(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024094906
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ケーブルおよびケーブルの浸水検知装置
(51)【国際特許分類】
H01B 7/32 20060101AFI20240703BHJP
H02G 9/00 20060101ALI20240703BHJP
H02G 1/10 20060101ALI20240703BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H01B7/32 Z
H02G9/00
H02G1/10
G02B6/44 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211821
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】米家 一洋
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀郎
(72)【発明者】
【氏名】丸山 悟
(72)【発明者】
【氏名】籠浦 徹
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 大輔
(72)【発明者】
【氏名】高坂 繁弘
(72)【発明者】
【氏名】忠隈 昌輝
【テーマコード(参考)】
2H201
5G315
5G352
5G369
【Fターム(参考)】
2H201AX43
2H201AX49
2H201BB03
2H201BB22
2H201BB24
2H201BB52
2H201BB55
2H201BB65
2H201BB80
2H201FF01
2H201KK06
5G315BA14
5G352EA05
5G369AA16
5G369AA19
5G369BA02
5G369BB01
(57)【要約】
【課題】遮水層の内側に浸入する水を検知することによって、交換時期の判断を的確に行うことのできるケーブルを提供する。
【解決手段】電力が伝送される導体20aの外周側に遮水層20fが形成されたケーブル10であって、遮水層20fの内側に設けられ、遮水層20fの内側に浸入する水を吸収して膨張する吸水膨張部21と、遮水層20fの内側において導体20aの延在方向に沿って延在する光ファイバ22bを有し、吸水膨張部21における水を吸収して膨張した部分から受ける圧力の変化を検出可能な光ファイバセンサ22と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力が伝送される導体の外周側に遮水層が形成されたケーブルであって、
前記遮水層の内側に設けられ、前記遮水層の内側に浸入する水を吸収して膨張する吸水膨張部と、
前記遮水層の内側において前記導体の延在方向に沿って延在する光ファイバを有し、前記吸水膨張部における水を吸収して膨張した部分から受ける圧力の変化を検出可能な光ファイバセンサと、を備えた
ケーブル。
【請求項2】
前記吸水膨張部は、前記導体の外周側に周方向に巻き掛けられる帯状の部材である
請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記光ファイバセンサは、前記導体の周方向における複数個所に配置されている
請求項1に記載のケーブル。
【請求項4】
前記光ファイバセンサは、前記吸水膨張部の膨張によって変形可能な部材からなり、前記光ファイバの外周側を囲む管状部材を有している
請求項1に記載のケーブル。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のケーブルと、
前記光ファイバに光を入射させるとともに、前記光ファイバにおいて反射した光を受信する計測部と、
前記計測部によって計測された結果に基づいて前記遮水層の内側に浸入する水の有無を判定する浸水判定部と、を備えた
ケーブルの浸水検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海中または海底等の水が存在する箇所に設置されるケーブルおよびケーブルの浸水検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のケーブルとしては、例えば、洋上の風力発電設備において発電した電力の伝送に用いられ、海中または海底等の水が存在する箇所に敷設されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
