チャンバ10内のプラズマを生成する高周波電力のパワーに応じて状態空間モデルを更新する。そして、処理部2a1は、更新した状態空間モデルを用いて、処理条件を算出する。例えば、処理部2a1は、タイムステップkごとに、Bgas、Bapcを更新し、式(20)の行列Gを算出する。そして、処理部2a1は、算出した行列Gを式(25-1)、(25-2)に適用し、式(12-2)、式(12-3)を制約条件として、式(12-1)の最適化問題を二次計画法により解析して、コストJ(U)が最小となる操作量Uを算出する。これにより、操作量Uの式(12-3)において固定する要素とされなかった各要素について、最適化されたベクトルuが算出される。例えば、第1実施形態と同様に、操作量Uのタイムステップ5~10の各要素について、最適化されたベクトルuが算出される。
【0202】
従来と比較して、Bgas、BapcをHFパワーのタイミングと合わせて変えて最適化を実施した結果の一例を説明する。
【0203】
図14は、従来の周期的なプラズマプロセスの一例を示す図である。図14は、ALEにより基板Wに形成されたエッチング対象膜のエッチングを実施する場合を示している。
【0204】
図14には、ALEのステップ1~4が示されている。図14(A)には、Cガスに対応する252.0nmの波長と、酸素(O)ガスに対応する777.5nmの波長のOES発光強度の観測値(PV)の変化がそれぞれ実線により示されている。また、図14(A)には、Cガスに対応する252.0nmの波長と、酸素ガスに対応する777.5nmの波長のOES発光強度の設定値(SV)の変化がそれぞれ点線により示されている。図14(B)には、Cガス、酸素ガスのガス流量の設定値の変化が示されている。図14(C)には、APCバルブ40bの開度の変化の波形と、プラズマ処理チャンバ10内の圧力の変化の波形が示されている。APCバルブ40bの開度は、角度(APC Angle)として示している。図14(D)には、電源30から供給されるソースRF信号(HF)の電力のパワー(HF Power)の変化の波形が示されている。
【0205】
図14では、ステップ1において、実線により示した252.0nmの波長のOES発光強度の観測値(PV)が、点線により示した252.0nmの波長のOES発光強度の設定値(SV)を超えるオーバーシュートが発生している。このようにオーバーシュートが発生すると、設定値のOES発光強度の場合の状態からラジカル密度がずれて、プラズマプロセスが非効率となっていると考えられる。
【0206】
図15は、実施形態に係るBgas、BapcをHFパワーのタイミングと合わせて変えて操作量Uの最適化を実施した結果の一例を示す図である。図15は、図14に示したALEのプロセスに対して操作量Uの最適化を実施した場合を示している。
【0207】
図15には、ALEのステップ1~4が示されている。図15(A)には、Cガスに対応する252.0nmの波長と、酸素(O)ガスに対応する777.5nmの波長について、最適化において設定したOES発光強度の設定値(SV)の変化がそれぞれ点線により示されている。また、図15(A)には、ALEを実施した場合のCガスに対応する252.0nmの波長と、酸素ガスに対応する777.5nmの波長のOES発光強度の観測値(PV)の変化が実線により示されている。図15(B)には、Cガス、酸素ガスのガス流量の設定値の変化が示されている。図15(C)には、ALEを実施した場合のAPCバルブ40bの開度の変化の波形と、プラズマ処理チャンバ10内の圧力の変化の波形が示されている。APCバルブ40bの開度は、角度(APC Angle)として示している。図15(D)には、最適化した操作量UでALEを実施した場合の電源30から供給されるソースRF信号(HF)の電力のパワー(HF Power)の変化の波形が示されている。
【0208】
図15(A)では、ステップ1において、オーバーシュートが発生せず、実線により示した252.0nmの波長のOES発光強度の観測値(PV)が、点線により示した設定値(SV)に近い状態となっている。これにより、プラズマ処理チャンバ10内の発光強度を、設定値の発光強度に近づけることができる。これにより、プラズマの制御が最適化されるため、プラズマプロセスの効率を高めることができる。
【0209】
また、上記の実施形態では、発光強度を検出する波長を252.0nmと777.5nmの波長した場合を例に説明した。しかし、開示の技術はこれに限定されるものではない。発光強度を検出する波長は、検出対象とするラジカルに応じて定めればよい。
【0210】
