(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095401
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ポリマレイミド樹脂含有組成物、硬化性組成物、硬化物、絶縁材料及びレジスト部材
(51)【国際特許分類】
C08G 8/30 20060101AFI20240703BHJP
C08G 8/28 20060101ALI20240703BHJP
C08L 61/14 20060101ALI20240703BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20240703BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C08G8/30
C08G8/28 A
C08L61/14
C08F290/14
G03F7/027 511
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212674
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】山田 駿介
(72)【発明者】
【氏名】青山 和賢
【テーマコード(参考)】
2H225
4J002
4J033
4J127
【Fターム(参考)】
2H225AC19
2H225AC36
2H225AC54
2H225AC57
2H225AD02
2H225AE14P
2H225AM79P
2H225AN36P
2H225AN86P
2H225AN94P
2H225BA16P
2H225BA22P
4J002CC03W
4J002CD06X
4J002EE036
4J002EH078
4J002EU117
4J002FD148
4J002FD156
4J002FD157
4J002GQ01
4J033FA04
4J033FA08
4J033FA10
4J033HA28
4J033HB10
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB031
4J127BB041
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4J127BG171
4J127BG17Y
4J127CB301
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4J127CC162
4J127CC291
4J127DA52
4J127EA03
4J127EA12
4J127EA15
4J127FA18
4J127FA37
(57)【要約】 (修正有)
【課題】硬化時において、基板に対する高い密着性、高ガラス転移温度、低誘電特性及び優れたアルカリ現像性を示す、ポリマレイミド樹脂含有組成物、硬化性組成物、硬化物、絶縁材料及びレジスト部材を提供する。
【解決手段】以下の一般式(a-1)で表される芳香族アミン化合物(a-1)と、ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a-2)と、無水マレイン酸と、を反応原料(I)とするポリマレイミド樹脂(A)、並びに酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)を含有するポリマレイミド樹脂含有組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマレイミド樹脂(A)並びに酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)を含有するポリマレイミド樹脂含有組成物であって、
前記ポリマレイミド樹脂(A)は、下記一般式(1)で表される部分構造と、前記一般式(1)で表される部分構造と化学結合される一般式(T-1)で表される部分構造と、前記一般式(1)で表される部分構造と化学結合される一般式(T-2)で表される部分構造と、を有することを特徴とする、ポリマレイミド樹脂含有組成物。
【化1】
(上記一般式(1)中、R
13はそれぞれ独立して、炭素原子数1~18のアルキル基を表し、m
2は0以上4以下の整数を表し、n
1は平均繰り返し単位数を表し、2つの*はそれぞれ結合手を表し、一方の結合手が下記一般式(T-1)中のL
13又はL
14の位置で化学結合され、他方の結合手が下記一般式(T-2)中のL
11又はL
12の位置で化学結合されることを表す。)
【化2】
(上記一般式(T-1)又は(T-2)中、R
11及びR
15はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、
R
12及びR
14はそれぞれ独立して、炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、
L
11~L
14はそれぞれ独立して、結合手又は水素原子を表し、但し、L
11又はL
12の位置において一般式(1)で表される部分構造と化学結合され、かつL
13又はL
14の位置において一般式(1)で表される部分構造と化学結合され、また、一般式(1)で表される部分構造と化学結合しないL
11~L
14は、水素原子であり、
m
1及びm
3はそれぞれ2を表す。)
【請求項2】
前記ポリマレイミド樹脂(A)は、以下の一般式(a-1)で表される芳香族アミン化合物(a-1)と、ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a-2)と、無水マレイン酸と、を反応原料(I)とする、請求項1に記載のポリマレイミド樹脂含有組成物。
【化3】
(上記一般式(a-1)中、R
a1及びR
a2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、R
1は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、R
2及びR
3はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~18の炭化水素基を表す。)
【請求項3】
ポリマレイミド樹脂混合物並びに酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)を含有するポリマレイミド樹脂含有組成物であって、
前記ポリマレイミド樹脂混合物は、下記一般式(1a)で表される部分構造単位を有するポリマレイミド樹脂成分と、下記一般式(2)で表されるマレイミド多量体化合物と、を含有し、
前記ポリマレイミド樹脂成分の総量に対して、請求項1又は2のポリマレイミド樹脂(A)を1~99質量%含有し、
ポリマレイミド樹脂混合物の総量に対して、前記マレイミド多量体化合物を80質量%以下含有する、ポリマレイミド樹脂含有組成物。
【化4】
(上記一般式(1a)中、R
11は水素原子又は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、R
12は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、R
13はそれぞれ独立して、炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、m
1は2を表し、m
2は0以上4以下の整数を表し、n
1は平均繰り返し単位数を表す。)
【化5】
(上記一般式(2)中、R
21及びR
25はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、R
22及びR
24はそれぞれ独立して、炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、m
21は2を表し、m
23は3を表し、n
21は1以上5以下の整数を表す。)
【請求項4】
重合開始剤と、請求項1又は2に記載のポリマレイミド樹脂含有組成物と、を含有する硬化性組成物。
【請求項5】
重合開始剤と、請求項3に記載のポリマレイミド樹脂混合物と、を含有する硬化性組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項7】
請求項5に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項4に記載の硬化性組成物を用いたことを特徴とする、絶縁材料。
【請求項9】
請求項4に記載の硬化性組成物を用いたことを特徴とする、レジスト部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリマレイミド樹脂含有組成物、硬化性組成物、硬化物、絶縁材料及びレジスト部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板上に電子部品を実装してはんだ付けする際に、実装部以外の部分にはんだが付着することを防止したり、配線の酸化又は腐食を半永久的に防止する被膜を形成する材料としてソルダーレジストが広く用いられている。このようなソルダーレジストのパターンを形成する技術としては、特に環境面の配慮等から、微細なパターンを正確に形成できる、アルカリ現像型の液状フォトレジスト法が主流となっている。
そして、近年における電子部品の高密度化実現のために、プリント配線板は微細化(ファイン化)、多層化及びワンボード化の一途をたどっており、実装方式も、表面実装技術(SMT)へと推移している。さらには、伝送信号の高速化に伴う高周波(ギガヘルツ帯)の利用のために、ソルダーレジスト膜も、ファイン化、高Tg(耐熱性)、高解像性、高精度、高信頼性及び低誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)の要求が高まっている。
【0003】
このような要求に対し、耐熱性及び低誘電特性を兼備する材料としてマレイミド樹脂が注目されている。特に、プリント基板用材料に使用するマレイミド樹脂としては、ファインパターン加工性、寸法安定性、耐熱性又は高周波電気特性にかかわる性能向上が要求される。例えば、特許文献1及び2には、新規なマレイミド樹脂を使用した硬化性組成物の硬化物が、耐熱性及び低誘電率を示す技術として開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-176190号公報
【特許文献2】特開2020-176191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリント基板用材料に使用するマレイミド樹脂には、熱硬化性樹脂としての扱いやすさ(作業性)も求められるため、主要な溶剤に対する優れた溶解性が特に必要となる。しかし、特許文献1のマレイミド樹脂は、無置換のアニリンを使用しているため、当該アニリン由来の芳香環の電子密度が低く、キシレンホルマリン樹脂との反応性が低くなりやすい。また、上記特許文献1の技術は、無置換のアニリンを使用しているため、アニリン芳香環のアミノ基のオルト位及びパラ位に3つの反応点を有する。その結果、3次元的な結合形成反応が進行しやすく、分子量制御が困難となりやすい。さらに、3次元的な結合が形成されたマレイミド樹脂は、マレイミド基近傍の立体障害が大きくなりやすく、硬化反応において未反応のマレイミド基の残存が懸念される。実際、無置換のアニリンを使用した特許文献1のマレイミド樹脂では耐熱性が不十分である。また、特許文献2の芳香族アミン樹脂中のアニリン環は、2位と6位がアルキル基に置換された構造であるため、芳香族アミン樹脂の生成時には副生物としてメチレンビス(2,6-ジアルキルアニリン)が生じることになる。メチレンビス(2,6-ジアルキルアニリン)由来のマレイミド化物は低分子量体で結晶性が高い傾向にあることから、溶媒に対する溶解性を低下するという新たな問題が生じる。しかし、特許文献2の技術では、溶剤に対する溶解性については一切検討されていない。
そこで、本開示が解決しようとする技術的課題は、溶剤に対する高い溶解性を有し、硬化時において、基板に対する高い密着性、高ガラス転移温度、低誘電特性及び優れたアルカリ現像性を示す、ポリマレイミド樹脂含有組成物、硬化性組成物、硬化物、絶縁材料及びレジスト部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上述した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、所定の化学構造を有するポリマレイミド樹脂と酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)とを組み合わせることにより、組成物全体として、硬化時において、基板に対する高い密着性、高ガラス転移温度、低誘電特性及び優れたアルカリ現像性を示す、ポリマレイミド樹脂含有組成物、並びに硬化性組成物及びその硬化物が得られることを見いだし、以下のポリマレイミド樹脂含有組成物を完成するに至った。
【0007】
[1]ポリマレイミド樹脂(A)並びに酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)を含有するポリマレイミド樹脂含有組成物であって、
前記ポリマレイミド樹脂(A)は、下記一般式(1)で表される部分構造と、前記一般式(1)で表される部分構造と化学結合される一般式(T-1)で表される部分構造と、前記一般式(1)で表される部分構造と化学結合される一般式(T-2)で表される部分構造と、を有することを特徴とする、ポリマレイミド樹脂含有組成物。
【化1】
(上記一般式(1)中、R
13はそれぞれ独立して、炭素原子数1~18のアルキル基を表し、m
2は0以上4以下の整数を表し、n
1は平均繰り返し単位数を表し、2つの*はそれぞれ結合手を表し、一方の結合手が下記一般式(T-1)中のL
13又はL
14の位置で化学結合され、他方の結合手が下記一般式(T-2)中のL
11又はL
12の位置で化学結合されることを表す。)
【化2】
(上記一般式(T-1)又は(T-2)中、R
11及びR
15はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、
R
12及びR
14はそれぞれ独立して、炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、
L
11~L
14はそれぞれ独立して、結合手又は水素原子を表し、但し、L
11又はL
12の位置において一般式(1)で表される部分構造と化学結合され、かつL
13又はL
14の位置において一般式(1)で表される部分構造と化学結合され、また、一般式(1)で表される部分構造と化学結合しないL
11~L
14は、水素原子であり、
m
1及びm
3はそれぞれ2を表す。)
【0008】
[2]前記ポリマレイミド樹脂(A)は、以下の一般式(a-1)で表される芳香族アミン化合物(a1)と、ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)と、無水マレイン酸と、を反応原料(I)とする、[1]に記載のポリマレイミド樹脂含有組成物。
【化3】
(上記一般式(a-1)中、R
a1及びR
a2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、R
1は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、R
2及びR
3はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~18の炭化水素基を表す。)
【0009】
[3]ポリマレイミド樹脂混合物並びに酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)を含有するポリマレイミド樹脂含有組成物であって、
前記ポリマレイミド樹脂混合物は、下記一般式(1a)で表される部分構造単位を有するポリマレイミド樹脂成分と、下記一般式(2)で表されるマレイミド多量体化合物と、を含有し、
前記ポリマレイミド樹脂成分の総量に対して、[1]又は[2]のポリマレイミド樹脂(A)を1~99質量%含有し、
ポリマレイミド樹脂混合物の総量に対して、前記マレイミド多量体化合物を80質量%以下含有する、ポリマレイミド樹脂含有組成物。
【化4】
(上記一般式(1a)中、R
11は水素原子又は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、R
12は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、R
13はそれぞれ独立して、炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、m
1は2を表し、m
2は0以上4以下の整数を表し、n
1は平均繰り返し単位数を表す。)
【化5】
(上記一般式(2)中、R
21及びR
25はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、R
22及びR
24はそれぞれ独立して、炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、m
21は2を表し、m
23は3を表し、n
21は1以上5以下の整数を表す。)
【0010】
[4]重合開始剤と、[1]又は[2]に記載のポリマレイミド樹脂含有組成物と、を含有する硬化性組成物。
【0011】
[5]重合開始剤と、[3]に記載のポリマレイミド樹脂混合物と、を含有する硬化性組成物。
【0012】
[6][4]に記載の硬化性組成物の硬化物。
【0013】
[7][5]に記載の硬化性組成物の硬化物。
【0014】
[8][4]に記載の硬化性組成物を用いたことを特徴とする、絶縁材料。
【0015】
[9][4]に記載の硬化性組成物を用いたことを特徴とする、レジスト部材。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、中間体アミン化合物(c-1)のFD-MSスペクトルチャートを示す。
【
図2】
図2は、中間体アミン化合物(c-1)の
13C―NMRチャートを示す。
【
図3】
図3は、ポリマレイミド樹脂(A-1)のGPCチャートを示す。
【
図4】
図4は、ポリマレイミド樹脂(A-1)のFD-MSスペクトルチャートを示す。
【
図5】
図5は、ポリマレイミド樹脂(A-1)の
13C―NMRチャートを示す。
【
図6】
図6は、中間体アミン化合物(c-2)のFD-MSスペクトルチャートを示す。
【
図7】
図7は、中間体アミン化合物(c-2)の
13C―NMRチャートを示す。
【
図8】
図8は、ポリマレイミド樹脂(A-2)のGPCチャートを示す。
【
図9】
図9は、ポリマレイミド樹脂(A-2)のFD-MSスペクトルチャートを示す。
【
図10】
図10は、ポリマレイミド樹脂(A-2)の
13C―NMRチャートを示す。
【
図11】
図11は、比較用中間体アミン化合物(c1)のFD-MSスペクトルチャートを示す。
【
図12】
図12は、比較用中間体アミン化合物(c1)の
13C―NMRチャートを示す。
【
図13】
図13は、比較用マレイミド樹脂(c1)のFD-MSスペクトルチャートを示す。
【
図14】
図14は、比較用マレイミド樹脂(c1)の
13C―NMRチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態(「本実施形態」と称する。)について詳細に説明するが、本開示は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0018】
[用語]
本明細書において特段の記載が無い限り、以下の用語を適用できる。
本明細書における「反応原料」とは、化合又は分解といった化学反応により目的の化合物を得るために用いられ、目的の化合物の化学構造を部分的に構成する化合物をいい、溶媒、触媒といった、化学反応の助剤の役割を担う物質は除外される。本明細書では特に、「反応原料」とは、ポリマレイミド樹脂(A)又はその前駆体化合物(例、芳香族アミン化合物(a1)同士がベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)由来の構造単位を介して連結された中間体アミン化合物(c))を化学反応により得るための前駆体をいう。
本明細書における「構造単位」とは、反応又は重合時に形成される化学構造の単位をいい、換言すると、反応又は重合よりに形成される生成化合物において、当該反応又は重合に関与する化学結合の構造以外の部分構造をいい、いわゆる残基をいう。また、重合の場合は繰り返し単位とも称する。
本明細書における「芳香族基」は、炭素原子数3~30の芳香族環を有することが好ましく、炭素原子数4~26の芳香族環を有することがより好ましい。そして、本明細書における「芳香族基」は、当該芳香族基中の芳香族環の水素原子が、置換基、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。また、「芳香族基」は、複素芳香族を含み、「芳香族基」中の-CH2-又は-CH=が互いに隣接しないよう、-O-、-S-又は-N=に置換されてもよい。
当該芳香族環の種類は、例えば、単環芳香族環、縮環芳香族環又は環集合芳香族環等が挙げられる。前記単環芳香族環としては、例えば、ベンゼン、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン等が挙げられる。前記縮環芳香族環としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、プテリジン、クマリン、インドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、アクリジン等が挙げられる。前記環集合芳香族環としては、例えば、ビフェニル、ビナフタレン、ビピリジン、ビチオフェン、フェニルピリジン、フェニルチオフェン、テルフェニル、ジフェニルチオフェン、クアテルフェニル等が挙げられる。また、当該芳香族基中の芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。なお、一価の芳香族基とは、「芳香族基」中の水素原子を1つ除いた基をいう。
本明細書における「アルキル基」は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、(n-)ヘプチル基、(n-)オクチル基、(n-)ノニル基、(n-)デシル基、(n-)ウンデシル基、(n-)ドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基又はアダマンチル基が挙げられる。
本明細書における「シクロアルキル基」は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基又はアダマンチル基等が挙げられる。
本明細書における「アルキルチオ基」は、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、オクチルチオ基又は2-エチルヘキシルチオ基が挙げられる。
本明細書における「アルケニル基」は、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ビニル基、アリル基又はイソプロペニル基等が挙げられる。なお、「アルケニレン基」は、前記「アルケニル基」から任意の水素原子を1つ除いた二価の基が挙げられる。
本明細書における「アルコキシ基」は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基又はノニルオキシ基等が挙げられる。
本明細書における「アリール基」は、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントリル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基、テトラリニル基等が挙げられる。また、当該「アリール基」は、当該アリール基中の芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。
本明細書における「アラルキル基」としては、例えば、ベンジル基、ジフェニルメチル基、ビフェニル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。当該アラルキル基中の芳香族環の水素原子が、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されてもよい。
本明細書における「アリールオキシ基」は、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、アンスリルオキシ基、フェナントリルオキシ基又はピレニルオキシ基等が挙げられる。
本明細書における「アリールチオ基」は、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アンスリルチオ基、フェナントリルチオ基又はピレニルチオ基等のアリールチオ基が挙げられる。
本明細書における「ハロゲン原子」は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等が挙げられる。
本明細書における「アルキレン基」は、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、1-メチルメチレン基、1,1-ジメチルメチレン基、1-メチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基等が挙げられる。
本明細書における「アルキレンオキシ基」は、例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシ(1-メチルメチレン)基、オキシ(1,1-ジメチルメチレン)基、オキシ(1-メチルエチレン)基、オキシ(1,1-ジメチルエチレン)基、オキシ(1,2-ジメチルエチレン)基、オキシブチレン基、オキシ(1-メチルプロピレン)基、オキシ(2-メチルプロピレン)基、オキシペンチレン基、オキシヘキシレン基、オキシヘプチレン基、オキシオクチレン基、オキシノニレン基、オキシデシレン基、オキシウンデシレン基、オキシドデシレン基等が挙げられる。
