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特開2024-95452混合触媒およびジメチルエーテルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095452
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】混合触媒およびジメチルエーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/46 20060101AFI20240703BHJP
   C07C 41/01 20060101ALI20240703BHJP
   C07C 43/06 20060101ALI20240703BHJP
   B01J 29/40 20060101ALN20240703BHJP
   B01J 23/60 20060101ALN20240703BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240703BHJP
【FI】
B01J29/46 Z
C07C41/01
C07C43/06
B01J29/40 Z
B01J23/60 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212752
(22)【出願日】2022-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】岩野 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】藤川 貴志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 尋子
(72)【発明者】
【氏名】馬場 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】川又 勇来
(72)【発明者】
【氏名】李 悠
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 將行
(72)【発明者】
【氏名】平野 潤也
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA05A
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC69A
4G169BC72A
4G169BC75A
4G169BD07A
4G169BD07B
4G169CB02
4G169CB71
4G169CC27
4G169CC29
4G169DA06
4G169EA01X
4G169EA02X
4G169EA02Y
4G169EB18Y
4G169EE09
4G169ZA11A
4G169ZA11B
4G169ZD07
4G169ZE01
4G169ZF05A
4G169ZF05B
4H006AA02
4H006AC43
4H006BA05
4H006BA07
4H006BA30
4H006BA71
4H006BE20
4H006BE40
4H006GN24
4H006GP01
4H039CA61
4H039CL25
(57)【要約】
【課題】高い耐水性を有すると共に、ジメチルエーテルの高収率および高選択性を達成できる混合触媒およびそれを用いたジメチルエーテルの製造方法を提供する。
【解決手段】混合触媒は、CuおよびZnを含むメタノール合成触媒とゼオライトを含む脱水触媒とを有し、前記ゼオライトは、Pを含有し、前記ゼオライトに含まれるPの質量は、前記ゼオライトの質量に対して、3.0質量%以上15.0質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuおよびZnを含むメタノール合成触媒とゼオライトを含む脱水触媒とを有し、
前記ゼオライトは、Pを含有し、
前記ゼオライトに含まれるPの質量は、前記ゼオライトの質量に対して、3.0質量%以上15.0質量%以下である、混合触媒。
【請求項2】
前記ゼオライトは、MFI型ゼオライトである、請求項1に記載の混合触媒。
【請求項3】
前記メタノール合成触媒は、酸化銅、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、および酸化ジルコニウムを含有する、請求項1に記載の混合触媒。
【請求項4】
前記ゼオライトは、貴金属を担持する、請求項1に記載の混合触媒。
【請求項5】
前記貴金属は、Ptのみである、請求項4に記載の混合触媒。
【請求項6】
前記貴金属は、Pdのみである、請求項4に記載の混合触媒。
【請求項7】
前記貴金属は、PtおよびPdを含む、請求項4に記載の混合触媒。
【請求項8】
前記ゼオライトに担持されるPtの質量およびPdの質量の合計質量に対するPdの質量の比は、0.70以下である、請求項7に記載の混合触媒。
【請求項9】
前記ゼオライトに担持される前記貴金属の質量は、前記ゼオライトの質量に対して、0.1質量%以上10.0質量%以下である、請求項4に記載の混合触媒。
