(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095000
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】アルミナ粉末および樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C01F 7/027 20220101AFI20240703BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240703BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C01F7/027
C08K3/22
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022211968
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100136777
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 純子
(72)【発明者】
【氏名】中山 篤
(72)【発明者】
【氏名】李 松起
(72)【発明者】
【氏名】榊 祥太
(72)【発明者】
【氏名】松尾 祥史
【テーマコード(参考)】
4G076
4J002
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AB02
4G076AB11
4G076AC04
4G076BA38
4G076BA46
4G076BD02
4G076CA03
4G076CA26
4G076CA29
4G076CA37
4G076DA20
4G076FA02
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4G076FA05
4J002AA001
4J002AA011
4J002AA021
4J002AC001
4J002CD001
4J002DE146
4J002FD010
4J002FD016
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】熱伝導性が高くかつ樹脂と混合時の流動性に優れ、容易に製造することのできるアルミナ粉末と、該アルミナ粉末を含む樹脂組成物を提供する。
【解決手段】全結晶相に対するδ型結晶相の割合が30質量%以下であって、α型結晶相の割合が50質量%以下であり、個数基準の累積円形度分布の低円形度側から累積50%の円形度C50が0.90以上であり、更に、体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積90%の粒径D90が20μm未満である、アルミナ粉末。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全結晶相に対するδ型結晶相の割合が30質量%以下であって、α型結晶相の割合が50質量%以下であり、
個数基準の累積円形度分布の低円形度側から累積50%の円形度C50が0.90以上であり、
更に、体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積90%の粒径D90が20μm未満である、アルミナ粉末。
【請求項2】
個数基準の累積円形度分布の低円形度側から累積5%の円形度C5が0.83以上である、請求項1に記載のアルミナ粉末。
【請求項3】
体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積50%の粒径D50が10μm未満である、請求項1または2に記載のアルミナ粉末。
【請求項4】
ウラン含有量とトリウム含有量がそれぞれ10質量ppb未満である、請求項1または2に記載のアルミナ粉末。
【請求項5】
請求項1または2に記載のアルミナ粉末を含む、樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アルミナ粉末およびそれを用いた樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品に通電することにより発生する熱は、電子部品の性能に悪影響を及ぼしやすいことから速やかに放熱されることが望まれる。よって、例えばICチップを囲む半導体封止材を構成する材料には、放熱のために高い熱伝導性を示すことが望まれる。放熱のための熱伝導性部材には、一般に材料として、熱伝導性粉末と樹脂を含むコンポジットが用いられ、熱伝導性を示すアルミナ粉末が熱伝導性フィラーとして用いられる。
【0003】
