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特開2024-95232メス型端子、コネクタ、バスバー、端子付き電線、コネクタ付電線およびワイヤーハーネス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095232
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】メス型端子、コネクタ、バスバー、端子付き電線、コネクタ付電線およびワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/187 20060101AFI20240703BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20240703BHJP
   H01R 4/58 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H01R13/187 B
H01R13/03 D
H01R4/58 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212363
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】和田 卓十
(57)【要約】
【課題】バネ部材の表面に形成される金属被覆層の適正化を図ることで、折り曲げ加工性を格段に向上させた、メス型端子を提供する。
【解決手段】メス型端子10は、第1金属材料からなりオス型端子と電気的に接続されるバネ部材30と、第2金属材料からなりバネ部材30と電気的に接続される基台部20とを有する端子本体15を備え、基台部20は、オス型端子の挿入空間Sを隔てて配置された一対の側壁21を有し、バネ部材30は、側壁21の内面21aと外面21bにそれぞれ対向する内板部31と外板部32と、側壁21の開口端面21cに対向し、内板部31と外板部32を連結する第1連結部33とを有し、第1連結部33は、側壁21の開口端部21dの形状に応じた屈曲部分33aを有し、バネ部材30は、内板部31の外面31aを被覆する第3金属材料からなる第1金属被覆層35を有し、かつ、屈曲部分33aは、被覆されずに外面33bが露出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属材料からなり、オス型端子と電気的に接続されるバネ部材、及び、
第2金属材料からなり、前記バネ部材と電気的に接続される基台部を有する端子本体
を備え、
前記基台部は、前記オス型端子の一部が挿入可能な挿入空間を隔てて配置された一対の側壁を有し、
前記バネ部材は、
前記基台部を構成する前記一対の側壁のうちの少なくとも一方の側壁に取り付けられ、かつ、
前記側壁の内面に対向する内板部と、
前記側壁の外面に対向する外板部と、
前記側壁の開口端面に対向し、前記内板部と前記外板部を連結する連結部と、
を有し、
前記連結部は、前記内板部および前記外板部とのそれぞれの境界位置に、前記側壁の開口端部の形状に応じて屈曲させて形成した屈曲部分を有し、
前記内板部は、前記挿入空間の開口位置から前記オス型端子の挿入方向に向かって延在し、前記オス型端子と接触するアーム状の接点バネ片を有し、
前記バネ部材は、前記内板部の、前記側壁に対向しない面である外面を被覆し、前記バネ部材を構成する前記第1金属材料とは異なる第3金属材料からなる第1金属被覆層を有し、かつ、前記連結部の前記屈曲部分は、被覆されずに外面が露出している、メス型端子。
【請求項2】
前記第1金属被覆層は、めっき層によって構成される、請求項1に記載のメス型端子。
【請求項3】
前記第1金属被覆層は、銀、銀合金、金または金合金によって構成される、請求項1に記載のメス型端子。
【請求項4】
前記バネ部材は、前記外板部の、前記側壁に対向しない面である外面を被覆する第2金属被覆層をさらに有する、請求項1に記載のメス型端子。
【請求項5】
前記第2金属被覆層は、めっき層によって構成される、請求項4に記載のメス型端子。
【請求項6】
前記第2金属被覆層は、ニッケルまたはニッケル合金によって構成される、請求項4に記載のメス型端子。
【請求項7】
前記バネ部材の前記外板部が、前記基台部の前記側壁の外面に導電可能に接合された接合部を有する、請求項1に記載のメス型端子。
【請求項8】
前記接合部は、前記バネ部材の前記外板部と前記基台部の前記側壁が直接接合される、請求項7に記載のメス型端子。
【請求項9】
前記接合部は、レーザー溶接部である、請求項7に記載のメス型端子。
【請求項10】
請求項1から9のうちいずれか1項に記載のメス型端子と、前記メス型端子を収容するコネクタハウジングとを有する、コネクタ。
【請求項11】
電線の端部に、請求項1から9のうちいずれか1項に記載のメス型端子が接続されてなる、端子付き電線。
【請求項12】
請求項11に記載の端子付き電線の端部に接続されたメス型端子が、コネクタハウジングに収容されてなる、コネクタ付き電線。
【請求項13】
請求項11に記載の端子付き電線を含む、ワイヤーハーネス。
【請求項14】
請求項12に記載のコネクタ付き電線を含む、ワイヤーハーネス。
【請求項15】
請求項1から9のうちいずれか1項に記載のメス型端子を端部に有する、バスバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メス型端子、コネクタ、バスバー、端子付き電線、コネクタ付電線およびワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に装備された電装機器は、被覆電線を束ねたワイヤーハーネスを介して、別の電装機器や電源装置と接続して電気回路を構成している。この際、ワイヤーハーネスと電装機器や電源装置とは、それぞれに装着したコネクタ同士で接続されている。より具体的には、メス型端子をメス側のコネクタハウジングのキャビティに装着し、オス型端子が装着されたオス側のコネクタハウジングと接続することにより、メス型端子の内部にオス型端子の一部が挿入されることで、端子同士を電気的に接続することができる。
【0003】
