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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095505
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】長尺フィルムおよび積層体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240703BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20240703BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20240703BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240703BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/86
B32B7/06
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023132569
(22)【出願日】2023-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2022211778
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 達也
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】脇阪 大樹
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB16
2H149DA02
2H149DA12
2H149DA24
2H149DA27
2H149DB06
2H149FA02Z
2H149FA24Y
2H149FA33Y
2H149FA36Y
2H149FA37Y
2H149FA51Y
2H149FA52Y
2H149FA57Y
2H149FA58Y
2H149FD33
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107CC33
3K107CC43
3K107CC45
3K107EE26
3K107FF07
3K107FF15
4F100AJ06A
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK25D
4F100AK25J
4F100AK26B
4F100AK26J
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AT00A
4F100AT00E
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100DD01A
4F100EC182
4F100EH462
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EJ542
4F100GB41
4F100JA11C
4F100JA11D
4F100JK06
4F100JN00B
4F100JN00C
4F100YY00
(57)【要約】
【課題】本発明は、幅方向の端部剥がれを抑制することができ、機能層の転写性にも優れる長尺フィルム、および、それを用いた積層体を提供することを課題とする。
【解決手段】基材と、基材の表面の一部に接するように設けられた第1機能層と、基材の表面の少なくとも一部および第1機能層の表面に接するように設けられた第2機能層とを有し、第1機能層と基材との界面、または、第1機能層と第2機能層との界面で剥離可能な長尺フィルムであって、
第1機能層および第2機能層の少なくとも一方が光学異方性層であり、
第1機能層と基材との界面、および、第1機能層と第2機能層との界面のうち、剥離力が弱い方の界面における剥離力をaとし、第2機能層と基材との界面における剥離力をbとしたときに、a<bを満たす、長尺フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面の一部に接するように設けられた第1機能層と、前記基材の表面の少なくとも一部および前記第1機能層の表面に接するように設けられた第2機能層とを有し、前記第1機能層と前記基材との界面、または、前記第1機能層と前記第2機能層との界面で剥離可能な長尺フィルムであって、
前記第1機能層および前記第2機能層の少なくとも一方が光学異方性層であり、
前記基材の短尺方向の一方の端部Xから、前記第1機能層の短尺方向の端部のうち前記端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をAとし、前記端部Xから、前記第2機能層の短尺方向の端部のうち前記端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をBとしたときに、A>Bを満たし、
前記第1機能層と前記基材との界面、および、前記第1機能層と前記第2機能層との界面のうち、剥離力が弱い方の界面における剥離力をaとし、前記第2機能層と前記基材との界面における剥離力をbとしたときに、a<bを満たす、長尺フィルム。
【請求項2】
基材と、前記基材の表面の一部に接するように設けられた第1機能層と、前記第1機能層の表面に接するように設けられた第2機能層と、前記基材の表面の少なくとも一部および前記第2機能層の表面に接するように設けられた第3機能層とを有し、前記第1機能層と前記基材との界面、または、前記第1機能層と前記第2機能層との界面で剥離可能な長尺フィルムであって、
前記基材の短尺方向の一方の端部Xから、前記第1機能層の短尺方向の端部のうち前記端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をAとし、前記端部Xから、前記第2機能層の短尺方向の端部のうち前記端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をBとし、前記端部Xから、前記第3機能層の短尺方向の端部のうち前記端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をCとしたときに、A>C、および、B>Cをいずれも満たし、
前記第1機能層と前記基材との界面、および、前記第1機能層と前記第2機能層との界面のうち、剥離力が弱い方の界面における剥離力をaとし、前記第3機能層と前記基材との界面における剥離力をbとし、前記第2機能層と前記第3機能層との界面における剥離力をcとしたときに、a<b、および、a<cをいずれも満たす、長尺フィルム。
【請求項3】
基材と、前記基材の表面の一部に接するように設けられた第1機能層と、前記基材の表面の少なくとも一部および前記第1機能層の表面に接するように設けられた第2機能層と、前記第2機能層の表面の少なくとも一部に接するように設けられた第3機能層とを有し、前記第1機能層と前記基材との界面、または、前記第1機能層と前記第2機能層との界面で剥離可能な長尺フィルムであって、
前記基材の短尺方向の一方の端部Xから、前記第1機能層の短尺方向の端部のうち前記端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をAとし、前記端部Xから、前記第2機能層の短尺方向の端部のうち前記端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をBとし、前記端部Xから、前記第3機能層の短尺方向の端部のうち前記端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をCとしたときに、A>B、および、C>Bのいずれも満たし、
前記第1機能層と前記基材との界面、および、前記第1機能層と前記第2機能層との界面のうち、剥離力が弱い方の界面における剥離力をaとし、前記第2機能層と前記基材との界面における剥離力をbとし、前記第2機能層と前記第3機能層との界面における剥離力をcとしたときに、a<b、および、a<cをいずれも満たす、長尺フィルム。
【請求項4】
前記剥離力aが下記式(P1)を満たし、前記剥離力bが下記式(P2)を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載の長尺フィルム。
0.01N/25mm ≦ a ≦ 0.5N/25mm (P1)
0.1N/25mm ≦ b (P2)
【請求項5】
前記剥離力cが下記式(P3)を満たす、請求項2または3に記載の長尺フィルム。
1N/25mm ≦ c (P3)
【請求項6】
前記第1機能層が光配向膜である、請求項1~3のいずれか1項に記載の長尺フィルム。
【請求項7】
前記第2機能層が、水平配向した液晶化合物の配向状態を固定化してなる光学異方性層である、請求項1に記載の長尺フィルム。
【請求項8】
前記第2機能層が、垂直配向した液晶化合物の配向状態を固定化してなる光学異方性層である、請求項1に記載の長尺フィルム。
【請求項9】
前記第2機能層および前記第3機能層の少なくとも一方が、水平配向した液晶化合物の配向状態を固定化してなる光学異方性層である、請求項2または3に記載の長尺フィルム。
【請求項10】
前記第2機能層および前記第3機能層の少なくとも一方が、垂直配向した液晶化合物の配向状態を固定化してなる光学異方性層である、請求項2または3に記載の長尺フィルム。
【請求項11】
前記基材の短尺方向の少なくとも一方の端部側の表面の少なくとも一部に凹凸部が設けられており、前記凹凸部が設けられた側の前記基材の端部から、前記凹凸部がなくなる境界部までの短尺方向の距離をDとし、前記基材の短尺方向の一方の端部Xから、前記第1機能層の短尺方向の端部のうち前記端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をAとしたときに、D>Aを満たす、請求項1に記載の長尺フィルム。
【請求項12】
前記基材の短尺方向の少なくとも一方の端部側の表面の少なくとも一部に凹凸部が設けられており、前記凹凸部が設けられた側の前記基材の端部から、前記凹凸部がなくなる境界部までの短尺方向の距離をDとし、前記基材の短尺方向の一方の端部Xから、前記第1機能層の短尺方向の端部のうち前記端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をAとし、前記端部Xから、前記第2機能層の短尺方向の端部のうち前記端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をBとしたときに、D>A、および、D>Bをいずれも満たす、請求項2に記載の長尺フィルム。
【請求項13】
前記基材の短尺方向の少なくとも一方の端部側の表面の少なくとも一部に凹凸部が設けられており、前記凹凸部が設けられた側の前記基材の端部から、前記凹凸部がなくなる境界部までの短尺方向の距離をDとし、前記基材の短尺方向の一方の端部Xから、前記第1機能層の短尺方向の端部のうち前記端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をAとし、前記端部Xから、前記第3機能層の短尺方向の端部のうち前記端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をCとしたときに、D>A、および、D>Cをいずれも満たす、請求項3に記載の長尺フィルム。
【請求項14】
前記長尺フィルムの機能層側の表面の一部と、前記長尺フィルムの基材の機能層を設けていない側の表面の一部とを重ね合わせ、5kg/10cm角の荷重をかけた状態で95℃2時間加温した後に測定される、互いの表面が貼り付いた部分の面積が、30%以下となる、請求項1~3のいずれか1項に記載の長尺フィルム。
【請求項15】
前記液晶化合物の配向方向がフィルムの長手方向に平行である、請求項7に記載の長尺フィルム。
【請求項16】
前記液晶化合物の配向方向がフィルムの長手方向に平行である、請求項9に記載の長尺フィルム。
【請求項17】