【請求項10】
前記メタノール合成触媒と前記脱水触媒とは、互いに独立して存在し、
前記メタノール合成触媒および前記脱水触媒は、ともに粉粒体または成形体である、請求項1に記載の混合触媒。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の混合触媒を還元処理する還元処理工程と、
前記還元処理工程で還元処理した混合触媒に、一酸化炭素と水素とを供給する供給工程と、
前記還元処理した混合触媒によって、前記供給工程で供給された一酸化炭素および水素を反応させ、ジメチルエーテルを合成する合成工程と
を有する、ジメチルエーテルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、混合触媒およびジメチルエーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ジメチルエーテルは様々な分野で用いられている。それに伴い、ジメチルエーテルを合成する方法が盛んに検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、合成ガスからジメチルエーテルを製造するための混合触媒が記載されている。混合触媒は、所定の元素を含むメタノール合成触媒およびガンマアルミナにアルミニウムフォスフェイトを混合して得られる脱水触媒で構成される。特許文献1では、2種類の固体酸触媒物質を混合することで、脱水触媒を強酸点および弱酸点を含む構成とし、脱水触媒の見かけの酸強度を下げて、ジメチルエーテルを製造している。
【0004】
しかしながら、特許文献1の脱水触媒には多くのアルミナが含まれていることから、メタノール合成触媒から副生された水によって、脱水触媒が劣化する。そのため、特許文献1の混合触媒について、長期安定性が低く、時間の経過と共にジメチルエーテルの生成量は低下する。また、特許文献1の脱水触媒には、多くの強酸点が存在する。そのため、脱水触媒で生成されたジメチルエーテルは、脱水触媒によってさらに酸化されて、オレフィンになることがある。このように、特許文献1の混合触媒は、ジメチルエーテルに加えてオレフィンを生成することから、ジメチルエーテルの収率は低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5432434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、高い耐水性を有すると共に、ジメチルエーテルの高収率および高選択性を達成できる混合触媒およびそれを用いたジメチルエーテルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] CuおよびZnを含むメタノール合成触媒とゼオライトを含む脱水触媒とを有し、前記ゼオライトは、Pを含有し、前記ゼオライトに含まれるPの質量は、前記ゼオライトの質量に対して、3.0質量%以上15.0質量%以下である、混合触媒。
[2] 前記ゼオライトは、MFI型ゼオライトである、上記[1]に記載の混合触媒。
[3] 前記メタノール合成触媒は、酸化銅、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、および酸化ジルコニウムを含有する、上記[1]または[2]に記載の混合触媒。
[4] 前記ゼオライトは、貴金属を担持する、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の混合触媒。
[5] 前記貴金属は、Ptのみである、上記[4]に記載の混合触媒。
[6] 前記貴金属は、Pdのみである、上記[4]に記載の混合触媒。
[7] 前記貴金属は、PtおよびPdを含む、上記[4]に記載の混合触媒。
[8] 前記ゼオライトに担持されるPtの質量およびPdの質量の合計質量に対するPdの質量の比は、0.70以下である、上記[7]に記載の混合触媒。
[9] 前記ゼオライトに担持される前記貴金属の質量は、前記ゼオライトの質量に対して、0.1質量%以上1.0質量%以下である、上記[4]~[8]のいずれか1つに記載の混合触媒。
[10] 前記メタノール合成触媒と前記脱水触媒とは、互いに独立して存在し、前記メタノール合成触媒および前記脱水触媒は、ともに粉粒体または成形体である、上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の混合触媒。
[11] 上記[1]~[10]のいずれか1つに記載の混合触媒を還元処理する還元処理工程と、前記還元処理工程で還元処理した混合触媒に、一酸化炭素と水素とを供給する供給工程と、前記還元処理した混合触媒によって、前記供給工程で供給された一酸化炭素および水素を反応させ、ジメチルエーテルを合成する合成工程とを有する、ジメチルエーテルの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、高い耐水性を有すると共に、ジメチルエーテルの高収率および高選択性を達成できる混合触媒およびそれを用いたジメチルエーテルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0010】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、混合触媒を構成する脱水触媒にゼオライトを用い、さらにゼオライトに所定量のPを含有することによって、混合触媒が高い耐水性を有すると共にジメチルエーテルの高収率および高選択性を達成できることを見出し、かかる知見に基づき本開示を完成させるに至った。