その際に用いられるメス型端子として、例えば特許文献1には、オス型端子と電気的に接続されるバネ部材と、該バネ部材に電気的に接続される導電性の基台部とを有する端子本体を設けたメス型端子が記載されている。このメス型端子では、基台部は、オス型端子の一部が挿入可能な挿入空間を隔てて配置されている一対の側壁を有し、バネ部材は、基台部における一対の側壁同士の間に配置され、バネ部材および側壁は、導電可能に溶接された導電溶接部によって固定されている。
【0004】
ここで、特許文献1には、メス型端子のバネ部材において、オス型端子の接続ブレードと接触する接点バネ片の一部の表面、またはバネ部材全体の表面に、導電性を向上するために、錫めっきなどのめっき処理が施されてもよい旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2022/118736号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のように、表面にめっき等の金属被覆層を形成したバネ部材は、例えば、板材にめっき処理を施した後に、所定の形状に打ち抜き、その後、折り曲げ加工することによって作製することができる。
【0007】
しかし、めっき処理を施した板材に折り曲げ加工を施すと、折り曲げ加工により屈曲させた屈曲部分に、金属被覆層が形成されていると、金属被覆層にシワが発生するおそれがあった。被覆層にシワが発生すると、表面外観を損なうため好ましくない。
【0008】
そのため、めっき処理を施した後の板材への折り曲げ加工は、金属被覆層にシワが入るのを防ぐために、複数回に分けて行なう必要があることから、折り曲げ加工性が劣るという問題がある。
【0009】
本発明は、バネ部材の表面に形成される金属被覆層の適正化を図ることにより、1回の折り曲げ加工でバネ部材に形状に成形したとしても、屈曲部分における表面外観を悪化させることがないため、折り曲げ加工性を格段に向上させることができる、メス型端子、コネクタ、バスバー、端子付き電線、コネクタ付電線およびワイヤーハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、メス型端子のバネ部材について、端子本体の側壁の内面に対向する内板部のうち、側壁に対向しない面である外面を被覆する層である、バネ部材を構成する材料と異なる材料からなる第1金属被覆層を有するとともに、側壁の開口端面に対向し、内板部と外板部とを連結する連結部の屈曲部分について、被覆されずに外面を露出させることで、メス型端子の材料となる板材に、第1金属被覆層を有する状態で折り曲げ加工を施しても、バネ部材の被覆層にシワが入らなくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
(1)第1金属材料からなり、オス型端子と電気的に接続されるバネ部材、及び、第2金属材料からなり、前記バネ部材と電気的に接続される基台部を有する端子本体を備え、前記基台部は、前記オス型端子の一部が挿入可能な挿入空間を隔てて配置された一対の側壁を有し、前記バネ部材は、前記基台部を構成する前記一対の側壁のうちの少なくとも一方の側壁に取り付けられ、かつ、前記側壁の内面に対向する内板部と、前記側壁の外面に対向する外板部と、前記側壁の開口端面に対向し、前記内板部と前記外板部を連結する連結部と、を有し、前記連結部は、前記内板部および前記外板部とのそれぞれの境界位置に、前記側壁の開口端部の形状に応じて屈曲させて形成した屈曲部分を有し、前記内板部は、前記挿入空間の開口位置から前記オス型端子の挿入方向に向かって延在し、前記オス型端子と接触するアーム状の接点バネ片を有し、前記バネ部材は、前記内板部の、前記側壁に対向しない面である外面を被覆し、前記バネ部材を構成する前記第1金属材料とは異なる第3金属材料からなる第1金属被覆層を有し、かつ、前記連結部の前記屈曲部分は、被覆されずに外面が露出している、メス型端子。
【0012】
(2)前記第1金属被覆層は、めっき層によって構成される、上記(1)に記載のメス型端子。
【0013】
(3)前記第1金属被覆層は、銀、銀合金、金または金合金によって構成される、上記(1)または(2)に記載のメス型端子。
【0014】
(4)前記バネ部材は、前記外板部の、前記側壁に対向しない面である外面を被覆する第2金属被覆層をさらに有する、上記(1)から(3)のうちいずれか1項に記載のメス型端子。
【0015】
(5)前記第2金属被覆層は、めっき層によって構成される、上記(4)に記載のメス型端子。
【0016】
(6)前記第2金属被覆層は、ニッケルまたはニッケル合金によって構成される、上記(4)または(5)に記載のメス型端子。
【0017】
(7)前記バネ部材の前記外板部が、前記基台部の前記側壁の外面に導電可能に接合された接合部を有する、上記(1)から(6)のうちいずれか1項に記載のメス型端子に記載のメス型端子。
【0018】
(8)前記接合部は、前記バネ部材の前記外板部と前記基台部の前記側壁が直接接合される、上記(7)に記載のメス型端子。
【0019】
(9)前記接合部は、レーザー溶接部である、上記(7)または(8)に記載のメス型端子。
【0020】
(10)上記(1)から(9)のうちいずれか1項に記載のメス型端子と、前記メス型端子を収容するコネクタハウジングとを有する、コネクタ。
【0021】
(11)電線の端部に、上記(1)から(9)のうちいずれか1項に記載のメス型端子が接続されてなる、端子付き電線。
【0022】
(12)上記(11)に記載の端子付き電線の端部に接続されたメス型端子が、コネクタハウジングに収容されてなる、コネクタ付き電線。
【0023】
(13)上記(11)に記載の端子付き電線を含む、ワイヤーハーネス。
【0024】
(14)上記(12)に記載のコネクタ付き電線を含む、ワイヤーハーネス。
【0025】
(15)上記(1)から(9)のうちいずれか1項に記載のメス型端子を端部に有する、バスバー。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、より少ない回数の折り曲げ加工でバネ部材を形成しても、被覆層にシワが入らないようにすることができ、それにより、折り曲げ加工による加工性と、被覆層へのシワによるクラックを防止できる、メス型端子、コネクタ、バスバー、端子付き電線、コネクタ付電線およびワイヤーハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本実施形態のメス型端子の斜視図である。
