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特開2024-95425酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂、硬化性樹脂組成物、硬化物、ソルダーレジスト用樹脂材料、絶縁材料及びレジスト部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095425
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂、硬化性樹脂組成物、硬化物、ソルダーレジスト用樹脂材料、絶縁材料及びレジスト部材
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/30 20060101AFI20240703BHJP
   C08L 61/14 20060101ALI20240703BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240703BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20240703BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20240703BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C08G8/30
C08L61/14
C08L63/00 B
C08F290/14
G03F7/038 501
H05K3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212706
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】山田 駿介
(72)【発明者】
【氏名】亀山 裕史
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕美子
【テーマコード(参考)】
2H225
4J002
4J033
4J127
5E314
【Fターム(参考)】
2H225AC36
2H225AC55
2H225AC72
2H225AD02
2H225AE14P
2H225AN36P
2H225AN82P
2H225AP09P
2H225BA20P
2H225BA22P
2H225CA13
2H225CC01
2H225CC13
4J002CC04W
4J002CD06X
4J002EE036
4J002EH077
4J002FD147
4J002FD156
4J002GP03
4J033CA02
4J033CA11
4J033CA12
4J033CA19
4J033CA33
4J033CA36
4J033CA42
4J033CB18
4J033HA12
4J033HA28
4J033HB10
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4J127AA03
4J127AA04
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4J127BB222
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4J127BC131
4J127BD111
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4J127BE311
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4J127BE342
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4J127BE411
4J127BE412
4J127BE41Z
4J127BF251
4J127BF25X
4J127BG051
4J127BG05X
4J127BG101
4J127BG10Y
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4J127BG171
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4J127CC111
4J127CC161
4J127DA10
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4J127EA12
4J127FA18
5E314AA31
5E314AA32
5E314AA33
5E314CC01
5E314DD06
5E314DD07
5E314FF01
5E314GG05
5E314GG08
(57)【要約】
【課題】本開示は、硬化した際に、高い絶縁信頼性及び高い耐熱性を示し、かつ耐冷熱衝撃性に優れた酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂、並びに当該樹脂を含有する硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物の硬化物、ソルダーレジスト用樹脂材料、絶縁材料及びレジスト部材を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示は、フェノール性水酸基を有するフェノール系樹脂(A)と、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)と、多塩基酸無水物(C)とを必須の反応原料(1)とする酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂であって、
前記酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂中の塩素原子含有量が100質量ppm以下であることを特徴とする、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール性水酸基を有するフェノール系樹脂(A)と、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)と、多塩基酸無水物(C)とを必須の反応原料(1)とする酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂であって、
前記酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂中の塩素原子含有量が100質量ppm以下であることを特徴とする、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂。
【請求項2】
前記フェノール系樹脂(A)と前記エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)との配合割合は、前記フェノール性水酸基1モルに対して、前記エポキシ基が0.9~1.2モルとなる範囲である、請求項1に記載の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂。
【請求項3】
前記フェノール系樹脂(A)と前記多塩基酸無水物(C)との配合割合は、前記フェノール性水酸基1モルに対して、前記多塩基酸無水物(C)0.3~1.0モルの範囲である、請求項1又は2に記載の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂脂。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂と、光重合開始剤とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項3に記載の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂と、光重合開始剤とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂以外の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(D)をさらに含有する、請求項4に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項4に記載の硬化性樹脂組成物からなることを特徴とするソルダーレジスト用樹脂材料。
【請求項8】
請求項4に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【請求項9】
請求項8に記載の硬化物からなることを特徴とする絶縁材料。
【請求項10】
請求項8に記載の硬化物からなることを特徴とするレジスト部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂、硬化性樹脂組成物、硬化物、ソルダーレジスト用樹脂材料、絶縁材料及びレジスト部材に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のチップをダイレクト実装するセラミック多層基板に替わり、プリント配線板に高精細な配線を形成可能なビルドアップ方式を用いたビルドアップ基板の製造技術が近年主流になっている。一般にビルドアップ方式は、エポキシ系樹脂等を含む硬化性樹脂組成物が硬化した絶縁層と銅配線等の導体層とをプリント配線板の両面に対して逐次積層する方法である。近年における、配線ピッチの縮小及び配線層数の増加の技術的潮流を受けて、ビルドアップ方式の絶縁層に使用される組成物には、耐熱性、銅等の金属配線との高い密着性又は低誘電性といった特性が求められるようになった。
【0003】
例えば、プリント配線基板あるいは絶縁層に使用される材料として、特許文献1及び特許文献2が挙げられる。当該特許文献1には、アルコール性ヒドロキシル基及びラジカル重合性二重結合を有する変性ノボラック樹脂及び当該変性ノボラック樹脂を含有する変性ノボラック樹脂組成物が記載されている。そして、引用文献1には、当該変性ノボラック樹脂は、アルコール性ヒドロキシル基を有するノボラック型エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和一塩基酸とを反応させた樹脂であり、耐熱性、耐湿性及び被塗物への密着性等の特性に優れた硬化物を形成することも記載されている。
また、特許文献2には、ノボラック樹脂のフェノール性水酸基に対して所定比のグリシジル(メタ)アクリレートを反応させることにより生成した、フェノール性水酸基を有する部分(メタ)アクリロイル化ノボラック樹脂と、多塩基酸無水物とを反応させてカルボキシル基を導入した変性ノボラック樹脂及び当該変性ノボラック樹脂を含有する感光性樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-178330号公報
【特許文献2】特開2002-308957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び特許文献2の技術では、耐冷熱衝撃性及びマイグレーションに代表される絶縁信頼性を検討していない。特に、溶出した金属イオンが電極間又は配線間を移動して他方の電極又は配線等から生成する現象であるマイグレーションは、短絡故障の原因となりうる。近年の電子機器又は部品の小型化、回路の高密度化に伴い、配線パターン間隔がより狭くなっている現状から絶縁信頼性の問題がより重要視されているのが現状である。また、近年の循環型社会形成への潮流を受けて、バイオマスを利活用する技術やハロゲンフリー等の環境負荷低減に関する技術に注目が集まっている。
そこで、本開示は、環境負荷を低減し、硬化した際に、高い絶縁信頼性及び高い耐熱性を示し、かつ耐冷熱衝撃性に優れた酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂、並びに当該樹脂を含有する硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物の硬化物、ソルダーレジスト用樹脂材料、絶縁材料及びレジスト部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、絶縁層、レジスト材料あるいは基材に含まれるイオン成分(例えば、塩素原子などのハロゲン原子)が絶縁信頼性の低下に影響することから、塩素原子量を低減した酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂及び当該樹脂を含有する硬化性樹脂組成物を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、以下の[1]~[9]のいずれかの本発明を完成させた。
また、塩素原子量が低減された酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂あるいは当該樹脂を含有する硬化性樹脂組成物の一態様として、当該樹脂又は当該硬化性樹脂組成物中のバイオマス炭素含有率(%)を所定量にすることにより、ハロゲンフリーであり、かつ化石燃料の使用量が少ない環境負荷低減の効果も発揮しうる。
【0007】
[1]フェノール性水酸基を有するフェノール系樹脂(A)と、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)と、多塩基酸無水物(C)とを必須の反応原料(1)とする酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂であって、
前記酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂中の塩素原子含有量が100質量ppm以下であることを特徴とする、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂。
【0008】
[2]前記フェノール系樹脂(A)と前記エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)との配合割合は、前記フェノール性水酸基1モルに対して、前記エポキシ基が0.9~1.2モルとなる範囲である、上記[1]に記載の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂。
【0009】
[3]前記フェノール系樹脂(A)と前記多塩基酸無水物(C)との配合割合は、前記フェノール性水酸基1モルに対して、前記多塩基酸無水物(C)0.3~1.1モルの範囲である、上記[1]又は[2]に記載の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂。
【0010】
[4]上記[1]~[3]のいずれかに記載の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂と、光重合開始剤とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【0011】
[5]前記酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂以外の他の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(D)をさらに含有する、上記[4]に記載の硬化性樹脂組成物。
【0012】
[6]上記[4]又は[5]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物からなるソルダーレジスト用樹脂材料。
【0013】
[7]上記[4]又は[5]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の硬化物。
【0014】
[8]上記[7]に記載の硬化物からなることを特徴とする絶縁材料。
【0015】
[9]上記[7]に記載の硬化物からなることを特徴とするレジスト部材。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、環境負荷を低減し、硬化した際に、高い絶縁信頼性及び高い耐熱性を示し、かつ耐冷熱衝撃性に優れた酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂、並びに当該樹脂を含有する硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物の硬化物、ソルダーレジスト用樹脂材料、絶縁材料及びレジスト部材を提供する。
本開示によれば、バイオマス炭素含有率(%)を所定量以上にすることにより、化石燃料の使用量を低減した環境負荷低減の効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態(「本実施形態」と称する。)について詳細に説明するが、本開示は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0018】
[定義]
本明細書における「反応原料」とは、化合又は分解といった化学反応により目的の化合物を得るために用いられ、目的の化合物の化学構造を部分的に構成する化合物をいい、溶媒、触媒といった、化学反応の助剤の役割を担う物質は除外される。
本明細書における「構造単位」とは、反応又は重合時に形成される化学構造の(繰り返し)単位をいい、換言すると、反応又は重合よりに形成される生成化合物において、当該反応又は重合に関与する化学結合の構造以外の部分構造をいい、いわゆる残基をいう。
【0019】
[酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂]
本開示は、フェノール性水酸基を有するフェノール系樹脂(A)と、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)と、多塩基酸無水物(C)とを必須の反応原料(1)とする酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂であって、前記酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂中の塩素原子含有量が100質量ppm以下であることを特徴とする、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂である。
酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂の総量に対して塩素原子含有量が100質量ppm以下に低減したことにより、環境負荷を低減し、硬化した際に、高い絶縁信頼性及び高い耐熱性を示し、かつ優れた耐冷熱衝撃性を発揮しうる。
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂を、特にソルダーレジスト用樹脂材料、絶縁材料及びレジスト部材などに使用する場合、硬化した際に、高い絶縁信頼性及び高い耐熱性を示し、かつ優れた耐冷熱衝撃性を発揮しうる。
一般に、絶縁材料から構成される基板上若しくは内部に導体の配線又は電子部品が取り付けられているプリント配線基板において、基板の電極間に電圧を印加すると配線パターンの陽極部が電子を受け取ることにより、当該陽極部の表面から金属イオンが基板表面又は基材内部に含まれる水分又はイオン物質に溶け出しやすい状態になる。そして、当該金属イオンが前記水分又はイオン物質に溶け出すと、電場によるクローン力によって陰極側に前記金属イオンが移動し電子交換で再び金属(いわゆるデンドライト)として生成されうる。このような電極を構成する金属のイオン化及び溶出によりデンドライトが大きく成長すると、絶縁劣化を引き起こす原因となる。特に、水分又はイオン物質中に、レジスト材料あるいは基材に含まれるイオン成分(例えば、塩素原子などのハロゲン原子)が所定量以上存在すると、金属イオンが溶出しやすくなるため、マイグレーションが進行しやすくなり、結果として絶縁信頼性が低下しうる。
しかし、本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂では、当該酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂に含まれる塩素原子の含有量を低減しているため、このような絶縁信頼性の低下を抑制・防止することができると考えられる。さらには、ハロゲン量を低減しているため、環境負荷を低減できると考えられる。
後述するように、硬化性樹脂組成物の成分としてエポキシ基を有する化合物を使用する場合、工業的にはエピクロロヒドリンなどの塩素原子含有化合物を用いてエポキシ基を所望の化合物に導入していることから、高い絶縁信頼性を維持するためには系内において残存する塩素原子の量が無視できなくなる。
【0020】
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂中の塩素原子含有量は100質量ppm以下であり、80質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以下であることがより好ましい。なお、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂中の塩素原子含有量の下限は、好ましくは0質量ppm以上であり、より好ましくは0質量ppm超であり、検出限界の観点を踏まえると、10質量ppm超でありうる。
本明細書において、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)又は硬化性樹脂組成物中の塩素原子の含有量の算出方法は、以下の通りである。
酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂中、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)中又は硬化性樹脂組成物中の塩素原子の含有量は、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂又は硬化性樹脂組成物を、燃焼管燃焼法により高温で燃焼・分解させ、その分解ガスを吸収液に吸収させてイオンクロマトグラフィーで定量することによって測定した。当該吸収液として、過酸化水素水及び抱水ヒドラジン含有の超純水を用いた。
また、イオンクロマトグラフィーは、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製のイオンクロマトグラフ装置「イオンクロマトグラフICS-1500型(検出器:電気伝導度計)」とイオンクロマトグラフィー用カラム「サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製 AS-12A」を用いて行った。