水が存在する箇所に敷設されるケーブルは、導体および絶縁層の外側に遮水層を形成することで、絶縁層の劣化を抑制して長寿命化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遮水層を有するケーブルは、遮水層が劣化して破損し、絶縁層に水が浸入して絶縁破壊が生じた場合に、漏電等の問題が生じる可能性がある。このため、遮水層を有するケーブルは、絶縁破壊が生じる前に新たなケーブルへの交換が必要となる。しかし、遮水層を有するケーブルは、遮水層の劣化の程度が、敷設される環境によって異なり、交換時期の判断が困難である。
【0006】
本発明の目的とするところは、遮水層の内側に浸入する水を検知することによって、交換時期の判断を的確に行うことのできるケーブルおよびケーブルの浸水検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るケーブルは、電力が伝送される導体の外周側に遮水層が形成されたケーブルであって、前記遮水層の内側に設けられ、前記遮水層の内側に浸入する水を吸収して膨張する吸水膨張部と、前記遮水層の内側において前記導体の延在方向に沿って延在する光ファイバを有し、前記吸水膨張部における水を吸収して膨張した部分から受ける圧力の変化を検出可能な光ファイバセンサと、を備えている。
【0008】
また、本発明に係るケーブルは、前記吸水膨張部が、前記導体の周方向に巻き掛けられる帯状の部材である。
【0009】
また、本発明に係るケーブルは、前記光ファイバセンサが、前記導体の周方向における複数個所に配置されている。
【0010】
また、本発明に係るケーブルは、前記光ファイバセンサが、前記吸水膨張部の膨張によって変形可能な部材からなり、前記光ファイバの外周側を囲む管状部材を有している。
【0011】
また、本発明に係るケーブルの浸水検知装置は、前記ケーブルと、前記光ファイバに光を入射させるとともに、前記光ファイバにおいて反射した光を受信する計測部と、前記計測部によって計測された結果に基づいて前記遮水層の内側に浸入する水の有無を判定する浸水判定部と、を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、遮水層の内側への水の浸入を確実に検知することが可能となるので、ケーブルの交換時期の判断を的確に行うことが可能となり、ケーブルの保守管理を効率的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るケーブルおよびケーブルの浸水検知装置の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るケーブルの断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る電力線の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る光ファイバセンサの断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る遮水層の内側に水が浸入した状態を説明する要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至
図5は、本発明の一実施形態を示すものである。
図1はケーブルおよびケーブルの浸水検知装置の概略図であり、
図2はケーブルの断面図であり、
図3は電力線の断面図であり、
図4は光ファイバセンサの断面図であり、
図5は遮水層の内側に水が浸入した状態を説明する要部断面図である。
【0015】
本実施形態のケーブル10およびケーブルの浸水検知装置100は、例えば、
図1に示すように、浮体式洋上風力発電設備1において発電した電力を陸上の図示しない変電設備等への伝送に用いられるものである。
【0016】
浮体式洋上風力発電設備1は、海面に浮かべられた状態で、図示しないチェーン等によって海底に係留されている。
【0017】
ケーブル10は、海底に沿って敷設される海底ケーブル10aと、浮体式洋上風力発電設備1と海底ケーブル10aとを接続するダイナミックケーブル10bと、を有している。
【0018】
海底ケーブル10aは、例えば、一端部が変電設備に接続され、他端部が接続部10cを介してダイナミックケーブル10bの一端部に接続されている。
【0019】
ダイナミックケーブル10bは、一端部が接続部10cを介して海底ケーブル10aの他端部に接続され、他端部が浮体式洋上風力発電設備1に接続されている。ダイナミックケーブル10bには、図示しないワイヤおよび錘によって海底に支持されたブイ10dが延在方向の中間部に取り付けられ、浮体式洋上風力発電設備1の挙動に合わせてダイナミックケーブル10bの姿勢が変化するようになっている。
【0020】