例えば特許文献1には、平均球形度が0.93以上でかつ結晶形態のα率が95%以上であることを特徴とする球状のαアルミナ粉末が示されている。この球状のαアルミナ粉末を、樹脂やゴムなどに配合することにより、高密度に配合でき、しかも、α結晶形態の割合が大きく、得られた組成物は、熱伝導性に優れることが示されている。特許文献1には、上記αアルミナ粉末の製造方法として、金属アルミニウム粉末又はアルミナ粉末を火炎で熱処理して、溶融軟化させた後、冷却しながら捕集系に導きアルミナ粉末を回収する方法において、上記火炎での熱処理物を、冷却前に一度、温度800~500℃の領域を通過させ、固化させた後、より高温である950~1500℃の領域を通過させることで、α率を高めることが示されている。
【0004】
また特許文献2には、樹脂に高充填した場合にも流動特性が高く、充填剤に適した球状アルミナ粉末として、X線回折で2θ=45.6°に検出されるδ相ピーク強度と2θ=44.8°に検出されるθ相ピーク強度の比、(δ相ピーク強度/θ相ピーク強度)が1.0以上である、平均球形度が0.90以上、平均粒径100μm以下の球状アルミナ粉末が示されている。また特許文献2には、アルミナ原料を溶融後、ドライアイスで急冷処理することで、樹脂に高充填した場合にも、樹脂組成物に高い流動特性を付与することのできる、上記球状アルミナ粉末が得られることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/053536号
【特許文献2】特開2011-102215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、球状のアルミナの熱伝導性を向上させるため、火炎溶融後の熱処理が必要である。また、特許文献2の技術は、流動性を向上させるために、火炎溶融後の急冷が必要であり、いずれの技術も、火炎溶融後の更なる処理が必要である。また、より優れた熱伝導性と、樹脂と混合時のより優れた流動性を確保するには、更なる検討が必要であると思われる。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、熱伝導性が高くかつ樹脂と混合時の流動性に優れ、容易に製造することのできるアルミナ粉末と、該アルミナ粉末を含む樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様1は、
全結晶相に対するδ型結晶相の割合が30質量%以下であって、α型結晶相の割合が50質量%以下であり、
個数基準の累積円形度分布の低円形度側から累積50%の円形度C50が0.90以上であり、
更に、体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積90%の粒径D90が20μm未満である、アルミナ粉末である。
【0009】
本発明の態様2は、
個数基準の累積円形度分布の低円形度側から累積5%の円形度C5が0.83以上である、態様1に記載のアルミナ粉末である。
【0010】
本発明の態様3は、
体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積50%の粒径D50が10μm未満である、態様1または2に記載のアルミナ粉末である。
【0011】
本発明の態様4は、
ウラン含有量とトリウム含有量がそれぞれ10質量ppb未満である、態様1~3のいずれか1つに記載のアルミナ粉末である。
【0012】
本発明の態様5は、
態様1~4のいずれか1つに記載のアルミナ粉末を含む、樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、熱伝導性が高くかつ樹脂と混合時の流動性に優れ、容易に製造することのできるアルミナ粉末と、該アルミナ粉末を含む樹脂組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例で用いたアルミナ原料粉末1のSEM写真の一例である。
【
図2】実施例で用いたアルミナ原料粉末2のSEM写真の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、熱伝導性が高く、かつ樹脂と混合時の流動性に優れ、更に容易に製造することのできるアルミナ粉末を得るべく、鋭意研究を重ねた。その結果、アルミナ粉末の全結晶相に対するδ型結晶相の割合とα型結晶相の割合を制御すること、特にδ型結晶相の割合を一定以下に抑え、更には、個数基準の累積円形度分布の低円形度側から累積50%の円形度C50と、体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積90%の粒径D90とを、所定の範囲内とすればよいことを見出した。以下、本実施形態に係るアルミナ粉末について詳述する。