溶離液は、濃度0.3mMの炭酸水素ナトリウム(NaHCO)水溶液と濃度2.7mMの炭酸ナトリウム(NaCO)水溶液の混合溶液であり、流量は1.5mL/minである。
【0021】
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂中又は硬化性樹脂組成物中の塩素原子の含有量を100質量ppm以下にする手段としては、(1)酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂又は硬化性樹脂組成物を構成する成分及び当該成分を合成する原料・触媒・溶媒・添加剤に、塩素原子を含まない化合物を使用する。(2)酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂又は硬化性樹脂組成物を構成する成分及び当該成分を合成する原料・触媒・溶媒・添加剤に対して、塩素原子を除去する精製工程を行うなどが挙げられる。
本実施形態において、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂中又は硬化性樹脂組成物中の塩素原子の含有量を100質量ppm以下にする手段としては、分取HPLCを用いて公知の条件により精製する及び/又は酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂又は硬化性樹脂組成物を構成する成分及び当該成分を合成する原料・触媒・溶媒・添加剤に、塩素原子を含まない化合物を使用する手段を用いることが好ましい。
前記酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂又は硬化性樹脂組成物を構成する成分及び当該成分を合成する原料・触媒・溶媒・添加剤に、塩素原子を含まない化合物を使用する手段としては、後述するように、塩素原子の含有量が10質量ppm以下、好ましくは検出限界以下のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)を使用することが好ましい。
より詳細には、前記塩素原子の含有量が10質量ppm以下、好ましくは検出限界以下のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)は、(メタ)アクリレート化合物(b1)(例えば、(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩、(メタ)アクリル酸)にエピクロロヒドリンを作用させ、グリシジル化して合成された化合物と同様の化学構造を有する。また、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)は、エポキシ基及び水酸基含有化合物(例えば、グリシドール)と(メタ)アクリル酸等とのエステル交換反応によって得られる化合物と同様の化学構造を有する。工業的観点から言えば、前者の反応の方が高い収率を示すが、エピクロロヒドリンは分子中に塩素原子を有するため、得られるエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)には、500ppm~数パーセント程度の濃度の塩素化合物が副生物として混入している。
そのため、本実施形態におけるエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)は、エポキシ基及び水酸基含有化合物(例えば、グリシドール)と、(メタ)アクリル酸とを反応原料とする化合物であることが好ましい。
これにより、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂中又は硬化性樹脂組成物中の塩素原子の含有量を100質量ppm以下にすることができる。
また、上記エポキシ基及び水酸基含有化合物(例えば、グリシドール)としては、後述するように、バイオマス材料を用いて製造した化合物、すなわちバイオマス炭素含有率(%)が20%以上であるエポキシ基及び水酸基含有化合物であることがより好ましい。これにより、化石燃料の使用量を低減した環境負荷低減の効果を発揮する。
上記エポキシ基及び水酸基含有化合物のバイオマス炭素含有率(%)の好ましい範囲は、22%以上100%以下、34%以上95%以下、46%以上83%以下でありうる。
【0022】
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(固形分)のバイオマス炭素含有率(%)の下限は、10%以上、13%以上、15%以上、17%以上、20%以上、25%以上、35%以上の順で好ましい。一方、前記バイオマス炭素含有率(%)の上限は、100%以下、90%以下、80%以下、73%以下、68%以下の順で好ましい。当該上限及び下限は任意に組み合わせできる。例えば、好ましい酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(固形分)のバイオマス炭素含有率(%)の範囲は、10%以上であることが好ましく、10%以上90%以下であることがより好ましく、20%以上80%以下であることがさらに好ましく、22%以上73%以下であることがさらに好ましい。酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂のバイオマス炭素含有率(%)が10%以上であると、環境負荷低減の効果を発揮することができる。
本明細書における「バイオマス炭素含有率(%)」は、放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)に対して補正割合である0.93をかけた補正値であって、かつ前記補正値が100%以上の場合は、100%とみなしている。
本明細書における放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)とは、バイオマス由来成分の炭素濃度(質量比率)を示すものであり、いわゆるバイオマスの配合比率に関係する。
より詳細には、ASTM-D6866(特にASTM D6866 B法)に準拠した放射性炭素(14C)測定方法によって得られた放射性炭素(14C)の含有比の値である。放射性炭素(14C)は、5730年の半減期で窒素(14N)に放射壊変する性質を有することが知られている。そして、地球上において宇宙から降り注ぐ宇宙線の作用により絶えず極微量生成される放射性炭素(14C)は、二酸化炭素14COに酸化され大気中に拡散した後に食物連鎖の過程で動植物の中に取り込まれ、当該食物連鎖を介して環境中を循環しながら半減期に従って消滅する。そのため、放射性炭素(14C)測定方法は、化石燃料は放射性炭素(14C)を実質的に含まず、かつバイオマス(又は生物)由来炭素は成長した時期の大気中の放射性炭素(14C)を吸収していることを利用しており、バイオマス材料(又は生物)に含まれる炭素中の放射性炭素(14C)比率から放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)を推定する方法である。したがって、放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)の値が大きいほど、化石燃料の使用量が少なく、環境負荷低減の効果を発揮しうる。そのため、放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)の値が、再生可能な、生物由来の有機性資源であるバイオマスの配合比率を示す指標(=バイオマス炭素含有率(%))に関係する。
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂又は後述のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)中の全炭素原子中に含まれる放射性炭素(14C)の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本開示においては、後述の実施例の欄で記載する方法を用いて、以下の式(1)により、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂の放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)を算出している。そして、下記の式(4)に示すように、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂の放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)に0.93をかけて、1950年以降から現代に至る大気圏核実験の影響を加味した値を酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂のバイオマス炭素含有率(%)とした。
式(1):
放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)=[{酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂中の放射性炭素(14C)÷酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂中の炭素(12C)}/{標準物質の放射性炭素(14C)/標準物質の炭素(12C)}×100
(上記式(1)中、標準物質は、米国標準技術研究所が年代測定法の標準物質として供給するシュウ酸(SRM4990C)を後述の実施例の欄に記載の測定用のグラファイトと同じ前処理方法でグラファイトに変換したものを使用した。)
式(4):
バイオマス炭素含有率(%)=放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)×0.93
なお、1950年以降の大気圏核実験の影響を受けて、人工的に大気中に注入された放射性炭素(14C)により、通常の約1.5倍量の放射性炭素(14C)が観測されている。しかし、時間の経過とともに徐々に減少しており、現在の値は107.5(pMC%)付近である。そのため、本開示においても、ASTM D6866の規格と同様に放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)に0.93(=100/107.5)をかけた値をバイオマス炭素含有率(%)と規定している。ただし、上記式(4)を用いた手法を採用しても100%以上の値が算出される場合が生じる。そこで、本開示ではASTMの規格と同様に、バイオマス炭素含有率(%)の値が100%以上の値である場合、100%とみなしている。
本実施形態において、放射性炭素(14C)の濃度測定は、タンデム加速器及び質量分析計を組合せた加速器質量分析(AMS:Accelerator Mass Spectrometry)によって、分析する試料に含まれる炭素原子の同位体(具体的には12C,13C,14Cが挙げられる。)を原子の重量差を利用して加速器により物理的に分離し、同位体の原子一つ一つの存在量を計測する方法を用いて測定している。
また、前記分析する試料については、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂、エポキシ基及び水酸基含有化合物、並びに硬化性組成物であり、前処理が必要となる。具体的には、後述の実施例の欄に記載した通り、これら試料に含まれる炭素を酸化処理し、すべて二酸化炭素へと変換する。更に、得られた二酸化炭素を水や窒素と分離し、二酸化炭素を還元処理し、固形炭素であるグラファイトへと変換する。この得られたグラファイトを測定用試料とし、当該試料にCsなどの陽イオンを照射して炭素の負イオンを生成させ、3MVタンデム加速器を用いて炭素イオンを加速し、負イオンから陽イオンへ荷電変換させ、質量分析電磁石により123+133+143+の進行する軌道を分離し、143+は静電分析器により測定を行う方法を本実施形態の加速器質量分析は採用している。
なお、前処理した試料から得られたグラファイトに含まれる炭素同位体12C、13C及び14Cは、同じ速度で加速され質量分析電磁石の磁場により、飛翔ラインが曲げられる。その際、12C、13Cは内側に、最も重い14Cが曲折部の一番外側を飛翔する。また、12C、13Cの量は存在数が多いため電流としてファラディカップ検出器により、14Cは電離箱形のイオン検出器により、それぞれ1個ずつ、計数される。
【0023】
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂の酸価は、優れたアルカリ現像性及び高い光感度を有し、優れた耐熱性及び基材密着性を有する硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、50~140mgKOH/gの範囲であることが好ましく、60~120mgKOH/gの範囲であることがより好ましい。なお、本願発明において酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂の酸価はJIS K 0070(1992)の中和滴定法にて測定される値である。
【0024】
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂の反応原料(1)に含まれる必須成分である、フェノール性水酸基を有するフェノール系樹脂(A)と、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)と、多塩基酸無水物(C)とについて、以下説明する。
(フェノール性水酸基を有するフェノール系樹脂(A))
本実施形態のフェノール性水酸基を有するフェノール系樹脂(A)は、例えば、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、o-ヒドロキシベンズアルデヒド、p-ヒドロキシアセトフェノン、o-ヒドロキシアセトフェノン、フルフラールとの重縮合物であるノボラック樹脂;フェノールまたはクレゾールとフェニレンジメチロール体、ジメトキシメチル体もしくはハロゲン化メチル体との反応物;フェノールまたはクレゾールとビスクロロメチルビフェニル、ビスメトキシメチルビフェニルもしくはビスヒドロキシメチルビフェニルとの反応物;フェノールとベンゼンジイソプロパノール、ベンゼンジイソプロパノールジメチルエーテルもしくはベンゼンビス(クロロイソプロパン)との反応物であるフェノールアラルキル樹脂及びこれらの変性物;テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類;テルペンとフェノール類の縮合物;ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂;クレゾールアラルキル樹脂;フェノールトリメチロールメタン樹脂;テトラフェニロールエタン樹脂;アミノトリアジン変性フェノール樹脂;アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等が挙げられる
なかでも、フェノール性水酸基を有するフェノール系樹脂(A)としては、フェノール性水酸基を有するノボラック型フェノール系樹脂(A1)、フェノール性水酸基を有するレゾール型フェノール系樹脂(A2)、インダン骨格を有するインダンビスフェノール樹脂(A3)あるいその他フェノール系樹脂(A4)はいずれでもよいが、高い絶縁信頼性及び高い耐熱性を示し、かつ耐冷熱衝撃性に優れた酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂を得る観点からフェノール性水酸基を有するノボラック型フェノール系樹脂(A1)が好ましい。
ノボラック型フェノール系樹脂(A1)としては、〔アルデヒド化合物(a1)〕/〔フェノール化合物(a2)〕が、モル比で0.3~1.0となる範囲で反応させて得られる樹脂が好ましい。また、レゾール型フェノール系樹脂(A2)としては、〔アルデヒド化合物(a1)〕/〔フェノール化合物(a2)〕が、モル比で1.0~2.5となる範囲で反応させて得られる樹脂が好ましい。
本実施形態のフェノール系樹脂(A)の製造方法は、例えば、アルデヒド化合物(a1)とフェノール(a2)とを、酸類或いはアルカリ類を触媒として仕込み、40~150℃で1~5時間反応させる工程(1)と、常圧脱水、又は減圧脱水工程を経て、残留した水分を反応系内から除去する工程(2)と、反応系内にある縮合物をメタノール等の溶剤に溶解する工程(3)とを有する。前記工程(2)の除去操作に於いて、残留する水分の含有量は特に限定されない。
【0025】
<ノボラック型フェノール系樹脂(A1)>
本実施形態において、フェノール性水酸基を有するノボラック型フェノール系樹脂(A1)は、特に限定されず、ノボラック型フェノール系樹脂(A1)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
本実施形態において、ノボラック型フェノール系樹脂(A1)の数平均分子量は、200~10,000が好ましく、1,000~7,000がより好ましい。
【0026】
本実施形態のノボラック型フェノール系樹脂(A1)は、例えば、アルデヒド化合物(a1)とフェノール化合物(a2)とを反応原料(2)とする樹脂であることが好ましい。また必要に応じて、前記反応原料(2)に、触媒、有機溶剤、酸類及び添加剤からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これにより、触媒の存在下、アルデヒド化合物(a1)に対するフェノール化合物(a2)の配合モル比が0.3~1.0となるようにして反応させることにより、ノボラック型フェノール系樹脂(A1)が得られる。
前記アルデヒド化合物(a1)としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n-ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o-トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。なお、これらのアルデヒド化合物(a1)は、単独で用いても、あるいは2種以上併用してもよい。
前記フェノール化合物(a2)としては、例えば、フェノール、クレゾール(o-クレゾール、m-クレゾール又はp-クレゾール)、キシレノール(2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール又は3,5-キシレノール)、エチルフェノール(o-エチルフェノール、m-エチルフェノール又はp-エチルフェノール)、ブチルフェノール(イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p-t-ブチルフェノール)、オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、p-クミルフェノールなどのアルキルフェノール類;レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、トリヒドロキシベンゼンなどの多価フェノール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールE、チオビスフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、ビスフェノールフルオレン等のビスフェノール類;フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール又はヨードフェノールなどのハロゲノフェノール類;p-フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール等の1置換フェノール;1-ナフトール、2-ナフトール、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン等のナフトール類などが挙げられる。なお、これらのフェノール化合物(a2)は、単独で用いても、あるいは2種以上併用してもよい。
【0027】
本実施形態のノボラック型フェノール系樹脂(A1)の製造の際には、酸類を用いることができ、例えば、蟻酸、塩酸、燐酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸等が挙げられる。当該酸類を、上記反応原料(2)に配合してもよい。
【0028】
上記触媒としては、例えば、酢酸亜鉛、ホウ酸マンガン等の金属塩、酸化鉛、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられる。これらの触媒は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、前記ノボラック型フェノール系樹脂(A1)の製造の際、必要に応じて、フルフラール、尿素、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等の添加剤を併用することもできる。
前記ノボラック型フェノール系樹脂(A1)は、前記触媒の残留量を水洗等により低減したものが好ましく、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下、よりさらに好ましくは0.1ppm以下、0.005ppm以下のものが特に好ましい。
【0029】
例えば、アルデヒド化合物(a1)とフェノール化合物(a2)との反応は有機溶剤の存在下で行ってもよいし、得られた反応生成物に有機溶剤を加えてもよい。前記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;その多量体であるポリエーテルグリコール類;セロソルブ類;カルビトール類;メタノールを始めとする脂肪族アルコール等が挙げられる。
【0030】
<レゾール型フェノール系樹脂(A2)>
本実施形態のレゾール型フェノール系樹脂(A2)は、例えば、上記ノボラック型フェノール系樹脂(A1)と同様に、アルデヒド化合物(a1)とフェノール化合物(a2)とを反応原料(3)とする樹脂であることが好ましい。また必要に応じて、前記反応原料(3)に、アルカリ性触媒、有機溶剤及び添加剤からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これにより、触媒の存在下、アルデヒド化合物(a1)に対するフェノール化合物(a2)の配合モル比が1.0~4となるようにして反応させることにより、レゾール型フェノール系樹脂(A2)が得られる。
本実施形態のレゾール型フェノール系樹脂(A2)を合成する際の、前記フェノール化合物(a2)と、アルデヒド化合物(a1)とのモル比[(a1)/(a2)]は、反応生成物中に残存する未反応物量を低減し、発泡を抑制し、良好な硬化性が得られることから、1.0~4.0の範囲が好ましく、1.5~3の範囲がより好ましい。
本実施形態において、レゾール型フェノール系樹脂(A2)の数平均分子量は、200~10,000が好ましく、1,000~5,000がより好ましい。