また、ケーブル10(海底ケーブル10aおよびダイナミックケーブル10b)は、
図2に示すように、撚り合わされた3本の電力線20および2本の通信線30が介在11と共に径方向の中央部側に設けられ、3本の電力線20、2本の通信線30および介在11の外周側に、内周側から順に、座床層12、鉄線鎧装13、外装14が形成されている。
【0021】
電力線20は、
図3に示すように、中央部側から順に、導体20a、内部半導電層20b、絶縁体20c、外部半導電層20d、遮蔽層20e、遮水層20fおよび防食層20gを有している。ここで、遮水層20fは、ステンレス、アルミニウム、銅等の金属からなる。
【0022】
また、電力線20は、遮蔽層20eと遮水層20fとの間に設けられ、水を吸収して膨張する吸水膨張部21と、遮蔽層20eに配置され、吸水膨張部21における水を吸収して膨張した部分から受ける圧力の変化を検知する複数の光ファイバセンサ22と、を有している。
【0023】
吸水膨張部21は、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等の吸水ポリマーを含む不織布等からなる帯状の部材からなる。吸水膨張部21は、吸水ポリマーが水分を吸収して膨張すると、水分を吸収した部分の厚さ方向の大きさが大きくなる。吸水膨張部21は、遮水層20fの内側において、電力線20の延在方向の全体にわたって隙間なく周方向に巻き回されている。
【0024】
複数の光ファイバセンサ22は、
図3に示すように、遮蔽層20eを構成する複数のワイヤシールド20e1とともに電力線20の周方向に配置されている。複数の光ファイバセンサ22は、それぞれ電力線20の周方向に間隔をおいて配置されている。光ファイバセンサ22は、電力線20の径方向の大きさによって適切な本数が異なるが、少なくとも4本以上であることが好ましい。
【0025】
複数の光ファイバセンサ22は、
図4に示すように、吸水膨張部21の膨張によって変形可能な管状部材22aと、管状部材22aの内側に収容された光ファイバ22bと、を有している。
【0026】
管状部材22aは、吸水膨張部21の膨張によって容易に変形可能な、例えば、シリコンゴム、天然ゴム等のエラストマ、または、軟質の樹脂製の部材からなる。
【0027】
複数の光ファイバ22bは、それぞれ、径方向中央部から外周側に向かって、コア、クラッド、一次被覆および二次被覆を有している。
【0028】
管状部材22aの内面と複数の光ファイバ22bとの間には、空気または止水用のジェリーが充填されている。
【0029】
また、本実施形態のケーブルの浸水検知装置100は、ケーブル10の電力線20の複数の光ファイバセンサ22のそれぞれの光ファイバ22bの一端部から光を入射させ、光ファイバ22bの一端部に反射して戻る光の強度および一端部に光が戻る時間を計測する計測部40と、計測部40の計測結果に基づいて遮水層20fの内側に浸入する水の有無を判定する浸水判定部50と、を備えている。
【0030】
計測部40は、光ファイバセンサ22の光ファイバ22bに接続される所謂OTDR(Optical Time Domein Reflectоmeter)である。計測部40は、光ファイバ22bの一端部からレーザ光等の光を入射させ、光ファイバ22bの一端部に戻る反射光の強度を計測することによって、光ファイバの曲がりを原因とする損失が取得可能であるとともに、反射光が戻る時間を計測することで光ファイバセンサ22の延在方向における、光ファイバの曲がりを原因とする損失が生じた位置が取得可能である。具体的には、光ファイバセンサ22の光ファイバ22bの延在方向の損失分布を継続的に取得し、所定以上の損失の変化の発生を検知した場合において、損失分布における損失の変化の発生した位置を特定することによって、光ファイバ22bの延在方向における損失の発生した位置を取得する。
【0031】
浸水判定部50は、電子計算機等からなり、計測部40の計測値に基づいて電力線20の遮水層20fの内側への浸水の有無を判定する。浸水判定部50は、例えば、計測部40によって所定以上の損失が検出された場合に、ケーブル10において遮水層20fの内側への浸水が発生していると判定する。
【0032】
以上のように構成されたケーブル10において、ダイナミックケーブル10bは、浮体式洋上風力発電設備1の挙動に合わせて姿勢が変化する。このため、ダイナミックケーブル10bは、姿勢の変化を繰り返すことによって遮水層20fを構成する部材が疲労破壊等を生じて破損した場合に、海水が遮水層20fの内側に浸入する可能性がある。遮水層20fの内側に海水が侵入した場合には、
