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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095198
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212304
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 隆
(72)【発明者】
【氏名】杉山 龍平
(72)【発明者】
【氏名】山口 嘉紀
(72)【発明者】
【氏名】吉永 洋
(72)【発明者】
【氏名】松田 諒平
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA24
2H033BA11
2H033BA26
2H033BA27
2H033BA31
2H033BA32
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB22
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BE00
2H033CA04
2H033CA07
2H033CA30
2H033CA45
(57)【要約】
【課題】反射部材および遮蔽部材の過昇温を抑制し、かつ、省エネルギー化を図ることができる定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】定着装置20は、回転する定着部材たる定着ベルト21と、定着ベルト21の外周面に当接して形成されたニップ部を通過する記録材たる用紙を加圧する加圧部材たるかあるローラ22とを有している。また、定着ベルト21の内側には、熱源たる加熱装置23と、定着ベルト21へ向かう加熱装置23の輻射熱を遮蔽する遮蔽部材29と、輻射熱を定着ベルト21の内周面に向けて反射する反射部26aを有する反射部材26とを有している。この反射部材26は、加圧ローラ22の加圧力を定着ベルト21を介して受ける加圧受け部26bと、遮蔽部材29が接触する接触部26cとを有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する定着部材と、
前記定着部材の外周面に当接して形成されたニップ部を通過する記録材を加圧する加圧部材と、
前記定着部材の内側に配置された熱源と、
前記定着部材の内側に、前記定着部材に沿って移動可能に設けられ、前記定着部材へ向かう前記熱源の輻射熱を遮蔽する遮蔽部材と、
前記熱源の輻射熱を前記定着部材の内周面に向けて反射する反射部を有する反射部材と、を備えた定着装置において、
前記反射部材は、前記加圧部材の加圧力を前記定着部材を介して受ける加圧受け部と、前記遮蔽部材が接触する接触部とを有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置において、
前記遮蔽部材は、前記定着部材へ向かう前記熱源の輻射熱を遮蔽する遮蔽位置と、前記遮蔽位置から退避した退避位置との間を移動可能であり、
前記反射部材の前記接触部は、前記遮蔽部材が前記遮蔽位置に位置するときに前記遮蔽部材に接触することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1に記載の定着装置において、
前記遮蔽部材は、前記定着部材へ向かう前記熱源の輻射熱を遮蔽する遮蔽位置と、前記遮蔽位置から退避した退避位置との間を移動可能であり、
前記反射部材の前記接触部は、前記遮蔽部材が前記退避位置に位置するときに前記遮蔽部材に接触することを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項3に記載の定着装置において、
前記加圧受け部は、前記ニップ部の前記記録材の搬送方向の下流側端部まで延びており、
前記接触部を、前記加圧受け部の前記搬送方向の下流側端部から延伸させて設けたことを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1に記載の定着装置において、
前記加圧受け部と前記定着部材との間に前記加圧受け部の表面よりも前記定着部材の内周面に対する摺動性が高い摺動部材を設けたことを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1に記載の定着装置において、
前記遮蔽部材の端部の前記接触部に接触する被接触部が、内側に折り曲げられて形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項7】
記録材に画像を形成する画像形成部と、
前記記録材に形成された画像を前記記録材に定着させる定着装置とを備えた画像形成装置において、
前記定着装置として、請求項1に記載の定着装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転する定着部材と、定着部材の外周面に当接して形成されたニップ部を通過する記録材を加圧する加圧部材と、定着部材の内側に配置された熱源と、定着部材の内側に、定着部材に沿って移動可能に設けられ、定着部材へ向かう熱源の輻射熱を遮蔽する遮蔽部材と、熱源の輻射熱を定着部材の内周面に向けて反射する反射部を有する反射部材とを備えた定着装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、上記定着装置として、ニップ部で定着部材の内周面に接触し定着部材の熱を受けて記録材の幅方向に熱を拡散させる均熱部材に遮蔽部材を接触させるものが記載されている。具体的には、遮蔽部材の記録材の幅方向両側を定着部材の表面移動方向に延ばし、遮蔽部材が熱源の輻射熱を遮蔽する遮蔽位置に位置するときに、均熱部材の記録材搬送方向の上流側端部に接触させる。遮蔽部材を均熱部材に接触させることで、遮蔽部材の熱を均熱部材に逃がすことができ、遮蔽部材の過昇温が抑制できると記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、反射部材が過昇温するおそれがあり、かつ、省エネルギー化が不十分であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、回転する定着部材と、前記定着部材の外周面に当接して形成されたニップ部を通過する記録材を加圧する加圧部材と、前記定着部材の内側に配置された熱源と、前記定着部材の内側に、前記定着部材に沿って移動可能に設けられ、前記定着部材へ向かう前記熱源の輻射熱を遮蔽する遮蔽部材と、前記熱源の輻射熱を前記定着部材の内周面に向けて反射する反射部を有する反射部材と、を備えた定着装置において、前記反射部材は、前記加圧部材の加圧力を前記定着部材を介して受ける加圧受け部と、前記遮蔽部材が接触する接触部とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、反射部材および遮蔽部材の過昇温を抑制し、かつ、省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係るプリンタの概略構成図。
