(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095544
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】固体撮像素子及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
H01L27/146 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200357
(22)【出願日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2022211517
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福浦 知浩
【テーマコード(参考)】
4M118
【Fターム(参考)】
4M118AA01
4M118AB01
4M118BA07
4M118BA10
4M118BA14
4M118CA02
4M118CA22
4M118CA25
4M118CA34
4M118CB20
4M118GA02
4M118GA08
4M118GB03
4M118GB07
4M118GB11
4M118GC20
4M118GD04
4M118GD15
4M118HA25
(57)【要約】
【課題】感度を向上させることが可能な固体撮像素子及びこれを備える電子機器を提供する。
【解決手段】光電変換を行う光電変換部を有する固体撮像素子であって、複数の金属系粒子が互いに離間して配置されてなる金属系粒子集合体を備えており、該金属系粒子集合体において上記複数の金属系粒子はそれぞれ、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1nm以上25μm以下となるように配置されており、該平均距離の標準偏差が10μm以下である固体撮像素子、及びこれを備える電子機器が提供される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換を行う光電変換部を有する固体撮像素子であって、
複数の金属系粒子が互いに離間して配置されてなる金属系粒子集合体を備えており、
前記金属系粒子集合体において、前記複数の金属系粒子は、それぞれ、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1nm以上25μm以下となるように配置されており、前記平均距離の標準偏差が10μm以下である、固体撮像素子。
【請求項2】
光電変換を行う光電変換部を有する固体撮像素子であって、
複数の金属系粒子が互いに離間して配置されてなる金属系粒子集合体を備えており、
前記複数の金属系粒子は、その平均粒径が200nm以上600μm以下、平均高さが3.0nm以上150μm以下、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1以上8以下であり、
前記金属系粒子集合体において、前記複数の金属系粒子は、それぞれ、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1nm以上25μm以下となるように配置されている、固体撮像素子。
【請求項3】
前記金属系粒子が貴金属からなる、請求項1又は2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記貴金属が銀又は金である、請求項1又は2に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記金属系粒子集合体を被覆する被覆層をさらに備える、請求項1又は2に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記被覆層は、第1表面を有するシリコン原子含有層であり、
X線光電子分光法によって測定される前記第1表面の炭素原子のシグナル強度が20.0原子%以下である、請求項5に記載の固体撮像素子。
【請求項7】
前記光電変換部で光電変換される電磁波は、極大波長が200nm以上3mm以下である電磁波を含む、請求項1又は2に記載の固体撮像素子。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の固体撮像素子を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子及びこれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)固体撮像素子等の固体撮像素子では、画素サイズの縮小化が進んでいる。画素サイズの縮小化により、画素あたりの受光量が減少することから感度向上が求められている。例えば特許文献1には、感度向上のための一つの手段として、光電変換領域が設けられる基板の受光面側に微細な凹凸構造を形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、感度を向上させることが可能な固体撮像素子及びこれを備える電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下を提供する。
[1] 光電変換を行う光電変換部を有する固体撮像素子であって、
複数の金属系粒子が互いに離間して配置されてなる金属系粒子集合体を備えており、
前記金属系粒子集合体において、前記複数の金属系粒子は、それぞれ、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1nm以上25μm以下となるように配置されており、前記平均距離の標準偏差が10μm以下である、固体撮像素子。
[2] 光電変換を行う光電変換部を有する固体撮像素子であって、
複数の金属系粒子が互いに離間して配置されてなる金属系粒子集合体を備えており、
前記複数の金属系粒子は、その平均粒径が200nm以上600μm以下、平均高さが3.0nm以上150μm以下、前記平均高さに対する前記平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1以上8以下であり、
前記金属系粒子集合体において、前記複数の金属系粒子は、それぞれ、その隣り合う金属系粒子との平均距離が1nm以上25μm以下となるように配置されている、固体撮像素子。
[3] 前記金属系粒子が貴金属からなる、[1]又は[2]に記載の固体撮像素子。
[4] 前記貴金属が銀又は金である、[3]に記載の固体撮像素子。
[5] 前記金属系粒子集合体を被覆する被覆層をさらに備える、[1]~[4]のいずれかに記載の固体撮像素子。
[6] 前記被覆層は、第1表面を有するシリコン原子含有層であり、
X線光電子分光法によって測定される前記第1表面の炭素原子のシグナル強度が20.0原子%以下である、[5]に記載の固体撮像素子。
[7] 前記光電変換部で光電変換される電磁波は、極大波長が200nm以上3mm以下である電磁波を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の固体撮像素子。
[8] 光電変換を行う光電変換部を有する固体撮像素子であって、
複数の金属系粒子が互いに離間して配置されてなる金属系粒子集合体と、
前記金属系粒子集合体を被覆する被覆層と、を備え、
前記被覆層は、第1表面を有するシリコン原子含有層であり、
X線光電子分光法によって測定される前記第1表面の炭素原子のシグナル強度が20.0原子%以下である、固体撮像素子。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の固体撮像素子を備える電子機器。
【発明の効果】
【0006】
固体撮像素子において、感度向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】金属系粒子集合体の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】被覆層で被覆された金属系粒子集合体の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明の第3実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明の第4実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
【
図7】本発明の第5実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
【
図8】本発明の第6実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
【
図9】本発明の第7実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
【
図10】本発明の第8実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
【
図11】本発明の第9実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
【
図12】本発明の第10実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
【
図13】本発明の第11実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
【
図14】本発明の第12実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
【
図15】実験例で作製した光吸収素子を模式的に示す断面図である。
【
図16】光吸収素子の光吸収率を測定するための光学系を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下のすべての図面は、本発明の理解を助けるために示すものであり、図面に示される各構成要素のサイズ及び形状は、実際の構成要素のサイズ及び形状とは必ずしも一致しない。
【0009】
<固体撮像素子>
(1)概要
本発明に係る固体撮像素子は、電磁波の光電変換を行う光電変換部と、金属系粒子集合体とを備える。本発明に係る固体撮像素子は、従来の固体撮像素子に金属系粒子集合体を組み入れたものであってよい。光電変換部で光電変換される電磁波は、極大波長が200nm以上3mm以下である電磁波を含むことができる。
本発明に係る固体撮像素子は、例えばCMOS固体撮像素子であってもよく、CCD(Charge Coupled Devices)固体撮像素子であってもよく、好ましくはCMOS固体撮像素子である。
【0010】