【0011】
本実施形態の混合触媒は、CuおよびZnを含むメタノール合成触媒とゼオライトを含む脱水触媒とを有し、ゼオライトは、Pを含有し、ゼオライトに含まれるPの質量は、ゼオライトの質量に対して、3.0質量%以上15.0質量%以下である。
【0012】
上記のように、実施形態の混合触媒は、メタノール合成触媒および脱水触媒を有する。
【0013】
混合触媒を構成するメタノール合成触媒は、CuおよびZnを含むCu-Zn系触媒であり、一酸化炭素および水素からメタノールを合成する。主成分としてCuおよびZnを含むメタノール合成触媒が酸化銅、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、および酸化ジルコニウムを含有する触媒であると、一酸化炭素および水素(合成ガス)からメタノールを効率的に生成できる。
【0014】
また、メタノール合成触媒には、酸化ガリウム、酸化インジウムがさらに含まれてもよい。これら物質がメタノール合成触媒に含まれると、酸化銅、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、および酸化ジルコニウムの分散性が向上する。
【0015】
混合触媒を構成する脱水触媒は、ゼオライトを含み、メタノール合成触媒で生成したメタノールを合成原料とする反応を行う。この反応として、脱水触媒に含まれるゼオライトは、メタノールからエーテル、特にジメチルエーテルを合成する。また、ゼオライトは、ゼオライト骨格を有することから高い耐水性を有し、メタノール合成触媒で副生した水による劣化を抑制できる。そのため、ゼオライトを含む脱水触媒、脱水触媒を含む混合触媒について、長期安定性に優れ、長寿命である。このような合成効率および耐水性を向上する観点から、脱水触媒に含まれるゼオライトの質量(M)は、脱水触媒の質量(M2)に対して、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%すなわち脱水触媒がゼオライトのみで構成されることが最も好ましい。
【0016】
脱水触媒に含まれるゼオライトの種類は、MFI型ゼオライトであることが好ましい。MFI型ゼオライトは、ベータ型ゼオライトに比べて細孔径が小さいため、エーテルのうちジメチルエーテルを効率的に合成する。
【0017】
また、ゼオライトは、P(リン)を含有する。ゼオライトがPを含有すると、ゼオライトの酸点(固体酸点)が増加すると共に弱酸点に変化する。ゼオライトがPを含有する場合、下記式(1)に示すように、ゼオライトの表面に存在する、Siと結合するO(酸素)およびAlと結合するOに対して、Pが結合すると推測される。
【0018】
【化1】
【0019】
ゼオライトに含まれるPの質量(M)は、ゼオライトの質量(M)に対して、3.0質量%以上であり、4.5質量%以上であることが好ましい。上記比(M/M)×100が3.0質量%以上であると、ゼオライトの酸点を弱酸化できることから、ゼオライトによってメタノールから生成されたジメチルエーテルがゼオライトによってさらに酸化されてオレフィンになることを抑制できるため、ゼオライトは高収率および高選択性でメタノールをジメチルエーテルに合成できる。その結果、混合触媒はジメチルエーテルの高収率および高選択性を達成できる。
【0020】
また、ゼオライトに含まれるPの質量(M)は、ゼオライトの質量(M)に対して、15.0質量%以下であり、7.5質量%以下であることが好ましい。上記比(M/M)×100が15.0質量%以下であると、多孔質構造を有するゼオライトについて、Pの含有量の増加に起因するゼオライトの表面積の低下を抑制できるため、混合触媒はジメチルエーテルを高収率で合成できる。
【0021】
ゼオライトにおけるPの含有の有無、およびPの含有割合は、ICP-OES(誘導結合プラズマ発光分光分析)で測定することができる。
【0022】
また、脱水触媒を構成するゼオライトは、貴金属を担持することが好ましい。貴金属を担持するゼオライトは、メタノールを効率的に反応することができるため、混合触媒で合成する所望の合成物の収率をさらに向上できる。
【0023】
ゼオライトに担持される貴金属としては、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)などの白金族元素であることが好ましい。貴金属は、1種でも2種以上でもよい。貴金属が2種以上の場合、ゼオライトに担持されている貴金属の状態は、特に限定されるものではなく、例えば、各貴金属が金属単体で混在してもよいし、合金化してもよいし、金属単体と合金とが混在してもよい。
