(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095269
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20240703BHJP
C23C 16/02 20060101ALI20240703BHJP
C23C 16/06 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/02
C23C16/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212435
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芳本 祐樹
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA05
4K030AA06
4K030AA09
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4K030LA15
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(57)【要約】
【課題】基板上に形成される膜の特性を向上させることが可能な技術を提供する。
【解決手段】(a)第1温度とした基板に対して元素X含有ガスを供給することで、前記基板の表面上に、前記元素Xにより終端された表面を含む層を形成する工程と、(b)第2温度とした前記基板に対して元素Y含有ガスを供給することで、前記層の表面における前記元素Xによる終端を前記元素Yによる終端に変化させる工程と、(c)前記基板を第3温度とすることで、前記層の表面における前記元素Yによる終端を構成する前記元素Yを脱離させる工程と、(d)第4温度とした前記基板に対して成膜ガスを供給することで、前記元素Yを脱離させた前記層上に膜を形成する工程と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1温度とした基板に対して元素X含有ガスを供給することで、前記基板の表面上に、前記元素Xにより終端された表面を含む層を形成する工程と、
(b)第2温度とした前記基板に対して元素Y含有ガスを供給することで、前記層の表面における前記元素Xによる終端を前記元素Yによる終端に変化させる工程と、
(c)前記基板を第3温度とすることで、前記層の表面における前記元素Yによる終端を構成する前記元素Yを脱離させる工程と、
(d)第4温度とした前記基板に対して成膜ガスを供給することで、前記元素Yを脱離させた前記層上に膜を形成する工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項2】
(a)では、Si-X終端を有する表面を含む前記層を形成し、(b)では、前記層の表面におけるSi-X終端をSi-Y終端に変化させる請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
(c)では、前記層の表面におけるSi-Y終端におけるSi-Y結合を切断し、前記層の表面におけるSiがダングリングボンドを有する状態とする請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第2温度を前記第1温度よりも高い温度とし、前記第3温度を前記第1温度よりも高い温度とする請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第4温度を前記第1温度以下の温度とする請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第4温度を前記第1温度よりも高い温度とする請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記元素Xはハロゲンを含む請求項1~6のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記元素Xは塩素を含む請求項1~6のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記元素Yは水素または重水素を含む請求項1~6のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
(a)では、前記基板に対して、前記元素X含有ガスとして、ハロシラン系ガスを供給する請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項11】
(a)では、前記基板に対して、前記元素X含有ガスとして、クロロシラン系ガスを供給する請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項12】
(a)では、前記基板に対して、さらに、水素化ケイ素系ガスを供給する請求項10に記載の基板処理方法。
【請求項13】
(a)では、前記基板に対して、前記ハロシラン系ガスと、前記水素化ケイ素系ガスと、を交互に供給する請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
(b)では、前記基板に対して、前記元素Y含有ガスとして、水素ガスおよび重水素ガスのうち少なくともいずれかを供給する請求項9に記載の基板処理方法。
【請求項15】
(c)では、前記基板への不活性ガスの供給、および、前記基板が存在する空間の排気のうち少なくともいずれかを行う請求項1~6のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項16】
(d)では、前記基板に対して、前記成膜ガスとして、ゲルマニウム含有ガスおよびシリコン含有ガスのうち少なくともいずれかを供給する請求項1~6のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記第2温度および前記第3温度を400℃以上520℃以下とする請求項1~6のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項18】
(b)および(c)における前記基板が存在する空間の圧力を500Pa以上とする請求項1~6のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項19】
(b)における処理時間を、(c)における処理時間以上とする請求項1~6のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項20】
(a)第1温度とした基板に対して元素X含有ガスを供給することで、前記基板の表面上に、前記元素Xにより終端された表面を含む層を形成する工程と、
(b)第2温度とした前記基板に対して元素Y含有ガスを供給することで、前記層の表面における前記元素Xによる終端を前記元素Yによる終端に変化させる工程と、
(c)前記基板を第3温度とすることで、前記層の表面における前記元素Yによる終端を構成する前記元素Yを脱離させる工程と、
(d)第4温度とした前記基板に対して成膜ガスを供給することで、前記元素Yを脱離させた前記層上に膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項21】
基板に対して元素X含有ガスを供給する元素X含有ガス供給系と、
基板に対して元素Y含有ガスを供給する元素Y含有ガス供給系と、
基板に対して成膜ガスを供給する成膜ガス供給系と、
基板の温度を調整する温度調整部と、
(a)第1温度とした基板に対して前記元素X含有ガスを供給することで、前記基板の表面上に、前記元素Xにより終端された表面を含む層を形成する処理と、(b)第2温度とした前記基板に対して前記元素Y含有ガスを供給することで、前記層の表面における前記元素Xによる終端を前記元素Yによる終端に変化させる処理と、(c)前記基板を第3温度とすることで、前記層の表面における前記元素Yによる終端を構成する前記元素Yを脱離させる処理と、(d)第4温度とした前記基板に対して前記成膜ガスを供給することで、前記元素Yを脱離させた前記層上に膜を形成する処理と、を行わせるように、前記元素X含有ガス供給系、前記元素Y含有ガス供給系、前記成膜ガス供給系、および前記温度調整部を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項22】
(a)第1温度とした基板に対して元素X含有ガスを供給することで、前記基板の表面上に、前記元素Xにより終端された表面を含む層を形成する手順と、
(b)第2温度とした前記基板に対して元素Y含有ガスを供給することで、前記層の表面における前記元素Xによる終端を前記元素Yによる終端に変化させる手順と、
(c)前記基板を第3温度とすることで、前記層の表面における前記元素Yによる終端を構成する前記元素Yを脱離させる手順と、
(d)第4温度とした前記基板に対して成膜ガスを供給することで、前記元素Yを脱離させた前記層上に膜を形成する手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板上に膜を形成する処理が行われることがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置の微細化に伴い、基板上に形成される膜の特性の改善、向上が強く要求されている。
【0005】
本開示は、基板上に形成される膜の特性を向上させることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
