(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095515
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】積層体の製造方法、及び、半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20240703BHJP
G03F 7/38 20060101ALI20240703BHJP
H05K 3/06 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
G03F7/004 512
G03F7/38
H05K3/06 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023152916
(22)【出願日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2022212657
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 悠
【テーマコード(参考)】
2H196
2H225
5E339
【Fターム(参考)】
2H196AA26
2H196CA01
2H196CA16
2H196CA20
2H225AC34
2H225AC44
2H225AC46
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2H225AC63
2H225AC64
2H225AD14
2H225AD24
2H225AM04N
2H225AM10N
2H225AM13P
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2H225AN12N
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2H225AN89P
2H225AP01N
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2H225CA13
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
2H225DA26
5E339AB02
5E339AB05
5E339AB06
5E339AD05
5E339BC01
5E339BC02
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5E339CF17
5E339CG01
5E339DD02
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5E339GG02
(57)【要約】
【課題】解像性に優れる導体パターンを有する積層体を製造することが可能な積層体の製造方法及びその応用の提供。
【解決手段】基板と、導体パターン層と絶縁層とが交互に積層された少なくとも1組の積層構造と、導体層と、をこの順に有する回路基板に対して、仮支持体と感光性層とを含む転写フィルムを、感光性層側が導体層に接するように貼合する工程と、仮支持体剥離工程と、露光工程と、現像工程と、レジストパターンが形成されていない領域にある導体層にエッチング処理を行った後に、レジストパターンを剥離して導体パターン層を形成するか、又は、レジストパターンが形成されていない領域にある導体層にめっき処理を行った後に、レジストパターンを剥離し、レジストパターンの剥離によって露出した導体層にエッチング処理を行って導体パターン層を形成する工程と、を含む積層体の製造方法及びその応用。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、導体パターン層と絶縁層とが交互に積層された少なくとも1組の積層構造と、導体層と、をこの順に有する回路基板に対して、仮支持体と感光性層とを含む転写フィルムを、前記感光性層側が前記導体層に接するように貼合する工程と、
前記仮支持体を剥離する工程と、
前記感光性層に対してパターン露光を行う工程と、
露光された前記感光性層を現像してレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンが形成されていない領域にある前記導体層にエッチング処理を行った後に、レジストパターンを剥離して導体パターン層を形成するか、又は、前記レジストパターンが形成されていない領域にある前記導体層にめっき処理を行った後に、レジストパターンを剥離し、前記レジストパターンの剥離によって露出した前記導体層にエッチング処理を行って導体パターン層を形成する工程と、を含む積層体の製造方法。
【請求項2】
前記仮支持体の厚さが50μm以下である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記感光性層の厚さが1μm~16μmである、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記感光性層の70℃における溶融粘度が15000Pa・s以下である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記基板は、線膨張係数が15ppm/K以下である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記導体パターン層におけるパターン幅は、5μm以下である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記感光性層は、前記パターン露光に用いる光の主波長における透過率が65%~90%である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
前記転写フィルムは、前記仮支持体と前記感光性層との間に中間層を含む、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
前記転写フィルムは、前記仮支持体と前記中間層との間に熱可塑性樹脂層を含む、請求項8に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂層の厚さが2μm以上である、請求項9に記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
前記貼合する工程の前に、前記回路基板を加熱し、
前記貼合する工程では、前記導体層の表面温度が70℃以上である状態で、前記回路基板に対して前記転写フィルムを貼合する、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項12】
前記貼合する工程の後であって、前記仮支持体を剥離する工程の前に、気泡抜き処理を行う工程を含む、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項13】
前記レジストパターンを形成する工程では、前記回路基板を搬送して現像処理を行い、
形成されるレジストパターンの長手方向と前記回路基板の搬送方向との成す角度が10°以下である、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項14】
前記感光性層は、樹脂、重合性化合物、及び重合開始剤を含み、
前記樹脂は、スチレン及びスチレン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種に由来する構成単位を1mmol/g~6mmol/g含む、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項15】
前記樹脂は、エチレン性不飽和結合を含む、請求項14に記載の積層体の製造方法。
【請求項16】
前記導体パターン層を形成する工程で形成される導体パターン層のパターン幅Aは、前記少なくとも1組の積層構造に含まれる少なくとも1つの導体パターン層のパターン幅Bと異なる、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項17】
前記パターン幅Aの少なくとも一部は、前記パターン幅Bよりも狭い、請求項16に記載の積層体の製造方法。
【請求項18】
表面に導体層を有する基板に対して、仮支持体と感光性層とを含む転写フィルムを、前記感光性層側が、前記基板の表面に設けられている導体層に接するように、前記転写フィルムと前記基板とを貼合する工程と、
前記仮支持体を剥離する工程と、
前記感光性層に対してパターン露光を行う工程と、
露光された前記感光性層を現像してレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンが形成されていない領域にある前記導体層にエッチング処理を行った後に、レジストパターンを剥離して導体パターン層を形成するか、又は、前記レジストパターンが形成されていない領域にある前記導体層にめっき処理を行った後に、レジストパターンを剥離し、前記レジストパターンの剥離によって露出した前記導体層を除去して導体パターン層を形成する工程と、
形成された導体パターン層上に、絶縁層及び導体層をこの順に積層して、前記回路基板を製造する工程をさらに含む、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項19】
請求項1~請求項18のいずれか1項に記載の積層体の製造方法を用いて製造された積層体を含む半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体の製造方法、及び、半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信技術の高速化かつ大容量化の要求に伴い、導体パターンの高精細化が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、仮支持体と、感光性層とを有する転写フィルムを、感光性層側が、表面に金属層を有する基板の金属層に接するように、転写フィルムと基板とを貼合する貼合工程と、感光性層をパターン露光する露光工程と、露光された感光性層にアルカリ金属塩を含む水溶液を用いて現像処理を実施し、レジストパターンを形成する現像工程と、レジストパターンが配置されていない領域にある金属層に、エッチング処理を行うエッチング処理工程、又は、めっき処理を行うめっき処理工程と、レジストパターンを剥離するレジスト剥離工程と、さらに、めっき処理工程を有する場合は、レジスト剥離工程によって露出した金属層を除去し、基板上に導体パターンを形成する除去工程と、を有する、導体パターンを有する積層体の製造方法であって、貼合工程と露光工程との間、又は、露光工程と現像工程との間に、さらに、仮支持体を剥離する仮支持体剥離工程を有し、感光性層は、測定Xで求められる長さXが、1.0μm以下となる、導体パターンを有する積層体の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導体パターンがすでに形成された基板に対してさらに導体パターンを形成する場合において、解像性の向上が求められていた。
【0006】
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、解像性に優れる導体パターンを有する積層体を製造することが可能な積層体の製造方法を提供することである。
また、本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記積層体を含む半導体パッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の態様を含む。
<1>
基板と、導体パターン層と絶縁層とが交互に積層された少なくとも1組の積層構造と、導体層と、をこの順に有する回路基板に対して、仮支持体と感光性層とを含む転写フィルムを、感光性層側が導体層に接するように貼合する工程と、
仮支持体を剥離する工程と、
感光性層に対してパターン露光を行う工程と、
露光された感光性層を現像してレジストパターンを形成する工程と、
レジストパターンが形成されていない領域にある導体層にエッチング処理を行った後に、レジストパターンを剥離して導体パターン層を形成するか、又は、レジストパターンが形成されていない領域にある導体層にめっき処理を行った後に、レジストパターンを剥離し、レジストパターンの剥離によって露出した導体層にエッチング処理を行って導体パターン層を形成する工程と、を含む積層体の製造方法。
<2>
仮支持体の厚さが50μm以下である、<1>に記載の積層体の製造方法。
<3>
感光性層の厚さが1μm~16μmである、<1>又は<2>に記載の積層体の製造方法。
<4>
感光性層の70℃における溶融粘度が15000Pa・s以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<5>
基板は、線膨張係数が15ppm/K以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<6>
導体パターン層におけるパターン幅は、5μm以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<7>
感光性層は、パターン露光に用いる光の主波長における透過率が65%~90%である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<8>
転写フィルムは、仮支持体と感光性層との間に中間層を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<9>
転写フィルムは、仮支持体と前記中間層との間に熱可塑性樹脂層を含む、<8>に記載の積層体の製造方法。
<10>
熱可塑性樹脂層の厚さが2μm以上である、<9>に記載の積層体の製造方法。
<11>
貼合する工程の前に、回路基板を加熱し、
貼合する工程では、導体層の表面温度が70℃以上である状態で、回路基板に対して前記転写フィルムを貼合する、<1>~<10>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<12>
貼合する工程の後であって、仮支持体を剥離する工程の前に、気泡抜き処理を行う工程を含む、<1>~<11>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<13>
レジストパターンを形成する工程では、回路基板を搬送して現像処理を行い、
形成されるレジストパターンの長手方向と回路基板の搬送方向との成す角度が10°以下である、<1>~<12>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<14>
感光性層は、樹脂、重合性化合物、及び重合開始剤を含み、
樹脂は、スチレン及びスチレン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種に由来する構成単位を1mmol/g~6mmol/g含む、<1>~<13>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<15>
樹脂は、エチレン性不飽和結合を含む、<14>に記載の積層体の製造方法。
<16>
導体パターン層を形成する工程で形成される導体パターン層のパターン幅Aは、少なくとも1組の積層構造に含まれる少なくとも1つの導体パターン層のパターン幅Bと異なる、<1>~<15>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<17>
パターン幅Aの少なくとも一部は、パターン幅Bよりも狭い、<16>に記載の積層体の製造方法。
<18>
表面に導体層を有する基板に対して、仮支持体と感光性層とを含む転写フィルムを、感光性層側が、基板の表面に設けられている導体層に接するように、転写フィルムと基板とを貼合する工程と、
仮支持体を剥離する工程と、
感光性層に対してパターン露光を行う工程と、
露光された感光性層を現像してレジストパターンを形成する工程と、
レジストパターンが形成されていない領域にある導体層にエッチング処理を行った後に、レジストパターンを剥離して導体パターン層を形成するか、又は、レジストパターンが形成されていない領域にある導体層にめっき処理を行った後に、レジストパターンを剥離し、レジストパターンの剥離によって露出した導体層を除去して導体パターン層を形成する工程と、
形成された導体パターン層上に、絶縁層及び導体層をこの順に積層して、回路基板を製造する工程をさらに含む、<1>~<17>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。<19>
<1>~<18>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法を用いて製造された積層体を含む半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、解像性に優れる導体パターンを有する積層体を製造することが可能な積層体の製造方法が提供される。
また、本発明の他の実施形態によれば、上記積層体を含む半導体パッケージが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、転写フィルムの構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示について詳細に説明する。
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示において、段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0011】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
本開示において「層」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
【0012】
本開示において、「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
【0013】
本開示において、「透明」とは、波長400nm~700nmの可視光の平均透過率が、80%以上であることを意味し、90%以上であることが好ましい。
【0014】
本開示において、透過率は、分光光度計を用いて測定される値であり、例えば、日立製作所(株)製の分光光度計U-3310を用いて測定できる。
【0015】
本開示において、特段の断りのない限り、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、カラムとして、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、若しくは、TSKgel G2000HxL(いずれも東ソー(株)製の商品名)、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)、検出器として示差屈折計、及び、標準物質としてポリスチレンを使用し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により測定した標準物質のポリスチレンを用いて換算した値である。
【0016】
本開示において、特段の断りがない限り、高分子の構成単位の比は質量比である。
本開示において、特段の断りがない限り、分子量分布がある化合物の分子量は、重量平均分子量(Mw)である。
【0017】
本開示において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念である。「(メタ)アクリロイルオキシ基」は、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基の両方を包含する概念である。「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を包含する概念である。
【0018】
なお、本開示において、「アルカリ可溶性」とは、22℃において炭酸ナトリウムの1質量%水溶液100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。
【0019】
本開示において「水溶性」とは、液温が22℃であるpH7.0の水100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。したがって、例えば、水溶性樹脂とは、上述の溶解度条件を満たす樹脂を意図する。
【0020】
本開示において、組成物の「固形分」とは、組成物を用いて形成される組成物層を形成する成分を意味し、組成物が溶剤(有機溶剤、水等)を含む場合、溶剤を除いた全ての成分を意味する。また、組成物層を形成する成分であれば、液体状の成分も固形分とみなす。
【0021】
本開示において、「厚さ」は、SEM(走査型電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope)を使用した対象の断面観察により測定した任意の5点の平均値として算出する。
【0022】
[積層体の製造方法]
本開示に係る積層体の製造方法は、基板と、導体パターン層と絶縁層とが交互に積層された少なくとも1組の積層構造と、導体層と、をこの順に有する回路基板に対して、仮支持体と感光性層とを含む転写フィルムを、感光性層側が、導体層に接するように、転写フィルムと回路基板とを貼合する工程(以下、「貼合工程」ともいう)と、仮支持体を剥離する工程(以下、「仮支持体剥離工程」ともいう)と、感光性層に対してパターン露光を行う工程(以下、「露光工程」ともいう)と、露光された感光性層を現像してレジストパターンを形成する工程(以下、「現像工程」ともいう)と、レジストパターンが形成されていない領域にある導体層にエッチング処理を行った後に、レジストパターンを剥離して導体パターン層を形成するか(以下、「第1の導体パターン層形成工程」ともいう)、又は、レジストパターンが形成されていない領域にある導体層にめっき処理を行った後に、レジストパターンを剥離し、レジストパターンの剥離によって露出した導体層にエッチング処理を行って導体パターン層を形成する工程(以下、「第2の導体パターン層形成工程」ともいう)と、を含む
【0023】
本開示に係る積層体の製造方法によれば、解像性に優れる導体パターンを有する積層体を製造することができる。特に、仮支持体を剥離した後に、感光性層に対してパターン露光を行うことで、導体パターンがすでに形成された基板に対しても、解像性に優れる導体パターンを形成することができる。
【0024】
特許文献1に記載されている積層体の製造方法では、導体パターンがすでに形成された基板に対してさらに導体パターンを形成することは想定されていない。
【0025】
以下、本開示に係る積層体の製造方法の各工程について、詳細に説明する。
本開示の第1実施形態に係る積層体の製造方法は、貼合工程、仮支持体剥離工程、露光工程、現像工程、及び第1の導体パターン層形成工程を含む。
本開示の第2実施形態に係る積層体の製造方法は、貼合工程、仮支持体剥離工程、露光工程、現像工程、及び第2の導体パターン層形成工程を含む。
【0026】
<貼合工程>
貼合工程では、基板と、導体パターン層と絶縁層とが交互に積層された少なくとも1組の積層構造と、導体層と、をこの順に有する回路基板に対して、仮支持体と感光性層とを含む転写フィルムを、感光性層側が導体層に接するように貼合する。
【0027】
(回路基板)
回路基板は、基板と、導体パターン層と絶縁層とが交互に積層された少なくとも1組の積層構造と、導体層と、をこの順に有する。
【0028】
-基板-
基板としては、例えば、樹脂基板、ガラス基板、セラミック基板、及び、半導体基板が挙げられる。基板は、国際公開第2018/155193号の段落[0140]に記載の基板であってもよい。
【0029】
樹脂基板は、可視光を透過する樹脂基板であることが好ましい。可視光を透過する樹脂基板を構成する樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、及び、ポリカーボネートが挙げられる。
【0030】
また、基板は、ガラスエポキシ樹脂であってもよい。ガラスエポキシ樹脂は、例えば、ガラス繊維の布にエポキシ樹脂を浸透させ熱硬化処理を施すことにより得られる。
【0031】
また、基板は、シリコンウエハであってもよい。
【0032】
中でも、解像性をより向上させる観点から、基板は、線膨張係数が15ppm/K以下であることが好ましく、10ppm/K以下であることがより好ましく、5ppm/K以下であることがさらに好ましい。線膨張係数の下限値は特に限定されず、例えば、0.5ppm/Kである。
【0033】
本開示において、線膨張係数は以下の方法で測定される。
測定サンプルを19mm×5mmに加工し、熱機械分析装置(製品名「TMA450EM」、TAインスツルメント社製)を用いて、線膨張係数を測定する。測定条件は、昇温速度10℃/分、チャック間距離16mm、加重49mNとする。測定は、-60℃~350℃の温度範囲で行う。測定は3サンプルで行い、測定値の平均値を採用する。
【0034】
基板の厚さは特に限定されないが、5μm~200μmであることが好ましく、10μm~100μmであることがより好ましい。
【0035】
基板の厚さは、以下の方法で測定される。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、基板の主面に対して垂直な方向(すなわち、厚さ方向)の断面を観察する。得られた観察画像に基づいて、基板の厚さを10点測定する。測定値を算術平均することで、基板の平均厚さを求める。
【0036】
(積層構造)
基板上には、導体パターン層と絶縁層とが交互に積層された少なくとも1組の積層構造が設けられている。積層構造は、導体パターン層と絶縁層とが交互に積層された構造であり、導体パターン層及び絶縁層の組み合わせは1つのみであってもよく、2つ以上であってもよい。
【0037】
-導体パターン層-
導体パターン層は、導体層がパターン状に形成されている層である。
【0038】
導体パターン層を構成する材料としては、例えば、金属、及び導電性金属酸化物が挙げられる。
本開示において、「導電性」とは、体積抵抗率が1×106Ωcm未満(好ましくは、1×104Ωcm未満)であることを意味する。
【0039】
金属としては、例えば、Al(アルミニウム)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、及びAg(銀)が挙げられる。
【0040】
金属は、1種の金属元素からなる単体の金属であってもよく、2種以上の金属元素を含む金属混合物であってもよく、少なくとも1種の金属元素を含む合金であってもよい。
【0041】
導電性金属酸化物としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、及びSiO2が挙げられる。
【0042】