上記アルカリ性触媒としては、例えば、苛性ソーダを始めとするアルカリ水酸化物、酸化アルカリ土類金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、アルカノールアミン等。ハイオルソ型や、ベンジリック型を製造する際の触媒である酢酸亜鉛、オクチル酸亜鉛等が挙げられる。より具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物;アンモニア、モノエタノールアミン等の第1級アミン;ジエタノールアミン等の第2級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロウンデセン等の第3級アミン;炭酸ナトリウム、ヘキサメチレンテトラミン等のアルカリ性物質等が挙げられる。これらアルカリ性触媒は、1種類のみで用いても、あるいは2種以上併用することもできる。また、これらのアルカリ性触媒の中でも、触媒活性に優れる点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウムが好ましい。なお、アルカリ性触媒は、反応前に反応原料(3)等に加えても、反応途中で反応原料(3)等に加えても構わない。
また、反応原料(3)に配合されうる有機溶剤及び添加剤は、上記反応原料(2)に配合されうる有機溶剤及び添加剤と同様である。
【0031】
<インダン骨格を有するインダンビスフェノール樹脂(A3)>
本実施形態のインダン骨格を有するインダンビスフェノール樹脂(A3)としては、以下の一般式(1)で表されるインダン骨格を有するフェノール樹脂が好ましい。
【化1】
(上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基もしくはアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基またはメルカプト基を表し、r1及びr2はそれぞれ独立して、0~3の整数値を示す。r1及び/又はr2が2~3の場合、R及び/又はRは同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。n1は平均繰り返し単位数であり、0.2~20の数値を示す。A11及びA12は、それぞれ独立して、下記一般式(1-1)~(1-5)から選択される基を表す。)
【化2】
(上記一般式(1-1)~(1-5)中、Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基もしくはアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはメルカプト基を表し、q1及びq3は各々独立して0~4の整数値を示し、q2は0~8の整数値を示す。q1及び/又はq3が2~4の場合並びにq2が2~8の場合、Rは同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表す。*は一般式(1)との連結点を表し、x1及びx3は各々独立して1~5の整数値を示し、x2は1~9の整数値を示す。)
【0032】
前記一般式(1)及び一般式(1-1)~(1-5)中のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、オクチル基、シクロへキシル基等の炭素原子数1~8のアルキル基が挙げられる。
前記一般式(1)及び一般式(1-1)~(1-5)中のアリール基としては、例えば、フェニル基、アルコキシフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アルコキシナフチル基等の炭素原子数6~20のアリール基が挙げられる。
【0033】
上記一般式(1)中のrが0であり、R及びRはそれぞれ独立して、いずれも水素原子であることが好ましく、また、r1及びr2はそれぞれ独立して、1~3であり、R及びRは、いずれも炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数3~6のシクロアルキル基、及び、炭素原子数6~10のアリール基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。特にr1及び/又はr2が0であって、R及び/又はRが、水素原子であることで、前記フェノール樹脂(A3)中のインダン骨格の形成の際に、立体障害が少なくなり、前記フェノール樹脂(A3)の製造(合成)にとって、有利となり、好ましい態様となる。
【0034】
上記一般式(1)中のA11及びA12は、それぞれ独立して、上記一般式(1-1)~(1-5)から選択される基を表す。上記一般式(1-1)、(1-3)~(1-5)において、q1及びq3は各々独立して0~4の整数値を示すが、一般式(1-1)、(1-3)~(1-5)においてq1及びq3が、いずれも0~2であることが好ましく、いずれも0または2であることがさらに好ましい。また、上記一般式(1-2)において、q2は0~8の整数値を示すが、q2が、いずれも0~2であることが好ましく、いずれも0または2であることがさらに好ましい。q1、q2、及びq3が0以外を示す場合、Rが、いずれも炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数3~6のシクロアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基のいずれかであることが好ましく、前記炭素原子数1~4のアルキル基等であることで、フェノール基近傍の平面性の低下、結晶性低下により、溶剤溶解性が向上するとともに、フェノール基の反応性が損なわれることなく、硬化物を得ることが可能な好ましい態様となる。
【0035】
上記一般式(1)中、n1は平均繰り返し単位数であり、0.2~20の数値を示すが、n1は1~10であることが好ましく、n1は1~5であることがより好ましく、n1は1~2であることがさらに好ましい。
【0036】
上記一般式(1-1)~(1-5)において、*は一般式(1)との連結点を表し、もう一方は、一般式(1-1)~(1-5)の環構造のいずれかの部分に連結する。
【0037】
上記一般式(1-1)~(1-5)において、x1及びx3はそれぞれ独立して、1~5の整数値を示し、x2は1~9の整数値を示すが、一般式(1-1)を採用する場合、x1及びx3が1~4であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1~2がさらに好ましい。一般式(1-2)を採用する場合、x2が1~4であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1~2がさらに好ましい。また、一般式(1-3)~(1-5)のいずれかを採用する場合、2つ存在するx1及びx3がいずれも1~2であることが好ましい。
【0038】
上記一般式(1)において、A11及びA12は、いずれも一般式(1-1)~(1-5)から選択される同じ構造を表す基が好ましく、A11及びA12は、いずれも一般式(1-1)、一般式(1-2)又は一般式(1-4)で表される基が好ましく、A11及びA12は、いずれも一般式(1-1)、又は一般式(1-4)で表される基がより好ましく、これらの一般式で表される基を採用する際のR、R、R、q1、q2、q3、x1、x2及びx3の好ましい態様は上述のとおりである。
【0039】
本実施形態の上記一般式(1)で表されるインダン骨格を有するインダンビスフェノール樹脂(A3)の製造方法としては、通常の多官能フェノール樹脂の製造方法等が挙げられる。
前記インダン骨格を有するインダンビスフェノール樹脂(A3)を構成するインダンビスフェノール化合物としては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(4-1)~(4-5)から選択される化合物を酸触媒存在下に反応させることにより、下記一般式(5)で表されるインダンビスフェノール化合物を得ることができる。
【化3】
【0040】
(一般式(2)中、R及びRはそれぞれ独立して、下記構造式(3-1)又は(3-2)で表される一価の官能基の何れかであり、少なくとも1つのRのオルト位が水素原子である。また、Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基もしくはアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基またはメルカプト基を表し、r1は0~3の整数値を示す。)
【化4】
【化5】
【化6】
(上記一般式(4-1)~(4-5)中、Rbは、それぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、アリールオキシ基もしくはアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、またはメルカプト基を表し、q1は各々独立して0~4の整数値を示し、q2は0~8の整数値を示す。q1が2~4の場合及びq2が2~8の場合、Rは同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。Rc1及びRc2は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表す。*は上記一般式(2)との連結点を表し、x1は各々独立して1~5の整数値を示し、x2は1~9の整数値を示す。)
【0041】
上述のとおり、上記一般式(2)の化合物と、上記一般式(4-1)~(4-5)から選択される化合物を、酸触媒存在下に反応させることにより、下記一般式(5)で表されるインダンビスフェノール化合物を得ることができる。なお、下記一般式(5)中の「A11、A12、R、R、q1~q2、r1及びr2、x1及びn1」は、上記一般式(1)の「A11、A12、R及びR、R、q1~q3、r1及びr2、x1~x3及びn1」で定義したものに対応する。
【化7】
【0042】
前記インダンビスフェノール樹脂(A3)の特徴であるインダン骨格(下記一般式(6)参照)において、平均繰り返し単位数n1は、優れたアルカリ現像性を有し、伸度、密着性及び誘電特性に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、平均繰り返し単位数n1(平均値)として、0.2~20であり、好ましくは1~10であり、より好ましくは、1~5である。
【化8】
【0043】
上記一般式(2)で表される化合物(以下、「化合物(a3)」)としては、例えば、p-及びm-ジイソプロペニルベンゼン、p-及びm-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、p-及びm-ビス(α-クロロイソプロピル)ベンゼン、1-(α-ヒドロキシイソプロピル)-3-イソプロペニルベンゼン、1-(α-ヒドロキシイソプロピル)-4-イソプロペニルベンゼンあるいはこれらの混合物等が挙げられる。また、これらの化合物の核アルキル基置換体、例えば、ジイソプロペニルトルエン及びビス(α-ヒドロキシイソプロピル)トルエン等も用いることができ、さらに核ハロゲン置換体、例えば、クロロジイソプロペニルベンゼン及びクロロビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン等も用いることができる。
【0044】
その他、前記化合物(a3)として、例えば、2-クロロ-1,4-ジイソプロペニルベンゼン、2-クロロ-1,4-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2-ブロモ-1,4-ジイソプロペニルベンゼン、2-ブロモ-1,4-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2-ブロモ-1,3-ジイソプロペニルベンゼン、2-ブロモ-1,3-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、4-ブロモ-1,3-ジイソプロピルベンゼン、4-ブロモ-1,3-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、5-ブロモ-1,3-ジイソプロペニルベンゼン、5-ブロモ-1,3-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2-メトキシ-1,4-ジイソプロペニルベンゼン、2-メトキシ-1,4-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、5-エトキシ-1,3-ジイソプロペニルベンゼン、5-エトキシ-1,3-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2-フェノキシ-1,4-ジイソプロペニルベンゼン、2-フェノキシ-1,4-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2,4-ジイソプロペニルベンゼンチオール、2,4-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼンチオール、2,5-ジイソプロペニルベンゼンチオール、2,5-ビス(αヒドロキシイソプロピル)ベンゼンチオール、2-メチルチオ-1,4-ジイソプロペニルベンゼン、2-メチルチオ-1,4-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2-フェニルチオ-1,3-ジイソプロペニルベンゼン、2-フェニルチオ-1,3-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2-フェニル-1,4-ジイソプロペニルベンゼン、2-フェニル-1,4-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2-シクロペンチル-1,4-ジイソプロペニルベンゼン、2-シクロペンチル-1,4-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、5-ナフチル-1,3-ジイソプロペニルベンゼン、5-ナフチル-1,3-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2-メチル-1,4-ジイソプロペニルベンゼン、2-メチル-1,4-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、5-ブチル-1,3-ジイソプロペニルベンゼン、5-ブチル-1,3-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、5-シクロヘキシル-1,3-ジイソプロペニルベンゼン、5-シクロヘキシル-1,3-ビス(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン等が挙げられる。
【0045】
なお、前記化合物(a3)中に含まれる置換基としては、特に限定はされず、上記例示の化合物を使用できるが、立体障害の大きな置換基の場合、立体障害の小さな置換基に比べて、得られる同士のスタッキングが生じにくく、インダンビスフェノール化合物同士の結晶化が起こりにくく、つまり、インダンビスフェノール化合物の溶剤溶解性が向上し、好ましい態様となる。
【0046】
上記一般式(4-1)~一般式(4-5)で表される化合物(以下、「化合物(a4)」)としては、フェノールまたはその誘導体であり、例えば、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール等のクレゾール;フェノール;2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等のキシレノール;o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール等のエチルフェノール;イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p-t-ブチルフェノール等のブチルフェノール;p-ペンチルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、p-クミルフェノール等のアルキルフェノール;フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノール等のハロゲン化フェノール;p-フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール等の1置換フェノール;1-ナフトール、2-ナフトール等の縮合多環式フェノール;ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール;レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン等の多価フェノールなどが挙げられる。これらフェノールまたはその誘導体は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。中でも、例えば、2,6-キシレノールや2,4-キシレノールといったフェノール性水酸基に対してオルト位、パラ位のうち2つがアルキル置換された化合物を使用することが、より好ましい態様となる。但し、立体障害が大きすぎると、インダンビスフェノール化合物の合成時における反応性を阻害する場合も懸念されるため、例えば、炭素原子数1~4のアルキル基を有する化合物(a4)を使用することが好ましい。
【0047】
上記一般式(1)で表されるインダンビスフェノール化合物の製造方法としては、例えば、前記化合物(a3)と前記化合物(a4)を、前記化合物(a3)に対する前記化合物(a4)のモル比(化合物(a4)/化合物(a3))を、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.2~8で仕込み、酸触媒存在下に反応させることにより、インダン骨格を有するインダンビスフェノール化合物を得る方法等が挙げられる。
【0048】
前記酸触媒としては、例えば、リン酸、塩酸、硫酸等の無機酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸等の有機酸、活性白土、酸性白土、シリカアルミナ、ゼオライト、強酸性イオン交換樹脂等の固体酸、ヘテロポリ塩酸などが挙げられる。これらの酸触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、反応後、塩基による中和と水による洗浄で簡便に除去できることから、均一系触媒であるシュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸(中でも、p-トルエンスルホン酸)が好ましい。
【0049】
前記酸触媒の配合量としては、最初に仕込む原料の前記化合物(a3)、及び、前記化合物(a4)の総量100質量部に対して、酸触媒を0.001~40質量部の範囲が好ましく、経済性の点から、0.001~5質量部がより好ましい。
【0050】
上記一般式(5)で表されるインダンビスフェノール化合物の製造における反応温度としては、通常50~300℃の範囲であればよいが、異性体構造の生成を抑制し、熱分解等の副反応を避け、高純度のインダンビスフェノール化合物を得るためには、80~200℃が好ましい。
【0051】
上記一般式(5)で表されるインダンビスフェノール化合物の製造における反応時間としては、短時間では反応が完全に進行せず、また長時間にすると生成物の熱分解反応等の副反応が起こることから、前記反応温度条件下で、通常は、のべ0.5~24時間の範囲が好ましく、のべ0.5~12時間の範囲がより好ましい。
【0052】
前記一般式(5)で表されるインダンビスフェノール化合物の製造方法においては、フェノールまたはその誘導体が溶剤を兼ねるため、必ずしも他の溶剤は用いなくても良いが、溶剤を用いることも可能である。例えば、脱水反応を兼ねた反応系の場合、具体的には、α-ヒドロキシプロピル基を有する化合物を原料として反応させる場合には、トルエン、キシレン、又はクロロベンゼン等の共沸脱水可能な溶剤を用いて、脱水反応を完結させた後、溶剤を留去してから、上記反応温度の範囲で反応を行う方法を採用してもよい。
【0053】
前記インダンビスフェノール化合物を合成するために使用される有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン化合物、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、スルホラン等の非プロトン性溶剤、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤等が挙げられ、またこれらは単独で用いても混合して用いてもよい。
【0054】
前記インダンビスフェノール化合物の水酸基当量としては、優れたアルカリ現像性を有し、伸度、密着性及び誘電特性に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、100~1000g/当量が好ましく、150~800g/当量がより好ましい。なお、インダンビスフェノール化合物の水酸基当量は、JIS K 0070(1992)に準拠した中和滴定法にて算出したものを指す。
【0055】
<その他フェノール樹脂(A4)>
本実施形態のその他フェノール樹脂(A4)としては、フェノール性水酸基を有する化合物(a5)と、アルデヒド化合物(a1)とを反応原料(3)とする樹脂であることが好ましい。また必要に応じて、前記反応原料(3)に、上記の触媒、上記の有機溶剤、上記の酸類及び添加剤からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これにより、触媒の存在下、アルデヒド化合物(a1)に対するフェノール性水酸基を有する化合物(a5)の配合モル比が0.3~1.0となるようにして反応させることにより、その他フェノール樹脂(A4)が得られる。なお、その他フェノール樹脂(A4)は、上記のフェノール樹脂(A1)~フェノール樹脂(A3)を除く。
【0056】
前記フェノール性水酸基を有する化合物(a5)としては、分子内にフェノール性水酸基を少なくとも1つ有する化合物をいう。前記分子内にフェノール性水酸基を少なくとも1つ有する化合物としては、例えば、下記一般式(7-1)~(7-5)で表される化合物が挙げられる。
【化9】
(上記一般式(7-1)~(7-5)中、R71~R74及びR77それぞれ独立して、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、アリール基又はハロゲン原子のいずれかを表し、R75及びR76はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、j71~j75はそれぞれ独立して、0又は1以上の整数を表し、好ましくは0又は1~3の整数であり、より好ましくは0又は1である。k71~k75はそれぞれ独立して、1以上の整数を表し、好ましくは、2又は3である。)
