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  • 特開-ミリ波レドーム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095447
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】ミリ波レドーム
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/42 20060101AFI20240703BHJP
   C08L 23/20 20060101ALI20240703BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20240703BHJP
   C08K 5/1535 20060101ALI20240703BHJP
   C08F 10/14 20060101ALI20240703BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H01Q1/42
C08L23/20
C08K5/13
C08K5/1535
C08F10/14
C08J5/00 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212740
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲田 翼
(72)【発明者】
【氏名】村田 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】松原 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 悠
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J100
5J046
【Fターム(参考)】
4F071AA20
4F071AA21X
4F071AA78
4F071AA82
4F071AA84
4F071AA88
4F071AB28
4F071AC09
4F071AC10
4F071AC15
4F071AD01
4F071AE05
4F071AF10Y
4F071AF40Y
4F071AF45
4F071AH12
4F071BA01
4F071BB05
4F071BC04
4F071BC12
4J002BB171
4J002EH076
4J002EH146
4J002EJ026
4J002EL076
4J002FD066
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GT00
4J100AA02Q
4J100AA03Q
4J100AA04Q
4J100AA07Q
4J100AA09P
4J100AA15Q
4J100AA16Q
4J100AA17Q
4J100AA18Q
4J100AA19Q
4J100AA21Q
4J100AS15Q
4J100BC08Q
4J100CA01
4J100CA03
4J100CA04
4J100DA09
4J100DA24
4J100JA44
5J046AA02
5J046AA13
5J046RA03
(57)【要約】
【課題】低い比誘電率及び誘電正接を有すると共に、電波透過性及び耐熱性に優れるミリ波レドームを提供する。
【解決手段】3-メチル-1-ブテン系重合体を含む材料を用いてなるミリ波レドーム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-メチル-1-ブテン系重合体を含む材料を用いてなるミリ波レドーム。
【請求項2】
前記3-メチル-1-ブテン系重合体が3-メチル-1-ブテン単独重合体、及び3-メチル-1-ブテンとエチレン又はα-オレフィンとの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記α-オレフィンが炭素数3~20である、請求項1に記載のミリ波レドーム。
【請求項3】
前記共重合体における、前記エチレン又はα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合が、0モル%超20モル%以下である、請求項2に記載のミリ波レドーム。
【請求項4】
吸水率が0.05%未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載のミリ波レドーム。
【請求項5】
10GHz~300GHzでの誘電正接が0.00100未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載のミリ波レドーム。
【請求項6】
前記材料が、前記3-メチル-1-ブテン系重合体及びアルキルラジカル捕捉剤を含有する樹脂組成物である、請求項1~5のいずれか1項に記載のミリ波レドーム。
【請求項7】
前記アルキルラジカル捕捉剤が、アクリルフェノール化合物、及びベンゾフラノン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項6に記載のミリ波レドーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波レドームに関する。
【背景技術】
【0002】
電気、電子機器の高性能、高機能化に伴い、自動車やバス等の車両にLRR(Long Range Radar)やSRR(Short Range Radar)といったレーダーが搭載されている。当該レーダーは、大容量高速通信の社会実現に伴い10GHzを超える高周波域の電波であって、例えば、ミリ波(周波数30GHz~300GHz)帯の電波を検出することが求められる。
レーダーは、通常、アンテナと当該アンテナを包む筐体(以下、「レドーム」という。)から構成される。上記アンテナやレドームには、高周波域で電波を効率よく受送信するために低誘電材料が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電波透過性かつ透明な材料からなる外面被覆板と、外面被覆板の内部面に形成される金属膜と、電波透過性の材料からなる背面被覆板とを含んで構成される車両用外装部品が開示されている。上記外面被覆板はポリカーボネート(PC)又はポリメタクリル酸メチル(PMMA)から構成され、上記背面被覆板はシンジオタクチックポリスチレン(SPS)又はポリフェニレンエーテル(PPE)又はポリ塩化ビニル(PVC)又はアクリルニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)から構成される。
また、特許文献2には、高周波回路等を収納するハウジングと、送受信アンテナを保護するためのレドームを備えた車載用レーダー装置が開示されている。上記レドームを構成する主な材料は、ポリカーボネート(PC)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリプロピレン(PP)又はABS樹脂からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-135030号公報
【特許文献2】特開2004-20514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
低誘電材料として従来用いられてきたPC、PMMA、及びABS等は、十分な低比誘電率かつ低誘電正接を得ることが困難であった。
PPやSPS等は誘電特性に優れるものの、近年の高出力及び小型化に適用できるだけの耐熱性が不足している。
よって、レドームに用いられる材料には、高周波域での誘電特性及び耐熱性により一層優れることが要望されてる。
【0006】
本発明は、このような現状に鑑み、低い比誘電率及び誘電正接を有すると共に、電波透過性及び耐熱性に優れるミリ波レドームを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは下記本発明に想到し、当該課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0008】
[1] 3-メチル-1-ブテン系重合体を含む材料を用いてなるミリ波レドーム。
[2] 上記3-メチル-1-ブテン系重合体が3-メチル-1-ブテン単独重合体、及び3-メチル-1-ブテンとエチレン又はα-オレフィンとの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、上記α-オレフィンが炭素数3~20である、上記[1]に記載のミリ波レドーム。