金属系粒子集合体は、互いに離間して配置される複数の金属系粒子から構成される構造体であり、好ましくは、プラズモン構造体である。「プラズモン構造体」とは、局在プラズモン共鳴を示すことができる構造体をいう。プラズモンとは、構造体中の自由電子の集団的な振動によって生起する自由電子の粗密波のことである。金属系粒子集合体、好ましくは、プラズモン構造体である金属系粒子集合体を固体撮像素子に組み入れることにより、フォトダイオード(PD)等の光電変換部における電磁波吸収効率(光電変換効率ということもできる。)を増強させることができる。これにより、例えば画素サイズの縮小化に伴う画素あたりの受光量減少による感度低下という問題を解決し、画素ごとの感度を向上させ得る。あるいは、感度を維持しつつ、各画素における光電変換部の薄膜化を図ることが可能である。
【0011】
電磁波吸収効率を増強させる要素として金属系粒子集合体を効果的に機能させるために、固体撮像素子内において、金属系粒子集合体は、光電変換部の近傍に配置されることが好ましく、光電変換部に隣接していることがより好ましい。後述するように、金属系粒子集合体の構造を適切に制御することで、プラズモン構造体である金属系粒子集合体が示すプラズモン共鳴の作用範囲を広くすることが可能であるため、金属系粒子集合体と光電変換部との距離は、例えば10nm以上、さらには数十nm(例えば20nm、30nm又は40nm)以上、なおさらには100nm以上又は200nm以上であってもよい。該距離は、光電変換部が吸収する電磁波が例えば可視光である場合には、電磁波吸収効率を効果的に増強させる観点から、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下、なおさらに好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。光電変換部が吸収する電磁波が可視光以外である場合、該距離は、該電磁波の波長の1/2以下の長さであることが好ましく、より好ましくは1/3以下、さらに好ましくは1/4以下である。具体的には、電磁波が近赤外領域の場合、該距離は、1250nm以下の長さであることが好ましく、より好ましくは830nm以下、さらに好ましくは625nm以下である。また、電磁波がテラヘルツ波長帯の場合、該距離は、150μm以下の長さであることが好ましく、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは75μm以下である。
【0012】
固体撮像素子内において、金属系粒子集合体は、電磁波が光電変換部に到達することを妨げない位置に配置されることが好ましい。このような位置とは、光電変換部を基準に、固体撮像素子に電磁波が入射される入射面側を上方とするとき、例えば、光電変換部の側方又は下方である。
【0013】
(2)金属系粒子集合体
図1は、金属系粒子集合体の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示される例において、金属系粒子集合体20は、基材10上に積層されている。金属系粒子集合体層20は、複数の金属系粒子21の集合であり、互いに離間して配置される複数の金属系粒子21から構成される層である。
図1に示されるように、複数の金属系粒子21は、好ましくは、互いに離間して二次元的に配置される。
【0014】
金属系粒子集合体層は、好ましくは、下記[A]及び[B]から選択される構造的要件のいずれか一方を満たし、より好ましくは両方を満たす。
[A]金属系粒子集合体において複数の金属系粒子は、それぞれ、その隣り合う金属系粒子との平均距離(以下、「平均粒子間距離」ともいう。)が1nm以上25μm以下となるように配置されており、該平均粒子間距離の標準偏差は10μm以下である。
[B]金属系粒子集合体を構成する複数の金属系粒子は、平均粒径が200nm以上600μm以下であり、平均高さが3.0nm以上150μm以下であり、平均高さに対する平均粒径の比で定義されるアスペクト比が1以上8以下であり、金属系粒子集合体において、複数の金属系粒子は、それぞれ、平均粒子間距離が1nm以上25μm以下となるように配置されている。
【0015】
上記[A]及び/又は[B]を満たす所定の構造を有する金属系粒子集合体は、下記[a]及び[b]の特徴を示すことができる。これらの特徴は、金属系粒子集合体を構成する複数の金属系粒子が示す局在プラズモン間の相互作用により発現すると考えられる。
[a]金属系粒子集合体が示すプラズモン共鳴の作用範囲が広い。これにより、プラズモンによる電磁波吸収効率増強効果の及ぶ範囲を広くすることができるため、金属系粒子集合体から光電変換部までの距離を比較的長くすることも可能となる。
[b]金属系粒子集合体が強いプラズモン共鳴を示す。これにより、光電変換部の電磁波吸収効率について、強い増強効果を得ることができる。
【0016】
上記[b]に関し、金属系粒子集合体が示すプラズモン共鳴の強さは、特定波長における個々の金属系粒子が示す局在プラズモン共鳴の単なる総和ではなく、それ以上の強さである。上記[A]及び/又は[B]を満たす所定の構造を有する金属系粒子集合体においては、個々の金属系粒子が相互作用して強いプラズモン共鳴が発現する。このような強いプラズモン共鳴は、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用により発現すると考えられる。
【0017】
一般的に、プラズモン構造体は、吸光光度法で吸光スペクトルを測定したとき、プラズモン共鳴ピーク(以下、「プラズモンピーク」ともいう。)が観測される。プラズモンピークの極大波長における吸光度の大小から、プラズモン構造体のプラズモン共鳴の強さを評価することができる。吸光度値が大きいほどプラズモン共鳴の強さも大きい傾向にある。
【0018】
プラズモン構造体の吸光スペクトルは、吸光光度法によって測定することができる。具体的には、吸光スペクトルは、金属系粒子集合体が積層されたガラス基板の裏面側(金属系粒子集合体とは反対側)であって、基板面に垂直な方向から入射光を照射し、金属系粒子集合体側に透過した全方向における透過光の強度Iと、該測定サンプルの基板と同じ厚み及び同じ材質の基板であって、金属系粒子集合体が積層されていない基板の面に垂直な方向から先と同じ入射光を照射し、入射面の反対側から透過した全方向における透過光の強度I0とを、それぞれ積分球分光光度計を用いて測定することにより得られる。このとき、吸光スペクトルの縦軸である吸光度は、下記式:
吸光度=-log10(I/I0)
で表される。
吸光スペクトルは、一般の分光光度計を用いて測定することができる。プラズモンピークの極大波長やその吸光度を測定するにあたっては、対物レンズと分光光度計を用い、測定視野を絞って吸光スペクトル測定を行ってもよい。
【0019】
金属系粒子集合体をプラズモン構造体とするために、金属系粒子は、プラズモン共鳴可能な材料からなることが好ましい。プラズモン共鳴可能な材料とは、粒子又はその集合体としたときに、吸光光度法による吸光スペクトル測定においてプラズモンピークを示す材料であることを意味する。
【0020】
例えば可視光領域においてプラズモン共鳴可能な金属系材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム等の貴金属;アルミニウム、タンタル等の貴金属以外の金属;該貴金属及び貴金属以外の金属から選択される金属を含有する合金;該貴金属及び貴金属以外の金属から選択される金属を含む金属化合物(金属酸化物や金属塩等)が挙げられる。中でも、プラズモン共鳴可能な金属系材料としては、金、銀、銅、白金、パラジウム等の貴金属が好ましく、金、銀がより好ましい。金属系粒子を構成する金属系材料は、光電変換部で吸収され、光電変換される電磁波の波長領域に応じて選択されることが好ましい。金属系材料の種類によって、プラズモン共鳴を効果的に示す好適な波長領域が異なり得るためである。光電変換される電磁波の波長が1μmを超える場合、金属系材料は、貴金属以外の金属であってもよい。例えば、鉄、ステンレス等でも好ましく使用することができる。
【0021】
例えば、固体撮像素子に入射される電磁波、すなわち、固体撮像素子の光電変換部で吸収され、光電変換される電磁波が可視光領域である場合には上記金属系材料は金、銀、銅、アルミニウムであることが好ましく、近赤外領域である場合には金、銀であることが好ましく、テラヘルツ帯を含む数μmの電磁場波長領域である場合には金、銀、銅等の貴金属のほか、鉄、ステンレス、アルミニウム等の貴金属以外の金属であってもよい。
【0022】
金属系粒子集合体を構成する複数の金属系粒子は、上記[a]及び[b]の効果を効果的に得る観点から、平均粒径が、好ましくは200nm以上600μm以下、より好ましくは250nm以上540μm以下、さらに好ましくは300nm以上500nm以下であり、400μm以下、300μm以下、100μm以下、50μm以下、20μm以下、10μm以下、5μm以下、又は3μm以下であってもよい。金属系粒子の平均粒径は、金属系粒子を構成する金属系材料の種類に応じて適切に選択されることが好ましい。また、金属系粒子の平均粒径は、光電変換部で吸収され、光電変換される電磁波の波長領域に応じて選択されることが好ましい。金属系粒子の平均粒径によって、プラズモン共鳴を効果的に示す好適な波長領域が異なり得るためである。
【0023】
例えば、固体撮像素子に入射される電磁波、すなわち、固体撮像素子の光電変換部で吸収され、光電変換される電磁波が可視光領域である場合には、金属系粒子の平均粒径は、好ましくは200nm以上1600nm以下、より好ましくは200nm以上1200nm以下、さらに好ましくは250nm以上500nm以下、なおさらに好ましくは300nm以上500nm以下である。
光電変換部が吸収する電磁波が可視光以外である場合には、該平均粒径は、好ましくは該電磁波の波長の1/4倍以上2倍以下、より好ましくは1/3倍以上1.8倍以下、さらに好ましくは2/5倍以上1.7倍以下、なおさらに好ましくは1/2倍以上1.5倍以下である。具体的には、電磁波が近赤外領域の場合、該平均粒径は、200nm以上5000nm以下であることが好ましく、より好ましくは260nm以上4500nm以下、さらに好ましくは312nm以上4250nm以下、なおさらに好ましくは340nm以上3750nm以下である。また、電磁波がテラヘルツ波長帯の場合、該平均粒径は、7500nm以上600μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上540μm以下、さらに好ましくは12μm以上510μm以下、なおさらに好ましくは15μm以上450μm以下である。
【0024】
上記複数の金属系粒子の平均粒径とは、複数の金属系粒子から構成される金属系粒子集合体の直上からのSEM観察画像において、無作為に金属系粒子を10個選択し、各金属系粒子像内に無作為に接線径を5本引き(ただし、接線径となる直線はいずれも金属系粒子像内部のみを通ることができ、このうち1本は金属系粒子内部のみ通り、最も長く引ける直線であるものとする)、その平均値(以下、この平均値を「接線径平均値」ともいう。)を各金属系粒子の粒径としたときの、選択した10個の金属系粒子についての粒径の平均値である。接線径とは、金属系粒子の輪郭(投影像)をこれに接する2本の平行線で挟んだときの間隔(日刊工業新聞社 「粒子計測技術」,1994,第5頁)を結ぶ垂線と定義する。