【0016】
[アルミナ粉末]
〔全結晶相に対する、δ型結晶相の割合とα型結晶相の割合〕
電子部品において発生する熱は、近年、高集積化により増加しており、放熱のための部材に用いられる樹脂組成物には、より高い熱伝導性を示すことが求められる。従来、アルミナ粉末の熱伝導性を高めるには、結晶構造において、α型結晶相の割合を高めるのがよいとされてきた。しかし本発明者らが、より高い熱伝導性のアルミナ粉末を得るべく、アルミナ粉末の結晶構造と熱伝導性の関係について鋭意研究を行ったところ、アルミナ粉末の熱伝導性に大きく影響するのは、結晶構造において、α型結晶相よりもδ型結晶相であり、アルミナ粉末の熱伝導性をより高めるには、δ型結晶相の割合を抑制することが有効であることをまず見出した。そして、所望の熱伝導率を達成するには、全結晶相に対するδ型結晶相の割合を30質量%以下にする必要があることを見出した。δ型結晶相の割合は、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、更に好ましくは15質量%以下である。δ型結晶相の割合は、熱伝導率を高める観点から小さいほど好ましいが、1質量%以上であってもよい。
【0017】
本実施形態に係るアルミナ粉末は、上記の通り、熱伝導性を高めるには全結晶相に対するδ型結晶相の割合が30質量%以下であればよく、α型結晶相の割合は、従来の高α率アルミナ粉末と異なり50質量%以下でよい。α型結晶相の割合は、更には40質量%以下、更には30質量%以下であってもよく、より更には20質量%以下であってもよい。
【0018】
上記α型結晶相とδ型結晶相の割合が上記範囲を満たしていればよく、それらα型結晶相とδ型結晶相以外の結晶相、例えばθ型結晶相、κ型結晶相の割合は問わない。なお熱伝導性をより高める観点からは、本実施形態に係るアルミナ粉末の(δ型結晶相の割合/θ型結晶相の割合)を例えば0.5未満とすることが好ましい。
【0019】
全結晶相に対する、δ型結晶相の割合とα型結晶相の割合は、後述する実施例に示す通り、アルミナ粉末の粉末X線回折パターンについて、リートベルト(Rietveld)解析を行って求める。なおリートベルト解析は、上記方法によらず、各種線源による各種粉末X線回折装置で得られたパターンを用い、Rietan-FP、Rietan-2000、JADE、JANA等の各種粉末X線解析ソフトにより算出することができる。
【0020】
〔個数基準の累積円形度分布の低円形度側から累積50%の円形度C50〕
本実施形態に係るアルミナ粉末は、個数基準の累積円形度分布の低円形度側から累積50%の円形度C50が0.90以上である。本実施形態に係るアルミナ粉末は、この様に円形度が高いため、樹脂と混合時の流動性が高く、樹脂との混錬性が良好であり、かつ、混練後の樹脂組成物(コンポジット)の流動性を高めることもできる。よって例えば半導体封止材を製造するため、混練後の溶融した樹脂組成物(コンポジット)を、ICチップの設定された基板が内部に設置された、金型に注入時に、細かい隙間にまで充填され、ボイド等の欠陥発生を抑えることができる。
【0021】
〔個数基準の累積円形度分布の低円形度側から累積5%の円形度C5〕
本実施形態に係るアルミナ粉末は、個数基準の累積円形度分布の低円形度側から累積5%の円形度C5が0.83以上であることが好ましい。本実施形態に係るアルミナ粉末は、低円形度の粒子の割合が抑えられ、好ましくは前記円形度C5が0.83以上であることによって、上述した樹脂と混合時の流動性をより高めることができる。前記円形度C5は0.90未満でありうる。
【0022】
前記円形度C50と前記円形度C5は、後述する実施例に記載の方法により求められる。
【0023】
〔体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積90%の粒径D90〕
本実施形態に係るアルミナ粉末は、体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積90%の粒径D90が20μm未満である。近年、半導体の小型化、配線ピッチの狭小化により、放熱部材に含める放熱フィラーには、粒径が小さいことが求められる。本実施形態に係るアルミナ粉末は、上記粒径の小さい放熱フィラーとして最適である。D90は、好ましくは15μm以下である。
【0024】
〔体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積50%の粒径D50〕