図5に矢印で示すように、遮水層20fの内側に配置された吸水膨張部21に海水が到達して、吸水膨張部21における海水が到達した部分が海水を吸収して膨張する。吸水膨張部21における海水を吸収した部分が膨張すると、吸水膨張部21の膨張した部分に隣接する光ファイバセンサ22の光ファイバ22bが、圧力を受けて曲がりが生じる。
【0033】
このとき、浸水検知装置100は、計測部40において光ファイバ22bが受ける圧力を計測し、浸水判定部50において計測部40によって計測した圧力の変化に基づいて電力線20の遮水層20fの内側への浸水を判定する。
【0034】
このように、本実施形態のケーブルによれば、電力が伝送される導体20aの外周側に遮水層20fが形成されたケーブル10であって、遮水層20fの内側に設けられ、遮水層20fの内側に浸入する水を吸収して膨張する吸水膨張部21と、遮水層20fの内側において導体20aの延在方向に沿って延在する光ファイバ22bを有し、吸水膨張部21における水を吸収して膨張した部分から受ける圧力の変化を検出可能な光ファイバセンサ22と、を備えている。
【0035】
また、本実施形態のケーブルの浸水検知装置によれば、ケーブル10と、光ファイバ22bに光を入射させるとともに、光ファイバ22bにおいて反射した光を受信する計測部40と、計測部40によって計測された結果に基づいて遮水層20fの内側に浸入する水の有無を判定する浸水判定部50と、を備えている。
【0036】
これにより、遮水層20fの内側への海水の浸入を確実に検知することが可能となるので、ケーブル10の交換時期の判断を的確に行うことが可能となり、ケーブル10の保守管理を効率的に行うことが可能となる。
【0037】
また、吸水膨張部21は、導体20aの外周側に周方向に巻き掛けられる帯状の部材である、ことが好ましい。
【0038】
これにより、電力線20の周方向のいずれの位置からの海水の遮水層20fの内側への浸入に対しても、吸水膨張部21を膨張させることが可能となるので、光ファイバセンサ22によって確実に遮水層20fの内側への海水の浸入を検知することが可能となる。
【0039】
また、光ファイバセンサ22は、導体20aの周方向における複数個所に配置されている、ことが好ましい。
【0040】
これにより、電力線20の周方向にわたって遮水層20fの内側への水の浸入する状況を継続的に検知することによって、僅かな海水の浸入による変化を確実に検知することができるので、遮水層20fの内側への海水の浸入を確実に特定することが可能となる。
【0041】
また、光ファイバセンサ22は、吸水膨張部21の膨張によって変形可能な部材からなり、光ファイバ22bの外周側を囲む管状部材22aを有している、ことが好ましい。
【0042】
これにより、光ファイバ22bが管状部材22aに収容されているため、光ファイバ22bの破損を抑制することが可能となる。また、管状部材22aが吸水膨張部21の膨張によって変形可能であるため、吸水膨張部21が膨張した状態を確実に光ファイバ22bに伝えることが可能となる。
【0043】
尚、前記実施形態では、海底に敷設される海底ケーブル10aおよび海中に設置されるダイナミックケーブル10bの遮水層20fの内側に浸入する海水を検知するものを示したが、これに限られるものではない。遮水層の内側に浸入する水を検知するものであれば、例えば、地下水が存在する地中に敷設するケーブルに対して本発明を適用可能である。
【0044】
また、前記実施形態では、電力線20の遮蔽層20eに光ファイバセンサ22を配置したものを示したが、これに限られるものではない。例えば、波付金属管に覆われた電力線である所謂コルゲートケーブルの場合において、波付金属管の内周面側の溝に沿って光ファイバセンサを配置し、光ファイバセンサの内周側に吸水膨張部を配置することによって、吸水膨張部における水を吸収して膨張した部分を光ファイバセンサによって検出するようにしてもよい。
【0045】
また、前記実施形態では、海上に設置される発電設備の例として、浮体式洋上風力発電設備を示したが、着床式洋上風力発電設備であってもよく、海上に設置される発電設備に対して本発明を適用可能である。
【0046】
また、前記実施形態では、吸水膨張部21を、遮蔽層20eと遮水層20fとの間に配置したものを示したが、これに限られるものではない。吸水膨張部は、外部半導電層20dと遮水層20fとの間に配置されていればよく、外部半導電層20dと遮蔽層20eとの間に配置してもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 ケーブル
20 電力線
20a 導体
20f 遮水層
21 吸水膨張部
22 光ファイバセンサ
22a 管状部材
22b 光ファイバ
40 計測部
50 浸水判定部
100 浸水検知装置