請求項1~3のいずれか1項に記載の長尺フィルムの機能層側の表面が、粘着剤層または接着剤層を介して被着基材に貼合された、積層体。
【請求項18】
前記長尺フィルムにおける基材の短尺方向の一方の端部Xから、第1機能層の短尺方向の端部のうち前記端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をAとし、前記端部Xから、前記粘着剤層または前記接着剤層の短尺方向の端部のうち前記端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をEとしたときに、E>Aを満たす、請求項17に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺フィルムおよび積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置および有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の画像表示装置の軽量化および薄型化の観点から、光学異方性層などの機能層を基材上に形成後、基材を剥離して機能層を偏光フィルムなどの他の構成部材へ転写する製法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、端部に凹凸部を有する長尺状の基材と、重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物の硬化物層を含む転写可能な機能層とを有する長尺フィルムが記載されている([請求項1])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-15188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に記載された長尺フィルムについて検討したところ、機能層を2層以上設けた場合には、使用時(例えば、ロール状に巻き取られた長尺フィルムをほぐす際など)に長尺フィルムの短尺方向(以下、「幅方向」ともいう。)の端部に剥離が生じ、また、貼合後に基材を剥離する際に機能層の転写が不良となることを明らかとした。
【0006】
そこで、本発明は、幅方向の端部剥がれを抑制することができ、機能層の転写性にも優れる長尺フィルム、および、それを用いた積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、基材上に設けられる複数の機能層について、各機能層の幅(基材端部からの距離)の関係と、各機能層における隣接層界面での剥離力の関係を規定した長尺フィルムが、幅方向の端部剥がれを抑制することができ、機能層の転写性にも優れることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
[1] 基材と、基材の表面の一部に接するように設けられた第1機能層と、基材の表面の少なくとも一部および第1機能層の表面に接するように設けられた第2機能層とを有し、第1機能層と基材との界面、または、第1機能層と第2機能層との界面で剥離可能な長尺フィルムであって、
第1機能層および第2機能層の少なくとも一方が光学異方性層であり、
基材の短尺方向の一方の端部Xから、第1機能層の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をAとし、端部Xから、第2機能層の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をBとしたときに、A>Bを満たし、
第1機能層と基材との界面、および、第1機能層と第2機能層との界面のうち、剥離力が弱い方の界面における剥離力をaとし、第2機能層と基材との界面における剥離力をbとしたときに、a<bを満たす、長尺フィルム。
[2] 基材と、基材の表面の一部に接するように設けられた第1機能層と、第1機能層の表面に接するように設けられた第2機能層と、基材の表面の少なくとも一部および第2機能層の表面に接するように設けられた第3機能層とを有し、第1機能層と基材との界面、または、第1機能層と第2機能層との界面で剥離可能な長尺フィルムであって、
基材の短尺方向の一方の端部Xから、第1機能層の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をAとし、端部Xから、第2機能層の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をBとし、端部Xから、第3機能層の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をCとしたときに、A>C、および、B>Cをいずれも満たし、
第1機能層と基材との界面、および、第1機能層と第2機能層との界面のうち、剥離力が弱い方の界面における剥離力をaとし、第3機能層と基材との界面における剥離力をbとし、第2機能層と第3機能層との界面における剥離力をcとしたときに、a<b、および、a<cをいずれも満たす、長尺フィルム。
[3] 基材と、基材の表面の一部に接するように設けられた第1機能層と、基材の表面の少なくとも一部および第1機能層の表面に接するように設けられた第2機能層と、第2機能層の表面の少なくとも一部に接するように設けられた第3機能層とを有し、第1機能層と基材との界面、または、第1機能層と第2機能層との界面で剥離可能な長尺フィルムであって、
基材の短尺方向の一方の端部Xから、第1機能層の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をAとし、端部Xから、第2機能層の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をBとし、端部Xから、第3機能層の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をCとしたときに、A>B、および、C>Bのいずれも満たし、
第1機能層と基材との界面、および、第1機能層と第2機能層との界面のうち、剥離力が弱い方の界面における剥離力をaとし、第2機能層と基材との界面における剥離力をbとし、第2機能層と第3機能層との界面における剥離力をcとしたときに、a<b、および、a<cをいずれも満たす、長尺フィルム。
[4] 剥離力aが下記式(P1)を満たし、剥離力bが下記式(P2)を満たす、[1]~[3]のいずれかに記載の長尺フィルム。
0.01N/25mm ≦ a ≦ 0.5N/25mm (P1)
0.1N/25mm ≦ b (P2)
[5] 剥離力cが下記式(P3)を満たす、[2]または[3]に記載の長尺フィルム。
1N/25mm ≦ c (P3)
[6] 第1機能層が光配向膜である、[1]~[5]のいずれかに記載の長尺フィルム。
[7] 第2機能層が、水平配向した液晶化合物の配向状態を固定化してなる光学異方性層である、[1]に記載の長尺フィルム。
[8] 第2機能層が、垂直配向した液晶化合物の配向状態を固定化してなる光学異方性層である、[1]に記載の長尺フィルム。
[9] 第2機能層および第3機能層の少なくとも一方が、水平配向した液晶化合物の配向状態を固定化してなる光学異方性層である、[2]または[3]に記載の長尺フィルム。
[10] 第2機能層および第3機能層の少なくとも一方が、垂直配向した液晶化合物の配向状態を固定化してなる光学異方性層である、[2]または[3]に記載の長尺フィルム。
[11] 基材の短尺方向の少なくとも一方の端部側の表面の少なくとも一部に凹凸部が設けられており、凹凸部が設けられた側の基材の端部から、凹凸部がなくなる境界部までの短尺方向の距離をDとし、基材の短尺方向の一方の端部Xから、第1機能層の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をAとしたときに、D>Aを満たす、[1]に記載の長尺フィルム。
[12] 基材の短尺方向の少なくとも一方の端部側の表面の少なくとも一部に凹凸部が設けられており、凹凸部が設けられた側の基材の端部から、凹凸部がなくなる境界部までの短尺方向の距離をDとし、基材の短尺方向の一方の端部Xから、第1機能層の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をAとし、端部Xから、第2機能層の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をBとしたときに、D>A、および、D>Bをいずれも満たす、[2]に記載の長尺フィルム。
[13] 基材の短尺方向の少なくとも一方の端部側の表面の少なくとも一部に凹凸部が設けられており、凹凸部が設けられた側の基材の端部から、凹凸部がなくなる境界部までの短尺方向の距離をDとし、基材の短尺方向の一方の端部Xから、第1機能層の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をAとし、端部Xから、第3機能層の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をCとしたときに、D>A、および、D>Cをいずれも満たす、[3]に記載の長尺フィルム。
[14] 長尺フィルムの機能層側の表面の一部と、長尺フィルムの基材の機能層を設けていない側の表面の一部とを重ね合わせ、5kg/10cm角の荷重をかけた状態で95℃2時間加温した後に測定される、互いの表面が貼り付いた部分の面積が、30%以下となる、[1]~[13]のいずれかに記載の長尺フィルム。
[15] 液晶化合物の配向方向がフィルムの長手方向に平行である、[7]に記載の長尺フィルム。
[16] 液晶化合物の配向方向がフィルムの長手方向に平行である、[9]に記載の長尺フィルム。
[17] [1]~[16]のいずれかに記載の長尺フィルムの機能層側の表面が、粘着剤層または接着剤層を介して被着基材に貼合された、積層体。
[18] 長尺フィルムにおける基材の短尺方向の一方の端部Xから、第1機能層の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をAとし、端部Xから、粘着剤層または接着剤層の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をEとしたときに、E>Aを満たす、[17]に記載の積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、幅方向の端部剥がれを抑制することができ、機能層の転写性にも優れる長尺フィルム、および、それを用いた積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施態様に係る長尺フィルムの一例を示す、短尺方向の模式的な断面図である。
図2】本発明の第2の実施態様に係る長尺フィルムの一例を示す、短尺方向の模式的な断面図である。
図3】本発明の第3の実施態様に係る長尺フィルムの一例を示す、短尺方向の模式的な断面図である。
図4】本発明の長尺フィルムの好適態様を説明する、短尺方向の模式的な断面図である。
図5】本発明の積層体の一例を示す、短尺方向の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
本明細書において、Re(λ)およびRth(λ)は、それぞれ、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚み方向のレターデーションを表す。なお、波長λは、特に記載がないときは、550nmとする。
また、本明細書において、Re(λ)およびRth(λ)は、AxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)において、波長λで測定した値である。
具体的には、AxoScan OPMF-1にて、平均屈折率((nx+ny+nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((nx+ny)/2-nz)×d
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScan OPMF-1で算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味している。