【0024】
ゼオライトに担持される貴金属の質量(M)は、ゼオライトの質量(M)に対して、下限値が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、上限値が、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下である。上記比((M)/(M))×100が0.1質量%以上であると、メタノールの反応をさらに向上できる。また、上記比((M)/(M))×100が10.0質量%以下であると、貴金属の凝集に起因する活性金属の分散性の低下を抑制し、メタノールの効率的な反応を維持しながら、材料コストの上昇を抑制できる。
【0025】
ゼオライトに担持される貴金属は、Ptのみでもよいし、Pdのみでもよいし、PtおよびPdを含んでもよい。なかでも、メタノールを効率的に反応する観点から、ゼオライトに担持される貴金属は、PtおよびPdであることが好ましく、Ptのみであることがより好ましい。ゼオライトに担持されているPtおよびPdの状態について、金属単体のPtおよび金属単体のPdが混在してもよいし、PtおよびPdが合金化してもよいし、PtおよびPdの少なくとも一方の金属単体とPtおよびPdの合金とが混在してもよい。
【0026】
ゼオライトがPtおよびPdを担持する場合、ゼオライトに担持されるPtの質量(MPt)およびPdの質量(MPd)の合計質量(MPt+MPd)に対するPdの質量(MPd)の比(MPd/(MPt+MPd))について、上限値は、好ましくは0.70以下、より好ましくは0.60以下、さらに好ましくは0.50以下である。また、上記比(MPd/(MPt+MPd))の下限値は、例えば0.01以上であり、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.25以上である。上記比(MPd/(MPt+MPd))が0.70以下であると、メタノールの反応をさらに向上できる。
【0027】
また、ゼオライトに担持されるPtの質量(MPt)およびPdの質量(MPd)の合計質量(MPt+MPd)は、ゼオライトの質量(M)に対して、下限値が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、上限値が、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以下である。上記比((MPt+MPd)/(M))×100が0.1質量%以上であると、メタノールの反応をさらに向上できる。また、上記比((MPt+MPd)/(M))×100が1.0質量%以下であると、PtおよびPdの凝集に起因する活性金属の分散性の低下を抑制し、メタノールの効率的な反応を維持しながら、材料コストの上昇を抑制できる。
【0028】
また、ゼオライトに担持されるPtの質量(MPt)は、ゼオライトの質量(M)に対して、下限値が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、上限値が、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下である。上記比((MPt)/(M))×100が0.1質量%以上であると、メタノールの反応をさらに向上できる。また、上記比((MPt)/(M))×100が10.0質量%以下であると、Ptの凝集に起因する活性金属の分散性の低下を抑制し、メタノールの効率的な反応を維持しながら、材料コストの上昇を抑制できる。
【0029】
ゼオライトにおける貴金属の担持の有無、貴金属の種類、上記比は、ICP-OESで測定することができる。
【0030】
また、ゼオライトに含まれる、Alのモル数に対するSiOのモル数の比は、20以上100以下であることが好ましい。脱水触媒を構成するゼオライトは、アルミノケイ酸塩である。ゼオライトのゼオライト骨格を構成するケイ酸塩中のケイ素原子の一部をアルミニウム原子にかえることによって、アルミニウム原子が酸点となるため、ゼオライトは固体酸としての機能を発現する。
【0031】
上記モル比(SiOのモル数/Alのモル数)が100以下であると、ゼオライトの酸点が増加するため、メタノールの反応をさらに向上できる。また、上記モル比(SiOのモル数/Alのモル数)が20以上であると、メタノールの効率的な反応を維持しながら、所定量のPを含有するゼオライトを容易に製造できる。
【0032】
ゼオライトの製造容易性の観点から、上記モル比(SiOのモル数/Alのモル数)は、好ましくは20以上、より好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上である。また、メタノールの反応効率の観点から、上記モル比(SiOのモル数/Alのモル数)は、好ましくは100以下、より好ましくは60以下、さらに好ましくは50以下である。
【0033】
上記モル比(SiOのモル数/Alのモル数)は、ICP-OESで測定することができる。
【0034】