【0025】
平均粒径の測定方法についてより具体的に説明すると、まずSEM観察画像は、日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡「JSM-5500」又はこれと同等の装置を用いて測定する。次いで、得られた観察画像を、アメリカ国立衛生研究所製のフリー画像処理ソフト「ImageJ」を用いて横1280ピクセル×縦960ピクセルで読み込む。次に、Microsoft社製の表計算ソフト「Excel」の乱数発生関数「RANDBETWEEN」を用いて、1~1280から10個の乱数(x1、x2、x3、x4、x5、x6、x7、x8、x9、x10)、1~960から10個の乱数(y1、y2、y3、y4、y5、y6、y7、y8、y9、y10)をそれぞれ得る。得られた各10個の乱数から10組の乱数組み合わせ(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)、(x4,y4)、(x5,y5)、(x6,y6)、(x7,y7)、(x8,y8)、(x9,y9)及び(x10,y10)を得る。1~1280から発生させた乱数の数値をx座標、1~960から発生させた乱数の数値をy座標として、10組の座標点(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)、(x4,y4)、(x5,y5)、(x6,y6)、(x7,y7)、(x8,y8)、(x9,y9)及び(x10,y10)を得る。そして、当該座標点を含む合計10個の金属系粒子像のそれぞれについて上記の接線径平均値を得、次いで当該10個の接線径平均値の平均値として平均粒径を得る。10組の乱数組み合わせである10個の座標点の少なくともいずれか1つが金属系粒子像内に含まれない場合、あるいは同一金属系粒子内に2つ以上の座標点が含まれる場合には、この乱数組み合わせを破棄し、10個の座標点がすべて異なる金属系粒子像内に含まれるまで乱数発生を繰り返す。
【0026】
金属系粒子集合体において複数の金属系粒子は、それぞれ、その隣り合う金属系粒子との平均距離(平均粒子間距離)が1nm以上25μm以下となるように配置されることが好ましく、1nm以上15μm以下となるように配置されることがより好ましく、1nm以上10μm以下となるように配置されることがさらに好ましく、5μm以下、3μm以下、1μm以下、500nm以下、200nm以下、100nm以下、50nm以下、又は30nm以下であってもよい。特に光電変換部が吸収する電磁波が可視光である場合には、平均粒子間距離が1nm以上1000nm以下となるように配置されることが好ましく、1nm以上500nm以下となるように配置されることがより好ましく、1nm以上250nm以下となるように配置されることがさらに好ましい。このような平均粒子間距離で複数の金属系粒子を配置することは、強いプラズモン共鳴及びプラズモン共鳴の作用範囲の伸長等の効果を発現させるうえで有利である。
【0027】
特に光電変換部が吸収する電磁波が可視光である場合、平均粒子間距離は、上記[a]及び[b]の効果を効果的に得る観点から、より好ましくは1nm以上150nm以下、さらに好ましくは1nm以上60nm以下、なおさらに好ましくは1nm以上50nm以下、特に好ましくは1nm以上30nm以下、最も好ましくは1nm以上20nm以下である。平均粒子間距離が1nm未満であると、粒子間でデクスター機構に基づく電子移動が生じ、局在プラズモンの失活の点で不利となる。
電磁波が近赤外領域の場合、平均粒子間距離は、1nm以上250nm以下であることが好ましく、より好ましくは1nm以上225nm以下、さらに好ましくは1nm以上200nm以下、なおさらに好ましくは1nm以上100nm以下である。また、電磁波がテラヘルツ波長帯の場合、平均粒子間距離は、1nm以上25μm以下であることが好ましく、より好ましくは1nm以上15μm以下、さらに好ましくは1nm以上10μm以下である。
【0028】
平均粒子間距離とは、複数の金属系粒子から構成される金属系粒子集合体の直上からのSEM観察画像において、無作為に金属系粒子を10個選択し、選択したそれぞれの金属系粒子について、隣り合う金属系粒子との粒子間距離を求めたときの、これら10個の金属系粒子の粒子間距離の平均値である。隣り合う金属系粒子との粒子間距離とは、すべての隣り合う金属系粒子との距離(隣り合う金属系粒子の表面同士間の最小距離)をそれぞれ測定し、これらを平均した値である。
【0029】
平均粒子間距離の測定方法についてより具体的に説明すると、まずSEM観察画像は、日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡「JSM-5500」又はこれと同等の装置を用いて測定する。次いで、得られた観察画像を、アメリカ国立衛生研究所製のフリー画像処理ソフト「ImageJ」を用いて横1280ピクセル×縦960ピクセルで読み込む。次に、Microsoft社製の表計算ソフト「Excel」の乱数発生関数「RANDBETWEEN」を用いて、1~1280から10個の乱数(x1~x10)、1~960から10個の乱数(y1~y10)をそれぞれ得る。得られた各10個の乱数から10組の乱数組み合わせ(x1,y1)から(x10,y10)を得る。1~1280から発生させた乱数の数値をx座標、1~960から発生させた乱数の数値をy座標として、10組の座標点(x1,y1)~(x10,y10)を得る。そして、当該座標点を含む合計10個の金属系粒子像のそれぞれについて、当該金属系粒子と隣り合う金属系粒子との粒子間距離を得、次いで当該10個の隣り合う金属系粒子との粒子間距離の平均値として平均粒子間距離を得る。10組の乱数組み合わせである10個の座標点の少なくともいずれか1つが金属系粒子像内に含まれない場合、あるいは同一金属系粒子内に2つ以上の座標点が含まれる場合には、この乱数組み合わせを破棄し、10個の座標点がすべて異なる金属系粒子像内に含まれるまで乱数発生を繰り返す。
【0030】
特に光電変換部が吸収する電磁波が可視光である場合、上記[a]及び[b]の効果を効果的に得る観点から、金属系粒子集合体において、複数の金属系粒子は、上記平均粒子間距離の標準偏差が25nm以下となるように配置されることが好ましい。平均粒子間距離の標準偏差は、上記[a]及び[b]の効果を効果的に得る観点から、より好ましくは20nm以下であり、また、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは0.2nm以上、さらに好ましくは0.3nm以上である。
電磁波が近赤外領域の場合、平均粒子間距離の標準偏差は、50nm以下であることが好ましい。また、電磁波がテラヘルツ波長帯の場合、平均粒子間距離の標準偏差は、10μm以下であることが好ましい。これらの場合において、平均粒子間距離の標準偏差は、好ましくは0.1nm以上、より好ましくは0.2nm以上、さらに好ましくは0.3nm以上である。
【0031】
平均粒子間距離の標準偏差は、次のように定義される。複数の金属系粒子から構成される金属系粒子集合体の直上からのSEM観察画像において、無作為に金属系粒子をまず1個選択し、その金属系粒子について、隣り合う金属系粒子との粒子間距離を求める。隣り合う金属系粒子との粒子間距離とは、すべての隣り合う金属系粒子との距離(表面同士間の最小距離である。)をそれぞれ測定し、これらを平均した値である。上記SEM観察画像において、上記1個とは異なる9個の金属系粒子を無作為に選択し、これらの9個の金属系粒子について、上記と同様にして隣り合う金属系粒子との粒子間距離を求める。このようにして得られた合計10個の金属系粒子についての隣り合う金属系粒子との粒子間距離の標準偏差を、平均粒子間距離の標準偏差と定義する。
【0032】
平均粒子間距離の標準偏差の測定方法についてより具体的に説明すると、まずSEM観察画像は、日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡「JSM-5500」又はこれと同等の装置を用いて測定する。次いで、得られた観察画像を、アメリカ国立衛生研究所製のフリー画像処理ソフト「ImageJ」を用いて横1280ピクセル×縦960ピクセルで読み込む。次に、Microsoft社製の表計算ソフト「Excel」の乱数発生関数「RANDBETWEEN」を用いて、1~1280から10個の乱数(x1~x10)、1~960から10個の乱数(y1~y10)をそれぞれ得る。得られた各10個の乱数から10組の乱数組み合わせ(x1,y1)から(x10,y10)を得る。1~1280から発生させた乱数の数値をx座標、1~960から発生させた乱数の数値をy座標として、10組の座標点(x1,y1)~(x10,y10)を得る。そして、当該座標点を含む合計10個の金属系粒子像のそれぞれについて、当該金属系粒子と隣り合う金属系粒子との粒子間距離を得、次いで当該10個の隣り合う金属系粒子との粒子間距離の標準偏差として平均粒子間距離の標準偏差を得る。10組の乱数組み合わせである10個の座標点の少なくともいずれか1つが金属系粒子像内に含まれない場合、あるいは同一金属系粒子内に2つ以上の座標点が含まれる場合には、この乱数組み合わせを破棄し、10個の座標点がすべて異なる金属系粒子像内に含まれるまで乱数発生を繰り返す。
【0033】
金属系粒子集合体を構成する複数の金属系粒子の平均高さは、上記[a]及び[b]の効果を効果的に得る観点から、好ましくは3.0nm以上150μm以下、より好ましくは5.0nm以上150μm以下、さらに好ましくは55nm以上150μm以下、なおさらに好ましくは55nm以上100μm以下であり、50μm以下、20μm以下、10μm以下、5μm以下、3μm以下、2μm以下、又は1μm以下であってもよい。光電変換部が吸収する電磁波が可視光である場合には、該平均高さは、好ましくは3.0nm以上500nm以下、より好ましくは5.0nm以上500nm以下、さらに好ましくは55nm以上500nm以下、なおさらに好ましくは55nm以上300nm以下、特に好ましくは70nm以上150nm以下である。
電磁波が近赤外領域の場合、該平均高さは、1250nm以下であることが好ましい。また、電磁波がテラヘルツ波長帯の場合、該平均高さは、150μm以下が好ましい。
複数の金属系粒子の平均高さとは、金属系粒子集合体のAFM観察画像において、無作為に金属系粒子を10個選択し、これら10個の金属系粒子の高さを測定したときの、10個の測定値の平均値である。
【0034】
光電変換部が吸収する電磁波の波長域にかかわらず、金属系粒子集合体を構成する複数の金属系粒子のアスペクト比は、上記[a]及び[b]の効果を効果的に得る観点から、好ましくは1以上8以下、より好ましくは2以上8以下、さらに好ましくは2.5以上8以下である。アスペクト比は、上記平均高さに対する上記平均粒径の比(平均粒径/平均高さ)で定義される。金属系粒子は真球状であってもよいが、上記[a]及び[b]の効果を効果的に得る観点から、アスペクト比が1より大きい扁平形状を有していることが好ましい。