また、上記の実施形態では、2つの波長の発光強度を検出することで、2種類のラジカルの発光強度を取得し、2種類のラジカルの発光強度をそれぞれ設定値に近づける処理条件を算出する場合を例に説明した。しかし、開示の技術はこれに限定されるものではない。3つ以上の波長の発光強度を検出することで、3種類以上のラジカルの発光強度を取得し、3種類以上のラジカルの発光強度をそれぞれ設定値に近づける処理条件を算出してもよい。このように算出された処理条件によりプラズマ処理を実施することで、3種類以上のラジカルの発光強度をそれぞれ設定値に近づけることができる。これにより、プラズマ処理チャンバ10内の3種類以上のラジカル密度を、それぞれの設定値の発光強度の場合の状態に近づけることができるため、プラズマプロセスの効率を高めることができる。
【0211】
また、上記の実施形態では、状態空間モデルを用いて次のタイムステップの処理条件を算出する予測制御を行う場合を例に説明した。しかし、開示の技術はこれに限定されるものではない。予測制御には、例えば、強化学習や他の予測モデルなど他の手法を用いてもよい。
【0212】
また、上記の実施形態では、センサ14により検出されたOES発光強度をそのまま観測値として扱う場合を例に説明した。しかし、開示の技術はこれに限定されるものではない。センサ14により検出されたOES発光強度について、基準となる波長のOES発光強度(例えば、ArのOES発光強度)に対する比を求め、比の値を観測値として用いてもよい。
【0213】
以上、実施形態について説明した。上記したように、実施形態に係るプラズマ処理方法は、工程aと、工程bと、工程cとを含む。工程aは、プラズマ処理チャンバ10(チャンバ)への処理ガスの供給と、プラズマ処理チャンバ10内の排気が周期的に繰り返されるプラズマ処理において、プラズマ処理チャンバ10内の発光強度を検出するセンサ14により、プラズマ処理チャンバ10内の処理ガスが電離したラジカルの発光強度を取得する。工程bは、発光強度の目標とする設定値を取得する。工程cは、工程aにより取得した発光強度と工程bにより取得した設定値に基づいて、発光強度を設定値に近づけるプラズマ処理の処理条件を算出する。このように算出された処理条件によりプラズマ処理を実施することで、発光強度を設定値に近づけることができる。これにより、実施形態に係るプラズマ処理方法は、プラズマ処理チャンバ10内のラジカル密度を、設定値の発光強度の場合の状態に近づけることができるため、プラズマプロセスの効率を高めることができる。
【0214】
また、工程aは、プラズマ処理チャンバ10に供給した処理ガスのガス流量とプラズマ処理チャンバ10の排気量を調整するAPCバルブ40b(調整部)のAPC開度(操作量)をさらに取得する。工程cは、工程aにより取得した発光強度、ガス流量、APC開度と、工程bにより取得した設定値に基づいて、処理条件を算出する。このように算出された処理条件によりプラズマ処理を実施することで、発光強度を設定値に近づけることができる。これにより、実施形態に係るプラズマ処理方法は、プラズマ処理チャンバ10内のラジカル密度を、設定値の発光強度の場合の状態に近づけることができるため、プラズマプロセスの効率を高めることができる。
【0215】
また、工程cは、処理条件として、プラズマ処理チャンバ10に供給する処理ガスのガス流量とAPCバルブ40bのAPC開度を算出する。算出されたガス流量とAPC開度でプラズマ処理を実施することで、発光強度を設定値に近づけることができる。これにより、実施形態に係るプラズマ処理方法は、プラズマ処理チャンバ10内のラジカル密度を、設定値の発光強度の場合の状態に近づけることができるため、プラズマプロセスの効率を高めることができる。
【0216】
工程cは、処理条件として、プラズマ処理チャンバ10に供給する高周波電力のパワーを算出する。算出された高周波電力のパワーでプラズマ処理を実施することで、発光強度を設定値に近づけることができる。これにより、実施形態に係るプラズマ処理方法は、プラズマ処理チャンバ10内の電子密度を、設定値の発光強度の場合の状態に近づけることができるため、プラズマプロセスの効率を高めることができる。
【0217】
工程cは、状態空間モデルを用いて、処理条件を算出する。これにより、実施形態に係るプラズマ処理方法は、発光強度を設定値に近づける処理条件を算出できる。
【0218】
工程cは、プラズマ処理チャンバ10内の圧力、プラズマ処理チャンバ10内にプラズマを生成する高周波電力のパワーに応じて、状態空間モデルを更新し、更新した状態空間モデルを用いて、処理条件を算出する。これにより、実施形態に係るプラズマ処理方法は、プラズマ処理チャンバ10内の発光強度を、設定値の発光強度に近づけることができる。これにより、プラズマの制御が最適化されるため、プラズマプロセスの効率を高めることができる。
