IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新光電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電子装置 図1
  • 特開-電子装置 図2
  • 特開-電子装置 図3
  • 特開-電子装置 図4
  • 特開-電子装置 図5
  • 特開-電子装置 図6
  • 特開-電子装置 図7
  • 特開-電子装置 図8
  • 特開-電子装置 図9
  • 特開-電子装置 図10
  • 特開-電子装置 図11
  • 特開-電子装置 図12
  • 特開-電子装置 図13
  • 特開-電子装置 図14
  • 特開-電子装置 図15
  • 特開-電子装置 図16
  • 特開-電子装置 図17
  • 特開-電子装置 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095168
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
H01L23/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212252
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】孝井 健一
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BB11
5F136DA04
5F136DA08
(57)【要約】
【課題】電子部品の高速な駆動を実現すること。
【解決手段】電子装置は、第1金属層と、部品搭載基板と、第2金属層と、封止樹脂とを有する。第1金属層は、第1搭載部及び第2搭載部を備える。部品搭載基板は、配線基板及び配線基板に搭載される電子部品を備え、第1搭載部に電子部品が搭載される。第2金属層は、駆動部品が接合され、第2搭載部との間で駆動部品を挟んで第1金属層上に設けられる。封止樹脂は、第1金属層と第2金属層との間を充填するとともに部品搭載基板を被覆し、電子部品及び駆動部品を封止する。第1金属層は、第1搭載部から第2金属層の方向へ突出する端子部を有する。第2金属層は、端子部に接触して第2金属層を第1搭載部に電気的に接続する配線部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1搭載部及び第2搭載部を備える第1金属層と、
配線基板及び前記配線基板に搭載される電子部品を備え、前記第1搭載部に前記電子部品が搭載される部品搭載基板と、
駆動部品が接合され、前記第2搭載部との間で前記駆動部品を挟んで前記第1金属層上に設けられる第2金属層と、
前記第1金属層と前記第2金属層との間を充填するとともに前記部品搭載基板を被覆し、前記電子部品及び前記駆動部品を封止する封止樹脂とを有し、
前記第1金属層は、
前記第1搭載部から前記第2金属層の方向へ突出する端子部を有し、
前記第2金属層は、
前記端子部に接触して前記第2金属層を前記第1搭載部に電気的に接続する配線部を有することを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記第1搭載部及び前記第2搭載部は、
スリットを介して互いに分離される
ことを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記端子部は、
前記第1搭載部の前記スリットに隣接する側縁に沿って設けられる
ことを特徴とする請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記端子部は、
前記封止樹脂によって被覆されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項5】
前記第1金属層は、
前記第2搭載部の側縁に沿って前記第2搭載部から前記第2金属層の方向へ突出する他の端子部を有し、
前記第2金属層は、
前記他の端子部に接触して前記第2金属層を前記第2搭載部に電気的に接続する他の配線部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項6】
前記電子部品は、
前記第1搭載部の一面に搭載され、
前記第1搭載部は、
前記電子部品が搭載される一面の反対側の面が前記封止樹脂から露出する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項7】
前記駆動部品は、
前記第2搭載部の一面に搭載され、
前記第2搭載部は、
