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特開2024-95576電磁誘導式位置トランスデューサシステム用駆動回路
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  • 特開-電磁誘導式位置トランスデューサシステム用駆動回路 図1
  • 特開-電磁誘導式位置トランスデューサシステム用駆動回路 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095576
(43)【公開日】2024-07-10
(54)【発明の名称】電磁誘導式位置トランスデューサシステム用駆動回路
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
G01D5/20 110Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023214272
(22)【出願日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】18/147,582
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】パトリック マウエット
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA21
2F077FF03
2F077FF39
2F077TT82
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電磁誘導式位置トランスデューサシステムを提供する。
【解決手段】駆動回路と、少なくとも第1の磁場発生コイルを有する電磁誘導式位置トランスデューサとを含む。駆動回路は、共振回路部と増幅器部とを含む。増幅器部は、電流駆動型単段差動増幅器を備え、共振回路部に発振駆動信号を供給するように構成され、その結果、磁場発生コイルが駆動される。2倍を超えるような電源電圧よりも大きいコイル電圧でコントローラは、増幅器部に供給されるバイアス電流を調整して、磁場発生コイルにかかる電圧を指定された電圧レベルに維持する。増幅器部はCMOSトランジスタで構成され、電磁誘導式位置トランスデューサシステムの他の部分と共にチップ上に低電圧CMOS集積回路の一部として形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコイル端子、第2のコイル端子、およびコイルインピーダンスを有する第1の磁場発生コイルを少なくとも含む電磁誘導式位置トランスデューサと、
前記第1の磁場発生コイルを駆動するように構成された駆動回路と
を備える電磁誘導式位置トランスデューサシステムであって、
前記駆動回路は、
前記第1のコイル端子および前記第2のコイル端子に接続され、少なくとも第1の共振回路部構成要素、第2の共振回路部構成要素、および第3の共振回路部構成要素を含み、前記第1の共振回路部構成要素は、第1の共振回路部ノードと第2の共振回路部ノードとの間に結合され、前記第1の共振回路部ノードは、少なくとも前記第2の共振回路部構成要素によって前記第1のコイル端子から分離され、前記第2の共振回路部ノードは、少なくとも前記第3の共振回路部構成要素によって前記第2のコイル端子から分離されている、共振回路部と、
前記第1の共振回路部ノードおよび前記第2の共振回路部ノードに接続され、動作中に出力インピーダンスを有し、前記第1の共振回路部ノードおよび前記第2の共振回路部ノードに発振駆動信号を供給するように構成され、電流駆動型単段差動増幅器を含み、前記電流駆動型単段差動増幅器は、第1の増幅器入力および第2の増幅器入力と、第1の増幅器出力および第2の増幅器出力とを含み、前記第1の増幅器出力は、前記第1の共振回路部ノードに接続され、前記第2の増幅器出力は、前記第2の共振回路部ノードに接続される、増幅器部と、
を備え、
前記共振回路部と前記第1の磁場発生コイルとを少なくとも含む共振器部が、動作時に前記増幅器部に提示される共振周波数と負荷インピーダンスとを有する、電磁誘導式位置トランスデューサシステム。
【請求項2】
前記電流駆動型単段差動増幅器は、第1の単段増幅器部と第2の単段増幅器部とを備える、請求項1に記載の電磁誘導式位置トランスデューサシステム。
【請求項3】
前記第1および第2の単段増幅器部は、金属酸化膜半導体トランジスタからなることを特徴とする請求項2に記載の電磁誘導式位置トランスデューサシステム。
【請求項4】
前記第1の単段増幅器部および前記第2の単段増幅器部は、各々pチャネルMOSトランジスタおよびnチャネルMOSトランジスタからなる相補的な増幅器部であることを特徴とする請求項2に記載の電磁誘導式位置トランスデューサシステム。
【請求項5】
前記第1の単段増幅器部は、第1のnチャネルMOSトランジスタと第1のpチャネルMOSトランジスタとを備え、前記第1のnチャネルMOSトランジスタと前記第1のpチャネルMOSトランジスタのゲートは、前記第1の増幅器入力を提供するために結合され、前記第1のnチャネルMOSトランジスタと前記第1のpチャネルMOSトランジスタのドレインは、前記第2の増幅器出力を提供するために結合され、
前記第2の単段増幅器部は、第2のnチャネルMOSトランジスタと第2のpチャネルMOSトランジスタとを備え、前記第2のnチャネルMOSトランジスタと前記第2のpチャネルMOSトランジスタのゲートは、前記第2の増幅器入力を提供するために結合され、前記第2のnチャネルMOSトランジスタと前記第2のpチャネルMOSトランジスタのドレインは、前記第1の増幅器出力を提供するために結合される
ことを特徴とする請求項2に記載の電磁誘導式位置トランスデューサシステム。
【請求項6】
コントローラをさらに備え、前記増幅器部は、前記コントローラからバイアス電流を受け取るバイアス電流部を備え、前記コントローラは、前記第1の磁場発生コイルにかかる電圧を所定の電圧レベルに維持するように、前記増幅器部に前記バイアス電流を供給するように構成される、請求項1に記載の電磁誘導式位置トランスデューサシステム。
【請求項7】
前記バイアス電流部が、カレントミラーを形成する2つのMOSトランジスタを備える請求項6に記載の電磁誘導式位置トランスデューサシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記増幅器部に供給される前記バイアス電流を調整して、前記第1の磁場発生コイルにかかる電圧を所定の電圧レベルに維持するように構成され、
第1の時点において、前記コントローラは、前記第1の磁場発生コイルにかかる電圧が前記所定の電圧レベルになる第1のバイアス電流レベルで前記バイアス電流を供給し、
第2の時点において、前記コントローラが前記第1のバイアス電流レベルで前記バイアス電流を供給すると、前記第1の磁場発生コイルにかかる電圧が前記所定の電圧レベルでなくなり、この場合、前記コントローラは、前記バイアス電流を前記第1のバイアス電流レベルから、前記第1の磁場発生コイルにかかる電圧が前記所定の電圧レベルとなる第2のバイアス電流レベルに調整するように構成されることを特徴とする請求項6に記載の電磁誘導式位置トランスデューサシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、
前記電磁誘導式位置トランスデューサシステムが測定動作を実行している第1の状態の間、前記第1の磁場発生コイルにかかる電圧を所定の電圧レベルに維持するために前記増幅器部にバイアス電流を供給し、
前記電磁誘導式位置トランスデューサシステム100が測定動作を実行していない第2の状態の間、前記第1の磁場発生コイルにかかる電圧を所定の電圧レベルに維持するために前記増幅器部にバイアス電流を供給しないように構成されることを特徴とする請求項6に記載の電磁誘導式位置トランスデューサシステム。
【請求項10】
前記増幅器部および前記共振回路部の両方が集積回路の一部として含まれる半導体チップを備える、請求項1に記載の電磁誘導式位置トランスデューサシステム。
【請求項11】
前記増幅器部の電流駆動型単段差動増幅器部は、金属酸化物半導体トランジスタを備えることを特徴とする請求項10に記載の電磁誘導式位置トランスデューサシステム。
【請求項12】
前記増幅器部は、電源電圧を受けて動作することを特徴とする請求項1に記載の電磁誘導式位置トランスデューサシステム。
【請求項13】
前記増幅器部は、復調器部をさらに備え、前記復調器部は、前記増幅器部と同じ電源電圧を受けて動作することを特徴とする請求項12に記載の電磁誘導式位置トランスデューサシステム。
【請求項14】
前記駆動回路は、前記磁場発生コイルにかかる前記電源電圧よりも大きい電圧を発生させるように構成されることを特徴とする請求項12に記載の電磁誘導式位置トランスデューサシステム。
【請求項15】
前記駆動回路は、
前記第1のコイル端子と前記電流駆動型単段差動増幅器の前記第1の増幅器入力とに接続された第1のフィルタ部と、
前記第2のコイル端子と前記電流駆動型単段差動増幅器の前記第2の増幅器入力とに接続された第2のフィルタ部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電磁誘導式位置トランスデューサシステム。
【請求項16】
前記第1のフィルタ部は、前記第1のコイル端子と前記第1の増幅器入力との間に直列に結合された第1のフィルタ部キャパシタと第1のフィルタ抵抗とを備え、
前記第2のフィルタ部は、前記第2のコイル端子と前記第2の増幅器入力との間に直列に結合された第2のフィルタ部キャパシタと第2のフィルタ部抵抗とを備える、ことを特徴とする請求項15に記載の電磁誘導式位置トランスデューサシステム。