【0219】
実施形態に係るプラズマ処理方法は、工程dをさらに含む。工程dは、状態空間モデルを用いて算出した発光強度の予測値とセンサ14により得られる発光強度との差に基づいて、状態空間モデルを更新する。これにより、実施形態に係るプラズマ処理方法は、状態空間モデルの予測誤差を小さくすることができる。
【0220】
状態空間モデルは、プラズマ処理チャンバ10内に発生する外乱のモデルを含む。これにより、実施形態に係るプラズマ処理方法は、外乱が発生する場合でも、プラズマ処理チャンバ10内のラジカル密度を、設定値の発光強度の場合の状態に近づけることができるため、プラズマプロセスの効率を高めることができる。
【0221】
工程aは、2種類以上のラジカルの発光強度を取得する。工程bは、2種類以上のラジカルそれぞれの発光強度の目標とする設定値を取得する。工程cは、2種類以上のラジカルの発光強度をそれぞれ設定値に近づける処理条件を算出する。算出された処理条件でプラズマ処理を実施することで、2種類以上のラジカルの発光強度をそれぞれ設定値に近づけることができる。これにより、実施形態に係るプラズマ処理方法は、プラズマ処理チャンバ10内の2種類以上のラジカル密度を、それぞれの設定値の発光強度の場合の状態に近づけることができるため、プラズマプロセスの効率を高めることができる。
【0222】
実施形態に係るプラズマ処理方法は、工程eをさらに含む。工程cは、所定の周期のタイムステップごとに、処理条件を算出する。工程eは、タイムステップごとに、工程cにより算出した処理条件を用いてプラズマ処理の制御する工程をさらに有する。これにより、実施形態に係るプラズマ処理方法は、プラズマ処理チャンバ10内のラジカル密度を、設定値の発光強度の場合の状態に近づけることができるため、プラズマプロセスの効率を高めることができる。
【0223】
工程cは、タイムステップごとに、当該タイムステップから複数先のタイムステップまで各タイムステップの処理条件を算出する。工程dは、工程cにより算出した各タイムステップの処理条件のうち、直近のタイムステップの処理条件を用いてプラズマ処理を制御する。これにより、実施形態に係るプラズマ処理方法は、複数タイムステップ先まで考慮して、プラズマ処理を制御できる。
【0224】
実施形態に係るプラズマ処理装置1は、ガス供給部20(供給部)と、排気装置104(排気部)と、センサ14と、制御部2とを有する。ガス供給部20は、プラズマ処理チャンバ10に処理ガスを供給するように構成される。排気装置104は、プラズマ処理チャンバ10の排気量を調整するAPCバルブ40b(調整部)が設けられ、プラズマ処理チャンバ10内を排気するように構成される。センサ14は、プラズマ処理チャンバ10内の発光強度を検出するように構成される。制御部2は、ガス供給部20によるプラズマ処理チャンバ10への処理ガスの供給と、排気装置104によるプラズマ処理チャンバ10内の排気を周期的に繰り返してプラズマ処理を実施するように構成される。制御部2は、センサ14により、プラズマ処理チャンバ10内の処理ガスが電離したラジカルの発光強度を取得し、発光強度の目標とする設定値を取得し、取得した発光強度と設定値に基づいて、発光強度を設定値に近づけるプラズマ処理の処理条件を算出する。これにより、実施形態に係るプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10内のラジカル密度を、設定値の発光強度の場合の状態に近づけることができるため、プラズマプロセスの効率を高めることができる。
【0225】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0226】
また、上記の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0227】
(付記1)
a)チャンバへの処理ガスの供給と、前記チャンバ内の排気が周期的に繰り返されるプラズマ処理において、前記チャンバ内の発光強度を検出するセンサにより、前記チャンバ内の前記処理ガスが電離したラジカルの発光強度を取得する工程と、
b)発光強度の目標とする設定値を取得する工程と、
c)前記工程aにより取得した前記発光強度と前記工程bにより取得した前記設定値に基づいて、前記発光強度を前記設定値に近づける前記プラズマ処理の処理条件を算出する工程と、
を含むことを特徴とするプラズマ処理方法。
