(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000950
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】オートファジー活性化促進剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20231226BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231226BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231226BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20231226BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20231226BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20231226BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20231226BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231226BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20231226BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20231226BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20231226BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20231226BHJP
A61K 31/728 20060101ALI20231226BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231226BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231226BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20231226BHJP
A61P 11/14 20060101ALI20231226BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20231226BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231226BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20231226BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20231226BHJP
A23L 33/125 20160101ALI20231226BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
A61K8/73
A61P43/00 105
A61P25/28
A61P25/16
A61P21/02
A61P9/04
A61P9/00
A61P13/12
A61P17/10
A61P17/06
A61P37/08
A61P19/02
A61K31/728
A61P29/00
A61P1/04
A61P11/06
A61P11/14
A61P19/08
A61Q19/00
A61Q19/02
A23L33/10
A23L33/125
A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022200167
(22)【出願日】2022-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 翔太
(72)【発明者】
【氏名】栗原 仁
(72)【発明者】
【氏名】平野 慶子
(72)【発明者】
【氏名】與田 昭一
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB08
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4B018LE03
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4C086ZA96
4C086ZB11
4C086ZC52
(57)【要約】
【課題】 本発明は、新規なオートファジー活性化促進剤を提供する。
【解決手段】ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩から選ばれる1種以上を有効成分とする、
オートファジー活性化促進剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩から選ばれる1種以上を有効成分とする、
オートファジー活性化促進剤。
【請求項2】
前記オートファジー活性化促進剤がLC3-II産生増進剤である、
請求項1記載のオートファジー活性化促進剤。
【請求項3】
ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩から選ばれる1種以上を有効成分とするオートファジー活性化促進剤を配合する、
オートファジー活性化組成物の製造方法。
【請求項4】