【0035】
光電変換部が吸収する電磁波の波長域にかかわらず、金属系粒子は、効果の高いプラズモンを励起する観点から、その表面が滑らかな曲面からなることが好ましく、とりわけ表面が滑らかな曲面からなる扁平形状を有していることがより好ましいが、表面に微小な凹凸(粗さ)を幾分含んでいてもよく、このような意味において金属系粒子は不定形であってもよい。
【0036】
光電変換部が吸収する電磁波の波長域にかかわらず、金属系粒子集合体に含まれる金属系粒子の数は、通常10個以上であり、好ましくは30個以上である。金属系粒子を10個以上含む金属系粒子集合体を形成することにより、金属系粒子の局在プラズモン間の相互作用によって強いプラズモン共鳴及びプラズモン共鳴の作用範囲の伸長が発現しやすい。金属系粒子集合体に含まれる金属系粒子の数は、例えば50個以上、300個以上、500個以上、1000個以上、又は10000個以上であってもよい。金属系粒子集合体における金属系粒子の数密度は、好ましくは7個/μm2以上、より好ましくは15個/μm2以上である。
【0037】
光電変換部が吸収する電磁波の波長域にかかわらず、金属系粒子集合体は、当該集合体として導電性を示さないものであることが好ましく、金属系粒子集合体を構成する金属系粒子は、それぞれ、その隣り合う金属系粒子との間で非導電性であることがより好ましい。金属系粒子集合体において、金属系粒子間で電子の授受が可能な箇所が存在すると、プラズモン共鳴効果が低減する傾向にある。従って、金属系粒子間は確実に離間されており、金属系粒子間には導電性物質が介在されないことが好ましい。金属系粒子それ自体は導電性を有していてもよい。
【0038】
金属系粒子集合体が当該集合体として導電性を示さないものであることは、例えば、金属系粒子集合体にマルチメーター〔テスター(ヒューレット・パッカード社製「E2378A」)〕の一対のテスタープローブを10mm~15mm離して接触させたとき、レンジ設定「30MΩ」のときに、当該測定条件にて抵抗値が30MΩ以上である結果、「オーバーロード」と表示されることによって確認することができる。
【0039】
(3)金属系粒子集合体の製造方法
金属系粒子集合体は、例えば次のような方法によって作製することができる。
[W]スクリーン印刷などテンプレートを用いて金属原料液をパターン塗工する方法、
[X]基材上において微小な種(seed)から複数の金属系粒子を成長させていくボトムアップ法、
[Y]複数の金属系粒子を所定の厚みを有する両親媒性材料からなる保護膜で被覆した後、LB(Langmuir Blodgett)膜法により、これを基材上にフィルム化する方法、
[Z]その他、蒸着又はスパッタリングにより作製した薄膜を後処理する方法、レジスト加工、エッチング加工、金属系粒子が分散された分散液を用いたキャスト法等。
【0040】
上記方法[X]においては、所定温度に調整された基材上に、極めて低速で金属系粒子を成長させる工程(以下、「粒子成長工程」ともいう。)を含むことが好ましい。かかる粒子成長工程を含む製造方法によれば、上述の好ましい平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離及び平均粒子間距離の標準偏差を有する金属系粒子集合体を制御良く得ることができる。
【0041】
粒子成長工程において、基材上に金属系粒子を成長させる速度は、平均高さ成長速度で1nm/分未満であることが好ましく、0.5nm/分以下であることがより好ましい。ここでいう平均高さ成長速度は、平均堆積速度又は金属系粒子の平均厚み成長速度とも呼ぶことができ、下記式:
金属系粒子の平均高さ/金属系粒子成長時間
で定義される。「金属系粒子の平均高さ」の定義は上述のとおりである。
金属系粒子成長時間とは、金属系粒子の成長開始から終了までの時間をいい、具体的には、金属系材料の供給時間をいう。金属系粒子集合体を膜と捉えたとき、金属系粒子成長時間は、成膜時間と言い換えることもできる。金属系粒子を成長させる方法がスパッタリング法であるとき、金属系粒子成長時間はスパッタリング時間である。
【0042】
粒子成長工程における基材の温度は、好ましくは100℃以上450℃以下であり、より好ましくは200℃以上450℃以下であり、さらに好ましくは250℃以上350℃以下であり、なおさらに好ましくは300℃又はその近傍(300℃±10℃程度)である。
【0043】
平均高さ成長速度、基材温度及び/又は金属系粒子成長時間等の調整によって、基材上に成長される複数の金属系粒子の平均粒子間距離及びその標準偏差、平均粒径、平均高さ、アスペクト比を制御することが可能である。
【0044】
金属系粒子を成長させる際の圧力(装置チャンバ内の圧力)は、粒子成長可能な圧力である限り特に制限されないが、通常、大気圧未満である。圧力の下限は特に制限されないが、平均高さ成長速度を上記範囲内に調整し易いことから、好ましくは0.5Pa以上、より好ましくは6Pa以上、さらに好ましくは10Pa以上である。
【0045】
基材上に金属系粒子を成長させる具体的方法は、1nm/分未満の平均高さ成長速度で粒子成長できる方法である限り特に制限されないが、スパッタリング法、真空蒸着等の蒸着法を挙げることができる。スパッタリング法のなかでも、比較的簡便に金属系粒子集合体を成長させることができ、かつ、1nm/分未満の平均高さ成長速度を維持しやすいことから、直流(DC)スパッタリング法を用いることが好ましい。
【0046】
スパッタンリング方式は特に制限されず、イオンガンやプラズマ放電で発生したアルゴンイオンを電界で加速してターゲットに照射する直流アルゴンイオンスパッタリング法等を用いることができる。スパッタリング法における電流値、電圧値、基材・ターゲット間距離等の他の諸条件は、1nm/分未満の平均高さ成長速度で粒子成長がなされるよう適宜調整される。
【0047】
なお、上述の好ましい平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離及び平均粒子間距離の標準偏差を有する金属系粒子集合体を制御良く得るためには、粒子成長工程において平均高さ成長速度を1nm/分未満とすることに加えて、平均粒径成長速度を5nm未満とすることが好ましいが、平均高さ成長速度が1nm/分未満である場合、通常、平均粒径成長速度は5nm未満となる。平均粒径成長速度は、より好ましくは1nm/分以下である。平均粒径成長速度とは、下記式:
金属系粒子の平均粒径/金属系粒子成長時間
で定義される。「金属系粒子の平均粒径」及び「金属系粒子成長時間」の定義は上述のとおりである。
【0048】
上述の好ましい平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離及び平均粒子間距離の標準偏差を有する金属系粒子集合体を得るためには、上述した好ましい製造条件を考慮しつつ、粒子成長工程における金属系粒子成長時間を適切に調整することが好ましい。
【0049】
金属系粒子集合体が形成される基材は、固体撮像素子に含まれる構成要素であってよい。該構成要素としては、例えば、固体撮像素子の最下層として設けることができる支持基板(例えばシリコン基板)、多層配線層、光電変換部が形成される半導体基板、絶縁層、パッシベーション層等が挙げられる。
【0050】
(4)被覆層
固体撮像素子は、金属系粒子集合体を被覆する被覆層を備えていてもよい。被覆層を備えることにより、金属系粒子集合体の表面を保護することができる。また、絶縁材料からなる被覆層を備えることは、金属系粒子集合体の非導電性を担保するうえでも有利である。金属系粒子集合体及び被覆層を備える固体撮像素子において、光電変換部、金属系粒子集合体及び被覆層の積層順序は特に制限されず、金属系粒子集合体、被覆層、光電変換部の順に積層されてもよいし、光電変換部、金属系粒子集合体、被覆層の順に積層されてもよい。
【0051】
図2は、被覆層で被覆された金属系粒子集合体の一例を模式的に示す断面図である。
図2に示される積層体は、基材10と、基材10の表面に配置される金属系粒子集合体20と、金属系粒子集合体20上に配置される被覆層30とを含む。
図2に示される例において、被覆層30は、金属系粒子集合体20を基準に基材10とは反対側に、かつ、金属系粒子集合体20における基材10とは反対側の表面の全体を覆うように配置されている。このように、被覆層30は、金属系粒子集合体20を保護する等の観点から、金属系粒子集合体20における基材10とは反対側の表面の全体を覆うように配置されることが好ましい。また、被覆層30は、金属系粒子21間の間隙を埋めるように形成されることが好ましい。
【0052】
被覆層を構成する材料としては、良好な絶縁性を有するものが好ましく、例えば、スピンオングラス(SOG;たとえば有機シロキサン材料を含有するもの)、SiO2、Si3N4、TiO2、Al2O3等が挙げられる。
【0053】
一つの好ましい実施形態において、被覆層は、第1表面を有するシリコン原子含有層であり、X線光電子分光法によって測定される第1表面の炭素原子のシグナル強度が20.0原子%以下である層(以下、このシリコン原子含有層を「シリコン原子含有層(S)」ともいう。)である。ここでいう第1表面とは、シリコン原子含有層(S)の外縁を規定する表面の少なくとも一部であり、基材10を含む積層体においては、好ましくは、基材10側とは反対側の表面の少なくとも一部である。
図2に示される積層体においては、被覆層30における基材10側とは反対側の表面が第1表面31であり、積層体における基材10とは反対側の表面全体が第1表面で構成されている。
【0054】
シリコン原子含有層(S)は耐熱性及び耐酸化性に優れる。したがって、シリコン原子含有層(S)で金属系粒子集合体を被覆しておくことにより、金属系粒子集合体を含む固体撮像素子の製造工程が高温下での工程を含む場合であっても、金属系粒子集合体の性能(電磁波吸収効率増強効果)を低下させることなく、金属系粒子集合体を含む固体撮像素子を製造することができる。高温下での工程としては、例えば、フォトダイオード(PD)等の光電変換部を形成する工程が挙げられる。
【0055】
上記炭素原子のシグナル強度は、耐熱性を高める観点から、好ましくは18原子%以下、より好ましくは15原子%以下、さらに好ましくは12原子%以下、なおさらに好ましくは10原子%以下である。
【0056】