図2図2(a)は、図1に示すメス型端子を、端子本体の側壁の外面側から眺めたときの正面図であり、図1(b)は、図1のA-A線上で切断したときの概略断面図である。
図3図3は、図1に示すメス型端子を、図1の仮想平面Pで切断したときの断面図であって、図3(a)が、オス型端子の一部である平板状の接続ブレードを挿入する前の状態、図3(b)が、接続ブレードを挿入した状態を示す。
図4図4は、図1に示すメス型端子の分解斜視図である。
図5図5は、本実施形態のコネクタ付電線を示したものであって、図5(a)がコネクタ付電線を、コネクタハウジングの接続開口側から眺めたときの斜視図であり、図5(b)がコネクタハウジングの内部構造が見えるように示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明のいくつかの実施形態のメス型端子、コネクタ、バスバー、端子付き電線、コネクタ付電線およびワイヤーハーネスについて、以下で説明する。
【0029】
1.メス型端子について
図1は、本実施形態のメス型端子の斜視図である。また、図2(a)は、図1に示すメス型端子を、端子本体の側壁の外面側から眺めたときの正面図であり、図1(b)は、図1のA-A線上で切断したときの概略断面図である。また、図3は、図1に示すメス型端子を、図1の仮想平面Pで切断したときの断面図であって、図3(a)が、オス型端子の一部である平板状の接続ブレードを挿入する前の状態、図3(b)が、接続ブレードを挿入した状態を示す。また、図4は、図1に示すメス型端子の分解斜視図である。
【0030】
メス型端子10は、図1および図4に示すように、第1金属材料からなり、オス型端子と電気的に接続されるバネ部材30、及び、第2金属材料からなり、バネ部材30と電気的に接続される基台部20を有する端子本体15を備え、基台部20は、オス型端子の一部が挿入可能な挿入空間Sを隔てて配置された一対の側壁21を有し、バネ部材30は、基台部20を構成する一対の側壁21のうちの少なくとも一方の側壁、図1に示すメス型端子10では、一対の側壁21、21に取り付けられ、かつ、側壁21の内面21aに対向する内板部31と、側壁21の外面21bに対向する外板部32と、側壁21の開口端面21cに対向し、内板部31と外板部32を連結する連結部(第1連結部33)と、を有し、連結部(第1連結部33)は、内板部31および外板部32とのそれぞれの境界位置に、側壁21の開口端部21dの形状に応じて屈曲させて形成した屈曲部分33aを有し、内板部31は、挿入空間Sの開口位置からオス型端子の挿入方向に向かって延在し、オス型端子と接触するアーム状の接点バネ片311を有し、バネ部材30は、内板部31の、側壁21に対向しない面である外面31aを被覆し、バネ部材30を構成する第1金属材料とは異なる第3金属材料からなる第1金属被覆層35を有し、かつ、連結部33の屈曲部分33aは、被覆されずに外面33bが露出している。
【0031】
これにより、メス型端子10のバネ部材30について、メス型端子10の材料となる板材に、第1金属被覆層35を有する状態で折り曲げ加工を施しても、折り曲げ加工が施される屈曲部分33aには被覆が形成されずに、第1金属材料からなる外面33bが露出するため、第1金属被覆層35にシワが入らなくなる。
【0032】
したがって、1回の折り曲げ加工でバネ部材の形状に成形しても、被覆層にシワが入らないようにすることができ、それにより、折り曲げ加工による屈曲部分における表面外観が悪化することなく、金属被覆層に発生するシワを防止できる、メス型端子、コネクタ、バスバー、端子付き電線、コネクタ付電線およびワイヤーハーネスを提供することができる。
【0033】
[メス型端子について]
本発明のメス型端子10は、図1に示すように、バネ部材30と端子本体15とを備える。
【0034】
(バネ部材)
バネ部材30は、第1金属材料からなり、オス型端子と電気的に接続される。ここで、第1金属材料としては、導電性を有し、かつバネ性が高い板材を用いることができる。所定形状で切り抜いて、折り曲げ加工することで、上述の形状に形成することができる。特に、第1金属材料の圧延加工性およびバネ部材30の高導電性などの観点から、第1金属材料は、純銅および銅合金を含む銅系材料、または純鉄および鉄合金を含む鉄系材料からなる板材によって構成されることが好ましい。その中でも、Cu-Zn系、Cu-Ni-Si系、Cu-Sn-Ni系、Cu-Cr-Mg系、Cu-Ni-Si-Zn-Sn-Mg系の銅合金の板材によって構成されることが好ましい。また、第1金属材料は、圧延加工で得られる圧延材であることが好ましい。また、第1金属材料は、バネ性を持たせるため、後述する端子本体15を構成する第2金属材料よりも厚みが薄いことが好ましい。
【0035】
第1金属材料の電気伝導率は、好ましくは60%IACS以上、より好ましくは80%IACS以上である。第1金属材料の電気伝導率が60%IACS以上であると、バネ部材30は良好な導電性を有する。
【0036】
バネ部材30は、後述する端子本体15の基台部20を構成する、一対の側壁21のうちの少なくとも一方の側壁、好ましくは、図1に示すメス型端子10では、一対の側壁21、21に取り付けられる。より具体的に、バネ部材30は、図3(b)に示すように、オス型端子の一部が挿入可能な挿入空間Sに挿入された、オス型端子の接続ブレード6に対して、挿入空間Sの内側に向かう弾性力が作用するように接触するように構成される。これにより、バネ部材30が、弾性力を作用した状態で接続ブレード6を挟み込むことができるため、バネ部材30と接続ブレード6とを電気的に接続することができる。
【0037】
また、バネ部材30は、側壁21の内面21aに対向する内板部31と、側壁21の外面21bに対向する外板部32と、側壁21の開口端面21cに対向し、内板部31と外板部32とを連結する連結部(第1連結部33)と、を有する。ここで、連結部(第1連結部33)は、内板部31および外板部32とのそれぞれの境界位置に、側壁21の開口端部21dの形状に応じて屈曲させて形成した屈曲部分33aを有する。このとき、バネ部材30は、図4に示すように、内板部31および外板部32が、幅方向Wに間隔をおいて配置され、バネ部材30を長手方向Lの端面側から見て、内板部31、第1連結部33および外板部32が、下方向Hdに向かって開口する角型逆U字状の逆U字バネ部30aを形成する。