図2】定着装置の概略構成図。
図3】遮蔽部材の平面図。
図4】各ハロゲンヒータの発熱部を示す図。
図5】遮蔽部材が、小サイズ対応遮蔽位置に位置している状態を示す図。
図6】反射部材の概略斜視図。
図7】遮蔽部材の被接触部および反射部材の接触部を、幅方向全域に設けた例を示す図。
図8】変形例1の定着装置の概略構成図。
図9】変形例2の定着装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものである。以下の説明はこの発明における最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0009】
以下、本発明を適用した定着装置を備えた画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、プリンタ100という)の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンタ100の概略構成図である。
図1に示したプリンタ100は、複数の色画像を形成する作像部が中間転写体としての中間転写ベルト11の展張方向に沿って並置されたタンデム方式のカラープリンタである。しかし、本実施形態の定着装置が適用可能な画像形成装置は、この方式に限られず、またプリンタだけではなく複写機やファクシミリ装置等の画像形成装置にも適用することも可能である。
【0010】
プリンタ100は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色に分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な像担持体としての感光体ドラム120Y,C,M,Bkを並設したタンデム構造が採用されている。
プリンタ100では、各感光体ドラム120Y,C,M,Bkに形成されたトナー像からなる可視像が、各感光体ドラムに対峙しながら矢印A方向に移動可能な無端ベルトである中間転写ベルト11に対して一次転写される。この一次転写行程の実行によってそれぞれの色の画像が重畳転写され、その後、記録材たるシート状の用紙Pに対して二次転写行程を実行することで一括転写される。
【0011】
各感光体ドラム120の周囲には、感光体ドラム120の回転に従い画像形成処理するための装置が配置されている。ブラックの画像形成を行う感光体ドラム120Bkを代表として説明すると、感光体ドラム120Bkの回転方向に沿って画像形成処理を行う帯電装置30Bk、現像装置40Bk、一次転写ローラ112Bk、及びクリーニング装置50Bkが配置されている。帯電装置30Bkによる一様帯電後に行われる、書き込み光Lbを用いた光書き込みには、光書き込み装置6が用いられる。
【0012】
中間転写ベルト11に対する重畳転写では、中間転写ベルト11が図中、A方向に移動する過程において、各感光体ドラム120Y,C,M,Bkに形成されたトナー像が、中間転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写される。このために、一次転写は、中間転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム120Y,C,M,Bkに対向して配設された一次転写ローラ112Y,C,M,Bkによる電圧印加によって、図中、A方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0013】
各感光体ドラム120Y,C,M,Bkは、図中、A方向の上流側からこの順で並んでいる。各感光体ドラム120Y,C,M,Bkは、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の画像をそれぞれ形成するための画像ステーションに備えられている。
【0014】
プリンタ100は、色毎の画像形成処理を行う4つの画像ステーションと、各感光体ドラム120Y,C,M,Bkの上方に対向して配設され、中間転写ベルト11及び一次転写ローラ112Y,C,M,Bkを備えた転写ベルトユニット10を備えている。また、中間転写ベルト11に対向して配設され中間転写ベルト11に従動し、連れ回りする二次転写ローラ5と、中間転写ベルト11に対向して配設され中間転写ベルト11をクリーニングするベルトクリーニング装置13も備えている。そして、上記4つの画像ステーションの下方に対向して配設された光書き込み装置6も備えている。
【0015】
光書き込み装置6は、静電潜像を書き込む光源としての半導体レーザ、カップリングレンズ、fθレンズ、トロイダルレンズ、折り返しミラーおよび偏光手段としての回転多面鏡などを装備している。この光書き込み装置6は、各感光体ドラム120Y,C,M,Bkに対して色毎に対応した書き込み光Lbを出射して感光体ドラム120Y,C,M,Bkに静電潜像を形成するよう構成されている。書き込み光Lbは、図1では、便宜上、ブラック画像の画像ステーションのみを対象として符号が付けてあるが、その他の画像ステーションも同様である。
【0016】
このプリンタ100には、中間転写ベルト11と二次転写ローラ5との間に向けて搬送される用紙Pを積載した給紙カセットとしての用紙給送装置61が設けられている。用紙給送装置61は、最上位の用紙Pの上面に当接する給送ローラ3を有しており、給送ローラ3が反時計回り方向に回転駆動されることにより、最上位の用紙Pをレジストローラ対4に向けて給送する。
【0017】
また、用紙給送装置61から搬送されてきた用紙Pを、画像ステーションによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、中間転写ベルト11と二次転写ローラ5との間の二次転写部に向けて繰り出すレジストローラ対4が設けられている。また、用紙Pの先端がレジストローラ対4に到達したことを検知するセンサ41も設けられている。
【0018】
また、プリンタ100には、トナー像が転写された用紙P上にトナー像を定着させるための定着ユニットとしての接触加熱方式の定着装置20と、定着済みの用紙Pをプリンタ100の本体外部に排出する排出ローラ7が備えられている。また、プリンタ100の本体上部には、排出ローラ7によりプリンタ100の本体外部に排出された用紙Pを積載する排紙トレイ17が備えられている。また、排紙トレイ17の下側の装置本体内には、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーを充填されたトナーボトル9Y,C,M,Bkが備えられている。
【0019】