【0013】
また、本明細書において、平行および直交とは、それぞれ厳密な意味での平行および直交を意味するのではなく、それぞれ、平行±10°の範囲、および、直交±10°の範囲を意味する。
【0014】
[長尺フィルム]
本発明の第1の態様に係る長尺フィルムは、基材と、基材の表面の一部に接するように設けられた第1機能層と、基材の表面の少なくとも一部および第1機能層の表面に接するように設けられた第2機能層とを有し、第1機能層と基材との界面、または、第1機能層と第2機能層との界面で剥離可能な長尺フィルムである。
また、本発明の第1の態様に係る長尺フィルムは、第1機能層および第2機能層の少なくとも一方が光学異方性層である。
また、本発明の第1の態様に係る長尺フィルムは、基材の短尺方向の一方の端部(側面)Xから、第1機能層の短尺方向の端部(側面)のうち端部Xに近い端部(側面)までの短尺方向の距離をAとし、端部Xから、第2機能層の短尺方向の端部(側面)のうち端部Xに近い端部(側面)までの短尺方向の距離をBとしたときに、A>Bを満たす。
また、本発明の第1の態様に係る長尺フィルムは、第1機能層と基材との界面、および、第1機能層と第2機能層との界面のうち、剥離力が弱い方の界面における剥離力をaとし、第2機能層と基材との界面における剥離力をbとしたときに、a<bを満たす。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施態様に係る長尺フィルムの一例を示す、短尺方向の模式的な断面図である。
図1に示す長尺フィルム11は、基材4と、基材4の表面の一部に接するように設けられた第1機能層1と、基材4の表面の一部および第1機能層1の表面の全部に接するように設けられた第2機能層2とを有する。すなわち、第2機能層2は、第1機能層1を覆うように設けられ、かつ、基材4の表面の一部に接するように設けられている。
また、図1に示す長尺フィルム11は、基材4の短尺方向の一方の端部Xから、第1機能層1の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をAとし、端部Xから、第2機能層2の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をBとしたときに、A>Bを満たす。
また、図1に示す長尺フィルム11は、第1機能層1と基材4との界面、および、第1機能層1と第2機能層2との界面のうち、剥離力が弱い方の界面における剥離力をaとし、第2機能層2と基材4との界面における剥離力をbとしたときに、a<bを満たすものである。
【0016】
ここで、図1においては、第2機能層2は、基材4の表面の一部および第1機能層1の表面の全部に接するように設けられているが、基材4の表面の全部および第1機能層1の表面の全部に接するように設けられていてもよい。
【0017】
本発明の第2の態様に係る長尺フィルムは、基材と、基材の表面の一部に接するように設けられた第1機能層と、第1機能層の表面に接するように設けられた第2機能層と、基材の表面の少なくとも一部および第2機能層の表面に接するように設けられた第3機能層とを有し、第1機能層と基材との界面、または、第1機能層と第2機能層との界面で剥離可能な長尺フィルムである。
また、本発明の第2の態様に係る長尺フィルムは、基材の短尺方向の一方の端部(側面)Xから、第1機能層の短尺方向の端部(側面)のうち端部Xに近い端部(側面)までの短尺方向の距離をAとし、端部Xから、第2機能層の短尺方向の端部(側面)のうち端部Xに近い端部(側面)までの短尺方向の距離をBとし、端部Xから、第3機能層の短尺方向の端部(側面)のうち端部Xに近い端部(側面)までの短尺方向の距離をCとしたときに、A>C、および、B>Cをいずれも満たす。
また、本発明の第2の態様に係る長尺フィルムは、第1機能層と基材との界面、および、第1機能層と第2機能層との界面のうち、剥離力が弱い方の界面における剥離力をaとし、第3機能層と基材との界面における剥離力をbとし、第2機能層と第3機能層との界面における剥離力をcとしたときに、a<b、および、a<cをいずれも満たす。
【0018】
図2は、本発明の第2の実施態様に係る長尺フィルムの一例を示す、短尺方向の模式的な断面図である。
図2に示す長尺フィルム12は、基材4と、基材4の表面の一部に接するように設けられた第1機能層1と、基材4の表面の一部および第1機能層1の表面の全部に接するように設けられた第2機能層と、基材4の表面の一部および第2機能層2の表面の全部に接するように設けられた第3機能層とを有する。すなわち、図2においては、第2機能層2は、第1機能層1を覆うように設けられ、かつ、基材4の表面の一部に接するように設けられており、第3機能層3は、第2機能層2を覆うように設けられ、かつ、基材4の表面の一部に接するように設けられている。
また、図2に示す長尺フィルム12は、基材4の短尺方向の一方の端部Xから、第1機能層1の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をAとし、端部Xから、第2機能層2の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をBとし、端部Xから、第3機能層3の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をCとしたときに、A>B>Cを満たす。
また、図2に示す長尺フィルム12は、第1機能層1と基材4との界面、および、第1機能層1と第2機能層2との界面のうち、剥離力が弱い方の界面における剥離力をaとし、第3機能層3と基材4との界面における剥離力をbとし、第2機能層2と第3機能層3との界面における剥離力をcとしたときに、a<b、および、a<cをいずれも満たすものである。
【0019】
ここで、図2においては、第2機能層2は、基材4の表面の一部および第1機能層1の表面の全部に接するように設けられているが、第1機能層1の表面にのみ接するように設けられていてもよい。
また、図2においては、第3機能層3は、基材4の表面の一部および第2機能層2の表面の全部に接するように設けられているが、基材4の表面の全部および第2機能層2の表面の全部に接するように設けられていてもよい。
【0020】
本発明の第3の態様に係る長尺フィルムは、基材と、基材の表面の一部に接するように設けられた第1機能層と、基材の表面の少なくとも一部および第1機能層の表面に接するように設けられた第2機能層と、第2機能層の表面の少なくとも一部に接するように設けられた第3機能層とを有し、第1機能層と基材との界面、または、第1機能層と第2機能層との界面で剥離可能な長尺フィルムである。
また、本発明の第3の態様に係る長尺フィルムは、基材の短尺方向の一方の端部(側面)Xから、第1機能層の短尺方向の端部(側面)のうち端部Xに近い端部(側面)までの短尺方向の距離をAとし、端部Xから、第2機能層の短尺方向の端部(側面)のうち端部Xに近い端部(側面)までの短尺方向の距離をBとし、端部Xから、第3機能層の短尺方向の端部(側面)のうち端部Xに近い端部(側面)までの短尺方向の距離をCとしたときに、A>B、および、C>Bのいずれも満たす。
また、本発明の第3の態様に係る長尺フィルムは、第1機能層と基材との界面、および、第1機能層と第2機能層との界面のうち、剥離力が弱い方の界面における剥離力をaとし、第2機能層と基材との界面における剥離力をbとし、第2機能層と第3機能層との界面における剥離力をcとしたときに、a<b、および、a<cをいずれも満たす。
【0021】
図3は、本発明の第3の実施態様に係る長尺フィルムの一例を示す、短尺方向の模式的な断面図である。
図3に示す長尺フィルム13は、基材4と、基材4の表面の一部に接するように設けられた第1機能層1と、基材4の表面の一部および第1機能層1の表面の全部に接するように設けられた第2機能層と、第2機能層2の表面の一部に接するように設けられた第3機能層とを有する。すなわち、図3においては、第2機能層2は、第1機能層1を覆うように設けられ、かつ、基材4の表面の一部に接するように設けられている。
また、図3に示す長尺フィルム13は、基材4の短尺方向の一方の端部Xから、第1機能層1の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をAとし、端部Xから、第2機能層2の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をBとし、端部Xから、第3機能層3の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をCとしたときに、A>C>Bを満たす。
また、図3に示す長尺フィルム14は、第1機能層1と基材4との界面、および、第1機能層1と第2機能層2との界面のうち、剥離力が弱い方の界面における剥離力をaとし、第3機能層3と基材4との界面における剥離力をbとし、第2機能層2と第3機能層3との界面における剥離力をcとしたときに、a<b、および、a<cをいずれも満たすものである。
【0022】
ここで、図3においては、第2機能層2は、基材4の表面の一部および第1機能層1の表面の全部に接するように設けられているが、基材4の表面の全部および第1機能層1の表面の全部に接するように設けられていてもよい。
また、図3においては、第3機能層3は、短尺方向の幅が第1機能層の短尺方向の幅よりも広く設けられているが、第3機能層3の短軸方向の幅は、第1機能層の短尺方向の幅と同等以下であってもよい。
【0023】
本発明においては、基材上に設けられる複数の機能層について、各機能層の幅(基材端部からの距離)の関係と、各機能層における隣接層界面での剥離力の関係とが、上述した第1の態様~第3の態様に示される関係を満たすと、幅方向の端部剥がれを抑制することができ、機能層の転写性にも優れる。
これは、詳細には明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
すなわち、本発明の第1の態様~第3の態様に係る長尺フィルムは、第1機能層に接するいずれかの界面で剥離可能な長尺フィルムであるが、この第1機能層が、第1の態様~第3の態様(図1図3)において説明した通り、第2機能層(または第3機能層)によって覆われており、かつ、第1機能層に接する界面のうち剥離力が弱い方の界面における剥離力aよりも、第2機能層(または第3機能層)と基材端部との界面における剥離力bや、第2機能層と第3機能層との界面における剥離力cの方が大きくなるため、幅方向の端部剥がれを抑制しつつ機能層の転写性も良好になったと考えられる。
【0024】
本発明においては、幅方向の端部剥がれをより抑制することができる理由から、上述した剥離力aが下記式(P1)を満たし、かつ、上述した剥離力bが下記式(P2)を満たしていることが好ましい。
0.01N/25mm ≦ a ≦ 0.5N/25mm (P1)
0.1N/25mm ≦ b (P2)
【0025】
また、本発明の第2の態様および第3の態様においては、幅方向の端部剥がれをより抑制することができる理由から、上述した剥離力cが下記式(P3)を満たしていることが好ましい。
1N/25mm ≦ c (P3)
【0026】
本発明においては、幅方向の端部剥がれをより抑制することができ、巻取り時のムラを抑制できる理由から、長尺フィルムの機能層側の表面の一部と、長尺フィルムの基材の機能層を設けていない側の表面の一部とを重ね合わせ、5kg/10cm角の荷重をかけた状態で95℃2時間加温した後に測定される、互いの表面が貼り付いた部分の面積が、30%以下となることが好ましく、20%以下となることがより好ましい。
ここで、「長尺フィルムの機能層側の表面」とは、第1の態様においては、第2機能層における第1機能層と反対側の表面のことをいい、第2および第3の態様においては、第3機能層における第2機能層と反対側の表面のことをいう。
また、「長尺フィルムの基材の機能層を設けていない側の表面」とは、基材における第1機能層と反対側の表面のことをいう。