なお、上記一般式における芳香環上の置換基の位置については、任意であり、例えば、一般式(7-2)のナフタレン環においてはいずれの環上に置換していてもよく、一般式(7-3)では、1分子中に存在するベンゼン環のいずれの環上に置換していてもよく、一般式(7-4)では、1分子中に存在するベンゼン環のいずれかの環上に置換していてもよく、一般式(7-5)では、1分子中に存在するベンゼン環のいずれの環上に置換していてもよく、1分子中における置換基の個数がj71~j75及びk71~k75であることを示している。
【0057】
また、前記フェノール性水酸基を有する化合物(a5)としては、例えば、分子内にフェノール性水酸基を少なくとも1つ有する化合物と下記一般式(8-1)~(8-5)の何れかで表される化合物及び/又はホルムアルデヒドとを必須の反応原料(4)とする反応生成物なども用いることができる。また、分子内にフェノール性水酸基を少なくとも1つ有する化合物の1種又は2種以上を反応原料とするノボラック型フェノール樹脂なども用いることができる。
【化10】
【0058】
(上記一般式(8-1)~(8-5)中、h81は、0又は1を表し、R81~R86はそれぞれ独立して、一価の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基又はアラルキル基のいずれかを表し、k81~k86はそれぞれ独立して、0又は1~4の整数を表し、Z81~Z86はそれぞれ独立して、ビニル基、ハロメチル基、ヒドロキシメチル基又はアルキルオキシメチル基のいずれかを表し、Y81は、炭素原子数1~4のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基のいずれかを表し、n81は1~4の整数を表す。)
上記一般式(8-1)~(8-5)で表される化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0059】
<フェノール性水酸基を有するフェノール系樹脂(A)の好ましい態様>
本実施形態において環境負荷低減の観点を重視する場合、本実施形態のフェノール性水酸基を有するフェノール系樹脂(A)はバイオマス由来の原料から合成したものを使用してもよい。例えば、好ましいフェノール性水酸基を有するフェノール系樹脂(A)のバイオマス炭素含有率(%)の範囲は、6%以上であることが好ましく、10%以上90%以下であることがより好ましく、20%以上80%以下であることがさらに好ましい。
【0060】
(エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B))
本実施形態のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)としては、分子構造中に(メタ)アクリロイル基とエポキシ基とを有するものであれば他の具体構造は特に限定されず、多種多様な化合物を用いることができる。例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、エポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有する(メタ)アクリレートモノマー;ジヒドロキシベンゼンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル化合物のモノ(メタ)アクリレート化物等が挙げられる。なかでもグリシジル(メタ)アクリレート及び/又は4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル及び/又はエポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。これらのエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0061】
本実施形態において、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)が含有する塩素原子の含有量が500質量ppm以下であることが好ましく、1質量ppm以上100質量ppm以下であることがより好ましく、1質量ppm以上100質量ppm以下がより好ましい。
本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂中の塩素原子の含有量が100質量ppm以下であることに起因して、当該樹脂の反応原料(1)中の成分であるエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)が含有する塩素原子の含有量が100質量ppm以下でありうる。
一般的なグリシジル(メタ)アクリレートの合成方法は、エピクロロヒドリンを原料に用いる方法が挙げられる。当該方法を大別すると以下の2つの方法に分類される。1つ目の方法は、エピクロロヒドリンと(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩とを触媒の存在下で反応させてグリシジル(メタ)アクリレートを合成する方法である。2つ目の方法は、エピクロロヒドリンと(メタ)アクリル酸とを触媒の存在下で反応させ、その後アルカリ水溶液で閉環反応させてグリシジル(メタ)アクリレートを合成する方法である。しかし、いずれの方法であっても、エピクロロヒドリンは分子中に塩素原子を有する。
そのため、本実施形態のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)の合法として、(メタ)アクリレート化合物(b1)にエピクロロヒドリンを作用させ、グリシジル化して合成する方法を採用すると、エピクロロヒドリンは分子中に塩素原子を有するため、得られるエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)には、500ppm~数パーセント程度の濃度の塩素化合物が副生物として混入すると考えられる。そのため、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)を反応原料(1)の成分とする酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂にも塩素原子が500ppm~数パーセント程度の質量ppm以下含有しうる。また、当該酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂を硬化性樹脂組成物の硬化剤として選択した場合も同様に、不純物の塩素原子又は塩素化合物の存在によって絶縁信頼性に影響が出る場合存在する。そのため、本実施形態としてエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)を、エピクロロヒドリンを用いて合成した場合、上述した精製方法により、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)が含有する塩素原子の含有量を100質量ppm以下に低減することが好ましい。
【0062】
上記(メタ)アクリレート化合物(b1)としては、(メタ)アクリロイル基を有するものであれば特に制限されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等の脂肪族モノ(メタ)アクリレート化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチルモノ(メタ)アクリレート等の脂環型モノ(メタ)アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等の複素環型モノ(メタ)アクリレート化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ベンジルベンジル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族モノ(メタ)アクリレート化合物等のモノ(メタ)アクリレート化合物:前記各種のモノ(メタ)アクリレートモノマーの分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等のポリオキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性モノ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のモノ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性モノ(メタ)アクリレート化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ジ(メタ)アクリレート化合物;1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の脂環型ジ(メタ)アクリレート化合物;ビフェノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート等の芳香族ジ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のジ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入したポリオキシアルキレン変性ジ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のジ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性ジ(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性トリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性トリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した4官能以上の(ポリ)オキシアルキレン変性ポリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入した4官能以上のラクトン変性ポリ(メタ)アクリレート化合物;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物;前記水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;前記水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体;2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等のイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、エポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有する(メタ)アクリレートモノマーや、ドロキシベンゼンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールジグリシジルエーテルのジグリシジルエーテル化合物のモノ(メタ)アクリレート化物等のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。前記各種の(メタ)アクリレート化合物(b1)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、本実施形態の好適な(メタ)アクリレート化合物(b1)としては、上記例示のうち、エピクロロヒドリンと反応する化合物であることが好ましい。
【0063】
本明細書において、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)中の塩素原子の含有量の算出方法は、上記と同様に、燃焼管燃焼法によりイオンクロマトグラフィーを用いた方法であるのでここでは省略する。
【0064】
前記エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)の使用量は、優れたアルカリ現像性を有し、伸度、密着性及び誘電特性に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)の使用量が、前記フェノール系樹脂(A)が有するフェノール性水酸基1モルに対して、前記エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)が有するエポキシ基のモル数が0.9~1.1.2モルとなる範囲で用いることが好ましく、0.95~1.1がより好ましい。
【0065】
本実施形態において、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂又は硬化性樹脂組成物に含有される塩素原子を100質量ppm以下に低減する手段の他の一つとしては、グリシドール等のエポキシ基及び水酸基含有化合物と、(メタ)アクリレート化合物(b1)等の(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応を用いて製造する方法が好ましく、より好ましくは、バイオマス材料を用いて製造したグリシドール等のエポキシ基及び水酸基含有化合物と(メタ)アクリレート化合物(b1)等の(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル)とを反応原料とするエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)を使用する手段が挙げられる。
上記グリシドール等のエポキシ基及び水酸基含有化合物と(メタ)アクリレート化合物(b1)等の(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル)とのエステル交換反応によって、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)を製造する方法としては、公知の方法を採用することができ、塩基性触媒の存在下、副生するアルカノ-ルを蒸留によって系外に除去しながら反応を行う。そして、反応終了後、反応で使用した触媒は、目的物の精製前に濾過あるいは水洗等の操作により系外に除去することができる。
上記エポキシ基及び水酸基含有化合物としては、ヒドロキシアルケンオキシド類(エポキシアルカノール)が好ましく、例えば、2,3-エポキシプロパノール(グリシドール)、2,3-エポキシブタノール等の炭素原子数3~10のヒドロキシアルケンオキシド;2,3-エポキシシクロブタノール、2,3-エポキシシクロペンタノール等の炭素原子数4~10のヒドロキシシクロアルケンオキシドが好ましい。
【0066】
本実施形態において、エポキシ基及び水酸基含有化合物、例えばグリシドールは、植物由来化成品の一つであるグリセリンから誘導可能であることが知られている。そのため、本実施形態におけるエポキシ基及び水酸基含有化合物は、植物(例えば、大豆油などの植物油)あるいはバイオディーゼル燃料(脂肪酸メチルエステルを主成分)から合成されることが好ましい。換言すると、本実施形態におけるエポキシ基及び水酸基含有化合物は、植物あるいはバイオディーゼル燃料由来の化合物であることが好ましい。
これにより、環境負荷を低減することができる。したがって、本実施形態において、グリシドールは、植物由来のグリセリンから誘導される誘導体であることが好ましい。例えば、「Quaternary Alkyl Ammonium Salt-Catalyzed Transformation of Glycidol to Glycidyl Esters by Transesterification of Methyl Esters, Shinji Tanaka et., al, ACS Catalysis, 2018, 8, 2, 1097-1103」及び「Synthesis of glycidol from glycerol, LIU Xuemin et.,al, Huagong Jinzhan, vol.28,1445-1448,2009」等に、植物由来のグリセリンからグリシドールへの合成方法が記載されている。
また、グリシドール等のエポキシ基及び水酸基含有化合物が、植物由来のグリセリンから誘導される誘導体であるか否かについては、当該エポキシ基及び水酸基含有化合物を、上記した放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)の測定方法及びバイオマス炭素含有率(%)の算出方法により確認することができる。
本実施形態のグリシドール等のエポキシ基及び水酸基含有化合物のバイオマス炭素含有率(%)は、80%以上でありうる。
【0067】
本実施形態のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)のバイオマス炭素含有率(%)は、10%以上であることが好ましく、10%以上90%以下であることがより好ましく、20%以上80%以下であることがさらに好ましい。エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)のバイオマス炭素含有率(%)が10%以上であると、環境負荷低減の効果を発揮する、あるいはハロゲンフリーのエポキシ樹脂を提供しえる。
上記酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(固形分)のバイオマス炭素含有率(%)及び放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)の測定方法と同様の方法を用いて、本実施形態のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本開示においては、後述の実施例の欄で記載する方法を用いて、以下の式(2)により、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)の放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)を算出している。そして、下記の式(4)に示すように、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)の放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)に0.93をかけて、1950年以降から現代に至る大気圏核実験の影響を加味した値を、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)のバイオマス炭素含有率(%)とした。
式(2):
放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)={エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)中の放射性炭素(14C)÷エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)中の炭素(12C)}/{標準物質の放射性炭素(14C)/標準物質の炭素(12C)}×100
(上記式(2)中、標準物質は、米国標準技術研究所が年代測定法の標準物質として供給するシュウ酸(SRM4990C)を後述の実施例の欄に記載の測定用のグラファイトと同じ前処理方法でグラファイトに変換したものを使用した。)
式(4):
バイオマス炭素含有率(%)=放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)×0.93
上記式(4)を用いた手法を採用しても100%以上の値が算出される場合が生じる。そこで、本開示ではASTMの規格と同様に、バイオマス炭素含有率(%)が100%以上の値を100%とみなしている。
【0068】
<エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)の好ましい態様>
本実施形態において環境負荷低減の観点を重視する場合、本実施形態のエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)はバイオマス由来の原料から合成したものを使用してもよい。例えば、好ましいエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)のバイオマス炭素含有率(%)の範囲は、6%以上であることが好ましく、10%以上90%以下であることがより好ましく、20%以上80%以下であることがさらに好ましい。
【0069】
(多塩基酸無水物(C))
本開示の酸基含有(メタ)アクリレート樹脂を構成する構造単位として、多塩基酸無水物(C)由来の構造単位を含むことにより、得られる酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂が硬化した際に、優れた、絶縁信頼性、耐熱性及び耐冷熱衝撃性を発揮しうる。
本実施形態の多塩基酸無水物(C)としては、例えば、飽和多塩基酸無水物、不飽和多塩基酸無水物等が挙げられる。なお、本発明において、飽和多塩基酸無水物とは、炭素―炭素二重結合を有しない多塩基酸無水物を意味し、不飽和多塩基酸無水物とは、炭素―炭素二重結合を有する多塩基酸無水物を意味する。
【0070】
前記飽和多塩基酸無水物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸等の酸無水物が挙げられる。
なかでも、ヘキサヒドロ無水フタル酸(ヘキサヒドロイソベンゾフラン-1,3-ジオン)、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(3-メチル-8-オキサビシクロ[4.3.0]ノナン-7,9-ジオン)などがより好ましい。
【0071】
前記不飽和多塩基酸無水物としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、テトラヒドロフタル酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸等の酸無水物が挙げられる。
【0072】
これらの多塩基酸無水物は、単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、高い光感度及び優れたアルカリ現像性を有し、耐熱性、耐熱黄変性及び反射性に優れた硬化物を形成可能な酸基含有(メタ)アクリレート樹脂が得られることから、飽和多塩基酸無水物が好ましく、脂環構造を有する飽和多塩基酸無水物がより好ましい。