【請求項17】
前記第1のフィルタ部は、前記第1のコイル端子に接続されたそれぞれの第1のフィルタ部の第1のノードと、第1のフィルタ部の第2のノードと、を備え、
前記第2のフィルタ部は、前記第2のコイル端子に接続された第2のフィルタ部の第1ノードと、第2フィルタ部の第2ノードを備え、
前記差動増幅器の第1の増幅器出力は、前記第1の共振回路部ノードと第1のバイアス抵抗の第1の端子に接続され、
前記差動増幅器の第2の増幅器入力は、前記第1のバイアス抵抗の第2の端子に接続され、
前記差動増幅器の第1の増幅器入力は、それぞれの前記第1のフィルタ部の第2のノードに接続され、
前記差動増幅器の第2の増幅器出力は、前記第2の共振回路部ノードと第2のバイアス抵抗の第1の端子に接続され、
前記差動増幅器の第1の増幅器入力は、前記第2のバイアス抵抗の第2の端子に接続され、
前記差動増幅器の第2の増幅器入力は、それぞれの前記第2のフィルタ部の第2のノードに接続される、ことを特徴とする請求項15に記載の電磁誘導式位置トランスデューサシステム。
【請求項18】
前記第1のフィルタ部は、前記第1のコイル端子に接続されたそれぞれの第1の端子と、少なくとも1つの第1のフィルタ部抵抗の第1の端子に接続されたそれぞれの第2の端子とを有する少なくとも1つの第1のフィルタ部キャパシタを備え、
前記第2のフィルタ部は、前記第2のコイル端子に接続されたそれぞれの第1の端子と、少なくとも1つの第2のフィルタ部抵抗の第1の端子に接続されたそれぞれの第2の端子とを有する少なくとも1つのそれぞれの第2のフィルタ部キャパシタを備える、ことを特徴とする請求項17に記載の電磁誘導式位置トランスデューサシステム。
【請求項19】
少なくとも1つのそれぞれの前記第1のフィルタ部抵抗の第2の端子は、前記第1の増幅器入力に接続され、
少なくとも1つのそれぞれの前記第2のフィルタ部抵抗の第2の端子は、前記第2の増幅器入力に接続される、ことを特徴とする請求項18に記載の電磁誘導式位置トランスデューサシステム。
【請求項20】
前記第1の共振回路部構成要素は、前記第1および第2の共振回路部ノードの間に接続される第1の共振回路キャパシタを有し、
前記第2の共振回路部構成要素は、それぞれの第1の端子が前記第1の共振回路部ノードに接続され、それぞれの第2の端子が前記第1のコイル端子に接続された第2の共振回路キャパシタを有し、
前記第3の共振回路部構成要素は、それぞれの第1の端子が前記第2の共振回路部ノードに接続され、それぞれの第2の端子が前記第2のコイル端子に接続された第3の共振回路キャパシタを有する、ことを特徴とする請求項19に記載の電磁誘導式位置トランスデューサシステム。
【請求項21】
第1のコイル端子、第2のコイル端子およびコイルインピーダンスを有する第1の磁場発生コイルを少なくとも有する、電磁誘導式位置トランスデューサを含む電磁誘導式位置トランスデューサシステムを動作させる方法であって、当該方法は、
前記第1の磁場発生コイルを駆動するために、前記電磁誘導式位置トランスデューサシステムの駆動回路を動作させる工程と、
前記電磁誘導式位置トランスデューサからの位置依存信号に少なくとも部分的に基づいて出力を提供する工程、を含み、
前記駆動回路は、
前記第1のコイル端子および前記第2のコイル端子に接続され、少なくとも第1の共振回路部構成要素、第2の共振回路部構成要素、および第3の共振回路部構成要素を含み、前記第1の共振回路部構成要素は、第1の共振回路部ノードと第2の共振回路部ノードとの間に結合され、前記第1の共振回路部ノードは、少なくとも前記第2の共振回路部構成要素によって前記第1のコイル端子から分離され、前記第2の共振回路部ノードは、少なくとも前記第3の共振回路部構成要素によって前記第2のコイル端子から分離されている、共振回路部と、
前記第1の共振回路部ノードおよび前記第2の共振回路部ノードに接続され、動作中に出力インピーダンスを有し、前記第1の共振回路部ノードおよび前記第2の共振回路部ノードに発振駆動信号を供給するように構成され、電流駆動型単段差動増幅器を含み、前記電流駆動型単段差動増幅器は、第1の増幅器入力および第2の増幅器入力と、第1の増幅器出力および第2の増幅器出力とを含み、前記第1の増幅器出力は、前記第1の共振回路部ノードに接続され、前記第2の増幅器出力は、前記第2の共振回路部ノードに接続される、増幅器部と、
を備え、
前記共振回路部と前記第1の磁場発生コイルとを少なくとも含む共振器部が、動作時に前記増幅器部に提示される共振周波数と負荷インピーダンスとを有する、ことを特徴とする電磁誘導式位置トランスデューサシステムを動作させる方法。
【請求項22】
前記電流駆動型単段差動増幅器のバイアス電流を調整し、それに対応して前記第1の磁場発生コイルにかかる電圧を調整する工程をさらに含む、ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の磁場発生コイルを駆動するための前記電磁誘導式位置トランスデューサシステムの前記駆動回路を動作させることは、前記電磁誘導式位置トランスデューサシステムが測定動作を実行している第1の状態の間、前記第1の磁場発生コイルにかかる電圧を所定の電圧レベルに維持するために実行され、
前記方法はさらに、
前記電磁誘導式位置トランスデューサシステムが測定動作を行っていない第2の状態の間、バイアス電流を減少させ、前記第2の状態の間、前記第1の磁場発生コイルにかかる電圧を規定の電圧レベルに維持しないようにする工程を含む、ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項24】
第1のコイル端子、第2のコイル端子およびコイルインピーダンスを有する第1の磁場発生コイルを少なくとも含む電磁誘導式位置トランスデューサを含む電磁誘導式位置トランスデューサシステムの一部として利用するための駆動回路であって、該駆動回路は、
前記第1のコイル端子および前記第2のコイル端子に接続され、少なくとも第1の共振回路部構成要素、第2の共振回路部構成要素、および第3の共振回路部構成要素を含み、前記第1の共振回路部構成要素は、第1の共振回路部ノードと第2の共振回路部ノードとの間に結合され、前記第1の共振回路部ノードは、少なくとも前記第2の共振回路部構成要素によって前記第1のコイル端子から分離され、前記第2の共振回路部ノードは、少なくとも前記第3の共振回路部構成要素によって前記第2のコイル端子から分離されている共振回路部と、
前記第1の共振回路部ノードおよび前記第2の共振回路部ノードに接続され、動作中に出力インピーダンスを有し、前記第1の共振回路部ノードおよび前記第2の共振回路部ノードに発振駆動信号を供給するように構成され、電流駆動型単段差動増幅器を含み、前記電流駆動型単段差動増幅器は、第1の増幅器入力および第2の増幅器入力と、第1の増幅器出力および第2の増幅器出力とを含み、前記第1の増幅器出力は、前記第1の共振回路部ノードに接続され、前記第2の増幅器出力は、前記第2の共振回路部ノードに接続される増幅器部と、備え、
前記共振回路部と前記第1の磁場発生コイルとを少なくとも含む共振器部が、動作時に前記増幅器部に提示される共振周波数と負荷インピーダンスとを有する、こと特徴とする駆動回路。
【請求項25】
前記電流駆動型単段差動増幅器は、金属酸化物半導体トランジスタで構成されることを特徴とする請求項24に記載の駆動回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計測に関し、より詳細には、電磁誘導式位置トランスデューサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導式位置トランスデューサは、1つ以上の検知素子(例えば、代替的に受信巻線素子と呼ばれることがある)と、検知素子と磁場発生コイル(例えば、代替的に送信巻線と呼ばれることがある)との間の誘導結合を変調する1つ以上の妨害素子(例えば、スケール素子)と、の間の相対変位を測定するために広く使用されている。 様々な従来の電磁誘導式位置トランスデューサ(例えば、米国特許第6,005,387号および同第6,011,389号に開示されているものなど、その各特許は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)では、磁場発生コイルに時間的に変化する駆動信号を供給するために、より低電力で断続的な間欠駆動回路が使用される。第’389号特許および第’387号特許における間欠駆動回路は、磁場発生コイルによって形成されたインダクタを介してキャパシタを放電する。これにより磁場発生コイルは「鳴動」する。すなわち、充電されたキャパシタを、磁場発生コイルと直列に接続された抵抗器とにより形成されたインダクタを介してグランドに接続することによって放出される電流は、発振し指数関数的に減衰する。第’389号特許および第’387号特許に開示された磁場発生コイル駆動回路は、特定の動作用に設計された電磁誘導式位置トランスデューサに適しているが、特定の制限(例えば、速度、分解能などとの関係)がある場合がある。
【0003】
更に、従来から公知の種々の電磁誘導式位置トランスデューサでは、駆動コイルのインダクタンスが従来の駆動回路の発振周波数の決定に関与しない場合、磁場発生コイルの発振周波数が磁場発生コイルの共振周波数と一致しないほど、トランスデューサ信号出力が著しく低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のことから、特性を改善した駆動回路が望まれている。
【0005】