[3] 上記共重合体における、上記エチレン又はα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合が、0モル%超20モル%以下である、上記[2]に記載のミリ波レドーム。
[4] 吸水率が0.05%未満である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のミリ波レドーム。
[5] 10GHz~300GHzでの誘電正接が0.00100未満である、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のミリ波レドーム。
[6] 上記材料が、上記3-メチル-1-ブテン系重合体及びアルキルラジカル捕捉剤を含有する樹脂組成物である、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載のミリ波レドーム。
[7] 上記アルキルラジカル捕捉剤が、アクリルフェノール化合物、及びベンゾフラノン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、上記[6]に記載のミリ波レドーム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低い比誘電率及び誘電正接を有すると共に、電波透過性及び耐熱性に優れるミリ波レドームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1におけるミリ波レドームを示す概略斜視図及び概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施態様の一例に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施態様は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下の記載に限定されない。
本明細書において、実施態様の好ましい形態を示すが、個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、好ましい形態である。数値範囲で示した事項について、いくつかの数値範囲がある場合、それらの下限値と上限値とを選択的に組み合わせて好ましい形態とすることができる。
本明細書において、「XX~YY」との数値範囲の記載がある場合、「XX以上YY以下」を意味する。
【0012】
<ミリ波レドーム>
本実施形態のミリ波レドームは、周波数30GHz~300GHz(即ち、ミリ波)に対して好適に用いることができるレドームである。ただし、本発明の効果が損なわない限りにおいてにおいて、用いることができる周波数はミリ波に限定されない。本実施形態のミリ波レドームは、3-メチル-1-ブテン系重合体を含む材料を用いてなることを特徴とする。
ミリ波レドームを形成する材料が、3-メチル-1-ブテン系重合体を含むことで、ミリ波レドームは低い比誘電率及び誘電正接を有すると共に、電波透過性及び耐熱性に優れる。
また、本実施形態のミリ波レドームを形成する材料は、耐熱性に優れるため、任意の形状にも成形できる。上記材料の成形体は通常透明なので、本実施形態のミリ波レドームは任意の着色が可能である。
また、3-メチル-1-ブテン系重合体は吸水性が低いので、本実施形態のミリ波レドームは、使用環境に影響しにくく安定した物性を発現して保管管理が容易になることが期待できる。
さらに、3-メチル-1-ブテン系重合体は比較的低比重であることから、本実施形態のミリ波レドームは軽量化にも寄与できる。
【0013】
[材料]
本実施形態のミリ波レドームに用いられる材料は、3-メチル-1-ブテン系重合体を含む。
また本実施形態のミリ波レドームに用いられる材料は、3-メチル-1-ブテン系重合体からなるものであってもよく、後述するように3-メチル-1-ブテン系重合体以外の成分を含む樹脂組成物であってもよい。
【0014】
〈3-メチル-1-ブテン系重合体〉
3-メチル-1-ブテン系重合体は、3-メチル-1-ブテン単独重合体であってもよく、3-メチル-1-ブテンと不飽和炭化水素との共重合体であってもよい。上記不飽和炭化水素は、例えば、エチレン又はα-オレフィンが挙げられ、共重合性がよい観点から、好ましくはエチレン又は炭素数3~20のα-オレフィンである。
機械特性(適度な強度と柔軟性、及び耐衝撃性)を好適に発揮させる観点から、3-メチル-1-ブテン系重合体は、好ましくは3-メチル-1-ブテン単独重合体、及び3-メチル-1-ブテンとエチレン又は炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは3-メチル-1-ブテンとエチレン又は炭素数3~20のα-オレフィンとの共重合体である。
上記共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、交互共重合体であってもよい。上記共重合体の製造方法は、本発明の効果を損なわなければ制限されず、公知の共重合法を採用することができる。
【0015】
3-メチル-1-ブテン系重合体が上記共重合体である場合、共重合体における、エチレン又はα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、好ましくは0モル%超20モル%以下である。
柔軟性及び耐衝撃性の観点から、共重合体における、エチレン又はα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、より好ましくは0.1モル%以上、さらに好ましくは0.5モル%以上である。
また、耐熱性の観点から、共重合体における、エチレン又はα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、より好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。
これらの観点から、共重合体における、エチレン又はα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、より好ましくは0.1~15モル%、さらに好ましくは0.5~10モル%である。
なお、共重合体における、エチレン又はα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)によって求めることができる。具体的には、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0016】
3-メチル-1-ブテン系重合体が上記共重合体である場合、共重合体における、3-メチル-1-ブテンに由来する構造単位の含有割合は、好ましくは80モル%以上100モル%未満である。
耐熱性の観点から、共重合体における、3-メチル-1-ブテンに由来する構造単位の含有割合は、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
また、柔軟性及び耐衝撃性の観点から、共重合体における、3-メチル-1-ブテンに由来する構造単位の含有割合は、より好ましくは99.9モル%以下、さらに好ましくは99.5モル%以下である。
これらの観点から、共重合体における、3-メチル-1-ブテンに由来する構造単位の含有割合は、より好ましくは85~99.9モル%、さらに好ましくは90~99.5モル%である。
【0017】
3-メチル-1-ブテン系重合体の物性を好適に発揮させる観点から、エチレン又は炭素数3~20のα-オレフィンは、好ましくは炭素数4~16のα-オレフィン、より好ましくは炭素数4~12のα-オレフィンである。また、炭素数3~20のα-オレフィンは、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
【0018】
炭素数3~20のα-オレフィンは、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-へキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルナン等が挙げられる。
エチレン又は炭素数3~20のα-オレフィンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
3-メチル-1-ブテン系重合体の融点は、好ましくは260~310℃である。3-メチル-1-ブテン系重合体の融点が、上記範囲内であると、ミリ波レドームに用いられる材料を射出成形等により容易に成形することができ、また、耐熱性がより良好なものとなる。