また、メタノール合成触媒の質量(M1)と脱水触媒の質量(M2)との合計質量に対するメタノール合成触媒の質量(M1)の比について、下限値は、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.20以上であり、上限値は、好ましくは0.90以下、より好ましくは0.85以下、さらに好ましくは0.80以下である。上記比(M1/(M1+M2))が上記範囲内であると、混合触媒は一酸化炭素および水素から所望の合成物への収率をさらに向上できる。
【0035】
また、メタノール合成触媒と脱水触媒とが混合されてなる混合触媒について、メタノール合成触媒と脱水触媒とは、互いに独立して存在し、メタノール合成触媒および脱水触媒は、ともに粉粒体または成形体であることが好ましい。混合触媒では、メタノール合成触媒と脱水触媒とが一体化(混然一体化)していないことが好ましい。メタノール合成触媒および脱水触媒の状態としては、粉粒体(粉体。例えば粒径10-9~10-4m。)でもよいし、粉粒体よりも粒径の大きい顆粒でもよいが、メタノール合成触媒がメタノール合成触媒を含む成形体であり、かつ、脱水触媒が脱水触媒を含む成形体であると、一酸化炭素および水素から所望の合成物への収率をさらに向上できる。すなわち、混合触媒は、メタノール合成触媒を含む成形体と脱水触媒を含む成形体との混合物であることが好ましい。
【0036】
メタノール合成触媒を含む成形体について、成形体に含まれるメタノール合成触媒の含有割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。上記含有割合が80質量%以上であると、一酸化炭素および水素からメタノールを効率よく合成できる。なお、成形体に含まれるメタノール合成触媒の含有割合は100質量%、すなわち成形体はメタノール合成触媒のみで構成されてもよい。また、上記含有割合は、好ましくは98質量%以下、より好ましくは96質量%以下、さらに好ましくは94質量%以下である。上記含有割合が98質量%以下であると、一酸化炭素および水素からメタノールへの効率的な合成を維持しながら、成形体の成形性や機械的強度を向上できる。
【0037】
メタノール合成触媒を含む成形体は、メタノール合成触媒に加えて、成形性や機械的強度を向上する各種添加材を含んでもよい。各種添加材として、例えば、グラファイト、カーボンブラックなどの成形バインダーが挙げられる。
【0038】
脱水触媒を含む成形体について、成形体に含まれる脱水触媒の含有割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。上記含有割合が70質量%以上であると、メタノールから所望の合成物を効率よく合成できる。なお、成形体に含まれる脱水触媒の含有割合は100質量%、すなわち成形体は脱水触媒のみで構成されてもよい。また、上記含有割合は、好ましくは98質量%以下、より好ましくは96質量%以下、さらに好ましくは94質量%以下である。上記含有割合が98質量%以下であると、メタノールから所望の合成物への効率的な合成を維持しながら、成形体の成形性や機械的強度を向上できる。
【0039】
脱水触媒を含む成形体は、脱水触媒に加えて、成形性や機械的強度を向上する各種添加材を含んでもよい。各種添加材として、例えば、各種粘土バインダー、アルミナ系バインダー、シリカ系バインダーなどの成形バインダーが挙げられる。各種粘土バインダーとしては、カオリン系、ベントナイト系、タルク系、パイロフィライト系、モリサイト系、バーキュロライト系、モンモリロナイト系、クロライト系、ハロイサイト系などであることが好ましい。脱水触媒の触媒活性を効率的に向上し、コークなどの触媒被毒物質の形成を抑制することから、成形バインダーはシリカ系バインダーであることが好ましい。
【0040】
メタノール合成触媒および脱水触媒が成形体である場合、これら成形体の形状は特に限定されるものではなく、例えば、円柱状、クローバー状、リング状、球体、多穴状などの所望の形状を選択することができる。円柱状やクローバー状の成形体の場合には、押出成形物であることが好ましい。
【0041】
メタノール合成触媒を含む成形体および脱水触媒を含む成形体の粒径について、下限値は、好ましくは200μm以上であり、より好ましくは300μm以上であり、上限値は、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは3mm以下である。上記粒径が200μm以上であると、反応器内の圧力損失を防ぐことができる。また、上記粒径が10mm以下であると、一酸化炭素および水素、ならびにメタノールと混合触媒(メタノール合成触媒および脱水触媒)との接触効率を上げることができる。成形体の粒径は、乾式ふるい分け試験方法で求めることができる。
【0042】
また、メタノール合成触媒を含む成形体および脱水触媒を含む成形体の嵩密度について、下限値は、好ましくは0.5g/cm以上であり、上限値は、好ましくは1.5g/cm以下、より好ましくは1.0g/cm以下である。上記嵩密度は、メスシリンダーを用いたソック充填嵩密度測定法で求めることができる。