この概要は、以下の発明を実施するための形態において更に説明される概念のセレクションを、簡略形式で紹介するために提供される。この概要は、請求項に係る主題の重要な特徴を特定することを意図しておらず、また、請求項に係る主題の範囲を決定する助けとして使用されることも意図していない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
電磁誘導式トランスデューサシステムは、電磁誘導式位置トランスデューサと駆動回路とを含む。 電磁誘導式位置トランスデューサは、少なくとも第1の磁場発生コイルを含む。駆動回路は、第1の磁場発生コイルを駆動するように構成されている。第1の磁場発生コイルは、第1のコイル端子と、第2のコイル端子と、コイルインピーダンスとを有する。駆動回路は、共振回路部と増幅器部とを含む。
【0007】
共振回路部は、第1コイル端子および第2コイル端子に接続される。共振回路部は、少なくとも第1の共振回路部構成要素、第2の共振回路部構成要素、および第3の共振回路部構成要素(例えば、各共振回路部構成要素は、それぞれキャパシタを備える)から構成される。第1の共振回路部構成要素は、第1の共振回路部ノードと第2の共振回路部ノードとの間に結合され、第1の共振回路部ノードは、少なくとも第2の共振回路部構成要素によって第1のコイル端子から分離され、第2の共振回路部ノードは、少なくとも第3の共振回路部構成要素によって第2のコイル端子から分離される。
【0008】
増幅器部は、第1および第2の共振回路部ノードに接続され、動作時に出力インピーダンスを有する。増幅器部は、第1および第2の共振回路部ノードに発振駆動信号を供給するように構成されている。増幅器部は、電流駆動型単段差動増幅器を含む。電流駆動型単段差動増幅器は、第1および第2の増幅器入力と、第1および第2の増幅器出力とを備え、第1の増幅器出力は第1の共振回路部ノードに接続され、第2の増幅器出力は第2の共振回路部ノードに接続される。少なくとも共振回路部と第1の磁場発生コイルとからなる共振器部は、動作中に増幅器部に提示される共振周波数と負荷インピーダンスとを有する。様々な実施形態において、コントローラは、増幅器部に供給されるバイアス電流を調整して、第1の磁場発生コイルにかかる電圧を所定の電圧レベルに維持するように構成される。様々な実施形態において、増幅器部は、MOSトランジスタを含み、(例えば、電磁誘導式位置トランスデューサシステムの他の部分と共に)チップ上に作製され得る。
【0009】
様々な実施形態において、電磁誘導式位置トランスデューサシステムを動作させる方法が提供される。この方法は、駆動回路(例えば、増幅器部および共振回路部を含む)を動作させて第1の磁場発生コイルを駆動する工程と、電磁誘導式位置トランスデューサからの位置依存信号に少なくとも部分的に基づく出力を提供する工程と、を含む。様々な実施形態において、本方法は更に、差動増幅器のバイアス電流を調整し、それに対応して、第1の磁場発生コイルにかかる電圧を対応して調整する工程を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】駆動回路を組み込んだ電磁誘導式位置トランスデューサシステムの一実施形態のブロック図である。
図2】トランスデューサの磁場発生コイルに結合される磁場発生コイル発振器を含む図1の駆動回路の実施形態をより詳細に示すブロック図および概略図である。
図3】特定の回路原理を説明するための共振回路部の一実施形態を示す概略図である。
図4図2の駆動回路の磁場発生コイル発振器および関連する磁場発生コイルの一実施形態を示す概略図である。
図5】本明細書で開示する駆動回路を含む電磁誘導式位置トランスデューサシステムの動作方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、駆動回路200を含む電磁誘導式位置トランスデューサシステム100の一実施形態のブロック図である。図1に示すように、電磁誘導式位置トランスデューサシステム100は、信号線112、114および116、ならびに信号線218、228および238を介して駆動回路200に接続されたコントローラ110を含む。図1の例では、駆動回路200は、3スケールトランスデューサ用の信号線212、222および232を介して、トランスデューサ120(例えば、電磁誘導式位置トランスデューサ)の磁場発生コイル用の駆動信号を出力する。様々な実施形態において、トランスデューサ120は、電磁誘導式位置検知構成として参照されてもよいし、電磁誘導式位置検知構成の一部であってもよい。トランスデューサ120は、検知素子(例えば、受信巻線)から信号線122、124、126を介して位置依存信号を入力マルチプレクサ130に出力する。特に、トランスデューサ120が3相検知素子構成を使用する場合、信号線122、124および126の各々は、3つの別個の信号線から構成される。
【0012】
この例示的な実施形態では、駆動回路200は、(例えば、一般的にまたは特定の測定モード/状態の間)、信号線112、114および116を介して出力される信号に基づいて、トランスデューサ120内の異なる磁場発生コイルの1つ以上を連続的に駆動することができる。入力マルチプレクサ130は、信号線122、124、126上の位置依存検知信号を、信号線132、134を介して同期復調器140に選択的に渡す。同期復調器140はまた、駆動回路200から信号線216、226、236を介して同期復調制御信号を入力する。同期復調器140は、トランスデューサ120によって生成され、入力マルチプレクサ130を介して出力される位置依存検知信号を同期復調し、同期復調された信号を信号線142を介して増幅器および積分器150に出力する。
【0013】
増幅器および積分器150は、信号線142を介して受信された同期復調された信号を増幅し、増幅された信号を積分して信号対雑音比を改善し、それにより達成可能な分解能を向上させ、増幅され積分された信号を信号線152を介してアナログ/デジタル変換器160に出力する。アナログ/デジタル変換器160は、信号線152を介して受信されたアナログの増幅および積分された信号を、コントローラ110によって使用可能な、および/またはコントローラ110のメモリ部および/または較正メモリ170に記憶可能なデジタル信号に変換する。特に、アナログ/デジタル変換器160は、デジタルデータバス195を介してデジタルデータ信号を出力する。
【0014】
コントローラ110、較正メモリ170、およびゲートアレイ180のそれぞれは、デジタルデータバス195に接続される。ゲートアレイ180は、トランスデューサ120が出力する検知信号(例えば、3相検知信号)を、数値制御工作機械などの装置で使用可能な2相信号、直交信号などに変換するのに使用可能である。ゲートアレイ180はまた、電磁誘導式位置トランスデューサシステム100に含めることが必要または望ましい追加のデジタルロジックを組み込むことができる。
【0015】
ゲートアレイ180は入出力インターフェース190に接続される。様々な実施態様において、入出力インターフェース190は、下流の装置(例えば、数値制御工作機械など)に接続可能なケーブル199に接続されてもよい。あるいは、入出力インターフェース190および/またはケーブル199は、アナログ/デジタル変換器160によって出力されたデジタルデータ信号からコントローラ110および/またはゲートアレイ180によって導出された位置信号または数値(例えば、位置トランスデューサ120の1つまたは複数の妨害素子(例えば、スケール素子)と位置トランスデューサ120の検知素子(例えば、読取ヘッド素子)との間の変位を表すもの)を表示するための表示装置に接続してもよい。
【0016】
様々な実施態様において、トランスデューサ120の1つ以上の妨害素子(例えば、スケール素子など)は、第1の要素(例えば、数値制御工作機械の第1の部分、対象物/ワークピースの寸法を測定するための測定器の第1の部分、測定プローブの第1の部分など)に結合されてもよく、トランスデューサの検知素子は、第2の要素(例えば、数値制御工作機械の第2の部分、対象物/ワークピースの寸法を測定するための測定器の第2の部分、測定プローブの第2の部分など)に結合されることがあり、この場合、第1および第2の要素は互いに相対的に移動可能である。上記に示したように、1つ以上の妨害素子(例えば、スケール素子)と位置トランスデューサ120の検知素子との間の変位は、アナログ/デジタル変換器160によって出力されるデジタルデータ信号によって示されることがあり、これは、電磁誘導式位置トランスデューサシステム100の決定された位置測定値に対応することがある(例えば、電磁誘導式位置トランスデューサシステム100の測定動作中に決定される)。
【0017】
一般に、電磁誘導式位置トランスデューサシステム100の全体的な動作および/または駆動回路の様々な態様(例えば、測定動作の一部として互いに相対的に変位する1つまたは複数の妨害素子(例えば、スケール素子)および検知素子(例えば、測定動作の一部として互いに相対的に変位させられる読取ヘッド素子)は、組み込まれた第’389号特許および第’387号特許、ならびに米国特許第5,973,494号、同第5,886,519号、同第6,525,530号、同第10,866,080号、および同第10,914,570号にさらに詳細に記載されており、これらの各特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0018】
図2は、トランスデューサの磁場発生コイルに結合される磁場発生コイル発振器を含む図1の駆動回路200の実施形態をより詳細に示すブロック図および概略図である。様々な実装において、磁場発生コイル発振器の各々は、関連する磁場発生コイルを駆動するための駆動回路を代表したものである場合がある。図2に示すように、3スケールのトランスデューサ120を用いた実施例では、駆動回路200は、それぞれトランスデューサ120の第1、第2および第3の磁場発生コイルA~Cに接続された磁場発生コイルA発振器210、磁場発生コイルB発振器220、および磁場発生コイルC発振器230を含む。