前記オートファジー活性化促進剤がLC3-II産生増進剤である、
請求項3記載のオートファジー活性化組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なオートファジー活性化促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
オートファジー(Autophagy、自食作用)は、細胞の新陳代謝の促進、細胞内に蓄積した老廃物や不要なタンパク質等の有害物の排除という、生体において重要な役割を担うものである。オートファジーは加齢により低下することが知られ、癌、神経変性疾患等の老化に伴う様々な疾患のほか、皮膚の老化現象や皮膚色の決定にもオートファジーの異常が深くかかわっていると考えられており(例えば、非特許文献1、2)、種々のオートファジー活性化剤も提案されているが(例えば、特許文献1~4)、オートファジーを活性化させる成分の選択肢を広げるため、新たな有効成分の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2018/173653号公報
【特許文献2】国際公開2019/188491号公報
【特許文献3】特開2021-66678号公報
【特許文献4】国際公開2022/059763号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】D Murase et al.,Journal of Investigative Dermatology 133, 2013, p2416-2424
【非特許文献2】森山麻里子他、日本香粧品学会誌、39巻、2015年、192-195頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、新たなオートファジー活性化促進剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。
その結果、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩が、種々の刺激によって活性化されるオートファジーをさらに促進することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩から選ばれる1種以上を有効成分とする、
オートファジー活性化促進剤、
(2)前記オートファジー活性化促進剤がLC3-II産生増進剤である、
(1)のオートファジー活性化促進剤、
(3)ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩から選ばれる1種以上を有効成分とするオートファジー活性化促進剤を配合する、
オートファジー活性化組成物の製造方法。
(4)前記オートファジー活性化促進剤がLC3-II産生増進剤である、
(3)のオートファジー活性化組成物の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩により、種々の刺激によって活性化されるオートファジーを促進することが可能となる。よって、オートファジーの活性低下によって引き起こされる様々な疾患や、加齢に伴うオートファジー活性の低下を予防、緩和、改善することが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0010】
<本発明の特徴>
本発明は、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩がオートファジーの活性化を促進させることに特徴を有する。
【0011】
<オートファジー活性化促進剤及びLC3-II産生量増進剤>
本発明のオートファジー活性化促進剤は、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩を有効成分とすることに特徴を有する。本発明のオートファジー活性化促進剤の剤型は、液体(流動性がある状態)、固体(流動性がない状態)等、使用態様にあわせて適宜選択すればよい。
本発明のオートファジー活性化促進剤は、具体的には例えば、オートファジーマーカーであるLC3-II産生量を増進するもの等である。すなわち、本発明のオートファジー活性化促進剤はLC3-II産生量増進剤ともいえる。
なお、本発明のオートファジー活性化促進剤の効果は、後述する試験例の方法によりオートファジーマーカーであるLC3-IIの産生量を測定し、評価する。
【0012】
<ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩>
ヒアルロン酸とは、グルクロン酸とN-アセチルグルコサミンとの二糖からなる繰り返し構成単位を1以上有する多糖類をいう。
本発明のオートファジー活性化促進剤に用いるヒアルロン酸又はその塩は、動物等の天然物(例えば、鶏冠、さい帯、皮膚、関節液等の生体組織等)から抽出されたものでもよく、微生物、動物細胞もしくは植物細胞を培養して得られたもの(例えば、ストレプトコッカス属の細菌等を用いた発酵法)、化学的又は酵素的に合成されたもの等を使用することができる。
また、「ヒアルロン酸の塩」としては、特に限定されないが、薬学上許容しうる塩であることが好ましく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
ヒアルロン酸誘導体又はその塩は、前記ヒアルロン酸を化学修飾したものであり、ヒト生体に害を及ぼさない物であればよい。ヒアルロン酸誘導体の具体例として、ヒアルロン酸又はその塩のヒドロキシル基、カルボキシル基等がエーテル化、エステル化、アセチル化、アミド化、アセタール化、ケタール化されて得られる誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
<ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩の平均分子量>
本発明のオートファジー活性化促進剤に用いるヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩の平均分子量は特に限定されず、例えば、411以上300万以下であってよく、820以上250万以下、1200以上220万以下であってよい。
【0014】
<ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩の平均分子量の測定方法>
ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩の平均分子量は、以下の方法にて測定することができる。
まず、ゲル濾過カラムを用いて、分子量が既知である複数の(精製)ヒアルロン酸(基準物質)を液体クロマトグラフィー分析することで、それらの保持時間より検量線を作成する。同様に、測定対象であるヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩を液体クロマトグラフィー分析し、作製した検量線を用いて分子量を求めることで、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩の分子量を求めることができる。
【0015】
<平均分子量の測定装置及び測定条件>
液体クロマトグラフィー分析装置として日本ウォーターズ社製2690セパレーションモジュールを用いる。フォトダイオードアレイとして日本ウォーターズ社製996フォトダイオードアレイとして用いる。カラムとして、TSKガードカラムPWXL(東ソー株式会社製)を1本、TSKゲルGMPW(東ソー株式会社製)を2本、記載の順に直列に接続したものを用いる。平均分子量の測定においては、カラム温度40℃、測定波長210nm、流速0.8mL/分、試料注入量20μL、分析時間40分、移動相0.003mol/Lリン酸緩衝液-0.15mol/L NaCl(pH7.0)の条件が用いられる。
【0016】
<ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩の含有量>
本発明のオートファジー活性化促進剤に含まれるヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩の量は、オートファジーの活性化を促進させる作用を十分に奏する観点から、オートファジー活性化促進剤全量に対し0.0001%以上であるとよく、さらに0.0005%以上、0.001%以上、0.005%以上、0.01%以上、0.05%以上、0.1%以上、0.5%以上、1%以上であるとよい。
オートファジー活性化促進剤に含まれるヒアルロン酸及び/またはその塩の量の上限量は特に限定されず、具体的には100%以下であってよく、さらに、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下であってよい。
【0017】
<その他原料>
本発明のオートファジー活性化促進剤には、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに以下の成分が配合されていてもよい。
前記成分としては、例えば、精水、生理食塩水、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液等の緩衝液、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、グルコース、トレハロース、マルトース、スクロース、ラフィノース、ラクトース、デキストラン等の糖類、フェノキシエタノール、メチルパラベン等の防腐剤、等が挙げられる。
また、本願のオートファジー活性化促進剤は、公知のオートファジー活性化剤又はオートファジー活性化促進剤と併用することもできる。
【0018】
<オートファジー活性化促進剤の用途>
本発明のオートファジー活性化促進剤は、生体内で細胞のオートファジーの活性化を促進するために用いられる。
生体内でオートファジーを活性化することにより、オートファジーの活性低下によって引き起こされる様々な疾患や、加齢に伴うオートファジー活性の低下を予防、緩和、改善することが可能となる。したがって、本発明のオートファジー活性化促進剤は、オートファジーの活性化を促進することにより、疾患や老化の予防剤、緩和剤、改善剤として用いることが期待される。
具体的な疾患例としては、例えば、全身性疾患(癌、全身エリテマトーデス等)、神経変性疾患(アルツハイマー病、筋委縮性脊索硬化症、パーキンソン病、パーキンソン症候群等)、心疾患(心不全、心肥大等)、腎疾患(腎症等)、炎症性疾患(クローン病、喘息等)、骨疾患(骨バジェット病等)、眼疾患(白内障、翼状片、黄斑変性症、瞼裂斑、電気性眼炎、雪眼炎等)、皮膚疾患(乾癬、アトピー性皮膚炎、毛嚢炎、毛包炎、尋常性ざ瘡(ニキビ)等の皮膚炎症等)及び皮膚老化(メラニン蓄積、水分量の低下、くすみ、シワ、しみ、たるみ、ごわつき、毛穴の開き、ターンオーバー速度低下、バリア機能低下等)、関節疾患(関節炎等)が考えられる。
【0019】
<オートファジー活性化促進剤の適用形態>
本発明のオートファジー活性化促進剤の適用形態は、経口、経皮、経腸、経静脈、経肺、経粘膜、皮下、筋肉内等、適宜選択すればよいが、人体に対して適用が容易な点で、経口、経皮、経粘膜及び皮下がよい。
【0020】
<オートファジー活性化組成物>