転写ベルトユニット10は、中間転写ベルト11、一次転写ローラ112Y,C,M,Bkの他に、中間転写ベルト11が掛け回されている駆動ローラ72及び従動ローラ73を有している。
従動ローラ73は、中間転写ベルト11に対する張力付勢手段としての機能も備えており、従動ローラ73には、バネなどを用いた付勢手段が設けられている。このような転写ベルトユニット10と、一次転写ローラ112Y,C,M,Bkと、二次転写ローラ5と、ベルトクリーニング装置13とで転写装置71が構成されている。
【0020】
転写装置71に装備されているベルトクリーニング装置13は、中間転写ベルト11に対向、当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードとを有している。そして、ベルトクリーニング装置13は、中間転写ベルト11上の残留トナー等の異物をクリーニングブラシとクリーニングブレードとにより掻き取り、除去して、中間転写ベルト11をクリーニングするようになっている。
また、ベルトクリーニング装置13は、中間転写ベルト11から除去した残留トナーを搬出し廃棄するための排出手段を有している。
【0021】
プリンタ100の画像形成動作は次のとおりである。4つの画像形成ステーションで各感光体ドラム120Y、C、M、Bkに可視像を形成する。各感光体ドラム120Y、C、M、Bkに形成された可視像は、各感光体ドラム120Y、C、M、20Bkに対峙しながら矢印A方向に移動する中間転写ベルト11に対し一次転写行程を実行してそれぞれの画像が重畳転写される。中間転写ベルト11に重畳転写された可視像は、用紙Pに対して二次転写ローラ5で二次転写行程を実行することで一括転写される。トナー像が一括転写された用紙Pは定着装置20でトナー像が定着され、定着済みの用紙Pは排出ローラ7によりプリンタ100の本体外部に排出される。
【0022】
図2は、定着装置20の概略構成図である。
定着装置20は、内部が中空な表面無端移動体である定着部材としての定着ベルト21と、定着ベルト21に対向して回転可能に設けられた加圧部材としての加圧ローラ22とを備えている。
【0023】
定着ベルト21の内側には、定着ベルト21を加熱する熱源としての加熱装置23と、定着ベルト21を介して対向する加圧ローラ22と定着ニップ部としてのニップ部Nを形成するニップ形成部材たる樹脂パッド24とが設けられている。さらに、定着ベルト21の内側には、樹脂パッド24を支持する支持部材としてのステー25と、加熱装置23が備える二つのハロゲンヒータ(23A,23B)から放射される光を定着ベルト21へ反射する反射部材26とが設けられている。
【0024】
また、定着ベルト21の内側には、遮蔽部材29が設けられており、遮蔽部材29は、図2中の矢印「D」に示すように定着ベルト21の内周面に沿って、定着ベルト21と非接触で移動するように構成されている。
【0025】
定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状のベルト部材(フィルムも含む)が用いられる。
定着ベルト21は、ニッケルもしくはステンレス鋼(SUS)等の金属材料またはポリイミド(PI)などの樹脂材料で形成された内周側の基材を有している。また、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などで形成された外周側の離型層を備えている。
【0026】
また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。弾性層がない場合は熱容量が小さくなり、定着性が向上するが、未定着画像を押しつぶして定着するときにベルト表面の微妙な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部にユズ肌状の跡が残るという不具合が生じる。これを改善するにはシリコーンゴム等の弾性層を100[μm]以上設けることが好ましい。弾性層の変形により、微妙な凹凸が吸収されユズ肌画像が改善する。
【0027】
加圧ローラ22は、芯金(金属ローラ)22a、弾性層22b及び離型層22cによって構成されている。なお、弾性層22bは芯金22aの表面に配置されており、発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、またはフッ素ゴム等が用いられる。また、離型層22cは弾性層22bの表面に設けられ、PFAまたはPTFE等が用いられる。
【0028】
加圧ローラ22は、スプリングなどの加圧手段によって定着ベルト21側に向けて加圧されることにより、定着ベルト21を介して樹脂パッド24に当接している。この加圧ローラ22と定着ベルト21とが圧接する箇所では、加圧ローラ22の弾性層22bが押しつぶされることで、所定の幅のニップ部Nが形成されている。
【0029】
加圧ローラ22は、プリンタ本体に設けられているモータ等の駆動源からギヤを介して駆動力が伝達され、図2中の矢印「B1」で示す方向に回転駆動する。加圧ローラ22が回転駆動されると、その駆動力がニップ部Nで定着ベルト21に伝達され、定着ベルト21が図2中の矢印「B2」で示す方向に従動回転するようになっている。
【0030】
本実施形態では、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。その場合、加圧ローラ22の内部にハロゲンヒータ等の加熱源を配設してもよい。また、弾性層が無い場合は、熱容量が小さくなり定着性が向上する。また、弾性層22bはソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ22の内部に加熱源が無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト21の熱が奪われにくくなるのでより望ましい。
【0031】
加熱装置23は、加熱源として第一ハロゲンヒータ23Aと第二ハロゲンヒータ23Bとを備えており、両端部が定着装置20の側板に固定されている。それぞれのハロゲンヒータ(23A,23B)は、プリンタ100本体に配置された電源部により出力制御されて発熱する。出力制御は、温度検知センサによる定着ベルト21の表面温度の検知結果に基づいて行われる。
【0032】
このようなハロゲンヒータ(23A,23B)の出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度に維持できるようになっている。また、定着ベルト21を加熱する加熱源として、ハロゲンヒータ以外に、IH(電磁誘導)、抵抗発熱体、またはカーボンヒータ等を用いてもよい。
【0033】
樹脂パッド24の役割のひとつは、断熱でありステー25への定着ベルト21の熱吸収を抑制してウォームアップタイムやTEC(Typical Electricity Consumption(標準的な電力消費))値の増加を抑制する。また、樹脂パッド24の役割の二つ目は、加圧ローラ22の加圧力を受けてニップ部Nの形状を決める部材である。このため、定着ベルト21の軸方向または加圧ローラ22の軸方向に平行して配置され、樹脂パッド24の支持部材として用いられるステー25によって固定支持されている。