前記駆動部品が搭載される一面の反対側の面が前記封止樹脂から露出する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、配線基板に例えば半導体チップ等の電子部品を搭載した基板と、電子部品を駆動するIC(Integrated Circuit)チップ等の駆動部品を搭載した基板とをワイヤ等の配線部材によって接続する電子装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/001999号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電子部品を搭載した基板と駆動部品を搭載した基板とを配線部材によって接続する電子装置においては、電子部品を高速に駆動することが困難であるという問題がある。すなわち、互いに独立した2つの基板を配線部材によって接続する場合、配線部材の引き回しに起因して一方の基板上の電子部品と他方の基板上の駆動部品との間の配線長が長くなり、インダクタンスの増加やノイズの増加等の不具合が発生する。結果として、駆動部品による電子部品の高速な駆動が妨げられる恐れがある。
【0005】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、電子部品の高速な駆動を実現することができる電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の開示する電子装置は、一つの態様において、第1金属層と、部品搭載基板と、第2金属層と、封止樹脂とを有する。第1金属層は、第1搭載部及び第2搭載部を備える。部品搭載基板は、配線基板及び配線基板に搭載される電子部品を備え、第1搭載部に電子部品が搭載される。第2金属層は、駆動部品が接合され、第2搭載部との間で駆動部品を挟んで第1金属層上に設けられる。封止樹脂は、第1金属層と第2金属層との間を充填するとともに部品搭載基板を被覆し、電子部品及び駆動部品を封止する。第1金属層は、第1搭載部から第2金属層の方向へ突出する端子部を有する。第2金属層は、端子部に接触して第2金属層を第1搭載部に電気的に接続する配線部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示する電子装置の一つの態様によれば、電子部品の高速な駆動を実現することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る電子装置の構成を示す模式断面図である。
図2図2は、第2金属層と第1金属層との接続部分を示す拡大断面図である。
図3図3は、実施形態に係る電子装置の製造方法の流れの一例を示すフローチャートである。
図4図4は、第1金属層形成工程の具体例を示す図である。
図5図5は、第2金属層形成工程の具体例を示す図である。
図6図6は、ICチップ接合工程の具体例を示す図である。
図7図7は、金属層接合工程の具体例を示す図である。
図8図8は、樹脂封止工程の具体例を示す図である。
図9図9は、エッチング工程の具体例を示す図である。
図10図10は、半導体チップ搭載工程の具体例を示す図である。
図11図11は、樹脂封止工程の具体例を示す図である。
図12図12は、電子装置への受動部品の搭載例を示す図である。
図13図13は、実施形態の変形例に係る電子装置の構成を示す模式断面図である。
図14図14は、実施形態の変形例に係る電子装置の製造方法の流れの一例を示すフローチャートである。
図15図15は、半導体チップ搭載工程の具体例を示す図である。
図16図16は、樹脂封止工程の具体例を示す図である。
図17図17は、エッチング工程の具体例を示す図である。
図18図18は、電子装置への受動部品の搭載例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示する電子装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により開示技術が限定されるものではない。
【0010】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る電子装置100の構成を示す模式断面図である。なお、以下においては、電子装置100に例えばインダクタ等の受動部品を搭載する際に受動部品側に位置する面を「上面」といい、受動部品とは反対側に位置する面を「下面」というとともに、これに準じて上下方向を規定する。しかしながら、電子装置100は、例えば上下反転して製造及び使用されてもよく、任意の姿勢で製造及び使用されてもよい。
【0011】