【0038】
このうち、外板部32は、長手方向Lおよび高さ方向Hを含む平面に沿って延びるように形成され、側壁21の外面側に配置される。内板部31は、側壁21を介して外板部32よりも幅方向Wの内側に配置される。第1連結部33は、外板部32と内板部31との高さ方向Hの上端を幅方向Wに延在するように構成される。
【0039】
また、内板部31は、図1および図2に示すように、挿入空間Sの開口位置からオス型端子の一部(例えば、接続ブレード6)の挿入方向(このメス型端子10では、高さ方向H)に向かって延在し、オス型端子と接触するアーム状の接点バネ片311を有する。より具体的に、内板部31は、側壁21の内面21aに沿って配置される枠部312と、枠部312の長手方向部分31dから複数本が隣接して下方向Hdに延在する接点バネ片311と、を有する。ここで、内板部31は、図3に示すように、挿入空間Sを隔てて一対の内板部31、31を配置するとともに、これらの下端を後述する第2連結部34により連結して、上方向Huに向かって開口する角型U字状に形成することが好ましい。
【0040】
このとき、接点バネ片311は、図3(a)、(b)に示すように、枠部312の長手方向部分31dから下方側Hdに向かうにつれて、接点バネ片311が位置する側の側壁21に対して、徐々に接近する部分を有することが好ましい。より好ましくは、枠部312の長手方向部分31dから下方側Hdに向かうにつれて、接点バネ片311が位置する側の側壁21に対して徐々に離隔する離隔部313と、離隔部313の先端部分に設けられる、接点バネ片311が位置する側の側壁21に対して徐々に近接する近接部314とを有する。このように、離隔部313を設け、より好ましくは近接部314をさらに設けることで、図3(a)に示すように、オス型端子の接続ブレード6を挿入する際に、接点バネ片311が幅方向Wの外側に弾性変形して接続ブレード6を挿入しやすくすることができる。それとともに、図3(b)に示すように、オス型端子の接続ブレード6が挿入された後も、接点バネ片311が、挿入空間Sの内側に向かう弾性力を作用しながら、接続ブレード6を挟み込むことができる。
【0041】
また、接点バネ片311は、図3(a)、(b)に示すように、オス型端子の接続ブレード6と接触する位置に、凸状の接点部37を有してもよい。ここで、内板部31の接点バネ片311は、離隔部313と近接部314の境界部分に、挿入空間Sに向かって突出する凸状の接点部37が設けられる。これにより、接点部37が、挿入された接続ブレード6の側面に対して接触するため、バネ部材30とオス型端子とを電気的に接続しやすくすることができる。
【0042】
バネ部材30は、図4に示すように、内板部31の、側壁21に対向しない面である外面31aを被覆し、バネ部材30を構成する第1金属材料とは異なる第3金属材料からなる第1金属被覆層35を有する。特に、第1金属被覆層35は、バネ部材30の外面31aのうち少なくとも接点バネ片311の部分に設けられていることが好ましく、外面31aのうち少なくとも接点部37の表面に設けられていることがより好ましい。これにより、オス型端子と接触する側、すなわち挿入空間Sに面する側の表面である外面31aが、バネ部材を構成する第1金属材料と異なる第3金属材料によって被覆されるため、バネ部材30とオス型端子との接触部分に、高圧および高電流にも耐えうる導電性をもたらすことができる。特に、第1金属被覆層35が、接点バネ片311のうちオス型端子と接触する部分、好ましくは接点部37の表面に設けられていることで、オス型端子との接触部分における導電性や、オス型端子との接触状態を、適切に調整することができる。
【0043】
第1金属被覆層35に用いられる第3金属材料は、第1金属材料とは異なる材料を用いることができる。ここで、本明細書における「異なる金属材料」は、金属材料として異なる材料であることを意味し、例えば、同じ金属種に属し、かつ異なる合金組成を有する金属材料も含む意である。特に、第1金属被覆層35における酸化皮膜の形成を低減するとともに、第1金属被覆層35の電気抵抗を小さくして導電率を高める観点では、第1金属被覆層35は、第3金属材料である、銀、銀合金、金または金合金によって構成されることが好ましい。銀、銀合金、金または金合金によって第1金属被覆層35を構成することで、オス型端子の接続ブレード6との接触荷重を小さくしても、安定して電気抵抗を小さくすることが可能なため、第1金属被覆層35の摩耗を起こり難くすることができる。銀、銀合金、金および金合金の中でも、オス型端子の挿入を繰り返すことによる第1金属被覆層35の摩耗を低減する観点では、第1金属被覆層35は、第3金属材料として、銀(純銀)または銀合金によって構成されることがより好ましい。ここで、第1金属被覆層35が銀合金によって構成される場合、第1金属被覆層35は、摺動性をより向上させる観点から、Sn、Zn、In、Ni、Cu、Se、SbおよびCoからなる群より選択される1種以上の元素を含んでもよい。また、第1金属被覆層35を構成する第3金属材料は、上述した銀、銀合金、金および金合金に限定されるものではなく、適宜選択が可能であり、例えば、錫または錫合金を用いることもできる。
【0044】
第1金属被覆層35は、優れた耐摩耗性をもたらすとともに、基材であるバネ部材30の表面性状が耐摩耗性に影響を与えにくくする観点から、めっき工程を含む方法によって形成されることが好ましい。すなわち、第1金属被覆層35は、めっき層によって構成されることが好ましい。
【0045】