【0034】
このように、樹脂パッド24をステー25で支持することにより、加圧ローラ22による圧力で樹脂パッド24に撓みが生じるのを抑制し、加圧ローラ22の軸方向に平行して均一なニップ幅が得られるようにしている。
【0035】
なお、ステー25は、樹脂パッド24の撓み防止機能を満足するために、ステンレス鋼や鉄等の機械的強度が高い金属材料で形成することが望ましいが、ステー25を樹脂製とすることも可能である。
【0036】
また、本実施形態では、ニップ部Nの形状が平坦状であるが、凹形状やその他の形状としてもよい。ニップ部Nの形状が凹形状の場合は、用紙Pの先端の排出方向が加圧ローラ22寄りになり、分離性が向上するので、ジャムの発生が抑制される。
【0037】
また、樹脂パッド24の表面には、潤滑剤が含浸された摺動部材たる摺動シート28が貼り付けられている。摺動シート28は、耐熱性を有する微細なフッ素系繊維を織り込んだシートで、潤滑剤を毛細管現象によって吸収させている。
【0038】
潤滑剤としては、例えばシリコーンオイルが挙げられ、耐熱性及び耐久性及び潤滑能力としては望ましく、使用条件により様々な粘度のものを選択することが可能なため好ましい。その他の潤滑剤としては、フッ素系・シリコン系のグリスも挙げられる。
【0039】
反射部材26には、金属部材としての高純度のアルミ材をベースとして高反射率、たとえば反射率95%以上を得られるようにした表層に複数の増反射膜や保護膜を形成した高輝度アルミなどが用いられる。また構成によってはアルミ板の上に銀を蒸着させて、さらに反射率を向上させたものなどを用いてもよい。
【0040】
本実施形態の反射部材26は、輻射熱を定着ベルト側へ熱を反射させる反射部26aと、加圧ローラ22の加圧力を受ける加圧受け部26bと、遮蔽部材29が接触する接触部26cとを有している。反射部26aは、加熱装置23とステー25との間に配置されている。加圧受け部26bは、摺動シート28と樹脂パッド24とに挟まれる形で配設されている。
【0041】
樹脂パッド24の定着ベルト21との対向面には、反射部材26の加圧受け部26bを嵌め込む溝部24aが設けられている。後述する図6に示すように、幅方向(図2の紙面に直交する方向)の両側に接触部26cを設ける関係で、加圧受け部26bの幅方向長さが、樹脂パッド24の幅方向長さよりも短くなっている。樹脂パッド24に加圧受け部26bが嵌まる溝部24aを設けることで、樹脂パッド24と加圧受け部26bとの間で段差が生じるのを抑制することができる。これにより、幅方向両側のニップ圧が中央よりも低くなるのを抑制でき、ニップ圧を幅方向で不均一となるのを抑制することができる。
【0042】
また、樹脂パッド24の用紙搬送方向の上流側端部付近には、反射部材26を保持する保持孔24bが設けられている。反射部材26の加圧受け部26bをこの保持孔24bに通し、反射部26aと加圧受け部26bとを熱的に接続する接続部26dをこの保持孔24bに位置させる。これにより、反射部材26は、樹脂パッド24に保持され、ステー25等に他の部材には非接触にできる。
【0043】
定着ベルト21と加熱装置23との間には、ハロゲンヒータ(23A,23B)から定着ベルト21の非通紙領域への輻射熱を遮蔽する遮蔽位置と、この遮蔽位置から退避した退避位置との間で移動可能な遮蔽部材29が配設されている。これにより、特に、連続通紙時の定着ベルト21の非通紙領域における過剰な温度上昇を抑制することができ、定着ベルト21の熱による劣化や損傷を防止することができる。
【0044】
なお、遮蔽部材29の遮蔽位置と退避位置との間での移動動作は、制御部によって制御された駆動手段である駆動装置が有する駆動源からの駆動力によって行われる。
【0045】
遮蔽部材29は、厚さ0.1[mm]~1.0[mm]の金属板を、定着ベルト21の内周面に沿った円弧状の断面形状に形成して構成されている。また、遮蔽部材29は、定着ベルト21の周回方向に移動可能となっている。また、遮蔽部材29の退避位置から遮蔽位置への移動方向の下流側端部には、反射部材26の接触部26cに接触する内側に折り曲げられた被接触部29aが設けられている。
【0046】
本実施形態では、定着ベルト21の周回方向の領域において、加熱装置23が定着ベルト21に直接対向して加熱する直接加熱領域がある。熱遮蔽する必要がある場合は、遮蔽部材29を直接加熱領域の遮蔽位置に位置させる。一方、熱遮蔽を行わない場合は、直接加熱領域から退避したステー25の反射部材側と反対側の退避位置に遮蔽部材29を位置させる。
【0047】
また、遮蔽部材29は耐熱性を要するため、その素材には、耐熱温度が350[℃]以上の鉄や、SUS430などのステンレス鋼などの金属材料を用いている。また、遮蔽部材29の少なくともハロゲンヒータ23A,23Bに対向する側の表面の反射率は、反射部材26のハロゲンヒータ23A,23Bに対向する側の表面の反射率よりも低くするのが望ましい。
【0048】
また、遮蔽部材29に高熱伝導層を設け、遮蔽部材29の局所的な過昇温を抑制している。なお、遮蔽部材29に設ける高熱伝導層としては、例えば、銅系材料やアルミニウム系材料やニッケル系材料を用いて形成すれば良く、本実施形態では、銅とニッケルの複層メッキを施して高熱伝導層を形成している。
【0049】
図3は、遮蔽部材29の平面図である。
図3に示すように、遮蔽部材29は、両端にそれぞれ3つの段差部を有する形状に形成された遮蔽部48を有している。すなわち、各遮蔽部48は、第一遮蔽領域部48aと、第二遮蔽領域部48bと、第三遮蔽領域部48cとで構成されている。また、各遮蔽部48の第三遮蔽領域部48c同士は、連結部49を介して連結されている。また、第一遮蔽領域部48aの端部が内側に折り曲げれて、図2に示す被接触部29aが形成される。
【0050】
本実施形態では、第三遮蔽領域部48c間の幅「W1」が、小サイズ通紙幅に対応しており、第二遮蔽領域部48b間の幅「W2」が、中サイズ通紙幅に対応しており、第一遮蔽領域部48a間の幅「W3」が、大サイズ通紙幅に対応している。本実施形態では、小サイズ通紙幅は、「はがき」の幅に対応しており、中サイズ通紙幅が、「B4サイズ」の幅に対応している。また、大サイズ通紙幅が、「A3サイズ」の幅に対応している。なお、通紙幅に対応する用紙サイズの例はこれに限定されるものではない。
【0051】
図4は、各ハロゲンヒータ(23A,23B)の発熱部を示す図である。