また、「互いの表面が貼り付いた部分の面積」は、互いの表面を重ね合わせた部分の面積に対する割合をいい、上記荷重を取り除いた後に測定する。なお、図3に示すように、第2機能層の短尺方向の端部側の表面は、第3機能層が設けられていないため露出しているが、この露出表面と基材の機能層を設けていない側の表面との重ね合わせ部分と、第3機能層における第2機能層と反対側の表面と基材の機能層を設けていない側の表面との重ね合わせ部分とを、別々に測定する。
【0027】
以下、本発明の第1の態様~第3の態様に係る長尺フィルム(以下、特に区別を要しない場合はこれらをまとめて「本発明の長尺フィルム」と略す。)が有する各層について詳述する。なお、以下では、第1機能層、第2機能層および第3機能層について、特に区別を要しない場合はこれらをまとめて「機能層」と略す。
【0028】
〔基材〕
本発明の長尺フィルムが有する基材としては、例えば、ガラス基板およびポリマーフィルムが挙げられるが、加工性の観点からポリマーフィルムが好ましい。
ポリマーフィルムの材料としては、セルロース系ポリマー;ポリメチルメタクリレート、ラクトン環含有重合体などのアクリル酸エステル重合体を有するアクリル系ポリマー;熱可塑性ノルボルネン系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、および、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系ポリマー;ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン共重合体などのスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、および、エチレン・プロピレン共重合体などのポリオレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー;ナイロン、芳香族ポリアミドなどのアミド系ポリマー;イミド系ポリマー;スルホン系ポリマー;ポリエーテルスルホン系ポリマー;ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー;ポリフェニレンスルフィド系ポリマー;塩化ビニリデン系ポリマー;ビニルアルコール系ポリマー;ビニルブチラール系ポリマー;アリレート系ポリマー;ポリオキシメチレン系ポリマー;エポキシ系ポリマー;またはこれらのポリマーを混合したポリマーが挙げられる。
【0029】
基材の厚みは、基材の材質等に応じて適宜決定すればよいが、5~300μmであることが好ましく、10~150μmであることがより好ましく、20~80μmであることがさらに好ましい。
また、基材の短尺方向幅は、0.5~3mであることが好ましく、0.6~2.5mであることがより好ましく、0.8~2.2mであることがさらに好ましい。
【0030】
本発明においては、バルクロールの保持力が向上し、巻きズレを抑制できる理由から、基材の短尺方向の少なくとも一方の端部側の表面の少なくとも一部に凹凸部が設けられていることが好ましい。
特に、本発明の第1の態様においては、凹凸部が設けられた側の基材の端部から、凹凸部がなくなる境界部までの短尺方向の距離をDとし、基材の短尺方向の一方の端部Xから、第1機能層の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をAとしたときに、D>Aを満たしていることがより好ましい。
また、本発明の第2の態様においては、さらに端部Xから、第2機能層の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をBとしたときに、D>A、および、D>Bをいずれも満たしていることが好ましい。
また、本発明の第3の態様においては、さらに端部Xから、第3機能層の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をCとしたときに、D>A、および、D>Cをいずれも満たしていることが好ましい。
ここで、「端部側の表面」とは、基材の端部(側面)から基材の短尺方向の幅の1/3までの表面領域をいう。
【0031】
図4は、本発明の長尺フィルムの好適態様を説明する、短尺方向の模式的な断面図である。
図4に示す長尺フィルム14は、基材4の短尺方向の両方の端部側の表面に凹凸部5が設けられており、基材4の端部(側面)から凹凸部5がなくなる境界部までの短尺方向の距離をDとし、基材4の短尺方向の一方の端部Xから、第1機能層の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をAとしたときに、D>Aを満たしている。
ここで、図4においては、凹凸部5は、基材4の端部側の表面のうち、基材4の側面に近い領域には形成されていないが、本発明においては、凹凸部5は、上記領域に形成されていてもよい。
【0032】
このような凹凸部の形状、材質および形成方法は、長尺フィルムを構成する基材、機能層および所望の剥離力等に応じて、従来公知のものの中から適宜選択すればよい。
具体的には、特開2021-15188号公報の段落[0024]~[0028]に記載されたものから適宜選択して利用することができる。
【0033】
〔機能層〕
本発明の長尺フィルムが有する機能層としては、例えば、光配向膜、光学異方性層、ハードコート層、防眩層、屈折率調整層、バリア層などが挙げられる。
これらのうち、光学性能の観点から、光配向膜および光学異方性層が好ましい。
特に、本発明の第1の態様においては、第1機能層および第2機能層の少なくとも一方が、光学異方性層である。
また、本発明の第1~第3の態様においては、第1機能層が光配向膜であることが好ましい。
また、本発明の第1の態様においては、第2機能層が、水平配向した液晶化合物の配向状態を固定化してなる光学異方性層、または、垂直配向した液晶化合物の配向状態を固定化してなる光学異方性層であることが好ましい。
また、本発明の第2の態様および第3の態様においては、第2機能層および第3機能層の少なくとも一方が、水平配向した液晶化合物の配向状態を固定化してなる光学異方性層であることが好ましい。同様に、本発明の第2の態様および第3の態様においては、第2機能層および第3機能層の少なくとも一方が、垂直配向した液晶化合物の配向状態を固定化してなる光学異方性層であることが好ましい。
そして、本発明の第2の態様および第3の態様においては、第1機能層が光配向膜であり、第2機能層および第3機能層のいずれか一方が、水平配向した液晶化合物の配向状態を固定化してなる光学異方性層であり、他方が、垂直配向した液晶化合物の配向状態を固定化してなる光学異方性層であることが好ましい。
ここで、本明細書において「水平配向」とは、光学異方性層の主面(または、光学異方性層が支持体および配向膜等の部材上に形成されている場合、その部材の表面)と、液晶化合物の長軸方向とが平行であることをいう。なお、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、液晶化合物の長軸方向と光学異方性層の主面とのなす角度が10°未満の配向であることを意味するものとする。
同様に、本明細書において「垂直配向」とは、光学異方性層の主面(または、光学異方性層が支持体および配向膜等の部材上に形成されている場合、その部材の表面)と、液晶化合物の長軸方向とが直交していることをいう。なお、厳密に直交していることを要求するものではなく、本明細書では、液晶化合物の長軸方向と光学異方性層の主面とのなす角度が80~100°の配向であることを意味するものとする。
【0034】
本発明においては、機能層として水平配向した液晶化合物の配向状態を固定化してなる光学異方性層を使用する場合、第1機能層と基材との界面、または、第1機能層と第2機能層との界面で剥離して機能層を転写する際に、剥離性が向上し、転写性がより良好となる理由から、液晶化合物の配向方向が長尺フィルムの長手方向に平行であることが好ましい。
【0035】
<光配向膜>
光配向膜に用いられる光配向化合物としては、多数の文献等に記載がある。
本発明においては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-76839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-94071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報、特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミドおよび/またはアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報、または、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミドもしくはエステルが好ましい例として挙げられる。より好ましくは、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、または、エステルである。
【0036】
これらのうち、光配向化合物として、光の作用により二量化および異性化の少なくとも一方が生じる光配向性基を有する感光性化合物を用いることが好ましい。
また、光配向性基としては、例えば、桂皮酸(シンナモイル)構造(骨格)を有する基、クマリン構造(骨格)を有する基、カルコン構造(骨格)を有する基、ベンゾフェノン構造(骨格)を有する基、および、アントラセン構造(骨格)を有する基などが挙げられる。これら基のなかでも、シンナモイル構造を有する基、クマリン構造を有する基が好ましく、シンナモイル構造を有する基がより好ましい。
【0037】
また、上記光配向性基を有する感光性化合物は、さらに架橋性基を有していてもよい。
上記架橋性基としては、熱の作用により硬化反応を起こす熱架橋性基、光の作用により硬化反応を起こす光架橋性基が好ましく、熱架橋性基および光架橋性基をいずれも有する架橋性基であってもよい。
上記架橋性基としては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、-NH-CH-O-R(Rは水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表す。)で表される基、エチレン性不飽和二重結合を有する基、および、ブロックイソシアネート基からなる群から選ばれた少なくとも1つが挙げられる。なかでも、エポキシ基、オキセタニル基、エチレン性不飽和二重結合を有する基が好ましい。
なお、3員環の環状エーテル基はエポキシ基とも呼ばれ、4員環の環状エーテル基はオキセタニル基とも呼ばれる。
また、エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、具体的には、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基が挙げられ、アクリロイル基またはメタクリロイル基であることが好ましい。
【0038】
上記材料から形成した光配向膜に、直線偏光または非偏光照射を施し、光配向膜を製造する。
本明細書において、「直線偏光照射」「非偏光照射」とは、光配向材料に光反応を生じせしめるための操作である。用いる光の波長は、用いる光配向材料により異なり、その光反応に必要な波長であれば特に限定されるものではない。光照射に用いる光のピーク波長は、200nm~700nmが好ましく、光のピーク波長が400nm以下の紫外光がより好ましい。
【0039】
光照射に用いる光源は、通常使われる光源、例えばタングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプおよびカーボンアークランプ等のランプ、各種のレーザー〔例えば、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザーおよびYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザーなど〕、発光ダイオード、ならびに、陰極線管などを挙げることができる。
【0040】