【0228】
(付記2)
前記工程aは、前記チャンバに供給した前記処理ガスのガス流量と前記チャンバの排気量を調整する調整部の操作量をさらに取得し、
前記工程cは、前記工程aにより取得した前記発光強度、前記ガス流量、前記操作量と、前記工程bにより取得した前記設定値に基づいて、前記処理条件を算出する
付記1に記載のプラズマ処理方法。
【0229】
(付記3)
前記工程cは、前記処理条件として、前記チャンバに供給する前記処理ガスのガス流量と前記調整部の操作量を算出する
付記2に記載のプラズマ処理方法。
【0230】
(付記4)
前記工程cは、前記処理条件として、前記チャンバに供給する高周波電力のパワーを算出する
付記1又は2に記載のプラズマ処理方法。
【0231】
(付記5)
前記工程cは、状態空間モデルを用いて、前記処理条件を算出する
付記1~4の何れか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0232】
(付記6)
前記工程cは、前記チャンバ内の圧力、前記チャンバ内にプラズマを生成する高周波電力のパワーに応じて、前記状態空間モデルを更新し、更新した前記状態空間モデルを用いて、前記処理条件を算出する
付記5に記載のプラズマ処理方法。
【0233】
(付記7)
d)前記状態空間モデルを用いて算出した発光強度の予測値と前記センサにより得られる発光強度との差に基づいて、前記状態空間モデルを更新する工程をさらに有する
付記5に記載のプラズマ処理方法。
【0234】
(付記8)
前記状態空間モデルは、前記チャンバ内に発生する外乱のモデルを含む
付記5~7の何れか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0235】
(付記9)
前記工程aは、2種類以上のラジカルの発光強度を取得し、
前記工程bは、前記2種類以上のラジカルそれぞれの発光強度の目標とする設定値を取得し、
前記工程cは、前記2種類以上のラジカルの発光強度をそれぞれ前記設定値に近づける前記処理条件を算出する
付記1~8の何れか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0236】
(付記10)
前記工程cは、所定の周期のタイムステップごとに、前記処理条件を算出し、
e)前記タイムステップごとに、前記工程cにより算出した前記処理条件を用いて前記プラズマ処理の制御する工程をさらに有する
付記1~9の何れか1つに記載のプラズマ処理方法。
【0237】
(付記11)
前記工程cは、前記タイムステップごとに、当該タイムステップから複数先のタイムステップまで各タイムステップの前記処理条件を算出し、
前記工程dは、前記工程cにより算出した各タイムステップの前記処理条件のうち、直近のタイムステップの前記処理条件を用いて前記プラズマ処理を制御する
付記10に記載のプラズマ処理方法。
【0238】
(付記12)
チャンバに処理ガスを供給するように構成される供給部と、
前記チャンバの排気量を調整する調整部が設けられ、前記チャンバ内を排気するように構成される排気部と、
前記チャンバ内の発光強度を検出するように構成されるセンサと、
前記供給部による前記チャンバへの処理ガスの供給と、前記排気部による前記チャンバ内の排気を周期的に繰り返してプラズマ処理を実施するように構成される制御部と、
を有するプラズマ処理装置であって、
前記制御部は、
前記センサにより、前記チャンバ内の前記処理ガスが電離したラジカルの発光強度を取得し、
前記発光強度の目標とする設定値を取得し、
取得した前記発光強度と前記設定値に基づいて、前記発光強度を前記設定値に近づける前記プラズマ処理の処理条件を算出する
プラズマ処理装置。
【符号の説明】
【0239】
1 プラズマ処理装置
2 制御部
2a コンピュータ
2a1 処理部
2a2 記憶部
2a3 通信インターフェース
10 プラズマ処理チャンバ
10a 側壁
10b 透過窓
10e ガス排出口
10s プラズマ処理空間
11 基板支持部
13 シャワーヘッド
13a ガス供給口
13b ガス拡散室
13c ガス導入口
14 センサ
20 ガス供給部
21 ガスソース
22 流量制御器
30 電源
31 電源
31a 第1のRF生成部
31b 第2のRF生成部
32 電源
32a 第1のDC生成部
32b 第2のDC生成部
40 排気システム
40a 排気管
40b APCバルブ
40c 真空ポンプ
104 排気装置
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15