本実施形態に係るアルミナ粉末は、体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積50%の粒径D50が10μm未満であることが好ましい。本実施形態に係るアルミナ粉末は、粒径D90が上記の通り小さいと共に、アルミナ粉末の平均的な粒径を示すD50も、好ましくは10μm未満を満たすことによって、上記粒径の小さい放熱フィラーにより適したアルミナ粉末を提供できる。D50は、より好ましくは8μm以下である。D50の下限値は、例えば0.5μm以上とすることが挙げられる。
【0025】
前記D90とD50は、後述する実施例に記載の方法で求められる。
【0026】
〔ウラン含有量とトリウム含有量〕
本実施形態に係るアルミナ粉末は、ウラン含有量とトリウム含有量がそれぞれ10質量ppb未満であることが好ましい。本実施形態に係るアルミナ粉末は、ウラン含有量とトリウム含有量が上記の通り抑えられていることによって、α線量を低減でき、半導体用途において、該α線による作動エラーをなくすことができる。ウラン含有量とトリウム含有量はそれぞれ、好ましくは5質量ppb以下である。上記ウラン含有量とトリウム含有量は後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0027】
本実施形態に係るアルミナ粉末は、例えば半導体封止材に含まれる放熱フィラーとして好ましく用いることができる。上述の通り、近年、半導体の小型化、配線ピッチの狭小化が進んでおり、本実施形態に係るアルミナ粉末は、例えば小型の半導体封止材に含まれる粒径の小さな放熱フィラーとして適している。また、樹脂組成物に含まれる放熱フィラーとしてアルミナ粉末の割合を高めた場合であっても、アルミナ粉末の円形度が高く、アルミナ粉末を含む樹脂組成物の流動性が高いため、細かい隙間にまで樹脂組成物を充填でき、例えば小型の半導体封止材を良好に製造することができる。即ち、本実施形態に係るアルミナ粉末をメインフィラーとして用いることで、半導体封止材の熱伝導性向上と、半導体封止材の製造時に必要な高い流動性を両立することができる。更に、好ましくはアルミナ粉末のウラン含有量とトリウム含有量が抑制されているため、α線量が少なく、該アルミナ粉末を例えば放熱フィラーとして含む半導体封止材のソフトエラーを防止できる。
【0028】
[アルミナ粉末の製造方法]
本実施形態に係るアルミナ粉末を製造する方法は、上述した結晶相と円形度の分布を有するアルミナ粉末が得られればよく、特に限定されない。本実施形態に係るアルミナ粉末を製造する方法の一例として、下記に示す方法で製造することが挙げられる。まず、アルミナ粉末を構成するアルミナ原料粉末の製造方法について説明する。詳細には、原料アルミナを火炎溶融してアルミナ原料粉末を製造する方法について説明する。アルミナ粉末は、下記方法で製造されるアルミナ原料粉末のみで構成されていてもよいし、下記方法で製造されたアルミナ原料粉末と、他の方法で製造されたアルミナ原料粉末とを、規定する結晶相と円形度の分布を満たすように混合して得られたものでもよい。
【0029】
(火炎溶融に供する原料アルミナ)
火炎溶融に供する原料アルミナは、公知の方法で製造される。例えばバイヤー法、アンモニウムミョウバン法、アンモニウム・アルミニウム・カーボネイト・ハイドロオキサイド法(AACH法)、溶媒抽出法、有機アルミニウム加水分解法(アルミニウムアルコキシド法)等が挙げられる。
【0030】
バイヤー法の場合、ボーキサイトから得た水酸化アルミニウムを焼成して原料アルミナを製造することができる。また、アンモニウムミョウバン法、AACH法、溶媒抽出法、アルミニウムアルコキシド法によれば、ウラン含有量とトリウム含有量の少ない高純度の原料アルミナを製造できるため好ましい。これらの方法で製造された、ウラン含有量とトリウム含有量がそれぞれ10質量ppb未満に抑えられた原料アルミナを、アルミナ粉末の製造に用いれば、ウラン含有量とトリウム含有量の抑えられたアルミナ粉末が得られるため好ましい。
【0031】
(火炎溶融に供する原料アルミナの粉砕)
火炎溶融して所望のサイズのアルミナ原料粉末を容易に得るため、火炎溶融に供する原料アルミナを粉砕する。原料アルミナの粉砕は、例えば振動ミル、ビーズミル、ボールミル、ジェットミル等の公知の方法で行うことができ、乾式状態、湿式状態のいずれで粉砕してもよい。
【0032】
上記粉砕では、表面保護剤を用いる。表面保護剤は、粉砕後のアルミナ粉末の表面を保護するだけでなく、アルミナ粉末の表面を不活性化する機能も有し得る。表面を不活性化する機能により、アルミナ粉末同士の凝集を低減でき、凝集しやすいBET比表面積が高い原料アルミナを用いて、火炎溶融後に狙いとする粒径のアルミナ原料粉末を得るのに好適である。好適な表面保護剤として、例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールなどの1価アルコール類;エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;トリエタノールアミンなどのアミン類;パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸類などが挙げられる。これらの表面保護剤のうち、1種類を単独で用いるか、または2種類以上を組み合わせて用いればよい。これらのうち、グリコール類が好ましく、特には、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコールのうちの1種以上が好適である。