本明細書における「炭化水素基」は、一価の基であり、直鎖状、分岐状又は環状の飽和炭化水素、不飽和炭化水素、あるいは芳香族基を含む。例えば、「炭化水素基」は、アルキル基(例えば、上記アルキル基)、アルケニル基(例えば、上記アルケニル基)、アリール基(例えば、上記アリール基)、アリールオキシ基(例えば、上記アリールオキシ基)、アラルキル基(例えば、上記アラルキル基)及びアルコキシ基(例えば、上記アルコキシ基)からなる群から選択される1種の基であり、かつ当該基中の1以上の-CH2-が、互いに隣接しないよう、-O-、-C(=O)-又は-S-に置換されてもよく、あるいは当該アルキル基中の1以上の-CH2-CH2-が、互いに隣接しないよう、-CH=CH-に置換されてもよい。
【0019】
[ポリマレイミド樹脂含有組成物]
本開示のポリマレイミド樹脂含有組成物は、ポリマレイミド樹脂(A)並びに酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)を含有する。また、本開示のポリマレイミド樹脂含有組成物は、ポリマレイミド樹脂(A)の代わりに当該ポリマレイミド樹脂(A)を含有するポリマレイミド樹脂混合物と、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)とを含有してもよい。これにより、硬化時において、基板に対する高い密着性、高ガラス転移温度(耐熱性)、低誘電特性及び優れたアルカリ現像性を示す、ポリマレイミド樹脂含有組成物、硬化性組成物、硬化物、絶縁材料及びレジスト部材を提供できる。
【0020】
本実施形態において、ポリマレイミド樹脂(A)の含有量は、密着性、耐熱性及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、ポリマレイミド樹脂含有組成物の総量(100質量%)に対して、1~50質量%の範囲が好ましい。ポリマレイミド樹脂(A)の含有量の上限又は下限は、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、また、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
また、本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)の含有量は、ポリマレイミド樹脂含有組成物の総量(100質量%)に対して、10~95質量%の範囲が好ましい。また、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)の含有量の上限又は下限は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、また、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。
本実施形態において、ポリマレイミド樹脂(A)と、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)との固形分の質量比[(A)/(B)]は、現像性、密着性、耐熱性及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、5/95~50/50の範囲が好ましい。同様の観点から、上記質量比[(A)/(B)]の上限又は下限は、10/90以上であることがより好ましく、20/80以上であることが更に好ましく、また、40/60以下であることがより好ましい。
【0021】
本実施形態におけるポリマレイミド樹脂含有組成物は、必須成分であるポリマレイミド樹脂(A)(以下単に(A)成分とも称する。)並びに酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)(以下単に(B)成分とも称する。)以外、任意成分として、任意添加成分をさらに含有してもよい。
また、本実施形態におけるポリマレイミド樹脂含有組成物は(A)成分、(B)成分及び任意添加成分のみから、実質的に構成されてもよい。さらには、(A)成分及び(B)成分のみから構成されてもよい。
本実施形態のポリマレイミド樹脂含有組成物の総量(100質量%)における(A)成分及び(B)成分の合計含有量は、現像性、密着性、耐熱性及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、また、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。
上記(A)成分、(B)成分及び任意添加成分のみからなる」とは、ポリマレイミド樹脂含有組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは80~100質量%、又は少なくとも90~95質量%が(A)成分及び(B)成分である、あるいは(A)成分、(B)成分及び任意添加成分であることを意味する。
なお、本実施形態のポリマレイミド樹脂含有組成物は、本開示の効果を損なわない範囲あれば、(A)成分、(B)成分及び任意添加成分の他に不可避不純物を含んでいてもよい。
以下、本実施形態におけるポリマレイミド樹脂含有組成物に含有される各成分である、ポリマレイミド樹脂(A)、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)及び任意添加成分について説明する。
【0022】
<ポリマレイミド樹脂(A)((A)成分)>
本実施形態にかかるポリマレイミド樹脂(A)は、下記一般式(1)で表される部分構造と、前記一般式(1)で表される部分構造と化学結合される一般式(T-1)で表される部分構造と、前記一般式(1)で表される部分構造と化学結合される一般式(T-2)で表される部分構造と、を有する樹脂である。
【化6】
(上記一般式(1)中、R
13はそれぞれ独立して、炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、m
2は0以上4以下の整数を表し、n
1は平均繰り返し単位数を表し、2つの*はそれぞれ結合手を表し、一方の結合手が下記一般式(T-1)中のL
13又はL
14の位置で化学結合され、他方の結合手が下記一般式(T-2)中のL
11又はL
12の位置で化学結合されることを表す。)
【化7】
(上記一般式(T-1)又は(T-2)中、R
11及びR
15はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、
R
12及びR
14はそれぞれ独立して、炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、
L
11~L
14はそれぞれ独立して、結合手又は水素原子を表し、但し、L
11又はL
12の位置において一般式(1)で表される部分構造と化学結合され、かつL
13又はL
14の位置において一般式(1)で表される部分構造と化学結合され、また、一般式(1)で表される部分構造と化学結合しないL
11~L
14は、水素原子であり、m
1は2を表し、m
3は2を表す。)
これにより、溶剤に対する高い溶解性を有し、かつ硬化時において低誘電正接及び高耐熱性を示す。本実施形態のポリマレイミド樹脂(A)の化学構造は、マレイミド基が結合されたベンゼン環のオルト位及びパラ位にそれぞれ結合サイトを1つしか有していないため、直鎖状に鎖が伸長するポリマレイミド樹脂(A)が得られることから分子量制御が容易であり、耐熱性と、低誘電特性と、溶剤溶解性との両立が可能となる。
【0023】
上記一般式(1)において、2つの*はそれぞれ結合手を表す。そして、2つの結合手のうち一方の結合手は、上記一般式(T-1)中のL13又はL14の位置で化学結合される。また、他方の結合手は、上記一般式(T-2)中のL11又はL12の位置で化学結合される。したがって、本実施形態のポリマレイミド樹脂(A)は、一般式(T-1)で表される部分構造と一般式(T-2)で表される部分構造とが一般式(1)で表される部分構造により連結された構造単位を有し、一般式(T-1)及び一般式(T-2)中のベンゼン環上のマレイミド基に対するパラ位又は1つのオルト位において、一般式(1)で表される部分構造が化学結合されている。
なお、上記一般式(1)中、n1が2以上である場合、複数存在するR13は互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。m2が2以上である場合、複数存在するR13は互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。
【0024】
上記一般式(1)中、R13はそれぞれ独立して、炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、炭素原子数1~12の炭化水素基を表すことが好ましく、炭素原子数1~6の炭化水素基を表すことがより好ましい。また、m2が2以上の整数である場合、複数存在するR13は互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。一般式(1)中の好ましいR13としては、直鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基又はネオペンチル基であることがより好ましい。
なお、一般式(1)中のR13が結合したベンゼン環は、後述のベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)のベンゼン環でありうる。
【0025】
上記一般式(1)中、m2は0以上4以下の整数を表し、2以下の整数であることが好ましく、2であることが更に好ましい。なお、一般式(1)中のR13が結合されたベンゼン環において、1位及び3位がメチレン基により結合されている場合、4位及び6位にR13がそれぞれ結合されていることが好ましい。
上記一般式(1)中、n1は平均繰り返し単位数を表し、得られるポリマレイミド樹脂(A)の粘度の観点から、好ましくは0以上50以下、好ましくは0以上30以下、好ましくは0以上15以下である。当該平均繰り返し単位数は、後述の実施例の欄に示す通り、仕込み比又はNMRなどから算出することができる。
【0026】
本実施形態におけるポリマレイミド樹脂(A)は、当該ポリマレイミド樹脂(A)の総量(100質量%)に対して、一般式(1)で表される部分構造を1~99質量%含有することが好ましく、3~97質量%含有することがより好ましく、5~95質量%含有することがさらに好ましい。
【0027】
上記一般式(T-1)中、R15はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子又は炭素原子数1~12の炭化水素基、より好ましくは水素原子又は炭素原子数1~6の炭化水素基を表す。特に好ましいR15としては、水素原子又は炭素原子数1~6の直鎖状のアルキル基でありうる。m3が2であるため、2つのR15は互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。
上記一般式(T-1)中、R14はそれぞれ独立して、炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、好ましくは炭素原子数1~12の炭化水素基、より好ましくは炭素原子数1~6の炭化水素基を表す。特に好ましいR14としては、炭素原子数1~6の直鎖状のアルキル基でありうる。
上記一般式(T-1)又は上記一般式(T-2)のベンゼン環のオルト位(6位)において、一般式(1)で表される部分構造との結合部位を許容することにより、溶剤に対するより高い溶解性を有し、かつ硬化時においてより優れた低誘電正接及び高耐熱性を示す。なお、一般式(T-1)中のR14が結合したベンゼン環は、後述の芳香族アミン化合物(a1)のベンゼン環でありうる。
上記一般式(T-1)中、L13又はL14はそれぞれ独立して、結合手又は水素原子を表す。但し、L13又はL14の少なくとも一方の位置において一般式(1)で表される部分構造と一般式(T-1)で表される部分構造とは化学結合される。また、一般式(1)で表される部分構造と化学結合しないL13又はL14は、水素原子である。なお、L13及びL14の2か所それぞれに対して一般式(1)で表される部分構造が化学結合されてもよい。
【0028】
上記一般式(T-2)中、R11はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子又は炭素原子数1~12の炭化水素基、より好ましくは水素原子又は炭素原子数1~6の炭化水素基を表す。好ましいR11としては、水素原子又は炭素原子数1~6の直鎖状のアルキル基でありうる。m1が2であるため、2つのR11は互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。
上記一般式(T-2)中、R12はそれぞれ独立して、炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、好ましくは炭素原子数1~12の炭化水素基、より好ましくは炭素原子数1~6の炭化水素基を表す。好ましいR12としては、炭素原子数1~6の直鎖状のアルキル基を表す。
なお、一般式(T-2)中のR12が結合したベンゼン環は、後述の芳香族アミン化合物(a1)のベンゼン環でありうる。
上記一般式(T-2)中、L11又はL12はそれぞれ独立して、結合手又は水素原子を表す。但し、L11又はL12の少なくとも一方の位置において一般式(1)で表される部分構造と一般式(T-2)で表される部分構造とは化学結合される。また、一般式(1)で表される部分構造と化学結合しないL11又はL12は、水素原子である。なお、L11及びL12の2か所それぞれに対して一般式(1)で表される部分構造が化学結合されてもよい。
【0029】
本実施形態におけるポリマレイミド樹脂(A)は、当該ポリマレイミド樹脂(A)の総量(100質量%)に対して、一般式(T-1)で表される部分構造を1~99質量%含有することが好ましく、3~97質量%含有することがより好ましく、5~95質量%含有することがさらに好ましい。
本実施形態におけるポリマレイミド樹脂(A)は、当該ポリマレイミド樹脂(A)の総量(100質量%)に対して、一般式(T-2)で表される部分構造を1~99質量%含有することが好ましく、3~97質量%含有することがより好ましく、5~95質量%含有することがさらに好ましい。
【0030】
本開示のポリマレイミド樹脂(A)の別の態様は、下記一般式(a-1)で表される芳香族アミン化合物(a1)(以下、単に芳香族アミン化合物(a1)とも称する。)と、ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)と、無水マレイン酸とを反応原料(1)とする樹脂である。
すなわち、本開示のポリマレイミド樹脂(A)は、上記した通り、上記一般式(1)で表される部分構造と、前記一般式(1)で表される部分構造と化学結合される一般式(T-1)で表される部分構造と、前記一般式(1)で表される部分構造と化学結合される一般式(T-2)で表される部分構造と、を有する樹脂である。しかし、別の表現方法を用いると、本開示のポリマレイミド樹脂(A)は、下記一般式(a-1)で表される芳香族アミン化合物(a1)と、ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)と、無水マレイン酸とを反応原料(1)とする樹脂である。
【化8】
(上記一般式(a-1)中、R
a1及びR
a2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、R
1は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、R
2及びR
3はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~18の炭化水素基を表す。)
また、本開示のポリマレイミド樹脂(A)のより好ましい表記方法としては、上記2つの特定表現を並記することであり、具体的には、本開示のポリマレイミド樹脂(A)は、上記一般式(1)で表される部分構造と、前記一般式(1)で表される部分構造と化学結合される上記一般式(T-1)で表される部分構造と、前記一般式(1)で表される部分構造と化学結合される上記一般式(T-2)で表される部分構造と、を有する樹脂であって、かつ上記一般式(a-1)で表される芳香族アミン化合物(a1)と、ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)と、無水マレイン酸と、を反応原料(1)とする樹脂であることが好ましい。
【0031】
また、本実施形態のポリマレイミド樹脂(A)は、芳香族アミン化合物(a1)同士がベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)由来の構造単位を介して連結された中間体アミン化合物(c)と、無水マレイン酸とを反応原料(2)とする。さらには、前記中間体アミン化合物(c)は、芳香族アミン化合物(a1)と、ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)と、を反応原料(3)とする化合物である。
換言すると、本実施形態における中間体アミン化合物(c)は、アミノ基が結合された芳香環を有する芳香族アミン化合物(a1)の構造単位と、ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)由来の構造単位とが化学結合により連結された構造単位を有することが好ましい。そして、本実施形態におけるポリマレイミド樹脂(A)は、前記中間体アミン化合物(c)の芳香環に結合したアミノ基がN-置換マレイミド環に置換された構造を有する。なお、本明細書における「アミノ基」は、-NH2の水素原子がさらに炭素原子数1~6のアルキル基で置換された置換アミノ基も含む。
したがって、本実施形態における「ポリマレイミド樹脂(A)」と、当該「ポリマレイミド樹脂(A)」の前駆体である「中間体アミン化合物(c)」とは、芳香環に結合したアミノ基がN-置換マレイミド環に置き換わっている点が異なる重合体化合物である。
なお、上記芳香族アミン化合物(a1)の構造単位とは、芳香族アミン化合物(a1)の芳香環から少なくとも1つの水素原子を取り除いた基をいう。例えば、芳香族アミン化合物(a1)が後述の一般式(a-1)で表される場合、一般式(a-1)のベンゼン環から少なくとも1つの水素原子を取り除いた基を芳香族アミン化合物(a1)の構造単位という。また、上記ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)由来の構造単位とは、ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)中の末端基以外の-(CH2O)-が、-(CH2)-に置換され、かつベンゼン環に直接結合された-(CH2O)-Rbが全て-(CH2)-に置換された基をいう。なお、前記Rbは、水素原子又は炭素原子数1~18の炭化水素基を表す。
本実施形態において、特定位置に置換基を有する芳香環構造を有する芳香族アミノ化合物(a)を反応原料としていることから、後述のベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)との反応部位を制御しやすくなるため、均質な化学構造、かつ、鎖状のポリマレイミド樹脂(A)が得られやすくなり、その結果、溶剤への優れた溶解性や硬化時における高耐熱性及び低誘電正接性を示すポリマレイミド樹脂(A)を含有するポリマレイミド樹脂含有組成物を提供しうる。
【0032】
以下、ポリマレイミド樹脂(A)の反応原料(1)の構成成分である、一般式(a-1)で表される芳香族アミン化合物(a1)と、ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)と、無水マレイン酸について説明した後、ポリマレイミド樹脂(A)の別の好ましい形態及びポリマレイミド樹脂(A)の製造方法について説明する。
【0033】
-一般式(a-1)で表される芳香族アミン化合物(a1)-
本実施形態における芳香族アミン化合物(a1)は、以下の一般式(a-1)で表されるように、アミノ基が結合された芳香環を有し、かつ前記芳香環のオルト位の一つに炭素原子数1~18の炭化水素基が結合された構造を必須とする。
【化9】
(上記一般式(a-1)中、R
a1及びR
a2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、R
1は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、R
2及びR
3はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~18の炭化水素基を表す。)
【0034】
本実施形態の芳香族アミン化合物(a1)において、当該芳香族アミン化合物(a1)の芳香環の1以上2以下の水素原子に置換されてもよい炭化水素基(R2,R3)としては、直鎖、分岐状又は環状の炭素原子数1~18の炭化水素基が挙げられ、直鎖又は分岐状の炭素原子数1~12の炭化水素基が好ましく、直鎖又は分岐状の炭素原子数1~6のアルキル基がより好ましい。上記一般式(a-1)に記載の通り、芳香環のオルト位とパラ位のそれぞれ1つにベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)との結合部位を有する。
上記一般式(a-1)中、R1は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、炭素原子数1~12の炭化水素基が好ましく、炭素原子数1~6の炭化水素基がより好ましい。
上記一般式(a-1)中、R2は水素原子又は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、炭素原子数1~12の炭化水素基が好ましく、炭素原子数1~6の炭化水素基がより好ましい。
上記一般式(a-1)中、R3は水素原子又は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、炭素原子数1~12の炭化水素基が好ましく、炭素原子数1~6の炭化水素基がより好ましい。
【0035】
また、芳香族アミン化合物(a1)の芳香環に置換される炭化水素基(例えばアルキル基)の数を1以上にすることにより、後述のベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)と反応部位を制御しやすくなるため、特定の化学構造を有するポリマレイミド樹脂(A)が得られやすくなる。その結果、ポリマレイミド樹脂含有組成物の硬化物において、溶剤溶解性、耐熱性及び優れた高周波電気特性を発揮しやすくなる。
特に、芳香族アミン化合物(a1)のオルト位(近接位)への置換基(R1)を導入していることから、当該芳香族アミン化合物(a1)由来のアミノ基をマレイミド化した後において、アニリン骨格の芳香環平面とマレイミドの含窒素五員環平面とからなる二面角が大きくなることでマレイミド基由来の結晶性が崩れやすくなり、溶解性が向上すると考えられる。
【0036】
本実施形態において、芳香族アミン化合物(a1)を構成するベンゼン環中の炭素原子のうち、最も大きいHOMOの電子密度(ヒュッケル係数)を有する炭素原子が1以上無置換である(水素原子に置換されている)ことが好ましい。そのため、本実施形態の一般式(a-1)で表される芳香族アミン化合物(a1)としては、2、4、6位のいずれか2つが水素原子に置換されていることが好ましい。本実施形態の一般式(a-1)で表される芳香族アミン化合物(a1)の特に好ましい形態としては、2位がアルキル基に置換され、かつ4位及び6位が水素原子である。
これにより、後述のベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)から形成されるカチオノイド試剤によるArSE反応及び分子設計を制御しやすくなる。その結果、ポリマレイミド樹脂の硬化物において、溶剤溶解性、耐熱性及び低誘電特性を発揮しやすくなる。特に、一般式(a-1)のベンゼン環の4,6位を水素原子で置換することにより、直鎖状に分子が伸長したポリマレイミド樹脂(A)(又は中間体アミン樹脂(c))を得ることができる。
【0037】
本実施形態の芳香族アミン化合物(a1)の具体例としては、例えば、o-トルイジン、2-エチルアニリン、2-プロピルアニリン、2-ブチルアニリン、2-シクロブチルアニリン、2-シクロペンチルアニリン、2-シクロヘキシルアニリン、ジメチルアニリン(2,3-キシリジン、2,4-キシリジン若しくは2,5-キシリジン)、ジエチルアニリン(2,3-ジエチルアニリン、2,4-ジエチルアニリン若しくは2,5-ジエチルアニリン)、ジイソプロピルアニリン(2,3-ジイソプロピルアニリン、2,4-ジイソプロピルアニリン若しくは2,5-ジイソプロピルアニリン)、エチルメチルアニリン(例えば、2,3位、2,4位若しくは2,5位のいずれか一方がメチル基であり、他方がエチル基であるエチルメチルアニリン)、メチルイソプロピルアニリン(例えば、2,3位、2,4位若しくは2,5位のいずれか一方がメチル基であり、他方がイソプロピル基であるメチルイソプロピルアニリン)、あるいはエチルブチルアニリン(例えば、2,3位、2,4位若しくは2,5位のいずれか一方がエチル基であり、他方がブチル基であるエチルブチルアニリン)等を用いることができる。また前記ブチルは、n-ブチル,tert-ブチル及びsec-ブチルを含む。なお、本実施形態における芳香族アミン化合物(a1)は、単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