なお、3-メチル-1-ブテン系重合体の融点とは、示差走査熱量測定器を用い、試験片を窒素流量下(100mL/分)で30℃から320℃まで10℃/分で昇温させ、320℃で5分保持後、-70℃まで10℃/分で降温させた後、-70℃で5分保持後320℃まで10℃/分で昇温させた際のピーク温度を意味し、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
生産効率と、耐熱性とのバランスの観点から、3-メチル-1-ブテン系重合体の融点は、より好ましくは270~305℃、さらに好ましくは280~300℃である。
【0020】
3-メチル-1-ブテン系重合体の溶融粘度は、好ましくは10~1,000Pa・sである。3-メチル-1-ブテン系重合体の溶融粘度が、10Pa・s以上であると、より機械的強度が向上し、1,000Pa・s以下であると、成形時に良好な流動性を得やすくなる。
機械的強度と成形時の流動性とのバランスの観点から、3-メチル-1-ブテン系重合体の溶融粘度は、より好ましくは30~500Pa・s、さらに好ましくは50~300Pa・sである。
なお、3-メチル-1-ブテン系重合体の溶融粘度は、バレル温度320℃、せん断速度1220sec-1(キャピラリー:内径1.0mm×長さ10mm、押出速度10mm/min)の条件下で測定した値を意味し、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
【0021】
耐熱性の観点から、ミリ波レドームに用いられる材料中の3-メチル-1-ブテン系重合体の含有割合は、好ましくは50.0~99.9質量%、より好ましくは60.0~99.9質量%、さらに好ましくは65.0~99.9質量%である。3-メチル-1-ブテンは融点が高いので、3-メチル-1-ブテンの割合を増やすとミリ波レドームの耐熱性が上がる傾向にある。
【0022】
3-メチル-1-ブテン系重合体は、比較的低比重であり、ミリ波レドームの軽量化に寄与し得る。また、3-メチル-1-ブテン系重合体は、焼却時に有害なガスを発生することもない。さらに、不活性雰囲気下での分解生成物は低分子量炭化水素であり、ケミカルリサイクルに適したものである。
【0023】
〈樹脂組成物〉
〈アルキルラジカル捕捉剤>
ミリ波レドームに用いられる材料は、より機械特性を発揮する観点から、上記3-メチル-1-ブテン系重合体及びアルキルラジカル捕捉剤を含有する樹脂組成物であってもよい。
本実施形態において、「アルキルラジカル捕捉剤」とは、3-メチル-1-ブテン系重合体に由来するアルキルラジカルと反応し、その後ラジカルを安定化させる機能を有する化合物を意味し、アルキルラジカルを起点とした連鎖的な主鎖切断反応を抑制する機能を果たす。
アルキルラジカル捕捉剤は、より機械特性を発揮する観点から、アクリルフェノール化合物、及びベンゾフラノン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
アルキルラジカル捕捉剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
(アクリルフェノール化合物)
本実施形態において用いられるアクリルフェノール化合物は、例えば、下記一般式(I)で表すことができる。
【0025】
【化1】
【0026】
一般式(I)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示し、R,R,R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~9のアルキル基を示す。
炭素数1~3のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、及びイソプロピル基が挙げられる。
炭素数1~9のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
炭素数1~9のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、及びn-ノニル基等が挙げられる。
は、好ましくは水素原子である。
は、好ましくは水素原子又はメチル基、より好ましくはメチル基である。
,R,R及びRは、それぞれ独立に、好ましくは炭素数3~8のアルキル基、より好ましくは炭素数5のアルキル基、さらに好ましくは1,1-ジメチルプロピル基である。
【0027】
一般式(I)で表されるアクリルフェノール化合物は、例えば、2,4-ジ-t-アミル-6-〔1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2,4-ジ-t-ブチル-6-〔1-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、及び2-t-ブチル-6-〔(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル〕-4-メチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
アルキルラジカル捕捉剤は市販品を用いてもよく、一般式(I)で表されるアクリルフェノール化合物としては、例えば、住友化学社製の商品名「スミライザーGS」及び商品名「スミライザーGM」等が挙げられる。
【0028】
(ベンゾフラノン化合物)
本実施形態において用いられるベンゾフラノン化合物は、例えば、下記一般式(II)で表すことができる。
【0029】
【化2】
【0030】
一般式(II)中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基を示し、R及びR10はそれぞれ独立に炭素数1~9のアルキル基を示す。
炭素数1~4のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、及びt-ブチル基等が挙げられる。
炭素数1~9のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。炭素数1~9のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、及びn-ノニル基等が挙げられる。
及びRは、それぞれ独立に、好ましくは炭素数1~3のアルキル基、より好ましくはメチル基である。
及びR10は、それぞれ独立に、好ましくは炭素数1~4のアルキル基、より好ましくはt-ブチル基である。
【0031】
一般式(II)で表されるベンゾフラノン化合物は、例えば、5,7-ジ-t-ブチル-3-(3,4-ジ-メチル-フェニル)-3H-ベンゾフラン-2-オン、5,7-ジ(t-ブチル)-3-(3,4-ジ-プロピル-フェニル)-3H-ベンゾフラン-2-オン、及び4-t-ブチル-2-(5-t-ブチル-2-オキソ-3H-ベンゾフラン-3-イル)フェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
アルキルラジカル捕捉剤は市販品を用いてもよく、一般式(II)で表されるベンゾフラノン化合物としては、例えば、BASF社製の商品名「IragnoxHP-136」、Chitec社製の商品名「Revonox501」等が挙げられる。
【0032】
(アルキルラジカル捕捉剤の含有量)
3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中のアルキルラジカル捕捉剤の含有量は、好ましくは0.01~1.00質量部である。
アルキルラジカル捕捉剤の含有量が、0.01質量部以上であると、樹脂組成物の溶融混錬時に、樹脂組成物の物性をより安定して保つことができる。また、溶融成形時に分解ガスが発生し、成形不良となることも抑制できる。
また、アルキルラジカル捕捉剤の含有量が、1.00質量部以下であると、より機械特性に優れたミリ波レドームが得られやすい。また、アルキルラジカル捕捉剤がブリードアウトし、或いは、吸水性が悪化する等の樹脂組成物として求められる物性が損なわれることを抑制できる。
【0033】
溶融混錬時の樹脂組成物の物性をより安定して保つ観点から、3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中のアルキルラジカル捕捉剤の含有量は、より好ましくは0.02質量部以上、さらに好ましくは0.05質量部以上である。