中でも、導体パターン層を構成する材料は、金属であることが好ましく、銀又は銅であることがより好ましい。
【0043】
導体パターン層の厚さは特に限定されないが、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。また、導体パターン層の厚さは2μm以下が好ましい。
【0044】
-絶縁層-
絶縁層は、絶縁性を有する層である。
本開示において、「絶縁性」とは、体積抵抗率が1×1010Ωcm以上(好ましくは、1×1012Ωcm以上)であることを意味する。
【0045】
絶縁層は、例えば、導体パターン層上に公知の層間絶縁膜をラミネートすることにより設けられる。
【0046】
基板上に、導体パターン層及び絶縁層が2組以上積層されている場合には、各導体パターン層を構成する材料は同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。同様に、各絶縁層を構成する材料は同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0047】
(導体層)
導体層は、積層構造における絶縁層上に設けられている。
導体層を構成する材料の好ましい態様は、上記導体パターン層を構成する材料の好ましい態様と同様である。
【0048】
導体層の厚さは特に限定されないが、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。また、導体パターン層の厚さは2μm以下が好ましい。
【0049】
貼合工程では、仮支持体と感光性層とを含む転写フィルムを、転写フィルムにおける感光性層側が、回路基板における導体層に接するように貼合する。
【0050】
貼合工程の前に、回路基板を加熱し、貼合工程では、導体層の表面温度が70℃以上である状態で、回路基板に対して転写フィルムを貼合することが好ましい。導体層の表面温度をあらかじめ70℃以上に加熱しておくと、転写フィルムの回路基板に対する追従性が向上し、回路基板と転写フィルムとの間に気泡が混入しにくくなるため、歩留まりが向上する。
【0051】
導体層の表面温度の上限値は、例えば、150℃である。
【0052】
回路基板を加熱する方法は特に限定されず、通常公知の方法が用いられる。
【0053】
転写フィルムが後述する保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥離した後に貼合工程を実施することが好ましい。転写フィルムの詳細は後述する。
【0054】
貼合工程では、転写フィルムの感光性層側の表面を、導体層に接触させ、圧着させることが好ましい。
圧着方法としては、例えば、公知の転写方法及びラミネート方法が挙げられる。特に、転写フィルムを回路基板に重ね、ロール等による加圧及び加熱を行うことが好ましい。
【0055】
転写フィルムと回路基板との貼り合わせは、真空ラミネーター、オートカットラミネーター等の公知のラミネーターを用いて行うことができる。
【0056】
ラミネート温度は、特に限定されない。
ラミネート温度は、例えば、80℃~150℃であることが好ましく、90℃~150℃であることがより好ましく、100℃~150℃であることがさらに好ましい。
ゴムローラーを備えたラミネーターを用いる場合、ラミネート温度とは、ゴムローラーの温度を指す。
【0057】
ラミネート時の回路基板の温度は、特に限定されない。
ラミネート時の回路基板の温度は、例えば、10℃~150℃であることが好ましく、20℃~150℃であることがより好ましく、30℃~150℃であることがさらに好ましい。
基板が樹脂フィルムである場合には、ラミネート時の回路基板の温度は、10℃~80℃であることが好ましく、20℃~60℃であることがより好ましく、30℃~50℃であることがさらに好ましい。
【0058】
ラミネート時の圧力は、特に限定されない。
ラミネート時の圧力は、例えば、0.1MPa~5MPaであることが好ましく、0.3MPa~3MPaであることがより好ましく、0.5MPa~1MPaであることがさらに好ましい。
【0059】
ラミネート時の搬送速度(所謂、ラミネート速度)は、特に限定されない。
ラミネート時の搬送速度は、例えば、0.5m/分~5m/分であることが好ましく、1.5m/分~3m/分であることがより好ましい。
【0060】
貼合工程の後であって、仮支持体剥離工程の前に、気泡抜き処理を行う工程を含むことが好ましい。
【0061】
気泡抜き処理を行うにより、パターン欠陥、断線等が抑制されるため、歩留まりが向上する。
気泡抜き処理としては、例えば、オートクレーブ処理、ダイヤフラムラミネート処理等が挙げられる。
オートクレーブ処理は、例えば、40℃~80℃、0.4MPa~1.0MPaの条件下で、1分~60分行われる。
ダイヤフラムラミネート処理は、例えば、40℃~80℃、真空度0.5hPa~5hPa、0.1MPa~0.6MPaの条件下で、30秒~120秒行われる。
【0062】
<仮支持体剥離工程>
仮支持体剥離工程では、転写フィルムにおける仮支持体を剥離する。
仮支持体の剥離方法は特に限定されず、特開2010-072589号公報の段落[0161]~[0162]に記載されたカバーフィルム剥離機構と同様の機構を使用できる。
【0063】
<露光工程>
露光工程は、感光性層に対してパターン露光を行う。「パターン露光」とは、パターン状に露光する形態であり、露光部と非露光部とが存在する形態の露光を意味する。
【0064】
パターン露光における露光領域と未露光領域との位置関係は特に限定されず、適宜調整される。
【0065】
露光は、感光性層側から行ってもよく、回路基板側から行ってもよい。
【0066】
露光方式は、マスク(「フォトマスク」ともいう。)と感光性層とを接触させて行うコンタクト露光であってもよい。
【0067】
また、露光方式は、コンタクト露光以外に、プロキシミティ露光、レンズプロジェクション露光、ミラープロジェクション露光、又は、露光レーザ等を用いたダイレクト露光であってもよい。レンズプロジェクション露光の場合、必要な解像力、焦点深度に応じて、適当なレンズの開口数(NA)を有する露光機を用いることができる。ダイレクト露光の場合は、感光性層に直接描画を行ってもよいし、レンズを介して感光性層に縮小投影露光をしてもよい。
【0068】
また、露光は大気下で行ってもよく、減圧下、又は真空下で行ってもよい。露光の際に、光源と感光性層との間に水等の液体を介在させてもよい。
【0069】
中でも、解像性をより向上させる観点から、露光方式は、プロジェクション露光であることが好ましく、レンズプロジェクション露光であることがより好ましい。
【0070】
パターン露光におけるパターンの詳細な配置及び具体的サイズは特に限定されない。
【0071】
高精細化の観点から、パターン露光において、パターン幅は5μm以下であることが好ましく、2.5μm以下であることがより好ましい。パターン幅の下限値は特に限定されず、例えば、1.0μmである。
【0072】
露光の光源は、特に限定されない。
光源としては、例えば、露光部が硬化し得る波長域の光(例えば、365nm又は405nm)を照射できる光源が挙げられる。
光源の具体例としては、各種レーザ;発光ダイオード(LED)等の半導体光源;超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等の放電ランプが挙げられる。
【0073】
露光量は、特に限定されない。
露光量は、5mJ/cm2~200mJ/cm2であることが好ましく、10mJ/cm2~200mJ/cm2であることがより好ましい。
【0074】
<現像工程>
現像工程では、露光された感光性層を現像してレジストパターンを形成する。
【0075】
露光された感光性層の現像は、現像液を用いて行うことができる。
【0076】
現像液は、特に限定されず、公知の現像液を使用できる。
現像液としては、例えば、特開平5-72724号公報に記載の現像液が挙げられる。
【0077】
現像液は、アルカリ性水溶液であることが好ましい。
アルカリ性水溶液に含まれ得るアルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、コリン(2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド)等が挙げられる。
【0078】
アルカリ性水溶液のpHは、特に限定されない。
アルカリ性水溶液の25℃におけるpHは、例えば、8~13であることが好ましく、9~12であることがより好ましく、10~12であることがさらに好ましい。
【0079】
アルカリ性水溶液におけるアルカリ性化合物の含有量は、特に限定されないが、例えば、アルカリ性水溶液の全質量に対して、0.1質量%~5質量%であることが好ましく、0.1質量%~3質量%であることがより好ましい。
【0080】
現像液の液温度は、特に限定されない。
現像液の液温度は、例えば、20℃~40℃であることが好ましい。
【0081】
現像方式としては、例えば、パドル現像、シャワー現像、スプレー現像、シャワー及びスピン現像、ディップ現像等の方式が挙げられる。
【0082】
現像方法としては、国際公開第2015/093271号の段落[0195]に記載の現像方法が好ましい。
【0083】
現像工程では、回路基板を搬送して現像処理を行うことが好ましい。
回路基板の搬送方向は、パターンの形状がライン&スペースパターンの場合は、歩留まり向上の観点から、形成されるレジストパターンの長手方向に対して、平行に近い程好ましい。より具体的には、形成されるレジストパターンの長手方向と回路基板の搬送方向との成す角度が30°以下であることが好ましく、10°以下であることがより好ましく、5°以下であることがさらに好ましい。
回路基板の搬送方向が形成されるレジストパターンの長手方向に対して平行に近いほど現像液の液切れがよくなり、パターン倒れが抑制され、歩留りが向上する。
【0084】
現像工程の後に、現像液を除去するリンス処理を実施してもよい。リンス処理には、水等を使用できる。
【0085】
現像工程及び/又はリンス処理の後に、余分な液を除去する乾燥処理を実施してもよい。
【0086】
なお、第1実施形態に係る製造方法は、現像工程と後述する第1の導体パターン層形成工程との間に、形成されたレジストパターンをさらに露光する工程(以下、「ポスト露光工程」ともいう)、及び/又は、形成されたレジストパターンをさらに加熱する工程(以下、「ポストベーク工程」ともいう)を含んでいてもよい。
また、第2実施形態に係る製造方法は、現像工程と後述する第2の導体パターン層形成工程との間に、ポスト露光工程、及び/又は、ポストベーク工程を含んでいてもよい。
【0087】
ポスト露光工程及びポストベーク工程の両方を含む場合、ポスト露光工程を実施した後に、ポストベーク工程を実施することが好ましい。
【0088】
ポスト露光工程における露光量は、100mJ/cm2~5000mJ/cm2が好ましく、200mJ/cm2~3000mJ/cm2がより好ましい。
【0089】
ポストベーク工程における加熱温度は、80℃~250℃が好ましく、90℃~160℃がより好ましい。
ポストベーク工程における加熱時間は、1分~180分が好ましく、10分~60分がより好ましい。
【0090】
<第1の導体パターン層形成工程>
第1の導体パターン層形成工程では、レジストパターンが形成されていない領域にある導体層にエッチング処理を行った後に、レジストパターンを剥離して導体パターン層を形成する。
【0091】
第1の導体パターン層形成工程では、現像工程で形成されたレジストパターンをエッチングレジストとして使用し、導体層にエッチング処理を行う。
エッチング処理によって、レジストパターンが形成されていない領域にある導体層が除去され、導体層がレジストパターンと同様のパターン形状を有することとなり、導体パターン層が形成される。
【0092】
高精細化の観点から、導体パターン層におけるパターン幅は5μm以下であることが好ましく、2.5μm以下であることがより好ましい。パターン幅の下限値は特に限定されず、例えば、1μmである。
【0093】
本開示において、パターン幅は、以下の方法で測定される。
導体パターンについて、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM、日本電子社製 JSM-7200F)にて観察し、導体パターンの断線、短絡、又は、倒れ等の欠陥無く導体パターンが形成できたパターン上面部をパターン幅とした
【0094】
第1の導体パターン層形成工程で形成される導体パターン層のパターン幅Aは、半導体の並列接続の点で、回路基板における少なくとも1組の積層構造に含まれる少なくとも1つの導体パターン層のパターン幅Bと異なることが好ましい。回路基板に導体パターン層が2つ以上含まれている場合に、各導体パターン層のパターン幅Bは同じであってもよく、異なっていてもよい。回路基板に導体パターン層が2つ以上含まれている場合に、半導体の並列接続の点で、各導体パターン層のパターン幅は、基板から離れる方向に向かって、狭くなることが好ましい。
各導体パターン層のパターン幅Bが異なる場合には、パターン幅Aは、半導体の並列接続の点で、少なくとも1つのパターン幅Bと異なることが好ましい。
【0095】
特に、第1の導体パターン層形成工程で形成される導体パターン層のパターン幅Aの少なくとも一部は、半導体の並列接続の点で、回路基板における少なくとも1組の積層構造に含まれる少なくとも1つの導体パターン層のパターン幅Bよりも狭いことが好ましい。
各導体パターン層のパターン幅Bが異なる場合には、パターン幅Aの少なくとも一部は、半導体の並列接続の点で、少なくとも1つのパターン幅Bよりも狭いことが好ましい。
【0096】
エッチング処理の方法としては、公知のエッチング方法が挙げられる。
具体的には、特開2017-120435号公報の段落[0209]~[0210]に記載の方法、特開2010-152155号公報の段落[0048]~[0054]に記載の方法、エッチング液に浸漬するウェットエッチング、及び、プラズマエッチング等のドライエッチングが挙げられる。
【0097】
ウェットエッチングに用いられるエッチング液は、エッチングの対象に合わせて酸性又はアルカリ性のエッチング液を適宜選択できる。
【0098】
酸性のエッチング液としては、例えば、少なくとも1つの酸性化合物を含む酸性水溶液、並びに、酸性化合物と、塩化第2鉄、フッ化アンモニウム、及び、過マンガン酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1つとの酸性の混合水溶液が挙げられる。
【0099】
酸性水溶液に含まれる酸性化合物(水に溶解して酸性を示す化合物)としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、フッ酸、シュウ酸、及び、リン酸からなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。
【0100】
アルカリ性のエッチング液としては、例えば、少なくとも1つのアルカリ性化合物を含むアルカリ性水溶液、及び、アルカリ性化合物と塩(例えば、過マンガン酸カリウム等)とのアルカリ性の混合水溶液が挙げられる。
【0101】
アルカリ性水溶液に含まれるアルカリ性化合物(水に溶解してアルカリ性を示す化合物)としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミン、及び、有機アミンの塩(例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等)からなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。
【0102】
エッチング液は、レジストパターンを溶解しないことが好ましい。
【0103】
現像工程で使用される現像液が、エッチング処理に用いられるエッチング液を兼ねてもよい。この場合、現像処理とエッチング処理とが同時に実施されてもよい。
【0104】
エッチング処理の後に、エッチング液を除去するリンス処理を実施してもよい。リンス処理には、水等を使用できる。
【0105】
エッチング処理及び/又はリンス処理の後に、余分な液を除去する乾燥処理を実施してもよい。
【0106】
レジストパターンを剥離する方法としては、例えば、剥離液を用いてスプレー法、シャワー法、又は、パドル法等の公知の方法により除去する方法が挙げられる。
【0107】
剥離液としては、例えば、アルカリ性化合物を、水、ジメチルスルホキシド、及び、N-メチルピロリドンからなる群から選択される少なくとも1つに溶解させた液が挙げられる。
【0108】
アルカリ性化合物(水に溶解してアルカリ性を示す化合物)としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性無機化合物、及び、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物、第3級アミン化合物、第4級アンモニウム塩化合物等のアルカリ性有機化合物が挙げられる。
【0109】
剥離液の液温は、30℃~80℃が好ましく、50℃~80℃がより好ましい。
レジストパターンを剥離する好適な方法としては、液温が50℃~80℃である撹拌中の剥離液に1分~30分間浸漬する方法が挙げられる。
【0110】
剥離液は、導体パターン層を溶解しないことが好ましい。
【0111】
レジストパターンを剥離した後に、剥離液を除去するリンス処理を実施してもよい。リンス処理には、水等を使用できる。
【0112】
レジストパターンの剥離及び/又はリンス処理の後に、余分な液を除去する乾燥処理を実施してもよい。
【0113】
<第2の導体パターン層形成工程>
第2の導体パターン層形成工程では、レジストパターンが形成されていない領域にある導体層にめっき処理を行った後に、レジストパターンを剥離し、レジストパターンの剥離によって露出した導体層にエッチング処理を行って導体パターン層を形成する。
【0114】
めっき処理の方法としては、例えば、電解めっき及び無電解めっきが挙げられる。中でも、生産性の点から、めっきは、電解めっきが好ましい。
【0115】
電気めっきにおいて使用されるめっき液の成分としては、例えば、水溶性銅塩が挙げられる。水溶性銅塩としては、めっき液の成分として通常使用される水溶性銅塩を用いることができる。水溶性銅塩としては、例えば、無機銅塩、アルカンスルホン酸銅塩、アルカノールスルホン酸銅塩、及び有機酸銅塩よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。無機銅塩としては、例えば、硫酸銅、酸化銅、塩化銅、及び炭酸銅が挙げられる。アルカンスルホン酸銅塩としては、例えば、メタンスルホン酸銅、及びプロパンスルホン酸銅が挙げられる。アルカノールスルホン酸銅塩としては、例えば、イセチオン酸銅、及びプロパノールスルホン酸銅が挙げられる。有機酸銅塩としては、例えば、酢酸銅、クエン酸銅、及び酒石酸銅が挙げられる。
また、電気めっきにおいて使用されるめっき液の成分として、上記銅ではなく、対応する他の金属の塩等を用いてもよい。
【0116】
めっき液は、硫酸を含んでいてもよい。めっき液が硫酸を含むことで、めっき液のpH、及び硫酸イオン濃度を調整することができる。
【0117】
電気めっきの方法及び条件は、特に限定されない。
【0118】
電気めっきに使用されるめっき液の温度は、70℃以下であることが好ましく、10℃~40℃であることがより好ましい。電気めっきにおける電流密度は、0.1A/dm2~100A/dm2であることが好ましく、0.5A/dm2~20A/dm2であることがより好ましい。電流密度を高くすることで生産性を向上させることができる。電流密度を低くすることで、厚さの均一性を向上させることができる。
【0119】
めっき処理を行った後、レジストパターンを剥離する前に、めっき処理によって形成されためっき層の上に保護層を形成してもよい。
【0120】
保護層は、後述するレジストパターンを剥離する際に用いる剥離液、及び、レジストパターンの剥離によって露出した導体層にエッチング処理を行う際に用いるエッチング液に耐性を有する材料で形成されることが好ましい。保護層を構成する成分としては、例えば、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、マグネシウム、金、銀等の金属、これらの合金、及び、樹脂が挙げられる。中でも、保護層を構成する成分は、ニッケル又はクロムであることが好ましい。
【0121】
保護層の形成方法としては、例えば、電解めっき及び無電解めっきが挙げられる。中でも、生産性の点から、めっきは、電解めっきが好ましい。
保護層の厚さは特に限定されないが、0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。また、保護層の厚さは、3.0μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましい。
【0122】
第2の導体パターン層形成工程におけるレジストパターンを剥離する方法は、第1の導体パターン層形成工程におけるレジストパターンを剥離する方法と同様である。
【0123】
第2の導体パターン層形成工程では、レジストパターンが形成されていない領域にある導体層にめっき処理を行うことによって形成されためっき層をエッチングレジストとして使用し、レジストパターンの剥離によって露出した導体層にエッチング処理を行う。
エッチング処理によって、レジストパターンの剥離によって露出した導体層が除去され、パターン形状を有するめっき層(導体パターン層)が形成される。
【0124】
高精細化の観点から、導体パターン層におけるパターン幅は5μm以下であることが好ましく、2.5μm以下であることがより好ましい。パターン幅の下限値は特に限定されず、例えば、1μmである。
【0125】
第2の導体パターン層形成工程で形成される導体パターン層のパターン幅Aは、半導体の並列接続の点で、回路基板における少なくとも1組の積層構造に含まれる少なくとも1つの導体パターン層のパターン幅Bと異なることが好ましい。特に、第2の導体パターン層形成工程で形成される導体パターン層のパターン幅Aの少なくとも一部は、回路基板における少なくとも1組の積層構造に含まれる少なくとも1つの導体パターン層のパターン幅Bよりも狭いことが好ましい。パターン幅Aとパターン幅Bとの関係の好ましい態様は、上記のとおりである。
【0126】
エッチング処理の方法としては、公知のエッチング方法が挙げられる。
エッチング液としては、例えば、塩化第二鉄溶液、塩化第二銅溶液、アンモニアアルカリ溶液、硫酸-過酸化水素混合液、及び、リン酸-過酸化水素混合液が挙げられる。
【0127】
<その他の工程>
本開示に係る積層体の製造方法は、上記各工程以外に、その他の工程を含んでいてもよい。
【0128】
その他の工程としては、例えば、国際公開第2019/022089号の段落[0172]に記載の可視光線反射率を低下させる工程及び国際公開第2019/022089号の段落[0172]に記載の絶縁膜の表面に新たな導電層を形成する工程が挙げられる。
【0129】
本開示に係る積層体の製造方法は、上記導体層の一部若しくは全て、又は、上記導体パターン層の一部若しくは全てに対し、可視光線反射率を低下させる処理を行う工程を含んでいてもよい。
可視光線反射率を低下させる処理としては、酸化処理が挙げられる。導体層が銅を含む場合、銅を酸化処理して酸化銅とし、導体層を黒化することにより、導体層の可視光線反射率を低下させることができる。
可視光線反射率を低下させる処理については、特開2014-150118号公報の段落[0017]~[0025]、並びに、特開2013-206315号公報の段落[0041]、段落[0042]、段落[0048]及び段落[0058]に記載されており、これらの公報に記載の内容は本明細書に組み込まれる。
【0130】
本開示に係る積層体の製造方法では、回路基板に含まれる導体パターン層も、上記貼合工程、上記仮支持体剥離工程、上記露光工程、上記現像工程、上記第1の導体パターン層形成工程又は上記第2の導体パターン層形成工程を用いて、製造することが好ましい。
すなわち、本開示に係る積層体の製造方法は、表面に導体層を有する基板に対して、仮支持体と感光性層とを含む転写フィルムを、感光性層側が、基板の表面に設けられている導体層に接するように、転写フィルムと基板とを貼合する工程と、仮支持体を剥離する工程と、感光性層に対してパターン露光を行う工程と、露光された感光性層を現像してレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンが形成されていない領域にある導体層にエッチング処理を行った後に、レジストパターンを剥離して導体パターン層を形成するか、又は、レジストパターンが形成されていない領域にある導体層にめっき処理を行った後に、レジストパターンを剥離し、レジストパターンの剥離によって露出した導体層を除去して導体パターン層を形成する工程と、形成された導体パターン層上に、絶縁層及び導体層をこの順に積層して、回路基板を製造する工程をさらに含むことが好ましい。
【0131】
回路基板において、導体パターン層を2つ以上設ける場合には、少なくとも1つの導体パターン層を、上記貼合工程、上記仮支持体剥離工程、上記露光工程、上記現像工程、上記第1の導体パターン層形成工程又は上記第2の導体パターン層形成工程を用いて、製造すればよい。
【0132】
表面に導体層を有する基板において、導体層の好ましい態様は、上記導体層の欄に記載したとおりである。形成された導体パターン層上に積層される絶縁層及び導体層の好ましい態様は、上記絶縁層及び導体層の欄に記載したとおりである。
【0133】
以下、本開示に係る積層体の製造方法で用いられる転写フィルムの詳細について説明する。
【0134】
<転写フィルム>
転写フィルムは、仮支持体と感光性層とを含む。
【0135】
転写フィルムは、仮支持体と感光性層とが他の層を介さずに直接積層されていてもよいし、仮支持体と感光性層とが他の層を介して積層されていてもよい。また、感光性層の仮支持体に対向する面とは反対側の面に他の層が積層されていてもよい。
【0136】
仮支持体及び感光性層以外の他の層としては、例えば、保護フィルムが挙げられる。
【0137】
保護フィルムは、感光性層の仮支持体に対向する面とは反対側の面上に配置されることが好ましい。
【0138】
また、各層は、単層であってもよく、2層以上の複層であってもよい。
【0139】
転写フィルムの態様の一例を以下に示すが、これに制限されない。
(1)「仮支持体/感光性層/保護フィルム」
(2)「仮支持体/中間層/感光性層/保護フィルム」
(3)「仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性層/保護フィルム」
なお、上記各構成において、感光性層は、ネガ型感光性層又はポジ型光性層のいずれでもよいが、ネガ型感光性層であることが好ましい。また、感光性層が着色樹脂層であることも好ましい。
【0140】