(a)第1温度とした基板に対して元素X含有ガスを供給することで、前記基板の表面上に、前記元素Xにより終端された表面を含む層を形成する工程と、
(b)第2温度とした前記基板に対して元素Y含有ガスを供給することで、前記層の表面における前記元素Xによる終端を前記元素Yによる終端に変化させる工程と、
(c)前記基板を第3温度とすることで、前記層の表面における前記元素Yによる終端を構成する前記元素Yを脱離させる工程と、
(d)第4温度とした前記基板に対して成膜ガスを供給することで、前記元素Yを脱離させた前記層上に膜を形成する工程と、
を行う技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板上に形成される膜の特性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を
図1のA-A線断面図で示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラ121の概略構成図であり、コントローラ121の制御系をブロック図で示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の一態様における処理シーケンスを示す図である。
【
図5】
図5(a)は、実施例2の評価サンプル2におけるウエハの表面部分を示すTEM画像である。
図5(b)は、比較例1の評価サンプル4におけるウエハの表面部分を示すTEM画像である。
【
図6】
図6は、実施例1~実施例3および比較例1における評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、主に、
図1~
図4を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置(基板処理システム)の構成
図1に示すように、処理炉202は温度調整器(加熱部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスにエネルギーを与えるエネルギー付与部として機能し、ガスを熱で活性化(励起)させる場合は、活性化機構(励起部)としても機能する。
【0011】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0012】
処理室201内には、第1~第3供給部としてのノズル249a~249cが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。ノズル249a~249cを、それぞれ第1~第3ノズルとも称する。ノズル249a~249cは、例えば石英またはSiC等の耐熱性材料により構成されている。ノズル249a~249cには、ガス供給管232a~232cがそれぞれ接続されている。ノズル249a~249cはそれぞれ異なるノズルであり、ノズル249a,249cのそれぞれは、ノズル249bに隣接して設けられている。
【0013】
ガス供給管232a~232cには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a~241cおよび開閉弁であるバルブ243a~243cがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232d,232fがそれぞれ接続されている。ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、ガス供給管232e,232gがそれぞれ接続されている。ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側には、ガス供給管232hが接続されている。ガス供給管232d~232hには、ガス流の上流側から順に、MFC241d~241hおよびバルブ243d~243hがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a~232hは、例えば、SUS等の金属材料により構成されている。
【0014】
図2に示すように、ノズル249a~249cは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a~249cは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。平面視において、ノズル249bは、処理室201内に搬入されるウエハ200の中心を挟んで後述する排気口231aと一直線上に対向するように配置されている。ノズル249a,249cは、ノズル249bと排気口231aの中心とを通る直線Lを、反応管203の内壁(ウエハ200の外周部)に沿って両側から挟み込むように配置されている。直線Lは、ノズル249bとウエハ200の中心とを通る直線でもある。すなわち、ノズル249cは、直線Lを挟んでノズル249aと反対側に設けられているということもできる。ノズル249a,249cは、直線Lを対称軸として線対称に配置されている。ノズル249a~249cの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a~250cがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a~250cは、それぞれが、平面視において排気口231aと対向(対面)するように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a~250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0015】
ガス供給管232aからは、元素X含有ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0016】
ガス供給管232bからは、シリコン(Si)含有ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0017】
ガス供給管232cからは、成膜ガスが、MFC241c、バルブ243c、ノズル249cを介して処理室201内へ供給される。
【0018】
ガス供給管232dからは、元素Y含有ガスが、MFC241d、バルブ243d、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0019】
ガス供給管232eからは、ドーパントガスが、MFC241e、バルブ243e、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0020】
ガス供給管232f~232hからは、不活性ガスが、それぞれMFC241f~241h、バルブ243f~243h、ガス供給管232a~232c、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ供給される。不活性ガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0021】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、元素X含有ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、Si含有ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、成膜ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232d、MFC241d、バルブ243dにより、元素Y含有ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232e、MFC241e、バルブ243eにより、ドーパントガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232f~232h、MFC241f~241h、バルブ243f~243hにより、不活性ガス供給系が構成される。
【0022】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a~243hやMFC241a~241h等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a~232hのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232h内への各種物質(各種ガス)の供給動作、すなわち、バルブ243a~243hの開閉動作やMFC241a~241hによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232h等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0023】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられている。
図2に示すように、排気口231aは、平面視において、ウエハ200を挟んでノズル249a~249c(ガス供給孔250a~250c)と対向(対面)する位置に設けられている。排気口231aは、反応管203の側壁の下部より上部に沿って、すなわち、ウエハ配列領域に沿って設けられていてもよい。排気口231aには排気管231が接続されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、さらに、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めてもよい。