また、樹脂組成物の物性の安定性を保つことと経済性とのバランスの観点、及びより低い比誘電率及び誘電正接を有するミリ波レドームを得る観点から、3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中のアルキルラジカル捕捉剤の含有量は、より好ましくは0.80質量部以下、さらに好ましくは0.70質量部以下である。
これらの観点から、3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中のアルキルラジカル捕捉剤の含有量は、より好ましくは0.02~0.80質量部、さらに好ましくは0.05~0.70質量部である。
なお、2種以上のアルキルラジカル捕捉剤を含有する場合、上記アルキルラジカル捕捉剤の含有量はアルキルラジカル捕捉剤の総含有量を意味する。
【0034】
〈酸化防止剤〉
樹脂組成物は、重合体の安定性確保の観点から、酸化防止剤を含んでもよい。
酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、及びリン系酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
(フェノール系酸化防止剤)
フェノール系酸化防止剤は、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレン-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-t-ブチル-α,α’,α’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレン-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,6-ジ-t-ブチル-4-[4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ]フェノール、3,9-ビス[2-(3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ)-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、4,4’、4’’-(1-メチルプロパニル-3-イリデン)トリス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、6,6’-ジ-t-ブチル-4,4’-ブチリデンジ-m-クレゾール、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピネート、及びベンゼンプロピオン酸3,5-ビス-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-C7-C9分岐アルキルエステル等が挙げられる。
【0036】
フェノール系酸化防止剤は市販品を用いてもよく、例えば、ADEKA社製の「アデカスタブAOシリーズ」、BASFジャパン社製の「イルガノックスシリーズ」等が挙げられる。
【0037】
(リン系酸化防止剤)
リン系酸化防止剤は、例えば、3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチル-フェニル)-4,4’-ビフェニレンホスホナイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル)エチルエステルホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト、ジ-t-ブチル-m-クレジル-ホスホナイト、ジエチル[(3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)メチル]ホスホネート、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、3,9-ビス(オクタデシオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、テトラ-C12-15-アルキル(プロパン-2,2-ジイルビス(4,1-フェニレン))ビス(ホスファイト)、2-エチルヘキシルジフェニルホスファイト、イソデシルジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、及び3,9-ビス[2,4-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノキシ]-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
【0038】
リン系酸化防止剤は市販品を用いてもよく、例えば、ADEKA社製の「アデカスタブPEPシリーズ」「アデカスタブHPシリーズ」、BASFジャパン社製の「イルガフォスシリーズ」、クラリアント社製の商品名「HOSTANOX P-EPQ」等が挙げられる。
【0039】
(イオウ系酸化防止剤)
イオウ系酸化防止剤は、例えば、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス-(β-ラウリル-チオ-プロピオネート)、3,9-ビス(2-ドデシルチオエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
【0040】
(その他の酸化防止剤)
また、樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、及びイオウ系酸化防止剤以外のその他の酸化防止剤を含有してもよい。フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、及びイオウ系酸化防止剤以外の酸化防止剤は、例えば、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0041】
(酸化防止剤の含有量)
3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中の酸化防止剤の含有量は、3-メチル-1-ブテン系重合体の安定性確保の観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.10質量部以上であり、比誘電率及び誘電正接の観点から、好ましくは1.00質量部以下、より好ましくは0.80質量部以下である。すなわち、好ましくは0.01~1.00質量部、より好ましくは0.10~0.80質量である。
なお、樹脂組成物が2種以上の酸化防止剤を含有する場合、上記酸化防止剤の含有量は酸化防止剤の総含有量を意味する。
【0042】
〈その他の添加剤〉
樹脂組成物は、アルキルラジカル捕捉剤、及び酸化防止剤以外のその他の添加剤を含有してもよい。
その他の添加剤は、例えば、制酸剤、充填剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、重合禁止剤、重金属不活性化剤、紫外線吸収剤、核剤、透明化剤、滑剤、蛍光増白剤、発錆防止剤、摺動化剤等が挙げられる。
その他の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
(制酸剤)
溶融混錬する際の残留金属分等から発生する酸成分による劣化を抑制する観点から、樹脂組成物は制酸剤を含むことが好ましい。
制酸剤としては、ラウリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
制酸剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中の制酸剤の含有量は、適宜決定することができ、例えば、0.01~200質量部であってもよい。
【0045】
(帯電防止剤)
帯電防止剤としては、例えば、アルキルスルホン酸ナトリウム塩、アルキルスルホン酸ホスホニウム塩、ステアリン酸のグリセリンエステルである脂肪酸エステルヒドロキシアミン系化合等が挙げられる。
【0046】
3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中の帯電防止剤の含有量は、適宜決定することができ、例えば、5質量部以下であってもよい。
【0047】
(充填剤)
樹脂組成物は、ミリ波レドームの機械特性をより向上させる観点から、充填剤を含んでもよい。