上記炭素原子のシグナル強度は、好ましくは0.2原子%以上、より好ましくは0.5原子%以上、さらに好ましくは1原子%以上であり、5原子%以上であってもよい。上記炭素原子のシグナル強度が低すぎるシリコン原子含有層(S)を形成する場合には、形成プロセス選定上、その形成過程において金属系粒子集合体に損傷を与える可能性がある。具体的には、例えば、金属系粒子集合体に損傷を与えるおそれのある水準の酸素導入と加熱が必要なプロセスを取らざるを得ないおそれがある。また、上記炭素原子のシグナル強度が低すぎないシリコン原子含有層(S)を形成する場合には、後述するシリコン原子含有層形成用組成物として、比較的高い炭素原子のシグナル強度を有する組成物を用いることができる。このような組成物を用いてシリコン原子含有層(S)を形成することにより、該組成物の塗工性、ひいてはシリコン原子含有層(S)の形成効率を高めることができるとともに、シリコン原子含有層(S)の表面(第1表面)の平滑性を高めることができる。
【0057】
第1表面の炭素原子のシグナル強度は、下記装置を用いた下記測定条件に従うX線光電子分光法により測定することができる。X線光電子分光法において、炭素原子を含む各原子のシグナル強度は、X線光電子分光法によって取得されるスペクトルが有する全シグナルの合計面積に占める各原子のシグナルの面積の割合(%)として定義される。第1表面の任意の3箇所について上記各原子のシグナルの面積の割合(%)を測定し、これらの測定値の平均値をその原子シグナルの強度とする。
【0058】
(装置及び測定条件)
・装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック製 K-Alpha X線光電子分光システム
・測定範囲:400×800mm・測定元素(積算回数):O(4),C(4),Si(4)
・Dwell Time:50ms
・中和銃:有
・GCIB:有(表面の汚染除去のため)
【0059】
シリコン原子含有層(S)は、X線光電子分光法によって同定可能な原子として、シリコン(Si)及び炭素(C)原子のほか、酸素(O)原子、窒素(N)原子等を含有していてもよい。該シリコン原子含有層の具体的な構成材料としては、例えば、SiaObCc、SidNeCf、SigOhNiCj、SikOl、SimNn、SioOpNq等が挙げられ、好ましくは、SiaObCc、SidNeCf、SigOhNiCjである。a~qは、各化合物における各原子の組成比を表す。シリコン原子含有層(S)は、2種以上の材料から構成されていてもよく、また、単層構造であってもよいし、異なる材料からなる多層構造であってもよい。
【0060】
シリコン原子含有層(S)は、アモルファス層であることが好ましい。後述する製造方法によれば、比較的高温で熱処理する工程を含むにもかかわらず、シリコン原子含有層(S)をアモルファス層とすることが可能である。シリコン原子含有層(S)がアモルファス層であることは、シリコン原子含有層(S)の原料として、塗工プロセスが適用可能なものを選択でき、工業的にスループットの高い生産が行える点で有利である。
【0061】
シリコン原子含有層(S)がアモルファス層であることは、下記装置を用いた下記測定条件に従うX線回折法により、第1表面のXRDスペクトルを取得することによって確認することができる。すなわち、2θ=5°~85°の範囲(好ましくは、0°~90°の範囲)において、結晶に由来する半値全幅(FWHM)が5°以下のピークが存在しないことをもって、シリコン原子含有層(S)がアモルファス層であると判断することができる。
【0062】
(装置及び測定条件)
・装置:リガク製 SmartLab
・測定方法:θ/2θ測定法
・測定範囲:2θ=5°~90°
・管電圧:45 kV
・管電流:200 mA
【0063】
シリコン原子含有層(S)の平均厚みは、通常10nm以上300nm以下であり、好ましくは15nm以上250nm以下、より好ましくは20nm以上200nm以下である。シリコン原子含有層(S)の平均厚みは、30nm以上、40nm以上、50nm以上、55nm以上又は60nm以上であってもよい。シリコン原子含有層(S)の平均厚みが上記範囲であることにより、金属系粒子集合体を保護する機能及び金属系粒子集合体の耐熱性を高める機能を十分に付与することが可能となり、また、金属系粒子集合体の表面凹凸を平坦化し得る。平均厚みに関する上記記載は、シリコン原子含有層(S)の被覆層についても適用される。
【0064】
シリコン原子含有層(S)は、上記範囲の平均厚みを有し、かつ、金属系粒子集合体における基材とは反対側の表面の全体を覆うような厚みを有していることが好ましい。シリコン原子含有層(S)が金属系粒子集合体における基材とは反対側の表面の全体を覆っていることは、日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡「JSM-5500」又はこれと同等の装置を用いて、表面像を取得することによって確認することができる。あるいは、第1表面の炭素原子のシグナル強度の測定と同様に、基材とは反対側の表面をX線光電子分光法により測定し、金属系粒子を構成する金属の原子のシグナル強度が1原子%以下(好ましくは検出限界未満)であることによって確認することもできる。
【0065】
シリコン原子含有層(S)の平均厚みは、該シリコン原子含有層の任意の10点について厚みを測定したときの該10点の平均値である。該シリコン原子含有層の厚みは、AFMによる段差測定、又はSEMによる断面観察で測定することができる。シリコン原子含有層(S)が形成される表面が平坦でない場合は、SEM断面像を観察することで、シリコン原子含有層の任意の10点について厚みを測定し、その平均値をシリコン原子含有層(S)の平均厚みとしてもよい。
【0066】
シリコン原子含有層(S)は、ウェットコーティング層であることが好ましい。ウェットコーティング層であるとは、塗布液(後述するシリコン原子含有層形成用組成物)を塗布する工程を経て形成される層をいう。シリコン原子含有層(S)がウェットコーティング層であることは、シリコン原子含有層(S)の表面(第1表面)を平滑にするうえで有利である。シリコン原子含有層(S)がウェットコーティング層であることにより、表面(第1表面)の粗さが小さいシリコン原子含有層(S)が得られやすい。シリコン原子含有層(S)の表面粗さが小さいと、該表面にコーティング等の後続加工を施す場合において、該後続加工の加工の均一性を向上させやすく、また、後続加工に伴う欠陥発生等による不良を低減させやすい。
【0067】
なお、シリコン原子含有層(S)は、蒸着法、スパッタリング法、CVD法等により形成されてもよいが、この場合、得られるシリコン原子含有層(S)は、金属系粒子集合体の表面凹凸に追随して表面凹凸を有する(表面粗さが大きい)層となりやすく、また、結晶性のシリコン原子含有層(S)となりやすい。
【0068】
シリコン原子含有層(S)の表面(第1表面)のJIS B 0601:2001に準拠して測定される算術平均粗さRaは、好ましくは10nm以下、より好ましくは8nm以下、さらに好ましくは5nm以下、なおさらに好ましくは3nm以下、特に好ましくは2nm以下である。Raは、0.1nm以上であってもよい。
【0069】
シリコン原子含有層(S)は、金属系粒子集合体が形成された基材上に、シリコン原子含有層形成用組成物を塗布して塗布層を形成する工程と、塗布層を300℃以上800℃以下の温度で熱処理する工程とを含む方法によって形成することができる。シリコン原子含有層形成用組成物を塗布する方法としては、スピンコート法、スリットコート法、スリットアンドスピンコート法等が挙げられる。
【0070】
シリコン原子含有層形成用組成物は、塗布層を熱処理する工程によって、例えば上記で例示した材料からなるシリコン原子含有層を形成可能な物質(シリコン原子含有層形成成分)を含有する。該物質としては、例えば、スピンオングラス(SOG)、ポリシラザン、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、メチルトリメトキシシラン(MTMS)等のシリコン原子含有物質が挙げられる。スピンオングラス(SOG)は、シロキサン構造を有しており、例えば、シリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー、水素化シルセスキオキサンポリマー、水素化アルキルシルセスキオキサンポリマー等が挙げられる。
【0071】
中でも、炭素原子のシグナル強度が上述の好ましい下限値以上であるシリコン原子含有層を形成する観点からは、シリコン原子含有層形成用組成物は、有機基や有機構造を有する有機SOG等の炭素原子を有するシリコン原子含有層形成成分を含有することが好ましい。有機SOGとしては、メチル基又はエチル基を有するSOGが挙げられる。有機SOGを用いることで、シリコン原子含有層形成用組成物の塗工性を向上させることもできる。
【0072】
シリコン原子含有層形成用組成物は、シリコン原子含有層形成成分のほか、溶剤、反応触媒、水、界面活性剤等をさらに含むことができる。
【0073】
塗布層を形成した後、該塗布層を300℃以上800℃以下の温度で熱処理する工程を実施する。熱処理の温度は、好ましくは350℃以上700℃以下、より好ましくは400℃以上650℃以下、さらに好ましくは450℃以上600℃以下、特に好ましくは500℃以上600℃以下である。熱処理温度が低すぎると、炭素原子を有するシリコン原子含有層形成成分を用いる場合において、シリコン原子含有層(S)の炭素原子のシグナル強度が好ましい範囲よりも大きくなりやすく、この場合、耐熱性が低いものとなる。熱処理温度が高すぎると、金属系粒子集合体に損傷を与えるおそれがある。
【0074】
熱処理の時間は、例えば1分以上720分以下であり、好ましくは2分以上480分以下、より好ましくは2分以上240分以下である。熱処理は、例えば、空気中又は不活性ガス(例えば窒素、アルゴン)雰囲気中で行うことができる。熱処理の圧力は、常圧であってよい。あるいは、熱処理は、真空雰囲気中で行ってもよい。
【0075】
以下、金属系粒子集合体を備える固体撮像素子について、いくつかの実施形態を例示する。以下に示す実施形態に係る固体撮像素子は、例えばCMOS固体撮像素子であってもよく、CCD固体撮像素子であってもよく、好ましくはCMOS固体撮像素子である。以下に示す実施形態に係る固体撮像素子は、特記しない限り、図示されているかにかかわらず、波長選択的吸収層を有していてもよいし、有していなくてもよい。波長選択的吸収層は、一般的に、光電変換される電磁波が可視光領域である場合に設けられ、波長選択的吸収層の吸収波長光(赤色光、緑色光、青色光、近赤外光等)は、光電変換されるべき電磁波の波長に応じて選択される。また、以下に示す実施形態に係る固体撮像素子が備える金属系粒子集合体は、それが設けられる光電変換部(フォトダイオード)が受光する電磁波の波長等に応じて、その形状や材質等が適切に選択されることが好ましい。
【0076】
(5)固体撮像素子の第1実施形態
図3は、第1実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
図3に示される画素は、オンチップレンズ100、波長選択的吸収層101、多層配線層102、半導体基板103(光電変換部)、金属系粒子集合体20及びこれを被覆する被覆層30、並びに支持基板104を備える。本実施形態に係る固体撮像素子は、オンチップレンズ100、多層配線層102、半導体基板103(光電変換部)、被覆層30及び金属系粒子集合体20をこの順に含む表面照射型のイメージセンサーである。