図1に示す電子装置100は、第1金属層110の上面に部品搭載基板130の半導体チップ132及び導電部材133を有する。そして、電子装置100は、第1金属層110と第2金属層120との間に半導体チップ132を駆動するICチップ140を有し、全体を封止樹脂150によって樹脂封止することによって構成される。
【0012】
半導体チップ132は、例えばシリコン(Si)やシリコンカーバイド(SiC)を用いた半導体素子である。また、半導体チップ132は、窒化ガリウム(GaN)やガリウム砒素(GaAs)等を用いた半導体素子であってもよい。半導体チップ132としては、能動素子としての半導体素子(例えば、CPU等のシリコンチップ)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やダイオード等を用いることができる。半導体チップ132は、電子部品の一例である。
【0013】
導電部材133は、例えば銅(Cu)板等の金属板である。
【0014】
ICチップ140は、種々の機能を有する電子回路を半導体上に集積した集積回路であり、半導体チップ132を駆動する電気信号を出力する集積回路である。ICチップ140としては、例えばゲートコントローラ等を用いることができる。ICチップ140は、駆動部品の一例である。
【0015】
第1金属層110は、部品搭載基板130の半導体チップ132及び導電部材133が実装されるとともに、ICチップ140が実装される層である。第1金属層110の材料としては、例えば銅又は銅合金等を用いることができる。また、第1金属層110の厚さは、例えば0.5~5.0mm程度とすることができる。第1金属層110は、リードフレームと呼ばれることがある。
【0016】
第1金属層110は、第1搭載部111と、第2搭載部112と、端子部113と、端子部114と、リード部115とを有する。
【0017】
第1搭載部111及び第2搭載部112は、第1金属層110の基材となる面状の部分である。第1搭載部111の上面には、部品搭載基板130の半導体チップ132及び導電部材133が搭載される。すなわち、第1搭載部111の上面には、半導体チップ132及び導電部材133がそれぞれ導電性接合材132a、133aを介して接合される。導電性接合材132a、133aとしては、例えば、はんだペーストや銀(Ag)ペースト等が用いられる。また、第2搭載部112の上面には、ICチップ140が搭載される。すなわち、第2搭載部112の上面には、ICチップ140が導電性接合材141を介して接合される。導電性接合材141としては、例えば、はんだ、熱伝導ペースト、TIM(Thermal Interface Material)等を用いることができる。第1搭載部111の下面は、封止樹脂150から露出し、第1搭載部111の上面に搭載される半導体チップ132が発する熱を放熱することができる。第2搭載部112の下面は、封止樹脂150から露出し、第2搭載部112の上面に搭載されるICチップ140が発する熱を放熱することができる。
【0018】
第1搭載部111は、スリット111aによって互いに独立する複数の(ここでは、2つの)領域111_1、111_2に分離される。2つの領域111_1、111_2のうち一方の領域111_1には、部品搭載基板130の半導体チップ132が搭載され、他方の領域111_2には、部品搭載基板130の導電部材133が搭載される。これにより、2つの領域111_1、111_2は、部品搭載基板130を介して電気的に接続される。
【0019】
端子部113は、第1金属層110の第1搭載部111と第2金属層120とを接続する突起である。端子部113は、第1搭載部111の第2搭載部112側の側縁に沿って、第1搭載部111の上面から第2金属層120へ向かって突出する。そして、端子部113は、上端において第2金属層120の後述する配線部121に接触して、第2金属層120を下方から支持する。
【0020】
端子部114は、第1金属層110の第2搭載部112と第2金属層120とを接続する突起である。端子部114は、第2搭載部112の側縁に沿って、第2搭載部112の上面から第2金属層120へ向かって突出する。そして、端子部114は、上端において第2金属層120の後述する配線部122に接触して、第2金属層120を下方から支持する。
【0021】
リード部115は、第1金属層110の第1搭載部111に搭載される半導体チップ132と第1搭載部111を介して電気的に接続される。そして、リード部115の先端部は、封止樹脂150から突出して、半導体チップ132と電子装置100の外部とを接続する外部端子として機能する。
【0022】