例えば、N-フェニルマレイミドのように、無置換のベンゼン環にマレイミド基が直接結合する化学構造の場合、ベンゼン環とマレイミドの5員環が、同一平面上に並んだ状態が安定なため、スタッキングしやすくなり、高い結晶性が発現してしまう。そのため、溶剤溶解性が劣る原因となる。これに対して、本開示の場合、例えば、2-エチルアニリンのように、ベンゼン環に対する置換基として、アルキル基(例えば、エチル基)を有する場合、エチル基の立体障害からベンゼン環とマレイミドの5員環とがねじれた配座をとり、スタッキングしにくくなることから結晶性が低下し、溶剤溶解性が向上し、好ましい態様となる。但し、立体障害が大きすぎる場合あるいはアルキル基の置換位置によっては、マレイミド化の合成時における反応性を阻害することや、硬化物を作製する際にマレイミド基の硬化性が悪化することも懸念されるため、例えば、炭素原子数1~6の炭化水素基を有する芳香族アミン化合物(a1)を使用することが好ましい。
なお、本実施形態において、上記一般式(a-1)で表される芳香族アミン化合物(a1)は、単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
-ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)-
本実施形態におけるベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)は、化合物単体であっても混合物であってもよい。本実施形態におけるベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)が化合物単体である場合、後述の式(a2)で表される部分構造を有する化合物であることが好ましく、後述の式(a2-1)で表される化合物であることがより好ましく、後述の式(a2-2)で表される化合物であることがさらに好ましい。
一方、本実施形態におけるベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)が混合物である場合、下記の式(a2)で表される部分構造を有する化合物及び/又は下記の式(a2-1)で表されるベンジルエーテル骨格を有する化合物を含む混合物だけでなく、下記一般式(a2-3)で表される部分構造を有する成分が全体の95質量%以上100質量%以下を占有する混合物であることが好ましい。
本実施形態におけるベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)は、下記の式(a2)で表されるベンジルエーテル骨格を有している化合物であることが好ましい。
【化10】
(上記一般式(a2)中、R
b3はそれぞれ独立して、炭素原子数1~18のアルキル基を表し、m
b2は0以上4以下の整数を表し、j
1及びj
2はそれぞれ独立して、0以上4以下の整数であり、j
1+j
2≧1であり、k
1及びk
2はそれぞれ独立して、0又は1であり、*は他の原子との結合を表す。)
本実施形態におけるベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)は、アルキルベンゼンとホルムアルデヒドとを酸触媒下で反応した生成物であることが好ましい。
【0040】
--ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)の物性--
本実施形態におけるベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)は、上記一般式(a2)で表されるベンジルエーテル骨格を有し、かつ以下の物性値を少なくとも1つ満たすことが好ましい。これにより、より優れた、溶剤溶解性、耐熱性及び誘電特性を発揮しうる樹脂を合成しうる。
本実施形態におけるベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)の数平均分子量(Mn)の上限は、1200以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましく、500以下であることがさらに好ましい。ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)の数平均分子量(Mn)の下限は、200以上であることが好ましく、240以上であることがより好ましく、250以上であることがさらに好ましい。
本実施形態におけるベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)の含酸素率の上限は、15質量%以下であることが好ましく、13質量%以下であることがより好ましく、12質量%以下であることがさらに好ましい。ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)の含酸素率の下限は、4質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上であることがさらに好ましい。
本実施形態におけるベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)の比重の上限は、1.2未満であることが好ましく、より好ましくは1.15未満、さらに好ましくは1.10未満である。当該ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)の比重の下限は、1.0以上であることが好ましく、より好ましくは1.01以上、さらに好ましくは1.02以上である。
本実施形態におけるベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)の粘度(75℃)の上限は、1500mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1000mPa・s以下、さらに好ましくは900mPa・s以下である。ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)の粘度(75℃)の下限は、好ましくは30mPa・s以上、より好ましくは50mPa・s以上、さらに好ましくは70mPa・s以上である。
本実施形態におけるベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)の間接粘度(20℃)の上限は、1000mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは800mPa・s以下、さらに好ましくは500mPa・s以下である。ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)の間接粘度(20℃)の下限は、好ましくは10mPa・s以上、より好ましくは20mPa・s以上、さらに好ましくは30mPa・s以上である。
本実施形態におけるベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)の水酸基価は、好ましくは16~50(mgKOH/g)、より好ましくは18~40(mgKOH/g)、さらに好ましくは22~35(mgKOH/g)である。
【0041】
--ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)の好ましい形態--
本開示のポリマレイミド樹脂(A)の反応原料(1)であるベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)の一例は、下記一般式(a2-1)で表される構造単位を有する化合物であることが好ましい。
【化11】
(上記一般式(a2―1)中、R
b1はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~11のアルキル基を表し、当該アルキル基中の1以上の-CH
2-は、互いに隣接しないよう-O-又は-C(=O)-に置換されてもよく、
R
a22及びR
a23はそれぞれ独立して、炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、
L
1はそれぞれ独立して、炭素原子数1~11のアルキレン基を表し、当該アルキレン基中の1以上の-CH
2-は、互いに隣接しないよう-O-に置換されてもよく、
L
2は、単結合又は炭素原子数1~11のアルキレン基を表し、当該アルキレン基中の1以上の-CH
2-は、互いに隣接しないよう-O-又は-(C=O)-に置換されてもよく、
Z
1はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~11の炭化水素基を表し、
kは0以上20以下の整数を表し、
m
a21及びm
a22はそれぞれ独立して、0以上4以下の整数を表し、
R
a21又はL
2の少なくともいずれか一方に、-CH
2O-基を有する。)
【0042】
上記一般式(a2-1)中のRa21は、水素原子又は炭素原子数1~11の炭化水素基を表すことが好ましく、水素原子又は炭素原子数1~9の炭化水素基を表すことがより好ましく、当該炭化水素基中の1以上の-CH2-は、互いに隣接しないよう-O-に置換されてもよい。好ましいRa21は、水素原子、炭素原子数1~9のアルキル基、炭素原子数1~9のアルコキシ基、炭素原子数1~9のヒドロキシアルキル基、-(CH2O)p1-C(=O)-Ra24、-(CH2O)p1-Ra24、-(CH2O)p1-(CH2)p2-Rb4、-(CH2)p3-(CH2O)p1-(CH2)p2-Ra24、-(OCH2)q1-Ra24、-(OCH2)q1-(CH2)q2-Ra24及び-(CH2)q3-(OCH2)q1-(CH2)q2-Ra24からなる群から選択される1種であることが好ましい。ここでRa24は、水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基を表す。また、p1~p3及びq1~q3はそれぞれ独立して、1~11の整数を表すことが好ましく、より好ましくは1~6の整数、さらに好ましくは1~3の整数、特に好ましくは1~2の整数である。
さらには、Ra21又はL2の少なくともいずれか一方に、-CH2O-基を有することが好ましく、Ra21及びL2の両方に、-CH2O-基を有することがより好ましい。
【0043】
上記一般式(a2-1)中のRa22及びRa23はそれぞれ独立して、一般式(1)中のR13に対応しうる。したがって、上記一般式(a2-1)中のRa22及びRa23は、一般式(1)と同様に、それぞれ独立して、炭素原子数1~18のアルキル基を表すことが好ましく、より好ましくは炭素原子数1~12のアルキル基、さらに好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基を表す。また、ma21が2以上の整数である場合、2以上のRa22は、互いに同一であっても、あるいはそれぞれ別の基であってもよい。同様に、ma22が2以上の整数である場合、2以上のRa23は、互いに同一であっても、あるいはそれぞれ別の基であってもよい。
【0044】
上記一般式(a2-1)中、L1はそれぞれ独立して、好ましくは炭素原子数1~11のアルキレン基、より好ましくは炭素原子数1~9のアルキレン基を表し、当該アルキレン基中の1以上の-CH2-は、互いに隣接しないよう-O-に置換されてもよい。具体的には、L1は、炭素原子数1~11のアルキレン基、炭素原子数1~11のアルキレンオキシ基、-(CH2O)p1-C(=O)-Ra24、-(CH2O)p1-Ra24、-(CH2O)p1-(CH2)p2-、-(CH2)p3-(CH2O)p1-(CH2)p2-、-(OCH2)q1-、-(OCH2)q1-(CH2)q2-及び-(CH2)q3-(OCH2)q1-(CH2)q2-からなる群から選択される1種であることが好ましい。また、p1~p3及びq1~q3はそれぞれ独立して、1~11の整数を表すことが好ましく、より好ましくは1~6の整数、さらに好ましくは1~3の整数、特に好ましくは1~2の整数である。
【0045】
上記一般式(a2-1)中、L2はそれぞれ独立して、好ましくは単結合又は炭素原子数1~11のアルキレン基、より好ましくは単結合又は炭素原子数1~9のアルキレン基を表し、当該アルキレン基中の1以上の-CH2-は、互いに隣接しないよう-O-に置換されてもよい。具体的には、L2は、単結合、炭素原子数1~11のアルキレン基、炭素原子数1~11のアルキレンオキシ基、-(CH2O)p1-C(=O)-、-(CH2O)p1-、-(CH2O)p1-(CH2)p2-、-(CH2)p3-(CH2O)p1-(CH2)p2-、-(OCH2)q1-、-(OCH2)q1-(CH2)q2-及び-(CH2)q3-(OCH2)q1-(CH2)q2-からなる群から選択される1種であることが好ましい。また、p1~p3及びq1~q3はそれぞれ独立して、1~11の整数を表すことが好ましく、より好ましくは1~6の整数、さらに好ましくは1~3の整数、特に好ましくは1~2の整数である。
さらには、Ra21又はL2の少なくともいずれか一方に、-CH2O-基を有することが好ましく、Ra21及びL2の両方に、-CH2O-基を有することがより好ましい。
【0046】
上記一般式(a2-1)中のZ1は、水素原子又は炭素原子数1~11のアルキル基を表すことが好ましく、水素原子又は炭素原子数1~9のアルキル基を表すことがより好ましい。
【0047】
上記一般式(a2-1)中、kは、0~20の整数であることが好ましく、より好ましくは0~15の整数、さらに好ましくは0~10の整数である。なお、kが2以上の場合、複数存在するL1は、互いに同一の基であっても、あるいは異なる基であってもよい。
【0048】
本実施形態のベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)の好ましい形態としては、以下の一般式(a2-2)で表される構造単位を有する化合物でありうる。
【化12】
(上記一般式(a2―2)中、R
a21はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~11のアルキル基を表し、当該アルキル基中の1以上の-CH
2-は、互いに隣接しないよう-O-又は-C(=O)-に置換されてもよく、
R
a22及びR
a23はそれぞれ独立して、炭素原子数1~18のアルキル基を表し、
L
1はそれぞれ独立して、炭素原子数1~11のアルキレン基を表し、当該アルキレン基中の1以上の-CH
2-は、互いに隣接しないよう-O-に置換されてもよく、
L
2は、単結合又は炭素原子数1~11のアルキレン基を表し、当該アルキレン基中の1以上の-CH
2-は、互いに隣接しないよう-O-又は-(C=O)-に置換されてもよく、
Z
1はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~11のアルキル基を表し、
kは0以上20以下の整数を表し、
m
a21及びm
a22はそれぞれ独立して、0以上4以下の整数を表し、
R
a21又はL
2の少なくともいずれか一方に、-CH
2O-基を有する。)
上記一般式(a2―2)中、R
a21、R
a22及びR
a23、L
1、L
2、Z
1、k、並びにm
a21及びm
a22の好ましい形態は、上記一般式(a2―1)と同様である。
【0049】
本実施形態におけるベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)は、単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、互いに異なるベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)を2種以上含有する混合物であってもよい。
なお、本明細書では説明の便宜上、用語「ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)」のうち、互いに異なるベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)を2種以上含有する混合物を、ベンジルエーテル骨格を有する混合物(a3)と称する。そして、「ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)」とは、1種の化合物だけを表す場合だけでなく、ベンジルエーテル骨格を有する混合物(a3)も包含する。
【0050】
本実施形態のベンジルエーテル骨格を有する混合物(a3)は、以下の一般式(a2-3)で表される部分構造:
【化13】
(上記一般式(a2-3)中、L
3及びL
4は連結基であり、それぞれ独立して、-CH
2-、-CH
2O-CH
2-、-(CH
2O)
2-CH
2-及び-(CH
2O)
3-CH
2-からなる群から選択される1種の基であり、R
a23はそれぞれ独立して、炭素原子数1~18のアルキル基を表し、m
a22はそれぞれ独立して、0以上4以下の整数を表し、*は他の原子との結合を表す。)を有する成分がベンジルエーテル骨格を有する混合物(a3)全体の95質量%以上100質量%以下を占有することが好ましい。
本実施形態のベンジルエーテル骨格を有する混合物(a3)は、上記一般式(a2-3)で表される部分構造を有する成分がベンジルエーテル骨格を有する混合物(B)全体の95質量%以上100質量%以下を占有し、かつ以下の(I)又は(II)の要件を満たすことが好ましい。
(I)上記一般式(a2-3)で表される部分構造を有する成分を構成する一分子当たりの連結基の数(L
3及びL
4の合計数)が、1.1以上2.4以下である。
(II)上記一般式(a2-3)で表される部分構造を有する成分を構成する分子の末端に結合されている末端基の数が、前記分子1つあたり、0.5以上1.5以下である。
【0051】
本実施形態において、上記一般式(a2-3)で表される部分構造を有する成分を構成する分子の連結基(L3及びL4)としては、-CH2-、-CH2O-CH2-、-(CH2O)2-CH2-及び-(CH2O)3-CH2-からなる群から選択される1種の基が挙げられる。
ベンジルエーテル骨格を有する混合物(a3)全体において、上記一般式(a2-3)で表されるベンジルエーテル骨格を有する一分子当たりの以下の連結基(L3及びL4の合計数)の数が、以下の(1)~(4)の組成であることが好ましい。
(1)連結基「-CH2-」の数は、0.65以上1.4以下であることが好ましい。
(2)連結基「-CH2O-CH2-」の数は、0.07以上0.2以下であることが好ましく、0.08以上0.14以下であることがより好ましい。
(3)連結基「-(CH2O)2-CH2-」の数は、0.10以上0.8以下であることが好ましく、0.2以上0.8以下であることがより好ましい。別の形態では、0.41超0.8以下であることが好ましい。
(4)連結基「-(CH2O)3-CH2-」の数は、0.05以上0.65以下であることが好ましく、0.09以上0.6以下であることが好ましく、0.10以上0.55以下であることがさらに好ましい。
【0052】
本実施形態のベンジルエーテル骨格を有する混合物(a3)において、-CH2-OH、-CH2O-CH3、-(CH2O)2-CH3、-(CH2O)3-CH3及び-(CH2O)-COHからなる群から選択される1種以上の基を、上記一般式(a2-3)で表される部分構造を有する成分を構成する分子の末端に結合されている末端基として有することが好ましい。
そして、ベンジルエーテル骨格を有する混合物(a3)全体において、上記一般式(a2-3)で表されるベンジルエーテル骨格を有し、かつ一分子当たりの末端基の数が、0.5以上1.5以下であることが好ましい。
ベンジルエーテル骨格を有する混合物(a3)全体において、ベンジルエーテル骨格を有する一分子当たりの以下の末端基の数が、以下の(5)~(10)の組成であることが好ましい。
(5)末端基「-CH2-OH」の数は、0.17以上0.4以下であることが好ましく、0.18以上0.25以下であることがより好ましい。
(6)末端基「-CH2O-CH3」の数は、0.17以上0.7以下であることが好ましく、0.18以上0.44以下であることがより好ましい。
(7)末端基「-(CH2O)2-CH3」の数は、0.08以上0.6以下であることが好ましく、0.09以上0.3以下であることが好ましい。
(8)末端基「-(CH2O)3-CH3」の数は、実質的に含んでいないことが好ましく、0.3以下であることがより好ましく、0.2以下であることがさらに好ましい。
(9)末端基「-(CH2O)-COH」の数は、0以上0.1以下であることが好ましく、0.01以上0.1以下であることがより好ましい。
本実施形態のベンジルエーテル骨格を有する混合物(a3)において、連結基の化学構造及びその数、並びに末端基の化学構造及びその数は、後述の実施例の欄に示す通り、NMRから算出する、あるいは製造メーカのカタログを参照することができる。
【0053】
本実施形態において、ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)は合成品でも市販品でもよく、市販されているベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)としては、例えば、フドー株式会社製のキシレン樹脂(商標名:ニカノール(Y-50、Y-100、Y-300、Y-1000、LLL、LL、L又はH))が好ましい。
本実施形態において、ポリマレイミド樹脂(A)の総量(100質量%)に対して、ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)の構造単位は1~99質量%含有することが好ましく、5~95質量%含有することがより好ましい。上記ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)の構造単位とは、上記一般式(1)で表される基をいう。
【0054】
-無水マレイン酸-
本実施形態において、無水マレイン酸は、ポリマレイミド樹脂(A)の反応原料(1)の必須成分であり、後述のポリマレイミド樹脂(A)の製造方法の欄で説明する通り、芳香族アミン化合物(a1)に由来するアミノ基をマレイミド化する反応に使用される。
【0055】
<ポリマレイミド樹脂(A)の物性>
本開示のポリマレイミド樹脂(A)の数平均分子量(Mn)は、200~1500の範囲であることが好ましく、300~800の範囲であることがより好ましい。また、ポリマレイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は280~2000の範囲であることが好ましく、330~1200の範囲であることがより好ましい。
本開示のポリマレイミド樹脂(A)は、溶剤溶解性、耐熱性及び低誘電正接に優れる点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定から算出される分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.01~4.0の範囲であることが好ましく、より好ましくは、1.05~2.0であり、更に好ましくは、1.10~1.8である。なお、GPC測定から得られるGPCチャートより、分子量分布が広範囲にわたり、高分子量成分が多い場合には、可撓性に寄与する高分子量成分の割合が多くなるため、従来のマレイミドを使用した硬化物と比較して、脆性が抑えられ、可撓性や柔軟性に優れた硬化物を得ることができ、好ましい態様となる。
なお、本実施形態のポリマレイミド樹脂(A)の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)を用いて、後述する実施例に記載の測定条件で測定したものである。
【0056】
<ポリマレイミド樹脂(A)の製造方法>
以下、本開示のポリマレイミド樹脂(A)の製造方法について説明する。
本実施形態のポリマレイミド樹脂(A)は、その製法は特に限定されず、上記一般式(1)で表される部分構造と、前記一般式(1)で表される部分構造と化学結合される上記一般式(T-1)で表される部分構造と、前記一般式(1)で表される部分構造と化学結合される上記一般式(T-2)で表される部分構造とを有する、或いは上記反応原料(1)を使用する限りどのように製造されたものでもよい。本実施形態のポリマレイミド樹脂(A)の製造方法の好ましい態様としては、下記一般式(a-1)で表される芳香族アミン化合物(a1)(以下、単に芳香族アミン化合物(a1)とも称する。)と、ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)と、無水マレイン酸とを反応原料(1)として使用することが好ましい。
【化14】
(上記一般式(a-1)中、R
a1及びR
a2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、R
1は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、R
2及びR
3はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~18の炭化水素基を表す。)
【0057】
本開示のポリマレイミド樹脂(A)の製造方法の具体的な態様としては、例えば、以下の工程(1)及び(2)を含む製造方法が挙げられる。
工程(1):反応原料(2)として、上記一般式(a-1)で表される芳香族アミン化合物(a1)と、ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)とを反応させて、本実施形態における中間体アミン化合物(c)を得る工程;
工程(2):反応原料(3)として、上記工程(1)で得られた中間体アミン化合物(c)と、無水マレイン酸とを反応させて、本開示のポリマレイミド樹脂(A)を得る工程。
具体的には、本実施形態のポリマレイミド樹脂(A)の製造方法は、上記一般式(a-1)で表される芳香族アミン化合物(a1)と、ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)とを固体酸触媒下で反応させる工程(1)(架橋工程とも称する。)と、前記工程(1)により生成した中間体アミン化合物(c)と無水マレイン酸とを縮合させる工程(2)(縮合工程とも称する。)を有することが好ましい。
【0058】
以下、本開示のポリマレイミド樹脂(A)を製造する方法の各工程について順に説明する。
<<工程(1):中間体アミン化合物(c)の製造工程>>
以下に、本実施形態における中間体アミン化合物(c)の製造工程について説明する。