本発明のオートファジー活性化促進剤を含有するオートファジー活性化用組成物として、具体的には、飲食品、化粧品、医薬部外品、及び、医薬・医療機器が挙げられる。
【0021】
<飲食品>
オートファジー活性化組成物が飲食品の場合、本発明のオートファジー活性化促進剤を飲食品に含まれる他の成分と組み合わせて、所望の形態に調製すればよい。
飲食品としては、一般飲食品のほか、栄養補助食品、機能性表示食品、特定保健用食品、病態食等が挙げられるが、これらに限定されず、茶飲料、コーヒー飲料、果実・野菜飲料、炭酸飲料、乳性飲料、豆乳飲料、スポーツ飲料、乳酸飲料等の飲料、錠剤、顆粒剤、散剤、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、ゼリー剤、リポソーム製剤等のサプリメント、タブレット(錠菓)、グミ、キャンディー、ゼリー、チョコレート等の嗜好品等であってよい。
【0022】
<飲食品へのオートファジー活性化促進剤の配合量>
飲食品に含まれる本発明のオートファジー活性化促進剤の量は、飲食品の種類、1日当たりの有効成分の摂取量等に応じて適宜調整すればよい。
例えば、本発明のオートファジー活性化促進剤が飲食品全量に対して0.01%以上含まれていてよく、さらに、0.05%以上、0.1%以上、0.5%以上、1%以上であってよい。
また、本発明のオートファジー活性化促進剤が飲食品全量に対して100%以下含まれていてよく、さらに、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下であってよい。
【0023】
<化粧料>
オートファジー活性化組成物が化粧品の場合、本発明のオートファジー活性化促進剤を化粧品に用いる他の成分と組み合わせて、所望の形態に調製すればよい。
化粧品としては、液剤、クリーム剤、ジェル剤、乳剤、油剤、パック剤、粉末剤等が挙げられるが、これらに限定されず、化粧水、保湿液、美容液、エッセンス、乳液(ミルク)、クリーム、化粧用油、マッサージ料、パック、マイクロニードルパッチ等のシート状化粧料等、リップケア化粧料、ボディーパウダー等であってよい。
【0024】
<化粧品へのオートファジー活性化促進剤の配合量>
化粧品に含まれる本発明のオートファジー活性化促進剤の量は、化粧品の種類、1日当たりの有効使用量等に応じて適宜調整すればよい。
例えば、本発明のオートファジー活性化促進剤が化粧品全量に対して0.0001%以上含まれていてよく、さらに、0.001%以上、0.005%以上、0.01%以上、0.05%以上、0.1%以上、0.5%以上、1%以上であってよい。
また、本発明のオートファジー活性化促進剤が化粧品全量に対して100%以下含まれていてよく、さらに、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下であってよい。
【0025】
<医薬部外品>
オートファジー活性化組成物が医薬部外品の場合、本発明のオートファジー活性化促進剤を医薬部外品に用いる他の成分と組み合わせて、所望の形態に調製すればよい。
前記医薬部外品は医薬品医療機器等法に定められるものであり、丸剤、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、ゼリー剤、リポソーム製剤等の内服剤、育毛剤(養毛剤)、浴用剤、薬用せっけん、薬用化粧品の外用剤であってよい。
【0026】
<医薬部外品へのオートファジー活性化促進剤の配合量>
医薬部外品に含まれる本発明のオートファジー活性化促進剤の量は、医薬部外品の種類や1日当たりの投与量等に応じて適宜調整すればよい。
例えば、本発明のオートファジー活性化促進剤が化粧品全量に対して0.0001%以上含まれていてよく、さらに、0.001%以上、0.005%以上、0.01%以上、0.05%以上、0.1%以上、0.5%以上、1%以上であってよい。
また、本発明のオートファジー活性化促進剤が化粧品全量に対して100%以下含まれていてよく、さらに、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下であってよい。
【0027】
<医薬・医療機器>
オートファジー活性化組成物が医薬品または医療機器の場合、本発明のオートファジー活性化促進剤を医薬品または医療機器に用いる他の成分と組み合わせて、所望の形態に調製すればよい。
前記医薬品としては、例えば、錠剤、丸剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、チュアブル剤、ゼリー剤、シロップ剤、リポソーム製剤等の内服用医薬品;軟膏剤、クリーム剤、乳液剤、懸濁液剤、ローション剤、ゲル剤、噴霧剤、貼付剤等の外用医薬品;注射剤等が挙げられる。
前記医療機器としては、ヒアルロン酸使用軟組織注入材、マイクロニードル等が挙げられる。
【0028】
<医薬・医療機器へのオートファジー活性化促進剤の配合量>
本発明のオートファジー活性化組成物が医薬品の場合、本発明のオートファジー活性化促進剤の含有量は、医薬品の種類、1日当たりの投与量等に応じて適宜調整すればよい。
例えば、内服用医薬品の場合、本発明のオートファジー活性化促進剤が医薬品全量に対して0.001%以上100%以下であってよく、0.005%以上95%以下であってよく、0.01%以上90%以下であってよい。
外用医薬品の場合、本発明のオートファジー活性化促進剤が外用医薬品全量に対して0.0001%以上含まれていてよく、さらに、0.001%以上、0.005%以上、0.01%以上、0.05%以上、0.1%以上、0.5%以上、1%以上であってよい。