第2金属層120は、第1金属層110の第2搭載部112との間でICチップ140を挟持するとともに、電子装置100の上面に搭載される受動部品と接続する配線部を形成する層である。第2金属層120の材料としては、例えば銅又は銅合金等を用いることができる。また、第2金属層120の厚さは、例えば0.1~0.5mm程度とすることができる。第2金属層120は、リードフレームと呼ばれることがある。
【0023】
第2金属層120は、配線部121、122を含む複数の配線部を有する。これら複数の配線部は、図1には図示されていない奥行方向の所定位置において、互いに接続されていてもよい。また、複数の配線部のうち、配線部121、122を除く任意の配線部が、電子装置100の上面に搭載される受動部品と接続可能な配線部を形成している。第2金属層120は、受動部品と接続可能な配線部の下面において、はんだ142を介してICチップ140に接合される。
【0024】
配線部121は、第2金属層120と第1金属層110の第1搭載部111とを接続する配線であり、第1金属層110の端子部113によって下方から支持される。配線部121は、第1搭載部111の第2搭載部112側の側縁に沿って、第1搭載部111の上方に配置される。そして、配線部121の下面は、第1金属層110の端子部113に接触して、第2金属層120と第1金属層110の第1搭載部111とを電気的に接続する。
【0025】
配線部121及び端子部113が第2金属層120と第1金属層110の第1搭載部111とを接続するため、2つの金属層を配線部材によって接続する場合と比べて、第2金属層120と第1金属層110との間の配線長を短くすることができる。このため、第2金属層120に接合されたICチップ140と第1金属層110の第1搭載部111上の半導体チップ132との間のインダクタンスを低減し且つノイズの影響を抑制することができ、半導体チップ132の高速な駆動を実現することができる。
【0026】
図2は、第2金属層120と第1金属層110との接続部分を示す拡大断面図である。
【0027】
第1金属層110の第1搭載部111及び第2搭載部112は、スリット110aを介して互いに分離されている。第1搭載部111及び第2搭載部112がスリット110aを介して互いに分離されることにより、第1搭載部111上の半導体チップ132と第2搭載部112上のICチップ140との駆動電圧の差に起因した不具合を回避するができる。
【0028】
第1金属層110の端子部113は、第1搭載部111のスリット110aに隣接する側縁110bに沿って設けられる。換言すれば、端子部113は、第1搭載部111のスリット110aに隣接する側縁110bに沿った位置において、第1搭載部111の上面から突出する。そして、端子部113の上端は、第1搭載部111のスリット110aに隣接する側縁110bに沿った位置に配置された第2金属層120の配線部121と接触して、第1金属層110と第2金属層120とを電気的に接続する。第1搭載部111及び第2搭載部112を分離するスリット110aに隣接して端子部113が設けられて第1金属層110と第2金属層120とを接続することにより、第2金属層120と第1金属層110との間の配線長をより短くすることができる。これにより、第2金属層120に接合されたICチップ140と第1金属層110上の半導体チップ132との間のインダクタンスを低減し且つノイズの影響をより抑制することができ、半導体チップ132のより高速な駆動を実現することができる。
【0029】
また、第1金属層110の端子部113は、封止樹脂150によって被覆されている。これにより、端子部113におけるインダクタンスを低減し且つノイズの影響を抑制することができ、半導体チップ132のより高速な駆動を実現することができる。
【0030】
図1の説明に戻る。配線部122は、第2金属層120と第1金属層110の第2搭載部112とを接続する配線であり、第1金属層110の端子部114によって下方から支持される。配線部122は、第2搭載部112の側縁に沿って、第2搭載部112の上方に配置される。そして、配線部122の下面は、第1金属層110の端子部114に接触して、第2金属層120と第1金属層110の第2搭載部112とを電気的に接続する。
【0031】
配線部122及び端子部114が第2金属層120と第1金属層110の第2搭載部112とを接続するため、第2金属層120及び第1金属層110の接合強度を向上することができ、封止樹脂150からの第1金属層110の脱離を抑制することができる。
【0032】
部品搭載基板130は、配線基板131、半導体チップ132及び導電部材133を有する。