本実施形態では、用紙サイズに応じて直接加熱領域を変更するため、ハロゲンヒータ23A,23Bの発熱部の長さや発熱部の長手方向(用紙幅方向)の配設位置を異ならせている。すなわち、図4に示すように、第一ハロゲンヒータ23Aの発熱部231aは、長手方向中央部側に配設され、第二ハロゲンヒータ23Bの発熱部231bは、長手方向両端部側にそれぞれ配設されている。第一ハロゲンヒータ23Aの発熱部は、小サイズ通紙幅W1以上、中サイズ通紙幅W2未満の範囲に対応している。また、第二ハロゲンヒータ23Bの発熱部は、中サイズ通紙幅W2以上で、大サイズ通紙幅W3を含む範囲に配設されている。
【0052】
用紙幅が、「はがき」の幅以下の小サイズ用紙に対応する第三遮蔽領域部48c間の幅「W1」は、第一ハロゲンヒータ23Aの発熱部の長さよりも小さい範囲となっている。そのため、小サイズ用紙を通紙する場合、第一ハロゲンヒータ23Aのみを発熱させる。しかし、この場合、第一ハロゲンヒータ23Aで加熱される定着ベルト21の範囲は、小サイズ通紙幅W1を超えてしまうので、遮蔽部材29を小サイズ通紙幅に対応する遮蔽位置に移動させる。
【0053】
具体的には、図5に示す小サイズ対応遮蔽位置に遮蔽部材29を移動させる。この小サイズ対応遮蔽位置は、第三遮蔽領域部48cまでが加熱装置23の直接加熱領域に位置する。これにより、小サイズ通紙幅W1の端部近傍から外側の範囲を第一、第二および第三遮蔽領域部により遮蔽することができる。よって、少なくとも、定着ベルト21の非通紙領域が第一、第二および第三遮蔽領域部により遮蔽された部分を通過するときは、ハロゲンヒータにより直接加熱されることがない。その結果、遮蔽部材29で遮蔽しない場合に比べて、非通紙領域において定着ベルト21の温度上昇を抑えることができる。
【0054】
次に、用紙幅が、「はがき」の幅を超え、「B4サイズ」の幅以下の中サイズ用紙を通紙する場合は、第一ハロゲンヒータ23Aと第二ハロゲンヒータ23Bとの両方を発熱させる。この場合、第一ハロゲンヒータ23Aと第二ハロゲンヒータ23Bとを発熱させると、定着ベルト21の加熱される範囲が中サイズ通紙幅W2を超えてしまう。
【0055】
そのため、中サイズ用紙を通紙する際には、遮蔽部材29を中サイズ通紙幅に対応する中サイズ対応遮蔽位置へ移動させる。すなわち、第三遮蔽領域部48cは、直接加熱領域から退避させ、第一遮蔽領域部48aと第二遮蔽領域部48bとを直接加熱領域に位置させる。具体的には、図5に示す状態から、第三遮蔽領域部48cの長さ分、遮蔽部材29を図中時計回りに回動させる。
【0056】
これにより、中サイズ通紙幅W2の端部近傍から外側の範囲を、第一遮蔽領域部48aや第二遮蔽領域部48bとによって遮蔽することができる。従って、少なくとも、定着ベルト21の非通紙領域が、第二遮蔽領域部48bや第一遮蔽領域部48aにより遮蔽された部分を通過するときは、ハロゲンヒータ(23A,23B)により直接加熱されることがない。よって、遮蔽部材29で遮蔽しない場合に比べて、非通紙領域において定着ベルト21の温度上昇を抑えることができる。
【0057】
「B4サイズ」の幅を超える大サイズ用紙を通紙する場合は、第一ハロゲンヒータ23Aと第二ハロゲンヒータ23Bとの両方を発熱させる。この場合、第一ハロゲンヒータ23Aと第二ハロゲンヒータ23Bとを発熱させると、定着ベルト21の加熱される範囲が大サイズ通紙幅W3を超えてしまう。
【0058】
そのため、大サイズ用紙を通紙する際には、遮蔽部材29を大サイズ用紙に対応する大サイズ対応遮蔽位置へ移動させる。すなわち、第二遮蔽領域部48b及び第三遮蔽領域部48cを直接加熱領域から退避させ、第一遮蔽領域部48aのみを、直接加熱領域に位置するように移動させる。具体的には、図5に示す状態から、第三遮蔽領域部48cと第二遮蔽領域部48bの長さ分、遮蔽部材29を図中時計回りに回動させる。
【0059】
これにより、少なくとも、定着ベルト21の非通紙領域が、第一遮蔽領域部48aにより遮蔽された部分を通過するときは、ハロゲンヒータ(23A,23B)により直接加熱されることがない。その結果、遮蔽部材29で遮蔽しない場合に比べて、非通紙領域において定着ベルト21の温度上昇を抑えることができる。
【0060】
また、A3ノビなど、本プリンタが通紙可能な最大サイズの用紙を通紙する際は、図2に示すように、第三遮蔽領域部48cも直接加熱領域から退避した退避位置に位置させる。
【0061】
図6は、反射部材26の概略斜視図である。
反射部材26は、板金であり、板金を折り曲げ加工することで、反射部26aと加圧受け部26bと、接触部26cと、接続部26dとを形成する。接触部26cは、幅方向両端に設けられ、図5に示すように、遮蔽部材29が、小サイズ対応遮蔽位置に位置するときに、第三遮蔽領域部48cの先端を折り曲げて形成された被接触部29aが、ニップ部Nから離れた位置で接触する。
【0062】
図6に示すように、反射部26aをニップ部側(加圧ローラ側)に折り曲げて形成する接続部26dの形状を少し変更するだけで、ニップ部から離れた位置で遮蔽部材29に接触する接触部26cが形成される。
【0063】
反射部材26の反射率は、約95~98%であり、加熱装置23の輻射熱を100%反射できるわけでなく、反射部材自身もわずかに輻射熱を吸収するため、次第に温度上昇していく。特に、大量の連続通紙を行った場合などは、加圧受け部26bを有さない反射部材においては、300℃~400℃程度まで反射部材が温度上昇していた。反射部材26にある一定以上の熱負荷が加えられると反射部材26のアルミや銀層が変色を起こしてしまう。そうなると反射率が低下して本来の性能を出せないだけでなく、最悪の場合は安全性問題に発展する。よって従来はその温度域まで到達しないような生産性までしか出すことはできず、マシンの生産性向上に対してはボトルネックとなっていた。
【0064】
これに対し、本実施形態では、反射部材26は、樹脂パッド24と摺動シート28の間で、加圧ローラ22からの加圧力を受ける領域に延在された加圧受け部26bを有している(図2も参照)。反射部材26は、上述したように熱伝導性の良い金属部材としてのアルミで構成されているため、反射部26aで吸収された熱は、すばやく部品全体に伝導する。そして、加圧受け部26bから、摺動シート28を介して定着ベルト21へ反射部材26の熱が移動し、反射部材26の温度上昇を抑制することができる。
【0065】
定着ベルト21へ移動した反射部材26の熱は、用紙P等に奪われた定着ベルト21の熱の補充に用いられ、定着ベルト21の温度低下が抑制される。これにより、加熱装置23の点灯時間の短縮化を図ることができ、消費電力の低減を図ることができる。
【0066】
また、加圧受け部26bは、図2に示すように定着ベルト21の加圧ローラ22の加圧力を受ける部分であるニップ部に設けている。これにより、加圧受け部26bの摺動シートを介した定着ベルト21への密着性が上がり、定着ベルト21への熱の伝達性を向上させることができ、反射部材26の排熱効率を高めることができる。さらに、反射部材26は、熱伝導性が良好な金属部材であるため、熱を用紙の幅方向に良好に拡散することができる。これにより、反射部材26の熱を、定着ベルト21の幅方向において温度の低い部分へ良好に供給できる。また、定着ベルト21の幅方向において温度の高い部分から熱を奪い、定着ベルト21の幅方向において温度の低い部分へ供給することができる。その結果、定着ベルト21の温度を幅方向で均一にする均熱の効果も得ることができる。