また、本発明のオートファジー活性化促進剤が外用医薬品全量に対して100%以下含まれていてよく、さらに、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下であってよい。
医療機器の場合、例えば、ヒアルロン酸使用軟組織注入材及びマイクロニードルであれば、本発明のオートファジー活性化促進剤が、ヒアルロン酸使用軟組織注入材及びマイクロニードルに含まれる体表または体内組織に直接投与または接触するゲル全量に対して0.0001%以上含まれていてよく、さらに、0.001%以上、0.005%以上、0.01%以上、0.05%以上、0.1%以上、0.5%以上、1%以上であってよい。
また、本発明のオートファジー活性化促進剤が医療機器全量に対して100%以下含まれていてよく、さらに、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下であってよい。
【0029】
<オートファジー活性化組成物の製造方法>
本発明のオートファジー活性化組成物の製造方法は、オートファジー活性化促進剤の有効成分であるヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩を配合できる方法であれば特に制限されず、オートファジー活性化組成物の具体的な形態ごとに常法により製造すればよい。
【試験例】
【0030】
以下、本発明について、試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【0031】
試験に用いた試料は、以下に示すとおりである。
<ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はその塩>
(A)ヒアルロン酸ナトリウム(キユーピー(株)製、製品名HAbooster、平均分子量約2000)
(B)ヒアルロン酸オリゴ糖4糖(コスモ・バイオ(株)製、分子量820.61)
(C)加水分解ヒアルロン酸(キユーピー(株)製、製品名ヒアロオリゴ、平均分子量1万以下)
(D)ヒアルロン酸ナトリウム(キユーピー(株)製、製品名ヒアルロンサンHA-LF5-A、平均分子量5万以下)
(E)ヒアルロン酸ナトリウム(キユーピー(株)製、製品名ヒアルロンサンHA-LQH、平均分子量120万~220万)
<細胞及び培養培地>
(F)正常ヒト新生児表皮角化細胞(倉敷紡績(株)製、製品名「NHEK(NB)」)
(G)表皮角化細胞基礎培地及び正常ヒト表皮角化細胞増殖添加剤セット(倉敷紡績(株)製、製品名「HuMedia-KB2」及び「HuMedia-KG」)
【試験例1】
【0032】
<ヒト皮膚角化細胞におけるヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩のオートファジー活性化促進効果>
前記(A)~(E)を前記(F)の細胞に作用させ、オートファジー活性化の指標であるオートファジーマーカーLC3-IIの産生量を測定することで、(A)~(E)のオートファジー活性化促進効果を確認した。
具体的な方法は以下に詳述する。
【0033】
<細胞の前培養工程>
前記(G)の表皮角化細胞基礎培地と正常ヒト表皮角化細胞増殖添加剤セットとを混合して培養培地を調製し、ここに前記(F)の細胞を加えて細胞懸濁液を調製し、75cm2フラスコまたは25cm2フラスコを用いて播種密度2500cell/cm2となるように播種し、37℃、50%二酸化炭素雰囲気下で培養を行い、播種24時間後に培地交換を行った。毎日細胞の増殖を確認し、細胞被覆率が40%以下の間は48時間毎培地交換し、細胞被覆率が40%超となったら24時間ごとに培地を交換してサブコンフルエントを維持しながら前培養し、継代を行った。
【0034】
<試験培地の調製>
(G)の培地溶液と(A)のヒアルロン酸ナトリウムを用い、ヒアルロン酸濃度が10000μg/mLとなるように調製した培地溶液をフィルターろ過(アドバンテック東洋(株)製、DISMIC 25CS020AS、0.20μm)し、得られたろ液に(G)の培地溶液を添加し、(A)のヒアルロン酸ナトリウムの終濃度が100μg/mL、10μg/mL、1μg/mLとなるように希釈調製して、それぞれをヒアルロン酸(A)含有試験培地とした。
【0035】
<試験用細胞の培養>
前培養工程で得たヒト新生児表皮角化細胞と(G)の培地を、4800cell/cm2となるように24wellマイクロプレートに播種した。播種24時間後に細胞が順調に生育していることを目視で確認した後、培地を前記ヒアルロン酸(A)含有試験培地3種類及びヒアルロン酸未添加である(G)の培地に入れ替え、さらに48時間細胞培養した。
【0036】
<UVBの照射>
24wellマイクロプレートに播種してから48時間培養したヒト新生児表皮角化細胞について、前記ヒアルロン酸(A)含有試験培地3種及びヒアルロン酸未添加である(G)の培地をD-PBS(-)(ナカライテスク(株)製、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(Ca、Mg不含))に交換し、24wellマイクロプレートの蓋を外した状態でヒト新生児表皮角化細胞にUVBを照射した。UVB照射にはUVBランプ(三協電機(株)製、型番G15T8E)を用い、紫外線強度は25mJ/cm2となるように調整した。
UVB照射後、ただちに細胞培地をD-PBS(-)から前記ヒアルロン酸(A)含有試験培地3種類及び対照となる(G)の培地に入れ替え、さらに24時間培養した。
【0037】
<ヒト新生児表皮角化細胞の回収>
まず、D-PBS(-)に細胞培養用特性試薬D-PBS(+)調製用Ca、Mg溶液(ナカライテスク(株)製、100倍濃縮)を必要量加えて、D-PBS(+)を調製し、冷蔵保管した。