【0024】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0025】
マニホールド209の下方には、シールキャップ219を降下させボート217を処理室201内から搬出した状態で、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0026】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
【0027】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0028】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。また、コントローラ121には、外部記憶装置123を接続することが可能となっている。
【0029】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に記録され、格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ121によって、基板処理装置(基板処理システム)に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0030】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241h、バルブ243a~243h、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0031】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241hによる各種物質(各種ガス)の流量調整動作、バルブ243a~243hの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0032】
コントローラ121は、外部記憶装置123に記録され、格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやSSD等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行うようにしてもよい。
【0033】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程(製造方法)の一工程として、基板を処理する方法、すなわち、基板としてのウエハ200の表面上に層を形成し、この層の上に膜を形成するための処理シーケンスの例について、主に、
図4を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。なお、ウエハ200の表面上に形成する層は、この層上に形成する膜よりも薄く、この層上に膜を形成する(成長させる)際の核(シード)となることから、以下、この層をシード層とも称する。
【0034】
本態様における処理シーケンスでは、
(a)第1温度としたウエハ200に対して元素X含有ガスを供給することで、ウエハ200の表面上に、元素Xにより終端された表面を含むシード層を形成するステップAと、
(b)第2温度としたウエハ200に対して元素Y含有ガスを供給することで、シード層の表面における元素Xによる終端を元素Yによる終端に変化させるステップBと、
(c)ウエハ200を第3温度とすることで、シード層の表面における元素Yによる終端を構成する元素Yを脱離させるステップCと、
(d)第4温度としたウエハ200に対して成膜ガスを供給することで、元素Yを脱離させたシード層上に膜を形成するステップDと、
を行う。シード層を単に層と称することもできる。
【0035】
なお、以下の例では、
図4にも示すように、ステップAにて、ウエハ200に対して、元素X含有ガスとSi含有ガスとを交互に供給する場合について説明する。以下の例では、ステップAにおいて、ウエハ200に対して元素X含有ガスを供給するステップA1と、ウエハ200に対してSi含有ガスを供給するステップA2と、を含むサイクルを所定回数(n回、nは1または2以上の整数)行うことで、ウエハ200の表面上にシード層を形成する。
【0036】
また、以下の例では、ステップDにて、ウエハ200に対して、成膜ガスとしてゲルマニウム(Ge)含有ガスを供給する場合について説明する。なお、ステップDにおいては、ウエハ200に対して、Ge含有ガスとドーパントガスとを一緒に供給することもできる。
【0037】
本明細書では、上述の処理シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例や他の態様等の説明においても、同様の表記を用いる。
【0038】
[元素X含有ガス→Si含有ガス]×n→元素Y含有ガス→不活性ガス→成膜ガス
【0039】
また、以下の例では、
図4にも示すように、ステップDを行った後に、ウエハ200を熱処理するステップEを、さらに行う。なお、ステップEは、省略することもできる。この点は、以下の変形例や他の態様等においても同様である。
【0040】
[元素X含有ガス→Si含有ガス]×n→元素Y含有ガス→不活性ガス→成膜ガス→熱処理
【0041】
また、以下の例では、
図4にも示すように、第2温度を第1温度よりも高い温度とし、第3温度を第1温度よりも高い温度とし、第4温度を第1温度よりも低い温度とする場合について説明する。また、以下の例では、
図4にも示すように、第2温度と第3温度が同一の温度である場合について説明する。
【0042】
本明細書において用いる「ウエハ」という用語は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面上に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において用いる「ウエハの表面」という言葉は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0043】
本明細書において用いる「層」という用語は、連続層および不連続層のうち少なくともいずれかを含む。例えば、シード層は、連続層を含んでいてもよく、不連続層を含んでいてもよく、それらの両方を含んでいてもよい。
【0044】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。このようにして、ウエハ200は、処理室201内に準備されることとなる。
【0045】
(圧力調整および温度調整)
ボートロードが終了した後、処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。このとき、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって加熱される。このとき、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0046】
(ステップA)
その後、第1温度としたウエハ200に対して元素X含有ガスを供給する。本ステップでは、具体的には、次のステップA1、ステップA2を順次実行する。これにより、ウエハ200の表面上に、元素Xにより終端された表面を含むシード層を形成する。
【0047】
[ステップA1]
本ステップでは、第1温度としたウエハ200に対して元素X含有ガスを供給する。
【0048】
具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ元素X含有ガスを流す。元素X含有ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して元素X含有ガスが供給される(元素X含有ガス供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0049】
本ステップにて元素X含有ガスを供給する際における処理条件としては、
処理温度(第1温度):350~440℃
処理圧力:100~1000Pa
元素X含有ガス供給流量:0.01~1slm
元素X含有ガス供給時間:0.5~10分
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0.01~10slm
が例示される。
【0050】
なお、本明細書における「350~440℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「350~440℃」とは「350℃以上440℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、本明細書における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、処理時間とは、その処理を継続する時間を意味する。また、供給流量に0slmが含まれる場合、0slmとは、そのガスを供給しないケースを意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0051】
ウエハ200に対する元素X含有ガスの供給が終了した後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への元素X含有ガスの供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。ノズル249a~249cより供給される不活性ガスは、パージガスとして作用し、これにより、処理室201内がパージされる(パージ)。