第1金属被覆層35は、耐摩耗性の高い膜であることが好ましい。より具体的に、第1金属被覆層35の表面に対して、摩擦摩耗試験機トライボギア(表面性測定機TYPE:14FW、新東科学株式会社製)を用いて、接触荷重4N、摺動距離50mm、摺動速度100mm/minで50回往復摺動を行なった後、レーザー粗さ計により、第1金属被覆層35の厚さに対する基準面(往復摺動していない面)からの深さの比を測定したときに、第1金属被覆層35の厚さに対する基準面からの深さの比(第1金属被覆層35の厚さに対する摩耗部分の深さの比)が、1/5未満であることが好ましい。バネ部材30は、オス型端子が挿入されている際に、その接続ブレード6を押す力が作用しているため、オス型端子の挿入を繰り返すごとにバネ部材30の表面に摩擦が生じやすいが、第1金属被覆層35を耐摩耗性の高い膜によって構成することで、オス型端子の挿入を繰り返しても、第1金属被覆層35が接続ブレード6によって持ち去られ難くなるため、被覆層の摩耗を起こり難くすることができる。
【0046】
ここで、接点バネ片311の断面における、第1金属被覆層35の平均KAM値は、0.20°以上2.00°以下であることが好ましい。接点バネ片311の断面における第1金属被覆層35の平均KAM値が0.20°以上であることで、第1金属被覆層35中に残存する歪量を高く維持でき、硬度が高くなるため、耐摩耗性の高い膜を得ることができる。また、第1金属被覆層35の平均KAM値が2.00°以下であると、第1金属被覆層35中の歪量が過剰になることによる、曲げ加工性の低下を抑制できる。このような観点から、接点バネ片311の断面における第1金属被覆層35の平均KAM値について、下限値は、0.20°以上、好ましくは0.50°以上であり、上限値は、2.00°以下、好ましくは1.00°以下である。
【0047】
また、接点バネ片311の断面において、第1金属被覆層35における1.00°以上のKAM値の割合(以下、単に1.00°以上のKAM値の割合ともいう)は、20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましい。第1金属被覆層35における1.00°以上のKAM値の割合が20%以上であると、第1金属被覆層35中の歪量の増加により、耐摩耗性をさらに向上できる。
【0048】
また、接点バネ片311の断面において、第1金属被覆層35における1.00°以上のKAM値の割合は、50%以下であることが好ましい。第1金属被覆層35における1.00°以上のKAM値の割合が50%以下であると、第1金属被覆層35中の歪量が過剰になることによる、曲げ加工性の低下を抑制できる。
【0049】
本明細書におけるKAM(Kernel Average Misorientation)値は、1つのピクセルとこのピクセルを取り囲む隣接したピクセルとの方位差を平均化して得られる値であり、第1金属被覆層35内の歪量を反映した値である。
【0050】
KAM値は、高分解能走査型分析電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM-7001FA)に付属するEBSD検出器(TSLソリューションズ製、OIM5.0 HIKARI)を用いて連続して測定した結晶方位データから解析ソフト(TSLソリューションズ製、OIM Analysis)を用いて算出した結晶方位解析データから得ることができる。測定対象は、接点バネ片311の圧延方向に平行な断面をクロスセクションポリッシャー(日本電子製)で鏡面仕上げされた表面における第1金属被覆層35の表面であり、測定倍率は30000倍である。測定間隔50nm以下のステップで測定し、解析ソフトにより解析されたCI値が0.1以下である測定点を除外し(ノイズ除去)、隣接するピクセル間の方位差が5.00°以上である境界を結晶粒界とみなし、KAM値を得る。この測定を複数回(同一サンプルで異なる複数の測定領域)行い、その平均値を算出して、平均KAM値を得ることができる。また、KAM値から、1.00°以上のKAM値の割合を得ることができる。このように、平均KAM値は、倍率30000倍で測定した第1金属被覆層35の測定領域におけるKAM値の平均値であり、1.00°以上のKAM値の割合は、倍率30000倍で測定した第1金属被覆層35の測定領域のKAM値に対する1.00°以上のKAM値の割合である。
【0051】
第1金属被覆層35の平均厚さの下限値は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは2.0μm以上、さらに好ましくは3.0μm以上である。第1金属被覆層35の平均厚さの上限値は、好ましくは5.0μm以下である。第1金属被覆層35の平均厚さが0.5μm以上であることで、優れた第1金属被覆層35の耐摩耗性を長期間に亘って維持することができる。また、第1金属被覆層35の平均厚さが5.0μm以下であることで、第1金属被覆層35の材料コストを抑制することができる。
【0052】
このような第1金属被覆層35を形成する手段としては、例えば、第1金属材料からなる板材に、めっき法などによって第3金属材料を含む金属層を形成した後、この金属層が形成された板材を、金属層とともに圧延加工する手段を用いることができる。特に、金属層が形成された板材を、金属層とともに圧延加工することで、金属層中の歪量が増加されるため、第1金属被覆層35の耐摩耗性を向上できる。この場合、圧延加工後の板材に対して、所望の形状にするための打ち抜き加工および折り曲げ加工が行なわれるが、本発明のメス型端子10では、第1連結部33の屈曲部分33aに被覆が形成されずに外面33bが露出するため、1回の折り曲げ加工でバネ部材の形状に成形したとしても、屈曲部分33aにシワが入らないため、屈曲部分における表面外観を悪化させることなく、折り曲げ加工性を格段に向上させることができる。
【0053】
ここで、第3金属材料を含む金属層を形成する際のめっき条件は、電流密度を15A/dm以上30A/dm以下、浴温(液温)を25℃以上にして、核生成を優先することで、異なる結晶方位の結晶粒が数多く成長し、結晶方位の差が大きくなることため、得られる金属層の内部応力を高めることができる。
【0054】
また、金属層が形成された板材を圧延加工する際の加工率は、5%以上15%以下の範囲が好ましい。ここで、加工率が5%以上であると、金属層中の歪量が増加されるため、第1金属被覆層35の耐摩耗性を向上できる。他方で、加工率が15%以下であると、金属層中の歪量が過剰になることによる、曲げ加工性の低下を抑制できる。なお、圧延加工の加工率は、圧延加工前の試料の断面積と圧延加工後の試料の断面積との差を圧延加工前の試料の断面積で割った百分率である。