【0077】
多層配線層102は、複数の配線層102bと層間絶縁膜102aを有する。多層配線層102には、フォトダイオードPDに蓄積された電荷の読み出し等を行う複数の画素トランジスタも形成されている。
【0078】
半導体基板103は、光電変換部や画素回路を構成する素子の半導体領域が形成される半導体の基板である。半導体基板103は、例えばシリコン(Si)により構成することができる。半導体基板103では、例えばP型(第1導電型)の第1半導体領域103aに、N型(第2導電型)の第2半導体領域103bが画素ごとに形成されることにより、フォトダイオードPDが光電変換部として画素単位に形成されている。第2半導体領域103bに、光などの電磁波が照射されると光電変換を生じる。この光電変換により生成された電荷が第2半導体領域103bに蓄積される。この蓄積された電荷に基づいて不図示の画素回路により画像信号が生成される。
【0079】
金属系粒子集合体20は、光電変換部の近傍(電磁波入射面側(オンチップレンズ100側)を上方とするとき、光電変換部の下部)に配置されており、光電変換部における電磁波吸収効率を増強させる要素として機能することができる。これにより、例えば画素サイズの縮小化に伴う画素あたりの受光量減少による感度低下という問題を解決し、画素ごとの感度を向上させ得る。あるいは、感度を維持しつつ、各画素における光電変換部の薄膜化を図ることが可能である。金属系粒子集合体20は、好ましくはプラズモン構造体であり、より好ましくは上記[A]及び[B]から選択される構造的要件のいずれか一方を満たし、さらに好ましくは上記[A]及び[B]の両方を満たす。
【0080】
金属系粒子集合体20は、被覆層30で被覆されているため、良好に保護されている。既述の理由から、被覆層30は、好ましくは絶縁材料からなり、より好ましくは上述のシリコン原子含有層(S)である。
【0081】
本実施形態の固体撮像素子において、好ましくは、金属系粒子集合体20はプラズモン構造体であり、かつ被覆層30はシリコン原子含有層(S)であり、より好ましくは、金属系粒子集合体20は上記[A]及び[B]から選択される構造的要件のいずれか一方を満たし、かつ被覆層30はシリコン原子含有層(S)であり、さらに好ましくは、金属系粒子集合体20は上記[A]及び[B]の両方を満たし、かつ被覆層30はシリコン原子含有層(S)である。なお、本実施形態の固体撮像素子は、金属系粒子集合体20が上記[A]及び[B]を満たさず、被覆層30がシリコン原子含有層(S)である形態を包含する。
【0082】
(6)固体撮像素子の第2実施形態
図4は、第2実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
図4に示される画素は、オンチップレンズ100、波長選択的吸収層101、半導体基板103(光電変換部)、金属系粒子集合体20及びこれを被覆する被覆層30、並びに多層配線層102を備える。本実施形態に係る固体撮像素子は、オンチップレンズ100、半導体基板103(光電変換部)、金属系粒子集合体20、被覆層30及び多層配線層102をこの順に含む裏面照射型のイメージセンサーである。半導体基板103及び多層配線層102については第1実施形態における記述が引用される(特記しない限り、以下に示す他の実施形態においても同様に引用される)。
【0083】
本実施形態においても金属系粒子集合体20は、光電変換部の近傍(電磁波入射面側(オンチップレンズ100側)を上方とするとき、光電変換部の直下)に配置されており、光電変換部における電磁波吸収効率を増強させる要素として機能することができる。既述の理由から、被覆層30は、好ましくは絶縁材料からなり、より好ましくは上述のシリコン原子含有層(S)である。
【0084】
本実施形態の固体撮像素子において、好ましくは、金属系粒子集合体20はプラズモン構造体であり、かつ被覆層30はシリコン原子含有層(S)であり、より好ましくは、金属系粒子集合体20は上記[A]及び[B]から選択される構造的要件のいずれか一方を満たし、かつ被覆層30はシリコン原子含有層(S)であり、さらに好ましくは、金属系粒子集合体20は上記[A]及び[B]の両方を満たし、かつ被覆層30はシリコン原子含有層(S)である。なお、本実施形態の固体撮像素子は、金属系粒子集合体20が上記[A]及び[B]を満たさず、被覆層30がシリコン原子含有層(S)である形態を包含する。
【0085】
(7)固体撮像素子の第3実施形態
図5は、第3実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
図5に示される画素は、金属系粒子集合体20が光電変換部の下方に配置される代わりに、第2半導体領域103b(フォトダイオードPD)の側方に配置されていること以外は第2実施形態と同様の構成を有する裏面照射型のイメージセンサーである。本実施形態では、金属系粒子集合体20を被覆する被覆層30を設けない構成とすることができる。半導体基板103及び多層配線層102については第1実施形態における記述が引用される。
【0086】
電磁波吸収効率をより効果的に増強させる観点から、金属系粒子集合体20は、第2半導体領域103b(フォトダイオードPD)の側面に接して配置されることが好ましい。このような金属系粒子集合体20の配置は、半導体基板103に、第2半導体領域103bが埋設されるホールを形成した後、該ホールの側面に金属系粒子集合体20を形成し、次いで該ホール内に第2半導体領域103bを形成することによって実現できる。
【0087】
電磁波吸収効率をより効果的に増強させる観点から、金属系粒子集合体20は、第2半導体領域103b(フォトダイオードPD)の側方に配置されるとともに、第2実施形態のように、さらに光電変換部の下方に配置されてもよい。
【0088】
半導体基板103と多層配線層102との間に絶縁層105を介在させてもよい。あるいは、絶縁層105は省略されてもよい。また、
図5に示される実施形態は裏面照射型であるが、表面照射型の積層順序に変更されてもよい。
【0089】
本実施形態の固体撮像素子において、金属系粒子集合体20は、好ましくはプラズモン構造体であり、より好ましくは、上記[A]及び[B]から選択される構造的要件のいずれか一方を満たし、さらに好ましくは、上記[A]及び[B]の両方を満たす。
【0090】
(8)固体撮像素子の第4実施形態
図6は、第4実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
図6に示される画素は、反射防止部106、ピニング層107及び遮光部108(トレンチ構造)を有する。このような構造を有する固体撮像素子は公知である(例えば、特開2022-075774号公報)。反射防止部106は、モスアイ構造を有する。これにより入射光の反射が防止されるため、混色悪化を抑制しつつ、感度を向上させることができる。ピニング層107は、高誘電体で形成される。遮光部108は、隣接する画素からの入射光の漏れ込みを防止する。
【0091】
本実施形態の固体撮像素子は、上記のような従来の固体撮像素子において、遮光部108を画するピニング層107の少なくとも一部を、金属系粒子集合体20(図示せず)に置き換えたものであるか、又は、ピニング層107上に金属系粒子集合体20を形成したものである。本実施形態においても金属系粒子集合体20は、光電変換部の側方に配置されており、光電変換部における電磁波吸収効率を増強させる要素として機能することができ、また、上記の混色悪化を抑制する機能を有し得る。金属系粒子集合体20は、好ましくはプラズモン構造体であり、より好ましくは、上記[A]及び[B]から選択される構造的要件のいずれか一方を満たし、さらに好ましくは、上記[A]及び[B]の両方を満たす。本実施形態では、金属系粒子集合体20を被覆する被覆層30を設けない構成とすることができる。
【0092】
また、半導体基板に対して斜めに傾斜した壁状に構成され、光電変換部を分離する遮光壁を設けた固体撮像素子が公知である(例えば、特開2021-114538号公報)。同文献には、遮光壁をWやAl等の金属により構成することが記載されている。遮光壁を設けることにより、画素の感度低下を抑制することができる。本実施形態の他の例は、光電変換部を分離する遮光壁を設けた固体撮像素子において、遮光壁を金属系粒子集合体20で構成したものである。かかる実施形態においても金属系粒子集合体20は、光電変換部の側方に配置されており、光電変換部における電磁波吸収効率を増強させる要素として機能することができる。金属系粒子集合体20は、好ましくはプラズモン構造体であり、より好ましくは、上記[A]及び[B]から選択される構造的要件のいずれか一方を満たし、さらに好ましくは、上記[A]及び[B]の両方を満たす。本実施形態でも、金属系粒子集合体20を被覆する被覆層30を設けない構成とすることができる。
【0093】
(9)固体撮像素子の第5実施形態
図7は、第5実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
図7に示される画素は、第1反射膜71、第2反射膜72、第1散乱部73、第2散乱部74、第1反射部75、第2反射部76及び第3反射部77を有する。このような構造を有する固体撮像素子は公知である(例えば、特開2021-090022号公報)。分離領域78は、画素を光学的に分離する領域である。
【0094】
第1反射膜71は、半導体基板103を透過した電磁波を半導体基板103側に反射する。第2反射膜72は、半導体基板103の裏面側に配置され、第1反射膜71からの反射光を半導体基板103側へさらに反射する。第1散乱部73は、半導体基板103の裏面側に配置される凹凸構造であり、開口部79から漏洩する反射光を散乱させることによって第2半導体領域103bに戻す。第2散乱部74は、多層配線層102側に設けられる凹凸構造であり、第2散乱部74まで到達した光を散乱させることによって第2半導体領域103bに戻す。第1反射部75、第2反射部76及び第3反射部77は、第2半導体領域103b内に設けられ、第2半導体領域103bに戻すことができる電磁波量を増加させる機能を有する。以上のような反射・散乱機構を設けることにより、光電変換に寄与する電磁波量を増加させることができるため、画素ごとの感度を向上させることができる。なお、上記した反射・散乱機構の一部を省略してもよい。
【0095】
本実施形態の固体撮像素子は、上記のような従来の固体撮像素子において、一部の構造を金属系粒子集合体20(図示せず)に置き換えたものであるか、又は、金属系粒子集合体20を付設したものである。例えば、第2散乱部74である凹凸構造の代わりに金属系粒子集合体20を配置したり、第2散乱部74である凹凸構造上に金属系粒子集合体20を配置したり、第2散乱部74の下方に金属系粒子集合体20を配置したり、第2半導体領域103bの側方に金属系粒子集合体20を配置したりすることができる。金属系粒子集合体20の配置は、これらの複数の組み合わせであってもよい。