直線偏光を得る手段としては、偏光板(例えば、ヨウ素偏光板、2色色素偏光板、および、ワイヤーグリッド偏光板)を用いる方法、プリズム系素子(例えば、グラントムソンプリズム)もしくはブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法、または、偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法が採用できる。また、フィルタまたは波長変換素子等を用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0041】
照射する光は、直線偏光の場合には、配向膜に対して上面または裏面から配向膜表面に対して垂直または斜めから光を照射する方法が採用される。光の入射角度は、光配向材料によって異なるが、0~90°(垂直)が好ましく、40~90°が好ましい。
非偏光の場合には、配向膜に対して、斜めから非偏光を照射する。その入射角度は、10~80°が好ましく、20~60°がより好ましく、30~50°がさらに好ましい。
照射時間は、1分~60分が好ましく、1分~10分がより好ましい。
【0042】
パターン化が必要な場合には、フォトマスクを用いた光照射をパターン作製に必要な回数施す方法、または、レーザー光走査によるパターンの書き込みによる方法を採用できる。
【0043】
本発明においては、上記光配向膜が、光配向化合物(特に、光配向性基を有する感光性化合物)を含有する配向膜形成用組成物を用いて形成される配向膜であることが好ましい。
【0044】
また、本発明においては、上記配向膜形成用組成物が、重合開始剤を含有していることが好ましい。
重合開始剤は特に限定されず、重合反応の形式に応じて、光ラジカル重合開始剤および熱カチオン重合開始剤が挙げられる。
重合開始剤としては、紫外線(UV)照射によって重合反応を開始可能な光ラジカル重合開始剤が好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、α-カルボニル化合物、アシロインエーテル、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物、多核キノン化合物、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ、アクリジンおよびフェナジン化合物、オキサジアゾール化合物、および、アシルフォスフィンオキシド化合物が挙げられる。
上記配向膜形成用組成物が光ラジカル重合開始剤を含む場合、光ラジカル重合開始剤の含有量は、配向膜形成用組成物の全固形分に対して、0.1~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。
また、上記配向膜形成用組成物が熱カチオン重合開始剤を含む場合、熱カチオン重合開始剤の含有量は、配向膜形成用組成物の全固形分に対して、1~30質量%が好ましく、4~20質量%がより好ましい。
【0045】
さらに、本発明においては、上記配向膜形成用組成物が、溶媒を含有していることが好ましい。
溶媒としては、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、および、シクロヘキサノン)、エーテル類(例えば、ジオキサン、および、テトラヒドロフラン)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサン)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、および、トリメチルベンゼン)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、および、クロロトルエン)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、および、酢酸ブチル)、水、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、および、シクロヘキサノール)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、および、エチルセロソルブ)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、および、ジメチルアセトアミド)が挙げられる。
溶媒を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
<光学異方性層>
光学異方性層は、液晶化合物の配向状態を固定化した液晶硬化層であることが好ましい。
一般的に、液晶化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。また、それぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。
本発明においては、いずれの液晶化合物を用いることもできるが、棒状液晶化合物またはディスコティック液晶化合物を用いるのが好ましく、棒状液晶化合物を用いるのがより好ましい。
【0047】
本発明においては、上述の液晶化合物の固定化のために、重合性基を有する液晶化合物を用いるが、液晶化合物が1分子中に重合性基を2以上有することがさらに好ましい。なお、液晶化合物が2種類以上の混合物の場合には、少なくとも1種類の液晶化合物が1分子中に2以上の重合性基を有していることが好ましい。なお、液晶化合物が重合によって固定された後においては、もはや液晶性を示す必要はない。
【0048】
また、重合性基の種類は特に制限されず、付加重合反応が可能な官能基が好ましく、重合性エチレン性不飽和基または環重合性基が好ましい。より具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基などが好ましく挙げられ、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。なお、(メタ)アクリロイル基とは、メタアクリロイル基またはアクリロイル基を意味する表記である。
【0049】
棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報の請求項1や特開2005-289980号公報の段落[0026]~[0098]に記載のものを好ましく用いることができ、ディスコティック液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報の段落[0020]~[0067]や特開2010-244038号公報の段落[0013]~[0108]に記載のものを好ましく用いることができるが、これらに限定されない。
【0050】
また、本発明においては、上記液晶化合物として、逆波長分散性の液晶化合物を用いることができる。
ここで、本明細書において「逆波長分散性」の液晶化合物とは、これを用いて作製された位相差フィルムの特定波長(可視光範囲)における面内のレターデーション(Re)値を測定した際に、測定波長が大きくなるにつれてRe値が同等または高くなるものをいう。
このような逆波長分散性の液晶化合物としては、例えば、特開2008-297210号公報に記載の一般式(I)で表される化合物(特に、段落[0034]~[0039]に記載の化合物)、特開2010-084032号公報に記載の一般式(1)で表される化合物(特に、段落[0067]~[0073]に記載の化合物)、特開2016-081035号公報に記載の一般式(1)で表される化合物(特に、段落[0043]~[0055]に記載の化合物)、および、特開2016-053709号公報に記載の一般式(II)で表される化合物(特に、段落番号[0036]~[0043]に記載の化合物)が挙げられる。
また、特開2011-006360号公報の段落[0027]~[0100]、特開2011-006361号公報の段落[0028]~[0125]、特開2012-207765号公報の段落[0034]~[0298]、特開2012-077055号公報の段落[0016]~[0345]、国際公開第2012/141245号の段落[0017]~[0072]、国際公開第2012/147904号の段落[0021]~[0088]、国際公開第2014/147904号の段落[0028]~[0115]、および、国際公開第2021/060427号の段落[0025]~[0056]に記載の化合物も挙げられる。
【0051】
光学異方性層の形成方法としては、例えば、液晶化合物を含有する液晶組成物を用いて、所望の配向状態とした後に、重合により固定化する方法等が挙げられる。
ここで、重合条件は特に制限されないが、光照射による重合においては、紫外線を用いることが好ましい。照射量は、10mJ/cm~50J/cmが好ましく、20mJ/cm~5J/cmがより好ましく、30mJ/cm~3J/cmがさらに好ましく、50~1000mJ/cmが特に好ましい。また、重合反応を促進するため、加熱条件下で実施してもよい。
【0052】
光学異方性層における液晶化合物の配向状態としては、水平配向、垂直配向、傾斜配向、および、ねじれ配向のいずれの状態であってもよく、光学異方性層の主面に対して水平配向または垂直配向した状態で固定化されていることが好ましい。
【0053】
光学異方性層は、ポジティブAプレートまたはポジティブCプレートであることが好ましい。
ここで、ポジティブAプレート(正のAプレート)とポジティブCプレート(正のCプレート)は以下のように定義される。
フィルム面内の遅相軸方向(面内での屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、面内の遅相軸と面内で直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、ポジティブAプレートは式(A1)の関係を満たすものであり、ポジティブCプレートは式(C1)の関係を満たすものである。なお、ポジティブAプレートはRthが正の値を示し、ポジティブCプレートはRthが負の値を示す。
式(A1) nx>ny≒nz
式(C1) nz>nx≒ny
なお、上記「≒」とは、両者が完全に同一である場合だけでなく、両者が実質的に同一である場合も包含する。
この「実質的に同一」について、ポジティブAプレートでは、例えば、(ny-nz)×d(ただし、dはフィルムの厚みである)が、-10~10nm、好ましくは-5~5nmである場合も「ny≒nz」に含まれ、(nx-nz)×dが、-10~10nm、好ましくは-5~5nmである場合も「nx≒nz」に含まれる。また、ポジティブCプレートでは、例えば、(nx-ny)×d(ただし、dはフィルムの厚みである)が、0~10nm、好ましくは0~5nmである場合も「nx≒ny」に含まれる。
【0054】
機能層の厚みは、機能層の種類等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、光配向膜の厚みは、0.1~3μmであることが好ましく、光学異方性層の厚みは、0.1~10μmであることが好ましい。
【0055】
[積層体]
本発明の積層体は、上述した本発明の長尺フィルムの機能層側の表面が、粘着剤層または接着剤層を介して被着基材に貼合された積層体である。
また、本発明の積層体は、長尺フィルムにおける基材の短尺方向の一方の端部(側面)Xから、第1機能層の短尺方向の端部(側面)のうち端部Xに近い端部(側面)までの短尺方向の距離をAとし、端部Xから、粘着剤層または接着剤層の短尺方向の端部(側面)のうち端部Xに近い端部(側面)までの短尺方向の距離をEとしたときに、E>Aを満たすことが好ましい。
【0056】
図5は、本発明の積層体の一例を示す、短尺方向の模式的な断面図である。
図5に示す積層体20は、長尺フィルム11(図1に示す長尺フィルム11と同様)の第2機能層2側の表面が、粘着剤層または接着剤層6を介して被着基材7に貼合された積層体である。
また、図5に示す積層体20は、長尺フィルム11における基材4の短尺方向の一方の端部Xから、第1機能層1の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をAとし、端部Xから、粘着剤層または接着剤層6の短尺方向の端部のうち端部Xに近い端部までの短尺方向の距離をEとしたときに、E>Aを満たすものである。
【0057】
〔粘着剤層〕