【0055】
第1金属被覆層35を形成する方法の一例として、基材(例えば、古河電工製のEFTEC-550T、80%IACS)について電解脱脂を行ない、酸洗浄を行った後、浴温25℃のアルカリシアン銀浴(シアン化銀50g/L、シアン化カリウム100g/L)にて銀含有層をめっき法(電流密度15A/dm)で形成し、続いて加工率10%の圧延加工を行なうことで、第1金属被覆層35の厚さに対する摩耗部分の深さの比)が1/10未満である、第1金属被覆層35を得ることができる。
【0056】
他方で、連結部(第1連結部33)の屈曲部分33aは、被覆されずに外面33bが露出している。これにより、バネ部材30の第1連結部33のうち屈曲部分33aに、折り曲げ加工によってシワを生じていた第1金属被覆層35などの被覆が形成されなくなるため、より少ない回数の折り曲げ加工でバネ部材を形成しても、被覆層にシワが入らないようにすることができる。ここで、第1連結部33の屈曲部分33aにおいて露出している外面33bは、上述の第1金属材料によって構成される。
【0057】
さらに、バネ部材30は、外板部32の、側壁21に対向しない面である外面32aを被覆する第2金属被覆層36をさらに有することが好ましい。これにより、後述するように、バネ部材30の外板部32と、端子本体15の側壁21の外面21bとが重なる部分に、ファイバーレーザー溶接機などのレーザーを用いた溶接によって接合部40を形成したときに、外板部32の外面32aに露出している第2金属被覆層36のレーザー吸収率が高められるため、接合部40の形成をより行ないやすくすることができる。
【0058】
第2金属被覆層36に用いられる第4金属材料は、第1金属材料および第3金属材料とは異なる材料を用いることができる。特に、上記の熱拡散の抑制および密着性をさらに向上する観点から、第2金属被覆層36は、第4金属材料として、ニッケルまたはニッケル合金によって構成されることが好ましい。その中でも、第2金属被覆層36は、ニッケルまたはNi-P系のニッケル合金からなることがより好ましい。また、第2金属被覆層36を構成する第4金属材料は、上述したニッケルおよびニッケル合金に限定されるものでなく、第1金属被覆層35および接点バネ片311を構成する材料の組み合わせによって、適宜選択することができる。
【0059】
また、第2金属被覆層36は、基材であるバネ部材30の表面性状が密着性に影響を与えにくくする観点から、めっきで形成されることが好ましい。すなわち、第2金属被覆層36は、めっき層によって構成されることが好ましい。
【0060】
第2金属被覆層36は、内板部31のうち、側壁21に対向しない面である外面31aを被覆している第1金属被覆層35の下面に、さらに形成されていることが好ましい。バネ部材30の内板部31の外面31aと第1金属被覆層35との間に第2金属被覆層36が設けられることで、バネ部材30を構成する元素の第1金属被覆層35への熱拡散を抑制することができ、かつ、バネ部材30と第1金属被覆層35との密着性を向上することができる。
【0061】
特に、第2金属被覆層36が第1金属被覆層35の下面に形成される場合、第2金属被覆層36の平均厚さの下限値は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.10μm以上、さらに好ましくは0.30μm以上である。第2金属被覆層36の平均厚さの上限値は、好ましくは3.00μm以下、より好ましくは2.00μm以下、さらに好ましくは1.00μm以下である。第2金属被覆層36の平均厚さが0.01μm未満であると、上記の熱拡散の抑制および密着性の向上を達成できない。第2金属被覆層36の平均厚さが3.00μm超であると、接点バネ片311の曲げ加工性が悪化する。
【0062】
また、第2金属被覆層36を形成し、その表面に第1金属被覆層35を形成する方法の一例として、基材(例えば、古河電工製のEFTEC-550T、80%IACS)について電解脱脂を行ない、酸洗浄を行った後、浴温55℃のニッケルめっき浴(硫酸ニッケル6水和物500g/L、塩化ニッケル30g/L、ホウ酸30g/L)にて第2金属被覆層36をめっき法(電流密度15A/dm)で基材表面に形成し、続いて浴温25℃のアルカリシアン銀浴(シアン化銀50g/L、シアン化カリウム100g/L)にて銀含有層をめっき法(電流密度30A/dm)で第2金属被覆層36の表面に形成し、続いて加工率15%の圧延加工を行うことによって、第1金属被覆層35の厚さに対する摩耗部分の深さの比)が1/10未満である、第1金属被覆層35を得ることができる。他方で、銀含有層を形成する電流密度が15~30A/dmの範囲外である場合(例えば40A/dmである場合)は、第1金属被覆層35の厚さに対する摩耗部分の深さの比)が1/5を超える第1金属被覆層35となる。
【0063】
バネ部材30の内板部31の枠部312は、高さ方向Hに沿って延びる上下方向部分31cと、長手方向Lに沿って延びる長手方向部分31dとを有しており、側壁21の内面21aに沿って配置される。ここで、枠部312の長手方向部分31dは、長手方向Lの両側に設けた上下方向部分31cの上端部を連結することが好ましい。このとき、上下方向部分31cの上端部を連結している枠部312の長手方向部分31dは、オス型端子の一部の挿入方向(このメス型端子10では、高さ方向H)に向かって延在する接点バネ片311を有する。
【0064】
また、図3に示すように、挿入空間Sを隔てて一対の内板部31、31が配置される場合、一対の内板部31、31の枠部312、312は、幅方向Wに隣接する複数の内板部31の上下方向部分31cの下端を、第2連結部34によって幅方向Wに連結することが好ましい。これにより、一対の内板部31、31および第2連結部34を、バネ部材30を長手方向Lの端面側から見て、上方向Huに向かって開口する角型U字状に形成することができる。
【0065】
さらに、バネ部材30は、図4に示すバネ部材30のように、内板部31および外板部32を配置した、長手方向Lから視て下方向Hdが開口する角型逆U字状の逆U字バネ部30aを2組設け、これら2組の逆U字バネ部30aを長手方向Lに沿った両端に設けた第2連結部34で連結することで、バネ部材30を長手方向Lの端面側から見て、角型略M字状に配置してもよい。