【0073】
前記多塩基酸無水物(C)の使用量は、優れたアルカリ現像性を有し、伸度、密着性及び誘電特性に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、多塩基酸無水物(C)の使用量が、前記フェノール系樹脂(A)が有するフェノール性水酸基1モルに対して、0.2~1.05モルの範囲で用いることが好ましく、0.25~0.95モルがより好ましく、0.3~0.95がさらに好ましく、0.3~0.9がよりさらに好ましい。
【0074】
<多塩基酸無水物(C)の好ましい態様>
本実施形態において環境負荷低減の観点を重視する場合、本実施形態のエポキシ基を有する多塩基酸無水物(C)はバイオマス由来の原料から合成したものを使用してもよい。例えば、好ましい多塩基酸無水物(C)のバイオマス炭素含有率(%)の範囲は、6%以上であることが好ましく、10%以上90%以下であることがより好ましく、20%以上80%以下であることがさらに好ましい。
【0075】
(その他の化合物)
本開示の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂は、必要に応じて、反応原料(1)として前記フェノール系樹脂(A)、前記エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)及び前記多塩基酸無水物(C)以外のその他の化合物を含有してもよい。
前記その他の化合物としては、例えば、不飽和一塩基酸無水物等が挙げられる。
前記不飽和一塩基酸無水物としては、例えば、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物等が挙げられる。これらの不飽和一塩基酸無水物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
また、本実施形態において、環境負荷低減の観点を重視する場合、反応原料(1)中の各成分は、バイオマス由来の原料から合成したものを使用してもよい。
【0076】
本発明の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂の原料(固形分)中における前記フェノール系樹脂(A)、前記エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)及び前記多塩基酸無水物(C)の合計質量割合は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上99質量%以下であることがさらに好ましい。
【0077】
本開示の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂の製造方法としては、特に制限されず、どのような方法にて製造してもよい。例えば、前記フェノール系樹脂(A)と、前記エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)と、前記多塩基酸無水物(C)とを含有する反応原料の全てを一括で反応させる方法で製造してもよいし、反応原料を順次反応させる方法で製造してもよい。なかでも、反応の制御が容易であることから、先にフェノール系樹脂(A)と、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)とを、塩基性触媒の存在下、80~140℃の温度範囲で反応させ、次いで、多塩基酸無水物(C)を添加し、80~140℃の温度範囲で反応させて製造する方法が好ましい。
【0078】
また、上記フェノール系樹脂(A)と、上記エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)と、上記多塩基酸無水物(C)との反応は、必要に応じて有機溶剤中で行うこともできる。また、必要に応じて、重合禁止剤や酸化防止剤を用いることもできる。
【0079】
上記塩基性触媒としては、例えば、N-メチルモルフォリン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ-n-ブチルアミンもしくはジメチルベンジルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、1,4-ジエチルイミダゾール、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアミン化合物;トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート等の四級アンモニウム塩;トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物;テトラメチルホスホニウムクロライド、テトラエチルホスホニウムクロライド、テトラプロピルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、トリメチル(2-ヒドロキシルプロピル)ホスホニウムクロライド、トリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩;ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、オクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジネオデカノエート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ドデカノイルジスタノキサン等の有機錫化合物;オクチル酸亜鉛、オクチル酸ビスマス等の有機金属化合物;オクタン酸錫等の無機錫化合物;無機金属化合物などが挙げられる。また、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等を用いることもできる。これらの塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。使用に際しては、これらの塩基性触媒を10~55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。
【0080】
上記塩基性触媒の使用量は、優れたアルカリ現像性を有し、伸度、密着性及び誘電特性に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、前記フェノール系樹脂(A)、前記エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)、及び前記多塩基酸無水物(C)の合計100質量部に対して、0.01~1質量部の範囲が好ましく、0.05~0.8の範囲がより好ましい。
【0081】
上記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘプタン、ヘキサン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルアセトアミド等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の環状エーテル溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族溶剤;カルビトール、セロソルブ、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶剤;プロピルエーテル、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール等のエーテル系溶剤;アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等のグリコールエーテル溶剤;大豆油、亜麻仁油、菜種油、サフラワー油等の植物油脂;メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0082】
また、上記有機溶剤としては、市販品を用いることもでき、当該市販品としては、例えば、ENEOS株式会社製「1号スピンドル油」、「3号ソルベント」、「4号ソルベント」、「5号ソルベント」、「6号ソルベント」、「ナフテゾールH」、「アルケン56NT」、「AFソルベント4号」、「AFソルベント5号」「AFソルベント6号」「AFソルベント7号」、三菱ケミカル株式会社製「ダイヤドール13」、「ダイヤレン168」;日産化学株式会社製「Fオキソコール」、「Fオキソコール180」;出光興産株式会社「スーパーゾルLA35」、「スーパーゾルLA38」;ExxonMobil Chemical社製「エクソールD80」、「エクソールD110」、「エクソールD120」、「エクソールD130」、「エクソールD160」、「エクソールD100K」、「エクソールD120K」、「エクソールD130K」、「エクソールD280」、「エクソールD300」、「エクソールD320」;等が挙げられる。
上記有機溶剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。また、本実施形態において、有機溶剤の使用量は、反応効率が良好となることから、反応原料の合計質量に対し0.1~5倍量程度の範囲で用いることが好ましい。
【0083】
また、前記有機溶剤と水とを併用してもよい。この時、混合溶剤中における水に使用比率は、混合溶剤100質量部に対して5~60質量部の範囲が好ましく、10~50質量部がより好ましい。
【0084】
前記重合禁止剤としては、例えば、p-メトキシフェノール、p-メトキシクレゾール、4-メトキシ-1-ナフトール、4,4’-ジアルコキシ-2,2’-ビ-1-ナフトール、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール、N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、スチレン化フェノール、N-イソプロピル-N’-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等のフェノール化合物、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、p-ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニルベンゾキノン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、アントラキノン、ジフェノキノン等のキノン化合物、メラミン、p-フェニレンジアミン、4-アミノジフェニルアミン、N.N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-i-プロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1.3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、4,4’-ジクミル-ジフェニルアミン、4,4’-ジオクチル-ジフェニルアミン、ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、スチレン化ジフェニルアミン、スチレン化ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンの反応生成物、ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンの反応生成物等のアミン化合物、フェノチアジン、ジステアリルチオジプロピオネート、2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル=ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオナート]、ジトリデカン-1-イル=3,3’-スルファンジイルジプロパノアート等のチオエーテル化合物、N-ニトロソジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルナフチルアミン、p-ニトロソフェノール、ニトロソベンゼン、p-ニトロソジフェニルアミン、α-ニトロソ-β-ナフトール等、N、N-ジメチルp-ニトロソアニリン、p-ニトロソジフェニルアミン、p-ニトロンジメチルアミン、p-ニトロン-N、N-ジエチルアミン、N-ニトロソエタノールアミン、N-ニトロソジ-n-ブチルアミン、N-ニトロソ-N-n-ブチル-4-ブタノールアミン、N-ニトロソ-ジイソプロパノールアミン、N-ニトロソ-N-エチル-4-ブタノールアミン、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、N-ニトロソモルホリン、N-二トロソーN-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、二トロソベンゼン、N-ニトロソ-N-メチル-p-トルエンスルホンアミド、N-ニトロソ-N-エチルウレタン、N-ニトロソ-N-n-プロピルウレタン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、1-ニトロソ-2-ナフトール-3,6-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩等のニトロソ化合物、リン酸とオクタデカン-1-オールのエステル、トリフェニルホスファイト、3,9-ジオクタデカン-1-イル-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリスノニルフェニルホスフィト、亜リン酸-(1-メチルエチリデン)-ジ-4,1-フェニレンテトラ-C12-15-アルキルエステル、2-エチルヘキシル=ジフェニル=ホスフィット、ジフェニルイソデシルフォスファイト、トリイソデシル=ホスフィット、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等のホスファイト化合物、ビス(ジメチルジチオカルバマト-κ(2)S,S’)亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛等の亜鉛化合物、ビス(N,N-ジブチルカルバモジチオアト-S,S’)ニッケル等のニッケル化合物、1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-チオン、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2-メチル-4,6-ビス[(オクタン-1-イルスルファニル)メチル]フェノール、ジラウリルチオジプロピオン酸エステル、3,3’-チオジプロピオン酸ジステアリル等の硫黄化合物などが挙げられる。これらの重合禁止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0085】
前記酸化防止剤としては、前記重合禁止剤で例示した化合物と同様のものを用いることができ、前記酸化防止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0086】
また、前記重合禁止剤、及び前記酸化防止剤の市販品としては、例えば、和光純薬工業株式会社製「Q-1300」、「Q-1301」、住友化学株式会社製「スミライザーBBM-S」、「スミライザーGA-80」等が挙げられる。
【0087】
[硬化性樹脂組成物]
本開示の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂は、重合開始剤、好ましくは光重合開始剤を添加することにより硬化性樹脂組成物として用いることができる。すなわち、本開示の硬化性樹脂組成物は、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂及び重合開始剤、好ましくは光重合開始剤を含有する。
【0088】
(重合開始剤)
上記重合開始剤としては、熱重合開始剤及び光重合開始剤からなる群からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
前記重合開始剤の添加量は、例えば、硬化性樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、0.1~20質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0089】
<熱重合開始剤>
上記熱重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩類、アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビスジメチルバレロニトリル、2,2'-アゾビス(2-アミノジプロパン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)などのアゾ系化合物類、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロペルオキシドなどの有機過酸化物類、過酸化水素等を挙げることができる。
【0090】
(光重合開始剤)
前記光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン等の光ラジカル重合開始剤などが挙げられる。
【0091】
前記その他の光重合開始剤の市販品としては、例えば、「Omnirad 1173」、「Omnirad 184」、「Omnirad 127」、「Omnirad 2959」、「Omnirad 369」、「Omnirad 379」、「Omnirad 907」、「Omnirad 4265」、「Omnirad 1000」、「Omnirad 651」、「Omnirad TPO」、「Omnirad 819」、「Omnirad 2022」、「Omnirad 2100」、「Omnirad 754」、「Omnirad 784」、「Omnirad 500」、「Omnirad 81」(IGM Resins社製);「KAYACURE DETX」、「KAYACURE MBP」、「KAYACURE DMBI」、「KAYACURE EPA」、「KAYACURE OA」(日本化薬株式会社製);「Vicure 10」、「Vicure 55」(Stoffa Chemical社製);「Trigonal P1」(Akzo Nobel社製)、「SANDORAY 1000」(SANDOZ社製);「DEAP」(Upjohn Chemical社製)、「Quantacure PDO」、「Quantacure ITX」、「Quantacure EPD」(Ward Blenkinsop社製);「Runtecure 1104」(Runtec社製)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
前記光重合開始剤の添加量は、例えば、前記硬化性樹脂組成物中に、0.5~20質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0092】
(硬化性樹脂組成物に含まれる成分)
本開示は、前述した酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂と、光重合開始剤と、必要により前述した酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂以外の樹脂成分(以下、「その他の樹脂成分」と称することがある。)及び/又は添加剤と、を含有する硬化性樹脂組成物である。
前記その他の樹脂成分としては、本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂以外の他の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(D)、各種の(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。
【0093】
<他の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(D)>
前記他の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(D)としては、樹脂中に酸基及び重合性不飽和基を有するものであれば、本実施形態の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂以外であれば何れでもよく、例えば、酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂、酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂、酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂、酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂、酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂、酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂等が挙げられる。
前記酸基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等が挙げられる。
【0094】
-酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂-
前記酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和一塩基酸、及び多塩基酸無水物を必須原料とする酸基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和一塩基酸、多塩基酸無水物、ポリイソシアネート化合物、及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応原料とする酸基及びウレタン基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂などが挙げられる。
【0095】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、トリヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂、オキサゾリドン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0096】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0097】