転写フィルムは、エッチングレジスト用の転写フィルムであることが好ましい。
【0141】
転写フィルムにおいて、感光性層の仮支持体側とは反対側に他の層をさらに有する構成の場合、感光性層の仮支持体側とは反対側に配置される他の層の合計厚さは、感光性層の厚さに対して、0.1%~30%であることが好ましく、0.1%~20%であることがより好ましい。
【0142】
貼合工程時における気泡発生抑止の観点から、転写フィルムのうねりの最大幅は、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることがさらに好ましい。なお、転写フィルムのうねりの最大幅は、0μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがさらに好ましい。
【0143】
転写フィルムのうねりの最大幅は、以下の手順により測定される値である。
まず、転写フィルムを縦20cm×横20cmのサイズとなるように主面に垂直な方向に裁断し、試験サンプルを作製する。なお、転写フィルムが保護フィルムを有する場合には、保護フィルムを剥離する。次いで、表面が平滑でかつ水平なステージ上に、上記試験サンプルを仮支持体の表面がステージに対向するように静置する。静置後、試験サンプルの中心10cm角の範囲について、試験サンプルの表面をレーザー顕微鏡(例えば、(株)キーエンス社製 VK-9700SP)で走査して3次元表面画像を取得し、得られた3次元表面画像で観察される最大凸高さから最低凹高さを引き算する。上記操作を10個の試験サンプルについて行い、その算術平均値を「転写フィルムのうねり最大幅」とする。
【0144】
以下、転写フィルムについて、具体的な実施形態の一例を挙げて説明する。
【0145】
図1に示す転写フィルム20は、仮支持体11と、熱可塑性樹脂層13、中間層15、及び、感光性層17を含む転写層12と、保護フィルム19とを、この順に有する。
【0146】
なお、
図1で示す転写フィルム20は、保護フィルム19を配置した形態であるが、保護フィルム19は、配置されなくてもよい。
【0147】
また、
図1で示す転写フィルム20は熱可塑性樹脂層13及び中間層15を配置した形態であるが、熱可塑性樹脂層13若しくは中間層15、又は、熱可塑性樹脂層13及び中間層15は、配置されていなくてもよい。
【0148】
以下において、転写フィルムを構成する各要素について説明する。
【0149】
〔仮支持体〕
転写フィルムは、仮支持体を備える。
仮支持体は、感光性層を支持し、かつ、仮支持体剥離工程において剥離可能な支持体である。
【0150】
仮支持体は1層であってもよく2層以上が積層された積層体であってもよい。
仮支持体としては、例えば、基材のみからなるもの;基材と、基材の一方の面に配置されている粒子含有層と、を備える積層体;及び、基材と、基材の両面に配置されている粒子含有層と、を備える積層体が挙げられる。
【0151】
仮支持体を構成する基材としては、例えば、ガラス、樹脂フィルム及び紙が挙げられる。仮支持体を構成する基材は、強度、可撓性及び光透過性の観点から、樹脂フィルムであることが好ましい。
【0152】
樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET:polyethylene terephthalate)フィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。中でも、樹脂フィルムは、PETフィルムであることが好ましく、2軸延伸PETフィルムであることがより好ましい。
【0153】
基材の一方の面又は両面に粒子含有層が配置されている場合には、粒子含有層は1層であってもよく、2層以上であってもよい。
【0154】
粒子含有層は、例えば、基材上に、粒子含有層用組成物を塗布して乾燥させることにより形成される。また、粒子含有層は樹脂フィルムを製膜する際に共押し出し法により配置することもできる。粒子含有層用組成物は、バインダーポリマー及び粒子を含むことが好ましい。バインダーポリマーの種類は特に限定されず、例えば、目的に応じて適宜選択することができる。バインダーポリマーとしては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、スチレンブタジエン系樹脂、エステル樹脂、塩化ビニル樹脂、及び塩化ビニリデン樹脂が挙げられる。共押し出し法により粒子含有層を配置する場合には、バインダーポリマーとしてPETを用いることが好ましい。
【0155】
粒子含有層は、バインダーポリマー及び粒子をそれぞれ1種単独で含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
【0156】
粒子含有層に含まれる粒子は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。粒子含有層における粒子の含有量は、粒子含有層用組成物への粒子の添加量によって適宜調整可能である。本明細書では、粒子含有層に含まれる粒子を「添加粒子」という。
【0157】
添加粒子は、仮支持体の製造工程中に予期せず混入した不純物、及び、仮支持体の製造工程中に形成される粒子とは区別されるものである。添加粒子は、200℃で溶融しない特性を有する粒子であることが好ましい。
【0158】
仮支持体において、添加粒子であるか否かについては、例えば、以下の方法で判別することができる。添加粒子は、通常、形状及び分布に均一性があるため、光学顕微鏡で観察することにより判別することができる。
【0159】
添加粒子としては、例えば、無機粒子及び有機粒子が挙げられる。
【0160】
無機粒子としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化アルミニウム(アルミナ)等の無機酸化物の粒子が挙げられる。
【0161】
有機粒子としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスチレン等のポリマーの粒子が挙げられる。
【0162】
仮支持体が粒子含有層を有する場合には、粒子含有層に含まれる添加粒子は、無機酸化物の粒子であることが好ましい。
【0163】
添加粒子の平均粒径は特に限定されないが、例えば、0.1μm~10μmである。平均粒径は、ウルトラミクロトームで100nmの厚さの切片を切り出し、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて測定される。
【0164】
仮支持体の厚さは、転写フィルムと貼り合わせられる回路基板の変形を抑制する観点から、25μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、75μm以上であることがさらに好ましい。
また、仮支持体の厚さは、転写フィルムと貼り合わせられる回路基板との間に気泡が含まれるのを抑制する観点からは、50μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。
仮支持体の厚さは、200μm以下であってもよく、10μm以上であってもよい。
【0165】
仮支持体は、リサイクル品であってもよい。リサイクル品としては、使用済みフィルム等を洗浄した後、チップ化し、チップを原料としてフィルム化したものが挙げられる。リサイクル品の具体例としては、東レ社のEcouseシリーズが挙げられる。
【0166】
〔感光性層〕
感光性層は、露光により露光部の現像液に対する溶解性が低下し、非露光部が現像により除去されるネガ型感光性層であることが好ましい。しかし、感光性層はネガ型感光性層に制限されず、露光により露光部の現像液に対する溶解性が向上し、露光部が現像により除去されるポジ型感光性層であってもよい。
【0167】
感光性層は、例えば、感光性組成物を塗布し、乾燥させることにより得られる。
【0168】
感光性層は、樹脂、重合性化合物、及び重合開始剤を含むことが好ましい。また、後述のとおり、樹脂の一部又は全部としてアルカリ可溶性樹脂(アルカリ可溶性樹脂である重合体A等)が含まれることも好ましい。つまり、一態様において、感光性層は、アルカリ可溶性樹脂を含む樹脂、重合性化合物、及び重合開始剤を含むことが好ましい。
【0169】
感光性層は、感光性層の全質量を基準として、樹脂を10質量%~90質量%、重合性化合物を5質量%~70質量%、重合開始剤を0.01質量%~20質量%含むことが好ましい。
以下、各成分を順に説明する。
【0170】
<重合体A(樹脂)>
感光性層中に含まれる樹脂を、特に、重合体Aともいう。
【0171】
重合体Aとしては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂、アミドエポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、及び、エポキシアクリレート樹脂と酸無水物との反応で得られる酸変性エポキシアクリレート樹脂が挙げられる。これには限定されない。
【0172】
重合体Aとしては、(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0173】
なお、本開示において、(メタ)アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位を有する樹脂を意味する。(メタ)アクリル樹脂において、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位の含有量は、(メタ)アクリル樹脂の全質量に対して、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。
【0174】
重合体Aとしては、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位及びスチレン化合物に由来する構成単位を有する重合体も好ましい。
【0175】
重合体Aは、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
【0176】
重合体Aの酸価は、現像液による感光性層の膨潤を抑制することにより、解像性がより優れる観点から、250mgKOH/g以下が好ましく、200mgKOH/g未満がより好ましく、190mgKOH/g未満がさらに好ましい。
【0177】
重合体Aの酸価の下限値は特に制限されない。重合体Aの酸価は、現像性がより優れる観点から、60mgKOH/g以上が好ましく、80mgKOH/g以上がより好ましく、120mgKOH/g以上がさらに好ましい。
【0178】
なお、酸価(mgKOH/g)とは、試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの質量[mg]である。酸価は、例えば、化合物中における酸基の平均含有量から算出できる。
【0179】
重合体Aの酸価は、重合体Aを構成する構成単位の種類及び酸基を含む構成単位の含有量により調整すればよい。
【0180】
重合体Aの重量平均分子量は、5,000~500,000が好ましい。重量平均分子量が500,000以下の場合、解像性及び現像性を向上させる観点から好ましい。重量平均分子量は、100,000以下がより好ましく、60,000以下がさらに好ましい。
【0181】
一方で、重量平均分子量が5,000以上の場合、現像凝集物の性状、並びに感光性樹脂積層体とした場合のエッジフューズ性及びカットチップ性等の未露光膜の性状を制御する観点から好ましい。重量平均分子量は、10,000以上がより好ましく、20,000以上がさらに好ましく、30,000以上が特に好ましい。エッジフューズ性とは、感光性樹脂積層体としてロール状に巻き取った場合に、ロールの端面からの、感光性層のはみ出し易さの程度をいう。カットチップ性とは、未露光膜をカッターで切断した場合に、チップの飛び易さの程度をいう。このチップが感光性樹脂積層体の上面等に付着すると、後の露光工程等でマスクに転写して、不良品の原因となる。
なお、感光性樹脂積層体とは、転写フィルムと回路基板とを貼り合わせて得られる積層体のことである。
【0182】
重合体Aの分散度は、1.0~6.0が好ましく、1.0~5.0がより好ましく、1.0~4.0がさらに好ましく、1.0~3.0が特に好ましい。本開示において、分散度は、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)である。本開示において、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて測定される値である。
【0183】
感光性層は、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太りや解像度の悪化を抑制する観点から、重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。なお、このような芳香族炭化水素基としては、例えば、置換又は非置換のフェニル基、及び置換又は非置換のアラルキル基が挙げられる。重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位の含有量は、重合体Aの全質量に対して、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。上限としては特に限定されないが、95質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましい。なお、重合体Aを複数種類含む場合、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位の含有量の平均値が上記範囲内になることが好ましい。
【0184】
芳香族炭化水素基を有する単量体としては、例えば、アラルキル基を有するモノマー、スチレン、及びスチレン誘導体(例えば、メチルスチレン、ビニルトルエン、tert-ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、4-ビニル安息香酸、スチレンダイマー、及びスチレントリマー)が挙げられる。
【0185】
中でも、解像性をより向上させる観点から、重合体Aは、スチレン及びスチレン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種に由来する構成単位を1mmol/g~6mmol/g含むことが好ましく、3mmol/g~6mmol/g含むことがより好ましい。なお、重合体Aは、スチレンに由来する構成単位のみを含んでいてもよく、スチレン誘導体に由来する構成単位のみを含んでいてもよく、スチレンに由来する構成単位及びスチレン誘導体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0186】
アラルキル基としては、置換又は非置換のフェニルアルキル基(ベンジル基を除く)、及び置換又は非置換のベンジル基等が挙げられ、置換又は非置換のベンジル基が好ましい。
【0187】
フェニルアルキル基を有する単量体としては、フェニルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0188】
ベンジル基を有する単量体としては、ベンジル基を有する(メタ)アクリレート、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、及びクロロベンジル(メタ)アクリレート等;ベンジル基を有するビニルモノマー、例えば、ビニルベンジルクロライド、及びビニルベンジルアルコール等が挙げられる。中でも、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。一態様において、重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する単量体成分がベンジル(メタ)アクリレートである場合、ベンジル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量は、重合体Aの全質量に対して、50質量%~95質量%が好ましく、60質量%~90質量%がより好ましく、70質量%~90質量%がさらに好ましく、75質量%~90質量%が特に好ましい。
【0189】
芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体と、後述する第一の単量体の少なくとも1種及び/又は後述する第二の単量体の少なくとも1種とを重合することにより得られることが好ましい。
【0190】
芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を含まない重合体Aは、後述する第一の単量体の少なくとも1種を重合することにより得られることが好ましく、第一の単量体の少なくとも1種と後述する第二の単量体の少なくとも1種とを共重合することにより得られることがより好ましい。
【0191】
第一の単量体は、分子中にカルボキシ基を有する単量体である。第一の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、4-ビニル安息香酸、マレイン酸無水物、及びマレイン酸半エステル等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0192】
重合体Aにおける第一の単量体に由来する構成単位の含有量は、重合体Aの全質量に対して、5質量%~50質量%が好ましく、10質量%~40質量%がより好ましく、15質量%~30質量%がさらに好ましい。
【0193】
上記含有量を5質量%以上にすることは、良好な現像性を発現させる観点、エッジフューズ性を制御する等の観点から好ましい。上記含有量を50質量%以下にすることは、レジストパターンの高解像性及びスソ形状の観点から、さらにはレジストパターンの耐薬品性の観点から好ましい。
【0194】
第二の単量体は、非酸性であり、かつ、分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有する単量体である。第二の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類;並びに(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。中でも、第二の単量体は、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、又はn-ブチル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0195】
重合体Aにおける第二の単量体に由来する構成単位の含有量は、重合体Aの全質量に対して、5質量%~60質量%が好ましく、15質量%~50質量%がより好ましく、17質量%~45質量%がさらに好ましい。
【0196】
重合体Aがアラルキル基を有する単量体に由来する構成単位及び/又はスチレンを単量体に由来する構成単位を含む場合、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太りや解像度の悪化を抑制する観点から好ましい。例えば、メタクリル酸に由来する構成単位とベンジルメタクリレートに由来する構成単位とスチレンに由来する構成単位を含む共重合体、メタクリル酸に由来する構成単位とメチルメタクリレートに由来する構成単位とベンジルメタクリレートに由来する構成単位と由来するに由来する構成単位を含む共重合体等が好ましい。
【0197】
一態様において、重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を25質量%~55質量%、第一の単量体に由来する構成単位を20質量%~35質量%、第二の単量体に由来する構成単位を15質量%~45質量%含む重合体であることが好ましい。また、別の態様において、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を70質量%~90質量%、第一の単量体に由来する構成単位を10質量%~25質量%含む重合体であることが好ましい。
【0198】
重合体Aは、側鎖に直鎖構造、分岐構造、及び、脂環構造のいずれかを有してもよい。側鎖に分岐構造を有する基を含むモノマー、又は側鎖に脂環構造を有する基を含むモノマーを使用することによって、重合体Aの側鎖に分岐構造や脂環構造を導入することができる。脂環構造を有する基は単環又は多環であってもよい
【0199】
側鎖に分岐構造を有する基を含むモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸tert-アミル、(メタ)アクリル酸sec-アミル、(メタ)アクリル酸2-オクチル、(メタ)アクリル酸3-オクチル及び(メタ)アクリル酸tert-オクチル等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチルが好ましく、メタクリル酸イソプロピル又はメタクリル酸tert-ブチルがより好ましい。
【0200】
側鎖に脂環構造を有する基を含むモノマーの具体例としては、単環の脂肪族炭化水素基を有するモノマー、及び、多環の脂肪族炭化水素基を有するモノマーが挙げられる。また、側鎖に脂環構造を有する基を含むモノマーとしては、炭素原子数5個~20個の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。より具体的な例としては、(メタ)アクリル酸(ビシクロ〔2.2.1]ヘプチル-2)、(メタ)アクリル酸-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5-ジメチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-5-エチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5,8-トリエチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5-ジメチル-8-エチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-メチル-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-エチル-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシ-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ-4,7-メンタノインデン-5-イル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ-4,7-メンタノインデン-1-イルメチル、(メタ)アクリル酸-1-メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸-3-ヒドロキシ-2,6,6-トリメチル-ビシクロ〔3.1.1〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸-3,7,7-トリメチル-4-ヒドロキシ-ビシクロ〔4.1.0〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェンチル、(メタ)アクリル酸-2,2,5-トリメチルシクロヘキシル、及び(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが挙げられる。
【0201】
中でも、側鎖に脂環構造を有する基を含むモノマーは、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸フェンチル、(メタ)アクリル酸1-メンチル、又は(メタ)アクリル酸トリシクロデカンが好ましく、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル、又は(メタ)アクリル酸トリシクロデカンがより好ましい。
【0202】
感光性層に含まれる重合体Aは、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0203】
重合体Aを2種以上含む場合には、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体Aを2種類含むこと、又は芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体Aと芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を含まない重合体Aとを含むことが好ましい。後者の場合、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を含む重合体Aの割合は、重合体Aの全質量に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
【0204】
また、重合体Aは、感度、及び、解像度の観点から、架橋性基を有することが好ましい。
【0205】
架橋性基は、現像性、感度、及び、解像度の観点から、重合性基であることが好ましい。
【0206】
重合性基としては、重合反応に関与する基であれば特に制限されず、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、スチリル基及びマレイミド基等のエチレン性不飽和結合を有する基;並びに、エポキシ基及びオキセタン基等のカチオン性重合性基を有する基が挙げられる。
【0207】
重合体Aは、エチレン性不飽和結合を有することが好ましく、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有することがより好ましい。
【0208】
重合体Aは、架橋性基を有するアルカリ可溶性樹脂であることが好ましく、エチレン性不飽和結合を有するアクリル樹脂であることがより好ましく、エチレン性不飽和基を有する構成単位を含むアクリル樹脂であることがさらに好ましい。
【0209】
重合体Aの合成は、上述された単数又は複数の単量体を、アセトン、メチルエチルケトン、及びイソプロパノール等の溶剤で希釈した溶液に、過酸化ベンゾイル、及びアゾイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を適量添加し、加熱攪拌することにより行われることが好ましい。混合物の一部を反応液に滴下しながら合成を行う場合もある。反応終了後、さらに溶剤を加えて、所望の濃度に調整する場合もある。合成手段としては、溶液重合以外に、塊状重合、懸濁重合、又は乳化重合を用いてもよい。
【0210】