次いで、室温に戻したRIPAバッファー(ナカライテスク(株)製、10倍濃縮)をボルテックスミキサーでよく撹拌して再溶解した後、超純水とRIPAバッファーを9:1(体積比)で混合し、x1のRIPAバッファーを調製し、冷蔵保管した。
さらに、Autophagy ELISA Kit中のx100 Cytosolic LC3 Removal reagentを室温に戻し、先に調整したD-PBS(+)溶液を用いて100倍に希釈してx100 Cytosolic LC3 Removal reagent希釈液とし、冷蔵保管した。
【0038】
<測定用細胞の処理>
UVB照射後24時間培養したヒト新生児表皮角化細胞の試験培地を抜き取った後、調製したD-PBS(+)溶液で24wellマイクロプレートを洗浄した。次いで、D-PBS(+)溶液で100倍希釈したx100 Cytosolic LC3 Removal reagent希釈液を24wellマイクロプレートに添加し、振とうしながら室温で5分間反応させた。反応後、D-PBS(+)溶液で24wellマイクロプレートを3回洗浄し、冷蔵保管していたx1のRIPAバッファーを加え、氷上で10分間反応させた。10分間の反応の後、ディスポーザブルスクレーパーを用いて細胞を剥離し、マイクロチューブに回収した。
マイクロチューブに回収した細胞は4℃、120000rpmで10分間の遠心分離を行い、上清を別のマイクロチューブに回収し、分析に供した。
なお、すぐに分析を行わない場合には、回収した細胞を-80℃にて凍結保管し、後日分析を実施した。
【0039】
<LC3-IIの産生量測定>
UVB照射後24時間培養したヒト新生児表皮角化細胞中のLC3-II産生量は、下記式(1)を用いて算出した。
なお、UVB照射後24時間培養したヒト新生児表皮角化細胞中のLC3-II濃度(ng/mL)は、Autophagy ELISA Kit(LC3-II Quantitation)(CELL BIOLABS,Inc.製)を用い、取扱説明書に準じて測定し、UVB照射後24時間培養したヒト新生児皮膚角化細胞中のタンパク質濃度(μg/mL)はTakara BCA Protein Assay Kit(タカラバイオ(株)製)を用いて測定した。
【0040】
LC3-II産生量(ng/mg protein)
=UVB照射後24時間培養したヒト新生児表皮角化細胞中のLC3-II濃度(ng/mL)/UVB照射後24時間培養したヒト新生児表皮角化細胞中のタンパク質濃度(μg/mL) ・・・式(1)
【0041】
算出したLC3-II産生量を表1に示す。
なお、LC3-II産生量の測定結果は、平均±標準誤差で示した。統計処理は、IBM SPSS Statistics 20(IBM社製)統計解析ソフトを用いた。さらに、信頼率95%の信頼区間にて、試験区1及び試験区2の比較をStudent’s t-testにて有意差を計算した。また、試験区2及び試験区3~5との比較をOne-way Anova及び事後検定としてDunnett’s検定により有意差を計算した。
【0042】
【表1】
表1中、#はStudent’s t-testでの有意確率が0.001未満、*はDunnett’s検定での有意確率pが0.05未満、**は有意確率pが0.001未満であることを示す。
【0043】
試験例1では、まず、UVBの照射及びオートファジー活性化促進剤の添加のいずれも行わない試験区1とUVBの照射のみを行った試験区2を用いて試験を行い、試験区1に対し試験区2の方がLC3-II産生量(ng/mg protein)が多いことから、UVBがオートファジーを活性化することを確認した。
オートファジー活性化促進剤を添加した培地で48時間培養後、UVBを照射してさらに24時間培養したヒト新生児皮膚角化細胞中のLC3-II産生量は、試験区3~5のとおりである。特に、オートファジー活性化促進剤の濃度が10μg/mL以上である試験区4及び試験区5では、対照区である試験区2に対してLC3-II産生量が有意に増加していることがわかった。
【試験例2】
【0044】
<異なる分子量のヒアルロン酸ナトリウムを用いたオートファジー活性化促進剤の効果の比較>
(B)~(E)のヒアルロン酸ナトリウムを用いたオートファジー活性化促進剤について、それぞれのヒアルロン酸ナトリウムの濃度を100μg/mLとした以外は試験例1と同様の方法でLC3-II産生量の測定を実施した。また、Tukey検定により有意差の計算を行った。結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
表2中、**は有意確率pが0.001未満であることを示す。
【0046】
表2の結果より、オートファジー活性化促進剤に含まれるヒアルロン酸の分子量にかかわらず、LC3-II産生量が有意に増加していることがわかった。したがって、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体、又はそれらの塩は、オートファジー活性化促進剤及びLC3-II産生量増進剤の有効成分として有用であることが示された。
【実施例0047】
<オートファジー活性化組成物:サプリメント>
ヒアルロン酸ナトリウム(キユーピー(株)製、平均分子量30万)をオートファジー活性化促進剤として使用し、内容物が以下の配合であるソフトカプセルを常法により製造した。
【0048】
<配合原料>
オートファジー活性化促進剤(平均分子量30万のヒアルロン酸ナトリウム) 20%
オリーブ油 50%
ミツロウ 10%
中鎖脂肪酸トリグリセリド 10%
乳化剤 10%
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合計 100%