【0096】
金属系粒子集合体20は、好ましくはプラズモン構造体であり、より好ましくは、上記[A]及び[B]から選択される構造的要件のいずれか一方を満たし、さらに好ましくは、上記[A]及び[B]の両方を満たす。本実施形態では、金属系粒子集合体20を被覆する被覆層30を設けない構成とすることができる。
【0097】
(10)固体撮像素子の第6実施形態
図8は、第6実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
図8に示される画素は、各画素が受光する電磁波の波長に応じて、各画素のフォトダイオードPDの近傍に配置される金属系粒子集合体20の構成を異ならせている点に特徴を有しており、それ以外の構成は第3実施形態に係る固体撮像素子と類似している。
図8では、第2半導体領域103b(フォトダイオードPD)の側方及び下方に金属系粒子集合体20を配置しているが、いずれか一方のみに金属系粒子集合体20を配置してもよい。また、
図8に示される実施形態は裏面照射型であるが、表面照射型の積層順序に変更されてもよい。金属系粒子集合体20は、好ましくはプラズモン構造体であり、より好ましくは、上記[A]及び[B]から選択される構造的要件のいずれか一方を満たし、さらに好ましくは、上記[A]及び[B]の両方を満たす。
【0098】
図8では2つの画素が示されており、本実施形態では、該2つの画素は、それぞれ異なる波長の電磁波を受光する。異なる波長の組み合わせとしては、特に制限されないが、例えば、可視光(R,G,B)と近赤外線などが挙げられる。
【0099】
異ならせることができる金属系粒子集合体20の構成としては、金属系粒子の材料、平均粒径、平均高さ、アスペクト比、平均粒子間距離、金属系粒子集合体20を構成する金属系粒子の数などが挙げられる。各画素に対して設けられる金属系粒子集合体20は、それぞれ、各画素が受光する電磁波の吸収効率を効果的に高めることができる構成を有していることが好ましい。
【0100】
(11)固体撮像素子の第7実施形態
図9は、第7実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
図9に示される画素は、それが有する2つのフォトダイオードPD1及びPD2が互いに異なるサイズを有している。フォトダイオードPD1及びPD2は、互いにサイズが異なることにより、互いに異なる受光感度を有する。このような固体撮像素子は公知であり(例えば、特開2022-097519号公報)、かかる構成によりダイナミックレンジの拡大を図ることができる。
【0101】
図9に示される実施形態において、フォトダイオードPD1は第2半導体領域103bから形成されており、フォトダイオードPD2は第3半導体領域103cから形成されている。フォトダイオードPD1及びPD2は、それらの厚みが異なっていてもよいし、幅が異なっていてもよい。
【0102】
図9では、フォトダイオードPD1及びPD2の下方に金属系粒子集合体20を配置しているが、側方及び下方に金属系粒子集合体20を配置してもよい。また、
図9に示される実施形態は表面照射型であるが、裏面照射型の積層順序に変更されてもよい。金属系粒子集合体20は、好ましくはプラズモン構造体であり、より好ましくは、上記[A]及び[B]から選択される構造的要件のいずれか一方を満たし、さらに好ましくは、上記[A]及び[B]の両方を満たす。
【0103】
(12)固体撮像素子の第8実施形態
図10は、第8実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
図10に示される画素は、第7実施形態のように2つのフォトダイオードPD1及びPD2のサイズを互いに異ならせることによって受光感度を異ならせるのではなく、金属系粒子集合体20を利用することにより、2つのフォトダイオードの受光感度を異ならせている。すなわち、フォトダイオードPD1に対して設けられる金属系粒子集合体20を構成する金属系粒子の数と、フォトダイオードPD2に対して設けられる金属系粒子集合体20を構成する金属系粒子の数とを異ならせることにより、2つのフォトダイオードの受光感度を異ならせることができる。かかる構成によりダイナミックレンジの拡大を図ることができる。
図10の例のように、フォトダイオードPD1及びPD2の一方に対してのみ金属系粒子集合体20を設け、他方に対しては金属系粒子集合体20を設けない構成であってもよい。
【0104】
図10では、フォトダイオードの下方に金属系粒子集合体20を配置しているが、側方及び下方に金属系粒子集合体20を配置してもよい。また、
図10に示される実施形態は表面照射型であるが、裏面照射型の積層順序に変更されてもよい。金属系粒子集合体20は、好ましくはプラズモン構造体であり、より好ましくは、上記[A]及び[B]から選択される構造的要件のいずれか一方を満たし、さらに好ましくは、上記[A]及び[B]の両方を満たす。
【0105】
(13)固体撮像素子の第9実施形態
図11は、第9実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
図11に示される画素は、アバランシェダイオードを備える画素である。このような固体撮像素子は公知であり(例えば、特開2018-064086号公報)、かかる構成によりノイズ抑制や、感度向上を図ることができる。本実施形態では、アバランシェ構造109の下方に金属系粒子集合体20が配置されている。これにより、感度をさらに高めることができる。金属系粒子集合体20を被覆する被覆層30をさらに設けてもよい。
【0106】
金属系粒子集合体20は、アバランシェ構造109の側方、又は側方及び下方に配置されてもよい。金属系粒子集合体20は、好ましくはプラズモン構造体であり、より好ましくは、上記[A]及び[B]から選択される構造的要件のいずれか一方を満たし、さらに好ましくは、上記[A]及び[B]の両方を満たす。また、
図11に示される実施形態は裏面照射型であるが、表面照射型の積層順序に変更されてもよい。
【0107】
(14)固体撮像素子の第10実施形態
図12は、第10実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
図12に示される画素は、フォトダイオードPDが有機材料からなることを特徴とする(
図12における有機PD200)。フォトダイオードPDが有機材料からなる固体撮像素子は従来公知である。
【0108】
本実施形態においても金属系粒子集合体20は、有機PD200の近傍(有機PD200の直下)に配置されており、電磁波吸収効率を増強させる要素として機能することができる。金属系粒子集合体20は、好ましくはプラズモン構造体であり、より好ましくは、上記[A]及び[B]から選択される構造的要件のいずれか一方を満たし、さらに好ましくは、上記[A]及び[B]の両方を満たす。
図12の実施形態は被覆層30を有しているが、被覆層30を設けない構成とすることもできる。
図12に示される実施形態は裏面照射型であるが、表面照射型の積層順序に変更されてもよい。フォトダイオードPDが有機材料からなる本実施形態において、上記第1~第9実施形態に係る固体撮像素子が有する特徴が組み入れられてもよい。
【0109】
本実施形態の固体撮像素子が受光する電磁波の波長は特に制限されず、可視光、近赤外光、テラヘルツ帯の電磁波等であってよいが、好ましくは近赤外光である。
【0110】
(15)固体撮像素子の第11実施形態
図13は、第11実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図である。
図13に示される画素は、複数のフォトダイオードPDを厚み方向に積層させている点に特徴を有する。このような固体撮像素子は公知であり(例えば、特開2021-073689号公報、特開2017-174936号公報)、かかる構成により素子の小型化や、感度向上を図ることができる。
【0111】
図13に示される実施形態は、電磁波入射面側(オンチップレンズ100側)から順に、3つのフォトダイオードPD1(
図13における有機PD201)、PD2、PD3を有する。ただし、フォトダイオードの数は3つに限定されるものではない。PD1は、有機材料から形成することができる。フォトダイオードPD2は第2半導体領域103bから形成されており、フォトダイオードPD3は第3半導体領域103cから形成されている。ただし、各フォトダイオードの材料は上記に限定されるものではない。
【0112】
金属系粒子集合体20は、
図13に示されるように、電磁波入射面側(オンチップレンズ100側)を上方とするとき、例えば、最も下方に配置されるフォトダイオードPD3の下方(例えば直下)に配置することができる。これにより、金属系粒子集合体20は、各フォトダイオードPDにおける電磁波吸収効率を増強させる要素として機能することができる。金属系粒子集合体20は、好ましくはプラズモン構造体であり、より好ましくは、上記[A]及び[B]から選択される構造的要件のいずれか一方を満たし、さらに好ましくは、上記[A]及び[B]の両方を満たす。
【0113】
一般に、金属系粒子集合体20によるフォトダイオードPDにおける電磁波吸収効率は、金属系粒子集合体20とフォトダイオードPDとの距離が近いほど高い傾向にある。したがって、複数のフォトダイオードPDが厚み方向に積層された固体撮像素子においては、金属系粒子集合体20までの距離が、感度の低いPDほど短くなるように複数のフォトダイオードPDを配置すると、素子全体としての感度向上効果が得られやすい。
【0114】
例えば、フォトダイオードPD1、PD2、PD3が受光する電磁波は、それぞれ、緑色光、青色光、赤色光であってよい。
【0115】
(16)固体撮像素子の第12実施形態
図14は、第12実施形態に係る固体撮像素子が有する画素を模式的に示す断面図であり、フォトダイオードPD及びその周辺のみを示した図である。
図14に示される画素は、第11実施形態と同じく、電磁波入射面側(オンチップレンズ100側)から順に、3つのフォトダイオードPD1(
図14における有機PD202)、PD2、PD3を有する。ただし、フォトダイオードの数は3つに限定されるものではない。PD1は、有機材料から形成することができる。フォトダイオードPD2は第2半導体領域103bから形成されており、フォトダイオードPD3は第3半導体領域103cから形成されている。ただし、各フォトダイオードの材料は上記に限定されるものではない。
【0116】
本実施形態は、各フォトダイオードPDに対して個別に金属系粒子集合体をそれらの近傍に配置している点に特徴を有する。第1金属系粒子集合体20aはPD1に対する電磁波吸収効率増強要素であり、第2金属系粒子集合体20bはPD2に対する電磁波吸収効率増強要素であり、第3金属系粒子集合体20cはPD3に対する電磁波吸収効率増強要素である。例えば、フォトダイオードPD1、PD2、PD3が受光する電磁波は、それぞれ、緑色光、青色光、赤色光であってよい。