重合体Aのガラス転移温度Tgは、30℃~135℃が好ましい。135℃以下のTgを有する重合体Aを使用することによって、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太りや解像度の悪化を抑制できる。この観点から、重合体AのTgは、130℃以下より好ましく、120℃以下がさらに好ましく、110℃以下が特に好ましい。また、30℃以上のTgを有する重合体Aを使用することは、耐エッジフューズ性を向上させる観点から好ましい。この観点から、重合体AのTgは、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましく、60℃以上が特に好ましく、70℃以上が最も好ましい。
【0211】
感光性層は、重合体Aとして、上述以外のその他の樹脂を含んでもよい。
【0212】
その他の樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン-アクリル系共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、及びポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0213】
重合体Aとして、後述する熱可塑性樹脂層の欄で述べるアルカリ可溶性樹脂を使用してもよい。
【0214】
重合体Aの含有量は、感光性層の全質量に対して、10質量%~90質量%であることが好ましく、30質量%~70質量%であることがより好ましく、40質量%~60質量%であることがさらに好ましい。感光性層の全質量に対する重合体Aの含有量が90質量%以下であると、現像時間を制御することができるため好ましい。一方、感光性層の全質量に対する重合体Aの含有量が10質量%以上であると、耐エッジフューズ性が向上するため好ましい。
【0215】
<重合性化合物>
感光性層は、重合性基を有する重合性化合物を含むことが好ましい。なお、本開示において「重合性化合物」とは、後述する重合開始剤の作用を受けて重合する化合物であって、上述した重合体Aとは異なる化合物を意味する。
【0216】
重合性化合物が有する重合性基としては、重合反応に関与する基であれば特に制限されず、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、スチリル基及びマレイミド基等のエチレン性不飽和基を有する基;並びに、エポキシ基及びオキセタン基等のカチオン性重合性基を有する基が挙げられる。
【0217】
重合性基としては、エチレン性不飽和基を有する基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0218】
重合性化合物としては、感光性層の感光性がより優れる点で、1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(エチレン性不飽和化合物)が好ましく、一分子中に2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(多官能エチレン性不飽和化合物)がより好ましい。
【0219】
また、解像性及び剥離性により優れる点で、エチレン性不飽和化合物が一分子中に有するエチレン性不飽和基の数は、6つ以下が好ましく、3つ以下がより好ましく、2つ以下がさらに好ましい。
【0220】
感光性層は、感光性層の感光性と解像性及び剥離性とのバランスがより優れる点で、一分子中に2つ又は3つのエチレン性不飽和基を有する2官能又は3官能エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、一分子中に2つのエチレン性不飽和基を有する2官能エチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましい。
【0221】
2官能エチレン性不飽和化合物の含有量は、重合性化合物の全質量に対して、剥離性に優れる観点から、20質量%以上が好ましく、40質量%超がより好ましく、55質量%以上がさらに好ましい。2官能エチレン性不飽和化合物の含有量の上限は特に制限されず、100質量%であってもよい。すなわち、重合性化合物が全て2官能エチレン性不飽和化合物であってもよい。
【0222】
また、エチレン性不飽和化合物としては、重合性基として(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0223】
(重合性化合物B1)
感光性層は、芳香環及び2つのエチレン性不飽和基を有する重合性化合物B1を含むことも好ましい。重合性化合物B1は、上述した重合性化合物Bのうち、一分子中に1つ以上の芳香環を有する2官能エチレン性不飽和化合物である。
【0224】
感光性層中、重合性化合物の全質量に対する重合性化合物B1の含有量の質量比は、解像性がより優れる観点から、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、55質量%以上がさらに好ましく、60質量%以上が特に好ましい。上限は特に制限されないが、剥離性の観点から、例えば100質量%以下であり、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましく、85質量%以下が特に好ましい。
【0225】
重合性化合物B1が有する芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環等の芳香族炭化水素環、チオフェン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環及びピリジン環等の芳香族複素環、並びに、それらの縮合環が挙げられ、芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。なお、上記芳香環は、置換基を有してもよい。
【0226】
重合性化合物B1は、芳香環を1つのみ有してもよく、2つ以上の芳香環を有してもよい。
【0227】
重合性化合物B1は、現像液による感光性層の膨潤を抑制することにより、解像性が向上する観点から、ビスフェノール構造を有することが好ましい。
【0228】
ビスフェノール構造としては、例えば、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)に由来するビスフェノールA構造、ビスフェノールF(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)に由来するビスフェノールF構造、及びビスフェノールB(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン)に由来するビスフェノールB構造が挙げられ、ビスフェノールA構造が好ましい。
【0229】
ビスフェノール構造を有する重合性化合物B1としては、例えば、ビスフェノール構造と、そのビスフェノール構造の両端に結合した2つの重合性基(好ましくは(メタ)アクリロイル基)とを有する化合物が挙げられる。
【0230】
ビスフェノール構造の両端と2つの重合性基とは、直接結合してもよく、1つ以上のアルキレンオキシ基を介して結合してもよい。ビスフェノール構造の両端に付加するアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基が好ましく、エチレンオキシ基がより好ましい。ビスフェノール構造に付加するアルキレンオキシ基の付加数は特に制限されないが、1分子あたり4個~16個が好ましく、6個~14個がより好ましい。
【0231】
ビスフェノール構造を有する重合性化合物B1については、特開2016-224162号公報の段落[0072]~[0080]に記載されており、この公報に記載の内容は本明細書に組み込まれる。
【0232】
重合性化合物B1としては、ビスフェノールA構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物が好ましく、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンがより好ましい。
2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(FA-324M、日立化成社製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシエトキシプロポキシ)フェニル)プロパン、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(NKエステルBPE-500、エチレンオキサイド鎖の平均繰り返し数10、新中村化学工業社製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシドデカエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン(FA-3200MY、日立化成社製)、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(NKエステルBPE-1300N、エチレンオキサイド鎖の平均繰り返し数30、新中村化学工業社製)、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(NKエステルBPE-200、エチレンオキサイド鎖の平均繰り返し数4、新中村化学工業社製)、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(NKエステルBPE-100、エチレンオキサイド鎖の平均繰り返し数2.6、新中村化学工業社製)、及びエトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(NKエステルA-BPE-10、エチレンオキサイド鎖の平均繰り返し数10、新中村化学工業社製)が挙げられる。
【0233】
重合性化合物B1としては、下記一般式(B1)で表される化合物も好ましい。
【0234】
【0235】
一般式(B1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。AはC2H4を表す。BはC3H6を表す。n1及びn3は各々独立に1~39の整数であり、かつ、n1+n3は2~40の整数である。n2及びn4は各々独立に0~29の整数であり、かつ、n2+n4は0~30の整数である。-(A-O)-及び-(B-O)-の構成単位の配列は、ランダムであってもブロックであってもよい。そして、ブロックの場合、-(A-O)-と-(B-O)-とのいずれがビスフェノール基側でもよい。
【0236】
一態様において、n1+n2+n3+n4は、2~20が好ましく、2~16がより好ましく、4~12がさらに好ましい。また、n2+n4は、0~10が好ましく、0~4がより好ましく、0~2がさらに好ましく、0が特に好ましい。
【0237】
感光性層に含まれる重合性化合物B1は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0238】
重合性化合物B1の含有量は、解像性がより優れる観点から、感光性層の全質量に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、転写性及びエッジフュージョン(転写部材の端部から感光性樹脂が滲み出す現象)の観点から、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
【0239】
感光性層は、上述した重合性化合物B1以外の重合性化合物を含んでもよい。
重合性化合物B1以外の重合性化合物は、特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択できる。例えば、一分子中に1つのエチレン性不飽和基を有する化合物(単官能エチレン性不飽和化合物)、芳香環を有さない2官能エチレン性不飽和化合物、及び3官能以上のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
【0240】
単官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0241】
芳香環を有さない2官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールプロパンジアクリレートが挙げられる。
【0242】
アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(A-DCP、新中村化学工業社製)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(DCP、新中村化学工業社製)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(A-NOD-N、新中村化学工業社製)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(A-HD-N、新中村化学工業社製)、エチレングリコールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0243】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、及びポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0244】
ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、プロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、並びに、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。の市販品としては、例えば、8UX-015A(大成ファインケミカル社製)、UA-32P(新中村化学工業社製)、及びUA-1100H(新中村化学工業社製)が挙げられる。
【0245】
2官能エチレン性不飽和化合物の含有量は、解像性、レジスト剥離性がより優れる観点から、ネガ型感光性層の全質量に対して、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。上限は、転写性及びエッジフュージョン(転写部材の端部から感光性組成物が滲み出す現象)の観点から、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
【0246】
2官能エチレン性不飽和化合物の含有量は、解像性、レジスト剥離性がより優れる観点から、エチレン性不飽和基を有する重合性化合物の全質量に対して、40質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。上限は、転写性及びエッジフュージョン(転写フィルムの端部から感光性組成物が滲み出す現象)の観点から、100質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
【0247】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、及びこれらのアルキレンオキサイド変性物が挙げられる。
【0248】
ここで、「(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、及びヘキサ(メタ)アクリレートを包含する概念であり、「(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレートを包含する概念である。
【0249】
一態様において、感光性層は、上述した重合性化合物B1及び3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことも好ましく、上述した重合性化合物B1及び2種以上の3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましい。この場合、重合性化合物B1と3官能以上のエチレン性不飽和化合物の質量比は、(重合性化合物B1の合計質量):(3官能以上のエチレン性不飽和化合物の合計質量)=1:1~5:1が好ましく、1.2:1~4:1がより好ましく、1.5:1~3:1がさらに好ましい。
【0250】
また、一態様において、感光性層は、上述した重合性化合物B1及び2種以上の3官能のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
【0251】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物のアルキレンオキサイド変性物としては、例えば、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート化合物(日本化薬社製KAYARAD(登録商標)DPCA-20、新中村化学工業社製A-9300-1CL等)、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物(日本化薬社製KAYARAD RP-1040、新中村化学工業社製ATM-35E及びA-9300、ダイセル・オルネクス社製EBECRYL(登録商標) 135等)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業社製A-GLY-9E等)、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成社製)、アロニックスM-520(東亞合成社製)、及びアロニックスM-510(東亞合成社製)が挙げられる。
【0252】
また、重合性化合物として、酸基(カルボキシ基等)を有する重合性化合物を使用してもよい。上記酸基は酸無水物基を形成していてもよい。酸基を有する重合性化合物としては、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成社製)、アロニックス(登録商標)M-520(東亞合成社製)、及びアロニックス(登録商標)M-510(東亞合成社製)が挙げられる。
【0253】
酸基を有する重合性化合物として、例えば、特開2004-239942号公報の段落[0025]~[0030]に記載の酸基を有する重合性化合物を用いてもよい。
【0254】
感光性層に含まれる重合性化合物は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0255】
重合性化合物の含有量は、感光性層の全質量に対し、10質量%~70質量%が好ましく、15質量%~70質量%がより好ましく、20質量%~70質量%がさらに好ましい。
【0256】
重合性化合物(重合性化合物B1を含む)の分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)としては、200~3,000が好ましく、280~2,200がより好ましく、300~2,200がさらに好ましい。
【0257】
<重合開始剤>
感光性層は、重合開始剤を含むことも好ましい。
【0258】
重合開始剤は重合反応の形式に応じて選択され、例えば、熱重合開始剤、及び光重合開始剤が挙げられる。
重合開始剤は、ラジカル重合開始剤でもカチオン重合開始剤でもよい。
【0259】
感光性層は、光重合開始剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤は、紫外線、可視光線及びX線等の活性光線を受けて、重合性化合物の重合を開始する化合物である。光重合開始剤としては、特に制限されず、公知の光重合開始剤を使用できる。
【0260】
光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤が挙げられ、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0261】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル構造を有する光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する光重合開始剤、及びN-フェニルグリシン構造を有する光重合開始剤が挙げられる。
【0262】
また、感光性層は、感光性、露光部及び非露光部の視認性、及び解像性の観点から、光ラジカル重合開始剤として、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。なお、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体及びその誘導体における2つの2,4,5-トリアリールイミダゾール構造は、同一であっても異なっていてもよい。
【0263】
2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体の誘導体としては、例えば、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、及び2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体が挙げられる。
【0264】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、特開2011-95716号公報の段落[0031]~[0042]、特開2015-14783号公報の段落[0064]~[0081]に記載された重合開始剤を用いてもよい。
【0265】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジメチルアミノ安息香酸エチル(DBE、CAS No.10287-53-3)、ベンゾインメチルエーテル、アニシル(p,p’-ジメトキシベンジル)、TAZ-110(商品名:みどり化学社製)、ベンゾフェノン、4,4′-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、TAZ-111(商品名:みどり化学社製)、Irgacure OXE01、OXE02、OXE03、OXE04(BASF社製)、Omnirad651及び369(商品名:IGM Resins B.V.社製)、及び2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール(東京化成工業社製)が挙げられる。
【0266】
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、1-[4-(フェニルチオ)]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:IRGACURE(登録商標) OXE-01、BASF社製)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)(商品名:IRGACURE OXE-02、BASF社製)、IRGACURE OXE-03(BASF社製)、IRGACURE OXE-04(BASF社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン(商品名:Omnirad 379EG、IGM Resins B.V.製)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 907、IGM Resins B.V.製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 127、IGM Resins B.V.製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1(商品名:Omnirad 369、IGM Resins B.V.製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 1173、IGM Resins B.V.製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:Omnirad 184、IGM Resins B.V.製)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名:Omnirad 651、IGM Resins B.V.製)、2,4,6-トリメチルベンゾリル-ジフェニルフォスフィンオキサイド(商品名:Omnirad TPO H、IGM Resins B.V.製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾリル)フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:Omnirad 819、IGM Resins B.V.製)、オキシムエステル系の光重合開始剤(商品名:Lunar 6、DKSHジャパン社製)、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビスイミダゾール(2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体)(商品名:B-CIM、Hampford社製)、及び2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体(商品名:BCTB、東京化成工業社製)、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-3-シクロペンチルプロパン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:TR-PBG-305、常州強力電子新材料社製)、1,2-プロパンジオン,3-シクロヘキシル-1-[9-エチル-6-(2-フラニルカルボニル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,2-(O-アセチルオキシム)(商品名:TR-PBG-326、常州強力電子新材料社製)、及び3-シクロヘキシル-1-(6-(2-(ベンゾイルオキシイミノ)ヘキサノイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル)-プロパン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:TR-PBG-391、常州強力電子新材料社製)が挙げられる。
【0267】
光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)は、活性光線を受けて酸を発生する化合物である。光カチオン重合開始剤としては、波長300nm以上、好ましくは波長300nm~450nmの活性光線に感応し、酸を発生する化合物が好ましいが、その化学構造は制限されない。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光カチオン重合開始剤についても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応し、酸を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく使用できる。
【0268】