粘着剤層は、通常の画像表示装置に使用されるものと同様の透明で光学的に等方性の接着剤であることが好ましく、通常は感圧型接着剤が使用される。
【0058】
粘着剤層には、母材(粘着剤)、導電性粒子、及び必要に応じて用いられる熱膨張性粒子の他に、架橋剤(例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤など)、粘着付与剤(例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂など)、可塑剤、充填剤、老化防止剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等の適宜な添加剤を配合してもよい。
【0059】
〔接着剤層〕
接着剤層は、貼り合わせた後の乾燥や反応により接着性を発現する。
ポリビニルアルコール系接着剤(PVA系接着剤)は、乾燥により接着性が発現し、材料どうしを接着することが可能となる。
反応により接着性を発現する硬化型接着剤の具体例としては、(メタ)アクリレート系接着剤のような活性エネルギー線硬化型接着剤やカチオン重合硬化型接着剤が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。(メタ)アクリレート系接着剤における硬化性成分としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビニル基を有する化合物が挙げられる。また、カチオン重合硬化型接着剤としては、エポキシ基やオキセタニル基を有する化合物も使用することができる。エポキシ基を有する化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものであれば特に限定されず、一般に知られている各種の硬化性エポキシ化合物を用いることができる。好ましいエポキシ化合物として、分子内に少なくとも2個のエポキシ基と少なくとも1個の芳香環を有する化合物(芳香族系エポキシ化合物)や、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個は脂環式環を構成する隣り合う2個の炭素原子との間で形成されている化合物(脂環式エポキシ化合物)等が例として挙げられる。
中でも、加熱変形耐性の観点から、紫外線照射で硬化する紫外線硬化型接着剤が好ましく用いられる。
【実施例0060】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容及び処理手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0061】
[実施例1]
〔セルロースアシレートフィルム1(基材)の作製〕
<コア層セルロースアシレートドープ1の調製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、各成分を溶解し、コア層セルロースアシレートドープ1を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――
コア層セルロースアシレートドープ1
――――――――――――――――――――――――――――――――
・アセチル置換度2.88のセルロースアセテート 100質量部
・下記ポリエステル 12質量部
・下記耐久性改良剤 4質量部
・メチレンクロライド(第1溶剤) 430質量部
・メタノール(第2溶剤) 64質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0062】
ポリエステル(数平均分子量800)
【化1】
【0063】
耐久性改良剤
【化2】
【0064】
<外層セルロースアシレートドープ1の調製>
上記のコア層セルロースアシレートドープ1の90質量部に、下記のマット剤分散液1を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープ1を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液1
――――――――――――――――――――――――――――――――
・平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製) 2質量部
・メチレンクロライド(第1溶剤) 76質量部
・メタノール(第2溶剤) 11質量部
・コア層セルロースアシレートドープ1 1質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0065】
<セルロースアシレートフィルム1(基材)の作製>
上記コア層セルロースアシレートドープ1および上記外層セルロースアシレートドープ1を、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターを用いてろ過した。その後、バンド流延機を用いて、上記コア層セルロースアシレートドープ1およびその両側の外層セルロースアシレートドープ1を、流延口から3層同時に20℃のドラム上に流延した。
次いで、ドラム上のフィルムの溶剤含有率が略20質量%である状態で、ドラム上からフィルムを剥ぎ取った。得られたフィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、フィルムの溶剤含有率が3~15質量%である状態で、フィルムを幅方向に1.1倍に延伸しつつ、乾燥した。
その後、得られたフィルムを熱処理装置のロール間で搬送させることによりさらに乾燥し、膜厚60μmのセルロースアシレートフィルムを作製した。乾燥後のセルロースアシレートフィルムは、30℃以下に冷却して両端耳切りを行って幅を1340mmにした後、フィルムの両端にナーリング(凹凸部形成)を行い、セルロースアシレートフィルム1(基材)を作製した。凹凸部は片面側からエンボス加工を行うことで付与した。凹凸部はセルロースアシレートフィルム1の短尺方向の端部側の表面に15mmの幅(図4において符号Dで表される距離)で付与し、最大高さは平均厚みよりも平均13μm高くなるように押し圧を設定した。
【0066】
〔光配向膜1(第1機能層)および光学異方性層1(第2機能層)の形成〕
<光配向膜用組成物1の調製>
酢酸ブチルおよびメチルエチルケトンをそれぞれ80質量部および20質量部含む混合液に対して、下記共重合体C3を8.4質量部と、下記熱酸発生剤D1を0.3質量部とを添加し、光配向膜用組成物1を調製した。
【0067】
・共重合体C3(重量平均分子量:40,000)
【化3】
【0068】
・熱酸発生剤D1
【化4】
【0069】
<重合性液晶組成物1の調製>
下記組成の光学異方性層形成用の重合性液晶組成物1を調製した。なお、下記表1中、重合性液晶組成物1を「処方A」と略す。
【0070】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
重合性液晶組成物1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記液晶化合物R1 42.00質量部
・下記液晶化合物R2 42.00質量部
・下記単官能化合物A1 12.00質量部
・下記液晶化合物T1 4.00質量部
・下記重合開始剤S1 0.50質量部
・下記レベリング剤P1 0.20質量部
・ハイソルブMTEM(東邦化学工業社製) 2.00質量部
・NKエステルA-200(新中村化学工業社製) 1.00質量部
・メチルエチルケトン 424.80質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0071】
なお、下記棒状液晶化合物R1およびR2のアクリロイルオキシ基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、下記棒状液晶化合物R1およびR2は、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。
【0072】
・液晶化合物R1
【化5】
【0073】
・液晶化合物R2
【化6】
【0074】
・単官能化合物A1
【化7】
【0075】
・液晶化合物T1
【化8】
【0076】
・重合開始剤S1
【化9】
【0077】
・レベリング剤P1(下記式中:32.5および67.5は、レベリング剤P1中の全繰り返し単位に対する、各繰り返し単位の含有量(質量%)を示す。)
【化10】
【0078】
作製したセルロースアシレートフィルム1(基材)のナーリング凸側面の表面に、先に調製した光配向膜用組成物1をダイコーターで塗布した。その後、80℃で5分間乾燥して溶剤を除去し、厚み0.2μmの光異性化組成物層を形成した。得られた光異性化組成物層に対して偏光紫外線を照射(10mJ/cm、超高圧水銀ランプ使用)することで、厚み0.2μmの光配向膜1(第1機能層)を形成した。
次いで、光配向膜1の表面に、先に調製した重合性液晶組成物1をダイコーターで塗布し、組成物層を形成した。形成した組成物層が等方相を示す温度まで加熱した後、冷却させてスメクチック相を示す温度で配向を安定化させた。その後、温度を保ったまま、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm)で紫外線照射(500mJ/cm、超高圧水銀ランプ使用)することで、配向を固定化し、厚み2μmの光学異方性層1(第2機能層)を形成した。
このようにして、セルロースアシレートフィルム1に光配向膜1および光学異方性層1を3000m連続で塗布し、巻き芯に巻き取って、長尺フィルム1を作製した。
光配向膜1(第1機能層)および光学異方性層1(第2機能層)の塗布耳位置(図1において符号AおよびBで表される距離)は、それぞれ端部から12mmおよび9mmであった。
得られた光学異方性層1(第2機能層)は光配向膜1(第1機能層)との界面における剥離力(剥離力a)は0.05N/25mmであり、光学異方性層1(第2機能層)の位相差を剥離して測定したところ、遅相軸方向はフィルムの長手方向であり、面内レターデーションRe(550)は130nmであり、Re(450)/Re(550)は0.85であり、光学異方性層1(第2機能層)がポジティブAプレートであることが確認された。また、端部のセルロースアシレートフィルム1に光学異方性層1(第2機能層)が直接塗布されている領域の剥離力(剥離力b)は1N/25mm以上で、十分密着していた。
【0079】
[実施例2]
〔光学異方性層2-1(第1機能層)の形成〕
下記棒状液晶化合物A(83質量部)、下記棒状液晶化合物C(15質量部)、下記棒状液晶化合物D(2質量部)、アクリレートモノマー(A-400、新中村化学工業製)(4質量部)、下記親水性ポリマー(2質量部)、下記垂直配向剤A(2質量部)、下記光重合開始剤B-2(4質量部)、下記光酸発生剤(B-3)(3質量部)、および、下記光配向性ポリマーP-1(3.0質量部)をメチルイソブチルケトン680質量部に溶解して、重合性液晶組成物2-1を調製した。
調製した重合性液晶組成物2-1を、セルロースアシレートフィルム1(基材)上に、ダイコーターで塗布し、70℃で2分間加熱し、酸素濃度が100ppm以下の雰囲気になるように窒素パージしながら365nmのUV-LEDを用いて、照射量200mJ/cmの紫外線を照射した。その後、120℃で1分アニリーリングすることで、光学異方性層2-1(第1機能層)を形成した。
光学異方性層2-1は、式(C1)nz>nx≒nyを満たすポジティブCプレートであり、膜厚は約0.5μmであった。
【0080】
棒状液晶化合物A
【化11】
【0081】
棒状液晶化合物C
【化12】
【0082】
棒状液晶化合物D
【化13】
【0083】
親水性ポリマー
【化14】
【0084】
垂直配向剤A
【化15】
【0085】
光重合開始剤B-2
【化16】
【0086】
光酸発生剤B-3
【化17】
【0087】
光配向性ポリマーP-1(質量比a:b:c=30:15:55)
【化18】
【0088】
<照射工程(配向機能付与)>
得られた光学異方性層2-1(第1機能層)に、室温で、ワイヤーグリッド偏光子を通したUV光(超高圧水銀ランプ)を7.9mJ/cm(波長:313nm)照射し、配向機能を付与した。