充填剤は、例えば、ガラス繊維、アルミナ繊維、樹脂繊維、炭素繊維、セルロース繊維等の繊維状化合物;マイカ、タルク、モンモリロナイト、平板状アルミ等の平板状化合物;ガラスビーズ、シラスバルーン、アクリルバルーン等の球状化合物;針状チタン酸金属塩、ウォラストナイト、針状シリカ、酸化スズ等の針状化合物;粉末状チタン酸金属塩、微粉化木質チップ、酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ等の粉末状化合物;等が挙げられる。これらの充填剤は、例えばシランカプリング剤等で表面処理していてもよい。また、充填剤の分散性を高めるため相容化剤を用いてもよい。
これらの中でも、ミリ波レドームの機械特性をより向上させる観点から、ガラス繊維が好ましい。
充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中の充填剤の含有量は、適宜決定することができ、例えば、0.01~300質量部であってもよく、0.1~100質量部であってもよい。
【0049】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロネート、4-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)-1-(2-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等のヒンダードアミン系紫外線吸収剤;2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベゾエート系紫外線吸収剤;等が挙げられる。
【0050】
3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中の紫外線吸収剤の含有量は、適宜決定することができ、例えば、0.001~5質量部であってもよく、0.01~1質量部であってもよい。
【0051】
(滑剤)
滑剤としては、一般的に無機微粒子が用いられる。ここで、無機微粒子としては、周期表の1族、2族、4族、6族、7族、8~10族、11族、12族、13族、14族元素の酸化物、水酸化物、硫化物、窒素化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、酢酸塩、燐酸塩、亜燐酸塩、有機カルボン酸塩、珪酸塩、チタン酸塩、硼酸塩及びそれらの含水化合物、それらを中心とする複合化合物、天然鉱物等の粒子が挙げられる。
【0052】
無機微粒子としては、例えば、フッ化チリウム、硼砂(硼酸ナトリウム含水塩)等の1族元素化合物;炭酸マグネシウム、燐酸マグネシウム、酸化マグネシウム(マグネシウア)、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、フッ化マグネシウム、チタン酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウム含水塩(タルク)、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、亜燐酸カルシウム、硫酸カルシウム(石膏)、酢酸カルシウム、テレフタル酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、フッ化カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸亜鉛、チタン酸ランタン、チタン酸ビスマス、チタン酸鉛、炭酸バリウム、燐酸バリウム、硫酸バリウム、亜燐酸バリウム等の2族元素化合物;二酸化チタン(チタニア)、一酸化チタン、窒化チタン、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、一酸化ジルコニウム等の4族元素化合物;二酸化モリブデン、三酸化モリブデン、硫化モリブデン等の6族元素化合物;塩化マンガン、酢酸マンガン等の7族元素化合物、塩化コバルト、酢酸コバルト等の8~10族元素化合物;ヨウ化第一銅等の11族元素化合物;酸化亜鉛、酢酸亜鉛等の12族元素化合物、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウム、アルミノシリケート(珪酸アルミナ、カオリン、カオリナイト)等の13族元素化合物、酸化珪素(シリカ、シリカゲル)、石墨、カーボン、グラファイト、ガラス等の14族元素化合物、カーナル石、カイナイト、雲母(マイカ、キンウンモ)、バイロース鉱等の天然鉱物の微粒子が挙げられる。無機微粒子の平均粒径は、特に制限はないが、好ましくは0.01~3μmである。
【0053】
3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中の滑剤の含有量は、適宜決定することができ、例えば、0.001~5質量部であってもよく、0.005~3質量部であってもよい。
【0054】
〈その他の樹脂〉
樹脂組成物は、3-メチル-1-ブテン系重合体以外の樹脂を含んでもよく、含まなくてもよい。
樹脂組成物は、極性基を含む添加剤の分散性を向上させる観点から、酢酸ビニル-エチレン共重合体、及び部分的に酸化やマレイン酸等の反応性官能基で変性された変性ポリオレフィン等、その他の樹脂を含んでもよい。反応性官能基で変性された変性ポリオレフィンを構成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、炭素数3~20のα-オレフィンを構造単位とするポリオレフィンが挙げられる。炭素数3~20のα-オレフィンとしては、上記〈3-メチル-1-ブテン系重合体〉に記載のものが挙げられる。これらは、単独重合体であっても、共重合体であってもよい。また、これらのポリオレフィンは高密度または低密度であっても良く、メタロセン触媒により重合されていてもよい。
これらの中でも、ポリエチレンまたはポリプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、部分的に酸化やマレイン酸等の反応性官能基で変性された変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、無水マレイン酸変性されたポリプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも1種がさらに好ましい。
【0055】
本発明の効果をより発揮する観点から、3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対する樹脂組成物中の酢酸ビニル-エチレン共重合体、及び部分的に酸化やマレイン酸等の反応性官能基で変性された変性ポリオレフィンの含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0056】
酢酸ビニル-エチレン共重合体、及び部分的に酸化やマレイン酸等の反応性官能基で変性された変性ポリオレフィン以外のその他の樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン-ブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン・ブロック共重合体、スチレン-イソプレン・ブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン・ブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-ランダム共重合体等の芳香族ビニル・モノマーと共役ジエン系モノマーのランダムまたはブロック共重合体;ポリイソプレンゴム;エチレン-プロピレン共重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィンゴム;エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、α-オレフィン-ジエン共重合体、ジエン共重合体、イソブチレン-イソプレン共重合体、イソブチレン-ジエン共重合体等のジエン系共重合体;ノルボルネン系単量体とエチレン又はα-オレフィンの共重合体、ノルボルネン系単量体とエチレンとα-オレフィンの三元共重合体、ノルボルネン系単量体の開環重合体等のノルボルネン系ゴム質重合体、またはこれらを水素添加したもの等が挙げられる。
【0057】
ミリ波レドームの柔軟性、屈曲性、及び耐衝撃性をさらに向上させる観点から、樹脂組成物は、熱可塑性エラストマーを含んでもよい。樹脂組成物が熱可塑性エラストマーを含むと、ミリ波レドームが歪や衝撃を受け難く、ひび割れを生じることを抑制できる。
【0058】