光カチオン重合開始剤としては、pKaが4以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤が好ましく、pKaが3以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤がより好ましく、pKaが2以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤が特に好ましい。pKaの下限値は特に定めないが、例えば、-10.0以上が好ましい。
【0269】
光カチオン重合開始剤としては、イオン性光カチオン重合開始剤及び非イオン性光カチオン重合開始剤が挙げられる。
【0270】
イオン性光カチオン重合開始剤として、例えば、ジアリールヨードニウム塩類及びトリアリールスルホニウム塩類等のオニウム塩化合物、並びに、第4級アンモニウム塩類が挙げられる。
【0271】
イオン性光カチオン重合開始剤としては、特開2014-085643号公報の段落[0114]~[0133]に記載のイオン性光カチオン重合開始剤を用いてもよい。
【0272】
非イオン性光カチオン重合開始剤としては、例えば、トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及びオキシムスルホネート化合物が挙げられる。トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアゾメタン化合物及びイミドスルホネート化合物としては、特開2011-221494号公報の段落[0083]~[0088]に記載の化合物を用いてもよい。また、オキシムスルホネート化合物としては、国際公開第2018/179640号の段落[0084]~[0088]に記載された化合物を用いてもよい。
【0273】
感光性層は、光ラジカル重合開始剤を含むことが好ましく、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0274】
感光性層に含まれる重合開始剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0275】
重合開始剤(好ましくは光重合開始剤)の含有量は、特に制限されないが、感光性層の全質量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましい。上限は特に制限されないが、ネガ型感光性層の全質量に対し、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がさらに好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0276】
<色素>
感光性層は、露光部及び非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び解像性の観点から、発色時の波長範囲400nm~780nmにおける最大吸収波長が450nm以上であり、かつ、酸、塩基、又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素(「色素N」ともいう)を含むことも好ましい。色素Nを含むと、詳細なメカニズムは不明であるが、隣接する層(例えば、中間層)との密着性が向上し、解像性により優れる。
【0277】
本開示において、色素が「酸、塩基、又はラジカルにより極大吸収波長が変化する」とは、発色状態にある色素が酸、塩基、又はラジカルにより消色する態様、消色状態にある色素が酸、塩基、又はラジカルにより発色する態様、及び発色状態にある色素が他の色相の発色状態に変化する態様のいずれの態様を意味してもよい。
【0278】
具体的には、色素Nは、露光により消色状態から変化して発色する化合物であってもよいし、露光により発色状態から変化して消色する化合物であってもよい。この場合、露光により酸、塩基、又はラジカルが感光性層内において発生し作用することにより、発色又は消色の状態が変化する色素でもよく、酸、塩基、又はラジカルにより感光性層内の状態(例えばpH)が変化することで発色又は消色の状態が変化する色素でもよい。また、露光を介さずに、酸、塩基、又はラジカルを刺激として直接受けて発色又は消色の状態が変化する色素でもよい。
【0279】
中でも、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、色素Nは、酸又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素が好ましく、ラジカルにより最大吸収波長が変化する色素がより好ましい。
【0280】
感光性層がネガ型感光性層である場合は、感光性層は、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、色素Nとしてラジカルにより最大吸収波長が変化する色素、及び光ラジカル重合開始剤の両者を含むことが好ましい。
【0281】
また、露光部及び非露光部の視認性の観点から、色素Nは、酸、塩基、又はラジカルにより発色する色素であることが好ましい。
【0282】
色素Nの発色機構の例としては、感光性層に光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)、又は光塩基発生剤を添加して、露光後に光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、又は光塩基発生剤から発生するラジカル、酸、又は塩基によって、ラジカル反応性色素、酸反応性色素、又は塩基反応性色素(例えばロイコ色素)が発色する態様が挙げられる。
【0283】
色素Nは、露光部及び非露光部の視認性の観点から、発色時の波長範囲400nm~780nmにおける極大吸収波長が、550nm以上であることが好ましく、550nm~700nmであることがより好ましく、550nm~650nmであることがさらに好ましい。
【0284】
また、色素Nは、発色時の波長範囲400nm~780nmにおける極大吸収波長を1つのみ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。色素Nが発色時の波長範囲400nm~780nmにおける極大吸収波長を2つ以上有する場合は、2つ以上の極大吸収波長のうち吸光度が最も高い極大吸収波長が450nm以上であればよい。
【0285】
色素Nの極大吸収波長は、大気雰囲気下で、分光光度計:UV3100((株)島津製作所製)を用いて、400~780nmの範囲で色素Nを含む溶液(液温25℃)の透過スペクトルを測定し、光の強度が極小となる波長(極大吸収波長)を検出することにより、得られる。
【0286】
露光により発色又は消色する色素としては、例えば、ロイコ化合物が挙げられる。
【0287】
露光により消色する色素としては、例えば、ロイコ化合物、ジアリールメタン系色素、オキザジン系色素、キサンテン系色素、イミノナフトキノン系色素、アゾメチン系色素、及びアントラキノン系色素が挙げられる。
【0288】
色素Nとしては、露光部及び非露光部の視認性の観点から、ロイコ化合物が好ましい。
【0289】
ロイコ化合物としては、例えば、トリアリールメタン骨格を有するロイコ化合物(トリアリールメタン系色素)、スピロピラン骨格を有するロイコ化合物(スピロピラン系色素)、フルオラン骨格を有するロイコ化合物(フルオラン系色素)、ジアリールメタン骨格を有するロイコ化合物(ジアリールメタン系色素)、ローダミンラクタム骨格を有するロイコ化合物(ローダミンラクタム系色素)、インドリルフタリド骨格を有するロイコ化合物(インドリルフタリド系色素)、及びロイコオーラミン骨格を有するロイコ化合物(ロイコオーラミン系色素)が挙げられる。
【0290】
中でも、色素Nは、トリアリールメタン系色素又はフルオラン系色素が好ましく、トリフェニルメタン骨格を有するロイコ化合物(トリフェニルメタン系色素)又はフルオラン系色素がより好ましい。
【0291】
ロイコ化合物としては、露光部及び非露光部の視認性の観点から、ラクトン環、スルチン環、又はスルトン環を有することが好ましい。これにより、ロイコ化合物が有するラクトン環、スルチン環、又はスルトン環を、光ラジカル重合開始剤から発生するラジカル又は光カチオン重合開始剤から発生する酸と反応させて、ロイコ化合物を閉環状態に変化させて消色させるか、又はロイコ化合物を開環状態に変化させて発色させることができる。ロイコ化合物としては、ラクトン環、スルチン環、又はスルトン環を有し、ラジカル、又は酸によりラクトン環、スルチン環又はスルトン環が開環して発色する化合物が好ましく、ラクトン環を有し、ラジカル又は酸によりラクトン環が開環して発色する化合物がより好ましい。
【0292】
色素Nとしては、例えば、以下の染料及びロイコ化合物が挙げられる。
色素Nのうち染料の具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーレッド、ベンゾプルプリン4B、α-ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルー-ナフタレンスルホン酸塩、ビクトリアピュアブルーBOH(保土谷化学工業社製)、オイルブルー#603(オリヱント化学工業社製)、オイルピンク#312(オリヱント化学工業社製)、オイルレッド5B(オリヱント化学工業社製)、オイルスカーレット#308(オリヱント化学工業社製)、オイルレッドOG(オリヱント化学工業社製)、オイルレッドRR(オリヱント化学工業社製)、オイルグリーン#502(オリヱント化学工業社製)、スピロンレッドBEHスペシャル(保土谷化学工業社製)、m-クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4-p-ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2-カルボキシアニリノ-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2-カルボキシステアリルアミノ-4-p-N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ-フェニルイミノナフトキノン、1-フェニル-3-メチル-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノ-5-ピラゾロン、及び1-β-ナフチル-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノ-5-ピラゾロンが挙げられる。
【0293】
色素Nのうちロイコ化合物の具体例としては、p,p’,p”-ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2-(N-フェニル-N-メチルアミノ)-6-(N-p-トリル-N-エチル)アミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-p-トルイジノ)フルオラン、3,6-ジメトキシフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-5-メチル-7-(N,N-ジベンジルアミノ)フルオラン、3-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メトキシ-7-アミノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-(4-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-クロロフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-ベンジルアミノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7,8-ベンゾフロオラン、3-(N,N-ジブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジブチルアミノ)-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3,3-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-フタリド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、及び3’,6’-ビス(ジフェニルアミノ)スピロイソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン-3-オンが挙げられる。
【0294】
色素Nは、露光部及び非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び解像性の観点から、ラジカルにより最大吸収波長が変化する色素であることが好ましく、ラジカルにより発色する色素であることがより好ましい。
【0295】
色素Nとしては、ロイコクリスタルバイオレット、クリスタルバイオレットラクトン、ブリリアントグリーン、又はビクトリアピュアブルー-ナフタレンスルホン酸塩が好ましい。
【0296】
感光性層に含まれる色素Nは、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0297】
色素Nの含有量は、露光部及び非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び解像性の観点から、感光性層の全質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.1質量%~10質量%がより好ましく、0.1質量%~5質量%がさらに好ましく、0.1質量%~1質量%が特に好ましい。
【0298】
色素Nの含有量は、感光性層の全質量中に含まれる色素Nの全てを発色状態にした場合の色素の含有量を意味する。以下に、ラジカルにより発色する色素を例に、色素Nの含有量の定量方法を説明する。
メチルエチルケトン100mLに、色素0.001g及び0.01gを溶かした溶液を調製する。得られた各溶液に、光ラジカル重合開始剤Irgacure OXE01(商品名、BASFジャパン株式会社)を加え、365nmの光を照射することによりラジカルを発生させ、全ての色素を発色状態にする。その後、大気雰囲気下で、分光光度計(UV3100、(株)島津製作所製)を用いて、液温が25℃である各溶液の吸光度を測定し、検量線を作成する。
次に、色素に代えて感光性層3gをメチルエチルケトンに溶かすこと以外は上記と同様の方法で、色素を全て発色させた溶液の吸光度を測定する。得られた感光性層を含む溶液の吸光度から、検量線に基づいて感光性層に含まれる色素の含有量を算出する。
なお、感光性層3gとは、感光性組成物中の全固形分の3gと同様である。
【0299】
<熱架橋性化合物>
得られる硬化膜の強度、及び得られる未硬化膜の粘着性の観点から、感光性層は、熱架橋性化合物を含むことが好ましい。なお、本開示においては、後述するエチレン性不飽和基を有する熱架橋性化合物は、重合性化合物としては扱わず、熱架橋性化合物として扱うものとする。
【0300】
熱架橋性化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、メチロール化合物、及びブロックイソシアネート化合物が挙げられる。中でも、得られる硬化膜の強度、及び得られる未硬化膜の粘着性の観点から、ブロックイソシアネート化合物が好ましい。
【0301】
ブロックイソシアネート化合物は、ヒドロキシ基及びカルボキシ基と反応するため、例えば、樹脂及び/又は重合性化合物等が、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する場合には、形成される膜の親水性が下がり、ネガ型感光性層を硬化した膜を保護膜として使用する場合の機能が強化される傾向がある。
【0302】
なお、ブロックイソシアネート化合物とは、「イソシアネートのイソシアネート基をブロック剤で保護(いわゆる、マスク)した構造を有する化合物」を指す。
【0303】
ブロックイソシアネート化合物の解離温度は、特に制限されないが、100℃~160℃が好ましく、130~150℃がより好ましい。
【0304】
ブロックイソシアネートの解離温度とは、「示差走査熱量計を用いて、DSC(Differential scanning calorimetry)分析にて測定した場合における、ブロックイソシアネートの脱保護反応に伴う吸熱ピークの温度」を意味する。
【0305】
示差走査熱量計としては、例えば、セイコーインスツルメンツ社製の示差走査熱量計(型式:DSC6200)を好適に使用できる。但し、示差走査熱量計は、これに限定されない。
【0306】
解離温度が100℃~160℃であるブロック剤としては、活性メチレン化合物〔マロン酸ジエステル(マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル等)〕、オキシム化合物(ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、及びシクロヘキサノンオキシム等の分子内に-C(=N-OH)-で表される構造を有する化合物)が挙げられる。
【0307】
中でも、解離温度が100℃~160℃であるブロック剤としては、例えば、保存安定性の観点から、オキシム化合物から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0308】
ブロックイソシアネート化合物は、例えば、膜の脆性改良、被転写体との密着力向上等の観点から、イソシアヌレート構造を有することが好ましい。
【0309】
イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートをイソシアヌレート化して保護することにより得られる。
【0310】
イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物の中でも、オキシム化合物をブロック剤として用いたオキシム構造を有する化合物が、オキシム構造を有さない化合物よりも解離温度を好ましい範囲にしやすく、かつ、現像残渣を少なくしやすいという観点から好ましい。
【0311】
ブロックイソシアネート化合物は、重合性基を有していてもよい。
【0312】
重合性基としては、特に制限はなく、公知の重合性基を用いることができ、ラジカル重合性基が好ましい。
【0313】
重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、及びスチリル基等のエチレン性不飽和基、並びに、グリシジル基等のエポキシ基を有する基が挙げられる。
【0314】
中でも、重合性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましく、アクリロイル基がさらに好ましい。
【0315】
ブロックイソシアネート化合物としては、市販品を使用できる。
【0316】
ブロックイソシアネート化合物の市販品の例としては、カレンズ(登録商標) AOI-BM、カレンズ(登録商標) MOI-BM、カレンズ(登録商標) MOI-BP等(以上、昭和電工社製)、ブロック型のデュラネートシリーズ(例えば、デュラネート(登録商標) TPA-B80E、デュラネート(登録商標) WT32-B75P等、旭化成ケミカルズ社製)が挙げられる。
【0317】
また、ブロックイソシアネート化合物として、下記の構造の化合物を用いることもできる。
【0318】
【0319】
感光性層に含まれる熱架橋性化合物は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
感光性層が熱架橋性化合物を含む場合、熱架橋性化合物の含有量は、感光性層の全質量に対して、1質量%~50質量%が好ましく、5質量%~30質量%がより好ましい。
【0320】
<界面活性剤>
感光性層は、厚さ均一性の観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。
【0321】
界面活性剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落[0017]、及び、特開2009-237362号公報の段落[0060]~[0071]に記載の界面活性剤が挙げられる。
【0322】
界面活性剤としては、炭化水素系界面活性剤、フッ素系界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤を挙げることができる。環境適性向上の観点から、界面活性剤はフッ素原子を含まないことが好ましい。界面活性剤としては、炭化水素系界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0323】
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファック F-171、F-172、F-173、F-176、F-177、F-141、F-142、F-143、F-144、F-437、F-475、F-477、F-479、F-482、F-551-A、F-552、F-554、F-555-A、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-565、F-563、F-568、F-575、F-780、EXP.MFS-330、EXP.MFS-578、EXP.MFS-578-2、EXP.MFS-579、EXP.MFS-586、EXP.MFS-587、EXP.MFS-628、EXP.MFS-631、EXP.MFS-603、R-41、R-41-LM、R-01、R-40、R-40-LM、RS-43、TF-1956、RS-90、R-94、RS-72-K、DS-21(以上、DIC株式会社製)、フロラード FC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、AGC(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)、フタージェント 710FL、710FM、610FM、601AD、601ADH2、602A、215M、245F、251、212M、250、209F、222F、208G、710LA、710FS、730LM、650AC、681、683(以上、(株)NEOS製)、U-120E(ユニケム株式会社)等が挙げられる。
【0324】
また、フッ素系界面活性剤としては、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造を有し、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファック DSシリーズ(化学工業日報(2016年2月22日)、日経産業新聞(2016年2月23日))、例えばメガファック DS-21が挙げられる。
【0325】
また、フッ素系界面活性剤としては、フッ素化アルキル基又はフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いることも好ましい。
【0326】
また、フッ素系界面活性剤としては、ブロックポリマーも使用できる。
【0327】
また、フッ素系界面活性剤としては、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく使用できる。
【0328】
また、フッ素系界面活性剤としては、エチレン性不飽和結合含有基を側鎖に有する含フッ素重合体も使用できる。メガファック RS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K(以上、DIC株式会社製)等が挙げられる。
【0329】
フッ素系界面活性剤としては、環境適性向上の観点から、パーフルオロオクタン酸(PFOA)及びパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)等の炭素数が7以上の直鎖状パーフルオロアルキル基を有する化合物の代替材料に由来する界面活性剤であることが好ましい。
【0330】
炭化水素系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、等が挙げられる。
【0331】
炭化水素系界面活性剤の具体例としては、プルロニック(登録商標) L10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2、テトロニック 304、701、704、901、904、150R1、HYDROPALAT WE 3323(以上、BASF社製)、ソルスパース 20000(以上、日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(以上、富士フイルム和光純薬(株)製)、パイオニン D-1105、D-6112、D-6112-W、D-6315(以上、竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(以上、日信化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0332】
シリコーン系界面活性剤としては、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマー、及び、側鎖や末端に有機基を導入した変性シロキサンポリマー、側鎖に親水性基を有する構成単位及び側鎖にシロキサン結合含有基を有する構成単位を有するポリマーが挙げられる。
【0333】
中でも、シリコーン系界面活性剤は、側鎖に親水性基を有する構成単位及び側鎖にシロキサン結合含有基を有する構成単位を有するポリマーが好ましい。ポリマーはランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
【0334】
側鎖に親水性基を有する構成単位としては、以下の単量体に由来する構成単位が挙げられる。
【0335】
【化3】
R
4は、水素原子又はメチル基であり、
R
5は水素原子又はメチル基であり、
nは1~4の整数であり、
mは1~100の整数である。
【0336】
側鎖にシロキサン結合含有基を有する構成単位としては、以下の単量体に由来する構成単位が挙げられる。
【0337】
【化4】
Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基であり、
R
1は、水素原子又はメチル基であり、
L
1は2価の有機基又は単結合である。
【0338】
側鎖にシロキサン結合含有基を有する構成単位としては、以下の単量体に由来する構成単位が挙げられる。
【0339】
【化5】
R
1は、水素原子またはメチル基であり、
R
2は、炭素数1から10のアルキレン基であり、
R
3は炭素数1から4のアルキル基であり、
nは5~50の整数である。
【0340】
シリコーン系界面活性剤の具体例としては、
EXP.S-309-2、EXP.S-315、EXP.S-503-2、EXP.S-505-2(以上、DIC株式会社製)、