【0052】
本ステップにてパージを行う際における処理条件としては、
処理圧力:1~30Pa
処理時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0.5~20slm
が例示される。なお、パージを行う際における処理温度は、元素X含有ガスを供給する際における処理温度(第1温度)と同様の温度とすることが好ましい。
【0053】
元素X含有ガスとしては、例えば、Siと元素Xとしてのハロゲンとを含むガス、すなわち、ハロシラン系ガスを用いることができる。元素Xとしてのハロゲンは、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等を含む。ハロシラン系ガスとしては、例えば、Si-Cl結合、Si-F結合、Si-Br結合、またはSi-I結合を有するシラン系ガス、すなわち、クロロシラン系ガス、フルオロシラン系ガス、ブロモシラン系ガス、またはヨードシラン系ガスを用いることができる。中でも、ハロシラン系ガスとしては、例えば、クロロシラン系ガスを用いることが好ましい。すなわち、元素X含有ガスにおける元素Xは、ハロゲンを含むことが好ましく、Clを含むことがより好ましい。
【0054】
元素X含有ガスとしては、例えば、モノクロロシラン(SiH3Cl)ガス、ジクロロシラン(SiH2Cl2)ガス、トリクロロシラン(SiHCl3)ガス、テトラクロロシラン(SiCl4)ガス、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6)ガス、オクタクロロトリシラン(Si3Cl8)ガス等を用いることができる。元素X含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0055】
不活性ガスとしては、窒素(N2)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0056】
[ステップA2]
ステップA1が終了した後、第1温度としたウエハ200に対してSi含有ガスを供給する。
【0057】
具体的には、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へSi含有ガスを流す。Si含有ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対してSi含有ガスが供給される(Si含有ガス供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0058】
本ステップにてSi含有ガスを供給する際における処理条件としては、
処理温度(第1温度):350~440℃
処理圧力:100~1000Pa
Si含有ガス供給流量:0.01~1slm
Si含有ガス供給時間:0.5~10分
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0.01~10slm
が例示される。
【0059】
ウエハ200に対するSi含有ガスの供給が終了した後、バルブ243bを閉じ、処理室201内へのSi含有ガスの供給を停止する。そして、ステップA1におけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する(パージ)。なお、パージを行う際における処理温度は、Si含有ガスを供給する際における処理温度(第1温度)と同様の温度とすることが好ましい。
【0060】
Si含有ガスとしては、例えば、Siと水素(H)とを含むガス、すなわち、水素化ケイ素系ガスや、Siとアミノ基とを含むガス、すなわち、アミノシラン系ガス等を用いることができる。アミノシラン系ガスとしては、例えば、Siにアミノ基が直接結合した、Si-N結合を有するアミノシラン系ガスを用いることができる。
【0061】
Si含有ガスとしては、例えば、モノシラン(SiH4)ガス、ジシラン(Si2H6)ガス、トリシラン(Si3H8)ガス、テトラシラン(Si4H10)ガス、ペンタシラン(Si5H12)ガス、ヘキサシラン(Si6H14)ガス等を用いることができる。また、Si含有ガスとしては、例えば、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]4)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]3H)ガス、ビス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C2H5)2]2H2)ガス、ビス(ターシャリブチル)アミノシラン(Si[NH(C4H9)]2H2)ガス、(ジイソブチルアミノ)シラン((C4H9)2NSiH3)ガス、(ジイソプロピルアミノ)シラン((C3H7)2NSiH3)ガス等を用いることができる。Si含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0062】
[所定回数実施]
上述のステップA1、ステップA2を含むサイクル、すなわち、
図4に示すように、ステップA1、ステップA2を非同時に(交互に)行うサイクルを所定回数(n回、nは1または2以上の整数)行う。これにより、ウエハ200の表面上に、元素Xにより終端された表面を含むシード層を形成することができる。上述のサイクルは、元素Xにより終端された表面を含むシード層の厚みが所望の厚みになるまで、複数回繰り返すことが好ましい。
【0063】
例えば、本ステップでは、上述の元素X含有ガスを用いることで、ウエハ200の表面上に、Si-X終端を有する表面を含むシード層を形成することができる。上述のように、元素Xは、ハロゲンを含むことが好ましく、Clを含むことがより好ましい。よって、本ステップでは、ウエハ200の表面上に、Si-ハロゲン終端を有する表面を含むシード層を形成することが好ましく、Si-Cl終端を有する表面を含むシード層を形成することがより好ましい。
【0064】
(昇温)
ウエハ200の表面上に、元素Xにより終端された表面を含むシード層が形成された後、ヒータ207の出力を調整し、
図4に示すように、処理温度を、第1温度から、第1温度よりも高い第2温度へと昇温させる。このとき、ステップA1におけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内のパージを行う。なお、パージはウエハ200の温度が第2温度に到達し、安定するまでの間、継続することが好ましい。
【0065】
(ステップB)
ウエハ200の温度が第2温度に到達し、安定した後、第2温度としたウエハ200に対して元素Y含有ガスを供給する。
【0066】
具体的には、バルブ243dを開き、ガス供給管232d内へ元素Y含有ガスを流す。元素Y含有ガスは、MFC241dにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して元素Y含有ガスが供給される(元素Y含有ガス供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0067】
本ステップでは、
図4にも示すように、第2温度を第1温度よりも高い温度としている。このため、本ステップでは、処理温度(第2温度)を、ステップA(ステップA1、ステップA2)における処理温度(第1温度)よりも高くした状態にて維持するよう、ヒータ207の出力を調整する。
【0068】
後述する処理条件下でウエハ200に対して元素Y含有ガスを供給することで、シード層の表面における元素Xを元素Yへと置換(変化)させる置換反応を生じさせ、シード層の表面における元素Xによる終端を元素Yによる終端に変化させることができる。特に、第2温度を第1温度よりも高い温度とすることで、シード層の表面における元素Xによる終端の元素Yによる終端への変換率を高め、シード層の表面に元素Xによる終端が残留することを抑制することが可能となる。このようにして、本ステップでは、ウエハ200の表面上に、元素Yにより終端された表面を含むシード層が形成された状態を作り出すことができる。
【0069】
本ステップにて元素Y含有ガスを供給する際における処理条件としては、
処理温度(第2温度):400~520℃、好ましくは450~500℃
処理圧力:500~101325Pa、好ましくは800~10133Pa
処理時間:0.5~2時間、好ましくは0.5~1時間
元素Y含有ガス供給流量:1~5slm、好ましくは2~3slm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0.01~10slm
が例示される。
【0070】
シード層の表面における元素Xによる終端を元素Yによる終端に変化させた後、バルブ243dを閉じ、処理室201内への元素Y含有ガスの供給を停止する。そして、ステップA1におけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する(パージ)。なお、パージを行う際における処理温度は、元素Y含有ガスを供給する際における処理温度(第2温度)と同様の温度とすることが好ましい。
【0071】
元素Y含有ガスとしては、例えば、還元ガスを用いることができる。還元ガスとしては、例えば、元素Yとしての水素(H)または重水素(D)を含むガスを用いることができる。中でも、還元ガスとしては、Hを含むガスが好ましい。すなわち、元素Y含有ガスにおける元素Yは、HまたはDを含むことが好ましく、Hを含むことがより好ましい。
【0072】