【0043】
また、本実施形態の混合触媒を用いることにより、合成温度が低くても(例えば330℃以下)、一酸化炭素および水素から高収率および高選択性で所望の合成物、特にジメチルエーテルを製造できる。
【0044】
ここで、合成温度を高くすると、合成反応の収率を高くし得る。しかしながら、高温下では、メタノール合成触媒は、凝集することから顕著に経時劣化するため、混合触媒は所望の合成物を長期に亘って安定して合成し難い。一方、このような高温によるメタノール合成触媒の劣化を抑制するために合成温度を低くする(例えば330℃以下)と、メタノール合成触媒の劣化は抑制できるものの、合成反応の収率は低い。
【0045】
しかしながら、本実施形態の混合触媒は、合成温度が低くても(例えば330℃以下)、合成反応の収率は高い。このため、本実施形態の混合触媒を用い、低い温度(例えば330℃以下)で合成することにより、所望の合成物を高い収率で製造でき、且つ高温による触媒の劣化を抑制し得る。合成温度とは、合成時の混合触媒の温度である。
【0046】
このような混合触媒は、一酸化炭素および水素からエーテルを合成するエーテル合成触媒であることが好ましく、一酸化炭素および水素からジメチルエーテルを合成するジメチルエーテル合成触媒であることがより好ましい。
【0047】
次に、実施形態のジメチルエーテルの製造方法について説明する。
【0048】
実施形態のジメチルエーテルの製造方法は、還元処理工程と供給工程と合成工程とを有する。
【0049】
還元処理工程では、上記実施形態の混合触媒を還元処理する。好ましくは、混合触媒を水素で還元処理する。
【0050】
還元処理工程の後に行う供給工程では、還元処理工程で還元処理した混合触媒に、一酸化炭素(CO)と水素(H)とを供給する。一酸化炭素および水素は、気体である。供給方法について、一酸化炭素と水素とを別々に供給してもよいし、合成ガスのような一酸化炭素と水素とを含む混合ガスを供給してもよい。
【0051】
供給工程の後に行う合成工程では、還元処理した混合触媒によって、供給工程で供給された一酸化炭素および水素を反応させ、ジメチルエーテルを合成する。上記の混合触媒を用いて一酸化炭素および水素を反応させることによって、ジメチルエーテルの高収率および高選択性を達成できる。また、混合触媒は、劣化し難く長期安定性に優れ、長期間(例えば70時間以上)、良好に触媒性能を発揮しうる。また、混合触媒は、高い耐水性を有する。
【0052】
また、供給工程において、一酸化炭素と水素とを供給するガス空間速度(GHSV)について、下限値は、好ましくは500/h以上、より好ましくは1000/h以上、さらに好ましくは1500/h以上であり、上限値は、好ましくは20000/h以下、より好ましくは10000/h以下、さらに好ましくは5000/h以下である。
【0053】
上記ガス空間速度(GHSV)が500/h以上であると、効率よく一酸化炭素と水素とからジメチルエーテルを製造できる。また、上記ガス空間速度(GHSV)が20000/h以下であると、合成後に得られるジメチルエーテルを含むガスについて、一酸化炭素や水素のような未反応物質の含有割合の増加を抑制できる。
【0054】
また、合成工程において、一酸化炭素および水素を反応させる温度(合成温度)について、下限値は、好ましくは260℃以上、より好ましくは270℃以上、さらに好ましくは280℃以上であり、上限値は、好ましくは330℃以下、より好ましくは325℃以下、さらに好ましくは320℃以下である。
【0055】
合成工程において、260℃以上で一酸化炭素および水素を反応させると、ジメチルエーテルの収率をさらに向上できる。また、合成工程において、330℃以下の温度で一酸化炭素および水素を反応させると、温度に対する混合触媒の触媒性能劣化を抑制できる。
【0056】
また、合成工程における圧力について、下限値は、好ましくは2.0MPa以上、より好ましくは3.0MPa以上、さらに好ましくは3.5MPa以上であり、上限値は、好ましくは6.0MPa以下、より好ましくは5.5MPa以下、さらに好ましくは5.0MPa以下である。
【0057】
合成工程において、2.0MPa以上の圧力で一酸化炭素および水素を反応させると、ジメチルエーテルの収率をさらに向上できる。また、合成工程において、6.0MPa以下の圧力で一酸化炭素および水素を反応させると、圧力に対する混合触媒の触媒性能劣化を抑制できる。
【0058】
混合触媒は、例えば、メタノール合成触媒と脱水触媒とを混合することによって製造することができる。また、混合触媒の所望特性やジメチルエーテルの合成条件などに応じて、メタノール合成触媒および脱水触媒の構成、割合、状態などは、適宜設定される。
【0059】
メタノール合成触媒を調製する方法としては、調製の容易性から、共沈法であることが好ましい。共沈法では、主成分としてCuおよびZnを含む金属成分の塩と沈殿剤とを用いる。塩としては、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物であることが好ましい。沈殿剤としては、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムであることが好ましい。