【0019】
特に、図2に示すように、磁場発生コイルA発振器210が出力する駆動信号は、信号線212を介してトランスデューサ120の第1の磁場発生コイルAに出力される。同様に、磁場発生コイルB発振器220が出力する駆動信号は、信号線222を介してトランスデューサ120の第2の磁場発生コイルBに出力される。最後に、磁場発生コイルC発振器230が出力する駆動信号は、信号線232を介してトランスデューサ120の第3の磁場発生コイルCに出力される。
【0020】
コントローラ110は、3つの磁場発生コイル発振器210、220、230をイネーブルおよび/またはその他の方法で制御するための信号(例えば、バイアス電流信号)を駆動回路200に出力する。特に、コントローラ110は、信号線112を介して第1の信号を磁場発生コイルA発振器210に出力する。同様に、コントローラ110は、信号線114を介して第2の信号を磁場発生コイルB発振器220に出力する。同様に、コントローラ110は、信号線116を介して第3の信号を磁場発生コイルC発振器230に出力する。これらの信号の動作については、以下で詳しく説明する。
【0021】
図2の実施形態にさらに示すように、駆動回路200はキャパシタ部240とバッファ部250とを含む。キャパシタ部240は、磁場発生コイル発振器210~230にそれぞれ関連する第1のキャパシタ242、第2のキャパシタ244および第3のキャパシタ246を含む。特に、信号線212に接続された信号線214は、第1のキャパシタ242の第1の端子に接続される。第1のキャパシタ242の第2の端子は、同期復調器140に接続された信号線216に接続される。同様に、第2のキャパシタ244の第1の端子は、信号線224によって信号線222に接続される。第2のキャパシタ244の他方の端子は、同期復調器140に接続された信号線226に接続される。最後に、第3のキャパシタ246の第1の端子は、信号線234によって、磁場発生コイルC発振器230からの信号線232に接続される。第3のキャパシタ246の第2の端子は、上述したように、同期復調器140に接続された信号線236に接続される。
【0022】
図2にさらに示すように、バッファ部250は、第1のバッファ252、第2のバッファ254および第3のバッファ256を含む。第1のバッファ252の入力端子は、信号線217によって磁場発生コイルA発振器210の信号線216に接続される。第1のバッファ252の出力端子は、信号線218に接続され、この信号線218は、上述したように、コントローラ110に接続される。同様に、第2のバッファ254の入力端子は、信号線227によって磁場発生コイルB発振器220の信号線226に接続される。第2のバッファ254の出力端子は、信号線228に接続され、この信号線228は、コントローラ110に接続される。最後に、第3のバッファ256の入力端子は信号線237に接続され、この信号線237は信号線236に接続されている。第3のバッファ256の出力端子は、信号線238に接続され、この信号線238は、コントローラ110に接続される。キャパシタ242、244、246は、復調器140によって信号線216、226、236に印加される直流電圧を遮断する。第1~第3のバッファ252~256は、信号線216、226、236上の正弦波信号を、信号線218、228、238上の矩形波に変換する。
【0023】
図3~5に関して以下により詳細に説明するように、様々な実施態様において、電磁誘導式位置トランスデューサシステム(例えば、様々な実施態様において、リニアスケール構成、ロータリスケール構成、三次元センサ構成などに対応し得る)の磁場発生コイル(例えば、上述の磁場発生コイルA)にかかる比較的高い電圧を発生させることが望ましい。より具体的には、このような電磁誘導式位置トランスデューサシステムでは、磁場発生コイルが交流(AC)磁場(例えば、変化する磁束)を励起するために利用され、この磁場は、1つまたは複数の妨害素子(例えば、関連する電流が変化する磁場/磁束によって誘導される可能性のあるスケール素子)の影響を受ける。変化する磁場(すなわち、1つ以上の妨害素子の影響を受けたもの)は、検知素子(例えば、受信コイル)によって検知される。検知素子によって検知される信号は、検知素子に対する1つまたは複数の妨害素子(例えば、スケール素子)の位置を示す(例えば、したがって、相対位置に応じて変化する位置信号として参照され得る)。これらの位置信号は通常、いくつかの電子チャンネルで加算される(例えば、図1に示すように)。正確な測定を可能にするために、相対位置を決定するために、位置信号に対して(例えば、位置信号の大きさに対して)計算が行われる。
【0024】
一般的に、このようなシステムでは、比較的強い磁場(例えば、磁束変化)を発生させることが望ましい(例えば、検知素子において、回路ノイズなどよりも著しく大きく、それに対応して克服される強い信号を実現するために)。従って、一般的には、対応する磁場発生コイルに比較的高い電圧を発生させる(例えば、強い磁場/磁束変化をもたらす)ことが望ましい。このような電磁誘導式位置トランスデューサシステムの様々な実装では、一般的に、温度が比較的一定に保たれることが望ましく(例えば、そうでなければ温度変動が検知信号に様々な影響を与える可能性がある)、そのためには、電子部品が可能な限り比較的低消費電力であることが望ましい場合がある。一般に、このようなシステムで低電力を必要とする場合、電源電圧が比較的低い電圧レベルであることが望ましい場合があり、同時に、上述のように、システムの磁場発生コイル全体に発生する電圧が比較的高い電圧レベルであることが望ましい場合がある。以下により詳細に説明するように、このような特性は、本明細書に開示する駆動回路を利用した電磁誘導式位置トランスデューサシステムにおいて達成され得る。
【0025】
図3は、特定の回路(例えば、以下でさらに詳細に説明するような磁場発生コイル発振器)の原理を説明するための駆動回路の共振回路部の一実施形態を示す概略図である。本明細書で説明および図示されているような磁場発生コイル発振器では、様々な実装において、磁場発生コイルにかかる電圧が増加し、理想的には最大化される。磁場発生コイルには常に分布した浮遊抵抗が存在することが理解されよう。この浮遊抵抗を考慮して、磁場発生コイルにかかる電圧を増加させ、理想的には最大にするために、この浮遊抵抗に散逸する電力を増加させるとよく、理想的には最大にするとよい。
【0026】
浮遊抵抗に散逸する電力を増加させ、理想的には最大にするためには、負荷のインピーダンスが駆動回路の出力のインピーダンスに近づき、可能であれば整合することが望ましい。これは、インピーダンス・マッチングが負荷に供給される電力を最大化するという、よく知られた回路原理に依存している。本明細書に記載の回路原理を用いて駆動される電磁誘導式位置トランスデューサの磁場発生コイルについては、様々な例示的な実施形態において、負荷インピーダンスを整合させること、または少なくとも負荷のインピーダンスに近づけることは、磁場発生コイルのリアクタンスをキャンセルすることに少なくとも近づけること、および浮遊抵抗を所望の負荷抵抗に組み込むことによって達成されることが望ましい。本明細書で説明するように、これは直列共振回路と並列共振回路の両方の特徴を組み合わせた回路を用いて達成される。図3は、インピーダンス変換器20’に含まれる、このような直列共振回路と並列共振回路を組み合わせた回路を示している。
【0027】
図3に示すように、磁場発生コイルL1は、図2に示すトランスデューサ120の磁場発生コイルの個々の1つ(例えば、磁場発生コイルAの代表)を表してもよい。特に、磁場発生コイルL1のインダクタンスLは、トランスデューサ120内の磁場発生コイルAのインダクタンスに対応してもよい。インピーダンスZを有するインピーダンス変換器20’は、第1のキャパシタC1’、第2のキャパシタC2’、および磁場発生コイルL1(例えば、抵抗部24および誘導部L1'を含む)から構成される。さらに、図3に示すように、増幅器部AP’(例えば、信号発生部12の一部としての増幅器と抵抗部14とを含む)は、信号線15によって第1のノードである入力ノードAに接続される。
【0028】
入力ノードAは、信号線21によってキャパシタC2’に接続される。信号線25は、入力ノードAとキャパシタC1’を接続する。信号線23は、キャパシタC2’'を磁場発生コイルL1(例えば、抵抗部24と誘導部L1'を含む)に接続する。様々な実施態様において、信号線23は、(例えば、駆動回路からトランスデューサの磁場発生コイルL1への接続を表すものとして)信号線212に対応し得るか、または信号線212に結合され得る。信号線213は磁場発生コイルL1をノードBに接続する。信号線17はノードBを信号発生器12に接続する。信号線27は、キャパシタC1’'をノードBに接続する。
【0029】
したがって、図3に示すように、キャパシタC2’、磁場発生コイルL1の抵抗部24および誘導部L1’は、ノードA-B間にRCL直列回路を形成する。さらに、キャパシタC1’は、このRCL直列回路と並列にノードA-B間に接続される。上述したように、抵抗部24は、磁場発生コイルL1によって形成されるループ内の浮遊抵抗である。従って、キャパシタC2’は直列キャパシタであり、キャパシタC1’は並列キャパシタである。
【0030】