【0033】
表面保護剤として好ましく使用される、例えばポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールは、その分子量に特に制約はないが、添加の容易性から平均分子量が200~600程度の液体質のものが好ましい。
【0034】
表面保護剤の添加量は、原料アルミナを100質量部としたとき、表面保護剤の効果を十分に発揮させるため、0.01質量部以上とすることが好ましく、また表面保護剤の添加量が多すぎても表面保護剤の効果が飽和するため、10質量部以下とすることが好ましい。表面保護剤の添加量は、より好ましくは0.05~8質量部、更に好ましくは0.1~5質量部である。
【0035】
火炎溶融に供する原料アルミナは、アルミナ一次粒子の凝集体であることが好ましく、アルミナ一次粒子の粒径は、例えば1~100nmであることが好ましい。前記アルミナ一次粒子の粒径は、電子顕微鏡写真における円相当直径の算術平均値として求めることができる。また、BET比表面積から上記粒径を算出することもできる。火炎溶融に供する原料アルミナは、BET比表面積が高いことが好ましい。BET比表面積の高い原料アルミナを火炎溶融に供することで、火炎溶融時の溶け残りが少なく、円形度の高いアルミナ原料粉末を得ることができる。火炎溶融に供する原料アルミナの窒素吸着法によるBET比表面積は、40~500m2/gであることが好ましく、100~450m2/gであることがより好ましい。
【0036】
(火炎溶融)
火炎溶融法とは、原料アルミナを火炎中に噴霧し、液滴化した後に冷却固化する方法である。火炎溶融法によれば、原料アルミナの粒径をほぼ維持して、アルミナ原料粉末を得ることができる。本実施形態によれば、上述の通り高BET比表面積であって、かつ微細な原料アルミナを用いているため、溶け残りが生じず、微細かつ円形度の高いアルミナ原料粉末を得ることができる。
【0037】
上記火炎溶融後は、サイクロンやバグフィルターによって粉末を捕集し、分級して所望の粒度分布のアルミナ原料粉末を得ることができる。
【0038】
本実施形態に係るアルミナ粉末は、上記方法で製造されたアルミナ原料粉末のみから形成される他、上記方法で製造されたアルミナ原料粉末と、他の方法で製造されたアルミナ原料粉末とを、本実施形態に係るアルミナ粉末で規定する結晶相と円形度の分布を満たすよう混合して得ることができる。本実施形態によれば、従来のように、火炎溶融後の熱処理や火炎溶融後の冷却制御を行わなくとも、規定のアルミナ粉末を容易に製造することができる。
【0039】
[樹脂組成物]
本実施形態に係るアルミナ粉末を、例えば樹脂組成物用フィラーとして使用することにより、熱伝導性の高い樹脂組成物(コンポジット)を得ることができる。樹脂組成物は、樹脂と、本実施形態に係るアルミナ粉末とを含んでいる。
【0040】
樹脂組成物の熱伝導性を確保するため、樹脂組成物に含まれる本実施形態に係るアルミナ粉末の割合(配合比率)は、60質量%以上であることが好ましい。一方、樹脂特有のしなやかさを確保する観点からは、前記アルミナ粉末の割合は、97質量%以下であることが好ましく、より好ましくは92質量%以下である。
【0041】
樹脂組成物に使用する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂の中から選択することができる。なお、樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリフッ化ビニリデン及びポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリフェニレン-エーテル共重合体(PPE)樹脂、変性PPE樹脂、脂肪族ポリアミド類、芳香族ポリアミド類、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル等のポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリル酸類、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、アイオノマー等が挙げられる。