【0066】
逆U字バネ部30aにおける外板部32と内板部31との幅方向Wに沿った間隔は、側壁21の幅方向Wに沿った厚みと同じか、それよりもわずかに広く形成されていることが好ましい。また、第2連結部34によって一対の内板部31、31を幅方向Wに連結したときの内板部31、31の幅方向Wの間隔は、一対の側壁21、21の間隔、すなわち、挿入空間Sの幅方向Wに沿った長さよりも狭く形成される。
【0067】
バネ部材30の端子本体15への配置は、図1および図4に示すように、基台部20の高さ方向Hの上方向Huから、挿入空間Sにバネ部材30の内板部31および第2連結部34を配置するとともに、バネ部材30の外板部32が側壁21の幅方向Wの外側になるように配置し、さらに、第1連結部33を側壁21の上端における装着凹部23に配置することで、バネ部材30を端子本体15に設けることができる。このとき、側壁21は、内板部31の枠部312と外板部32とで、幅方向Wの両側から挟み込むことができる。
【0068】
(端子本体)
端子本体15は、第2金属材料からなり、バネ部材30と電気的に接続される基台部20を有する。端子本体15は、バネ部材30と電気的に接続されることで、オス型端子の一部と電気的に接続することができる。
【0069】
図1に示す端子本体15は、バネ部材30と電気的に接続される導電性の基台部20と、電線5と接続される電線接続部11とによって構成される。
【0070】
このうち、電線接続部11は、例えば、長手方向Lおよび高さ方向Hに沿って延在する接続板111と、接続板111の高さ方向Hの上端および下端からそれぞれ幅方向Wの一方に延びる案内片112とで構成される。接続板111と案内片112とで構成された電線接続部11は、バネ部材30を長手方向Lの端面側から見て、幅方向Wの一方が開放された横向きのU字状に形成されている。なお、図1の電線接続部11では、幅方向Wにおける手前側が開放された横向きの角型U字状に形成されているが、これに限定されない。
【0071】
端子本体15の基台部20は、オス型端子の一部が挿入可能な挿入空間Sを隔てて配置された一対の側壁21を有する。より具体的に、基台部20は、例えば図3(a)および(b)に示すように、オス型端子の接続ブレード6が挿入可能な挿入空間Sを隔てて配置された一対の側壁21と、側壁21の下端同士を連結する側壁連結部22とを備える。
【0072】
ここで、基台部20を構成する側壁21は、図1に示すように、電線接続部11に対して長手方向Lに沿った一方の側に配置され、長手方向Lおよび高さ方向Hを含む平面状に形成される。また、基台部20を構成する側壁21は、幅方向Wに沿って所定間隔を隔てて2枚設けられている。また、基台部20を構成する側壁連結部22は、一対の側壁21の高さ方向Hに沿った一方の端部同士を幅方向Wに連結する。これにより、基台部20は、側壁連結部22から高さ方向Hに向かう上方向Huが開口されるため、長手方向Lに沿って見たときにU字状に形成される。
【0073】
端子本体15の基台部20または側壁21は、電線接続部11の接続板111と長手方向Lに連続して形成される。特に、挿入空間Sに電線が入り込むことによって、第1金属被覆層35や第2金属被覆層36を破損することや、オス型端子の接続ブレード6への挿入を妨げることを防ぐ観点では、上述の挿入空間Sの幅方向Wに沿った大きさは、電線接続部11の接続板111および案内片112によって形成される空間の幅方向Wに沿った大きさよりも小さいことが好ましい。
【0074】
一対の側壁21には、それぞれ、上方向Huの端部に、下方向Hdに向かって凹状となり、バネ部材30の第1連結部33が装着される、装着凹部23が形成されていてもよい。より具体的には、側壁21の上方向Huの端部のうち長手方向Lに沿った両端部に、バネ部材30を装着しうる間隔をおいて、上方向Huに突出する規制凸部24を設け、これらの規制凸部24の間に形成される凹部を、装着凹部23とすることができる。
【0075】
このうち、規制凸部24は、装着凹部23に装着されるバネ部材30の第1連結部33に当接することで、バネ部材30が所定の位置から長手方向Lに向かって逸脱することを防止することができる。
【0076】
端子本体15のうち少なくとも基台部20は、第2金属材料からなることが好ましい。ここで、第2金属材料としては、銅や銅合金などの導電性を有する金属製の板材が好ましく、無酸素銅、タフピッチ銅あるいは各種銅合金などの導電性を有する金属製の端子板材がより好ましい。第2金属材料としては、バネ部材30を構成する第1金属材料と異なる材料を用いてもよく、第1金属材料と同じ材料を用いてもよい。また、端子本体15は、表面の全体にメッキ処理が施されていない非メッキ部材であってもよいが、特に電線との接触部分における導電性を高める観点から、電線接続部11などが部分的にめっき処理されていてもよい。
【0077】
端子本体15は、大電流に対応するように所定の厚みを有する厚板で構成されており、所定形状に切り抜いたものを、折り曲げ加工によって、上述の形状に形成することができる。
【0078】
(接合部)
バネ部材30の外板部32は、後述する端子本体15の基台部20の側壁21の外面21bに導電可能に接合された接合部40を有することが好ましい。より具体的には、図1および図3に示すように、バネ部材30の外板部32と端子本体15の側壁21の外面21bとが重なる部分を、接合部40によって導電可能に接合することが好ましい。これにより、いずれも平坦面である、バネ部材30の外板部32と端子本体15の側壁21の外面21bとが接合されるため、これらの接合部分における導電性を高めることができる。
【0079】
ここで、接合部40は、レーザー溶接部であることが好ましい。このとき、バネ部材30の外板部32と端子本体15の側壁21の外面21bとが重なる部分を、ファイバーレーザー溶接機を移動させて溶接固定することができる。これにより、外板部32と側壁21の外面21bが接触する部分のうち、レーザーが照射された部分が溶融されて接合部40を形成することで、これらが導電可能に接続固定されるため、バネ部材30と端子本体15を導電可能に接合することができる。