【0067】
また、加圧受け部26bは、ニップ部Nの用紙搬送方向一端から他端まで延びている。これにより、加圧受け部26bの摺動シート28を介して定着ベルト21に密着する密着面積を十分に確保することができ、反射部材26の排熱効率をより一層高めることができる。
【0068】
また、反射部材26は、上述したように、樹脂パッド24に保持され、ステー25等とはクリアランスを設けて非接触となっている。これによって、熱の有効利用の観点では不要となる、反射部材26からステー25への熱伝達を防止することができる。
【0069】
以上の構成により、反射部材26の温度上昇を防止し、かつ、反射部材26の熱を有効利用でき、電力消費も抑えることができる定着装置を得ることができる。
【0070】
加圧受け部26bに摺動性能に優れたコーティングを施して、加圧受け部26bを定着ベルト21の内周面に接触させるようにした場合は、以下の不具合が予測される。すなわち、上記摺動性能に優れたコーティング材が、反射部材26の反射部26aに付着すると、反射率が低下するおそれがある。そのため、例えば、反射部26aにマスキング等を施すなどして、反射部26aに摺動性能に優れたコーティング材が付着しないようにする必要がある。反射部26aにマスキングを施す場合は、マスキングを施す工程、マスキングを剥がす工程、反射部26aに付着したマスキングの粘着剤を除去する工程等が必要となる。また、これらの工程を機械等で行うには、難易度が高く、できたとしても高コストになるという不具合が予想される。
【0071】
一方、本実施形態のように、加圧受け部26bと定着ベルト21との間に摺動シート28を設けることで、反射部材26に定着ベルト21の内周面に対する良好な摺動性を有する機能を備える必要が無くなる。これにより、加圧受け部26bに摺動性能に優れたコーティングを施す必要がなく、製作難度およびコストの増加を抑制できる。
【0072】
また、遮蔽部材29は、加熱装置23からの輻射熱を遮蔽することで加熱される。そのため、複数枚の用紙を連続してニップ部に通紙する連続通紙時などに、遮蔽部材の温度が上がり過ぎ(過昇温)、300℃前後の高温になる。この過昇温状態が長時間続くと、遮蔽部材29の遮蔽面が黄~茶色に変色して反射率が下がり、輻射熱を吸収しやすくなる。その結果、この変色した部分の温度が高温になって変形するおそれがある。よって、遮蔽部材29の温度が300℃前後にならないように、マシンの生産性を調整する必要がある。
【0073】
特に、小サイズ用紙の連続通紙では、上述したように、第一~第三遮蔽領域部48a~48cが直接加熱領域に位置し、これら3つの遮蔽領域で加熱装置23の輻射熱を遮蔽するため、遮蔽部材29が過昇温になりやすい。
【0074】
そこで、本実施形態では、反射部材26に接触部26cを設け、図5に示すように、遮蔽部材29が小サイズ対応遮蔽位置に位置するとき、遮蔽部材29の被接触部29aが反射部材26の接触部26cに接触するように構成している。これにより、遮蔽部材29の熱を反射部材26に逃がすことができ、連続通紙時の遮蔽部材29の温度上昇を抑制することができる。その結果、遮蔽部材29の遮蔽面が変色するのを抑制することができる。また、マシンの生産性を、遮蔽部材29が反射部材26に接触しないものに比べて上げることができる。
【0075】
また、反射部材26へ移動した遮蔽部材29の熱は、加圧受け部26bから定着ベルト21へ付与される。このように、本実施形態では、反射部材26の熱と遮蔽部材29の熱とを、加圧受け部26bを介して定着ベルト21に付与することができ、定着ベルト21の温度低下を良好に抑制することができる。これにより、加熱装置23の点灯時間の短縮化を図ることができ、消費電力の低減を図ることができる。また、加熱装置23の点灯時間の短縮化が図られることで、反射部材26および遮蔽部材29の温度上昇も抑えることができ、これらの変色や変形も良好に抑えることができる。
【0076】
特許文献1では、遮蔽部材29の両側を定着ベルト21の表面移動方向に延伸させ、遮蔽部材29が小サイズ対応遮蔽位置に位置するとき、ニップ部Nに配置された均熱部材に接触させるようにしている。特許文献1では、ニップ部Nに配置された均熱部材に遮蔽部材を接触させるために遮蔽部材29が長くなり、その分、遮蔽部材29の移動範囲が長くなってしまう。その結果、定着ベルト内に遮蔽部材29が移動可能なスペースを多く確保する必要が生じ、装置の大型化や装置の複雑化に繋がるおそれがある。
【0077】
これに対して、本実施形態では、図6に示すように、反射部26aのニップ部側の用紙搬送方向に平行な部分の両側をそのまま延ばすことで、容易にニップ部から離れた位置に接触部26cを設けることができる。これにより、遮蔽部材29を定着ベルト21の表面移動方向に延伸させることなく、遮蔽部材29が小サイズ対応遮蔽位置に位置するときに接触部26cに接触させることができる。これにより、遮蔽部材29の移動範囲が長くなるのを抑制することができ、装置の大型化や装置の複雑化を抑制することができる。
【0078】
また、中サイズ用紙を通紙するときや大サイズ用紙を通紙するときは、小サイズ遮蔽位置よりも退避位置側に遮蔽部材29が位置し、被接触部29aは、接触部26cに非接触である。そのため、中サイズ用紙連続通紙時や大サイズ用紙連続通紙時に、遮蔽部材29が過昇温となるおそれがある。
【0079】
従って、中サイズ用紙連続通紙時や大サイズ用紙連続通紙時のときは、規定時間経過したら、用紙搬送を一時停止する。次に、遮蔽部材29を図5に示す小サイズ遮蔽位置へ移動させ、所定時間、被接触部29aを接触部26cに接触させて遮蔽部材29の熱を反射部材26へ逃がす。そして、所定時間経過後に、再び、遮蔽部材29を用紙サイズに対応する遮蔽位置へ位置させ、定着ベルト21の用紙サイズ対応範囲の温度が規定の温度になったら用紙搬送を再開する。これにより、中サイズ用紙連続通紙時や大サイズ用紙連続通紙時のときも、遮蔽部材29の温度上昇を抑制できる。
【0080】
なお、遮蔽部材29の温度を検知する温度センサを設け、遮蔽部材29の温度が規定の温度以上になったことを温度センサが検知したら、遮蔽部材29を図5に示す小サイズ遮蔽位置へ移動させるようにしてもよい。
【0081】
また、上述では、遮蔽部材29の被接触部29aおよび反射部材26の接触部26cを、幅方向両端に設けているが、図7に示すように、遮蔽部材29の被接触部29aおよび反射部材26の接触部26cを、幅方向全域に設けてもよい。
【0082】