キャパシタC1’およびC2’、磁場発生コイルL1の抵抗部24および誘導部L1'を合わせた入力インピーダンスZが、増幅器部AP’の負荷となる。様々な実施態様において、抵抗部14は、インピーダンス変換器20’の入力インピーダンスZが整合される信号発生器12の出力抵抗である。特に、キャパシタC1’およびC2’の容量CおよびCを適切に選択することによって、インピーダンスZは、信号発生器12の抵抗部14の抵抗Rに近づく(例えば、ほぼ等しくなる)場合がある。
【0031】
インピーダンス変換器20’において、インピーダンス変換器20’のトポロジーは、抵抗部24の抵抗値とソース抵抗部14の抵抗値の相対値によって決定されることが理解されるべきである。様々な実施態様において、抵抗部24の抵抗値がソース抵抗部14の抵抗値より小さい場合、負荷の「左」にある第1の素子は直列素子であってもよい。次に並列素子が続く。もちろん、抵抗部24の抵抗値がソース抵抗部14の抵抗値よりも大きいというように、関係が逆であれば、負荷の「左」にある最初の素子は並列要素であってもよい。この場合、直列素子がそれに続くことになる。
【0032】
さらに、入力インピーダンスZを形成する直列素子および並列素子は、必ずしもキャパシタではないことを理解されたい。すなわち、いくつかの例示的な実施形態では、直列素子および並列素子はインダクタであり得る。しかしながら、磁場発生コイルL1を駆動するための本発明による駆動回路200では、多くの場合、直列回路素子および並列回路素子としてキャパシタを使用することができる。
【0033】
図4は、(駆動回路の)磁場発生コイル発振器および関連する磁場発生コイルL1の一実施形態を示す概略図である。図4の例では、磁場発生コイルL1は、図2に示すトランスデューサ120の磁場発生コイルの個々の1つ(例えば、磁場発生コイルAの代表)を表してもよい。特定の実施態様において、図4に示す駆動回路400は、(例えば、駆動回路200の一部としての図2の発振器210のように)ダブルエンドの発振器として特徴付けられてもよい。示されるように、様々な実施態様において、図2の駆動回路200は、図4の駆動回路400だけでなく、(例えば、トランスデューサ120の他の磁場発生コイルを駆動するための)追加の駆動回路を含んでもよい。以下により詳細に説明されるように、駆動回路400は、様々なキャパシタおよび抵抗(例えば、キャパシタC1、C2、C3、C4およびC5、ならびに抵抗R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7)を含み、これらの各々は、それぞれの接続に利用されるそれぞれの第1および第2の端子を有すると理解されるであろう(例えば、第1および第2の要素間に結合される抵抗またはキャパシタは、各要素に結合されるそれぞれの端子を有すると理解されるであろう)。
【0034】
駆動回路400は、第1および第2のコイル端子xlpおよびxlnと、コイルインピーダンスとを有する第1の磁場発生コイルL1とを駆動するように構成されている。詳細は後述するが、駆動回路400は、少なくとも共振回路部RCPと増幅器部APとを含む。簡単に説明すると、共振回路部RCPは、第1のコイル端子xlpおよび第2のコイル端子xlnに接続され、少なくとも第1の共振回路部構成要素(例えば、キャパシタC1)、第2の共振回路部構成要素(例えば、キャパシタC2)、および第3の共振回路部構成要素(例えば、キャパシタC3)を含む。
【0035】
第1の共振回路部構成要素(例えば、キャパシタC1)は、第1の共振回路部分ノード(例えば、ノードA)と第2の共振回路部分ノード(例えば、ノードB)との間に結合される。第1の共振回路部分ノード(例えば、ノードA)は、少なくとも第2の共振回路部構成要素(例えば、キャパシタC2)によって第1のコイル端子(例えば、xlp)から分離される。第2の共振回路部分ノード(例えば、ノードB)は、少なくとも第3の共振回路部構成要素(例えば、キャパシタC3)によって第2のコイル端子(例えば、xln)から分離される。増幅器部APは、第1および第2の共振回路部ノード(例えば、ノードAおよびノードB)に接続され、動作時に出力インピーダンスを有する。増幅器部APは、第1および第2の共振回路部ノード(例えば、ノードAおよびノードB)に発振駆動信号を供給するように構成されている。共振回路部RCP、増幅器部AP、および関連するさまざまな接続については、それぞれ以下でさらに詳しく説明する。
【0036】
図4に示すように、増幅器部APは、電流駆動型単段差動増幅器DAを含む。差動増幅器DAは、第1の入力端子xfp(例えば、第1の増幅器入力IN1に対応)と、第2の入力端子xfn(例えば、第2の増幅器入力IN2に対応)と、第1の出力端子xtp(例えば、第1の増幅器出力OUT1に対応)と、第2の出力端子xtn(例えば、第2の増幅器出力OUT2に対応)とを備える。回路経路411は、差動増幅器DAの第1の出力端子xtpと第2の入力端子xfnとの間に接続されている。回路経路415は、差動増幅器DAの第2の出力端子xtnと第1の入力端子xfpとの間に接続されている。回路経路413は、差動増幅器DAの第1の出力端子xtpと第1の入力端子xfpとの間に接続されている。回路経路417は、差動増幅器DAの第2の出力端子xtnと第2の入力端子xfnとの間に接続されている。様々な実施形態において、回路経路413および417は、フィードバックループとして特徴付けられ得る。これらの回路経路を形成する回路素子については、以下で詳しく説明する。
【0037】
以下により詳細に説明されるように、動作において、磁場発生コイルL1にかかる電圧(例えば、発振電圧の振幅)は、差動増幅器DAに供給される(例えば、コントローラ110によって供給/調整される)バイアス電流を調整することによって調整され得る。様々な実施形態において、差動増幅器DAとインピーダンス変換器20とを利用することで、高いコイル電圧(例えば、電源電圧Vddより高く、いくつかの実施形態では電源電圧Vddより少なくとも2倍または3倍高い)を達成することができる。本明細書で利用されるように、「電圧」、「電圧レベル」、「所定の電圧レベル」という用語は、様々な実施態様において、(例えば、磁場発生コイルL1にかかるように発生するような)対応する発振/変動電圧の振幅を指す場合がある。これは、(例えば直流電圧であり得る)電源電圧Vddのような、発振/変動を意図していない電圧と対照的である。
【0038】
図4では、インピーダンス変換器20が駆動回路400に含まれている。共振器部RPは、少なくとも磁場発生コイルL1と、第1のキャパシタC1、第2のキャパシタC2および第3のキャパシタC3を有する共振回路部RCPを備えるインピーダンス変換器20とを含む。3つのキャパシタ(すなわち、C1、C2およびC3)は、回路を完全に差動化するために使用される。差動増幅器DAの第1の出力端子xtp(すなわち、入力ノードAに接続される)に関して、キャパシタC2、磁場発生コイルL1、およびキャパシタC3は、入力ノードAと入力ノードBの間に直列に接続され、キャパシタC1は、入力ノードAと入力ノードBの間に直列に接続されたキャパシタC2、磁場発生コイルL1、およびキャパシタC3と並列に接続される。差動増幅器DAの第2の出力端子xtn(すなわち、入力ノードBに接続される)に関して、キャパシタC3、磁場発生コイルL1、およびキャパシタC2、入力ノードBと入力ノードAの間に直列に接続され、キャパシタC1は、入力ノードAと入力ノードBの間に直列に接続されたキャパシタC3、磁場発生コイルL1、およびキャパシタC2と並列に接続される。上述したように、磁場発生コイルL1とともにキャパシタC1~C3が共振器部RPの少なくとも一部を形成する(例えば、キャパシタのキャパシタンスと磁場発生コイルのインダクタンスに応じて)。様々な実施態様において、共振器部RPは、他の要素および/または部分(例えば、第1および第2のフィルタ部F1およびFP2など)を含んでもよい。
【0039】
抵抗R6は、磁場発生コイルL1の第1の端子xlpと接地(グランド)との間に接続され、抵抗R7は、磁場発生コイルL1の第2の端子xlnと接地との間に結合される。第1の端子xlpはノードCに接続され、第2の端子xlnはノードC’に接続されている。抵抗R6と抵抗R7は、端子xlpとxlnに接地への直流(DC)経路を提供する。様々な実施形態において、この構成により、端子xlpおよびxlnがフローティング(例えば、電荷蓄積などに応じて端子電圧が変化する可能性のある接地への接続がない状態)を防ぐことができる。
【0040】
回路経路411は、第1の出力端子xtpと第2の入力端子xfnとの間に接続される(すなわち、第1の端子が入力ノードA/端子xtpに接続され、第2の端子がノードE’/端子xfnに接続されるなど、ノードAとノードE’との間に接続される)バイアス抵抗R5を含む。回路経路415は、第2の出力端子xtnと第1の入力端子xfpとの間に接続される(すなわち、第1の端子が入力ノードB/端子xtnに接続され、第2の端子がノードE/端子xfpに接続されるなど、ノードBとノードEとの間に接続される)バイアス抵抗R4を含む。バイアス抵抗R4およびR5は、差動増幅器DAの第1および第2の相補的な単段増幅器部SSAP1およびSSAP2にそれぞれ直流(DC)バイアスを供給する。したがって、抵抗R4とR5の抵抗値は、差動増幅器DAに適切なバイアスレベルを提供するように構成するとよい。
【0041】
駆動回路400の動作中、発振に応じて(例えば、磁場発生コイルL1および共振回路部RCPを含む共振器部のLC回路の動作に応じて)、特定の抵抗(例えば、抵抗R4およびR5)の相対的な効果は、発振が増加するにつれて減少し得る(例えば、抵抗R4およびR5の効果が相対的に無視できるようになり得るところまで)ことが理解されよう。様々な実施態様において、抵抗R4~R7は、共振器部のループ利得に大きな影響を与えないように、比較的高い値(例えば、共振器部のインピーダンスよりもかなり高い値)を有することが望ましい場合がある。