【0060】
共沈法では、金属成分の塩の水溶液と沈殿剤の水溶液とを加熱している水に滴加しながら撹拌することで、沈殿物を得る。続いて、沈澱物を洗浄することにより沈殿剤に由来するNaなどを除去し、その後に乾燥することで、メタノール合成触媒を得ることができる。
【0061】
また、脱水触媒を調製する方法において、脱水触媒を構成するゼオライトにPを含有する方法としては、Pをゼオライトへ容易に含有できることや、Pの含有量を容易に制御できることなどから、含浸法または浸漬法であることが好ましい。
【0062】
脱水触媒にPを含有させる際のPの出発原料として、オルトリン酸やリン酸エステルであることが好ましい。例えば、含浸液または浸漬液では、これらの出発原料を含有する溶液を用いる。
【0063】
含浸法では、オルトリン酸溶液やリン酸エステル溶液(以下、リン酸溶液ともいう。)をゼオライトに含浸させた後、含浸後のゼオライトを焼成することで、ゼオライトにPを容易に含有させることができる。浸漬法では、ゼオライトをリン酸溶液に浸漬した後、浸漬後のゼオライトを焼成することで、ゼオライトにPを容易に含有させることができる。
【0064】
リン酸溶液をゼオライトへ十分に浸透させるため、リン酸溶液の含浸時間や浸漬時間は、5分以上24時間以下であることが好ましい。
【0065】
リン酸溶液の濃度は、5質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
【0066】
ゼオライトの焼成温度は、好ましくは300℃以上600℃以下である。ゼオライトの焼成時間は、好ましくは30分以上1000分以内である。
【0067】
リン酸溶液による含浸時間または浸漬時間、リン酸溶液の濃度を調整することで、ゼオライト中のPの量を容易に制御できる。
【0068】
また、ゼオライトのモル比(SiOのモル数/Alのモル数)は、例えば、ゼオライトの合成時におけるアルミニウム源の添加量によって制御できる。
【0069】
また、ゼオライトに貴金属を担持する方法としては、貴金属をゼオライトへ容易に担持できることや、貴金属の担持量を容易に制御できることなどから、含浸法、浸漬法またはイオン交換法であることが好ましい。また、ゼオライトに複数種の貴金属を担持する場合、各貴金属を逐次担持するよりも、複数種の貴金属を同時担持する方が好ましい。
【0070】
ゼオライトに担持する貴金属の出発原料としては、貴金属を含む化合物を用いることができる。例えば、Ptの出発原料としては、塩化白金酸六水和物、ジニトロジアンミン白金、ジクロロテトラアンミン白金、酸化白金、塩化白金であることが好ましい。Pdの出発原料としては、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、ジニトロジアンミンパラジウム、硫酸パラジウム、酸化パラジウムであることが好ましい。
【0071】
含浸法では、貴金属を含む化合物の溶液をゼオライトに含浸させた後、含浸後のゼオライトを焼成することで、高分散状態で貴金属をゼオライトへ容易に担持することができる。浸漬法では、貴金属を含む化合物の溶液にゼオライトを浸漬した後、浸漬後のゼオライトを焼成することで、高分散状態で貴金属をゼオライトへ容易に担持することができる。
【0072】
貴金属をゼオライトへ十分に浸透させるため、上記溶液の含浸時間や浸漬時間は、10分以上5時間以下であることが好ましい。
【0073】
上記溶液の濃度について、塩化白金酸六水和物溶液の濃度は、0.15質量%以上3.50質量%以下であることが好ましい。また、塩化パラジウム溶液の濃度は、0.1質量%以上2.5質量%以下であることが好ましい。
【0074】
ゼオライトの焼成温度は、好ましくは300℃以上600℃以下であり、ゼオライトの焼成時間は、好ましくは30分以上300分以内である。
【0075】
上記溶液による含浸時間または浸漬時間、上記溶液の濃度を調整することで、ゼオライトへの貴金属の担持量を容易に制御できる。
【0076】
また、ゼオライトにPを含有させた後に、ゼオライトに貴金属を担持させることが好ましい。例えば、リン酸溶液を含浸したゼオライトを焼成し、続いて貴金属を含む溶液に焼成後のゼオライトを含浸し、続いて含浸後のゼオライトを焼成する。
【0077】
以上説明した実施形態によれば、混合触媒を構成する脱水触媒にゼオライトを用い、さらにゼオライトに所定量のPを含有することで、混合触媒が高い耐水性を有すると共にジメチルエーテルの高収率および高選択性を達成することができる。
【0078】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例0079】
次に、実施例および比較例について説明するが、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)
(メタノール合成触媒)