熱可塑性エラストマーは、耐衝撃性の観点から、40℃以下のガラス転移温度(Tg)を有するものが好ましい。ブロック共重合体では、2点以上のTgを有するものもあるが、そのうち一点が40℃以下であれば、好ましく用いることができる。また、その数平均分子量は好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上、さらに好ましくは30,000以上、好ましくは200,000以下である。数平均分子量が10,000以上であれば、より機械的特性に優れ、200,000以下であると製造がより容易になる。また、3-メチル-1-ブテン系重合体との相容性の点から、非極性のもの、すなわち、炭素と水素のみから構成されたものが好ましい。
【0059】
低い比誘電率及び誘電正接を有するミリ波レドームを得る観点から、樹脂組成物は、金属元素量を低減することが好ましい。よって、金属元素量を低減させやすい観点から、熱可塑性エラストマーは、芳香族ビニル・モノマーと共役ジエン系モノマーの共重合体が好ましく、そのブロック共重合体がより好ましい。
また、耐候性向上の観点から、その水素添加物がさらに好ましい。
【0060】
樹脂組成物中の熱可塑性エラストマー等、酢酸ビニル-エチレン共重合体、及び部分的に酸化やマレイン酸等の反応性官能基で変性された変性ポリオレフィン以外のその他の樹脂の含有量は、3-メチル-1-ブテン系重合体100質量部に対して、好ましくは1~100質量部、より好ましくは2~50質量部、さらに好ましくは3~30質量部である。上記範囲であると、耐熱性、耐薬品性等の3-メチル-1-ブテン系重合体の優れた物性が発揮されやすい。
【0061】
〈誘電正接〉
10GHz~300GHzにおける本実施形態のミリ波レドームの誘電正接は、上記誘電正接は、好ましくは0.00001以上、より好ましくは0.00005以上、さらに好ましくは0.00010以上である。伝送損失の低減の観点から、ミリ波レドームの上記誘電正接は、好ましくは0.00100未満、より好ましくは0.00080以下、さらに好ましくは0.00070以下である。すなわち、10GHz~300GHzにおけるミリ波レドームの上記誘電正接は、好ましくは0.00001以上0.00100未満、より好ましくは0.00005~0.00080、さらに好ましくは0.00010~0.00070である。
なお、10GHz~300GHzにおけるミリ波レドームの誘電正接とは、静電容量法、共振法、周波数変化法等、一般的な手法で測定した値を意味する。また、誘電正接は、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
測定波長が10GHz以上50GHz以下の場合は、共振法にて測定することが好ましく、測定波長が50GHz超300GHz以下の場合は、周波数変化法にて測定することが好ましい。
【0062】
〈比誘電率〉
10GHz~300GHzにおける本実施形態のミリ波レドームの比誘電率は、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上である。伝送損失の低減の観点から、ミリ波レドームの上記比誘電率は、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.5以下である。すなわち、10GHz~300GHzにおけるミリ波レドームの上記比誘電率は、好ましくは0.5~5.0、より好ましくは1.5~4.0、さらに好ましくは2.0~3.5である。
なお、ミリ波レドームに用いられる材料の10GHz~300GHzにおける比誘電率とは、静電容量法、共振法、周波数変化法等、一般的な手法で測定した値を意味する。また、比誘電率は、ミリ波レドームに用いられる材料を成形した成形体の比誘電率を意味する。比誘電率は、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
測定波長が10GHz以上50GHz以下の場合は、共振法にて測定することが好ましく、測定波長が50GHz超300GHz以下の場合は、周波数変化法にて測定することが好ましい。
【0063】
〈吸水率〉
本実施形態のミリ波レドームの吸水率は、好ましくは0.05質量%未満、より好ましくは0.03質量%未満、さらに好ましくは0.01質量%未満である。
ミリ波レドームの吸水率が上記範囲内であれば、多湿環境下でも電波透過性がより安定しやすくなり、保管管理も容易となる。
なお、ミリ波レドームに用いられる材料の吸水率とは、ミリ波レドームに用いられる材料を成形した成形体を、JIS K 7209:2000のA法に準拠して測定される値を意味し、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
【0064】
〈荷重たわみ温度〉
より一層優れる耐熱性の観点から、本実施形態のミリ波レドームの荷重たわみ温度は、好ましくは250℃以上、より好ましくは260℃以上、さらに好ましくは270℃以上である。上記荷重たわみ温度は、好ましくは320℃以下、より好ましくは310℃以下、さらに好ましくは300℃以下である。すなわち、上記荷重たわみ温度は、好ましくは250~320℃、より好ましくは260~310℃、さらに好ましくは270~300℃である。
ミリ波レドームの荷重たわみ温度が上記範囲内であれば、使用環境に影響されず熱によるレドームの変形を防止しやすくなる。
なお、ミリ波レドームの荷重たわみ温度とは、ミリ波レドームに用いられる材料を成形した成形体を、JIS K 7191-1:2015のA法に準拠して測定される値を意味し、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
【0065】
<ミリ波レドームの製造方法>
本実施形態のミリ波レドームの製造方法は、公知の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。
本実施形態のミリ波レドームの製造方法は、3-メチル-1-ブテン系重合体を得る工程と、ミリ波レドームを得る工程を有することが好ましい。
また、3-メチル-1-ブテン系重合体以外に、アルキルラジカル捕捉剤及び酸化防止剤やその他添加剤等の他の成分を配合して樹脂組成物を得る場合、後述の樹脂組成物を得る工程を経ることが好ましい。
【0066】
[3-メチル-1-ブテン系重合体を得る工程]
本実施形態において、3-メチル-1-ブテン系重合体を得る方法としては、特に限定されるものではなく、チーグラ・ナッタ触媒、及びメタロセン系触媒等の周知の触媒を用いて製造することができる。3-メチル-1-ブテン系重合体を得る方法は、例えば、特開昭61-103910号公報に記載されているように触媒の存在下に3-メチル-1-ブテンを単独重合、又は、3-メチル-1-ブテンとエチレン又は上記α-オレフィンとを共重合することでパウダーとして得ることができる。
また、3-メチル-1-ブテン系重合体の立体規則性は、アイソタクチックでもシンジオタクチックでもよい。
【0067】
[樹脂組成物を得る工程]
樹脂組成物を得る工程とは、3-メチル-1-ブテン系重合体及び他の成分を配合し、混合することにより、樹脂組成物を得る工程である。配合方法は特に限定されず、二軸混練押出機を用いて溶融混練する方法等を用いることができる。
なお、3-メチル-1-ブテン系重合体以外の他の成分を配合しない場合、樹脂組成物を得る工程を経る必要はない。
他の成分としては、上記[樹脂組成物]に記載のものと同様のものが挙げられ、例えば、アルキルラジカル捕捉剤、酸化防止剤、制酸剤、充填剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、重合禁止剤、重金属不活性化剤、紫外線吸収剤、核剤、透明化剤、滑剤、蛍光増白剤、発錆防止剤、摺動化剤等が挙げられる。
【0068】
〈溶融混錬条件〉
溶融混錬条件は、特に限定されるものではないが、溶融混錬機の内部に不活性気体を注入して溶融混錬する、又は、溶融混錬機の内部を減圧脱気して溶融混錬することが好ましい。
酸素による樹脂組成物の物性低下を抑制し、より良好な機械特性を有するミリ波レドームを製造するために、不活性雰囲気下又は低酸素状態で溶融混錬することが好ましい。
ここで、本実施形態において、「低酸素状態」とは、溶融混錬機の内部を減圧脱気することで、減圧脱気前に比べて酸素濃度が低くなった状態である。「低酸素状態」において、溶融混錬機内部の酸素濃度は、5%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。また、上記酸素濃度の測定は、隔膜型ガルバニ式等の酸素濃度計よって行う値とする。
【0069】
溶融混錬機の内部に不活性気体を注入して溶融混錬する手法は、例えば、溶融混錬機の内部に不活性気体を注入しながら各成分を投入して溶融混錬を行ってもよく、溶融混錬機の内部に各成分を投入した後、不活性気体を注入して溶融混錬を行ってもよい。また、溶融混錬している間、不活性気体は、溶融混錬機内部へ注入され続けてもよい。