図7(a)に示すように、遮蔽部材29については、段差状の貫通孔を形成することで、幅方向に長い被接触部29aを形成することができる。一方、反射部材26については、図7(b)に示すように、反射部材26と同材料からなる板状部材261を、反射部材26に取り付けることで、幅方向に長い被接触部29aを形成することができる。
【0083】
遮蔽部材29の被接触部29aおよび反射部材26の接触部26cを、幅方向全域に設けることで、遮蔽部材29の被接触部29aおよび反射部材26の接触部26cが幅方向両端にしかないものに比べて、以下の利点を得ることができる。すなわち、被接触部29aと接触部26cとの接触面積を増やすことができ、良好に遮蔽部材29の熱を反射部材26へ移動させることができるという利点である。
【0084】
一方、遮蔽部材29の被接触部29aおよび反射部材26の接触部26cを幅方向両端に設ける構成では、遮蔽部材29の被接触部29aおよび反射部材26の接触部26cを、幅方向全域に設ける場合に比べて、反射部材および遮蔽部材を容易に作成できるという利点がある。
【0085】
次に、変形例について説明する。
【0086】
[変形例1]
図8は、変形例1の定着装置の概略構成図であり、図8(a)は、遮蔽部材が退避位置に位置している状態示しており、図8(b)は、遮蔽部材が小サイズ遮蔽位置に位置している状態を示している。
この変形例1では、加圧受け部26bの用紙搬送方向下流側端部を延伸させ、ニップ部Nから離れた位置に接触部26cを設け、遮蔽部材29が退避位置に位置しているときに接触部26cに接触させるように構成したものである。
【0087】
この変形例1では、A3ノビなど、本プリンタが通紙可能な最大サイズの用紙を連続通紙するときは、遮蔽部材29は、退避位置に位置するため常時、反射部材26に接触する。これにより、本プリンタが通紙可能な最大サイズの用紙を連続通紙するときは、反射部材26の熱を定着ベルト21のみならず、遮蔽部材29へ移動させることができる。これにより、反射部材26の温度上昇を良好に抑制でき、本プリンタが通紙可能な最大サイズの連続プリントの生産性を高めることが可能となる。
【0088】
遮蔽部材29が、図8(b)に示す小サイズ遮蔽位置等の通紙する用紙サイズに対応する遮蔽位置に位置し、遮蔽部材29が加熱装置23の輻射熱により温度上昇したときは、用紙の搬送を一時停止する。そして、遮蔽部材29を退避位置へ移動させて遮蔽部材29の定着ベルトの表面移動方向下流側端部に設けられた被接触部29aを接触部26cに接触させる。これにより、遮蔽部材29の熱が反射部材26へ移動し、遮蔽部材29の温度が低下する。所定時間経過したら、再び、遮蔽部材29を通紙する用紙サイズに対応する遮蔽位置へ移動させて、用紙搬送を再開する。
【0089】
また、この変形例2も、加圧受け部26bの用紙搬送方向下流側端部を延伸させて、ニップ部Nから離れた位置に接触部26cを設けている。従って、実施形態と同様、遮蔽部材の移動範囲が長くなるのを抑制することができ、装置の大型化や装置の複雑化を抑制することができる。
【0090】
[変形例2]
図9は、変形例2の定着装置の概略構成図であり、図9(a)は、遮蔽部材29が退避位置に位置している状態示しており、図9(b)は、遮蔽部材29が小サイズ遮蔽位置に位置している状態を示している。
この変形例2では、図9(b)に示すように、反射部材26に、遮蔽部材29が小サイズ遮蔽位置に位置するときに遮蔽部材29に接触する第一接触部26c1を設けている。また、図9(a)に示すように遮蔽部材29が退避位置に位置するときに遮蔽部材29に接触する第二接触部26c2を設けている。
【0091】
第一接触部26c1は、図2に示した実施形態の定着装置と同様にして設けられ、第二接触部26c2は、図7に示した変形例1と同様にして設けられる。そして、遮蔽部材29の定着ベルト周回方向の両端を内側に折り曲げて、第一接触部26c1に接触する第一被接触部29a1と、第二接触部26c2に接触する第二被接触部29a2を設けている。
【0092】
この変形例2では、A3ノビなど、本プリンタが通紙可能な最大サイズの用紙を連続通紙するとき遮蔽部材29は退避位置に位置するため、遮蔽部材の第二被接触部29a2が常時、反射部材26の第二接触部26c2に接触する。これにより、変形例1と同様、通紙可能な最大サイズの用紙を連続通紙するときの反射部材26の温度上昇を良好に抑制でき、本プリンタが通紙可能な最大サイズの連続プリントの生産性を高めることが可能となる。
【0093】
一方、小サイズ用紙を連続通紙するときは、遮蔽部材29の第一被接触部29a1が常時、反射部材26の第一接触部26c1に接触する。これにより、実施形態と同様に、遮蔽部材29の熱を反射部材26に移動させることができ、遮蔽部材29の過昇温を抑制することができる。また、この変形例2では、小サイズ用紙を連続通紙するときは、変形例1とは異なり、遮蔽部材29の熱を反射部材26に移動させるため、用紙搬送を一時停止して退避位置へ移動させる必要がない。これにより、変形例1に比べて、小サイズ用紙連続通紙時の生産性の低下を抑制することができる。
【0094】
また、中サイズ用紙を連続通紙するときや大サイズ用紙を連続通紙するときは、実施形態と同様に、遮蔽部材29が高温となったら、用紙搬送を一時停止し、遮蔽部材29を小サイズ遮蔽位置へ移動させ、第一被接触部29a1を第一接触部26c1に接触させる。そして、第一被接触部29a1から第一接触部26c1へ遮蔽部材の熱が移動して、遮蔽部材の温度が低下したら、再び、遮蔽部材を通紙する用紙サイズに対応する遮蔽位置へ移動させ、搬送を再開する。
【0095】
この変形例2では、中サイズ用紙を連続通紙するときや大サイズ用紙を連続通紙する場合において、遮蔽部材29が高温となったときは、遮蔽部材を小サイズ遮蔽位置に移動すればよい。従って、変形例1の退避位置へ移動させる場合に比べて、反射部材に接触させるときの遮蔽部材の移動量を少なくできる。これにより、変形例1に比べて、連続搬送の一時停止期間を短くすることができ、生産性の低下を抑制することができる。
【0096】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0097】
例えば、上述では、定着ベルト21と加圧受け部26bとの間に配置される摺動部材として、フッ素系繊維を織り込んだシートで、潤滑剤を毛細管現象によって吸収している摺動シートを用いている。しかし、摺動部材を定着ベルトとの接触面に摺動性能に優れたコーティングを施した金属部材としてもよい。これによれば、摺動シートよりも熱伝導性を高めることができ、加圧受け部26bから伝達された反射部材26および遮蔽部材の熱を、効率よく定着ベルト21へ排熱することができる。金属材料としては、熱伝導性の高いアルミや銅などが好ましい。
【0098】
一方、摺動部材を摺動シートとすることで、装置立ち上げ時などの冷間加熱の際に摺動部材が定着ベルトから熱を奪うのを、摺動部材を金属材料で構成する場合に比べて抑制することができる。これにより、すばやく、定着ベルト21の温度を規定温度にできるという利点がある。