前記水添ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールB型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールE型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0098】
前記ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチル-4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチル-2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0099】
前記水添ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、水添4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添テトラメチル-4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、水添テトラメチル-2,2’-ビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0100】
前記不飽和一塩基酸は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、α-シアノ桂皮酸、β-スチリルアクリル酸、β-フルフリルアクリル酸等が挙げられる。また、前記不飽和一塩基酸のエステル化物、酸ハロゲン化物、酸無水物等も用いることができる。さらに、下記一般式(9)で表される化合物等も用いることができる。
【化11】
[一般式(9)中、Xは、炭素原子数1~10のアルキレン鎖、ポリオキシアルキレン鎖、(ポリ)エステル鎖、芳香族炭化水素鎖、又は(ポリ)カーボネート鎖を表し、構造中にハロゲン原子やアルコキシ基等を有していても良い。Yは、水素原子又はメチル基である。]
【0101】
前記ポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖等が挙げられる。
前記(ポリ)エステル鎖としては、例えば、下記一般式(10)で表される(ポリ)エステル鎖が挙げられる。
【化12】
[一般式(10)中、R10及びR11はそれぞれ独立して、炭素原子数1~10のアルキレン基であり、n10は1~5の整数である。]
【0102】
前記芳香族炭化水素鎖としては、例えば、フェニレン鎖、ナフチレン鎖、ビフェニレン鎖、フェニルナフチレン鎖、ビナフチレン鎖等が挙げられる。また、部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の芳香環を有する炭化水素鎖も用いることができる。
これらの不飽和一塩基酸は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0103】
前記多塩基酸無水物としては、上述の多塩基酸無水物(C)として例示したものと同様のものを用いることができ、前記多塩基酸無水物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0104】
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル、o-トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;下記一般式(11)で表される繰り返し構造を有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体等が挙げられる。また、これらのポリイソシアネート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【化13】
(上記一般式(11)中、R92及びR93はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6の一価の炭化水素基のいずれかを表し、R91はそれぞれ独立して、炭素原子数1~4のアルキル基を表し、k91は0又は1~3の整数であり、n91は1以上の整数である。)
【0105】
前記水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、前記各種の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体や、前記各種の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等も用いることができる。これらの水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0106】
前記酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和基を有するエポキシ樹脂の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
前記有機溶剤としては、上述の有機溶剤として例示したものと同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記塩基性触媒としては、上述の塩基性触媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0107】
―酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂―
前記酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、カルボキシル基を有するポリオール化合物、及び必要に応じて多塩基酸無水物、前記カルボキシル基を有するポリオール化合物以外のポリオール化合物とを反応させて得られたものや、ポリイソシアネート化合物、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、多塩基酸無水物、及びカルボキシル基を有するポリオール化合物以外のポリオール化合物とを反応させて得られたもの等が挙げられる。
前記ポリイソシアネート化合物としては、上述のポリイソシアネート化合物として例示したものと同様のものを用いることができ、前記ポリイソシアネート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、上述の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物として例示したものと同様のものを用いることができ、前記水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記カルボキシル基を有するポリオール化合物としては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール吉草酸等が挙げられる。前記カルボキシル基を有するポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記多塩基酸無水物としては、上述の多塩基酸無水物(C)として例示したものと同様のものを用いることができ、前記多塩基酸無水物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記カルボキシル基を有するポリオール化合物以外のポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール化合物;ビフェノール、ビスフェノール等の芳香族ポリオール化合物;前記各種のポリオール化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性体;前記各種のポリオール化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性体等が挙げられる。前記カルボキシル基を有するポリオール化合物以外のポリオール化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和基を有するウレタン樹脂の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
前記有機溶剤としては、上述の有機溶剤として例示したものと同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記塩基性触媒としては、上述の塩基性触媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0108】
―酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂―
前記酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂としては、例えば、水酸基やカルボキシル基、イソシアネート基、グリシジル基等の反応性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(α)を必須の成分として重合させて得られるアクリル樹脂中間体に、これらの官能基と反応し得る反応性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(β)をさらに反応させることにより(メタ)アクリロイル基を導入して得られる反応生成物や、前記反応生成物中の水酸基に多塩基酸無水物を反応させて得られるもの等が挙げられる。
【0109】
前記アクリル樹脂中間体は、前記(メタ)アクリレート化合物(α)の他、必要に応じてその他の重合性不飽和基を有する化合物を共重合させたものであってもよい。前記その他の重合性不飽和基を有する化合物は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート;3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシリル基を有する(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン誘導体等が挙げられる。これらは単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0110】
前記(メタ)アクリレート化合物(β)は、前記(メタ)アクリレート化合物(α)が有する反応性官能基と反応し得るものであれば特に限定されないが、反応性の観点から以下の組み合わせであることが好ましい。即ち、前記(メタ)アクリレート化合物(α)として水酸基を有する(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてグリシジル基を有する(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)として水酸基を有する(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(α)としてグリシジル基を有する(メタ)アクリレートを用いた場合には、(メタ)アクリレート化合物(β)としてカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。前記(メタ)アクリレート化合物(β)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0111】
前記多塩基酸無水物は、上述の多塩基酸無水物(C)として例示したものと同様のものを用いることができ、前記多塩基酸無水物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和基を有するアクリル樹脂の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
前記有機溶剤としては、上述の有機溶剤として例示したものと同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記塩基性触媒としては、上述の塩基性触媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0112】
―酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂―
前記酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂としては、例えば、酸基及び/又は酸無水物基を有するアミドイミド樹脂と、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物及び/又はエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(X)と、必要に応じて、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、グリシジル基、及び酸無水物基からなる群より選ばれる1種以上の反応性官能基を有する化合物を反応させて得られるものが挙げられる。なお、前記反応性官能基を有する化合物は、(メタ)アクリロイル基を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0113】
前記アミドイミド樹脂としては、酸基又は酸無水物基のどちらか一方のみを有するものであってもよいし、両方を有するものであってもよい。水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物や(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ化合物との反応性や反応制御の観点から、酸無水物基を有するものであることが好ましく、酸基と酸無水物基との両方を有するものであることがより好ましい。前記アミドイミド樹脂の固形分酸価は、中性条件下、即ち、酸無水物基を開環させない条件での測定値が60~350mgKOH/gの範囲であることが好ましい。他方、水の存在下等、酸無水物基を開環させた条件での測定値が61~360mgKOH/gの範囲であることが好ましい。
【0114】
前記アミドイミド樹脂としては、例えば、ポリイソシアネート化合物と、多塩基酸無水物とを反応原料として得られるものが挙げられる。
前記ポリイソシアネート化合物としては、上述のポリイソシアネート化合物として例示したものと同様のものを用いることができ、前記ポリイソシアネート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記多塩基酸無水物としては、上述の多塩基酸無水物(C)として例示したものと同様のものを用いることができ、前記多塩基酸無水物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
また、前記アミドイミド樹脂は、必要に応じて、前記ポリイソシアネート化合物及び多塩基酸無水物以外に、多塩基酸を反応原料として併用することもできる。
【0115】
前記多塩基酸としては、一分子中にカルボキシル基を2つ以上有する化合物であれば何れのものも用いることができる。例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニルトリカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等が挙げられる。また、前記多塩基酸としては、例えば、共役ジエン系ビニルモノマーとアクリロニトリルとの共重合体であって、その分子中にカルボキシル基を有する重合体も用いることができる。これらの多塩基酸は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0116】
前記水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、上述の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物として例示したものと同様のものを用いることができ、前記水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0117】
前記エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(X)としては、上述したエポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)として例示したものと同様のものを用いることができ、前記エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(X)は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和基を有するアミドイミド樹脂の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒を用いてもよい。
前記有機溶剤としては、上述の有機溶剤として例示したものと同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0118】
前記塩基性触媒としては、上述の塩基性触媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0119】
前記酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂としては、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物と、アルキレンオキサイド又はアルキレンカーボネートと、N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物と、多塩基酸無水物と、必要に応じて不飽和一塩基酸とを反応させて得られたものが挙げられる。
【0120】
前記フェノール性水酸基を有する化合物としては、分子内にフェノール性水酸基を少なくとも1つ有する化合物をいう。前記分子内にフェノール性水酸基を少なくとも1つ有する化合物としては、例えば、下記一般式(12-1)~(12-5)で表される化合物が挙げられる。
【化14】
【0121】
(上記一般式(12-1)~(12-5)中、R101~R104及びR107それぞれ独立して、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、アリール基又はハロゲン原子のいずれかを表し、R105及びR106はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、j101~j105はそれぞれ独立して、0又は1以上の整数を表し、好ましくは0又は1~3の整数であり、より好ましくは0又は1である。k101~k105はそれぞれ独立して、1以上の整数を表し、好ましくは、2又は3である。)
なお、上記一般式(12-1)~(12-5)における芳香環上の置換基の位置については、任意であり、例えば、一般式(12-2)のナフタレン環においてはいずれの環上の水素原子と置換していてもよく、一般式(12-3)では、ビフェニル1分子中に存在するベンゼン環のいずれの水素原子に置換していてもよく、一般式(12-4)では、アラルキル1分子中に存在するベンゼン環のいずれかの水素原子と置換していてもよく、一般式(12-5)では、1分子中に存在するベンゼン環のいずれの水素原子と置換していてもよいことを示し、1分子中における置換基の個数がj101~j105及びk101~k105であることを示している。
【0122】
また、前記フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、分子内にフェノール性水酸基を少なくとも1つ有する化合物と下記構造式(13-1)~(13-5)の何れかで表される化合物及び/又はホルムアルデヒドとを必須の反応原料とする反応生成物なども用いることができる。また、分子内にフェノール性水酸基を少なくとも1つ有する化合物の1種又は2種以上を反応原料とするノボラック型フェノール樹脂なども用いることができる。
【化15】
【0123】
(上記一般式(13-1)~(13-5)中、h81は、0又は1を表し、R111~R116はそれぞれ独立して、一価の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基又はアラルキル基のいずれかを表し、k111~k116はそれぞれ独立して、0又は1~4の整数を表し、Z111~Z116はそれぞれ独立して、ビニル基、ハロメチル基、ヒドロキシメチル基又はアルキルオキシメチル基のいずれかを表し、Y111は、炭素原子数1~4のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基のいずれかを表し、n111は1~4の整数を表す。)
【0124】
上記一般式(13-1)~(13-5)で表される化合物、及び前記反応生成物の具体例としては、フェノール、クレゾール、キシレノール;ジメチルフェノール、ジエチルフェノール等のジアルキルフェノール;トリメチルフェノール、トリエチルフェノール等のトリアルキルフェノール;ジフェニルフェノール、トリフェニルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、3-メチルカテコール、4-メチルカテコール、4-アリルピロカテコール、テトラメチルビスフェノールA、1,2,3-トリヒドロキシベンゼン、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、1-ナフトール、2-ナフトール、1,3-ナフタレンジオール、1,5-ナフタレンジオール、2,6-ナフタレンジオール、2,7-ナフタレンジオール、ポリフェニレンエーテル型ジオール、ポリナフチレンエーテル型ジオール、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック型樹脂、ナフトールノボラック型樹脂、フェノールアラルキル型樹脂、ナフトールアラルキル型樹脂、シクロ環構造を有するフェノール樹脂などが挙げられる。
これらのフェノール性水酸基を有する化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0125】
前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイド等が挙げられる。これらの中でも、優れたアルカリ現像性を有し、伸度、密着性及び誘電特性に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが好ましい。前記アルキレンオキサイドは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0126】