元素Y含有ガスとしては、例えば、水素(H2)ガス等のH含有ガスを用いることができる。また、元素Y含有ガスとしては、例えば、重水素(D2)ガス等のD含有ガスを用いることができる。元素Y含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0073】
なお、ステップAにてSi-X終端を有する表面を含むシード層を形成する場合、本ステップでは、シード層の表面におけるSi-X終端をSi-Y終端に変化させることができる。上述のように、元素Yは、HまたはDを含むことが好ましく、Hを含むことがより好ましい。よって、本ステップでは、ウエハ200の表面上に、Si-H終端またはSi-D終端を有する表面を含むシード層が形成された状態を作り出すことが好ましく、ウエハ200の表面上に、Si-H終端を有する表面を含むシード層が形成された状態を作り出すことが好ましい。
【0074】
また、本ステップにおける処理時間を、後述するステップCにおける処理時間以上とすることが好ましく、ステップCにおける処理時間よりも長くすることがより好ましい。これにより、本ステップにおける処理を効果的に行うことができ、シード層の表面における元素Xによる終端の元素Yによる終端への変換率を高め、シード層の表面に元素Xによる終端が残留することを抑制することが可能となる。また、この場合、後述するステップCにおける処理時間を短縮させることができることから、スループット、すなわち、生産性を向上させることが可能となる。
【0075】
(ステップC)
ステップBを行った後、ウエハ200を第1温度よりも高い第3温度とする。
図4にも示すように、ここでは、第3温度を第2温度と同一の温度とする例を示している。このため、本ステップでは、処理温度(第3温度)を、ステップBにおける処理温度(第2温度)と同一の温度にて維持するよう、ヒータ207の出力を調整する。
【0076】
また、ここでは、
図4にも示すように、ステップBを行った後、第3温度としたウエハ200に対して不活性ガスを供給する場合について説明する。
【0077】
具体的には、バルブ243f~243hを開き、ガス供給管232f~232h内へ不活性ガスをそれぞれ流す。不活性ガスは、MFC241f~241hのそれぞれにより流量調整され、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して不活性ガスが供給される(不活性ガス供給)。
【0078】
後述する処理条件下でウエハ200に対して不活性ガスを供給することで、シード層の表面における元素Yによる終端を構成する元素Yを熱により脱離させることができ、シード層の表面にダングリングボンドを生成させることが可能となる。特に、第3温度を第1温度よりも高い温度とすることで、シード層の表面における元素Yの脱離率を高め、シード層の表面に、より多くのダングリングボンドを生成させることが可能となる。このようにして、本ステップでは、ウエハ200の表面上に、成膜において膜が成長し易い状態である、ダングリングボンドを有する状態の表面を含むシード層が形成された状態を作り出すことができる。
【0079】
本ステップにて不活性ガスを供給する際における処理条件としては、
処理温度(第3温度):400~520℃、好ましくは450~500℃
処理圧力:500~101325Pa、好ましくは800~10133Pa
処理時間:0.5~2時間、好ましくは0.5~1時間
不活性ガス供給流量:1~10slm、好ましくは2~5slm
が例示される。
【0080】
なお、ステップBにて、シード層の表面におけるSi-X終端をSi-Y終端に変化させる場合、本ステップでは、シード層の表面におけるSi-Y終端におけるSi-Y結合を切断し、元素Yを脱離させることができる。これにより、シード層の表面におけるSiがダングリングボンドを有する状態を得ることができる。上述のように、シード層の表面にSi-Y終端としてSi-H終端を有する場合には、本ステップにてHを脱離させて、シード層の表面におけるSiがダングリングボンドを有する状態とすることができる。この場合、本ステップでは、ウエハ200の表面上に、Siがダングリングボンドを有する状態の表面を含むシード層が形成された状態を作り出すことが可能となる。
【0081】
上述のように、
図4では、第3温度を第2温度と同一とする例を示しているが、第3温度を第2温度と異ならせるようにしてもよい。なお、第3温度と第2温度とを同一とすることで、ステップBと本ステップとの間で処理温度の変更が不要となり、ウエハ200の温度変更およびウエハ200の温度の安定化に要する時間を短縮させることができ、スループット、すなわち、生産性を向上させることが可能となる。
【0082】
ステップBおよびステップCにおいては、第2温度および第3温度を、400℃以上とすることが好ましく、450℃以上とすることがより好ましい。また、ステップBおよびステップCにおいては、第2温度および第3温度を、520℃以下とすることが好ましく、500℃以下とすることがより好ましい。
【0083】
第2温度を400℃未満とすると、シード層の表面における元素Xによる終端を元素Yによる終端に変化させることが困難となることがある。すなわち、シード層の表面における元素Xの元素Yへの置換反応を生じさせることが困難となることがある。例えば、シード層の表面がSi-X終端を含む場合に、シード層の表面におけるSi-X終端をSi-Y終端に変化させることが困難となることがある。第2温度を400℃以上とすることで、シード層の表面における元素Xによる終端を元素Yによる終端に変化させることを効果的に行うことが可能となる。すなわち、シード層の表面における元素Xの元素Yへの置換反応を効果的に生じさせることが可能となる。例えば、シード層の表面がSi-X終端を含む場合に、シード層の表面におけるSi-X終端をSi-Y終端に変化させることを効果的に行うことが可能となる。また、第2温度を450℃以上とすることで、シード層の表面における元素Xによる終端を元素Yによる終端に変化させることを、より効果的に行うことが可能となる。すなわち、シード層の表面における元素Xの元素Yへの置換反応を、より効果的に生じさせることが可能となる。例えば、シード層の表面がSi-X終端を含む場合に、シード層の表面におけるSi-X終端をSi-Y終端に変化させることを、より効果的に行うことが可能となる。
【0084】
第3温度を400℃未満とすると、シード層の表面における元素Yによる終端を構成する元素Yを脱離させることが困難となることがある。すなわち、シード層の表面における元素Yの脱離反応が十分に生じなくなることがある。例えば、シード層の表面がSi-Y終端を含む場合に、シード層の表面におけるSi-Y結合を切断し、シード層の表面におけるSiがダングリングボンドを有する状態とすることが困難となることがある。第3温度を400℃以上とすることで、シード層の表面における元素Yによる終端を構成する元素Yを効果的に脱離させることが可能となる。すなわち、シード層の表面における元素Yの脱離反応を効果的に生じさせることが可能となる。例えば、シード層の表面がSi-Y終端を含む場合に、シード層の表面におけるSi-Y結合を効果的に切断し、シード層の表面におけるSiがダングリングボンドを有する状態とすることを効果的に行うことが可能となる。また、第3温度を450℃以上とすることで、シード層の表面における元素Yによる終端を構成する元素Yを、より効果的に脱離させることが可能となる。すなわち、シード層の表面における元素Yの脱離反応を、より効果的に生じさせることが可能となる。例えば、シード層の表面がSi-Y終端を含む場合に、シード層の表面におけるSi-Y結合を、より効果的に切断し、シード層の表面におけるSiがダングリングボンドを有する状態とすることを、より効果的に行うことが可能となる。
【0085】
また、第2温度および第3温度を、520℃を超える温度とすると、シード層を構成する主元素の凝集が生じ、その結果、シード層上に形成される膜の表面モフォロジ、表面ラフネス等の特性が悪化することがある。第2温度および第3温度を520℃以下とすることで、シード層を構成する主元素の凝集を効果的に抑制することができ、結果として、シード層上に形成される膜の表面モフォロジ、表面ラフネス等の特性の悪化を効果的に抑制することが可能となる。第2温度および第3温度を500℃以下とすることで、シード層を構成する主元素の凝集を、より効果的に抑制することができ、シード層上に形成される膜の表面モフォロジ、表面ラフネス等の特性の悪化を、より効果的に抑制することが可能となる。
【0086】
ここで、表面モフォロジ、表面ラフネスとは、いずれも、ウエハ面内あるいは任意の対象面内における膜の表面における高低差を意味している。中でも、表面ラフネスは、膜の表面における高低差の程度(表面粗さと同義である)を意味しており、その値が小さいほど表面が平滑であることを示しており、逆にその値が大きいほど表面が粗いことを示している。本明細書において、表面モフォロジ、表面ラフネス特性が向上するとは、膜の表面における高低差が小さくなり、表面の平滑度が向上することを意味しており、逆に、表面モフォロジ、表面ラフネス特性が悪化するとは、膜の表面における高低差が大きくなり、表面の平滑度が悪化することを意味している。
【0087】
以上のことから、第2温度および第3温度を、400℃以上とすることが好ましく、450℃以上とすることがより好ましい。また、第2温度および第3温度を、520℃以下とすることが好ましく、500℃以下とすることがより好ましい。さらに、第2温度および第3温度を、400℃以上520℃以下とすることが好ましく、450℃以上500℃以下とすることがより好ましい。ここで、第2温度および第3温度は、それぞれ、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0088】