不活性気体の注入方法は、各溶融混錬機に備わっている設備に応じて行うことができ、例えば、溶融混錬機に備え付けられている不活性気体等の気体の供給部から行ってもよく、溶融混錬機に備え付けられている各成分の供給部から行ってもよく、溶融混錬機に備え付けられているガス抜きベントから行ってもよい。
不活性気体の供給部から溶融混錬を行う加熱部までの全体に不活性気体を注入して溶融混錬することができれば、注入方法に制限はない。
不活性気体としては、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、二酸化炭素ガス等が挙げられ、入手性及び汎用性が高い観点から、窒素ガスが好ましい。
【0070】
溶融混錬機の内部を減圧脱気して溶融混錬する手法は、例えば、溶融混錬機の内部に各成分を投入した後、溶融混錬機の内部を減圧脱気して溶融混錬を行ってもよい。また、溶融混錬している間、溶融混錬機内部の減圧脱気は、断続的又は連続的に行われてもよい。
溶融混錬機の内部を減圧脱気する方法は、各溶融混錬機に備わっている設備に応じて行うことができ、例えば、真空ベントから行ってもよい。
減圧脱気を行う場合、溶融混錬機の内部は、例えば、0.1kPa以上50kPa以下の真空状態とすることができる。
【0071】
溶融混錬機は、溶融混錬機の内部に不活性気体を注入して溶融混錬することができる設備、又は、溶融混錬機の内部を減圧脱気して溶融混錬することができる設備を備える、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等を用いてもよい。
【0072】
溶融混錬温度は、好ましくは300~380℃である。
溶融混錬温度が300℃以上であると、3-メチル-1-ブテン系重合体を十分に溶融することができ、添加剤等を分散させ易くなる。溶融混錬温度が380℃以下であると、3-メチル-1-ブテン系重合体や添加剤の熱による分解を抑制することができる。
3-メチル-1-ブテン系重合体全体に、十分に添加剤を分散させる観点から、溶融混錬温度は、より好ましくは300℃以上、さらに好ましくは310℃以上である。
また、原料が著しく分解することを抑制する観点から、溶融混錬温度は、より好ましくは380℃以下、さらに好ましくは360℃以下である。
【0073】
溶融混錬時間は、混錬装置の大きさ等に応じて調整することができる。例えば、1~15分間であってもよいが、当該溶融混錬時間の数値範囲に限定されない。また、本実施形態において「溶融混錬時間」は、バッチ式混錬機ではミキサーを回転している時間、連続押出式混錬機の場合には装置内における原料の滞留時間を示す。
【0074】
溶融混錬時のミキサー回転数は、80rpm以上又は100rpm以上であってってもよく、300ppm以下又は250ppm以下であってもよい。
溶融混錬後、樹脂組成物は、溶融混錬機から取り出され、冷却される。
【0075】
[ミリ波レドームを得る工程]
本実施形態において、ミリ波レドームを得る工程とは、ミリ波レドームに用いられる材料を形成しミリ波レドームを得る工程である。
上記材料からミリ波レドームを形成する方法は、例えば、射出成形、押出成形、圧空成形、熱プレス成形等が挙げられる。ミリ波レドームの形状は、レーダーを構成するアンテナ等を覆うことができれば特に制限されず、曲面部や角部等を有していてもよく、公知の形状を採用することができる。ミリ波レドームの形状は、例えば、半球型や直方体状であってもよく、ミリ波レドームの全体にわたって同じ厚みであってもよく、ミリ波レドームの内部に仕切りを有していてもよい。
【0076】
<ミリ波レドームの用途>
本実施形態のミリ波レドームは、低い比誘電率及び誘電正接を有すると共に、電波透過性及び耐熱性に優れるので、数十GHz帯での使用であっても伝送ロスが生じ難い。よって、本実施形態のミリ波レドームは、近距離無線通信用途、自動車等の車載レーダー用途、携帯電話、PHS、スマートフォン、タブレット(タブレット型コンピューター)、モバイルコンピューター(モバイルPC)、携帯情報端末(PDA)等に用い得る。
【実施例0077】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
<測定及び評価方法>
以下の方法により、各種物性を測定又は評価した。
【0079】
[コモノマーに由来する構造単位の含有割合]
製造例1及び2で得られた共重合体(3-メチル-1-ブテン系重合体)中の3-メチル-1-ブテン以外のα-オレフィン(コモノマー)に由来する構造単位の含有割合を、分析装置としてFT-IR(Ailent Techonolies社製、装置名「cary 600 series FTIR spectrometer」)を用い、ATR法にてIR測定を行い、次のとおり求めた。
3-メチル-1-ブテン単独重合体の主鎖メチレン基由来の変角振動1,461cm-1のピーク面積と、α-オレフィンの単独重合体の側鎖メチレン基由来の変角振動727cm-1のピーク面積との比、及びそれぞれの樹脂の添加割合から検量線を作成した。製造例1で得られた共重合体(A)及び製造例2で得られた共重合体(B)についてそれぞれ上記IR測定を行い、得られた測定値を上記検量線に挿入し、3-メチル-1-ブテン以外のα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合を求めた。
【0080】
[融点]
製造例1~3で得られた共重合体又は単独重合体(3-メチル-1-ブテン系重合体)を、示差走査熱量測定器(TA Instrument社製「DSC25」)を用い、窒素流量下(100mL/分)で30℃から320℃まで10℃/分で昇温させ、320℃で5分保持後、-70℃まで10℃/分で降温させた。-70℃で5分保持後320℃まで10℃/分で昇温させた際のピーク温度を測定し、その温度を融点とした。
【0081】
[溶融粘度]
製造例1~3で得られた共重合体又は単独重合体(3-メチル-1-ブテン系重合体)の溶融粘度(Pa・s)を、キャピラリーレオメーター(株式会社東洋精機製作所製「キャピログラフィー 1C」)を用い、バレル温度320℃、せん断速度1220sec-1(キャピラリー:内径1.0mm×長さ10mm、押出速度10mm/min)の条件下で測定した。
【0082】
[比重]
実施例1~3で得られた樹脂組成物、及び比較例1~3で用いた樹脂を、プレス成形して、試験片(長さ:40mm、幅:10mm、厚さ:4mm)を作製した。その試験片を用いて、JIS K 7112:1999のA法に準拠して比重を測定した。
【0083】
[吸水率]
実施例1~3で得られた樹脂組成物、及び比較例1~3で用いた樹脂をプレス成形して、試験片(長さ:60mm、幅:60mm、厚さ:1mm)を作製した。その試験片を用いて、JIS K 7209:2000のA法に準拠して吸水率を測定した。
【0084】
[荷重たわみ温度]
実施例1~3で得られた樹脂組成物、及び比較例1~3で用いた樹脂を、後述の実施例1~3、及び比較例1~3に記載のそれぞれの条件にて射出成形して、試験片(長さ:80mm、幅:10mm、厚さ:4mm)を作製した。その試験片を用いて、荷重たわみ温度試験機(株式会社東洋精機製作所製「HDTテスターS3M」)により、JIS K 7191-1:2015のA法に準拠し、荷重1.80MPa、昇温速度120℃/hの条件下で行い、下記基準により評価した。
○:荷重たわみ温度が250℃以上のもの
×:荷重たわみ温度が250℃未満のもの
【0085】
[比誘電率及び誘電正接]
実施例1~3で得られた樹脂組成物、及び比較例1~3で用いた樹脂を、後述の実施例1~3、及び比較例1~3に記載のそれぞれの条件にて射出成形して、試験片(長さ:30mm、幅:30mm、厚さ:1mm)を作製した。
上記試験片を用いて、ミリ波モジュール(Virginia Diodes Inc製,WR10 67GHz-115GHz)を用い、周波数変化法にて、測定周波数100GHzにおける比誘電率及び誘電正接を測定した。
【0086】
[触媒の調整]
チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム47.6g(500mmol)、デカン250mL及び2-エチルヘキシルアルコール234mL(1.5mo1)を130℃で2時間加熱反応を行い均一溶液とした。得られた均一溶液を室温(23℃)に冷却した後、-20℃に保持された四塩化チタン2L(18mol)中に1時間に渡って滴下した。滴下終了後、混合液の温度を2時間かけて90℃に昇温し、90℃に達したところで安息香酸エチル11.4mL(80mmol)を添加し、2時間同温度にて攪拌しながら保持した。2時間の反応終了後、静置してから、上澄み液を除去した。ここにデカン及びヘキサンを加え、固体成分を3回洗浄した後、2Lの四塩化チタンにて再懸濁させ、再び90℃で2時間、加熱反応を行った。反応終了後、デカン及びヘキサンを用いて再び静置、上澄み液の除去を繰り返し、洗液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなる迄充分洗浄した。得られた懸濁成分を室温下で6時間減圧乾燥して、チタン触媒成分を得た。
得られたチタン触媒成分の組成は、チタン4.0質量%、塩素56.0質量%、マグネシウム17.0質量%、安息香酸エチル10.4質量%、並びにデカン及びヘキサンからなる炭化水素系溶媒12.6質量%であった。
【0087】
[製造例1]
共重合体(A)の製造
20Lのステンレス製オートクレーブに、3-メチル-1-ブテン8.0kg、1-デセン0.6kg、1mol/Lの濃度になるようにヘキサンで希釈されたトリエチルアルミニウム50g、上記[触媒の調整]で製造したチタン触媒成分4gを添加し、70℃で4時間重合反応を実施した。重合反応中、水素を40mL/分の速度で連続的に供給した。4時間後に3-メチル-1-ブタノール200gを圧入し、反応を停止して余剰の未反応モノマーを追い出した。次いでノルマルヘプタン2kgを導入し、60℃で30分間攪拌させた後に、加圧ろ過器で固形分を濾別した。この操作を2回繰り返した後、溶媒をノルマルヘプタン2kgから2-プロパノール3kgに変えて同じ操作を2回繰り返した。
得られた粗ポリマー7.7kgを、攪拌機を備えた50Lの容器に入れ、その後、1mol/Lの塩酸8kg及び2-プロパノール16kgを加え、1時間攪拌した。この懸濁液を減圧濾過で濾別し、2-プロパノール10kgで洗い流した。この粗ポリマーを、攪拌機を備えた50Lの容器に入れ、その後、2-プロパノール20kgを加え、1時間攪拌した。この懸濁液を減圧濾過で濾別し、2-プロパノール10kgで洗い流した。得られた洗浄後のポリマーを80℃で2日間減圧乾燥させることで3-メチル-1-ブテンと1-デセンの共重合体である、共重合体(A)を3.2kg得た。
得られた共重合体(A)について、上述の測定を行ったところ、融点は286℃であり、溶融粘度は104Pa・sであった。また、共重合体(A)における、コモノマーである1-デセンに由来する構造単位の含有割合は1.1モル%であった。
【0088】
[製造例2]
共重合体(B)の製造
1-デセン0.6kgを1-デセン3.6kgに変更した以外は製造例1と同様の操作を行い、3-メチル-1-ブテンと1-デセンの共重合体である、共重合体(B)2.8kg得た。
得られた共重合体(B)について、上述の測定を行ったところ、融点は281℃であり、溶融粘度は99Pa・sであった。また、共重合体(B)における、コモノマーである1-デセンに由来する構造単位の含有割合は6.4モル%であった。
【0089】
[製造例3]
単独重合体(C)の製造
1-デセン0.6kgを加えなかった以外は製造例1と同様の操作を行い、3-メチル-1-ブテンの単独重合体である、単独重合体(C)を3.3kg得た。
得られた単独重合体(C)について、上述の測定を行ったところ、融点は305℃であり、溶融粘度は126Pa・sであった。
【0090】
[実施例1]
(1)樹脂組成物の製造
製造例1で得た共重合体(A)100質量部に、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](「AO-60」、ADEKA社製)0.2質量部、3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(「PEP-36」、ADEKA社製)0.2質量部、2,4-ジ-t-アミル-6-[1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート(「スミライザーGS」、住友化学社製)0.1質量部、ステアリン酸亜鉛(制酸剤)0.25質量部、ガラス繊維(「ECS 03 T-480H」、日本電気硝子株式会社製)30質量部、及び無水マレイン酸変性ポリプロピレン(「PMA H1000P」、東洋紡績株式会社製)5質量部をドライブレンドした後、二軸混練押出機「KZW15-45」(株式会社テクノベル製)を用いてシリンダー温度320℃で溶融混錬し、ペレット状の樹脂組成物(M1)を得た。
【0091】
(2)ミリ波レドームの製造
得られたペレット状の樹脂組成物(M1)を、住友電動射出成形機「SE18DU」(SUMITOMO Heavy Industries, Ltd.社製)を用いて、窒素雰囲気下にて40rpm、シリンダー温度310℃の条件で溶融混錬し、射出圧力45MPa、金型内保持時間33秒、金型温度160℃の条件で射出成形して、図1に示す概略斜視図及び概略断面図で表される形状(長さL:80mm、幅W:130mm、高さH:40mm、厚さT:10mm)のミリ波レドームを得た。
実施例1において、上述の評価方法に従い評価した結果を表1に示す。
【0092】
[実施例2]
実施例1において、共重合体(A)の替わりに製造例2で得た共重合体(B)を用いた以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物(M2)及びミリ波レドームを作製した。
実施例2において、上述の評価方法に従い評価した結果を表1に示す。
【0093】
[実施例3]
実施例1において、共重合体(A)の替わりに製造例3で得た単独重合体(C)を用いた以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物(M3)及びミリ波レドームを作製した。
実施例3において、上述の評価方法に従い評価した結果を表1に示す。
【0094】
[比較例1]
実施例1において、樹脂組成物(M1)の代わりに、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)「XAREC(登録商標)C132」(出光興産株式会社製)を用い、溶融混錬時及び射出成形時のシリンダー温度を280℃、金型温度を80℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法でミリ波レドームを作製した。
比較例1において、上述の評価方法に従い評価した結果を表1に示す。
【0095】
[比較例2]
実施例1において、樹脂組成物(M1)の代わりに、ポリメチルペンテン(TPX)「T730」(三井化学ファイン株式会社製)を用い、溶融混錬時及び射出成形時のシリンダー温度を260℃、金型温度を70℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法でミリ波レドームを作製した。
比較例2において、上述の評価方法に従い評価した結果を表1に示す。
【0096】
[比較例3]
実施例1において、樹脂組成物(M1)の代わりに、ポリブチレンテレフタレート(PBT)「ジュラネックス(登録商標)PBT 3300」(ポリプラスチックス株式会社製)を用い、溶融混錬時及び射出成形時のシリンダー温度を260℃、金型温度を80℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でミリ波レドームを作製した。
比較例3において、上述の評価方法に従い評価した結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
実施例1~3は、低い比誘電率及び誘電正接を示しており電波透過性に優れ、荷重たわみ温度も高いことから耐熱性にも優れることがわかる。一方、比較例1は、荷重たわみ温度が高く耐熱性に優れるものの、誘電正接が高く電波透過性に劣る。比較例2は、誘電正接が低く電波透過性に優れるものの、荷重たわみ温度が低く耐熱性に劣る。比較例3は、耐熱性及び電波透過性両方ともに劣る。
表1から分かるように本実施形態のミリ波レドームは、低い比誘電率及び誘電正接を有すると共に、電波透過性及び耐熱性に優れる。特に、耐熱性にも優れるため、小型化も可能である。さらに、表1の比重及び吸水率の評価から分かるように、実施例1~3は軽量で低吸水である。そのため、本実施形態のミリ波レドームは、軽量で、雨などの外的要因に左右されず、安定した電波透過性を示すことができると考えられる。
【符号の説明】
【0099】
L:長さ
W:幅
H:高さ
T:厚さ
図1