前記アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ペンチレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、優れたアルカリ現像性を有し、伸度、密着性及び誘電特性に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートが好ましい。前記アルキレンカーボネートは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0127】
前記N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物としては、例えば、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。前記N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0128】
前記多塩基酸無水物としては、上述の多塩基酸無水物(C)として例示したものと同様のものを用いることができ、前記多塩基酸無水物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0129】
前記不飽和一塩基酸としては、上述の不飽和一塩基酸として例示したものと同様を用いることができ、前記不飽和一塩基酸は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0130】
前記酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和基を有するアクリルアミド樹脂の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒及び酸性触媒を用いてもよい。
前記有機溶剤としては、上述の有機溶剤として例示したものと同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記塩基性触媒としては、上述の塩基性触媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0131】
前記酸性触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸、三フッ化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸などが挙げられる。また、スルホニル基等の強酸を有する固体酸触媒等も用いることができる。これらの酸性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0132】
―酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂―
前記酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂としては、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物と、アルキレンオキサイド又はアルキレンカーボネートと、不飽和一塩基酸と、多塩基酸無水物とを反応させて得られたものが挙げられる。
前記フェノール性水酸基を有する化合物としては、上述のフェノール性水酸基を有する化合物として例示したものと同様のものを用いることができ、前記フェノール性水酸基を有する化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記アルキレンオキサイドとしては、上述のアルキレンオキサイドとして例示したものと同様のものを用いることができる。これらの中でも、優れたアルカリ現像性を有し、伸度、密着性及び誘電特性に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが好ましい。前記アルキレンオキサイドは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記アルキレンカーボネートとしては、上述のアルキレンカーボネートとして例示したものと同様のものを用いることができる。これらの中でも、優れたアルカリ現像性を有し、伸度、密着性及び誘電特性に優れた硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物が得られることから、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートが好ましい。前記アルキレンカーボネートは、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記不飽和一塩基酸としては、上述の不飽和一塩基酸として例示したものと同様を用いることができ、前記不飽和一塩基酸は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記多塩基酸無水物としては、上述の多塩基酸無水物(C)として例示したものと同様のものを用いることができ、前記多塩基酸無水物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0133】
前記酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂の製造方法としては、特に限定されず、どのような方法で製造してもよい。前記酸基及び重合性不飽和基を有するエステル樹脂の製造においては、必要に応じて有機溶剤中で行ってもよく、また、必要に応じて塩基性触媒及び酸性触媒を用いてもよい。
前記有機溶剤としては、上述の有機溶剤として例示したものと同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記塩基性触媒としては、上述の塩基性触媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記酸性触媒としては、上述の酸性触媒として例示したものと同様のものを用いることができ、前記酸性触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記他の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(D)の使用量は、本開示の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂100質量部に対して、10~900質量部の範囲が好ましい。
【0134】
<その他の(メタ)アクリレートモノマー>
前記各種の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等の脂肪族モノ(メタ)アクリレート化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチルモノ(メタ)アクリレート等の脂環型モノ(メタ)アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等の複素環型モノ(メタ)アクリレート化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族モノ(メタ)アクリレート化合物等のモノ(メタ)アクリレート化合物:前記各種のモノ(メタ)アクリレートモノマーの分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等のポリオキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性モノ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のモノ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性モノ(メタ)アクリレート化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ジ(メタ)アクリレート化合物;1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の脂環型ジ(メタ)アクリレート化合物;ビフェノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート等の芳香族ジ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のジ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入したポリオキシアルキレン変性ジ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のジ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性ジ(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性トリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性トリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した4官能以上の(ポリ)オキシアルキレン変性ポリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入した4官能以上のラクトン変性ポリ(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
また、前記その他の(メタ)アクリレートモノマーとしては、上述したものの他に、フェノール化合物と、環状カーボネート化合物又は環状エーテル化合物と、不飽和モノカルボン酸とを必須の反応原料とする(メタ)アクリレートモノマーを用いることができる。
前記フェノール化合物としては、例えば、クレゾール、キシレノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、3-メチルカテコール、4-メチルカテコール、4-アリルピロカテコール、1,2,3-トリヒドロキシベンゼン、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、1-ナフトール、2-ナフトール、1,3-ナフタレンジオール、1,5-ナフタレンジオール、2,6-ナフタレンジオール、2,7-ナフタレンジオール、水添ビスフェノール、水添ビフェノール、ポリフェニレンエーテル型ジオール、ポリナフチレンエーテル型ジオール、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック型樹脂、ナフトールノボラック型樹脂、フェノールアラルキル型樹脂、ナフトールアラルキル型樹脂、シクロ環構造含有フェノール樹脂等が挙げられる。
【0135】
前記環状カーボネート化合物としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ペンチレンカーボネート等が挙げられる。これらの環状カーボネート化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0136】
前記環状エーテル化合物としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらの環状エーテル化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0137】
前記不飽和モノカルボン酸としては、上述の不飽和一塩基酸として例示したものと同様のものを用いることができる。
前記その他の(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物中に90質量%以下が好ましい。
【0138】
<添加剤>
本開示の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、酸化防止剤、有機溶剤、無機質充填材やポリマー微粒子、顔料、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、難燃剤、保存安定化剤等の各種添加剤を含有することもできる。
前記硬化剤としては、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、フェノ-ル系化合物、カルボン酸系化合物、シアネートエステル化合物などが挙げられる。これらの硬化剤は、単独で使用しても、あるいは2種類以上併用してもよい。
上記アミン系化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリプロピレングリコールジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミンなどの脂肪族ポリアミン類や、メタキシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミンなどの芳香族ポリアミン類や、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミンなどの脂環族ポリアミン類等や、ジシアンジアミドが挙げられる。
上記アミド系化合物としては、例えば、ポリカルボン酸とポリアミンより合成される脂肪族ポリアミド、又はこれに芳香族環を導入した芳香族ポリアミド、ポリアミドにエポキシ化合物を付加してなる脂肪族ポリアミドアダクト、芳香族ポリアミドアダクト等が挙げられる。
上記フェノール系化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂やこれらの変性物等が挙げられる。
上記カルボン酸系化合物としては、カルボン酸末端ポリエステル、ポリアクリル酸、マレイン酸変性ポリプロピレングリコール等のカルボン酸ポリマー等が挙げられる。
【0139】
前記硬化促進剤としては、硬化反応を促進するものであり、例えば、リン系化合物、アミン系化合物、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記硬化促進剤の添加量は、例えば、前記硬化性樹脂組成物の固形分中に0.01~10質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0140】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン誘導体、2-(2’-キサンテンカルボキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-o-ニトロベンジロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-キサンテンカルボキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン、2-o-ニトロベンジロキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0141】
前記重合禁止剤としては、上述の重合禁止剤として例示したものと同様のものを用いることができ、前記重合禁止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記酸化防止剤としては、上述の酸化防止剤として例示したものと同様のものを用いることができ、前記酸化防止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記有機溶剤としては、上述の有機溶剤として例示したものと同様のものを用いることができ、前記有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。
前記顔料としては、公知慣用の無機顔料や有機顔料を使用することができる。
【0142】
前記無機顔料としては、例えば、白色顔料、アンチモンレッド、ベンガラ、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等が挙げられる。これらの無機顔料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0143】
前記白色顔料としては、例えば、酸化チタン,酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、中空樹脂粒子、硫化亜鉛等が挙げられる。
【0144】
前記有機顔料としては、例えば、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、フタロシアニン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンツイミダゾロン顔料、アゾ顔料等が挙げられる。これらの有機顔料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0145】
前記難燃剤としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム、リン酸アミド等の無機リン化合物;リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5―ジヒドロオキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等の有機リン化合物;トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等の窒素系難燃剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等のシリコーン系難燃剤;金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等の無機難燃剤などが挙げられる。これらの難燃剤は、単独でも用いることも2種以上を併用することもできる。また、これら難燃剤を用いる場合は、全硬化性樹脂組成物中0.1~20質量%の範囲であることが好ましい。
【0146】
本実施形態の硬化性樹脂組成物のバイオマス炭素含有率(%)は、5%以上であることが好ましく、5%以上95%以下であることがより好ましく、10%以上90%以下であることがさらに好ましい。硬化性樹脂組成物のバイオマス炭素含有率(%)が10%以上であると、環境負荷低減の効果を発揮することができる。
なお、硬化性樹脂組成物のバイオマス炭素含有率(%)及び放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)は、上記酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(固形分)のバイオマス炭素含有率(%)及び放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)の測定方法と同様の方法を用いて、以下の式(3)を用いて算出した。そして、下記の式(4)に示すように、硬化性樹脂組成物の放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)に0.93をかけて、1950年以降から現代に至る大気圏核実験の影響を加味した値を硬化性樹脂組成物のバイオマス炭素含有率(%)とした。
式(3):
放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)=[{硬化性樹脂組成物中の放射性炭素(14C)÷硬化性樹脂組成物中の炭素(12C)}/{標準物質の放射性炭素(14C)/標準物質の炭素(12C)}×100
(上記式(2)中、標準物質は、米国標準技術研究所が年代測定法の標準物質として供給するシュウ酸(SRM4990C)を後述の実施例の欄に記載の測定用のグラファイトと同じ前処理方法でグラファイトに変換したものを使用した。)
式(4):
バイオマス炭素含有率(%)=放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)×0.93
上記式(4)を用いた手法を採用しても、バイオマス炭素含有率(%)として100%以上の値が算出される場合が生じる。そこで、本開示ではASTMの規格と同様に100%以上の値を100%とみなしている。
【0147】
本開示の硬化物は、前記硬化性樹脂組成物に、活性エネルギー線を照射することで得ることができる。前記活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。また、前記活性エネルギー線として、紫外線を用いる場合、紫外線による硬化反応を効率よく行う上で、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で照射してもよく、空気雰囲気下で照射してもよい。
【0148】
紫外線発生源としては、実用性、経済性の面から紫外線ランプが一般的に用いられている。具体的には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、太陽光、LED等が挙げられる。
前記活性エネルギー線の積算光量は、特に制限されないが、0.1~50kJ/mであることが好ましく、0.5~10kJ/mであることがより好ましい。積算光量が上記範囲であると、未硬化部分の発生の防止又は抑制ができることから好ましい。
なお、前記活性エネルギー線の照射は、一段階で行ってもよいし、二段階以上に分けて行ってもよい。
【0149】
また、本開示の硬化物は、優れたアルカリ現像性を有し、伸度、密着性及び誘電特性に優れることから、例えば、半導体デバイス用途における、ソルダーレジスト、層間絶縁材料、パッケージ材、アンダーフィル材、回路素子等のパッケージ接着層や、集積回路素子と回路基板の接着層として好適に用いることができる。また、LCD、OELDに代表される薄型ディスプレイ用途における、薄膜トランジスタ保護膜、液晶カラーフィルタ保護膜、カラーフィルタ用顔料レジスト、ブラックマトリックス用レジスト、スペーサー等に好適に用いることができる。これらの中でも、特にソルダーレジスト用途に好適に用いることができる。
【0150】
本開示のレジスト部材は、例えば、前記ソルダーレジスト用樹脂材料を基材上に塗布し、60~100℃程度の温度範囲で有機溶剤を揮発乾燥させた後、所望のパターンが形成されたフォトマスクを通して活性エネルギー線にて露光させ、アルカリ水溶液にて未露光部を現像し、更に140~200℃程度の温度範囲で加熱硬化させて得ることができる。
前記基材としては、例えば、銅、アルミニウム等の金属張積層板などが挙げられる。
【実施例0151】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下に挙げた実施例に限定されるものではない。
(1)実施例及び比較例における評価方法
[酸価の評価方法]