【0042】
回路経路413(例えば、特定の実施態様では、フィードバックループとして特徴付けられ得る)に関して、キャパシタC4および抵抗R2は、第1のフィルタ部FP1の一部であり、ノードCとノードEとの間に直列に結合される(すなわち、したがって、磁場発生コイルL1の第1の端子xlpと差動増幅器DAの第1の入力端子xfp/第1の増幅器入力IN1との間に直列に結合される)。様々な実施態様において、キャパシタC4および抵抗R2は、本明細書に記載されるように、それぞれの接続を行うためのそれぞれの第1および第2の端子を有する第1フィルタ部キャパシタC4および第1フィルタ部抵抗R2として参照され得る。ノードCは、第1フィルタ部第1ノードCとして参照されることがあり、ノードEは、第1フィルタ部第2ノードEとして参照されることがある。より具体的には、第1フィルタ部キャパシタC4は、第1の端子がコイルの第1の端子xlp/第1フィルタ部第1ノードC接続され、第2の端子が第1フィルタ部抵抗R2の第1の端子に接続されてもよい。第1フィルタ部抵抗R2の第2の端子は、第1の増幅器入力IN1/端子xfp/第1フィルタ部第2ノードEに接続されてもよい。
【0043】
同様に、回路経路417(例えば、特定の実施態様では、フィードバックループとして特徴付けられ得る)に関して、キャパシタC5および抵抗R3は、第2のフィルタ部FP2の一部であり、ノードC’とノードE’との間に直列に結合される(すなわち、したがって、磁場発生コイルL1の第2の端子xlnと差動増幅器DAの第2の入力端子xfn/第2の増幅器入力IN2との間に直列に結合される)。様々な実施態様において、キャパシタC5および抵抗R3は、本明細書に記載されるように、それぞれの接続を行うためのそれぞれの第1および第2の端子を有する第2フィルタ部キャパシタC5および第2フィルタ部抵抗R3として参照され得る。ノードC’は、第2フィルタ部第1ノードC’として参照されることがあり、ノードE’は、第2フィルタ部第2ノードE’として参照されることがある。より具体的には、第2フィルタ部キャパシタC5は、第2コイル端子xln/第2フィルタ部第1ノードC’に接続された第1の端子と、第2フィルタ部抵抗R3の第1の端子に接続された第2の端子とを有することができる。第2フィルタ部抵抗R3の第2の端子は、第2の増幅器入力IN2/端子xfn/第2フィルタ部第2ノードE’に接続されてもよい。
【0044】
様々な実施形態において、直列の抵抗R2とキャパシタC4、および直列の抵抗R3とキャパシタC5は、差動増幅器DAの位相シフトを補償するように調整され得るハイパスフィルタ構成(例えば、フィードバックループ構成の一部として)を成す。様々な実施態様において、所望の発振を起こすためには、フィードバックループの構成が、一般に、1より大きい利得で、磁場発生コイルL1のコイル電圧と同位相であることが望ましい。様々な実施態様において、第1のフィルタ部FP1(例えば、キャパシタC4および抵抗R2を含む)および第2のフィルタ部FP2(例えば、キャパシタC5および抵抗R3を含む)はまた、または代替的に、それぞれ第1の位相シフタ部および第2の位相シフタ部として特徴付けられ得る。様々な実施態様において、キャパシタC4およびC5は、(例えば、関連する機能についての追加チューニングを可能にする)可変コンデンサであってもよい。
【0045】
抵抗R1は、ノードEとノードE’との間に結合されている(すなわち、第1の入力端子xfpと第2の入力端子xfnとの間に接続されている)。抵抗R2は、ノードEとキャパシタC4との間に結合されている(すなわち、第1の入力端子xfpとキャパシタC4との間に接続されている)。抵抗R3は、ノードE’とキャパシタC5との間に接続されている(すなわち、第2の入力端子xfnとキャパシタC5との間に接続されている)。様々な実施形態において、抵抗R1~R3は抵抗分圧器を形成し、磁場発生コイルL1のコイル電圧を(例えば集積回路の一部としての)差動増幅器DAにフィードバックするために利用することができる。抵抗分圧器は、フィードバック信号が(例えば、差動増幅器DAに供給する電圧である、集積回路の)電源電圧Vddを超えないようにするために利用することができる。したがって、抵抗R2およびR3は、抵抗分圧機能と位相シフト機能(例えば、フィルタ部FP1およびFP2に関して上述したように)の両方に利用されるものとして特徴付けることができる。
【0046】
様々な実施態様において、電流駆動型単段差動増幅器DAは、第1の単段増幅器部SSAP1および第2の単段増幅器部SSAP2(例えば、それぞれが金属酸化膜半導体(MOS)トランジスタからなる相補的な増幅器部であってもよい)から構成される。図4に示される実施例では、第1の単段増幅器部SSAP1は、第1のpチャネルMOS(PMOS)トランジスタM5と直列に結合された第1のnチャネルMOS(NMOS)トランジスタM3から構成される。トランジスタM3とM5のゲートは結合して第1の入力端子xfpを形成し、第1の増幅器入力IN1を提供し、トランジスタM3とM5のドレインは結合して第2の出力端子xtnを形成し、第2の増幅器出力OUT2を提供する。こうして抵抗R4は、トランジスタM3とM5の接続されたドレインとゲートの間に結合される。
【0047】
第2の単段増幅器部SSAP2は、第2のPMOSトランジスタM6と直列に結合された第2のNMOSトランジスタM4から構成される。トランジスタM4とM6のゲートは結合して第2の入力端子xfnを形成し、第2の増幅器入力IN2を提供し、トランジスタM4とM6のドレインは結合して第1の出力端子xtpを形成し、第1の増幅器出力OUT1を提供する。こうして抵抗R5は、トランジスタM4とM6の接続されたドレインとゲートの間に結合される。様々な実施形態において、動作中、差動増幅器DAの出力OUT1およびOUT2の電圧は互いに反対方向に振れる可能性がある。
【0048】
トランジスタM5およびM6のソースは結合され、電源電圧Vdd(例えば、差動増幅器DA、および一般に差動増幅器を含み得る集積回路、ならびにシステムの他の部分、例えば図1に示されるようなシステム100の部分110~190の少なくとも一部に対する電源電圧であってもよい)に結合される。トランジスタM3およびM4のソースは結合され、バイアス電流部BCPに結合される(例えば、以下でさらに詳細に説明するように、バイアス電流部BCPのNMOSトランジスタM2のドレインに結合される)。
【0049】
様々な実施態様において、増幅器部APは、コントローラ(例えば、図1のコントローラ110)からバイアス電流を受け取るバイアス電流部BCPを備える。様々な実施態様において、コントローラは、第1の磁場発生コイルL1にかかる電圧を所定の電圧レベルに維持するために、増幅器部APにバイアス電流を(例えば、信号線112を介して)供給するように構成される。例えば、測定動作中、システムが、磁場発生コイルL1にかかる電圧を指定されたレベル(例えば、10ボルト、12ボルトなど)で動作させることが意図されている場合、バイアス電流は、測定動作中、磁場発生コイルL1にかかる電圧をその指定されたレベルに維持するために、コントローラから増幅器部APに供給され得る。
【0050】
図4に示す実施例では、バイアス電流部BCPは、2つのMOSトランジスタ(すなわち、第1のNMOSトランジスタM1および第2のNMOSトランジスタM2を含む)から構成される。トランジスタM1およびM2のソースは結合され、グランドに結合される。上述したように、NMOSトランジスタM2のドレインは、トランジスタM3およびM4の接続されたソースに結合されている。トランジスタM1とM2のゲートは結合され、(例えば、コントローラ110から信号線112を通して供給される)バイアス電流を受けるトランジスタM1のドレインに結合される。したがって、トランジスタM1とM2はカレントミラーを形成してもよい。様々な実施形態において、トランジスタM2は、トランジスタM1よりも大きくてもよい(例えば、電流駆動型差動増幅器DAに電流を供給するために、コントローラからのバイアス電流を増幅するように機能してもよい)。
【0051】
様々な実施態様において、コントローラは、増幅器部に供給されるバイアス電流を調整して、第1の磁場発生コイルにかかる電圧を所定の電圧レベルに維持するように構成され得る。例えば、第1の時点(例えば、第1の動作温度などを含む特定の第1の動作条件下)において、コントローラは、所定の電圧レベル(例えば、10ボルト)である磁場発生コイルにかかる電圧をもたらす第1のバイアス電流レベルでバイアス電流を供給するように構成され得る。次に、第2の時点(例えば、第2の動作温度などを含む特定の第2の動作条件下)において、第1のバイアス電流レベルでバイアス電流を供給するコントローラは、磁場発生コイルにかかる電圧が所定の電圧レベルでないことをもたらす可能性がある。例えば、第1の時点と第2の時点との間の動作条件の変化(例えば、第1の動作温度から第2の動作温度への変化に伴い、特定の部品の抵抗等に影響を与える可能性がある)に起因して、第1のバイアス電流は、所定の電圧レベル(例えば、10ボルト)とは異なる、磁場発生コイルにかかる電圧(例えば、9.5ボルト)をもたらし得る。これに応答して(例えば、磁場発生コイルにかかる電圧を示すか、そうでなければ、磁場発生コイルにかかる電圧に対応するコントローラによって受信される測定パラメータに応答して)、コントローラは、バイアス電流を第1のバイアス電流レベルから、所定の電圧レベル(例えば、10ボルト)である磁場発生コイルにかかる電圧をもたらす第2のバイアス電流レベルに調整する(例えば、バイアス電流を増加させる)ように構成され得る。