ステップBおよびステップCにおいては、ウエハ200が存在する空間の圧力、すなわち、処理室201内の圧力を、500Pa以上とすることが好ましく、800Pa以上とすることがより好ましい。また、ステップBおよびステップCにおいては、ウエハ200が存在する空間の圧力、すなわち、処理室201内の圧力を、101325Pa以下とすることが好ましく、10133Pa以下とすることがより好ましい。
【0089】
ステップBおよびステップCにおけるウエハ200が存在する空間の圧力を500Pa未満とすると、シード層を構成する主元素の凝集が生じ、その結果、シード層上に形成される膜の表面モフォロジ、表面ラフネス等の特性が悪化することがある。ステップBおよびステップCにおけるウエハ200が存在する空間の圧力を500Pa以上とすることで、シード層を構成する主元素の凝集を効果的に抑制することができ、結果として、シード層上に形成される膜の表面モフォロジ、表面ラフネス等の特性の悪化を効果的に抑制することが可能となる。また、ステップBおよびステップCにおけるウエハ200が存在する空間の圧力を800Pa以上とすることで、シード層を構成する主元素の凝集を、より効果的に抑制することができ、結果として、シード層上に形成される膜の表面モフォロジ、表面ラフネス等の特性の悪化を、より効果的に抑制することが可能となる。
【0090】
ステップBおよびステップCにおけるウエハ200が存在する空間の圧力を、101325Paを超える圧力とすると、処理時間が長くなり、スループットすなわち生産性が低下することがある。ステップBおよびステップCにおけるウエハ200が存在する空間の圧力を101325Pa以下とすることで、圧力調整時間を効果的に短縮させることができ、スループットすなわち生産性が低下することを効果的に抑制することが可能となる。また、ステップBおよびステップCにおけるウエハ200が存在する空間の圧力を10133Pa以下とすることで、圧力調整時間を、より効果的に短縮させることができ、スループットすなわち生産性が低下することを、より効果的に抑制することが可能となる。
【0091】
以上のことから、ステップBおよびステップCにおけるウエハ200が存在する空間の圧力を、500Pa以上とすることが好ましく、800Pa以上とすることがより好ましい。また、ステップBおよびステップCにおけるウエハ200が存在する空間の圧力を、101325Pa以下とすることが好ましく、10133Pa以下とすることがより好ましい。さらに、ステップBおよびステップCにおけるウエハ200が存在する空間の圧力を、500Pa以上101325Pa以下とすることが好ましく、800Pa以上10133Pa以下とすることがより好ましい。ここで、ステップBおよびステップCにおけるウエハ200が存在する空間の圧力は、それぞれ、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0092】
(降温)
ウエハ200の表面上に形成されたシード層が、ダングリングボンドを有する状態となった後、ヒータ207の出力を調整し、
図4に示すように、処理温度を、第3温度から、第1温度以下の第4温度へと、好ましくは、第1温度よりも低い第4温度へと降温させる。このとき、ステップA1におけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内のパージを行う。なお、パージはウエハ200の温度が第4温度に到達し、安定するまでの間、継続することが好ましい。
【0093】
(ステップD)
ウエハ200の温度が第4温度に到達し、安定した後、第4温度としたウエハ200に対して成膜ガスを供給する。ここでは、成膜ガスとしてGe含有ガスを用い、ウエハ200に対して、Ge含有ガスとドーパントガスとを一緒に供給する場合について説明する。
【0094】
具体的には、バルブ243c,243eを開き、ガス供給管232c,232e内へGe含有ガス、ドーパントガスをそれぞれ流す。Ge含有ガス、ドーパントガスは、それぞれ、MFC241c,MFC241eにより流量調整され、ノズル249c,249bを介して処理室201内へそれぞれ供給され、処理室201内で混合されて、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対してGe含有ガスおよびドーパントガスが供給される(Ge含有ガス+ドーパントガス供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0095】
以下の例では、
図4にも示すように、第4温度を第1温度よりも低い温度とする例を示している。このため、本ステップでは、処理温度(第4温度)を、ステップA(ステップA1、ステップA2)における処理温度(第1温度)よりも低くした状態にて維持するよう、ヒータ207の出力を調整する。
【0096】
後述する処理条件下でウエハ200に対して成膜ガスとしてのGe含有ガスを供給することで、Ge含有ガスを気相中で分解させて、ダングリングボンドを有する状態となったシード層上にGeを吸着(堆積)させて、Ge膜を形成することができる。また、ウエハ200に対してGe含有ガスとドーパントガスとを一緒に供給することで、ドーパントがドープされたGe膜を形成することができる。また、後述する処理条件下では、Ge膜の結晶構造は、アモルファス(非晶質)となる。
【0097】
本ステップにてGe含有ガスを供給する際における処理条件としては、
処理温度(第4温度):250~400℃、280~320℃
処理圧力:30~400Pa
処理時間:1~300分
Ge含有ガス供給流量:0.01~5slm
ドーパントガス供給流量:0~0.5slm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0.01~20slm
が例示される。なお、ドーパントガス供給流量が0slmとは、ドーパントガスを供給しないケースを意味する。つまり、ドーパントガスの供給は、省略することもできる。
【0098】
シード層上にGe膜を形成した後、バルブ243c,243eを閉じ、処理室201内へのGe含有ガス、ドーパントガスの供給をそれぞれ停止する。そして、ステップA1におけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0099】
Ge含有ガスとしては、例えば、GeとHとを含む水素化ゲルマニウム系ガス(ゲルマン系ガス)を用いることができる。Ge含有ガスとしては、例えば、モノゲルマン(GeH4)ガス、ジゲルマン(Ge2H6)ガス、トリゲルマン(Ge3H8)ガス等を用いることができる。Ge含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0100】
ドーパントガスとしては、例えば、リン(P)含有ガス、ホウ素(B)含有ガス、ヒ素(As)含有ガスを用いることができる。ドーパントガスとしては、例えば、ホスフィン(PH3)ガス、ジボラン(B2H6)ガス、トリクロロボラン(BCl3)ガス、アルシン(AsH3)ガス等を用いることができる。ドーパントガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0101】
上述のように、
図4では、第4温度を第1温度よりも低い温度とする例を示しているが、第4温度を第1温度以下の温度とするようにしてもよい。第4温度を第1温度以下、好ましくは第1温度よりも低い温度とすることで、成膜温度を低温化することが可能となる。なお、
図4では、第2温度および第3温度を、上述のように、第1温度よりも高い温度としていることから、第4温度は、第1温度、第2温度、第3温度、第4温度のうち最も低い温度ということとなる。
【0102】
また、上述のように、本ステップでは、ドーパントガスの供給を省略することができる。ドーパントガスの供給を省略することで、ドーパントがドープされていないGe膜、すなわち、ノンドープGe膜をシード層上に形成することができる。
【0103】
(昇温)
シード層上にGe膜を形成した後、上述のようにパージを行う。その際、パージと並行して、ヒータ207の出力を調整し、
図4に示すように、処理温度を、第4温度から、第4温度よりも高い第5温度へと昇温させる。なお、パージはウエハ200の温度が第5温度に到達し、安定するまでの間、継続することが好ましい。
【0104】
(ステップE)
ウエハ200の温度が第5温度に到達し、安定した後、第5温度としたウエハ200に対して熱処理(アニール処理)を行う。以下の例では、
図4にも示すように、熱処理の処理温度(第5温度)を第4温度よりも高い温度とする例を示している。このため、本ステップでは、処理温度(第5温度)を、ステップDにおける処理温度(第4温度)よりも高くした状態にて維持するよう、ヒータ207の出力を調整する。
【0105】
本ステップは、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給した状態で行うようにしてもよい。また、本ステップは、バルブ243f~243hを閉じ、処理室201内への不活性ガスの供給を停止した状態で行うようにしてもよい。
【0106】
後述する処理条件下で熱処理(アニール処理)を行うことにより、シード層およびGe膜をポリ化(多結晶化)させることができる。なお、熱処理を行う前のシード層は、アモルファス状態である場合と、アモルファス(非晶質)とポリ(多結晶)との混晶状態である場合と、ポリ状態である場合と、があるが、いずれの場合も、シード層をポリ化させ、シード層をポリ化させた後に、Ge膜をポリ化させることができる。これにより、先行してポリ化させたシード層の結晶粒(グレイン)を核として、Ge膜をポリ化させることができる。なお、シード層およびGe膜のポリ化が不要である場合には、熱処理、すなわち、ステップEを省略することもできる。