DOWSIL 8032 ADDITIVE、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、
X-22-4952、X-22-4272、X-22-6266、KF-351A、K354L、KF-355A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、X-22-6191、X-22-4515、KF-6004、KF-6001、KF-6002、KP-101KP-103、KP-104、KP-105、KP-106、KP-109、KP-109、KP-112、KP-120、KP-121、KP-124、KP-125、KP-301、KP-306、KP-310、KP-322、KP-323、KP-327、KP-341、KP-368、KP-369、KP-611、KP-620、KP-621、KP-626、KP-652(以上、信越シリコーン株式会社製)、
F-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、
BYK300、BYK306、BYK307、BYK310、BYK320、BYK323、BYK325、BYK330、BYK313、BYK315N、BYK331、BYK333、BYK345、BYK347、BYK348、BYK349、BYK370、BYK377、BYK378、BYK323(以上、ビックケミー社製)
等が挙げられる。
【0341】
また、界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0342】
感光性層に含まれる界面活性剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0343】
感光性層が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、感光性層の全質量に対して、0.01質量%~3.0質量%が好ましく、0.01質量%~1.0質量%がより好ましく、0.05質量%~0.80質量%がさらに好ましい。
【0344】
<その他の添加剤>
感光性層は、上記成分以外に、必要に応じて公知の添加剤を含んでもよい。
添加剤としては、例えば、ラジカル重合禁止剤、連鎖移動剤、増感剤、可塑剤、ヘテロ環状化合物(トリアゾール等)、ベンゾトリアゾール類、カルボキシベンゾトリアゾール類、ピリジン類(イソニコチンアミド等)、及びプリン塩基(アデニン等)が挙げられる。
【0345】
感光性層に含まれる各添加剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0346】
感光性層は、ラジカル重合禁止剤を含んでもよい。
【0347】
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落[0018]に記載された熱重合防止剤が挙げられる。中でも、フェノチアジン、フェノキサジン、又は4-メトキシフェノールが好ましい。その他のラジカル重合禁止剤としては、ナフチルアミン、塩化第一銅、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、及びジフェニルニトロソアミン等が挙げられる。感光性層の感度を損なわないために、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩が好ましい。
【0348】
感光性層が重合禁止剤を含む場合、重合禁止剤の含有量は、感光性層の全質量に対して、0.001質量%~5.0質量%が好ましく、0.01質量%~3.0質量%がより好ましく、0.02質量%~2.0質量%がさらに好ましい。重合禁止剤の含有量は、重合性化合物全質量に対しては、0.005質量%~5.0質量%が好ましく、0.01質量%~3.0質量%がより好ましく、0.01質量%~1.0質量%がさらに好ましい。
【0349】
ベンゾトリアゾール類としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-クロロ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-トリルトリアゾール、及びビス(N-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0350】
カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、4-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、5-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、及びN-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、CBT-1(城北化学工業株式会社、商品名)等の市販品を使用できる。
【0351】
ベンゾトリアゾ-ル類、及びカルボキシベンゾトリアゾ-ル類の合計含有量は、感光性層の全質量に対して、0.01質量%~3質量%が好ましく、0.05質量%~1質量%がより好ましい。含有量が0.01質量%以上の場合、感光性層の保存安定性がより優れる。一方、含有量が3質量%以下である場合、感度の維持及び染料の脱色の抑制がより優れる。
【0352】
感光性層は、増感剤を含んでもよい。
【0353】
増感剤は、特に制限されず、公知の増感剤、染料及び顔料を使用できる。増感剤としては、例えば、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物、クマリン化合物、キサントン化合物、チオキサントン化合物、アクリドン化合物、オキサゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、トリアゾール化合物(例えば、1,2,4-トリアゾール)、スチルベン化合物、トリアジン化合物、チオフェン化合物、ナフタルイミド化合物、トリアリールアミン化合物、及びアミノアクリジン化合物が挙げられる。
【0354】
感光性層に含まれる増感剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0355】
感光性層が増感剤を含む場合、増感剤の含有量は、目的により適宜選択できるが、光源に対する感度の向上、及び重合速度と連鎖移動のバランスによる硬化速度の向上の観点から、感光性層の全質量に対して、0.01質量%~5質量%が好ましく、0.05質量%~1質量%がより好ましい。
【0356】
感光性層は、可塑剤及びヘテロ環状化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0357】
可塑剤及びヘテロ環状化合物としては、国際公開第2018/179640号の段落[0097]~段落[0103]及び段落[0111]~段落[0118]に記載された化合物が挙げられる。
【0358】
また、感光性層は、金属酸化物粒子、酸化防止剤、分散剤、酸増殖剤、現像促進剤、導電性繊維、紫外線吸収剤、増粘剤、架橋剤、及び有機又は無機の沈殿防止剤等の公知の添加剤をさらに含んでもよい。
【0359】
感光性層に含まれる添加剤については特開2014-085643号公報の段落[0165]~段落[0184]に記載されており、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0360】
感光性層の厚さは、一般的には0.1μm~300μmであり、0.2μm~100μmが好ましく、0.5μm~50μmがより好ましく、1μm~16μmがさらに好ましく、1μm~10μmが特に好ましく、2μm~8μmが最も好ましい。これにより、感光性層の現像性が向上し、解像性を向上させることができる。
【0361】
また、解像性により優れる観点から、感光性層は、パターン露光に用いる光の主波長における透過率が65%~90%であることが好ましく、80%~90%であることがより好ましい。
【0362】
<不純物等>
感光性層は、所定量の不純物を含んでいてもよい。
【0363】
不純物の具体例としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、銅、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、ハロゲン及びこれらのイオンが挙げられる。中でも、ハロゲン化物イオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンは不純物として混入し易いため、下記の含有量にすることが好ましい。
【0364】
感光性層における不純物の含有量は、質量基準で、80ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、2ppm以下がさらに好ましい。不純物の含有量は、質量基準で、1ppb以上とすることができ、0.1ppm以上としてもよい。
【0365】
不純物を上記範囲にする方法としては、組成物の原料として不純物の含有量が少ないものを選択すること、感光性層の作製時に不純物の混入を防ぐこと、及び洗浄して除去することが挙げられる。このような方法により、不純物量を上記範囲内とすることができる。
【0366】
不純物は、例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法、原子吸光分光法、及びイオンクロマトグラフィー法等の公知の方法で定量できる。
【0367】
感光性層における、ベンゼン、ホルムアルデヒド、トリクロロエチレン、1,3-ブタジエン、四塩化炭素、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びヘキサン等の化合物の含有量は、少ないことが好ましい。これら化合物の感光性層の全質量に対する含有量としては、質量基準で、100ppm以下が好ましく、20ppm以下がより好ましく、4ppm以下がさらに好ましい。
【0368】
含有量の下限値は、質量基準で、感光性層の全質量に対して、10ppbが好ましく、100ppbがより好ましい。これら化合物は、上記の金属の不純物と同様の方法で含有量を抑制できる。また、公知の測定法により定量できる。
【0369】
感光性層は、感光性層の感度向上の観点から、水の含有量が感光性層の全量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.15質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることがさらに好ましい。水の含有量の上限値は特に限定されず、例えば、1.0質量%である。
【0370】
<顔料>
感光性層は、顔料を含む着色樹脂層であってもよい。
【0371】
近年の電子機器が有する液晶表示窓には、液晶表示窓を保護するために、透明なガラス基板等の裏面周縁部に黒色の枠状遮光層が形成されたカバーガラスが取り付けられている場合がある。このような遮光層を形成するために着色樹脂層が使用され得る。
【0372】
顔料としては、所望とする色相に合わせて適宜選択すればよく、黒色顔料、白色顔料、黒色及び白色以外の有彩色の顔料の中から選択できる。中でも、黒色系のパターンを形成する場合には、顔料として黒色顔料が好適に選択される。
【0373】
黒色顔料としては、本開示の効果を損なわない範囲であれば、公知の黒色顔料(有機顔料又は無機顔料等)を適宜選択することができる。中でも、光学濃度の観点から、黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、チタンカーバイド、酸化鉄、及び黒鉛が好適に挙げられ、特にカーボンブラックは好ましい。カーボンブラックとしては、表面抵抗の観点から、表面の少なくとも一部が樹脂で被覆されたカーボンブラックが好ましい。
【0374】
黒色顔料の粒子径は、分散安定性の観点から、数平均粒径で0.001μm~0.1μmが好ましく、0.01μm~0.08μmがより好ましい。
【0375】
ここで、粒径とは、電子顕微鏡で撮影した顔料粒子の写真像から顔料粒子の面積を求め、顔料粒子の面積と同面積の円を考えた場合の円の直径を指し、数平均粒径は、任意の100個の粒子について上記の粒径を求め、求められた100個の粒径を平均して得られる平均値である。
【0376】
黒色顔料以外の顔料として、白色顔料については、特開2005-007765号公報の段落[0015]及び段落[0114]に記載の白色顔料を使用できる。具体的には、白色顔料のうち、無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、リトポン、軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、又は硫酸バリウムが好ましく、酸化チタン又は酸化亜鉛がより好ましく、酸化チタンがさらに好ましい。無機顔料としては、ルチル型又はアナターゼ型の酸化チタンがさらに好ましく、ルチル型の酸化チタンが特に好ましい。
【0377】
また、酸化チタンの表面は、シリカ処理、アルミナ処理、チタニア処理、ジルコニア処理、又は有機物処理が施されていてもよく、二つ以上の処理が施されてもよい。これにより、酸化チタンの触媒活性が抑制され、耐熱性及び褪光性等が改善される。
【0378】
加熱後の感光性層の厚さを薄くする観点から、酸化チタンの表面への表面処理としては、アルミナ処理及びジルコニア処理の少なくとも一方が好ましく、アルミナ処理及びジルコニア処理の両方が特に好ましい。
【0379】
また、感光性層が着色樹脂層である場合、転写性の観点から、感光性層は、黒色顔料及び白色顔料以外の有彩色の顔料をさらに含んでいることも好ましい。有彩色の顔料を含む場合、有彩色の顔料の粒径としては、分散性がより優れる点で、0.1μm以下が好ましく、0.08μm以下がより好ましい。
【0380】
有彩色の顔料としては、例えば、ビクトリアピュアーブルーBO(Color Index(以下C.I.)42595)、オーラミン(C.I.41000)、ファット・ブラックHB(C.I.26150)、モノライト・エローGT(C.I.ピグメント・エロー12)、パーマネント・エローGR(C.I.ピグメント・エロー17)、パーマネント・エローHR(C.I.ピグメント・エロー83)、パーマネント・カーミンFBB(C.I.ピグメント・レッド146)、ホスターバームレッドESB(C.I.ピグメント・バイオレット19)、パーマネント・ルビーFBH(C.I.ピグメント・レッド11)、ファステル・ピンクBスプラ(C.I.ピグメント・レッド81)、モナストラル・ファースト・ブルー(C.I.ピグメント・ブルー15)、モノライト・ファースト・ブラックB(C.I.ピグメント・ブラック1)及びカーボン、C.I.ピグメント・レッド97、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド149、C.I.ピグメント・レッド168、C.I.ピグメント・レッド177、C.I.ピグメント・レッド180、C.I.ピグメント・レッド192、C.I.ピグメント・レッド215、C.I.ピグメント・グリーン7、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:4、C.I.ピグメント・ブルー22、C.I.ピグメント・ブルー60、C.I.ピグメント・ブルー64、及びC.I.ピグメント・バイオレット23等が挙げられる。中でも、C.I.ピグメント・レッド177が好ましい。
【0381】
感光性層が顔料を含む場合、顔料の含有量としては、感光性層の全質量に対して、3質量%超40質量%以下が好ましく、3質量%超35質量%以下がより好ましく、5質量%超35質量%以下がさらに好ましく、10質量%以上35質量%以下が特に好ましい。
【0382】
感光性層が黒色顔料以外の顔料(白色顔料及び有彩色の顔料)を含む場合、黒色顔料以外の顔料の含有量は、黒色顔料に対して、30質量%以下が好ましく、1質量%~20質量%がより好ましく、3質量%~15質量%がさらに好ましい。
【0383】
なお、感光性層が黒色顔料を含み、かつ、感光性層が感光性組成物で形成される場合、黒色顔料(好ましくはカーボンブラック)は、顔料分散液の形態で感光性組成物に導入されることが好ましい。
【0384】
分散液は、黒色顔料と顔料分散剤とをあらかじめ混合して得られる混合物を、有機溶剤(又はビヒクル)に加えて分散機で分散させることによって調製されるものでもよい。顔料分散剤は、顔料及び溶剤に応じて選択すればよく、例えば市販の分散剤を使用することができる。なお、ビヒクルとは、顔料分散液とした場合に顔料を分散させている媒質の部分を指し、液状であり、黒色顔料を分散状態で保持するバインダー成分と、バインダー成分を溶解及び希釈する溶剤成分(有機溶剤)と、を含む。
【0385】
分散剤としては、例えば、ポリウレタン等のウレタン系分散剤、ポリアクリレート等のポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステル、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミド及びその塩等の油性分散剤、(メタ)アクリル酸-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコ-ル、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート系、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、リン酸エステル系等が挙げられる。分散剤の態様は、特開2021-012355号公報の段落[0021]~段落[0065]に記載された事項から選択されてもよい。
【0386】
好ましい分散剤としては、例えば、塩基性重合体型分散剤が挙げられる。塩基性重合体型分散剤としては、例えば、窒素原子を含む重合体が挙げられる。窒素原子は、重合体の主鎖に含まれていてもよい。窒素原子は、重合体の側鎖に含まれていてもよい。窒素原子は、重合体の主鎖及び側鎖に含まれていてもよい。塩基性重合体型分散剤は、側鎖に窒素原子を含む重合体であることが好ましい。カーボンブラックの表面は一般に酸性であるため、顔料としてカーボンブラックが用いられる場合、分散剤としては、塩基性重合体型分散剤が特に好ましい。
【0387】
窒素原子を含む重合体(好ましくは側鎖に窒素原子を含む重合体)としては、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基及び含窒素複素環基からなる群より選択される少なくとも1種の原子団を含む重合体が挙げられる。例えば、第4級アンモニウム塩基を含む重合体が好ましい。原子団は、重合体の側鎖に導入されていることが好ましい。例えば、側鎖に第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基及び含窒素複素環基からなる群より選択される少なくとも1種の原子団を含む重合体が好ましく、側鎖に第4級アンモニウム塩基を含む重合体がより好ましい。第4級アンモニウム塩基における第4級アンモニウムカチオンの対イオンとしては、例えば、カルボン酸イオンが挙げられる。カルボン酸イオンとしては、例えば、脂肪族カルボン酸イオン及び芳香族カルボン酸イオンが挙げられる。
【0388】
窒素原子を含む重合体(好ましくは側鎖に窒素原子を含む重合体)は、スチレンに由来の構成単位と、マレイミド誘導体に由来の構成単位と、を含む重合体であることが好ましく、スチレンとマレイミド誘導体との共重合体であることがより好ましい。マレイミド誘導体は、マレイミドの少なくとも1つの水素原子が置換基により置換された構造を有する。マレイミド誘導体としては、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アンモニウム塩基及び含窒素複素環基からなる群より選択される少なくとも1種の原子団を含むマレイミド誘導体が挙げられる。マレイミド誘導体は、第4級アンモニウム塩基を含むマレイミド誘導体が好ましい。
【0389】
分散剤は、市販の分散剤であってもよく、例えば、BYK-2012(ビックケミー・ジャパン株式会社)が挙げられる。
【0390】
感光性層は、顔料に加えて分散助剤(顔料分散助剤ともいう。)を含んでいてもよい。分散助剤は、公知の分散助剤から選択されてもよい。
【0391】
分散助剤としては、例えば、有機色素残基を有する化合物が挙げられる。有機色素としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チアジンインジゴ系顔料、トリアジン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ベンゾイソインドール等のインドール系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、ナフトール系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料等が挙げられる。有機色素残基を有する化合物は、酸性置換基、塩基性置換基又は中性置換基を有していてもよい。酸性置換基としては、例えば、スルホ基、カルボキシ基及びリン酸基が挙げられる。塩基性置換基としては、例えば、スルホンアミド基及びアミノ基が挙げられる。中性置換基としては、例えば、フェニル基及びフタルイミドアルキル基が挙げられる。分散助剤の態様は、特開2021-012355号公報の段落[0067]~段落[0084]に記載された事項から選択されてもよい。
【0392】
好ましい分散助剤としては、例えば、フタロシアニン残基を有する化合物が挙げられる。具体的に、分散助剤は、酸性置換基を有するフタロシアニン系顔料誘導体又はその塩であることが好ましく、スルホ基、カルボキシ基及びリン酸基からなる群より選択される少なくとも1種の酸性置換基を有するフタロシアニン系顔料誘導体又はその塩であることがより好ましく、スルホ基を有するフタロシアニン系顔料誘導体又はその塩であることがさらに好ましい。フタロシアニン系顔料誘導体は、例えば、特開2007-226161号公報、国際公開第2016/163351号、特開2017-165820号公報及び特許第5753266号公報に記載されている。これらの公報は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0393】
分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、ロールミル、アトライター、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、及びサンドミル等の公知の分散機が挙げられる。さらに、機械的摩砕により摩擦力を利用して微粉砕してもよい。分散機及び微粉砕については、「顔料の事典」(朝倉邦造著、第一版、朝倉書店、2000年、438頁、310頁)の記載を参照することができる。
【0394】
感光性層の70℃における溶融粘度は、歩留まり向上の観点から、15000Pa・s以下であることが好ましく、12000Pa・s以下であることがより好ましく、10000Pa・s以下であることがさらに好ましい。溶融粘度の下限値は、例えば、1000Pa・sである
【0395】
溶融温度は、以下の方法で測定される。
20mmφのパラレルプレートおよびペルチェプレート(Gap:約0.5mm)を用いて、温度20℃~125℃、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、歪み0.5%の条件で溶融粘度を測定する。測定装置として、ティー・エイ・インスツルメント社製のレオメータ「DHR-2」を用いる。測定前に、ペルチェプレート上にて85℃~95℃で試料を溶融させ、降温速度5℃/minで20℃まで冷却した後、Gap一定モードで測定する。得られたデータにおける70℃の溶融粘度を読み取る。
【0396】
〔中間層〕
転写フィルムは、仮支持体と感光性層との間に、中間層を含むことが好ましい。
【0397】
中間層を配置することにより、複数の層形成用組成物を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制できる。
【0398】
中間層としては、水溶性樹脂を含む水溶性樹脂層であることが好ましい。
また、中間層としては、特開平5-072724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断層も使用できる。中間層が酸素遮断層であると、露光時の感度が向上し、露光機の時間負荷が低減し、生産性が向上するため、好ましい。
【0399】
中間層として用いられる酸素遮断層は、上記公報等に記載された公知の層から適宜選択すればよい。中でも、低い酸素透過性を示し、水又はアルカリ水溶液(22℃の炭酸ナトリウムの1質量%水溶液)に分散又は溶解する酸素遮断層が好ましい。
【0400】
以下、中間層が含み得る各成分について説明する。
【0401】
中間層は、樹脂を含むことが好ましい。
【0402】
上記樹脂は、その一部又は全部として、水溶性樹脂を含むことが好ましい。
【0403】
水溶性樹脂として使用可能な樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ゼラチン、ビニルエーテル系樹脂、ポリアミド樹脂、及びこれらの共重合体等の樹脂が挙げられる。
【0404】
また、水溶性樹脂としては、(メタ)アクリル酸/ビニル化合物の共重合体等も使用できる。(メタ)アクリル酸/ビニル化合物の共重合体としては、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アリルの共重合体が好ましく、メタクリル酸/メタクリル酸アリルの共重合体がより好ましい。
【0405】
水溶性樹脂が(メタ)アクリル酸/ビニル化合物の共重合体である場合、各組成比(モル%)としては、例えば、90/10~20/80が好ましく、80/20~30/70がより好ましい。
【0406】
水溶性樹脂の重量平均分子量の下限値としては、5,000以上が好ましく、7,000以上がより好ましく、10,000以上がさらに好ましい。また、その上限値としては、200,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましく、50,000以下がさらに好ましい。
水溶性樹脂の分散度(Mw/Mn)は、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。
【0407】
なお、中間層の層間混合抑制能をより向上させる点で、中間層に含まれる樹脂は、中間層の一方の面側に配置される層に含まれる樹脂及び他方の面側に配置される層に含まれる樹脂とは異なる樹脂であることが好ましい。例えば、感光性層中に重合体Aが含まれ、熱可塑性樹脂層中に熱可塑性樹脂(アルカリ可溶性樹脂)が含まれる場合、中間層に含まれる樹脂は、重合体A及び熱可塑性樹脂(アルカリ可溶性樹脂)とは異なる樹脂であることが好ましい。