【0033】
配線基板131は、下面において半導体チップ132及び導電部材133を実装する。配線基板131は、絶縁基材311、接着層312及び配線層313を有する。
【0034】
絶縁基材311は、絶縁性のフィルム状部材であり、配線基板131の基材である。絶縁基材311の材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂やエポキシ系樹脂等の絶縁性樹脂を用いることができる。
【0035】
接着層312は、絶縁基材311の下面に半導体チップ132及び導電部材133を接着する。接着層312の材料としては、例えば、エポキシ系、ポリイミド系やシリコーン系等の接着剤を用いることができる。
【0036】
配線層313は、絶縁基材311の上面に形成される。配線層313は、絶縁基材311及び接着層312を貫通するビアを介して半導体チップ132及び導電部材133と電気的に接続される。配線層313がビアを介して半導体チップ132及び導電部材133に接続されることにより、配線基板131の下面に半導体チップ132及び導電部材133が実装される。配線層313の上面は、電子装置100の上面において封止樹脂150から露出する。
【0037】
配線基板131の下面に実装される半導体チップ132及び導電部材133は、それぞれ第1金属層110の第1搭載部111に搭載される。すなわち、半導体チップ132及び導電部材133は、それぞれ導電性接合材132a、133aを介して第1搭載部111の上面に接合される。
【0038】
これらの第1金属層110、第2金属層120、部品搭載基板130及びICチップ140は、封止樹脂150によって樹脂封止される。すなわち、第1金属層110、第2金属層120、部品搭載基板130及びICチップ140の周囲の空間には、封止樹脂150が充填されている。封止樹脂150としては、例えば熱硬化性のエポキシ系樹脂等の絶縁性樹脂を用いることができる。
【0039】
次に、上記のように構成される電子装置100の製造方法について、図3を参照しながら説明する。図3は、実施形態に係る電子装置100の製造方法の流れの一例を示すフローチャートである。
【0040】
まず、電子装置100の骨格となる第1金属層110及び第2金属層120が形成される(ステップS101、S102)。第1金属層110及び第2金属層120は、それぞれ金属板のエッチング加工又はプレス加工によって形成される。具体的には、例えば図4に示すように、金属板から、第1搭載部111、第2搭載部112、端子部113、端子部114及びリード部115を有する第1金属層110が形成される。図4は、第1金属層形成工程の具体例を示す図である。
【0041】
また、例えば図5に示すように、金属板から、配線部121、122を含む複数の配線部及び複数の配線部を連結する連結部125を有する第2金属層120が形成される。図5は、第2金属層形成工程の具体例を示す図である。複数の配線部のうち、配線部121、122を除く任意の配線部が、電子装置100の上面に搭載される受動部品と接続可能な配線部123を形成している。配線部123は、ICチップ140の上面に対応する位置に形成される。
【0042】
金属板のエッチング加工又はプレス加工により第1金属層110及び第2金属層120が形成されると、第2金属層120にICチップ140が接合される(ステップS103)。具体的には、例えば図6に示すように、配線部123の下面(図6では、上側の面)において、第2金属層120にはんだ142を介してICチップ140が接合される。図6は、ICチップ接合工程の具体例を示す図である。そして、ICチップ140の接合と並行して、第1金属層110と第2金属層120とを接合するためのはんだが第2金属層120に塗布される。例えば図6に示すように、配線部121、122にはんだ126が塗布される。はんだ126の塗布は、はんだペーストの印刷によって行われてもよいし、ディスペンサが用いられてもよい。また、はんだペーストの代わりに導電性ペーストが用いられてもよい。なお、図6以外の図においては、はんだ126の図示を省略している。
【0043】
第2金属層120にICチップ140が接合され且つはんだ126が塗布されると、第1金属層110上に第2金属層120が積層され、第1金属層110及び第2金属層120が接合される(ステップS104)。すなわち、ICチップ140が導電性接合材141を介して第2搭載部112の上面に接合されるとともに、例えばリフロープロセスが行われることにより、配線部121、122がそれぞれはんだ126を介して端子部113、114に接合される。これにより、例えば図7に示すように、第2金属層120と第1金属層110の第2搭載部112とによってICチップ140を挟む中間構造体が形成される。図7は、金属層接合工程の具体例を示す図である。