【0080】
また、接合部40は、バネ部材30の外板部32と基台部20の側壁21が直接接合されることが好ましい。このとき、基台部20の側壁21と接するバネ部材30の外板部32の表面に、めっき層を有しないことが好ましい。特に、バネ部材30の外板部32と基台部20の側壁21との間にめっき層などの他の金属層を有しないことで、他の金属による接合部40の合金化が起こらなくなるため、接合部40の導電性をより一層高めることができる。
【0081】
接合部40を形成するファイバーレーザー溶接機は、従来の半導体レーザー溶接機やYAGレーザー溶接機に比べ、高いビーム品質や高いパワー密度を持つ。そのため、ファイバーレーザー溶接機によって溶接された溶接ビードである接合部40は、高速かつ低熱影響の溶接となる。
【0082】
ここで、バネ部材30の外板部32の表面に第1金属被覆層35を設けずに、第2金属被覆層36にレーザーを照射することで、接合部40を形成し、それによりレーザー溶接を行なうこともできる。特に、第2金属被覆層36をニッケルまたはニッケル合金によって構成することで、第1金属被覆層35を構成する材料、特に銀や銀合金よりも、レーザーが照射される部分のレーザーの反射率が低くなって溶接性が向上するため、より効率的にファイバーレーザー溶接を行なうことが可能となる。
【0083】
なお、上述の説明では、ファイバーレーザー溶接機によってバネ部材30の外板部32と側壁21の外面21bとを溶融させて接合部40を形成して、導電可能に接続したが、アーク溶接等の融接によって接合部40を形成してもよいし、抵抗溶接、超音波溶接や摩擦圧接等の圧接によって接合部40を形成してもよいし、または、ろう付けやはんだ付け等のろう接によって接合部40を形成してもよい。
【0084】
[コネクタ、バスバー、端子付き電線、コネクタ付電線およびワイヤーハーネスについて]
図5は、本実施形態のコネクタ付電線を示したものであって、図5(a)がコネクタ付電線を、コネクタハウジングの接続開口側から眺めたときの斜視図であり、図5(b)がコネクタハウジングの内部構造が見えるように示した図である。
【0085】
上述のメス型端子10は、図5に示すように、メス型端子10を収容するコネクタハウジング2と組み合わせてコネクタ1aを構成することができる。すなわち、上述のメス型端子10と、メス型端子10を収容するコネクタハウジング2とを有するコネクタ1aを構成することができる。
【0086】
ここで、コネクタハウジング2は、配置空間2cを有する略直方体形状の第1ハウジング部2aと、第1ハウジング部2aから延びる電線挿通部2bとを有し、電線挿通部2bから挿通された電線5の端部に設けられたメス型端子10が、第1ハウジング部2aの内部の配置空間2cに配置される。
【0087】
メス型端子10が配置される配置空間2cは、第1ハウジング部2aにおいて電線挿通部2bが配置される向きと異なる向きに開口されており、内部に配置されたメス型端子10のうち少なくとも挿入空間Sが、配置空間2cの開口からコネクタハウジング2の外部に露出する。
【0088】
上述のメス型端子10は、電線5と組み合わせて端子付き電線4を構成することができる。すなわち、電線5の端部に、上述のメス型端子10が接続されてなる、端子付き電線4を構成することができる。
【0089】
ここで、電線5としては、内部の導体を絶縁被覆で被覆した大電流用の丸電線を用いることができ、電線5の端部において絶縁被覆が剥がされて露出する導体に、上述のメス型端子10を接続することができる。
【0090】
さらに、端子付き電線4の端部に接続されたメス型端子10が、コネクタハウジング2に収容されてなる、コネクタ付電線1を構成してもよい。
【0091】
ここで、コネクタ付電線1は、第1ハウジング部2aの開口にオス型コネクタを接続することができ、オス型コネクタに設けたオス型端子と、配置空間2cに配置されたメス型端子10とを電気的に接続することができる。
【0092】
図5のコネクタ付電線1は、2本の端子付き電線4が装着されており、かつ、コネクタハウジング2の配置空間2cに2つのメス型端子10が隣接して配置されているが、この態様に限定されない。
【0093】
コネクタ付電線1は、例えば、ワイヤーハーネスの端部を構成し、または、ワイヤーハーネスの幹線から分岐した枝線の端部を構成することができる。すなわち、ワイヤーハーネスは、コネクタ付電線1を含むことができる。
【0094】
他方で、電線5の端部にメス型端子10が接続されてなる端子付き電線4を用いて、ワイヤーハーネスを構成してもよい。すなわち、ワイヤーハーネスは、端子付き電線4を含んでもよい。
【0095】
なお、上述の説明では、電線接続部11と基台部20とで端子本体15を構成したが、電線5が接続される電線接続部11の代わりにバスバーなどの板状の導電部材を用いてもよく、電線接続部11にバスバーなどの板状の導電部材を接合または電気的に接続してもよい。すなわち、メス型端子10を端部に有するバスバーを構成してもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 コネクタ付電線
1a コネクタ
2 コネクタハウジング
2a 第1ハウジング部
2b 電線挿通部
2c 配置空間
4 端子付き電線
5 電線
6 オス型端子の接続ブレード
10 メス型端子
11 電線接続部
111 接続板
112 案内片
15 端子本体
20 基台部
21 側壁
21a 側壁の内面
21b 側壁の外面
21c 側壁の開口端面
21d 側壁の開口端部
22 側壁連結部
23 装着凹部
24 規制凸部
30 バネ部材
30a 逆U字バネ部
31 内板部
311 接点バネ片
312 枠部
313 離隔部
314 近接部
31a 内板部の外面
31c 枠部の上下方向部分
31d 枠部の長手方向部分
32 外板部
32a 外板部の外面
33 (第1)連結部
33a (第1)連結部の屈曲部分
33b 屈曲部分の外面
34 第2連結部
35 第1金属被覆層
36 第2金属被覆層
37 接点部
40 接合部
H 高さ方向
Hu 上方向
Hd 下方向
L 長手方向
S 挿入空間
W 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5