【0099】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
回転する定着ベルト21などの定着部材と、定着部材の外周面に当接して形成されたニップ部Nを通過する用紙Pなどの記録材を加圧する加圧ローラ22などの加圧部材と、定着部材の内側に配置された加熱装置23などの熱源と、定着部材の内側に、定着部材に沿って移動可能に設けられ、定着部材へ向かう熱源の輻射熱を遮蔽する遮蔽部材29とを備えた定着装置20において、熱源の輻射熱を定着部材の内周面に向けて反射する反射部26aと、加圧部材の加圧力を定着部材を介して受ける加圧受け部26bと、遮蔽部材29が接触する接触部26cとを有する反射部材26を備えた。
これによれば、定着部材を介して加圧部材の加圧力を受ける加圧受け部を反射部材に設けることで、反射部材が温度上昇した場合に加圧受け部から反射部材の熱を、定着部材に移動させることができ、反射部材の過昇温を抑制することができる。また、反射部材に遮蔽部材に接触する接触部を設けることで、遮蔽部材の熱を反射部材へ移動させ、反射部材の加圧受け部から定着部材へ移動させることができ、遮蔽部材の過昇温も抑制できる。また、加圧受け部から定着部材へ反射部材および遮蔽部材の熱を移動させることで、遮蔽部材の熱のみが定着部材へ移動する特許文献1の構成に比べて、定着部材の温度低下を抑制でき、規定温度に維持するための熱源の点灯時間の短縮化を図ることができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0100】
(態様2)
態様1において、遮蔽部材29は、定着ベルト21などの定着部材へ向か加熱装置23などの熱源の輻射熱を遮蔽する遮蔽位置と、遮蔽位置から退避した退避位置との間を移動可能であり、反射部材26の接触部26cは、遮蔽部材29が遮蔽位置に位置するときに遮蔽部材29に接触する。
これによれば、実施形態で説明したように、ニップ部Nから離れた位置に設けられた反射部26aとニップ部Nに位置して加圧ローラ22などの加圧部材の加圧力を受ける加圧受け部26bとをつなぐ反射部材の接続部26dの一部を接触部26cとして用いることが可能となる。また、反射部材26の接続部26dに接触部26cを設けることで、ニップ部Nから離れた位置で接触部26cに遮蔽部材29を接触させることが可能となる。ニップ部Nから離れた位置で接触部26cに遮蔽部材29を接触させることで、以下の利点を得ることができる。すなわち、ニップ部Nに位置する均熱部材に遮蔽部材29を接触させるために、遮蔽部材の遮蔽部の定着部材幅方向両端から定着部材の表面移動方向下流側に延伸させた延伸部を設けた特許文献1に比べて、遮蔽部材の全体の定着部材周回方向長さを短くできる。よって、短くなった分だけ、遮蔽部材29が定着部材に沿って退避位置と遮蔽位置との間を移動するための定着部材周回方向のスペースを短くでき、装置の大型化や、装置構造の複雑化を抑制することができるという利点である。
【0101】
(態様3)
態様1または2において、遮蔽部材29は、遮蔽部材29は、定着ベルト21などの定着部材へ向か加熱装置23などの熱源の輻射熱を遮蔽する遮蔽位置と、遮蔽位置から退避した退避位置との間を移動可能であり、反射部材26の接触部26cは、遮蔽部材29が退避位置に位置するときに遮蔽部材29に接触する。
これによれば、変形例1で説明したように、遮蔽部材29が退避位置に位置する画像形成装置が通紙可能な最大サイズの用紙などの記録材を連続通紙するとき、遮蔽部材を反射部材26に接触させることができる。よって、画像形成装置が通紙可能な最大サイズの記録材を連続通紙するときは、反射部材26の熱を定着ベルト21のみならず、遮蔽部材29へ移動させることができる。これにより、反射部材26の温度上昇を良好に抑制でき、画像形成装置が通紙可能な最大サイズの連続プリントの生産性を高めることが可能となる。
【0102】
(態様4)
態様3において、加圧受け部26bは、ニップ部Nの用紙Pなどの記録材の搬送方向の下流側端部まで延びており、接触部26cを、加圧受け部26bの搬送方向の下流側端部から延伸させて設けた。
これによれば、ニップ部から離れた位置に接触部を設けることができ、ニップ部近傍に接触部を設けたものに比べて、遮蔽部材29を短くすることができる。これにより、定着部材内の遮蔽部材29が移動するためのスペースを低減することができ、装置の大型化や、装置構造の複雑化を抑制することができる。
【0103】
(態様5)
態様1乃至4いずれかにおいて、加圧受け部26bと定着ベルト21などの定着部材との間に加圧受け部26bの表面よりも定着部材の内周面に対する摺動性が高い摺動シート28などの摺動部材を設けた。
これによれば、実施形態で説明したように、反射部材26の加圧受け部26bを定着ベルト21など定着部材の内周面に接触させる場合に比べて、定着部材の摺動抵抗を低減できる。これにより、定着部材を回転させるための回転トルクの上昇を抑制でき、かつ、定着部材の内周面の摩耗を抑制できる。
【0104】
(態様6)
態様1乃至5いずれかにおいて、遮蔽部材29の端部の接触部26cに接触する被接触部29aが、内側に折り曲げられて形成されている。
これによれば、接触部26cとの接触面積を容易に大きくすることができ、遮蔽部材29の熱を効率的に反射部材26に逃がすことができる。
【0105】
(態様7)
用紙などの記録材に画像を形成する画像形成部と、記録材に形成された画像を前記記録材に定着させる定着装置20とを備えた画像形成装置において、定着装置20として、態様1乃至6いずれかの定着装置を用いた。
これによれば、マシンの生産性を上げることができ、かつ、装置の省エネルギー化を図ることができる。
【符号の説明】
【0106】
20 :定着装置
21 :定着ベルト
22 :加圧ローラ
22a :芯金
22b :弾性層
22c :離型層
23 :加熱装置
23A :第一ハロゲンヒータ
23B :第二ハロゲンヒータ
24 :樹脂パッド
24a :溝部
24b :保持孔
25 :ステー
26 :反射部材
26a :反射部
26b :加圧受け部
26c :接触部
26c1 :第一接触部
26c2 :第二接触部
26d :接続部
28 :摺動シート
29 :遮蔽部材
29a :被接触部
29a1 :第一被接触部
29a2 :第二被接触部
48 :遮蔽部
48a :第一遮蔽領域部
48b :第二遮蔽領域部
48c :第三遮蔽領域部
49 :連結部
50Bk :クリーニング装置
100 :プリンタ
231a :発熱部
231b :発熱部
261 :板状部材
N :ニップ部
P :用紙
W1 :小サイズ通紙幅
W2 :中サイズ通紙幅
W3 :大サイズ通紙幅
【先行技術文献】
【特許文献】
【0107】
【特許文献1】特開2016-99590号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9