【0043】
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン-ブタジエンブロック共重合体又はその水添化物、スチレン-イソプレンブロック共重合体又はその水添化物、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0044】
熱硬化性樹脂としては、架橋ゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。架橋ゴムの具体例としては、天然ゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレン共重合ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、及びシリコーンゴムが挙げられる。
【0045】
加工性等の特性を得る観点から、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。
【0046】
さらに、これらの樹脂組成物には、必要に応じて、発明の効果を損なわない範囲で可塑剤、硬化促進剤、カップリング剤、充填剤、顔料、難燃剤、酸化防止剤、界面活性剤、相溶化剤、耐候剤、抗ブロッキング剤、帯電防止剤、レベリング剤、離型剤などの公知の添加剤を、単独または二種以上を適宜配合しても良い。
【0047】
樹脂組成物の製造方法について説明する。一般的に用いられる公知の方法を使用して、本実施形態に係るアルミナ粉末と樹脂を混合することにより、樹脂組成物を得ることができる。例えば、樹脂が液状の場合(例えば液状エポキシ樹脂など)は、液状樹脂とアルミナ粉末と硬化剤とを混合した後、熱または紫外線などで硬化させることにより樹脂組成物を得ることができる。硬化剤、混合方法および硬化方法として、公知のものおよび公知の方法を採用できる。一方、樹脂が固体状の場合(例えばポリオレフィン樹脂やアクリル樹脂など)、アルミナ粉末と樹脂を混合した後、溶融混練など公知の方法により混練して目的の樹脂組成物を得ることができる。
【0048】
本実施形態に係る樹脂組成物の態様には、アルミナ粉末と樹脂とを含む原料を配合した配合物、アルミナ粉末と樹脂とを含む原料を混合した混合物、該混合物を成形した成形物、混合物または成形物を硬化処理した硬化物が含まれる。
【0049】
本実施形態に係る樹脂組成物は、放熱部材、例えば半導体封止材として好ましく用いることができる。上述の通り近年、半導体の高集積化によるICの発熱量が増加しているが、本実施形態に係るアルミナ粉末とこのアルミナ粉末を含む樹脂組成物は、熱伝導性が高いため、高集積半導体にこれらを用いた場合でも、生じる熱を良好に放散させることができる。また、好ましくはアルミナ粉末のウラン含有量とトリウム含有量が抑制されているため、α線量が少なく、該アルミナ粉末を例えば放熱フィラーとして含む半導体封止材のソフトエラーを抑制できる。
【実施例0050】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0051】
[アルミナ原料粉末の作成]
アルミナ原料粉末として、下記に記載のアルミナ原料粉末1とアルミナ原料粉末2を用意した。
【0052】
(アルミナ原料粉末1)
原料アルミナとして、アンモニウムミョウバン法によって得られたγアルミナ(下記BET比表面積の値から算出した一次粒子の平均粒径は13nm)を使用した。このγアルミナの窒素吸着法によるBET比表面積は120m2/gであった。原料アルミナに、表面保護剤としてプロピレングリコールを4質量%添加し混合して、粉砕用粉末を得た。
【0053】
次いで、ジェットミル粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製 水平型ジェットミル粉砕機 PJM-280SP)を用い、粉砕用粉末の供給速度:30kg/h、粉砕時のエアー供給口のゲージ圧力:0.5MPaの条件で処理し、二次粒子の平均粒径が2μm程度の火炎溶融用粉末(火炎溶融に供する原料アルミナ)を得た。
【0054】
得られた火炎溶融用粉末を火炎溶融炉中に投入し、溶融させて球状化したアルミナ粗粉末を得た。火炎溶融炉内の雰囲気温度は1250℃に設定した。得られたアルミナ粗粉末をサイクロンにより回収し、サイクロン分級による分級処理を行い、アルミナ原料粉末1(粒径D50が5.5μm)を得た。アルミナ原料粉末1のSEM写真の一例を
図1に示す。なお、アルミナ原料粉末1の物性は、表1に示す、アルミナ原料粉末1で構成されている実施例1のアルミナ粒子の物性と同じである。
【0055】
(アルミナ原料粉末2)
東国R&S社製球状アルミナDSP-AN05(粒径D50が5.2μm)を使用した。アルミナ原料粉末2のSEM写真の一例を