【0408】
水溶性樹脂は、酸素遮断性、並びに、層間混合抑制能をより向上させる点で、ポリビニルアルコールを含むことが好ましく、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンの両者を含むことがより好ましい。
【0409】
中間層に含まれる水溶性樹脂は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0410】
水溶性樹脂の含有量は特に制限されないが、酸素遮断性、並びに、層間混合抑制能をより向上させる点で、水溶性樹脂層(中間層)の全質量に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましい。なお、その上限値としては特に制限されないが、例えば、99.9質量%以下が好ましく、99.8質量%以下がさらに好ましい。
【0411】
中間層は、必要に応じて界面活性剤等の公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0412】
中間層の厚さは、特に制限されないが、0.1μm~5μmが好ましく、0.5~3μmがより好ましい。水溶性樹脂層(中間層)の厚さが上記の範囲内であると、酸素遮断性を低下させることがなく、層間混合抑制能が優れる。また、さらに、現像時の中間層の除去時間の増大も抑制できる。
【0413】
〔熱可塑性樹脂層〕
転写フィルムは、仮支持体と中間層との間に、熱可塑性樹脂層を含むことが好ましい。転写フィルムが熱可塑性樹脂層を備えることで、転写フィルムと基板との貼り合わせ工程における基板への追従性が向上して、基板と転写フィルムとの間の気泡の混入を抑制できる。この結果として、熱可塑性樹脂層に隣接する層(例えば、仮支持体)との密着性を担保できる。
【0414】
熱可塑性樹脂層は、樹脂を含む。上記樹脂は、その一部又は全部として、熱可塑性樹脂を含む。つまり、一態様において、熱可塑性樹脂層は、樹脂が熱可塑性樹脂であることも好ましい。
【0415】
<アルカリ可溶性樹脂(熱可塑性樹脂)>
熱可塑性樹脂は、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
【0416】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリル系共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、及びポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0417】
アルカリ可溶性樹脂としては、現像性及び隣接する層との密着性の観点から、アクリル樹脂が好ましい。
【0418】
ここで、アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び(メタ)アクリル酸アミドに由来する構成単位からなる群から選ばれた少なくとも1種の構成単位を有する樹脂を意味する。
【0419】
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び(メタ)アクリル酸アミドに由来する構成単位の合計含有量が、アクリル樹脂の全質量に対して50質量%以上であることが好ましい。
【0420】
中でも、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の合計含有量が、アクリル樹脂の全質量に対して、30質量%~100質量%が好ましく、50質量%~100質量%がより好ましい。
【0421】
また、アルカリ可溶性樹脂は、酸基を有する重合体であることが好ましい。
【0422】
酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、及びホスホン酸基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
【0423】
アルカリ可溶性樹脂は、現像性の観点から、酸価60mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂がより好ましく、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂がさらに好ましい。
【0424】
アルカリ可溶性樹脂の酸価の上限は、特に制限されないが、300mgKOH/g以下が好ましく、250mgKOH/g以下がより好ましく、200mgKOH/g以下がさらに好ましく、150mgKOH/g以下が特に好ましい。
【0425】
酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂としては、特に制限されず、公知の樹脂から適宜選択して使用できる。
【0426】
例えば、特開2011-095716号公報の段落[0025]に記載のポリマーのうち酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂であるアルカリ可溶性樹脂、特開2010-237589号公報の段落[0033]~段落[0052]に記載のポリマーのうちの酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂、及び特開2016-224162号公報の段落[0053]~段落[0068]に記載のバインダーポリマーのうちの酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂が挙げられる。
【0427】
上記カルボキシ基含有アクリル樹脂におけるカルボキシ基を有する構成単位の共重合比は、アクリル樹脂の全質量に対して、5質量%~50質量%が好ましく、10質量%~40質量%がより好ましく、12質量%~30質量%がさらに好ましい。
【0428】
アルカリ可溶性樹脂としては、現像性及び隣接する層との密着性の観点から、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有するアクリル樹脂が特に好ましい。
【0429】
アルカリ可溶性樹脂は、反応性基を有していてもよい。反応性基としては、付加重合可能な基であればよく、エチレン性不飽和基;ヒドロキシ基及びカルボキシ基等の重縮合性基;エポキシ基、(ブロック)イソシアネート基等の重付加反応性基が挙げられる。
【0430】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上が好ましく、1万~10万がより好ましく、2万~5万がさらに好ましい。
【0431】
熱可塑性樹脂層に含まれるアルカリ可溶性樹脂は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0432】
アルカリ可溶性樹脂の含有量は、現像性及び隣接する層との密着性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、10質量%~99質量%が好ましく、20質量%~90質量%がより好ましく、40質量%~80質量%がさらに好ましく、50質量%~75質量%が特に好ましい。
【0433】
<色素>
熱可塑性樹脂層は、発色時の波長範囲400nm~780nmにおける最大吸収波長が450nm以上であり、酸、塩基、又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素(単に「色素B」ともいう。)を含むことが好ましい。
【0434】
色素Bの好ましい態様は、後述する点以外は、上述した色素Nの好ましい態様と同様である。
【0435】
色素Bは、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、酸又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素が好ましく、酸により最大吸収波長が変化する色素であることがより好ましい。
【0436】
熱可塑性樹脂層は、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、色素Bとしての酸により最大吸収波長が変化する色素、及び後述する光により酸を発生する化合物の両者を含むことが好ましい。
【0437】
熱可塑性樹脂層に含まれる色素Bは、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0438】
色素Bの含有量は、露光部及び非露光部の視認性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.2質量%以上が好ましく、0.2質量%~6質量%がより好ましく、0.2質量%~5質量%がさらに好ましく、0.25質量%~3.0質量%が特に好ましい。
【0439】
ここで、色素Bの含有量は、熱可塑性樹脂層に含まれる色素Bの全てを発色状態にした場合の色素の含有量を意味する。以下に、ラジカルにより発色する色素を例に、色素Bの含有量の定量方法を説明する。
メチルエチルケトン100mLに、色素0.001g及び0.01gを溶かした溶液を調製する。得られた各溶液に、光ラジカル重合開始剤Irgacure OXE01(商品名、BASFジャパン株式会社)を加え、365nmの光を照射することによりラジカルを発生させ、全ての色素を発色状態にする。その後、大気雰囲気下で、分光光度計(UV3100、(株)島津製作所製)を用いて、液温が25℃である各溶液の吸光度を測定し、検量線を作成する。
次に、色素に代えて熱可塑性樹脂層0.1gをメチルエチルケトンに溶かすこと以外は上記と同様の方法で、色素を全て発色させた溶液の吸光度を測定する。得られた熱可塑性樹脂層を含む溶液の吸光度から、検量線に基づいて熱可塑性樹脂層に含まれる色素の量を算出する。
なお、熱可塑性樹脂層3gとは、熱可塑性樹脂層形成用組成物の固形分の3gと同様である。
【0440】
<光により酸、塩基、又はラジカルを発生する化合物>
熱可塑性樹脂層は、光により酸、塩基、又はラジカルを発生する化合物(単に「化合物C」ともいう。)を含んでもよい。
【0441】
化合物Cとしては、紫外線及び可視光線等の活性光線を受けて、酸、塩基、又はラジカルを発生する化合物が好ましい。
【0442】
化合物Cとしては、公知の光酸発生剤、光塩基発生剤、及び光ラジカル重合開始剤(光ラジカル発生剤)を使用できる。
【0443】
(光酸発生剤)
熱可塑性樹脂層は、解像性の観点から、光酸発生剤を含んでもよい。
【0444】
光酸発生剤としては、上述した感光性層が含んでもよい光カチオン重合開始剤が挙げられ、後述する点以外は好ましい態様も同じである。
【0445】
光酸発生剤としては、感度及び解像性の観点から、オニウム塩化合物、及びオキシムスルホネート化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、感度、解像性、及び密着性の観点から、オキシムスルホネート化合物を含むことがより好ましい。
また、光酸発生剤としては、以下の構造を有する光酸発生剤も好ましい。
【0446】
【0447】
(光ラジカル重合開始剤)
熱可塑性樹脂層は、光ラジカル重合開始剤を含んでもよい。
【0448】
光ラジカル重合開始剤としては、上述した感光性層が含んでもよい光ラジカル重合開始剤が挙げられ、好ましい態様も同じである。
【0449】
(光塩基発生剤)
熱可塑性樹脂組成物は、光塩基発生剤を含んでもよい。
【0450】
光塩基発生剤としては、公知の光塩基発生剤であれば特に制限されず、例えば、2-ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、O-カルバモイルヒドロキシルアミド、O-カルバモイルオキシム、[[(2,6-ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2-ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン1,6-ジアミン、4-(メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノエタン、(4-モルホリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン、及び2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2,4-ジニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジンが挙げられる。
【0451】
熱可塑性樹脂層に含まれる化合物Cは、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0452】
化合物Cの含有量は、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%~10質量%が好ましく、0.5質量%~5質量%がより好ましい。
【0453】
<可塑剤>
熱可塑性樹脂層は、解像性、隣接する層との密着性、及び現像性の観点から、可塑剤を含むことが好ましい。
【0454】
可塑剤は、アルカリ可溶性樹脂よりも分子量(オリゴマー又はポリマーであり分子量分布を有する場合は重量平均分子量)が小さいことが好ましい。可塑剤の分子量(重量平均分子量)は、200~2,000が好ましい。
【0455】
可塑剤は、アルカリ可溶性樹脂と相溶して可塑性を発現する化合物であれば特に制限されないが、可塑性付与の観点から、可塑剤は、分子中にアルキレンオキシ基を有することが好ましく、ポリアルキレングリコール化合物がより好ましい。可塑剤に含まれるアルキレンオキシ基は、ポリエチレンオキシ構造又はポリプロピレンオキシ構造を有することがより好ましい。
【0456】
また、可塑剤は、解像性及び保存安定性の観点から、(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。相溶性、解像性、及び隣接する層との密着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂がアクリル樹脂であり、かつ、可塑剤が(メタ)アクリレート化合物を含むことがより好ましい。
【0457】
可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物としては、上述した感光性層に含まれる重合性化合物として記載した(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0458】
転写フィルムにおいて、熱可塑性樹脂層と感光性層とが直接接触して積層される場合、熱可塑性樹脂層及びネガ型感光性層がいずれも同じ(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。同じ(メタ)アクリレート化合物を熱可塑性樹脂層及び感光性層がそれぞれ含むことで、層間の成分拡散が抑制され、保存安定性が向上するためである。
【0459】
熱可塑性樹脂層が可塑剤として(メタ)アクリレート化合物を含む場合、熱可塑性樹脂層と隣接する層との密着性の観点から、露光後の露光部においても(メタ)アクリレート化合物が重合しないことが好ましい。
【0460】
また、可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物としては、熱可塑性樹脂層の解像性、隣接する層との密着性、及び現像性の観点から、一分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0461】
さらに、可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物としては、酸基を有する(メタ)アクリレート化合物又はウレタン(メタ)アクリレート化合物も好ましい。
【0462】
熱可塑性樹脂層に含まれる可塑剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0463】
可塑剤の含有量は、熱可塑性樹脂層の解像性、隣接する層との密着性、及び現像性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、1質量%~70質量%が好ましく、10質量%~60質量%がより好ましく、20質量%~50質量%がさらに好ましい。
【0464】
<増感剤>
熱可塑性樹脂層は、増感剤を含んでもよい。
【0465】
増感剤としては、特に制限されず、上述したネガ型感光性層が含んでもよい増感剤が挙げられる。
【0466】
熱可塑性樹脂層に含まれる増感剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0467】
増感剤の含有量は、目的により適宜選択できるが、光源に対する感度の向上、並びに、露光部及び非露光部の視認性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~5質量%が好ましく、0.05質量%~1質量%がより好ましい。
【0468】
<添加剤等>
熱可塑性樹脂層は、上記成分以外に、必要に応じて界面活性剤等の公知の添加剤を含んでもよい。
【0469】
また、熱可塑性樹脂層については、特開2014-085643号公報の段落[0189]~段落[0193]に記載されており、この公報に記載の内容は本明細書に組み込まれる。
【0470】
熱可塑性樹脂層の厚さは、特に制限されないが、隣接する層との密着性の観点から、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、現像性及び解像性の観点から、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下がさらに好ましい。
【0471】
〔保護フィルム〕
転写フィルムは、保護フィルムを有していてもよい。
【0472】
保護フィルムとしては、耐熱性及び耐溶剤性を有する樹脂フィルムを用いることができ、例えば、ポリプロピレンフィルム及びポリエチレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、並びに、ポリスチレンフィルムが挙げられる。
【0473】
また、保護フィルムとして上述の仮支持体と同じ材料で構成された樹脂フィルムを用いてもよい。
【0474】
中でも、保護フィルムとしては、ポリオレフィンフィルムが好ましく、ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンフィルムがより好ましく、ポリエチレンフィルムがさらに好ましい。
【0475】
保護フィルムの厚さは、1μm~100μmが好ましく、5μm~50μmがより好ましく、5μm~40μmがさらに好ましく、15μm~30μmが特に好ましい。
【0476】
保護フィルムの厚さは、機械的強度に優れる点で、1μm以上が好ましく、比較的安価となる点で、100μm以下が好ましい。
【0477】
また、保護フィルムにおいては、保護フィルム中に含まれる直径80μm以上のフィッシュアイ数が、5個/m2以下であることが好ましい。
【0478】
なお、「フィッシュアイ」とは、材料を熱溶融し、混練、押し出し、2軸延伸及びキャスティング法等の方法によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、及び、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものである。
【0479】
保護フィルムに含まれる直径3μm以上の粒子の数は、30個/mm2以下が好ましく、10個/mm2以下がより好ましく、5個/mm2以下がさらに好ましい。
【0480】
これにより、保護フィルムに含まれる粒子に起因する凹凸が感光性層又は導体層に転写されることにより生じる欠陥を抑制することができる。
【0481】
巻き取り性を付与する点から、保護フィルムの組成物層と接する面とは反対側の表面の算術平均粗さRaは、0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましく、0.03μm以上がさらに好ましい。一方で、0.50μm未満が好ましく、0.40μm以下がより好ましく、0.30μm以下がさらに好ましい。
【0482】
保護フィルムは、リサイクル品であってもよい。リサイクル品としては、使用済みフィルム等を洗浄、チップ化し、これを材料にフィルム化したものが挙げられる。リサイクル品の具体例としては、東レ社のEcouseシリーズが挙げられる。
【0483】
保護フィルムは、転写時の欠陥抑制の点から、組成物層と接する面の表面粗さRa、0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましく、0.03μm以上がさらに好ましい。一方で、0.50μm未満が好ましく、0.40μm以下がより好ましく、0.30μm以下がさらに好ましい。
【0484】
〔転写フィルムの製造方法〕
転写フィルムの製造方法は特に制限されず、公知の方法を使用できる。
上記の転写フィルム20の製造方法としては、例えば、仮支持体11の表面に熱可塑性樹脂層形成用組成物を塗布して塗膜を形成し、さらにこの塗膜を乾燥して熱可塑性樹脂層13を形成する工程と、熱可塑性樹脂層13の表面に中間層形成用組成物を塗布して塗膜を形成し、さらにこの塗膜を乾燥して中間層15を形成する工程と、中間層15の表面に感光性組成物を塗布して塗膜を形成し、さらにこの塗膜を乾燥して感光性層17を形成する工程と、を含む方法が挙げられる。
【0485】
上述の製造方法により製造された積層体の感光性層17上に、保護フィルム19を圧着させることにより、転写フィルム20が製造される。
【0486】
転写フィルムの製造方法としては、感光性層17の仮支持体11を有する側とは反対側の面に接するように保護フィルム19を設ける工程を含むことにより、仮支持体11、熱可塑性樹脂層13、中間層15、感光性層17、及び保護フィルム19を備える転写フィルム20を製造することが好ましい。熱可塑性樹脂層13、中間層15、及び感光性層17は、転写層12に相当する。
【0487】
上記の製造方法により転写フィルム20を製造した後、転写フィルム20を巻き取ることにより、ロール形態の転写フィルムを作製及び保管してもよい。ロール形態の転写フィルムは、後述するロールツーロール方式での基板との貼り合わせ工程にそのままの形態で提供できる。
【0488】
また、上記の転写フィルム20の製造方法としては、保護フィルム19上に、感光性層17及び中間層15を形成した後、中間層15の表面に熱可塑性樹脂層13を形成する方法であってもよい。
【0489】
<熱可塑性樹脂層の形成方法>
仮支持体上に熱可塑性樹脂層を形成する方法としては特に制限されず、公知の方法が使用できる。例えば、仮支持体上に熱可塑性樹脂層形成用組成物を塗布し、そして、必要に応じて乾燥させることにより形成できる。
【0490】
熱可塑性樹脂層形成用組成物としては、上述した熱可塑性樹脂層を形成する各種成分と溶剤とを含むことが好ましい。なお、熱可塑性樹脂層形成用組成物において、組成物の全固形分に対する各成分の含有量の好適範囲は、上述した熱可塑性樹脂層の全質量に対する各成分の含有量の好適範囲と同じである。
【0491】
溶剤としては、溶剤以外の各成分を溶解又は分散可能であれば特に制限されず、公知の溶剤を使用できる。溶剤としては、後述する感光性組成物が含む溶剤と同様のものが挙げられ、好適態様も同じである。
【0492】
溶剤の含有量は、熱可塑性樹脂層形成用組成物の全固形分100質量部に対して、50質量部~1,900質量部が好ましく、100質量部~900質量部がより好ましい。
【0493】
熱可塑性樹脂層の形成方法は、上記の成分を含む層を形成可能な方法であれば特に制限されず、例えば、公知の塗布方法(スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布、及びインクジェット塗布等)が挙げられる。
【0494】
<中間層の形成方法>
中間層形成用組成物としては、上述した中間層を形成する各種成分と溶剤とを含むことが好ましい。なお、中間層形成用組成物において、中間層形成用組成物の全固形分に対する各成分の含有量の好適範囲は、上述した中間層の全質量に対する各成分の含有量の好適範囲と同じである。
【0495】
溶剤としては、水溶性樹脂を溶解又は分散可能であれば特に制限されず、水及び水混和性の有機溶剤からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、水又は水と水混和性の有機溶剤との混合溶剤がより好ましい。
【0496】
水混和性の有機溶剤としては、例えば、炭素数1~3のアルコール、アセトン、エチレングリコール、及びグリセリンが挙げられ、炭素数1~3のアルコールが好ましく、メタノール又はエタノールがより好ましい。
【0497】
中間層形成用組成物に含まれる溶剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0498】
溶剤の含有量は、中間層形成用組成物の全固形分100質量部に対して、50質量部~2,500質量部が好ましく、50質量部~1,900質量部がより好ましく、100質量部~900質量部がさらに好ましい。
【0499】
中間層の形成方法は、上記の成分を含む層を形成可能な方法であれば特に制限されず、例えば、公知の塗布方法(スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布、及びインクジェット塗布等)が挙げられる。
【0500】
<感光性層の形成方法>
生産性に優れる点で、上述した感光性層を構成する成分(例えば、重合体A、重合性化合物、及び、重合開始剤等)、及び、溶剤を含む感光性組成物を使用して塗布法により形成されることが望ましい。
【0501】
転写フィルムの製造方法としては、具体的には、中間層上に感光性組成物を塗布して塗膜を形成し、この塗膜に所定温度にて乾燥処理を施して感光性層を形成する方法であることが好ましい。なお、塗膜の乾燥処理によって残存溶剤量が調整される。
【0502】
感光性組成物としては、上述した感光性層を形成する各種成分と溶剤とを含むことが好ましい。なお、感光性組成物において、感光性組成物の全固形分に対する各成分の含有量の好適範囲は、上述した感光性層の全質量に対する各成分の含有量の好適範囲と同じである。
【0503】
溶剤としては、溶剤以外の各成分を溶解又は分散可能であれば特に制限されず、公知の溶剤を使用できる。具体的には、例えば、アルキレングリコールエーテル溶剤、アルキレングリコールエーテルアセテート溶剤、アルコール溶剤(メタノール及びエタノール等)、ケトン溶剤(アセトン及びメチルエチルケトン等)、芳香族炭化水素溶剤(トルエン等)、非プロトン性極性溶剤(N,N-ジメチルホルムアミド等)、環状エーテル溶剤(テトラヒドロフラン等)、エステル溶剤(酢酸nプロピル等)、アミド溶剤、ラクトン溶剤、並びにこれらの2種以上を含む混合溶剤が挙げられる。
【0504】