【0107】
本ステップにて熱処理(アニール処理)を行う際における処理条件としては、
処理温度(第5温度):600~1000℃
処理圧力:0.1~100000Pa
処理時間:1~300分
不活性ガス供給流量(各ガス供給管):0~20slm
が例示される。
【0108】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ステップEが完了した後、ノズル249a~249cのそれぞれからパージガスとしての不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0109】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0110】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0111】
ステップAを行った後、ステップB、ステップCを行うことで、ウエハ200の表面上に形成されたシード層の表面を、元素Xにより終端された表面からダングリングボンドを有する状態の表面へと改質させることができる。ダングリングボンドを有する状態の表面は、成膜において膜が成長し易い状態の表面であることから、このような状態の表面を有するシード層を有するウエハ200に対して、ステップDにて成膜ガスを供給することで、膜の成長の不均一化を抑制することができる。その結果、シード層の表面上に形成される膜の表面モフォロジ、表面ラフネス、ステップカバレッジ等の特性を向上させることが可能となる。また、成膜におけるインキュベーションタイムを短縮させることも可能となり、スループット、すなわち、生産性を向上させることも可能となる。
【0112】
また、上述の、シード層におけるダングリングボンドを有する状態の表面は、ステップAで形成された元素Xにより終端された表面を、ステップBにて、元素Yにより終端された表面へと変化させた後、ステップCにて、元素Yによる終端を構成する元素Yを脱離させることで得ている。このようにすることで、例えば、シード層の表面における元素Xによる終端を構成する元素Xを脱離させる場合に比べ、低温で、ダングリングボンドを有する状態の表面を得ることができる。これにより、シード層を構成する主元素の熱による凝集を抑制することができ、結果として、シード層上に形成される膜の表面モフォロジ、表面ラフネス等の特性の悪化を抑制することが可能となる。
【0113】
ステップAでは、Si-X終端を有する表面を含むシード層を形成し、ステップBでは、シード層の表面におけるSi-X終端をSi-Y終端に変化させることが好ましい。さらに、ステップCでは、シード層の表面におけるSi-Y終端におけるSi-Y結合を切断し、シード層の表面におけるSiがダングリングボンドを有する状態とすることが好ましい。これらにより、上述の効果をより効率的に得ることが可能となる。
【0114】
ステップBにおける第2温度をステップAにおける第1温度よりも高い温度とし、ステップCにおける第3温度をステップAにおける第1温度よりも高い温度とすることが好ましい。これにより、上述の効果をより効率的に得ることが可能となる。
【0115】
元素X含有ガス、X終端、およびSi-X終端における元素Xは、ハロゲンを含むことが好ましく、塩素を含むことがより好ましい。元素Y含有ガス、Y終端、およびSi-Y終端における元素Yは水素または重水素を含むことが好ましい。これらにより、ステップA、ステップB、およびステップCにおける反応を効率的かつ効果的に生じさせることが可能となり、上述の効果がより顕著に得られるようになる。
【0116】
ステップAでは、ウエハ200に対して、元素X含有ガスとして、ハロシラン系ガスを供給することが好ましく、元素X含有ガスとして、クロロシラン系ガスを供給することがより好ましい。また、ステップAでは、ウエハ200に対して、さらに、水素化ケイ素系ガスを供給することが好ましい。さらに、ステップAでは、ウエハ200に対して、ハロシラン系ガスと、水素化ケイ素系ガスと、を交互に供給することが好ましい。加えて、ステップBでは、ウエハ200に対して、元素Y含有ガスとして、水素ガスおよび重水素ガスのうち少なくともいずれかを供給することが好ましい。これらにより、ステップAおよびステップBにおける反応を効率的かつ効果的に生じさせることが可能となり、上述の効果がより顕著に得られるようになる。
【0117】
ステップCでは、ウエハ200への不活性ガスの供給を行うことが好ましい。これにより、ステップCにおける反応を効率的かつ効果的に生じさせることが可能となり、上述の効果がより顕著に得られるようになる。
【0118】
(4)変形例
本態様における処理シーケンスは、以下に示す変形例のように変更することができる。これらの変形例は、任意に組み合わせることができる。特に説明がない限り、各変形例の各ステップにおける処理手順、処理条件は、上述の処理シーケンスの各ステップにおける処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0119】
(変形例1)
以下に示す処理シーケンスのように、ステップAにおいて、ウエハ200に対してSi含有ガスを供給しないようにしてもよい。本変形例におけるステップAでは、第1温度としたウエハ200に対して、反応性ガスとして元素X含有ガスのみを供給することで、ウエハ200の表面上に、元素Xにより終端された表面を含むシード層を形成する。このとき、上述の態様と同様、ウエハ200に対して不活性ガスを供給するようにしてもよい。本変形例においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0120】
元素X含有ガス→元素Y含有ガス→不活性ガス→成膜ガス
元素X含有ガス→元素Y含有ガス→不活性ガス→成膜ガス→熱処理
【0121】
(変形例2)
以下に示す処理シーケンスのように、ステップCでは、ウエハ200に対して不活性ガスを供給することなく、処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間の排気を行うようにしてもよい。本変形例におけるステップCでは、ウエハ200を第3温度とし、ウエハ200が存在する空間の排気(減圧排気、真空排気、真空引き)を行うことで、シード層の表面における元素Yによる終端を構成する元素Yを脱離させる。なお、本変形例における処理条件は、不活性ガスの供給流量を0slmとする以外は、上述の態様のステップCにおける処理条件と同様とすることができる。
【0122】
[元素X含有ガス→Si含有ガス]×n→元素Y含有ガス→排気→成膜ガス
[元素X含有ガス→Si含有ガス]×n→元素Y含有ガス→排気→成膜ガス→熱処理
元素X含有ガス→元素Y含有ガス→排気→成膜ガス
元素X含有ガス→元素Y含有ガス→排気→成膜ガス→熱処理
【0123】
本変形例においても、上述の態様と同様の効果が得られる。なお、上述の態様および本変形例にて説明したように、ステップCでは、ウエハ200への不活性ガスの供給、および、ウエハ200が存在する空間の排気のうち少なくともいずれかを行うことで、シード層の表面における元素Yによる終端を構成する元素Yを効率的かつ効果的に脱離させることができる。
【0124】
(変形例3)
ステップDでは、第4温度としたウエハ200に対してSi含有ガスを供給するようにしてもよい。本変形例におけるステップDでは、第4温度としたウエハ200に対して、後述する処理条件下で、上述の態様におけるGe含有ガスの代わりに、Si含有ガスを供給する。これにより、元素Yを脱離させ、ダングリングボンドを有する状態となったシード層上にSi膜を形成することができる。また、ウエハ200に対してSi含有ガスとドーパントガスとを一緒に供給することで、ドーパントがドープされたSi膜を形成することができる。なお、本変形例におけるステップDでは、第4温度を第1温度よりも高い温度とする。
【0125】
本変形例にてSi含有ガスを供給する際における処理条件としては、
処理温度(第4温度):450~650℃
処理圧力:30~400Pa
処理時間:1~300分
Si含有ガス供給流量:0.01~5slm
ドーパントガス供給流量:0~0.5slm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0.01~20slm
が例示される。
【0126】
本変形例においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、本変形例によれば、ドーパントがドープされていないSi膜(ノンドープSi膜)およびドーパントがドープされたSi膜のうち少なくともいずれかをシード層上に形成することができる。
【0127】
(変形例4)
ステップDでは、第4温度としたウエハ200に対してGe含有ガスとSi含有ガスとを供給するようにしてもよい。本変形例におけるステップDでは、ウエハ200に対して、上述の態様におけるGe含有ガスに加えてSi含有ガスを供給する。すなわち、本変形例におけるステップDでは、ウエハ200に対して、Si含有ガスとGe含有ガスとを一緒に供給する。これにより、元素Yを脱離させ、ダングリングボンドを有する状態となったシード層上にSiGe膜を形成することができる。また、ウエハ200に対してSi含有ガスおよびGe含有ガスとドーパントガスとを一緒に供給することで、ドーパントがドープされたSiGe膜を形成することができる。なお、本変形例におけるステップDでは、第4温度を、第1温度以下の温度とすることもでき、第1温度よりも高い温度とすることもできる。