図2に示す。なお、アルミナ原料粉末2の物性は、表1に示す、アルミナ原料粉末2で構成されている比較例1のアルミナ粒子の物性と同じである。
【0056】
[アルミナ粉末の作成]
上記アルミナ原料粉末1とアルミナ原料粉末2の配合比率が表1に示す通り種々である、実施例1と実施例2、ならびに比較例1~3のアルミナ粉末を得た。
【0057】
得られたアルミナ粉末の各結晶相含有率、累積円形度、粒度等を次の通り求めた。
【0058】
〔アルミナ粉末の各結晶相含有率〕
アルミナ粉末のα相、θ相、δ相の存在割合を、次の通り求めた。まず、アルミナ粉末に対して粉末X線回折測定を行い、粉末X線回折パターンを得た。粉末X線回折測定は、次の通り行った。粉末X線回折パターンは、CuKα線源のBraggBrentano集中光学系に設定した、Bruker社製のXRD装置であるD8 Advanceを用い、回折角2θが5°以上80°以下の範囲で取得した。
【0059】
得られた粉末X線回折パターンについて、リートベルト(Rietveld)解析を行うことによりアルミナ粉末のα相、θ相、δ相の存在割合(質量割合)を算出した。リートベルト解析とは、実測の粉末X線回折パターンと、結晶構造モデルからのシミュレーションパターンとを比較し、両者の差が最小となるよう結晶構造モデルを最適化する手法である。リートベルト解析では、得られた粉末X線回折パターンが、α相、θ相、δ相の3相の混合物によるものと仮定し、Bruker社製粉末X線解析ソフトTOPASを用いて、α相、θ相、δ相の各結晶相の存在割合を最適化した。なお本実施形態では、予め行った予備測定で、上記得られたアルミナ粉末の結晶相が、α相、θ相、δ相でほぼ占められていることを確認したため、上記の通り、α相、θ相、δ相の3相を対象に存在割合を算出した。
【0060】
〔アルミナ粉末の累積円形度〕
表1に示す各実施例と比較例のアルミナ粉末の累積円形度を、以下の手順で算出し、評価した。
【0061】
まず、各アルミナ粉末を用いて断面観察用試料を作製した。詳細には、各アルミナ粉末をエポキシ樹脂で包埋し、エポキシ樹脂を硬化させたのち、Arイオンミリングにより断面観察用試料を作製した。
【0062】
得られた断面観察用試料をSEM試料台に固定し、SEM画像を取得した。SEM画像は、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製の走査型電子顕微鏡「S-4800」)を用い、加速電圧5.0kVで、反射電子像の検出器を用いて撮像した。
【0063】
取得したSEM画像を、画像処理ソフト(例えば、フリーソフトのImageJ(https://fiji.sc/))を用いて2値化処理し、下記式(1)を用いて、輪郭で囲まれた粒子の面積(式(1)における「面積」)、および粒子の周囲長(式(1)における「周囲長」)をそれぞれ算出した。そして粒子1粒の円形度を、以下の式(1)により算出した。
粒子1粒の円形度=4×π×面積/(周囲長2)・・・(1)
【0064】
上記の測定および算出結果から個数基準の累積円形度分布を作製し、円形度の小さい順から、即ち低円形度側から、累積5%の円形度C5、累積50%の円形度C50のそれぞれを算出した。
【0065】
〔アルミナ粉末の粒度〕
アルミナ粉末のD90とD50は、レーザー粒度分布測定装置としてマイクロトラック・ベル(株)製「マイクロトラック MT3300EXII」を用いて、レーザー回折法により、アルミナ粉末の粒度分布を測定し、体積基準の累積百分率50%相当粒径D50を求めた。測定用の試料として、0.2質量%のヘキサメタ燐酸ソーダ水溶液に、測定対象となる粉末を、レーザー散乱強度が適切になるように添加し、装置内蔵超音波40Wで5分間分散処理した粉末分散液を用いた。アルミナの屈折率は1.76とした。
【0066】
〔アルミナ粉末のBET比表面積〕
比表面積測定装置として、島津製作所社製の「フローソーブIII 2310」を使用し、JIS-Z8830(2013)に規定された方法に従って、窒素吸着法一点法により、窒素吸着BET比表面積を求めた。各測定条件は以下の通りとした。
キャリアガス:窒素/ヘリウム混合ガス
充填試料量:0.1g
試料の前処理条件:200℃で20分処理
窒素吸着温度:液体窒素温度(-196℃以下)
窒素脱着温度:室温(約20℃)
【0067】
実施例1のアルミナ粉末を用い、ウランとトリウムの各含有量、およびα線量を次の通り求めた。
【0068】
〔アルミナ粉末のウランおよびトリウムの含有量〕