本実施形態における工程(1)は、特に制限されないが、例えば、上述した芳香族アミン化合物(a1)と、上述したベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)(例えば、ニカノール等の)と、必要に応じて添加されるその他の化合物とを、酸触媒の存在下で反応させる工程である。これにより、中間体アミン化合物(c)が生成されうる。
【0059】
前記芳香族アミン化合物(a1)と、前記ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)との配合割合としては、得られる硬化物の製造時の成形性、硬化性の物性バランスを考慮すると、前記芳香族アミン化合物(a1)1モルに対して、前記ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)のモル割合として、0.001~1モルが好ましく、0.1~0.5モルがより好ましい。
また、ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)として上記のベンジルエーテル骨格を有する混合物(a3)などの混合物を使用する場合、芳香族アミン化合物(a1)との反応点は、当該混合物に含まれるベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)中のメチレンオキシ部(例えば、ベンジルエーテル部(Ph-CH2O-CH2-)、ベンジルアルコール部(Ph-CH2O-H)又はメチレンオキシ部(-CH2-O-))でありうる。また、これら各反応点の合計数を1とした場合、芳香族アミン化合物(a1)の配合量は等量以上10倍以下であることが好ましく、例えば、前記各反応点の合計数1モルに対して、芳香族アミン化合物(a1)の配合量は1~10モルであることが好ましい。
【0060】
また、上記反応を実施する具体的方法としては、全原料を一括装入し、そのまま所定の温度で反応させるか、又は、芳香族アミン化合物(a1)若しくはベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)の一方と酸触媒とを装入し、所定の温度に保ちつつ、芳香族アミン化合物(a1)若しくはベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)の他方を滴下させながら反応させる方法が一般的である。この際、滴下時間は、通常、0.1~12時間であり、6時間以下が好ましい。反応後、溶媒を使用した場合は、必要により、溶媒と未反応物を留去させて、前記中間体アミン化合物(c)を得ることができ、溶媒を使用しない場合は、未反応物を留去することによって目的物である前記中間体アミン化合物(c)を得ることができる。
【0061】
本実施形態の工程(1)に用いる酸触媒としては、有機酸、無機酸又は固体酸のいずれでも使用できる。上記有機酸としては、例えば、メタンスルホン酸若しくはフルオロメタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸;3-モルホリノプロパンスルホン酸、ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)、10-カンファースルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸若しくはトリフルオロメタンスルホン酸等の芳香族スルホン酸;リン酸ジメチル若しくはリン酸ジエチル等のアルキルリン酸;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、ラウリル硫酸等のアルキル硫酸;硫酸フェニル、フルオリド硫酸フェニル等の芳香族硫酸;シュウ酸等の種々の酸が挙げられる。
上記無機酸としては、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸又はホウ酸等が挙げられる。上記固体酸としては、活性白土、酸性白土、アルミナ、シリカアルミナ、ゼオライト、層状珪酸塩、ヘテロポリ塩酸又は強酸性イオン交換樹脂等が挙げられる。当該層状珪酸塩としては、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト、メタハロイサイト、ハロイサイトなどのカオリン族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、テニオライト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群が挙げられる。これら層状珪酸塩は混合層を形成していてもよい。また、上記酸触媒は1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上組み合わせて用いてもよい。
上記工程(1)における反応後、濾過により簡便に触媒除去が可能な固体酸がハンドリンク性の観点からも好ましく、他の酸を用いるときは、反応後、塩基による中和と水による洗浄を行うことが好ましい。
なお、上記塩基としては、特に制限されることはなく、有機塩基あるいは無機塩であってもよい。当該有機塩基としては、ナトリウムメトキシド、リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムターシャリーブトキシド、カリウムターシャリーブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド類;トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン等のトリアルキルアミン;N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等の炭素数1から4のアルキル基を有するアニリン誘導体;ピリジン、2,6-ルチジン等の、炭素原子数1~4のアルキル置換基を有していてもよいピリジン誘導体;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン等の含窒素複素環化合物等を挙げることができる。一方、上記無機塩基としては、ナトリウムハイドライド、リチウムハイドライド等のアルカリ金属水素化物;カルシウムハイドライド等のアルカリ土類金属水素化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩又は炭酸水素塩;フッ化カリウム、フッ化セシウム、ヨウ化カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化化合物;を挙げることができる。これらの塩基は1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0062】
本実施形態において、酸触媒の配合量は、仕込む原料(ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)及び芳香族アミン化合物(a1))の総量100質量部に対して、酸触媒を0.1~50質量部の範囲で配合されるが、ハンドリング性と経済性の点から、1~20質量部の範囲が好ましい。反応温度は、通常100~300℃の範囲であればよいが、異性体構造の生成を抑制し、熱分解等の副反応を避けるためには120~250℃の範囲が好ましい。
【0063】
本実施形態の工程(1)において、ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)と、芳香族アミン化合物(a1)との混合物反応時間、すなわち架橋反応の時間としては、短時間では反応が完全に進行せず、また長時間にすると生成物の熱分解反応等の副反応が起こることから、前記反応温度条件下で、通常は、のべ1~60時間の範囲であるが、好ましくは、のべ1~20時間の範囲である。
本実施形態における中間体アミン化合物(c)の製造方法においては、芳香族アミン化合物(a1)又はその誘導体が溶剤を兼ねるため、必ずしも他の溶剤は用いなくても良いが、溶剤を用いることも可能である。例えば、ベンジルエーテル骨格を有する化合物(a2)としてニカノールLを原料として反応させる場合には、トルエン、キシレン、又はクロロベンゼン等の共沸脱水可能な溶剤を用いて、必要により触媒等に含まれる水分を共沸脱水させた後、溶媒を留去してから、上記反応温度の範囲で反応を行う方法を採用してもよい。
【0064】
上記工程(1)により得られる中間体アミン化合物(c)は、下記一般式(1)で表される部分構造と、前記一般式(1)で表される部分構造と化学結合される一般式(t-1)で表される部分構造と、前記一般式(1)で表される部分構造と化学結合される一般式(t-2)で表される部分構造と、を有することが好ましい。
【化15】
(上記一般式(1)中、R
13はそれぞれ独立して、炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、m
2は0以上4以下の整数を表し、n
1は平均繰り返し単位数を表し、2つの*はそれぞれ結合手を表し、一方の結合手が下記一般式(t-1)中のL
13又はL
14の位置で化学結合され、他方の結合手が下記一般式(t-2)中のL
11又はL
12の位置で化学結合されることを表す。)
【化16】
(上記一般式(t-1)又は(t-2)中、R
11及びR
15はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、
R
12及びR
14はそれぞれ独立して、炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、
L
11~L
14はそれぞれ独立して、結合手を表し、L
11又はL
12の位置において一般式(1)で表される部分構造と化学結合され、かつL
13又はL
14の位置において一般式(1)で表される部分構造と化学結合され、
m
1は0以上2以下の整数を表し、m
3は0以上2以下の整数を表す。)
上記一般式(1)中の「R
13、m
2及びn
1」は、上述した一般式(1)中の「R
13、m
2及びn
1」と同義である。また、一般式(t-1)及び一般式(t-2)中の「L
11、L
12、L
13、L
13、R
11、R
12、R
14、R
15、m
1及びm
3」は、一般式(T-1)及び(T-2)中の「L
11、L
12、L
13、L
13、R
11、R
12、R
14、R
15、m
1及びm
3」と同義である。
【0065】
本実施形態において、中間体アミン化合物(c)のアミン当量としては、160~1200g/当量であることが好ましく、より好ましくは180~600g/当量である。
なお、本明細書における中間体アミン化合物(c)のアミン当量の測定は、JIS K 0070(1992)に規定される中和滴定法に準拠した方法で測定した値とする。
【0066】
<<工程(2):マレイミド化>>
本実施形態における工程(2)は、工程(1)で得られた中間体アミン化合物(c)と、無水マレイン酸とを反応させる工程である。中間体アミン化合物(c)のアミノ基がマレイミド化反応により、前記アミノ基がN-置換マレイミド環に置換された化学構造を形成することができるため、本開示のポリマレイミド樹脂(A)が得られる。
本実施形態において、工程(1)により得られた、上記一般式(1)で表される部分構造と一般式(t-1)で表される部分構造と一般式(t-2)で表される部分構造とを有する中間体アミン化合物(c)を反応器に仕込み、適当な溶媒に溶解した後、触媒の存在下で無水マレイン酸と反応させる。そして反応後、水洗等により未反応の無水マレイン酸又は他の不純物を除去し、減圧によって溶媒を除くことにより目的物であるポリマレイミド樹脂(A)を得ることができる。また、必要により反応時に脱水剤を用いてもよい。
【0067】
本実施形態の工程(2)において使用される有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、スルホラン等の非プロトン性溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられ、またこれらは単独で用いても混合して用いてもよい。
【0068】
本実施形態の工程(2)において、中間体アミン化合物(c)と無水マレイン酸との混合比率としては、中間体アミン化合物(c)のアミノ当量に対する無水マレイン酸の当量比を、1~5の範囲に配合することが好ましく、より好ましくは1~3で仕込み、中間体アミン化合物(c)と無水マレイン酸との合計量に対して、0.1~10の質量比、好ましくは0.2~5の質量比の有機溶媒中で反応させることが好ましい態様となる。
【0069】
本実施形態の工程(2)において使用可能な触媒としては、ニッケル、コバルト、ナトリウム、カルシウム、鉄、リチウム、マンガン等の酢酸塩、塩化物、臭化物、硫酸塩、硝酸塩等の無機塩、リン酸、塩酸、硫酸のような無機酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸等の有機酸、活性白土、酸性白土、シリカアルミナ、ゼオライト、強酸性イオン交換樹脂のような固体酸、ヘテロポリ塩酸等を挙げることができるが、特にトルエンスルホン酸が好ましく用いられる。
【0070】
本実施形態の工程(2)に用いる脱水剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸のような低級脂肪族カルボン酸無水物、五酸化リン、酸化カルシウム、酸化バリウム等の酸化物、硫酸等の無機酸、モレキュラーシーブ等の多孔性セラミック等が挙げられるが、好ましくは無水酢酸を用いることができる。
本実施形態の工程(2)において使用される触媒、脱水剤の使用量の制限は特にないが、通常、中間体アミン化合物(c)のアミノ基(-NH2)1当量に対し、触媒は0.0001~1モル、好ましくは0.01~0.3モル、脱水剤は1~3モル、好ましくは1~1.5モルで使用することができる。
本実施形態の工程(2)において、マレイミド化の反応条件としては、上記中間体アミン化合物(c)と無水マレイン酸を仕込み、10~100℃、好ましくは30~60℃の温度範囲で、0.5~12時間、好ましくは1~4時間反応させた後、前記触媒を加えて、90~130℃、好ましくは105~120℃の温度範囲で、1~24時間、好ましくは1~10時間反応させることができる。
【0071】
<ポリマレイミド樹脂混合物>
本開示は、下記一般式(1a)で表される部分構造単位を有するポリマレイミド樹脂成分と、下記一般式(2)で表されるマレイミド多量体化合物と、を含有するポリマレイミド樹脂混合物であって、前記ポリマレイミド樹脂成分の総量に対して、上記ポリマレイミド樹脂(A)を1~99質量%含有し、
ポリマレイミド樹脂混合物の総量に対して、前記マレイミド多量体化合物を80質量%以下含有する、ポリマレイミド樹脂混合物である。
【化17】
(上記一般式(1a)中、R
11は水素原子又は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、R
12は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、R
13はそれぞれ独立して、炭素原子数1~18のアルキル基を表し、m
1は0以上2以下の整数を表し、m
2は0以上4以下の整数を表し、n
1は平均繰り返し単位数を表す。)
【化18】
(上記一般式(2)中、R
21及びR
25はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、R
22及びR
24はそれぞれ独立して、炭素原子数1~18の炭化水素基を表し、m
21は2を表し、m
23は3を表し、n
21は1以上5以下の整数を表す。)
これにより、溶剤に対する高い溶解性を有し、かつ硬化時において低誘電正接及び高い耐熱性を示す。また、一般式(2)で表されるマレイミド多量体化合物において、n
21が1であるダイマーは結晶性が高く、n
21が2以上であるトリマー、テトラマーになるにつれ、溶解性が改善する傾向を示す。なお、一般式(T-1)又は一般式(T-2)で表される部分構造における置換基(R
11又はR
15、R
12又はR
14)の数と位置とを本願発明のように設定することにより、溶解性が優れるトリマー、テトラマーの割合を増やしうる。
上記一般式(1a)中の「R
11、R
12、R
13、n
1、m
1及びm
2」は、上述した一般式(1)又は一般式(T-1)中の「R
11、R
12、R
13、n
1、m
1及びm
2」と同義である。
また、一般式(2)中の「R
21及びR
25」はそれぞれ独立して、一般式(T-1)及び一般式(T-2)中の「R
11又はR
15」と同義である。一般式(2)中の「R
22及びR
24」はそれぞれ独立して、一般式(T-1)及び一般式(T-2)中の「R
12又はR
14」と同義である。
【0072】
(酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)((B)成分とも称する。))
本実施形態のポリマレイミド樹脂含有組成物は、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)を必須成分として含有する。当該(B)成分は、酸基及び重合性不飽和基を有していればよく、その他の具体構造又は分子量等は特に問われず、多種多様な樹脂を用いることができる。
【0073】
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)が含有する酸基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等が挙げられる。これらの中でも優れたアルカリ現像性を重視する観点では、カルボキシル基が好ましい。そして、本明細書において、“重合性不飽和基”としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、アリル基、イソプロペニル基、1-プロペニル基、スチリル基、スチリルメチル基、マレイミド基、ビニルエーテル基等が挙げられる。
【0074】
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)としては、例えば、以下の〔1〕~〔6〕:
〔1〕酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)、
〔2〕酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(B2)
〔3〕酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(B3)、
〔4〕酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)、
〔5〕酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)、
〔6〕酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂(B6)、
の樹脂等が挙げられる。上記エポキシ樹脂(B1)からエステル樹脂(B6)について以下順に説明する。
【0075】
<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)としては、例えば、エポキシ樹脂(b1-1)、不飽和一塩基酸(b1-2)、及び多塩基酸無水物(b1-3)を必須の反応原料とする酸基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂;エポキシ樹脂(b1-1)、不飽和一塩基酸(b1-2)、多塩基酸無水物(b1-3)、ポリイソシアネート化合物(b1-4)、及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)を反応原料とする酸基及びウレタン結合を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂;などが挙げられる。
【0076】
上記エポキシ樹脂(b1-1)としては、樹脂中に複数のエポキシ基を有している樹脂であれば、その具体構造は特に限定されない。前記エポキシ樹脂(b1-1)としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、水添ビフェノール型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、トリヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、オキサゾリドン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0077】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記水添ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールB型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールE型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチル-4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチル-2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記水添ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、水添4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添テトラメチル-4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添テトラメチル-2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂(b1-1)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0078】
上記不飽和一塩基酸(b1-2)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、α-シアノ桂皮酸、β-スチリルアクリル酸、β-フルフリルアクリル酸等が挙げられる。また、前記不飽和一塩基酸の酸ハロゲン化物、エステル化物も用いることができる。さらに、下記一般式(3)で表される化合物等も用いることができる。
【化19】
[上記一般式(3)中、X
31は、炭素数1~10のアルキレン鎖、ポリオキシアルキレン鎖、(ポリ)エステル鎖、芳香族炭化水素鎖、又は(ポリ)カーボネート鎖を表し、X
31の構造中の水素原子がハロゲン原子又はアルコキシ基に置換されてもよく、Y
31は、水素原子又はメチル基である。]
【0079】
上記一般式(3)におけるポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖等が挙げられる。
上記一般式(3)における(ポリ)エステル鎖としては、例えば、下記一般式(4)で表される(ポリ)エステル鎖が挙げられる。
【化20】
[上記一般式(4)中、R
41及びR
42は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、n
41は1~5の整数を表す。]
上記一般式(3)における芳香族炭化水素鎖としては、例えば、フェニレン鎖、ナフチレン鎖、ビフェニレン鎖、フェニルナフチレン鎖又はビナフチレン鎖等が挙げられる。また、部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の芳香環を有する炭化水素鎖も用いることができる。
上記一般式(3)における(ポリ)カーボネート鎖としては、例えば、下記一般式(5)で表される(ポリ)カーボネート鎖が挙げられる。
【化21】
[上記一般式(5)中、R
51は、炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、n
51は1~5の整数を表す。]
一般式(3)で表される化合物の分子量は、100~500の範囲が好ましく、150~400の範囲がより好ましい。
不飽和一塩基酸(b1-2)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0080】
上記多塩基酸無水物(b1-3)としては、例えば、脂肪族多塩基酸無水物、脂環式多塩基酸無水物、芳香族多塩基酸無水物、脂肪族多塩基酸無水物の酸ハロゲン化物、脂環式多塩基酸無水物の酸ハロゲン化物、芳香族多塩基酸無水物の酸ハロゲン化物等が挙げられる。
上記脂肪族多塩基酸無水物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。また、前記脂肪族多塩基酸無水物としては、脂肪族炭化水素基は直鎖型及び分岐型のいずれでもよく、構造中に不飽和結合を有していてもよい。
上記脂環式多塩基酸無水物としては、本発明では、酸無水物基が脂環構造に結合しているものを脂環式多塩基酸無水物とし、それ以外の構造部位における芳香環の有無は問わないものとする。前記脂環式多塩基酸無水物としては、例えば、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。
上記芳香族多塩基酸無水物としては、例えば、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。
多塩基酸無水物(b1-3)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、優れた現像性を示し、かつ得られる硬化物において、密着性、耐熱性及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物が好ましい。
【0081】
上記ポリイソシアネート化合物(b1-4)としては、例えば、ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル、o-トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;下記一般式(6)で表される繰返し構造を有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体等が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物(b1-4)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【化22】