【0044】
中間構造体における第1金属層110の第2搭載部112、第2金属層120及びICチップ140は、例えばトランスファーモールド成形により、樹脂封止される(ステップS105)。すなわち、中間構造体における第1金属層110の第2搭載部112、第2金属層120及びICチップ140が金型のキャビティに設置され、未硬化の封止樹脂150がブランジャからキャビティへ注入された後、封止樹脂150が加熱されて硬化する。樹脂封止の方法としては、トランスファーモールド法の他にも、例えばコンプレッションモールド法やインジェクションモールド法などを用いてもよい。中間構造体における第1金属層110の第2搭載部112、第2金属層120及びICチップ140が樹脂封止されることにより、例えば図8に示すように、第2搭載部112、第2金属層120及びICチップ140の周囲の空間に封止樹脂150が充填される。図8は、樹脂封止工程の具体例を示す図である。
【0045】
中間構造体における第1金属層110の第2搭載部112、第2金属層120及びICチップ140が樹脂封止されると、第2金属層120がエッチングされて(ステップS106)、第2金属層120から複数の配線部を除く部分が除去される。すなわち、例えば図9に示すように、第2金属層120は、エッチングにより、配線部121~123を含む複数の配線部が残存し且つ連結部125が除去されるように、溶解される。図9は、エッチング工程の具体例を示す図である。
【0046】
第2金属層120のエッチングが完了すると、部品搭載基板130の半導体チップ132及び導電部材133が第1金属層110の第1搭載部111に搭載される(ステップS107)。すなわち、半導体チップ132及び導電部材133がそれぞれ導電性接合材132a、133aを介して第1搭載部111の上面に接合される。これにより、例えば図10に示すように、部品搭載基板130の半導体チップ132及び導電部材133が搭載された第1金属層110及び第2金属層120からなる中間構造体が形成される。図10は、半導体チップ搭載工程の具体例を示す図である。
【0047】
中間構造体における第1金属層110の第1搭載部111及び部品搭載基板130は、例えばトランスファーモールド成形により、樹脂封止され(ステップS108)、電子装置100が完成する。すなわち、中間構造体における第1金属層110の第1搭載部111及び部品搭載基板130が金型のキャビティに設置され、未硬化の封止樹脂150がブランジャからキャビティへ注入された後、封止樹脂150が加熱されて硬化する。樹脂封止の方法としては、トランスファーモールド法の他にも、例えばコンプレッションモールド法やインジェクションモールド法などを用いてもよい。中間構造体における第1金属層110の第1搭載部111及び部品搭載基板130が樹脂封止されることにより、例えば図11に示すように第1搭載部111及び部品搭載基板130の周囲の空間に封止樹脂150が充填される。図11は、樹脂封止工程の具体例を示す図である。
【0048】
ここまでの工程により得られる電子装置100は、第1金属層110の第1搭載部111の上面に半導体チップ132を搭載し、第1金属層110の第2搭載部112と第2金属層120とよって挟まれる領域にICチップ140を実装する。そして、電子装置100は、第2金属層120と第1金属層110の第1搭載部111とを互いに接触する配線部121及び端子部113によって電気的に接続する。このため、第2金属層120及び第1金属層110を比較的に短い配線長で接続することができ、ICチップ140と半導体チップ132との間を繋ぐ配線経路でのインダクタンスを低減し且つノイズの影響を抑制することができる。結果として、半導体チップ132の高速な駆動を実現することができる。
【0049】
電子装置100には、受動部品が搭載される(ステップS109)。すなわち、例えば図12に示すように、第2金属層120における配線部123等の所定の配線部の上面に受動部品410、510、610がそれぞれ搭載される。図12は、電子装置100への受動部品410、510、610の搭載例を示す図である。配線部123等の所定の配線部の上面には、例えばはんだバンプ411によって受動部品410がフリップチップ接続される。また、配線部123等の所定の配線部の上面には、受動部品510の端子510aがはんだ510bによって接続される。また、配線部123等の所定の配線部の上面には、例えばはんだバンプ611によって受動部品610がフリップチップ接続される。受動部品410、510、610としては、例えばキャパシタ、インダクタ及び抵抗素子等の受動部品を用いることができる。