【0089】
〔光学異方性層2-2(第2機能層)の形成〕
配向機能を付与した光学異方性層2-1(第1機能層)に実施例1と同様の手順で重合性液晶組成物1を塗布し、ポジティブAプレートである光学異方性層2-2(第2機能層)を形成し、長尺フィルム2を作製した。
【0090】
[実施例3]
〔光学異方性層3-1(第2機能層)の形成〕
重合性液晶組成物1の代わりに、下記組成の重合性液晶組成物3-1を使用した以外は、実施例1と同様の方法で、ポジティブAプレートである光学異方性層3-1(第2機能層)を形成した。なお、下記表1中、重合性液晶組成物3-1を「処方B」と略す。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
重合性液晶組成物3-1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記液晶化合物R2 20.00質量部
・下記液晶化合物R3 27.00質量部
・下記液晶化合物R4 20.00質量部
・下記液晶化合物R5 16.50質量部
・下記液晶化合物R6 16.50質量部
・下記液晶化合物R7 15.00質量部
・下記非液晶化合物M1 3.00質量部
・上記重合開始剤S1 0.50質量部
・下記レベリング剤P2 0.09質量部
・シクロペンタノン 179.67質量部
・メチルエチルケトン 53.67質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0091】
液晶化合物R3
【化19】
【0092】
液晶化合物R4
【化20】
【0093】
液晶化合物R5
【化21】
【0094】
液晶化合物R6
【化22】
【0095】
液晶化合物R7
【化23】
【0096】
非液晶化合物M1
【化24】
【0097】
レベリング剤P2(下記式中数字は、レベリング剤P2中の全繰り返し単位に対する、各繰り返し単位の含有量(質量%)を示す。)
【化25】
【0098】
〔光学異方性層3-2(第3機能層)の形成〕
下記組成の重合性液晶組成物3-2を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
重合性液晶組成物3-2
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記液晶化合物R2 10.0質量部
・上記液晶化合物R3 24.8質量部
・上記液晶化合物R4 24.8質量部
・上記液晶化合物R5 20.2質量部
・上記液晶化合物R6 20.2質量部
・上記液晶化合物R7 10.0質量部
・下記化合物B1 3.0質量部
・下記化合物C3 8.0質量部
・上記重合開始剤S1 3.0質量部
・下記レベリング剤P3 0.3質量部
・下記レベリング剤P4 0.3質量部
・シクロペンタノン 232.8質量部
・メチルエチルケトン 60.5質量部
・メタノール 9.1質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0099】
化合物B1
【化26】
【0100】
化合物C3(下記化合物の混合物)
【化27】
【0101】
レベリング剤P3〔重量平均分子量:15000、下記式中の数値は、全繰り返し単位に対する各繰り返し単位の含有量(質量%)を示す。〕
【化28】
【0102】
レベリング剤P4〔重量平均分子量:11200、下記式中の数値は、全繰り返し単位に対する各繰り返し単位の含有量(質量%)を示す。〕
【化29】
【0103】
作製した光学異方性層3-1の表面を放電量150W・min/mでコロナ処理を行い、コロナ処理を行った面に先に調製した重合性液晶組成物3-2をダイコーターで塗布し、組成物層を形成した。次いで、組成物の溶媒の乾燥および液晶化合物の配向熟成のために、85℃で60秒加熱した。窒素パージ下酸素濃度100ppmで50℃にて紫外線照射(150mJ/cm)することで配向を固定化し、厚み2.0μmの光学異方性層3-2(第3機能層)を形成し、長尺フィルム3を作製した。
なお、作製した長尺フィルムから光学異方性層3-1および3-2の積層体を剥離して、積層体の位相差を測定し、予め測定した光学異方性層3-1の位相差を差し引くことで光学異方性層3-2の位相差を算出したところ、厚み方向のレターデーションRthC(550)は-90nmであり、RthC(450)/RthC(550)は0.88であり、光学異方性層3-2(第3機能層)がポジティブCプレートであることが確認された。
【0104】
[実施例4]
実施例1と同様の手順で、セルロースアシレートフィルム1(基材)上に、光配向膜1(第1機能層)および光学異方性層1(第2機能層)を形成した。
次いで、光学異方性層1(第2機能層)の表面を放電量150W・min/mでコロナ処理を行い、コロナ処理を行った面に、下記組成に調製した重合性液晶組成物4-2をダイコーターで塗布し、組成物層を形成した。次いで、組成物の溶媒の乾燥および液晶化合物の配向熟成のために、65℃で60秒加熱した。窒素パージ下酸素濃度100ppmで50℃にて紫外線照射(150mJ/cm)することで配向を固定化し、厚み1.5μmの光学異方性層4-2(第3機能層)を形成し、長尺フィルム4を作製した。
なお、作製した長尺フィルムから光学異方性層1および光学異方性層4-2の積層体を剥離して、積層体の位相差を測定し、先に測定した光学異方性層1の位相差を差し引くことで光学異方性層4-2の位相差を算出したところ、厚み方向のレターデーションRthC(550)は-100nmであり、RthC(450)/RthC(550)は0.93であり、光学異方性層4-2(第3機能層)がポジティブCプレートであることが確認された。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
重合性液晶組成物4-2
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記液晶化合物R1 10.0質量部
・上記液晶化合物R2 54.0質量部
・下記液晶化合物R8 28.0質量部
・上記液晶化合物T1 8.0質量部
・上記化合物B1 1.5質量部
・NKエステルA-600(新中村化学工業社製) 8.0質量部
・上記重合開始剤S1 3.0質量部
・上記レベリング剤P3 0.4質量部
・上記レベリング剤P4 0.5質量部
・メチルエチルケトン 225.0質量部
・メタノール 25.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0105】
・液晶化合物R8
下記液晶化合物(RA)(RB)(RC)の83:15:2(質量比)の混合物
【0106】
【化30】
【0107】
[実施例5]
偏光紫外線の照射角度をフィルム長手方向に対して45°にしたことを以外は、実施例3と同様の方法で長尺フィルム5を作製した。
【0108】
[実施例6~9]
各層の塗布時の幅を変更した以外は、実施例3と同様の方法で長尺フィルム6~9を作製した。
【0109】
[実施例10]
重合性液晶組成物3-1を下記重合性液晶組成物10-1に変更し、塗布時の幅を変更した以外は、実施例3と同様にして長尺フィルム10を作製した。なお、下記表1中、重合性液晶組成物10-1を「処方C」と略す。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
重合性液晶組成物10-1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記液晶化合物R2 20.00質量部
・上記液晶化合物R3 27.00質量部
・上記液晶化合物R4 20.00質量部
・上記液晶化合物R5 16.50質量部
・上記液晶化合物R6 16.50質量部
・上記液晶化合物R7 15.00質量部
・上記非液晶化合物M1 3.00質量部
・上記重合開始剤S1 0.50質量部
・上記レベリング剤P2 0.09質量部
・シクロペンタノン 200.00質量部
・メチルエチルケトン 33.34質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0110】
[実施例11および12]
各層の塗布時の幅を変更した以外は、実施例4と同様の方法で長尺フィルム11および12を作製した。
【0111】
[実施例13]
下記組成の反応液1を調製し、60℃に加熱し、均一溶解させた後、50℃まで降温した。
―――――――――――――――――――――――
反応液1
―――――――――――――――――――――――
・上記液晶化合物R2 55.9質量部
・上記液晶化合物R3 44.1質量部
・シクロペンタノン 300質量部
―――――――――――――――――――――――
【0112】
50℃に降温した反応液1に対し、塩基性化合物としてのN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を0.38質量部添加し、50℃で5時間撹拌した。
次いで、反応液に、吸着剤としてのキョーワード700SEN-S(協和化学工業社製)7.6質量部を添加し、室温まで降温しながら3時間攪拌した。
次いで、キョーワード700SEN-Sをろ過した後、ろ過液に再度同量のキョーワード700SEN-Sを添加、ろ過することで、重合性液晶組成物13-3のシクロペンタノン溶液を得た。ろ過時の洗い込み液としてシクロペンタノンを用い、最終的な固形分濃度が20質量%となるように調整した。高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography:HPLC)にて重合性液晶組成物13-3の組成比を確認し、下記比率となっていることを確認した。
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重合性液晶組成物13-3のHPLCによる面積%
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・上記液晶化合物R2 28.0%
・下記重合性液晶化合物AXB 25.2%
・下記重合性液晶化合物BXB 1.3%
・上記液晶化合物R3 22.5%
・下記重合性液晶化合物AYB 19.4%
・下記重合性液晶化合物AYA 3.6%
―――――――――――――――――――――――
【0113】
重合性液晶化合物AXB〔下記式中の中心の芳香環は、置換基としてメチル基を1個有するが、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。同様に、下記式中の左側のアクリロイルオキシ基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。〕
【化31】
【0114】
重合性液晶化合物BXB
【化32】
【0115】
重合性液晶化合物AYB〔下記式中の左側のアクリロイルオキシ基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。〕
【化33】
【0116】
重合性液晶化合物AYA〔下記式中のアクリロイルオキシ基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。〕
【化34】
【0117】
また、重合性液晶組成物13-3中の残存DIPEAは検出限界(0.1ppm)以下であった。
また、重合性液晶組成物13-3をガラスプレート上に垂らし、溶媒を乾燥除去した後の固形分を加熱ステージ(メトラー・トレド社製)を用いて、温度調節しながら偏光顕微鏡で観察したところ、スメクチック性を示すことが確認できた。
【0118】
調製した重合性液晶組成物13-3を用い、下記組成の重合性液晶組成物13-1を調製した。
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重合性液晶組成物13-1
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・上記重合性液晶組成物13-3 73.35質量部
・上記液晶化合物R2 11.80質量部
・上記液晶化合物R3 20.62質量部
・上記液晶化合物R4 20.00質量部
・上記液晶化合物R5 16.50質量部