【0117】
第1金属系粒子集合体20a、第2金属系粒子集合体20b、第3金属系粒子集合体20cは、それぞれ、好ましくはプラズモン構造体であり、より好ましくは、上記[A]及び[B]から選択される構造的要件のいずれか一方を満たし、さらに好ましくは、上記[A]及び[B]の両方を満たす。
【0118】
図14に示されるように、各金属系粒子集合体が対応するフォトダイオードPDの下方に配置される場合、第1金属系粒子集合体20a及び第2金属系粒子集合体20bは、ある特定の波長領域について透過性を有することが好ましい。例えば、フォトダイオードPD1、PD2、PD3が受光する電磁波が、それぞれ、緑色光、青色光、赤色光であるとき、PD2、PD3がそれぞれ青色光、赤色光を受光できるよう、第1金属系粒子集合体20aは、青色光及び赤色光に対して透過性を有することが好ましい。また、PD3が赤色光を受光できるよう、第2金属系粒子集合体20bは、赤色光に対して透過性を有することが好ましい。
【0119】
金属系粒子集合体が透過性を有し得る波長領域は、上記のように各フォトダイオードPDが受光する電磁波が可視光である場合に限定されない。例えば、紫外光を吸収し、近赤外光を透過する金属系粒子集合体を用いれば、該金属系粒子集合体の下方に配置されるフォトダイオードPDにおいて近赤外光の光電変換を行うことができる。また、可視光を吸収し、テラヘルツ帯の電磁波を透過する金属系粒子集合体を用いれば、該金属系粒子集合体の下方に配置されるフォトダイオードPDにおいてテラヘルツ帯の電磁波の光電変換を行うことができる。あるいは、金属系粒子集合体は、可視光を透過し、紫外光及び/又は近赤外光等の赤外光を吸収するものであってもよい。
【0120】
可視光を透過し、紫外光及び/又は近赤外光等の赤外光を吸収する金属系粒子集合体としては、例えば、赤外域にプラズモンピークを有する透明導電性酸化物、硫化銅、リン化銅、テルル化銅、セレン化銅、酸化ルテニウム、酸化レニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、タングステンブロンズ及びDelafossite型銅酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含む金属系粒子からなるものが挙げられる。
【0121】
赤外域にプラズモンピークを有する透明導電性酸化物としては、例えば、錫ドープ酸化インジウム、アルミニウムドープ酸化インジウム、セリウムドープ酸化インジウム、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化カドミウム、フッ素インジウムドープ酸化カドミウム、フッ素ドープ酸化カドミウム、塩素ドープ酸化カドミウム、臭素ドープ酸化カドミウム、セシウムドープ酸化モリブデン、アンチモンドープ酸化錫、フッ素ドープ酸化錫、酸化チタン等を挙げることができる。
【0122】
<電子機器>
本発明に係る電子機器は、上記本発明に係る固体撮像素子を備える。電子機器は、スマートフォン、携帯電話等の携帯端末;車両等の移動体;デジタルカメラ、ビデオカメラ、マイクロスコープ、指紋認証装置等の撮像機能を有する装置など、撮像機能を有するあらゆる電子機器であってよい。
【0123】
<実験例>
(1)実験例1
(1-1)金属系粒子集合体の作製
図15を参照して説明する。直流マグネトロンスパッタリング装置を用いて、下記の条件で、ソーダガラスからなる支持基板110上に、銀粒子を極めてゆっくりと成長させ、支持基板110の表面の全面に金属系粒子集合体20を形成した。以下、この金属系粒子集合体を「金属系粒子集合体A」という。
【0124】
使用ガス:アルゴン
チャンバ内圧力(スパッタガス圧):10Pa
支持基板・ターゲット間距離:100mm
スパッタ電力:4W
平均粒径成長速度(平均粒径/スパッタ時間):1.2nm/分
平均高さ成長速度(=平均堆積速度=平均高さ/スパッタ時間):0.28nm/分
支持基板温度:300℃
支持基板サイズ及び形状:一辺が5cmの正方形
【0125】
既述の方法により測定した金属系粒子集合体Aを構成する銀粒子の平均粒径、平均粒子間距離及びその標準偏差、平均高さ、アスペクト比(平均粒径/平均高さ)は次のとおりであった。測定にあたり、SEM観察画像の取得には日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡「JSM-5500」を用い、AFM観察画像(画像のサイズ:5μm×5μm)の取得にはAFM像撮影にはキーエンス社製「VN-8010」を用いた。
平均粒径:416nm
平均粒子間距離:10.9nm
平均粒子間距離の標準偏差:1.67nm
平均高さ:102.0nm
アスペクト比(平均粒径/平均高さ):4.09
【0126】
また、支持基板110上の金属系粒子集合体Aの表面にテスター〔マルチメーター(ヒューレット・パッカード社製「E2378A」〕を接続して導電性を確認したところ、導電性を有しないことが確認された。
【0127】
(1-2)光吸収素子1の作製
上記(1-1)と同条件で銀粒子を成長させることにより、1.0mm厚のソーダガラスからなる支持基板110上に金属系粒子集合体Aを形成した。その後直ちに、SOG溶液を金属系粒子集合体A上にスピンコートして、大気下550℃で焼成することにより、平均厚み30nmの被覆層30を積層した。SOG溶液には、有機系SOG材料である東京応化工業株式会社製「OCD T-7 5500T」をエタノールで希釈したものを用いた。「平均厚み」とは、表面凹凸を有する金属系粒子集合体上に形成されたときの平均厚みを意味しており、SOG溶液を支持基板110上に直接スピンコートしたときの厚みとして測定した(以下の実験例についても同様)。
【0128】
次に、上記の被覆層30を有する金属系粒子集合体Aの最表面に、光吸収層用溶液を2500rpmでスピンコートし、厚み25nmの光吸収層120を形成して、光吸収素子1を得た。光吸収層用溶液は、P3HT(Luminescence Technology社 ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル))をクロロベンゼンに溶解して調製した1質量%のP3HT溶液である。
【0129】
(2)実験例2
(2-1)金属系粒子集合体の作製
直流マグネトロンスパッタリング法におけるスパッタ時間を変更したこと以外は実験例1と同様にして、支持基板110の表面の全面に金属系粒子集合体20を形成した。以下、この金属系粒子集合体を「金属系粒子集合体B」という。金属系粒子集合体Bは、銀粒子の平均高さが約5.0nmであること以外は金属系粒子集合体Aと略同じ粒子形状、アスペクト比及び平均粒子間距離を有するものであった。
【0130】
(2-2)光吸収素子2の作製
上記(2-1)と同条件で銀粒子を成長させることにより、1.0mm厚のソーダガラスからなる支持基板110上に金属系粒子集合体Bを形成した。次に、金属系粒子集合体B上に、実験例1で用いたものと同じ光吸収層用溶液を2500rpmでスピンコートし、厚み25nmの光吸収層120を形成して、光吸収素子2を得た。光吸収素子2は、被覆層30を有しない。
【0131】
(3)実験例3
(3-1)金属系粒子集合体の作製
直流マグネトロンスパッタリング法におけるスパッタ時間を変更したこと以外は実験例1と同様にして、支持基板110の表面の全面に金属系粒子集合体20を形成した。以下、この金属系粒子集合体を「金属系粒子集合体C」という。金属系粒子集合体Cは、銀粒子の平均高さが約310.9nmであること以外は金属系粒子集合体Aと略同じ粒子形状、アスペクト比及び平均粒子間距離を有するものであった。
【0132】
(3-2)光吸収素子3の作製
上記(3-1)と同条件で銀粒子を成長させることにより、1.0mm厚のソーダガラスからなる支持基板110上に金属系粒子集合体Cを形成した。その後直ちに、SOG溶液を金属系粒子集合体C上にスピンコートして、大気下550℃で焼成することにより、平均厚み80nmの被覆層30を積層した。SOG溶液には、有機系SOG材料である東京応化工業株式会社製「OCD T-7 5500T」をエタノールで希釈したものを用いた。
【0133】
次に、上記の被覆層30を有する金属系粒子集合体Cの最表面に、実験例1で用いたものと同じ光吸収層用溶液を2500rpmでスピンコートし、厚み25nmの光吸収層120を形成して、光吸収素子3を得た。
【0134】
(4)実験例4
焼成の環境を窒素下とし、焼成温度を200℃としたこと以外は実験例3と同様にして、光吸収素子4を得た。
【0135】
[光吸収率の評価]
図16の光学系を用いて光吸収素子の光吸収率を測定・評価した。具体的には以下のとおりである。まず、
図16の光学系を用いて、光吸収素子300と硫酸バリウム板301とを重ねた測定試料のSCI反射率(%)を測定した。積分球302に付設された光源303にはOcean Optics社 DH-2000-BALを用いた。積分球302に付設されたディテクター304には大塚電子社製 MCPD-3000を用いた。積分球302にはオーシャンフォトニクス社 ISP-REFを用いた。取得したSCI反射率の各波長の値から、下記式に従って、各波長における光吸収素子の光吸収率(%)を得た。
各波長の光吸収素子の光吸収率(%)=100-各波長のSCI反射率
【0136】
光吸収素子1~4の波長550nm、690nm、800nmにおける光吸収率を表1に示す。光吸収素子1、3及び4では、可視光波長に該当する波長550nm及び690nmにおける光吸収率が光吸収素子2に比べ高く観測され、特に光吸収素子1ではその傾向が顕著であった。また、光吸収素子3及び4では、近赤外~赤外波長に該当する800nmの光吸収率が光吸収素子1及び2に比べ高く観測された。さらに、焼成温度が550℃である光吸収素子3では、波長550nm、690nm及び800nmにおける光吸収率が、焼成温度が200℃である光吸収素子4に比べ高く観測された。
【0137】
【符号の説明】
【0138】
10 基材、20 金属系粒子集合体、20a 第1金属系粒子集合体、20b 第2金属系粒子集合体、20c 第3金属系粒子集合体、21 金属系粒子、30 被覆層、31 第1表面、71 第1反射膜、72 第2反射膜、73 第1散乱部、74 第2散乱部、75 第1反射部、76 第2反射部、77 第3反射部、78 分離領域、79 開口部、100 オンチップレンズ、101 波長選択的吸収層、102 多層配線層、102a 層間絶縁膜、102b 配線層、103 半導体基板、103a 第1半導体領域、103b 第2半導体領域、103c 第3半導体領域、104 支持基板、105 絶縁層、106 反射防止部、107 ピニング層、108 遮光部、109 アバランシェ構造、110 支持基板、120 光吸収層、200,201 有機PD、300 光吸収素子、301 硫酸バリウム板、302 積分球、303 光源、304 ディテクター。