[上記一般式(6)中、R
62及びR
63はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6の一価の炭化水素基のいずれかを表し、R
61はそれぞれ独立して、炭素原子数1~4のアルキル基を表し、k
61は0又は1~3の整数であり、n
61は1以上の整数である。]
【0082】
上記水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、前記各種の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体や、前記各種の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等も用いることができる。
これらの中でも、優れた現像性を示し、かつ得られる硬化物において、密着性、耐熱性及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、分子量が1,000以下のものが好ましい。また、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)が、オキシアルキレン変性体又はラクトン変性体である場合には、重量平均分子量(Mw)が1,000以下であることが好ましい。
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0083】
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)の製造においては、必要に応じて有機溶媒中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)の製造方法は、エポキシ樹脂(b1-1)、不飽和一塩基酸(b1-2)、及び多塩基酸無水物(b1-3)を必須の反応原料とするか、あるいは、エポキシ樹脂(b1-1)、不飽和一塩基酸(b1-2)、多塩基酸無水物(b1-3)、ポリイソシアネート化合物(b1-4)、及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)を反応原料とするものであれば特に限定されることはない。例えば、反応原料の全てを一括で反応させる方法により前記エポキシ樹脂(B1)を製造してもよいし、あるいは反応原料を順次反応させる方法で製造してもよい。なかでも、反応の制御が容易であることから、先にエポキシ樹脂(b1-1)と不飽和一塩基酸(b1-2)とを反応させ、次いで、多塩基酸無水物(b1-3)を反応させる方法が好ましい。該反応は、例えば、エポキシ樹脂(b1-1)と不飽和一塩基酸(b1-2)とを塩基性触媒の存在下、100~150℃の温度範囲で反応させた後、反応系中に多塩基酸無水物(b1-3)を加え、80~150℃の温度範囲で反応させる方法等により行うことができる。
本実施形態において、エポキシ樹脂(b1-1)と不飽和一塩基酸(b1-2)との反応割合は、エポキシ樹脂(b1-1)中のエポキシ基1モルに対し、不飽和一塩基酸(b1-2)を0.9~1.1モルの範囲で用いることが好ましい。また、多塩基酸無水物(b1-3)の反応割合は、エポキシ樹脂(b1-1)中のエポキシ基1モルに対し、0.2~1.0モルの範囲で用いることが好ましい。
【0084】
上記有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘプタン、ヘキサン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルアセトアミド等のケトン溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の環状エーテル溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶媒;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族溶媒;カルビトール、セロソルブ、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶媒;プロピルエーテル、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール等のエーテル系溶媒;アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等のグリコールエーテル溶媒;大豆油、亜麻仁油、菜種油、サフラワー油等の植物油脂;メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0085】
また、上記有機溶媒としては、市販品を用いることもでき、当該市販品としては、例えば、ENEOS株式会社製「1号スピンドル油」、「3号ソルベント」、「4号ソルベント」、「5号ソルベント」、「6号ソルベント」、「ナフテゾールH」、「アルケン56NT」、「AFソルベント4号」、「AFソルベント5号」「AFソルベント6号」「AFソルベント7号」、三菱ケミカル株式会社製「ダイヤドール13」、「ダイヤレン168」;日産化学株式会社製「Fオキソコール」、「Fオキソコール180」;出光興産株式会社「スーパーゾルLA35」、「スーパーゾルLA38」;ExxonMobil Chemical社製「エクソールD80」、「エクソールD110」、「エクソールD120」、「エクソールD130」、「エクソールD160」、「エクソールD100K」、「エクソールD120K」、「エクソールD130K」、「エクソールD280」、「エクソールD300」、「エクソールD320」;等が挙げられる。
上記有機溶媒は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。また、本実施形態において、有機溶媒の使用量は、反応効率が良好となることから、反応原料の合計質量に対し0.1~5倍量程度の範囲で用いることが好ましい。
【0086】
上記塩基性触媒としては、例えば、N-メチルモルフォリン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ-n-ブチルアミンもしくはジメチルベンジルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアミン化合物類;トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート等の四級アンモニウム塩類;トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;テトラメチルホスホニウムクロライド、テトラエチルホスホニウムクロライド、テトラプロピルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、トリメチル(2-ヒドロキシルプロピル)ホスホニウムクロライド、トリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、オクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジネオデカノエート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ドデカノイルジスタノキサン等の有機錫化合物;オクチル酸亜鉛、オクチル酸ビスマス等の有機金属化合物;オクタン酸錫等の無機錫化合物;無機金属化合物などが挙げられる。また、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等を用いることもできる。
上記塩基性触媒は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。また、前記塩基性触媒の添加量は、反応原料の合計100質量部に対して0.001~5質量部の範囲が好ましい。
【0087】
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)の酸価は、優れた現像性を有し、密着性、耐熱性及び低誘電特性に優れた硬化物を形成可能なポリマレイミド樹脂含有組成物が得られることから、30~150mgKOH/gの範囲が好ましく、40~120mgKOH/gの範囲がより好ましい。なお、本開示において酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)の酸価は、JIS 0070(1992)の中和滴定法にて測定される値である。
【0088】
<酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(B2)>
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(B2)としては、例えば、ポリイソシアネート化合物(b1-4)と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b1-5)と、カルボキシル基含有ポリオール化合物(b2-1)と、必要に応じて多塩基酸無水物(b1-3)と、前記カルボキシル基含有ポリオール化合物(b2-1)以外のポリオール化合物(b2-2)とを反応させて得られた樹脂;ポリイソシアネート化合物(b1-4)と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b1-5)と、多塩基酸無水物(b1-3)と、及び前記カルボキシル基含有ポリオール化合物(b2-1)以外のポリオール化合物(b2-2)と、を反応させて得られた樹脂;あるいはエポキシ樹脂(b1-1)と、不飽和一塩基酸(b1-2)と、多塩基酸無水物(b1-3)と、ポリイソシアネート化合物(b1-4)と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b1-5)とを反応させて得られた樹脂等が挙げられる。
【0089】
上記カルボキシル基含有ポリオール化合物(b2-1)としては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール吉草酸等が挙げられる。前記カルボキシル基含有ポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記カルボキシル基含有ポリオール化合物(b2-1)以外のポリオール化合物(b2-2)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール化合物;ビフェノール、ビスフェノール等の芳香族ポリオール化合物;前記各種のポリオール化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;前記各種のポリオール化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等が挙げられる。前記カルボキシル基含有ポリオール化合物以外のポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0090】
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂(B2)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和結合を有するウレタン樹脂の製造においては、必要に応じて有機溶媒中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
上記記有機溶媒としては、上述の<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>の欄に記載した有機溶媒と同様のものを用いることができ、前記有機溶媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、上記塩基性触媒としては、上述の<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>の欄に記載の塩基性触媒と同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0091】
<酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(B3)>
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(B3)としては、例えば、水酸基又はカルボキシル基、イソシアネート基、グリシジル基等の反応性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(α)を必須の成分として重合させて得られるアクリル樹脂中間体に、これらの官能基と反応し得る反応性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(β)をさらに反応させることにより(メタ)アクリロイル基を導入して得られる反応生成物、あるいは前記反応生成物中の水酸基に多塩基酸無水物(b1-3)を反応させて得られる樹脂等が挙げられる。
【0092】
本実施形態において、アクリル樹脂中間体は、(メタ)アクリレート化合物(α)の他、必要に応じてその他の重合性不飽和基含有化合物を共重合させたものであってもよい。当該その他の重合性不飽和基含有化合物は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシリル基含有(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン誘導体等が挙げられる。
その他の重合性不飽和基含有化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0093】
上記(メタ)アクリレート化合物(β)は、上記(メタ)アクリレート化合物(α)が有する反応性官能基と反応し得るものであれば特に限定されないが、反応性の観点から以下の組み合わせであることが好ましい。即ち、前記(メタ)アクリレート化合物(α)として水酸基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてカルボキシル基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてグリシジル基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)として水酸基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてグリシジル基含有(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてカルボキシル基含有(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
(メタ)アクリレート化合物(β)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0094】
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(B3)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(B3)の製造においては、必要に応じて有機溶媒中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
前記有機溶媒としては、上述の<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>の欄に記載した有機溶媒と同様のものを用いることができ、前記有機溶媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記塩基性触媒としては、上述の<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>の欄に記載の塩基性触媒と同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0095】
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(B3)の酸価は、優れた現像性を有し、密着性、耐熱性及び低誘電特性に優れた硬化物を形成可能なポリマレイミド樹脂含有組成物が得られることから、30~150mgKOH/gの範囲が好ましく、40~120mgKOH/gの範囲がより好ましい。なお、本開示において酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂(B3)の酸価は、JIS K 0070(1992)の中和滴定法にて測定される値である。
【0096】
<酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)>
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)としては、例えば、酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(b4-1)と、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(b1-5)及び/又はエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物と、必要に応じて、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、グリシジル基、及び酸無水物基からなる群より選ばれる1種以上の反応性官能基を有する化合物を反応させて得られるものが挙げられる。なお、前記反応性官能基を有する化合物は、(メタ)アクリロイル基を有していてもよく、あるいは有していなくてもよい。
酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(b4-1)としては、酸基又は酸無水物基のどちらか一方のみを有しても、あるいは両方を有してもよい。当該アミドイミド樹脂(b4-1)は、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物(1-5)又は(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ化合物との反応性や反応制御の観点から、酸無水物基を有するものであることが好ましく、酸基と酸無水物基との両方を有するものであることがより好ましい。前記アミドイミド樹脂(b4-1)の固形分酸価は、中性条件下、即ち、酸無水物基を開環させない条件での測定値が60~350mgKOH/gの範囲であることが好ましい。他方、水の存在下等、酸無水物基を開環させた条件での測定値が61~360mgKOH/gの範囲であることが好ましい。
【0097】
また、アミドイミド樹脂(b4-1)は、必要に応じて、ポリイソシアネート化合物(b1-4)及び多塩基酸無水物(b1-3)以外に、多塩基酸を反応原料として併用することもできる。
上記多塩基酸としては、一分子中にカルボキシル基を2つ以上有する化合物であれば何れのものも用いることができる。例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等が挙げられる。また、前記多塩基酸としては、例えば、共役ジエン系ビニルモノマーとアクリロニトリルとの共重合体であって、その分子中にカルボキシル基を有する重合体も用いることができる。
上記多塩基酸は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0098】
上記エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、分子構造中に(メタ)アクリロイル基とエポキシ基とを有するものであれば他の具体構造は特に限定されず、多種多様な化合物を用いることができる。例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、エポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有(メタ)アクリレートモノマーや、ヒドロキシベンゼンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールジグリシジルエーテルのジグリシジルエーテル化合物のモノ(メタ)アクリレート化物等が挙げられる。
上記エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0099】
また、酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(b4-1)の具体構造又は製造方法は特に限定されず、一般的なアミドイミド樹脂等を広く用いることができる。本実施形態のアミドイミド樹脂(b4-1)は、例えば、ポリイソシアネート化合物(b1-4)と、多塩基酸無水物(b1-3)とを反応原料として得られるものが好ましい。
また、本実施形態において、ポリイソシアネート化合物(b1-4)としては、高い溶媒溶解性を有するポリマレイミド樹脂含有組成物が得られることから、脂環式ジイソシアネート化合物又はその変性体、脂肪族ジイソシアネート化合物又はその変性体が好ましく、脂環式ジイソシアネート又はそのイソシアヌレート変性体、脂肪族ジイソシアネート又はそのイソシアヌレート変性体がより好ましい。
本実施形態において、ポリイソシアネート化合物(b1-4)の総質量中における、脂環式ジイソシアネート化合物又はその変性体と、脂肪族ジイソシアネート化合物又はその変性体の合計質量の割合が、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが好ましい。
また、脂環式ジイソシアネート化合物又はその変性体と、脂肪族ジイソシアネート化合物又はその変性体とを併用する場合には、両者の質量比(脂環式ジイソシアネート化合物又はその変性体/脂肪族ジイソシアネート化合物又はその変性体)が30/70~70/30の範囲であることが好ましい。
【0100】
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)の製造においては、必要に応じて有機溶媒中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
前記塩基性触媒としては、上述の<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>の欄に記載の塩基性触媒と同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
また、前記有機溶媒としては、上述の<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>の欄に記載の有機溶媒と同様のものを用いることができ、前記有機溶媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0101】
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)は、所望の樹脂性能等に応じて、酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂(b4-1)、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b1-5)及び/又はエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(b4-2)の反応原料以外に、他の反応原料を併用することもできる。この場合、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B4)の反応原料の総質量中の前記(b4-1)~(b4-2)成分の合計質量の割合が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0102】
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。例えば、アミドイミド樹脂(b4-1)、及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b1-5)及び/又はエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(b4-2)を含む反応原料の全てを一括で反応させる方法で製造してもよいし、反応原料を順次反応させる方法で製造してもよい。また、例えば、アミドイミド樹脂(b4-1)と水酸基含有(メタ)アクリレート化合物(b1-5)との反応は、適当な塩基性触媒の存在下、80~140℃程度の温度条件下で加熱撹拌して行うことができる。酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)の製造においては、必要に応じて有機溶媒中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒又は酸性触媒を用いてもよい。
【0103】
上記塩基性触媒は、上述の<酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂(B1)>の欄に記載の酸性触媒及び塩基性触媒と同様のものを用いることができ、それらは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
上記酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸、三フッ化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸などが挙げられる。また、スルホニル基等の強酸を有する固体酸触媒等も用いることができる。これらの酸性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0104】