【0128】
本変形例にてSi含有ガスとGe含有ガスとを供給する際における処理条件としては、
処理温度(第4温度):280~520℃
処理圧力:30~400Pa
処理時間:1~300分
Si含有ガス供給流量:0.01~5slm
Ge含有ガス供給流量:0.01~5slm
ドーパントガス供給流量:0~0.5slm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0.01~20slm
が例示される。
【0129】
本変形例においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、本変形例によれば、ドーパントがドープされていないSiGe膜(ノンドープSiGe膜)およびドーパントがドープされたSiGe膜のうち少なくともいずれかをシード層上に形成することができる。
【0130】
なお、上述の態様、変形例3および変形例4にて説明したように、ステップDでは、ウエハ200に対して、成膜ガスとして、Ge含有ガスおよびSi含有ガスのうち少なくともいずれかを供給することができる。これにより、元素Yを脱離させ、ダングリングボンドを有する状態となったシード層上には、Ge膜、Si膜、SiGe膜のうち少なくともいずれかを、すなわち、GeおよびSiのうち少なくともいずれかを含む膜を形成することができる。また、これらの膜は、上述のように、ドーパントがドープされた膜であってもよいし、ドーパントがドープされていない膜(ノンドープ膜)であってもよい。これらの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0131】
また、変形例3および変形例4におけるSi含有ガスとしては、例えば、各種シラン系ガス、好ましくは、上述の態様のステップA2で例示した各種水素化ケイ素系ガスを用いることができる。また、変形例3および変形例4におけるドーパントガスとしては、例えば、上述の態様のステップDで例示した各種ドーパントガスを用いることができる。
【0132】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0133】
例えば、上述の態様では、ステップAからステップEに至る一連のステップを、同一の処理室201内で(in-situで)行う例について説明した。しかしながら、本開示はこのような態様に限定されない。例えば、ステップAからステップDに至る一連のステップを同一の処理室内で行い、その後、ステップEを他の処理室内で(ex-situで)行うようにしてもよい。例えば、複数のスタンドアローン型の基板処理装置(第1基板処理装置、第2基板処理装置、第3基板処理装置等)を含む基板処理システムを用いて、各ステップを異なる基板処理装置のそれぞれの異なる処理室内で、すなわち、異なる処理部にて行うようにしてもよい。また、例えば、複数の処理室(第1処理室、第2処理室、第3処理室等)が搬送室の周りに設けられたクラスタ型の基板処理装置を含む基板処理システムを用いて、各ステップを同一の基板処理装置の異なる処理室内で、すなわち、異なる処理部にて行うようにしてもよい。これらの場合においても上述の態様における効果と同様の効果が得られる。
【0134】
また、例えば、ステップDを行った後、ステップEを行う前に、Ge膜、Si膜、またはSiGe膜以外の膜(シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等)を形成するステップFを行うようにしてもよい。この場合、ステップAからステップEに至る一連のステップ、すなわち、ステップFを含む一連のステップを、同一の処理室(第1処理室)内で行うようにしてもよい。また、ステップAからステップDに至る一連のステップを同一の処理室(第1処理室)内で行い、ステップFからステップEに至る一連のステップを他の処理室(第2処理室)内で行うようにしてもよい。また、ステップAからステップDに至る一連のステップを同一の処理室(第1処理室)内で行い、ステップFを他の処理室(第2処理室)内で行い、ステップEをさらに他の処理室(第3処理室)内または第1処理室内で行うようにしてもよい。これらの場合においても上述の態様における効果と同様の効果が得られる。
【0135】
上述の種々の場合において、一連のステップをin-situで行えば、途中、ウエハ200が大気曝露されることはなく、ウエハ200を真空下に置いたまま一貫して処理を行うことができ、安定した基板処理を行うことができる。また、一部のステップをex-situで行えば、それぞれの処理室内の温度を例えば各ステップでの処理温度又はそれに近い温度に予め設定しておくことができ、温度調整に要する時間を短縮させることができ、スループット、すなわち、生産性を向上させることが可能となる。
【0136】
各処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に記録し、格納しておくことが好ましい。そして、各処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に記録され、格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各処理を迅速に開始できるようになる。
【0137】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意するようにしてもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールするようにしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0138】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。
【0139】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様や変形例と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【0140】
上述の態様や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様や変形例の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【実施例0141】
<実施例1>
図4に示す処理シーケンスと同様の処理シーケンスにより、ウエハの表面上にシード層を形成し、形成されたシード層上にGe膜を形成して、実施例1の評価サンプル1を作製した。評価サンプル1を作製する際の各ステップにおける処理条件は、上述の態様の各ステップにおける処理条件の範囲内の所定の条件とした。なお、評価サンプル1を作製する際、ウエハとして表面にSiO
2膜を有するSiウエハを用い、元素X含有ガスとして上述の態様で例示したクロロシラン系ガスを用い、Si含有ガスとして上述の態様で例示した水素化ケイ素系ガスを用い、元素Y含有ガスとして上述の態様で例示したH含有ガスを用い、Ge含有ガスとして上述の態様で例示した水素化ゲルマニウム系ガスを用いた。また、ステップBにおける第2温度およびステップCにおける第3温度を、いずれも、500~520℃の範囲内に設定した。
【0142】
<実施例2>
ステップBにおける第2温度およびステップCにおける第3温度を、いずれも、460~490℃の範囲内に設定した以外は、実施例1の評価サンプル1を作製する方法と同様にして、実施例2の評価サンプル2を作製した。
【0143】
<実施例3>
ステップBにおける第2温度およびステップCにおける第3温度を、いずれも、400~440℃の範囲内に設定した以外は、実施例1の評価サンプル1を作製する方法と同様にして、実施例3の評価サンプル3を作製した。
【0144】
<比較例1>
ステップBおよびステップCを行わなかった以外は、実施例1の評価サンプル1を作製する方法と同様にして、比較例1の評価サンプル4を作製した。
【0145】
作製した各評価サンプルについて、ウエハの表面部分を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察し、画像(TEM画像)を得た。
図5(a)は、実施例2の評価サンプル2におけるウエハの表面部分を示すTEM画像であり、
図5(b)は、比較例1の評価サンプル4におけるウエハの表面部分を示すTEM画像である。
【0146】
また、作製した各評価サンプルについて、ステップDにおける成膜ガス(Ge含有ガス)の供給時間毎の、シード層上に形成されたGe膜の厚さを測定し、成膜反応が生じるまでの時間、すなわち、インキュベーションタイムの評価を行った。各評価サンプルにおける評価結果を
図6に示す。
図6のグラフにおいて、横軸は成膜ガス(Ge含有ガス)の供給時間(秒)を示しており、縦軸はGe膜の厚さ(Å)を示している。
【0147】
図5(a)と
図5(b)とのTEM画像の対比から、比較例1の評価サンプル4に比べ、実施例2の評価サンプル2は、Ge膜の表面が平滑で、表面モフォロジ特性、表面ラフネス特性が向上しており、さらに、ステップカバレッジ特性にも優れることが確認された。また、
図6によれば、比較例1の評価サンプル4に比べ、実施例1~実施例3の評価サンプル1~評価サンプル3は、いずれも、成膜におけるインキュベーションタイムが大幅に短縮されたことが確認された。