・上記液晶化合物R6 16.50質量部
・上記液晶化合物R7 15.00質量部
・上記非液晶化合物M1 3.00質量部
・上記重合開始剤S1 0.50質量部
・上記レベリング剤P2 0.09質量部
・シクロペンタノン 120.99質量部
・メチルエチルケトン 53.67質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0119】
重合性液晶組成物3-1の代わりに上記重合性組成物13-1を使用した以外は、実施例3と同様の方法で長尺フィルム13を作製した。なお、下記表1中、重合性液晶組成物13-1を「処方D」と略す。
【0120】
[実施例14]
重合性液晶組成物3-1の代わりに下記重合性組成物14-1を使用し、重合性液晶組成物3-2の代わりに下記重合性組成物14-2を使用した以外は、実施例3と同様の方法で長尺フィルム14を作製した。なお、下記表1中、重合性液晶組成物14-1を「処方E」と略す。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
重合性液晶組成物14-1
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・上記液晶化合物R2 20.00質量部
・上記液晶化合物R3 27.00質量部
・上記液晶化合物R4 20.00質量部
・上記液晶化合物R5 16.50質量部
・上記液晶化合物R6 16.50質量部
・上記液晶化合物R7 15.00質量部
・上記非液晶化合物M1 3.00質量部
・上記重合開始剤S1 0.50質量部
・下記レベリング剤P5 0.09質量部
・シクロペンタノン 179.67質量部
・メチルエチルケトン 53.67質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0121】
レベリング剤P5〔重量平均分子量:50000、下記式中の数値は、全繰り返し単位に対する各繰り返し単位の含有量(質量%)を示す。〕
【化35】
【0122】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
重合性液晶組成物14-2
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記液晶化合物R2 10.0質量部
・上記液晶化合物R3 24.8質量部
・上記液晶化合物R4 24.8質量部
・上記液晶化合物R5 20.2質量部
・上記液晶化合物R6 20.2質量部
・上記液晶化合物R7 10.0質量部
・上記化合物B1 3.0質量部
・上記化合物C3 8.0質量部
・上記重合開始剤S1 3.0質量部
・上記レベリング剤P3 0.3質量部
・下記レベリング剤P6 0.3質量部
・シクロペンタノン 232.8質量部
・メチルエチルケトン 60.5質量部
・メタノール 9.1質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0123】
レベリング剤P6〔重量平均分子量:12600、下記式中の数値は、全繰り返し単位に対する各繰り返し単位の含有量(質量%)を示す。〕
【化36】
【0124】
[実施例15]
重合性液晶組成物14-2の代わりに下記重合性組成物15-2を使用した以外は、実施例14と同様の方法で長尺フィルム15を作製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
重合性液晶組成物15-2
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記液晶化合物R2 10.0質量部
・上記液晶化合物R3 24.8質量部
・上記液晶化合物R4 24.8質量部
・上記液晶化合物R5 20.2質量部
・上記液晶化合物R6 20.2質量部
・上記液晶化合物R7 10.0質量部
・下記化合物B1 3.0質量部
・下記化合物C3 8.0質量部
・上記重合開始剤S1 3.0質量部
・上記レベリング剤P3 0.3質量部
・下記レベリング剤P7 0.3質量部
・シクロペンタノン 232.8質量部
・メチルエチルケトン 60.5質量部
・メタノール 9.1質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0125】
レベリング剤P7〔重量平均分子量:9200、下記式中の数値は、全繰り返し単位に対する各繰り返し単位の含有量(質量%)を示す。〕
【化37】
【0126】
[実施例16]
重合性液晶組成物1の代わりに下記重合性組成物16-1を使用し、重合性液晶組成物4-2の代わりに下記重合性組成物16-2を使用した以外は、実施例4と同様の方法で長尺フィルム16を作製した。なお、下記表1中、重合性液晶組成物16-1を「処方F」と略す。
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重合性液晶組成物16-1
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・上記液晶化合物R1 42.00質量部
・上記液晶化合物R2 42.00質量部
・上記単官能化合物A1 12.00質量部
・上記液晶化合物T1 4.00質量部
・上記重合開始剤S1 0.50質量部
・上記レベリング剤P5 0.20質量部
・ハイソルブMTEM(東邦化学工業社製) 2.00質量部
・NKエステルA-200(新中村化学工業社製) 1.00質量部
・メチルエチルケトン 424.80質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0127】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
重合性液晶組成物16-2
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記液晶化合物R1 10.0質量部
・上記液晶化合物R2 54.0質量部
・下記液晶化合物R8 28.0質量部
・上記液晶化合物T1 8.0質量部
・上記化合物B1 1.5質量部
・NKエステルA-600(新中村化学工業社製) 8.0質量部
・上記重合開始剤S1 3.0質量部
・上記レベリング剤P3 0.4質量部
・上記レベリング剤P6 0.5質量部
・メチルエチルケトン 225.0質量部
・メタノール 25.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0128】
[実施例17]
重合性液晶組成物16-2の代わりに下記重合性組成物17-2を使用した以外は、実施例16と同様の方法で長尺フィルム17を作製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
重合性液晶組成物17-2
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記液晶化合物R1 10.0質量部
・上記液晶化合物R2 54.0質量部
・下記液晶化合物R8 28.0質量部
・上記液晶化合物T1 8.0質量部
・上記化合物B1 1.5質量部
・NKエステルA-600(新中村化学工業社製) 8.0質量部
・上記重合開始剤S1 3.0質量部
・上記レベリング剤P3 0.4質量部
・上記レベリング剤P7 0.5質量部
・メチルエチルケトン 225.0質量部
・メタノール 25.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0129】
[比較例1]
各層の塗布時の幅を変更した以外は、実施例1と同様の方法で長尺フィルム13を作製した。
【0130】
[比較例2]
各層の塗布時の幅を変更した以外は、実施例3と同様の方法で長尺フィルム14を作製した。
【0131】
[比較例3]
光配向膜用組成物1の代わりに光配向膜用組成物2を使用した以外は、実施例4と同様の方法で長尺フィルム15を作製した。また、光配向膜用塗布液2は、特開2012ー155308号公報、実施例3の記載を参考に調製した。
【0132】
実施例1~17および比較例1~3で作製した長尺フィルムについて、図1図5にも表される距離A~E、および、剥離力a~Cを下記表1に示す。
【0133】
[評価]
〔端部剥がれ〕
実施例1~17および比較例1~3で作製した長尺フィルムを7日間静置した後、長尺フィルムを巻きほぐし、巻き芯側から100m部分における幅方向の端部の剥離性を以下の評価基準で評価した。
<評価基準>
A:端部の光学異方性層の剥がれが全く確認できない。
B:端部の光学異方性層の剥がれがわずかに確認できる(頻度が1個/mより少ない)。
C:端部の光学異方性層の剥がれがある程度確認できる(頻度が1個/m程度)。
D:端部の光学異方性層の剥がれが多数確認でき、許容できない(頻度が1mに複数個)。
【0134】
〔貼り付き性〕
実施例1~17および比較例1~3で作製した長尺フィルムの端部を10cm角に切り出し、機能層側の表面と基材側の表面とを重ね合わせ、その上に5kgの重りを乗せて、95℃で2時間静置した。取り出した後、重りを取り除き、機能層側の表面と基材側の表面とを重ね合わせた部分の貼り付き面積比を評価した。貼り付き面積比は表面に出ている層毎にそれぞれ評価した。
<評価基準>
A:いずれの表面も裏面との貼り付き面積が30%以下。
B:いずれかの表面の裏面との貼り付き面積が30%より多い。
【0135】
〔巻き適性〕
実施例1~17および比較例1~3で作製した長尺フィルムを7日間静置した後、長尺フィルムの外観変化を確認した。
<評価基準>
A:巻きずれや変形は確認できない。
B:巻きずれや変形が確認できる。
【0136】
〔転写性〕
実施例1~17および比較例1~3で作製した長尺フィルムの機能層側の表面に、下記表1に示す距離Eを満たすようにアクリル系粘着剤を用いて別のセルロースアセテートフィルム1を貼合し、機能層が別のセルロースアセテートフィルム1側に転写できるかを評価した。
<評価基準>
A:フィルム全面きれいに転写できる。
B:フィルム端部の一部に剥離不良、剥離ムラが発生し、きれいに転写できない。
C:フィルム全面または大部分が転写できない。
【0137】
【表1】
【0138】
表1に示す結果から、第1機能層が第2機能層で覆われていない場合、すなわち、距離A<Bであると、端部剥がれが生じることが分かった(比較例1および2)。
また、剥離力aが、剥離力bより大きいと、機能層の転写性が劣ることが分かった(比較例3)。
【0139】
これに対し、基材上に設けられる複数の機能層について、各機能層の幅(基材端部からの距離)の関係と、各機能層における隣接層界面での剥離力の関係が、上述した第1~第3の態様を満たす場合には、幅方向の端部剥がれを抑制することができ、機能層の転写性にも優れることが分かった(実施例1~17)。
特に、実施例3と実施例5との対比から、機能層として水平配向した液晶化合物の配向状態を固定化してなる液晶硬化層を使用する場合、液晶化合物の配向方向が長尺フィルムの長手方向に平行であると、第1機能層と基材との界面、または、第1機能層と第2機能層との界面で剥離して機能層を転写する際に、剥離性が向上し、転写性がより良好となることが分かった。
また、実施例3と実施例8との対比から、貼り付き性がA評価、すなわち、長尺フィルムの機能層側の表面の一部と、長尺フィルムの基材側の表面の一部とを重ね合わせ、5kg/10cm角の荷重をかけた状態で95℃2時間加温した後に測定される、互いの表面が貼り付いた部分の面積が30%以下であると、幅方向の端部剥がれをより抑制できることが分かった。
また、実施例3と実施例9との対比から、長尺フィルムの機能層側を被着基材に貼合する際に使用する粘着剤が、距離E>Aを満たす場合には、転写性がより良好となることが分かった。
また、実施例3と実施例10との対比から、剥離力bが0.1N/25mm以上であると、幅方向の端部剥がれをより抑制できることが分かった。
【符号の説明】
【0140】
1 第1機能層
2 第2機能層
3 第3機能層
4 基材
5 凹凸部
6 粘着剤層または接着剤層
7 被着基材
11、12、13、14 長尺フィルム
20 積層体
図1
図2
図3
図4
図5