メタノール合成触媒として、酸化銅と酸化亜鉛と酸化アルミニウムとの三元系酸化物(製品名:45776 Copper based methanol synthesis catalyst、アルファ・エイサー社製)であるCu-Zn系触媒を用いた。このCu-Zn系触媒を、錠剤成形器で圧力5MPaの条件で直径20mm、厚さ約1mmのペレットとし、そのペレットを乳鉢で粉砕した後、砕いた試料を300μmのメッシュと500μmのメッシュとを重ねて用いてふるい分けた。これにより、粒径が300~500μm、粒状のメタノール合成触媒からなる成形体を得た。
【0081】
(脱水触媒)
MFI型ゼオライト(ZSM-5、SiOのモル数/Alのモル数=40)12gをメノウ乳鉢に投入し、そこへ純水7.2000gに所定量のオルトリン酸を溶かした水溶液をピペットで滴加しながら乳棒で均一になるように混ぜて約1時間かけて含浸し、続いて、100℃で10時間乾燥し、空気雰囲気下で常温から500℃まで50分で昇温し同温度で120分間焼成して、ゼオライトの質量に対してPを4.5質量%含有するMFI型ゼオライトを得た。続いて、このMFI型ゼオライトを錠剤成形器で直径20mm、厚さ約1mmのペレットとし、そのペレットを乳鉢で粉砕した後、砕いた試料を300μmのメッシュと500μmのメッシュとを重ねて用いてふるい分けた。これにより、粒径が300~500μm、粒状で、ゼオライトの質量に対してPを4.5質量%含有する脱水触媒からなる成形体を得た。
【0082】
(ジメチルエーテルの製造)
混合触媒として、上記で得られたメタノール合成触媒からなる成形体と、上記で得られた脱水触媒からなる成形体と、の混合物を用いた。混合したメタノール合成触媒の質量(M1)と脱水触媒の質量(M2)との合計質量に対するメタノール合成触媒の質量(M1)の比(M1/(M1+M2))は、0.5とした。そして、混合触媒を用いて、以下の条件でジメチルエーテルを製造した。
【0083】
まず、混合触媒を水素によって還元処理した。続いて、ガス空間速度(GHSV)を2000/hとして、一酸化炭素と水素とを混合触媒に供給した。一酸化炭素と水素とを混合触媒に供給しながら、温度(合成温度)を320℃および圧力を5.0MPaに制御することによって、一酸化炭素と水素とからジメチルエーテルを合成した。
【0084】
一酸化炭素と水素の混合ガス(CO:H=1:2(モル比))からジメチルエーテルを合成する反応には、固定床高圧流通式反応装置を用いた。リアクターは、ステンレス製(内径6.2mm、全長60cm)のものを用いた。リアクターの中心部に触媒をガラスウールに挟み込む形で充填した。リアクターを電気炉に設置し、電気炉の温度は、炉の中央部に差し込まれた熱電対で測定し、PIDで制御した。混合触媒の温度は、リアクター内の触媒層の中心部に挿入した熱電対で測定した。なお、混合触媒の温度が、合成温度である。混合触媒の還元処理は、リアクター内の触媒に、反応前にHを流量40ml/min、380℃にて2時間供給することで行った。
【0085】
(比較例1)
ゼオライトの質量に対してPを2.0質量%含有するMFI型ゼオライトを用いて脱水触媒からなる成形体を作成したこと以外、実施例1と同様にして、混合触媒を製造し、ジメチルエーテルを合成した。
【0086】
(比較例2)
ゼオライトとしてモルデナイト(SiOのモル数/Alのモル数=40)を用い、ゼオライトの質量に対してPを2.0質量%含有するゼオライトを用いて脱水触媒からなる成形体を作成したこと以外、実施例1と同様にして、混合触媒を製造し、ジメチルエーテルを合成した。
【0087】
[測定および評価]
上記実施例および比較例で得られた混合触媒について、下記の測定および評価を行った。
【0088】
[1] Pの有無および比(M/M
ゼオライト中のPの有無、およびゼオライトに含まれるPの質量%は、ICP-OESで測定した。
【0089】
[2] ガス組成の分析
反応開始後の所定の時点で、オンラインに接続したガスクロマトグラフを用いて、混合触媒によって製造されたガスの分析を行った。使用したガスクロマトグラフは、GC-2014(島津製作所製)を用いた。以下に分析対象と分析条件を記す。
【0090】
<分析条件>
カラム:RT-Q-BOND
昇温プログラム:(i)45℃(30minホールド)
(ii)2℃/minで175℃まで昇温
(iii)175℃(40minホールド)
分析時間 135min
【0091】
上記のガス組成の分析の結果、ジメチルエーテルの収率は以下の通りであった。また、ジメチルエーテル以外に、炭素数1以上の炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタノール等が検出された。
実施例1:60.62%
比較例1:0.52%
比較例2:38.45%
【0092】
以上から、脱水触媒に含まれるPの含有割合が所定範囲外であった比較例1~2に比べて、実施例1の混合触媒は、メタノール合成触媒とPを所定量含有する脱水触媒とを有するため、得られた合成ガスを分析した結果、ジメチルエーテルの高収率および高選択性を実現できた。さらには、実施例1の混合触媒は、ゼオライト骨格を有する脱水触媒を有するため、高い耐水性を有すると考えられる。