【0052】
様々な実施態様において、このような機能(例えば、所定の電圧レベルを維持するための機能)は、システムの他の構成要素/回路が、磁場発生コイルにかかる所定の電圧レベルに少なくとも部分的に基づいて動作するように選択/設計され得るという点で、特に望ましい場合がある。例えば、トランスデューサ120の特定の検知素子(例えば、検知コイル)の信号レベルは、磁場発生コイルにかかる異なる電圧レベルの結果として、異なる磁場/異なる磁束によって異なる方法で影響を受ける可能性がある。一般に、磁場発生コイルにかかる電圧が所定のレベルでない場合、磁場発生コイルにかかる所定の電圧と連動して動作するように設計および規定されている他の回路および構成要素(例えば、トランスデューサ120の、および/またはシステム100の他の構成要素)の動作/機能/結果は、異なる動作をする可能性があり(例えば、あるものは線形に応答する可能性があるが、他のものは線形に応答しない可能性がある)、その結果、異なる相対出力が生じ、システムの性能/測定精度に影響を及ぼす可能性がある。したがって、磁場発生コイルL1にかかる電圧を所定の電圧レベルに維持するための制御(例えば、バイアス電流の制御)の実施は、そのような問題に関して特に有利であり得る。
【0053】
様々な実施形態において、(例えば、コントローラによる)バイアス電流の制御は、差動増幅器の他の制御(例えば、イネーブル動作状態とディセーブル動作状態および/または低減動作状態との間の変更)にも利用することができる。例えば、システム100の第1の状態(例えば、測定動作が実行されているときを含む)の間、磁場発生コイルL1は、駆動回路400によって駆動されて磁場(例えば、磁束変化を有する)を発生させ、トランスデューサ120の検知素子が(例えば、移動機構の制御のための測定のために、または相対位置のような相対測定を決定するために等)処理および利用され得るような、(トランスデューサ120の要素の相対変位を示すような)位置依存信号を生成するようにすることができる。システム100の第2の状態(例えば、測定動作が実行されていないときを含む)の間、磁場発生コイルL1にかかる電圧を所定の電圧レベルに維持することが必要でないか、または望ましくない場合がある。例えば、一部の実施形態では、第2の動作状態の間、駆動回路400をディセーブルにするか、そうでなければ動作を低減することが望ましい場合がある(例えば、システム100の電流/電力使用量および/または発熱などを低減するため)。
【0054】
したがって、特定の実施形態では、コントローラ(例えば、コントローラ110)は、第1の状態の間(例えば、電磁誘導式位置トランスデューサシステム100が測定動作を実行しているとき)、第1の磁場発生コイルL1にかかる電圧を所定の電圧レベルに維持するために増幅器部APにバイアス電流を供給し、第2の状態の間(例えば、電磁誘導式位置トランスデューサシステム100が測定動作を実行していないとき)、第1の磁場発生コイルL1にかかる電圧を所定の電圧レベルに維持するために増幅器部APにバイアス電流を供給しないように構成され得る。様々な代替実施形態において、コントローラ110は、増幅器部APをイネーブルまたはディセーブルにするための第2の信号(例えば、イネーブル信号)を信号線112(例えば、信号バス線であってもよい)に供給してもよい。
【0055】
様々な実施態様において、システム(例えば、システム100)は、駆動回路400および/またはシステム100の他の部分が形成される半導体(例えば、シリコン)チップを含み得る。例えば、増幅器部APにMOSトランジスタを利用することで、増幅器部APと共振回路部RCPを単一チップ上の集積回路の一部として形成することができる。これに対応して、単一チップおよび/または集積回路は、システムの追加部分(例えば、いくつかの例として、コントローラ110、入力マルチプレクサ130、復調器140、増幅器および積分器150、アナログ/デジタル変換器160などのうちの1つまたは複数)を含むこともできる。
【0056】
本明細書で説明するように、増幅器部APは、(例えば、単一の半導体チップ上のシステムの一部またはすべての部分について)共通の電源電圧であってもよい電源電圧(例えば、電源電圧Vdd)を受け取り、これに基づいて動作してもよい。一例として、一実施形態では、復調部140は駆動回路400と同じチップ上に含まれてもよく、その場合、復調部140は増幅器部APと同じ電源電圧Vddを受け取り、それに基づいて動作してもよい。1つの具体的な数値例として、電源電圧Vddは3.3ボルトに等しくてもよく、この場合、システム100のすべて(例えば、駆動回路400、復調部140などを含む)の少なくとも一部は、同じ3.3ボルトの電源電圧で動作してもよい。このような構成は、増幅器部がシステムの他の部分とは異なる電源電圧を利用することを必要とする可能性のある代替設計と比較して、(例えば、単純さなどの点で)有利であるとされている。本明細書で説明するように、駆動回路400は、電源電圧Vddよりも大きく、いくつかの実施態様では電源電圧Vddの少なくとも2倍、または3倍よりも大きい、磁場発生コイルL1にかかる電圧を達成するように構成されてもよい(例えば、電源電圧が3.3ボルトである構成では、磁場発生コイルL1にかかる電圧が少なくとも約10ボルト、または少なくとも約12ボルトなどであってもよい)。
【0057】
図4に示す駆動回路400の例示的な実施態様では、駆動回路400内の別個の回路素子の数を最小化することよりも、回路の対称性に重点が置かれていることを理解されたい。したがって、駆動回路400の他の様々な例示的な実施態様において、キャパシタC1、C2、C3、C4およびC5の様々なもの、ならびに抵抗R1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7の様々なものが、単一の回路素子に組み合わされてもよいことが理解されるべきである。
【0058】
様々な実施態様において、駆動回路400は、駆動される磁場発生コイルL1の近くに配置するレイアウトで実装することができる(例えば、そうでなければ介在する可能性のある配線や接続の浮遊効果を最小化し、電磁誘導式位置トランスデューサシステムに対してより予測可能で安定した性能特性を提供することができる等)。例えば、駆動回路400とそれに関連する磁場発生コイルL1は、プリント回路基板やフレックス回路などの共有部材に組み付けるか、直接形成することができる。
【0059】
インピーダンス変換器20に関して、直列接続されたキャパシタと並列接続されたキャパシタ(例えば、並列接続されたキャパシタC1と直列接続されたキャパシタC2およびC3)の両方を、磁場発生コイルL1に対して設けることにより、これらのキャパシタの容量を選択する際に2つの自由度が提供されることが理解されよう。より具体的には、様々な実施形態において、インピーダンス変換器20には2つの異なる自由度(例えば、共振周波数と入力インピーダンスを含む)が存在する。したがって、インピーダンス変換器20の共振周波数は、インピーダンス変換器20のインピーダンスZとは無関係に規定または選択することができる(例えば、図3に関して上述したような特定の原理に従ってなど)。様々な実施形態において、インピーダンス変換器20は、同調された中心周波数以外の周波数を減衰させたり位相シフトさせたりするのに役立ち、閉ループ利得が中心周波数でのみ発振を持続させるのに十分であるようにすることができる。
【0060】
従来のある種の磁場発生コイルの駆動回路では、共振周波数とインピーダンスのどちらかを選択することができたが、共振周波数とインピーダンスのどちらかを選択すると、それぞれインピーダンスまたは共振周波数が固定されていた。このように、共振周波数とインピーダンスの両方を互いに独立して規定または選択できるようにすることで、インピーダンス変換器20(例えば、場合によってはデュアルまたはマルチキャパシタ共振器とも呼ばれる)は、磁場発生コイルを効率的に駆動することを可能にする。
【0061】
さらに、インピーダンス変換器20を使用して得られる磁場発生コイルにかかる電圧は、単一キャパシタ共振器で得られる電圧よりも高い。したがって、トランスデューサの分解能を向上させることができる。同時に、インピーダンス変換器20の共振周波数を同調させることができるため、様々な実施形態において、他の歪んだ波形を用いた場合よりも、磁場発生コイルをより効率的に駆動し、トランスデューサの出力をより正確に決定することができるように、共振周波数に同調させた正弦波を提供することができる。
【0062】
さらに、様々な実施態様において、(すなわち、磁場発生コイルL1に供給される)駆動信号から高調波が除去される可能性があるため、環境への電磁放射が少なくなる。これにより、よりEMFに敏感な環境でも、より低コストの誘導型トランスデューサのパッケージングで駆動回路を使用できるようになる場合がある。
【0063】
また、駆動回路400において、様々な実施態様において、駆動回路400の発振周波数は、磁場発生コイルの任意のドリフトに追従し得ることが理解されるべきである。したがって、駆動回路400の発振は、外部に配置された発振回路によって制御される駆動回路よりも良好に共振状態を維持することができる。つまり、発振器の共振周波数を設定する共振回路に磁場発生コイルのインダクタンスを含めることで、様々な実装において、発振器は共振器の正確な共振周波数で最大の駆動信号を生成することができる。
【0064】