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)の酸価は、優れた現像性を有し、密着性、耐熱性及び低誘電特性に優れた硬化物を形成可能なポリマレイミド樹脂含有組成物が得られることから、30~150mgKOH/gの範囲が好ましく、40~120mgKOH/gの範囲がより好ましい。なお、本開示における酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂(B4)の酸価は、JIS K 0070(1992)の中和滴定法にて測定される値である。
【0105】
<酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)>
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)としては、例えば、フェノール性水酸基含有化合物(b5-1)と、アルキレンカーボネート(b5-2a)又はアルキレンオキサイド(b5-2b)と、N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物(b5-3)と、多塩基酸無水物(b1-3)と、必要に応じて不飽和一塩基酸(b1-2)と反応原料とし、当該反応原料を反応させて得られた樹脂が挙げられる。
【0106】
本実施形態において、フェノール性水酸基含有化合物(b5-1)とは、分子内にフェノール性水酸基を少なくとも1つ有する化合物をいう。フェノール性水酸基含有化合物(b5-1)としては、例えば、下記一般式(7.1)~(7.5)のいずれかで表される化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物(b5-4)と下記一般式(8.1)~(8.5)のいずれかで表される化合物とを必須の反応原料とする反応生成物、あるいは芳香族ポリヒドロキシ化合物(b5-4)又はその他分子内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物(b5-5)の1種又は2種以上を反応原料とするノボラック型フェノール樹脂なども用いることができる。
【化23】
(上記一般式(7.1)~(7.5)中、R
71~R
74及びR
77それぞれ独立して、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、アリール基又はハロゲン原子のいずれかを表し、R
75及びR
76はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、j
71~j
75はそれぞれ独立して、0又は1以上の整数を表し、好ましくは0又は1~3の整数であり、より好ましくは0又は1である。k
71~k
75はそれぞれ独立して、1以上の整数を表し、好ましくは、2又は3である。)
なお、上記一般式(7.1)~(7.5)における芳香環上の置換基の位置については、任意であり、例えば、一般式(7.2)のナフタレン環においてはいずれの環上の水素原子と置換していてもよく、一般式(7.3)では、ビフェニル1分子中に存在するベンゼン環のいずれの水素原子に置換していてもよく、一般式(7.4)では、アラルキル1分子中に存在するベンゼン環のいずれかの水素原子と置換していてもよく、一般式(7.5)では、1分子中に存在するベンゼン環のいずれの水素原子と置換していてもよいことを示し、1分子中における置換基の個数がj
71~j
75及びk
71~k
75であることを示している。
【化24】
(上記一般式(8.1)~(8.5)中、h
81は、0又は1を表し、R
81~R
86はそれぞれ独立して、一価の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基又はアラルキル基のいずれかを表し、k
81~k
86はそれぞれ独立して、0又は1~4の整数を表し、Z
81~Z
86はそれぞれ独立して、ビニル基、ハロメチル基、ヒドロキシメチル基又はアルキルオキシメチル基のいずれかを表し、Y
81は、炭素原子数1~4のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基のいずれかを表し、n
81は1~4の整数を表す。)
上記一般式(8.1)~(8.5)で表される化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0107】
上記芳香族ポリヒドロキシ化合物(b5-4)としては、例えば、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラセン、トリヒドロキシアントラセン、テトラヒドロキシアントラセン、ビフェノール、テトラヒドロキシビフェニル、ビスフェノール等の他、これらの芳香核上に1つ又は複数の置換基を有する化合物などが挙げられる。また、前記芳香核上の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等の一価の脂肪族炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基、前記アルコキシ基、前記ハロゲン原子等が置換したアリール基;フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基、前記アルコキシ基、前記ハロゲン原子等が置換したアリールオキシ基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記脂肪族炭化水素基、前記アルコキシ基、前記ハロゲン原子等が置換したアラルキル基などが挙げられる。これらの芳香族ポリヒドロキシ化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。これらの中でも、高い絶縁信頼性を有する酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂が得られることから、ハロゲンを含有しない化合物が好ましい。
【0108】
上記ノボラック型フェノール樹脂としては、例えば、分子内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物の1種又は2種以上と、アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で反応させて得られる樹脂が挙げられる。
【0109】
上記その他分子内にフェノール性水酸基を1つ有する化合物(b5-5)としては、芳香核上に水酸基を1つ有する芳香族化合物であれば何れの化合物でもよく、例えば、フェノール或いはフェノールの芳香核上に1つ又は複数の置換基を有するフェノール化合物、ナフトール或いはナフトールの芳香核上に1つ又は複数の置換基を有するナフトール化合物、アントラセノール或いはアントラセノールの芳香核上に1つ又は複数の置換基を有するアントラセノール化合物等が挙げられる。また、芳香核上の置換基としては、例えば、一価の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基等が挙げられ、それぞれの具体例は前述の通りである。これらのフェノール性水酸基を1つ有する化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0110】
上記アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド;アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ペンチルアルデヒド、へキシルアルデヒド等のアルキルアルデヒド;サリチルアルデヒド、3-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、2-ヒドロキシ-4-メチルベンズアルデヒド、2,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド、3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド等のヒドロキシベンズアルデヒド;2-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド、3-ヒドロキシ-4-メトキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド、3-エトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシ-3,5-ジメトキシベンズアルデヒド等のヒドロキシ基とアルコキシ基の両方を有するベンズアルデヒド;メトキシベンズアルデヒド、エトキシベンズアルデヒド等のアルコキシベンズアルデヒド;1-ヒドロキシ-2-ナフトアルデヒド、2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒド、6-ヒドロキシ-2-ナフトアルデヒド等のヒドロキシナフトアルデヒド;ブロムベンズアルデヒド等のハロゲン化ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0111】
上記アルキレンカーボネート(b5-2a)としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ペンチレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、優れた現像性を有し、密着性、耐熱性及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートが好ましい。前記アルキレンカーボネートは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0112】
上記アルキレンオキサイド(b5-2b)としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、優れた現像性を有し、密着性、耐熱性及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが好ましい。前記アルキレンオキサイドは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0113】
上記N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物(b5-3)としては、例えば、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらの中でも、優れた現像性を有し、密着性、耐熱性及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物(b5-3)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0114】
本実施形態において、N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物(b5-3)を酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)の反応原料に用いる場合、N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物(b5-3)と多塩基酸無水物(b1-3)との当量比[(b5-3)/(b1-3)]は、優れた現像性を有し、密着性、耐熱性及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、0.2~7の範囲が好ましく、0.25~6.7の範囲がより好ましい。
【0115】
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)の製造方法は、特に限定されず、どのような方法にて製造してもよい。例えば、反応原料の全てを一括で反応させる方法で製造してもよいし、反応原料を順次反応させる方法で製造してもよい。なかでも、反応の制御が容易であることから、先にフェノール性水酸基含有化合物(b5-1)と、アルキレンカーボネート(b5-2a)又はアルキレンオキサイド(b5-2b)とを反応させて(例えば、塩基性触媒の存在下、100~200℃の温度範囲での反応)、次いで、不飽和一塩基酸(b1-2)及び/又はN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物(b2-3b)を反応(例えば、酸性触媒の存在下、80~140℃の温度範囲での反応)させた後、多塩基酸無水物(b1-3)を反応(例えば、80~140℃の温度範囲で反応)させる方法が好ましい。
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)は、上記の反応原料から得られる樹脂である。例えば、当該アクリルアミド樹脂(B5)としては、下記一般式(9.1)で表される構造部位(I)と下記一般式(9.2)で表される構造部位(II)とを繰り返し構造単位とする樹脂構造を有する樹脂、あるいは下記一般式(9.3)で表される構造部位(III)と下記一般式(9.4)で表される構造部位(IV)とを繰り返し構造単位とする樹脂構造を有する樹脂が挙げられる。
【化25】
[上記一般式(9.1)又は(9.2)中、R
b2及びR
b8はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~4の一価の炭化水素基を表し、R
b3及びR
b9はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~4の炭化水素基、炭素原子数1~4のアルコキシ基又はハロゲン原子のいずれかを表し、n
1及びn
2はそれぞれ独立して、1又は2を表し、R
b4及びR
b10はそれぞれ独立して、メチレン基又は下記一般式(10.1)~(10.5)のいずれかで表される構造部位を表し、R
b5及びR
b6はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、但し、R
b5とR
b6とが、連結して飽和又は不飽和の環を形成してもよく、R
b11は、炭素原子数1~12の二価の炭化水素基を表し、R
b12は、水素原子又はメチル基を表し、R
b1及びR
b7はそれぞれ独立して、前記R
b3及び前記R
b9で表される基、或いは、一般式(9.1)で表される構造部位(I)又は一般式(9.2)で表される構造部位(II)が、*印が付されたR
b4又はR
b10を介して連結する結合点である。]
【化26】
[上記一般式(9.3)又は(9.4)中、R
b2及びR
b8はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~4の炭化水素基を表し、R
b3及びR
b9はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~4の炭化水素基、炭素原子数1~4のアルコキシ基又はハロゲン原子のいずれかを表し、n
3及びn
4はそれぞれ独立して、1又は2を表し、R
b4及びR
b10はそれぞれ独立して、メチレン基又は下記一般式(10.1)~(10.5)のいずれかで表される構造部位を表し、R
b5及びR
b6はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、但し、R
b5とR
b6とが、連結して飽和又は不飽和の環を形成してもよく、R
b11は、炭素原子数1~12の二価の炭化水素基を表し、R
b12は、水素原子又はメチル基を表し、R
b1及びR
b7はそれぞれ独立して、前記R
b3及び前記R
b9で表される基、或いは、一般式(9.3)で表される構造部位(III)又は一般式(9.4)で表される構造部位(IV)が、*印が付されたR
b4又はR
b10を介して連結する結合点である。]
【化27】
[上記一般式(10.1)~(10.5)中、h
81は、0又は1を表し、R
81~R
86はそれぞれ独立して、一価の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基又はアラルキル基のいずれかを表し、n
81~n
86はそれぞれ独立して、0又は1~4の整数を表し、Y
81は、炭素原子数1~4のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基のいずれかを表し、n
81は1~4の整数を表し、R
101~R
106はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、Wは、下記一般式(11.1)又は(11.2)を表す。]
【化28】
[上記一般式(11.1)又は(11.2)中、R
111及びR
114はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~4の炭化水素基を表し、R
112及びR
113はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、但し、R
112とR
113とが、連結して飽和又は不飽和の環を形成してもよく、R
115は、炭素原子数1~12の二価の炭化水素基を表し、R
116は、水素原子又はメチル基を表す。*は酸素原子と結合する結合手を表す。]
【0116】
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)の酸価は、優れた現像性を有し、密着性、耐熱性及び低誘電特性に優れた硬化物を形成可能なポリマレイミド樹脂含有組成物が得られることから、30~150mgKOH/gの範囲が好ましく、40~120mgKOH/gの範囲がより好ましい。なお、本開示における酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂(B5)の酸価は、JIS K 0070(1992)の中和滴定法に基づいて測定される値である。
【0117】
<酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂(B6)>
本実施形態における酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂(B6)としては、例えば、フェノール性水酸基含有化合物(b5-1)と、アルキレンオキサイド(b5-2b)又はアルキレンカーボネート(b5-2a)と、不飽和一塩基酸(b1-2)と、多塩基酸無水物(b1-3)とを反応させて得られた樹脂が挙げられる。
【0118】
上記アルキレンオキサイド(b5-2b)としては、上述のアルキレンオキサイド(b5-2b)として例示したものと同様のものを用いることができる。これらの中でも、優れた現像性を有し、密着性、耐熱性及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが好ましい。
アルキレンオキサイド(b5-2b)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0119】
上記アルキレンカーボネート(b5-2a)としては、上述のアルキレンカーボネート(b5-2a)として例示したものと同様のものを用いることができる。これらの中でも、優れた現像性を有し、密着性、耐熱性及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートが好ましい。
アルキレンカーボネート(b5-2a)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0120】
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂(B6)の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂(B6)の製造においては、必要に応じて有機溶媒中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒及び酸性触媒を用いてもよい。
【0121】
上記有機溶媒としては、上述の樹脂(B1)~樹脂(5)の欄に記載の有機溶媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記有機溶媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。上記塩基性触媒としては、上述の樹脂(B1)~樹脂(5)の欄に記載の塩基性触媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。上記酸性触媒としては、上述の樹脂(B1)~樹脂(5)の欄に記載の酸性触媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記酸性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0122】
以上が、本実施形態におけるポリマレイミド樹脂含有組成物に含有される必須成分の内容である。なお、本実施形態のポリマレイミド樹脂含有組成物の製造方法は、特に制限されず、上述した種々の成分を、ロール等の混練機を用いて混練することで製造することができる。
【0123】
(任意添加成分)
本実施形態におけるポリマレイミド樹脂含有組成物は、上述したポリマレイミド樹脂(A)並びに酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)以外に、紫外線安定剤、保存安定化剤等の公知の各種安定剤、後述の硬化性組成物の欄に記載の他の樹脂、後述の硬化性組成物の欄に記載の溶媒、あるいは後述の硬化性組成物の欄に記載の添加剤といった任意添加成分を含有してもよい。
【0124】
[硬化性組成物]
本実施形態における硬化性組成物は、上述したポリマレイミド樹脂含有組成物と、重合開始剤とを含有することが好ましい。より詳細には、本実施形態の好適な硬化性組成物は、上述したポリマレイミド樹脂含有組成物(ポリマレイミド樹脂(A)並びに酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)を必須に含む。)と、重合開始剤と、必要により添加される、硬化剤と、溶媒と、他の樹脂と、添加剤と、を含有する。
上記硬化剤としては、エポキシ樹脂及び当該エポキシ樹脂以外の他の硬化剤(以下、他の硬化剤とも称する。)が挙げられる。また、前記他の樹脂としては、ポリマレイミド樹脂(A)並びに酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)以外の樹脂が挙げられる。さらには、前記添加剤としては、硬化促進剤、難燃剤、充填剤、顔料、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、保存安定化剤、酸化防止剤又は紫外線防止剤などが挙げられる。
【0125】
本実施形態における硬化性組成物において、ポリマレイミド樹脂(A)の含有量は、硬化性組成物の固形分中に、5~95質量%の範囲が好ましく、20~80質量%の範囲がより好ましい。
本実施形態における硬化性組成物において、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)の含有量は、硬化性組成物の固形分中に、5~95質量%の範囲が好ましく、20~80質量%の範囲がより好ましい。
【0126】
本実施形態における硬化性組成物において、上述したポリマレイミド樹脂含有組成物の含有量は、硬化性組成物の総量(100質量%)に対して、10~95質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましい。
本実施形態における硬化性組成物において、硬化剤の含有量は、硬化性組成物の総量(100質量%)に対して、0~50質量%であることが好ましく、5~40質量%であることがより好ましい。
本実施形態における硬化性組成物において、添加剤の含有量は、硬化性組成物の総量(100質量%)に対して、0~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。
以下、本実施形態における硬化性組成物に含有されうる各成分である、重合開始剤、硬化剤、溶媒、他の樹脂及び添加剤について詳説する。
【0127】
(重合開始剤)
本実施形態の重合開始剤としては、熱重合開始剤及び光重合開始剤からなる群から選択される1種又は2種以上を使用することができる。本実施形態の好適な重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましい。前記熱重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
本実施形態の硬化性組成物における重合開始剤の含有量は、ポリマレイミド樹脂(A)並びに酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0128】
<光重合開始剤>
本実施形態の硬化性組成物は、上述したポリマレイミド樹脂含有組成物と、光重合開始剤とを含有することがより好ましい。
本実施形態の光重合開始剤は、照射する活性エネルギー線の種類等により適切なものを選択して用いることができる。また、アミン化合物、尿素化合物、含硫黄化合物、含燐化合物、含塩素化合物、ニトリル化合物等の光増感剤と併用してもよい。また、光重合開始剤は、ラジカル重合開始剤であることが好ましい。かかる光重合開始剤の具体例としては、例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、1,2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等のアルキルフェノン系光重合開始剤;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;ベンゾフェノン化合物等の分子内水素引き抜き型光重合開始剤等が挙げられる。
さらに、光重合開始剤の具体例としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン等も挙げられる。