【0050】
(変形例)
図13は、実施形態の変形例に係る電子装置100の構成を示す模式断面図である。なお、変形例において、実施形態と同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0051】
図13に示すように、変形例では、配線基板131の配線層313が、封止樹脂150によって充填されていないギャップ313aを空けて並べられた配線パターンを有する。配線層313の配線パターン間のギャップ313aに封止樹脂150が充填されないことにより、封止樹脂150の使用量を削減することができる。また、変形例では、第2金属層120の上面(つまり、配線部121、122を含む複数の配線部の上面)が部品搭載基板130の上面よりも低い位置に形成される。これにより、電子装置100の上面に搭載される受動部品と接続可能な配線部の厚さを薄くすることができ、電子装置100の薄型化を促進することができる。
【0052】
次に、実施形態の変形例に係る電子装置100の製造方法について、図14を参照しながら説明する。図14は、実施形態の変形例に係る電子装置100の製造方法の流れの一例を示すフローチャートである。図14において、図3と同じ部分には同じ符号を付す。
【0053】
第1金属層110及び第2金属層120が接合されると(ステップS104)、部品搭載基板130の半導体チップ132及び導電部材133が第1金属層110の第1搭載部111に搭載される(ステップS111)。すなわち、半導体チップ132及び導電部材133がそれぞれ導電性接合材132a、133aを介して第1搭載部111の上面に接合される。これにより、例えば図15に示すように、部品搭載基板130の半導体チップ132及び導電部材133が搭載された第1金属層110及び第2金属層120からなる中間構造体が形成される。図15は、半導体チップ搭載工程の具体例を示す図である。図15に示す中間構造体が形成された段階においては、配線基板131の配線層313に未だ配線パターンが形成されていない。
【0054】
中間構造体は、例えばトランスファーモールド成形により、全体的に樹脂封止される(ステップS112)。すなわち、中間構造体が金型のキャビティに設置され、未硬化の封止樹脂150がブランジャからキャビティへ注入された後、封止樹脂150が加熱されて硬化する。樹脂封止の方法としては、トランスファーモールド法の他にも、例えばコンプレッションモールド法やインジェクションモールド法などを用いてもよい。中間構造体の全体が樹脂封止されることにより、例えば図16に示すように、第1金属層110、第2金属層120、部品搭載基板130及びICチップ140の周囲の空間に封止樹脂150が充填される。図16は、樹脂封止工程の具体例を示す図である。すなわち、第1金属層110の第2搭載部112と第2金属層120との間の空間に封止樹脂150が充填され、ICチップ140が封止される。また、第1金属層110の第1搭載部111の上面及び部品搭載基板130が封止樹脂150によって被覆され、部品搭載基板130の配線基板131、半導体チップ132及び導電部材133が封止される。このとき、配線基板131は、配線層313の上面が封止樹脂150から露出するように、封止される。
【0055】
中間構造体の全体が樹脂封止されると、第2金属層120と、配線基板131の封止樹脂150から露出する配線層313とが一括でエッチングされる(ステップS113)。第2金属層120及び配線層313のエッチングにより、第2金属層120から複数の配線部を除く部分が除去されるとともに、配線層313に配線パターンが形成される。すなわち、例えば図17に示すように、第2金属層120は、エッチングにより、配線部121~123を含む複数の配線部が残存し且つ連結部125が除去されるように、溶解される。また、例えば図17に示すように、配線層313は、エッチングにより、ギャップ313aを空けて並べられた配線パターンが形成されるように、溶解される。ギャップ313aは、配線層313においてエッチングにより溶解される位置に形成されるため、封止樹脂150によって充填されない空間となる。図17は、エッチング工程の具体例を示す図である。第2金属層120及び配線層313のエッチングが完了すると、電子装置100が完成する。なお、配線層313が予めパターニングされている場合には、パターン間に封止樹脂150が充填される。
【0056】