様々なキャパシタ、抵抗、および磁場発生コイルの容量、抵抗値、およびインダクタンスなどの部品値の公差が異なる可能性があるため、上述し図4に示した原理に従って構築された実際の駆動回路の実際の共振周波数は、設計された周波数に正確に一致しない可能性がある。しかしながら、様々な実施態様において、駆動回路400は、最も強い信号を生成する(例えば、トランスデューサからの最も強い出力信号をもたらす)発振周波数を自動的に見つけることができる。
【0065】
したがって、本明細書で説明する発振駆動回路は、電磁誘導式位置トランスデューサ用のある先行技術の発振駆動回路に関連する多くの問題を回避することができる。例えば、本明細書に組み込まれた第’389号特許および第’387号特許に開示されたリンギング発振器は、一般に、小型で高精度の電磁誘導式位置トランスデューサに関連するような小さなインダクタンスには適さず、さらに、適合するトランスデューサの磁場発生コイルを介して十分な強度の信号を発生させるために大容量のキャパシタを使用する。しかし、このような大容量のキャパシタは充電にかなりの時間を要するため、このリンギング回路で得られるサンプリング周波数が制限される。さらに、大容量のキャパシタは、各サンプルに対して同じ電圧レベルまで充電されなければならず、トランジスタを実装したスイッチは、大容量のキャパシタから磁場発生コイルを流れる大電流負荷を処理できなければならない。
【0066】
対照的に、他の従来の連続駆動回路は、本質的に複数の周波数波形を生成する可能性があり、純粋な正弦波を生成できないことが多い。さらに、このような回路の多くでは、発振器と共振器を分離する必要がある。したがって、水晶発振器を使用するようなこのような多周波駆動回路は、トランスデューサのパラメータや他の回路素子の経年劣化や環境影響によって発生する可能性のある振動子周波数のドリフトに対して敏感である。また、このような複数周波数の駆動回路では、トランスデューサが受信する信号を正確に制御することも難しくなる。
【0067】
駆動回路400の動作(例えば、ダブルエンド発振器の動作)に関連する様々な実施形態において、磁場発生コイルL1にかかる正味の電圧は実質的にゼロであってもよいことが理解されよう。したがって、磁場発生コイルL1を通過する電圧信号は本質的に存在しない場合がある。その結果、駆動回路400を使用するトランスデューサには容量性の結合がほとんどないか、全くない場合がある。加えて、ダブルエンド発振器の動作は、(例えば、シングルエンド発振器駆動回路を用いた実施形態と比較して)本質的に同じ周波数で2倍の信号強度を提供するため、駆動回路400のダブルエンド発振器の動作は、(例えば、同期復調器140によって)本質的に半分の時間で同じ信号の大きさを得ることを可能にし得る。したがって、駆動回路400のダブルエンド発振器の動作は、実質的に短いサンプリング・ウィンドウを持つことができる。
【0068】
図5は、電磁誘導式位置トランスデューサシステムの動作方法を示すフロー図である。ブロック510では、電磁誘導式位置トランスデューサシステムの駆動回路が、第1の磁場発生コイルを駆動するように動作する。駆動回路は、共振回路部と増幅器部とを含む(例えば、共振回路部は、第1の磁場発生コイルと増幅器部との間に接続される。)。様々な実施形態において、増幅器部は、電流駆動型単段差動増幅器(例えば、誘電磁誘導式位置トランスデューサシステムの他の部分と共に、半導体チップ上の集積回路の一部として形成されたMOSトランジスタを含む)を含む。
【0069】
ブロック520では、増幅器部のバイアス電流が調整され、それに対応して第1の磁場発生コイルにかかる電圧が調整される。例えば、コントローラは、増幅器部のバイアス電流部に供給されるバイアス電流を調整して、第1の磁場発生コイルにかかる電圧を所定の電圧レベル(例えば、10ボルト、または12ボルトなど)に維持することができる。ブロック530では、電磁誘導式位置トランスデューサからの位置依存信号に少なくとも部分的に基づいて出力が提供される。例えば、入力/出力インターフェースおよび/またはシステムの他の部分(例えば、アナログ/デジタル変換器など)は、電磁誘導式位置トランスデューサの変位を表す出力を提供することができる。様々な実施形態において、出力は、数値制御工作機械などの下流装置、または電磁誘導式位置トランスデューサの変位を表す位置信号または数値を表示するための表示装置などに提供され得る。
【0070】
様々な実施形態において、第1の磁場発生コイルを駆動するための電磁誘導式位置トランスデューサシステムの駆動回路の動作は、第1の状態(例えば、電磁誘導式位置トランスデューサシステムが測定動作を実行しているときなど)の間、第1の磁場発生コイルにかかる電圧を所定の電圧レベルに維持するために実行される。様々な実施形態において、本方法は、第2の状態(例えば、電磁誘導式位置トランスデューサシステムが測定動作を実行していないときなど)の間、バイアス電流を(例えば、ゼロまたはゼロでない低いレベルまで)減少させ、第2の状態の間、第1の磁場発生コイルにかかる電圧を規定の電圧レベルに維持しないようにすることをさらに含み得る。
【0071】
図1図5に関して上述したように、本明細書で開示する原理に従って、(例えば、磁場発生コイルL1にかかる)高いコイル電圧を達成することができるインピーダンス変換器20が利用される。インピーダンス変換器20は、キャパシタ(例えば、キャパシタC1~C3)および磁場発生コイル(例えば、コイルL1)を含み、共振器部RP(例えば、様々な実施形態では、FP1およびFP2などのフィルタ部も含み得る)の少なくとも一部であってもよい。様々な実施形態において、駆動回路(例えば、駆動回路400)を完全に差動にするために、3つのキャパシタ(例えば、キャパシタC1~C3)が利用される。抵抗分圧器(例えば、抵抗R1~R3を含む)は、(例えば、磁場発生コイルL1の)コイル電圧を(例えば、集積回路の一部としての)差動増幅器DAにフィードバックするために利用することができる。抵抗分圧器は、フィードバック信号が(例えば集積回路の)電源電圧を超えないようにするために利用することができる。
【0072】
様々な実施形態において、抵抗器-キャパシタ接続(例えば、直列の抵抗R2キャパシタC4、および直列の抵抗R3とキャパシタC5を含む)は、(例えば、フィードバックループ構成の一部として)差動増幅器DAの位相シフトを補償するように調整され得るハイパスフィルタ構成を形成する。様々な実施形態において、所望の発振を起こすためには、フィードバックループの構成は、一般に、(例えば、磁場発生コイルL1の)コイル電圧と同位相で利得が1より大きくなければならない。様々な実施形態において、特定の(例えば、抵抗R4およびR5の)抵抗値は、(例えば、差動増幅器DAのための)正しいバイアスレベルを提供するように構成され、特定の(例えば、抵抗R6およびR7の)抵抗値は、端子(例えば、磁場発生コイルの端子xlpおよびxln)がフローティングとならないように(例えば、駆動回路が磁場発生コイルに亘って発振電圧を供給するために動作していないときなどに、端子における電圧が電荷の蓄積に応じて他の方法で変化する可能性がある接地への接続がない状態を避けるように)構成される。
【0073】
本明細書で開示するような駆動回路により、電磁誘導式位置トランスデューサシステムを比較的コンパクトにし、比較的低電力とすることができる(例えば、磁場発生コイルの駆動回路と読み出し電子回路の一部または全部を同じ集積回路上に設けることができる)ことが理解されよう。より具体的には、様々な構成において、駆動回路は、読み出し電子回路の一部または全部(例えば、コントローラ110、マルチプレクサ130、復調器140、増幅器および積分器150、アナログ/デジタル変換器160、メモリ170、ゲートアレイ180、入出力インターフェース190などの一部または全部)とともに集積回路に(例えば、単一の半導体チップに)含まれ得る低電力MOSトランジスタ(例えば、NMOS、PMOS、CMOSトランジスタ)を利用して実装され得る。駆動回路は、(例えば、駆動回路および/または集積回路の)電源電圧よりも実質的に大きい電圧を(例えば、磁場発生コイルにかかるように)供給することができる。様々な実施形態において、駆動回路にMOSトランジスタを利用することで、回路全体の小型化および/または比較的低い電力損失を実現することができる。駆動回路は、電子的に調整可能な駆動レベル(例えば、バイアス電流によって制御される)を有することができる。駆動回路の周波数は、部品によって(例えば、関連するキャパシタや抵抗の値に応じて)自己共振的に設定することができる(例えば、これにより低ノイズを実現することができる)。
【0074】
本明細書に開示され、特許請求される原理は、組み込まれた参考文献に開示されている様々な特徴と容易かつ望ましく組み合わせることができることが理解されるであろう。上記の様々な実装形態を組み合わせることで、更なる実装形態を提供することができる。本明細書で言及されている米国特許および米国特許出願は全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。実装形態の態様は、必要に応じて、様々な特許および出願の概念を採用して、更なる実装形態を提供するために修正することができる。これらの変更および他の変更は、上記の詳細な説明を踏まえて実装形態に加えることができる。一般に、以下の特許請求の範囲では、使用される用語は、特許請求の範囲を明細書および特許請求の範囲に開示される特定の実施態様に限定するように解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲とともに、すべての可能な実施態様を含むように解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】