また、本実施形態に使用可能な光重合開始剤の市販品としては、例えば、「Omnirad-1173」、「Omnirad-184」、「Omnirad-127」、「Omnirad-2959」、「Omnirad-369」、「Omnirad-379」、「Omnirad-907」、「Omnirad-4265」、「Omnirad-1000」、「Omnirad-651」、「Omnirad-TPO」、「Omnirad-819」、「Omnirad-2022」、「Omnirad-2100」、「Omnirad-754」、「Omnirad-784」、「Omnirad-500」、「Omnirad-81」(IGM社製)、「カヤキュア-DETX」、「カヤキュア-MBP」、「カヤキュア-DMBI」、「カヤキュア-EPA」、「カヤキュア-OA」(日本化薬株式会社製)、「バイキュア-10」、「バイキュア-55」(ストウファ・ケミカル社製)、「トリゴナルP1」(アクゾ社製)、「サンドレイ1000」(サンドズ社製)、「ディープ」(アプジョン社製)、「クオンタキュア-PDO」、「クオンタキュア-ITX」、「クオンタキュア-EPD」(ワードブレンキンソップ社製)、「Runtecure-1104」(Runtec社製)等が挙げられる。
【0129】
本実施形態の硬化性組成物における光重合開始剤の含有量は、ポリマレイミド樹脂(A)並びに酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0130】
(硬化剤)
本実施形態の硬化剤としては、例えば、エポキシ樹脂及び他の硬化剤(アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール樹脂硬化剤等)が挙げられ、エポキシ樹脂が好ましい。
【0131】
<エポキシ樹脂>
本実施形態の好適な硬化剤であるエポキシ樹脂としては、特に制限されないが、例えば、分子中に2個以上のエポキシ基を含み、前記エポキシ基で架橋ネットワークを形成することにより硬化できる硬化性樹脂であることが好ましい。
本実施形態のエポキシ樹脂としては、特に制限されないが、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;
フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールC型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;
ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格及びジグリシジルオキシベンゼン骨格を有するエポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;
ナフタレン型エポキシ樹脂;
ビナフトール型エポキシ樹脂;ビナフチル型エポキシ樹脂;
ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂等のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリグリシジル-p-アミノフェノール型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルスルホンのグリシジルアミン型エポキシ樹脂等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロ無水フタル酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂等のジグリシジルエステル型エポキシ樹脂;
ジベンゾピラン、ヘキサメチルジベンゾピラン、7-フェニルヘキサメチルジベンゾピラン等のベンゾピラン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂のうち、フェノール化合物をエポキシ化して得られる、いわゆるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましく、その中でもノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂であることが、誘電特性の観点からより好ましい。なお、上述のエポキシ樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0132】
本実施形態のエポキシ樹脂のエポキシ当量は、120~400g/eqであることが好ましく、150~300g/eqであることがより好ましい。前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が120g/eq以上であると、得られる硬化物の誘電特性により優れることから好ましく、一方、エポキシ樹脂のエポキシ当量が400g/eq以下であると、優れた現像性を示し、かつ得られる硬化物の密着性、耐熱性及び低誘電特性のバランスに優れることから好ましい。
【0133】
本実施形態のエポキシ樹脂の軟化点は、優れた現像性を示し、かつ得られる硬化物において、密着性、耐熱性及び低誘電特性をバランスよく向上させる観点から、20~200℃であることが好ましく、40~150℃であることがより好ましい。
【0134】
本実施形態において、エポキシ樹脂の使用量に関し、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)中の酸基を(合計の)官能基としたときに、エポキシ樹脂の使用量の官能基当量比((酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B))/エポキシ樹脂)は、0.2~2であることがより好ましく、0.4~1.5であることがより好ましい。前記官能基当量比が0.2以上であると、得られる硬化物が、より低誘電正接、高い柔軟性となりうることから好ましい。前記官能基当量比が2を超えると、耐熱性、硬化性が低下するため、前記範囲内で使用することが好ましい。
【0135】
<他の硬化剤>
本実施形態の硬化性組成物は、上記エポキシ樹脂と共に、あるいは上記エポキシ樹脂の代わりに他の硬化剤を含有してもよい。前記他の硬化剤としては、特に制限されないが、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール樹脂硬化剤等が挙げられる。
上記アミン硬化剤としては、特に制限されないが、ジエチレントリアミン(DTA)、トリエチレンテトラミン(TTA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ジプロプレンジアミン(DPDA)、ジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)、N-アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン(MDA)、イソフオロンジアミン(IPDA)、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3-BAC)、ピペリジン、N,N,-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン等の脂肪族アミン;m-キシレンジアミン(XDA)、メタンフェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、ベンジルメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の芳香族アミン等が挙げられる。
【0136】
上記酸無水物硬化剤としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0137】
上記フェノール樹脂硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、ビフェニルノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、テトラフェノールエタン型樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。
上述の他の硬化剤はいずれも、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0138】
本実施形態において、他の硬化剤(アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール樹脂硬化剤)の使用量に関し、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)中の酸基を(合計の)官能基としたときに、当該他の硬化剤の使用量の官能基当量比((酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B))/他の硬化剤)は、0.2~2であることがより好ましく、0.4~1.5であることがより好ましい。前記官能基当量比が0.2以上であると、得られる硬化物が、より低誘電正接、高い柔軟性となりうることから好ましい。前記官能基当量比が2を超えると、耐熱性、硬化性が低下するため、前記範囲内で使用することが好ましい。
【0139】
(他の樹脂)
本実施形態の硬化性組成物は、前記エポキシ樹脂又は他の硬化剤に加えて、あるいは前記エポキシ樹脂又は他の硬化剤に代えて他の樹脂を含んでいてもよい。
前記他の樹脂の具体例としては、特に制限されないが、マレイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリマレイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂、シアン酸エステル樹脂、スチレン-無水マレイン酸樹脂、ジアリルビスフェノールやトリアリルイソシアヌレート等のアリル基含有樹脂、ポリリン酸エステル、リン酸エステル-カーボネート共重合体等が挙げられる。これらの他の樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の硬化性組成物における他の樹脂の含有量は、全体の50質量%以下であることが好ましい。
【0140】
(溶媒)
本実施形態の硬化性組成物は、無溶媒で調製しても構わないし、溶媒を含んでいてもよい。前記溶媒は、硬化性組成物の粘度を調整する機能等を有する。
前記溶媒の具体例としては、特に制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)等のエステル系溶媒;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の硬化性組成物における溶媒の含有量は、硬化性組成物の総量(100質量%)中、0~90質量%であることが好ましく、10~90質量%であることがより好ましく、20~80質量%であることがさらに好ましい。前記溶媒の含有量が10質量%以上であると、ハンドリング性に優れることから好ましい。一方、溶媒の含有量が90質量%以下であると、経済性の観点から好ましい。
【0141】
(添加剤)
本実施形態の硬化性組成物は、添加剤を含んでいてもよい。前記添加剤としては、硬化促進剤、難燃剤、充填剤、顔料、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、保存安定化剤、酸化防止剤、重合禁止剤又は紫外線防止剤等が挙げられる。すなわち、本実施形態の硬化性組成物は、目的を逸脱しない範囲において、必要に応じて、上記他の樹脂、上記溶媒、上記硬化剤、硬化促進剤、難燃剤、充填剤、顔料(フタロシアニン化合物等)、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、保存安定化剤、酸化防止剤、重合禁止剤又は紫外線防止剤等のその他の各種添加剤を適量含有することもできる。
【0142】
<硬化促進剤>
本実施形態の硬化促進剤としては、特に制限されないが、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、尿素系硬化促進剤等が挙げられる。上述の硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0143】
上記リン系硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリパラトリルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の有機ホスフィン化合物;トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト等の有機ホスファイト化合物;エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムジシアナミド、ブチルフェニルホスホニウムジシアナミド、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩等のホスホニウム塩等が挙げられる。
【0144】
上記アミン系硬化促進剤としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-ノネン-5(DBN)等が挙げられる。
【0145】
上記イミダゾール系硬化促進剤としては、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン等が挙げられる。
【0146】
上記グアニジン系硬化促進剤としては、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-ブチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド等が挙げられる。
【0147】
上記尿素系硬化促進剤としては、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、クロロフェニル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロルフェニル)-1,1-ジメチル尿素等が挙げられる。
上述の硬化促進剤のうち、2-エチル-4-メチルイミダゾール、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)を用いることが好ましい。
【0148】
本実施形態の硬化性組成物における硬化促進剤の含有量は、所望の硬化性を得るために適宜調整できるが、上記(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましく、0.1~3質量部であることが更に好ましい。硬化促進剤の含有量が0.01質量部以上であると、硬化性に優れることから好ましい。一方、硬化促進剤の含有量が5質量部以下であると、絶縁信頼性に優れることから好ましい。同様の観点から、硬化促進剤の含有量は、上記(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、0.1質量部以上であることがより好ましく、また、3質量部以下であることがより好ましい。
【0149】
<難燃剤>
本実施形態の難燃剤としては、特に制限されないが、無機リン系難燃剤、有機リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤等が挙げられる。
前記無機リン系難燃剤としては、特に制限されないが、赤リン;リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム;リン酸アミド等が挙げられる。
【0150】
上記有機リン系難燃剤としては、特に制限されないが、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、モノイソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ブチルピロホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート、(2-ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェート等のリン酸エステル;9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、ジフェニルホスフィンオキシド等ジフェニルホスフィン;10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(1,4-ジオキシナフタレン)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン、ジフェニルホスフェニル-1,4-ジオキシナフタリン、1,4-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール、1,5-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール等のリン含有フェノール;9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5-ジヒドロオキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状リン化合物;前記リン酸エステル、前記ジフェニルホスフィン、前記リン含有フェノールと、エポキシ樹脂やアルデヒド化合物、フェノール化合物と反応させて得られる化合物等が挙げられる。
上記ハロゲン系難燃剤としては、特に制限されないが、臭素化ポリスチレン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、テトラブロモビスフェノールAビス(ジブロモプロピルエーテル)、1,2、-ビス(テトラブロモフタルイミド)、2,4,6-トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン、テトラブロモフタル酸等が挙げられる。上述の難燃剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0151】
本実施形態の難燃剤の含有量は、上記(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、0.1~50質量部であることが好ましく、1~30質量部であることがより好ましい。難燃剤の含有量が0.1質量部以上であると、難燃性を付与できることから好ましい。一方、難燃剤の含有量が50質量部以下であると、誘電特性を維持しながら難燃性を付与できることから好ましい。同様の観点から、難燃剤の含有量は、上記(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、1質量部以上であることがより好ましく、また、30質量部以下であることがより好ましい。
【0152】
<充填剤>
本実施形態の充填剤としては、有機充填剤、無機充填剤が挙げられる。有機充填剤は、伸びを向上させる機能、機械的強度を向上させる機能等を有する。無機充填剤は、熱膨張率の低減や難燃性の付与といった機能を有する。
前記有機充填剤としては、特に制限されないが、ポリアミド粒子等が挙げられる。
上記無機充填剤としては、特に制限されないが、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸タングステン酸ジルコニウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、カーボンブラック等が挙げられる。これらのうち、シリカを用いることが好ましい。この際、シリカとしては、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が用いられうる。
【0153】
また、上記充填剤は、必要に応じて表面処理されていてもよい。この際、使用されうる表面処理剤としては、特に制限されないが、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が使用されうる。表面処理剤の具体例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が挙げられる。なお、上述の充填剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0154】
本実施形態の充填剤の含有量は、上記(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、0.5~95質量部であることが好ましく、5~80質量部であることがより好ましい。充填剤の含有量が0.5質量部以上であると、充填剤の効果を十分に付与できることから好ましい。一方、配合物の粘度が高くなり成形性を損なわないように、充填剤の含有量が95質量部以下であることが好ましい。同様の観点から、充填剤の含有量は、上記(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、5質量部以上であることがより好ましく、また、80質量部以下であることがより好ましい。
本実施形態の硬化性組成物の製造方法は、特に制限されず、上述した種々の成分を、ロール等の混練機を用いて混練することで製造することができる。
【0155】
上記重合禁止剤としては、例えば、p-メトキシフェノール、p-メトキシクレゾール、4-メトキシ-1-ナフトール、4,4’-ジアルコキシ-2,2’-ビ-1-ナフトール、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール、N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、スチレン化フェノール、N-イソプロピル-N’-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等のフェノール化合物、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、p-ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニルベンゾキノン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、アントラキノン、ジフェノキノン等のキノン化合物、メラミン、p-フェニレンジアミン、4-アミノジフェニルアミン、N.N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-i-プロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1.3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、4,4’-ジクミル-ジフェニルアミン、4,4’-ジオクチル-ジフェニルアミン、ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、スチレン化ジフェニルアミン、スチレン化ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンの反応生成物、ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンの反応生成物等のアミン化合物、フェノチアジン、ジステアリルチオジプロピオネート、2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル=ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオナート]、ジトリデカン-1-イル=3,3’-スルファンジイルジプロパノアート等のチオエーテル化合物、N-ニトロソジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルナフチルアミン、p-ニトロソフェノール、ニトロソベンゼン、p-ニトロソジフェニルアミン、α-ニトロソ-β-ナフトール等、N、N-ジメチルp-ニトロソアニリン、p-ニトロソジフェニルアミン、p-ニトロンジメチルアミン、p-ニトロン-N、N-ジエチルアミン、N-ニトロソエタノールアミン、N-ニトロソジ-n-ブチルアミン、N-ニトロソ-N-n-ブチル-4-ブタノールアミン、N-ニトロソ-ジイソプロパノールアミン、N-ニトロソ-N-エチル-4-ブタノールアミン、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、N-ニトロソモルホリン、N-二トロソーN-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、二トロソベンゼン、N-ニトロソ-N-メチル-p-トルエンスルホンアミド、N-ニトロソ-N-エチルウレタン、N-ニトロソ-N-n-プロピルウレタン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、1-ニトロソ-2-ナフトール-3,6-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩等のニトロソ化合物、リン酸とオクタデカン-1-オールのエステル、トリフェニルホスファイト、3,9-ジオクタデカン-1-イル-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリスノニルフェニルホスフィト、亜リン酸-(1-メチルエチリデン)-ジ-4,1-フェニレンテトラ-C12-15-アルキルエステル、2-エチルヘキシル=ジフェニル=ホスフィット、ジフェニルイソデシルフォスファイト、トリイソデシル=ホスフィット、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等のホスファイト化合物、ビス(ジメチルジチオカルバマト-κ(2)S,S’)亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛等の亜鉛化合物、ビス(N,N-ジブチルカルバモジチオアト-S,S’)ニッケル等のニッケル化合物、1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-チオン、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2-メチル-4,6-ビス[(オクタン-1-イルスルファニル)メチル]フェノール、ジラウリルチオジプロピオン酸エステル、3,3’-チオジプロピオン酸ジステアリル等の硫黄化合物などが挙げられる。これらの重合禁止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0156】