電子装置100には、受動部品が搭載される(ステップS114)。すなわち、例えば図18に示すように、第2金属層120における配線部123等の所定の配線部の上面に受動部品410、510、610がそれぞれ搭載される。図18は、電子装置100への受動部品410、510、610の搭載例を示す図である。配線部123等の所定の配線部の上面には、例えばはんだバンプ411によって受動部品410がフリップチップ接続される。また、配線部123等の所定の配線部の上面には、受動部品510の端子510aがはんだ510bによって接続される。また、配線部123等の所定の配線部の上面には、例えばはんだバンプ611によって受動部品610がフリップチップ接続される。受動部品410、510、610としては、例えばキャパシタ、インダクタ及び抵抗素子等の受動部品を用いることができる。
【0057】
以上のように、実施形態に係る電子装置(例えば、電子装置100)は、第1金属層(例えば、第1金属層110)と、部品搭載基板(例えば、部品搭載基板130)と、第2金属層(例えば、第2金属層120)と、封止樹脂(例えば、封止樹脂150)とを有する。第1金属層は、第1搭載部(例えば、第1搭載部111)及び第2搭載部(例えば、第2搭載部112)を備える。部品搭載基板は、配線基板(例えば、配線基板131)及び配線基板に搭載される電子部品(例えば、半導体チップ132)を備え、第1搭載部に電子部品が搭載される。第2金属層は、電子部品を駆動する駆動部品(例えば、ICチップ140)が接合され、第2搭載部との間で駆動部品を挟んで第1金属層上に設けられる。封止樹脂は、第1金属層と第2金属層との間を充填するとともに部品搭載基板を被覆し、電子部品及び駆動部品を封止する。第1金属層は、第1搭載部から第2金属層の方向へ突出する端子部(例えば、端子部113)を有する。第2金属層は、端子部に接触して第2金属層を第1搭載部に電気的に接続する配線部(例えば、配線部121)を有する。これにより、実施形態に係る電子装置によれば、電子部品の高速な駆動を実現することができる。
【0058】
また、第1搭載部及び前記第2搭載部は、スリット(例えば、スリット110a)を介して互いに分離されてもよい。これにより、実施形態に係る電子装置によれば、第1搭載部上の電子部品と第2搭載部上の駆動部品との駆動電圧の差に起因した不具合を回避するができる。
【0059】
また、端子部は、第1搭載部のスリットに隣接する側縁(例えば、側縁110b)に沿って設けられてもよい。これにより、実施形態に係る電子装置によれば、電子部品のより高速な駆動を実現することができる。
【0060】
また、端子部は、封止樹脂によって被覆されていてもよい。これにより、実施形態に係る電子装置によれば、電子部品のより高速な駆動を実現することができる。
【0061】
また、第1金属層は、第2搭載部の側縁に沿って第2搭載部から第2金属層の方向へ突出する他の端子部(例えば、端子部114)を有してもよい。第2金属層は、他の端子部に接触して第2金属層を第2搭載部に電気的に接続する他の配線部(例えば、配線部122)を有してもよい。これにより、実施形態に係る電子装置によれば、封止樹脂からの第1金属層の脱離を抑制することができる。
【0062】
また、電子部品は、第1搭載部の一面(例えば、上面)に搭載され、第1搭載部は、電子部品が搭載される一面の反対側の面(例えば、下面)が封止樹脂から露出してもよい。これにより、実施形態に係る電子装置によれば、第1搭載部の一面に搭載される電子部品が発する熱を効率よく放熱することができる。
【0063】
また、駆動部品は、第2搭載部の一面(例えば、上面)に搭載され、第2搭載部は、駆動部品が搭載される一面の反対側の面(例えば、下面)が封止樹脂から露出してもよい。これにより、実施形態に係る電子装置によれば、第2搭載部の一面に搭載される駆動部品が発する熱を効率よく放熱することができる。
【符号の説明】
【0064】
100 電子装置
110 第1金属層
110a スリット
110b 側縁
111 第1搭載部
111_1、111_2 領域
111a スリット
112 第2搭載部
113 端子部
114 端子部
115 リード部
120 第2金属層
121~123 配線部
125 連結部
130 部品搭載基板
131 配線基板
132 半導体チップ
132a 導電性接合材
133 導電部材
133a 導電性接合材
140 ICチップ
141 導電性接合材
150 封止樹脂
311 絶縁基材
312 接着層
313 配線層
313a ギャップ
410、510、610 受動部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18