実施例及び比較例で得られた酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂の酸価は、JISK0070:1992規格に準拠して算出した。
【0152】
[塩素量の評価方法]
各実施例及び比較例で得られた酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂又は硬化性樹脂組成物中の塩素原子の含有量は、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂又は硬化性樹脂組成物を、燃焼管燃焼法により高温で燃焼・分解させ、その分解ガスを吸収液に吸収させてイオンクロマトグラフィーで定量することによって測定した。当該吸収液として、過酸化水素水及び抱水ヒドラジン含有の超純水を用いた。
また、燃焼管燃焼法で使用したイオンクロマトグラフィーは、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製のイオンクロマトグラフ装置「イオンクロマトグラフICS-1500型(検出器:電気伝導度計)」とイオンクロマトグラフィー用カラム「サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製 AS-12A」である。
溶離液は、濃度0.3mMの炭酸水素ナトリウム(NaHCO)水溶液と濃度2.7mMの炭酸ナトリウム(NaCO)水溶液の混合溶液であり、流量は1.5mL/minであった。
【0153】
[絶縁信頼性(HAST(High Accelerated Stress Test)特性)の評価方法]
温度、湿度に対する信頼性評価として高温高湿下での電気特性を評価した。より詳細には、クシ型電極基板(ラインアンドスペースは100μm/100μm)上に、各実施例及び各比較例において調製した硬化性樹脂組成物を用いて硬化塗膜をそれぞれ作製し、120℃、85%R.H.の高温高湿槽にて、DC100Vのバイアス電圧を印加し100時間、250時間後のマイグレーションの有無を目視にて下記の評価基準で評価した。
評価基準:
○:全く変化無し
△:僅かな変化が観察される
×:マイグレーションが発生する
なお、上記硬化塗膜は、各実施例及び各比較例において調製した硬化性樹脂組成物を前記クシ型電極基板に塗布し、80℃で30分乾燥させた後、メタルハライドランプを用いて10kJ/mの紫外線を照射し、160℃で1時間後硬化して作製した。
【0154】
[耐冷熱衝撃性の評価方法]
各実施例及び各比較例において調製した硬化性樹脂組成物を用いて作製した硬化塗膜を、-65~120℃の温度範囲にて冷熱衝撃試験を実施した。試験方法はJIS C5012-9.1:1993に準拠した。試験終了後、セロハンテープ(登録商標)による剥離試験を実施した。
○:剥がれなし
△:僅かな剥がれが観察される
×:剥離する
【0155】
[耐熱性の評価方法]
各実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物を、アプリケーターを用いて銅箔(古河産業株式会社製、電解銅箔「F2-WS」18μm)上に膜厚50μmとなるように塗布し、80℃で30分乾燥させた。次いで、メタルハライドランプを用いて10kJ/mの紫外線を照射した後、160℃で1時間加熱して、硬化塗膜を得た。次いで、前記硬化塗膜を銅箔から剥離し、硬化物を得た。前記硬化物から6mm×40mmの試験片を切り出し、粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置「SOLIDS ANALYZER RSAII」、引張り法:周波数1Hz、昇温速度3℃/分)を用いて、弾性率変化が最大となる温度をガラス転移温度と評価した。なお、ガラス転移温度が高いほど耐熱性に優れていることを示す。
【0156】
[バイオマス炭素含有率(%)の測定方法]
<加速器質量分析(AMS)に用いる試料の前処理方法>
後述の実施例及び比較例で用いた、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)又は硬化性組成物それぞれ10mgを微粒状の酸化銅とともにクォーツ製のサンプル管に入れ、脱気封管して、500℃で30分、850℃で2時間加熱することにより、二酸化炭素に変換した。次いで、サンプル管を真空ラインに接続してコールドトラップ法により二酸化炭素のみに精製し、鉄粉が入ったクォーツ管に二酸化炭素を移した後、水素ガスを同封して、封管した。そして、650℃で10時間加熱して還元反応を行い、測定用のグラファイトを作製した。
【0157】
<放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)の算出>
得られた測定用グラファイトをサンプルフォルダーに充填して、加速器質量分析(AMS)を行い、以下の式(1)~(3)により、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)及び硬化性樹脂組成物の放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)を算出した。
式(1):
放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)=[{酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂中の放射性炭素(14C)÷酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂中の炭素(12C)}/{標準物質の放射性炭素(14C)/標準物質の炭素(12C)}×100
式(2):
放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)=[{エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(B)中の放射性炭素(14C)÷(メタ)アクリレート化合物(B)中の炭素(12C)}/{標準物質の放射性炭素(14C)/標準物質の炭素(12C)}×100
式(3):
放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)=[{硬化性樹脂組成物中の放射性炭素(14C)÷硬化性樹脂組成物中の炭素(12C)}/{標準物質の放射性炭素(14C)/標準物質の炭素(12C)}×100
(上記式(1)~(3)中の標準物質は、米国標準技術研究所が年代測定法の標準物質として供給するシュウ酸(SRM4990C)を、上記測定用のグラファイトと同じ前処理方法でグラファイトに変換したものを使用した。)
【0158】
<バイオマス炭素含有率(%)の算出>
次いで、下記の式(4)に示すように、上記の方法で得られた各試料の放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)に0.93をかけて、1950年以降から現代に至る大気圏核実験の影響を加味した値をバイオマス炭素含有率(%)とした。
式(4):
バイオマス炭素含有率(%)=放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)×0.93
(1950年以降の大気圏核実験の影響を受けて、人工的に大気中に注入された放射性炭素(14C)により、通常の約1.5倍量の放射性炭素(14C)が観測されていた。しかし、時間の経過とともに徐々に減少しており、現在の値は107.5pMC付近である。そのため、本開示においても、ASTM D6866の規格と同様に放射性炭素(14C)の含有比(pMC%)に0.93をかける。ただし、上記式(4)を用いた手法を採用しても、100%以上の値が算出される場合がある。そのため、混合物に対してこの手法を用いると大きさ誤差を生じる虞があるため、本開示ではバイオマス炭素含有率(%)が100%以上の値である場合、100%とみなしている。)
なお、硬化性樹脂組成物全体のバイオマス炭素含有率(%)は、使用目的等により各成分比が変わってくるため、硬化性樹脂組成物中の既知のバイオマス炭素含有率(%)の原料成分の重量比から概算している。
【0159】
(2)酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂及び他の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(D)の合成
(合成例1):他の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(D-1)の合成
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート123質量部を入れ、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂「EPICLON N-680」(DIC株式会社製、軟化点86℃、エポキシ当量:214g/eq、)214質量部を溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン0.9質量部、メトキノン0.2質量部加えた後、アクリル酸72質量部、トリフェニルホスフィン1.4質量部を添加し、空気を吹き込みながら120℃で10時間反応を行なった。次いで、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート72質量部、テトラヒドロ無水フタル酸76質量部を加え110℃で3時間反応し、他の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(D-1)を得た。この他の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(D-1)の不揮発分は65質量%で、固形分酸価は80mgKOH/gであった。なお、酸価は、JIS K 0070(1992)の中和滴定法に基づいて測定した値である。
【0160】
(実施例1):酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(1)の合成
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート105.9質量部を入れ、フェノールノボラック型フェノール系樹脂(PHENOLITE TD-2090、DIC株式会社製、軟化点120℃、フェノール性水酸基当量105g/eq)105質量部を溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン0.6質量部、メトキノン0.1質量部加えた後、グリシジルメタクリレート(全塩素量:30ppm、バイオマス炭素含有率(%):0%)142質量部、トリエチルアミン1.2質量部を添加し、空気を吹き込みながら120℃で18時間反応を行なった。次いで、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート62.3質量部、テトラヒドロ無水フタル酸65.4質量部を加え110℃で3時間反応させた。次いで、リン酸1.2質量部を添加し、80℃で2時間撹拌し、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(1)を得た。この酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(1)の不揮発分は65質量%で、固形分酸価は80mgKOH/gであり、固形分の全塩素量は11ppmであった。また、固形分のバイオマス炭素含有率(%)は、0%であった。
なお、実施例1で使用したグリシジルメタクリレートは、分取HPLCを用いて精製してから使用した。その結果、使用したグリシジルメタクリレートの塩素量は30ppmであった。
【0161】
(実施例2):酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(2)の合成
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート111.9質量部を入れ、クレゾールノボラック型フェノール系樹脂(PHENOLITE KA-1165、DIC株式会社製、軟化点120℃、フェノール性水酸基当量119g/eq)119質量部を溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン0.7質量部、メトキノン0.1質量部加えた後、グリシジルメタクリレート(全塩素量:当該グリシジルメタクリレートの全塩素量は、10質量ppm以下であった。より詳細には定量下限以下のため数値は特定できなかったが概ね数ppm程度と考えられる。バイオマス炭素含有率(%):43%)142質量部、トリエチルアミン1.3質量部を添加し、空気を吹き込みながら120℃で20時間反応を行なった。次いで、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート66.3質量部、テトラヒドロ無水フタル酸69.9質量部を加え110℃で3時間反応させた。次いで、リン酸1.3質量部を添加し、80℃で2時間撹拌し、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(2)を得た。この酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(2)の不揮発分は65質量%で、固形分酸価は80mgKOH/gであり、固形分の全塩素量は、10質量ppm以下であった。より詳細には定量下限以下のため数値は特定できなかったが概ね数ppm程度と考えられる。また、固形分のバイオマス炭素含有率(%)は、18%であった。
【0162】
(実施例3):酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(3)の合成
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート105.9質量部を入れ、フェノールノボラック型フェノール系樹脂(PHENOLITE TD-2090、DIC株式会社製、軟化点120℃、フェノール性水酸基当量105g/eq)105質量部を溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン0.6質量部、メトキノン0.1質量部加えた後、グリシジルメタクリレート(全塩素量:当該グリシジルメタクリレートの全塩素量は、10質量ppm以下であった。より詳細には定量下限以下のため数値は特定できなかったが概ね数ppm程度と考えられる。バイオマス炭素含有率(%):43%)142質量部、トリエチルアミン1.2質量部を添加し、空気を吹き込みながら120℃で18時間反応を行なった。次いで、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート62.3質量部、テトラヒドロ無水フタル酸65.4質量部を加え110℃で3時間反応させた。次いで、リン酸1.2質量部を添加し、80℃で2時間撹拌し、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(3)を得た。この酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(3)の不揮発分は65質量%で、固形分酸価は80mgKOH/gであり、固形分の全塩素量は、10質量ppm以下であった。より詳細には定量下限以下のため数値は特定できなかったが概ね数ppm程度と考えられる。また、固形分のバイオマス炭素含有率(%)は、約20%であった。
【0163】
(実施例4):酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(4)の合成
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート111.4質量部を入れ、ビスフェノールAノボラック型フェノール系樹脂(PHENOLITE VH-4170、DIC株式会社製、軟化点105℃、フェノール性水酸基当量118g/eq)118質量部を溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン0.7質量部、メトキノン0.1質量部加えた後、グリシジルメタクリレート(全塩素量:当該グリシジルメタクリレートの全塩素量は、10質量ppm以下であった。より詳細には定量下限以下のため数値は特定できなかったが概ね数ppm程度と考えられる。バイオマス炭素含有率(%):43%)142質量部、トリエチルアミン1.3質量部を添加し、空気を吹き込みながら120℃で19時間反応を行なった。次いで、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート65.4質量部、テトラヒドロ無水フタル酸68.4質量部を加え110℃で3時間反応させた。次いで、リン酸1.2質量部を添加し、80℃で2時間撹拌し、酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(4)を得た。この酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(4)の不揮発分は65質量%で、固形分酸価は81mgKOH/gであり、固形分の全塩素量は、10質量ppm以下であった。より詳細には定量下限以下のため数値は特定できなかったが概ね数ppm程度と考えられる。また、固形分のバイオマス炭素含有率(%)は、19%であった。
【0164】
(比較例1):比較用酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(C-1)の合成
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を備えたフラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート105.9質量部を入れ、フェノールノボラック型フェノール系樹脂(PHENOLITE TD-2090、DIC株式会社製、軟化点120℃、フェノール性水酸基当量105g/eq)105質量部を溶解し、ジブチルヒドロキシトルエン0.6質量部、メトキノン0.1質量部加えた後、グリシジルメタクリレート(「市販品 GMA(メタクリル酸グリシジル」 全塩素量は1500ppm、バイオマス炭素含有率(%):0%)142質量部、トリエチルアミン1.2質量部を添加し、空気を吹き込みながら120℃で18時間反応を行なった。次いで、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート62.3質量部、テトラヒドロ無水フタル酸65.4質量部を加え110℃で3時間反応させた。次いで、リン酸1.2質量部を添加し、80℃で2時間撹拌し、比較用酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(C-1)を得た。この比較用酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(C-1)の不揮発分は65質量%で、固形分酸価は81mgKOH/gであり、固形分の全塩素量は680ppmであった。
【0165】
(4)硬化性樹脂組成物の調製及び硬化物・絶縁材料・レジスト部材の製造
(実施例5~9)
上記実施例1~4で得られた酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(1)~(4)と、硬化剤として「オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON N-680」」と、有機溶剤として「ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート」と、光重合開始剤として「(IGM Resins社製「Omnirad 907」)」、ペンタエリスリトールヘキサアクリレートと、メラミンと、硫酸バリウムとを、下記の表1に示す組成比で混合して、硬化性樹脂組成物(1)~(5)を調製した。そして、硬化性樹脂組成物(1)~(5)に対して、上述した[HAST特性の評価]、及び[耐冷熱衝撃性の評価方法]の欄に記載の方法を用い、放射性炭素(14C)の含有比、絶縁信頼性及び耐冷熱衝撃性の評価を行った。その結果を、下記の表1に示す。
【0166】
(比較例2)
実施例5~9と同様に、下記の表1に示す組成比で混合して、硬化性樹脂組成物(C1)を調製して、絶縁信頼性及び耐冷熱衝撃性の評価を行った。その結果を、下記の表1に示す。
【0167】
【表1】
【0168】
(実施例10~14)
上記実施例1~4で得られた酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂(1)~(4)と、硬化剤として「オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON N-680」」と、有機溶剤として「ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート」と、光重合開始剤として「(IGM Resins社製「Omnirad 907」)」とを、下記の表2に示す組成比で混合して、硬化性樹脂組成物(6)~(10)を調製した。そして、硬化性樹脂組成物(6)~(10)に対して、上述した[耐熱性の評価]の欄及び[バイオマス炭素含有率(%)の測定方法]に記載の方法を用い、耐熱性の評価及びバイオマス炭素含有率(%)の測定を行った。その結果を、下記の表2に示す。なお、硬化性樹脂組成物(6)~(10)のバイオマス炭素含有率(%)は、原料の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂の重量比換算から概ね10%以上であることが確認できた。
【0169】
(比較例3)
実施例10~14と同様に、下記の表2に示す組成比で混合して、硬化性樹脂組成物(C2)を調製して、耐熱性及びバイオマス炭素含有率(%)の評価を行った。その結果を、下記の表2に示す。
【0170】
【表2】
上記表1及び表2の実験結果から、本開示の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂は、比較例と比較して、硬化した際に、高い絶縁信頼性及び高い耐熱性を示し、かつ耐冷熱衝撃性に優れることが確認できた。また、本開示の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂を含有する硬化性樹脂組成物あるいはその硬化物は、比較例より、高い絶縁信頼性及び高い耐熱性を示し、かつ耐冷熱衝撃性に優れることも確認できた。
さらには、本開示の酸基及び重合性不飽和基を有する樹脂は及びその樹脂を含有する硬化性樹脂組成物は、バイオマス炭素含有率(%)の含有比を10%以上含有することにより、化石燃料の使用量を低減した環境負荷低減の効果を発揮することも確認できた。