実施例1のアルミナ粉末のウランおよびトリウムの含有量を次のようにして測定した。まず、アルミナ粉末を硫酸とリン酸の混合水溶液中に投入し、加熱してアルミナ粉末を溶解し、水溶液を調製した。その後、該水溶液と、ウランの抽出剤として汎用されるリン酸トリブチルのシクロヘキサン溶液とを接触させ、該水溶液中に含まれるウランを抽出した。その後、再度純水と接触させる逆抽出により水相に移したウランを、ICP-MSを用いてU238amu、Th232amuの強度により測定した。なお、検量線の作成には、SPEX社製標準溶液を用いた。上記測定の結果、アンモニウムミョウバン法由来のアルミナ原料粉末1で構成される実施例1のアルミナ粉末は、ウラン含有量が2質量ppbであり、トリウム含有量が1質量ppb未満であった。
【0069】
〔アルミナ粉末のα線量〕
実施例1のアルミナ粉末のα線量を、測定装置model 1950(Alpha sciens社製)を用いて測定した。試料の測定面積は1000cm2、測定時間は99時間とした。その結果、アンモニウムミョウバン法由来のアルミナ原料粉末1で構成される実施例1のアルミナ粉末のα線量は、0.001counts/(cm2・h)であった。
【0070】
【0071】
〔樹脂組成物の粘度の測定〕
(粘度測定用樹脂組成物の作成)
まず、粘度測定用の樹脂組成物を次の通り作成した。表1に示すアルミナ粉末と、アドマテックス社製の球状アルミナAO-502(粒径D50が0.52μm)とを8:2の比率(質量比率)になるよう調整した。なお、上記球状アルミナAO-502は、本実施形態に係るアルミナ粉末以外の、充填用アルミナ粉末であり、実使用を想定して高充填を実現するために用いられる、アルミナ小粒子である。樹脂として、樹脂1(株式会社三啓製の53型エポキシ主剤)を用意した。そして、表1に示すアルミナ粉末と、球状アルミナAO-502と、樹脂1とを、表2に示す配合率(質量比率)となるように配合し、株式会社シンキー製 自転・公転ミキサー(ARV-310)を用いて混合および混練し、粘度測定用樹脂組成物を得た。
【0072】
(粘度測定用樹脂組成物の粘度の測定)
得られた粘度測定用樹脂組成物の粘度を、動的粘弾性測定装置(ユービーエム社製「Rheosol-G3000」)を使用して測定した。直径40mmのパラレルプレートを使用し、ギャップ1mm、せん断速度1s-1、100℃で測定した。その結果を表2に示す。本実施例では、上記粘度測定用樹脂組成物の粘度が6.0Pa・s未満のものを流動性が良好(○)、6.0Pa・s以上のものを流動性が不良(×)であると評価した。
【0073】
【0074】
〔樹脂組成物の熱伝導率の測定〕
(熱伝導率測定用樹脂組成物の作成)
表1に示すアルミナ粉末と、アドマテックス社製の球状アルミナAO-502(粒径D50が0.52μm)とを8:2の比率(質量比率)になるよう調整した。なお、上記球状アルミナAO-502は、本実施形態に係るアルミナ粉末以外の、充填用アルミナ粉末であり、実使用を想定して高充填を実現するために用いられる、アルミナ小粒子である。樹脂として、樹脂1(株式会社三啓製の53型エポキシ主剤)と樹脂2(53型エポキシ硬化剤(株式会社三啓製))を用意した。そして、表1に示すアルミナ粉末と、球状アルミナAO-502と、樹脂1および樹脂2とを、表3に示す比率(質量比率)となるように配合し、株式会社シンキー製 自転・公転ミキサー(ARV-310)を用いて混合および混練し、熱伝導率測定用樹脂組成物を得た。
【0075】
(熱伝導率測定用樹脂組成物の熱伝導率の測定)
得られた熱伝導率測定用樹脂組成物を、直径20mmの金型に2g入れ、30MPaの圧力を加えて成型し、室温で24時間置いて樹脂を硬化させた。次いで、硬化体を10mm角×厚さ2mmのサイズに加工し、表面研磨して試験片を得た。この試験片の厚み方向の熱伝導率を、キセノンフラッシュアナライザー(NETZSCH社製、LFA467)を用い、レーザーフラッシュ法で測定した。測定は、大気雰囲気下、25℃の条件下で行った。その結果を表3に示す。本実施例では、熱伝導率が2.3W/mK以上であるものを、熱伝導性が高いと評価し、熱伝導率が2.3W/mK未満であるものを、熱伝導性が低いと評価した。
【0076】
【0077】
表1~3から次のことがわかる。本実施形態に係るアルミナ粉末である、実施例1と実施例2のアルミナ粉末は、結晶相の割合、累積円形度分布および累積粒度分布が、所定の範囲内にあるため、樹脂との混合時に流動性が高く、かつ樹脂と混合して得られた樹脂組成物は、熱伝導性が高かった。
【0078】
それに対して、比較例1~3はいずれもδ型結晶相の割合が高く、樹脂と混合して得られた樹脂組成物は熱伝導率が低かった。
【0079】
本実施形態に係るアルミナ粉末によれば、ウラン含有量とトリウム含有量も小さく、α線量が十分抑制されている。よって、本実施形態に係るアルミナ粉末を、例えば熱伝導性フィラーに用いれば、良好に放熱され、α線による作動エラーを防止できる半導体封止材を実現できる。