溶剤としては、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。中でも、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤からなる群より選択される少なくとも1種と、ケトン溶剤及び環状エーテル溶剤からなる群より選択される少なくとも1種とを含む混合溶剤がより好ましく、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤からなる群より選択される少なくとも1種、ケトン溶剤、並びに、環状エーテル溶剤の3種を少なくとも含む混合溶剤がさらに好ましい。
【0505】
アルキレングリコールエーテル溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、及びジプロピレングリコールジアルキルエーテルが挙げられる。
【0506】
アルキレングリコールエーテルアセテート溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、及びジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートが挙げられる。
【0507】
溶剤としては、国際公開第2018/179640号の段落[0092]~段落[0094]に記載された溶剤、及び特開2018-177889公報の段落[0014]に記載された溶剤を用いてもよく、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0508】
感光性組成物に含まれる溶剤は、1種単であってもよく、2種以上であってもよい。
【0509】
溶剤の含有量は、組成物の全固形分100質量部に対し、50質量部~1900質量部が好ましく、100質量部~1200質量部がさらに好ましく、100質量部~900質量部がさらに好ましい。
【0510】
感光性組成物の塗布方法としては、例えば、印刷法、スプレー法、ロールコート法、バーコート法、カーテンコート法、スピンコート法、及び、ダイコート法(すなわち、スリットコート法)が挙げられる。
【0511】
感光性組成物の塗膜の乾燥方法としては、加熱乾燥及び減圧乾燥が好ましい。
【0512】
乾燥温度は、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。また、その上限値としては130℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。温度を連続的に変化させて乾燥させることもできる。
【0513】
また、乾燥時間は、20秒以上が好ましく、40秒以上がより好ましく、60秒以上がさらに好ましい。また、その上限値としては特に制限されないが、600秒以下が好ましく、300秒以下がより好ましい。
【0514】
さらに、保護フィルムを感光性層に貼り合わせることにより、転写フィルムを製造できる。
【0515】
保護フィルムを感光性層に貼り合わせる方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
【0516】
保護フィルムを感光性層に貼り合わせる装置としては、真空ラミネーター、及び、オートカットラミネーター等の公知のラミネーターが挙げられる。
【0517】
ラミネーターはゴムローラー等の任意の加熱可能なローラーを備え、加圧及び加熱ができるものであることが好ましい。
【0518】
[半導体パッケージ]
本開示に係る半導体パッケージは、本開示に係る積層体の製造方法を用いて製造された積層体を含む。本開示に係る半導体パッケージは、例えば、上記積層体の所定の位置に半導体素子を搭載し、封止樹脂等によって半導体素子を封止することによって製造できる。半導体素子としては、例えば、半導体チップ、及びメモリが挙げられる。
【実施例0519】
以下に実施例を挙げて本発明の実施形態をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順は、本発明の実施形態の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の実施形態の範囲は以下に示す具体例に制限されない。
【0520】
<感光性組成物の調製>
表2に記載の各成分を表2に記載の含有量(質量%)で混合し、感光性組成物1~11をそれぞれ調製した。
感光性組成物を調製するために用いた各成分は以下のとおりである。
【0521】
〔樹脂(重合体A)〕
表1に記載の重合性モノマーを用いて、重合体A1~A6を合成した。
重合性モノマーの詳細は、以下のとおりである。
St:スチレン(富士フイルム和光純薬株式会社製)
MAA:メタクリル酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)
MMA:メタクリル酸メチル(富士フイルム和光純薬株式会社製)
GMA:グリシジルメタクリレート
【0522】
-重合体A1の合成-
3つ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を入れ、窒素雰囲気下において90℃に昇温した。St、MAA、MMA、重合開始剤(製品名「V-601」、富士フイルム和光純薬社製)、及びPGMEAを加えた溶液を、90℃±2℃に維持した上記フラスコ溶液中に2時間かけて滴下した。滴下終了後、上記フラスコ内の溶液を90℃±2℃にて2時間撹拌することで、アルカリ可溶性樹脂である重合体A1を含む溶液(固形分濃度30.0質量%)を得た。
【0523】
-重合体A2の合成-
プロピレングリコールモノメチルエーテル85質量部をフラスコに仕込み窒素気流下90℃に加熱した。この液にSt46質量部、MAA20質量部、MMA2質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテル20質量部に溶解させた溶液、及び、V-601 7質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテル45質量部に溶解させた溶液を同時に3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間おきに3回V-601を1.0質量部添加した。その後、さらに3時間反応させた。PGMEA60質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル12質量部で希釈した。空気気流下、反応液を100℃に昇温し、テトラエチルアンモニウムブロミド0.7質量部、p-メトキシフェノール0.3質量部を添加した。これにグリシジルメタクリレート(製品名「ブレンマーG」、日油社製)32質量部を20分かけて滴下した。これを100℃で7時間反応させ、重合体A2を含む溶液(固形分濃度30.0質量%)を得た。
【0524】
-重合体A3~A6の合成-
重合性モノマーの種類を表1に記載の重合性モノマーに変更したこと以外は、重合体A1の合成と同様の方法で、重合体A3~A6を含む溶液(固形分濃度30.0質量%)を得た。
【0525】
〔重合性化合物〕
・BPE-500:製品名「NKエステルBPE-500」、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、エチレンオキサイド鎖の平均繰り返し数10、新中村化学工業社製・M-270:製品名「アロニックスM-270」、ポリプロピレングリコールジアクリレート、東亞合成社製
・BPE-100:製品名「NKエステルBPE-100」、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、エチレンオキサイド鎖の平均繰り返し数2.6、新中村化学工業社製
なお、上記BPE-500及びBPE-100は、重合性化合物B1に該当する。
【0526】
〔重合開始剤〕
・B-CIM:製品名「B-CIM」(2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、黒金化成社製
【0527】
〔増感剤〕
・SB-PI 701:4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、三洋貿易株式会社販売)
【0528】
〔連鎖移動剤〕
・化合物A:N-フェニルカルバモイルメチル-N-カルボキシメチルアニリン、富士フイルム和光純薬社製
【0529】
〔色素〕
・LCV:ロイコクリスタルバイオレット、東京化成工業社製、ラジカルにより発色する色素
【0530】
〔防錆剤〕
・CBT-1:製品名「CBT-1」、カルボキシベンゾトリアゾール、城北化学工業社製
【0531】
〔重合禁止剤〕
・TDP-G:製品名「TDP-G」、フェノチアジン、川口化学工業株式会社製
【0532】
〔界面活性剤〕
・F-552:製品名「メガファックF-552」、DIC社製
・EXP.S-315:製品名「EXP.S-315」、シリコーン系界面活性剤、DIC株式会社製
・化合物S:下記の構造を有する化合物
【化1】
【0533】
-感光性層の溶融粘度-
得られた感光性層の溶融粘度を、以下の方法で測定した。
20mmφのパラレルプレートおよびペルチェプレート(Gap:約0.5mm)を用いて、温度20℃~125℃、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、歪み0.5%の条件で溶融粘度を測定した。測定装置として、ティー・エイ・インスツルメント社製のレオメータ「DHR-2」を用いた。測定前に、ペルチェプレート上にて85℃~95℃で試料を溶融させ、降温速度5℃/minで20℃まで冷却した後、Gap一定モードで測定した。得られたデータにおける70℃の溶融粘度を読み取った。
【0534】
<中間層形成用組成物の調製>
下記の各成分を用いて中間層形成用組成物を調製した。
PVA:ポリビニルアルコール(製品名「クラレポバールPVA-205」、(株)クラレ製))
PVP:ポリピロリドン(製品名「ポリビニルピロリドンK-30」、日本触媒(株)製)
HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(製品名「メトローズ 60SH-03」、信越化学工業(株)製)
PVA、PVP、及びHPMCを混合比(質量比)が67.5/31.5/1となるように各成分を混合した後、溶媒(イオン交換水とメタノール(三菱ガス化学(株)製)とを混合比(質量比)40/60となるように混合した混合溶媒)を加えることによって、中間層形成用組成物を調製した。
【0535】
<熱可塑性樹脂組成物の調製>
熱可塑性樹脂組成物に含まれる成分は、以下のとおりである。
あらかじめ、熱可塑性樹脂A7を含む溶液(固形分濃度30.0質量%)を調製した。熱可塑性樹脂A7を含む溶液は、重合性モノマーの種類を変更したこと以外は、重合体A1と同様の方法で、調製した。
【0536】
熱可塑性樹脂A7:ベンジルメタクリレート(BzMA)、MAA、及びAAに由来する構成単位からなる共重合体(BzMA:MAA:AA=55:25:20(質量比)、重量平均分子量=25,000、酸価=155mgKOH/g) …59.85質量部
A-DCP:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製) …22.65質量部
8UX-015:多官能ウレタンアクリレート化合物(大成ファインケミカル株式会社製) …13.30質量部
・TO-2349:カルボキシ基を有する多官能アクリレート化合物(東亞合成株式会社製) …3.70質量部
・CBT-1 …0.20質量部
・TDP-G …0.30質量部
熱可塑性樹脂A7を含む溶液と、熱可塑性樹脂A7以外の上記各成分とを、上記含有量となるように混合した後、溶媒(メチルエチルケトン、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を加えることによって、熱可塑性樹脂層形成用組成物を調製した。
【0537】
【0538】
表1中、「St量」は、樹脂中の、スチレンに由来する構成単位の含有量を意味する。
【0539】
【0540】
<転写フィルムの作製>
-実施例1~実施例14、実施例16、実施例18、実施例24-
仮支持体(ポリエチレンテレフタレートフィルム、製品名「16KS40 東レ社製」、厚さ:16μm)上に、乾燥後の層厚が3μmとなるように中間層形成用組成物を塗布した。中間層形成用組成物の塗膜を90℃で120秒間かけて乾燥し、中間層を形成した。
中間層上に、スリット状ノズルを用いて、乾燥後の層厚が表3及び表4に記載の厚さとなるように、表3及び表4に記載の感光性組成物を塗布した。感光性組成物の塗膜を80℃で120秒間かけて乾燥し、感光性層を形成した。仮支持体、中間層、及び感光性層をこの順に有する転写フィルムを得た。
【0541】
-実施例15、比較例1-
仮支持体(ポリエチレンテレフタレートフィルム、製品名「16KS40 東レ社製」、厚さ:16μm)上に、スリット状ノズルを用いて、乾燥後の層厚が表4に記載の厚さとなるように、表4に記載の感光性組成物を塗布した。感光性組成物の塗膜を80℃で120秒間かけて乾燥し、感光性層を形成した。仮支持体及び感光性層を有する転写フィルムを得た。
【0542】
-実施例17-
38μmの仮支持体の用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で転写フィルムを得た。
【0543】
-実施例19~実施例23、実施例25~実施例27-
仮支持体(ポリエチレンテレフタレートフィルム、製品名「16KS40」、東レ社製、厚さ:16μm)上に、乾燥後の層厚が3μm又は15μmとなるように熱可塑性樹脂組成物を塗布した。熱可塑性樹脂組成物の塗膜を90℃で120秒間かけて乾燥し、熱可塑性樹脂層を形成した。
熱可塑性樹脂層上に、乾燥後の層厚が3μmとなるように中間層形成用組成物を塗布した。中間層形成用組成物の塗膜を90℃で120秒間かけて乾燥し、中間層を形成した。
中間層上に、スリット状ノズルを用いて、乾燥後の層厚が3μmなるように、表5に記載の感光性組成物を塗布した。感光性組成物の塗膜を80℃で120秒間かけて乾燥し、感光性層を形成した。仮支持体、熱可塑性樹脂層、中間層、及び感光性層をこの順に有する転写フィルムを得た。
【0544】
<基板の準備>
基板として、下記基板T1~T5を準備した。
・T1:ガラスエポキシ樹脂(製品名「「Tガラス」、日東紡社製)、線膨張係数2.8ppm/K
・T2:ガラスエポキシ樹脂(製品名「「MCL-E-679FG」、昭和電工マテリアルズ社製)、線膨張係数12ppm/K
・T3:ガラス(製品名「「Dragontrail DT-HW」、AGC社製)、線膨張係数10ppm/K
・T4:シリコンウエハ(製品名「「8インチウェーハTTV2UM」、信越化学工業社製)、
線膨張係数3.1ppm/K
・T5:エポキシ樹脂(製品名「MEGTRON R-5680(N)、パナソニック社製)、線膨張係数16ppm/K
【0545】
<積層体の作製>
-実施例1~実施例20、比較例1-
表3~表5に記載の基板、導体パターン層、絶縁層、及び導体層をこの順に有する回路基板を準備した。
回路基板に対して、転写フィルムを、感光性層側が導体層に接するようにラミネートした。100℃のヒートロールを用いて0.7MPaの圧力で2m/minの速度で圧着した(貼合工程)。
転写フィルムにおける仮支持体を剥離した(仮支持体剥離工程)。
所定のパターンを有するマスクを用いて、高圧水銀灯を光源とする投影露光装置を用いて、下記の露光量でパターン露光を行った(露光工程)。
Stouffer社製の41段ステップタブレットを用いて露光し、最短現像時間の1.5倍の時間で現像した場合に、残存ステップ段数が13段となる露光量とした。
現像液として30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、最短現像時間の1.5倍の時間でスプレー現像し、未露光部を除去して、レジストパターンを形成した(現像工程)。
レジストパターンが形成されていない領域にある導体層に対して、硫酸銅めっき液を用いた電解めっきを行い、厚さ2μmの銅めっき層を形成した。その後、剥離液を用いてレジストパターンを剥離した。レジストパターンの剥離によって露出した導体層にエッチング処理を行って、導体パターン層を形成した(第1の導体パターン層形成工程)。
なお、比較例1では、上記仮支持体剥離工程を実施せず、所定のパターンを有するマスクを用いて、高圧水銀灯を光源とする投影露光装置を用いて、下記の露光量でパターン露光を行った(露光工程)。Stouffer社製の41段ステップタブレットを用いて露光し、最短現像時間の1.5倍の時間で現像した場合に、残存ステップ段数が13段となる露光量とした。
露光後に、転写フィルムにおける仮支持体を剥離した。
その後、上記現像工程及び上記第1の導体パターン層形成工程と同様の方法で、現像工程及び第2の導体パターン層形成工程を実施した。
【0546】
-実施例21-
貼合工程の前に、回路基板をホットプレートで加熱した。導体層の表面温度を測定し、70℃であることを確認してから貼合工程を実施したこと以外は、実施例1と同様の方法で、積層体を得た。
【0547】
-実施例22-
貼合工程の後に、気泡抜き処理として、70℃、0.5MPa、5分の条件でオートクレーブ処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で、積層体を得た。
【0548】
-実施例23-
貼合工程の後に、気泡抜き処理として、80℃、真空度1hPa、真空引き時間30秒、圧力0.5MPa、70秒の条件でダイヤフラムラミネートを行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で、積層体を得た。
【0549】
-実施例24-
現像工程において、評価するレジストパターンの長手方向と搬送方向とが平行になるように回路基板を設置し、現像処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で、積層体を得た。
【0550】
-実施例25~27-
貼合工程の前に、回路基板をホットプレートで加熱した。導体層の表面温度を測定し、70℃であることを確認してから貼合工程を実施した。
さらに、貼合工程後に、実施例23と同様の気泡抜き処理を実施した。現像工程では、実施例24と同様の現像処理を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で、積層体を得た。
【0551】
なお、実施例16~23では、回路基板の搬送方向と、上記レジストパターンの長手方向との成す角度が80°~90°となるように、回路基板を搬送して現像処理を行った。
表5中、現像方向の欄に「垂直」と記載した。
【0552】
実施例24~27では、回路基板の搬送方向と、上記レジストパターンの長手方向との成す角度が0°~10°となるように、回路基板を搬送して現像処理を行った。
表5中、現像方向の欄に「平行」と記載した。
【0553】
積層体の作製において、レジストパターンの解像性、現像残渣、導体パターンの解像性、加熱後の導体パターンの解像性、及び気泡の個数の評価を行った。評価方法は、以下のとおりである。
【0554】
(レジストパターンの解像性)
上記積層体の作製において、マスクとして、ライン(L)幅とスペース(S)幅との組み合わせにおいて、スペース幅がライン幅よりも1μm広いパターンを有するマスクを用いた。
まず、Lが10μm(L/S=10/11)であるマスクを用いて、パターン露光を行い、現像後のレジストパターンが倒れるか否かを確認した。レジストパターンが倒れなかった場合には、Lを0.5μm小さくしたマスクを用いて、順次パターン露光を行い、現像後のレジストパターンが倒れるまで、同様の操作を行った。レジストパターンが倒れないL/Sの組み合わせの中で、L/Sの値が最も小さい組み合わせを、表3及び表4に記載した。
【0555】
(現像残渣)
上記積層体の作製において、マスクのパターンにおけるライン幅として、レジストパターンの解像性の評価で得られたL/Sの組み合わせにおけるライン幅を採用した。スペース幅は、ライン幅と同じとした。例えば、レジストパターンの解像性の評価で得られたL/Sの組み合わせが、L/S=3.0/4.0である場合には、現像残渣の評価では、L/S=3.0/3.0であるマスクを用いた。
現像後に、レジストパターンが形成されていない領域に、残渣があるか否かを、光学顕微鏡を用いて確認した。評価基準は以下のとおりである。
A:残渣が確認されない。
B:残渣が確認された。
【0556】
(導体パターンの解像性)
上記積層体の作製において、形成された導体パターン層上に、ソルダーレジストを塗布し、テスト回路を作製した。
テスト回路は、ショートとオープンとを確認できるパターンを有している。ショート及びオープン共に問題のないL/Sの組み合わせの中で、L/Sの値が最も小さい組み合わせを、表3及び表4に記載した。
【0557】
(加熱後の導体パターンの解像性)
上記積層体の作製において、転写フィルムをラミネートする前に、積層体を280℃で30分加熱したこと以外は、上記導体パターンの解像性と同様の方法で、テスト回路を作製し、評価を行った。
【0558】
(気泡の個数)
上記積層体の作製において、貼合工程後に、任意の5か所の領域(1mm×1mm)を光学顕微鏡を用いて目視で観察した。気泡の個数を計測し、平均値を算出した。評価基準は、以下のとおりである。
A:気泡の個数が、1個/mm2未満
B:気泡の個数が、1個/mm2以上10個/mm2未満
C:気泡の個数が、10個/mm2以上100個/mm2未満
D:気泡の個数が、100個/mm2以上
【0559】
次に、3層積層の半導体パッケージを作製し、歩留まり評価を行った。評価方法は、以下のとおりである。
【0560】
(歩留まり)
表3及び表4に記載の基板に対して、無電解めっき処理を行い、表面に導体層を有する基板を得た。
表3及び表4に記載の転写フィルムを、感光性層側が導体層に接するようにラミネートした。100℃のヒートロールを用いて0.7MPaの圧力で2m/minの速度で圧着した(貼合工程)。
転写フィルムにおける仮支持体を剥離した(仮支持体剥離工程)。
所定のパターンを有するマスクを用いて、高圧水銀灯を光源とする投影露光装置を用いて、下記の露光量でパターン露光を行った(露光工程)。
Stouffer社製の41段ステップタブレットを用いて露光し、最短現像時間の1.5倍の時間で現像した場合に、残存ステップ段数が13段となる露光量とした。
現像液として30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、最短現像時間の1.5倍の時間でスプレー現像し、未露光部を除去して、レジストパターンを形成した(現像工程)。
レジストパターンが形成されていない領域にある導体層に対して、硫酸銅めっき液を用いた電解めっきを行い、厚さ2μmの銅めっき層を形成した。その後、剥離液を用いてレジストパターンを剥離した。レジストパターンの剥離によって露出した導体層にエッチング処理を行って、導体パターン層P1を形成した(第2の導体パターン層形成工程)。
導体パターン層P1のライン幅は10μm、スペース幅は10μmであった。
なお、比較例1では、仮支持体剥離工程を実施せず、露光工程の後に仮支持体を剥離した。
【0561】
導体パターン層P1上に公知の層間絶縁膜をラミネートし、180℃で30分間保持し、絶縁層を形成した。その後、所定の位置にビアを有するパターン(φ60μm)を形成した後、粗化液として過マンガン酸ナトリウム水溶液で残渣を除去し、ビア形成と無電解めっき処理を行い、導体層を形成した。
【0562】
次に、上記貼合工程、上記仮支持体剥離工程、上記露光工程、上記現像工程、及び上記第2の導体パターン層形成工程と同様の方法で、導体パターン層P2を形成した。
導体パターン層P2のライン幅は5.0μm、スペース幅は5.0μmであった。
なお、比較例1では、仮支持体剥離工程を実施せず、露光工程の後に仮支持体を剥離した。
【0563】
導体パターン層P2上に公知の層間絶縁膜をラミネートし、180℃で30分間保持し、絶縁層を形成した。その後、所定の位置にビアを有するパターン(φ60μm)を形成した後、粗化液として過マンガン酸ナトリウム水溶液で残渣を除去し、ビア形成と無電解めっき処理を行い、導体層を形成した。
なお、実施例16~27では、実施例1と比較して、最表面の表面粗さRzが0.3μm大きかった。
【0564】
上記貼合工程、上記仮支持体剥離工程を実施した。
所定のパターンを有するマスクを用いて、上記露光工程と同様の方法で、パターン露光を行った(露光工程)。
マスクとして、ライン幅が2.0μm、2.5μm、3.0μm、3.5μm、4.0μm、4.5μmであり、スペース幅がライン幅と同じであるパターンを有するマスクを用いた。
上記現像工程及び上記第2の導体パターン層形成工程と同様の方法で、導体パターン層P3を形成した。
なお、比較例1では、仮支持体剥離工程を実施せず、露光工程の後に仮支持体を剥離した。
導体パターン層P3の各パターンについて、10個ずつ積層体を作製した。パターンは6種類であるため、合計60個の積層体を作製した。
形成された導体パターン層P3上に、ソルダーレジストを塗布し、さらに半導体素子を搭載し、封止することで、半導体パッケージを作製した。得られた半導体パッケージをプリント配線板の所定の位置に搭載することで、半導体パッケージ基板を得た。
【0565】
得られた半導体パッケージ基板について、導体パターン層P3のパターンごとに動作確認を行った。各パターンについて、動作できた数を表3及び表4に記載した。
【0566】
評価結果を表3及び表4に示す。
表3及び表4中、「感光性層の透過率」は、感光性層の、パターン露光に用いる光の主波長(365nm)における透過率を意味する。
【0567】
【0568】
【0569】
表3及び表4に示すように、実施例1~実施例15では、基板と、導体パターン層と絶縁層とが交互に積層された少なくとも1組の積層構造と、導体層と、をこの順に有する回路基板に対して、貼合工程、仮支持体剥離工程、露光工程、現像工程、第1の導体パターン層形成工程又は第2の導体パターン層形成工程を行うことにより、解像性に優れる導体パターン層を有する積層体が得られた。一方、比較例1では、仮支持体剥離工程が含まれず、解像性に劣ることが分かった。
【0570】
【0571】
【0572】
表5に示すように、実施例19では、転写フィルムが熱可塑性樹脂層を含むため、実施例16と比較して、歩留まりが向上することが分かった。
実施例21では、貼合工程の前に回路基板を加熱し、導体層の表面温度が70°以上である状態で、回路基板に対して転写フィルムを貼合したため、実施例20と比較して、歩留まりが向上することが分かった。
表6に示すように、実施例22及び実施例23では、貼合工程の後であって、仮支持体剥離工程の前に、気泡抜き処理を行ったため、実施例20と比較して、歩留まりが向上することが分かった。
実施例24では、現像工程において、形成されるレジストパターンの長手方向と回路基板の搬送方向との成す角度が10°以下であったため、実施例19と比較して、歩留まりが向上することが分かった。