前記酸化防止剤としては、前記重合禁止剤で例示した化合物と同様のものを用いることができ、前記酸化防止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
また、前記重合禁止剤、及び前記酸化防止剤の市販品としては、例えば、和光純薬工業株式会社製「Q-1300」、「Q-1301」、住友化学株式会社製「スミライザーBBM-S」、「スミライザーGA-80が」等が挙げられる。
本実施形態の重合禁止剤の含有量は、上記(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましい。
【0157】
[硬化物]
本実施形態における硬化物は、上述した硬化性組成物を硬化してなる。当該硬化性組成物に含有されるポリマレイミド樹脂(A)自体が、実質的に極性官能基を有していないため誘電正接が低いことから、前記硬化性組成物から得られる硬化物も誘電正接が低くなり、また、得られる硬化物は柔軟性、柔軟性に起因する銅箔等の金属への密着性、及び、低誘電特性を発現させることのでき、好ましい態様となる。
本実施形態の硬化物は、前記硬化性組成物に、活性エネルギー線を照射することにより得ることができる。前記活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。また、前記活性エネルギー線として、紫外線を用いる場合、紫外線による硬化反応を効率よく行う上で、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で照射してもよく、空気雰囲気下で照射してもよい。
【0158】
本実施形態において、紫外線発生源としては、実用性、経済性の面から紫外線ランプが一般的に用いられている。具体的には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、太陽光、LED等が挙げられる。
前記活性エネルギー線の積算光量は、特に制限されないが、0.1~50kJ/m2であることが好ましく、0.5~10kJ/m2であることがより好ましい。積算光量が上記範囲であると、未硬化部分の発生の防止又は抑制ができることから好ましい。なお、前記活性エネルギー線の照射は、一段階で行ってもよいし、二段階以上の複数回に分けて行ってもよい。
【0159】
また、本実施形態において、前記硬化性組成物を硬化反応させてなる硬化物を得る他の方法としては、例えば、加熱硬化する際の加熱温度は、特に制限されないが、100~300℃であり、加熱時間としては、1~24時間であることが好ましい。
【0160】
本実施形態における硬化性組成物又は硬化物が用いられる用途としては、プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用ポリマレイミド樹脂含有組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム等の回路基板用絶縁材料、樹脂注型材料、接着剤、半導体封止材料、半導体装置、プリプレグ、導電ペースト、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、繊維強化複合材料、上記複合材料を硬化させてなる成形品等が挙げられる。これら各種用途のうち、プリント配線板材料、回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ所謂電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。さらに、上記の中でも、硬化物が優れた柔軟性、密着性、低誘電特性、及び、耐熱性等を有するといった特性を生かし、本発明の硬化性組成物は、半導体封止材料、半導体装置、プリプレグ、フレキシルブル配線基板、回路基板、及び、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、多層プリント配線板、繊維強化複合材料、前記複合材料を硬化させてなる成形品に用いることが好ましい。
【0161】
[絶縁材料]
本実施形態における絶縁材料は、上述した硬化性組成物からなる。当該絶縁材料としては、上述のビルドアップ基板用層間絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム等の回路基板用絶縁材料、回路基板用絶縁材料及び電子部品内蔵用基板用の絶縁材料などが挙げられる。例えば、上記硬化性組成物からビルドアップ基板を製造する方法としては、以下に示す3つの工程からなる方法で製造されるものが挙げられる。第1の工程は、ゴム、フィラーなどを適宜配合した上記硬化性組成物を、回路を形成した回路基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる工程であり、第2の工程は、その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する工程であり、第3の工程は、このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成する工程である。なお、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行うことが好ましい。第一の工程は、上述の溶液塗布によるもの以外にも、あらかじめ所望の厚みに塗工して乾燥したビルドアップフィルムのラミネートによる方法でも行うことができる。また、本発明のビルドアップ基板は、銅箔上で当該ポリマレイミド樹脂含有組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170~250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を製造することも可能である。
【0162】
[レジスト部材]
本実施形態におけるレジスト部材は、上述した硬化性組成物からなる。当該レジスト部材は、例えば、前記硬化性組成物を基材上に塗布し、60~100℃程度の温度範囲で有機溶媒を揮発乾燥させた後、所望のパターンが形成されたフォトマスクを通して活性エネルギー線にて露光させ、アルカリ水溶液にて未露光部を現像し、更に140~180℃程度の温度範囲で加熱硬化させて得ることができる。かかる本実施形態のレジスト部材は、低誘電特性、耐熱性及び密着性に優れる。
【実施例0163】
本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。尚、合成したポリマレイミド樹脂(A)、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B)及びポリマレイミド樹脂含有組成物の物性測定は以下の[評価・測定方法]の欄に記載の通り実施し、表1及び表2に示した。
【0164】
[評価・測定方法]
(1)アミン当量
以下の測定法により、中間体アミン化合物(c-1)~(c-2)及び中間体アミン化合物(c1)~(c2)のアミン当量を測定した。
500mL共栓付き三角フラスコに、試料である上記各中間体アミン化合物を約2.5g、ピリジン7.5g、無水酢酸2.5g、トリフェニルホスフィン7.5gを精秤後、冷却管を装着し120℃に設定したオイルバスにて150分加熱還流する。
冷却後、蒸留水5.0mL、プロピレングリコールモノメチルエーテル100mL、テトラヒドロフラン75mLを加え、0.5mol/L水酸化カリウム-エタノール溶液で電位差滴定法により滴定した。同様の方法で空試験を行なって補正した。
アミン当量(g/当量)=(S×2,000)/(Blank-A)
S:試料の量(g)
A:0.5mol/L水酸化カリウム-エタノール溶液の消費量(mL)
Blank:空試験における0.5mol/L水酸化カリウム-エタノール溶液の消費量(mL)
【0165】
(2)GPC測定
以下の測定装置、測定条件を用いて、実施例及び比較例で得られたポリマレイミド樹脂についての、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
「測定装置」
東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」
「測定条件」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料:合成例で得られたポリマレイミド樹脂の樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0166】
(3)NMR測定
<1H-NMR測定>
1H-NMR:JEOL RESONANCE製「JNM-ECA600」
磁場強度:600MHz
積算回数:32回
溶媒:DMSO-d6
<13C-NMR測定>
13C-NMR:JEOL RESONANCE製「JNM-ECA600」
磁場強度:125MHz
積算回数:1000回
溶媒:CDCL3
試料濃度:12質量%
前記13C―NMRチャートの結果より、目的生成物由来のピークが確認でき、各反応における目的生成物が得られたことを確認した。
【0167】
(4)硬化物の作製、耐熱性及びピール強度の測定(密着性の評価)
(4-1)硬化物の作製
銅箔(古河産業株式会社製、電解銅箔「F2-WS」18μm)上に対して、各実施例及び比較例で得られた硬化性組成物を50μmのアプリケーターで塗布し、80℃で30分乾燥させた。次いで、メタルハライドランプを用いて1000mJ/cm2の紫外線を塗膜に照射した後、160℃で1時間加熱し、銅箔及び当該銅箔上に形成された硬化塗膜を有する積層体を得た。次いで、前記硬化塗膜を銅箔から剥離し、硬化物を得た。
(4-2)耐熱性の評価
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を、アプリケーターを用いて銅箔(古河産業株式会社製、電解銅箔「F2-WS」18μm)上に膜厚50μmとなるように塗布し、80℃で30分乾燥させた。次いで、メタルハライドランプを用いて10kJ/m2の紫外線を照射した後、160℃で1時間加熱して、硬化塗膜を得た。次いで、かかる硬化塗膜を銅箔から剥離し、硬化物を得た。この硬化物から6mm×35mmの試験片を切り出し、粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置「RSAII」、引張り法:周波数1Hz、昇温速度3℃/分)を用いて、弾性率変化が最大となる温度をガラス転移温度(℃)として評価した。ガラス転移温度(℃)が高いほど、耐熱性に優れることを示す。
(4-3)ピール強度測定(密着性の評価)
各実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物を、アプリケーターを用いて銅箔(古河産業株式会社製、電解銅箔「F2-WS」18μm)上に膜厚50μmとなるように塗布し、80℃で30分乾燥させた。次いで、メタルハライドランプを用いて10kJ/m2の紫外線を照射した後、160℃で1時間加熱して、試験片2を得た。前記試験片2を幅1cm、長さ12cmの大きさに切り出し、剥離試験機(株式会社A&D製「A&Dテンシロン」、剥離速度50mm/min)を用いて、90°ピール強度を測定した。結果を表4に示す。ピール強度の値が大きいほど、密着性に優れることを示す。
なお、ピール強度の測定条件は、以下の通りである。
測定機器:株式会社A&D社製「A&Dテンシロン」
試験片:幅1cm、長さ12cm剥離試験機
試験速度:50mm/min
条件:温度23℃、湿度50%
【0168】
(5)誘電率及び誘電正接測定
各実施例及び比較例で得られた硬化性組成物を、アプリケーターを用いてガラス基材上に膜厚50μmとなるように塗布し、80℃で30分乾燥させた。次いで、メタルハライドランプを用いて10kJ/m2の紫外線を照射した後、160℃で1時間加熱して、硬化塗膜を得た。次いで、前記硬化塗膜をガラス基材から剥離し、硬化物を得た。次いで、当該硬化物を温度23℃、湿度50%の室内に24時間保管したものを試験片2とし、アジレント・テクノロジー株式会社製ネットワークアナライザ「4291B RFインピーダンスマテリアルアナライザー、16453A」を用いて、空洞共振法により試験片の1GHzでの誘電率及び誘電正接を測定した。
【0169】
(6)アルカリ現像性の評価
各実施例及び比較例で得られた硬化性組成物を、アプリケーターを用いてガラス基材上に膜厚50μmとなるように塗布した後、80℃でそれぞれ30分間、40分間、50分間、60分間、70分間、80分間、90分間乾燥させ、乾燥時間が異なるサンプルを作製した。これらを1%炭酸ナトリウム水溶液で30℃180秒間現像し、基板上に残渣が残らなかったサンプルの80℃での乾燥時間を乾燥管理幅(分)として評価した。なお、乾燥管理幅(分)が長いほどアルカリ現像性が優れていることを示す。
【0170】
(7)溶剤溶解性の評価
各合成例で得られたポリマレイミド化合物(A-1)~(A-2)、比較用マレイミド化合物(c1)及び(c2)について、不揮発分60質量%となるようにメチルエチルケトン(MEK)溶液を調製し、析出までの日数を測定した。また、DMF(ジメチルホルムアミド)などと比較して低沸点で残溶を抑制できる観点から回路基板用途において汎用使用される溶剤として、MEKを選択した。なお、析出しない状態を維持する日数については30日以上を良好とする。
【0171】
[合成例・実施例・比較例]
(合成例1)ポリマレイミド樹脂(A-1)の合成
(I)中間体アミン化合物(c-1)の合成
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ及び攪拌機を取り付けたフラスコに、2-エチルアニリン400質量部、ベンジルエーテル骨格を有する化合物(B)(ニカノールL、フドー株式会社製)127質量部、トルエン193質量部及び活性白土53質量部を仕込み、攪拌しながら120℃まで昇温し、30分間ホールドした。その後、150℃まで昇温し3時間ホールドした。ホールド終了後、30分かけて200℃まで昇温させ、10時間ホールドした。ホールド終了後、トルエン193質量部で希釈し、濾過により活性白土を濾別した。濾液は加熱減圧により溶剤及び過剰の2-エチルアニリンを留去し、中間体アミン化合物(c-1)を得た(アミン当量209g/当量)。得られた中間体アミン化合物(c-1)のMS及び
13C-NMRを
図1及び
図2に示す。
(II)マレイミド化
温度計、冷却管、ディーンスタークトラップ及び攪拌機を取り付けた2Lフラスコに無水マレイン酸73.2質量部、トルエン461質量部を仕込み室温で攪拌した。次に中間体アミン化合物(c-1)209質量部とDMF57.7質量部との混合溶液を1時間かけて滴下し、その後2時間反応させた。その反応液にp-トルエンスルホン酸一水和物9.72質量部を加え、反応液を加熱し還流下で共沸してくる水とトルエンとを冷却・分離した後、115℃まで加熱し還流下で共沸してくる水とトルエンとを冷却・分離した後、トルエンだけを系内に戻して脱水反応を5時間行った。室温まで空冷後、室温まで空冷後、減圧濃縮し褐色溶液を酢酸エチル600質量部に溶解させイオン交換水200質量部で3回、2質量%炭酸水素ナトリウム水溶液150質量部で3回洗浄し、硫酸ナトリウムを加え乾燥後、減圧濃縮し得られた反応物を80℃で4時間真空乾燥を行い、ポリマレイミド樹脂(A-1)を含有する生成物を得た。
当該ポリマレイミド樹脂(A-1)のGPCチャートを
図3に、FD-MSスペクトルを
図4に、
13C-NMRスペクトル結果を
図5に示す。また、ポリマレイミド樹脂(A-1)について、上記の(7)溶剤溶解性の評価の欄に記載の手順に従い溶剤溶解性の評価を行った結果、30日間析出が見られなかった。
【0172】
(合成例2)ポリマレイミド樹脂(A-2)の合成
合成例1の2-エチルアニリンの代わりに、2,3-ジメチルアニリン400質量部へと変更した以外は、合成例1の「(I)中間体アミン化合物(c-1)の合成」の欄に記載の方法と同様に反応を行い、中間体アミン化合物(c-2)を調製した後、合成例1の「(II)マレイミド化」と同様に反応を行って当該中間体アミン化合物(c-2)をマレイミド化して目的物であるポリマレイミド樹脂(A-2)を得た。また、中間体アミン化合物(c-2)のアミン当量は216(g/当量)であった。得られた中間体アミン化合物(c-2)のMS及び
13C-NMRを
図6及び
図7に示す。そして、当該ポリマレイミド樹脂(A-2)のGPCチャートを
図8に、FD-MSスペクトルを
図9に、
13C-NMRスペクトル結果を
図10に示す。また、ポリマレイミド樹脂(A-2)について、上記の(7)溶剤溶解性の評価の欄に記載の手順に従い溶剤溶解性の評価を行った結果、30日間析出が見られなかった。
【0173】
(合成例3):酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B-1)の合成
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート123質量部を入れ、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂「EPICLON N-680」(DIC株式会社製、軟化点86℃、エポキシ当量:214g/eq、)214質量部を溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン0.9質量部、メトキノン0.2質量部加えた後、アクリル酸72質量部、トリフェニルホスフィン1.4質量部を添加し、空気を吹き込みながら120℃で10時間反応を行なった。次いで、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート72質量部、テトラヒドロ無水フタル酸76質量部を加え110℃で3時間反応し、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B-1)を得た。この酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B-1)の不揮発分は65質量%で、固形分酸価は80mgKOH/gであった。なお、酸価は、JIS K 0070(1992)の中和滴定法に基づいて測定した値である。
【0174】
(合成例4):酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B-2)の合成
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート499.7質量部を入れ、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(EVONIK社製「VESTANAT T-1890/100」、NCO%=17.2%)244.3質量部及び無水トリメリット酸192.0質量部を溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン1.0質量部を添加した。窒素雰囲気下で160℃、6時間反応させ、NCO%が0.1以下となっていることを確認した。次いで、メトキノン0.4質量部加えた後、ペンタエリスリトールポリアクリレート混合物(東亜合成株式会社製「アロニックス M-306」、水酸基価:159.7mgKOH/g)147.6質量部及びトリフェニルホスフィン3.5質量部を添加し、空気を吹き込みながら110℃で5時間反応を行なった。その後、グリシジルメタクリレート165.0質量部を添加し、110℃で6時間反応させた。次に、無水コハク酸110.4質量部を加え110℃で5時間反応させて、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B-2)を得た。当該樹脂(B-2)の固形分酸価は、80mgKOH/gであった。なお、前記固形分酸価は、JIS K 0070(1992)の中和滴定法に基づいて測定した値である。
【0175】
(比較用実験例1):比較用マレイミド樹脂(c1)の合成
合成例1の2-エチルアニリンの代わりに、アニリン307.4質量部へと変更した以外は、合成例1の「(I)中間体アミン化合物(c-1)の合成」に記載の方法と同様に反応を行い、中間体アミン化合物(c1)を調製した後、合成例1の「(II)マレイミド化」に記載の方法と同様に反応を行って当該中間体アミン化合物(c1)をマレイミド化して目的物である比較用マレイミド樹脂(c1)を得た。また、中間体アミン化合物(c1)のアミン当量は、201(g/当量)であった。得られた中間体アミン化合物(c1)のMS及び
13C-NMRを
図11及び
図12に示す。そして、当該比較用マレイミド樹脂(c1)のFD-MSスペクトルを
図13に、
13C-NMRスペクトル結果を
図14に示す。また、比較用マレイミド樹脂(c1)について、上記の(7)溶剤溶解性の評価の欄に記載の手順に従い溶剤溶解性の評価を行った結果、30日間析出が見られなかった。
【0176】
(実施例1~4:ポリマレイミド樹脂含有組成物及び硬化性組成物の調製と評価)
上記合成例で得られたポリマレイミド樹脂(A-1)~(A-2)と、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(B―1)~(B-2)とを、表1に示す組成比で混合して、ポリマレイミド樹脂含有組成物(1)~(4)を得た。
次いで、上記ポリマレイミド樹脂含有組成物(1)~(4)と、硬化剤としてオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON N-680」、エポキシ当量:214)と、光重合性開始剤(IGM Resins社製「Omnirad 907」)と、有機溶剤(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)と、硬化促進剤として2-エチル-4-メチルイミダゾールと、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートと、顔料としてフタロシアニングリーンとを、表1に示す組成比で混合し、硬化性組成物(1)~(4)を得た。そして、上記[評価・測定方法]の欄に記載の評価方法の手順に従い、当該硬化性組成物(1)~(4)について、アルカリ現像性の評価を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0177】
(比較例1:比較用硬化性組成物(C1)の調製と評価)
実施例1~4と同様に、表1に示す組成比で各成分を混合し、比較例1の比較用硬化性組成物(C1)を得た。そして、比較例1の比較用硬化性組成物(C1)について、上記[評価・測定方法]の欄に記載の評価方法の手順に従い、アルカリ現像性の評価を行った。その結果を以下の表1に示す。
【0178】
(比較例2:比較用硬化性組成物(C2)の調製と評価)
表1に示す組成比で各成分を混合し、比較例2の比較用硬化性組成物(C2)を得た。そして、比較例2の比較用硬化性組成物(C2)について、上記[評価・測定方法]の欄に記載の評価方法の手順に従い、アルカリ現像性の評価を行った。その結果を以下の表1に示す。
なお、比較例2の比較用硬化性組成物(C2)で用いた比較用マレイミド樹脂(c2)は、以下の式(i):
【化29】
で表される市販のマレイミド樹脂(「BMI-5100」大和化成工業株式会社製)を使用した。なお、比較用マレイミド樹脂(c2)について、上記の(7)溶剤溶解性の評価の欄に記載の手順に従い溶剤溶解性の評価を行った結果、14日目に析出が見られた。
【0179】
【0180】
(実施例5~8:硬化性組成物の調製と評価)
上記ポリマレイミド樹脂含有組成物(1)~(4)と、硬化剤としてオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON N-680」、エポキシ当量:214)と、有機溶剤(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)と、光重合性開始剤(IGM Resins社製「Omnirad 907」)とを、表2に示す組成比で混合し、硬化性組成物(4)~(8)を得た。そして、上記[評価・測定方法]の欄に記載の評価方法の手順に従い、当該硬化性組成物(4)~(8)について、耐熱性、ピール強度(密着性)、誘電率及び誘電正接の評価を行った。その結果を以下の表2に示す。
【0181】
(比較例3:組成物の調製)
実施例5~8と同様に、表2に示す組成比で各成分を混合し、比較例3の比較用硬化性組成物(C3)を得た。そして、比較例3の比較用硬化性組成物(C3)について、上記[評価・測定方法]の欄に記載の評価方法の手順に従い、耐熱性、ピール強度(密着性)、誘電率及び誘電正接の評価を行った。その結果を以下の表2に示す。
【0182】
(比較例4:組成物の調製)
実施例5~8と同様に、表2に示す組成比で各成分を混合し、比較例4の比較用硬化性組成物(C4)を得た。そして、比較例4の比較用硬化性組成物(C4)について、上記[評価・測定方法]の欄に記載の評価方法の手順に従い、耐熱性、ピール強度(密着性)、誘電率及び誘電正接の評価を行った。その結果を以下の表2に示す。
【0183】
【0184】
表1及び表2の結果から、実施例のポリマレイミド樹脂含有組成物及び当該樹脂組成物を含む硬化性組成物は、比較例の組成物に比べ、優れた現像性及び溶剤溶解性を示し、かつ得られる硬化物において、密着性、耐熱性及び低誘電特性を発現できることが確認された。
本開示によれば、優れた現像性及び溶剤溶解性を示し、を示し、かつ得られる硬化物において、密着性、耐熱性及び低誘電特性をバランスよく向上した、ポリマレイミド樹脂含有組成物、及び当該ポリマレイミド樹脂含有組成物を含有する硬化性組成物、並びに、前記硬化性組成物を用いて得られる、硬化物、絶縁材料及びレジスト材料を提供することができる。